説明

ポリマーの封入および/または結合

ニトロキシド媒介制御ラジカル重合によって形成された、櫛型、ブロック型、分岐型の官能基化されたポリマーを介した、PEG修飾された生理活性分子の封入および結合を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、官能基化および/または用途に適合された(tailored)ポリマー、特に、ニトロキシド媒介制御ラジカル重合により形成された官能基化および/または用途に適合されたホモポリマー、コポリマー、分岐ポリマー、およびブロックコポリマーを介して、材料または機能剤の封入および結合を行うことに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレングリコール(PEG)から誘導された基で物質を修飾することは、PEG修飾として周知である。現在、PEG修飾は、薬物として使用するためのタンパク質、ペプチド、抗体断片、オリゴヌクレオチド等の生理活性分子の修飾に幅広く使用されている。
【0003】
タンパクおよびペプチド医薬品等の生理活性分子が治療薬として大いに有望視されているが、その多くは、タンパク質分解酵素によって分解され、短時間で腎臓から排除される可能性があり、中和抗体が産生され、貯蔵寿命が短く、溶解性が低く、かつ/または循環半減期が短い。このような物質をPEG修飾することにより、上記および他の欠点を克服することができる。PEG修飾がクリアランスを減少させる能力は、一般に、タンパク質に結合したPEG基の数の関数になるのではなく、改変されたタンパク質全体の分子量が関係する。PEG修飾を行うことにより、タンパク質およびペプチドの分子量を増加させ、これらをタンパク質分解酵素から保護することによって、薬物動態が改善される。PEG修飾の他の利点の中でも、水溶性の増大、生物学的利用能の向上、血液循環の向上、タンパク質凝集の低減、免疫原性の低下、毒性の低下、および投与頻度の減少が挙げられる。
【0004】
分岐ポリマーは、単独でも全体の分子量が高い非線状ポリマー分子を提供することができる。中心のコアに結合した複数のポリマーアームを有し、生理活性分子と結合する唯一の反応基を有する分岐または星型ポリマーが、例えば、米国特許第5,643,575号明細書および米国特許第5,932,462号明細書に記載されており、この両方の開示内容を参考として本明細書に組み込む。このような分岐ポリマーは、高分子量ポリマーを、極端に長いポリマー鎖を用いることなく分子の唯一の結合部位に結合させるのに有用であるが、分岐PEG分子を形成する方法が難しく、また、コア分子に結合させる前にPEGポリマーの大掛かりな精製を行うことに加えて、結合の後に、部分的にPEG修飾されたポリマー中間体を精製/除去することが必要となる。
【0005】
国際公開第2006/003352号パンフレット(この開示内容を本明細書に参照として組み込む)には、原子移動重合(ATRP)および可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)を用いることにより、アルコキシポリエーテルを含むモノマーから櫛型ポリマーを調製することが記載されている。この開示には、先行技術の多くの欠点および制御重合法を用いることの利点が記載されているが、ATRP重合にも幾つか欠点があり、これらに限定されるものではないが、重合速度が遅く、金属を含む副生成物が残留し、スケールアップが難しく、ポリマーの組成および分子量範囲が限られることが挙げられる。金属を含む副生成物は生物系に有害となる可能性があるので除去することが必要であり、これは困難かつ面倒な手順を要する。例えば、米国特許第6,610,802号明細書にはこのような副生成物が記載されており、ATRP法の欠点が開示されている。さらに、必要とされる大量の金属含有制御剤は、変色だけでなく、ある種の反応器においては腐食の問題も起こし得る。この技術を用いると、酸素および特定の官能基(酸等)に対する感度の高さによって制御が難しくなるとともに不純物が生じるというさらなる制限に直面する。
【0006】
RAFTには、ラジカル制御剤として、ジチオカルバミン酸エステル、キサントゲン酸エステル、およびトリチオ炭酸エステル(トリチオ炭酸ジベンジル(DBTTC)等)が使用される。しかしながら、RAFT法を効果的に機能させるためには、使用されるモノマーの種類および重合速度に基づきRAFT剤を慎重に選択しなければならない。RAFT技術はまた、外部の重合開始源(polymerization sources)を必要とするため、すべてのポリマー鎖が所望の末端官能基化を施されることにはならないので、正確に定められた官能基化を達成することには限界がある。硫黄系の制御剤による悪臭および変色もこの技術の欠点である。さらに、ATRPおよびRAFT技術はいずれも副生成物による汚染および生成物の精製に関する問題に悩まされている。
【0007】
したがって、設計に柔軟性を与えながらもこのような欠点を持たない、用途に適合された、PEG基を含むポリマーを調製するための制御方法が求められている。
【0008】
機能剤(本明細書においては、分子、生理活性分子、成分、または組成物(風味剤、香料、医薬品、病虫害防除剤(pesticide)等)、農薬(除草剤、殺菌剤、病虫害防除剤等)、染料、および他の多くのものとして定義する)の送達は、ほぼすべての応用科学における重要な一面である。容易に輸送および加工を行うことができる濃縮形態の機能剤は、安定化を行わないと、送達の信頼性が低くなり、この薬剤が予め定められた場所および時間に有益な特性を発揮することがごくまれにしか起こらなくなるであろう。非常に反応しやすい添加剤を分解から保護するとともに、その性能が所要の用途に応じて最適化されるであろう制御放出を行うために、有効な封入を行うことが幅広い用途において求められている。
【0009】
PEG修飾とは別に、多くの異なる封入技術が利用可能である。このような利用可能な技術の1つが、両親媒性ブロックコポリマー(親水性および疎水性ブロックセグメントを有するポリマー)を使用することである。両親媒性ブロックコポリマーは、水溶液中でミセルを形成し、疎水性または水に不溶な薬剤を封入または可溶化するのに適したものになることが知られている。封入技術、特に両親媒性ブロックコポリマーを使用するものは、例えば、米国特許第5,939,453号明細書、米国特許第6,638,994号明細書、米国特許公開第2007/0160561号明細書、米国特許公開第2004/0010060号明細書、および米国特許公開第2005/0180922号明細書に記載されており、これらの開示内容を本明細書に参考として組み込む。これらの参考文献には、上述のATRPまたはRAFT法により調製される両親媒性ポリマーが記載されているが、これらの技術に付随する欠点(先に上述したもの)による制限がある。リビングアニオン重合法により製造されるPEO系の両親媒性ブロックコポリマーに分類されるものも記載されている。
【0010】
リビングアニオン重合の難点は、極性および無極性コモノマー間の共重合性に劣ることや、容易に脱プロトン化し得るモノマーを使用できないなどの幾つかの欠点にある。したがって、官能性モノマーをそのまま組み込むことができず、また、モノマー混合物の共重合は問題を生じ、かつ/または実施できない可能性がある。このため、溶解性、反応性、Tg等の特性を用途に適合させる能力が低下する。さらに、この方法には費用がかかる可能性があり、塊状または乳化技術を使用することができないため商業規模で実施するのは困難であるかまたは実施が不可能であり、極めて純度の高い試薬が必要であり(微量のプロトン性物質でさえ重合を阻害する)、そして不活性雰囲気が不可欠である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,643,575号明細書
【特許文献2】米国特許第5,932,462号明細書
【特許文献3】国際公開第2006/003352号パンフレット
【特許文献4】米国特許第6,610,802号明細書
【特許文献5】米国特許第5,939,453号明細書
【特許文献6】米国特許第6,638,994号明細書
【特許文献7】米国特許公開第2007/0160561号明細書
【特許文献8】米国特許公開第2004/0010060号明細書
【特許文献9】米国特許公開第2005/0180922号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これらの参考文献は、共重合、グラジエントコポリマー、官能基化を用いて特定の特性を用途に適合させるのには適していない技術を使用しているか、または薬剤の溶解性および薬剤の放出の両方を制御するためにブロック組成を用途に適合させることや傾斜組成を形成させることの重要性を教示していないかのいずれかである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、ニトロキシド媒介制御ラジカル重合(NM−CRP)により形成された、官能基化および/または用途に適合されたポリマーに関する。一態様においては、本発明は、機能剤をPEG修飾することができるポリマーの調製方法である。他の態様においては、本発明は、用途に適合された、機能剤と結合するかまたはこれを封入することができる官能基化された非PEG系ポリマーを得る方法を提供する。他の態様においては、本発明は、両親媒性ブロックコポリマーを用途に適合させることにより、機能剤の封入性の向上およびこの薬剤の放出特性の制御を可能にする方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
特段の断りがない限り、本明細書および特許請求の範囲において特定された材料群には、この種の材料の混合物も含まれる。特段の断りがない限り、百分率はすべて重量百分率であり、温度はすべて摂氏度(degrees Centigrade、degrees Celsius)である。
【0015】
制御ラジカル重合
本発明のポリマーは、機能剤の結合または封入に使用することができる。本発明は、このようなポリマーを調製する方法ならびに機能剤の封入性の向上およびこの薬剤の放出特性の制御を可能にするためにこのポリマーを用途に適合させる方法について記載する。結合とは、機能剤がポリマーと共有結合することを意味する。封入とは、機能剤が捕捉されているが共有結合はしていないことを意味する。
【0016】
これらは、好ましくは、ニトロキシド媒介CRP(NM−CRP)を用いて調製される。NM−CRPを用いることにより、様々な機能剤への結合および/またはその封入およびその制御放出を促すことができる、特定の制御された官能性および/または用途に適合された溶解性を有するポリマーを合成することが可能になる。
【0017】
このようなポリマーの調製に様々なCRP手法が使用できることは明らかであるが、先に述べた多くの制限を有するATRPやRAFT等の他の周知のCRP技術と比較して多くの利点を有するNM−CRPが好ましい。NM−CRPでは、アクリル系化合物、アクリルアミド、特に酸官能性を有するアクリル系化合物の使用を含め、多種多様なモノマーを使用することが可能である。ニトロキシド媒介CRPの他の明らかな利点は、ニトロキシドが通常は無害であるため反応混合物中に残留してもよいことにあり、その一方で、他のCRP法は、最終ポリマーから制御化合物を除去することがしばしば必要となる。試薬の精密な精製は必要ない。さらに、官能基化されたアルコキシアミンを使用することにより、形成されたポリマーの100%またはほぼ100%が確実に鎖末端またはポリマー鎖の中央のいずれかに官能基を含むようにすることができる。
【0018】
NM−CRPには、ニトロキシド媒介剤を使用することによってラジカル重合を制御し、それによって、正確に定められた構造を有する配列したコポリマー(ブロックコポリマー等)を調製できるようにすることが含まれる。NM−CRPは、例えば、米国特許第6,255,448号明細書、米国特許第6,569,967号明細書、および米国特許第6,646,079号明細書に開示されており、この開示内容を、本明細書に参考として組み込む。重合は、塊状で、溶媒中で、および水性媒体中で行うことができ、既存の設備を用いて他のラジカル重合と類似の反応時間および温度で用いてもよい。
【0019】
この方法においては、安定なフリーラジカルであるニトロキシドによってラジカル重合過程が制御される。この方法においては、重合が制御されており、しかもポリマーがリビングポリマーであるため、異なるモノマーを連続的に重合媒体に導入することによって各ブロックの組成および鎖長が厳密に制御されたブロックポリマーを調製することが可能になる。さらに、重合のリビング性により、均質な(すなわち、所与の反応混合物中の鎖の組成がすべて類似の構成を有する)コポリマーまたはグラジエント型のポリマーを調製することが可能になる。NM−CRPでは、このような制御が行われるため、用途に正確に適合した組成、分子量、官能基化、構成を有するブロックコポリマーを得ることができる。
【0020】
この制御の機構を以下のように図で表すことができ、
【化1】

ここで、Mは、重合性モノマーを表し、Pは、生長ポリマー鎖を表す。この制御の鍵には、定数Kdeact、kact、およびkpが関連している(T.FukudaおよびA.Goto、Macromolecules、1999、32、pp.618〜623)。kdeact/kactの比が高すぎると重合が阻害されるが、一方で、kp/kdeactの比が高すぎるかまたはkdeac/kactの比が低すぎると重合が制御できない。β置換されたアルコキシアミンは、幾つかの種類のモノマーの重合を開始および効率的に制御することを可能にし(P.Tordoら、Polym.Prep.、1997、38、pp.729〜730およびC.J.Hawkerら、Polym.mater.Sci.Eng.、1999、80、pp.90〜91)、一方、TEMPO系のアルコキシアミン(Macromolecules、1996、29、pp.5245〜5254に述べられている(2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジルオキシ−)メチルベンゼン等)は、スチレンおよびスチレン系誘導体の重合のみを制御することがわかっている。TEMPOおよびTEMPO系のアルコキシアミンは、アクリル系化合物の制御重合には適していない。
【0021】
ラジカル重合の調整剤として有用なβ位にリンを含むニトロキシドラジカルが米国特許公開第2004/0077873号明細書に開示されており、この開示内容を本明細書に参考として組み込む。
【0022】
ニトロキシドの一般構造は、
【化2】

(式中、RLは、15を超えるモル重量を表す)である。
【0023】
CRPに有用なβ位にリンを含むニトロキシドラジカルとしては、構造
【化3】

を有するN−t−ブチル−N−[1−ジエチルホスホノ−(2,2,−ジメチルプロピル)]ニトロキシドまたは(DEPN)としても周知のSG1が例示される。
【0024】
特に有用なニトロキシド化合物は、1個の分子内に制御剤および開始剤を組み合わせたアルコキシアミンである。米国特許公開第2005/0065119号(この開示内容を本明細書に参考として組み込む)には、β位がリン酸エステル化されたニトロキシドから誘導されたアルコキシアミンが開示されている。このアルコキシアミンの一般構造は、
【化4】

である。
【0025】
ここで、アルコキシアミンは、式(I)のβ置換されたニトロキシド(式中、Aは、1価または多価の構造を表し、RLは、15を超えるモル重量を表す1価の基であり、n≧1である)から得られる。式(I)の多価のアルコキシアミンの形成は、多官能性モノマー(これらに限定されるものではないが、アクリレートモノマーやアルコキシアミン等)を反応させることにより、温度制御下に達成することができる。次いで、式(I)の多官能性アルコキシアミン(式中、n≧2である)を利用して、想定されている1種または複数種のモノマーから星型および分岐ポリマーおよびコポリマー材料を合成してもよい。
【0026】
有用な化合物の一例としては、SG1ラジカルをイソ酪酸ラジカルと結合させることによって形成された、以下に構造を示すアルコキシアミン(iBA−SG1開始剤)が挙げられる。
【化5】

【0027】
この開始剤/制御剤は、アクリレートおよびアクリル酸等の官能性アクリル系化合物等の幅広いモノマーに好適である。この化合物は、ラジカル重合の制御剤BlocBuilder(登録商標)としてArkema Inc.から市販されている。
【0028】
アルコキシアミンBlocBuilder(登録商標)制御剤を使用することには固有の利点がある。それは、開始部位がポリマー鎖に直接組み込まれるカルボン酸官能基を有しており、機能剤に直接結合させるかまたはさらなる化学修飾部位の役割を果たすかのいずれかの化学的な結合手(chemical handle)としてさらに利用することができるためである。
【0029】
BlocBuilder(登録商標)制御剤をそのまま使用する場合、酸官能性は鎖の一方の末端に存在することになるであろう。酸官能性の化学的結合手は、さらに多種多様な官能性に変換される部位を提供するので重要である。例えば、酸は任意の数の有用な官能基に容易に転換され、これらを制限するものではないが、国際公開第2006/003352号パンフレットにその多くが開示されている。米国特許第7,214,810号明細書には、BlocBuilder(登録商標)制御剤の酸官能性の転換およびBlocBuilder(登録商標)制御剤の酸部分により末端が官能基化されたポリマーの多くの例が開示されている。他の多くの転換技術が当業者に明らかであろう。
【0030】
BlocBuilder(登録商標)制御剤を使用することにより、鎖末端の末端官能基化の度合いを高くすることができる。官能性部分は重合開始源の役割を果たすので、理論的には鎖の100%が末端官能基化されるはずである。この高度な官能基化により、特に、望ましくない場合が多いテレケリックな性質の鎖(アニオン的方法で形成される)およびRAFT法で生成する非官能性鎖が生成しなくなる。アニオン的に形成されたポリマーは、典型的には、5%を超えるテレケリックポリマーを含む。これらはしばしば望ましくない架橋反応を起こし得る。
【0031】
もちろん、単官能性開始剤であるMONAMSおよび二官能性開始剤であるDIAMS等の、SG1を含む非官能性アルコキシアミンも使用することができる。これらの開始剤の構造を以下に示す。
SG1−CH(CH3)−C(O)OCH3 MONANS
(SG1−CH(CH3)−C(O)O(CH232 DIAMS
【0032】
iBA−SG1開始剤は、加熱により2つのフリーラジカルに分裂し、その一方は重合を開始させ、その一方すなわちSG1ニトロキシドラジカルは可逆的に重合を停止させる。SG1ニトロキシドラジカルは、約25℃を超えるとメタクリレートから解離し、それぞれ約80および70℃を超えるとアクリレートおよびスチレン系化合物から解離する。したがって、iBA−SG1をアクリレートモノマーと一緒に1:1の比率で25℃超75℃未満の温度で反応させることにより、官能基化された付加物を形成させることができる。
【0033】
アルコキシアミンを使用することにより、外部重合開始源(有機過酸化物やジアゾ化合物等)が不要になるが、場合によっては、従来のフリーラジカルにより生成されるポリマーおよび制御されたポリマーの混合物を得るために過酸化物を導入してもよく、あるいは残留モノマーを「追い払う(chase)」ために反応の終わりに過酸化物を使用してもよい。AB型ブロックコポリマーの合成には、典型的には、単官能性アルコキシアミンが使用される。二官能性アルコキシアミンは、典型的には、ABAトリブロックコポリマーを生成させるために使用される。しかしながら、まず最初にモノマーA、次いでモノマーBを反応させ、次いで元のモノマーAに切り替えることによって、単官能性アルコキシアミンからトリブロックコポリマーを製造することもできる。この手法を用いることによって、セグメント化されたABABA型ポリマーだけでなく、当業者に明らかなように、異なる数種のモノマーセグメントを含むABCやABCD等のマルチブロックポリマーも形成することができる。この方法により製造されたポリマーはニトロキシド末端基を有することとなる。これらはポリマー鎖の末端にそのまま残してもよいし、さらなる処理ステップで除去してもよい。
【0034】
他の方法として、多峰性ポリマーの調製を示すが、この場合は、想定されているモノマーの少なくとも1種が、式(I)(式中、nは、ゼロ以外の整数であり、アルコキシアミンは異なるnの値を表す)の配列を含む数種のアルコキシアミンの存在下にラジカル重合に付される。
【0035】
機能剤と結合するかまたはこれを封入する、本発明のNM−CRPにより製造されるポリマーは、3種のポリマー:1)機能剤のPEG修飾に用いられる、用途に適合されたPEG系官能基化ポリマー、2)機能剤と結合するかまたはこれを封入することができる、用途に適合された非PEG系官能基化ポリマー、および3)封入性の向上および機能剤の放出特性の制御の両方を可能にする、官能基化および非官能基化ならびにPEG系および非PEG系のものを含む、用途に適合された両親媒性ブロックコポリマーに大別して説明することができる。各分類の一般的な説明を以下に記載するが、当業者に明らかなように、これらに限定することを意味するものではない。
【0036】
分類1は、機能剤のPEG修飾に用いるための、NM−CRPにより製造されるPEG系官能基化ポリマーからなる。機能剤の好ましい分類の1つとして、生理活性分子(薬物として使用される、タンパク質、ペプチド、抗体断片、オリゴヌクレオチド等)が挙げられる。
【0037】
PEG系ポリマーとしては、当業者に周知のように、ポリエチレングリコール単位をポリマー骨格または骨格の側鎖のいずれかに含む任意のポリマーが挙げられる。本発明の好ましいPEG系ポリマーは、ポリ(アルキレングリコール)等のアルコキシポリエーテルであるモノマーから誘導されたものである。このようなモノマーの例としては、ポリエチレングリコールアクリレートおよびポリエチレングリコールメタクリレートが挙げられ、これをモノマー(1)と称し、構造を以下に示す:
CH2=C(R2)C(O)(OCHR3CHR4n−Q (1)
(式中、R2は、水素またはメチルであり、nは、1〜400の整数であり、R3およびR4は、好ましくは、水素であるが、nはまた、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの繰り返し単位の混合物を含む側鎖も表してもよい)。すなわち、繰り返し単位の一部は、水素としてのR3およびR4を有し、残りのR3およびR4は、水素およびメチル基を表す。Qは、ヒドロキシル基、メトキシ基、アルキル基、または他の基であってもよい。Qはまた、生理活性分子(M)に結合させるための結合基であるLであるかまたは結合基に結合した生理活性分子L’M(式中、L’は結合基である)であってもよい。
【0038】
好ましいモノマーの一例は、R3およびR4の両方が好ましくは水素であり、nが好ましくは3〜110の、モノマー(2)と称する以下に構造を示すものである:
CH2=CH(R2)CO(OCHR3CHR4n−OH (2)
(式中、−OHは結合基である)。あるいは、結合基を、この構造のモノマーを誘導体化することによって調製してもよい。
【0039】
本発明に定義する、官能基化されているとは、ポリマーが、機能剤(FA)と結合してL’FAまたはL’M基を生成させることができる結合基Lを含むことを意味する。官能基化は、(1)に記載したモノマーに由来するものでも、アルコキシアミンの開始部位に由来するものであってもよいし、モノマー(2)等の官能基化されたコモノマーまたはアクリル酸やヒドロキシエチルアクリレート等を介して導入してもよい。ポリマーは、1種またはそれ以上の官能基を含んでいてもよい。好ましい一実施形態においては、ポリマーは、L基を1個だけ含む。モノマーまたはアルコキシアミンの開始部位から誘導された官能基は、そのままで結合基Lとして利用してもよいし、先に述べたように、従来の化学を用いて結合基に容易に変性してもよい。
【0040】
分類1のポリマーは、ポリエチレングリコール単位を含むモノマー繰り返し単位のみを含んでいてもよい(純粋なPEG系ポリマーと称される)し、非ポリエチレングリコール単位のモノマーを含んでいてもよい(PEG系コポリマーと称される)。これらのモノマーは、当業者に明らかなように、ラジカル重合させることができる任意のオレフィン性モノマーから選択することができる。
【0041】
有用なモノマーとしては、例えば、これらに限定されるものではないが、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルおよび混合エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−およびN,N−置換(メタ)アクリルアミド等のアクリル系化合物;マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、およびこれらの対応する無水物;ハロゲン化カルボニル;アミド、アミド酸、アミド酸エステル、ならびにこれらの完全および部分エステル;ならびにこれらの混合物が挙げられる。有用な非アクリル系コモノマーとしては、エチレン性不飽和モノマーが挙げられ、これらに限定されるものではないが、無水物、アクリロニトリル、ビニルエステル、アルファ−オレフィン、ジエン、不飽和ジカルボン酸の置換または無置換のモノおよびジアルキルエステル、ビニル芳香族化合物、置換ビニル芳香族化合物、環式モノマー、アルコキシル化された側鎖を含むモノマー、スルホン化されたモノマー、およびビニルアミドモノマーが挙げられる。
【0042】
生理活性剤または治療剤を送達する用途に用いる場合は、ラジカル重合可能なコモノマーは、NM−CRPによる共重合が可能なように、かつ結果として得られるPEG修飾された生理活性分子の形成または性質(水溶性、生体受容性(bio−acceptability)、および/または生理活性等)に悪影響を及ぼさないように選択する。有望なコモノマーの例としては、アクリル酸およびメタクリル酸ならびにこれらの塩(カリウム、ナトリウム、リチウム、アンモニウム、および置換アンモニウム塩等)、プロピレングリコールモノアクリレート、プロピレングリコールモノメタクリレート、ビニルピロリドン、1,4−ブタンジオールモノアクリレート、1,4−ブタンジオールモノメタクリレート等のモノマーが挙げられる。
【0043】
アルコキシアミンBlocBuilder(登録商標)制御剤の使用には固有の利点がある。それは、その開始部位が、ポリマー鎖末端にそのまま組み込まれて結合基Lの役割を果たすことができるカルボン酸官能基を有するためである。これにより、他の任意の官能性モノマーの非存在下に、鎖末端に正確に1個の結合基が位置するポリマー鎖が提供される。これは、本開示の好ましい実施形態である。先に述べたように、酸官能性L基は多種多様な官能性L部分に容易に変換することができる。
【0044】
以下の説明は、NM−CRPにより合成することができる分類1型の材料の代表的なものを意味するが、これらに限定されるものとみなされるべきではない。
【0045】
モノマー(1)またはモノマー(1)の混合物は、BlocBuilder(登録商標)制御剤を用いて重合させることにより、鎖末端にカルボン酸基を含む櫛型の純粋なPEG系ポリマーを形成することができる。このポリマーは、Q基を介してさらに官能基化してもよいし、あるいはQ基が非官能性(例えば、メトキシ基)であってもよい。好ましい実施形態においては、Q基は結合基ではなく、鎖末端のカルボン酸基が結合基Lの役割を果たすかまたは他の形態の結合基に変性される。
【0046】
他の種類の制御された好ましい構造は、モノマー(1)を1単位だけ含むものであろう。これは、BlocBuilder(登録商標)制御剤等のアルコキシアミンをモノマー(1)と1対1の比率で(または温度制御下にBlocBuilder(登録商標)制御剤をやや過剰で用いて)反応させることにより達成することができる。こうすることにより、低分子量の末端官能基化PEG系オリゴマーが得られる。
【0047】
当業者に明らかであるが、重合を実施する前にアルコキシアミンを機能剤と直接結合させることも可能である。ポリマーを後段で送達物質と反応させることに替えて、送達物質上で直接NM重合を実施することによって、結合効率が上昇する。これは、官能性結合部位を含むBlocBuilder(登録商標)制御剤等のアルコキシアミンに特に魅力的な経路である。この官能基は、それだけで結合基L’として作用させることもできるし、あるいは従来の化学を用いて結合基L’に容易に変性することもできる。したがって、この結合基は、目的の分子結合に必要な所望の化学的性質に合うように適合させることができる。この種の処理経路は、制御された構造を生成させるための他の好ましい方法である。ATRPの場合は、これに続いて金属を含む不純物を除去するための処理ステップを行うと、結合した送達物質を損傷する可能性があるので、この経路には限界がある。
【0048】
モノマー(1)は、付加重合可能な1種または複数種のさらなるモノマーと共重合させることにより、グラジエント型のPEG系コポリマーを形成させることもできる。官能基を含むコモノマーを使用した場合、これらはそれだけで結合基として利用することもできるし、容易に変性することもできる。NM−CRP技術を用いた共重合により、最終的には、結合/封入に利用されるポリマーの最終用途における使用性を用途に適合させることが可能になる。例えば、疎水性モノマーをPEG系モノマーと共重合させることができ、PEG修飾された薬物の場合は、こうすることにより、最終的に封入粒子の流体力学的体積が変化したり、コポリマーに共役結合した薬物の安定性、溶解性、毒性、および/または薬物の保持時間が変化するであろう。
【0049】
2種の異なるL基を含み、それぞれの種類のL基が異なる機能剤に対する結合親和性を有するPEG系コポリマーを製造することができ、それによって、2種以上の異なる活性分子を含むポリマーが得られる。例えば、モノマー(1)が結合した機能剤を含む場合、異なる機能剤を含む他の官能基化モノマーおよび場合により非官能基化コモノマーと共重合させることができ、この非官能基化コモノマーは、非PEG系上のPEG系であってもよい。制御ラジカル重合においてモノマー(1)の量および1種または複数種のコモノマーの量を適切に制御することによって、分子量、最終PEG修飾ポリマーの溶解性、および最終PEG修飾生理活性ポリマー中の生理活性分子の量を制御することが可能になる。さらに、非官能性モノマーと共重合させることにより、分岐鎖または機能剤を含むモノマーの間隔および含有量を制御することができる。この種の処理を行うことにより、PEG系コポリマー中の機能剤の量、種類、および位置を制御することが可能になる。
【0050】
したがって、本発明の重要な利点は、特定の組成および対応する(コ)ポリマーの構成を、送達を意図した機能剤に従い容易に用途に適合させることができることにある。
【0051】
結合基
生理活性分子をポリエチレングリコールおよびポリオキシエチレン化ポリオールに結合させるための結合基は当業者に周知である。PEGの周知の誘導体の活性基のいずれかを使用してもよい。例えば、スクシンイミジルエステルをタンパク質アミノ基に結合させることができる。しかしながら、カルボン酸ポリマー部分を様々な表面および分子に結合させるために活性化させるのに利用可能な多種多様な官能性部分が存在する。生物学的およびバイオ技術的用途に用いられる活性部分の例としては、トリフルオロエチルスルホネート、イソシアネート、イソチオシアネート(isosthiocyanate)、活性エステル、活性炭酸エステル、様々なアルデヒド、様々なスルホン(クロロエチルスルホン、ビニルスルホン等)、マレイミド、ヨードアセトアミド、およびイミノエステルが挙げられる。活性エステルとしては、N−ヒドロキシルスクシンイミジルエステルが挙げられる。活性炭酸エステルとしては、炭酸N−ヒドロキシルスクシンイミジル、炭酸p−ニトロフェニル、および炭酸トリクロロフェニルが挙げられる。
【0052】
結合基は、Thompsonによる米国特許第6,552,170号明細書に開示されており、この開示内容を本明細書に参考として組み込む。分子および表面上のアミノ部分に替えてチオール部分に選択的に結合させるのに使用することができる有用な活性基は、Harrisによる米国特許第5,446,090号明細書に記載されているビニルスルホン部分であり、この開示内容を本明細書に参考として組み込む。
【0053】
炭酸ジスクシンイミジル(炭酸ビススクシンイミジルまたはDSC)結合基を用いて生理活性分子をポリエチレングリコールおよびポリオキシエチル化ポリオールに結合させることが米国特許第5,281,698号明細書に開示されており、この開示内容を本明細書に参考として組み込む。DSCと遊離ヒドロキシル基を有するPEGとの反応は、塩化メチレンやクロロホルム等の不活性溶媒中で、ピリジンや4−ジメチルアミノピリジン等の塩基性触媒を用いて実施される。析出物が形成された場合は濾去する。ジエチルエーテルを加えることにより反応混合物から析出した活性PEGエステルをジエチルエーテルで洗浄し、必要に応じて再度溶解させて再度析出させる。
【化6】

【0054】
本発明においては、結合基を含むモノマーをこの手順で調製してもよい。
モノマー(1)+DSC → CH2=CH(R1)−(OCHR3CHR4nOC(O)ON[(CO)2(CH22
【0055】
分類2は、機能剤の結合または封入に用いるための、NM−CRPにより製造された、用途に適合された非PEG系官能化ポリマーからなる。この分類のポリマーは、モノマー(1)やモノマー(2)等のPEG系モノマーを使用しないことを除いては、分類1のポリマーと同じ技術および処理を用いて調製することができる。調製された官能性ポリマーの溶解性は、モノマー組成に基づき用途に適合させることができる。機能剤の封入または結合に用いるための分類2の非PEG系官能性ポリマーの2つの例として、水溶性または親水性官能性ポリマーおよび有機可溶性または疎水性官能性ポリマーが挙げられる。もちろん、この2種のモノマーの混合物を共重合させることによって両方の媒質に親和性を有するポリマーを得ることができる。
【0056】
親水性ポリマーとは、ポリマーまたはコポリマーが水と親和性を有することを意味する。本明細書において用いられる「親水性」または「親水性ポリマー」は、ポリマーブロックセグメントが、水溶性、水分散性、または概して水を吸収および/もしくは透過させることができることを意味する。親水性ポリマーは、親水性ホモポリマー、1種もしくはそれ以上の親水性モノマーを含むランダムコポリマー、または1種もしくはそれ以上の親水性モノマーを1種もしくはそれ以上の疎水性モノマーと一緒に含むランダムコポリマーであってもよい。親水性ポリマーの形成に有用なエチレン性不飽和モノマーとしては、これらに限定されるものではないが、アクリル酸、メタクリル酸、ならびにメタクリルおよびアクリル酸の塩、エステル、無水物、およびアミド;ジカルボン酸無水物;カルボキシエチルアクリレート;スチレンの親水性誘導体;ならびにアクリルアミドが挙げられる。具体的な有用なモノマーとしては、これらに限定されるものではないが、無水マレイン酸、マレイン酸、置換無水マレイン酸、無水マレイン酸のモノエステル、無水イタコン酸、イタコン酸、置換無水イタコン酸、イタコン酸のモノエステル、フマル酸、無水フマル酸、フマル酸、置換無水フマル酸、フマル酸のモノエステル、クロトン酸およびその誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、n−イソプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、スチレンスルホン酸、アクリルアミド2−メチル2−プロパンスルホン酸塩、ビニルピロリドン、2−カルボキシエチルアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ならびにヒドロキシエチルメタクリレートが挙げられる。この酸モノマーの塩およびアミンの4級化形態も本発明に想定されている。
【0057】
疎水性ポリマーとは、ポリマーまたはコポリマーが水溶性でないことを意味する。本明細書において用いられる「疎水性」および「疎水性ポリマー」とは、ポリマーブロックセグメントが水に不溶であるかまたは水に分散しないことを意味する。疎水性ポリマーは、疎水性ホモポリマー、1種もしくはそれ以上の疎水性モノマーを含むランダムコポリマー、または1種もしくはそれ以上の疎水性モノマーを1種もしくはそれ以上の親水性モノマーと一緒に含むランダムコポリマーであってもよい。疎水性ポリマーの形成に有用なエチレン性不飽和モノマーの例としては、これらに限定されるものではないが、スチレン、スチレンの疎水性誘導体、共役ジエン、C3〜30直鎖または分岐アルキルおよびアリール(メタ)アクリレート、オレフィン、含フッ素モノマー、ならびに含ケイ素モノマーが挙げられる。疎水性モノマーの具体例としては、スチレン、アルファ−メチルスチレン、ラウリルメタクリレート(または他の長鎖アルキルアクリレートまたはメタクリレート、例えば、C6〜C30アルキルエステル2−エチルヘキシルアクリレートおよび2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレートおよびオクチルメタクリレート、デシルアクリレートおよびデシルメタクリレート等、一般構造CF3(CF2nCH2OCOC(R)=CH2(式中、Rは、水素またはメチルであり、nは、典型的には、2〜20である)を有する1,1−ジヒドロパーフルオロアルキルアクリレートおよびメタクリレート、ヘキサフルオロブチルアクリレート、トリイソプロピルシリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ブタジエン、イソプレン、メチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、およびt−ブチルメタクリレートが挙げられる。
【0058】
上述の親水性および疎水性モノマーの一覧には、様々な官能基化および非官能基化モノマーが含まれる。官能基化モノマーは、本発明の機能剤と結合してL’FA結合を生成させるのに使用することができるL基を提供し、すべて非官能基化モノマーが使用された場合は、分類1のポリマーの項で前述したように、アルコキシアミンにより提供されるL基を利用することができる。
【0059】
分類3は、NM−CRPにより作製された、封入性の向上および機能剤の放出特性の制御の両方を可能にする、官能基化および非官能基化ならびにPEG系および非PEG系のものを含む、用途に適合された両親媒性ブロックコポリマーからなる。
【0060】
本明細書において用いられる「ブロックコポリマー」とは、当業者に明らかなように、ジブロック体、トリブロック体、またはマルチブロック体、グラフトブロックコポリマー、分岐ブロックコポリマー(線状星型ポリマーとしても周知である)を意味する。本明細書において用いられる「ブロックコポリマー」には、グラジエントポリマーまたはグラジエントブロックコポリマーも含まれる。グラジエントポリマーは、制御重合法により作製される、組成がポリマー鎖に沿って変化(ランダムからブロック様構造の範囲内で可能)する、線状または分岐コポリマーである。
【0061】
コポリマーセグメントがニトロキシド媒介重合等の制御ラジカル重合(CRP)技術を用いて合成された場合、これはしばしばグラジエントまたは「所定のプロファイルを有する(profiled)」コポリマーと称される。この種のコポリマーは、従来のフリーラジカル法によって得られるポリマーとは異なり、モノマー組成、制御剤、および重合条件に依存するであろう。例えば、モノマー混合物を従来のラジカル重合によって重合する場合は、モノマー混合物の組成は生長鎖の寿命(約1秒間)が続く間は一定のままであるため、統計学的コポリマーが生成する。さらに、反応全体を通じてフリーラジカルが絶えず生成するため、モノマー濃度が変動することになるので、鎖の組成は不均一になるであろう。制御ラジカル重合が行われる間は、鎖は重合期間中は終始活性なままであり、したがって、組成は均一であり、これは、反応時間に対する対応するモノマー混合物に依存する。したがって、一方のモノマーが他方よりも速く反応する2種のモノマー系においては、モノマー単位の分布すなわち「プロファイル」は、ポリマーセグメントの一端において一方のモノマー単位の濃度がより高くなるようになるであろう。
【0062】
ブロックコポリマーの各ブロックは、それ自体はホモポリマー、コポリマー(ここで、コポリマーには、ターポリマーおよび他の2種以上の異なるモノマーの組合せが含まれる)、またはグラジエントポリマーであってもよい。グラジエントブロックコポリマーは、例えば、第1ブロックに由来する未反応のモノマーの反応を第2ブロック形成中も継続させることによって形成することができる。したがって、A−BブロックグラジエントコポリマーにおいてはAブロックが最初に形成される。Bブロックのモノマーを添加した後は、未反応のAブロックモノマーを混合物中に維持して反応させ、AブロックからBブロックへの勾配を有するA−Bブロックコポリマーを得る。グラジエントブロックコポリマーは本発明の好ましいブロックコポリマーである。それは、勾配を有する組成および/または正確に配置された官能基化により得られる特定の性質によって、薬剤の溶解性および薬剤の放出の両方の制御が可能になるためである。好ましいグラジエントブロックポリマーは、A−BジブロックおよびA−B−CまたはA−B−Aトリブロックコポリマーである。
【0063】
両親媒性ブロックコポリマーとは、少なくとも1つのセグメントが機能剤と混和性を有し、少なくとも1つのセグメントが混和性を有しないことを意味する。例えば、疎水性の機能剤を親水性Aブロックおよび疎水性Bブロックを含むABブロックコポリマーと混合する場合である。
【0064】
親水性および疎水性セグメントを含む両親媒性ブロックコポリマーは、水溶液中でミセルを形成し、疎水性または水に不溶な薬剤の封入または可溶化に適したものになることが知られている。しかしながら、先に開示した物質は、それを調製した方法に由来する欠点を有するという難点がある。NM−CRPにより、これらの制限を克服することができる。さらに本発明のポリマーは、勾配および官能基化によって用途に適合された組成物のさらなる利点を示している。
【0065】
両親媒性親水性/疎水性ブロックコポリマーは、本発明の好ましいブロックコポリマーである。親水性ブロックセグメントは、PEG系または非PEG系であってもよいし、官能基化されていても官能基化されていなくてもよい。
【0066】
NM−CRPテクノロジー(technoligy)により(by virture of)、性質を一定とすることも勾配を持たせることもできるブロックコポリマー構造を共重合によって製造できるようになったことで、最終的には、ポリマーの最終用途における使用性を用途に適合させることに加えて、結合または封入に利用するための官能性部位の量および配置を制御することが可能になる。この官能性部位は、共有結合または他の非共有結合的な力(当業者に明らかな、水素結合等)を介して機能剤と結合させるために用いることができる。官能基が存在しない場合は、封入は、溶解性の調整により捕捉を行うことによって単純に達成することができる。例えば、疎水性機能剤を親水性Aブロックおよび疎水性Bブロックを含むABブロックコポリマーと混合する場合、薬剤は、材料の疎水性のB相中に封入されることになるであろう。
【0067】
ブロック系の勾配を用いることによって制御された溶解性を有するポリマーを調製することが可能になり、それによって、ブロックコポリマーを送達を要する特定の機能剤向けに設計することが可能になる。また、ブロックセグメントの組成を用途に適合させることにより機能剤の放出を制御することも可能になる。例えば、Aが親水性(hydrophillic)でありBおよびCが親水性でないABCトリブロックコポリマーの場合、ポリマーを水に入れると、Aブロックの外層、Bブロックの中間層、およびCブロックのコアを有するミセルが形成されるであろう。機能剤がCブロックと最も親和性が高い場合は、主としてそこに留まるかまたは封入されるであろう。その放出を制御するためにBセグメントを用途に適合させることができる。機能剤はCセグメントの外に拡散するので、Bを通過しなければならない。薬剤をゆっくりまたは速やかに通過させるようにBを用途に適合させることができる。1つの方法は、B層の機能(functonal)剤に対する溶解性を単純に改変することである。
【0068】
したがって、ここに開示した発明の重要な利点は、対応するブロックコポリマーの特定の組成および構成を、送達を意図した機能剤に基づき相応に用途に適合させることが容易なことにある。
【0069】
放出制御の他の例は、結晶性ブロックセグメントを使用するものである。例えば、水性分散液およびミセル形成を可能にする親水性のAセグメントならびに機能剤と混和性を有する疎水性のBセグメントを有するABブロックコポリマーを用いる場合、ラウリルメタクリレートやステアリルメタクリレート等のモノマーを用いることによってBセグメントが結晶性になるよう用途に適合させてもよい。したがって、ポリマーを加熱して結晶性Bセグメントが溶融すると、機能剤は自由に拡散したり放出されることが可能になる。したがって、結晶化度が機能剤放出を制御するための手段となる。Bセグメントは、結晶性モノマーの混合物であってもよいし、溶融温度を効果的に用途に適合させるために一部非結晶性モノマーを含んでいてもよい。
【0070】
ブロックコポリマーは、分類1または2のポリマーで説明したように、L’MまたはL’FA結合を含む1つのセグメントと官能基を有しない第2ブロックとを有していてもよい。非官能性セグメントは、所望の送達媒体への溶解性が得られるように用途に適合させてもよい。
【0071】
両親媒性ブロックコポリマーの他の例は、BlocBuilder(登録商標)制御剤等のアルコキシアミンとモノマー(1)とを1対1の比率で温度制御下に反応させることによって達成される、(1)型のモノマーを1単位だけ含むものであろう。この材料は、反対側の末端にニトロキシド基を有するため、さらに第2モノマーと重合させることによってブロックコポリマーを生成させることができる。第2ブロックセグメントは、先に述べたように機能剤との結合またはその封入を可能にするブロックから構成されるであろう。
【0072】
分類1および2型のポリマーに関し説明したように、ブロックコポリマーの合成を実施する前にアルコキシアミンを機能剤または生理活性物質に結合させることも可能である。
【0073】
親水性ブロックセグメントに有用なモノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、メトキシエチルアクリレート、無水マレイン酸、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、N,N,ジメチルアクリルアミド、スチレンスルホネート、またはこれらの混合物が挙げられるであろう。疎水性ブロックセグメントに有用なモノマーの例としては、水素化もしくはフッ素化されたC1〜C24アルコールを含むアクリルおよびメタクリル酸のエステル、スチレン、ジエン、またはこれらの混合物が挙げられるであろう。疎水性モノマーを親水性ブロック中に使用してもよく、親水性モノマーが疎水性ブロック中に含まれていてもよい。
【実施例】
【0074】
これらの例は、NM−CRPから容易に調製される、本発明に従う有用なポリマーの種類の代表的なものである。これらの実施例は、当業者に明らかなように、包括的なものを意味するものではない。制御された構成を有する両親媒性ブロックコポリマーを一般的な手順に従い合成した。モノマー対開始剤濃度([M]/[I])を操作することにより目的の分子量を得た。したがって、[M]/[I]比を設定し、次いで、目的分子量に到達させるのに必要な所望の転化率まで重合を実施することにより目的の分子量を達成することができた。モノマー転化率は、ガスクロマトグラフィー(GC)分析により適宜観測した。未反応のモノマーをフラッシュデボリティゼーション(flash devolitization)させるかまたは抽出した。ポリマー実施例をそのまままたは溶液で実施した。使用した典型的な溶媒としては、ジオキサン、n−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、tert−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、トルエン、エチルベンゼン、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、エタノール、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、およびメチルエチルケトンが挙げられる。常圧または60psiまでの窒素圧力で重合を実施した。重合は、剪断能力を有するかまたは有しない標準的な重合容器内で実施したが、十分な混合能力があるものが好ましかった。
【0075】
一般的な手順としては、以下に一般的に説明するように、そして当業者に明らかなように、所望の最終ブロック組成に応じた様々な従来のモノマー付加およびポリマー単離手順により特定のジブロックコポリマー組成物を調製する。
【0076】
例えば、第1ブロック合成が完了した後に、析出技術によるかまたは残留モノマーを蒸発させることによって純粋な第1ブロックを単離し、次いで、第1とは異なる第2モノマー組成物を添加することによって純粋なブロックコポリマーが調製される。次いで、この第2モノマー組成物を重合させる。
【0077】
2種以上のモノマーの混合物を重合させることにより、所定のプロファイルを有するブロックコポリマーを合成した。この混合物は、例えば、残留した第1モノマーを蒸発させる前に第2モノマーを初期重合媒体に加えることにより得ることができ、あるいは複数種のモノマー混合物を第1ブロックとして重合させてもよいし、複数種のモノマー混合物を単離された純粋な第1ブロックに加えてもよい。
【0078】
純粋な勾配は、1種またはそれ以上のモノマーが他よりもより速く反応するモノマーの混合物から形成した。結果として得られたグラジエントポリマーは、ポリマー鎖の一端に反応性モノマー非常に凝集したものとなるであろう。
【0079】
第2ブロックが形成する間、第1ブロック由来の未反応のモノマーの反応を継続させることにより、グラジエントブロックコポリマーを形成した。したがって、A−Bブロックグラジエントコポリマーにおいては、Aブロックがまず最初に形成される。Bブロックのモノマーが添加されたら、未反応のAブロックモノマーを混合物中に留めて反応させることにより、Bブロック中にAブロックの勾配を有するA−Bブロックコポリマーが得られる。
【0080】
以下の実施例1、2、および3(各分類のポリマーの詳細な一実施例)および表1の結果を参照することにより、上述した本発明のコポリマーの合成をさらに例示する。当業者に明らかなように、本発明の他のコポリマーも類似の方法により調製することができる。
【0081】
【表1】

【0082】
ポリマーはいずれもBlocBuilder(登録商標)制御剤を用いて調製した。ブロックAは第1ブロックの合成に用いられるモノマーを示す。ホモポリマーまたはグラジエントコポリマーの場合は、第1ブロックが唯一のブロックである。ブロックBは、第2ブロック合成に用いられる主なモノマーを示すものであり、以下の実施例の合成に記載するように、末端ブロックは、第1ブロック合成から持ち越されるある程度の量のモノマーも含んでいてもいなくてもよい。相当量(>10wt%)の持ち越しモノマーがBブロック中に存在する場合は、おおよその重量百分率を示す。AおよびBブロックのおおよその数平均分子量(Mn)を示す。Mnの値は、出発時の[M]/[I]比率およびモノマー転化率の測定データから算出した。モノマーの転化率データが利用できない場合は、GPC Mnを用いた(標準PS基準)。ポリマーの分類(本文に記載)を最後の欄に示す。NMは未測定であることを示す。モノマーの略称は、MA=メチルアクリレート、MMA=メチルメタクリレート、EA=エチルアクリレート、S=スチレン、LMA=ラウリルメタクリレート、BA=ブチルアクリレート、MEA=2−メトキシエチルアクリレート、AA=アクリル酸、DMA=N,Nジメチルアクリルアミド、ZTAN=DuPontより供給されたフッ素化アクリレート、PEGa=ポリエチレングリコールアクリレート、PEGm=ポリエチレングリコールメタクリレートである。
【0083】
表1中のポリマーはいずれも以下の実施例1〜3の方法を用いて調製した。
【0084】
実施例1:アルコキシアミンBlocBuilder(登録商標)制御剤(iBA−DEPN)を用いてポリ(メチルアクリレート)−コ−ポリ(ポリエチレングリコールメタクリレート)−コ−ポリ(アクリル酸)のリビング第1ブロックターポリマーを調製した。ポリエチレングリコールメタクリレートはAldrichより供給されたものであり、平均Mnは475g/molである。BlocBuilder(登録商標)制御剤2.84g(7.4mmol)をメチルアクリレート40.7g(0.473mol)およびPEGメタクリレート28.8g(60.5mmol)およびアクリル酸4.5g(62.5mmol)に加えた。この混合物に窒素を10分間バブリングした後、250mLのガラス反応器に加えた。反応器を密閉して撹拌を開始した後、100℃で1時間加熱し、次いで115℃に昇温してさらに2時間加熱した。この時点でメチルアクリレートおよびアクリル酸の約60%がポリマーに転化し、PEGメタクリレートの約80%がポリマーに転化した。これは、Mnが約6.4kg/molであることに相当する。GPCによるPDIは1.2であった。
【0085】
実施例2:両親媒性ジブロックを形成するために、実施例1からのポリマー7.73gをメチルメタクリレート70.9g(0.709mol)と混合した。この混合物に窒素を10分間バブリングした後、250mLのガラス反応器に加えた。反応器を密閉して撹拌を開始し、107℃で80分間加熱した。この時点でメチルメタクリレートの約54%がポリマーに転化した。これは、Mnが約95.8kg/molであることに相当する。GPCによるPDIは2.0であった。
【0086】
実施例3:鎖末端に結合基Lを有する親水性コポリマーを形成するために、BlocBuilder(登録商標)制御剤0.77g(2.02mmol)をジメチルアクリルアミド10.05g(0.101mol)およびエチルアクリレート30g(0.30mol)に加えた。この溶液をマグネチックスターラーバーと一緒に小型のガラス瓶に挿入し、脱気した。次いでガラス瓶を115℃に加熱し、エチルアクリレートの約70%が転化するまで180分間反応させた。ジメチルアクリルアミドの転化率は75%に到達した。これは、Mnが約14.2kg/molであることに相当する。GPCによるPDIは1.3であった。
【0087】
本発明を説明してきたが、ここで請求項記載の発明およびその均等物を特許請求する。
【産業上の利用可能性】
【0088】
幅広い用途において、反応しやすい添加剤を分解から保護するとともにその放出を制御する(こうすることにより、必要な用途に応じてその性能が最適化されることとなる)ために、効果的な封入が必要とされている。本発明のポリマーを用いることにより、分子、生理活性分子、成分、または組成物(風味剤、香料、医薬品、病虫害防除剤等)、農薬(除草剤、殺菌剤、病虫害防除剤等)、染料、および他の多くのものとして定義される機能剤の送達を実施することができる。用途に適合されたブロックコポリマーにより、機能剤の安定化、濃縮、容易に輸送および加工される形態が可能となり、したがって、信頼性のある送達が行われるようになり、薬剤が所望の位置および時間に有益な性質を示すであろう。その用途としては、これらに限定されるものではないが、薬物の送達、農薬の送達、化粧料の送達、香料の送達等が挙げられる。
【0089】
本発明のポリマーに結合させることによって有用に修飾することができる生理活性物質としては、これらに限定されるものではないが、医薬品、ビタミン類、栄養素、核酸、アミノ酸、ポリペプチド、タンパク質、酵素、酵素補因子、ステロイド類、炭水化物、ヘパリン等の有機種、金属含有薬剤、受容体作動薬、受容体拮抗薬、受容体または受容体の一部、細胞表面分子、抗原、ハプテン、生体系内の部位に化合物を誘導することができるターゲッティング基(targeting group)、およびキレート剤(催眠剤や鎮静剤等)、精神賦活剤、精神安定剤、吸入剤、抗痙攣剤、筋弛緩剤、抗パーキンソン剤(ドーパミン拮抗薬(antagnonists))、鎮痛剤、抗炎症剤、抗不安薬(antianxiety drug)(抗不安薬(anxiolytic))、食欲抑制剤、偏頭痛薬、筋収縮剤、抗感染剤(抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、ワクチン)抗関節炎剤、抗マラリア剤、制吐剤、抗てんかん薬(anepileptics)、気管支拡張剤、サイトカイン、成長因子、抗癌剤、抗血栓剤、降圧剤、心血管薬、抗不整脈剤、抗酸化剤(antioxicants)、抗喘息薬、ホルモン剤(避妊薬、交感神経様作用薬、利尿剤、脂質調節剤、抗アンドロゲン剤を含む)、抗寄生虫剤、抗凝血剤、新生物(neoplastics)、抗新生物剤、血糖降下剤、栄養剤、および栄養補給剤、成長サプリメント(growth supplement)、抗腸炎症剤、ワクチン、抗体、診断用薬、および造影剤が挙げられる。生理活性物質としては、本発明のポリマーに結合させることにより有用に修飾することができる非常に多くのタンパク質および酵素も挙げられる。グリコシル化されたポリペプチドおよび合成的に修飾されたタンパク質も使用してもよい。タンパク質および酵素は、動物性原料、人体、微生物、および植物から誘導されたものであってもよく、遺伝子工学または合成によって製造してもよい。代表的なものとしては、例えば、各種インターフェロン等のサイトカイン(例えば、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、インターロイキン−2、およびインターロイキン−3)、インスリン等のホルモン、成長ホルモン放出因子(GRF)、カルシトニン、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、バソプレッシン、コルチコトロピン(corticortropin)放出因子(CRF)、血管作動性腸管ペプチド(VIP)、セクレチン、α−メラノサイト刺激ホルモン(α−MSH)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、コレシストキニン(CCK)、グルカゴン、副甲状腺ホルモン(PTH)、ソマトスタチン、エンドセリン、サブスタンスP、ダイノルフィン、オキシトシンおよび成長ホルモン放出ペプチド、腫瘍壊死因子結合タンパク質、成長因子(成長ホルモン(GH)、インスリン様成長因子(IGF−I、IGF−II)、β−神経成長因子(β−NGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、トランスフォーミング成長因子、エリトロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、血小板由来成長因子(PDGF)、上皮成長因子(EGF)等)、酵素(組織プラスミノーゲン活性化因子(t−PA)、エラスターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、ビリルビンオキシダーゼ、カタラーゼ、ウリカーゼ、アスパラギナーゼ等)、他のタンパク質(ユビキチン、インスリン分泌活性化タンパク質(IAP)、血清胸腺因子(STF)、ペプチド−T、トリプシン阻害剤等)、ならびにこれらの誘導体が挙げられる。生理活性物質には、本発明のポリマーと結合した場合に、水性または有機溶媒のいずれかに対する溶解性が向上することが期待できる小分子も含まれる。本発明の誘導体に結合した脂質およびリポソームも、血液中を循環する寿命が長くなることを期待することができる。本発明のポリマーは、薬物の様々な形態に結合させることによりプロドラッグを生成させることができる。多置換誘導体が結合した小分子薬は、溶解性、クリアランス時間、ターゲッティング、および他の特性が改変されることを期待することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能剤と、
前記機能剤と結合しているかまたはこれを封入している、用途に適合されたポリマーと
を含み、前記用途に適合されたポリマーが、ニトロキシド媒介制御ラジカル重合によって形成される、組成物。
【請求項2】
前記用途に適合されたポリマーが、官能性ポリエチレングリコールを含むポリマーであり、前記機能剤が、前記用途に適合されたポリマーに1種またはそれ以上の結合基を介して結合している、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記機能剤が、生理活性物質であり、前記用途に適合されたポリマーが、官能性ポリエチレングリコールを含むポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記用途に適合されたポリマーが、結合基を含む少なくとも1種の末端基を有する、官能性ポリエチレングリコールを含むポリマーであって、前記結合基が、重合開始剤として使用されるアルコキシアミンから誘導されたものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記用途に適合されたポリマーが、ポリエチレングリコールを含まない官能性ポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記用途に適合されたポリマーが、親水性単位、疎水性単位、またはこれらの混合物から選択されるモノマー単位を含む、ポリエチレングリコールを含まない官能性ポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記用途に適合されたポリマーが、ポリエチレングリコールを含まない官能性ポリマーであり、前記機能剤が、農薬、医薬品、または化粧料から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記用途に適合されたポリマーが、両親媒性ブロックコポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記両親媒性ブロックコポリマーが、グラジエントコポリマーである少なくとも1種のブロックセグメントを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記機能剤が、農薬、医薬品、風味剤もしくは香料、または化粧料から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記用途に適合されたポリマーが、結晶化させることができる少なくとも1種のブロックセグメントを含む両親媒性ブロックコポリマーであり、かつ前記機能剤が、封入されているが前記用途に適合されたポリマーとは共有結合していない、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
結晶化させることができる前記少なくとも1種のブロックセグメントが結晶化しており、かつグラジエントコポリマーである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記両親媒性ブロックコポリマーが、少なくとも1種の親水性ブロックセグメントおよび少なくとも1種の疎水性ブロックセグメントを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記用途に適合されたポリマーが、グラジエントコポリマーである少なくとも1種のブロックセグメントを含む両親媒性ブロックコポリマーであり、前記機能剤が、封入されているが前記用途に適合されたポリマーとは共有結合していない、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記用途に適合されたポリマーが、少なくとも1種の親水性ブロックセグメントおよび少なくとも1種の疎水性ブロックセグメントを含む両親媒性ブロックコポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記用途に適合されたポリマーの少なくとも1種のセグメントがグラジエントコポリマーであり、
前記機能剤が、疎水性であるかまたは水に不溶であり、かつ
前記機能剤が、封入されているが前記用途に適合されたポリマーとは共役結合していない、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記用途に適合されたポリマーが、ABCトリブロックコポリマーである、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
1種またはそれ以上のブロックセグメントがグラジエント型である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
ポリマーセグメントBおよびCの一方または両方が疎水性である、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
ポリマーセグメントBおよびCの少なくとも一方が、結晶化させることができる、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記疎水性ブロックセグメントが、結晶化させることができる、請求項14に記載の組成物。
【請求項22】
前記疎水性ブロックセグメントが、結晶化させることができ、かつグラジエントコポリマーである、請求項14に記載の組成物。
【請求項23】
機能剤と、前記官能基に結合した、用途に適合されたポリマーとを含む組成物の製造方法であって、前記用途に適合されたポリマーが、
開始アルコキシアミンを結合基を介して前記機能剤に結合させることによって反応性薬剤を形成する工程と、
前記反応性薬剤を少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーと反応させることによってポリマーセグメントを生成させる工程と、
場合により、その後、前記ポリマーセグメントをさらなる少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーと反応させることによってブロックコポリマーを生成させる工程と
を含むニトロキシド媒介制御ラジカル重合を介して形成される、方法。
【請求項24】
前記機能剤が、処理の最中にその場で前記用途に適合されたポリマーに結合する、請求項23に記載の方法。

【公表番号】特表2010−513556(P2010−513556A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543072(P2009−543072)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/087144
【国際公開番号】WO2008/079677
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(500307340)アーケマ・インコーポレイテッド (119)
【Fターム(参考)】