説明

ポリマー及び組成物

式(1):[式中、R1a、R1b及びR1cは、それぞれ独立に、C2〜15ヒドロカルビレン、好ましくは直鎖C3〜12アルキレン(例えば、ヘキシレンのようなC4〜8アルキレン等)、イソホロン単位及び/又はトリル単位を表し、R2a、R2b及びR2cは、それぞれ独立に、式(2)(式中、X及びYは、独立に、C2〜10ヒドロカルビレン、好ましくは、C2〜8アルキレンを表し、kは0〜30であり、lは0〜30であり、「k+l」は1〜30である)の二価部分、及び/又は式(3)(式中、V及びWは、独立に、C2〜10ヒドロカルビレン、好ましくは、C2〜8アルキレンを表し、iは0〜30であり、jは0〜30であり、「i+j」は1〜30であり、pは1〜10であり、rは1〜10である)の二価部分を表し、R3a、R3b及びR3cは、それぞれ独立に、H又はメチルを表す(即ち、Rは、アクリレート又はメタクリレート基の部分をそれぞれ形成する)、但し、R2a、R2b及びR2cの少なくとも1つは式(2)の部分であり、R2a、R2b及びR2cの少なくとも1つは式(3)の部分であり、Rが式(3)の二価部分を表す場合は、式(3)内の下位部分は式(1)におけるアミド基に直接結合する]のウレタンアクリレートを開示する。式(1)のUAは非結晶性であり、低粘度であり、テンティング用途に適したポリマー可撓化剤を調製するのに適する。また、これらのウレタンアクリレートの調製方法をも記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UV放射線及び/又は電子ビーム等の化学線により硬化可能なウレタンアクリレート樹脂の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタンアクリレートは、可撓化剤、可塑剤及び/又は軟化剤としての使用のための放射線硬化性樹脂組成物を調製するために都合良く使用される。多くの場合、その様なウレタンアクリレートはイソシアヌレート基を含む。
【0003】
しかし、従来のウレタンアクリレートの殆どは、前述の用途での使用、特に、テンティング用途で使用される場合種々の欠点を有する。
【0004】
本明細書で使用される「テンティング」という用語は、次の回路基板の製造方法を意味する。第1工程では、光硬化性樹脂(フォトレジストとして知られている)の乾燥フィルムが銅フォイルのラミネートクラッドに適用される。第2工程では、硬化放射線(通常UV)が、生成される回路の陰画を通して被覆されたラミネートに適用される。この様にして、フォトレジストは、所望の回路に相当するそれらの領域だけで硬化される。次の現像工程で、基板は現像液又はエッチング液中に浸漬され、硬化したフォトレジストで保護されていない銅フォイルが除去される。フォトレジストは最終工程で除去され(ストリップされ)、その下の銅回路が露出される。
【0005】
しかし、フォトレジストが十分に良好なテンティング性を有していない場合は、銅フォイルは現像液から十分に保護されない。悪い場合には、回路の切断が生じ、基板の使用を不可能とし、所望のパターン中に孔さえも生じ、その他の望ましくない結果を招く可能性がある(例えば、回路の電気的性質における望ましくない変化等)。また、テンティング用途においては、フォトレジストは、適用及び使用が容易であるための十分な可撓性を有し、加えて、回路画像の保護のために現像に対して改良された抵抗性を与えることが望ましい。これは、可撓化剤、軟化剤及び/又は可塑剤の使用並びに/或いはフォトレジストの本来の性質を改良することにより達成することができる。
【0006】
従来のウレタンアクリレートの欠点としては、次の幾つか又は全てが挙げられる。ウレタンアクリレートはポリマー組成物中でスカムを発生し且つ/又は結晶性が高過ぎる。二官能性のウレタンアクリレートが使用される場合、組成物は柔らか過ぎ、高官能性ウレタンアクリレートが使用されると樹脂は脆くなり過ぎる。これらの問題に対処するためにウレタンアクリレートを変性すると、強力なテンティング強度を喪失したポリマー組成物をもたらす結果となる。
【0007】
種々のイソシアヌレートを基にしたウレタンアクリレート、例えば、以下に述べるものが知られている。
【0008】
JP57−55914−A(Hitachi Chem.)は、ソルダマスク及び/又はメッキレジストのための乾燥フィルムフォトレジスト組成物を含むウレタンアクリレートを開示している。しかし、それらのウレタンアクリレートは良好な化学的及び/又は熱的抵抗性を有するが、テンティング強度に乏しい。
【0009】
JP59−157112は、ポリカプロラクトン変性を伴う本明細書の比較例(下記参照)を開示している。
【0010】
JP62−050315は、PTMGを基にしたウレタンアクリレートを開示している。
【0011】
JP62−215618は、THEICトリ(メタ)アクリレート及び単官能性(メタ)アクリレートと共にポリイソシアネート/ポリエーテルポリオール/モノヒドロキシアルキルアクリレートの組合せから得られるウレタンアクリレートを開示している。
【0012】
JP62−290705は、THEICトリ(メタ)アクリレート、PPG又はPEGを基にしたウレタン(メタ)アクリレートを含むソルダレジスト配合物を開示している。
【0013】
JP63−027518は、PTMG/H12MDIを基にしたウレタンアクリレートを開示している。
【0014】
JP63−090525は、ポリイソシアネート/ポリエーテルポリオール/モノヒドロキシアルキルアクリレート/HO−R−S−R−OH(ここで、R及びRはアルキル鎖を表す)から得られるウレタンアクリレートを開示している。
【0015】
JP63−090526は、ポリイソシアネート/ポリエステルポリオール(M 600〜4000)/ジオール(M 60〜200)/モノヒドロキシアルキルアクリレートから得られるウレタンアクリレートを開示している。次の構造はそれらの例示である:TDI/ポリエステルポリオール(M 1000)/1,4−ブタンジオール又は1,6−ヘキサンジオール又は3−メチル−1,6−ペンタンジオール/HEA。
【0016】
JP63−270719は、PTMGを基にしたウレタンアクリレートを開示している。
【0017】
JP02−034620は、(a)ウレタン(メタ)アクリレート(b)単及び多官能性不飽和化合物(c)光開始剤としてホスフィンオキシド誘導体を開示している。次の3つのタイプのウレタンアクリレートのみが例示されている:(i)HEA/TDI/PTMG#1000/TDI/HEA、(ii)HPA/HDI/PTMG#2000/HDI/HPA及び(iii)HEA/TDI/PPG、PTMGコポリマー#2000/TDI/HEA。
【0018】
JP04−130119は、本出願において後で記載する比較例と類似の材料を記載している。
【0019】
JP04−306218は、HDI又はHDI/IPDI及びC6〜9脂肪族アルコールを反応させることによるイソシアヌレート構造及びアロファネート構造を有するポリイソシアネート混合物を記載している。
【0020】
JP05−273754−A(Sunopco)は、液体光画像化ソルダマスクに対して化学的及び熱的抵抗性を有する、イソシアヌレートを基にしたウレタンアクリレートを開示している。
【0021】
JP06−093066は、また、UV−PUD化合物を開示している。
【0022】
JP06−145273は、UV−PUD化合物を開示している。
【0023】
JP09−003147は、第一級アルコールと部分的に反応したHDI/IPDIブレンドを使用するポリイソシアネート硬化剤、ポリイソシアネート変性ペイント及び接着剤配合物を記載している。言及されている構造内には放射線硬化性官能基は存在しない。
【0024】
JP09−087338は、ポリオルガノシロキサンを基にしたウレタンアクリレートを開示している。
【0025】
JP2001−117224−A(Hitachi Chem);JP2001−174988−A(Hitachi Chem);JP2002−196484−A(Hitachi Chem);及びJP2002−207292−A(Hitachi Chem)は、それぞれ、テンティング用途の乾燥フィルムフォトレジスト組成物を開示している。この組成物は、テンティング性能を改良すると言及されている添加されたアルキレンオキシド単位を有するウレタンアクリレートを含む。しかし、これらの組成物は、現在の工業的要件を満足させるために十分に改良されているとは言えない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明の目的は、本明細書に記載されたこれらの問題の幾つか又は全てを解決する改良されたウレタンアクリレート及びこれから得ることのできるポリマー組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本出願人は、驚くべきことに、イソシアヌレート基を有する或種のウレタンアクリレートが、ポリカプロラクトン及びポリエチレングリコール部分も含む場合、これらのウレタンアクリレートは結晶性ではなく且つ低い粘度を有するので、これらが、優れたテンティング性を有するポリマー組成物を調製するのに特に適することを見出した。
【0028】
したがって、大まかに本発明によれば、式1:
【化1】


[式中、
1a、R1b及びR1cは、それぞれ独立に、C2〜15ヒドロカルビレンを表し、
2a、R2b及びR2cは、それぞれ独立に、式2
【化2】


(式中、X及びYは、独立に、C2〜10ヒドロカルビレン、好ましくは、C2〜8アルキレンを表し、kは0〜30であり、lは0〜30であり、「k+l」は1〜30である)の二価部分、及び/又は式3
【化3】


(式中、V及びWは、独立に、C2〜10ヒドロカルビレン、好ましくは、C2〜8アルキレンを表し、iは0〜30であり、jは0〜30であり、「i+j」は1〜30であり、pは1〜10であり、rは1〜10である)の二価部分を表し、
3a、R3b及びR3cは、それぞれ独立に、H又はメチルを表す(即ち、Rは、アクリレート又はメタクリレート基の一部をそれぞれ形成する)、
但し、R2a、R2b及びR2cの少なくとも1つは式2の部分であり、R2a、R2b及びR2cの少なくとも1つは式3の部分であり、Rが式3の二価部分を表す場合は、式3内の下位部分
【化4】


は式1におけるアミド基に直接結合する]により表されるウレタンアクリレートが提供される。
【0029】
好ましくは、R1a、R1b及びR1cは、それぞれ独立に、直鎖C2〜15アルキレン、及び/又は環式環を含むC3〜15ヒドロカルビレンを表す。
【0030】
更に好ましくは、直鎖アルキレンはC3〜12アルキレンであり、最も好ましくはC4〜8アルキレン、例えば、ヘキシレンである。
【0031】
最も好ましくは、環状ヒドロカルビレンは、式4:
【化5】


[式中、RはC3〜8ヒドロカルビレン環(任意選択的には、Cヒドロカルビレン環、例えば、フェニレン又はシクロヘキシレン)を表し、Rは、独立に、C1〜4アルキルであり、xは0〜4であり(任意選択的には、Rはメチルであり、xは1〜3である)、R及びRは、独立に、メチレン又は直接結合(即ち、この部分が、式1内で、単結合を介して式4の環に直接結合する場合)を表す]の部分である。
【0032】
最も好ましくは、環状ヒドロカルビレンは、イソホロン単位及びトリル単位からなる群から選択される。
【0033】
本明細書で使用されるイソホロン単位という用語は、イソホロンから誘導される任意の適当な二価基を意味する。適当なイソホロン単位は、例えば、
【化6】


(イソホロンジイソシアネート
【化7】


等の任意の適当な前駆体から誘導されてもよい)の部分を含んでもよい。
【0034】
本明細書で使用されるトリル単位という用語は、トルエンから誘導される任意の適当な二価基を意味する。適当なトリル単位は、例えば、
【化8】


(トリレンジイソシアヌレート(TDI)の適当な異性体、それぞれ、
【化9】


及び
【化10】


等の任意の適当な前駆体から誘導されてもよい)の部分を含んでもよい。
【0035】
イソホロン単位及びトリル単位という用語は、式1の構造の残部に結合するこれらの部分上の原子が、これらのウレタンアクリレートの調製中に必ずしも常に容易に制御できないので、これらの任意の適当な異性体を含む。
【0036】
は、式
【化11】


の下位部分を含む式3の二価部分を表してもよい。2番目の但し書きが明らかにするように、これらの下位部分は、式1中の(メタ)アクリレート官能基には決して直接に結合せず、逆に(アミドの方に向いて)結合する。Rが式3の部分である場合は、式1中の(メタ)アクリレート基に直接結合するのは、式3内の
【化12】


部分である。
【0037】
式2の好ましい部分は、kが0〜20であり、lが0〜20であり、「k+l」が1〜20である場合のもの、更に好ましくは、kが0〜10であり、lが0〜10であり、「k+l」が6〜10である場合のもの、最も好ましくは、X及びYも、直鎖又は分枝アルキレンである場合のものである。
【0038】
好都合には、式2は、式2a
【化13】


(式中、mは2〜12であり、更に都合が良いのは、5〜12であり、最も都合が良いのは、6〜10である)の二価部分である。(即ち、式2aは、X及びYが共にエチレンであり、k+l=mである上記の式2に相当する)。
【0039】
式3の好ましい部分は、iが0〜20であり、jが0〜20であり、「i+j」が1〜20であり、rが1〜8であり、pが3〜6であるものである。
【0040】
式3の更に好ましい部分は、iが0〜10であり、jが0〜10であり、「i+j」が1〜10であり、rが1〜6であり、pが3〜6であるものである。
【0041】
式3の最も好ましい部分は、iが0〜4であり、jが0〜4であり、「i+j」が1〜4であり、rが2〜4であり、pが4であり、V及びWが共に環状C2〜4アルキレンではないものである。
【0042】
都合良く、式3は、式3a
【化14】


(式中、nは1〜8であり、更に都合が良いのは、1〜5であり、最も都合が良いのは、2〜4である)の二価部分である。(即ち、式3aは、iが0であり、jが1であり、Wがエチレンであり、pが5であり、rがnである上記の式3に相当する)。
【0043】
本出願人は、式3の結合基の含有量が優位を占めるウレタンアクリレート(UA)(全てのRがn個のカプロラクトン部分を含む式3aの部分を表す式1の類似体で表されるUA等)が、本明細書に記載されている最終用途にとっては高過ぎる結晶性及び/又は高過ぎる粘度を有することを見出した。しかし、式2の結合基の含有量が優位を占めるウレタンアクリレート(全てのRが式2aのエトキシ部分を表す場合の式1の類似体で表されるUA等)は、テンティング用途にとっては十分とは言えない性質を有することが分かった。したがって、所望の性能を有するために、本発明のウレタンアクリレートは、但し書きで示される通り(Rは式2及び3の両方を表す)、両方のタイプの結合基(例えば、式3aのカプロラクトン単位及び式2aのエトキシ単位の両方)を含む。
【0044】
本発明の化合物及び/又はポリマーの例は、H(E/P)(M)A−ポリエチレングリコール、H(E/P)(M)A−ポリカプロラクトン、H(E/P)(M)A−ポリプロピレングリコール、H(E/P)(M)A−ポリテトラメチレングリコール(PTMG)及び/又はこれらの混合物から誘導されるものである。本明細書で使用される「H(E/P)(M)A」という用語は、HEA(ヒドロキシエチルアクリレート)、HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)、HPA(ヒドロキシプロピルアクリレート)及びHPMA(ヒドロキシプロピルメタクリレート)の部分を表す。
【0045】
本発明の有利な材料は、低価格及び良好な性質のバランスによりH(E/P)(M)A−ポリエチレングリコール、及びHE(M)A−ポリカプロラクトンの誘導体である。例えば、HE(M)A−ポリプロピレングリコール誘導体は、良好とは言えない現像性能を示し、HE(M)A−ポリテトラメチレングリコール(PTMG)誘導体は優れたテンティング性を有するが、これらは非常に高価である。
【0046】
式1は、ポリマー、即ち、式1の幾つかの化合物の多分散混合物を表すことが好ましい。
【0047】
式1の好ましいポリマーは、約30,000mPa.s未満、更に好ましくは、約20,000mPa.s未満、最も好ましくは、約12,000mPa.s未満の粘度範囲を有する。これらは室温で簡単に処理できることが本発明のポリマーの重要な選択的利点である。
【0048】
式1の好ましいポリマーは、本出願人が、6000を超えるMwを有するポリマーは現像性能において良好とは言えず、3000未満のMwを有するポリマーは更に悪化するテンティング性能を有することを見出したので、約3000〜約6000ダルトンの重量平均分子量(Mw)を有する。
【0049】
本明細書で使用される「ヒドロカルビレン」という用語は、1つ又は複数の水素原子と1つ又は複数の炭素原子から成る二価部分(任意選択的には、1つ又は複数のその他の部分に結合している)であって、その自由原子価(free valence)が二重結合には関与しない二価部分を表す。ヒドロカルビレンは、炭化水素から2つの水素原子を除去する(例えば、アルキレンを形成するためにアルカンから)ことにより形成することができる。ヒドロカルビレンは、同じ部分内に、炭素単結合(例えば、アルキル基中の)に対する飽和炭素;炭素結合(例えば、それぞれ、アルケニル及びアルキニル基中の)に対する不飽和二重及び/又は三重炭素;芳香族基(例えば、アリール基中の)及び/又はこれらの組合せを含んでもよい。好ましいヒドロカルビレンはアルキレン(二価であって飽和している)である。
【0050】
本明細書における或種の部分については、より大きな分子又は自由原子価への結合点は、星印で自由結合手(free bond)を終結することにより式中で示される。
【0051】
或種の原子の合計数は、或種の置換基、例えば、C1〜xアルキレン(「1〜x」個の炭素原子から成るアルキレンを意味する)を特定する。C>3ヒドロカルビレン又はC>3アルキレン等の3つ以上の原子の鎖を含む部分は、鎖が全体に又は部分的に直鎖、分枝であってもよく且つ/又は環(スピロ及び/又は縮合環を含む)を形成してもよい部分を意味する。好ましいヒドロカルビレンは直鎖又は分枝であり、更に好ましくは直鎖である。
【0052】
本明細書に記載される任意のラジカル基又は部分(例えば、置換基)は、特に断らない限り又は文脈から明らかにそうでないとわかる場合を除き(例えば、2つの別の部分に結合する二価ヒドロカルビレン部分)、多価又は一価基であってもよい。本明細書のいずれの式においても、1つ又は複数の置換基が、或る部分(例えば、鎖及び/又は環に沿った特定の位置)の任意の特定の原子に結合することが示されていない場合は、置換基は任意のHを置換してもよく、且つ/又は化学的に適当な及び/又は有効なこの部分における任意の利用可能な位置に配置されてもよい。
【0053】
本明細書で使用される(具体的に特定されている化合物のIUAPC名以外の)化学用語で括弧で示される特徴を含む、例えば、(アルキル)アクリレート、(メタ)アクリレート及び/又は(コ)ポリマー等は、括弧中のその部分が、文脈が示す様に任意選択的であることを表し、例えば、(メタ)アクリレートは、メタクリレート及びアクリレートの両方を表す。
【0054】
本明細書に記載されている本発明の幾つかで又は全てを構成する及び/又は使用される或種の部分、種、基、繰返し単位、化合物、オリゴマー、ポリマー、物質、混合物、組成物及び/又は配合物は、次の非網羅的一覧における任意のもの等の1つ又は複数の異なる形態として存在してもよい:立体異性体(鏡像異性体(例えば、E及び/又はZ形態)、ジアステレオ異性体及び/又は幾何異性体等);互変異性体(例えば、ケト及び/又はエノール形態)、配座異性体、塩、両性イオン、錯体(キレート、クラスレート、クラウン化合物、シプタンド(cyptand)/クリプテード(cryptade)、包接化合物、挿入化合物、侵入型化合物、リガンド錯体、有機金属錯体、非化学量錯体、π付加物、溶媒和物及び/又は水和物等);同位体置換形態、ポリマー配置[ホモ又はコポリマー、ランダム、グラフト及び/又はブロックポリマー、線状及び/又は分枝ポリマー(例えば、星状及び/又は側鎖分枝)、架橋及び/又は網状ポリマー、二及び/又は三価繰返し単位から得ることのできるポリマー、デンドリマー、異なる立体規則性のポリマー(例えば、アイソタクチック、シンジオタクチック又はアタクチックポリマー)等];多形体(例えば、侵入型形態、結晶性形態及び/又は無定形形態等)、異なる相、固溶体;及び/又はこれらの組合せ及び/又は可能な場合のこれらの混合物。本発明は、本明細書で定義される、その様な有効な全ての形態を含み且つ/又は使用する。
【0055】
本発明のなお更なる態様では、本明細書に記載の式1のウレタンアクリレートを得るために、
(a)少なくとも1つのC2〜15ヒドロカルビルジイソシアネートイソシアヌレートを含む成分A、
(b)式2b
【化15】


(式中、X、Y、k及びlは、式2に関して本明細書で与えられている通りであり、R及びRは、任意選択的には同じである適当な(メタ)アクリレート基である)の少なくとも1つの化合物を含む成分B、
(c)式3b
【化16】


(式中、V、W、i、j、p及びrは、式3に関して本明細書で与えられている通りであり、R及びR10は、任意選択的には同じである適当な(メタ)アクリレート基である)の少なくとも1つの化合物を含む成分C、を一緒に反応させる工程を含む、ウレタンアクリレートの調製方法が提供される。
【0056】
式2b及び3b中のメタ(アクリレート)基は、これらが、成分Aのイソシアネートイソシアヌレート基と反応して(適当な条件下で)、式1のウレタンアクリレートを形成する様に選択されることが理解される。適当なメタクリレート基は当業者には明らかであり、主に、式2b及び3bの最も入手可能な安価な原料から選択される。特に適当なメタ(アクリレート)基は、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート;ヒドロキシエチルメタクリレート及びヒドロキシプロピルメタクリレートから選択されてもよい。
【0057】
本発明の好ましい方法では、成分Aは、少なくとも1つのC2〜10ヒドロカルビレンジイソシアネートイソシアヌレート、好ましくは、C4〜8アルキレンジイソシアネートイソシアヌレート及び/又はC6〜8アルカリーレンジイソシアネートイソシアヌレートを含んでもよい。
【0058】
本発明の好ましい方法では、成分Bは、少なくとも1つのヒドロキシC1〜4アルコキシ(メタ)アクリレート−(カプロラクトン)(ここで、カプロラクトン単位「n」の数は、上記式3aと同様に、例えば、1〜8、更に都合良く、1〜5、最も都合良く、2〜4として与えられる)を含んでもよい。
【0059】
本発明の好ましい方法では、成分Cは、少なくとも1つの(C1〜4アルコキシ)(メタ)アクリレート(ここで、アルコキシ単位「m」の数は、上記式2aと同様に、例えば、2〜12、更に都合良く、5〜12、最も都合良く、6〜10、特に6、8及び10として与えられる)を含んでもよい。
【0060】
適当な成分Aの例は、イソホロンジイソシアネート(IPDI)イソシアヌレート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)イソシアヌレート;及び/又はトリレンジイソシアネート(TDI)イソシアヌレートである。
【0061】
適当な成分Bの例は、H(E/P)(M)A−(ジ、トリ及びテトラ)カプロラクトン;例えば:ヒドロキシエチルアクリレートジ−カプロラクトン;ヒドロキシエチルメタクリレートジ−カプロラクトン;ヒドロキシエチルメタクリレートトリ−カプロラクトン及び/又はヒドロキシエチルメタクリレートテトラカプロラクトンである。
【0062】
適当な成分Cの例は、H(E/P)(M)A−ポリエチレングリコール、H(E/P)(M)A−ポリプロピレングリコール、H(E/P)(M)A−ポリテトラメチレングリコール及びこれらの混合物である。有利には成分Cは、H(E/P)(M)A−ポリエチレングリコール、例えば、ヘキシレングリコールアクリレート、ヘキシレングリコールメタクリレート、オクチレングリコールメタクリレート及び/又はデシレングリコールアクリレートとすることができる。
【0063】
成分A、B及びCは、一緒に同時に反応させてもよく、又はこれらは、一緒に順番に反応させてもよく、例えば、成分Cを、成分A及びBの反応中に部分的に反応混合物に添加することもできる。
【0064】
本発明方法は、任意のその他の方法及び装置を使用して操作することができ、任意選択的にはその他の成分を、必要に応じて成分A、B及びCに添加することができる。例えば、反応は適当な触媒及び/又は開始剤(例えば、ジブチル錫ジラウレート及び/又は3,5−ジブチル−4−ヒドロキシ−トルエン等)の存在下で生起させることができる。本方法の更なる特徴は例で説明される。
【0065】
本出願人は、式1の低粘度ウレタンアクリレートを、成分Aがヘキサ(メチレン)ジイソシアネート(HDI)イソシアヌレート又はトリレンジイソシアネート(TDI)イソシアヌレート(共に市販の材料である)である場合に有用に調製することができることを見出した。
【0066】
文脈から明らかにそうでないとわかる場合を除き、本明細書で使用される用語の複数形は単数形を含めて解釈されるべきであり、逆もまた同様である。
【0067】
本明細書で使用される「含む」という用語は、それに続く一覧が非網羅的であり、必要に応じて任意の更なる他の適当な事項、例えば、1つ又は複数の更なる特徴、構成成分、成分及び/又は置換基を含んでもよく又は含まなくてもよいことを意味するものと理解される。
【0068】
「有効な」、「許容される」、「活性な」及び/又は「適当な」という用語(例えば、本発明の及び/又は必要に応じて本明細書に記載される、任意の処理方法、使用、方法、用途、調製、生成物、材料、配合物、化合物、モノマー、オリゴマー、ポリマー前駆体、及び/又はポリマーに関して)は、正しい方法で使用された場合は、必要な特性を発明に与える、本明細書に記載されるごとく有用なものであるとして付加及び/又は組み込まれる本発明の特徴を指すものであるものと理解される。その様な有用性は、例えば、材料が前述の用途にとって必要とされる性質を有する場合は直接的かもしれないし、且つ/又は材料が、直接有用なその他の材料を調製する際の合成中間体及び/又は診断手段としての用途を有する場合は間接的であるかもしれない。本明細書で使用されるこれらの用語は、また、官能基が、有効な、許容される、活性な及び/又は適当な最終生成物を製造するのに適合することを表す。
【0069】
本発明の更なる態様は、可撓化剤、可塑剤及び/又は軟化剤としての、本明細書に記載の本発明のウレタンアクリレートの使用を提供する。
【0070】
本発明のなお更なる態様は、テンティング法における、本明細書に記載の本発明のウレタンアクリレートの使用を提供する。
【0071】
本発明の多数のその他の変形実施形態は当業者には明らかであり、その様な変形は本発明の広い範囲内で考慮される。
【0072】
本発明の更なる態様及びこの好ましい特徴は、本明細書の特許請求の範囲において与えられる。
【0073】
次に本発明を、例示のみのためである以下の非限定的例を参照して詳細に説明する。
【0074】
次の略称が本明細書で使用された。
「HDI」は、ヘキサメチレンジイソシアネートを表す。
「HEA」は、2−ヒドロキシエチルアクリレートを表す。
「HEMA」は、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを表す。
「EO」は、エトキシ繰返し単位を表す。
「IPDI」は、イソホロンジ−イソシアネートを表す。
「THEIC」は、1,3,5−トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを表す。
「TDI」は、トリレンジイソシアネートを表す。
「DBT」は、ジブチル錫ジラウレート(触媒)を表す。
「DHT」は、3,5−ジブチル−4−ヒドロキシ−トルエン(開始剤)を表す。
「PMP」は、パラメトキシフェノールを表す。
【0075】
以下の成分は、化学名及び/又は商標名及び製造業者名により確認される。
【表1】

【0076】
(例の調製)
本発明の例1〜6及び比較例I〜IVは、以下の基本方法を使用して調製される。指示された特定の成分のタイプ及び量は以下の表1を参照のこと。
【0077】
(基本方法)
試薬「A」(「a」g、NCO%=「i」)を、ジブチル錫ジラウレート(「ii」g、500ppm)及び3,5−ジブチル−4−ヒドロキシ−トルエン(「iii」g、100ppm)と一緒に1000mlのセパラブルフラスコに計り入れる。PTFE被覆撹拌ブレードをフラスコの中心口に挿入する。反応温度を監視するため、熱電対をフラスコの側面口の1つを介して材料内に挿入する。別の側面口にアリーン冷却器を装着する。試薬「B」(「b」g)を、テフロン(登録商標)栓を装着した300mlの添加漏斗に計り入れる。試薬「B」を含む添加漏斗をフラスコの口に置き、ゆっくりと滴下を開始する。フラスコを徐々に60℃まで加熱する。反応温度を63℃未満に維持する。反応の発熱が治まり始めたら、試薬「C」(「c」g)を500mlの添加漏斗に計り入れ、漏斗をフラスコの口に置き、ゆっくりと滴下を開始した。反応温度を、ゆっくりとした滴下中63℃未満に維持する。反応の発熱が治まった後、フラスコを90℃まで加熱し、反応をこの温度で1時間保ち、その後NCO%を、それが<0.1%に減少するまで時間毎にチェックする。次いで、p−メトキシフェノール(「iv」g、100ppm)を反応混合物に添加し、反応温度を60℃まで冷却する。次いで、この材料を黒っぽいポリエチレンボトルに注入する。
【0078】
表1は、上記基本方法が変更される場合を示すための以下の注釈を有する。
【0079】
注釈「x」(例5及び6):試薬Cの添加が完了後に、反応を60℃で2時間保持し、NCO%を、それが<0.1%に減少するまで時間毎にチェックし、次いで、p−メトキシフェノールを添加する。
【0080】
注釈「y」(比較例I):試薬Bの添加から反応の発熱が治まり始めた後、反応を60℃で2時間保持し、NCO%を、それが<0.1%に減少するまで時間毎にチェックし、次いで、p−メトキシフェノールを添加する。反応混合物を1時間撹拌した後、貯蔵し、特徴付けする。
【0081】
【表2】

【0082】
(例の特徴付け)
各例から得られた材料を通常の方法及び装置を使用して特徴付けする。粘度は、小さなサンプルアダプターを取り付けたBrookfield Viscometer(登録商標)モデルRVDV−Eを使用して測定する。粘度(mPa.s)は、別途指示されない限り25℃で測定する。ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を使用して、ダルトンで材料の重量平均分子量(M)を測定する。GPCは、高性能液体クロマトグラフィー(日本のTosoh Corp.製)、TSKゲルスーパーHZM−Nカラム、番号F0010を取り付けたモデルHLC−8220GPCで行われ、ポリスチレン基準がこの装置を校正するために使用される。
【0083】
粘度及びMデータは、以下の表2で与えられる:比較例II、III及びIVは室温で結晶性である点に注意すること。
【0084】
表2
ウレタン(メタ)アクリレート例の性質
【表3】

【0085】
例1〜6のそれぞれは、テンティング用途での特定の使用の可撓化剤を調製するために有利に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1により表されるウレタンアクリレート
【化1】


[式中、
1a、R1b及びR1cは、それぞれ独立に、C2〜15ヒドロカルビレンを表し、
2a、R2b及びR2cは、それぞれ独立に、式2
【化2】


(式中、X及びYは、独立に、C2〜10ヒドロカルビレン、好ましくは、C2〜8アルキレンを表し、kは0〜30であり、lは0〜30であり、「k+l」は1〜30である)の二価部分、及び/又は式3
【化3】


(式中、V及びWは、独立に、C2〜10ヒドロカルビレン、好ましくは、C2〜8アルキレンを表し、iは0〜30であり、jは0〜30であり、「i+j」は1〜30であり、pは1〜10であり、rは1〜10である)の二価部分を表し、
3a、R3b及びR3cは、それぞれ独立に、H又はメチルを表す(即ち、Rは、アクリレート又はメタクリレート基の一部をそれぞれ形成する)、但し、R2a、R2b及びR2cの少なくとも1つは式2の部分であり、R2a、R2b及びR2cの少なくとも1つは式3の部分であり、Rが式3の二価部分を表す場合は、式3内の下位部分
【化4】


は式1におけるアミド基に直接結合する]。
【請求項2】
1a、R1b及びR1cが、それぞれ独立に、直鎖C2〜15アルキレン、及び/又は環式環を含むC3〜15ヒドロカルビレンを表し、
2a、R2b及びR2cが、それぞれ独立に、式2(ここで、kは0〜20であり、lは0〜20であり、「k+l」は1〜20である)の部分、及び/又は式3(ここで、iは0〜20であり、jは0〜20であり、「i+j」は1〜20であり、rは1〜8であり、pは3〜6である)の部分を表す、請求項1に記載のウレタンアクリレート。
【請求項3】
式2が、式2a
【化5】


(式中、mは2〜12である)の二価部分であり、式3が、式3a
【化6】


(式中、nは1〜8である)の二価部分である、請求項1又は2に記載のウレタンアクリレート。
【請求項4】
約3000〜約6000ダルトンの重量平均分子量(M)を有する、請求項1から3までのいずれか一項に記載のウレタンアクリレート。
【請求項5】
約30,000mPa.s未満の粘度を有する、請求項1から4までのいずれか一項に記載のウレタンアクリレート。
【請求項6】
約20,000mPa.s未満の粘度を有する、請求項5に記載のウレタンアクリレート。
【請求項7】
約12,000mPa.s未満の粘度を有する、請求項5に記載のウレタンアクリレート。
【請求項8】
実質的に本明細書の例1〜6に記載されたとおりに調製されたウレタンアクリレート。
【請求項9】
(a)少なくとも1つのC2〜15ヒドロカルビルジイソシアネートイソアシヌレートを含む成分A、
(b)式2b
【化7】


(式中、X、Y、k及びlは、式2に関して請求項1において示されている通りであり、R及びRは、任意選択的には同じである適当な(メタ)アクリレート基である)の少なくとも1つの化合物を含む成分B、
(c)式3b
【化8】


(式中、V、W、i、j、p及びrは、式3に関して請求項1において示されている通りであり、R及びR10は、任意選択的には同じである適当な(メタ)アクリレート基である)の少なくとも1つの化合物を含む成分C、
を一緒に反応させる工程を含む、請求項1から8までのいずれか一項に記載のウレタンアクリレートを調製するための方法。

【公表番号】特表2009−512768(P2009−512768A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536988(P2008−536988)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【国際出願番号】PCT/EP2006/010265
【国際公開番号】WO2007/048586
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(505365965)サイテック サーフェース スペシャリティーズ、エス.エイ. (38)
【Fターム(参考)】