説明

ポリマーセメントモルタル製マンホール

【課題】 コンクリート製マンホールよりも引張性能や曲げ性能等に優れ、軽量で耐久性のあるポリマーセメントモルタル製マンホールを提供する。
【解決手段】 本発明のポリマーセメントモルタル製マンホール用部材は、ポルトランドセメント、細骨材、ポリマーエマルジョン、高性能減水剤、消泡剤からなり、セメントが100質量部、細骨材が100〜200質量部、ポリマーエマルジョンが固形分(有効成分)換算で5〜22質量部、高性能減水剤が1〜3質量部、消泡剤が0.2〜2質量部、水が16〜25質量部からなることを特徴とし、該部材同士を接着剤で結着することにより大型のポリマーモルタル製マンホールを製造することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設した電力ケーブル、情報通信ケーブル、光ファイバーケーブル等の中継・分岐を行うマンホールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブル、通信ケーブル、光ファイバー等のケーブルを地中に構築する場合、ケーブルを中継し、敷設作業や点検溝となるボックス型のマンホールやハンドホールが適宜間隔毎の中継点に設けられている。これらのマンホールやハンドホールは、通常上端に開口を有する箱型容器と、開口部を塞ぐ蓋と、パイプ状のソケット等から構成されている。
これらのマンホールやハンドホールは、側壁を貫通してケーブルをボックス内に導くための寸法精度の優れた貫通孔を所要量必要とするために、造形性に優れたコンクリート製やプラスチック製のものが使用され、生産性を高めている。
【0003】
プラスチック製マンホールやハンドホールは、熱硬化性合成樹脂とガラス繊維よりなる強化プラスチック(FRP)製で、軽量で耐熱性と耐衝撃性に優れている。
【0004】
コンクリート製マンホールやハンドホールは、プラスチック製と比較して、比較的安価で、耐久性、耐火性に優れるが、一方で、部材重量が大きく扱い難いことや、ひび割れを生じ易い欠点がある。特に、コンクリートの曲げ強度やせん断強度の観点から、部材断面をある程度大きくせざるを得ず、必然的に製品重量が大となり、大型マンホールにあっては、運搬や施工等において大きな機械力を使用しなければならない欠点を持っている。また、コンクリートが耐久性に優れているとはいえ、例えば、寒冷地において凍害対策を取るとしても、凍結融解による剥離の発生等、長期的な使用には課題が残る。
【0005】
さらに、コンクリート製マンホールは、コンクリート製マンホール用部材同士を継手やボルト等で結着してコンクリート製マンホールを製造するため、水漏れ防止対策等が必要となる。
【0006】
前述のようなコンクリート製品に由来する欠点を解決するために、レジンコンクリート製品が開発されている。
レジンコンクリートとは、骨材および充填材に結合材として不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、あるいはアクリル樹脂等の樹脂を加えたものであり、結合材としてセメントを用いたセメントコンクリートと比較して、引っ張り強さ、曲げ強さ、圧縮強さなどの強度が大きく、しかも、耐薬品性を有する上に、軽量である点等で優れている。
しかしながら、可?性が小さい、高価格である等の問題点がある。可?性を改善する方法として繊維補強材を併用したレジンコンクリート管の技術(例えば、特許文献1参照)等が提案されている。
【0007】
また、コンクリート製マンホールに於いては、比較的安価、耐久性・耐火性に優れる等のコンクリートの特性を保持しつつ、超高強度特性、高靭性、耐衝撃性、高耐久性を付与した技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)
【特許文献1】特開2002−293599号公報
【特許文献2】特開2001−218349号公報
【0008】
しかしながら、レジンコンクリート製品を製造するには、乾燥骨材を使用(絶乾状態で使用しないと強度低下をおこす)するため乾燥骨材専用の貯蔵サイロが必要であり骨材管理が煩雑である、危険物となる合成樹脂を含む多種にわたる樹脂材料を使用するため計量操作が危険・煩雑である、用途に応じて加熱養生が必要であり専用設備が必要(蒸気養生は使用できない)である、等の問題点が依然存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前述のコンクリート製マンホールやハンドホールの従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、コンクリート製マンホールやハンドホールよりも引張性能および曲げ性能に優れ、軽量で低価格であり、さらに止水性の良いポリマーセメントモルタル製マンホールを提供することを課題とする。
尚、ハンドホールは、マンホールに比べて小型のものをいうため、本願ではハンドホールもマンホールに含めるものとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、セメント、細骨材、ポリマーエマルジョン、減水剤および消泡剤を組み合わせることによって、コンクリート製マンホールよりも引張性能および曲げ性能に優れ、軽量で止水性の良いポリマーセメントモルタル製マンホール用部材を開発し、さらに蒸気養生を介して製造することができることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、ポルトランドセメント、細骨材のみからなる骨材、ポリマーエマルジョン、高性能減水剤、および消泡剤とからなることを特徴とするポリマーセメントモルタル製マンホールである(請求項1)。
そして、水セメント比が25%以下であることを特徴とする請求項1記載のポリマーセメントモルタル製マンホールである(請求項2)。
さらに、高炉スラグ粉末、フライアシュ、シリカヒューム、石灰石粉末、珪石粉末から選ばれる1種以上の粉末を添加することを特徴とする請求項1、および請求項2記載のポリマーセメントモルタル製マンホールである(請求項3)。
また、ポリマーエマルジョンがポリ(メタ)アクリル酸エステル系水溶性ポリマーであることを特徴とする請求項1、請求項2、および請求項3記載のポリマーセメントモルタル製マンホールである(請求項4)。
そして、ポルトランドセメントが早強ポルトランドセメントであることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、および請求項4記載のポリマーセメントモルタル製マンホールである(請求項5)。
【0012】
本発明によるポリマーセメントモルタル製マンホールは、次の方法によって製造することができる。
すなわち、本発明のポリマーセメントモルタル製マンホール用部材は、セメントが100質量部、細骨材が100〜200質量部、ポリマーエマルジョンが固形分(有効成分)換算で5〜22質量部、減水剤が1〜3質量部、消泡剤が0.2〜2質量部、水が16〜25質量部からなることを特徴とする。
さらに、該ポリマーセメントモルタル製マンホール用部材同士を接着剤で結着することにより大型のポリマーセメントモルタル製マンホールを製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、コンクリート製マンホールよりも引張性能、曲げ性能、止水性能、および耐久性に優れ、軽量なマンホールを提供できる。また、レジン製マンホールのように、乾燥骨材専用の貯蔵サイロや加熱養生用専用設備が不要となり、危険物となる合成樹脂を含む多種にわたる樹脂材料を使用しなくてもすむ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明のポリマーセメントモルタル製マンホールおよびその製造方法について説明する。
【0015】
本発明において用いられる結合材は、水硬性結合材であれば良く、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、混合セメント、エコセメント、特殊セメント等の何れでも良いが、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメントが好ましく、気中養生の場合は普通ポルトランドセメントおよび早強ポルトランドセメントが、蒸気養生の場合は早強ポルトランドセメントが特に好ましい。
【0016】
本発明に用いられる骨材は、細骨材のみである。該細骨材は、特に限定されるものではなく、通常コンクリート製品に使用される細骨材であれば良い。例えば、静岡県小笠産陸砂(表乾密度2.60g/cm3)が例示される。
【0017】
本発明におけるポリマーエマルジョンとしては、曲げ強度の発現からアクリル系エマルジョンとアクリル−スチレン系エマルジョンが好ましく、アクリル系エマルジョンがより好ましい。
該アクリル系エマルジョンは、(メタ)アクリル酸エステル単量体から選ばれる1種以上の単量体を含む単量体組成物を乳化重合して得ることができる。(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレートが好ましい。
本発明におけるポリマーエマルジョンの好ましい粒子径は50〜400nmであり、さらに好ましくは100〜200nmである。
また、本発明におけるポリマーエマルジョンの固形分としては、30〜70質量%であることが好ましく、さらに好ましくは45〜70質量%である。
さらに、本発明におけるポリマーエマルジョンの粘度は、200mPa・s以下が好ましく、100mPa・s以下がより好ましい。
【0018】
固形分が30質量%より小さいと、ポリマーエマルジョンに含まれる水量と細骨材に付着する表面水量だけで、ポリマーセメントモルタルの単位水量を上回る恐れがあるため、現実的ではない。粒子径が400nm以上になると、セメント粒子間の充填効果やボールベアリング効果が低減されるため、本発明の目的である高強度ポリマーセメントモルタルをつくる観点から適用されない。粘度が200mPa・s以上になると、練り上がりのポリマーセメントモルタルは粘性が高く、型枠への充填効果が悪くなり、均一なコンクリート製品が得られない。
【0019】
ポリマーエマルジョンの配合量は、セメント100質量部に対して固形分(有効成分)換算で5〜22質量部が好ましく、8〜14質量部がより好ましい。ポリマーエマルジョンの配合量がセメント100質量部に対して固形分(有効成分)換算で5質量部未満では、流動性が低下し、曲げ強度が低下するので、好ましくない。一方、ポリマーエマルジョンの配合量がセメント100質量部に対して固形分(有効成分)換算で22質量部を超えると、ポリマーの補強効果による曲げ強度の増加分よりも、セメント硬化体の占める量の減少による曲げ強度の低下分のほうが大きくなるため、ポリマーセメントモルタル複合体としての曲げ強度が低下し始める。
【0020】
本発明における高性能減水剤としては、通常コンクリートに用いられるAEでない高性能減水剤であれば何でもよいが、減水効果の高いものが望ましい。例えば、ポリカルボン酸エーテル系高性能減水剤が例示される。
【0021】
本発明における消泡剤としては、シリコーン系エマルジョンや特殊非イオン界面活性剤が例示される。一般に、セメントモルタル中にセメント混和用ポリマーエマルジョンを混入すると著しく発泡し、必要以上の空気連行を伴うため、緻密な高強度ポリマーセメントモルタル硬化体をつくるには、適当な消泡剤を添加する必要がある。消泡剤の添加方法としては、予めポリマーエマルジョンの製造時に添加してもよく、ポリマーエマルジョンの製造時に添加せずポリマーセメントモルタル練り混ぜ時に添加してもよく、また、ポリマーエマルジョンの製造時に一部添加し、ポリマーセメントモルタル練り混ぜ時にさらに添加することもできる。
【0022】
消泡剤の配合量は、セメント100質量部に対して0.2〜2質量部が好ましい。消泡剤の配合量がセメント100質量部に対して0.2質量部未満では、ポリマーセメントモルタルの連行気泡を十分に消すことができず、その結果、曲げ強度が低下するので、好ましくない。一方、消泡剤の配合量がセメント100質量部に対して2質量部以上になると、連行気泡の大部分がすでに消されているため、あまり効果がなく、不経済になる。
【0023】
また、ポリマーセメントモルタル製マンホールの部材同士の接着に使用される接着剤としては、特に限定されるものではなく、通常コンクリート部材同士の接着に使用されるものであれば良いが、特に好ましくはエポキシ樹脂系接着剤が良い。例えば、エポボンドEP−3(商品名、アオイ化学工業製)、EP40(商品名、セメダイン製)、ショーボンド♯101(商品名、ショーボンド建設製)、ボンドトップWG(商品名、アオイ化学工業製)等のエポキシ樹脂系接着剤が例示される。
【0024】
本発明のポリマーセメントモルタル製マンホールの部材同士を接着する場合、プライマーを使用しなくても十分な接着強度を確保することができるが、プライマーを使用する場合は、特に限定されるものではなく、通常コンクリート部材同士の接着の際のプライマー処理に使用されるものであれば良い。例えば、エポキシ樹脂系接着剤専用プライマーが例示される。
【0025】
次に本発明の配合について説明する。
セメントは、630〜1070kg/m3である。
細骨材は、1070〜1260kg/m3である。
ポリマーエマルジョンは、固形分(有効成分)換算で60〜140kg/m3である。
減水剤は、5〜20kg/m3である。
消泡剤は、3〜14kg/m3である。
水は、150〜190kg/m3である(ただし、ポリマーエマルジョン、高性能減水剤および消泡剤中の水分を含む)。
【0026】
次に、製造方法について説明する。
製造方法は、特に限定されるものではなく、通常のコンクリート製マンホールを製造する方法に準ずれば良い。
すなわち、上記配合になるように各材料を計量し、先ずセメントと細骨材とをミキサーに投入・攪拌(空練り)し、更にポリマーエマルジョン、水、減水剤、消泡剤を加えて練り混ぜる。そして該混練物を型枠内に鉄筋を配置した所定の型枠に充填し、該混練物のフレッシュ性状によって無振動締固め、振動締固め、又は加圧振動締固めの何れかを行い、蒸気養生後、脱型してポリマーセメントモルタル製マンホール用部材を製造する。
蒸気養生の方法としては、通常の方法に従えば良く、例えば、前置2時間、昇温速度20℃/時、65℃で3時間保持、その後自然放冷する方法が例示される。
尚、本発明のポリマーセメントモルタル製マンホール用部材の養生方法としては、蒸気養生以外の養生方法でも製造できるが、好ましくは蒸気養生が良い。特に水硬性結合材が早強ポルトランドセメントの場合は蒸気養生がより好ましい。
【0027】
次に、部材同士の接着面をディスクグラインダー処理やプライマー処理をした後、部材同士を接着剤で接着し、養生後、本発明で用いられるポリマーセメントモルタル製マンホールを製造することができる。
尚、小型のマンホール、即ちハンドホールを製造する場合は、ポリマーセメントモルタル製ハンドホール用部材を製造して、該部材同士を結着して一体化せずに、直接ハンドホールを製造しても良い。
【実施例1】
【0028】
ポリマーセメントモルタル製マンホール用部材およびポリマーセメントモルタル製マンホールの製造について説明する。
セメント:早強ポルトランドセメント
細骨材:静岡県小笠郡浜岡町産陸砂(表乾密度2.60g/cm3、FM2.75)
ポリマーエマルジョン:ポリ(メタ)アクリル酸エステル(固形分50%)
高性能減水剤:ポリカルボン酸エーテル系高性能減水剤
消泡剤:特殊非イオン界面活性剤
水:水道水
鉄筋:鋼棒
【0029】
配合(kg/m3)および製造
早強ポルトランドセメント801kg、細骨材(陸砂)1202kg、ポリマーエマルジョン176kg、減水剤17.6kg、消泡剤5.3kg、水53kgを、容量2立方メートルの2軸ミキサーを使用して練り混ぜ量1立方メートルで練り混ぜを行い、鉄筋を配置した所定の型枠に充填後、型枠振動機で微振動締固めを行い成型した。
その後、蒸気養生を行い、その条件は20℃で前置き2時間とし、20℃/時で昇温させ、65℃で3時間保持し、その後自然放冷させた。
蒸気養生終了後、脱型してポリマーセメントモルタル製マンホール用部材を製造した。
次に、部材同士の接着面をアセトンで油分などを拭き取った後、部材同士をパテ状の2液型エポキシ樹脂系接着剤で接着し、養生後、本発明で用いられるポリマーセメントモルタル製マンホールを製造した。
尚、この時得られた本ポリマーセメントモルタル製マンホールの寸法は、側版厚110mm、頂版/底版厚130mm、妻板厚120mmで、製品重量は9700kgである。
また試験用に供試体を作成し、試験材齢(14日)まで屋内に放置した。
【0030】
比較例1
普通コンクリート製マンホール用部材および普通コンクリート製マンホールの製造について説明する。
使用材料
セメント:普通ポルトランドセメント
粗骨材:茨城県岩瀬町産硬質砂岩砕石2005(表乾密度2.65g/cm3
細骨材:静岡県小笠郡浜岡町産陸砂(表乾密度2.60g/cm3、FM2.75)
高性能減水剤:ナフタリンスルホン酸ホルマリン高縮合物塩
水:水道水
鉄筋:鋼棒
【0031】
配合(kg/m3)および製造
普通ポルトランドセメント378kg、粗骨材989kg、細骨材826kg、高性能減水剤1.5kg、水168kgを、容量2立方メートルの2軸ミキサーを使用して練り混ぜ量1立方メートルで練り混ぜを行い、鉄筋を配置した所定の型枠に充填後、型枠振動機で振動締固めを行い成型した。その後、実施例1と同様の条件で蒸気養生を行い、普通コンクリート製マンホール用部材を製造した。
次に実施例1と同様の方法で、接着処理を行い、普通コンクリート製マンホールを製造した。
尚、この時得られた普通コンクリート製マンホールの寸法は、側版厚180mm、頂版/底版厚200mm、妻板厚140mmで、製品重量は14640kgである。
また試験用に供試体を作成し、試験材齢(14日)まで屋内に放置した。
【実施例2】
【0032】
実施1および比較例1で製造した各供試体を用いて曲げ強度試験(JIS A 1171-2000)、圧縮強度試験(JIS A 1108-1999)、引張強度試験(JIS A 1113-1999)、曲げ接着試験を行った。
尚、曲げ接着試験は、4×4×16cmの供試体を中央で切断し、切断面と反対側の面同士をアセトンで拭いた後、パテ状の2液型エポキシ樹脂系接着剤で接着し再度4×4×16cmとして曲げ試験を実施した。この際の接着層の厚さは1.5mmである。
【0033】
その各種試験結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
前述の結果より、本発明のポリマーセメントモルタル製マンホール用部材(実施例1)は、普通コンクリート製マンホール用部材(比較例1)より、曲げ強度、圧縮強度、引張強度、および曲げ接着強度が優れていることが解る。
特に、曲げ接着強度が普通コンクリート製マンホール用部材(比較例1)よりも優れているということは、接着剤による接着性も優れているということを表している。
【実施例3】
【0036】
実施例1および比較例1で製造した各部材を接着し、マンホールを製造した。
その各部材厚および製品重量を表2に示す。
【0037】
【表2】

【0038】
本表の結果より、本発明のポリマーセメントモルタル製マンホール(実施例1)は、普通コンクリート製マンホール(比較例1)よりも各部材厚は薄く、しかも製品重量は普通コンクリート製マンホールの66%である。また、前述の表1に示したように各強度は本発明のポリマーセメントモルタル製マンホールの方が優れている。
【実施例4】
【0039】
実施例1、および比較例1で製造した各供試体を用いて中性化促進試験および塩化物イオン浸透促進試験を行った。
中性化促進試験は、JISA 1171に準拠して行った。また、塩化物イオン浸透促進試験は、3%NaCL溶液に3日間浸漬、その後4日間乾燥状態に放置するのを1サイクルとし、4サイクル実施した。その結果を表3に示す。
【0040】
【表3】

【0041】
本発明のポリマーセメントモルタル製マンホール(実施例1)の中性化深さおよび塩化物イオン深さは0mmであり、物質の浸透に対する抵抗性が認められた。一方、普通コンクリート製マンホール(比較例1)は、中性化深さが5.3mm、塩化物イオン浸透深さが12.5mmであり、本発明のポリマーセメントモルタル製マンホールがこれらの抵抗性に対し、普通コンクリート製品より極めて優れた性能を有することが解る。
【実施例5】
【0042】
実施例1、および比較例1で製造した各供試体(10×10×40cm)を用いて300サイクル迄凍結融解試験を行った。
その結果を図1に示す。
【0043】
本発明のポリマーセメントモルタル製マンホール(実施例1)の空気量は3.4%であるが、相対動弾性係数は300サイクルにおいて95%以上で、スケーリングも認められず、充分な凍結融解抵抗性が認められる。これは、本発明のポリマーセメントモルタル製マンホールが低水セメント比であること、ポリマーが細孔を充填したためと考えられる。
一方、普通コンクリート製マンホール(比較例1)は、50サイクル迄で相対動弾性係数が60%以下となった。
【0044】
以上詳細に説明したように、本発明のポリマーセメントモルタル製マンホールは、水硬性結合材として早強ポルトランドセメントを使用した場合、大部分のコンクリート製品と同様に蒸気養生を介して製造することが可能である。
また、水硬性結合材として普通ポルトランドセメント及び早強ポルトランドセメントを使用した場合、本発明のポリマーセメントモルタル製マンホールは、気中養生でも製造可能である。
しかも、従来のコンクリート製品と比べて、圧縮強度が約2倍、曲げ強度が約3倍、引張強度と曲げ接着強度が約2倍と大きいため、薄肉化・軽量化することが可能である。さらに、中性化促進試験、塩化物イオン浸透促進試験、および凍結融解試験の結果にも認められるように、従来のコンクリート製品と比してはるかに耐久性にも優れている。
従って、本発明のポリマーセメントモルタル製マンホールを用いれば、軽量で耐久性あるポリマーセメントモルタル製マンホールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明のポリマーセメントモルタル製マンホール用部材(実施例1)、および普通コンクリート製マンホール用部材(比較例1)の凍結融解試験結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポルトランドセメント、細骨材のみからなる骨材、ポリマーエマルジョン、高性能減水剤、および消泡剤とからなることを特徴とするポリマーセメントモルタル製マンホール。
【請求項2】
水セメント比が25%以下であることを特徴とする請求項1記載のポリマーセメントモルタル製マンホール。
【請求項3】
高炉スラグ粉末、フライアシュ、シリカヒューム、石灰石粉末、珪石粉末から選ばれる1種以上の粉末を添加することを特徴とする請求項1、および請求項2記載のポリマーセメントモルタル製マンホール。
【請求項4】
ポリマーエマルジョンがポリ(メタ)アクリル酸エステル系水溶性ポリマーであることを特徴とする請求項1、請求項2、および請求項3記載のポリマーセメントモルタル製マンホール。
【請求項5】
ポルトランドセメントが早強ポルトランドセメントであることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、および請求項4記載のポリマーセメントモルタル製マンホール。


【図1】
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【公開番号】特開2006−37611(P2006−37611A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221671(P2004−221671)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【出願人】(391054143)株式会社イズコン (9)
【Fターム(参考)】