ポリマーフィルムの連続延伸方法及び設備
【課題】フィルム端部を加熱溶着し、フィルムを確実に接合する。
【解決手段】先行フィルム3aの後端部73aと、後行フィルム3bの先端部73bを重ね合わせ長さLoで重ね合わせる。各溶着ヘッド53、54の接触面56aの搬送方向長さをLpとし、各溶着ヘッド53,54の加熱面55aの搬送方向長さをLhとするときに、Lh<Lo<Lpとする。重ね合わせ部分75、接触面56a、加熱面55aの搬送方向における中央部を略一致させる。重ね合わせ部分75を重ね方向Cから各溶着ヘッド53,54で挟持する。接触面56aの搬送方向両端におけるフィルムの温度を、フィルム溶着温度になるように、加熱面55aを介して重ね合わせ部分75を加熱し、溶着する。
【解決手段】先行フィルム3aの後端部73aと、後行フィルム3bの先端部73bを重ね合わせ長さLoで重ね合わせる。各溶着ヘッド53、54の接触面56aの搬送方向長さをLpとし、各溶着ヘッド53,54の加熱面55aの搬送方向長さをLhとするときに、Lh<Lo<Lpとする。重ね合わせ部分75、接触面56a、加熱面55aの搬送方向における中央部を略一致させる。重ね合わせ部分75を重ね方向Cから各溶着ヘッド53,54で挟持する。接触面56aの搬送方向両端におけるフィルムの温度を、フィルム溶着温度になるように、加熱面55aを介して重ね合わせ部分75を加熱し、溶着する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーフィルムの連続延伸方法及び設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリマーフィルム(以下、フィルムと称する)は、優れた光透過性や柔軟性および軽量薄膜化が可能であるなどの特長から光学フィルムとして多岐に利用されている。中でも、セルロースアシレート、特に57.5%〜62.5%の平均酢化度を有するセルローストリアセテート(以下、TACと称する)から形成されるTACフィルムは、その強靭性と難燃性とから写真感光材料のフィルム用支持体として利用されている。また、TACフィルムは、ポリマーフィルムの中でも光学等方性に優れていることから、液晶表示装置の偏光板の保護フィルム,光学補償フィルム(例えば、視野角拡大フィルムなど)などの光学フィルムとして用いられている。
【0003】
フィルムの主な製造方法としては、溶融押出方法と溶液製膜方法とがある。溶融押出方法とは、ポリマーをそのまま加熱溶解させた後、押出機で押し出してフィルムを製造する方法であり、生産性が高く、設備コストも比較的低額であるなどの特徴を有する。しかし、フィルムの厚さの精度を調節することが難しく、また、フィルム上に細かいスジ(ダイライン)ができるために、光学フィルムの製造方法に適していない。一方、溶液製膜方法は、ポリマーと溶媒とを含むポリマー溶液(以下、ドープと称する)を支持体上に流延して形成した流延膜が自己支持性を有するものとなった後、これを支持体から剥がして湿潤フィルムとし、湿潤フィルムを搬送しながら乾燥してフィルムとする。そして、製造過程でフィルムに生じたシワやタルミ等を除去する場合、或いは、フィルムに所望の光学特性を付与する場合には、クリップテンタ等を用いて、フィルムを所定の搬送速度で搬送しながら幅方向に延伸する。最後に、巻取機等を用いて、フィルムをロール状に巻き取る。そして、溶液製膜方法における各工程を連続的に行う方式により、長尺状のフィルムを連続的に効率よく製造することができる。この溶液製膜方法は、溶融押出方法と比べて、光学等方性や厚み均一性に優れるとともに、含有異物の少ないフィルムを得ることができるため、フィルム、特にTACフィルム等の光学フィルムの製造方法には、溶液製膜方法が採用されている。
【0004】
近年、液晶ディスプレイ等の急速な発展・普及により、TACフィルム等の光学フィルムの需要が増大している。この需要の増大に伴い、光学フィルムの生産性の向上が望まれている。
【0005】
溶液製膜方法にて、高速製膜を行う場合には、支持体の走行速度を向上させつつ、流延膜の自己支持性を短時間で発現させる必要がある。流延膜に自己支持性を発現させるためには、流延膜に含まれる溶媒を蒸発する乾燥方式や、流延膜を冷却する冷却ゲル化方式といった手法が用いられる。
【0006】
乾燥方式の溶液製膜方法にて、高速製膜を行う場合には、流延膜の乾燥の高速化が必要になる。しかしながら、流延膜の乾燥の高速化は、フィルムの面状故障の原因である乾燥ムラを誘発するなどの弊害を生じるおそれがある。一方、冷却ゲル化方式の溶液製膜方法にて、高速製膜を行う場合には、上述のような弊害が生じない。したがって、生産効率の向上化の点より、流延膜に自己支持性を発現させる方法として、冷却ゲル化方式が採用されることが多い。
【0007】
しかしながら、支持体の走行速度とクリップテンタによるフィルムの搬送速度とはその最適速度が異なる。したがって、生産効率の向上の観点から冷却ゲル化方式を採用した場合、溶液製膜方法の製膜速度は、クリップテンタによる搬送速度が律速となり、実質的な生産効率の向上を図ることができない。そこで、流延膜を形成し、流延膜を乾燥してフィルムとし、フィルムを巻き取る溶液製膜ラインと、フィルムロールから送り出されたフィルムを延伸する延伸ライン(以下、オフライン延伸設備と称する)とを別に設け、これらを併用する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、特許文献1に記載されているように、オフライン延伸設備にて、フィルムの延伸処理を効率よく行うために、フィルムロールからフィルムを連続して延伸することが好ましい。そして、フィルムロールの切り替え時には、先行するフィルムの後端部と、後行するフィルムの先端部とを重ねて、押し付けながら加熱し、この重ね合わせ部分を接合する(以下、加熱溶着処理と称する)。この加熱溶着処理として、例えば、特許文献2に記載される方法が知られている。このように、2つのフィルムを接合することにより、フィルムをオフライン延伸設備へ連続して供給することが可能となり、結果的に、オフライン延伸設備にて、フィルムの延伸処理を効率よく行うことができる。
【特許文献1】特開2002−311240号公報
【特許文献2】実開昭53−020268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、各フィルムの先端部や後端部の接合を確実に行うために、重ね合わせ部分及び重ね合わせ部分近傍のフィルムにまで加熱溶着処理を行うと、重ね合わせ部分近傍のフィルムのうち、加熱溶着処理によって溶融した部分と溶融していない部分との境界に一定量の膜厚差(以下、厚さムラと称する)が生じてしまう。かかる状態のフィルムについて延伸処理を行うと、厚さムラが生じた部分近傍からフィルムが破断するおそれがある。一方、重ね合わせ部分の長さに対して加熱溶着長さを短くすると、短い分だけ重ね合わせ部分の両端に、加熱溶着されないフィルム端が現れてしまう。このフィルム端が、オフライン延伸装置内の部品や部材等に引っかかり、搬送不良またはフィルムの破断が発生するおそれがある。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するものであり、重ね合わせ部分に加熱溶着処理を過不足なく行い、2本のフィルムを接合するポリマーフィルムの連続延伸方法及び設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、先行して走行するポリマーフィルムの後端部に、後行して走行するポリマーフィルムの先端部を重ね合わせ、この重ね合わせた部分を、重ね方向から1対の溶着ヘッドにより挟持し、前記溶着ヘッドから前記重ね合わせ部分に熱を加えて、前記重ね合わせ部分を溶着させて接合し、この接合されたポリマーフィルムの両端部を把持してフィルム幅方向に延伸するポリマーフィルムの連続延伸方法において、前記ポリマーフィルムの走行方向における前記重ね合わせ部分の長さをLo、前記走行方向における前記溶着ヘッドのフィルム接触面の長さをLp、前記走行方向における前記溶着ヘッドのフィルム加熱面の長さをLhとするときに、Lh<Lo<Lpとし、前記重ね合わせ部分、前記フィルム接触面、前記フィルム加熱面の前記走行方向における中央部を略一致させ、前記挟持押圧時に、前記重ね合わせ部分の前記走行方向両端の温度を前記ポリマーフィルムの溶着温度にすることを特徴とする。
【0012】
前記フィルム接触面及び前記フィルム加熱面を覆うように設けられる剥離層を介して前記重ね合わせ部の加熱及び溶着を行うことが好ましい。また、前記重ね合わせ部分の長さLoが5mm以上10mm以下であり、(Lp−Lo)の値を10mm以下とすることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、先行して走行するポリマーフィルムの後端部に、後行して走行するポリマーフィルムの先端部を重ね合わせ、この重ね合わせた部分を、重ね方向から1対の溶着ヘッドにより挟持し、前記溶着ヘッドから前記重ね合わせ部に熱を加えて、前記重ね合わせ部分を溶着させて接合し、この接合されたポリマーフィルムの両端部を把持してフィルム幅方向に延伸するポリマーフィルムの連続延伸設備において、前記1対の溶着ヘッドに設けられ、前記ポリマーフィルムの走行方向における長さがLpのフィルム接触面と、前記フィルム接触面に略面一に、前記走行方向の中央部から両端部に向かってそれぞれ略等しく伸びるように設けられ、前記走行方向における長さがLhのフィルム加熱面と、前記重ね合わせ部分及び前記フィルム加熱面の前記走行方向における中央部を略一致させるように前記ポリマーフィルムを送り出し、前記走行方向における前記重ね合わせ部分の長さをLoとするときに、Lh<Lo<Lpとなるようにする送出装置と、前記重ね合わせ部分を前記1対の溶着ヘッドにより挟持する際、前記重ね合わせ部分の前記走行方向両端の温度が前記ポリマーフィルムの溶着温度となるように、前記フィルム加熱面を加熱する加熱制御装置と、を備えることを特徴とする。なお、前記フィルム接触面及び前記フィルム加熱面を覆う剥離層を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、2本のフィルムの先端部及び後端部からなる重ね合わせ部分に、加熱溶着処理を過不足なく行なうことが可能となるため、2本のフィルムを接合したフィルムについて、搬送不良また破断の発生を抑えつつ、延伸処理を同一条件で連続して行うことができる。したがって、本発明によれば、オフライン延伸設備において効率よく延伸処理を行うことが可能となるため、タルミ、シワ等がなく、面状に優れ、均一の光学特性を有するフィルムを効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に示すように、オフライン延伸設備2は、フィルム3を供給するフィルム供給室4と、リザーバ5と、テンタ部6と、熱緩和室7と、冷却室8と、フィルム巻取室9とを順に有し、テンタ部6では、フィルム3に延伸処理を連続して施す。
【0016】
フィルム供給室4は、ターレット型のフィルム送出機10及び接合ユニット11を備える。フィルム送出機10は、ターレットアーム13を有する。このターレットアーム13の両端部には、取付軸12a、12bが設けられている。取付軸12aには、フィルムロール14が取り付けられる。このターレットアーム13は、180度間欠回転することにより、取付軸12aをフィルム送出位置16にセットし、他方の取付軸12bを巻芯交換位置17にセットする。こうして、フィルムロール14がフィルム送出位置16にセットされる。
【0017】
フィルム送出機10は、フィルムロール14からフィルム3を接合ユニット11へ送り出す。また、巻芯交換位置17にある取付軸12bからは空の巻き芯が取り出され、新たなフィルムロール15がセットされる。フィルム送出機10は、フィルム送出位置16にあるフィルムロール14のフィルム3が無くなったことを検出すると、ターレットアーム13を180度回転して、巻芯交換位置17にある新たなフィルムロール15をフィルム送出位置16にセットする。そして、新たなフィルムロール15からフィルム3が送出する。なお、フィルムロール14、15は、乾燥方式または冷却ゲル化方式の溶液製膜方法により製造されたフィルムからなる。
【0018】
この際に、接合ユニット11では、フィルムロール14から送り出されたフィルム(先行フィルム)3aの後端部と、新たなフィルムロール15から送り出されたフィルム(後行フィルム)3bの先端部とを加熱溶着処理により接合し、1本のフィルム3とする。このフィルム3はリザーバ5へ送られる。接合ユニット11及び加熱溶着処理の詳細は後述する。リザーバ5では、後述する加熱溶着処理に必要な時間分以上の貯留長さを有するループを形成した後に、フィルム3をテンタ部6に送り出している。
【0019】
テンタ部6は、所定条件下で、フィルム3の両側縁部を把持して、フィルム3を幅方向に延伸し、フィルム3を耳切装置21に送り出す。耳切装置21は、フィルム3から、フィルム3の当該両側縁部を切断する。耳切装置21によりその両側縁部が切り離された製品部分としてのフィルム3は、熱緩和室7に送られる。一方、フィルム3から切り離された両側縁部はカットブロア22に送られ、細かく小片にカットされる。カットされた耳屑小片は、図示しない風送装置によりクラッシャ23に送られ、粉砕されてチップとなる。このチップはドープ調製用に再利用される。
【0020】
熱緩和室7には、多数のローラ25及び図示しない乾燥用ダクトが備えられており、フィルム3はローラ25により熱緩和室7内を搬送されて加熱により熱緩和された後、冷却室8に送られる。なお、乾燥風ダクトからの風の温度は、20℃以上250℃以下であることが好ましい。
【0021】
熱緩和後のフィルム3は、冷却室8で30℃以下に冷却された後、フィルム巻取室9に送られる。フィルム巻取室9には、プレスローラ26を有する巻取機27が設けられている。巻取機27は、フィルム3を巻き芯28に巻き取る。プレスローラ26は、巻き芯28に巻き取られる際のフィルム3を巻き芯28の方向に押圧する。
【0022】
図2のように、テンタ部6は、フィルム3をフィルム搬送方向Aに搬送しながら、フィルム幅方向Bに延伸するものであり、第1レール30と、第2レール31と、これらレール30,31に案内される第1,第2チェーン(エンドレスチェーン)32,33とを備えている。テンタ部6は、図示しない乾燥室内に配置されている。乾燥室は、フィルム搬送方向Aに沿って、予熱ゾーン6a,加熱ゾーン6b,熱緩和ゾーン6cが順次設けられ、各ゾーン6a〜6cに最適なフィルム温度となるように図示しないダクトにより乾燥風が送られている。なお、テンタ部6における延伸倍率は所望の光学特性等に合わせて適宜変更されるものであるが、フィルム3を幅方向に100.5%〜300%延伸することが好ましい。
【0023】
第1,第2チェーン32,33には、クリップ34が一定の間隔で多数取り付けられている。点PAはクリップ34によるフィルム3の把持開始位置を示しており、点PBはクリップ34によるフィルム3の把持開放位置を示している。また、点PCはクリップ34による延伸開始位置を、点PDはクリップ34による延伸終了位置をそれぞれ示している。これら各点PA〜PDにおけるフィルム3の幅をWpa〜Wpdとすると、Wpa〜Wpdは、WpaとWpcは略同一であり、WpbとWpdは略同一であり、WpdはWpcよりも大きいという条件を満足する。従って、予熱ゾーン6aでは、フィルム3は、その幅が維持された状態で予熱される。また、加熱ゾーン6bでは、フィルム3は、搬送されるに従い、その幅が漸増し、延伸される。また、熱緩和ゾーン6cでは、フィルム3は、その幅が維持されながら、加熱され、熱緩和される。
【0024】
第1,第2チェーン32,33は、原動スプロケット35,36及び従動スプロケット37,38に掛け渡されている。原動スプロケット35,36はテンタ出口6d側に設けられており、これらは図示しない駆動機構により回転駆動され、従動スプロケット37,38はテンタ入口6e側に設けられている。こうして、第1チェーン32は、第1レール30に案内されながらスプロケット35,37の間を無端走行し、第2チェーン33は、第2レール31に案内されながらスプロケット36、38の間を無端走行する。
【0025】
図3に示すように、クリップ34は、クリップ本体40とレール取付部41とから構成されている。クリップ本体40は、略コの字形状のフレーム42とフラッパ43とから構成されており、フラッパ43は、取付軸42aによりフレーム42に回動自在に取り付けられている。フラッパ43は、略鉛直に起立した状態となるフィルム把持位置(閉位置)と、開放部材49に係合頭部43aが接触して斜めに起立した状態となる開放位置との間で変位し、開放部材49に係合頭部43aが接触しない場合には、自重又は図示しないバネによりフィルム把持位置となるように付勢されている。フラッパ43がフィルム把持位置に位置する場合には、フィルム把持面42bとフラッパ下面43bとによりフィルム3が把持される。
【0026】
レール取付部41は、取付フレーム44と、ガイドローラ45,46,47とから構成されている。取付フレーム44には、第1チェーン32または第2チェーン33が取り付けられる。ガイドローラ45〜47は、各スプロケット35〜38(図2参照)の各支持面、または、第1レール30または第2レール31の支持面に接触しながら、回転する。これにより、各スプロケット35〜38や各レール30,31からクリップ本体40が脱落することなく、各レール30,31に沿って案内される。
【0027】
各スプロケット35〜38(図2参照)に近接して、クリップ34の開放部材49が配置されている。テンタ入口6e(図2参照)の従動スプロケット37,38に位置するクリップ34の係合頭部43aは、開放部材49と接触する。この接触により、フィルム把持位置PAの前で、クリップ34が開放位置になって、フィルム3の側縁部の受け入れが可能になる。フィルム把持開始位置PAを通過するときに開放部材49が前記係合頭部43aから離れ、クリップ34が開放位置から把持位置にセットされて、フィルム3の側縁部が把持される。同様にして、テンタ出口6eの原動スプロケット35、36に位置するクリップ34の係合頭部43aは開放部材49と接触する。この接触により、フィルム3の把持解除位置PBでクリップ34が開放位置となり、フィルム3の側縁部の把持が開放される。
【0028】
図4及び図5に示すように、接合ユニット11は、送出制御部50と、ニップローラ51,52と、上部溶着ヘッド53及び下部溶着ヘッド54とを有する。ニップローラ51,52は、送出制御部50の制御の下、先行フィルム3aや後行フィルム3bを挟持し、各フィルム3a、3bを搬送方向Aに送り、重ね合わせ処理を行う。
【0029】
各溶着ヘッド53,54は、ヒータ部55とヒータ部55を囲むように覆われる金属製のヘッド本体56とから構成されている。ヘッド本体56には、接触面56aが設けられる。そして、各溶着ヘッド53,54は、接触面56aが各フィルム3a、3bを介して対向するように配される。ヒータ部55の加熱面55aは、略面一となるように接触面56aに露出する。この加熱面55aは、走行方向Aの略中央部から両端部に向かってそれぞれ略等しく伸びるように、そして、幅方向Bでは各フィルム3a、3bの幅と略同一、或いはその幅よりも広くなるように、接触面56aに設けられる。
【0030】
ヒータ部55には電熱ヒータが用いられ、所定の駆動パルスをヒータ部55に通電することにより、ヒータ部55は所定の温度になるまで加熱される。この温度は、各溶着ヘッド53、54の接触面56aによる加熱溶着処理時に、重ね合わせ部分75の各フィルム3a、3bの温度が、各フィルム3a、3bが溶着する温度(以下、溶着温度と称する)になるように設定されている。また、ヒータ部55への通電が止められると、ヘッド本体56が放熱体の作用をし、ヘッド本体56の温度が所定の温度以下まで冷却される。そして、この所定の温度以下となったときに、ヘッド本体56が退避位置にする。こうして、ヒータ部55による重ね合わせ部分75の溶着と、溶着後の冷却とが行われる。冷却後の重ね合わせ部分75は所定の接合強度を保持した状態となるため、溶着した接合部分で接合が取れてしまうということがなくなる。ヒータ部55やヘッド本体56は、熱伝導性に優れた材料(例えば、アルミ、またはアルミニウム合金など)から形成されることが好ましい。
【0031】
各溶着ヘッド53、54は、シフト機構57と温調器58と接続する。シフト機構57は、加熱面55aがフィルム3a,3bに接触し得る溶着位置と、接触面56aがフィルム3a,3bから離れる退避位置との間にて、各溶着ヘッド53,54を移動自在にする。温調機58は、所定の駆動パルスをヒータ部55に通電し、ヒータ部55の温度を一定値まで上昇させる。
【0032】
次に、接合ユニット11にて行われる加熱溶着処理について説明する。図1、及び図6(A)のように、フィルム送出機10は、フィルムロール14から先行フィルム3aを接合ユニット11に送り出し、ニップローラ51、52は、送出制御部50の制御の下、先行フィルム3aをリザーバ5へ搬送する。その後、送出制御部50が、フィルムロール14の先行フィルム3aがなくなったことを検出すると、フィルム送出機10は、ターレットアーム13を180度回転して、巻芯交換位置17にある新たなフィルムロール15をフィルム送出位置16にセットする。そして、新たなフィルムロール15から後行フィルム3bを送り出す。
【0033】
ニップローラ51、52は、送出制御部50の制御の下、後端部73aが溶着位置近傍に位置するように、先行フィルム3aの搬送を調節し(図6(B))、先端部73bが溶着位置近傍に位置するように、後行フィルム3bの搬送を調節する(図5及び図6(C))。こうして、接合ユニット11の溶着位置近傍では、後端部73aと先端部73bとが重なり合う。後端部73aと先端部73bとが重なり合う部分を、重ね合わせ部分75と称する。
【0034】
更に、ニップローラ51、52は、各フィルム3a、3bの重ね合わせ処理により、方向Aにおける加熱面55aの長さをLh、方向Aにおける接触面56aの長さをLpとするときに、方向Aにおける重ね合わせ部分75の長さLoが、Lh<Lo<Lpとなるように、且つ、重ね合わせ部分75、接触面56a、加熱面55aの方向Aにおける略中央部が略一致するように、後端部73aや先端部73bの位置を調節する。
【0035】
シフト機構57は、上部溶着ヘッド53及び下部溶着ヘッド54を溶着位置に移動させて、接触面56aにより、重ね方向Cから、重ね合わせ部分75を所定の圧力で挟持する(図5及び図6(D))。その後、温調機58は、重ね合わせ部分75の搬送方向Aの両端にある各フィルム3a、3bの温度が所定の温度となるように、ヒータ部55を加熱する。こうして、一定時間の間、接触面56aを挟持圧着しながら加熱することにより、各フィルム3a、3bが溶着する。その後、温調機58によりヒータ部55の加熱を止めて、重ね合わせ部分75を挟持したまま、一定時間の間自然冷却する。これにより、重ね合わせ部分75において、先行フィルム3aの後端部73aと後行フィルム3bの先端部73bとが接合する。なお、加熱面55aによる加熱処理、または、冷却処理における一定時間は、各製造条件に応じて適宜決めればよい。
【0036】
最後に、シフト機構57により、上部溶着ヘッド53、下部溶着ヘッド54が、溶着位置から退避位置へ移動する。この後、ニップローラ51、52により、フィルム3a,3bが、フィルム3として一体となって、リザーバ5を介して、テンタ部6に送り出される(図6(E))。
【0037】
図7に、加熱溶着処理における重ね合わせ部分75の温度プロファイルを示す。縦軸は温度を示し、Tcは加熱面55aの温度、Trはフィルムの溶着温度である。また、横軸は走行方向Aにおける位置を示し、Aaは後端部73aの位置、Abは先端部73bの位置、Acは重ね合わせ部分75の中央部の位置を示す。加熱面55aの温度Tcは温調機58により、長さLoは重ね合わせ処理により、それぞれ所望の値に調節可能である。したがって、加熱面55aの長さLhとともに、長さLoや温度Tcを適宜調節することにより、後端部73aや先端部73bの温度をTrとすることができる。こうして、重ね合わせ部分75に位置する各フィルム3a、3bのみを溶着させることが可能になる。なお、重ね合わせ部分75以外のフィルムの溶着が起こらない条件であれば、後端部73aや先端部73bの温度を溶着温度Tcよりも高い温度に調節しても良い。
【0038】
本発明では、重ね合わせ部分75全体を押し付けつつ、重ね合わせ部分75のうち方向Aにおける略中央部を加熱するため、重ね合わせ部分75では、フィルム3a、3bが溶融し、互いに接合させる一方、重ね合わせ部分75以外のフィルム3a、3bは溶融しにくいため、厚さムラの発生を抑えることができる。また、フィルム3aの後端部73aやフィルム3bの先端部73bが重ね合わせ部分75からはみ出ることがないため、従来のように、後端部73aや先端部73bがテンタ部6のクリップ34などに引っかからず、フィルムの破断の発生を抑えられる。したがって、本発明は、重ね合わせ部分75に加熱溶着処理を過不足なく施すことができるため、厚みムラの発生を防止しつつ、先端部73b、後端部73aの接合不足に起因する、搬送不良またはフィルムの破断を回避することができる。
【0039】
加熱面55aの温度は、各フィルム3a、3bを構成するポリマーが溶融し、且つ、分解しない温度、例えば、150℃以上400℃以下の範囲に設定されている。接触面56aによって重ね合わせ部分75に印加される押し圧力は、0.1MPa以上であることが好ましい。更に、フィルム3a、3b内における気泡の発生、加熱溶着を確実に行うために、重ね合わせ部分75に印加される押し圧力を1MPa以上とすることがより好ましい。
【0040】
なお、上記実施形態における長さLo、Lh、Lpは、各条件に合わせて適宜決定すればよい。例えば、重ね合わせ部分75の方向Aにおける長さLoは、接合の強度を確保するために5mm以上とすることが好ましい。長さLoの上限としては、特に限定されないが、10mm以下とすることが好ましい。(Lo−Lh)の値は、8mm以下とすることが好ましい。(Lp−Lo)の値は、後端部73a、先端部73bの位置決めの誤差等から決めればよく、例えば、10mm以下とすることが好ましい。また、(Lp−Lo)の上限を6mm以下とすることがより好ましく、4mm以下とが特に好ましい。一方、(Lp−Lo)の下限を1mm以上とすることが好ましい。
【0041】
本発明において、加熱溶着処理前のフィルム3a、3bの幅が600mm以上であることが好ましく、1400mm以上2500mm以下であることがより好ましく、2500mmより大きい場合にも本発明の効果が発現する。また、加熱溶着処理前のフィルム3a、3bの厚さは、20μm以上200μm以下であることが好ましく、40μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0042】
上記実施形態では、溶融した重ね合わせ部分75を自然冷却したが、本発明はこれに限られず、ヒータ部55を強制的に冷却する冷却手段、或いは、重ね合わせ部分75に冷気を吹き付ける冷風機を用いて、重ね合わせ部分75を冷却してもよい。
【0043】
なお、図8のように、グラスライニングやテフロン(登録商標)ライニングなどにより、接触面56aを剥離層80で覆ってもよい。これにより、挟持圧着加熱後における、フィルム3a、3bと接触面56aとの剥離性が向上するため好ましい。なお、接触面56aにおいて、剥離層80を覆う範囲は、全面でもよいし、その一部、例えば、加熱面55aでもよい。
【0044】
なお、方向Bに伸びるように形成された各溶着ヘッド53、54に代えて、ヒータを内蔵する1対の溶着ローラで重ね合わせ部分75を挟持し、方向Bへ転接させることにより、重ね合わせ部分75に加熱溶着処理を行ってもよい。
【0045】
なお、後端部73aや先端部73bの位置の調節方法として、例えば、後端部73aや先端部73bの位置を検出するラインセンサ等を設け、ラインセンサから得られた後端部73aや先端部73bの位置情報に基づいて、ニップローラ51、52が各フィルム3a、3bの搬送を制御してもよい。
【0046】
(溶液製膜方法)
上記実施形態におけるフィルムは溶液製膜方法により得ることができる。溶液製膜方法を行う溶液製膜設備210は、図9に示すように、ストックタンク211と流延室212とピンテンタ213と乾燥室215と冷却室216と巻取室217とを有する。
【0047】
ストックタンク211は、モータ211aで回転する攪拌翼211bとジャケット211cとを備える。ストックタンク211の内部には、TACフィルム3の原料となるポリマーが溶媒に溶解したドープ221が貯留されている。ストックタンク211内のドープ221は、ジャケット211cにより温度が略一定となるように調整される。また、攪拌翼211bの回転によって、ポリマーなどの凝集を抑制しつつ、ドープ221を均一な品質に保持している。配管222は、ストックタンク211と流延ダイ230とを接続する。
【0048】
流延室212には、流延ダイ230、支持体としての流延ドラム232、剥取ローラ234、温調装置235,236、及び減圧チャンバ237が設置されている。流延ドラム232は図示を省略した駆動装置により軸232aを中心に、方向Z1へ回転する。流延室212内及び流延ドラム232は、温調装置235,236によって、流延膜233が冷却固化(ゲル化)し易い温度に設定されている。
【0049】
流延ダイ230は、幅方向TDに伸びるように形成されるスリットを有する。流延ダイ230は、スリットから回転する流延ドラム232の周面232bに向けて、ドープ221を吐出する。その後、流延ドラム232の周面232b上のドープ221から流延膜233が形成される。そして、流延ドラム232が約3/4回転する間に、ゲル化による自己支持性が流延膜233に発現し、流延膜233は剥取ローラ234によって流延ドラム232から剥ぎ取られ、湿潤フィルム238となる。剥ぎ取り時の流延膜233の残留溶媒量は、150重量%以上320重量%以下であることが好ましい。ここで、残留溶媒量とは、TACフイルム3等に残留する溶媒量を乾量基準で示したものであり、その測定方法は、対象のフイルム等からサンプルを採取し、このサンプルの重量をx、サンプルを乾燥した後の重量をyとするとき、{(x−y)/y}×100で算出する。
【0050】
減圧チャンバ237は、流延ダイ230に対し、方向Z1の上流側に配置されており、減圧チャンバ237内を負圧に保ち、流延ビードの背面(後に、流延ドラム232の周面232bに接する面)側を所望の圧力に減圧する。流延ビードの背面側の減圧により、流延ドラム232の回転により発生する同伴風の影響を少なくし、流延ダイ230と流延ドラム232との間に安定した流延ビードを形成し、膜厚ムラの少ない流延膜233を形成することができる。
【0051】
流延ダイ230の材質は、電解質水溶液、ジクロロメタンやメタノールなどの混合液に対する高い耐腐食性、及び低い熱膨張率を有する素材から形成される。流延ダイ230の接液面の仕上げ精度は表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下のものを用いることが好ましい。
【0052】
流延ドラム232の周面232bは、クロムメッキ処理が施され、十分な耐腐食性と強度を有する。また、温調装置236は、流延ドラム232の周面232bの温度を所望の温度に保つために、流延ドラム232に伝熱媒体を循環させる。伝熱媒体は所望の温度に保持されており、流延ドラム232内の伝熱媒体流路を通過することにより、流延ドラム232の周面232bの温度が所望の温度に保持される。
【0053】
流延ドラム232の幅は特に限定されるものではないが、ドープの流延幅の1.1倍〜2.0倍の範囲のものを用いることが好ましい。流延ドラム232の材質は、ステンレス製であることが好ましく、十分な耐腐食性と強度とを有するようにSUS316製であることがより好ましい。流延ドラム232の周面232bに施されるクロムメッキ処理はビッカース硬さHv700以上、膜厚2μm以上、いわゆる硬質クロムメッキであることが好ましい。
【0054】
また、流延室212内には、蒸発している溶媒を凝縮液化するための凝縮器(コンデンサ)239と凝縮液化した溶媒を回収する回収装置240とが備えられている。凝縮器239で凝縮液化した溶媒は、回収装置240により回収される。その溶媒は再生装置で再生された後に、ドープ調製用溶媒として再利用される。
【0055】
流延室212の下流には、渡り部241、ピンテンタ213が順に設置されている。渡り部241では、搬送ローラ242が、湿潤フィルム238をピンテンタ213に導入する。ピンテンタ213は、湿潤フィルム238の両側縁部を貫通して保持する多数のピンプレートを有し、このピンプレートが軌道上を走行する。ピンプレートにより走行する湿潤フィルム238に対し乾燥風が送られ、湿潤フィルム238は乾燥し、フィルム220となる。
【0056】
ピンテンタ213は、フィルム220の両側縁部を把持する多数のクリップを有し、このクリップが延伸軌道上を走行する。クリップにより走行するフィルム220に対し乾燥風が送られ、フィルム220には、フィルム幅方向TDへの延伸処理とともに乾燥処理が施される。
【0057】
ピンテンタ213の下流にはそれぞれ耳切装置243が設けられている。耳切装置243はフィルム220の両側縁部を裁断する。この裁断した両側縁部は、送風によりクラッシャ244に送られて、粉砕され、ドープ等の原料として再利用される。
【0058】
乾燥室215には、多数のローラ247が設けられており、これらにフィルム220が巻き掛けられて搬送される。乾燥室215の出口側には冷却室216が設けられており、この冷却室216でフィルム220が室温となるまで冷却される。冷却室216の下流には強制除電装置(除電バー)249が設けられており、フィルム220が除電される。さらに、強制除電装置249下流側には、ナーリング付与ローラ250が設けられており、フィルム220の両側縁部にナーリングが付与される。巻取室217には、プレスローラ252を有する巻取機251が設置されており、フィルム220が巻き芯にロール状に巻き取られ、巻取機251により、フィルムロール255が得られる。フィルムロール255は、フィルムロール9として、巻取室217からオフライン延伸設備2のフィルム供給室4(図1参照)に送られ、フィルム供給室4からフィルム3として、送り出される。
【0059】
以下、フィルム3a、3bの原料ポリマーについて説明する。本実施形態では、ポリマーとしてセルロースアシレートを用いており、セルロースアシレートとしては、セルローストリアセテート(TAC)が特に好ましい。そして、セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基へのアシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものがより好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、AおよびBは、セルロースの水酸基中の水素原子に対するアシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数が3〜22のアシル基の置換度である。なお、TACの90重量%以上が0.1〜4mmの粒子であることが好ましい。ただし、本発明に用いることができるポリマーは、セルロースアシレートに限定されるものではない。
(I) 2.5≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
【0060】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位,3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位,3位および6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化の場合を置換度1とする)を意味する。
【0061】
全アシル化置換度、すなわち、DS2+DS3+DS6の値は、2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)の値は、0.28以上が好ましく、より好ましくは0.30以上であり、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2は、グルコース単位における2位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、2位のアシル置換度と称する)であり、DS3は、グルコース単位における3位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、3位のアシル置換度と称する)であり、DS6は、グルコース単位において、6位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、6位のアシル置換度と称する)である。
【0062】
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていてもよい。2種類以上のアシル基を用いるときには、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位,3位および6位の水酸基がアセチル基により置換されている度合いの総和をDSAとし、2位,3位および6位の水酸基がアセチル基以外のアシル基によって置換されている度合いの総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、2.22〜2.90であることが好ましく、特に好ましくは2.40〜2.88である。
【0063】
また、DSBは0.30以上であることが好ましく、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBは、その20%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましく、より好ましくは25%以上であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上であることが好ましい。さらに、セルロースアシレートの6位におけるDSA+DSBの値が0.75以上であり、さらに好ましくは、0.80以上であり、特には0.85以上であるセルロースアシレートも好ましく、これらのセルロースアシレートを用いることで、より溶解性に優れた溶液(ドープ)を作製することができる。特に、非塩素系有機溶媒を使用すると、優れた溶解性を示し、低粘度で濾過性に優れるドープを作製することができる。セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター,パルプのどちらから得られたものでもよい。
【0064】
本発明におけるセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく、特に限定はされない。例えば、セルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどが挙げられ、それぞれ、さらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などが挙げられる。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくは、プロピオニル基、ブタノイル基である。
【0065】
セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号の[0140]段落から[0195]段落に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。また、溶媒および可塑剤,劣化防止剤,紫外線吸収剤(UV剤),光学異方性コントロール剤,レターデーション制御剤,染料,マット剤,剥離剤,剥離促進剤などの添加剤についても、同じく特開2005−104148号の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
【0066】
(溶媒)
ドープを調製する溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが挙げられる。なお、本発明において、ドープとはポリマーを溶媒に溶解または分散して得られるポリマー溶液,分散液を意味している。
【0067】
これらの中でも炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。TACの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度など及びフィルムの光学特性などの物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶媒全体に対し2重量%〜25重量%が好ましく、5重量%〜20重量%がより好ましい。アルコールの具体例としては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール,エタノール,n−ブタノールあるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0068】
ところで、最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない場合の溶媒組成についても検討が進み、この目的に対しては、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素数1〜12のアルコールが好ましく用いられる。これらを適宜混合して用いることがある。例えば、酢酸メチル,アセトン,エタノール,n−ブタノールの混合溶媒が挙げられる。これらのエーテル、ケトン,エステル及びアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン,エステル及びアルコールの官能基(すなわち、−O−,−CO−,−COO−及び−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も、溶媒として用いることができる。
【0069】
上記実施形態では、フィルム3a、3bの原料ポリマーとして、TACを用いると説明したが、これらに限られず、環状オレフィン、他のセルロースエステル、例えば、セルロースアセテートプロピオネート等にも適用可能である。また、融製膜方法によって製造されたポリマーフィルムに適用することもできる。
【0070】
(溶融製膜設備)
次に、溶融製膜方法によりポリマーフィルムを製造する製造設備(以下、溶融製膜設備と称す)について説明する。溶融製膜設備410は、図10に示すように、液晶表示装置等に使用できる熱可塑性フィルムFを製造する装置である。熱可塑性フィルムFの原材料であるペレット状の熱可塑性樹脂を乾燥機412に導入して乾燥させた後、このペレットを押出機414によって押し出し、ギアポンプ416によりフィルタ418に供給する。次いで、フィルタ418により異物がろ過され、ダイ420から溶融樹脂(溶融した熱可塑性樹脂)が押し出される。溶融樹脂は、第1キャスティングロール428とタッチロール424で挟まれて押圧成形された後、第1キャスティングロール428にて冷却固化されて所定の表面粗さのフィルム状とされ、さらに、第2キャスティングロール426、第3キャスティングロール427によって搬送されることで未延伸フィルムFaが得られる。この未延伸フィルムFaは、この段階で巻き取られてもよいし、連続的に長スパン延伸を行う横延伸部442に供給されてもよい。また、一度巻き取られた未延伸フィルムFaを再度横延伸部442に供給しても、連続的に長スパン延伸を行う横延伸部442に供給した場合と同様の効果が得られる。
【0071】
横延伸部442では、未延伸フィルムFaが搬送方向(以下、MD方向と称する)と直交する幅方向(以下、TD方向と称する)に延伸され、横延伸フィルムFbとされる。横延伸部442の上流側に予熱部436を設けてもよいし、横延伸部442の下流側に熱固定部444を設けてもよい。これにより、延伸中のボーイング(光学軸のズレ)を小さくできる。予熱温度は横延伸温度より高いこと、熱固定温度は横延伸温度より低いことが好ましい。すなわち、通常、ボーイングは幅方向中央部が進行方向に向かって凹となるが、予熱温度>横延伸温度、横延伸温度>熱固定温度とすることによりボーイングを低減できる。予熱処理、熱固定処理はどちらか一方でもよく、両方行ってもよい。
【0072】
横延伸の後に後熱処理を行なった後、熱処理ゾーン446でMD方向に横延伸フィルムFbを収縮させる。熱処理ゾーン446では、図11に示すように、横延伸フィルムFbの側端部をチャックで把持しない状態で、TD方向の収縮が起こらずに、MD方向の収縮のみが起こるように複数のロール448a〜448dで横延伸フィルムFbを搬送する。このとき、図12に示すように、複数のロール448a〜448dは、ロールラップ長(D)とロール間長(G)の比(G/D)が0.01以上3以下となるように配置される。これにより横延伸フィルムFbと各ロール448〜448dとの摩擦によりTD方向の収縮が抑制される。そして、横延伸フィルムFbは、上流側のロール448aによる周速度(V1)と下流側のロール448dによる周速度(V2)の比(V2/V1)が0.6以上0.999以下で搬送しながら熱処理される。つまり、横延伸フィルムFbは熱処理ゾーンにてMD方向に収縮する。
【0073】
横延伸フィルムFbが熱処理ゾーンにて熱処理されることで、配向角、レターデーションが調整された最終製品である熱可塑性フィルムFが製造される。このフィルムFは巻取部449によって巻き取られる。
【0074】
TD方向への延伸の前又は後にMD方向の延伸を行ってもよい。MD方向の延伸は、MD方向に並ぶ複数のニップロール対を用いてフィルムを搬送し、上流側のニップロール対の周速度より下流側のニップロール対の周速度を速くすることで達成できる。MD方向におけるニップロール間の距離(L)と上流側のニップロール対でのフィルム幅Wの比(L/W)の大きさで延伸方式が異なり、L/Wが小さいと特開2005−330411号公報、特開2006−348114号公報記載のようなMD方向の延伸方式を採用できる。この方式は、Rthが大きくなり易いが装置をコンパクトにすることができる。一方、L/Wが大きい場合は特開2005−301225号公報記載のようなMD方向の延伸方式を用いることができる。この方式はRthを小さくできるが、装置が長大になり易い。
【0075】
溶融製膜方法に用いることのできるポリマーは、熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、例えば、セルロースアシレート、ラクトン環含有重合体、環状オレフィン、ポリカーボネイト等が挙げられる。中でも好ましいのがセルロースアシレート、環状オレフィンであり、中でも好ましいのがアセテート基、プロピオネート基を含むセルロースアシレート、付加重合によって得られた環状オレフィンであり、さらに好ましくは付加重合によって得られた環状オレフィンである。
【0076】
(環状オレフィン)
環状オレフィンはノルボルネン系化合物から重合されるものが好ましい。この重合は開環重合、付加重合いずれの方法でも行える。付加重合としては例えば特許3517471号公報記載のものや特許3559360号公報、特許3867178号公報、特許3871721号公報、特許3907908号公報、特許3945598号公報、特表2005−527696号公報、特開2006−28993号公報、国際公開第2006/004376号パンフレットに記載のものが挙げられる。特に好ましいのは特許3517471号公報に記載のものである。
【0077】
開環重合としては国際公開第98/14499号パンフレット、特許3060532号公報、特許3220478号公報、特許3273046号公報、特許3404027号公報、特許3428176号公報、特許3687231号公報、特許3873934号公報、特許3912159号公報記載のものが挙げられる。なかでも好ましいのが国際公開第98/14499号パンフレット、特許3060532号公報記載のものである。
【0078】
これらの環状オレフィンの中でも付加重合のものの方がより好ましい。
【0079】
(ラクトン環含有重合体)
下記(一般式1)で表されるラクトン環構造を有するものを指す。
【0080】
【化1】
【0081】
(一般式1)中、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
【0082】
(一般式1)のラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5〜90重量%、より好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは10〜50重量%である。
【0083】
(一般式1)で表されるラクトン環構造以外に、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸、下記(一般式2)で表される単量体から選ばれる少なくとも1種を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)が好ましい。
【0084】
【化2】
【0085】
(一般式2)中、R4は水素原子又はメチル基を表し、Xは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、−OAc基、−CN基、−CO−R5基、又は−C−O−R6基を表し、Ac基はアセチル基を表し、R5及びR6は水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。
【0086】
例えば、国際公開第2006/025445号パンフレット、特開2007−70607号公報、特開2007−63541号公報、特開2006−171464号公報、特開2005−162835号公報記載のものを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】オフライン延伸設備を示す概略の側面図である。
【図2】テンタ部を示す平面図である。
【図3】クリップを示す正面図である。
【図4】接合ユニットの要部を示す斜視図である。
【図5】接合ユニットの要部を示す断面図である。
【図6】溶着ヘッドによる加熱溶着処理手順を示す説明図である。
【図7】加熱溶着処理における重ね合わせ部分の温度プロファイルの概要を示す説明図である。
【図8】剥離層を有する接合ユニットの要部を示す断面図である。
【図9】溶液製膜設備の概要を示す説明図である。
【図10】溶融製膜設備の概要を示す説明図である。
【図11】熱処理ゾーンにおける複数のロールの配置状態を示す斜視図である。
【図12】熱処理ゾーンにおける複数のロールのロールラップ長(D)及びロール間長(G)を示す説明図である。
【符号の説明】
【0088】
2 オフライン延伸設備
3 TACフィルム
3a 先行フィルム
3b 後行フィルム
4 フィルム供給室
6 テンタ部
11 接合ユニット
24 クリップ
50 送出制御部
51、52 ローラ
53 上部溶着ヘッド
54 下部溶着ヘッド
53a、54a 押付面
55 ヒータ部
60 加熱部材
60a 加熱面
75 重ね合わせ部分
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーフィルムの連続延伸方法及び設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリマーフィルム(以下、フィルムと称する)は、優れた光透過性や柔軟性および軽量薄膜化が可能であるなどの特長から光学フィルムとして多岐に利用されている。中でも、セルロースアシレート、特に57.5%〜62.5%の平均酢化度を有するセルローストリアセテート(以下、TACと称する)から形成されるTACフィルムは、その強靭性と難燃性とから写真感光材料のフィルム用支持体として利用されている。また、TACフィルムは、ポリマーフィルムの中でも光学等方性に優れていることから、液晶表示装置の偏光板の保護フィルム,光学補償フィルム(例えば、視野角拡大フィルムなど)などの光学フィルムとして用いられている。
【0003】
フィルムの主な製造方法としては、溶融押出方法と溶液製膜方法とがある。溶融押出方法とは、ポリマーをそのまま加熱溶解させた後、押出機で押し出してフィルムを製造する方法であり、生産性が高く、設備コストも比較的低額であるなどの特徴を有する。しかし、フィルムの厚さの精度を調節することが難しく、また、フィルム上に細かいスジ(ダイライン)ができるために、光学フィルムの製造方法に適していない。一方、溶液製膜方法は、ポリマーと溶媒とを含むポリマー溶液(以下、ドープと称する)を支持体上に流延して形成した流延膜が自己支持性を有するものとなった後、これを支持体から剥がして湿潤フィルムとし、湿潤フィルムを搬送しながら乾燥してフィルムとする。そして、製造過程でフィルムに生じたシワやタルミ等を除去する場合、或いは、フィルムに所望の光学特性を付与する場合には、クリップテンタ等を用いて、フィルムを所定の搬送速度で搬送しながら幅方向に延伸する。最後に、巻取機等を用いて、フィルムをロール状に巻き取る。そして、溶液製膜方法における各工程を連続的に行う方式により、長尺状のフィルムを連続的に効率よく製造することができる。この溶液製膜方法は、溶融押出方法と比べて、光学等方性や厚み均一性に優れるとともに、含有異物の少ないフィルムを得ることができるため、フィルム、特にTACフィルム等の光学フィルムの製造方法には、溶液製膜方法が採用されている。
【0004】
近年、液晶ディスプレイ等の急速な発展・普及により、TACフィルム等の光学フィルムの需要が増大している。この需要の増大に伴い、光学フィルムの生産性の向上が望まれている。
【0005】
溶液製膜方法にて、高速製膜を行う場合には、支持体の走行速度を向上させつつ、流延膜の自己支持性を短時間で発現させる必要がある。流延膜に自己支持性を発現させるためには、流延膜に含まれる溶媒を蒸発する乾燥方式や、流延膜を冷却する冷却ゲル化方式といった手法が用いられる。
【0006】
乾燥方式の溶液製膜方法にて、高速製膜を行う場合には、流延膜の乾燥の高速化が必要になる。しかしながら、流延膜の乾燥の高速化は、フィルムの面状故障の原因である乾燥ムラを誘発するなどの弊害を生じるおそれがある。一方、冷却ゲル化方式の溶液製膜方法にて、高速製膜を行う場合には、上述のような弊害が生じない。したがって、生産効率の向上化の点より、流延膜に自己支持性を発現させる方法として、冷却ゲル化方式が採用されることが多い。
【0007】
しかしながら、支持体の走行速度とクリップテンタによるフィルムの搬送速度とはその最適速度が異なる。したがって、生産効率の向上の観点から冷却ゲル化方式を採用した場合、溶液製膜方法の製膜速度は、クリップテンタによる搬送速度が律速となり、実質的な生産効率の向上を図ることができない。そこで、流延膜を形成し、流延膜を乾燥してフィルムとし、フィルムを巻き取る溶液製膜ラインと、フィルムロールから送り出されたフィルムを延伸する延伸ライン(以下、オフライン延伸設備と称する)とを別に設け、これらを併用する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、特許文献1に記載されているように、オフライン延伸設備にて、フィルムの延伸処理を効率よく行うために、フィルムロールからフィルムを連続して延伸することが好ましい。そして、フィルムロールの切り替え時には、先行するフィルムの後端部と、後行するフィルムの先端部とを重ねて、押し付けながら加熱し、この重ね合わせ部分を接合する(以下、加熱溶着処理と称する)。この加熱溶着処理として、例えば、特許文献2に記載される方法が知られている。このように、2つのフィルムを接合することにより、フィルムをオフライン延伸設備へ連続して供給することが可能となり、結果的に、オフライン延伸設備にて、フィルムの延伸処理を効率よく行うことができる。
【特許文献1】特開2002−311240号公報
【特許文献2】実開昭53−020268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、各フィルムの先端部や後端部の接合を確実に行うために、重ね合わせ部分及び重ね合わせ部分近傍のフィルムにまで加熱溶着処理を行うと、重ね合わせ部分近傍のフィルムのうち、加熱溶着処理によって溶融した部分と溶融していない部分との境界に一定量の膜厚差(以下、厚さムラと称する)が生じてしまう。かかる状態のフィルムについて延伸処理を行うと、厚さムラが生じた部分近傍からフィルムが破断するおそれがある。一方、重ね合わせ部分の長さに対して加熱溶着長さを短くすると、短い分だけ重ね合わせ部分の両端に、加熱溶着されないフィルム端が現れてしまう。このフィルム端が、オフライン延伸装置内の部品や部材等に引っかかり、搬送不良またはフィルムの破断が発生するおそれがある。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するものであり、重ね合わせ部分に加熱溶着処理を過不足なく行い、2本のフィルムを接合するポリマーフィルムの連続延伸方法及び設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、先行して走行するポリマーフィルムの後端部に、後行して走行するポリマーフィルムの先端部を重ね合わせ、この重ね合わせた部分を、重ね方向から1対の溶着ヘッドにより挟持し、前記溶着ヘッドから前記重ね合わせ部分に熱を加えて、前記重ね合わせ部分を溶着させて接合し、この接合されたポリマーフィルムの両端部を把持してフィルム幅方向に延伸するポリマーフィルムの連続延伸方法において、前記ポリマーフィルムの走行方向における前記重ね合わせ部分の長さをLo、前記走行方向における前記溶着ヘッドのフィルム接触面の長さをLp、前記走行方向における前記溶着ヘッドのフィルム加熱面の長さをLhとするときに、Lh<Lo<Lpとし、前記重ね合わせ部分、前記フィルム接触面、前記フィルム加熱面の前記走行方向における中央部を略一致させ、前記挟持押圧時に、前記重ね合わせ部分の前記走行方向両端の温度を前記ポリマーフィルムの溶着温度にすることを特徴とする。
【0012】
前記フィルム接触面及び前記フィルム加熱面を覆うように設けられる剥離層を介して前記重ね合わせ部の加熱及び溶着を行うことが好ましい。また、前記重ね合わせ部分の長さLoが5mm以上10mm以下であり、(Lp−Lo)の値を10mm以下とすることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、先行して走行するポリマーフィルムの後端部に、後行して走行するポリマーフィルムの先端部を重ね合わせ、この重ね合わせた部分を、重ね方向から1対の溶着ヘッドにより挟持し、前記溶着ヘッドから前記重ね合わせ部に熱を加えて、前記重ね合わせ部分を溶着させて接合し、この接合されたポリマーフィルムの両端部を把持してフィルム幅方向に延伸するポリマーフィルムの連続延伸設備において、前記1対の溶着ヘッドに設けられ、前記ポリマーフィルムの走行方向における長さがLpのフィルム接触面と、前記フィルム接触面に略面一に、前記走行方向の中央部から両端部に向かってそれぞれ略等しく伸びるように設けられ、前記走行方向における長さがLhのフィルム加熱面と、前記重ね合わせ部分及び前記フィルム加熱面の前記走行方向における中央部を略一致させるように前記ポリマーフィルムを送り出し、前記走行方向における前記重ね合わせ部分の長さをLoとするときに、Lh<Lo<Lpとなるようにする送出装置と、前記重ね合わせ部分を前記1対の溶着ヘッドにより挟持する際、前記重ね合わせ部分の前記走行方向両端の温度が前記ポリマーフィルムの溶着温度となるように、前記フィルム加熱面を加熱する加熱制御装置と、を備えることを特徴とする。なお、前記フィルム接触面及び前記フィルム加熱面を覆う剥離層を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、2本のフィルムの先端部及び後端部からなる重ね合わせ部分に、加熱溶着処理を過不足なく行なうことが可能となるため、2本のフィルムを接合したフィルムについて、搬送不良また破断の発生を抑えつつ、延伸処理を同一条件で連続して行うことができる。したがって、本発明によれば、オフライン延伸設備において効率よく延伸処理を行うことが可能となるため、タルミ、シワ等がなく、面状に優れ、均一の光学特性を有するフィルムを効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に示すように、オフライン延伸設備2は、フィルム3を供給するフィルム供給室4と、リザーバ5と、テンタ部6と、熱緩和室7と、冷却室8と、フィルム巻取室9とを順に有し、テンタ部6では、フィルム3に延伸処理を連続して施す。
【0016】
フィルム供給室4は、ターレット型のフィルム送出機10及び接合ユニット11を備える。フィルム送出機10は、ターレットアーム13を有する。このターレットアーム13の両端部には、取付軸12a、12bが設けられている。取付軸12aには、フィルムロール14が取り付けられる。このターレットアーム13は、180度間欠回転することにより、取付軸12aをフィルム送出位置16にセットし、他方の取付軸12bを巻芯交換位置17にセットする。こうして、フィルムロール14がフィルム送出位置16にセットされる。
【0017】
フィルム送出機10は、フィルムロール14からフィルム3を接合ユニット11へ送り出す。また、巻芯交換位置17にある取付軸12bからは空の巻き芯が取り出され、新たなフィルムロール15がセットされる。フィルム送出機10は、フィルム送出位置16にあるフィルムロール14のフィルム3が無くなったことを検出すると、ターレットアーム13を180度回転して、巻芯交換位置17にある新たなフィルムロール15をフィルム送出位置16にセットする。そして、新たなフィルムロール15からフィルム3が送出する。なお、フィルムロール14、15は、乾燥方式または冷却ゲル化方式の溶液製膜方法により製造されたフィルムからなる。
【0018】
この際に、接合ユニット11では、フィルムロール14から送り出されたフィルム(先行フィルム)3aの後端部と、新たなフィルムロール15から送り出されたフィルム(後行フィルム)3bの先端部とを加熱溶着処理により接合し、1本のフィルム3とする。このフィルム3はリザーバ5へ送られる。接合ユニット11及び加熱溶着処理の詳細は後述する。リザーバ5では、後述する加熱溶着処理に必要な時間分以上の貯留長さを有するループを形成した後に、フィルム3をテンタ部6に送り出している。
【0019】
テンタ部6は、所定条件下で、フィルム3の両側縁部を把持して、フィルム3を幅方向に延伸し、フィルム3を耳切装置21に送り出す。耳切装置21は、フィルム3から、フィルム3の当該両側縁部を切断する。耳切装置21によりその両側縁部が切り離された製品部分としてのフィルム3は、熱緩和室7に送られる。一方、フィルム3から切り離された両側縁部はカットブロア22に送られ、細かく小片にカットされる。カットされた耳屑小片は、図示しない風送装置によりクラッシャ23に送られ、粉砕されてチップとなる。このチップはドープ調製用に再利用される。
【0020】
熱緩和室7には、多数のローラ25及び図示しない乾燥用ダクトが備えられており、フィルム3はローラ25により熱緩和室7内を搬送されて加熱により熱緩和された後、冷却室8に送られる。なお、乾燥風ダクトからの風の温度は、20℃以上250℃以下であることが好ましい。
【0021】
熱緩和後のフィルム3は、冷却室8で30℃以下に冷却された後、フィルム巻取室9に送られる。フィルム巻取室9には、プレスローラ26を有する巻取機27が設けられている。巻取機27は、フィルム3を巻き芯28に巻き取る。プレスローラ26は、巻き芯28に巻き取られる際のフィルム3を巻き芯28の方向に押圧する。
【0022】
図2のように、テンタ部6は、フィルム3をフィルム搬送方向Aに搬送しながら、フィルム幅方向Bに延伸するものであり、第1レール30と、第2レール31と、これらレール30,31に案内される第1,第2チェーン(エンドレスチェーン)32,33とを備えている。テンタ部6は、図示しない乾燥室内に配置されている。乾燥室は、フィルム搬送方向Aに沿って、予熱ゾーン6a,加熱ゾーン6b,熱緩和ゾーン6cが順次設けられ、各ゾーン6a〜6cに最適なフィルム温度となるように図示しないダクトにより乾燥風が送られている。なお、テンタ部6における延伸倍率は所望の光学特性等に合わせて適宜変更されるものであるが、フィルム3を幅方向に100.5%〜300%延伸することが好ましい。
【0023】
第1,第2チェーン32,33には、クリップ34が一定の間隔で多数取り付けられている。点PAはクリップ34によるフィルム3の把持開始位置を示しており、点PBはクリップ34によるフィルム3の把持開放位置を示している。また、点PCはクリップ34による延伸開始位置を、点PDはクリップ34による延伸終了位置をそれぞれ示している。これら各点PA〜PDにおけるフィルム3の幅をWpa〜Wpdとすると、Wpa〜Wpdは、WpaとWpcは略同一であり、WpbとWpdは略同一であり、WpdはWpcよりも大きいという条件を満足する。従って、予熱ゾーン6aでは、フィルム3は、その幅が維持された状態で予熱される。また、加熱ゾーン6bでは、フィルム3は、搬送されるに従い、その幅が漸増し、延伸される。また、熱緩和ゾーン6cでは、フィルム3は、その幅が維持されながら、加熱され、熱緩和される。
【0024】
第1,第2チェーン32,33は、原動スプロケット35,36及び従動スプロケット37,38に掛け渡されている。原動スプロケット35,36はテンタ出口6d側に設けられており、これらは図示しない駆動機構により回転駆動され、従動スプロケット37,38はテンタ入口6e側に設けられている。こうして、第1チェーン32は、第1レール30に案内されながらスプロケット35,37の間を無端走行し、第2チェーン33は、第2レール31に案内されながらスプロケット36、38の間を無端走行する。
【0025】
図3に示すように、クリップ34は、クリップ本体40とレール取付部41とから構成されている。クリップ本体40は、略コの字形状のフレーム42とフラッパ43とから構成されており、フラッパ43は、取付軸42aによりフレーム42に回動自在に取り付けられている。フラッパ43は、略鉛直に起立した状態となるフィルム把持位置(閉位置)と、開放部材49に係合頭部43aが接触して斜めに起立した状態となる開放位置との間で変位し、開放部材49に係合頭部43aが接触しない場合には、自重又は図示しないバネによりフィルム把持位置となるように付勢されている。フラッパ43がフィルム把持位置に位置する場合には、フィルム把持面42bとフラッパ下面43bとによりフィルム3が把持される。
【0026】
レール取付部41は、取付フレーム44と、ガイドローラ45,46,47とから構成されている。取付フレーム44には、第1チェーン32または第2チェーン33が取り付けられる。ガイドローラ45〜47は、各スプロケット35〜38(図2参照)の各支持面、または、第1レール30または第2レール31の支持面に接触しながら、回転する。これにより、各スプロケット35〜38や各レール30,31からクリップ本体40が脱落することなく、各レール30,31に沿って案内される。
【0027】
各スプロケット35〜38(図2参照)に近接して、クリップ34の開放部材49が配置されている。テンタ入口6e(図2参照)の従動スプロケット37,38に位置するクリップ34の係合頭部43aは、開放部材49と接触する。この接触により、フィルム把持位置PAの前で、クリップ34が開放位置になって、フィルム3の側縁部の受け入れが可能になる。フィルム把持開始位置PAを通過するときに開放部材49が前記係合頭部43aから離れ、クリップ34が開放位置から把持位置にセットされて、フィルム3の側縁部が把持される。同様にして、テンタ出口6eの原動スプロケット35、36に位置するクリップ34の係合頭部43aは開放部材49と接触する。この接触により、フィルム3の把持解除位置PBでクリップ34が開放位置となり、フィルム3の側縁部の把持が開放される。
【0028】
図4及び図5に示すように、接合ユニット11は、送出制御部50と、ニップローラ51,52と、上部溶着ヘッド53及び下部溶着ヘッド54とを有する。ニップローラ51,52は、送出制御部50の制御の下、先行フィルム3aや後行フィルム3bを挟持し、各フィルム3a、3bを搬送方向Aに送り、重ね合わせ処理を行う。
【0029】
各溶着ヘッド53,54は、ヒータ部55とヒータ部55を囲むように覆われる金属製のヘッド本体56とから構成されている。ヘッド本体56には、接触面56aが設けられる。そして、各溶着ヘッド53,54は、接触面56aが各フィルム3a、3bを介して対向するように配される。ヒータ部55の加熱面55aは、略面一となるように接触面56aに露出する。この加熱面55aは、走行方向Aの略中央部から両端部に向かってそれぞれ略等しく伸びるように、そして、幅方向Bでは各フィルム3a、3bの幅と略同一、或いはその幅よりも広くなるように、接触面56aに設けられる。
【0030】
ヒータ部55には電熱ヒータが用いられ、所定の駆動パルスをヒータ部55に通電することにより、ヒータ部55は所定の温度になるまで加熱される。この温度は、各溶着ヘッド53、54の接触面56aによる加熱溶着処理時に、重ね合わせ部分75の各フィルム3a、3bの温度が、各フィルム3a、3bが溶着する温度(以下、溶着温度と称する)になるように設定されている。また、ヒータ部55への通電が止められると、ヘッド本体56が放熱体の作用をし、ヘッド本体56の温度が所定の温度以下まで冷却される。そして、この所定の温度以下となったときに、ヘッド本体56が退避位置にする。こうして、ヒータ部55による重ね合わせ部分75の溶着と、溶着後の冷却とが行われる。冷却後の重ね合わせ部分75は所定の接合強度を保持した状態となるため、溶着した接合部分で接合が取れてしまうということがなくなる。ヒータ部55やヘッド本体56は、熱伝導性に優れた材料(例えば、アルミ、またはアルミニウム合金など)から形成されることが好ましい。
【0031】
各溶着ヘッド53、54は、シフト機構57と温調器58と接続する。シフト機構57は、加熱面55aがフィルム3a,3bに接触し得る溶着位置と、接触面56aがフィルム3a,3bから離れる退避位置との間にて、各溶着ヘッド53,54を移動自在にする。温調機58は、所定の駆動パルスをヒータ部55に通電し、ヒータ部55の温度を一定値まで上昇させる。
【0032】
次に、接合ユニット11にて行われる加熱溶着処理について説明する。図1、及び図6(A)のように、フィルム送出機10は、フィルムロール14から先行フィルム3aを接合ユニット11に送り出し、ニップローラ51、52は、送出制御部50の制御の下、先行フィルム3aをリザーバ5へ搬送する。その後、送出制御部50が、フィルムロール14の先行フィルム3aがなくなったことを検出すると、フィルム送出機10は、ターレットアーム13を180度回転して、巻芯交換位置17にある新たなフィルムロール15をフィルム送出位置16にセットする。そして、新たなフィルムロール15から後行フィルム3bを送り出す。
【0033】
ニップローラ51、52は、送出制御部50の制御の下、後端部73aが溶着位置近傍に位置するように、先行フィルム3aの搬送を調節し(図6(B))、先端部73bが溶着位置近傍に位置するように、後行フィルム3bの搬送を調節する(図5及び図6(C))。こうして、接合ユニット11の溶着位置近傍では、後端部73aと先端部73bとが重なり合う。後端部73aと先端部73bとが重なり合う部分を、重ね合わせ部分75と称する。
【0034】
更に、ニップローラ51、52は、各フィルム3a、3bの重ね合わせ処理により、方向Aにおける加熱面55aの長さをLh、方向Aにおける接触面56aの長さをLpとするときに、方向Aにおける重ね合わせ部分75の長さLoが、Lh<Lo<Lpとなるように、且つ、重ね合わせ部分75、接触面56a、加熱面55aの方向Aにおける略中央部が略一致するように、後端部73aや先端部73bの位置を調節する。
【0035】
シフト機構57は、上部溶着ヘッド53及び下部溶着ヘッド54を溶着位置に移動させて、接触面56aにより、重ね方向Cから、重ね合わせ部分75を所定の圧力で挟持する(図5及び図6(D))。その後、温調機58は、重ね合わせ部分75の搬送方向Aの両端にある各フィルム3a、3bの温度が所定の温度となるように、ヒータ部55を加熱する。こうして、一定時間の間、接触面56aを挟持圧着しながら加熱することにより、各フィルム3a、3bが溶着する。その後、温調機58によりヒータ部55の加熱を止めて、重ね合わせ部分75を挟持したまま、一定時間の間自然冷却する。これにより、重ね合わせ部分75において、先行フィルム3aの後端部73aと後行フィルム3bの先端部73bとが接合する。なお、加熱面55aによる加熱処理、または、冷却処理における一定時間は、各製造条件に応じて適宜決めればよい。
【0036】
最後に、シフト機構57により、上部溶着ヘッド53、下部溶着ヘッド54が、溶着位置から退避位置へ移動する。この後、ニップローラ51、52により、フィルム3a,3bが、フィルム3として一体となって、リザーバ5を介して、テンタ部6に送り出される(図6(E))。
【0037】
図7に、加熱溶着処理における重ね合わせ部分75の温度プロファイルを示す。縦軸は温度を示し、Tcは加熱面55aの温度、Trはフィルムの溶着温度である。また、横軸は走行方向Aにおける位置を示し、Aaは後端部73aの位置、Abは先端部73bの位置、Acは重ね合わせ部分75の中央部の位置を示す。加熱面55aの温度Tcは温調機58により、長さLoは重ね合わせ処理により、それぞれ所望の値に調節可能である。したがって、加熱面55aの長さLhとともに、長さLoや温度Tcを適宜調節することにより、後端部73aや先端部73bの温度をTrとすることができる。こうして、重ね合わせ部分75に位置する各フィルム3a、3bのみを溶着させることが可能になる。なお、重ね合わせ部分75以外のフィルムの溶着が起こらない条件であれば、後端部73aや先端部73bの温度を溶着温度Tcよりも高い温度に調節しても良い。
【0038】
本発明では、重ね合わせ部分75全体を押し付けつつ、重ね合わせ部分75のうち方向Aにおける略中央部を加熱するため、重ね合わせ部分75では、フィルム3a、3bが溶融し、互いに接合させる一方、重ね合わせ部分75以外のフィルム3a、3bは溶融しにくいため、厚さムラの発生を抑えることができる。また、フィルム3aの後端部73aやフィルム3bの先端部73bが重ね合わせ部分75からはみ出ることがないため、従来のように、後端部73aや先端部73bがテンタ部6のクリップ34などに引っかからず、フィルムの破断の発生を抑えられる。したがって、本発明は、重ね合わせ部分75に加熱溶着処理を過不足なく施すことができるため、厚みムラの発生を防止しつつ、先端部73b、後端部73aの接合不足に起因する、搬送不良またはフィルムの破断を回避することができる。
【0039】
加熱面55aの温度は、各フィルム3a、3bを構成するポリマーが溶融し、且つ、分解しない温度、例えば、150℃以上400℃以下の範囲に設定されている。接触面56aによって重ね合わせ部分75に印加される押し圧力は、0.1MPa以上であることが好ましい。更に、フィルム3a、3b内における気泡の発生、加熱溶着を確実に行うために、重ね合わせ部分75に印加される押し圧力を1MPa以上とすることがより好ましい。
【0040】
なお、上記実施形態における長さLo、Lh、Lpは、各条件に合わせて適宜決定すればよい。例えば、重ね合わせ部分75の方向Aにおける長さLoは、接合の強度を確保するために5mm以上とすることが好ましい。長さLoの上限としては、特に限定されないが、10mm以下とすることが好ましい。(Lo−Lh)の値は、8mm以下とすることが好ましい。(Lp−Lo)の値は、後端部73a、先端部73bの位置決めの誤差等から決めればよく、例えば、10mm以下とすることが好ましい。また、(Lp−Lo)の上限を6mm以下とすることがより好ましく、4mm以下とが特に好ましい。一方、(Lp−Lo)の下限を1mm以上とすることが好ましい。
【0041】
本発明において、加熱溶着処理前のフィルム3a、3bの幅が600mm以上であることが好ましく、1400mm以上2500mm以下であることがより好ましく、2500mmより大きい場合にも本発明の効果が発現する。また、加熱溶着処理前のフィルム3a、3bの厚さは、20μm以上200μm以下であることが好ましく、40μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0042】
上記実施形態では、溶融した重ね合わせ部分75を自然冷却したが、本発明はこれに限られず、ヒータ部55を強制的に冷却する冷却手段、或いは、重ね合わせ部分75に冷気を吹き付ける冷風機を用いて、重ね合わせ部分75を冷却してもよい。
【0043】
なお、図8のように、グラスライニングやテフロン(登録商標)ライニングなどにより、接触面56aを剥離層80で覆ってもよい。これにより、挟持圧着加熱後における、フィルム3a、3bと接触面56aとの剥離性が向上するため好ましい。なお、接触面56aにおいて、剥離層80を覆う範囲は、全面でもよいし、その一部、例えば、加熱面55aでもよい。
【0044】
なお、方向Bに伸びるように形成された各溶着ヘッド53、54に代えて、ヒータを内蔵する1対の溶着ローラで重ね合わせ部分75を挟持し、方向Bへ転接させることにより、重ね合わせ部分75に加熱溶着処理を行ってもよい。
【0045】
なお、後端部73aや先端部73bの位置の調節方法として、例えば、後端部73aや先端部73bの位置を検出するラインセンサ等を設け、ラインセンサから得られた後端部73aや先端部73bの位置情報に基づいて、ニップローラ51、52が各フィルム3a、3bの搬送を制御してもよい。
【0046】
(溶液製膜方法)
上記実施形態におけるフィルムは溶液製膜方法により得ることができる。溶液製膜方法を行う溶液製膜設備210は、図9に示すように、ストックタンク211と流延室212とピンテンタ213と乾燥室215と冷却室216と巻取室217とを有する。
【0047】
ストックタンク211は、モータ211aで回転する攪拌翼211bとジャケット211cとを備える。ストックタンク211の内部には、TACフィルム3の原料となるポリマーが溶媒に溶解したドープ221が貯留されている。ストックタンク211内のドープ221は、ジャケット211cにより温度が略一定となるように調整される。また、攪拌翼211bの回転によって、ポリマーなどの凝集を抑制しつつ、ドープ221を均一な品質に保持している。配管222は、ストックタンク211と流延ダイ230とを接続する。
【0048】
流延室212には、流延ダイ230、支持体としての流延ドラム232、剥取ローラ234、温調装置235,236、及び減圧チャンバ237が設置されている。流延ドラム232は図示を省略した駆動装置により軸232aを中心に、方向Z1へ回転する。流延室212内及び流延ドラム232は、温調装置235,236によって、流延膜233が冷却固化(ゲル化)し易い温度に設定されている。
【0049】
流延ダイ230は、幅方向TDに伸びるように形成されるスリットを有する。流延ダイ230は、スリットから回転する流延ドラム232の周面232bに向けて、ドープ221を吐出する。その後、流延ドラム232の周面232b上のドープ221から流延膜233が形成される。そして、流延ドラム232が約3/4回転する間に、ゲル化による自己支持性が流延膜233に発現し、流延膜233は剥取ローラ234によって流延ドラム232から剥ぎ取られ、湿潤フィルム238となる。剥ぎ取り時の流延膜233の残留溶媒量は、150重量%以上320重量%以下であることが好ましい。ここで、残留溶媒量とは、TACフイルム3等に残留する溶媒量を乾量基準で示したものであり、その測定方法は、対象のフイルム等からサンプルを採取し、このサンプルの重量をx、サンプルを乾燥した後の重量をyとするとき、{(x−y)/y}×100で算出する。
【0050】
減圧チャンバ237は、流延ダイ230に対し、方向Z1の上流側に配置されており、減圧チャンバ237内を負圧に保ち、流延ビードの背面(後に、流延ドラム232の周面232bに接する面)側を所望の圧力に減圧する。流延ビードの背面側の減圧により、流延ドラム232の回転により発生する同伴風の影響を少なくし、流延ダイ230と流延ドラム232との間に安定した流延ビードを形成し、膜厚ムラの少ない流延膜233を形成することができる。
【0051】
流延ダイ230の材質は、電解質水溶液、ジクロロメタンやメタノールなどの混合液に対する高い耐腐食性、及び低い熱膨張率を有する素材から形成される。流延ダイ230の接液面の仕上げ精度は表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下のものを用いることが好ましい。
【0052】
流延ドラム232の周面232bは、クロムメッキ処理が施され、十分な耐腐食性と強度を有する。また、温調装置236は、流延ドラム232の周面232bの温度を所望の温度に保つために、流延ドラム232に伝熱媒体を循環させる。伝熱媒体は所望の温度に保持されており、流延ドラム232内の伝熱媒体流路を通過することにより、流延ドラム232の周面232bの温度が所望の温度に保持される。
【0053】
流延ドラム232の幅は特に限定されるものではないが、ドープの流延幅の1.1倍〜2.0倍の範囲のものを用いることが好ましい。流延ドラム232の材質は、ステンレス製であることが好ましく、十分な耐腐食性と強度とを有するようにSUS316製であることがより好ましい。流延ドラム232の周面232bに施されるクロムメッキ処理はビッカース硬さHv700以上、膜厚2μm以上、いわゆる硬質クロムメッキであることが好ましい。
【0054】
また、流延室212内には、蒸発している溶媒を凝縮液化するための凝縮器(コンデンサ)239と凝縮液化した溶媒を回収する回収装置240とが備えられている。凝縮器239で凝縮液化した溶媒は、回収装置240により回収される。その溶媒は再生装置で再生された後に、ドープ調製用溶媒として再利用される。
【0055】
流延室212の下流には、渡り部241、ピンテンタ213が順に設置されている。渡り部241では、搬送ローラ242が、湿潤フィルム238をピンテンタ213に導入する。ピンテンタ213は、湿潤フィルム238の両側縁部を貫通して保持する多数のピンプレートを有し、このピンプレートが軌道上を走行する。ピンプレートにより走行する湿潤フィルム238に対し乾燥風が送られ、湿潤フィルム238は乾燥し、フィルム220となる。
【0056】
ピンテンタ213は、フィルム220の両側縁部を把持する多数のクリップを有し、このクリップが延伸軌道上を走行する。クリップにより走行するフィルム220に対し乾燥風が送られ、フィルム220には、フィルム幅方向TDへの延伸処理とともに乾燥処理が施される。
【0057】
ピンテンタ213の下流にはそれぞれ耳切装置243が設けられている。耳切装置243はフィルム220の両側縁部を裁断する。この裁断した両側縁部は、送風によりクラッシャ244に送られて、粉砕され、ドープ等の原料として再利用される。
【0058】
乾燥室215には、多数のローラ247が設けられており、これらにフィルム220が巻き掛けられて搬送される。乾燥室215の出口側には冷却室216が設けられており、この冷却室216でフィルム220が室温となるまで冷却される。冷却室216の下流には強制除電装置(除電バー)249が設けられており、フィルム220が除電される。さらに、強制除電装置249下流側には、ナーリング付与ローラ250が設けられており、フィルム220の両側縁部にナーリングが付与される。巻取室217には、プレスローラ252を有する巻取機251が設置されており、フィルム220が巻き芯にロール状に巻き取られ、巻取機251により、フィルムロール255が得られる。フィルムロール255は、フィルムロール9として、巻取室217からオフライン延伸設備2のフィルム供給室4(図1参照)に送られ、フィルム供給室4からフィルム3として、送り出される。
【0059】
以下、フィルム3a、3bの原料ポリマーについて説明する。本実施形態では、ポリマーとしてセルロースアシレートを用いており、セルロースアシレートとしては、セルローストリアセテート(TAC)が特に好ましい。そして、セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基へのアシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものがより好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、AおよびBは、セルロースの水酸基中の水素原子に対するアシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数が3〜22のアシル基の置換度である。なお、TACの90重量%以上が0.1〜4mmの粒子であることが好ましい。ただし、本発明に用いることができるポリマーは、セルロースアシレートに限定されるものではない。
(I) 2.5≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
【0060】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位,3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位,3位および6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化の場合を置換度1とする)を意味する。
【0061】
全アシル化置換度、すなわち、DS2+DS3+DS6の値は、2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)の値は、0.28以上が好ましく、より好ましくは0.30以上であり、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2は、グルコース単位における2位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、2位のアシル置換度と称する)であり、DS3は、グルコース単位における3位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、3位のアシル置換度と称する)であり、DS6は、グルコース単位において、6位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、6位のアシル置換度と称する)である。
【0062】
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていてもよい。2種類以上のアシル基を用いるときには、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位,3位および6位の水酸基がアセチル基により置換されている度合いの総和をDSAとし、2位,3位および6位の水酸基がアセチル基以外のアシル基によって置換されている度合いの総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、2.22〜2.90であることが好ましく、特に好ましくは2.40〜2.88である。
【0063】
また、DSBは0.30以上であることが好ましく、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBは、その20%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましく、より好ましくは25%以上であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上であることが好ましい。さらに、セルロースアシレートの6位におけるDSA+DSBの値が0.75以上であり、さらに好ましくは、0.80以上であり、特には0.85以上であるセルロースアシレートも好ましく、これらのセルロースアシレートを用いることで、より溶解性に優れた溶液(ドープ)を作製することができる。特に、非塩素系有機溶媒を使用すると、優れた溶解性を示し、低粘度で濾過性に優れるドープを作製することができる。セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター,パルプのどちらから得られたものでもよい。
【0064】
本発明におけるセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく、特に限定はされない。例えば、セルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどが挙げられ、それぞれ、さらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などが挙げられる。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくは、プロピオニル基、ブタノイル基である。
【0065】
セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号の[0140]段落から[0195]段落に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。また、溶媒および可塑剤,劣化防止剤,紫外線吸収剤(UV剤),光学異方性コントロール剤,レターデーション制御剤,染料,マット剤,剥離剤,剥離促進剤などの添加剤についても、同じく特開2005−104148号の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
【0066】
(溶媒)
ドープを調製する溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが挙げられる。なお、本発明において、ドープとはポリマーを溶媒に溶解または分散して得られるポリマー溶液,分散液を意味している。
【0067】
これらの中でも炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。TACの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度など及びフィルムの光学特性などの物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶媒全体に対し2重量%〜25重量%が好ましく、5重量%〜20重量%がより好ましい。アルコールの具体例としては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール,エタノール,n−ブタノールあるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0068】
ところで、最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない場合の溶媒組成についても検討が進み、この目的に対しては、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素数1〜12のアルコールが好ましく用いられる。これらを適宜混合して用いることがある。例えば、酢酸メチル,アセトン,エタノール,n−ブタノールの混合溶媒が挙げられる。これらのエーテル、ケトン,エステル及びアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン,エステル及びアルコールの官能基(すなわち、−O−,−CO−,−COO−及び−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も、溶媒として用いることができる。
【0069】
上記実施形態では、フィルム3a、3bの原料ポリマーとして、TACを用いると説明したが、これらに限られず、環状オレフィン、他のセルロースエステル、例えば、セルロースアセテートプロピオネート等にも適用可能である。また、融製膜方法によって製造されたポリマーフィルムに適用することもできる。
【0070】
(溶融製膜設備)
次に、溶融製膜方法によりポリマーフィルムを製造する製造設備(以下、溶融製膜設備と称す)について説明する。溶融製膜設備410は、図10に示すように、液晶表示装置等に使用できる熱可塑性フィルムFを製造する装置である。熱可塑性フィルムFの原材料であるペレット状の熱可塑性樹脂を乾燥機412に導入して乾燥させた後、このペレットを押出機414によって押し出し、ギアポンプ416によりフィルタ418に供給する。次いで、フィルタ418により異物がろ過され、ダイ420から溶融樹脂(溶融した熱可塑性樹脂)が押し出される。溶融樹脂は、第1キャスティングロール428とタッチロール424で挟まれて押圧成形された後、第1キャスティングロール428にて冷却固化されて所定の表面粗さのフィルム状とされ、さらに、第2キャスティングロール426、第3キャスティングロール427によって搬送されることで未延伸フィルムFaが得られる。この未延伸フィルムFaは、この段階で巻き取られてもよいし、連続的に長スパン延伸を行う横延伸部442に供給されてもよい。また、一度巻き取られた未延伸フィルムFaを再度横延伸部442に供給しても、連続的に長スパン延伸を行う横延伸部442に供給した場合と同様の効果が得られる。
【0071】
横延伸部442では、未延伸フィルムFaが搬送方向(以下、MD方向と称する)と直交する幅方向(以下、TD方向と称する)に延伸され、横延伸フィルムFbとされる。横延伸部442の上流側に予熱部436を設けてもよいし、横延伸部442の下流側に熱固定部444を設けてもよい。これにより、延伸中のボーイング(光学軸のズレ)を小さくできる。予熱温度は横延伸温度より高いこと、熱固定温度は横延伸温度より低いことが好ましい。すなわち、通常、ボーイングは幅方向中央部が進行方向に向かって凹となるが、予熱温度>横延伸温度、横延伸温度>熱固定温度とすることによりボーイングを低減できる。予熱処理、熱固定処理はどちらか一方でもよく、両方行ってもよい。
【0072】
横延伸の後に後熱処理を行なった後、熱処理ゾーン446でMD方向に横延伸フィルムFbを収縮させる。熱処理ゾーン446では、図11に示すように、横延伸フィルムFbの側端部をチャックで把持しない状態で、TD方向の収縮が起こらずに、MD方向の収縮のみが起こるように複数のロール448a〜448dで横延伸フィルムFbを搬送する。このとき、図12に示すように、複数のロール448a〜448dは、ロールラップ長(D)とロール間長(G)の比(G/D)が0.01以上3以下となるように配置される。これにより横延伸フィルムFbと各ロール448〜448dとの摩擦によりTD方向の収縮が抑制される。そして、横延伸フィルムFbは、上流側のロール448aによる周速度(V1)と下流側のロール448dによる周速度(V2)の比(V2/V1)が0.6以上0.999以下で搬送しながら熱処理される。つまり、横延伸フィルムFbは熱処理ゾーンにてMD方向に収縮する。
【0073】
横延伸フィルムFbが熱処理ゾーンにて熱処理されることで、配向角、レターデーションが調整された最終製品である熱可塑性フィルムFが製造される。このフィルムFは巻取部449によって巻き取られる。
【0074】
TD方向への延伸の前又は後にMD方向の延伸を行ってもよい。MD方向の延伸は、MD方向に並ぶ複数のニップロール対を用いてフィルムを搬送し、上流側のニップロール対の周速度より下流側のニップロール対の周速度を速くすることで達成できる。MD方向におけるニップロール間の距離(L)と上流側のニップロール対でのフィルム幅Wの比(L/W)の大きさで延伸方式が異なり、L/Wが小さいと特開2005−330411号公報、特開2006−348114号公報記載のようなMD方向の延伸方式を採用できる。この方式は、Rthが大きくなり易いが装置をコンパクトにすることができる。一方、L/Wが大きい場合は特開2005−301225号公報記載のようなMD方向の延伸方式を用いることができる。この方式はRthを小さくできるが、装置が長大になり易い。
【0075】
溶融製膜方法に用いることのできるポリマーは、熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、例えば、セルロースアシレート、ラクトン環含有重合体、環状オレフィン、ポリカーボネイト等が挙げられる。中でも好ましいのがセルロースアシレート、環状オレフィンであり、中でも好ましいのがアセテート基、プロピオネート基を含むセルロースアシレート、付加重合によって得られた環状オレフィンであり、さらに好ましくは付加重合によって得られた環状オレフィンである。
【0076】
(環状オレフィン)
環状オレフィンはノルボルネン系化合物から重合されるものが好ましい。この重合は開環重合、付加重合いずれの方法でも行える。付加重合としては例えば特許3517471号公報記載のものや特許3559360号公報、特許3867178号公報、特許3871721号公報、特許3907908号公報、特許3945598号公報、特表2005−527696号公報、特開2006−28993号公報、国際公開第2006/004376号パンフレットに記載のものが挙げられる。特に好ましいのは特許3517471号公報に記載のものである。
【0077】
開環重合としては国際公開第98/14499号パンフレット、特許3060532号公報、特許3220478号公報、特許3273046号公報、特許3404027号公報、特許3428176号公報、特許3687231号公報、特許3873934号公報、特許3912159号公報記載のものが挙げられる。なかでも好ましいのが国際公開第98/14499号パンフレット、特許3060532号公報記載のものである。
【0078】
これらの環状オレフィンの中でも付加重合のものの方がより好ましい。
【0079】
(ラクトン環含有重合体)
下記(一般式1)で表されるラクトン環構造を有するものを指す。
【0080】
【化1】
【0081】
(一般式1)中、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
【0082】
(一般式1)のラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5〜90重量%、より好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは10〜50重量%である。
【0083】
(一般式1)で表されるラクトン環構造以外に、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸、下記(一般式2)で表される単量体から選ばれる少なくとも1種を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)が好ましい。
【0084】
【化2】
【0085】
(一般式2)中、R4は水素原子又はメチル基を表し、Xは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、−OAc基、−CN基、−CO−R5基、又は−C−O−R6基を表し、Ac基はアセチル基を表し、R5及びR6は水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。
【0086】
例えば、国際公開第2006/025445号パンフレット、特開2007−70607号公報、特開2007−63541号公報、特開2006−171464号公報、特開2005−162835号公報記載のものを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】オフライン延伸設備を示す概略の側面図である。
【図2】テンタ部を示す平面図である。
【図3】クリップを示す正面図である。
【図4】接合ユニットの要部を示す斜視図である。
【図5】接合ユニットの要部を示す断面図である。
【図6】溶着ヘッドによる加熱溶着処理手順を示す説明図である。
【図7】加熱溶着処理における重ね合わせ部分の温度プロファイルの概要を示す説明図である。
【図8】剥離層を有する接合ユニットの要部を示す断面図である。
【図9】溶液製膜設備の概要を示す説明図である。
【図10】溶融製膜設備の概要を示す説明図である。
【図11】熱処理ゾーンにおける複数のロールの配置状態を示す斜視図である。
【図12】熱処理ゾーンにおける複数のロールのロールラップ長(D)及びロール間長(G)を示す説明図である。
【符号の説明】
【0088】
2 オフライン延伸設備
3 TACフィルム
3a 先行フィルム
3b 後行フィルム
4 フィルム供給室
6 テンタ部
11 接合ユニット
24 クリップ
50 送出制御部
51、52 ローラ
53 上部溶着ヘッド
54 下部溶着ヘッド
53a、54a 押付面
55 ヒータ部
60 加熱部材
60a 加熱面
75 重ね合わせ部分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行して走行するポリマーフィルムの後端部に、後行して走行するポリマーフィルムの先端部を重ね合わせ、この重ね合わせた部分を、重ね方向から1対の溶着ヘッドにより挟持し、前記溶着ヘッドから前記重ね合わせ部分に熱を加えて、前記重ね合わせ部分を溶着させて接合し、この接合されたポリマーフィルムの両端部を把持してフィルム幅方向に延伸するポリマーフィルムの連続延伸方法において、
前記ポリマーフィルムの走行方向における前記重ね合わせ部分の長さをLo、前記走行方向における前記溶着ヘッドのフィルム接触面の長さをLp、前記走行方向における前記溶着ヘッドのフィルム加熱面の長さをLhとするときに、Lh<Lo<Lpとし、
前記重ね合わせ部分、前記フィルム接触面、前記フィルム加熱面の前記走行方向における中央部を略一致させ、
前記挟持押圧時に、前記重ね合わせ部分の前記走行方向両端の温度を前記ポリマーフィルムの溶着温度にすることを特徴とするポリマーフィルムの連続延伸方法。
【請求項2】
前記フィルム接触面及び前記フィルム加熱面を覆うように設けられる剥離層を介して前記重ね合わせ部の加熱及び溶着を行うことを特徴とする請求項1記載のポリマーフィルムの連続延伸方法。
【請求項3】
前記重ね合わせ部分の長さLoが5mm以上10mm以下であり、(Lp−Lo)の値を10mm以下とすることを特徴とする請求項1または2記載のポリマーフィルムの連続延伸方法。
【請求項4】
先行して走行するポリマーフィルムの後端部に、後行して走行するポリマーフィルムの先端部を重ね合わせ、この重ね合わせた部分を、重ね方向から1対の溶着ヘッドにより挟持し、前記溶着ヘッドから前記重ね合わせ部に熱を加えて、前記重ね合わせ部分を溶着させて接合し、この接合されたポリマーフィルムの両端部を把持してフィルム幅方向に延伸するポリマーフィルムの連続延伸設備において、
前記1対の溶着ヘッドに設けられ、前記ポリマーフィルムの走行方向における長さがLpのフィルム接触面と、
前記フィルム接触面に略面一に、前記走行方向の中央部から両端部に向かってそれぞれ略等しく伸びるように設けられ、前記走行方向における長さがLhのフィルム加熱面と、
前記重ね合わせ部分及び前記フィルム加熱面の前記走行方向における中央部を略一致させるように前記ポリマーフィルムを送り出し、前記走行方向における前記重ね合わせ部分の長さをLoとするときに、Lh<Lo<Lpとなるようにする送出装置と、
前記重ね合わせ部分を前記1対の溶着ヘッドにより挟持する際、前記重ね合わせ部分の前記走行方向両端の温度が前記ポリマーフィルムの溶着温度となるように、前記フィルム加熱面を加熱する加熱制御装置と、
を備えることを特徴とするポリマーフィルムの連続延伸設備。
【請求項5】
前記フィルム接触面及び前記フィルム加熱面を覆う剥離層を有することを特徴とする請求項4記載のポリマーフィルムの連続延伸設備。
【請求項1】
先行して走行するポリマーフィルムの後端部に、後行して走行するポリマーフィルムの先端部を重ね合わせ、この重ね合わせた部分を、重ね方向から1対の溶着ヘッドにより挟持し、前記溶着ヘッドから前記重ね合わせ部分に熱を加えて、前記重ね合わせ部分を溶着させて接合し、この接合されたポリマーフィルムの両端部を把持してフィルム幅方向に延伸するポリマーフィルムの連続延伸方法において、
前記ポリマーフィルムの走行方向における前記重ね合わせ部分の長さをLo、前記走行方向における前記溶着ヘッドのフィルム接触面の長さをLp、前記走行方向における前記溶着ヘッドのフィルム加熱面の長さをLhとするときに、Lh<Lo<Lpとし、
前記重ね合わせ部分、前記フィルム接触面、前記フィルム加熱面の前記走行方向における中央部を略一致させ、
前記挟持押圧時に、前記重ね合わせ部分の前記走行方向両端の温度を前記ポリマーフィルムの溶着温度にすることを特徴とするポリマーフィルムの連続延伸方法。
【請求項2】
前記フィルム接触面及び前記フィルム加熱面を覆うように設けられる剥離層を介して前記重ね合わせ部の加熱及び溶着を行うことを特徴とする請求項1記載のポリマーフィルムの連続延伸方法。
【請求項3】
前記重ね合わせ部分の長さLoが5mm以上10mm以下であり、(Lp−Lo)の値を10mm以下とすることを特徴とする請求項1または2記載のポリマーフィルムの連続延伸方法。
【請求項4】
先行して走行するポリマーフィルムの後端部に、後行して走行するポリマーフィルムの先端部を重ね合わせ、この重ね合わせた部分を、重ね方向から1対の溶着ヘッドにより挟持し、前記溶着ヘッドから前記重ね合わせ部に熱を加えて、前記重ね合わせ部分を溶着させて接合し、この接合されたポリマーフィルムの両端部を把持してフィルム幅方向に延伸するポリマーフィルムの連続延伸設備において、
前記1対の溶着ヘッドに設けられ、前記ポリマーフィルムの走行方向における長さがLpのフィルム接触面と、
前記フィルム接触面に略面一に、前記走行方向の中央部から両端部に向かってそれぞれ略等しく伸びるように設けられ、前記走行方向における長さがLhのフィルム加熱面と、
前記重ね合わせ部分及び前記フィルム加熱面の前記走行方向における中央部を略一致させるように前記ポリマーフィルムを送り出し、前記走行方向における前記重ね合わせ部分の長さをLoとするときに、Lh<Lo<Lpとなるようにする送出装置と、
前記重ね合わせ部分を前記1対の溶着ヘッドにより挟持する際、前記重ね合わせ部分の前記走行方向両端の温度が前記ポリマーフィルムの溶着温度となるように、前記フィルム加熱面を加熱する加熱制御装置と、
を備えることを特徴とするポリマーフィルムの連続延伸設備。
【請求項5】
前記フィルム接触面及び前記フィルム加熱面を覆う剥離層を有することを特徴とする請求項4記載のポリマーフィルムの連続延伸設備。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−160914(P2009−160914A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240257(P2008−240257)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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