ポリマーフィルムの製造方法及び製造設備
【課題】減圧チャンバ内部の圧力変動を抑制し、フィルムの厚みムラを防止する。
【解決手段】流延ダイ36からバンド38にかけて形成されたドープの流出部51a近傍を第1及び第2減圧チャンバ61,62で減圧する。第2減圧チャンバ62の内部圧力について、|Pv|≦1.5|K|(ただし、K=(t×|P0 |)1/2 /100,P0 (Pa)は圧力設定値、Pv(Pa)は圧力実測値とP0 との差)とする。管67は、内径が70〜700mm、長さ30m以下、曲がり部数が15以下である。管67には振動減衰手段としての第1,第2拡張型消音器71,72と共鳴器型消音器73とを設け、第1拡張型消音器71の空洞部断面積と管67の中空部断面積との比を5〜500とする。これにより第2減圧チャンバ62と管67との内部空気圧変動を抑制し前記流出部51aの形状を安定させることができ、厚みムラのないフィルム52が得られる。
【解決手段】流延ダイ36からバンド38にかけて形成されたドープの流出部51a近傍を第1及び第2減圧チャンバ61,62で減圧する。第2減圧チャンバ62の内部圧力について、|Pv|≦1.5|K|(ただし、K=(t×|P0 |)1/2 /100,P0 (Pa)は圧力設定値、Pv(Pa)は圧力実測値とP0 との差)とする。管67は、内径が70〜700mm、長さ30m以下、曲がり部数が15以下である。管67には振動減衰手段としての第1,第2拡張型消音器71,72と共鳴器型消音器73とを設け、第1拡張型消音器71の空洞部断面積と管67の中空部断面積との比を5〜500とする。これにより第2減圧チャンバ62と管67との内部空気圧変動を抑制し前記流出部51aの形状を安定させることができ、厚みムラのないフィルム52が得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーフィルムの製造方法及び設備に関し、特に光学用途のポリマーフィルムを製造する方法及び設備に関する。
【背景技術】
【0002】
オプトエレクトロニクス分野に使用されるポリマーフィルムには、溶液製膜方法によって製造されているものが多くある。溶液製膜方法で製造されたポリマーフィルムは、溶融押出法で得られるフィルムに比べ、光学的等方性、厚み均一性に優れ、また、異物の含有率も低く、例えば、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、透明導電性フィルム等として利用される。中でも、セルロースアシレートフィルムは、透明性、適度な透湿性を有し、機械的強度が大きく、かつ、寸法安定性については湿度及び温度に対する依存性が低いことから、広く用いられているもののひとつである。溶液製膜方法はセルロースアシレート等のポリマー及び各種添加剤を溶媒によってドープにしたあと、このドープをダイから流延支持体へ流延し、自己支持性をもったところで流延膜を剥ぎ取って、これを乾燥工程で乾燥させてフィルムとするものである。流延支持体は連続して回転走行する金属ドラムあるいはバンドとされている。
【0003】
また近年では、上記のようなオプトエレクトロニクス分野の発達がめざましく、その素材のひとつとしてのポリマーフィルムに対しては、高機能化及び多機能化の要望が強くなっている。それに応じるために、ポリマーフィルムの薄膜化は必須となっている。溶液製膜方法においては、ダイから流延支持体にかけてのドープの近傍に減圧チャンバを設けて、そのドープの背面、つまり流延支持体の走行方向における上流側を減圧し、ポリマーフィルムの薄膜化を図ることが多い。また、溶融製膜方法においても、フィルムの薄膜化を図るために、ダイから押し出された溶融ポリマーを同様に減圧してフィルム製造することもある。
【0004】
しかし、フィルムの厚みが薄くなるほど、その製造は難しく、特に、厚みが均一となるように製造することが非常に困難となる。例えば、流延ダイから出てきたドープを減圧チャンバにより背面側から減圧した場合には、減圧チャンバ内部の圧力変動に伴いフィルムの厚みが変動してしまうという問題がある。このように生じる厚みムラは、フィルムの長尺方向に渡って周期的に現れるものが多く、特にフィルム厚みが100μm以下というように非常に薄い場合には、製品にとっての致命的欠陥となる。そして、この厚みムラを低減するために、流延ドープを希釈したり、流延支持体から剥離したフィルムの乾燥速度を落として、厚みの均一化を図る等の対策が講じられることもある。しかし、こうした方法により厚みムラを低減することはできるものの完全には解消できず、また、いずれの方法も、乾燥時間が長くなる方法であるので、製造効率の低下及び製造コストの増大につながるという問題がある。
【0005】
そこで、減圧チャンバを用いた溶液製膜方法においては、この厚味ムラを解消するための提案がなされており、例えば、減圧チャンバの幅方向の両端部から全幅に対して各0〜0.3倍の範囲の位置に減圧用の吸引配管の開口部を配設して、押出ダイの押出部の背部近傍の空気を吸引して減圧しつつ、ドープをダイから押し出す方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の方法は、減圧チャンバの構造を最適化することにより、フィルムの波状ムラを抑制するというものである。
【0006】
また、スリット状の口金から吐出された樹脂膜を、移動キャスト面(支持体面)に密着させ、キャスト面の移動とともに下流側に送るフィルムの製造方法において、二つ以上の吸引手段により、樹脂膜のキャスト面への着地点変動を抑えて密着度を向上させるという方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平6−155494号公報(第2−3頁、第1図)
【特許文献2】特開平10−272637号公報(第3−4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法によると、フィルムの面状故障の一部については、その発生を抑制することができるものの、フィルムの長尺方向に周期的に発生する厚みムラについては効果がない。また、特許文献2のように着地点上流側に減圧室をおくだけでは着地点変動を抑えることができず、逆に、減圧チャンバに接続している配管や減圧チャンバ等の内部圧力変動により、着地点変動が大きくなってしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ポリマーフィルムの製造方法において、ポリマーフィルムの長尺方向において周期的に発生する厚みムラを抑制することができるポリマーフィルムの製造方法及び設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、ポリマーが溶媒に溶解したドープ、または溶融した前記ポリマーを、走行する支持体の上にダイから流出させて前記支持体から剥がし、乾燥または冷却することにより所定の厚みt(単位;μm)のポリマーフィルムを製造する方法において、ダイから出された前記ドープまたは前記溶融ポリマーに関して支持体の走行方向における上流側を減圧機により減圧し、この減圧における圧力設定値をP0 (単位;Pa)、減圧されたときの圧力実測値と前記圧力設定値P0 との差を圧力変動値Pv(単位;Pa)とするとき、この圧力変動値Pv(単位;Pa)が、|Pv|≦1.5|K| (ただし、K=(t×|P0 |)1/2 /100)を満たすことを特徴として構成されている。
【0010】
前記減圧機が、所定の内部圧力とされる減圧チャンバとこの減圧チャンバの内部圧力を制御するための圧力制御部とを備えるとともに、減圧チャンバと圧力制御部とを接続するための管を備え、圧力制御部から減圧チャンバまでの管の曲がり部の数を、15以下とすることが好ましく、圧力制御部から減圧チャンバまでの管の長さが30m以下であることが好ましい。また、この管の内径が70mm以上700mm以下であることが好ましい。
【0011】
また、減圧チャンバの内部圧力を変動させる振動を減衰するための振動減衰手段が前記管に備えられることが好ましい。拡張型消音器と共鳴器型消音器との少なくともいずれか一方を前記振動減衰手段として用いることが好ましく、共鳴器型消音器と拡張型消音器とを併用することがより好ましい。そして、前記管の中空部の断面積をS1とし、前記拡張型消音器の長手方向に垂直な断面における空洞部の面積をS2とするとき、S2/S1の値が5以上500以下であることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、走行する支持体上にダイからポリマーを流出させて、前記支持体から剥がし、乾燥または冷却するポリマーフィルムの製造方法において、前記ポリマーを溶融した状態または溶媒に溶解した状態で前記ダイから流出させ、流出したポリマーの近傍を減圧機により減圧し、この減圧中におけるポリマー近傍の圧力の変動幅が所定範囲となるように、稼働中の前記減圧機に発生する振動を振動減衰手段により減衰させ、この振動減衰手段は前記減圧機に設けられる消音器であることを特徴として構成されている。
【0013】
このとき、前記消音器が、拡張型消音器であることが好ましい。また、前記振動により周期的に変動する前記圧力を測定し、この測定データを高速フーリエ変換により周波数分解して、周波数分解されたデータにおいて前記圧力が所定の値よりも大きな値を示す周波数をf(単位;Hz)とするとき、拡張型消音器の長手方向における長さL(単位;m)が、V/7f≦L≦V/2f(ただし、Vは大気中における音速であり、その単位はm/秒)であることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明は、ポリマーを流延するための流延装置と、流延された前記ポリマーを乾燥または冷却してポリマーフィルムを生成するための乾燥装置または冷却装置とを備えるとともに、流延装置が走行する支持体とポリマーを支持体上に流出するダイとを備えるポリマーフィルム製造設備において、前記ポリマーは、溶融した状態または溶媒に溶解した状態で前記ダイから流出され、このダイのポリマー流出口近傍を減圧するための減圧機を備え、この減圧機が、所定の内部圧力とされる減圧チャンバと減圧チャンバの内部圧力を制御するための圧力制御部とを有するとともに、減圧チャンバと圧力制御部とを接続するための管を備え、圧力制御部から減圧チャンバまでの管の曲がり部の数を15以下とすることを特徴として含んで構成されている。
【0015】
そして、圧力制御部から減圧チャンバまでの管の長さを30m以下とすることが好ましく、管の内径が70mm以上700mm以下であることが好ましい。また、減圧チャンバの内部圧力を変動させる振動を減衰するための振動減衰手段が前記管に備えられることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、走行する支持体上にダイからポリマーを流出させて前記ポリマーを流延する流延装置と、流延されたポリマーを前記支持体から剥がした後に乾燥する乾燥装置または冷却する冷却装置と、を備えるポリマーフィルム製造設備において、ポリマーは溶融した状態または溶剤に溶解した状態でダイから流出され、ダイから流出された前記ポリマーの近傍を減圧するための減圧機を備え、この減圧機は、ダイのポリマー流出口近傍に配される減圧チャンバとこの減圧チャンバの内部圧力を制御する圧力制御部とを有するとともに、減圧チャンバと圧力制御部とを接続して空気の流路となる管を備え、この管には、減圧チャンバの内部圧力を変動させる振動を減衰するための振動減衰手段が設けられていることを特徴として含んで構成されている。
【0017】
本発明の上記ポリマーフィルム製造設備においては、振動減衰手段が、拡張型消音器または共鳴器型消音器であること、あるいは、振動減圧手段としての消音器が複数備えられ、この消音器の少なくともひとつが拡張型消音器であり、他の前記消音器が共鳴器型消音器であることが好ましい。そして、前記管の中空部の断面積をS1とし、拡張型消音器の長手方向に垂直な断面における空洞部の面積をS2とするとき、S2/S1の値が5以上500以下であることが好ましい。
【0018】
さらに、上記ポリマーフィルム製造設備においては、前記拡張型消音器の長手方向の長さL(単位;m)が、予め求められた周波数値fに応じて、V/7f≦L≦V/2f(ただし、Vは大気中における音速であり、その単位はm/秒)の範囲とされ、前記周波数値fは、前記振動により周期的な変動を示す前記内部圧力の測定データを高速フーリエ変換により周波数分解し、この周波数分解されたデータにおいて内部圧力が所定値以上の値を示すときの値の任意のひとつであることが好ましい。
【0019】
さらに、前記長手方向長さがL1(単位;m)である第1の前記拡張型消音器と、前記長手方向長さがL2(単位;m)である第2の前記拡張型消音器とが直列に接続されて前記管に設けられ、L1とL2とが、L1=2n×L2(ただし、nは自然数)を満たすことが好ましい。
【0020】
また、前記拡張型消音器には、前記振動の伝搬方向と交差する方向に内部を仕切る仕切部材が備えられることが好ましく、前記拡張型消音器の長手方向の長さL(単位;m)と、仕切部材により形成された区画のうち少なくともひとつの区画の前記伝搬方向における区画長さLD(単位;m)とが、LD=(1/m)×L(ただし、mは2以上の自然数)を満たすことがより好ましい。また第1と第2との前記区画の前記区画長さをそれぞれLD1,LD2(単位;m)とするとき、LD1=2n×LD2(ただし、nは自然数)であることが好ましく、前記拡張型消音器における振動の入口と出口との二つの開放口のうち、いずれか一方の断面の中心線を延長した延長線が、他方の前記開放口の外部となることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のポリマーフィルムの製造方法により、減圧チャンバに至る配管及び減圧チャンバの各内部の空気圧振動を抑制し、減圧チャンバ内部の圧力変動が抑えられる。このため、流延ダイから流延支持体にかけて流出して形成される流出部(ビードと称されることもある。)の振動を抑えることができる。この結果、厚みムラのない良好なフィルムを得ることができる。また、得られたフィルム、特にポリマーをセルロースアシレートとした場合には、これを用いて光学特性に優れる偏光板と液晶表示装置とを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明の実施形態としての溶液製膜設備の概略図である。ただし、本発明は、図1に示される溶液製膜設備に限定されるものではない。溶液製膜設備10は、ドープ調製装置11と、流延装置12と、乾燥装置15及び巻き取り装置16とを有している。
【0023】
ドープ調製装置11は、攪拌槽21と、ストックタンク22と、濾過器25と、スタティックミキサ26と、第1〜第3ポンプP1〜P3と、流量調節バルブV1とを有している。第1及び第2供給元31,32はドープ調製装置11の第1攪拌槽21に接続しており、第3供給元33は濾過器25とスタティックミキサ26との間の送液ラインに接続している。
【0024】
流延装置12は、流延ダイ36と、バックアップローラ37と、バンド38とを備えてている。なお、流延ダイ36の近傍には減圧チャンバが設置されているが、図1では図示を省略し、別の図を用いて後で詳しく説明するものとする。また、乾燥装置15は、テンター41と、ローラ乾燥機42とを備えており、巻き取り装置16には、カッタ45及び巻き取り部46とが備えられている。なお、溶液製膜設備10には、支持用あるいは搬送用のローラ47が必要に応じて適宜配され、これらのローラ47がポリマーフィルム52を支持、あるいは搬送する。図1においては、煩雑さを避けるために、用いたローラのうち、一部のみを図示している。
【0025】
フィルム52の主成分としてのポリマーは第1供給元31から、ドープの溶媒となる液体は第2供給元32から、それぞれ別の送液路により攪拌槽21へ供給される。ただし、ポリマーや溶媒等の原料の供給は別の容器で混合された後、攪拌槽21へ送られてもよい。また、ポリマー以外の固形分がこの混合液に添加されてもよい。そして、紫外線吸収剤や微粒子等の各種添加剤は、第3供給元33から必要に応じて供給される。ただし、これらの各種添加剤の添加のタイミングは限定されず、例えば攪拌槽21にて添加されてもよい。第1及び第2供給元31,32から攪拌槽21に送られたポリマーと溶媒とは、この攪拌槽21にて混合されて所定時間攪拌され、混合物として第1ポンプP1によりストックタンク22に送られる。ストックタンク22において混合物は静置脱泡される。これにより、流延ドープ51中の気泡量を低減し、フィルム52への気泡混入を防止することができる。
【0026】
混合物は、第2ポンプP2により濾過装置25へ送られて、未溶解物やゴミ等の異物が除去される。ストックタンク22から濾過装置25への混合物の送液量は、濾過装置25における濾圧や製膜速度を考慮してバルブV1により制御される。ただし、第2ポンプP2とバルブV1とを定量ポンプに代えて、混合物の流量を制御しながら送液してもよい。続いて、混合物と第3供給元33からの添加剤等とは、スタティックミキサ26でインライン混合され、流延ドープ51となって流延ダイ36に至る。
【0027】
流延ドープ51は、バックアップローラ37により支持されて連続走行されるバンド38上に流延ダイ36から出されることにより流延される。バックアップローラ37には駆動制御手段(図示せず)が備えられており、この駆動制御手段によりバックアップローラ37の回転速度が制御されて、バンドは所定速度で搬送される。流延された流延ドープ51はバンド上で流延膜となり、この流延膜は、バンド38上で走行する間に自己支持性をもつようになる。なお、流延支持体としては、バンド38に代えてドラムを使用することもあるが、本実施形態において図示は省略する。
【0028】
自己支持性をもった流延膜は、フィルム52としてローラにより剥ぎ取られてさらに下流の工程へ搬送される。剥ぎ取れらたフィルム52は、テンター41に送られ、ここで、幅を規制されたり延伸されながら、乾燥される。テンター41では、複数備えられたテンタークリップ(図示せず)が、フィルム52の両側端部を保持しながらテンター軌道(図示せず)に従って走行し、このテンタークリップの走行によりフィルム52は搬送される。テンタークリップの代わりにピンクリップ等を用いる場合もある。そして、テンタークリップは、コントローラ(図示せず)により開閉を自動制御され、この開閉によりフィルム52の保持と保持解除とを制御する。フィルム52を保持したテンタークリップは、テンター41の内部で走行し、その出口付近の所定の保持解除点に到達するとクリップを開放してフィルム52の保持を解除するように自動制御される。
【0029】
テンター41のフィルム52は、支持あるいは搬送用のローラ47により次工程であるローラ乾燥機42へ送られて、ここで複数のローラ42aにより支持あるいは搬送されながら十分に乾燥される。十分に乾燥された後のフィルム52は、カッタ45により両側端部を切断除去され、製品として巻き取り部46で巻き取られる。
【0030】
次に、流延装置における流延工程について、図2及び図3を参照しながら説明する。図2は、流延装置12の要部を示す概略図であり、図3は流延ダイ36及びバンド38の周辺の一部断面を含む側面図である。以降の説明においては、流延ダイ36から出た流延ドープ51がバンド38に接する位置を流延開始位置PSと称する。そして、流延ダイ36の先端リップ部から流延開始位置PSに至る流延ドープ51を流出部51aと称するとともに、バンド38の上に流延された状態にある流延ドープ51を流延膜と称してこれに符号51bを付す。図2に示すように、バンド38の走行方向における流延ダイ36の上流側には、第1及び第2の減圧チャンバ61,62が設置されている。第1減圧チャンバ61は、第2減圧チャンバ62の上流側に設置されており、第2減圧チャンバ62より大型のものとされている。第2減圧チャンバ62は、流延ダイ36からバンド38へかけて形成された流出部51aの背面側近傍に配されている。また、第1減圧チャンバ61は、空気の吸引部の先端の一部が第2減圧チャンバ62とバンド38との間に入り込むように備えられており、第2減圧チャンバ62の背部に位置する。
【0031】
第2減圧チャンバ62には、減圧ファン63と減圧ファンの63の回転数を制御するためのコントローラ64とからなる減圧制御部66が接続されている。そして、第2減圧チャンバ62により流出部51aの背面近傍の圧力を制御できるように、減圧ファン63の回転数を制御する。なお、図2において、第2減圧チャンバ62と減圧ファン63とを接続して空気が流動するための管を符号67で示す。この管67には、第1と第2の拡張型消音器71,72と共鳴器型(サイドブランチ型)消音器73とが減圧ファン63側から直列に配されている。なお、第1減圧チャンバ61にも減圧ファン及びコントローラが第2減圧チャンバと同様に接続されているが、図2では図示を省略する。
【0032】
第1減圧チャンバ61は、減圧ファン(図示なし)により内部の空気を吸引されて減圧状態となる。また、第2減圧チャンバ62も減圧ファン63により内部の空気を吸引されて減圧状態となる。そして、減圧制御部66により、第2減圧チャンバ62の内部の減圧度が制御される。このように、流出部51aの背面側は効果的に減圧され、流延膜51bがバンド38の上に形成される。ただし、本発明は、上記のような減圧チャンバ61,62の形態、台数等に限定されない。
【0033】
流延に際しては、通常、第2減圧チャンバ62の内部の減圧度は、少なくとも流延ドープ51の種類及び性状、流延速度と、目的とするフィルム厚みt(単位;μm)に応じて設定される。しかし、第2減圧チャンバ62内部の圧力は、流延中に変動してしまい、この圧力変動は流延装置12において発生するさまざまな振動に起因している。そして、光学用フィルムとしての優れた光学特性を発現するために必要な厚み精度は、製造するフィルムの厚みに応じて設定することが可能であるとともに、上記圧力変動の大きさの許容値をその厚みに応じて設定することができるということが本発明者らの検討によりわかった。圧力変動を引き起こす振動としては、例えば、流延ダイ36に流延ドープ51をポンプ等により送液する際の送液振動や、バックアップローラ37の回転振動や、減圧ファン63の運転振動等がある。このような振動があると、流出部51a自体に揺れが生じたり、この揺れにより流延開始位置PSが変動する他に、第2減圧チャンバ62と近接する部材または装置等と第2減圧チャンバ62との隙間の間隔が変動してしまい、このために内部の空気圧が変動する。このような空気圧変動の中には周期的な変動が含まれており、以下の説明においてこのような周期的変動については空気圧振動と称することがある。なお、第2減圧チャンバ62との間で形成される隙間としては、例えば、バンド38との間と、流延ダイ36との間、流出部51aとの間とがある。また、本実施形態においては、流出部51a及び流延膜51bの近傍は窒素等の不活性ガス雰囲気とされているので、例えば第2減圧チャンバ62の内部における上記圧力変動及び空気圧振動とは、不活性ガスの圧力変動及び圧力振動である。
【0034】
ここで、第2減圧チャンバ62の内部の圧力設定値をP0 (単位;Pa)とし、流延中の内部圧力の変動値(以降、圧力変動値と称する)をPv(単位;Pa)とする。この圧力変動値Pvとは、つまり、流延中における圧力実測値Pmと圧力設定値P0 との差である。そして、圧力変動値の絶対値|Pv|が小さいことは圧力設定値P0 に近い値であることを意味し、|Pv|が一定であることは圧力の変動がないことを意味する。本発明では、圧力変動値Pvが、以下の式(1)を満たすものとする。なお、以下の式(1)において、tは乾燥された後のフィルム52、つまり製品フィルムの厚みを示しており、単位をμmとしたときの値である。
|Pv|≦1.5|K| (ただし、K=(t×|P0 |)1/2 /100とする。)・・・(1)
【0035】
式(1)を用いることにより、圧力変動値Pvをどの程度に抑制すると光学用途に好適に使用することができるかということを、製造するフィルムの厚みt(μm)により設定することができる。したがって、従来は、ローラ乾燥機42を経た後のフィルムの厚みを実際に測定し、この測定データに基づき、流延工程における条件制御等を実施する必要があり、その条件が安定化するまでの原料ロスが大きかったが、これに対し本発明によると、流延工程での圧力変動値の許容範囲を、製造するフィルム52(図1参照)の厚みに応じて設定して、この設定値となるように圧力の変動を抑制する対策を講じるとよいので、厚みムラのない光学特性に優れたフィルムを効率的に製造することができるとともに、条件安定化までの上記原料ロスが抑制される。
【0036】
また、管67は第2減圧チャンバ62に接続しているために、本発明では、管67の内部圧力も、第2減圧チャンバ62の内部圧力と同等となる。したがって、管67の内部圧力の変動も、第2減圧チャンバ62の圧力変動値Pvと同じ条件となるように制御されることが好ましい。なお、圧力変動値Pvの測定方法については、後述するものとする。
【0037】
この圧力変動値Pvの絶対値|Pv|が1.5|K|よりも大きいと、流出部51aの揺れが大きすぎて、厚みムラが発生するので不適である。圧力変動値Pvの絶対値|Pv|については、これを0.5×|K|以下とすることがさらに好ましく、0.2×|K|以下とすることが特に好ましい。つまり、この圧力変動値Pvの絶対値|Pv|はゼロとすることが最も好ましいが実際には不可能であるので、1.5|K|以下の正の領域において小さいほど、つまり限りなくゼロに近いことが好ましい。
【0038】
次に、圧力変動値の絶対値|Pv|の制御方法について説明する。圧力変動値の絶対値|Pv|を1.5|K|以下とするためには、管67の内径を70mm以上700mm以下としたり、管67の長さを30m以下としたりすることが効果的である。ここで、管67の長さとは、第2減圧チャンバ62と減圧ファン63との間の長さである。なお、減圧ファン63とコントローラ64とを備える減圧制御部66に代えて、他の減圧制御部を用いた場合には、用いた減圧制御部と第2減圧チャンバ62との間の管を、上記内径及び長さとするとよい。そして、この管67は、装置構成の観点から通常は、図2の符号Aで示されるような複数の曲がり箇所(以降、ベンド部と称する)を有しており、このベンド部Aの数を15以下とするとより好ましい。
【0039】
管67の内径の好ましい範囲は、第2減圧チャンバ62の大きさや圧力設定値P0 等に応じて変わるものであるものの、幅が1000〜2000mm程度のフィルムを製造するときの減圧度(対大気圧値)が−10〜−1500Paであれば上記範囲は有効である。管67の内径が70mmより小さいと、風量に対して内径が小さくなりすぎてしまい管67内部の風速が大きくなりすぎてしまうので、管67の内部で振動が生じてしまうことがある。また、管67の内径が700mmより大きくすることは実際の工程としてそのスケールが大きすぎて現実的ではなく、もし700mmよりも大きくしたとしても、圧力変動値の絶対値|Pv|が1.5|K|よりも大きくなる場合が多いとともに、用いる減圧ファン63の運転制御能力によっては、小さな圧力変動に応じるための微小な制御を的確に行うことができなくなる。そして、この管67の内径は、100mm以上500mm以下であることがより好ましい。
【0040】
また、管67の長さを30m以下とすることにより、振動の発生自体を抑制する効果が大きいとともに、第2減圧チャンバ62及び管67の内部の圧力制御を迅速、かつ精緻に行うことができる。管67の長さを30mより大きくすると、管67の外部環境との接触面積が大きくなるために、様々な外乱が管67に作用する確率が高くなり、これが第2減圧チャンバ62を介して流出部51aに伝わり、厚みムラを発生することがある。前記外乱としては、例えば、流延装置12及びその周辺に備えられている各種駆動手段(図示せず)の稼働による、発生音を含める振動等が挙げられる。さらに、管67の長さを30mより大きくすると、コントローラ64により減圧ファン63の運転条件が制御されても、その制御により第2減圧チャンバ62の内部圧力が調整されるまでに要する時間が長くなってしまうという問題もある。この管67の長さは、15m以下とすることがより好ましい。
【0041】
そして、本発明では、ベンド部Aの数を15以下とすることにより第2減圧チャンバ62ならびに管67の内部における空気圧振動をより効果的に抑制することができる。これは、直線部分に比べてベンド部Aでは、空気の流れが乱れ、ベンド部Aの数が多いほど、空気圧振動の発生確率が高くなるという現象に着目した方法である。従って、ベンド部Aの数は少ないほど振動発生の低減に効果的であり、10以下とすることがより好ましく、5以下とすることがさらに好ましく、3以下とすると特に好ましい。
【0042】
また、本実施形態においては、空気圧振動を含む圧力変動の抑制効果を高めるための振動減衰手段として、第1及び第2拡張型消音器71,72と共鳴器型消音器73とが管67に備えられている。これにより、管67に生じている振動を減衰し、流出部51aへ伝わる空気圧振動を抑制することができる。したがって、圧力変動値Pvがいかなる値であっても、第2減圧チャンバ62の内部圧力が変動して、流動開始点の位置が変わってしまうような場合には、振動減圧手段を管67に設けることにより圧力変動を効果的に押さえる効果がある。振動減衰手段としては、取り付け操作の簡便性、入手の容易性、コストパフォーマンスの点で、公知のもののうち消音器が好ましい。なお、本発明では振動減衰手段とは、発生した振動を厳密な意味で減衰させるものだけでなく、振動を吸収するものや、あるいは振動を反射等により相殺するようなもの等まで含めて意味しており、本発明の以降の説明では、それらの機能、つまり振動減衰手段による作用を減衰または抑制と称することとする。
【0043】
振動減衰手段については、ひとつだけの使用でも効果があるが、本実施形態のように複数とするとより効果があり、すべての振動減衰手段を拡張型消音器としてもよいし共鳴器型消音器としてもよい。なお、拡張型消音器は、管67の長さが30m以内の範囲で一器以上使用することが好ましく、3台以上使用するとより好ましい。ただし、拡張型消音器と共鳴器型消音器とは、後述のような違いがあるため、その効果にも違いがあることから、いずか一方を用いるか両者を併用するかを圧力変動の測定データに基づき適宜選択するとよい。本実施形態では圧力変動の測定データを検討した結果、空気圧振動を含む圧力変動を総合的に抑制するために拡張型消音器と共鳴器型消音器とを併用している。そして本実施形態のように拡張型と共鳴器型とを併用する場合には、これらの相互位置関係は限定されるものではなく、例えば、第1,第2拡張型消音器71,72と共鳴器型消音器73との位置を逆にしたり、あるいは第1と第2との両拡張型消音器71,72の間に共鳴器型消音器73を配しても同様の効果が得られる。
【0044】
拡張型消音器と共鳴器型消音器とは、いずれも市販品として多くのものが流通している。拡張型消音器とは、自動車のマフラーに代表される消音器であり、管の断面積変化を有する構造が特徴であり、広い周波数領域において効果を発揮する。また、共鳴器型消音器とは、内部に振動の共鳴構造を有することが特徴であり、特定周波数で大きな効果を発揮する。
【0045】
以上に述べた2つの消音器は、いずれもリアクティブ型消音器と呼ばれる消音器の一種である。リアクティブ型消音器とは、管の音響インピーダンス変化を利用して音を発生源側に反射させる型式の消音器である。拡張型と共鳴器型の両者の構造をともに備えたものも市販されていて、本発明においても好ましく用いることができる。さらに、リアクティブ型消音器の他に、吸収型消音器と称される消音器もある。これは、ロックウールやグラスウール等の吸音材料により、音エネルギーの吸収効果を利用した消音器であり、本発明においてはこれらを用いても一定の効果は得られる。ただし、吸収型消音器は、低周波数領域に対する効果が、リアクティブ型消音器に比べ一般には劣るという性質がある。本発明においては、消音器としては特に限定されるものではないが、入手性と吸収する振動の周波数領域等の効果との観点から、各種消音器の中でも拡張型消音器と共鳴器型消音器とが最も好ましい。
【0046】
ここで、図2における管67のIV−IV線に沿う断面を図4に示すとともに、第1拡張型消音器71のV−V線に沿う断面を図5に示す。なお、第2拡張型消音器73の同断面は、第1拡張型消音器71と同様であるので、第2拡張型消音器73の断面の説明及び図示は略す。そして、図4における管67の中空部の断面積、つまりクロスハッチングで示されるエリアA1の面積をS1とするとともに、図5における第1拡張型消音器71の空洞部の断面積、つまりクロスハッチングで示されるエリアA2の面積をS2とする。面積S2については、第1拡張型消音器71の長手方向に垂直な断面における面積としている。第1拡張型消音器71において前記断面積S2が長手方向で変化している場合には、前記断面積S2は、長手方向における任意の箇所における値としてよい。なお、図5に示すように、第1拡張型消音器71の内部には第1仕切部材71cが設けられているが、これについては別の図面を用いて後で詳しく説明する。本実施形態においては、第1拡張型消音器71の面積S2を管67の前記面積S1で除した値である面積比S2/S1を、5以上500以下としている。この面積比S2/S1は、20以上300以下であることが特に好ましい。面積比S2/S1を5以上500以下とすることにより、衝突振動減衰、吸音減衰、位相差減衰、距離減衰等の空気圧振動の減衰の効果をさらに向上することができる。面積比S2/S1を500よりも大きくすると、装置が大きくなりすぎてしまうという問題があり、一方、S/S1を5未満とすると、上記のような空気圧振動減衰の効果が小さくなる。
【0047】
一方、本実施形態のように、共鳴器型消音器を振動減衰手段として用いる場合には、消音器の長手方向の長さを調整できるものを選択することが好ましく、その長さを調整することにより、空気圧振動の種類に応じて、問題となる周波数の振動を抑制することができる。共鳴器型消音器は、互いに異なる周波数の空気圧振動がいくつあるかにもよるが、管67の長さ30m以内において1台以上用いることが好ましく、3台以上用いることがより好ましい。
【0048】
上記方法により、多くの振動を抑制して第1減圧チャンバ61(図2,3参照)の内部の圧力変動の絶対値|Pv|を1.5|K|以下に制御することができる。しかし、前述のように圧力を測定してみると周期的な変動、つまり空気圧振動がまだみられることがある。そこで、本実施形態においては、この周期的な圧力変動を解析してみた。具体的には、周期的に変動する内部圧力の測定データを高速フーリエ変換(FFT)により周波数分解した。周波数分解されたこのデータは、すなわち、FFTによりパワースペクトラム(powerspectrum)で表現したデータである。この方法では、測定された内部圧力の測定データでは縦軸が内部圧力、横軸が時間であるが、FFTによるパワースペクトラムデータでは縦軸が同じく内部圧力であり横軸が周波数(Hz)となる。なお、このとき、内部圧力そのもののデータを直接高速フーリエ変換してもよいが、圧力変動値Pvまたはその絶対値|Pv|のデータを高速フーリエ変換することもでき、本明細書においては上記のうち|Pv|データを使った実施形態について説明する。そうすると、周波数分解された圧力変動値の絶対値|Pv|が特定の周波数にピークを示すデータが得られる。
【0049】
図6の(a),(b),(c)はいずれも圧力変動値の絶対値|Pv|と周波数との関係の概略を示す測定図であり、縦軸が圧力変動値の絶対値|Pv|、横軸が周波数f(単位;Hz)を示している。そして、図6の(a)は従来の製造装置及び方法である場合のデータであり、図6(b)は本発明の既に説明した方法を適用した場合のデータであり、図6(c)は後述する方法をさらに適用した場合のデータである。そして、いずれも、t≦80μmとした場合のデータである。
【0050】
図6(a)からわかるように従来法においては、全周波数領域において|Pv|が大きいが、これに対し図6(b)では周波数全領域でピークの数が減少し、全体的に|Pv|が小さくなっているとともに、|Pv|が概ね1.5|K|以下となるように制御されていることがわかる。したがって、本発明の既に述べた方法では、良好な厚み精度を達成し、そのためフィルムは良好な光学特性を発現する。しかし、図6(b)に示すように、既に述べた本発明の方法によっても、強度は大きくないものの|Pv|がピークとなって現れている周波数が確認されることがある。例えば、図6(b)においては、その周波数fの値とは80Hz,60Hz,40Hz,30Hz等である。したがって、圧力変動が周期的なものとして発生しており、空気圧振動があることがわかる。
【0051】
そこで、上記の特定の周波数80Hz,60Hz,40Hz,30Hzのピークを小さくするために下記に述べる方法を用い、この方法により図6(c)に示すようなデータを得ることができた。図6(c)では、図6(b)に見られた80Hz,60Hz,40Hz,30Hzの各ピークが小さくなってほとんど確認されず、すべての周波数領域において|Pv|が抑制されていることがわかる。以下に、図6(b)に確認されたような空気圧振動を抑制して図6(c)のような効果を得るための本発明について詳細に説明する。
【0052】
本発明では、上記のように、検出される数は少ないものの特定の周波数において現れる|Pv|のピークを選択的かつ効果的に減衰させるために、拡張型消音器を以下のような諸条件のものとしている。図7は、図2における VII− VII線に沿った断面図であり、図8は第1拡張型消音器71の断面図である。第1拡張型消音器71と第2拡張型消音器72とは、長さL1,L2が互いに異なるように調整されることもあるが、その基本構造については概ね同様である。第1及び第2拡張型消音器71,72には、図7に示すように、第2減圧チャンバ62側からの空気を吸引する吸引口71a,72aと、吸引した空気を外部へ出すための排出口71b,72bが備えられているとともに、内部を仕切る第1仕切部材71c,72cが備えられている。第1拡張型消音器71について、吸引口71aと排出口71bとは、一方の中心線C1,C2を延長したときにその延長線が他方に入らないように、長手方向の断面において対角の位置に備えられている。つまり中心線C1の延長線は排出口71bには入らず、そして、中心線C2の延長線は吸引口71aには入らないように、吸引口71aと排出口71bとが備えられている。この構成は第2拡張型消音器72も同様である。
【0053】
吸引口71a,72abと排出口71b,72bとの位置を、上記のように定めることにより、空気圧振動が第1及び第2拡張型消音器71,72により減衰させることができる確率を大きくすることができる。つまり、同一直線上に吸引口71a,72abと排出口71bc,72bとが備えられると、吸引口71a,72aから入ってきた振動がそのまま通り抜けて排出口71bc,72bから出てしまうが、上記のように吸引口71a,72aと排出口71b,72bとを配することにより、波長の異なるできるだけ多くの振動を第1及び第2拡張型消音器71,72により減衰させることができる。
【0054】
また、第1仕切部材71c,72cは、第1及び第2拡張型消音器71,72の内部を、隙間ができるように仕切っており、この隙間が空気の流路となる。そして、第1仕切部材71c,72cは、長手方向、つまり、吸引口71a,72aから入ってきた空気振動の伝搬路に交差するように備えられ、本実施形態においては、前記伝搬路に垂直な面を形成している。これにより、吸引口71a,72aから入ってきた空気圧振動が第1仕切部材71c,72cに反射して、この反射の波と入ってくる空気振動の波とが相殺しあうので、その結果、流出部51a(図2,3参照)等に伝わる空気圧振動が抑制される効果がある。
【0055】
さらに、第1拡張型消音器71は図8に示すように、第1部材75と第2部材76とをはめ合わせた構造とされている。第1部材75と第2部材76とは互いに(A)方向にスライドして、長手方向の長さL1が所定の長さとなるように位置決めされて固定部材77により固定される。そして、本実施形態では、第1拡張型消音器71の長さL1がV/7f≦L1≦V/2fを満たすように位置決めされて固定されている。ここで、Vは流延環境下の大気中における音速(単位;m/秒)を表し、fは図6のような|Pv|とその周波数との関係を示すデータにおいてピークが現れた周波数(単位;Hz)を表す。例えば図6におけるピークとは上記のような80Hz,60Hz,40Hz,30Hz等である。これにより、衝突振動減衰、位相差減衰することができるので、所定の周波数の空気圧振動を抑制して圧力変動値の絶対値|Pv|を小さくすることができる。ここで、周波数fは、確認されたピークのうちいずれかひとつとされるので、上記範囲とすることにより、その選ばれた周波数の振動が共鳴して発生するそれよりも大きい周波数の振動について減衰効果を得ることができる。したがって、L1を上記のように設定することにより、共鳴器型消音器と同じ効果を得ることもできる。
【0056】
L1がV/7f未満とすると、第1拡張型消音器71内部の距離が短すぎて距離減衰の効果がほとんどない。一方、L1がV/2fよりも大きい値とすると、低い周波数で振動が共鳴するために、この共鳴により振動が大きくなるという問題が発生することがある。そして、長さL1は、V/5f≦L1≦V/3fとするとより好ましい。なお、本実施形態においては、拡張型消音器の長手方向における長さをLとして上記のように規定したが、これは、第1の消音型消音器における吸引口及び排出口の位置を考慮したからであり、実質的には、振動が吸引口から入り込んだときの方向における長さである。この長さLの考え方については、本発明で用いた別の拡張型消音器を別の図面に示して後で詳しく説明する。
【0057】
また、本実施形態においては、第1拡張型消音器71と同様に第2拡張型消音器72についても、その長さL2がV/7f≦L2≦V/2fを満たすようにされており、これは、V/5f≦L2≦V/3fとするとより好ましい。なお、本発明においては、複数の拡張型消音器を用いた際には、そのいずれかひとつの長さLをV/7f≦L≦V/2fとすると上記のような効果があるが、本実施形態のようにすべての拡張型消音器について、この条件を満たすようにすると特に好ましく、これにより、所定の周波数の空気圧振動をより効果的に抑制することができる。
【0058】
また、その長手方向における各長さを互いに異なるものとした拡張型消音器を複数用いることにより、複数の周波数fにおける|Pv|の抑制効果を得ることができる。例えば、第1拡張型消音器71の長さL1を概ね2.1mとすることにより図6(b)のf=80Hzに見られた|Pv|ピークを小さくするとともに、第2拡張型消音器72の長さL2を1.5mとすることにより図6(b)のf=60Hzに見られた|Pv|ピークを小さくすることができる。
【0059】
また、第1拡張型消音器71の長さL1と第2拡張型消音器72の長さL2とがL1=2n×L2(ただし、nは自然数)となるように調整されると、第2拡張型消音器72により抑制される振動の2n倍の周波数の振動を第1拡張型消音器71により抑制することができる。また、これにより、第2拡張型消音器72で共振して発生した振動も第1拡張型消音器71で減衰することもできる。このように、|Pv|のピークが複数の周波数において現れたときには、複数の拡張型消音器を用いてそれぞれ別の周波数fに対応させるように長さLを決定することによりそれぞれのピークを抑制することができる。さらに、この方法によると、大型の共鳴器型消音器消音器を用いずに、拡張型消音器だけで、さまざまな周波数の振動に対応可能ともなる。
【0060】
また、本実施形態においては、第1仕切部材71cは、図8に示すようにスライド台71dの上に移動自在に取り付けられており、(B)で示される方向に移動して所定の位置に位置決めされる。第1仕切部材71cにより仕切られたことにより形成された第1及び第2区画D1,D2の長手方向における長さをそれぞれ第1区画長さLD1、第2区画長さLD2とする。そして、第1仕切部材71cの位置は、LD1≦(1/m)×L1とLD2≦(1/m)×L2との少なくともいずれか一方を満たすように位置決めされて固定されている。ここで、mは2以上の自然数を表し、Vは上記と同様に、流延環境下の大気中における音速(単位;m/秒)を表し、fは図6のような圧力変動データをFFTによりパワースペクトラムデータとして表した際に確認されたピークのうち任意のピークの周波数(単位;Hz)である。これにより、所定の周波数の振動エネルギーを熱エネルギーに変えて抑制し、|Pv|を減じることができる。ここで、周波数fは、確認されたピークのうちいずれかひとつとされるので、上記範囲とすることにより、その選ばれた周波数の振動が共鳴して発生するそれよりも大きい周波数の振動について減衰効果を得ることができる。
【0061】
第1仕切部材71cの位置を上記のように設定することにより、第1拡張型消音器71の長さL1の設定による振動抑制周波数fの(1/m)倍の周波数についても、その振動を抑制させることができる。例えば、上記のようにL1を所定の値に設定することによりf=80Hzの振動を抑制させたときであって、LD1とLD2との少なくともいずれか一方を(1/2)×L1としたときには、f=40Hzにおける|Pv|のピークを抑制させることができる。また、この例においては、第1仕切部材71cの面積を変えることにより、80Hzのピークの抑制効果と40Hzのピークの抑制効果との関係を調整することができる。具体的には、40Hzよりも80Hzのピークを重点的に抑制したいときには第1仕切部材71cの面積を小さめにし、また、80Hzよりも40Hzのピークを重点的に抑制したいときには第1仕切部材71cの面積を大きめにするとよい。
【0062】
もし、長さLを変えることができない拡張型消音器を用いるときには、その長さLの変更設定に代えて、上記のような仕切部材をその消音器に設けてその仕切部材によって形成された区画の長さLSをV/7f≦LD≦V/2fとするとよく、この方法を本実施形態において適用しようとするときには、各区画長さLD1,LD2は、V/5f≦LD1≦V/3fとV/5f≦LD2≦V/3fとするとより好ましい。
【0063】
また、本実施形態においては、第1拡張型消音器71と同様に第2拡張型消音器72についても、その区画長さが設定されており、例えば、L2を所定の長さとすることによりf=60Hzの|Pv|ピークを減衰させるときであって、仕切部材を1枚設けて区画長さLDのうち少なくともいずれか一方を(1/2)×L2としたときには、f=30Hzにおける|Pv|のピークを減衰させることができる。
【0064】
また、本実施形態では、第1拡張型消音器71の第1と第2との各区画長さLD1,LD2が、LD1=2n×LD2(ただし、nは自然数)となるように調整される場合もある。この方法により、第2区画D2において減衰される振動の2n倍の周波数の振動を第1区画D1で減衰することができるようになる。また、これにより、第2区画D2で共振して発生した振動も第1区画D1で減衰することもできる。
【0065】
図9は、上記実施形態における第1拡張型消音器に代えて用いた第3拡張型消音器81の断面図である。第3拡張型消音器81は、第1及び第2拡張型消音器71,72と同様に、互いに(A)方向にスライドする第1部材85と第2部材86とを有し、これらの位置決めにより、長手方向の長さL3が設定される。また、内部には、第1及び第2の仕切部材81c、81eとがそれぞれスライド台81d、81fの上に移動自在に取り付けられている。これらの仕切部材81c、81eにより、内部には3つの区画D1〜D3が形成されている。この第3拡張型消音器81では、第1〜第3の区画長さLD1〜LD3について、LD1=2n×LD2、LD1=2n×LD3(ただし、nは自然数)となるように調整されている。
【0066】
圧力変動値Pvのピークが複数の周波数において現れたときには、図9に示すように、複数の仕切板を設けて3つ以上の区画を形成して、それぞれ別の周波数fに対応させるように各区画長さLSを決定することによりそれぞれのピークを抑制することができる。
【0067】
図10,図11は、本発明のさらに別の実施形態を示しており、第1〜第3の拡張型拡張型消音器に代えて用いることができる別の拡張型消音器の断面図である。ただしこれらの図10,図11では、図の煩雑さを避けるために細部の図示は略す。図10に示す第4拡張型消音器91は、長手方向に垂直な向きに吸引口91aと排出口91bとが備えられている。この場合には、前記長さL4を長手方向における長さとせずに、前述したように、吸引口91aからの振動の伝搬方向における長さとする。また、図11に示す第5拡張型消音器95は、吸引口95a、排出口95bとは第1〜第3拡張型消音器と同様の位置に備えられているが、第1仕切部材95cと第2仕切部材95eとの位置関係が第1〜第3拡張型消音器とは異なる。つまり、第1仕切部材95cと第2仕切部材95eとは、ともに長手方向に複数の区画を形成するように仕切っているが、それらの取り付け位置は互いに対向する面となっている。以上のような第4,第5拡張型消音器を用いても、第1〜第3拡張型消音器と同様の効果を得ることができる。
【0068】
また、本実施形態のように、溶液製膜方法によるフィルム製造においては、第2減圧チャンバ62ないし管67の内部における減圧度は、大気圧を基準値ゼロとしたとき、−10Pa〜−2000Paとすることが好ましい。特に製造するフィルムの厚みが薄いほど、上記範囲内においてできるだけ減圧度を大きくすることが好ましい。
【0069】
以上のように、本発明により、第2減圧チャンバ62ならびに管67の内部における空気圧振動ならびに圧力変動を抑制することができる。ここで、圧力変動の測定について説明する。既に説明したように、本実施形態においては、まず、第2減圧チャンバ62の内部の空気圧を市販の圧力計にて測定する。次に、この測定結果を高速フーリエ変換(FFT)して周波数分解することにより圧力変動が解析される。本実施形態においては、圧力計としてST研究所製のSpecial transducerを使用し、圧力変動データの解析、つまりFFT処理には、ONO SOKKI社製のMULTI CHANNEL DATASTATION DS−9110を用いた。ただし、本発明では、圧力変動の測定方法は上記方法に限定されるものではなく、公知の圧力変動解析手段により求められてもよい。本発明によると、全周波数領域において、圧力変動値の絶対値|Pv|が小さく、特に、概ね30〜50Hzの周波数領域においては従来法に比べ|Pv|が非常に小さくなり、効果が大きい。
【0070】
また、本実施形態においては、流出部51a(図2,図3参照)に対する減圧効果のほとんどは第2減圧チャンバによるものであることが予め確認されていたので、内部の空気圧振動の制御対象を第2減圧チャンバのみとしたが、これに加えて第1減圧チャンバを制御対象とするとさらに効果が向上する。例えば、第1減圧チャンバ61の内部圧力の変動値Pv(単位;Pa)の絶対値|Pv|を1.5|K|以下とするために、第1減圧チャンバとその減圧ファンとを接続する配管の内径を70mm以上700mm以下とし、その配管のベンド部を15箇所以下としたり、その配管の長さを30m以下とし、配管に消音器を備えること等が好ましい。さらに、減圧チャンバを1台のみ設置する場合には、その1台につき、本実施形態の第2減圧チャンバの場合と同様に、空気圧振動を制御することが好ましい。このように、本発明は、設置する減圧チャンバの台数には依存しないが、少なくとも、流出膜に最も近い位置に設置した減圧チャンバにつき、空気圧振動を制御することが好ましい。
【0071】
本発明の製造方法において、ポリマー成分としては、セルロースアシレートが好ましく、中でもセルロースアセテートが特に好ましい。セルロースアシレート以外のポリマーであっても、ポリマー及びその前駆体が溶媒によってドープとなり、溶液製膜をすることができるものであれば本発明における溶液製膜には適用されるし、また、周知の溶融押出によりフィルムを形成することができるポリマーも適用される。例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、塩素化ポリエーテル、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルホン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)等を例示することができる。さらに、以上のような各種ポリマーをそれぞれ単独で使用しても、あるいは複数を混合して使用しても本発明に適用可能である。また、本発明はドープまたは溶融状態とされるポリマーの形状等の様態について限定するものではなく、例えば、粉体やペレット等であってもよい。
【0072】
本発明において、溶液製膜によりフィルムを製造する場合にはドープに使用する溶媒を限定するものではなく、公知の各種溶媒を用いることができる。例えば、ジクロロメタンやジクロロメチレン等のハロゲン含有有機化合物の他に、メチルアルコールやエチルアルコール、n−ブチルアルコールなどのアルコールや酢酸メチル、酢酸エチル等の各種エステル系化合物やアセトンなど非塩素系有機化合物や、水を使用することができる。
【0073】
本発明は、上記のように、溶液製膜のみならず溶融製膜にも適用することができる。つまり、周知の溶融押出ダイから流出部(押出部)として溶融ポリマーを押し出す際に、その流出部の振動を抑制する等のために、押し出された溶融ポリマー近傍を減圧する場合には、その減圧条件について、上記と同様の条件とすることが効果的である。なお、溶融製膜の場合には、図1に示す溶液製膜設備における乾燥装置15を冷却装置に代え、フィルム状に押し出されたポリマーを所定の冷却条件により冷却する。この冷却は自然冷却とされることもある。そして、冷却中あるいは冷却後には延伸機等でフィルムを所定方向に延伸することもある。
【0074】
さらに、本発明により得られたポリマーフィルムを偏光板保護膜として良好に用いることができる。偏光板は、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルムにより作製された偏光膜の両面に、上記の製造方法で得られたポリマーフィルムを保護膜として貼り合わせることによって得られる。偏光膜は、ポリビニルアルコール系フィルムを染色して得られるが、この染色方法としては、気相吸着法と液相吸着法が一般的でありどちらも適用することができるが、本発明においては液相吸着により染色を実施した。
【0075】
液相吸着による染色には、ここではヨウ素を用いるがこれに限定されるものではない。ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素/ヨウ化カリウム(KI)水溶液に、30秒以上5000秒以下の浸積時間をもって浸積した。このときの水溶液は、ヨウ素の濃度を0.1g/リットル以上20g/リットル以下とし、ヨウ化カリウムの濃度を1g/リットル以上100g/リットル以下とすることが好ましい。また、浸積時の水溶液の温度は5℃以上50℃以下の範囲に設定されることが好ましい。
【0076】
液相吸着方法としては、上記の浸積法に限らず、ヨウ素あるいはその他の染料溶液をポリビニルアルコールフィルムに塗布する方法や噴霧する方法など、公知の方法を適用してよい。染色を実施するのは、ポリビニルアルコールフィルムを延伸する前であっても延伸した後でもよいが、ポリビニルアルコールフィルムは染色を施されることにより適度に膨潤して延伸されやすくなることから、延伸工程の前に染色工程を設けることが特に好ましい。
【0077】
ヨウ素の代わりに二色性色素で染色することも好適である。二色性色素としては、アゾ系色素やスチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素、アントラキノン系色素等の色素系化合物を例示することができる。なお、水溶性の色素系化合物がもっとも好ましい。また、これらの二色性色素の分子中に、スルホン酸基やアミノ基、水酸基等の親水性官能基が導入されていることが好ましい。
【0078】
染色したポリビニルアルコール系フィルムを延伸して偏光膜を製造工程においてはポリビニルアルコールを架橋させる化合物を用いている。具体的には、延伸前工程もしくは延伸工程において架橋剤溶液にポリビニルアルコール系フィルムを浸積して架橋剤を含有させる。浸積する代わりに塗布してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムは、架橋剤の含有によって十分に硬膜化され、この結果、適切な配向が付与される。なお、ポリビニルアルコールの架橋剤としては、ホウ酸類がもっとも好ましいが、これに限定されるものではない。
【0079】
得られた偏光膜と本発明によるポリマーフィルムとの接着剤には、偏光膜と保護膜の接着に用いることができる公知の各種接着剤を用いている。中でも、アセトアセチル基やスルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等を有する変性ポリビニルアルコールを含むポリビニルアルコール系ポリマーやホウ素系化合物の水溶液が好ましい。この接着剤は、乾燥した後の厚みが0.01μm以上10μm以下となるように付与することが好ましく、0.05μm以上5μm以下となるように付与することがさらに好ましい。さらに、保護膜としてポリビニルアルコール層に付与したポリマーフィルム層の表面には、反射防止層や防眩層、滑り付与層、易接着層等を付与することができる。
【0080】
さらに、本発明にて得られたポリマーフィルム、特にセルローストリアセテートフィルム上に光学補償シートを貼付して、光学補償フィルムとして用いることもできる。前記の偏光板に反射防止層を付与した反射防止フィルムを得て、これを表面保護フィルムの片側として用い、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、または半透過型の液晶表示装置を得る。また、液晶表示装置の視野角を改良する視野角拡大フィルムなどの光学補償フィルム、位相差板等を組み合わせて使用することもできる。透過型または半透過型の液晶表示装置に用いる場合には、市販の輝度向上フィルム(偏光選択層を有する偏光分離フィルム、例えば住友3M(株)製のD−BEFなど)と併せて用いることにより、さらに視認性の高い表示装置を得ることができる。
【0081】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0082】
以下の配合比の固形分を、ジクロロメタン:メタノールが92:8の重量比率である溶媒と混合して静置脱泡した後、ポンプP2により濾過器25へ送って濾過して、流延ドープ51とした。流延ドープ51の固形分濃度は19.0重量%であった。
(固形分)
・セルローストリアセテート 100重量部
・トリフェニルフォスフェート 7重量部
・ビフェニルジフェニルフォスフェート 5重量部
【0083】
流延ドープ51を、流延ダイ36から流延した。バンド38の搬送速度は55m/分である。第2減圧チャンバ62における減圧度を制御しながら、流延した。管67の内径は100mmであり、長さは12mであって、ベンド部Aの数は8である。また、第1拡張型消音器71としては、S2/S1が30であるものを用い、第2拡張型消音器72としてはS2/S1が50であるものを用いた。そして、第1拡張型消音器71及び第2拡張型消音器72にはともに仕切部材は設けられておらず、前者の長さL1は3.5m、後者の長さL2は2.5mである。さらに、振動減衰手段として、共鳴器型消音器73も用いた。流延膜を剥ぎ取った後、乾燥させて巻き取り、厚み80μmのフィルム52を得た。
【0084】
|Pv|が表1に示す実施例1−1〜1−3のような各値となるように条件調整し、各場合について、周波数が3Hz以上の周期性をもって発生する厚みムラが0.3%未満であるときを◎、0.8%未満であるときを○、1.5%以上であるときを×として評価した。そして、この結果については、表1に示している。表1の設定減圧度は対大気圧値を示している。なお、フィルム52の厚みは、ANRITSU社製のFILM THICKNESS TESTER KG601を用いて測定した。
【実施例2】
【0085】
製膜して得られるフィルム52の厚みを60μmとした他は実施例1と同様に実施し、実施例2−1〜3とした。本実施結果については実施例1とともに表1に示す。
【実施例3】
【0086】
製膜して得られるフィルム52の厚みを40μmとした他は実施例1と同様に実施し、実施例3−1〜3とした。本実施結果については実施例1,2とともに表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
表1の結果によると、|Pv|が1.5|K|以下(ただし、|K|=(t×|P0 |)1/2 /100)であると厚みムラがほとんどなく良好なフィルムを得ることができ、|Pv|が0.5|K|以下のときには厚みムラがなく非常に良好なフィルムを得ることができることがわかる。
【実施例4】
【0089】
第2減圧チャンバ62の設定減圧度を対大気圧で−100Paとし、管67の内径を表2の実施例4−1〜3のように変えて圧力変動値Pvの絶対値|Pv|の平均値を実施例1と同様に求めた。第2減圧チャンバ62内部の空気圧変動が|Pv|が0.5|K|以下(ただし、|K|=(t×|P0 |)1/2 /100)の場合を◎とし、|Pv|が1.5|K|以下の場合を○とし、|Pv|が1.5|K|より大きい場合を×として、この結果についてを表2に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
表2の結果によると、管67の内径が50mmの場合には空気圧変動が大きくなりすぎ、また、管67の内径が80mmの場合には空気圧変動が抑制されて良好であることがわかる。さらに、管67の内径が100mmであると、空気圧変動は非常に抑制されることがわかる。
【実施例5】
【0092】
第2減圧チャンバ62の設定減圧度を対大気圧で−100Paとし、管67の内径を80mmとし、管67の長さを15mとして、ベンド部Aの数を表3の実施例5−1〜4のように変化させ圧力変動値Pvの絶対値|Pv|の平均値を実施例1と同様に求めた。第2減圧チャンバ62内部における|Pv|が0.5|K|以下(ただし、|K|=(t×|P0 |)1/2 /100)の場合を◎とし、|Pv|が1.5|K|以下の場合を○とし、|Pv|が1.5|K|より大きい場合を×として、この結果についてを表3に示す。
【0093】
【表3】
【0094】
表3の結果によると、ベンド数Aが20以上であると空気圧変動が大きくなりすぎて好ましくなく、15であると空気圧変動が抑制され良好であることがわかる。さらにベンド数Aが8のときには空気圧変動が極めて抑制されて非常に良好であることがわかる。
【実施例6】
【0095】
第2減圧チャンバ62の設定減圧度を対大気圧で−100Paとし、管67の内径を80mmとし、ベンド部Aの数を10として、管67の長さを表4の実施例5−1〜3のように変化させ圧力変動値Pvの絶対値|Pv|の平均値を実施例1と同様に求めた。第2減圧チャンバ62内部の空気圧変動が|Pv|が0.5|K|以下(ただし、|K|=(t×|P0 |)1/2 /100)の場合を◎とし、|Pv|が1.5|K|以下の場合を○とし、|Pv|が1.5|K|より大きい場合を×として、この結果についてを表4に示す。
【0096】
【表4】
【0097】
表4の結果によると、管67の長さ50mであると空気圧変動が大きくなりすぎて好ましくなく、25mであると空気圧変動が抑制され良好であることがわかる。さらに管67の長さが10mのときには空気圧変動が極めて抑制されて非常に良好であることがわかる。
【実施例7】
【0098】
第2減圧チャンバ62の設定減圧度を対大気圧で−100Paとし、管67の内径を80mmとし、管67の長さを15m、ベンド部Aの数を15とし、拡張型消音器の設置台数と共鳴型消音器の設置台数とを表5の実施例7−1〜5のように変化させ圧力変動値Pvの絶対値|Pv|の平均値を実施例1と同様に求めた。拡張型消音器と共鳴型消音器とを併用した場合には、その各台数にかかわらず、前者を上流側とし後者を下流側とした。第2減圧チャンバ62内部の空気圧変動について、|Pv|が0.5|K|以下(ただし、|K|=(t×|P0 |)1/2 /100)の場合を◎とし、|Pv|が1.5|K|以下の場合を○とし、|Pv|が1.5|K|より大きい場合を×として、この結果についてを表5に示す。
【0099】
【表5】
【0100】
表5の結果によると、拡張型消音器を使用しない場合には空気圧変動が大きくなりすぎて好ましくなく、また1台用いると空気圧変動が抑制され良好であることがわかる。さらに3台用いると空気圧変動が極めて抑制されて非常に良好であることがわかる。
【実施例8】
【0101】
第2減圧チャンバ62の設定減圧度を対大気圧で−100Paとし、管67の内径を80mmとし、管67の長さを15m、ベンド部Aの数を15とした。第1消音器71である拡張型消音器と管67との前記面積の比S2/S1を表6の実施例8−1〜3のように変化させ、圧力変動値Pvの絶対値|Pv|の平均値を実施例1と同様に求めた。第2減圧チャンバ62内部の空気圧変動が|Pv|が0.5|K|以下(ただし、|K|=(t×|P0 |)1/2 /100)の場合を◎とし、|Pv|が1.5|K|以下の場合を○とし、|Pv|が1.5|K|より大きい場合を×として、この結果についてを表6に示す。
【0102】
【表6】
【0103】
表6の結果によると、拡張型消音器と管67との内部の前記面積の比S2/S1が2のときは空気圧変動が大きくなりすぎて好ましくなく、また、6のときには空気圧変動が抑制され良好であることがわかる。さらに22の場合には空気圧変動が極めて抑制されて非常に良好であることがわかる。
【実施例9】
【0104】
実施例1−2の減圧度−200Paの場合において第2減圧チャンバ62の内部の圧力変動を測定し、FFT処理により周期的に現れる空気圧振動データを求めた。その解析データでは、|Pv|ピークの最大値が1.9であり、この値はf=80Hzに現れた。そこで、3.5mであった第1拡張型消音器71の長さL1を表7の実施例9−1〜9−5に示すような各長さに代えて、各長さL1毎に、80Hzにおける|Pv|ピークの値を求めた。なお、表7の評価結果欄においては、80Hzにおける|Pv|ピークの値が0〜0.25となったときを◎,0.25より大きく1.0以下となったときを○,1.0よりも大きいときを×として示す。
【0105】
【表7】
【0106】
本実施例9の結果、第1拡張型消音器71の長さL1を変えることにより80Hzに現れていた|Pv|ピークの抑制効果が変化することがわかる。そして、|Pv|ピークを抑制するにはそのピークが現れた周波数に応じてL1の長さをV/7f以上V/2f以下の範囲で所定の値に調整することが効果的であることがわかる。
【実施例10】
【0107】
また、設定減圧度を−100Pa(対大気圧値)に代えて、実施例9と同様に、第2減圧チャンバ62の内部での空気圧振動につき解析データを求めた。その解析データでは、|Pv|ピークの最大値が2.1であり、この値はf=60Hzに現れた。そこで、実施例9では3.5mであった第1拡張型消音器71の長さL1を表8の実施例10−1〜10−5に示すような各長さに代えて、各長さL1毎に、60Hzにおける|Pv|ピークの値を求めた。
【0108】
【表8】
【0109】
本実施例10の結果、第1拡張型消音器71の長さL1を変えることにより60Hzに現れていた|Pv|ピークの抑制効果が変化することがわかる。そして、|Pv|ピークを抑制するにはそのピークが現れた周波数に応じてL1の長さをV/7f以上V/2f以下の範囲で所定の値に調整することが効果的であることがわかる。
【実施例11】
【0110】
第1拡張型消音器71について、仕切部材を設け、その枚数を表9のように変えた。その他の条件は、実施例9−1と同様に実施した。これらの条件を実施例11−1〜11−4とし、80Hzに現れた|Pv|ピークがそれぞれいくつとなるかを測定した。この結果を表9に示す。表9において、評価結果に関する記載方法は、表7及び表8と同様である。
【0111】
【表9】
【0112】
本実施例11の結果、所定のL1とすることにより80Hzのピークを小さくすることができるとともに、仕切部材により、40Hz等の|Pv|ピークも小さくすることができた。このように、第1拡張型消音器71における仕切部材の有無及びその枚数により80Hzの|Pv|ピークの他、その1/2の周波数である40Hzやその他に現れていた|Pv|ピークに対する抑制効果が変化することがわかった。
【実施例12】
【0113】
第1拡張型消音器71を用いたときを実施例12−1とし、この第1拡張型消音器71に代えて、吸引口71aの中心線を延長した延長線が排出口71bに入るタイプの拡張型消音器としたときを実施例12−2とした。その他の条件は、実施例9−1と同様に実施した。そして、それぞれにおける80Hzの|Pv|ピークの値を求め、その結果を表10に示す。表10において、評価結果に関する記載方法は、表7〜表9と同様である。
【0114】
【表10】
【0115】
本実施例12の結果、吸引口と排出口との位置関係により振動の抑制効果が異なり、吸引口の中心線を延長した線が排出口の外部となるようにすることで振動の抑制効果が高まることがわかる。
【実施例13】
【0116】
防眩性反射防止フィルムを、2.0規定、55℃のNaOH水溶液中に2分間浸漬することにより、防眩性反射防止フィルムの片面にあるセルローストリアセテート面をけん化処理した。また、同条件により、実施例1−3で得られたセルローストリアセテートフィルムをけん化処理した。これら2つのフィルムを保護フィルムとして、ポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させてこれをすることにより作成された偏光子の両面の、互いに異なる面に接着し、偏光板を作成した。得られた偏光板は、平面性に優れ良好なものであった。
【実施例14】
【0117】
実施例13で得られた偏光板を、透過型TN液晶表示装置搭載のノートパソコンの液晶表示装置(偏光選択層を有する偏光分離フイルムである住友3M(株)製のDーBEFをバックライトと液晶セルとの間に有する)の視認側の偏光板と貼り代えた。このとき、反射防止層側が最表面となるようにした。得られた表示装置は、背景の映りこみが極めて少なく、表示品位の非常に高いものであった。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の実施形態である溶液製膜設備の概略図である。
【図2】実施形態である流延装置を示す概略図である。
【図3】流延装置の要部の一部断面を含む側面図である。
【図4】減圧チャンバに接続する管の断面図である。
【図5】第1拡張型消音器の断面図である。
【図6】空気圧振動における|Pv|と周波数との関係を示す図である。(a)は従来法の場合であり、(b)は、本発明の一部のみ適用した場合であり、(c)は本発明を好適に適用した場合である。
【図7】拡張型消音器を示す概略図である。
【図8】拡張型消音器の断面図である。
【図9】別の拡張型消音器の断面図である。
【図10】さらに別の拡張型消音器の断面概略図である。
【図11】さらに別の拡張型消音器の断面概略図である。
【符号の説明】
【0119】
10 溶液製膜設備
12 流延装置
36 流延ダイ
38 バンド
51 流延ドープ
61 第1減圧チャンバ
66 減圧制御部
67 管
71 第1拡張型消音器
71a吸引口 71b排出口 71c仕切部材
72 第2拡張型消音器
73 共鳴器型消音器
81,91,95 拡張型消音器
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーフィルムの製造方法及び設備に関し、特に光学用途のポリマーフィルムを製造する方法及び設備に関する。
【背景技術】
【0002】
オプトエレクトロニクス分野に使用されるポリマーフィルムには、溶液製膜方法によって製造されているものが多くある。溶液製膜方法で製造されたポリマーフィルムは、溶融押出法で得られるフィルムに比べ、光学的等方性、厚み均一性に優れ、また、異物の含有率も低く、例えば、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、透明導電性フィルム等として利用される。中でも、セルロースアシレートフィルムは、透明性、適度な透湿性を有し、機械的強度が大きく、かつ、寸法安定性については湿度及び温度に対する依存性が低いことから、広く用いられているもののひとつである。溶液製膜方法はセルロースアシレート等のポリマー及び各種添加剤を溶媒によってドープにしたあと、このドープをダイから流延支持体へ流延し、自己支持性をもったところで流延膜を剥ぎ取って、これを乾燥工程で乾燥させてフィルムとするものである。流延支持体は連続して回転走行する金属ドラムあるいはバンドとされている。
【0003】
また近年では、上記のようなオプトエレクトロニクス分野の発達がめざましく、その素材のひとつとしてのポリマーフィルムに対しては、高機能化及び多機能化の要望が強くなっている。それに応じるために、ポリマーフィルムの薄膜化は必須となっている。溶液製膜方法においては、ダイから流延支持体にかけてのドープの近傍に減圧チャンバを設けて、そのドープの背面、つまり流延支持体の走行方向における上流側を減圧し、ポリマーフィルムの薄膜化を図ることが多い。また、溶融製膜方法においても、フィルムの薄膜化を図るために、ダイから押し出された溶融ポリマーを同様に減圧してフィルム製造することもある。
【0004】
しかし、フィルムの厚みが薄くなるほど、その製造は難しく、特に、厚みが均一となるように製造することが非常に困難となる。例えば、流延ダイから出てきたドープを減圧チャンバにより背面側から減圧した場合には、減圧チャンバ内部の圧力変動に伴いフィルムの厚みが変動してしまうという問題がある。このように生じる厚みムラは、フィルムの長尺方向に渡って周期的に現れるものが多く、特にフィルム厚みが100μm以下というように非常に薄い場合には、製品にとっての致命的欠陥となる。そして、この厚みムラを低減するために、流延ドープを希釈したり、流延支持体から剥離したフィルムの乾燥速度を落として、厚みの均一化を図る等の対策が講じられることもある。しかし、こうした方法により厚みムラを低減することはできるものの完全には解消できず、また、いずれの方法も、乾燥時間が長くなる方法であるので、製造効率の低下及び製造コストの増大につながるという問題がある。
【0005】
そこで、減圧チャンバを用いた溶液製膜方法においては、この厚味ムラを解消するための提案がなされており、例えば、減圧チャンバの幅方向の両端部から全幅に対して各0〜0.3倍の範囲の位置に減圧用の吸引配管の開口部を配設して、押出ダイの押出部の背部近傍の空気を吸引して減圧しつつ、ドープをダイから押し出す方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の方法は、減圧チャンバの構造を最適化することにより、フィルムの波状ムラを抑制するというものである。
【0006】
また、スリット状の口金から吐出された樹脂膜を、移動キャスト面(支持体面)に密着させ、キャスト面の移動とともに下流側に送るフィルムの製造方法において、二つ以上の吸引手段により、樹脂膜のキャスト面への着地点変動を抑えて密着度を向上させるという方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平6−155494号公報(第2−3頁、第1図)
【特許文献2】特開平10−272637号公報(第3−4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法によると、フィルムの面状故障の一部については、その発生を抑制することができるものの、フィルムの長尺方向に周期的に発生する厚みムラについては効果がない。また、特許文献2のように着地点上流側に減圧室をおくだけでは着地点変動を抑えることができず、逆に、減圧チャンバに接続している配管や減圧チャンバ等の内部圧力変動により、着地点変動が大きくなってしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ポリマーフィルムの製造方法において、ポリマーフィルムの長尺方向において周期的に発生する厚みムラを抑制することができるポリマーフィルムの製造方法及び設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、ポリマーが溶媒に溶解したドープ、または溶融した前記ポリマーを、走行する支持体の上にダイから流出させて前記支持体から剥がし、乾燥または冷却することにより所定の厚みt(単位;μm)のポリマーフィルムを製造する方法において、ダイから出された前記ドープまたは前記溶融ポリマーに関して支持体の走行方向における上流側を減圧機により減圧し、この減圧における圧力設定値をP0 (単位;Pa)、減圧されたときの圧力実測値と前記圧力設定値P0 との差を圧力変動値Pv(単位;Pa)とするとき、この圧力変動値Pv(単位;Pa)が、|Pv|≦1.5|K| (ただし、K=(t×|P0 |)1/2 /100)を満たすことを特徴として構成されている。
【0010】
前記減圧機が、所定の内部圧力とされる減圧チャンバとこの減圧チャンバの内部圧力を制御するための圧力制御部とを備えるとともに、減圧チャンバと圧力制御部とを接続するための管を備え、圧力制御部から減圧チャンバまでの管の曲がり部の数を、15以下とすることが好ましく、圧力制御部から減圧チャンバまでの管の長さが30m以下であることが好ましい。また、この管の内径が70mm以上700mm以下であることが好ましい。
【0011】
また、減圧チャンバの内部圧力を変動させる振動を減衰するための振動減衰手段が前記管に備えられることが好ましい。拡張型消音器と共鳴器型消音器との少なくともいずれか一方を前記振動減衰手段として用いることが好ましく、共鳴器型消音器と拡張型消音器とを併用することがより好ましい。そして、前記管の中空部の断面積をS1とし、前記拡張型消音器の長手方向に垂直な断面における空洞部の面積をS2とするとき、S2/S1の値が5以上500以下であることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、走行する支持体上にダイからポリマーを流出させて、前記支持体から剥がし、乾燥または冷却するポリマーフィルムの製造方法において、前記ポリマーを溶融した状態または溶媒に溶解した状態で前記ダイから流出させ、流出したポリマーの近傍を減圧機により減圧し、この減圧中におけるポリマー近傍の圧力の変動幅が所定範囲となるように、稼働中の前記減圧機に発生する振動を振動減衰手段により減衰させ、この振動減衰手段は前記減圧機に設けられる消音器であることを特徴として構成されている。
【0013】
このとき、前記消音器が、拡張型消音器であることが好ましい。また、前記振動により周期的に変動する前記圧力を測定し、この測定データを高速フーリエ変換により周波数分解して、周波数分解されたデータにおいて前記圧力が所定の値よりも大きな値を示す周波数をf(単位;Hz)とするとき、拡張型消音器の長手方向における長さL(単位;m)が、V/7f≦L≦V/2f(ただし、Vは大気中における音速であり、その単位はm/秒)であることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明は、ポリマーを流延するための流延装置と、流延された前記ポリマーを乾燥または冷却してポリマーフィルムを生成するための乾燥装置または冷却装置とを備えるとともに、流延装置が走行する支持体とポリマーを支持体上に流出するダイとを備えるポリマーフィルム製造設備において、前記ポリマーは、溶融した状態または溶媒に溶解した状態で前記ダイから流出され、このダイのポリマー流出口近傍を減圧するための減圧機を備え、この減圧機が、所定の内部圧力とされる減圧チャンバと減圧チャンバの内部圧力を制御するための圧力制御部とを有するとともに、減圧チャンバと圧力制御部とを接続するための管を備え、圧力制御部から減圧チャンバまでの管の曲がり部の数を15以下とすることを特徴として含んで構成されている。
【0015】
そして、圧力制御部から減圧チャンバまでの管の長さを30m以下とすることが好ましく、管の内径が70mm以上700mm以下であることが好ましい。また、減圧チャンバの内部圧力を変動させる振動を減衰するための振動減衰手段が前記管に備えられることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、走行する支持体上にダイからポリマーを流出させて前記ポリマーを流延する流延装置と、流延されたポリマーを前記支持体から剥がした後に乾燥する乾燥装置または冷却する冷却装置と、を備えるポリマーフィルム製造設備において、ポリマーは溶融した状態または溶剤に溶解した状態でダイから流出され、ダイから流出された前記ポリマーの近傍を減圧するための減圧機を備え、この減圧機は、ダイのポリマー流出口近傍に配される減圧チャンバとこの減圧チャンバの内部圧力を制御する圧力制御部とを有するとともに、減圧チャンバと圧力制御部とを接続して空気の流路となる管を備え、この管には、減圧チャンバの内部圧力を変動させる振動を減衰するための振動減衰手段が設けられていることを特徴として含んで構成されている。
【0017】
本発明の上記ポリマーフィルム製造設備においては、振動減衰手段が、拡張型消音器または共鳴器型消音器であること、あるいは、振動減圧手段としての消音器が複数備えられ、この消音器の少なくともひとつが拡張型消音器であり、他の前記消音器が共鳴器型消音器であることが好ましい。そして、前記管の中空部の断面積をS1とし、拡張型消音器の長手方向に垂直な断面における空洞部の面積をS2とするとき、S2/S1の値が5以上500以下であることが好ましい。
【0018】
さらに、上記ポリマーフィルム製造設備においては、前記拡張型消音器の長手方向の長さL(単位;m)が、予め求められた周波数値fに応じて、V/7f≦L≦V/2f(ただし、Vは大気中における音速であり、その単位はm/秒)の範囲とされ、前記周波数値fは、前記振動により周期的な変動を示す前記内部圧力の測定データを高速フーリエ変換により周波数分解し、この周波数分解されたデータにおいて内部圧力が所定値以上の値を示すときの値の任意のひとつであることが好ましい。
【0019】
さらに、前記長手方向長さがL1(単位;m)である第1の前記拡張型消音器と、前記長手方向長さがL2(単位;m)である第2の前記拡張型消音器とが直列に接続されて前記管に設けられ、L1とL2とが、L1=2n×L2(ただし、nは自然数)を満たすことが好ましい。
【0020】
また、前記拡張型消音器には、前記振動の伝搬方向と交差する方向に内部を仕切る仕切部材が備えられることが好ましく、前記拡張型消音器の長手方向の長さL(単位;m)と、仕切部材により形成された区画のうち少なくともひとつの区画の前記伝搬方向における区画長さLD(単位;m)とが、LD=(1/m)×L(ただし、mは2以上の自然数)を満たすことがより好ましい。また第1と第2との前記区画の前記区画長さをそれぞれLD1,LD2(単位;m)とするとき、LD1=2n×LD2(ただし、nは自然数)であることが好ましく、前記拡張型消音器における振動の入口と出口との二つの開放口のうち、いずれか一方の断面の中心線を延長した延長線が、他方の前記開放口の外部となることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のポリマーフィルムの製造方法により、減圧チャンバに至る配管及び減圧チャンバの各内部の空気圧振動を抑制し、減圧チャンバ内部の圧力変動が抑えられる。このため、流延ダイから流延支持体にかけて流出して形成される流出部(ビードと称されることもある。)の振動を抑えることができる。この結果、厚みムラのない良好なフィルムを得ることができる。また、得られたフィルム、特にポリマーをセルロースアシレートとした場合には、これを用いて光学特性に優れる偏光板と液晶表示装置とを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明の実施形態としての溶液製膜設備の概略図である。ただし、本発明は、図1に示される溶液製膜設備に限定されるものではない。溶液製膜設備10は、ドープ調製装置11と、流延装置12と、乾燥装置15及び巻き取り装置16とを有している。
【0023】
ドープ調製装置11は、攪拌槽21と、ストックタンク22と、濾過器25と、スタティックミキサ26と、第1〜第3ポンプP1〜P3と、流量調節バルブV1とを有している。第1及び第2供給元31,32はドープ調製装置11の第1攪拌槽21に接続しており、第3供給元33は濾過器25とスタティックミキサ26との間の送液ラインに接続している。
【0024】
流延装置12は、流延ダイ36と、バックアップローラ37と、バンド38とを備えてている。なお、流延ダイ36の近傍には減圧チャンバが設置されているが、図1では図示を省略し、別の図を用いて後で詳しく説明するものとする。また、乾燥装置15は、テンター41と、ローラ乾燥機42とを備えており、巻き取り装置16には、カッタ45及び巻き取り部46とが備えられている。なお、溶液製膜設備10には、支持用あるいは搬送用のローラ47が必要に応じて適宜配され、これらのローラ47がポリマーフィルム52を支持、あるいは搬送する。図1においては、煩雑さを避けるために、用いたローラのうち、一部のみを図示している。
【0025】
フィルム52の主成分としてのポリマーは第1供給元31から、ドープの溶媒となる液体は第2供給元32から、それぞれ別の送液路により攪拌槽21へ供給される。ただし、ポリマーや溶媒等の原料の供給は別の容器で混合された後、攪拌槽21へ送られてもよい。また、ポリマー以外の固形分がこの混合液に添加されてもよい。そして、紫外線吸収剤や微粒子等の各種添加剤は、第3供給元33から必要に応じて供給される。ただし、これらの各種添加剤の添加のタイミングは限定されず、例えば攪拌槽21にて添加されてもよい。第1及び第2供給元31,32から攪拌槽21に送られたポリマーと溶媒とは、この攪拌槽21にて混合されて所定時間攪拌され、混合物として第1ポンプP1によりストックタンク22に送られる。ストックタンク22において混合物は静置脱泡される。これにより、流延ドープ51中の気泡量を低減し、フィルム52への気泡混入を防止することができる。
【0026】
混合物は、第2ポンプP2により濾過装置25へ送られて、未溶解物やゴミ等の異物が除去される。ストックタンク22から濾過装置25への混合物の送液量は、濾過装置25における濾圧や製膜速度を考慮してバルブV1により制御される。ただし、第2ポンプP2とバルブV1とを定量ポンプに代えて、混合物の流量を制御しながら送液してもよい。続いて、混合物と第3供給元33からの添加剤等とは、スタティックミキサ26でインライン混合され、流延ドープ51となって流延ダイ36に至る。
【0027】
流延ドープ51は、バックアップローラ37により支持されて連続走行されるバンド38上に流延ダイ36から出されることにより流延される。バックアップローラ37には駆動制御手段(図示せず)が備えられており、この駆動制御手段によりバックアップローラ37の回転速度が制御されて、バンドは所定速度で搬送される。流延された流延ドープ51はバンド上で流延膜となり、この流延膜は、バンド38上で走行する間に自己支持性をもつようになる。なお、流延支持体としては、バンド38に代えてドラムを使用することもあるが、本実施形態において図示は省略する。
【0028】
自己支持性をもった流延膜は、フィルム52としてローラにより剥ぎ取られてさらに下流の工程へ搬送される。剥ぎ取れらたフィルム52は、テンター41に送られ、ここで、幅を規制されたり延伸されながら、乾燥される。テンター41では、複数備えられたテンタークリップ(図示せず)が、フィルム52の両側端部を保持しながらテンター軌道(図示せず)に従って走行し、このテンタークリップの走行によりフィルム52は搬送される。テンタークリップの代わりにピンクリップ等を用いる場合もある。そして、テンタークリップは、コントローラ(図示せず)により開閉を自動制御され、この開閉によりフィルム52の保持と保持解除とを制御する。フィルム52を保持したテンタークリップは、テンター41の内部で走行し、その出口付近の所定の保持解除点に到達するとクリップを開放してフィルム52の保持を解除するように自動制御される。
【0029】
テンター41のフィルム52は、支持あるいは搬送用のローラ47により次工程であるローラ乾燥機42へ送られて、ここで複数のローラ42aにより支持あるいは搬送されながら十分に乾燥される。十分に乾燥された後のフィルム52は、カッタ45により両側端部を切断除去され、製品として巻き取り部46で巻き取られる。
【0030】
次に、流延装置における流延工程について、図2及び図3を参照しながら説明する。図2は、流延装置12の要部を示す概略図であり、図3は流延ダイ36及びバンド38の周辺の一部断面を含む側面図である。以降の説明においては、流延ダイ36から出た流延ドープ51がバンド38に接する位置を流延開始位置PSと称する。そして、流延ダイ36の先端リップ部から流延開始位置PSに至る流延ドープ51を流出部51aと称するとともに、バンド38の上に流延された状態にある流延ドープ51を流延膜と称してこれに符号51bを付す。図2に示すように、バンド38の走行方向における流延ダイ36の上流側には、第1及び第2の減圧チャンバ61,62が設置されている。第1減圧チャンバ61は、第2減圧チャンバ62の上流側に設置されており、第2減圧チャンバ62より大型のものとされている。第2減圧チャンバ62は、流延ダイ36からバンド38へかけて形成された流出部51aの背面側近傍に配されている。また、第1減圧チャンバ61は、空気の吸引部の先端の一部が第2減圧チャンバ62とバンド38との間に入り込むように備えられており、第2減圧チャンバ62の背部に位置する。
【0031】
第2減圧チャンバ62には、減圧ファン63と減圧ファンの63の回転数を制御するためのコントローラ64とからなる減圧制御部66が接続されている。そして、第2減圧チャンバ62により流出部51aの背面近傍の圧力を制御できるように、減圧ファン63の回転数を制御する。なお、図2において、第2減圧チャンバ62と減圧ファン63とを接続して空気が流動するための管を符号67で示す。この管67には、第1と第2の拡張型消音器71,72と共鳴器型(サイドブランチ型)消音器73とが減圧ファン63側から直列に配されている。なお、第1減圧チャンバ61にも減圧ファン及びコントローラが第2減圧チャンバと同様に接続されているが、図2では図示を省略する。
【0032】
第1減圧チャンバ61は、減圧ファン(図示なし)により内部の空気を吸引されて減圧状態となる。また、第2減圧チャンバ62も減圧ファン63により内部の空気を吸引されて減圧状態となる。そして、減圧制御部66により、第2減圧チャンバ62の内部の減圧度が制御される。このように、流出部51aの背面側は効果的に減圧され、流延膜51bがバンド38の上に形成される。ただし、本発明は、上記のような減圧チャンバ61,62の形態、台数等に限定されない。
【0033】
流延に際しては、通常、第2減圧チャンバ62の内部の減圧度は、少なくとも流延ドープ51の種類及び性状、流延速度と、目的とするフィルム厚みt(単位;μm)に応じて設定される。しかし、第2減圧チャンバ62内部の圧力は、流延中に変動してしまい、この圧力変動は流延装置12において発生するさまざまな振動に起因している。そして、光学用フィルムとしての優れた光学特性を発現するために必要な厚み精度は、製造するフィルムの厚みに応じて設定することが可能であるとともに、上記圧力変動の大きさの許容値をその厚みに応じて設定することができるということが本発明者らの検討によりわかった。圧力変動を引き起こす振動としては、例えば、流延ダイ36に流延ドープ51をポンプ等により送液する際の送液振動や、バックアップローラ37の回転振動や、減圧ファン63の運転振動等がある。このような振動があると、流出部51a自体に揺れが生じたり、この揺れにより流延開始位置PSが変動する他に、第2減圧チャンバ62と近接する部材または装置等と第2減圧チャンバ62との隙間の間隔が変動してしまい、このために内部の空気圧が変動する。このような空気圧変動の中には周期的な変動が含まれており、以下の説明においてこのような周期的変動については空気圧振動と称することがある。なお、第2減圧チャンバ62との間で形成される隙間としては、例えば、バンド38との間と、流延ダイ36との間、流出部51aとの間とがある。また、本実施形態においては、流出部51a及び流延膜51bの近傍は窒素等の不活性ガス雰囲気とされているので、例えば第2減圧チャンバ62の内部における上記圧力変動及び空気圧振動とは、不活性ガスの圧力変動及び圧力振動である。
【0034】
ここで、第2減圧チャンバ62の内部の圧力設定値をP0 (単位;Pa)とし、流延中の内部圧力の変動値(以降、圧力変動値と称する)をPv(単位;Pa)とする。この圧力変動値Pvとは、つまり、流延中における圧力実測値Pmと圧力設定値P0 との差である。そして、圧力変動値の絶対値|Pv|が小さいことは圧力設定値P0 に近い値であることを意味し、|Pv|が一定であることは圧力の変動がないことを意味する。本発明では、圧力変動値Pvが、以下の式(1)を満たすものとする。なお、以下の式(1)において、tは乾燥された後のフィルム52、つまり製品フィルムの厚みを示しており、単位をμmとしたときの値である。
|Pv|≦1.5|K| (ただし、K=(t×|P0 |)1/2 /100とする。)・・・(1)
【0035】
式(1)を用いることにより、圧力変動値Pvをどの程度に抑制すると光学用途に好適に使用することができるかということを、製造するフィルムの厚みt(μm)により設定することができる。したがって、従来は、ローラ乾燥機42を経た後のフィルムの厚みを実際に測定し、この測定データに基づき、流延工程における条件制御等を実施する必要があり、その条件が安定化するまでの原料ロスが大きかったが、これに対し本発明によると、流延工程での圧力変動値の許容範囲を、製造するフィルム52(図1参照)の厚みに応じて設定して、この設定値となるように圧力の変動を抑制する対策を講じるとよいので、厚みムラのない光学特性に優れたフィルムを効率的に製造することができるとともに、条件安定化までの上記原料ロスが抑制される。
【0036】
また、管67は第2減圧チャンバ62に接続しているために、本発明では、管67の内部圧力も、第2減圧チャンバ62の内部圧力と同等となる。したがって、管67の内部圧力の変動も、第2減圧チャンバ62の圧力変動値Pvと同じ条件となるように制御されることが好ましい。なお、圧力変動値Pvの測定方法については、後述するものとする。
【0037】
この圧力変動値Pvの絶対値|Pv|が1.5|K|よりも大きいと、流出部51aの揺れが大きすぎて、厚みムラが発生するので不適である。圧力変動値Pvの絶対値|Pv|については、これを0.5×|K|以下とすることがさらに好ましく、0.2×|K|以下とすることが特に好ましい。つまり、この圧力変動値Pvの絶対値|Pv|はゼロとすることが最も好ましいが実際には不可能であるので、1.5|K|以下の正の領域において小さいほど、つまり限りなくゼロに近いことが好ましい。
【0038】
次に、圧力変動値の絶対値|Pv|の制御方法について説明する。圧力変動値の絶対値|Pv|を1.5|K|以下とするためには、管67の内径を70mm以上700mm以下としたり、管67の長さを30m以下としたりすることが効果的である。ここで、管67の長さとは、第2減圧チャンバ62と減圧ファン63との間の長さである。なお、減圧ファン63とコントローラ64とを備える減圧制御部66に代えて、他の減圧制御部を用いた場合には、用いた減圧制御部と第2減圧チャンバ62との間の管を、上記内径及び長さとするとよい。そして、この管67は、装置構成の観点から通常は、図2の符号Aで示されるような複数の曲がり箇所(以降、ベンド部と称する)を有しており、このベンド部Aの数を15以下とするとより好ましい。
【0039】
管67の内径の好ましい範囲は、第2減圧チャンバ62の大きさや圧力設定値P0 等に応じて変わるものであるものの、幅が1000〜2000mm程度のフィルムを製造するときの減圧度(対大気圧値)が−10〜−1500Paであれば上記範囲は有効である。管67の内径が70mmより小さいと、風量に対して内径が小さくなりすぎてしまい管67内部の風速が大きくなりすぎてしまうので、管67の内部で振動が生じてしまうことがある。また、管67の内径が700mmより大きくすることは実際の工程としてそのスケールが大きすぎて現実的ではなく、もし700mmよりも大きくしたとしても、圧力変動値の絶対値|Pv|が1.5|K|よりも大きくなる場合が多いとともに、用いる減圧ファン63の運転制御能力によっては、小さな圧力変動に応じるための微小な制御を的確に行うことができなくなる。そして、この管67の内径は、100mm以上500mm以下であることがより好ましい。
【0040】
また、管67の長さを30m以下とすることにより、振動の発生自体を抑制する効果が大きいとともに、第2減圧チャンバ62及び管67の内部の圧力制御を迅速、かつ精緻に行うことができる。管67の長さを30mより大きくすると、管67の外部環境との接触面積が大きくなるために、様々な外乱が管67に作用する確率が高くなり、これが第2減圧チャンバ62を介して流出部51aに伝わり、厚みムラを発生することがある。前記外乱としては、例えば、流延装置12及びその周辺に備えられている各種駆動手段(図示せず)の稼働による、発生音を含める振動等が挙げられる。さらに、管67の長さを30mより大きくすると、コントローラ64により減圧ファン63の運転条件が制御されても、その制御により第2減圧チャンバ62の内部圧力が調整されるまでに要する時間が長くなってしまうという問題もある。この管67の長さは、15m以下とすることがより好ましい。
【0041】
そして、本発明では、ベンド部Aの数を15以下とすることにより第2減圧チャンバ62ならびに管67の内部における空気圧振動をより効果的に抑制することができる。これは、直線部分に比べてベンド部Aでは、空気の流れが乱れ、ベンド部Aの数が多いほど、空気圧振動の発生確率が高くなるという現象に着目した方法である。従って、ベンド部Aの数は少ないほど振動発生の低減に効果的であり、10以下とすることがより好ましく、5以下とすることがさらに好ましく、3以下とすると特に好ましい。
【0042】
また、本実施形態においては、空気圧振動を含む圧力変動の抑制効果を高めるための振動減衰手段として、第1及び第2拡張型消音器71,72と共鳴器型消音器73とが管67に備えられている。これにより、管67に生じている振動を減衰し、流出部51aへ伝わる空気圧振動を抑制することができる。したがって、圧力変動値Pvがいかなる値であっても、第2減圧チャンバ62の内部圧力が変動して、流動開始点の位置が変わってしまうような場合には、振動減圧手段を管67に設けることにより圧力変動を効果的に押さえる効果がある。振動減衰手段としては、取り付け操作の簡便性、入手の容易性、コストパフォーマンスの点で、公知のもののうち消音器が好ましい。なお、本発明では振動減衰手段とは、発生した振動を厳密な意味で減衰させるものだけでなく、振動を吸収するものや、あるいは振動を反射等により相殺するようなもの等まで含めて意味しており、本発明の以降の説明では、それらの機能、つまり振動減衰手段による作用を減衰または抑制と称することとする。
【0043】
振動減衰手段については、ひとつだけの使用でも効果があるが、本実施形態のように複数とするとより効果があり、すべての振動減衰手段を拡張型消音器としてもよいし共鳴器型消音器としてもよい。なお、拡張型消音器は、管67の長さが30m以内の範囲で一器以上使用することが好ましく、3台以上使用するとより好ましい。ただし、拡張型消音器と共鳴器型消音器とは、後述のような違いがあるため、その効果にも違いがあることから、いずか一方を用いるか両者を併用するかを圧力変動の測定データに基づき適宜選択するとよい。本実施形態では圧力変動の測定データを検討した結果、空気圧振動を含む圧力変動を総合的に抑制するために拡張型消音器と共鳴器型消音器とを併用している。そして本実施形態のように拡張型と共鳴器型とを併用する場合には、これらの相互位置関係は限定されるものではなく、例えば、第1,第2拡張型消音器71,72と共鳴器型消音器73との位置を逆にしたり、あるいは第1と第2との両拡張型消音器71,72の間に共鳴器型消音器73を配しても同様の効果が得られる。
【0044】
拡張型消音器と共鳴器型消音器とは、いずれも市販品として多くのものが流通している。拡張型消音器とは、自動車のマフラーに代表される消音器であり、管の断面積変化を有する構造が特徴であり、広い周波数領域において効果を発揮する。また、共鳴器型消音器とは、内部に振動の共鳴構造を有することが特徴であり、特定周波数で大きな効果を発揮する。
【0045】
以上に述べた2つの消音器は、いずれもリアクティブ型消音器と呼ばれる消音器の一種である。リアクティブ型消音器とは、管の音響インピーダンス変化を利用して音を発生源側に反射させる型式の消音器である。拡張型と共鳴器型の両者の構造をともに備えたものも市販されていて、本発明においても好ましく用いることができる。さらに、リアクティブ型消音器の他に、吸収型消音器と称される消音器もある。これは、ロックウールやグラスウール等の吸音材料により、音エネルギーの吸収効果を利用した消音器であり、本発明においてはこれらを用いても一定の効果は得られる。ただし、吸収型消音器は、低周波数領域に対する効果が、リアクティブ型消音器に比べ一般には劣るという性質がある。本発明においては、消音器としては特に限定されるものではないが、入手性と吸収する振動の周波数領域等の効果との観点から、各種消音器の中でも拡張型消音器と共鳴器型消音器とが最も好ましい。
【0046】
ここで、図2における管67のIV−IV線に沿う断面を図4に示すとともに、第1拡張型消音器71のV−V線に沿う断面を図5に示す。なお、第2拡張型消音器73の同断面は、第1拡張型消音器71と同様であるので、第2拡張型消音器73の断面の説明及び図示は略す。そして、図4における管67の中空部の断面積、つまりクロスハッチングで示されるエリアA1の面積をS1とするとともに、図5における第1拡張型消音器71の空洞部の断面積、つまりクロスハッチングで示されるエリアA2の面積をS2とする。面積S2については、第1拡張型消音器71の長手方向に垂直な断面における面積としている。第1拡張型消音器71において前記断面積S2が長手方向で変化している場合には、前記断面積S2は、長手方向における任意の箇所における値としてよい。なお、図5に示すように、第1拡張型消音器71の内部には第1仕切部材71cが設けられているが、これについては別の図面を用いて後で詳しく説明する。本実施形態においては、第1拡張型消音器71の面積S2を管67の前記面積S1で除した値である面積比S2/S1を、5以上500以下としている。この面積比S2/S1は、20以上300以下であることが特に好ましい。面積比S2/S1を5以上500以下とすることにより、衝突振動減衰、吸音減衰、位相差減衰、距離減衰等の空気圧振動の減衰の効果をさらに向上することができる。面積比S2/S1を500よりも大きくすると、装置が大きくなりすぎてしまうという問題があり、一方、S/S1を5未満とすると、上記のような空気圧振動減衰の効果が小さくなる。
【0047】
一方、本実施形態のように、共鳴器型消音器を振動減衰手段として用いる場合には、消音器の長手方向の長さを調整できるものを選択することが好ましく、その長さを調整することにより、空気圧振動の種類に応じて、問題となる周波数の振動を抑制することができる。共鳴器型消音器は、互いに異なる周波数の空気圧振動がいくつあるかにもよるが、管67の長さ30m以内において1台以上用いることが好ましく、3台以上用いることがより好ましい。
【0048】
上記方法により、多くの振動を抑制して第1減圧チャンバ61(図2,3参照)の内部の圧力変動の絶対値|Pv|を1.5|K|以下に制御することができる。しかし、前述のように圧力を測定してみると周期的な変動、つまり空気圧振動がまだみられることがある。そこで、本実施形態においては、この周期的な圧力変動を解析してみた。具体的には、周期的に変動する内部圧力の測定データを高速フーリエ変換(FFT)により周波数分解した。周波数分解されたこのデータは、すなわち、FFTによりパワースペクトラム(powerspectrum)で表現したデータである。この方法では、測定された内部圧力の測定データでは縦軸が内部圧力、横軸が時間であるが、FFTによるパワースペクトラムデータでは縦軸が同じく内部圧力であり横軸が周波数(Hz)となる。なお、このとき、内部圧力そのもののデータを直接高速フーリエ変換してもよいが、圧力変動値Pvまたはその絶対値|Pv|のデータを高速フーリエ変換することもでき、本明細書においては上記のうち|Pv|データを使った実施形態について説明する。そうすると、周波数分解された圧力変動値の絶対値|Pv|が特定の周波数にピークを示すデータが得られる。
【0049】
図6の(a),(b),(c)はいずれも圧力変動値の絶対値|Pv|と周波数との関係の概略を示す測定図であり、縦軸が圧力変動値の絶対値|Pv|、横軸が周波数f(単位;Hz)を示している。そして、図6の(a)は従来の製造装置及び方法である場合のデータであり、図6(b)は本発明の既に説明した方法を適用した場合のデータであり、図6(c)は後述する方法をさらに適用した場合のデータである。そして、いずれも、t≦80μmとした場合のデータである。
【0050】
図6(a)からわかるように従来法においては、全周波数領域において|Pv|が大きいが、これに対し図6(b)では周波数全領域でピークの数が減少し、全体的に|Pv|が小さくなっているとともに、|Pv|が概ね1.5|K|以下となるように制御されていることがわかる。したがって、本発明の既に述べた方法では、良好な厚み精度を達成し、そのためフィルムは良好な光学特性を発現する。しかし、図6(b)に示すように、既に述べた本発明の方法によっても、強度は大きくないものの|Pv|がピークとなって現れている周波数が確認されることがある。例えば、図6(b)においては、その周波数fの値とは80Hz,60Hz,40Hz,30Hz等である。したがって、圧力変動が周期的なものとして発生しており、空気圧振動があることがわかる。
【0051】
そこで、上記の特定の周波数80Hz,60Hz,40Hz,30Hzのピークを小さくするために下記に述べる方法を用い、この方法により図6(c)に示すようなデータを得ることができた。図6(c)では、図6(b)に見られた80Hz,60Hz,40Hz,30Hzの各ピークが小さくなってほとんど確認されず、すべての周波数領域において|Pv|が抑制されていることがわかる。以下に、図6(b)に確認されたような空気圧振動を抑制して図6(c)のような効果を得るための本発明について詳細に説明する。
【0052】
本発明では、上記のように、検出される数は少ないものの特定の周波数において現れる|Pv|のピークを選択的かつ効果的に減衰させるために、拡張型消音器を以下のような諸条件のものとしている。図7は、図2における VII− VII線に沿った断面図であり、図8は第1拡張型消音器71の断面図である。第1拡張型消音器71と第2拡張型消音器72とは、長さL1,L2が互いに異なるように調整されることもあるが、その基本構造については概ね同様である。第1及び第2拡張型消音器71,72には、図7に示すように、第2減圧チャンバ62側からの空気を吸引する吸引口71a,72aと、吸引した空気を外部へ出すための排出口71b,72bが備えられているとともに、内部を仕切る第1仕切部材71c,72cが備えられている。第1拡張型消音器71について、吸引口71aと排出口71bとは、一方の中心線C1,C2を延長したときにその延長線が他方に入らないように、長手方向の断面において対角の位置に備えられている。つまり中心線C1の延長線は排出口71bには入らず、そして、中心線C2の延長線は吸引口71aには入らないように、吸引口71aと排出口71bとが備えられている。この構成は第2拡張型消音器72も同様である。
【0053】
吸引口71a,72abと排出口71b,72bとの位置を、上記のように定めることにより、空気圧振動が第1及び第2拡張型消音器71,72により減衰させることができる確率を大きくすることができる。つまり、同一直線上に吸引口71a,72abと排出口71bc,72bとが備えられると、吸引口71a,72aから入ってきた振動がそのまま通り抜けて排出口71bc,72bから出てしまうが、上記のように吸引口71a,72aと排出口71b,72bとを配することにより、波長の異なるできるだけ多くの振動を第1及び第2拡張型消音器71,72により減衰させることができる。
【0054】
また、第1仕切部材71c,72cは、第1及び第2拡張型消音器71,72の内部を、隙間ができるように仕切っており、この隙間が空気の流路となる。そして、第1仕切部材71c,72cは、長手方向、つまり、吸引口71a,72aから入ってきた空気振動の伝搬路に交差するように備えられ、本実施形態においては、前記伝搬路に垂直な面を形成している。これにより、吸引口71a,72aから入ってきた空気圧振動が第1仕切部材71c,72cに反射して、この反射の波と入ってくる空気振動の波とが相殺しあうので、その結果、流出部51a(図2,3参照)等に伝わる空気圧振動が抑制される効果がある。
【0055】
さらに、第1拡張型消音器71は図8に示すように、第1部材75と第2部材76とをはめ合わせた構造とされている。第1部材75と第2部材76とは互いに(A)方向にスライドして、長手方向の長さL1が所定の長さとなるように位置決めされて固定部材77により固定される。そして、本実施形態では、第1拡張型消音器71の長さL1がV/7f≦L1≦V/2fを満たすように位置決めされて固定されている。ここで、Vは流延環境下の大気中における音速(単位;m/秒)を表し、fは図6のような|Pv|とその周波数との関係を示すデータにおいてピークが現れた周波数(単位;Hz)を表す。例えば図6におけるピークとは上記のような80Hz,60Hz,40Hz,30Hz等である。これにより、衝突振動減衰、位相差減衰することができるので、所定の周波数の空気圧振動を抑制して圧力変動値の絶対値|Pv|を小さくすることができる。ここで、周波数fは、確認されたピークのうちいずれかひとつとされるので、上記範囲とすることにより、その選ばれた周波数の振動が共鳴して発生するそれよりも大きい周波数の振動について減衰効果を得ることができる。したがって、L1を上記のように設定することにより、共鳴器型消音器と同じ効果を得ることもできる。
【0056】
L1がV/7f未満とすると、第1拡張型消音器71内部の距離が短すぎて距離減衰の効果がほとんどない。一方、L1がV/2fよりも大きい値とすると、低い周波数で振動が共鳴するために、この共鳴により振動が大きくなるという問題が発生することがある。そして、長さL1は、V/5f≦L1≦V/3fとするとより好ましい。なお、本実施形態においては、拡張型消音器の長手方向における長さをLとして上記のように規定したが、これは、第1の消音型消音器における吸引口及び排出口の位置を考慮したからであり、実質的には、振動が吸引口から入り込んだときの方向における長さである。この長さLの考え方については、本発明で用いた別の拡張型消音器を別の図面に示して後で詳しく説明する。
【0057】
また、本実施形態においては、第1拡張型消音器71と同様に第2拡張型消音器72についても、その長さL2がV/7f≦L2≦V/2fを満たすようにされており、これは、V/5f≦L2≦V/3fとするとより好ましい。なお、本発明においては、複数の拡張型消音器を用いた際には、そのいずれかひとつの長さLをV/7f≦L≦V/2fとすると上記のような効果があるが、本実施形態のようにすべての拡張型消音器について、この条件を満たすようにすると特に好ましく、これにより、所定の周波数の空気圧振動をより効果的に抑制することができる。
【0058】
また、その長手方向における各長さを互いに異なるものとした拡張型消音器を複数用いることにより、複数の周波数fにおける|Pv|の抑制効果を得ることができる。例えば、第1拡張型消音器71の長さL1を概ね2.1mとすることにより図6(b)のf=80Hzに見られた|Pv|ピークを小さくするとともに、第2拡張型消音器72の長さL2を1.5mとすることにより図6(b)のf=60Hzに見られた|Pv|ピークを小さくすることができる。
【0059】
また、第1拡張型消音器71の長さL1と第2拡張型消音器72の長さL2とがL1=2n×L2(ただし、nは自然数)となるように調整されると、第2拡張型消音器72により抑制される振動の2n倍の周波数の振動を第1拡張型消音器71により抑制することができる。また、これにより、第2拡張型消音器72で共振して発生した振動も第1拡張型消音器71で減衰することもできる。このように、|Pv|のピークが複数の周波数において現れたときには、複数の拡張型消音器を用いてそれぞれ別の周波数fに対応させるように長さLを決定することによりそれぞれのピークを抑制することができる。さらに、この方法によると、大型の共鳴器型消音器消音器を用いずに、拡張型消音器だけで、さまざまな周波数の振動に対応可能ともなる。
【0060】
また、本実施形態においては、第1仕切部材71cは、図8に示すようにスライド台71dの上に移動自在に取り付けられており、(B)で示される方向に移動して所定の位置に位置決めされる。第1仕切部材71cにより仕切られたことにより形成された第1及び第2区画D1,D2の長手方向における長さをそれぞれ第1区画長さLD1、第2区画長さLD2とする。そして、第1仕切部材71cの位置は、LD1≦(1/m)×L1とLD2≦(1/m)×L2との少なくともいずれか一方を満たすように位置決めされて固定されている。ここで、mは2以上の自然数を表し、Vは上記と同様に、流延環境下の大気中における音速(単位;m/秒)を表し、fは図6のような圧力変動データをFFTによりパワースペクトラムデータとして表した際に確認されたピークのうち任意のピークの周波数(単位;Hz)である。これにより、所定の周波数の振動エネルギーを熱エネルギーに変えて抑制し、|Pv|を減じることができる。ここで、周波数fは、確認されたピークのうちいずれかひとつとされるので、上記範囲とすることにより、その選ばれた周波数の振動が共鳴して発生するそれよりも大きい周波数の振動について減衰効果を得ることができる。
【0061】
第1仕切部材71cの位置を上記のように設定することにより、第1拡張型消音器71の長さL1の設定による振動抑制周波数fの(1/m)倍の周波数についても、その振動を抑制させることができる。例えば、上記のようにL1を所定の値に設定することによりf=80Hzの振動を抑制させたときであって、LD1とLD2との少なくともいずれか一方を(1/2)×L1としたときには、f=40Hzにおける|Pv|のピークを抑制させることができる。また、この例においては、第1仕切部材71cの面積を変えることにより、80Hzのピークの抑制効果と40Hzのピークの抑制効果との関係を調整することができる。具体的には、40Hzよりも80Hzのピークを重点的に抑制したいときには第1仕切部材71cの面積を小さめにし、また、80Hzよりも40Hzのピークを重点的に抑制したいときには第1仕切部材71cの面積を大きめにするとよい。
【0062】
もし、長さLを変えることができない拡張型消音器を用いるときには、その長さLの変更設定に代えて、上記のような仕切部材をその消音器に設けてその仕切部材によって形成された区画の長さLSをV/7f≦LD≦V/2fとするとよく、この方法を本実施形態において適用しようとするときには、各区画長さLD1,LD2は、V/5f≦LD1≦V/3fとV/5f≦LD2≦V/3fとするとより好ましい。
【0063】
また、本実施形態においては、第1拡張型消音器71と同様に第2拡張型消音器72についても、その区画長さが設定されており、例えば、L2を所定の長さとすることによりf=60Hzの|Pv|ピークを減衰させるときであって、仕切部材を1枚設けて区画長さLDのうち少なくともいずれか一方を(1/2)×L2としたときには、f=30Hzにおける|Pv|のピークを減衰させることができる。
【0064】
また、本実施形態では、第1拡張型消音器71の第1と第2との各区画長さLD1,LD2が、LD1=2n×LD2(ただし、nは自然数)となるように調整される場合もある。この方法により、第2区画D2において減衰される振動の2n倍の周波数の振動を第1区画D1で減衰することができるようになる。また、これにより、第2区画D2で共振して発生した振動も第1区画D1で減衰することもできる。
【0065】
図9は、上記実施形態における第1拡張型消音器に代えて用いた第3拡張型消音器81の断面図である。第3拡張型消音器81は、第1及び第2拡張型消音器71,72と同様に、互いに(A)方向にスライドする第1部材85と第2部材86とを有し、これらの位置決めにより、長手方向の長さL3が設定される。また、内部には、第1及び第2の仕切部材81c、81eとがそれぞれスライド台81d、81fの上に移動自在に取り付けられている。これらの仕切部材81c、81eにより、内部には3つの区画D1〜D3が形成されている。この第3拡張型消音器81では、第1〜第3の区画長さLD1〜LD3について、LD1=2n×LD2、LD1=2n×LD3(ただし、nは自然数)となるように調整されている。
【0066】
圧力変動値Pvのピークが複数の周波数において現れたときには、図9に示すように、複数の仕切板を設けて3つ以上の区画を形成して、それぞれ別の周波数fに対応させるように各区画長さLSを決定することによりそれぞれのピークを抑制することができる。
【0067】
図10,図11は、本発明のさらに別の実施形態を示しており、第1〜第3の拡張型拡張型消音器に代えて用いることができる別の拡張型消音器の断面図である。ただしこれらの図10,図11では、図の煩雑さを避けるために細部の図示は略す。図10に示す第4拡張型消音器91は、長手方向に垂直な向きに吸引口91aと排出口91bとが備えられている。この場合には、前記長さL4を長手方向における長さとせずに、前述したように、吸引口91aからの振動の伝搬方向における長さとする。また、図11に示す第5拡張型消音器95は、吸引口95a、排出口95bとは第1〜第3拡張型消音器と同様の位置に備えられているが、第1仕切部材95cと第2仕切部材95eとの位置関係が第1〜第3拡張型消音器とは異なる。つまり、第1仕切部材95cと第2仕切部材95eとは、ともに長手方向に複数の区画を形成するように仕切っているが、それらの取り付け位置は互いに対向する面となっている。以上のような第4,第5拡張型消音器を用いても、第1〜第3拡張型消音器と同様の効果を得ることができる。
【0068】
また、本実施形態のように、溶液製膜方法によるフィルム製造においては、第2減圧チャンバ62ないし管67の内部における減圧度は、大気圧を基準値ゼロとしたとき、−10Pa〜−2000Paとすることが好ましい。特に製造するフィルムの厚みが薄いほど、上記範囲内においてできるだけ減圧度を大きくすることが好ましい。
【0069】
以上のように、本発明により、第2減圧チャンバ62ならびに管67の内部における空気圧振動ならびに圧力変動を抑制することができる。ここで、圧力変動の測定について説明する。既に説明したように、本実施形態においては、まず、第2減圧チャンバ62の内部の空気圧を市販の圧力計にて測定する。次に、この測定結果を高速フーリエ変換(FFT)して周波数分解することにより圧力変動が解析される。本実施形態においては、圧力計としてST研究所製のSpecial transducerを使用し、圧力変動データの解析、つまりFFT処理には、ONO SOKKI社製のMULTI CHANNEL DATASTATION DS−9110を用いた。ただし、本発明では、圧力変動の測定方法は上記方法に限定されるものではなく、公知の圧力変動解析手段により求められてもよい。本発明によると、全周波数領域において、圧力変動値の絶対値|Pv|が小さく、特に、概ね30〜50Hzの周波数領域においては従来法に比べ|Pv|が非常に小さくなり、効果が大きい。
【0070】
また、本実施形態においては、流出部51a(図2,図3参照)に対する減圧効果のほとんどは第2減圧チャンバによるものであることが予め確認されていたので、内部の空気圧振動の制御対象を第2減圧チャンバのみとしたが、これに加えて第1減圧チャンバを制御対象とするとさらに効果が向上する。例えば、第1減圧チャンバ61の内部圧力の変動値Pv(単位;Pa)の絶対値|Pv|を1.5|K|以下とするために、第1減圧チャンバとその減圧ファンとを接続する配管の内径を70mm以上700mm以下とし、その配管のベンド部を15箇所以下としたり、その配管の長さを30m以下とし、配管に消音器を備えること等が好ましい。さらに、減圧チャンバを1台のみ設置する場合には、その1台につき、本実施形態の第2減圧チャンバの場合と同様に、空気圧振動を制御することが好ましい。このように、本発明は、設置する減圧チャンバの台数には依存しないが、少なくとも、流出膜に最も近い位置に設置した減圧チャンバにつき、空気圧振動を制御することが好ましい。
【0071】
本発明の製造方法において、ポリマー成分としては、セルロースアシレートが好ましく、中でもセルロースアセテートが特に好ましい。セルロースアシレート以外のポリマーであっても、ポリマー及びその前駆体が溶媒によってドープとなり、溶液製膜をすることができるものであれば本発明における溶液製膜には適用されるし、また、周知の溶融押出によりフィルムを形成することができるポリマーも適用される。例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、塩素化ポリエーテル、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルホン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)等を例示することができる。さらに、以上のような各種ポリマーをそれぞれ単独で使用しても、あるいは複数を混合して使用しても本発明に適用可能である。また、本発明はドープまたは溶融状態とされるポリマーの形状等の様態について限定するものではなく、例えば、粉体やペレット等であってもよい。
【0072】
本発明において、溶液製膜によりフィルムを製造する場合にはドープに使用する溶媒を限定するものではなく、公知の各種溶媒を用いることができる。例えば、ジクロロメタンやジクロロメチレン等のハロゲン含有有機化合物の他に、メチルアルコールやエチルアルコール、n−ブチルアルコールなどのアルコールや酢酸メチル、酢酸エチル等の各種エステル系化合物やアセトンなど非塩素系有機化合物や、水を使用することができる。
【0073】
本発明は、上記のように、溶液製膜のみならず溶融製膜にも適用することができる。つまり、周知の溶融押出ダイから流出部(押出部)として溶融ポリマーを押し出す際に、その流出部の振動を抑制する等のために、押し出された溶融ポリマー近傍を減圧する場合には、その減圧条件について、上記と同様の条件とすることが効果的である。なお、溶融製膜の場合には、図1に示す溶液製膜設備における乾燥装置15を冷却装置に代え、フィルム状に押し出されたポリマーを所定の冷却条件により冷却する。この冷却は自然冷却とされることもある。そして、冷却中あるいは冷却後には延伸機等でフィルムを所定方向に延伸することもある。
【0074】
さらに、本発明により得られたポリマーフィルムを偏光板保護膜として良好に用いることができる。偏光板は、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルムにより作製された偏光膜の両面に、上記の製造方法で得られたポリマーフィルムを保護膜として貼り合わせることによって得られる。偏光膜は、ポリビニルアルコール系フィルムを染色して得られるが、この染色方法としては、気相吸着法と液相吸着法が一般的でありどちらも適用することができるが、本発明においては液相吸着により染色を実施した。
【0075】
液相吸着による染色には、ここではヨウ素を用いるがこれに限定されるものではない。ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素/ヨウ化カリウム(KI)水溶液に、30秒以上5000秒以下の浸積時間をもって浸積した。このときの水溶液は、ヨウ素の濃度を0.1g/リットル以上20g/リットル以下とし、ヨウ化カリウムの濃度を1g/リットル以上100g/リットル以下とすることが好ましい。また、浸積時の水溶液の温度は5℃以上50℃以下の範囲に設定されることが好ましい。
【0076】
液相吸着方法としては、上記の浸積法に限らず、ヨウ素あるいはその他の染料溶液をポリビニルアルコールフィルムに塗布する方法や噴霧する方法など、公知の方法を適用してよい。染色を実施するのは、ポリビニルアルコールフィルムを延伸する前であっても延伸した後でもよいが、ポリビニルアルコールフィルムは染色を施されることにより適度に膨潤して延伸されやすくなることから、延伸工程の前に染色工程を設けることが特に好ましい。
【0077】
ヨウ素の代わりに二色性色素で染色することも好適である。二色性色素としては、アゾ系色素やスチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素、アントラキノン系色素等の色素系化合物を例示することができる。なお、水溶性の色素系化合物がもっとも好ましい。また、これらの二色性色素の分子中に、スルホン酸基やアミノ基、水酸基等の親水性官能基が導入されていることが好ましい。
【0078】
染色したポリビニルアルコール系フィルムを延伸して偏光膜を製造工程においてはポリビニルアルコールを架橋させる化合物を用いている。具体的には、延伸前工程もしくは延伸工程において架橋剤溶液にポリビニルアルコール系フィルムを浸積して架橋剤を含有させる。浸積する代わりに塗布してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムは、架橋剤の含有によって十分に硬膜化され、この結果、適切な配向が付与される。なお、ポリビニルアルコールの架橋剤としては、ホウ酸類がもっとも好ましいが、これに限定されるものではない。
【0079】
得られた偏光膜と本発明によるポリマーフィルムとの接着剤には、偏光膜と保護膜の接着に用いることができる公知の各種接着剤を用いている。中でも、アセトアセチル基やスルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等を有する変性ポリビニルアルコールを含むポリビニルアルコール系ポリマーやホウ素系化合物の水溶液が好ましい。この接着剤は、乾燥した後の厚みが0.01μm以上10μm以下となるように付与することが好ましく、0.05μm以上5μm以下となるように付与することがさらに好ましい。さらに、保護膜としてポリビニルアルコール層に付与したポリマーフィルム層の表面には、反射防止層や防眩層、滑り付与層、易接着層等を付与することができる。
【0080】
さらに、本発明にて得られたポリマーフィルム、特にセルローストリアセテートフィルム上に光学補償シートを貼付して、光学補償フィルムとして用いることもできる。前記の偏光板に反射防止層を付与した反射防止フィルムを得て、これを表面保護フィルムの片側として用い、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、または半透過型の液晶表示装置を得る。また、液晶表示装置の視野角を改良する視野角拡大フィルムなどの光学補償フィルム、位相差板等を組み合わせて使用することもできる。透過型または半透過型の液晶表示装置に用いる場合には、市販の輝度向上フィルム(偏光選択層を有する偏光分離フィルム、例えば住友3M(株)製のD−BEFなど)と併せて用いることにより、さらに視認性の高い表示装置を得ることができる。
【0081】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0082】
以下の配合比の固形分を、ジクロロメタン:メタノールが92:8の重量比率である溶媒と混合して静置脱泡した後、ポンプP2により濾過器25へ送って濾過して、流延ドープ51とした。流延ドープ51の固形分濃度は19.0重量%であった。
(固形分)
・セルローストリアセテート 100重量部
・トリフェニルフォスフェート 7重量部
・ビフェニルジフェニルフォスフェート 5重量部
【0083】
流延ドープ51を、流延ダイ36から流延した。バンド38の搬送速度は55m/分である。第2減圧チャンバ62における減圧度を制御しながら、流延した。管67の内径は100mmであり、長さは12mであって、ベンド部Aの数は8である。また、第1拡張型消音器71としては、S2/S1が30であるものを用い、第2拡張型消音器72としてはS2/S1が50であるものを用いた。そして、第1拡張型消音器71及び第2拡張型消音器72にはともに仕切部材は設けられておらず、前者の長さL1は3.5m、後者の長さL2は2.5mである。さらに、振動減衰手段として、共鳴器型消音器73も用いた。流延膜を剥ぎ取った後、乾燥させて巻き取り、厚み80μmのフィルム52を得た。
【0084】
|Pv|が表1に示す実施例1−1〜1−3のような各値となるように条件調整し、各場合について、周波数が3Hz以上の周期性をもって発生する厚みムラが0.3%未満であるときを◎、0.8%未満であるときを○、1.5%以上であるときを×として評価した。そして、この結果については、表1に示している。表1の設定減圧度は対大気圧値を示している。なお、フィルム52の厚みは、ANRITSU社製のFILM THICKNESS TESTER KG601を用いて測定した。
【実施例2】
【0085】
製膜して得られるフィルム52の厚みを60μmとした他は実施例1と同様に実施し、実施例2−1〜3とした。本実施結果については実施例1とともに表1に示す。
【実施例3】
【0086】
製膜して得られるフィルム52の厚みを40μmとした他は実施例1と同様に実施し、実施例3−1〜3とした。本実施結果については実施例1,2とともに表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
表1の結果によると、|Pv|が1.5|K|以下(ただし、|K|=(t×|P0 |)1/2 /100)であると厚みムラがほとんどなく良好なフィルムを得ることができ、|Pv|が0.5|K|以下のときには厚みムラがなく非常に良好なフィルムを得ることができることがわかる。
【実施例4】
【0089】
第2減圧チャンバ62の設定減圧度を対大気圧で−100Paとし、管67の内径を表2の実施例4−1〜3のように変えて圧力変動値Pvの絶対値|Pv|の平均値を実施例1と同様に求めた。第2減圧チャンバ62内部の空気圧変動が|Pv|が0.5|K|以下(ただし、|K|=(t×|P0 |)1/2 /100)の場合を◎とし、|Pv|が1.5|K|以下の場合を○とし、|Pv|が1.5|K|より大きい場合を×として、この結果についてを表2に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
表2の結果によると、管67の内径が50mmの場合には空気圧変動が大きくなりすぎ、また、管67の内径が80mmの場合には空気圧変動が抑制されて良好であることがわかる。さらに、管67の内径が100mmであると、空気圧変動は非常に抑制されることがわかる。
【実施例5】
【0092】
第2減圧チャンバ62の設定減圧度を対大気圧で−100Paとし、管67の内径を80mmとし、管67の長さを15mとして、ベンド部Aの数を表3の実施例5−1〜4のように変化させ圧力変動値Pvの絶対値|Pv|の平均値を実施例1と同様に求めた。第2減圧チャンバ62内部における|Pv|が0.5|K|以下(ただし、|K|=(t×|P0 |)1/2 /100)の場合を◎とし、|Pv|が1.5|K|以下の場合を○とし、|Pv|が1.5|K|より大きい場合を×として、この結果についてを表3に示す。
【0093】
【表3】
【0094】
表3の結果によると、ベンド数Aが20以上であると空気圧変動が大きくなりすぎて好ましくなく、15であると空気圧変動が抑制され良好であることがわかる。さらにベンド数Aが8のときには空気圧変動が極めて抑制されて非常に良好であることがわかる。
【実施例6】
【0095】
第2減圧チャンバ62の設定減圧度を対大気圧で−100Paとし、管67の内径を80mmとし、ベンド部Aの数を10として、管67の長さを表4の実施例5−1〜3のように変化させ圧力変動値Pvの絶対値|Pv|の平均値を実施例1と同様に求めた。第2減圧チャンバ62内部の空気圧変動が|Pv|が0.5|K|以下(ただし、|K|=(t×|P0 |)1/2 /100)の場合を◎とし、|Pv|が1.5|K|以下の場合を○とし、|Pv|が1.5|K|より大きい場合を×として、この結果についてを表4に示す。
【0096】
【表4】
【0097】
表4の結果によると、管67の長さ50mであると空気圧変動が大きくなりすぎて好ましくなく、25mであると空気圧変動が抑制され良好であることがわかる。さらに管67の長さが10mのときには空気圧変動が極めて抑制されて非常に良好であることがわかる。
【実施例7】
【0098】
第2減圧チャンバ62の設定減圧度を対大気圧で−100Paとし、管67の内径を80mmとし、管67の長さを15m、ベンド部Aの数を15とし、拡張型消音器の設置台数と共鳴型消音器の設置台数とを表5の実施例7−1〜5のように変化させ圧力変動値Pvの絶対値|Pv|の平均値を実施例1と同様に求めた。拡張型消音器と共鳴型消音器とを併用した場合には、その各台数にかかわらず、前者を上流側とし後者を下流側とした。第2減圧チャンバ62内部の空気圧変動について、|Pv|が0.5|K|以下(ただし、|K|=(t×|P0 |)1/2 /100)の場合を◎とし、|Pv|が1.5|K|以下の場合を○とし、|Pv|が1.5|K|より大きい場合を×として、この結果についてを表5に示す。
【0099】
【表5】
【0100】
表5の結果によると、拡張型消音器を使用しない場合には空気圧変動が大きくなりすぎて好ましくなく、また1台用いると空気圧変動が抑制され良好であることがわかる。さらに3台用いると空気圧変動が極めて抑制されて非常に良好であることがわかる。
【実施例8】
【0101】
第2減圧チャンバ62の設定減圧度を対大気圧で−100Paとし、管67の内径を80mmとし、管67の長さを15m、ベンド部Aの数を15とした。第1消音器71である拡張型消音器と管67との前記面積の比S2/S1を表6の実施例8−1〜3のように変化させ、圧力変動値Pvの絶対値|Pv|の平均値を実施例1と同様に求めた。第2減圧チャンバ62内部の空気圧変動が|Pv|が0.5|K|以下(ただし、|K|=(t×|P0 |)1/2 /100)の場合を◎とし、|Pv|が1.5|K|以下の場合を○とし、|Pv|が1.5|K|より大きい場合を×として、この結果についてを表6に示す。
【0102】
【表6】
【0103】
表6の結果によると、拡張型消音器と管67との内部の前記面積の比S2/S1が2のときは空気圧変動が大きくなりすぎて好ましくなく、また、6のときには空気圧変動が抑制され良好であることがわかる。さらに22の場合には空気圧変動が極めて抑制されて非常に良好であることがわかる。
【実施例9】
【0104】
実施例1−2の減圧度−200Paの場合において第2減圧チャンバ62の内部の圧力変動を測定し、FFT処理により周期的に現れる空気圧振動データを求めた。その解析データでは、|Pv|ピークの最大値が1.9であり、この値はf=80Hzに現れた。そこで、3.5mであった第1拡張型消音器71の長さL1を表7の実施例9−1〜9−5に示すような各長さに代えて、各長さL1毎に、80Hzにおける|Pv|ピークの値を求めた。なお、表7の評価結果欄においては、80Hzにおける|Pv|ピークの値が0〜0.25となったときを◎,0.25より大きく1.0以下となったときを○,1.0よりも大きいときを×として示す。
【0105】
【表7】
【0106】
本実施例9の結果、第1拡張型消音器71の長さL1を変えることにより80Hzに現れていた|Pv|ピークの抑制効果が変化することがわかる。そして、|Pv|ピークを抑制するにはそのピークが現れた周波数に応じてL1の長さをV/7f以上V/2f以下の範囲で所定の値に調整することが効果的であることがわかる。
【実施例10】
【0107】
また、設定減圧度を−100Pa(対大気圧値)に代えて、実施例9と同様に、第2減圧チャンバ62の内部での空気圧振動につき解析データを求めた。その解析データでは、|Pv|ピークの最大値が2.1であり、この値はf=60Hzに現れた。そこで、実施例9では3.5mであった第1拡張型消音器71の長さL1を表8の実施例10−1〜10−5に示すような各長さに代えて、各長さL1毎に、60Hzにおける|Pv|ピークの値を求めた。
【0108】
【表8】
【0109】
本実施例10の結果、第1拡張型消音器71の長さL1を変えることにより60Hzに現れていた|Pv|ピークの抑制効果が変化することがわかる。そして、|Pv|ピークを抑制するにはそのピークが現れた周波数に応じてL1の長さをV/7f以上V/2f以下の範囲で所定の値に調整することが効果的であることがわかる。
【実施例11】
【0110】
第1拡張型消音器71について、仕切部材を設け、その枚数を表9のように変えた。その他の条件は、実施例9−1と同様に実施した。これらの条件を実施例11−1〜11−4とし、80Hzに現れた|Pv|ピークがそれぞれいくつとなるかを測定した。この結果を表9に示す。表9において、評価結果に関する記載方法は、表7及び表8と同様である。
【0111】
【表9】
【0112】
本実施例11の結果、所定のL1とすることにより80Hzのピークを小さくすることができるとともに、仕切部材により、40Hz等の|Pv|ピークも小さくすることができた。このように、第1拡張型消音器71における仕切部材の有無及びその枚数により80Hzの|Pv|ピークの他、その1/2の周波数である40Hzやその他に現れていた|Pv|ピークに対する抑制効果が変化することがわかった。
【実施例12】
【0113】
第1拡張型消音器71を用いたときを実施例12−1とし、この第1拡張型消音器71に代えて、吸引口71aの中心線を延長した延長線が排出口71bに入るタイプの拡張型消音器としたときを実施例12−2とした。その他の条件は、実施例9−1と同様に実施した。そして、それぞれにおける80Hzの|Pv|ピークの値を求め、その結果を表10に示す。表10において、評価結果に関する記載方法は、表7〜表9と同様である。
【0114】
【表10】
【0115】
本実施例12の結果、吸引口と排出口との位置関係により振動の抑制効果が異なり、吸引口の中心線を延長した線が排出口の外部となるようにすることで振動の抑制効果が高まることがわかる。
【実施例13】
【0116】
防眩性反射防止フィルムを、2.0規定、55℃のNaOH水溶液中に2分間浸漬することにより、防眩性反射防止フィルムの片面にあるセルローストリアセテート面をけん化処理した。また、同条件により、実施例1−3で得られたセルローストリアセテートフィルムをけん化処理した。これら2つのフィルムを保護フィルムとして、ポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させてこれをすることにより作成された偏光子の両面の、互いに異なる面に接着し、偏光板を作成した。得られた偏光板は、平面性に優れ良好なものであった。
【実施例14】
【0117】
実施例13で得られた偏光板を、透過型TN液晶表示装置搭載のノートパソコンの液晶表示装置(偏光選択層を有する偏光分離フイルムである住友3M(株)製のDーBEFをバックライトと液晶セルとの間に有する)の視認側の偏光板と貼り代えた。このとき、反射防止層側が最表面となるようにした。得られた表示装置は、背景の映りこみが極めて少なく、表示品位の非常に高いものであった。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の実施形態である溶液製膜設備の概略図である。
【図2】実施形態である流延装置を示す概略図である。
【図3】流延装置の要部の一部断面を含む側面図である。
【図4】減圧チャンバに接続する管の断面図である。
【図5】第1拡張型消音器の断面図である。
【図6】空気圧振動における|Pv|と周波数との関係を示す図である。(a)は従来法の場合であり、(b)は、本発明の一部のみ適用した場合であり、(c)は本発明を好適に適用した場合である。
【図7】拡張型消音器を示す概略図である。
【図8】拡張型消音器の断面図である。
【図9】別の拡張型消音器の断面図である。
【図10】さらに別の拡張型消音器の断面概略図である。
【図11】さらに別の拡張型消音器の断面概略図である。
【符号の説明】
【0119】
10 溶液製膜設備
12 流延装置
36 流延ダイ
38 バンド
51 流延ドープ
61 第1減圧チャンバ
66 減圧制御部
67 管
71 第1拡張型消音器
71a吸引口 71b排出口 71c仕切部材
72 第2拡張型消音器
73 共鳴器型消音器
81,91,95 拡張型消音器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーが溶媒に溶解したドープ、または溶融した前記ポリマーを、走行する支持体の上にダイから流出させて前記支持体から剥がし、乾燥または冷却することにより所定の厚みt(単位;μm)のポリマーフィルムを製造する方法において、
前記ダイから出された前記ドープまたは前記溶融ポリマーに関して前記支持体の走行方向における上流側を減圧機により減圧し、
前記減圧における圧力設定値をP0 (単位;Pa)、減圧されたときの圧力実測値と前記圧力設定値P0 との差を圧力変動値Pv(単位;Pa)とするとき、
前記圧力変動値Pv(単位;Pa)が、
|Pv|≦1.5|K| (ただし、K=(t×|P0 |)1/2 /100)
を満たすことを特徴とするポリマーフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記減圧機が、所定の内部圧力とされる減圧チャンバと前記減圧チャンバの前記内部圧力を制御するための圧力制御部とを備えるとともに、前記減圧チャンバと前記圧力制御部とを接続するための管を備え、
前記圧力制御部から前記減圧チャンバまでの前記管の曲がり部の数を、15以下とすることを特徴とする請求項1記載のポリマーフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記圧力制御部から前記減圧チャンバまでの前記管の長さを30m以下とすることを特徴とする請求項2記載のポリマーフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記管の内径が70mm以上700mm以下であることを特徴とする請求項2または3記載のポリマーフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記減圧チャンバの前記内部圧力を変動させる振動を減衰するための振動減衰手段が前記管に備えられることを特徴とする請求項2ないし4いずれかひとつ記載のポリマーフィルムの製造方法。
【請求項6】
拡張型消音器と共鳴器型消音器との少なくともいずれか一方を前記振動減衰手段として用いることを特徴とする請求項5記載のポリマーフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記共鳴器型消音器と前記拡張型消音器とを併用することを特徴とする請求項6記載のポリマーフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記管の中空部の断面積をS1とし、前記拡張型消音器の長手方向に垂直な断面における空洞部の面積をS2とするとき、S2/S1の値が5以上500以下であることを特徴とする請求項6または7記載のポリマーフィルムの製造方法。
【請求項9】
走行する支持体上にダイからポリマーを流出させて、前記支持体から剥がし、乾燥または冷却するポリマーフィルムの製造方法において、
前記ポリマーを、溶融した状態または溶媒に溶解した状態で前記ダイから流出させるとともに、流出したポリマーの近傍を減圧機により減圧し、
前記減圧中における前記ポリマー近傍の圧力の変動幅が所定範囲となるように、稼働中の前記減圧機に発生する振動を振動減衰手段により減衰させ、
前記振動減衰手段は前記減圧機に設けられる消音器であることを特徴とするポリマーフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記消音器が、拡張型消音器であることを特徴とする請求項9記載のポリマーフィルムの製造方法。
【請求項11】
前記振動により周期的に変動する前記圧力を測定し、この測定データを高速フーリエ変換により周波数分解して、前記周波数分解されたデータにおいて前記圧力が所定の値よりも大きな値を示す周波数をf(単位;Hz)とするとき、
前記拡張型消音器の長手方向における長さL(単位;m)が、V/7f≦L≦V/2f(ただし、Vは大気中における音速であり、その単位はm/秒)であることを特徴とする請求項10記載のポリマーフィルムの製造方法。
【請求項12】
ポリマーを流延するための流延装置と、流延された前記ポリマーを乾燥または冷却してポリマーフィルムを生成するための乾燥装置または冷却装置とを備えるとともに、
前記流延装置が走行する支持体と前記ポリマーを前記支持体の上に流出するダイとを備えるポリマーフィルム製造設備において、
前記ポリマーは、溶融した状態または溶媒に溶解した状態で前記ダイから流出され、
前記ダイの前記ポリマーの流出口近傍を減圧するための減圧機を備え、
前記減圧機が、所定の内部圧力とされる減圧チャンバと前記減圧チャンバの前記内部圧力を制御するための圧力制御部とを有するとともに、前記減圧チャンバと前記圧力制御部とを接続するための管を備え、
前記圧力制御部から前記減圧チャンバまでの前記管の曲がり部の数を15以下とすることを特徴とするポリマーフィルム製造設備。
【請求項13】
前記圧力制御部から前記減圧チャンバまでの前記管の長さを30m以下とすることを特徴とする請求項12記載のポリマーフィルム製造設備。
【請求項14】
前記管の内径が70mm以上700mm以下であることを特徴とする請求項12または13記載のポリマーフィルム製造設備。
【請求項15】
前記減圧チャンバの前記内部圧力を変動させる振動を減衰するための振動減衰手段が前記管に備えられることを特徴とする請求項12ないし14いずれかひとつ記載のポリマーフィルム製造設備。
【請求項16】
走行する支持体上にダイからポリマーを流出させて前記ポリマーを流延する流延装置と、前記流延されたポリマーを前記支持体から剥がした後に乾燥する乾燥装置または冷却する冷却装置とを備えるポリマーフィルム製造設備において、
前記ポリマーは、溶融した状態または溶剤に溶解した状態で前記ダイから流出され、
前記ダイから流出された前記ポリマーの近傍を減圧するための減圧機を備え、
前記減圧機は、前記ダイの前記ポリマーの流出口近傍に配される減圧チャンバと前記減圧チャンバの内部圧力を制御する圧力制御部とを有するとともに、前記減圧チャンバと前記圧力制御部とを接続して空気の流路となる管を備え、
前記管には、前記減圧チャンバの内部圧力を変動させる振動を減衰するための振動減衰手段が設けられていることを特徴とするポリマーフィルム製造設備。
【請求項17】
前記振動減衰手段が、拡張型消音器または共鳴器型消音器であることを特徴とする請求項15または16記載のポリマーフィルム製造設備。
【請求項18】
前記振動減圧手段としての消音器が複数備えられ、前記消音器の少なくともひとつが拡張型消音器であり、他の前記消音器が共鳴器型消音器であることを特徴とする請求項15または16記載のポリマーフィルム製造設備。
【請求項19】
前記管の中空部の断面積をS1とし、前記拡張型消音器の長手方向に垂直な断面における空洞部の面積をS2とするとき、S2/S1の値が5以上500以下であることを特徴とする請求項17または18記載のポリマーフィルム製造設備。
【請求項20】
前記拡張型消音器の長手方向の長さL(単位;m)が、予め求められた周波数値fに応じて、V/7f≦L≦V/2f(ただし、Vは大気中における音速であり、その単位はm/秒)の範囲とされ、
前記周波数値fは、前記振動により周期的な変動を示す前記内部圧力の測定データを高速フーリエ変換により周波数分解し、前記周波数分解されたデータにおいて前記内部圧力が所定値以上の値を示すときの値の任意のひとつであることを特徴とする請求項17ないし19記載のポリマーフィルム製造設備。
【請求項21】
前記長手方向長さがL1である第1の前記拡張型消音器と、前記長手方向長さがL2(単位;m)である第2の前記拡張型消音器とが直列に接続されて前記管に設けられ、
前記L1と前記L2とが、L1=2n×L2(ただし、nは自然数)を満たすことを特徴とする請求項17ないし20いずれかひとつ記載のポリマーフィルム製造設備。
【請求項22】
前記拡張型消音器には、前記振動の伝搬方向と交差する方向に内部を仕切る仕切部材が備えられることを特徴とする請求項17ないし21いずれかひとつ記載のポリマーフィルム製造設備。
【請求項23】
前記拡張型消音器の長手方向の長さL(単位;m)と、前記仕切部材により形成された区画のうち少なくともひとつの区画の前記伝搬方向における区画長さLD(単位;m)とが、LD=(1/m)×L(ただし、mは2以上の自然数)を満たすことを特徴とする請求項22記載のポリマーフィルム製造設備。
【請求項24】
第1と第2との前記区画の前記区画長さをそれぞれLD1,LD2とするとき、
LD1=2n×LD2(ただし、nは自然数)であることを特徴とする請求項23記載のポリマーフィルム製造設備。
【請求項25】
前記拡張型消音器における前記振動の入口と出口との二つの開放口のうち、いずれか一方の断面の中心線を延長した延長線が、他方の前記開放口の外部となることを特徴とする請求項22ないし24いずれかひとつ記載のポリマーフィルム製造設備。
【請求項1】
ポリマーが溶媒に溶解したドープ、または溶融した前記ポリマーを、走行する支持体の上にダイから流出させて前記支持体から剥がし、乾燥または冷却することにより所定の厚みt(単位;μm)のポリマーフィルムを製造する方法において、
前記ダイから出された前記ドープまたは前記溶融ポリマーに関して前記支持体の走行方向における上流側を減圧機により減圧し、
前記減圧における圧力設定値をP0 (単位;Pa)、減圧されたときの圧力実測値と前記圧力設定値P0 との差を圧力変動値Pv(単位;Pa)とするとき、
前記圧力変動値Pv(単位;Pa)が、
|Pv|≦1.5|K| (ただし、K=(t×|P0 |)1/2 /100)
を満たすことを特徴とするポリマーフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記減圧機が、所定の内部圧力とされる減圧チャンバと前記減圧チャンバの前記内部圧力を制御するための圧力制御部とを備えるとともに、前記減圧チャンバと前記圧力制御部とを接続するための管を備え、
前記圧力制御部から前記減圧チャンバまでの前記管の曲がり部の数を、15以下とすることを特徴とする請求項1記載のポリマーフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記圧力制御部から前記減圧チャンバまでの前記管の長さを30m以下とすることを特徴とする請求項2記載のポリマーフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記管の内径が70mm以上700mm以下であることを特徴とする請求項2または3記載のポリマーフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記減圧チャンバの前記内部圧力を変動させる振動を減衰するための振動減衰手段が前記管に備えられることを特徴とする請求項2ないし4いずれかひとつ記載のポリマーフィルムの製造方法。
【請求項6】
拡張型消音器と共鳴器型消音器との少なくともいずれか一方を前記振動減衰手段として用いることを特徴とする請求項5記載のポリマーフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記共鳴器型消音器と前記拡張型消音器とを併用することを特徴とする請求項6記載のポリマーフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記管の中空部の断面積をS1とし、前記拡張型消音器の長手方向に垂直な断面における空洞部の面積をS2とするとき、S2/S1の値が5以上500以下であることを特徴とする請求項6または7記載のポリマーフィルムの製造方法。
【請求項9】
走行する支持体上にダイからポリマーを流出させて、前記支持体から剥がし、乾燥または冷却するポリマーフィルムの製造方法において、
前記ポリマーを、溶融した状態または溶媒に溶解した状態で前記ダイから流出させるとともに、流出したポリマーの近傍を減圧機により減圧し、
前記減圧中における前記ポリマー近傍の圧力の変動幅が所定範囲となるように、稼働中の前記減圧機に発生する振動を振動減衰手段により減衰させ、
前記振動減衰手段は前記減圧機に設けられる消音器であることを特徴とするポリマーフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記消音器が、拡張型消音器であることを特徴とする請求項9記載のポリマーフィルムの製造方法。
【請求項11】
前記振動により周期的に変動する前記圧力を測定し、この測定データを高速フーリエ変換により周波数分解して、前記周波数分解されたデータにおいて前記圧力が所定の値よりも大きな値を示す周波数をf(単位;Hz)とするとき、
前記拡張型消音器の長手方向における長さL(単位;m)が、V/7f≦L≦V/2f(ただし、Vは大気中における音速であり、その単位はm/秒)であることを特徴とする請求項10記載のポリマーフィルムの製造方法。
【請求項12】
ポリマーを流延するための流延装置と、流延された前記ポリマーを乾燥または冷却してポリマーフィルムを生成するための乾燥装置または冷却装置とを備えるとともに、
前記流延装置が走行する支持体と前記ポリマーを前記支持体の上に流出するダイとを備えるポリマーフィルム製造設備において、
前記ポリマーは、溶融した状態または溶媒に溶解した状態で前記ダイから流出され、
前記ダイの前記ポリマーの流出口近傍を減圧するための減圧機を備え、
前記減圧機が、所定の内部圧力とされる減圧チャンバと前記減圧チャンバの前記内部圧力を制御するための圧力制御部とを有するとともに、前記減圧チャンバと前記圧力制御部とを接続するための管を備え、
前記圧力制御部から前記減圧チャンバまでの前記管の曲がり部の数を15以下とすることを特徴とするポリマーフィルム製造設備。
【請求項13】
前記圧力制御部から前記減圧チャンバまでの前記管の長さを30m以下とすることを特徴とする請求項12記載のポリマーフィルム製造設備。
【請求項14】
前記管の内径が70mm以上700mm以下であることを特徴とする請求項12または13記載のポリマーフィルム製造設備。
【請求項15】
前記減圧チャンバの前記内部圧力を変動させる振動を減衰するための振動減衰手段が前記管に備えられることを特徴とする請求項12ないし14いずれかひとつ記載のポリマーフィルム製造設備。
【請求項16】
走行する支持体上にダイからポリマーを流出させて前記ポリマーを流延する流延装置と、前記流延されたポリマーを前記支持体から剥がした後に乾燥する乾燥装置または冷却する冷却装置とを備えるポリマーフィルム製造設備において、
前記ポリマーは、溶融した状態または溶剤に溶解した状態で前記ダイから流出され、
前記ダイから流出された前記ポリマーの近傍を減圧するための減圧機を備え、
前記減圧機は、前記ダイの前記ポリマーの流出口近傍に配される減圧チャンバと前記減圧チャンバの内部圧力を制御する圧力制御部とを有するとともに、前記減圧チャンバと前記圧力制御部とを接続して空気の流路となる管を備え、
前記管には、前記減圧チャンバの内部圧力を変動させる振動を減衰するための振動減衰手段が設けられていることを特徴とするポリマーフィルム製造設備。
【請求項17】
前記振動減衰手段が、拡張型消音器または共鳴器型消音器であることを特徴とする請求項15または16記載のポリマーフィルム製造設備。
【請求項18】
前記振動減圧手段としての消音器が複数備えられ、前記消音器の少なくともひとつが拡張型消音器であり、他の前記消音器が共鳴器型消音器であることを特徴とする請求項15または16記載のポリマーフィルム製造設備。
【請求項19】
前記管の中空部の断面積をS1とし、前記拡張型消音器の長手方向に垂直な断面における空洞部の面積をS2とするとき、S2/S1の値が5以上500以下であることを特徴とする請求項17または18記載のポリマーフィルム製造設備。
【請求項20】
前記拡張型消音器の長手方向の長さL(単位;m)が、予め求められた周波数値fに応じて、V/7f≦L≦V/2f(ただし、Vは大気中における音速であり、その単位はm/秒)の範囲とされ、
前記周波数値fは、前記振動により周期的な変動を示す前記内部圧力の測定データを高速フーリエ変換により周波数分解し、前記周波数分解されたデータにおいて前記内部圧力が所定値以上の値を示すときの値の任意のひとつであることを特徴とする請求項17ないし19記載のポリマーフィルム製造設備。
【請求項21】
前記長手方向長さがL1である第1の前記拡張型消音器と、前記長手方向長さがL2(単位;m)である第2の前記拡張型消音器とが直列に接続されて前記管に設けられ、
前記L1と前記L2とが、L1=2n×L2(ただし、nは自然数)を満たすことを特徴とする請求項17ないし20いずれかひとつ記載のポリマーフィルム製造設備。
【請求項22】
前記拡張型消音器には、前記振動の伝搬方向と交差する方向に内部を仕切る仕切部材が備えられることを特徴とする請求項17ないし21いずれかひとつ記載のポリマーフィルム製造設備。
【請求項23】
前記拡張型消音器の長手方向の長さL(単位;m)と、前記仕切部材により形成された区画のうち少なくともひとつの区画の前記伝搬方向における区画長さLD(単位;m)とが、LD=(1/m)×L(ただし、mは2以上の自然数)を満たすことを特徴とする請求項22記載のポリマーフィルム製造設備。
【請求項24】
第1と第2との前記区画の前記区画長さをそれぞれLD1,LD2とするとき、
LD1=2n×LD2(ただし、nは自然数)であることを特徴とする請求項23記載のポリマーフィルム製造設備。
【請求項25】
前記拡張型消音器における前記振動の入口と出口との二つの開放口のうち、いずれか一方の断面の中心線を延長した延長線が、他方の前記開放口の外部となることを特徴とする請求項22ないし24いずれかひとつ記載のポリマーフィルム製造設備。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−69184(P2006−69184A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259417(P2004−259417)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
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