説明

ポリマー套管及びポリマー套管の取り付け構造

【課題】ダクロ処理を行うことなく耐候性を有する気中ブッシング又は気中終端接続部を容易に組み立てること。
【解決手段】絶縁筒部120は、内部導体110の外周にモールドにより形成される。ポリマー被覆体130は、絶縁筒部120の外周に設けられている。ポリマー被覆体130は、外周に複数の傘状の襞部134を備え、シリコーンポリマーによって形成されている。ポリマー被覆体130の一端部側から半径方向外方に張り出して設けられた固定フランジ部180の外表面は、シリコーンポリマーからなるフランジ被覆部136により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電所、変電所などに配置される電力機器と、架空送電線とを電気的に接続する気中ブッシング又は電力ケーブルの気中終端接続部に用いられるポリマー套管及びポリマー套管の取り付け構造に関し、特に、取り付けに際し、ダクロ(ダクロタイズド(登録商標))処理不要なポリマー套管及びポリマー套管の取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、CV(架橋ポリエチレン絶縁)ケーブル等の電力ケーブルには、絶縁体内の電界ストレスを緩和するため、絶縁体上に遮蔽層(外部半導電層)が設けられている。このような電力ケーブルの終端接続部を組み立てる場合、ただ単に遮蔽層を取り除くのみでは、遮蔽層端部に電界が集中し、絶縁体である架橋ポリエチレンの破壊を引き起こすおそれがある。そのため、特に高電圧用の電力ケーブルの終端接続部では、電界ストレスが集中しないよう、様々な工夫が施されている。
【0003】
例えば、大気中で使用される終端接続部としての気中終端接続部は、プレモールドのゴム製のストレスコーン(電界緩和絶縁補強層)を用いたプレハブ式のものや、油浸絶縁紙内に配置された薄い金属箔電極間の静電容量を適当に分布させてなるコンデンサコーンを用いた油浸式のものなどがある。
【0004】
プレハブ式の気中終端接続部では、筒状の碍管内において、電力ケーブルの導体の端部に導体引出棒が圧縮接続され、段剥ぎして露出した絶縁体上に紡錘状のストレスコーンを被嵌している。このストレスコーンは、圧縮装置を介して、碍管内の下方に挿入固定されたエポキシ座に押圧固定されている。この圧縮装置のスプリング力によりエポキシ座とストレスコーンとの界面及びストレスコーンとケーブル絶縁体との界面に適切な圧力を与え絶縁耐力は確保される。また、碍管の上部には導体引出棒および碍管を固定するための上部金具が固定され、これらを覆うように上部覆いが被されている。なお、電力ケーブルでは、碍管内において外部遮蔽層が接地された状態となっている。そして、この碍管内には、絶縁コンパウンドとして、絶縁油等の絶縁流体やSF(六フッ化硫黄)ガス等の絶縁ガスが充填される。また、油浸式の気中終端接続部では、碍管内に挿入される電力ケーブルの端部にコンデンサコーンを主絶縁要素として用い、碍管内に、絶縁コンパウンドとして、絶縁油等の絶縁流体が充填される。
【0005】
このようなプレハブ式や油浸式の気中終端接続部に用いられる碍管は、一般的に、磁器製であり、高電圧になるにつれ、太く長尺となるとともに重量が重くなり扱いにくく作業効率が悪くなるという問題がある。
【0006】
これに対して、近年では、例えば、特許文献1又は特許文献2に示すように、磁器製の碍管に替えて磁器製の碍管よりも軽いポリマー被覆体を使用したポリマー套管が知られている。
【0007】
特許文献1のポリマー套管では、ポリマー被覆体内に絶縁油や絶縁ガスに替えてPVC粉末を充填して気中終端接続部に適用している。また、特許文献1の別の実施の形態及び特許文献2のポリマー套管では、下端部で電力ケーブルに接続される導体引出棒の外周を固体の絶縁筒で覆い、この絶縁筒の外周にポリマー套管を一体的に設けて気中終端接続部として適用している。これらポリマー套管は、碍管と比較してより軽量化が図られているため、気中終端接続部の組立作業を容易に行える。
【0008】
これらポリマー套管には、ポリマー被覆体の下端部近傍に、ポリマー被覆体の外周から外方に張り出すフランジ部を有する埋込金具が取り付けられている。ポリマー套管は、埋込金具のフランジ部または当該フランジ部に取り付けた環状の底部金具を介して環状の支持架台にボルトにより固定される。このように構成されたポリマー套管は、気中ブッシングとしても用いられている。
【0009】
図3は、従来のポリマー套管を気中ブッシングに用いて機器の天板に取り受けた状態を示す要部断面図である。
【0010】
図3に示すポリマー套管1は、機器ケースにおける天板2上に、当該天板2の開口部3にブッシング部6を挿入させた状態で、フランジ部4aを載置し、このフランジ部4aを介して取り付けられている。なお、ポリマー套管1はブッシング部6の下端から突出する図示しない内部導体の一端部で機器内の高電圧導体と接続している。
【0011】
具体的には、ポリマー套管1の套管本体1aの下端部1bに、電界緩和機能を有する埋込金具4が取り付けられ、この埋込金具4にフランジ部4aが、下端部1bの外周から外方に突出するように形成されている。このフランジ部4aは、載置される天板2の開口縁部2aにボルト5を介して固定されている。
【0012】
従来のポリマー套管1における金属製の埋込金具4は、機器ケースの天板2に取り付けられるポリマー套管1とともに、加工性や施工時の作業性を鑑みて、軽量であるアルミニウム合金で形成することが望まれている。
【0013】
アルミニウム合金からなる埋込金具4を用いた場合、気中ブッシングに用いられるポリマー套管1は屋外で外部に露出した状態で設置されるため、埋込金具4は、外部に露出する表面にダクロ処理を行うことによって耐候性及び耐食性を維持している。
【特許文献1】特開平11−203970号公報
【特許文献2】特許第3744876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、従来の埋込金具4に対して行われるダクロ処理は、支持治具で埋込金具4の一部を挟持して、金属亜鉛フレークと無水クロム酸,グリコールなどの溶液中に加工物を浸漬(どぶ漬け)したのち加熱処理することによって行う。どぶ漬けから埋込金具4を引き上げた際に、引き上げた埋込金具4の下側に溶液が溜まりやすく、ダクロ処理後の表面の凹凸状態をスムーズにするために仕上げの手間が掛かっている。
【0015】
また、どぶ漬けした後、挟持した部位が外部に露出する場合、露出する金具の地に対して、耐候性及び耐食性を維持させる塗装を行う手間が掛かっている。
【0016】
これらは特殊な技能を必要とすることから、納期、加工コストの観点から、ダクロ処理の代替品が望まれていた。
【0017】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、ダクロ処理を行うことなく耐候性を有する気中ブッシング又は気中終端接続部を組み立てることができるポリマー套管及びポリマー套管の取り付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のポリマー套管は、内部導体の外周に設けられる硬質の絶縁筒部と、前記絶縁筒部の外周に設けられ、高分子絶縁材料により、それ自身の外周に複数の襞部が長手方向に離間して形成されたポリマー被覆体と、前記ポリマー被覆体の一端部側から半径方向外方に張り出して設けられ、所定の取り付け箇所に固定される固定フランジ部とを備え、前記固定フランジ部の外表面は、高分子絶縁材料からなるフランジ被覆部により形成されている構成を採る。
【0019】
本発明のポリマー套管の取り付け構造は、上記構成のポリマー套管を、所定の取り付け箇所に取り付けたポリマー套管の取り付け構造であって、前記ポリマー套管の固定フランジ部が、前記所定の取り付け箇所上に載置された状態で、取り付け金具により押圧され、前記所定の取り付け箇所に固定されている構成を採る。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、ダクロ処理を行うことなく耐候性を有する気中ブッシング又は気中終端接続部を組み立てることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るポリマー套管の構成を示す部分断面図である。
【0023】
図1に示すポリマー套管100は、所定の取り付け箇所として変圧器の機器ケースにおける天板2の外面(ここでは、上面)に取り付けられる気中ブッシングとして用いられている。ポリマー套管100は、内部導体110と、絶縁筒部120と、絶縁筒部120の外周に設けられ、外周に襞部134を備えるポリマー被覆体130と、ポリマー被覆体130の下端部側から半径方向外方に張り出すフランジ本体144を有し天板2に固定される固定金具140と、下部ブッシング150と、を備える。なお、ポリマー套管100では、内部導体110が高電圧側、固定金具140が接地側である。
【0024】
内部導体110は、導電性を有する棒状体であり、ポリマー被覆体130の軸心上に配置され、その外周には、両端部(下端部111及び上端部112)を露出した状態で、絶縁性を有する絶縁筒部120及び下部ブッシング150が設けられている。
【0025】
内部導体110の下端部111は、絶縁筒部120に連設された下部ブッシング150の下端から外部に露出している。内部導体110は、この露出する下端部111で、機器内の高電圧導体に接続される。
【0026】
また、内部導体110の上端部112は、絶縁筒部120の上部の周囲に設けられたポリマー被覆体130の上端側から外部に導出され、図示しないが架空線や引き込み線などに接続される。なお、内部導体110は、導電性を有するものであれば、どの様に構成されてもよい。例えば、内部導体110において、下部ブッシング部150から突出する下端部111を、コロナシールド付きの構造としてもよい。
【0027】
絶縁筒部120は、絶縁性を有し、機械的強度の高い材料、例えば、エポキシ樹脂等で内部導体110を、その下端部111及び上端部112を露出させた状態で、一体的にモールドすることによって、内部導体110の外周に硬質のものとして形成されている。絶縁筒部120によってポリマー被覆体130は、内部導体110を略軸心上に配置した状態で中実となっている。なお、中実とは、内部に中空部が存在せず、絶縁筒部120が詰まっている状態をいう。
【0028】
下部ブッシング150は、下方に向かって外径が小径となる円錐台状部を有し、ポリマー套管100を機器の天板2に設置した際に機器の内側に配置される。下部ブッシング150は、内部導体110を軸心に配置させた絶縁筒部120と同材料で形成される。ここでは、下部ブッシング150は、内部導体110をモールドして、内部導体110外周に絶縁筒部120とともに一体的に形成される。また、この下部ブッシング150において、円錐台状部の上端部には、断面U字状の凹溝が円周上に設けられ、これによりベルマウス部152が形成されている。
【0029】
ポリマー被覆体130は、機器の外部(気中)に配置され、電気絶縁性及び耐候性を有し、電気絶縁性及び耐候性に優れた材料、例えば、シリコーンポリマー(シリコーンゴム)などの高分子絶縁材料により形成される。
【0030】
このポリマー被覆体130は、内部導体110の周囲を覆うように配設された絶縁筒部120の外周に設けられる筒状の本体部132と、本体部132の外周に、長手方向に離間して複数の傘状の襞部134と、を有する。
【0031】
本体部132の外周に設けられた襞部134は、高電圧側である内部導体110の上端部112と、接地側である後述する取り付け金具210とが閃絡することを防止するため、ポリマー被覆体130の表面漏洩距離を確保する目的で設けられている。
【0032】
なお、ポリマー被覆体130は、上端側から下端側に向かって外径が大きくなるように、外周面にテーパを付けた構成としてもよい。つまり、ポリマー套管100自体を、下端に向かって外径が大きくなる円錐状となる構成としてもよい。この場合、内部の絶縁筒部120の外周に下端に向かって拡がるテーパが付けられるように内部導体110をモールドして絶縁筒部120を一体的に形成する。このようにモールドされた絶縁筒部120をシリコーンポリマーなどの高分子絶縁材料でモールドすることによって、絶縁筒部120の外周に、当該絶縁筒部120の外周形状に伴って、外周にテーパが付けられたポリマー被覆体130が形成される。
【0033】
また、ポリマー被覆体130は、機械的強度の高い材料、例えば、エポキシ樹脂やFRP(Fiber Reinforced Plastics)などの硬質プラスチック樹脂からなる筒体の外周を、シリコーンポリマー(シリコーンゴム)などの高分子材料によって被覆することで構成されてもよい。この構成の場合、後述するフランジ被覆部136は、筒体の外周を被覆するシリコーンポリマー(シリコーンゴム)などの高分子材料によって、フランジ本体144の外面に形成するようにしてもよい。
【0034】
ポリマー被覆体130の下端部には、半径方向外方に向かって張り出した固定金具140のフランジ本体144と、フランジ本体144の外表面を被覆するフランジ被覆部136とによって形成された固定フランジ部180が設けられている。この固定フランジ部180を介してポリマー套管100は、所定の取り付け箇所(ここでは、機器ケースの天板2)に固定されている。
【0035】
固定金具140は、ここではアルミニウム等の金属により形成され、平板環状のフランジ本体144の内径から立ち上がり、絶縁筒部120内に配置され、先端部に電界緩和機能を備えた電界緩和用の筒状部142を有する。
【0036】
固定金具140は、絶縁筒部120をエポキシ注型によりモールドして形成する際に、筒状部142を、内部導体110と同心で且つ内部導体110を囲むように位置させて、絶縁筒部120と一体的に形成される。
【0037】
固定金具140における筒状部142は、内部導体110及びポリマー被覆体130と同心円上に位置している。
【0038】
フランジ本体144は、ここでは、ポリマー被覆体130の軸方向と直交して半径方向外方に張り出している。フランジ本体144の下面は、機器ケースの天板2の上面において、下部ブッシング150が挿入された開口部3近傍の所定位置に当接した状態で、取り付け金具210を介して機器ケースの天板2に取り付けられている。これにより、ポリマー套管100は機器に固定されている。なお、機器としては変圧器、GIS(ガス絶縁開閉装置)等が挙げられる。また、フランジ本体144は、固定フランジ部180が天板2に当接した際に、天板2と電気的に接続され、これにより筒状部142も天板2と電気的に接続される。
【0039】
また、フランジ本体144の下面の周縁部には、切り欠き部144aが、フランジ本体144の張り出し方向、つまり、半径方向外方に開口して、周方向に沿って形成されている。この切り欠き部144a内には、フランジ本体144の外表面である上面144c及び外側面144dを覆うフランジ被覆部136の内方凸部136aが配設されている。
【0040】
内方凸部136aは、フランジ本体144の外側面144dを覆う部位の下端から半径方向内側に突出して設けられている。これにより、フランジ被覆部136は、フランジ本体144の外側面144d側から下面側に回り込む形状をなしている。
【0041】
フランジ被覆部136は、ここでは、ポリマー被覆体130と連続し、当該ポリマー被覆体130において外周面及び襞部134を形成し、且つ耐候性を備える高分子材料により形成されている。
【0042】
すなわち、フランジ被覆部136は、内部導体110及び固定金具140にエポキシ樹脂を注型(モールド)して一体的に形成された絶縁筒部120の外周に、ポリマー被覆体130をモールドにより形成する際に、ポリマー被覆体130と一体的に形成される。
【0043】
このように固定フランジ部180では、フランジ被覆部136は、ポリマー被覆体130の下端部から半径方向外方に延びて、フランジ本体144の外表面である上面144c及び外側面144dを被覆し、且つ、フランジ本体144の外側面144d下端から下面側に屈曲されてフランジ本体144の下面の周縁部を被覆している。
【0044】
なお、固定フランジ部180の下面には、固定金具140に導通する銀ペイントなどの導電塗料が塗布されることによって、導電下面層194が形成されている。導電下面層194は、下部ブッシング150の外面の所定範囲に銀ペイントなどの導電塗料が塗布されることによって形成された外面導電層191に連続する。ここでは、所定範囲とは、下部ブッシング150の外面において、下部ブッシング150が固定フランジ部180に接続する部分から下部ブッシング150の円錐台状部におけるベルマウス部152の凹溝までの範囲である。これにより、ポリマー套管100では、固定フランジ部180の下面において、導電下面層194と、下部ブッシング150の外面導電層191とによって、遮蔽層190を形成している。
【0045】
このように固定フランジ部180は、フランジ被覆部136によって金属(例えば、アルミニウム合金)製のフランジ本体144を被覆することによって形成されている。このため、金属製のフランジ本体144の耐候性、耐食性を気にすることなく、すなわちダクロ処理不要で、耐候性の優れたものとなっている。
【0046】
また、固定フランジ部180の下面、つまり、フランジ本体144の下面には、切り欠き部144aの内側に、下方に向かって開口する環状の凹部144bが形成されている。
【0047】
凹部144b内にはOリング170が配設されており、固定フランジ部180を天板2に取り付けた際に、フランジ本体144及び天板2間で圧縮され、フランジ本体144及び天板2の双方に密着した状態で配置される。これによりフランジ本体144と天板2との気密性が確保されている。なお、フランジ本体144の下面の内径は、天板2の開口部3の外径よりも大きい。
【0048】
このように構成されたポリマー套管100は、取り付け金具210により固定フランジ部180を機器ケースの天板2側に押圧されることによって、天板2に固定されている。この押圧により、Oリング170は、機器ケース内の絶縁ガス(SF6ガス等)が外部へ漏れるのを防止するとともに、機器ケースの天板2と、フランジ本体144及びフランジ被覆部136を有する固定フランジ部180との間において外部から内部への水の浸入を防止している。
【0049】
取り付け金具210は、固定フランジ部180の外側面180a及び上面を覆う形状をなし、機器ケースの天板(取付面)2上に載置された固定フランジ部180上に載置される当接板部212と、当接板部212を支持する支持脚部214とを有する。
【0050】
当接板部212は、天板2上に載置された固定フランジ部180の上面(言い換えれば、フランジ本体144上のフランジ被覆部136)上に、該上面に当接して配置されている。
【0051】
この当接板部212は、中央部分に、ポリマー被覆体130が挿通される環状の開口を有し、且つ、固定フランジ部180よりも半径方向外方に張り出す円環板状をなしている。当接板部212は、ポリマー被覆体130の下端部側の外周に沿って配置され、固定フランジ部180上から半径方向外方に張り出した位置にある外周縁側で、止着部材(ここではボルト)216を介して天板2に固定されている。この当接板部212を、止着部材216によって、天板2側に押圧することによって、固定フランジ部180は、天板2に固定される。
【0052】
支持脚部214は、固定フランジ部180の外縁に沿って配置された筒状をなし、当接板部212の外周縁から垂下され、下端部214aで天板2に当接する。
【0053】
取り付け金具210を用いて、ポリマー套管100を機器ケースの天板2に取り付ける場合、まず、取り付け金具210の当接板部212の開口に、天板2上に配置したポリマー套管100を通して、取り付け金具210自体を、固定フランジ部180に被せる。そして、止着部材216で取り付け金具210を天板2に止着することによって、取り付け金具210は、機器ケースの天板2とともに固定フランジ部180を挟持する。
【0054】
止着部材216は、ここでは、天板2と当接板部212との間に架設されたボルトである。止着部材216は、当接板部212の上面の外周部分に複数箇所で等間隔を空けて配置された貫通穴にそれぞれ上方から挿通され、支持脚部214と固定フランジ部180の外側面180aとの間の空間内を、ポリマー套管100の軸と平行に通って天板2にねじ込まれている。ここでは、止着部材216であるボルトは、軸部にスプリングワッシャ、ワッシャを外装して当接板部212の上方から当接板部212の貫通穴に挿入して、天板2に凹状に形成されたボルト孔2aに螺合されている。
【0055】
取り付け金具210を用いてポリマー套管100が天板2に取り付けられることによって、ポリマー套管100の固定フランジ部180は、機器ケースの天板2と、筒状の支持脚部214及び当接板部212と、で囲まれた内側の領域内に配置される。この領域内に配置された固定フランジ部180は、止着部材216であるボルトを締め付けることによって、当接板部212を介して機器ケースの天板2に押し付けられて固定される。
【0056】
このように本実施の形態のポリマー套管100では、一端側で機器内の高電圧導体に接続される内部導体110の外周に絶縁筒部120がモールドよって形成されている。また、この絶縁筒部120の外周には、耐候性を有する高分子絶縁材料(ここでは、シリコーンポリマー)により自身の外周に、複数の傘状の襞部134が長手方向に離間して形成されたポリマー被覆体130がモールドによって形成されている。このポリマー被覆体130の一端部(下端部)側から半径方向外方に張り出して設けられた固定フランジ部180を介してポリマー套管100は、所定の取り付け箇所(ここでは天板2)に固定される。
【0057】
また、固定フランジ部180は、固定金具140のフランジ本体144の外表面(上面144c、外側面144d)に、高分子絶縁材料(ここでは、シリコーンポリマー)からなるフランジ被覆部136により被覆することによって形成されている。
【0058】
これにより、固定フランジ部180は、耐候性を有する構成となって、従来と異なり、固定金具自体の耐候性、耐食性を持たせるために表面処理(ダクロ処理)が行われる固定金具(図3の埋込金具4に相当)を必要としない。
【0059】
また、ポリマー被覆体130は、耐候性を有する高分子材料(ここでは、シリコーンポリマー)により形成され、フランジ被覆部136は、ポリマー被覆体130の高分子材料(シリコーンポリマー)とモールドにより一体的に形成されている。すなわち、フランジ被覆部136は、ポリマー被覆体130と同じ材料(例えばシリコーンポリマー)で一体的に形成されている。このため、ポリマー被覆体130を製作する際に、フランジ被覆部136をフランジ本体144の表面に形成することができ、フランジ本体144に対して耐候性、耐食性を容易に保持させることができる。
【0060】
このように、本実施の形態のポリマー套管100によれば、どぶ漬けによって表面をダクロ処理した際に、支持治具によって挟持された部位に対する塗装処理の削除、固定金具の製作工程の減少、表面処理に掛かる加工コスト削減を図ることができ、ポリマー套管100自体を短期間で製作して現場に納品できる。
【0061】
また、本実施の形態のポリマー套管100は、フランジ本体144及びフランジ本体144を被覆するフランジ被覆部136からなる固定フランジ部180を介して機器ケースの天板2に取り付けられる。具体的には、開口部3を有する機器ケースの天板2上に載置された固定フランジ部180のフランジ本体144が、表面のフランジ被覆部136とともに、取り付け金具210を止着部材216で締め付けることにより機器ケースの天板2に固定される。
【0062】
取り付け金具210は、天板2上に載置された固定フランジ部180の他端部側の面(上面)上に当接して配置され、フランジ被覆部より半径方向外方に突出する形状を有する当接板部212と、当接板部212の外縁部から天板2に向かって、固定フランジ部180の外側面180aに沿って垂下される支持脚部214とを備えている。
【0063】
この取り付け金具210を止着部材216で締め付けて、当接板部212は、固定フランジ180を天板2側に押圧する。これにより、固定フランジ部180は、当接板部212と天板2とで挟持された状態となる。よって、固定フランジ部180を加工することなく、ポリマー套管100は、所定の取り付け箇所(ここでは天板2)に固定される。
【0064】
また、取り付け金具210を介して天板2に取り付けられるポリマー套管100では、取り付け金具210を介して天板2上に固定する際に、止着部材216を仮止めし、固定フランジ部180を機器ケースの天板2と当接板部212の間で移動自在に配置させることができる。
【0065】
つまり、機器ケースの天板2に、止着部材216であるボルトによって仮止めされた取り付け金具210の内側で、ポリマー套管100を周方向及び半径方向に移動させた後でボルトを締めることによってポリマー套管100を所定位置に固定することができる。これにより、開口部3に下部ブッシング部150を挿通させたポリマー套管100の機器ケースの天板2に対する取り付け方向を容易に自由に変更することができる。
【0066】
よって、ポリマー套管100は機器ケースの天板2に対して取り付け位置を決めた後、取り付け金具210を介して機器ケースの天板2に固定する、つまり、後取り付けすることができる。
【0067】
尚、後取り付け可能にする取り付け金具210、言い換えれば、ポリマー套管100を位置決め後に固定可能にする取り付け金具210をアルミニウム合金とした場合、ダクロ処理が必要となるが、取り付け金具210自体は、固定金具140に対して軽量である。
【0068】
このため、ダクロ処理を回避すべく取り付け金具210の材質を、アルミニウム合金以外の重量アップの要因となる材質(黄銅など)に変更しても、当該取り付け金具210を介したポリマー套管100の取り付け作業において、重量アップによる作業上の問題を生じさせることはない。これにより、ポリマー套管100が用いられる気中ブッシングに対して設計上の自由度を増やすことができる。
【0069】
このように、従来と異なり、固定金具に軽量化を図ることができるアルミニウムを用いても、ダクロ処理を必要とすることなく、耐候性及び耐食性を有するため、ダクロ処理を行う際に困難な塗装作業、マスキング作業を必要とせず、これら作業分のコスト削減を図ることができる。
【0070】
また、フランジ被覆部136は、フランジ本体144の上面144cと、フランジ本体144の張り出した外側面144dを被覆し、更に、内方凸部136aが切り欠き部144a内に配置されることによってフランジ本体144の下面の周縁部を被覆している。
【0071】
すなわち、フランジ本体144の上面144c及び外側面144dを被覆するフランジ被覆部136は、フランジ本体144の外側面144dから下面の周縁部側に回り込むようにして、フランジ本体144の下面の周縁部を被覆した状態となる。このため、絶縁筒部120にシリコーンゴムでモールドによりフランジ被覆部136を成形する際に、フランジ本体144に強固に一体化することができる。
【0072】
また、ポリマー套管100を機器ケースの天板2に取り付け金具210で挟持されることによって固定される固定フランジ部180では、内方凸部136aが、フランジ本体144と機器ケースの天板2との間でパッキンとして機能する。これにより、機器ケースの天板2に対する密着度を向上させて、ポリマー套管100の防水性を向上させることができる。
【0073】
このようにポリマー套管100を用いることによって、ダクロ処理を行うことなく耐候性及び耐食性を有する気中ブッシング又は気中終端接続部を、ポリマー套管100の防水性を確保しつつ組み立てることができる。
【0074】
なお、ポリマー套管100は、工場において、内部導体110及び固定金具140にエポキシ樹脂を注型(モールド)して絶縁筒部120および下部ブッシング部150を形成し、さらにシリコーンゴムモールドによって、絶縁筒部120の外周にポリマー被覆体130を形成するとともにフランジ本体144の外表面にフランジ被覆部136を形成することで組み立てられる。このため、現場で気中ブッシングを組み立てる場合、ポリマー套管100を工場で組み立てて検査出荷し、現場では、天板2上にセットして、取り付け金具210の取り付け、機器内の導体との接続及び引き込み線との接続等の作業を行うだけでよい。
【0075】
すなわち、気中ブッシングを現場で組み立てる際に、現場におけるポリマー套管100自体の組み立て工程を省略でき、現場作業の工数を削減できる。本発明のポリマー套管100によれば、図1の実施例では変圧器に取り付けるタイプの下部ブッシングを示しているが、下部ブッシングの部分は電力ケーブルを接続可能な構造としても良い。すなわち、本発明のポリマー套管100は、気中終端接続部にも適用できる。なお、ポリマー套管100を用いて現場で気中終端接続部を組み立てる場合も同様に、現場にポリマー套管100を搬入して所定の取り付け箇所(例えば支持架台の上など)にセットし、ケーブルの接続作業を行うだけで、気中終端接続部を組み立てることができる。このように、現場で気中終端接続部を組み立てる場合でも、本実施の形態のポリマー套管100を用いることによって、現場でのポリマー套管100の組み立て工程を省略して、現場作業の工数を削減できる。
【0076】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2に係るポリマー套管の構成を示す部分断面図である。
【0077】
図2に示すポリマー套管300は、ポリマー套管100と比較して、ポリマー套管100における固定金具140に相当する部位の構成のみ異なり、その他の基本的構成は同様である。よって、以下では、図1に示すポリマー套管100と比較して、異なる構成のみ説明する。
【0078】
ポリマー套管300は、ポリマー套管100と比較して、ポリマー套管100の固定金具140における電界緩和用の筒状部142を、絶縁筒部320に設けたベルマウス部(環状凹部)338と、ベルマウス部338内面の導電層192と、ポリマー被覆体と一体の筒状成形部339とで構成し、フランジ本体144を、絶縁筒部320と一体のフランジ本体344のみで構成した点が異なる。この構成によって、ポリマー套管300では、固定金具140(図1参照)が不要となっている。
【0079】
具体的には、図2に示すポリマー套管300は、内部導体110と、内部導体110の外周に、エポキシ樹脂を注型(モールド)して形成された絶縁性を有する絶縁筒部320と、絶縁筒部320の外周にモールドにより形成され、且つ、襞部334を備えるポリマー被覆体330と、ポリマー被覆体330の下端部から、半径方向外方に張り出した固定フランジ部380と、絶縁筒部320に連設する下部ブッシング150とを有する。
【0080】
絶縁筒部320及びポリマー被覆体330は、図1の絶縁筒部120、ポリマー被覆体130と同様の構成及び機能を有する。ポリマー被覆体330は、電気絶縁性及び耐候性を有し、電気絶縁性及び耐候性に優れた材料、例えば、シリコーンポリマー(シリコーンゴム)などの高分子絶縁材料により形成される。ポリマー被覆体330は、内部導体110の周囲を覆うように配設された絶縁筒部320の外周に設けられる筒状の本体部332と、本体部332の外周に、長手方向に離間して複数の傘状の襞部334と、を有する。
【0081】
固定フランジ部380は、ポリマー套管100における固定フランジ部180と同様の機能を有する。固定フランジ部380は、ポリマー套管300の下部(下部ブッシング150)を機器の天板2の開口部3に挿入した状態で、天板2の開口部3の開口縁近傍部分に載置される。この固定フランジ部380を介して、ポリマー套管300自体は、天板2上に固定される。
【0082】
ポリマー套管300における固定フランジ部380は、絶縁筒部320と同じ材料で一体的に形成されたフランジ本体344と、フランジ本体344の外表面を被覆するフランジ被覆部336と、を有する。
【0083】
具体的には、フランジ本体344は、ポリマー被覆体330における本体部332の下端側から下方に突出する絶縁筒部320の下端部の外周からポリマー套管300の軸心を中心に直交し、且つ、半径方向外方に張り出して設けられている。
【0084】
このフランジ本体344は、絶縁筒部320の下端部の外周から張り出す円環板状に形成され、絶縁筒部320とともにエポキシ樹脂により一体的に形成されている。ここでは、フランジ本体344は、内部導体110の上下端部を露出させた状態で、エポキシ樹脂を注型(モールド)して内部導体110の外周に絶縁筒部320及び下部ブッシング150を形成する際に、絶縁筒部320及び下部ブッシング150と一体に形成される。
【0085】
フランジ被覆部336は、耐候性を有する高分子絶縁材料(例えば、シリコーンポリマー、つまりシリコーンゴム)からなる。フランジ被覆部336は、ポリマー被覆体330における筒状の本体部332の下端部から半径方向外方に張り出して、フランジ本体344の外表面である上面344c及び外側面344dを被覆している。
【0086】
ここでは、フランジ被覆部336は、シリコーンゴムモールドによってポリマー被覆体330が絶縁筒部320の外周に形成される際に、ポリマー被覆体330と一体で、フランジ本体344の外表面に形成される。なお、フランジ被覆部336はポリマー被覆体330の本体部332とは別々に形成しても良く、その場合はそれぞれ材料が異なっても良い。
【0087】
ポリマー被覆体330において、本体部332の下端部の内側には、絶縁筒部320の一部で、内部導体110と同心の環状をなし、且つ、下方に開口する断面逆U字状のベルマウス部338が形成されている。言い換えれば、ベルマウス部338は、ポリマー被覆体330の下端部(一端部)側において、絶縁筒部320の一部で、内部導体110を囲むように且つ下端側に開口し、且つ、Rが付けられた凹状の湾曲する内面を有する環状凹部である。
【0088】
このベルマウス部338は、絶縁筒部320において、ポリマー被覆体330で覆われた部分より外径が小さい小径部分321と、非小径部分との間の段差部分に形成されている。小径部分321は、外周からフランジ本体344が半径方向外方に張り出す絶縁筒部320の下端部に接続されている。
【0089】
ベルマウス部338の凹状の湾曲する内面において小径部分321と向かい合う面から、フランジ本体344の切り欠き部344aの内面までの範囲には、銀ペイント等の導電塗料を塗布してなる導電層192が形成されている。ベルマウス部338は、Rが付けられた凹状の湾曲する内面の導電層192によって電界緩和機能を有する。
【0090】
導電層192は、固定フランジ部380が天板2に当接した際に、天板2と電気的に接続する。なお、天板2には、導電下面層194が接続されている。この導電下面層194は、導電層192に連続するとともに、下部ブッシング150の円錐台状部におけるベルマウス部152の凹溝からフランジ本体344の下面(天板2が接する面)までの外面部分に形成された外面導電層191にも連続している。
【0091】
なお、導電下面層194は、外面導電層191とともに、モールドされてなるフランジ本体344の下面及び下部ブッシング150に、銀ペイント等の導電塗料を塗布することによって形成される。導電下面層194は、外面導電層191とともに遮蔽層190を構成している。ここでは、遮蔽層190は、導電層192の形成時に導電層192とともに形成される。
【0092】
ベルマウス部338の湾曲する凹状の内面には、ポリマー被覆体330をモールドにより形成する際にポリマー被覆体330と同じ材料が充填されることにより成形される筒状成形部339が配設されている。
【0093】
筒状成形部339は、ポリマー被覆体330の本体部332に連続して形成されており、フランジ本体344の上部で絶縁筒部320の小径部分321の周囲に配設され、先端部分は、ベルマウス部338の凹状の内面に配設されている。
【0094】
フランジ本体344における下面の周縁部には、フランジ本体344の張り出し方向、つまり、半径方向外方に開口してなり、導電塗料を塗布した切り欠き部344aが周方向に沿って形成されている。この切り欠き部344a内には、フランジ被覆部336において、フランジ本体344の外側面344dを覆う部位の下端から半径方向内側に突出する内方凸部336aが配設されている。
【0095】
内方凸部336aは、フランジ本体344の外側面344dを覆う部位の下端からフランジ本体344の下面に回り込み、フランジ本体344における下面の周縁部を被覆している。
【0096】
このように固定フランジ部380では、フランジ被覆部336は、ポリマー被覆体330から下方に延びてフランジ本体344の外表面である上面344c及び外側面344dを被覆し、且つ、フランジ本体344の外側面344d下端から下面側に屈曲されてなる内方凸部336aが切り欠き部344a内に配置されることによって、フランジ本体344の下面の周縁部を被覆する。
【0097】
つまり、フランジ本体344の上面344c及び外側面344dを被覆するフランジ被覆部336が、フランジ本体344の外側面344dから下面の周縁部側に回り込むようにしてフランジ本体344の下面の周縁部を被覆した状態となる。このため、絶縁筒部320にシリコーンゴムでモールド成形してフランジ被覆部336を成形した後、フランジ被覆部336はフランジ本体344に強固に一体化される。
【0098】
また、フランジ本体344の下面には、切り欠き部344aよりも内側に、下方に開口する環状の凹部344bが形成され、この凹部344b内にOリング170が配設されている。
【0099】
このように、固定フランジ部380は、絶縁筒部320と一体的に形成されたフランジ本体344の外面(上面344c及び張り出した外側面344d)及び下面の周縁部を、シリコーンゴムモールドで形成されるポリマー被覆体330と一体的に形成されたフランジ被覆部336で被覆することによって、形成されている。このポリマー套管300は、ポリマー套管100と同様に取り付け金具210を用いて所定の取り付け箇所(ここでは、変圧器などの機器ケースの天板2)に固定されている。すなわち、固定フランジ部380に取り付け金具210を被せて、止着部材216を締め付けることによって、当接板部212は、固定フランジ部380を、天板2側に押圧して、固定フランジ部380を天板2ととともに挟持する。これにより、固定フランジ部380は天板2に固定される。
【0100】
本実施の形態のポリマー套管300では、ポリマー套管100と同様の作用効果を奏することができる。特に、取り付け金具210と天板2で挟持されることによって固定される固定フランジ部380では、外面を被覆するフランジ被覆部336が、天板2上に配置されるフランジ本体344の下面の周縁部まで被覆している。このため、機器ケースの天板2とフランジ本体344の間に位置するフランジ被覆部336の内方凸部336aは、パッキンとして機能し、機器ケースの側板2に対する密着度を向上させてポリマー套管300の防水性を向上させることができる。
【0101】
更に、ポリマー套管300を機器ケースの天板2に取り付けるためにポリマー套管300自体に取り付けられる固定金具(図3の埋込金具4に相当)を別部材として必要とすることがなく、コストの削減を図ることができる。これにより、ポリマー套管300を用いたブッシングユニット或いは、図2の下部ブッシング150の部分を、電力ケーブルを接続可能な構造とした終端接続部ユニットの納期を短縮できる。
【0102】
また、ポリマー套管300によれば、内部導体110をエポキシ注型によりモールドして内部導体110の外周に絶縁筒部330が形成されたモールド体に、モールド体の所定位置に導電塗料を塗布後、シリコーンゴムモールドして、モールド体の外周にポリマー被覆体330を形成する工程だけで、ベルマウス部338及び固定フランジ380を備えたポリマー套管300を形成できる。なお、モールド体の所定位置への導電塗料の塗布範囲は、ポリマー被覆体330の内側に位置する絶縁筒部320におけるベルマウス部338の凹状の湾曲する内面と、小径部分321の外周面と、フランジ本体334の上面344c、外側面344d及び切り欠き部344aの内面と、下部ブッシング150の円錐状部におけるベルマウス部152の凹溝からフランジ本体344の下面(天板2が接する面)までの外面部分である。これらは連続的に塗布して形成される。
【0103】
なお、本発明に係るポリマー套管100、300は上記各実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。
【0104】
また、各実施の形態におけるポリマー套管100、300は、気中ブッシングに用いられるものとして説明したが、これに限らず、内部導体を導体引出棒として、下部ブッシングの部分が電力ケーブルを接続可能な構造である気中終端接続部に用いられてもよい。気中終端接続部で用いられる場合、ポリマー套管100、300では、基本的に下部ブッシング150以下の構成のみ異なり、機器ケースにおける天板2の外部の気中に配置される部位は同じである。
【0105】
また、ポリマー套管100、300を気中終端接続部に適用した際には、ポリマー套管100、300の所定の取り付け箇所である機器ケースの天板に替えて、支持架台に、取り付け金具210を介して、上述した構成と同様に取り付けられることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明に係るポリマー套管及びポリマー套管の取り付け構造は、ダクロ処理を行うことなく耐候性を有する気中ブッシング又は気中終端接続部を組み立てることができる効果を有し、気中ブッシング或いは電力ケーブルの気中終端接続部に用いられるポリマー套管として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の実施の形態1に係るポリマー套管の構成を示す部分断面図
【図2】本発明の実施の形態2に係るポリマー套管の構成を示す部分断面図
【図3】従来のポリマー套管の取り付け構造を示す図
【符号の説明】
【0108】
2 機器ケースの天板
100、300 ポリマー套管
110 内部導体
120、320 絶縁筒部
130、330 ポリマー被覆体
134、334 襞部
136、336 フランジ被覆部
140 固定金具
144、344 フランジ本体
144a、344a 切り欠き部
150 下部ブッシング
180、380 固定フランジ部
210 取り付け金具
216 止着部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部導体の外周に設けられる硬質の絶縁筒部と、
前記絶縁筒部の外周に設けられ、高分子絶縁材料により、それ自身の外周に複数の襞部が長手方向に離間して形成されたポリマー被覆体と、
前記ポリマー被覆体の一端部側から半径方向外方に張り出して設けられ、所定の取り付け箇所に固定される固定フランジ部と、
を備え、
前記固定フランジ部の外表面は、高分子絶縁材料からなるフランジ被覆部により形成されているポリマー套管。
【請求項2】
前記固定フランジ部は、下面で前記所定の取り付け箇所に当接して固定されるフランジ本体を有し、
前記フランジ被覆部は、前記フランジ本体の上面及び張り出した外側面と、前記外側面に連続する前記下面の周縁部とを被覆している請求項1記載のポリマー套管。
【請求項3】
前記下面の周縁部には張り出し方向に開口する切り欠き部が形成され、
前記フランジ被覆部は、前記フランジ本体の外側面を覆う部位の下端から半径方向内側に突出してなり、前記切り欠き部内に配置される内方凸部を備える請求項2記載のポリマー套管。
【請求項4】
前記ポリマー被覆体の一端部側の内側には、導電性を有する電界緩和用の筒状部が、前記絶縁筒部内で前記内部導体を囲むように配置され、
前記フランジ本体は、導電性を有し、前記筒状部の外周から半径方向外方に張り出して前記筒状部と一体的に設けられている請求項3記載のポリマー套管。
【請求項5】
前記フランジ本体は、前記絶縁筒部と同じ材料で前記絶縁筒部と一体的に形成されている請求項2又は3記載のポリマー套管。
【請求項6】
前記ポリマー被覆体の一端部側の内側には、前記絶縁筒部の一部に、前記内部導体を囲み、且つ、前記一端部側に開口する断面逆U字状の環状凹部が、その凹状の湾曲する内面に導電層を備えて形成され、
前記内面には、前記フランジ被覆部と一体の筒状成形部が形成されている請求項5記載のポリマー套管。
【請求項7】
前記フランジ被覆部は、前記ポリマー被覆体の外周を被覆する高分子材料と同じ高分子材料によって前記ポリマー被覆体と一体的に形成される請求項1から6のいずれか一項に記載のポリマー套管。
【請求項8】
前記高分子材料は、シリコーンポリマーである請求項7記載のポリマー套管。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のポリマー套管を、所定の取り付け箇所に取り付けたポリマー套管の取付構造であって、
前記ポリマー套管の固定フランジ部が、前記所定の取り付け箇所上に載置された状態で、取り付け金具により押圧され、前記所定の取り付け箇所に固定されているポリマー套管の取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−153223(P2010−153223A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330631(P2008−330631)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(306013120)昭和電線ケーブルシステム株式会社 (218)
【Fターム(参考)】