説明

ポリマー套管及びケーブル終端接続部

【課題】曲げ耐荷重性能を向上させることができるポリマー套管及びケーブル終端接続部を提供すること。
【解決手段】ポリマー套管100は、大径絶縁筒121と小径絶縁筒122との連設部分に環状の遮蔽金具140を備える。遮蔽金具140は、外表面のみを露出するように埋設される筒状部141と、筒状部141の上端部に筒状部141と同心状に連設され、上端部を小径絶縁筒122側に向けて同心状に埋設される先細り状の漏斗状部142と、漏斗状部142の先端に導体引出棒110の軸心と略平行に形成された円筒部143とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に気中に用いられるポリマー套管及びケーブル終端接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、套管の軽量化、スリム化、縮小化、套管種類の共通化及び作業工程の簡略化などを図る観点から、エポキシブッシング等の絶縁体の表面にシリコーンゴム等のポリマー被覆体を直接モールドした完全乾式のポリマー套管が使用されている。
【0003】
特許文献1には、部品点数が少なく、簡易な構造で閃絡性能が向上したケーブル終端接続部が開示されている。
【0004】
図1は、特許文献1記載のケーブル終端接続部を示す断面図である。
【0005】
図1に示すように、ポリマー套管10は、中心に導体引出棒12を有し下端部にケーブル受容口14を有する硬質の絶縁筒16と、絶縁筒16の外周に設けられ、外周に多数の襞部18が長手方向に離間して形成されたポリマー被覆体20と、絶縁筒16の周面から外方に突出されたフランジ部22を有する支持金具24とを備えている。
【0006】
支持金具24は、絶縁筒16の下方部に導体引出棒12と同心状に埋設された筒状部23と、この筒状部23の下端部に連設され、絶縁筒16の周面から外方に突出されたフランジ部22とを有している。
【0007】
ケーブル端末部28は、絶縁筒16のケーブル受容口14に装着されている。ポリマー被覆体20は、支持金具24よりも上位に位置され、ケーブル受容口14は支持金具24よりも下位に位置されている。支持金具24のフランジ部22は、外表面の角部30が曲面とされ、下面部32に、貫通しないねじ孔34が設けられる。フランジ部22のねじ孔34は、フランジ部22を貫通しない。また、取付ボルト35は、ねじ孔34にフランジ部22の下側から螺合され、フランジ部22の上面から突出しない。
【0008】
このように構成されたポリマー套管10は、外表面の角部30が曲面とされ、且つフランジ部22の上面に取付ボルト35が突出しないので、閃絡防止のためにシールドキャップで覆う必要がない。このため、部品点数が少なく、簡易構造で閃絡性能を向上させることができる。
【0009】
特許文献2には、ポリマー套管の大径化を抑えつつ運転電圧の高電圧化を図るポリマー套管が開示されている。
【0010】
図2は、特許文献2記載のケーブル終端接続部を示す断面図である。
【0011】
図2に示すように、ポリマー套管50は、中心に配設され下端部に導体挿入孔52aを有する導体引出棒52と、導体引出棒52の外周に設けられ下端部にケーブル端末57の受容口531aを有する硬質の絶縁体53と、絶縁体53の外周に設けられ外周に多数の襞部54aが長手方向に離間して形成されたポリマー被覆体54とを備えている。
【0012】
また、絶縁体53の下端部近傍であって導体挿入孔52aよりも上方部位には、大径部533が設けられ、大径部533には筒状の遮蔽金具56が導体引出棒52と同心状に埋設され、さらに大径部533とポリマー被覆体54との界面には電界緩和層55が設けられている。
【0013】
遮蔽金具56は、円筒部561と、大径部533と同心状に埋設される先細り状の漏斗状部562と、大径絶縁体531の上端部位置から径方向外方に向けて延出される環状のフランジ部563とを備えている。
【0014】
このように構成されたポリマー套管50は、大径部533とポリマー被覆体54との界面に電界緩和層55を設けることで、ポリマー套管50の気中表面の電界強度を下げることができ、かつ電界緩和層55の発熱を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006−33899号公報
【特許文献2】特開2009−5514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
このような従来のポリマー套管にあっては、ポリマー被覆体の下方部位の絶縁筒に埋設される遮蔽金具部分が曲げ耐荷重に対する応力を受ける。従来のポリマー套管の曲げ破壊荷重は、700kgf程度であった。完全乾式のポリマー套管は、気中で使用する場合に、風圧荷重、地震荷重、短絡電磁力の複合荷重が加わった場合を考慮する必要があり、より高い曲げ耐荷重性能が求められている。
【0017】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、曲げ耐荷重性能を向上させることができるポリマー套管及びケーブル終端接続部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のポリマー套管は、中心に導体引出棒を有し、前記導体引出棒の外周に設けられる硬質の絶縁筒と、前記絶縁筒に前記導体引出棒と同心状に埋設される遮蔽金具とを備えるポリマー套管であって、前記遮蔽金具は、筒状部と、前記筒状部の内側から立上がり、先端が先細り状となるように前記導体引出棒の軸心方向に傾斜しながら延びる漏斗状部と、前記漏斗状部の先端部に前記導体引出棒の軸心と略平行に形成された円筒部と、を備え、前記漏斗状部及び前記円筒部は、前記絶縁筒内に埋設される構成を採る。
【0019】
本発明のケーブル終端接続部は、上記構成のポリマー套管の前記導体引出棒の下端部には、ケーブル端末が装着されている構成を採る。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、曲げ耐荷重性能を向上させることができ、ポリマー套管の品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】特許文献1記載のポリマー套管の構成を示す断面図
【図2】特許文献2記載のポリマー套管の構成を示す断面図
【図3】本発明の実施の形態に係るポリマー套管の構成を示す部分断面図
【図4】上記実施の形態に係るポリマー套管の遮蔽金具の構造と従来のポリマー套管の遮蔽金具の構造を対比して説明する断面図
【図5】本発明の他の実施の形態に係るポリマー套管の絶縁筒とポリマー被覆体がエポキシ樹脂により一体的に形成された構造を示す断面図
【図6】本発明の他の実施の形態に係るポリマー套管の貫通ブッシング構造を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
(実施の形態)
図3は、本発明の実施の形態に係るポリマー套管の構成を示す部分断面図である。本実施の形態は、先端部は架空線や引込線などに接続され、下端部は電力ケーブルの端末接続するための気中終端接続部に適用した例である。
【0024】
以下の説明において、内部導体、絶縁筒及び遮蔽金具の「先端部」とは、高圧側をいい、図中では上方向に相当し、また、内部導体、絶縁筒部、及び遮蔽金具の「下端部」とは、低圧側をいい、図中では下方向に相当する。
【0025】
図3に示すように、ポリマー套管100は、中心に導体引出棒110を有し、導体引出棒110の外周に設けられる硬質の絶縁筒120と、絶縁筒120の外周に、高分子絶縁材料により、それ自身の外周に複数の襞部が長手方向に離間して形成されたポリマー被覆体130とを備える。
【0026】
導体引出棒110は、銅若しくは銅合金、又はアルミニウム若しくはアルミニウム合金等の通電に適した金属製の棒体で形成されている。
【0027】
導体引出棒110の先端部は、絶縁筒120の先端部(不図示)から突出され、また導体引出棒110の後端部には導体挿入孔110aが設けられている。
【0028】
絶縁筒120は、導体引出棒110を中心軸に配置させた固体絶縁体であり、導体引出棒110の外周にモールドにより一体的に形成される。絶縁筒120は、機械的強度の高い材料、例えばエポキシ樹脂やFRP(Fiber Reinforced Plastics)などの硬質プラスチック樹脂で形成される。
【0029】
絶縁筒120は、導体引出棒110の下方部位の外周部、すなわち導体挿入孔110aと対応する部分の外周部に設けられる大径絶縁筒121と、この大径絶縁筒121の上部に連設され、導体引出棒110の先端部を除く部分の外周部に設けられる小径絶縁筒122とからなる。
【0030】
大径絶縁筒121の下端部には、図1と同様にケーブル端末部のストレスコーン(図3では不図示)を受容するコーン状の受容口160が設けられており、この受容口160は導体引出棒110の導体挿入孔110aと連通している。
【0031】
ポリマー被覆体130は、気中に配置され、電気絶縁性及び耐候性を有し、電気絶縁性及び耐候性に優れた材料、例えば、シリコーンポリマー(シリコーンゴム)などの高分子絶縁材料により形成される。
【0032】
ポリマー被覆体130は、小径絶縁筒122の外周部に設けられ、その外周部には多数個の襞部130aがポリマー被覆体130の長手方向に沿って離間して形成されている。襞部130aは、高電圧側である導体引出棒110の上端部(不図示)と、接地側である後述する遮蔽金具140とが閃絡することを防止するため、ポリマー被覆体130の表面漏洩距離を確保する目的で設けられている。襞部130aは、大径襞部と小径襞部とが交互に設けられている。
【0033】
ポリマー被覆体130は、絶縁筒120(図3では小径絶縁筒122)の外周に、モールドにより一体的に形成される。
【0034】
ポリマー套管100は、大径絶縁筒121と小径絶縁筒122の連設部分に電界緩和用の環状の遮蔽金具140を備える。
【0035】
図3に示すように、遮蔽金具140は、絶縁筒120の大径絶縁筒121と小径絶縁筒122との連設部分に外表面のみを露出するように埋設される筒状部141を有する。また、遮蔽金具140は、筒状部141の上端部に筒状部141と同心状に連設され、上端部を小径絶縁筒122側に向けて同心状に埋設される先細り状の漏斗状部142と、漏斗状部142の先端に導体引出棒110の軸心と略平行に形成された円筒部143と、筒状部141の周面から半径方向外方に突出したフランジ部144とを有する。筒状部141、漏斗状部142、円筒部143及びフランジ部144は、連設されている。遮蔽金具140は、アルミニウム若しくはアルミニウム合金等の金属であり、図3では、筒状部141、漏斗状部142、円筒部143、フランジ部144が一体構造で形成され、通常、接地電位として使用する。
【0036】
漏斗状部142は、筒状部141の内側から立上がり、先端が先細り状となるように導体引出棒110の軸心方向に緩傾斜しながら延びており、断面形状がハの字形となっている。漏斗状部142の先端に形成された円筒部143の長さは、漏斗状部142の全長に対して、およそ1:3の割合となるよう短く形成される。
【0037】
ここで、(1)漏斗状部142の全長と円筒部143の長さ、(2)漏斗状部142の基端部、すなわち筒状部141の内周面から導体引出棒110の外周面までの距離と円筒部143から導体引出棒110の外周面までの距離とには、図5で後述するように一定の関係がある。(3)漏斗状部142は、導体引出棒110の軸心方向に緩傾斜する、断面形状がハの字形の先細り形状となっている。この漏斗状部142の構成に対し、漏斗状部142の先端を形成する円筒部143については、かかる傾斜はなく、導体引出棒110の軸心と略平行に形成される。
【0038】
さらに、フランジ部144の外周縁部の下端面には、環状の底部金具145が締付ボルト(不図示)を介して固定されている。
【0039】
上記筒状部141の一部及び漏斗状部142は、ポリマー被覆体130の下方部位の絶縁筒120に埋設されている。また、遮蔽金具140の外表面に対して、ダクロ処理を行うことで、表面の耐候性及び耐食性を維持している。
【0040】
図3において、ポリマー套管100は、遮蔽金具140よりも下方部位の大径絶縁筒121の外周部に上端部が遮蔽金具140のフランジ部144の下面に取り付けられる下部金具150が配設される。
【0041】
以下、上述のように構成されたポリマー套管100の遮蔽金具140について詳細に説明する。
【0042】
従来のポリマー套管は、曲げ破壊荷重が700kgf程度であり、より高い曲げ耐荷重性能が求められていた。
【0043】
本発明者らは、ポリマー被覆体の下方部位の絶縁筒に埋設される遮蔽金具部分の曲げ耐荷重に対する応力に着目した。
【0044】
図4は、ポリマー套管の遮蔽金具の構造を説明する断面図であり、図4(a)は、本実施の形態のポリマー套管100の遮蔽金具140の要部断面図、図4(b)は、従来のポリマー套管の遮蔽金具の要部断面図である。
【0045】
図4(a)に示すように、本実施の形態のポリマー套管100は、遮蔽金具140のフランジ部144の下端面から円筒部143の先端までの高さH1、筒状部141の上端から円筒部143の先端までの沿面距離A1、筒状部141の内周面から導体引出棒110の外周面までの距離B1、円筒部143の内周面から導体引出棒110の外周面までの距離T1とする。
【0046】
本実施の形態のポリマー套管100に対し、比較対象として示す従来のポリマー套管の遮蔽金具60は、以下の構成及び寸法を採る。
【0047】
図4(b)に示すように、従来のポリマー套管の遮蔽金具60は、絶縁筒部に外表面のみを露出するように埋設される筒状部61と、筒状部61の上端部に、上端部を直線状にして埋設される埋込部62と、筒状部61の周面から半径方向外方に突出したフランジ部63とを有するものとする。
【0048】
遮蔽金具60のフランジ部63の下端面から埋込部62の先端までの高さH2、筒状部61の上端から埋込部62の先端までの沿面距離A2、筒状部61の内周面から導体引出棒71の外周面までの距離B2、埋込部62の内周面から導体引出棒71の外周面までの距離T2とする。
【0049】
本実施の形態の遮蔽金具140のH1、A1、B1、T1は、それぞれ従来の遮蔽金具6のH2、A2、B2、T2に対応している。
【0050】
以下、本実施の形態のポリマー套管100と従来のポリマー套管の遮蔽金具60の性能を比較する。
【0051】
本実施の形態の遮蔽金具140は、断面形状がハの字形の漏斗状部142を有すること、その漏斗状部142の先端には導体引出棒110の軸心と略平行に形成された短い円筒部143を有する特徴がある。このため、遮蔽金具140のH1、A1、B1、T1は、同様の電気的性能を得る場合、従来の遮蔽金具60のH2、A2、B2、T2に対し、寸法が異なる。なお、遮蔽金具140の形状以外の各要素(導体引出棒110、絶縁筒120の形状・材質など)は同一条件とする。ここでは、絶縁筒120にはエポキシ樹脂を用いた。
【0052】
H(遮蔽金具140のH1,遮蔽金具60のH2)とT(遮蔽金具140のT1,遮蔽金具60のT2)は、電気的性能に影響する。このため、同様の電気的性能を得る場合、HとTについては、H1=H2、T1=T2とする必要がある。Hは遮蔽金具の先端部の位置を決めるものであるから、絶縁筒120の外周のポリマー被覆体130の襞部130a表面の電界に影響し、Tは高電圧側の導体引出棒110と接地側の遮蔽金具140間の距離であるから、絶縁強度に関わり所定の絶縁厚が必要となるからである。このため、H1=H2、T1=T2を満たすように、A(遮蔽金具60のA2に対する遮蔽金具140のA1)とB(遮蔽金具60のB2に対する遮蔽金具140のB1)とが決定されている。
【0053】
遮蔽金具140は、断面形状がハの字形、すなわち斜め形の漏斗状部142を有する構造である。したがって、図4(a)(b)を対比して判るように、A1>A2、B1>B2となり、下記の特徴を有する。
【0054】
A1>A2:従来のポリマー套管に比べ、遮蔽金具140とエポキシ樹脂からなる絶縁筒120との接触面積が増える。
【0055】
B1>B2:従来のポリマー套管に比べ、遮蔽金具(遮蔽金具140においては漏斗状部142)をエポキシ樹脂で支える部分の断面積が増える。
【0056】
以上、本実施の形態では、遮蔽金具140とエポキシ樹脂との接触面積及び断面積が増えることにより、機械的強度が大きくなる。
【0057】
さらに、本実施の形態では、円筒部143を有することで、十分な強度を獲得しつつ、遮蔽金具140のH1を稼ぐことができる。具体的には、円筒部143は、導体引出棒110の軸心と略平行に延出する構造であるため、円筒部143の長さ調整により要求遮蔽強度の設計変更が容易である。例えば、遮蔽金具140が、漏斗状部142のみ(円筒部143を有しない構造、例えば図2の遮蔽金具56の構造)であると、適用対象に合わせた漏斗状部142を個別に設計しなければならない。すなわち、その都度漏斗状部142の角度(斜め形の傾きの程度)を変えた設計が必要となり、角度を変えることにより、特に立ち上がり角度が厳しい漏斗状部142の基端部外周側とエポキシ樹脂(絶縁筒120)の接着の程度やエポキシ樹脂(絶縁筒120)モールド後の残留応力が変わるなど、設計面、製造面で煩雑となる。
【0058】
これに対して、漏斗状部142の先端部に円筒部143が連設されていると、円筒部143の長さの伸長によって要求遮蔽強度を調整することができ、汎用性を拡大することができる。すなわち、漏斗状部142の角度(斜め形の傾きの程度)を変えずに、電圧、汚損区分に応じた仕様を増やすことができる。具体的には、設計の自由度が広がり、当該角度を変えなくて良いため、漏斗状部142の基端部外周側とエポキシ樹脂(絶縁筒120)の接着の程度やエポキシ樹脂(絶縁筒120)モールド後の残留応力について、あまり気にする必要がなくなり、電圧、汚損区分に応じた仕様を増やす際に設計面、製造面で大幅な時間短縮を図ることができる。これはコスト低減にも繋がる。
【0059】
また、円筒部143は、導体引出棒110の軸心方向に略平行に延びており、遮蔽金具140としては斜め形の漏斗状部142から円筒部143にかけての角度を緩やかに変更する。このため、エポキシ樹脂と漏斗状部142及び円筒部143とが剥離し難くなる。また、接触摩擦の拡大に繋がることにより、機械的強度がより一層大きくなる。
【0060】
以上詳細に説明したように、本実施の形態のポリマー套管100は、大径絶縁筒121と小径絶縁筒122との連設部分に環状の遮蔽金具140を備える。遮蔽金具140は、外表面のみを露出するように埋設される筒状部141と、筒状部141の上端部に筒状部141と同心状に連設され、上端部を小径絶縁筒122側に向けて同心状に埋設される先細り状の漏斗状部142と、漏斗状部142の先端に導体引出棒110の軸心と略平行に形成された円筒部143とを備える。
【0061】
これにより、電気的性能を維持しつつ遮蔽金具140とエポキシ樹脂との接触面積及び断面積を増やすことができ、機械的強度を大きくすることができる。
【0062】
また、筒状部141と漏斗状部142と円筒部143は、連設されているので、より機械的強度を大きくすることができる。
【0063】
遮蔽金具140は、絶縁筒120の周面から半径方向外方に突出したフランジ部144を有する。これにより、ポリマー套管100としてより機械的強度に優れる構造となる。
【0064】
筒状部141は、少なくとも外表面の一部が露出している。これにより、筒状部141において遮蔽金具140を接地電位とすることができる。よって、フランジ部144を図3の遮蔽金具140ではなく絶縁筒120と同じ材料で形成した場合であっても、遮蔽金具140を接地電位とすることができるため、フランジ部144を有しない遮蔽金具140であってもよい。
【0065】
本発明者らは、本実施の形態の定格電圧66/77kVクラスのポリマー套管100を作製し、下記の条件で曲げ荷重性能試験を実施した。
【0066】
本ポリマー套管100を気中終端接続部に適用した。この気中終端接続部に、風圧荷重、地震荷重、短絡電磁力の複合荷重が加わった場合を考慮し、複合荷重の2倍以上を試験荷重とした。また、曲げ荷重性能試験を実施後、部分放電試験として160kVまで電圧を印加しても部分放電の発生がないことを確認した。
【0067】
上記曲げ荷重性能試験の結果、本実施の形態のポリマー套管100は、曲げ破壊荷重が1000kgf以上でも曲げ破壊がないこと、及びAC100kVで部分放電が発生しないことを確認することができた。これにより、ポリマー套管の品質を高めることができる。
【0068】
以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されることはない。例えば、上記実施の形態では、ポリマー被覆体は高分子絶縁材料としてシリコーンポリマー(シリコーンゴム)の場合について説明したが、本発明は絶縁筒内に埋め込まれる遮蔽金具の形状に特徴があるため、ポリマー被覆体を構成する高分子絶縁材料としてはエポキシ樹脂でもよい。すなわち、図5に示すように絶縁筒120と一体モールド成形でポリマー被覆体を構成してもよい。
【0069】
また、ポリマー被覆体130の有無には関係なく、ポリマー被覆体130を有さないポリマー套管(ブッシングとも呼ばれる)であってもよい。さらに、ポリマー套管及びケーブル終端接続部は、CVケーブルの気中終端接続部に適用した例について説明しているが、気中終端接続部に限定されず、ガス中終端接続部、油中終端接続部などに適用してもよい。
【0070】
図5は、本実施の形態に係るポリマー套管の絶縁筒とポリマー被覆体がエポキシ樹脂により一体的形成された構造を示す断面図である。図5に示すように、ポリマー套管100Aは、絶縁筒120とポリマー被覆体130とがエポキシ樹脂により一体的に形成される。すなわち、小径絶縁筒122とポリマー被覆体130が同一材料で一体的に形成される。よって、図5の場合、小径絶縁筒122の外径は、実質ポリマー被覆体130の外径を意味するため、大径絶縁筒121の外径は小径絶縁筒122の外径よりも小径となっている。
【0071】
また、本発明の実施の形態は、図3では大径絶縁筒121はケーブル端末の受容口を有する構造であるが、図6に示すように貫通ブッシング構造を有するポリマー套管に適用してもよい。すなわち、本発明のポリマー套管は、気中終端接続部に限定されず、例えば貫通ブッシングなどの気中部分等に適用してもよい。
【0072】
図6は、本実施の形態に係るポリマー套管の貫通ブッシング構造を示す断面図である。図6に示すように、貫通ブッシングの場合は、絶縁筒120の遮蔽金具140より下方部分が変圧器等の機器内に配置されるブッシング頭部の形状に置き換わり、導体引出棒の下端部はブッシング頭部を貫通する構造となる。より詳細に説明する。
【0073】
図6において、ポリマー套管100Bは、ブッシング頭部である下部ブッシング170を備える。また、遮蔽金具140のフランジ部144の下端面は、機器の天板2に気密に固定される。
【0074】
下部ブッシング170は、下方に向かって外径が小径となる円錐台状部を有し、ポリマー套管100Bを機器の天板2に設置した際に機器の内側に配置される。下部ブッシング170は、導体引出棒110を軸心に配置させた絶縁筒120と同材料で形成される。ここでは、下部ブッシング170は、導体引出棒110の外周に絶縁筒120とともにモールドにより一体的に形成される。また、この下部ブッシング170において、円錐台状部の上端部には、断面U字状の凹溝が円周上に設けられ、遮蔽金具140のフランジ部144の下端面から、大径絶縁筒121の下端面をとおり凹溝にかけて、銀ペイントなどの導電性塗料の塗布により形成された導電層155を備え、これにより機器内の下部ブッシング170における電界緩和のためのベルマウス部171が形成されている。なお、導体引出棒110の下端部は下部ブッシングの下端部を貫通する構造であり、導体引出棒110の下端部は図示しない機器内の導体に接続して使用される。
【0075】
また、上記実施の形態では、大径絶縁筒121と小径絶縁筒122からなる絶縁筒120について説明しているが、導体挿入孔110aと対応する部分を小径絶縁筒122と同様に細くした、いわゆる細径化した絶縁筒を使用してもよい。
【0076】
また、上記実施の形態では、絶縁筒120はエポキシ樹脂の場合について説明したが、硬質の絶縁体であればFRP等でも良い。
【0077】
さらに、ケーブル終端接続部の構造は、上記実施の形態では、絶縁筒のケーブル端末の受容口にストレスコーンを受容するいわゆるインナーコーンタイプの構造について説明したが、ケーブル端末のケーブル導体がポリマー套管の導体引出棒に電気的に接続されれば良いため、例えば当業者には既知のRBJ(ゴムブロックジョイント)に使用されるゴムユニットによりポリマー套管とケーブルを接続する、いわゆるアウターコーンタイプの構造でも良い。具体的には、ケーブル終端接続部を構成するポリマー套管の形状が、絶縁筒120の遮蔽金具140より下端部が、図6のブッシング頭部に相当する下部ブッシング170の形状が、ベルマウス部171の無い円柱状または円錐状の形状となり(不図示)、下端部に貫通した導体引出棒110にケーブル導体を接続し、当該下部ブッシングの外周に、シリコーンゴムやEPゴム等からなり、内部半導電層、絶縁層、外部半導電層、ストレスコーン部からなる当業者にとって既知のゴムユニットを配設することにより、ポリマー套管の導体引出棒の下端部にケーブル端末を接続することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明に係るポリマー套管及びケーブル終端接続部は、遮蔽金具と導電層を電気的に接続することができる効果を有し、気中ブッシングあるいは電力ケーブルの気中終端接続部に用いられるポリマー套管として有用である。
【符号の説明】
【0079】
100,100A,100B ポリマー套管
110 導体引出棒
120 絶縁筒
121 大径絶縁筒
122 小径絶縁筒
130 ポリマー被覆体
140 遮蔽金具
141 筒状部
142 漏斗状部
143 円筒部
144 フランジ部
145 底部金具
150 下部金具
170 下部ブッシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心に導体引出棒を有し、前記導体引出棒の外周に設けられる硬質の絶縁筒と、
前記絶縁筒に前記導体引出棒と同心状に埋設される遮蔽金具とを備えるポリマー套管であって、
前記遮蔽金具は、筒状部と、前記筒状部の内側から立上がり、先端が先細り状となるように前記導体引出棒の軸心方向に傾斜しながら延びる漏斗状部と、前記漏斗状部の先端部に前記導体引出棒の軸心と略平行に形成された円筒部と、
を備え、
前記漏斗状部及び前記円筒部は、前記絶縁筒内に埋設されるポリマー套管。
【請求項2】
前記筒状部と前記漏斗状部と前記円筒部は、連設されている請求項1記載のポリマー套管。
【請求項3】
前記筒状部の内周面から前記導体引出棒の外周面までの距離は、前記円筒部の内周面から前記導体引出棒の外周面までの距離よりも大きい請求項1又は2記載のポリマー套管。
【請求項4】
前記筒状部は、少なくとも外表面の一部が露出する請求項1乃至3いずれか一項記載のポリマー套管。
【請求項5】
前記遮蔽金具は、前記絶縁筒の周面から半径方向外方に突出したフランジ部を有する請求項1乃至4いずれか一項記載のポリマー套管。
【請求項6】
前記絶縁筒の外周に、高分子絶縁材料により、それ自身の外周に複数の襞部が長手方向に離間して形成されたポリマー被覆体を備え、前記遮蔽金具は、前記ポリマー被覆体の下方部位に設けられる請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポリマー套管。
【請求項7】
前記絶縁筒と前記ポリマー被覆体は、エポキシ樹脂により一体的に形成されている請求項6記載のポリマー套管。
【請求項8】
前記絶縁筒の下端部にはブッシング頭部を備える請求項1乃至7のいずれか一項に記載のポリマー套管。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のポリマー套管の前記導体引出棒の下端部には、ケーブル端末が接続されているケーブル終端接続部。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−188684(P2011−188684A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53362(P2010−53362)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(306013120)昭和電線ケーブルシステム株式会社 (218)
【Fターム(参考)】