説明

ポリマーワックス剥離廃液の浄化システム

【課題】環境保護を実現可能であるとともに、省資源化をより実現可能なポリマーワックス剥離廃液の浄化システムを提供する。
【解決手段】実施例1の浄化システムはポリマー析出装置5を備えている。このポリマー析出装置5は、主として水からなる緩衝液を貯留しポリマーワックス剥離廃液が制御されつつ緩衝液中に供給される第1、2緩衝室17a、17bを有している。また、ポリマーワックス剥離廃液と緩衝液とからなる混合液のpHを測定可能な第1、2pH測定機19a、19bと、混合液からポリマーを主とする固形分を分離して第1被処理液を得る上流側反応室23aとを有している。この浄化システムでは、ポリマーワックス剥離廃液中におけるポリマー等の固形分と緩衝液との中和反応が各緩衝室17a、17bの全体に亘って時間をかけて徐々に進行する。これにより、分離された固形分は流動性の高いペースト状となり、再利用に向けた加工が容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリマーワックス剥離廃液の浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の床材等には、保護と美観とを保つ目的から、ポリマーワックスが塗布される。そして、ポリマーワックスが塗布された床等は、人の歩行等により傷つき、汚れた場合には、年に数回の割合でポリマーワックスが剥離剤等の溶剤によって剥がされ、再び新しいポリマーワックスが塗布される。このようなポリマーワックスは亜鉛等の金属で架橋されたポリマーからなり、床等の耐久性の向上が図られている。このため、上記の作業によって生じたポリマーワックス剥離廃液には、溶けたポリマーの他、亜鉛化合物、剥離剤、洗剤、土汚れ等が含まれている。
【0003】
このポリマーワックス剥離廃液は、溶けたポリマー等、環境に悪い汚染物質が大量に含まれ、そのまま下水等に排出することは好ましくない。このため、このポリマーワックス剥離廃液は、専用の浄化システムを用いて汚染物質を逐次分離除去する作業が行われる。また、この際、ポリマーワックス剥離廃液からポリマー等の固形分を分離させて、その再利用を図ることも行われている。
【0004】
このようなポリマーワックス剥離廃液の浄化システムとしては、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この浄化システムは、ポリマーワックス剥離廃液中に高濃度の酸を直接供給することで、ポリマー等の固形分を瞬時に分離させるポリマー析出装置を備えている。
【0005】
この浄化システムによれば、ポリマーワックス剥離廃液から、ポリマー等の固形分と、その固形分が分離された処理液とを得ることができる。この際、ポリマーワックス剥離廃液から分離された固形分は流動性が低い半固形化の状態で回収される。その固形分は、複数の処理を経て最終的に固形燃料として再生され、その再利用が図られている。なお、処理液についても、その後の中和処理、おが屑の混合、乾燥処理を経て、固形燃料に戻されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−277455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ポリマーワックス剥離廃液においては、環境保護の観点から、上記のような汚染物質が適切に浄化される必要がある他、近年の省資源化志向の高まりから、分離されたポリマー等の固形分について、より幅広い再利用が求められている。この点、上記従来の浄化システムでは、分離された固形分を焼却処分に等しい固形燃料としてしか再利用しておらず、省資源化の実現が不十分である。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、環境保護を実現可能であるとともに、省資源化をより実現可能なポリマーワックス剥離廃液の浄化システムを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のポリマーワックス剥離廃液の浄化システムは、金属によって架橋されたポリマーからなるポリマーワックスを水と剥離剤と洗剤とで剥離することにより生じ、該金属と該ポリマーと該剥離剤と該洗剤とを含むポリマーワックス剥離廃液の浄化システムであって、
ポリマー析出装置を備え、
該ポリマー析出装置は、主として水からなる緩衝液を貯留し、前記ポリマーワックス剥離廃液が制御されつつ該緩衝液中に供給される緩衝室と、
前記ポリマーワックス剥離廃液と該緩衝液とからなる混合液のpHを測定可能なpH測定機と、
該混合液から、前記ポリマーを主とする固形分を分離して第1被処理液を得る上流側反応室とを有していることを特徴とする(請求項1)。
【0010】
上記従来の浄化システムでは、ポリマーワックス剥離廃液に対し、直接、高濃度の酸を供給することから、ポリマーワックス剥離廃液中のポリマー等と酸とが急激に中和反応を生じることになる。この際、ポリマーワックス剥離廃液中のポリマー等の凝集だけでなく、既に凝集したポリマー等の硬化反応も急激に生じることとなるため、ポリマーワックス剥離廃液から固形分が固形化した状態で分離されることとなる。また、従来の浄化システムでは、ポリマーワックス剥離廃液を攪拌している状態であっても、酸が供給された近辺では中和反応が急激に進行する一方、その周辺部分では酸が十分に行渡らず、中和反応が進行し難い。このため、ポリマーワックス剥離廃液全体からポリマー等を分離させ難くなっている。
【0011】
さらに、除去されたポリマーワックス自体の性質の他、塗布されていた床等の状態や清掃作業の方法如何によって、ポリマーワックス剥離廃液中における樹脂濃度、洗剤、亜鉛化合物等の濃度は、それぞれに異なる。このため、各ポリマーワックス剥離廃液におけるpHも個々に差が生じることとなる。また、発明者等の知見によれば、上記の中和反応が進行するにつれて、ポリマーワックス剥離廃液のpHも変化する。この点、従来の浄化システムでは、各ポリマーワックス剥離廃液におけるpHの差異に注目することなく、過剰量の酸を供給している。
【0012】
これらのため、上記従来の浄化システムでは、ポリマーワックス剥離廃液から分離される固形分の状態にばらつきが生じ易い。また、高濃度の酸によって分離された固形分は高い酸性を示すことから、このような固形分では、その再利用が図り難い。
【0013】
これに対し、本発明のポリマーワックス剥離廃液の浄化システムはポリマー析出装置を備えている。このポリマー析出装置においては、緩衝室に貯留されている緩衝液に対してポリマーワックス剥離廃液が制御されつつ供給される。この際、ポリマーワックス剥離廃液に対して行われる制御としては、例えば、緩衝室への供給速度や供給量の制御等が挙げられる。また、緩衝室に貯留されている緩衝液は、主として水で構成されているため、緩衝液のpHは中性領域の性質となっている。ここで、中性領域とは、pH=6.5〜9.0の範囲を指す。これらのため、このポリマー析出装置では、ポリマーワックス剥離廃液中におけるポリマー等の固形分と緩衝液との中和反応が緩衝室全体に亘って時間をかけて徐々に進行することとなる。
【0014】
また、本発明に係るポリマー析出装置は、pH測定機を有しているため、中和反応時における緩衝室内における混合液のpHを測定するとともに、その管理を行うことが可能となっている。このため、測定されたpHを基に、緩衝室に供給するポリマーワックス剥離廃液の制御を行うことで、開始時点から終了時点まで常に好適な状態で中和反応が行われることとなる。
【0015】
これらのため、この浄化システムでは、上流側反応室において、ポリマー等の固形分は混合液から好適に分離される。また、その分離された固形分は、硬化しておらず、流動性の高いペースト状となる。さらに、上記のように剥離液のpHが中性領域にあるため、分離された固形分及び第1被処理液のpHも中性領域に近い性質となる。これらのため、分離された固形分について、再利用に向けた加工等が容易となり、再利用の用途を広くすることが可能となる。また、第1被処理液についても、その後の処理が容易となる。
【0016】
したがって、本発明の浄化システムによれば、環境保護を実現可能であるとともに、省資源化をより実現可能である。このようにして分離された固形分の再利用の用途としては、例えば合成ゴム用のフィラーや樹脂用のフィラーとすること等が挙げられる。
【0017】
本発明の浄化システムにおいて、緩衝液中に含まれる成分としては、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、消石灰及び希釈された硫酸水等が挙げられる。これらは緩衝液を中性領域に維持し易くするために含まれ得る。
【0018】
上流側反応室は混合液から固形分を濾過する等、固体と液体とを分離するものである。上流側反応室は遠心分離機内に設けられていることが好ましい(請求項2)。この場合には、混合液から、より好適に固形分が分離されるため、第1被処理液中に残留する固形分を少なくすることが可能となる。このため、ポリマーワックス剥離廃液中の固形分をより多く再利用することが可能となる。
【0019】
また、本発明の浄化システムは金属析出装置を備え得る。この金属析出装置は、第1被処理液を貯留しつつ、金属固定剤によって第1被処理液中の金属を水に不溶な硫化物として生成させる第1反応室を有し得る。また、第1被処理液及び硫化物からなる第2被処理液を貯留しつつ、触媒によって硫化物を自己凝集反応によって粗大化してフロックとする第2反応室を有し得る。さらに、第2被処理液からフロックを分離した第3被処理液を得る第3反応室を有し得る(請求項3)。
【0020】
この場合には、第1被処理液中に含まれる金属を硫化物として分離することが可能となる。また、硫化物となった金属をフロックとすることで、第2被処理液中の微細な金属も好適に収集することが可能となる。また、第3反応室において第2被処理液からフロックが分離されることで、分離されたフロックも、上記の固形分と同様、再利用することが可能となる。
【0021】
また、本発明の浄化システムは有機物除去装置を備え得る。この有機物除去装置は、好気性バクテリア及び嫌気性バクテリアの働きによって第3被処理液から有機物を除去して第4被処理液を得る下流側反応室を有していることが好ましい(請求項4)。この場合には、好気性バクテリア及び嫌気性バクテリアによって第3被処理液に含まれる有機物を分解させることが可能であり、第3被処理液を浄化することができる。こうして得られた第4被処理液は下水等に排出することが可能となる。上記のように、嫌気性バクテリアを使用することで、好気性バクテリアのみを使用する場合よりも排出汚泥が非常に少なくなる。このため、第4被処理液の水質がより好適な状態となる。さらに、嫌気性バクテリアは、好気性バクテリアと異なり、ミネラルや他の栄養素の補給も必要ない。このため、第3被処理液ひいてはポリマーワックス剥離廃液の浄化処理を低コストで行うことが可能となる。
【0022】
本発明の浄化システムは、固形分を混合粉砕し、ゴム用のフィラーを得るフィラー製造装置を備えていることが好ましい(請求項5)。この場合には、一つの浄化システムにおいて、ポリマーワックス剥離廃液の浄化処理と、固形分の再利用に向けた処理とを一貫して行うことが可能となる。なお、このフィラー製造装置は、上記の第3反応室において分離されたフロックの再利用に向けた処理についても使用することができる。
【0023】
本発明の浄化システムにおいて、第1反応室は、下流に向かって第2被処理液を流通させる流路と接続され得る。そして、第2反応室は、流路が下方に接続され、上方から第3被処理液を排出可能な淘汰管からなることが好ましい(請求項6)。この場合には、フロックが淘汰管の下方に沈殿するため、第2被処理液について、硫化物を多く含んだ部分と硫化物をほとんど含まない上澄み部分とに分離することが可能となる。そして、この第2被処理液の上澄み部分は、実質的に上記の第3被処理液と同質の状態となる。このため、第3反応室の他、第2反応室によっても第3被処理液を得ることが可能となる。このため、ポリマーワックス剥離廃液の浄化処理が効率よく行われることとなる。
【0024】
本発明の浄化システムにおいて、触媒は、塩基性硫酸マグネシウムのウィスカーからなり、ウィスカーがガラス化しない温度でペレット状に固化されたものであることが好ましい(請求項7)。発明者等の検証によれば、触媒について、ウィスカーをガラス化させない状態で固化されたものであれば、硫化物をフロックとさせる際の活性度を高くすることができる。このため、このような触媒であれば、第2被処理液から金属の硫化物をより好適に収集、粗大化させて分離することが可能となる。なお、上記の要件を満たす触媒としては、MMフロック((株)マエダマテリアル製)が挙げられる。
【0025】
本発明のポリマーワックス剥離廃液の浄化システムはポリマーワックス剥離廃液の浄化方法としても把握され得る。すなわち、本発明のポリマーワックス剥離廃液の浄化システムは以下の浄化方法を実行する。
【0026】
この浄化方法はポリマー析出ステージを備える。上記ポリマー析出装置がポリマー析出ステージを実行する。このポリマー析出ステージは、主として水からなる緩衝液を貯留し、前記ポリマーワックス剥離廃液を制御しつつ緩衝液中に供給する供給工程と、前記ポリマーワックス剥離廃液と該緩衝液とからなる混合液のpHを測定するpH測定工程と、該混合液から、前記ポリマーを主とする固形分を分離して第1被処理液を得る上流側反応工程とを有している。上流側反応工程は濾過によって行われる他、遠心分離によって行われ得る。
【0027】
浄化方法は金属析出ステージを備え得る。上記金属析出装置が金属析出ステージを実行する。この金属析出ステージは、前記第1被処理液を貯留しつつ、金属固定剤によって該第1被処理液中の前記金属を水に不溶な硫化物として生成させる第1反応工程と、該第1被処理液及び該硫化物からなる第2被処理液を貯留しつつ、触媒によって該硫化物を自己凝集反応によって粗大化してフロックとする第2反応工程と、該第2被処理液から該フロックを分離した第3被処理液を得る第3反応工程とを有している。
【0028】
浄化方法は有機物除去ステージを備え得る。上記有機物除去装置が有機物除去ステージを実行する。この有機物除去ステージは、好気性バクテリア及び嫌気性バクテリアの働きによって前記第3被処理液から有機物を除去して第4被処理液を得る下流側反応工程を有している。
【0029】
浄化方法は、固形分を混合粉砕し、ゴム用のフィラーを得るフィラー製造ステージを備え得る。上記フィラー製造装置がフィラー製造ステージを実行する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1の浄化システムの一部を示す模式構造図である。
【図2】実施例1の浄化システムの一部を示す模式構造図である。
【図3】実施例1の浄化システムが実行する浄化方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【0032】
(実施例1)
実施例の浄化システムは、図1及び図2に示すように、廃液貯留漕3と、ポリマー析出装置5(以上、図1参照。)と、金属析出装置7と、pH調整漕9と、有機物除去装置11(以上、図2参照。)とを備えている。また、この浄化システムは、図1及び図2に示すフィラー製造装置13を備えている。この浄化システムは、図3に示す浄化方法を実行する。
【0033】
図1に示すように、廃液貯留漕3内には廃液貯留室3aが形成されている。この廃液貯留室3aには、ポリマーワックス剥離廃液が貯留される。廃液貯留室3a内には流路101の一端側が接続されている。流路101には流路102の一端側が接続されている。
【0034】
ポリマー析出装置5は、第1、2混合漕15a、15bと、緩衝液のpHを測定可能な第1、2pH測定機19a、19bと、濾過機23とを有している。浄化方法は、図3に示すように、ポリマー析出ステージSG1を有している。ポリマー析出ステージSG1は供給工程SP1と、pH測定工程SP2と、上流側反応工程SP3とを有している。
【0035】
図1に示すように、第1、2混合漕15a、15b内には、緩衝液を貯留する第1、2緩衝室17a、17bが形成されている。これらの第1、2緩衝室17a、17b内には、それぞれ図示しない攪拌機が設けられている。各攪拌機は、図示しない制御装置に電気的に接続されており、図示しないモータによって回転駆動されるようになっている。
【0036】
第1緩衝室17aには流路101の他端側が接続されており、第2緩衝室17bには流路102の他端側が接続されている。これにより、各緩衝室17a、17bは、流路101、102を介して廃液貯留室3と連通している。また、流路101には第1ポンプP1が設けられている。この第1ポンプP1は図示しない制御装置に電気的に接続されており、各緩衝室17a、17bへ供給されるポリマーワックス剥離廃液の供給量を調節することが可能となっている。
【0037】
また、各緩衝室17a、17bは、流路103、104を介して緩衝液貯留タンク21と連通している。緩衝室17a内には流路103の一端側が接続されている。流路103には、第1開閉弁V1が設けられている。第1開閉弁V1は、図示しない制御装置に電気的に接続されている。
【0038】
緩衝液貯留タンク21には、主として水からなる緩衝液が貯留されている。この緩衝液は、5重量%の硫酸水溶液20リットルに対し、炭酸マグネシウム400g、水酸化マグネシウム250g及び少量の消石灰が添加されることによって得られている。また、この緩衝液は、水酸化カリウムによってpHの値が7.0、すなわち中性領域となるように調整されている。
【0039】
なお、炭酸マグネシウムを加えずに緩衝液を得ることも可能である。しかし、この場合には水酸化マグネシウムが硫酸水溶液に溶化する速度が遅くなる。一方、炭酸マグネシウムは、硫酸水溶液に溶化する際、炭酸ガス(CO2)を放出する。これにより水酸化マグネシウムの溶化速度が促進されることとなり、好適に緩衝液を得ることが可能となっている。
【0040】
第1開閉弁V1より下流の流路103には流路104の一端側が接続され、緩衝室17b内には流路104の他端側が接続されている。また、第1、2緩衝室17a、17bには、上記の第1、2pH測定機19a、19bがそれぞれ取り付けられている。各pH測定機19a、19bは、公知のpH測定機と同一の構成であり、構成に関する詳細な説明を省略する。また、各pH測定機19a、19bは、図示しない制御装置に電気的に接続されている。なお、第1、2混合漕15a、15bは、ポリマー析出装置5内にいずれか一方のみ設けられても良く、三漕以上設けられても良い。また、pH測定機の数も、形成される緩衝室の数に応じて適宜変更することが可能である。
【0041】
第1、2緩衝室17a、17bの底部には流路105、106の一端側が接続されている。流路106の他端側は流路105に接続されている。濾過機23内には、上流側反応室23aが形成されている。この上流側反応室23a内に流路105の他端側が接続されている。また、この上流側反応室23aには、図示しない流路を介して水が供給されるようになっている。さらに、この上流側反応室23a(濾過機23)の底部には流路107の一端側が接続されている。この流路107の他端側は、フィラー製造装置13と接続されている。また、流路107には第2開閉弁V2が設けられている。この第2開閉弁V2は、図示しない制御装置に電気的に接続されている。なお、濾過機23に関する他の構成は周知の濾過機と同様であり、構成に関する詳細な説明を省略する。
【0042】
上流側反応室23a(濾過機23)の上部には金属析出装置7に繋がる流路108が接続されている。図2に示すように、金属析出装置7は、反応漕25と、第1淘汰管27と、第2淘汰管29とを有している。浄化方法は、図3に示すように、金属析出ステージSG2を有している。金属析出ステージSG2は第1反応工程SP4と、第2反応工程SP5と、第3反応工程SP6とを有している。
【0043】
図1に示すように、反応漕25内には第1反応室25aが形成されている。この第1反応室25aは、流路108によって上流側反応室23a(図1参照)と連通している。また、この第1反応室25aは、流路109によって金属固定剤貯留タンク31と連通している。流路109には第3開閉弁V3が設けられている。この第3開閉弁V3は図示しない制御装置に電気的に接続されている。
【0044】
金属固定剤貯留タンク31には、金属固定剤(ホクエツHMS−100L(味の素ファインテクノ株式会社製))が貯留されている。この金属固定剤には硫黄が含まれている。また、第1反応室25a内には、攪拌機33が設けられている。この攪拌機33は図示しない制御装置に電気的に接続されており、図示しないモータによって回転駆動されるようになっている。
【0045】
第1反応室25aの下流には、第1淘汰管27が設けられている。この第1淘汰管27内には、下方が小径となるテーパ状の第2反応室27aが形成されている。この第2反応室27aの底部には、触媒35(MMフロック((株)マエダマテリアル製))が充填されている。この触媒35は、塩基性硫酸マグネシウムのウィスカーからなり、ウィスカーがガラス化しない温度でペレット状に固化されることで得られている。
【0046】
第1反応室25aの底部には流路110の一端側が接続されており、流路110の他端側は第1淘汰管27の下方に接続されている。流路110には第2ポンプP2が設けられている。この第2ポンプP2は、図示しない制御装置に電気的に接続されている。
【0047】
第1淘汰管27の上方には流路111の一端側が接続されている。また、第2反応室27aの中間部分には流路112の一端側が接続されており、流路112の他端側が第2淘汰管29の中間部分に接続されている。第2淘汰管29内には、第3反応室29aが形成されている。第2淘汰管29の上方には流路114の一端側が接続されており、流路114の他端側は流路111と接続されている。また、第2淘汰管29の下方には流路113の一端側が接続されている。流路113の他端側は、フィラー製造装置13に接続されている。流路113には第4開閉弁V4が設けられている。この第4開閉弁V4は、図示しない制御装置に電気的に接続されている。
【0048】
流路111の一端側はpH調整漕9に接続されている。pH調整漕9内には、pH調整室9aが形成されている。pH調整室9a内には、図示しない流路を介して水が供給されるようになっている。また、このpH調整室9aは、流路115により、pH調整剤(10倍に希釈されたリン酸)が貯留されたpH調整剤貯留タンク37と連通している。流路115には第5開閉弁V5が設けられている。この第5開閉弁V5は、図示しない制御装置に電気的に接続されている。
【0049】
pH調整漕9には流路116の一端側が接続されており、流路116の他端側は有機物除去装置11に接続されている。有機物除去装置11としては、KIDSシステム活性汚泥槽(クレハエンジニアリング(株)社製)が採用されている。浄化方法は、図3に示すように、有機物除去ステージSG3を有している。有機物除去ステージSG3は下流側反応工程SP7を有している。
【0050】
図1に示すように、有機物除去装置11は下流側反応室11aを有しており、この下流側反応室11aは、好気性バクテリアが充填された前段部分と、嫌気性バクテリアが充填された後段部分とを有している。流路116には第3ポンプP3が設けられている。この第3ポンプP3は、図示しない制御装置に電気的に接続されている。
【0051】
フィラー製造装置13には、公知のボールミルと、再利用に向けて必要な成分の追加等を行う調整機と、公知のスプレードライヤー(いずれも図示しない。)とが設けられている。浄化方法は、図3に示すように、フィラー製造ステージSG4を有している。
【0052】
このように構成された浄化システムでは、以下に示すようにしてポリマーワックス剥離廃液の浄化を行う。ポリマーワックス剥離廃液のpHと、ポリマーワックス剥離廃液に含まれるBOD(Biochemical Oxygen Demand:生物化学的酸素要求量)、TOC(Total Organic Carbon:全有機炭素)及び亜鉛の量とを表1に示す。
【表1】

【0053】
まず、図1に示す廃液貯留室3aにポリマーワックス剥離廃液を貯留する。この浄化システムでは、廃液貯留室3aに20リットルのポリマーワックス剥離廃液が貯留されている。このポリマーワックス剥離廃液は、亜鉛によって架橋されたポリマーからなるポリマーワックスを水と剥離剤と洗剤とで剥離することにより生じたものであり、亜鉛とポリマーと剥離剤と洗剤とを含んでいる。このため、このポリマーワックス剥離廃液は、剥離されたポリマーワックスや洗剤や土汚れ等により非常に濁った状態となっている。また、このポリマーワックス剥離廃液は、上記の表1に示されているように、pHの値が11.2の強いアルカリ性を示しており、BODの値は74000mg/Lとなっている。また、TOCの値は77000mg/Lとなっており、含有する亜鉛の量は1000mg/Lとなっている。
【0054】
制御装置は第1開閉弁V1の開制御を行い、第1、2緩衝室17a、17bに緩衝液を貯留する。各緩衝室17a、17bに緩衝液が適量貯留された後、第1開閉弁V1は閉制御される。この状態で制御装置は第1ポンプP1及び各攪拌機を作動させることにより、各緩衝室17a、17b内の緩衝液を攪拌しつつ、各緩衝室17a、17b内にポリマーワックス剥離廃液を供給する(供給工程SP1)。
【0055】
この際、各緩衝室17a、17b内に供給されるポリマーワックス剥離廃液の量が毎分1リットルとなるように第1ポンプP1の作動量を制御する。こうして、各緩衝室17a、17bでは徐々に中和反応が生じる。このように、貯留され、攪拌されている状態の緩衝液に対してポリマーワックス剥離廃液を徐々に供給することで、緩衝液全体で中和反応が生じることとなる。このため、ポリマーワックス剥離廃液と緩衝液との混合液のpHが急激に変化することがなく、好適に中和反応が行われる。また、ポリマーワックス剥離廃液を緩衝液内に静かに供給することで、後に分離されるポリマー等の固形分には気泡が生じ難く、好適な状態となる。
【0056】
各緩衝室17a、17bで中和反応が生じている間、第1、2pH測定機19a、19bは各緩衝室17a、17b内の混合液のpHを測定する(pH測定工程SP2)。この際、各pH測定機19a、19bによって測定されたpHの値が9.5以上となると、制御装置は第1ポンプP1の作動を停止させて、各緩衝室17a、17b内へのポリマーワックス剥離廃液の供給を停止する。各緩衝室17a、17bの混合液のpHの値が9.5以上となると、中和反応の速度が低下し、好適に中和反応が行われないためである。
【0057】
各緩衝室17a、17bにおいて十分に中和反応が行われた後、混合液は各緩衝室17a、17bの底部から流路105、106を流通し、上流側反応室23a内に貯留される。この後、濾過機23において簡易濾過法による分離作業が行われ、上流側反応室23a内において、混合液からポリマー等の固形分が分離される。
【0058】
また、制御装置は第2開閉弁V2の開制御を行い、上流側反応室23aの底部から固形分が取り出される。このように取り出された固形分は、流動性が高いペースト状となっており、後述する硫化亜鉛と好適に混合させることが可能になっている。この分離された固形分は流路107を流通し、フィラー製造装置13において、再利用に向けた加工等の処理が行われることとなる。この具体的な処理の方法については後述する。
【0059】
一方、混合液から固形分が分離されることで、上流側反応室23a内では第1被処理液が得られる(上流側反応工程SP3)。この第1被処理液は、ポリマー等の固形分が分離されたことで、比較的透明度が高い状態となっている。また、この第1被処理液は、上流側反応室23a内において、水によって2倍に希釈される。
【0060】
この第1被処理液のpHと、第1被処理液に含まれるBOD、TOC及び亜鉛の量とも表1に示す。第1被処理液は、表1に示すように、pHの値が9.0で中性領域を示しており、BODの値は29000mg/Lとなっている。また、TOCの値は16000mg/Lとなっており、含有する亜鉛の量は19mg/Lとなっている。なお、これらの数値は、上記のように第1被処理液が2倍に希釈された後の状態における値である。
【0061】
このように、ポリマーワックス剥離廃液からポリマー等の固形分が分離されたことで、第1被処理液はポリマーワックス剥離廃液と比較して、BOD、TOC及び亜鉛の量が大きく低下していることが分かる。なお、分離された固形分のpHも第1被処理液と同じであり、中性領域を示している。
【0062】
次に、図2に示す第1反室25a内に30リットルの第1被処理液を貯留する。この状態で制御装置は第3開閉弁V3の開制御を行い、貯留された第1被処理液に対して500mg/Lとなるように金属固定剤を供給する。また、この際、攪拌機33を作動させて第1被処理液と金属固定剤とを十分に混合する。これにより、先のポリマー等の固形分と一緒に分離されず、第1処理液中に残留した微細な亜鉛と金属固定剤とが好適に反応し、水に不溶なサブミクロン粒子の硫化亜鉛が生成される(第1反応工程SP4)。こうして、第1被処理液及び硫化亜鉛からなる第2被処理液が得られる。なお、この第2被処理液は、硫化亜鉛等により白濁した状態となっている。
【0063】
この第2被処理液は、制御装置が第2ポンプP2を作動させることで、上昇流の状態で第1淘汰管27の底部から第2反応室27a内に流入される。この際、制御装置は上昇流の速度が毎分0.1mとなるように第2ポンプP2の作動量を制御する。これにより、第2被処理液は触媒35内を流通し、第2反応室25a内の下方から貯留していくこととなる。この際、触媒35により、サブミクロン粒子となっている硫化亜鉛は、その表面のゼータ電位が変化される。このため、この硫化亜鉛は、サブミクロン粒子相互の反発力が小さくなり、粒子同士が互いに凝集する自己凝集反応が生じる。この結果、硫化亜鉛は粗大化してフロック30aとなる(第2反応工程SP5)。このため、第2反応室27a内に貯留された第2被処理液は、フロック30aが沈殿し、硫化亜鉛が多く含まれた下層部分28aと、硫化亜鉛がほとんど含まれない上澄み部分28bとに分離した状態となる(第3反応工程SP6)。この上澄み部分28bは、後述の第3被処理液30bと実質的に同質である(以下、第2被処理液の上澄み部分28bは、第3処理液30bとして記述する。)。
【0064】
第3処理液30bは流路111を流通し、pH調整室9a内に貯留される。一方、下層部分28aを含んだ第2被処理液は、流路112を流通し、第2淘汰管29の第3反応室29a内に貯留される。
【0065】
第3反応室29a内において、第2被処理液は約6時間程度静置される。これにより、第2被処理液は、フロック30aと第3被処理液30bとに分離される(第3反応工程SP6)。その後、制御装置は第4開閉弁V4の開制御を行い、第2淘汰管29の底部からフロック30aが取り出される。このように取り出されたフロック30aは、流路113を流通し、フィラー製造装置13において、上記の分離された固形分とともに再利用に向けた処理が行われることとなる。一方、第3処理液30bは流路114を流通し、pH調整室9a内に貯留される。
【0066】
この第3処理液30bのpHと、第3被処理液に含まれるBOD、TOC及び亜鉛の量とも表1に示す。第3処理液30bは、表1に示すように、pHの値が9.7となっており、BODの値は21000mg/Lとなっている。また、TOCの値は12000mg/Lとなっており、含有する亜鉛の量は4.2mg/Lとなっている。このように、第2被処理液において白濁の原因となっていた硫化亜鉛がほぼ除去され、第3被処理液は透明度が高い状態となっている。
【0067】
pH調整室9a内に貯留された第3被処理液30bは、水によって4倍に希釈される。また、この際、制御装置は第5開閉弁V5の開制御を行い、適量のpH調整剤を供給する。これにより、第3被処理液30bのpHの値は7.0となる。この後、制御装置は第3ポンプP3を作動させる。これにより、有機物除去装置11の下流側反応室11a内において、第3被処理液30bから有機物が除去される。
【0068】
下流側反応室11a内では、前段から後段の順で第3被処理液30bが流通する。このため、下流側反応室11a内では、まず、好気性バクテリアによる有機物の分解が行われる。なお、亜鉛の含有量が15mg/Lとなると好気性バクテリアに対して有害となり、死滅させる原因となる。しかし、上記のように第3被処理液30bにおける亜鉛の含有量は4.2mg/Lであるため、下流側反応室11a内では、好気性バクテリアにより有機物の分解が好適に行われることとなる。好気性バクテリアによる有機物の分解の後、嫌気性バクテリアによる有機物の分解が行われる。この際、嫌気性バクテリアは、有機物の分解を行うとともに好気性バクテリアの死骸を捕食する。
【0069】
こうして、第3被処理液30b内の有機物が分解されることで、第4被処理液が得られる(下流側反応工程SP7)。この第4被処理液は下水に排出することが可能な状態となっている。この第4被処理液のpHと、第4被処理液に含まれるBOD、TOC及び亜鉛の量とも表1に示す。第4被処理液は、表1に示すように、pHの値が8.1で中性領域を示しており、BODの値は1000mg/Lとなっている。また、TOCの値は540mg/Lとなっており、含有される亜鉛の量は0.09mg/Lとなっている。なお、これらの数値は、上記のように第3被処理液が4倍に希釈された後の状態における値である。
【0070】
一方、図1に示す上流側反応室23a(濾過機23)において分離された固形物と、図2に示す第3反応室29a(第2淘汰管29)において分離されたフロック30aとは、ともにフィラー製造装置13内において、ボールミルによって粉砕、混合されてスラリ状の混合物Fとされる。その後、調整機において、ポリマー等と硫化亜鉛との混合比率が調整されるとともに、再利用に必要な成分が適宜追加される。さらに、この混合物Fはスプレードライヤーによって乾燥されて粒状にされる(フィラー製造ステージSG4)。こうして、この混合物Fは、合成ゴム用のフィラーや樹脂用のフィラーとして再利用されることとなる。
【0071】
このように、この浄化システムが備えるポリマー析出装置5(図1参照)においては、各緩衝室17a、17bに貯留されている緩衝液に対してポリマーワックス剥離廃液が制御されつつ供給される。また、各緩衝室17a、17bに貯留されている緩衝液は、主として水で構成されているため、緩衝液のpHは中性領域の性質となっている。これらのため、このポリマー析出装置5では、ポリマーワックス剥離廃液中におけるポリマー等の固形分と緩衝液との中和反応が第1、2緩衝室17a、17b全体に亘って時間をかけて徐々に進行する。
【0072】
また、このポリマー析出装置5は、第1、2pH測定機19a、19bを有しているため、中和反応時における各緩衝室17a、17b内における混合液のpHを測定するとともに、その管理を行うことが可能となっている。このため、測定されたpHを基に、各緩衝室17a、17bに供給するポリマーワックス剥離廃液の制御を行うことで、開始時点から終了時点まで常に好適な状態で中和反応が行われることとなる。
【0073】
これらのため、この浄化システムでは、上流側反応室23aにおいて、ポリマー等の固形分は混合液から好適に分離される。また、その分離された固形分の状態は、上記のように流動性の高いペースト状となっている。さらに、上記のように剥離液のpHが中性領域にあり、また、固形分の分離を行う際、高分子凝集剤や塩素化合物等を使用していないため、分離された固形分及び第1被処理液のpHは中性領域に近い性質となっている。これらのため、分離された固形分について、再利用に向けた加工等が容易となり、再利用の用途を広くすることが可能となっている。また、第1被処理液についても、その後の処理が容易となっている。
【0074】
また、図2に示すように、実施例の浄化システムは金属析出装置7を備えており、この金属析出装置7は、反応層25と、第1、2淘汰管27、29とを有している。この反応漕25には第1反応室25aが形成され、第1淘汰管27には第2反応室27aが形成されている。この第2反応室27a内には触媒35が充填されている。また、第2淘汰管29には、第3反応室29aが形成されている。さらに、第1反応室25aは、下流に向かって第2被処理液を流通させる流路110と接続されている。そして、第1、2淘汰管27、29は、流路110、113が下方に接続され、上方から第3被処理液30bを排出可能となっている。
【0075】
これらのため、この浄化システムでは、第1被処理液中に含まれる亜鉛を硫化亜鉛として分離することが可能となっている。また、硫化物となった亜鉛をフロックとすることで、第2被処理液中の微細な亜鉛も好適に収集することが可能となっている。この際、フロックが第1淘汰管27(第2反応室27a)の下方に沈殿するため、第2被処理液について、硫化物を多く含んだ下層部分28aと硫化物をほとんど含まない上澄み部分28bとに分離することが可能となっている。そして、上記のように、この第2被処理液の上澄み部分28bは、実質的に第3被処理液30bと同質の状態となっている。このため、第3反応室29aの他、第2反応室25aによっても第3被処理液30bを得ることが可能となる。このため、ポリマーワックス剥離廃液の浄化処理を効率よく行うことができるようになっている。また、第3反応室29aにおいて第2被処理液からフロック30aが分離されることで、分離されたフロック30aも、上記の固形分と同様、再利用することが可能となっている。
【0076】
また、実施例の浄化システムは有機物除去装置11を備えている。この有機物除去装置11は、好気性バクテリア及び嫌気性バクテリアの働きによって第3被処理液30bから有機物を除去して第4被処理液を得る下流側反応室11aを有している。このため、好気性バクテリア及び嫌気性バクテリアの働きによって第3被処理液30bに含まれる有機物を分解させることが可能であり、第3被処理液30bを浄化することが可能となっている。こうして得られた第4被処理液は下水等に排出することが可能となっている。上記のように、嫌気性バクテリアを使用することで、好気性バクテリアの死骸を嫌気性バクテリアによって分解できるため、好気性バクテリアのみを使用する場合よりも排出汚泥が非常に少なくなる。このため、第4被処理液の水質がより好適な状態となっている。さらに、嫌気性バクテリアは、好気性バクテリアと異なり、ミネラルや他の栄養素の補給も必要ない。このため、第3被処理液ひいてはポリマーワックス剥離廃液の浄化処理を低コストで行うことが可能となっている。
【0077】
さらに、この浄化システムは、固形分及びフロック30aを混合粉砕し、合成ゴム用のフィラー及び樹脂用のフィラーを得るフィラー製造装置13を備えている。このため、一つの浄化システムにおいて、ポリマーワックス剥離廃液の浄化処理と、固形分及びフロック(硫化亜鉛)30aの再利用に向けた処理とを一貫して行うことが可能となっている。
【0078】
したがって、この浄化システムによれば、環境保護を実現可能であるとともに、省資源化をより実現可能である。
【0079】
特に、この浄化システムでは、触媒として、触媒35が採用されている。このため、硫化亜鉛をフロック30aとさせる際の活性度が高くなり、第2被処理液から亜鉛の硫化物をより好適に収集、粗大化させて分離することが可能となっている。
【0080】
(実施例2)
実施例2の浄化システムでは、ポリマー析出装置5が濾過機21に替えて遠心分離機を有している。
【0081】
遠心分離機としては、(株)ジーフォース製のMG−500型が採用されている。また、この遠心分離機の内部には、上流側反応室21aが設けられている。他の構成は実施例1と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0082】
この浄化システムでは、遠心分離法によって、混合液からポリマー等の固形分が分離される。このため、実施例1の浄化システムにおける簡易濾過法と比較して、混合液からより好適に固形分が分離されることとなる。このため、第1被処理液中に残留する固形分を少なくすることが可能となる。このため、ポリマーワックス剥離廃液中の固形分をより多く再利用することが可能となる。他の作用効果は実施例1の浄化システムと同様である。
【0083】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0084】
例えば、実施例1、2の浄化システムにおいて、第2淘汰管29に替えて第2反応漕等を採用することもできる。そして、第2反応漕等の内部に第3反応室27aを形成することもできる。
【0085】
また、フィラー製造装置13について、ポリマー等の固形分の再利用に向けた処理を行う第1フィラー製造装置と、硫化亜鉛の再利用に向けた処理を行う第2フィラー製造装置とで構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明はポリマーワックス剥離廃液から、ポリマー等の固形分や金属等を分離させて浄化処理を行う浄化システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0087】
5…ポリマー析出装置
17a、17b…緩衝室(17a…第1緩衝室、17b…第2緩衝室)
19a、19b…pH測定機(19a…第1pH測定機、19b…第2pH測定機)
23a…上流側反応室
7…金属析出装置
25a…第1反応室
27a…第2反応室
29a…第3反応室
11…有機物除去装置
11a…下流側反応室
13…フィラー製造装置
27、29…淘汰管(27…第1淘汰管、29…第2淘汰管)
30b…第3被処理液
35…触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属によって架橋されたポリマーからなるポリマーワックスを水と剥離剤と洗剤とで剥離することにより生じ、該金属と該ポリマーと該剥離剤と該洗剤とを含むポリマーワックス剥離廃液の浄化システムであって、
ポリマー析出装置を備え、
該ポリマー析出装置は、主として水からなる緩衝液を貯留し、前記ポリマーワックス剥離廃液が制御されつつ該緩衝液中に供給される緩衝室と、
前記ポリマーワックス剥離廃液と該緩衝液とからなる混合液のpHを測定可能なpH測定機と、
該混合液から、前記ポリマーを主とする固形分を分離して第1被処理液を得る上流側反応室とを有していることを特徴とするポリマーワックス剥離廃液の浄化システム。
【請求項2】
前記上流側反応室は遠心分離機内に設けられている請求項1記載のポリマーワックス剥離廃液の浄化システム。
【請求項3】
金属析出装置を備え、
該金属析出装置は、前記第1被処理液を貯留しつつ、金属固定剤によって該第1被処理液中の前記金属を水に不溶な硫化物として生成させる第1反応室と、
該第1被処理液及び該硫化物からなる第2被処理液を貯留しつつ、触媒によって該硫化物を自己凝集反応によって粗大化してフロックとする第2反応室と、
該第2被処理液から該フロックを分離した第3被処理液を得る第3反応室とを有している請求項1又は2記載のポリマーワックス剥離廃液の浄化システム。
【請求項4】
有機物除去装置を備え、
該有機物除去装置は、好気性バクテリア及び嫌気性バクテリアの働きによって前記第3被処理液から有機物を除去して第4被処理液を得る下流側反応室を有している請求項3記載のポリマーワックス剥離廃液の浄化システム。
【請求項5】
前記固形分を混合粉砕し、ゴム用のフィラーを得るフィラー製造装置を備えている請求項1乃至4のいずれか1項記載のポリマーワックス剥離廃液の浄化システム。
【請求項6】
前記第1反応室は、下流に向かって前記第2被処理液を流通させる流路と接続され、
前記第2反応室は、該流路が下方に接続され、上方から前記第3被処理液を排出可能な淘汰管からなる請求項1乃至5のいずれか1項記載のポリマーワックス剥離廃液の浄化システム。
【請求項7】
前記触媒は、塩基性硫酸マグネシウムのウィスカーからなり、該ウィスカーがガラス化しない温度でペレット状に固化されたものである請求項1乃至6のいずれか1項記載のポリマーワックス剥離廃液の浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−55794(P2012−55794A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198823(P2010−198823)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(502074208)株式会社マエダマテリアル (1)
【Fターム(参考)】