説明

ポリマー分散液を使用して製造された吸水性ポリマー構造体

本発明は、吸水性ポリマー構造体の製造方法であって、
i)(α1)重合性モノエチレン性不飽和酸性基含有モノマー又はその塩と、(α2)必要に応じて前記モノマー(α1)と重合可能なモノエチレン性不飽和モノマーと、(α3)必要に応じて架橋剤と、を含むモノマー水溶液を用意する工程と、
ii)前記モノマー水溶液のフリーラジカル重合によってポリマーゲルを得る工程と、
iii)必要に応じて前記ポリマーゲルを粉砕する工程と、
iv)必要に応じて粉砕された前記ポリマーゲルを乾燥して吸水性ポリマー構造体を得る工程と、
v)必要に応じて前記吸水性ポリマー構造体を粉砕及び篩い分けする工程と、
vi)必要に応じて粉砕及び篩い分けされた前記吸水性ポリマー構造体を表面後架橋する工程と、を含み、
熱可塑性ポリマーを、
I)前記工程ii)の前又は前記工程ii)の実施中(好ましくは前記工程ii)の前)に前記モノマー水溶液に添加するか、
II)前記工程ii)の後であって前記工程iv)の前又は前記工程iv)の実施中(好ましくは前記工程iv)の前)に前記ポリマーゲルに添加するか、
III)前記工程iv)の後に前記吸水性ポリマー構造体に添加する方法に関する。
また、本発明は、前記方法によって得られる吸水性ポリマー構造体、吸水性ポリマー構造体、複合材料、複合材料の製造方法、前記方法によって得られる複合材料、発泡体、成形品、繊維、ホイル、フィルム、ケーブル、シール材、吸収性衛生用品、植物・菌類生育調節剤用担体、包装材料、土壌添加剤又は建設材料等の化学製品、吸水性ポリマー構造体の使用、熱可塑性ポリマーの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性ポリマー構造体の製造方法に関する。また、本発明は、前記方法によって得られる吸水性ポリマー構造体、吸水性ポリマー構造体、複合材料、複合材料の製造方法、前記方法によって得られる複合材料、発泡体、成形品、繊維、ホイル、フィルム、ケーブル、シール材、吸収性衛生用品、植物・菌類生育調節剤用担体、包装材料、土壌添加剤又は建設材料等の化学製品、吸水性ポリマー構造体の使用、熱可塑性ポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
超吸収体は、膨潤してヒドロゲルを形成することにより、大量の水、水性液体、特に体液、好ましくは尿又は血液を吸収し、圧力下で保持することができる非水溶性架橋ポリマーである。超吸収体は、好ましくは超吸収体の重量の少なくとも100倍の重量の水を吸収する。超吸収体のさらなる詳細は、F.L.Buchholz、A.T.Graham、「現代の超吸収性ポリマー技術(Modern Superabsorbent Polymer Technology)」、Wiley−VCH、1998年に記載されている。これらの特性のために、吸水性ポリマーは、おむつ、失禁用品又は生理用ナプキン等の衛生用品に主として使用されている。
【0003】
現在市販されている超吸収体は、実質的に架橋ポリアクリル酸又は架橋澱粉−アクリル酸グラフトポリマーからなり、カルボキシル基の一部が水酸化ナトリウム溶液又は水酸化カリウム溶液によって中和されている。これらのポリマーは、適当な架橋剤の存在下でアクリル酸モノマー又はその塩をフリーラジカル重合することによって得られる。この場合、溶液重合、乳化重合又は懸濁重合等の様々な重合方法を使用することができる。これらの重合方法によって150〜850μmの粒径を有する粒子状の吸水性ポリマーを得、衛生用品に導入する。
【0004】
吸水性ポリマー粒子の吸収性及び膨潤性を向上させるために、ポリマー粒子の表面を変性させる多くの方法が開示されている。例えば、ドイツ特許第40 20 780 C1号は、吸水性ポリマー粒子をポリマー粒子のカルボキシル基と反応することができるアルカリ炭酸塩と反応させることを開示している。このようにして吸水性ポリマー粒子を表面後架橋させることにより、圧力下でのポリマーの吸収率が増加する。
【0005】
ポリマー粒子を反応性化合物と反応させる以外に、無機又は有機微粒子でコーティングすることによって吸水性ポリマー粒子の特性(特に透過性)を得る多くの方法が開示されている。
【0006】
ドイツ特許第35 03 458 A1号には、例えば、後架橋剤の存在下で二酸化ケイ素等の不活性無機粉末材料を塗布することによって超吸収体粒子の吸収容量、吸収速度、ゲル強度を向上させることができることが開示されている。
【0007】
欧州特許出願第0 388 120 Al号は、ポリマー粒子の吸湿性及び凝結性を減少させるために、0.1〜30μmの平均粒径と500m/gの比表面積を有し、高純度二酸化ケイ素からなる多孔質粉末でポリマー粒子を被覆することを開示している。
【0008】
しかし、ポリマー粒子の形成後にポリマー粒子を変性する方法に共通する問題はダスト状の微粒子が放出されてしまうことであり、これらの微粒子は機械的応力、例えば吸水性ポリマー粒子の空気による供給時の摩損によって形成される。ダストによる汚染に加えて、吸水性ポリマー構造体の表面変性に無機微粒子を使用する場合のさらなる欠点は、特にこれらの無機微粒子を表面架橋時に使用すると後架橋反応の取り込み(uptake)が比較的高い場合があることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】ドイツ特許第40 20 780 C1号
【特許文献2】ドイツ特許第35 03 458 A1号
【特許文献3】欧州特許出願第0 388 120 Al号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】F.L.Buchholz、A.T.Graham、「現代の超吸収性ポリマー技術(Modern Superabsorbent Polymer Technology)」、Wiley−VCH、1998年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、従来技術によって生じる欠点を克服することにある。
【0012】
特に、本発明の目的は、ダストの形成が比較的少なく、高濃度であってもゲル閉塞現象を生じることなく衛生用品に使用することができる吸水性ポリマー構造体を提供することにある。吸水性ポリマー構造体は、衛生用品の製造装置においてできるだけ容易に使用することができなければならない。
【0013】
また、本発明の目的は、無機微粒子を使用せずに実施することができる上述した特性を有する吸水性ポリマー構造体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は、吸水性ポリマー構造体の製造方法であって、
i)(α1)重合性モノエチレン性不飽和酸性基含有モノマー又はその塩又は重合性モノエチレン性不飽和プロトン化又は第4級化窒素含有モノマー又はそれらのモノマーの混合物(特に好ましくは重合性モノエチレン性不飽和酸性基含有モノマー、最も好ましくはアクリル酸)と、(α2)必要に応じて前記モノマー(α1)と重合可能なモノエチレン性不飽和モノマーと、(α3)必要に応じて架橋剤と、を含むモノマー水溶液を用意する工程と、
ii)前記モノマー水溶液のフリーラジカル重合によってポリマーゲルを得る工程と、
iii)必要に応じて前記ポリマーゲルを粉砕する工程と、
iv)必要に応じて粉砕された前記ポリマーゲルを乾燥して吸水性ポリマー構造体を得る工程と、
v)必要に応じて前記吸水性ポリマー構造体を粉砕及び篩い分けする工程と、
vi)必要に応じて粉砕及び篩い分けされた前記吸水性ポリマー構造体を表面後架橋する工程と、を含み、
熱可塑性ポリマーを、
I)前記工程ii)の前又は前記工程ii)の実施中(好ましくは前記工程ii)の前)に前記モノマー水溶液に添加するか、
II)前記工程ii)の後であって前記工程iv)の前又は前記工程iv)の実施中(好ましくは前記工程iv)の前)に前記ポリマーゲルに添加するか、
III)前記工程iv)の後に前記吸水性ポリマー構造体に添加する方法によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】熱可塑性ポリマーエマルジョンLurapret(登録商標)D313の後架橋剤溶液への添加量が保持率と透過性に与える影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記目的は、吸水性ポリマー構造体の製造方法であって、
i)(α1)重合性モノエチレン性不飽和酸性基含有モノマー又はその塩又は重合性モノエチレン性不飽和プロトン化又は第4級化窒素含有モノマー又はそれらのモノマーの混合物(特に好ましくは重合性モノエチレン性不飽和酸性基含有モノマー、最も好ましくはアクリル酸)と、(α2)必要に応じて前記モノマー(α1)と重合可能なモノエチレン性不飽和モノマーと、(α3)必要に応じて架橋剤と、を含むモノマー水溶液を用意する工程と、
ii)前記モノマー水溶液のフリーラジカル重合によってポリマーゲルを得る工程と、
iii)必要に応じて前記ポリマーゲルを粉砕する工程と、
iv)必要に応じて粉砕された前記ポリマーゲルを乾燥して吸水性ポリマー構造体を得る工程と、
v)必要に応じて前記吸水性ポリマー構造体を粉砕及び篩い分けする工程と、
vi)必要に応じて粉砕及び篩い分けされた前記吸水性ポリマー構造体を表面後架橋する工程と、を含み、
熱可塑性ポリマーを、
I)前記工程ii)の前又は前記工程ii)の実施中(好ましくは前記工程ii)の前)に前記モノマー水溶液に添加するか、
II)前記工程ii)の後であって前記工程iv)の前又は前記工程iv)の実施中(好ましくは前記工程iv)の前)に前記ポリマーゲルに添加するか、
III)前記工程iv)の後に前記吸水性ポリマー構造体に添加する方法によって達成される。
【0017】
本発明に係る好ましいポリマー構造体は、繊維、発泡体又は粒子であり、繊維及び粒子が好ましく、粒子が特に好ましい。
【0018】
本発明に係る好ましいポリマー繊維は、織糸として織物に織り込むか、織物に直接織り込むことができる寸法を有する。本発明では、ポリマー繊維は、1〜500mm、好ましくは2〜500mm、特に好ましくは5〜100mmの長さを有し、1〜200デニール、好ましくは3〜100デニール、特に好ましくは5〜60デニールの直径を有することが好ましい。
【0019】
本発明に係る好ましいポリマー粒子は、10〜3,000μm、好ましくは20〜2,000μm、特に好ましくは150〜850μmのERT420.2−02に準拠して測定した平均粒径を有する。この場合、300〜600μmの粒径を有するポリマー粒子の含有量は、後架橋された吸水性ポリマー粒子の総重量の少なくとも30重量%、特に好ましくは少なくとも40重量%、最も好ましくは少なくとも50重量%であることが特に好ましい。
【0020】
本発明に係る方法の工程i)では、モノマー水溶液を用意する。
【0021】
モノエチレン性不飽和酸性基含有モノマー(α1)は、部分的又は完全に、好ましくは部分的に中和されていてもよい。好ましくは、モノエチレン性不飽和酸性基含有モノマーは、少なくとも25モル%、特に好ましくは少なくとも50モル%、より好ましくは50〜80モル%が中和されていることが好ましい。モノエチレン性不飽和酸性基含有モノマーについてはドイツ特許出願公開第195 29 348 A1号を参照する。ドイツ特許出願公開第195 29 348 A1号の開示内容は、この参照によって本明細書の開示として援用する。中和は、重合後に部分的又は完全に行うこともできる。中和は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アンモニア、炭酸塩、重炭酸塩を使用して行うことができる。酸と共に水溶性塩を生成する塩基も使用することができる。異なる塩基による中和も考えられる。アンモニア及びアルカリ金属水酸化物を使用した中和が好ましく、水酸化ナトリウム及びアンモニアを使用した中和が特に好ましい。
【0022】
本発明に係る方法によって得られる吸水性ポリマー構造体には遊離酸基が多く含まれるため、ポリマーは酸性領域のpHを有する。酸性の吸水性ポリマー構造体は、遊離塩基性基、好ましくはアミン基を含有し、酸性ポリマー構造体と比較して塩基性であるポリマー構造体によって少なくとも部分的に中和されていてもよい。これらのポリマー構造体は、「混合床イオン交換吸収性ポリマー(MBIEAポリマー)」として文献に記載されており、特に国際公開第99/34843 A1号に開示されている。国際公開第99/34843 A1号の開示内容は、この参照によって本明細書の開示として援用する。通常、MBIEAポリマーは、アニオンを交換できる塩基性ポリマー構造体と、塩基性ポリマー構造体と比較して酸性であり、カチオンを交換できるポリマー構造体とからなる組成物である。塩基性ポリマー構造体は塩基性基を含み、通常は塩基性基又は塩基性基に変換することができる基を有するモノマー(α1)を重合することによって得られる。これらのモノマーは、第一アミン、第二アミン、又は第三アミン又は対応するホスフィン又はこれらの官能基の少なくとも2つを含有する。これらのモノマーとしては、特に、エチレンアミン、アリルアミン、ジアリルアミン、4−アミノブテン、アルキルオキシシクリン、ビニルホルムアミド、5−アミノペンテン、カルボジイミド、ホルマールダシン、メラミン、それらの第二又は第三アミン誘導体が挙げられる。
【0023】
好ましいモノエチレン性不飽和酸性基含有モノマー(α1)は、国際公開第2004/037903 A2号においてエチレン性不飽和酸性基含有モノマー(α1)として記載されている化合物である。国際公開第2004/037903 A2号の開示内容は、この参照によって本明細書の開示として援用する。特に好ましいモノエチレン性不飽和酸性基含有モノマー(α1)はアクリル酸及びメタクリル酸であり、アクリル酸が最も好ましい。
【0024】
モノマー(α1)と共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマー(α2)としては、アクリルアミド、メタクリルアミド又はビニルアミドを使用することができる。
【0025】
アクリルアミド及びメタクリルアミド以外の好ましい(メタ)アクリルアミドは、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノ(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド等のアルキル置換(メタ)アクリルアミド又は(メタ)アクリルアミドのアミノアルキル置換誘導体である。ビニルアミドとしては、例えば、N−ビニルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、ビニルピロリドンが挙げられる。これらのモノマーのうち、アクリルアミドが特に好ましい。
【0026】
モノマー(α1)と共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマー(α2)としては、水溶性モノマーを使用することもできる。水溶性モノマーとしては、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレンオキシド(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0027】
モノマー(α1)と共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマー(α2)としては、水分散性モノマーを使用することもできる。好ましい水分散性モノマーは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルである。
【0028】
モノマー(α1)と共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマー(α2)としては、メチルポリエチレングリコールアリルエーテル、酢酸ビニル、スチレン、イソブチレンも挙げられる。
【0029】
架橋剤(α3)の化合物としては、好ましくは国際公開第2004/037903 A2号に架橋剤(α3)として記載されている化合物を使用する。これらの架橋剤のうち、水溶性架橋剤が特に好ましい。水溶性架橋剤としては、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、塩化トリアリルメチルアンモニウム、塩化テトラアリルアンモニウム、アクリル酸1モル当たり9モルのエチレンオキシドを使用して得られたアリルノナエチレングリコールアクリレートが最も好ましい。
【0030】
モノマー(α1)及び必要に応じて使用されるモノマー(α2)及び架橋剤(α3)以外に、モノマー溶液は水溶性ポリマー(α4)を含むことができる。好ましい水溶性ポリマー(α4)としては、部分的又は完全にケン化されたポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、澱粉、澱粉誘導体、ポリグリコール、ポリアクリル酸が挙げられる。これらのポリマーの分子量は、ポリマーが水溶性であれば限定されない。好ましい水溶性ポリマー(α4)は、澱粉、澱粉誘導体又はポリビニルアルコールである。水溶性ポリマー(α4)、好ましくはポリビニルアルコールなどの合成ポリマーは、重合させるモノマーのグラフト基材としても使用することができる。これらの水溶性ポリマーは、ポリマーゲル又は重合後に乾燥した吸水性ポリマーゲルに混合することができる。
【0031】
モノマー溶液は補助物質(α5)をさらに含むことができる。補助物質としては、重合に必要となる場合がある開始剤、EDTA等の錯化剤、熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーを含有する分散液が挙げられる。
【0032】
モノマー溶液のための溶媒としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒の混合物が挙げられ、特に重合の性質と方法に応じて溶媒を選択する。
【0033】
モノマー溶液におけるモノマー(α1)及び(α2)、架橋剤(α3)、水溶性ポリマー(α4)、補助物質(α5)の相対的な量は、工程iv)で得られる吸水性ポリマー構造体が乾燥後に以下の成分からなるように選択する。
・20〜99.999重量%、好ましくは55〜98.99重量%、特に好ましくは70〜98.79重量%のモノマー(α1)
・0〜80重量%、好ましくは0〜44.99重量%、特に好ましくは0.1〜44.89重量%のモノマー(α2)
・0〜5重量%、好ましくは0.001〜3重量%、特に好ましくは0.01〜2.5重量%の架橋剤(α3)
・0〜30重量%、好ましくは0〜5重量%、特に好ましくは0.1〜5重量%の水溶性ポリマー(α4)
・0〜20重量%、好ましくは0.10重量%、特に好ましくは0.1〜8重量%の補助物質(α5)
・0.5〜25重量%、好ましくは1〜10重量%、特に好ましくは3〜7重量%の水(α6)
なお、成分(α1)〜(α6)の総重量は100重量%である。
【0034】
モノマー溶液におけるモノマー、架橋剤、水溶性ポリマーの濃度の最適値は、簡単な予備実験又は、米国特許第4,286,082号、ドイツ特許第27 06 135 A1号、米国特許第4,076,663号、ドイツ特許第35 03 458 A1号、ドイツ特許第40 20 780 C1号、ドイツ特許第42 44 548 A1号、ドイツ特許第43 33 056 A1号、ドイツ特許第44 18 818 A1号に記載された方法で決定することができる。
【0035】
本発明に係る方法の工程ii)では、工程i)で得られたモノマー水溶液のフリーラジカル重合によってポリマーゲルを得る。原則として、当業者に公知のあらゆる重合方法を使用することができる。重合方法としては、例えば、好ましくは押出機等の混錬反応器内で行う塊状重合、溶液重合、噴霧重合、逆乳化重合、逆懸濁重合が挙げられる。
【0036】
溶液重合は、好ましくは水を溶媒として使用して行う。溶液重合は連続的又は非連続的に行うことができる。開始剤及び反応溶液の温度、種類、量等の反応条件に関しては、従来技術において様々な条件が知られている。典型的な方法は、米国特許第4,286,082号、ドイツ特許第27 06 135 A1号、米国特許第4,076,663号、ドイツ特許第35 03 458 A1号、ドイツ特許第40 20 780 C1号、ドイツ特許第42 44 548 A1号、ドイツ特許第43 33 056 A1号、ドイツ特許第44 18 818 A1号に記載されている。これらの文献の開示内容は、この参照によって本明細書の開示として援用する。
【0037】
通常、重合は開始剤によって開始させる。重合を開始させるための開始剤としては、重合条件下でフリーラジカルを生成し、従来から超吸収体の製造に使用されている開始剤を使用することができる。また、重合性水性混合物に対する電子線の作用によって重合を開始させることもできる。また、上述した開始剤を使用せずに、光開始剤の存在下における高エネルギー放射線の作用によって重合を開始させることもできる。重合開始剤は、本発明に係るモノマー溶液に溶解又は分散させることができる。開始剤としては、フリーラジカルに解離する当業者に公知の化合物が挙げられる。特に、国際公開第2004/037903 A2号に開始剤として記載されている開始剤が挙げられる。
【0038】
特に好ましくは、過酸化水素、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、アスコルビン酸を含むレドックス系を吸水性ポリマー構造体を製造するために使用する。
【0039】
本発明に係る方法では、逆懸濁重合及び乳化重合を使用することもできる。これらの方法では、保護コロイド及び/又は乳化剤を使用し、必要に応じて水溶性ポリマー(α4)及び補助物質(α5)を含むモノマー(α1)及び(α2)の部分的に中和された水溶液を疎水性有機溶媒中に分散させ、フリーラジカル開始剤によって重合を開始させる。架橋剤(α3)は、モノマー溶液に溶解するか、モノマー溶液と共に添加するか、重合時に必要に応じて個別に添加する。グラフト基材としての水溶性ポリマー(α4)は、必要に応じてモノマー溶液に添加するか、油相に直接添加する。次に、水を混合物から共沸除去し、ポリマーを濾別する。
【0040】
溶液重合、逆懸濁重合、乳化重合のいずれの場合にも、モノマー溶液に溶解した多官能架橋剤(α3)内での重合及び/又は重合工程時における適当な架橋剤とポリマーの官能基との反応によって架橋を行うことができる。このプロセスは、例えば米国特許第4,340,706号、ドイツ特許第37 13 601 A1号、ドイツ特許第28 40 010 A1号、国際公開第96/05234 A1号に記載されている。これらの文献の対応する開示内容は、この参照によって本明細書の開示として援用する。
【0041】
本発明に係る方法の工程iii)では、工程ii)で得られたポリマーゲルを必要に応じて粉砕する。粉砕は、溶液重合によって重合を行った場合に行う。粉砕は公知の粉砕装置(例えば肉挽機(mincing machine))を使用して行う。
【0042】
本発明に係る方法の工程iv)では、必要に応じて粉砕したポリマーゲルを乾燥する。ポリマーゲルの乾燥は、適当な乾燥機又はオーブン内で行うことが好ましい。乾燥機又はオーブンとしては、回転式チューブオーブン、流動床乾燥機、プレート乾燥機、パドル乾燥機、赤外線乾燥機が例として挙げられる。本発明では、工程iv)におけるポリマーゲルの乾燥は、水分が0.5〜25重量%、好ましくは1〜10重量%となるまで行うことが好ましく、乾燥温度は通常100〜200℃である。
【0043】
本発明に係る方法の工程v)では、工程iv)で得られた吸水性ポリマー構造体を必要に応じて粉砕し(特に吸水性ポリマー構造体を溶液重合によって得た場合)、上述した所望の粒径に篩い分ける。乾燥した吸水性ポリマー構造体の粉砕は、ボールミル等の適当な機械的粉砕装置内で行うことが好ましい。また、篩い分けは例えば適当な網目幅の篩を使用して行うことができる。
【0044】
本発明に係る方法の工程vi)では、必要に応じて粉砕し、篩い分けた吸水性ポリマー構造体を表面後架橋させる。表面後架橋では、乾燥し、必要に応じて粉砕し、篩い分けた工程iv)又はv)で得られた吸水性ポリマー構造体又は乾燥しておらず、好ましくは粉砕した工程ii)又はiii)で得られたポリマーゲルを好ましくは有機化学表面後架橋剤と接触させる。特に、後架橋剤が後架橋条件において液体ではない場合には、後架橋剤を後架橋剤と溶媒を含む流体として吸水性ポリマー構造体又はポリマーゲルに接触させることが好ましい。溶媒としては、水、水混和性有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール)又はそれらの少なくとも2種の混合物を使用することが好ましく、水が溶媒として最も好ましい。流体は、流体の総重量の5〜75重量%、特に好ましくは10〜50重量%、最も好ましくは15〜40重量%の量で後架橋剤を含むことが好ましい。
【0045】
本発明に係る方法では、吸水性ポリマー構造体又は必要に応じて粉砕したポリマーゲルと後架橋剤を含む流体との接触は、流体をポリマー構造体又はポリマーゲルと十分に混合することによって行う。
【0046】
流体を塗布するための適当なミキサーとしては、パターソン・ケリー(Patterson−Kelley)ミキサー、DRAIS乱流ミキサー、ロディジ(Lodige)ミキサー、ルベルク(Ruberg)ミキサー、スクリューミキサー、パンミキサー、流動床ミキサー、回転刃によって高周波でポリマー構造体を混合する連続垂直ミキサー(シュージ(Schugi)ミキサー)を挙げることができる。
【0047】
本発明に係る方法では、後架橋時に、ポリマー構造体又はポリマーゲルを、20重量%以下、特に好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下の溶媒(好ましくは水)と接触させることが好ましい。
【0048】
本発明では、好ましくは球状粒子であるポリマー構造体を使用する場合には、粒子状ポリマー構造体の外部領域のみを流体(後架橋剤)と接触させることが好ましい。
【0049】
本発明に係る方法で使用される後架橋剤としては、縮合反応(=縮合架橋剤)、付加反応又は開環反応によってポリマー構造体の官能基と反応することができる官能基を少なくとも2つ有する化合物が好ましい。本発明に係る方法において好ましい後架橋剤は、国際公開第2004/037903 A2号に架橋剤IIとして記載されている化合物である。
【0050】
これらの化合物のうち、後架橋剤としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン/オキシプロピレンブロック共重合体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリビニルアルコール、ソルビトール、1,3−ジオキソラン−2−オン(炭酸エチレン)、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン(炭酸プロピレン)、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、1,3−ジオキソラン−2−オン等の縮合後架橋剤が特に好ましい。
【0051】
後架橋剤又は後架橋剤を含む流体と接触させたポリマー構造体又はポリマーゲルは、50〜300℃、好ましくは75〜275℃、特に好ましくは150〜250℃の範囲で加熱し、好ましくはポリマー構造体の外部領域を内部領域よりも高度に架橋させる(後架橋)。ポリマーゲルを使用する場合には、後架橋と同時にポリマーゲルを乾燥する。加熱時間は、ポリマー構造体の所望の特性プロファイルが熱によって損なわれる時間によって制限される。
【0052】
本発明に係る方法では、熱可塑性ポリマーを、
I)工程ii)の前又は工程ii)の実施中(好ましくは工程ii)の前)にモノマー水溶液に添加するか、
II)工程ii)の後であって工程iv)の前又は工程iv)の実施中(好ましくは工程iv)の前)にポリマーゲルに添加するか、
III)工程iv)の後に吸水性ポリマー構造体に添加する。
【0053】
本発明に係る方法の特定の実施形態では、熱可塑性ポリマーを、
(γ1)工程ii)の前にモノマー水溶液に添加するか、
(γ2)工程iv)の前にポリマーゲルに添加するか、
(γ3)工程iv)の後であって、好ましくは工程vi)の前、実施中又は後に吸水性ポリマー構造体に添加するか、
(γ4)工程ii)の前にモノマー水溶液に添加すると共に工程iv)の前にポリマーゲルに添加するか、
(γ5)工程ii)の前にモノマー水溶液に添加すると共に工程iv)の後であって、好ましくは工程vi)の前、実施中又は後に吸水性ポリマー構造体に添加するか、
(γ6)工程iv)の前にポリマーゲルに添加すると共に工程iv)の後であって、好ましくは工程vi)の前、実施中又は後に吸水性ポリマー構造体に添加する。
【0054】
これらのうち、変形(γ1)及び(γ3)が特に好ましい。
【0055】
本発明では、「熱可塑性ポリマー」とは、好ましくは、熱を供給することによって可塑的に成形することができるポリマーを意味する。本発明では、熱可塑性ポリマーは、−100℃〜200℃、特に好ましくは−50〜100℃、最も好ましくは−45〜25℃の、示差走査熱量測定(DSC)によって測定した溶解又はガラス転移温度を有することが望ましい。
【0056】
本発明において好ましい熱可塑性ポリマーとしては、ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸コポリマー(例えば、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマー)、(メタ)アクリレートコポリマー、マレイン酸コポリマー(例えば、マレイン酸/プロピレンコポリマー)、ポリウレタン、酢酸ビニルコポリマー(例えば、エチレン/酢酸ビニルコポリマー又は酢酸ビニル/アクリル酸ブチルコポリマー)、スチレンコポリマー(例えば、ブチルアクリレート/スチレンコポリマー)、ポリカーボネートからなる群から選択されるポリマーが挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル酸」という用語はメタクリル酸及びアクリル酸を意味し、アクリル酸が好ましい。本発明においてポリマーの化学組成として好ましい熱可塑性ポリマーは、ドイツ特許出願公開第103 34 286号及び国際公開第2005/044900号に熱可塑性ポリマーとして記載された熱可塑性ポリマーである。ドイツ特許出願公開第103 34 286号及び国際公開第2005/044900号の熱可塑性ポリマーに関する開示内容は、この参照によって本明細書の開示として援用する。
【0057】
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で測定した熱可塑性ポリマーの数平均分子量(M)は、例えば、約1,000〜約10,000,000g/モル又は約20,000〜約1,000,000g/モル又は約50,000〜約500,000g/モルである。
【0058】
ゲル透過クロマトグラフィ(GPC)で測定した上述したポリマーの分子量分布はモノモーダル(monomodal)である。熱可塑性ポリマーは、必要に応じてバイモーダル(bimodal)又はポリモーダル(polymodal)な分子量分布を有していてもよい。
【0059】
本発明に係る方法では、上述した熱可塑性ポリマーは純粋な物質(例えば、ポリマー粒子)又は熱可塑性ポリマー、分散媒及び必要に応じて分散剤を含む分散液としてすることができ、分散液として使用することが特に好ましい。「分散液」という用語は、熱可塑性ポリマーと分散媒の混合物を意味し、これらの2つの成分は相溶性及び化学的結合性をほとんど有していない。この場合、熱可塑性ポリマーを分散相(「内相」又は二次相)として分散媒(分散剤、連続相又は外相(主相))にできるだけ微細に分散させる。熱可塑性ポリマーが分散液の所与の温度において固体又は液体であるかに応じて、分散液は懸濁液又は乳濁液であってもよい。
【0060】
使用することができる分散媒としては、水、水混和性有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール)又は水と水混和性有機溶媒の混合物が挙げられ、水を分散媒として使用することが特に好ましい。
【0061】
分散剤としては、上述した熱可塑性ポリマーを水又は水混和性有機溶媒に分散させることができる当業者に公知のあらゆる化合物を使用することができる。適当な分散剤としては、脂肪酸塩、ココアミン、ココアミド及びその塩、硫酸アルキルエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、エチレンオキシド付加アルコール、プロピレンオキシド付加アルコール、アミノアルコール、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、脂肪酸エステル、オキシエチレン/オキシプロピレンブロックポリマー、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、ラウリルジメチルアミンオキシド等のアニオン、ノニオン、カチオン又は両性界面活性化合物が挙げられる。そのような界面活性物質は、単独又は2種以上を組み合わせて分散液の調製に使用することができる。
【0062】
熱可塑性ポリマー、分散媒及び必要に応じて分散剤を含む分散液の20℃で測定したブルックフィールド粘度は、好ましくは0.1〜10,000mPa・s、特に好ましくは1〜5,000mPa・s、最も好ましくは5〜3,000mPa・sである。
【0063】
本発明では、分散液における熱可塑性ポリマーの量が、分散液の総重量の5〜95重量%、特に好ましくは20〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%、最も好ましくは40〜60重量%であることが好ましい。
【0064】
本発明において好適に使用されるポリマー分散液としては、Lurapret(登録商標)(BASF社製、ルートビヒスハーフェン)、例えば、Lurapret(登録商標)DPC、Lurapret(登録商標)DPH、Lurapret(登録商標)D312、Lurapret(登録商標)D456又はLurapret(登録商標)D500等として入手できる分散液、AC 31、AC 2538、AC 2511、AC 2039、AC 7574、AC 75012、AC 75030、AC 75036としてAlberdingk Boley社(クレーフェルト)から入手できる分散液、Ruderer 2038としてRuderer Klebetechnik社(Zorneding)から入手できる分散液、Air Products社(米国、アレンタウン)からAirflex(登録商標)、例えばAirflex(登録商標)315等として入手できる製品が挙げられる。
【0065】
本発明に係る方法において、熱可塑性ポリマーをI)工程ii)の前又は工程ii)の実施中においてモノマー水溶液に添加する場合には、熱可塑性ポリマーを、モノマー溶液の総重量の0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%、最も好ましくは0.1〜1重量%の量で添加することが好ましい。熱可塑性ポリマーを上述した分散液として使用する場合には、上記量は分散液の固形分である。
【0066】
本発明に係る方法において、熱可塑性ポリマーをII)工程ii)の後であって、工程iv)の前又は工程iv)の実施中にポリマーゲルに添加するか、III)工程iv)の後に吸水性ポリマー構造体に添加する場合には、熱可塑性ポリマーを、ポリマーゲル又は吸水性ポリマー構造体の総重量の0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜1重量%、最も好ましくは0.05〜0.5重量%の量で添加することが好ましい。ここでも、上述したポリマー分散液を使用する場合には、上記量はポリマー分散液の固形分である。
【0067】
熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーを含む分散液をI)においてモノマー溶液に添加する場合には、モノマーの添加前、添加中又は添加後に簡単な方法で熱可塑性ポリマー又は分散液を反応混合物に添加することができる。熱可塑性ポリマー又は分散液を工程iv)の前にポリマーゲルに添加する場合には、熱可塑性ポリマー又は分散液を、工程ii)で得られたポリマーゲル及び/又は必要に応じて工程iii)で得られた粉砕されたポリマーゲルに、適当な混練装置を使用して、例えば熱可塑性ポリマー又は分散液の存在下でポリマーゲルを刻むことによって簡単な方法で添加する。
【0068】
熱可塑性ポリマー又は分散液をIII)工程iv)の後に吸水性ポリマー構造体に添加する場合には、工程vi)における表面架橋の前、実施中又は後に熱可塑性ポリマー又は分散液を吸水性ポリマー構造体に接触させることが特に好ましい。例えば、以下の変形が考えられる。
【0069】
δ1)工程vi)又はv)で得られた吸水性ポリマー構造体を熱可塑性ポリマー又は分散液と接触させた後、後架橋剤を含む流体と混合物を必要な後架橋温度に加熱する。熱可塑性ポリマー又は分散液と後架橋剤を含む流体は個別に使用するか、共通の流体として使用することができる。
【0070】
δ2)工程vi)又はv)で得られた吸水性ポリマー構造体を後架橋剤を含む流体と接触させた後、混合物を必要な後架橋温度に加熱する。熱可塑性ポリマー又は分散液は加熱中に添加する。
【0071】
δ3)工程vi)又はv)で得られた吸水性ポリマー構造体を後架橋剤を含む流体と接触させた後、混合物を必要な後架橋温度に加熱する。後架橋反応が終了した時に、例えば調製中に熱可塑性ポリマー又は分散液を添加する。熱可塑性ポリマー又は分散液の添加後に、得られた吸水性ポリマーを好ましくは熱可塑性ポリマーの溶解又はガラス転移温度を超える温度にさらに加熱することができる。
【0072】
例えば、工程vi)の後に、表面後架橋された吸水性ポリマー構造体を凝固防止剤、ポリエチレングリコール等の流動助剤、シクロデキストリン又はゼオライト等の臭気結合剤又は透過性向上剤でコーティングする等のさらなる表面変性を行うことが有利な場合がある。
【0073】
特に好ましい実施形態では、工程iv)の後に、吸水性ポリマー構造体の表面を、吸水性ポリマー構造体の重量の5重量%未満、好ましくは1重量%未満、特に好ましくは0.1重量%未満、さらに好ましくは0.01重量%未満の微粒子、好ましくは無機又は有機粉末、特に好ましくは無機粉末、最も好ましくはSiO化合物と接触させる。吸水性ポリマー構造体は、微粒子、好ましくは無機又は有機粉末、より好ましくは無機粉末、最も好ましくはSiO化合物と接触させないことが最も好ましい。これは、熱可塑性ポリマー又は分散液を、工程iv)の後であって、好ましくは工程vi)の前、実施中又は後に吸水性ポリマー構造体に添加した場合に特に当てはまる。意外なことに、特に熱可塑性ポリマーを含有する分散液をモノマー溶液又は吸水性ポリマー構造体と共に使用することにより、微粒子(特に無機粉末)を添加せず、少なくとも従来技術と比較して非常に少量の無機粉末を透過性向上剤又は流動性向上剤として添加することによって優れた透過性と流動特性を示す吸収性製品が得られることが判明した。「工程iv)の後に、5重量%未満、好ましくは1重量%未満、特に好ましくは0.1重量%未満、さらに好ましくは0.01重量%未満、最も好ましくは0重量%の微粒子と接触させる」とは、乾燥後において、表面後架橋の前、実施中又は後に特に純粋な粉末又は流体(例えば、微粒子と溶媒を含む懸濁液)として微粒子を使用しないことを意味する。本発明に係る方法の別の実施形態では、モノマー溶液の重量の5重量%未満、好ましくは1重量%未満、特に好ましくは0.1重量%未満、さらに好ましくは0.01重量%未満、最も好ましくは0重量%の微粒子、好ましくは無機又は有機粉末、最も好ましくは無機粉末をモノマー溶液に添加する。
【0074】
上記最大量で好ましくは使用され、最も好ましくは全く使用されない「微粒子」とは、ドイツ特許出願第103 34 286号に微粒子として記載された微粒子を好ましくは意味し、微粒子の化学的組成は吸水性ポリマー構造体の化学的組成と異なることが好ましい。微粒子は、200μm未満、特に好ましくは100μm未満、最も好ましくは50μm未満の篩い分け分析による粒径を有することが好ましい。
【0075】
また、上述した目的は、上述した本発明に係る方法によって得られる吸水性ポリマー構造体によって達成される。本発明に係る吸水性ポリマー構造体は、吸水性ポリマー構造体の重量の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも90重量%のカルボキシレート基含有モノマーを含むことが特に好ましい。
【0076】
また、本発明では、本発明に係る吸水性ポリマー構造体は、好ましくは少なくとも20モル%、特に好ましくは少なくとも50モル%、より好ましくは60〜85モル%が中和されたアクリル酸を、吸水性ポリマー構造体の重量の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%の量で含むことが好ましい。
【0077】
また、本発明では、本発明に係る方法によって得られる吸水性ポリマー構造体は、以下の特性の少なくとも1つ、好ましくは全てを有することが好ましい。
【0078】
(β1)本明細書に記載する試験方法に準拠して全粒子部分について測定したダスト含有量が2%以下、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下。
【0079】
(β2)本明細書に記載する試験方法に準拠して全粒子部分について測定した流動値が15以下、好ましくは10以下、より好ましくは7.5以下であって、好ましくは少なくとも5、特に好ましくは少なくとも5.5。
【0080】
(β3)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が25g/g未満において、明細書に記載する試験方法に準拠して測定したゲル床透過性(GBP)が少なくとも50ダルシー、好ましくは少なくとも100ダルシー、最も好ましくは少なくとも150ダルシー。
【0081】
(β4)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が25g/g以上、27g/g未満において、明細書に記載する試験方法に準拠して測定したゲル床透過性(GBP)が少なくとも45ダルシー、好ましくは少なくとも90ダルシー、最も好ましくは少なくとも120ダルシー。
【0082】
(β5)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が27g/g以上、29g/g未満において、明細書に記載する試験方法に準拠して測定したゲル床透過性(GBP)が少なくとも40ダルシー、好ましくは少なくとも70ダルシー、最も好ましくは少なくとも100ダルシー。
【0083】
(β6)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が29g/g以上、31g/g未満において、明細書に記載する試験方法に準拠して測定したゲル床透過性(GBP)が少なくとも30ダルシー、好ましくは少なくとも45ダルシー、最も好ましくは少なくとも60ダルシー。
【0084】
(β7)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が31g/g以上、33g/g未満において、明細書に記載する試験方法に準拠して測定したゲル床透過性(GBP)が少なくとも20ダルシー、好ましくは少なくとも30ダルシー、最も好ましくは少なくとも40ダルシー。
【0085】
(β8)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が33g/g以上、35g/g未満において、明細書に記載する試験方法に準拠して測定したゲル床透過性(GBP)が少なくとも15ダルシー、好ましくは少なくとも20ダルシー、最も好ましくは少なくとも25ダルシー。
【0086】
(β9)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が35g/g以上において、明細書に記載する試験方法に準拠して測定したゲル床透過性(GBP)が少なくとも8ダルシー、好ましくは少なくとも10ダルシー、最も好ましくは少なくとも15ダルシー。
【0087】
本発明に係る方法によって得られる吸水性ポリマー構造体の実施形態は上記特徴(β1)〜(β9)のあらゆる組み合わせを有し、以下の特徴の組み合わせの実施形態が好ましい。(β1),(β2),(β3),(β4),(β5),(β6),(β7),(β8),(β9),(β1)(β2),(β3)(β4)(β5)(β6)(β7)(β8)(β9),(β1)(β3)(β4)(β5)(β6)(β7)(β8)(β9)、(β2)(β3)(β4)(β5)(β6)(β7)(β8)(β9),(β1)(β2)(β3)(β4)(β5)(β6)(β7)(β8)(β9)。これらのうち、(β1)(β2)(β3)(β4)(β5)(β6)(β7)(β8)(β9)が最も好ましい組み合わせである。
【0088】
また、本発明は、以下の特性の少なくとも1つを有する吸水性ポリマー構造体に関する。
【0089】
(β1)本明細書に記載する試験方法に準拠して全粒子部分について測定したダスト含有量が2%以下、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下。
【0090】
(β2)本明細書に記載する試験方法に準拠して全粒子部分について測定した流動値が15以下、好ましくは10以下、より好ましくは7.5以下であって、好ましくは少なくとも5、特に好ましくは少なくとも5.5。
【0091】
(β3)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が25g/g未満において、明細書に記載する試験方法に準拠して測定したゲル床透過性(GBP)が少なくとも50ダルシー、好ましくは少なくとも100ダルシー、最も好ましくは少なくとも150ダルシー。
【0092】
(β4)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が25g/g以上、27g/g未満において、明細書に記載する試験方法に準拠して測定したゲル床透過性(GBP)が少なくとも45ダルシー、好ましくは少なくとも90ダルシー、最も好ましくは少なくとも120ダルシー。
【0093】
(β5)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が27g/g以上、29g/g未満において、明細書に記載する試験方法に準拠して測定したゲル床透過性(GBP)が少なくとも40ダルシー、好ましくは少なくとも70ダルシー、最も好ましくは少なくとも100ダルシー。
【0094】
(β6)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が29g/g以上、31g/g未満において、明細書に記載する試験方法に準拠して測定したゲル床透過性(GBP)が少なくとも30ダルシー、好ましくは少なくとも45ダルシー、最も好ましくは少なくとも60ダルシー。
【0095】
(β7)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が31g/g以上、33g/g未満において、明細書に記載する試験方法に準拠して測定したゲル床透過性(GBP)が少なくとも20ダルシー、好ましくは少なくとも30ダルシー、最も好ましくは少なくとも40ダルシー。
【0096】
(β8)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が33g/g以上、35g/g未満において、明細書に記載する試験方法に準拠して測定したゲル床透過性(GBP)が少なくとも15ダルシー、好ましくは少なくとも20ダルシー、最も好ましくは少なくとも25ダルシー。
【0097】
(β9)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が35g/g以上において、明細書に記載する試験方法に準拠して測定したゲル床透過性(GBP)が少なくとも8ダルシー、好ましくは少なくとも10ダルシー、最も好ましくは少なくとも15ダルシー。
【0098】
本発明に係る吸水性ポリマー構造体は、本発明に係る方法によって得られる吸水性ポリマー構造体と同一の特性を有することが好ましい。本発明に係る方法と本発明に係る吸水性ポリマー構造体に関して上述した特性値は、下限値のみを示す場合には、上限値は最も好ましい下限値の20倍、好ましくは10倍、特に好ましくは5倍である。
【0099】
本発明に係る吸水性ポリマー構造体及び本発明に係る方法によって得られる吸水性ポリマー構造体の特に好ましい実施形態では、吸水性ポリマー構造体は、5重量%未満、好ましくは1重量%未満、特に好ましくは0.1重量%未満、さらに好ましくは0.01重量%未満の微粒子、好ましくは無機又は有機粉末、特に好ましくは無機粉末、最も好ましくはSiO化合物を含み、吸水性ポリマー構造体は、微粒子、好ましくは無機又は有機粉末、より好ましくは無機粉末、最も好ましくはSiO化合物を含まないことが最も好ましい。
【0100】
また、上述した目的は、本発明に係る吸水性ポリマー構造体又は本発明に係る方法によって得られる吸水性ポリマー構造体と、基材と、を含む複合材料によって達成される。本発明に係る吸水性ポリマー構造体と基材は強固に結合されていることが好ましい。好ましい基材は、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリアミド等のポリマーのフィルム、金属、不織布、綿毛、織物、織布、天然又は合成繊維又は発泡体である。本発明では、複合材料は、複合材料の総重量の約15〜100重量%、好ましくは約30〜100重量%、特に好ましくは約50〜99.99重量%、より好ましくは約60〜99.99重量%、さらに好ましくは約70〜99重量%の本発明に係る吸水性ポリマー構造体を含む少なくとも1つの領域を含み、該領域は少なくとも0.01cm3、好ましくは少なくとも0.1cm3、最も好ましくは少なくとも0.5cm3の体積を有することが好ましい。
【0101】
本発明に係る複合材料の特に好ましい実施形態では、複合材料は「吸収性材料」として国際公開第02/056812 A1号に記載されているような平坦な複合材料である。国際公開第02/056812 A1号の複合材料の構造、構成要素の単位面積当たりの重量及び厚みに関する開示内容は、この参照によって本発明の開示内容の一部として援用する。
【0102】
また、上述した目的は、複合材料の製造方法であって、本発明に係る吸水性ポリマー構造体又は本発明に係る方法によって得られる吸水性ポリマー構造体と、基材と、必要に応じて添加剤と、を接触させる方法によって達成される。基材としては、本発明に係る複合材料に関連して上述した基材を使用することが好ましい。
【0103】
また、上述した目的は、上記方法によって得られ、上述した本発明に係る複合材料と同一の特性を好ましくは有する複合材料によって達成される。
【0104】
また、上述した目的は、本発明に係るポリマー構造体又は本発明に係る複合材料を含む化学製品によって達成される。好ましい化学製品は、発泡体、成形体、繊維、フォイル、フィルム、ケーブル、シール材、液体吸収性衛生用品(特におむつ及び生理用ナプキン)、植物・菌類生育調節剤・植物保護活性化合物の担体、建設材料の添加剤、包装材料、土壌添加剤である。
【0105】
また、上述した目的は、本発明に係るポリマー構造体又は本発明に係る複合材料の、化学製品、好ましくは上述した化学製品、特におむつ及び生理用ナプキン等の衛生用品における使用及び超吸収体粒子の植物、菌類生育調節剤又は植物保護活性化合物の担体における使用によって達成される。植物、菌類生育調節剤又は植物保護活性物質の担体としての使用では、植物、菌類生育調節剤又は植物保護活性物質は、担体によって制御される時間が経過した後に放出できることが好ましい。
【0106】
また、上述した目的は、好ましくは熱可塑性ポリマー、分散媒及び必要に応じて分散剤を含む分散液としての熱可塑性ポリマーの、上述したモノマー溶液の添加剤又は吸水性ポリマー構造体の表面変性剤としての使用によって達成される。
【実施例】
【0107】
本発明を、本発明を限定するものではない図面、試験方法及び実施例を参照してさらに詳細に説明する。
【0108】
試験方法
流動値(FFC値)の測定
FFC値は、サイロ内のバルク材料の流動特性に関する情報である。測定では、バルク材料に様々な荷重を与える。流動特性は以下のように表される。
【0109】
FFC<1 流動せず
1<FFC<2 粘性が非常に高い
2<FFC<4 粘性がある
4<FFC<10 容易に流動
10<FFC 自由に流動
【0110】
バルク材料を容易に流動させることができる場合(例えば、バルク材料が凝集することなくホッパー又はサイロから流れ出る場合)には流動特性が優れている。不十分な流動特性を有するバルク材料の場合には、良好に流出しなかったり、輸送又は保管時に凝固が生じる。「流動」という用語は、バルク材料が荷重下で可塑的に変形することを意味する。
【0111】
FFC測定試験の正確な手順に関する情報は、Dr. Ing. Ditmar Schulze、「自動リング剪断試験機(Das automatische Ringschwergerat) RST−0l.pc」、2002年2月及び「バルク材料の流動特性とサイロ設計(Fliesseigenschaften von Schuttgutern und verfahrenstechnische Siloauslegung)」2002年に記載されている。測定では、リング剪断試験機RST−01.01の手動モードを使用した。
【0112】
ダスト含有量の測定
ダスト含有量は、Palas社(ドイツ)製「Dust View」を使用して測定した。すなわち、30gの試料を漏斗管に入れた。測定開始時に、漏斗フラップが自動的に開き、試料がダスト貯槽に落下した。ダストの形成によるレーザービームの減少(伝導の減少)を測定した。得られる値によって1〜100%でダスト含有量(曇り)を決定する。ダスト含有量は、測定開始時の開始値と、浮遊量を測定するために30秒後に測定されたダスト値から得られる。従って、ダスト含有量は開始値とダスト値の合計によって与えられる。
【0113】
ゲル床透過性の測定
ゲル床透過性は、米国特許第6,387,495 B1号に開示された試験方法によって測定した。測定は、米国特許第6,387,495 B1号に記載された大気圧+0.3psiではなく、大気圧下で行った。
【0114】
吸水性ポリマー構造体の製造
水酸化ナトリウム溶液(466.22g、NaOH:50%)によって70モル%まで中和したアクリル酸 600g、水 900.26g、ポリエチレングリコール−300−ジアクリレート 1.44g、モノアリルポリエチレングリコール−450−モノアクリレート 1.44gを含むモノマー溶液から窒素パージにより溶存酸素を除去した後、モノマー溶液を開始温度である4℃に冷却した。開始温度に達した後、開始剤溶液(10gのHOに溶解した0.6gのパーオキシ二硫酸ナトリウム、10gのHOに溶解した0.014gの35%過酸化水素溶液、10gのHOに溶解した0.03gのアスコルビン酸)を添加した。約100℃の終了温度に達した後、得られたゲルを肉挽機で粉砕し、乾燥キャビネット内において150℃で2時間乾燥した。乾燥したポリマーを粗く砕き、5mmの網目幅の篩いを有するリングビーターミル(Retsch ZM1社製)で粉砕し、粒径が150〜850μmの粉末を篩い分けた。
【0115】
後架橋
垂直ミキサー(LM1.5/5、MTI−Mischtechnik Industrieanlagen社製)を使用して、上記粉末 100gを炭酸エチレン 1.0gと脱イオン水 3gを含む後架橋溶液と混合した。溶液は、0.45mmのカニューレを備えた注射器によってミキサー内でポリマー粉末に塗布した。次に、水溶液で覆われた粉体Aを循環乾燥機内において185℃で30分間加熱した。このようにして吸水性ポリマー粉末Bを得た(比較ポリマー)。
【0116】
(実施例1)(ポリマー分散液のモノマー溶液への添加)
モノマー溶液におけるアクリル酸の量に対して1重量%の熱可塑性ポリマーエマルジョンLurapret(登録商標)456(固形分)をモノマー溶液に添加したこと以外は上記製造例と同様な手順を行った。このようにして吸水性ポリマー粉末Cを得た。
【0117】
(実施例2)(ポリマー分散液のモノマー溶液への添加)
モノマー溶液におけるアクリル酸の量に対して1重量%の熱可塑性ポリマーエマルジョンLurapret(登録商標)DPS(固形分)をモノマー溶液に添加したこと以外は上記製造例と同様な手順を行った。このようにして吸水性ポリマー粉末Dを得た。
【0118】
(実施例3)(ポリマー分散液のモノマー溶液への添加)
モノマー溶液におけるアクリル酸の量に対して0.5重量%、0.75重量%、1.0重量%又は1.5重量%の熱可塑性ポリマーエマルジョンAirflex 315をモノマー溶液に添加したこと以外は上記製造例と同様な手順を行った。このようにして吸水性ポリマー粉末E、F、G、Hを得た。
【0119】
(実施例4)(ポリマー分散液のモノマー溶液への添加)
モノマー溶液におけるアクリル酸の量に対して1.0重量%の熱可塑性ポリマーエマルジョンALBERDINGK(登録商標)7502(固形分)をモノマー溶液に添加したこと以外は上記製造例と同様な手順を行った。このようにして吸水性ポリマー粉末Iを得た。
【0120】
ポリマー粉末B〜Iの特性を以下の表1に示す。
【0121】
【表1】

【0122】
表1に示すように、熱可塑性ポリマーをモノマー溶液に添加することにより、ほぼ同じ保持率を維持しながら透過性が大きく向上した。
【0123】
(実施例5)(後架橋時のポリマー分散液の添加)
粉末Aが1,000ppmのポリマー分散液に接触する量で熱可塑性ポリマーエマルジョンALBERDINGK(登録商標)AC 2538を後架橋剤溶液に添加したこと以外は上記製造例と同様な手順を行った。このようにして吸水性ポリマー粉末Jを得た。
【0124】
(実施例6)(後架橋時のポリマー分散液の添加)
粉末Aが1,000ppmのポリマー分散液に接触する量で熱可塑性ポリマーエマルジョンALBERDINGK(登録商標)AC 75030を後架橋剤溶液に添加したこと以外は上記製造例と同様な手順を行った。このようにして吸水性ポリマー粉末Kを得た。
【0125】
(実施例7)(後架橋時のポリマー分散液の添加)
粉末Aが1,000ppmのポリマー分散液に接触する量で熱可塑性ポリマーエマルジョンALBERDINGK(登録商標)AC 75036を後架橋剤溶液に添加したこと以外は上記製造例と同様な手順を行った。このようにして吸水性ポリマー粉末Lを得た。
【0126】
(実施例8)(後架橋時のポリマー分散液の添加)
粉末Aが3,000ppmのポリマー分散液(固形分)に接触する量で熱可塑性ポリマーエマルジョンLurapret(登録商標)D313を後架橋剤溶液に添加したこと以外は上記製造例と同様な手順を行った。このようにして吸水性ポリマー粉末Mを得た。さらなる実験では、粉末Aが100ppm、300ppm、500ppm、1,000ppm又は5,000ppmのポリマー分散液に接触する量で熱可塑性粉末を添加した。結果を図1に示す。
【0127】
(実施例9)(後架橋時のポリマー分散液の添加)
粉末Aが1,000ppmのポリマー分散液(固形分)に接触する量で熱可塑性ポリマーエマルジョンLurapret(登録商標)D500を後架橋剤溶液に添加したこと以外は上記製造例と同様な手順を行った。このようにして吸水性ポリマー粉末Nを得た。
【0128】
ポリマー粉末B及びJ〜Nの特性を以下の表2に示す。
【0129】
【表2】

【0130】
表2に示すように、熱可塑性ポリマーを後架橋時に添加することにより、例えばSiO粉末等の無機微粒子を添加しない場合であっても、ほぼ同じ保持率を維持しながら透過性が大きく向上した。図1に示すように、熱可塑性ポリマーの量が増加すると透過性が向上した。良好な透過性を得るために微粒子を使用する必要がないため、特に低いダスト含有量を有する吸水性粉末を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性ポリマー構造体の製造方法であって、
i)(α1)重合性モノエチレン性不飽和酸性基含有モノマー又はその塩と、(α2)必要に応じて前記モノマー(α1)と重合可能なモノエチレン性不飽和モノマーと、(α3)必要に応じて架橋剤と、を含むモノマー水溶液を用意する工程と、
ii)前記モノマー水溶液のラジカル重合によってポリマーゲルを得る工程と、
iii)必要に応じて前記ポリマーゲルを粉砕する工程と、
iv)必要に応じて粉砕された前記ポリマーゲルを乾燥して吸水性ポリマー構造体を得る工程と、
v)必要に応じて前記吸水性ポリマー構造体を粉砕及び篩い分けする工程と、
vi)必要に応じて粉砕及び篩い分けされた前記吸水性ポリマー構造体を表面後架橋する工程と、を含み、
熱可塑性ポリマーを、
I)前記工程ii)の前又は前記工程ii)の実施中(好ましくは前記工程ii)の前)に前記モノマー水溶液に添加するか、
II)前記工程ii)の後であって前記工程iv)の前又は前記工程iv)の実施中(好ましくは前記工程iv)の前)に前記ポリマーゲルに添加するか、
III)前記工程iv)の後に前記吸水性ポリマー構造体に添加する方法。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリマーを前記工程ii)の前に前記モノマー水溶液に添加する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリマーを、前記工程iv)の後であって、好ましくは前記工程vi)の前、実施中又は後に前記吸水性ポリマー構造体に添加する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリマーのISO 11357に準拠して測定した溶解又はガラス転移温度が−100℃〜200℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリアクリレート、(メタ)アクリル酸コポリマー(例えば、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマー)、(メタ)アクリレートコポリマー、マレイン酸コポリマー(例えば、マレイン酸/プロピレンコポリマー)、ポリウレタン、酢酸ビニルコポリマー(例えば、エチレン/酢酸ビニルコポリマー又は酢酸ビニル/アクリル酸ブチルコポリマー)、スチレンコポリマー(例えば、ブチルアクリレート/スチレンコポリマー)又はポリカーボネートである、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記熱可塑性ポリマーを、前記熱可塑性ポリマー、分散媒及び必要に応じて分散剤を含む分散液として使用する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記分散液の20℃で測定したブルックフィールド粘度が0.1〜10,000mPa・sである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記分散媒が水である、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記分散液における前記熱可塑性ポリマーの量が前記分散液の総重量の5〜95重量%である、請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記分散液を前記工程ii)の前に前記モノマー水溶液に添加する場合に、前記分散液を前記モノマー水溶液の総重量の0.01〜10重量%の量で前記モノマー水溶液に添加する、請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記分散液を前記工程iv)の後であって、好ましくは前記工程vi)の前、実施中又は後に前記吸水性ポリマー構造体に添加する場合に、前記分散液を前記吸水性ポリマー構造体の総重量の0.001〜5重量%の量で使用する、請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記工程iv)の後に、前記吸水性ポリマー構造体の表面を、前記吸水性ポリマー構造体の重量の5重量%未満、好ましくは1重量%未満、特に好ましくは0重量%の微粒子、好ましくは無機粉末と接触させる、請求項3〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記請求項のいずれか1項に記載の方法によって得られる吸水性ポリマー構造体。
【請求項14】
前記吸水性ポリマー構造体が以下の特性の少なくとも1つを有する、請求項13に記載の吸水性ポリマー構造体。
(β1)明細書に記載する試験方法に準拠して全粒子部分について測定したダスト含有量が2%以下。
(β2)明細書に記載する試験方法に準拠して全粒子部分について測定した流動値が15以下であって、好ましくは少なくとも5。
(β3)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が25g/g未満において、明細書に記載する試験方法に準拠して測定したゲル床透過性(GBP)が少なくとも50ダルシー。
(β4)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が25g/g以上、27g/g未満において、明細書に記載する試験方法に準拠して測定したゲル床透過性(GBP)が少なくとも45ダルシー。
(β5)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が27g/g以上、29g/g未満において、明細書に記載する試験方法に準拠して測定したゲル床透過性(GBP)が少なくとも40ダルシー。
(β6)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が29g/g以上、31g/g未満において、明細書に記載する試験方法に準拠して測定したゲル床透過性(GBP)が少なくとも30ダルシー。
(β7)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が31g/g以上、33g/g未満において、明細書に記載する試験方法に準拠して測定したゲル床透過性(GBP)が少なくとも20ダルシー。
(β8)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が33g/g以上、35g/g未満において、明細書に記載する試験方法に準拠して測定したゲル床透過性(GBP)が少なくとも15ダルシー。
(β9)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が35g/g以上において、明細書に記載する試験方法に準拠して測定したゲル床透過性(GBP)が少なくとも8ダルシー。
【請求項15】
以下の特性の少なくとも1つを有する吸水性ポリマー構造体。
(β1)明細書に記載する試験方法に準拠して全粒子部分について測定したダスト含有量が2%以下。
(β2)明細書に記載する試験方法に準拠して全粒子部分について測定した流動値が15以下であって、好ましくは少なくとも5。
(β3)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が25g/g未満において、明細書に記載する試験方法に準拠して測定したゲル床透過性(GBP)が少なくとも50ダルシー。
(β4)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が25g/g以上、27g/g未満において、明細書に記載する試験方法に準拠して測定したゲル床透過性(GBP)が少なくとも45ダルシー。
(β5)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が27g/g以上、29g/g未満において、明細書に記載する試験方法に準拠して測定したゲル床透過性(GBP)が少なくとも40ダルシー。
(β6)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が29g/g以上、31g/g未満において、明細書に記載する試験方法に準拠して測定したゲル床透過性(GBP)が少なくとも30ダルシー。
(β7)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が31g/g以上、33g/g未満において、明細書に記載する試験方法に準拠して測定したゲル床透過性(GBP)が少なくとも20ダルシー。
(β8)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が33g/g以上、35g/g未満において、明細書に記載する試験方法に準拠して測定したゲル床透過性(GBP)が少なくとも15ダルシー。
(β9)ERT 441.2−02に準拠して測定した保持率が35g/g以上において、明細書に記載する試験方法に準拠して測定したゲル床透過性(GBP)が少なくとも8ダルシー。
【請求項16】
前記ポリマー構造体が前記特性(β1)、(β2)、(β3)〜(β9)を有する、請求項14又は15に記載の吸水性ポリマー構造体。
【請求項17】
前記吸水性ポリマー構造体が、5重量%未満、好ましくは1重量%未満、特に好ましくは0重量%の微粒子、好ましくは無機粉末を含む、請求項13〜16のいずれか1項に記載の吸水性ポリマー構造体。
【請求項18】
請求項13〜17のいずれか1項に記載の吸水性ポリマー構造体を含む複合材料。
【請求項19】
請求項13〜17のいずれか1項に記載の吸水性ポリマー構造体と、基材と、必要に応じて補助物質とを接触させる、複合材料の製造方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法により得られる複合材料。
【請求項21】
請求項13〜17のいずれか1項に記載の吸水性ポリマー構造体又は請求項18又は20に記載の複合材料を含む、発泡体、成形品、繊維、ホイル、フィルム、ケーブル、シール材、吸収性衛生用品、植物・菌類生育調節剤用担体、包装材料、土壌添加剤又は建設材料。
【請求項22】
請求項13〜17のいずれか1項に記載の吸水性ポリマー構造体又は請求項18又は20に記載の複合材料の、発泡体、成形品、繊維、ホイル、フィルム、ケーブル、シール材、吸収性衛生用品、植物・菌類生育調節剤用担体、包装材料、活性化合物の制御放出のための土壌添加剤又は建設材料における使用。
【請求項23】
好ましくは熱可塑性ポリマー、分散媒及び必要に応じて分散剤を含む分散液としての熱可塑性ポリマーの、請求項1に記載のモノマー溶液の添加剤又は吸水性ポリマー構造体の表面変性剤としての使用。

【図1】
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【公表番号】特表2010−513576(P2010−513576A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540668(P2009−540668)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【国際出願番号】PCT/EP2007/011093
【国際公開番号】WO2008/074456
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(308007985)エフォニック ストックハウゼン ゲーエムベーハー (12)
【Fターム(参考)】