説明

ポリマー改質顔料の調製方法

本発明は、以下の工程、いずれかの順番で、少なくとも1つの反応性基が結合されている顔料を含む改質顔料、少なくとも1つの官能基を含むポリマー、および非反応性希釈剤を混合して、反応混合物を形成する工程;該反応混合物中の該ポリマーと該改質顔料を反応させて、該ポリマー改質顔料と該非反応性希釈剤を含む混合物を形成する工程;ならびに、該混合物から該非反応性希釈剤を除去して該ポリマー改質顔料を形成する工程、を含んでなるポリマー改質顔料を調製する方法に関する。また、結果として得られるポリマー改質顔料およびそれを含むインクジェットインク組成物が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー改質顔料の調製方法、ならびにポリマー改質顔料およびそれを含むインクジェットインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
顔料の表面は、種々の異なる官能基を含んでおり、そして存在する基の種類は、顔料の特定の種類による。これらの顔料の表面に、材料、特にはポリマーをグラフトするための幾つかの方法が開発されてきている。例えば、ポリマーを、表面基、例えばフェノールおよびカルボキシル基を含むカーボンブラックに結合することができることが示されている。しかしながら、顔料表面の固有の官能性に頼る方法は、全ての顔料が同じ特定の官能基を有しているのではないために、一般的には適用できない。
【0003】
ポリマー改質顔料製品の調製のための他の方法もまた開発されてきている。例えば、米国特許第7,056,962号、第6,478,863号、第6,432,194号、第6,336,965号の各明細書、ならびに米国特許出願公開第2006- 0189717号明細書には、ジアゾニウム塩を使用してポリマーを顔料に結合させる方法が記載されている。また、米国特許第7,173,078号、第6,916,367号、第6,911,073号、第6,723,783号、第6,699,319号、第6,472,471号、および第6,110,994号の各明細書には、ポリマーと反応基が結合されている顔料とを反応させることによって、ポリマー改質顔料を調製する方法が記載されている。更に、ポリマー基が結合されている改質顔料が、米国特許出願公開第2008-0177003号明細書中に開示されており、これは溶融した形態のポリマーを用いている。
【0004】
一般に、少なくとも1つのポリマー基が結合されている顔料を調製する方法に関連したこれらのそれぞれは、しばしば「表面へのグラフト化(grafting onto)」プロセスと称され、一般に、反応性官能基を有するポリマー材料の、粒子、例えば顔料の表面上への反応を含んでいる。この種のプロセスでは、この表面と反応したポリマーは、立体障害を生じさせる可能性があり、それによって更なるポリマー材料が顔料の表面に到達することを妨げて、そして顔料表面に結合するポリマーの量を制限する。一般に、このような取り組みは、ポリマー結合の低水準の効率(加えられたポリマー量に対する結合したポリマーの百分率で表される)を有している。従って、高水準の結合したポリマーを有する顔料を得るためには、大過剰のポリマーが必要となる。
【0005】
顔料にポリマー基を結合させるための他の方法としては、「介在グラフト化(grafting through)」または「表面開始グラフト化(grafting from)」プロセスと称されるものが挙げられる。「介在グラフト化(grafting through)」法は、一般に、少なくとも1つの重合性基が結合されている改質顔料の存在の下でのモノマーの重合を含んでいる。しかしながら、「表面へのグラフト化(grafting to)」法と同様に、結合されたポリマーの存在は、この結合されたポリマーが、成長ポリマー鎖が顔料表面上の重合性基に到達するのを立体的に妨害するために、更なる結合を制限する可能性があり、従って、結合の効率を低下させる。
【0006】
比較すると、「表面開始グラフト化(grafting from)」プロセスは、典型的には顔料の表面上での開始点の形成およびこの開始点から直接のモノマーの重合を含んでいる。このような重合法の例としては、原子移動ラジカル重合(ATRP)、安定遊離ラジカル(SFR)重合、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)、ならびにイオン重合、例えば官能基移動重合(GTP)が挙げられる。これらの方法は、「表面へのグラフト化(grafting onto)」または「介在グラフト化(grafting through)」法におけるポリマーに比べて、小さな分子(すなわち、モノマー)の高い拡散速度のために、典型的にはより高いグラフト密度を与える一方で、これらの方法はまた、通常は、ポリマーを成長させるための特定の反応条件とともに、開始剤で改質された特別な顔料の調整を必要として、そのプロセスに付加的な費用と複雑さを与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、これらの方法は、結合されたポリマー基を有する改質顔料を与えるけれども、改善された結合効率で、顔料にポリマーを結合させるための改善された方法、ならびにより高い水準の結合ポリマーを有する、ポリマー改質顔料への必要性がなお存在している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の工程、i)いずれかの順序で、改質顔料、ポリマー、および非反応性希釈剤を混合して、反応混合物を形成する工程、ii)この反応混合物中の改質顔料とポリマーとを反応させて、ポリマー改質顔料および非反応性希釈剤を含む混合物を形成する工程、ならびにiii)この混合物から非反応性希釈剤を除去して、ポリマー改質顔料を形成する工程、を含むポリマー改質顔料の調製方法に関する。この非反応性希釈剤およびポリマーは、ポリマー1部に対して、非反応性希釈剤が少なくとも約1部の比率で混合される。この改質顔料は、少なくとも1つの反応性基が結合されている顔料を含んでおり、そしてこのポリマーは、少なくとも1つの官能基を含むポリマーを含んでおり、このポリマーの官能基は、顔料の反応性基と反応することができる。このポリマー改質顔料は、少なくとも1つのポリマー基が結合されている顔料を含んでおり、そしてこのポリマー基は、このポリマーを含んでいる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
更に、本発明は、以下の工程、i)いずれかの順番で、顔料、芳香族アミン、ジアゾ化剤、ポリマー、および非反応性希釈剤を混合して反応混合物を形成する工程、ii)この反応混合物中のこの顔料、芳香族アミン、およびジアゾ化剤を反応させて、改質顔料を形成する工程、iii)この反応混合物中のポリマーと改質顔料とを反応させて、ポリマー改質顔料と非反応性希釈剤とを含む混合物を形成する工程、ならびにiv)この混合物から非反応性希釈剤を除去して、ポリマー改質顔料を形成する工程、を含むポリマー改質顔料を調製する方法に関する。この非反応性希釈剤およびポリマーは、ポリマー1部に対して、非反応性希釈剤が少なくとも約1部の比率で混合される。この改質顔料は、少なくとも1つの反応性基が結合されている顔料を含んでおり、そしてこのポリマーは、少なくとも1つの官能基を含んでおり、このポリマーの官能基は、この顔料の反応性基と反応することができる。このポリマー改質顔料は、少なくとも1つのポリマー基が結合されている顔料を含んでおり、そしてこのポリマー基は、このポリマーを含んでいる。
【0010】
更に、本発明は、少なくとも1つのポリマー基が結合されている顔料を含む、ポリマー改質顔料に関する。ポリマー改質顔料は、少なくとも1つの反応性基が結合されている顔料を含む改質顔料と、少なくとも1つの官能基を含むポリマーとの反応生成物を含んでおり、このポリマーの官能基は、改質顔料の反応性基と反応して、ポリマー改質顔料を形成する。このポリマーは、約30〜110の範囲の酸価を有しており、そしてこのポリマー改質顔料は、2:1以下の改質顔料に対するポリマーの質量比を有している。また、このポリマー改質顔料を含むインクジェットインク組成物が開示される。
【0011】
前述の一般的な記載と、以下の詳細な説明の両方が、例示的で、説明のためだけのものであり、そして特許請求の範囲に記載した本発明の、更なる説明を提供することを意図したものであることが理解されなければならない。
【0012】
<本発明の詳細な説明>
本発明は、ポリマー改質顔料の形成方法、そのポリマー改質顔料、およびそれらの使用方法に関する。
【0013】
本発明の方法は、改質顔料、ポリマー、および非反応性希釈剤を混合して、反応混合物を形成する工程を含んでいる。これらの成分のそれぞれは、以下でより詳細に説明される。これらの成分は、いずれの順番で混合されてもよい。例えば、このポリマーおよび非反応性希釈剤は、混合されてポリマー混合物を形成し、それが次いで改質顔料と混合されてもよい。また、他の組み合わせも、可能であり、そして当業者には明らかである。
【0014】
この改質顔料は、少なくとも1つの反応性基が結合されている顔料を含んでいる。この改質顔料の顔料は、固体材料であり、通常は、粒子の形状または容易に粒子に形成される形態、例えば圧縮ケークである。この顔料は、慣用的に当業者に用いられるいずれかの種類の顔料であることができ、例えば黒顔料および他の有色顔料、例えば青、黒、茶、シアン(cyan)、緑、白、紫、マゼンタ(magenta)、赤、橙、または黄顔料であることができる。また、異なった顔料の混合物も、用いることができる。黒顔料の代表的な例としては、種々のカーボンブラック(ピグメントブラック7)、例えばチャンネルブラック、ファーネスブラック、ガスブラック、およびランプブラックが挙げられ、そして例えば、Cabot Corporationから入手可能な、Regal(登録商標)、Black Pearls(登録商標)、Elftex(登録商標)、Monarch(登録商標)、Mogul(登録商標)およびVulcan(登録商標)の商標で市販されているカーボンブラック(例えば、Black Pearls(登録商標)2000、Black Pearls(登録商標)1400、Black Pearls(登録商標)1300、Black Pearls(登録商標)1100、Black Pearls(登録商標)1000、Black Pearls(登録商標)900、Black Pearls(登録商標)880、Black Pearls(登録商標)800、Black Pearls(登録商標)700、Black Pearls(登録商標)570、Black Pearls(登録商標)L、Elftex(登録商標)8、Monarch(登録商標)1400、Monarch(登録商標)1300、Monarch(登録商標)1100、Monarch(登録商標)1000、Monarch(登録商標)900、Monarch(登録商標)880、Monarch(登録商標)800、Monarch(登録商標)700、Regal(登録商標)660、Mogul(登録商標)L、Regal(登録商標)330、Regal(登録商標)400、Vulcan(登録商標)P)、が挙げられる。他の供給者から入手可能なカーボンブラックも用いることができる。有色顔料の好適な種類としては、例えば、アントラキノン、フタロシアニン青、フタロシアニン緑、ジアゾ、モノアゾ、ピラントロン、ペリレン、複素環黄(heterocyclic yellows)、キナクリドン、キノロノキノロン(quinolonoquinolones)、および(チオ)インジゴイド、が挙げられる。このような顔料は、粉末または圧縮ケークのいずれかで、BASF Corporation、Engelhard Corporation、Sun Chemical Corporation、Clariant、およびDianippon Ink and Chemicals(DIC)、を含めた多くの供給源から商業的に入手可能である。他の好適な有色顔料の例が、Colour Index、第3版(The Society of Dyers and Colourists、1982年)中に記載されている。好ましくは、この顔料としては、シアン顔料、例えば、ピグメントブルー15もしくはピグメントブルー60、マゼンタ顔料、例えばピグメントレッド122、ピグメントレッド177、ピグメントレッド185、ピグメントレッド202、もしくはピグメントバイオレット19、黄顔料、例えばピグメントイエロー74、ピグメントイエロー128、ピグメントイエロー139、ピグメントイエロー155、ピグメントイエロー180、ピグメントイエロー185、ピグメントイエロー218、ピグメントイエロー220、もしくはピグメントイエロー221、橙顔料、例えばピグメントオレンジ168、緑顔料、例えばピグメントグリーン7もしくはピグメントグリーン36、または黒顔料、例えばカーボンブラック、がある。
【0015】
この顔料は、その顔料の所望の性質に応じて、窒素吸収によって測定された広範囲のBET表面積を有することができる。好ましくは、これらの顔料は、約10m/g〜約1500m/gの範囲、より好ましくは約20m/g〜約600m/gの範囲、そして最も好ましくは約50m/g〜約300m/gの範囲のBET表面積を有している。また、もしも所望の用途に対して所望の表面積が容易に入手可能でなかったならば、その顔料を慣用の粒径低下または粉砕技術、例えばボールミルもしくはジェットミルもしくは超音波処理に掛けて、所望であれば、その顔料をより小粒径に小さくすることができることが、当業者にはよく認識されている。また、この顔料は、当技術分野で知られている、広範囲の一次粒子径を有することができる。例えば、この顔料は、約5nm〜約100nm、例えば約10nm〜約80nm、そして15nm〜約50nmの範囲の一次粒子径を有することができる。更に、この顔料はまた、広範囲のジブチルフタレート吸収(DBP)値を有することができ、これはその顔料の構造または分岐を測定している。例えば、この顔料は、約25〜400mL/100g、例えば約30〜200mL/100g、そして約50〜150mL/100gのDBP値を有するカーボンブラックであることができる。また、この顔料は、約5〜150mL/100g、例えば約10〜100mL/100g、そして約20〜80mL/100gの油吸収値(ISO 787 T5 中に記載されている)を有する有機有色顔料であることができる。
【0016】
また、この顔料は、イオン基および/またはイオン性基を表面上に導入するために、酸化剤を用いて酸化されている顔料であることができる。この方法で調製された酸化された顔料は、表面上により多量の酸素含有基を有していることが見出された。好適な酸化剤としては、酸素ガス、オゾン、NO(NOと空気の混合物を含む)、過酸化物、例えば過酸化水素、過硫酸塩、例えば過硫酸ナトリウム、カリウムもしくはアンモニウム、次亜ハロゲン酸塩(hypohalite)、例えば次亜塩素酸ナトリウム、岩塩(halites)、ハロゲン酸塩(halates)、または過ハロゲン酸塩(perhalate)(例えば亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、もしくは過塩素酸ナトリウム)、酸化性酸、例えば硝酸、および遷移金属含有酸化剤、例えば過マンガン酸塩、四酸化オスミウム、酸化クロム、または硝酸セリウムアンモニウム、が挙げられるがそれらには限定されない。また、酸化剤の混合物も用いることができ、特に気体状の酸化剤、例えば酸素およびオゾンの混合物を用いることができる。更に、顔料表面上にイオン基またはイオン性基を導入する、他の表面改質法、例えば塩素化またはスルホニル化を用いて調製された顔料もまた、用いることができる。
【0017】
この改質顔料は、少なくとも1つの反応性基が結合されている顔料を含んでおり、以下に更に詳細に記載される。他の態様では、この改質顔料は、酸素含有反応性基を含む、酸化された顔料であり、下記に記載したいずれかの方法を用いて調製することができる。第2の態様では、この改質顔料は、少なくとも1つの有機基が結合されている顔料を含んでおり、この有機基は、反応性基を含んでいる。好ましくは、この有機基は、直接結合されている。このような改質顔料は、有機化学基がこの顔料に結合するように、当業者に知られたいずれかの方法を用いて調製することができる。例えば、この改質顔料は、米国特許第5,554,739号、第5,707,432号、第5,837,045号、第5,851,280号、第5,885,335号、第5,895,522号、第5,900,029号、第5,922,118号、および第6,042,643号の各明細書、ならびに国際特許公開第99/23174号中に記載された方法を用いて調製することができ、これらの記載はその全てを参照することによって本明細書の内容とする。これらの方法は、例えばポリマーおよび/または界面活性剤を用いる分散型の方法に比べて、それらの基の顔料上へのより安定な結合を与える。改質顔料を調製するための他の方法としては、利用可能な官能基を有する顔料と有機基を含む試薬とを反応させることが挙げられ、例えば、それは米国特許第6,723,783号明細書中に記載されており、その全てを参照することによって本明細書の内容とする。このような官能性顔料は、上記で参照した文献中に記載された方法を用いて調製することができる。また、更に、結合された官能基を含む改質カーボンブラックも、米国特許第6,831,194号明細書および第6,660,075号明細書、米国特許出願公開第2003-0101901号明細書および第2001-0036994号明細書、カナダ国特許第2,351,162号明細書、欧州特許第1 394 221号明細書および国際公開第04/63289号、ならびにN. Tsubokawa、Polym. Sci.、第17巻、p.417、1992年、中に記載された方法によって調製することができ、それらの全てを参照することによって本明細書の内容とする。
【0018】
本発明の方法において用いられる改質顔料の反応性基は、ポリマーと反応することが可能な基である。この反応性基は、ポリマーとの反応の性質に応じて、求核基または親電子基であることができ、下記により詳細に記載されている。例えば、この改質顔料の反応性基は、親電子基、例えばカルボキシル酸もしくはエステル;酸塩化物;塩化スルホニル;アシルアジ化物;イソシアネート;ケトン;アルデヒド;無水物;アミド;イミド;イミン;α,β−不飽和ケトン、アルデヒド、もしくはスルホン;ハロゲン化アルキル;エポキシド;スルホン酸アルキルもしくは硫酸アルキル、例えば(2−スルファトエチル)−スルホン基;付加開裂反応を受ける芳香族化合物、またはそれらの塩もしくは誘導体、あるいはそれらのいずれかの組み合わせ、が挙げられる。また、この改質顔料の反応性基は、求核基、例えばアミン;ヒドラジン;アルコール;チオール;ヒドラジド;オキシム;トリアゼン;カルボアニオン;またはそれらの塩もしくは誘導体、あるいはそれらの組み合わせであることができる。好ましくは、この反応性基は、カルボン酸基;無水物基;アミン基、例えばアルキルアミン基;硫酸アルキル基;またはそれらの塩である。例えば、この反応性基は、アミン基またはその塩、例えばベンジルアミン、フェニルエチルアミン、フェニレンアミン、またはアミノアルキルアミン基、例えば、−SO−ALK1−NH−ALK2−NH基、ここでALK1とALK2は、同じでも異なっていてもよく、C〜Cアルキレン基である。
【0019】
本発明の方法で用いられるポリマーは、本発明の改質顔料のポリマー基を形成する。種々の異なる種類のポリマーを用いることができ、そしてホモポリマー、コポリマー、ターポリマーであることができ、またはいずれかの数の異なる繰り返し単位を含んでいてもよく、ランダムポリマー、交互ポリマー、グラフトポリマー、ブロックポリマー、超分岐もしくは樹枝状ポリマー、櫛型ポリマー、またはそれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。このポリマーは、約50000以下の質量平均分子量を有することができる。例えば、このポリマーは、約25000以下、例えば約15000もしくは10000以下、の質量平均分子量を有することができる。また、このポリマーは、約1000以上の質量平均分子量を有することができる。また、このポリマーは、この改質顔料を調製するのに用いられる特定の条件に応じて、液体、粉末、または溶融ポリマーの形成であることができ、下記のより詳細に記載されている。
【0020】
本発明の方法で用いることができるポリマーの好適な例としては、ポリアミン;ポリアミド;ポリカーボネート;高分子電解質;ポリエステル;ポリエーテル(例えば、ポリアルキレンオキシド);ポリビニルエーテル;ポリオール(例えば、ポリヒドロキシベンゼンおよびポリビニルアルコール);ポリイミド;硫黄含有ポリマー(例えば、ポリフェニレンスルフィド);アクリルポリマー;ポリオレフェン、例えばハロゲンを含むもの(例えば、ポリ塩化ビニルおよびポリ塩化ビニリデン);フッ化ポリマー;ポリウレタン;ポリ酸;少なくとも1つの無水物官能基を含むポリ無水物;またはそれらの誘導体の塩、あるいはそれらのいずれかの組み合わせ、が挙げられる。例えば、このポリマーは、ポリアミン、例えば、直鎖もしくは分岐ポリアミン、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)またはそれらの誘導体;エチレンイミンのオリゴマー(例えば、ペンタエチレンヘキサミン、PEHA)またはそれらの誘導体;ポリアミドアミン(PAMAM)、例えばStarburst(登録商標)ポリアミドアミンデンドリマー;またはそれらのいずれかの組み合わせ、であることができる。また、このポリマーは、ポリ酸、例えば、アクリル酸もしくはメタクリル酸ホモおよびコポリマー、例えば、ポリアクリルもしくはポリメタクリル酸およびポリ(スチレン−アクリル酸)またはポリ(スチレン−メタクリル酸);またはマレイン酸無水物含有ポリマーの加水分解誘導体、例えばスチレンマレイン酸ポリマー、であることができる。更に、このポリマーは、種々の既知のアクリルモノマーから形成することができる。スチレン−アクリル酸ポリマーの具体的な例としては、Vancryl 68(Cytecから入手可能);Trudot IJ-4659、IJ-4650、IJ-4655、IJ-4675、IJ-4680(MeadWestvacoから入手可能);Carboset 7700、CA7121、CR-760、CR-761、CR-763、CR-764、CR-765、CR-7700、GA-1105、GA-4028、GAW-7223、RTU805、SA-860(Lubrizolから入手可能);およびJoncryl 67、611、HPD671、ECO 675、678、680、682、683、ECO 684、690、693、HPD 696(BASFから入手可能)、が挙げられる。
【0021】
好ましくは、このポリマーは、少なくとも1つの基を含んでおり、これが結果として得られるポリマー改質顔料に、少なくとも1つの所望の性質を与える。例えば、このポリマーは、少なくとも1つの親水基を含むことができ、これがこのポリマー改質顔料の水溶液中での分散安定性を改善することができ、または少なくとも1つの疎水基を含むことができ、これがこのポリマー改質顔料の非極性溶液中での分散安定性を改善することができる。また、このポリマーは、少なくとも1つの立体障害基を含むことができ、これが、立体的相互作用を通して、この顔料の塊になる傾向を低減させることができる。
【0022】
例えば、このポリマーは、少なくとも1種のイオン基、イオン性基、またはイオン基とイオン性基の混合物を含むことができる。イオン基は、アニオン性またはカチオン性のいずれかであることができ、そして反対の電荷の対イオン、例えば無機もしくは有機対イオン、例えばNa、K、Li、NH、NR’、アセテート、NO、SO−2、R’SO、R’OSO、OH、またはCl、と会合していることができ、ここでR’は、水素または有機基、例えば置換もしくは非置換アリールまたはアルキル基を表す。イオン性基は、使用媒体中でイオン基を形成することができるものである。アニオン性基は、負に荷電したイオン基であり、アニオンを形成することができるイオン性置換基(アニオンイオン性基)、例えば酸性置換基、を有する基から生み出されることができる。カチオン性基は、正に荷電した有機イオン基であり、カチオンを形成することができるイオン性置換基(カチオンイオン性基)、例えばプロトン化アミンから生み出されることができる。アニオン性基の具体的な例としては、−COO、−SO、−OSO、−HPO;−OPO−2、または−PO−2、が挙げられ、そしてアニオンイオン性基の具体的な例としては、−COOH、−SOH、−PO、−R’SH、または−R’OH、が挙げられ、ここでR’は、水素または有機基、例えば置換もしくは非置換アリールまたはアルキル基を表す。また、カチオン性もしくはカチオンイオン性基の具体的な例としては、アルキルアミンもしくはアリールアミンが挙げられ、これらは酸性媒体中でプロトンを付加されて、アンモニウム基、−NR’を形成することができ、ここでR’は、有機基、例えば、置換もしくは非置換アリールまたはアルキル基を表す。
【0023】
また、このポリマーは、少なくとも1つの非イオン性基を含むことができる。例としては、約1〜約12個の炭素原子のアルキレンオキシド基およびポリオール、例えば、−CH−CH−O−基、−CH(CH)−CH−O−基、−CH−CH(CH)−O−基、−CHCHCH−O−基、またはそれらの組み合わせが挙げられる。これらの非イオン性基は、更に少なくとも1つの求核または親電子基、例えば−OH基を含むことができる。
【0024】
本発明の方法は、低い酸価を有するポリマーに、特に有用であることが見出された。従って、本方法では、ポリマーは、約200以下、例えば約150以下、約110以下、または約100以下の酸価を有するポリマーを含む酸性基であることができる。好ましくは、このポリマーの酸価は、約30以上である。従って、このポリマーは、約30〜約200、例えば約30〜約110、約110〜約150、または約150〜約200の酸価を有するポリマーを含む酸性基であることができる。
【0025】
本発明の方法で用いられるポリマーは、少なくとも1つの官能基を含んでおり、それは、改質顔料の反応性基と反応することができる基である。種々の種類の反応が、このポリマーの官能基とこの改質顔料の反応性基との間で起こることができ、例えば、SN2置換反応、縮合反応(例えば、アシル化反応、エステル反応、アミド化反応、またはイミドもしくはイミン形成反応)、1,2もしくは1,4付加反応(例えば、ディールス・アルダー環状付加反応)、フリーデル・クラフツ反応、または共有結合の形成をもたらす多くの他の既知の化学反応のいずれか、が挙げられる。好ましくは、このポリマーの官能基とこの顔料の反応性基は、求核/親電子置換もしくは付加を通して反応することができる相補的基である。従って、好ましくは、この官能基は、改質顔料の反応性基の性質に応じて、求核基または親電子基である。例えば、この改質顔料の反応性基が親電子基である場合には、このポリマーの官能基は、求核基である。このポリマーの反応性基が親電子基である場合には、このポリマーの官能基は、親電子基である。このポリマーの官能基は、改質顔料の反応性基として上記で記載したいずれかであることができる。更に、このポリマーの官能基は、ポリマー改質顔料に分散安定性を与えるための、上記で記載した基、例えばイオン基もしくはイオン性基と同じでも、異なっていてもよい。例えば、この官能基は、カルボン酸基、無水物基、アミン基、例えばアルキルアミン、硫酸アルキル、もしくはその塩であることができる。
【0026】
ポリマーと改質顔料との具体的な組み合わせの例としては、少なくとも1つのアミン基もしくはその塩が結合されている顔料を含む改質顔料、および少なくとも1つのカルボン酸基もしくはその塩を含むポリマーが挙げられる。また、このポリマーは、少なくとも1つのアミン基を含ことができ、そしてこの改質顔料は、少なくとも1つの硫酸アルキル基もしくは少なくとも1つのカルボン酸基が結合されている顔料であることができる。他の組み合わせは、本明細書に与えられた開示に基づいて、当業者は知ることができる。
【0027】
本発明の方法で用いられる非反応性希釈剤は、この改質顔料と実質的に反応しない材料であり、そしてより好ましくは、この改質顔料の反応性基に対して非反応性である。従って、この非反応性希釈剤は、顔料の反応性基と反応する少なくとも1つの官能基を含むポリマーとは、認め得る程は競合しない。本質において、この非反応性希釈剤は、顔料と実質的に反応することなくポリマーを「希釈する」ために存在している。この非反応性希釈剤は、ポリマーと反応することができる可能性があるが、しかしながらその反応は可逆的でなければならず、従ってこの非反応性希釈剤の除去を妨害することはなく、そのことは下記により詳細に記載されている。希釈剤の混合物もまた、用いることができる。
【0028】
例えば、この非反応性希釈剤は、疎水性材料、例えば、水とは認め得る程は混和性および/または溶解性でないオイルまたは樹脂であることができる。この疎水性材料は、液体であることができ、またはそれは、低い融点、例えば約50℃未満、を有する蝋質の材料の形態であることができる。また、この疎水性材料は、ポリマー中に混和性、溶解性、または分散性であることができるが、しかしながら、例えば蒸留によって、このポリマーから容易に除去されるものである。水に非混和性のオイルもしくは樹脂の具体的な例としては、鉱油、シリコーン油、パラフィン、および分岐ポリエチレン(例えば、Vybar(登録商標)、疎水的に改質されたポリビニルピロリドン(例えば、Ganex(登録商標))、ポリエチレン、およびポリスチレンが挙げられる。
【0029】
また、この非反応性希釈剤は、約120℃以下の融点を有する塩であることができる。この塩は、有機塩または無機塩であることができ、そして好ましくは、ポリマー中に可溶か、または水溶性のいずれかである塩である。具体的な例としては、硫酸水素アンモニウム、テトラブチルアンモニウムブロミド、およびテトラメチルアンモニウム・ニトラートが挙げられる。
【0030】
更に、この非反応性希釈剤は、水に可溶であるが、しかしながらいずれの酸性官能基も含まないポリマーであることができる。このポリマーは、上記したポリマーの質量平均分子量と同様の質量平均分子量を有することができるが、しかしながら、これは改質顔料と反応性でないので、結果として得られるポリマー改質顔料から、そのポリマー改質顔料を形成するために用いられたいずれかの残りのポリマーと一緒に、もしくは別個に、容易に除去することができる。水溶性の非酸性ポリマーの具体的な例としては、ポリエーテル、例えば、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコールおよびエチレングリコールの共重合体)、ポリビニルアルコールおよびビニルアルコール基を有する共重合体、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、およびポリオキサゾリン、例えばポリ−2−エチルオキサゾリン、が挙げられる。
【0031】
また更に、この非反応性希釈剤は、高沸点溶媒であることができる。このように、この溶媒は、水に可溶性もしくは混和性のいずれかであることでき、または水に不溶性であることができるが、しかしながら好ましくは約100℃以上、例えば約110℃以上、例えば約150℃以上、約160℃以上、もしくは約170℃の沸点を有している。1つの態様では、この沸点は、ポリマー改質顔料を形成するのに必要な温度よりも高い。この溶媒は、このポリマーの良溶媒であることができるが、しかしながら、例えば蒸留もしくはダイアフィルトレーションなどによって、ポリマー改質顔料から除去できるものであり、それらは高沸点の水溶性もしくは水混和性溶媒にとって特に有用である。高沸点の水溶性溶媒の具体的な例としては、2−ピロリドン(2P)、N−メチルピロリドン(NMP)、グリコール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、メチルグリコール、メチルジグリコール、メチルトリグリコール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、ブチルポリグリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル)、グリセリン、スルホラン、ケトン、例えば、アセトンおよびメチルエチルケトン(MEK)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、およびN,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、が挙げられる。高沸点の水に不溶性の溶媒の具体的な例としては、芳香族系溶媒、例えば、ベンゼンおよびキシレン、アルカン、例えば、ペブタンおよびオクタン、エーテル(例えば、グリム)、およびケトン(例えば、ジイソブチルケトン(DIBK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルn−アミルケトン、メチルi−アミルケトン、イソホロン、およびDowから入手可能なEcosoft Solvent IK)、が挙げられる。
【0032】
上記のように、本発明は、いずれかの順序で、改質顔料、ポリマー、および非反応性希釈剤を混合して混合物を形成する工程を含んでいる。それぞれの成分の量は、種々の因子、例えば、ポリマーの種類と分子量、ならびに官能基および/または反応性基の反応性に応じて変えることができる。例えば、ポリマーと非反応性希釈剤の量の質量比は、少なくとも約1:1、すなわち、約1質量部のポリマーに対して、少なくとも約1質量部の非反応性希釈剤である。好ましくは、この質量比は、1:1よりも大きく、例えば約1質量部のポリマーに対して、約2質量部以上の非反応性希釈剤(2:1)、例えば、約3:1、約5:1、もしくは約10:1以上である。従って、非反応性希釈剤の量は、好ましくはポリマーの量よりも大きく、上記のように、この材料は、ポリマーを「希釈する」のに用いられる。
【0033】
更に、改質顔料の量に対する、非反応性希釈剤およびポリマーの総量もまた、変えることができる。一般には、ポリマーと非反応性希釈剤の総量が大きくなればなるほど、結果として得られるポリマー改質顔料に結合したポリマーの量は大きくなる(すなわち、顔料に対するポリマーの比率が大きく、それは、ポリマーの量と顔料の量の質量比である)。しかしながら、このことはまた、費用と釣り合わなければならない。従って、ポリマーと非反応性希釈剤の総量の、改質顔料の量に対する質量比は、少なくとも約1:1、すなわち、約1質量部の改質顔料に対して、少なくとも1質量部のポリマーと非反応性希釈剤であることができる。好ましくは、改質顔料の量は、ポリマーと非反応性希釈剤の総量よりも大幅に少ない。例えば、好ましくは、この比率は、約3:1、そしてより好ましくは約5:1以上、例えば、1質量部の改質顔料に対して、約6.5質量部以上のポリマーと非反応性希釈剤である(6.5:1)。
【0034】
改質顔料、ポリマーおよび非反応性希釈剤を混合して混合物を形成するのに加えて、所望により、水性溶媒を加えてもよく、それは水を含む溶媒である。この水性溶媒は、例えば水または、少なくとも50体積%の水を含む、水と混和性もしくは可溶性の溶媒、例えばアルコールとの混合物であることができる。この水性溶媒は、他の成分、例えば、改質顔料、ポリマーまたは非反応性希釈剤と、別個に、もしくは一緒に、のいずれかで混合することができる。例えば、改質顔料は、水性分散体として、列挙した成分と混合することができる。また、ポリマーおよび/または非反応性希釈剤は、水中の分散液または溶液のいずれかとして加えることができる。また、例えば界面活性剤、相間移動触媒などの、他の添加剤も存在することができる。特に、この水性溶媒は、成分の性質に応じて、酸性または塩基性のいずれかであることができる。このようにして、この水性溶媒は、反応混合物のpHを調整する手段を提供し、そのことは、ポリマーの官能基と改質顔料の反応性基との間の特定の反応に対して好ましい可能性がある。また、適切なpHは、非反応性希釈剤の除去の工程において有用である可能性がある。更に、この水性溶媒が含まれる場合には、結果として得られるポリマー改質顔料は、水性分散液の形態であることができ、そのことは、下記のように、特定の用途については特に好ましいことが見出された。適切なpHの使用は、ポリマー改質顔料分散液に向上した安定性を与えることができる。例えば、ポリマーが少なくとも1つの酸性基またはアニオンイオン性基を含む場合には、塩基、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化テトラアルキルアンモニウム、ならびに種々のアミンを、ポリマー改質顔料の安定な水性分散液を与えるように用いることができる。
【0035】
従って、本発明の方法は、いずれかの順番で、改質顔料、ポリマー、非反応性希釈剤、および所望による水性溶媒を混合して、反応混合物を形成する工程を含んでいる。これらの成分を混合する工程は、所望の反応混合物を生成するために、いずれの温度で、およびいずれの時間に行なっても良い。この時間および温度は、種々の因子、例えば、ポリマーの種類、改質顔料の反応性基とポリマーの官能基の両方の種類と反応性、ならびにそれぞれの成分の相対的な量に依る。例えば、これらの成分を混合する時間は、変えることができるが、しかしながら典型的には約5分間〜48時間の範囲、例えば、30分間〜24時間の範囲、そして1時間〜12時間の範囲である。
【0036】
これらの成分を混合する工程の温度もまた、変えることができ、そして当技術で知られているいずれかの方法によって制御することができる。一般に、この温度は、約20℃〜250℃の範囲、例えば約50℃〜200℃の範囲、そして約70℃〜180℃の範囲である。1つの態様では、これらの成分は、ポリマーの溶融物を形成するのに十分な温度で混合される。従って、この態様では、これらの成分を混合する温度は、ポリマーのガラス転位温度(Tg)以上であり、好ましくはポリマーの溶融温度(Tm)以上である。他の態様では、これらの成分を混合する温度は、非反応性希釈剤の性質を基にして選択される。例えば、この非反応性希釈剤が、水溶性の非酸性ポリマーである場合には、この温度は、このポリマーのTgもしくはTm以上であることができる。この非反応性希釈剤が、水に非混和性のオイルまたは高沸点の非水性溶媒である場合には、混合温度は、好ましくはこの非反応性希釈剤の沸点より低い。また、この非反応性希釈剤が、低融点の有機もしくは無機塩である場合には、これらの成分を混合する温度は、この非反応性希釈剤の融点よりも高くてよい。これらの態様の両方では、これらの成分を、ポリマーおよび/または非反応性希釈剤が液体状態にある温度で混合することは、これらの成分の反応混合物への容易な混合を可能にし、そしてそれぞれの成分が完全に混合した混合物を与える。
【0037】
これらの成分を混合する工程は、いずれの好適な容器中で行うことができ、そしてこれらの成分は、この容器に幾つかの増加分で、単一の増加分で、または連続的に加えることができる。本発明の方法の好ましい態様では、これらの成分は、低粘度材料を混合することができる装置中で混合することができる。例えば、これらの成分は、50ワット以下の動力で攪拌することによって混合することができる。低粘度系に用いることができる、低せん断混合機または攪拌機は、Perry's Chemical Engineer's Handbook、第6版、第19章、p.19-5〜19-14中に記載されている。このような装置としては、船用機関型インペラ混合機、タービン混合機、アンカー翼、分散翼(disperser blades)、回転子−固定子装置(rotor-stator devices)などが挙げられる。これらの攪拌装置は、垂直に、水平に、または傾斜して、据え付けることができる。混合は、交差する流体の流れを用いて成し遂げることができる。これらの成分は、混合機中に収容し、再循環することができ、またはこの系は連続的であることができ、そして従って、この低粘度混合機は、バッチ式、半連続式、または連続式混合機であることができる。
【0038】
本発明の方法は、更に、改質顔料、ポリマーおよび非反応性希釈剤を含む反応混合物中の改質顔料とポリマーを反応させて、ポリマー改質顔料と非反応性希釈剤を含む混合物を形成する工程を含んでいる。これらの成分を反応させる工程は、ポリマー改質顔料を生成するのに十分ないずれかの温度およびいずれかの時間で行なうことができ、種々の因子、例えば、ポリマーの種類、改質顔料の反応性基とポリマーの官能基の両方の種類と反応性、ならびにそれぞれの成分の相対的な量に依る。改質顔料、ポリマー、および非反応性希釈剤を混合する工程に関連して、上記した条件のいずれかは、低粘度混合機の条件および/または、ポリマー、非反応性希釈剤、またはそれらの両方が液体の形態(例えば、溶融ポリマー)にある温度を含めて、この反応工程に対しても用いることができる。また、この反応工程の条件は、混合の条件と同じか、または異なっていてよい。従って、1つの態様では、これらの工程は、同時に行なわれ、その中では、これらの成分は混合されて反応混合物を形成し、一方では反応して、ポリマー改質顔料と非反応性希釈剤を含む混合物を形成する。
【0039】
本発明の方法の特定の態様では、改質顔料は、ポリマーと非反応性希釈剤の存在下で調製される。従って、この態様では、この方法は、いずれかの順序で、顔料、芳香族アミン、ジアゾ化剤、ポリマーおよび非反応性希釈剤を混合して、反応混合物を形成する工程を含んでいる。この反応混合物中の顔料、芳香族アミン、およびジアゾ化剤は、反応して、少なくとも1つの反応性基が結合されている顔料を含む、改質顔料を形成し、そしてこの改質顔料は、次いで、ポリマーと反応して、ポリマー改質顔料と非反応性希釈剤を含む混合物を形成する。あるいは、これらの反応工程は、同時に起こり、すなわち、改質顔料が形成される時に、それがポリマーと反応する。改質顔料、ポリマー、および非反応性希釈剤は、上記のいずれかであることができる。
【0040】
この態様では、芳香族アミンは、アミン基で置換されたいずれかの芳香族またはヘテロ芳香族化合物、例えばアニリン誘導体(すなわち、置換されたベンゼンアミン)であることができる。この芳香族アミンは、上記により詳細に記載された反応性基を更に含む。また、これらの反応性基以外の他の置換基が、それらの置換基が改質顔料の形成を妨害しない限り、この芳香族アミン上に存在することができる。ジアゾ化剤は、アミン基、特には芳香族アミンのアミン基と反応して、ジアゾニウム塩を形成するいずれかの試薬であることができる。例としては、亜硝酸および亜硝酸塩が挙げられる。好ましくは、このジアゾ化剤は、亜硝酸塩対イオンを有する塩、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムまたは亜硝酸カルシウムである。
【0041】
本発明の方法は、更に非反応性希釈剤を、ポリマー改質顔料と非反応性希釈剤とを含む混合物から除去する工程を含んでおり、それによってポリマー改質顔料を形成する。この非反応性希釈剤を除去する条件は、非反応性希釈剤の種類およびポリマー改質顔料を含む混合物の形態に依る。例えば、この混合物が、非反応性希釈剤の種類が原因で液体の状態である場合には、この非反応性希釈剤は、一般的にろ過または蒸留によって取り除くことができる。例えば、この混合物が固体の形態である場合には、一般に、この非反応性希釈剤を溶解する、もしくは分散する、のいずれかのために、溶媒を加えることができ、それは次いで、ろ過を含む、当技術分野で知られたいずれかの技術によってポリマー改質顔料分散液から取り除くことができる。具体的な例として、非反応性希釈剤を取り除く工程は、水性溶媒、例えば水を、混合物に加えて、ポリマー改質顔料の水性分散液を形成することを含むことができる。この非反応性希釈剤が水に可溶である、例えば塩である場合には、この非反応性希釈剤は、既知の技術、例えば限外ろ過/ダイアフィルトレーション、逆浸透、またはイオン交換を用いて、他の水溶性不純物および他の望ましくない遊離の種とともに、取り除くことができる。この非反応性希釈剤が、水に可溶でない場合には、この非反応性希釈剤は、従って、別個の相を形成し、そして従って相分離、ろ過、または蒸留によって取り除くことができる。他の方法は、当業者に知られている。
【0042】
更に、この非反応性希釈剤がポリマーと可逆的に反応して付加物を形成する場合には、この非反応性希釈剤を、ポリマー改質顔料を含む混合物から取り除く工程は、更にこの付加物をポリマーと非反応性希釈剤に転換することを含んでいてもよい。このことは、当技術分野で知られているいずれかの技術を用いて、この付加物を形成する反応の種類に応じて、例えば酸性もしくは塩基性水性溶媒を加えること、および加熱すること、を用いて成し遂げることができる。あるいは、この付加物は、上記の技術のいずれかを用いて、非反応性希釈剤と共に取り除くことができる。
【0043】
本発明の方法は、ポリマー改質顔料を形成する方法であり、それは改質顔料とポリマーとの反応生成物であり、そして結合されたポリマー基を含む顔料であり、そのポリマー基はポリマーを含んでいる。当技術分野において、ポリマーの官能基が、改質顔料の反応性基と反応してポリマー改質顔料を生成することができることは知られているけれども、改質顔料の量に比べて大量のポリマーが用いられた場合にのみ、この反応が起こると考えられてきた。また、高粘度、高濃度の混合条件が、好ましいと考えられていた。このことは、ポリマーが比較的に低酸価を有している場合にそのように考えられてきており、何故ならば、そのようなポリマーは、顔料と反応することができる基を少量しか有していないからである。驚くべきことに、本発明の方法においては、この反応が、非反応性希釈剤との組み合わせで用いられた場合には、より少ない量のポリマーを用いて起こることが見出され、非反応性希釈剤は、ポリマーの量以上の量で用いられる。ポリマーと改質顔料との反応を希釈剤で「希釈する」ことは、少ない量のポリマーを用いることと共に、貧弱な結合効率をもたらす(すなわち、結果として得られるポリマー改質顔料における低いポリマー/顔料比)であろうと考えられてきた。しかしながら、驚くべきことに、これらの高度に希釈された条件の下においてさえ、顔料に対するポリマーの高い比率を有するポリマー改質顔料が得られることが見出された。また、驚くべきことには、低粘度混合条件を、ポリマー/顔料比に影響を与えることなく用いることができる。低粘度条件とより少量添加されたポリマーの組み合わせは、顕著な経済的な、加工上の、そして性能上の利益を有している。更にまた、この方法は、驚くべきことに、低酸価ポリマー、特には約150以下の酸価を有するものから、改質顔料に対するポリマーの高い比率を有してはいない、ポリマー改質顔料を調製するのに特に有用であることが、見出された。
【0044】
従って、本発明は、更に、少なくとも1つのポリマー基が結合されている顔料を含むポリマー改質顔料に関する。このポリマー改質顔料は、少なくとも1つの反応性基が結合されている顔料を含む改質顔料と、少なくとも1つの官能基を含むポリマーとの反応生成物を含んでいる。この改質顔料およびポリマーは、上記のいずれかであることができるが、しかしながら、好ましくは、約200以下、特には約30〜約110の範囲の酸価を有する低酸性ポリマーである。更に、このポリマー改質顔料は、2:1以下、そしてより好ましくは1:1以下の、改質顔料に対するポリマーの質量比を有している。
【0045】
本発明のこのポリマー改質顔料は、種々の用途、例えばプラスチック組成物、水性もしくは非水性インク、水性もしくは非水性コーティング剤、ゴム組成物、紙組成物および繊維組成物、に用いることができる。特に、これらの顔料は、水性組成物、例えば、自動車用および工業用コーティング剤、塗料、トナー、接着剤、ラテックスおよびインク、に用いることができる。これらの顔料は、インク組成物、特にはインクジェットインクに最も有用であることが見出された。従って、本発明は、更に、ビヒクルおよび本発明のポリマー改質顔料を含むインクジェットインク組成物に関する。このビヒクルは、水性もしくは非水性、いずれかの液体ビヒクルであることができるが、しかしながら好ましくは水を含むビヒクルである。従って、このビヒクルは、好ましくは水性ビヒクルであり、そしてこのインクジェットインク組成物は、水性インクジェットインク組成物である。より好ましくは、このビヒクルは、50%超の水を含み、そして、例えば水または、水と混和性の溶媒、例えばアルコールと水との混合物を含んでいる。
【0046】
このポリマー改質顔料は、インクジェットインク組成物中に、インクジェットインクの性能に有害な影響を与えることなく、所望の画像品質(例えば、光学濃度)を与えるのに有効な量で存在している。典型的には、このポリマー改質顔料は、インクの質量を基準として約0.1質量%〜約30質量%の範囲の量で存在している。多かれ少なかれ、種々の因子に応じて、着色剤を用いることができる。例えば、このポリマー改質顔料の量は、特にこの基を構成するポリマーがより高分子量を有する場合には、結合したポリマー基の量によって変えることができる。また、着色剤の混合物、たとえばここに記載した種々のポリマー改質顔料の混合物、またはこれらの改質顔料と、非改質顔料、例えば酸化顔料、例えば過酸化物、オゾン、過硫酸塩、および次亜ハロゲン酸塩を用いて調製された自己分散性の(self-dispersible)酸化顔料、他の改質顔料、またはその両方、との混合物、を用いることも、本発明の範囲内である。
【0047】
本発明のインクジェットインク組成物は、最小限の付加的な成分(添加剤および/または着色剤)および加工工程で形成することができる。しかしながら、この組成物の安定性を維持したままで、種々の所望の性質を与えるために、好適な添加剤を包含させることができる。例えば、界面活性剤および/または分散剤、湿潤剤、乾燥促進剤、浸透剤、殺生物剤、結合剤、およびpH調節剤、ならびに当技術分野で知られている他の添加剤、を加えることができる。粒子状添加剤の量は、種々の因子によって変えることができるが、しかしながら一般的には0%〜40%の範囲である。
【0048】
分散剤(界面活性剤および/または分散剤)を、この組成物のコロイド安定性を更に高めるために、またはインクと、印刷基材、例えば印刷用紙との、またはインクプリントヘッドとのいずれかとの相互作用を変化させるために加えることができる。種々のアニオン性、カチオン性およびノニオン性の分散剤を、本発明のインク組成物とともに用いることができ、そしてこれらは単体で、または水溶液として用いることができる。
【0049】
アニオン性分散剤または界面活性剤の代表的な例としては、高級脂肪酸塩、高級アルキルジカルボキシレート、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキル−スルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩(Na、K、Li、Caなど)、ホルマリン重縮合物、高級脂肪酸とアミノ酸の縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフテン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アクリルメチルタウリン、アルキルエーテルスルホン酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート、モノグリシジルサルフェート、アルキルエーテルホスフェートおよびアルキルホスフェート、アルキルホスホネートおよびビスホスホネート、が挙げられ、水酸化もしくはアミン化誘導体を含むが、それらには限定されない。例えば、スチレンスルホン酸塩のポリマーおよびコポリマー、非置換および置換ナフタレンスルホン酸塩(例えば、アルキルもしくはアルコキシ置換ナフタレン誘導体)、アルデヒド誘導体(例えば、非置換アルキルアルデヒド誘導体、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒドなど)、マレイン酸塩、およびそれらの混合物を、アニオン性分散助剤として用いることができる。塩は、例えば、Na、Li、K、Cs、Rb、ならびに置換および非置換アンモニウムカチオンを含んでいる。カチオン性界面活性剤の代表的な例としては、脂肪族アミン、第四級アンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩などが挙げられる。
【0050】
本発明のインクジェットインクに用いることができるノニオン性分散剤または界面活性剤の代表的な例としては、フッ素誘導体、シリコーン誘導体、アクリル酸共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン第二級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンスチロールエーテル、エトキシ化アセチレンジオール、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物のエチレンオキシド誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルポリオキシエチレン化合物の脂肪酸エステル、ポリエチレンオキシド縮合物型のエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセロールの脂肪酸エステル、プロピレングリコールの脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドおよびポリオキシエチレンアルキルアミンオキシド、が挙げられる。例えば、エトキシ化モノアルキルまたはジアルキルフェノールを用いることができる。これらのノニオン性界面活性剤または分散剤は、単独で、または前記のアニオン性およびカチオン性分散剤と組み合わせで、用いることができる。
【0051】
また、分散剤は、天然ポリマーまたは合成ポリマー分散剤であることができる。天然分散剤の具体的な例としては、タンパク質、例えば膠、ゼラチン、カゼインおよびアルブミン;天然ゴム、例えばアラビアゴムおよびトラガカントゴム;グルコシド、例えばサポニン;アルギン酸、およびアルギン酸誘導体、例えばプロピレングリコールアルギネート、トリエタノールアミンアルギネート、およびアンモニウムアルギネート;ならびにセロース誘導体、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびエチルヒドロキシセルロール、が挙げられる。合成ポリマー分散剤を含むポリマー分散剤の具体的な例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリルもしくはメタクリル樹脂(しばしば「(メタ)アクリル」と記される)、例えばポリ(メタ)アクリル酸、アクリル酸−(メタ)アクロニトリル共重合体、(メタ)アクリル酸カリウム−(メタ)アクロニトリル共重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体および(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体;スチレン−アクリルもしくはメタクリル樹脂、例えばスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体;スチレン−マレイン酸共重合体;スチレン−マレイン酸無水物共重合体、ビニルナフタレン−アクリルもしくはメタクリル酸共重合体;ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体;ならびに酢酸ビニル共重合体、例えば酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体および酢酸ビニル−アクリル酸共重合体;ならびにそれらの塩、が挙げられる。
【0052】
また、湿潤剤および水溶性有機化合物を、特には、ノズルの目詰まりを防ぐ目的で、ならびに紙への浸透(浸透剤)、向上した乾燥性(乾燥促進剤)、および耐コックリング(anti-cockling)性を与えるように、本発明のインクジェットインク組成物に加えてもよい。用いることができる湿潤剤と他の水溶性化合物の具体的な例としては、低分子量グリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールおよびジプロピレングリコール;約2〜約40個の炭素原子を含むジオール、例えば、1,3−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、1,5−へキサンジオール、2,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール)、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、1,2,6−へキサントリオール、ポリ(エチレン−コ−プロパン)グリコールなど、ならびにそれらの、エチレンオキシドを含めた、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを含めたアルキレンオキシドとの反応生成物;約3〜約40個の炭素原子を含むトリオール誘導体、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−へキサントリオールなど、ならびにそれらの、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドおよびそれらの混合物を含めたアルキレンオキシドとの反応生成物;ネオペンチルグリコール(1,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール)など、ならびにそれらと、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを広範囲な分子量の材料を形成するためにいずれかの所望のモル比で含んだアルキレンオキシシドとの反応生成物;チオジグリコール;ペンタエリスリトールおよび低級アルコール、例えばエタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、およびtert−ブチルアルコール、2−プロピル−1−オール(プロパルギルアルコール)、2−ブテン−1−オール、3−ブテン−2−オール、3−ブチン−2−オール、およびシクロプロパノール;アミド、例えばジメチルホルムアルデヒドおよびジメチルアセトアミド;ケトンもしくはケトアルコール、例えばアセトンおよびジアセトンアルコール;エーテル、例えば、テトラヒドロフランおよびジオキサン;セロソルブ、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルおよびエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはモノエチル)エーテル;カルビトール、例えばジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびジエチレングリコールモノブチルエーテル;ラクタム、例えば2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンおよびε−カプロラクタム;尿素および尿素誘導体;分子内塩、例えばベタインなど;前記の材料のチオ(硫黄)誘導体、例えば1−ブタンチオール;t−ブタンチオール 1−メチル−1−プロパンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール;2−メチル−2−プロパンチオール;チオシクロプロパノール、チオエチレングリコール、チオジエチレングリコール、トリチオ−もしくはジチオ−ジエチレングリコールなど;ヒドロキシアミド誘導体、例えばアセチルエタノールアミン、アセチルプロパノールアミン、プロピルカルボキシエタノールアミン、プロピルカルボキシプロパノールアミンなど;前記の材料とアルキレンオキシドとの反応生成物;ならびにそれらの混合物、が挙げられる。更なる例としては、サッカリド、例えばマルチトール、ソルビトール、グルコノラクトンおよびマルトース;多価アルコール、例えばトリメチロールプロパンおよびトリメチロールエタン;N−メチル−2−ピロリドン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン;約2〜約40個の炭素原子を含むスルホキシド誘導体;例えばジアルキルスルフィド(対称の、および非対称のスルホキシド)、例えばジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、アルキルフェニルスルホキシドなど;ならびに約2〜約40個の炭素原子を含むスルホン誘導体(対称の、および非対称のスルホン)、例えばジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、スルホラン(テトラメチレンスルホン、環状スルホン)、ジアルキルスルホン、アルキルフェニルスルホン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、ジエチルスルホン、エチルプロピルスルホン、メチルフェニルスルホン、メチルスルホラン、ジメチルスルホランなど、が挙げられる。このような材料は、単独で、または組み合わせて用いることができる。
【0053】
また、殺生物剤および/または殺菌剤を、本発明のインクジェットインク組成物に加えることができる。殺生物剤は、細菌の成長を妨げるのに重要であり、何故ならば、細菌はしばしばインクノズルよりも大きく、そして目詰まり、ならびに他の印刷上の問題を起こす可能性があるからである。有用な殺生物剤の例としては、ベンゾアートもしくはソルベート塩、およびイソチアゾリノンが挙げられるが、それらには限定されない。
【0054】
また、種々のポリマー結合剤を、この組成物の粘度を調製するため、ならびに他の所望の性質を与えるために、本発明のインクジェットインク組成物と組み合わせて用いることができる。好適なポリマー結合剤としては、水溶性ポリマーおよびコポリマー、例えばアラビアゴム、ポリアクリレート塩、ポリメタクリレート塩、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピレンセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリジノン、ポリビニルエーテル、デンプン、多糖、ならびに、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドで誘導体化された、またはされていないポリエチレンイミン;などが挙げられるが、それらには限定されない。水溶性ポリマー化合物の更なる例としては、上記の種々の分散剤または界面活性剤が挙げられ、例えば、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アルキルアクリレート三元共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アルキルアクリレート三元共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリルアクリレート三元共重合体、スチレ−マレイン酸半エステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アルギン酸、ポリアクリル酸またはそれらの塩およびそれらの誘導体、が挙げられる。更に、このバインダーは、分散液またはラテックスの形態で、加えるか、または存在していてよい。例えば、このポリマー結合剤は、アクリレートもしくはメタクリレート共重合体のラテックスであっても良く、または水分散性のポリウレタンもしくはポリエステルであってもよい。
【0055】
また、本発明のインクジェットインク組成物のpHを制御または調製するための種々の添加剤を用いることができる。好適なpH調整剤としては、種々のアミン、例えばジエタノールアミンおよびトリエタノールアミン、ならびに種々のヒドロキシド試薬が挙げられる。ヒドロキシド試薬は、OHイオンを含むいずれかの試薬、例えばヒドロキシド対イオンを有する塩である。例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、および水酸化テトラメチルアンモニウムが挙げられる。他の水酸化物塩、ならびにヒドロキシド試薬の混合物もまた用いることができる。更に、水性媒体中でOHイオンを発生する、他のアルカリ試薬もまた、用いることができる。例としては、炭酸塩、例えば炭酸ナトリウム、重炭酸塩、例えば重炭酸ナトリウム、およびアルコキシド、例えばナトリウムメトキシド、およびナトリウムエトキシドが挙げられる。緩衝剤もまた加えることができる。
【0056】
更に、本発明のインクジェットインク組成物には、カラーバランスを変更し、そして光学濃度を調整するために、慣用の色素を更に加えることができる。このような色素としては、食用色素、FD&C色素、酸性染料、直接染料、反応性染料、フタロシアニンスルホン酸の誘導体、例えば銅フタロシアニン誘導体、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩、リチウム塩など、が挙げられる。
【0057】
インクジェット組成物は、本発明の改質顔料について上記したような方法を用いて、精製および/または分級することができる。所望の対イオン交換工程もまた、用いることができる。従って、望まれない不純物または望まれない大粒子は、取り除くことができ、良好な総合的性質を備えたインクを生成することができる。
【0058】
本発明は、更に、種々のインクジェットインク組成物を含み、かつ本発明のインクジェットインク組成物を含む、インクジェットインクセットに関する。このセットのインクジェットインク組成物は、当技術分野で知られているものとは多少なりとも異なっていてもよい。例えば、このインクジェットインクセットは、異なる種類および/または色の顔料を含むインクジェットインク組成物を含む、例えば、シアン顔料を含むインクジェットインク組成物、マゼンタ顔料を含むインクジェットインク組成物、および/または黒顔料を含むインクジェットインク組成物を含むことができる。また、他の種類のインクジェットインク組成物、例えば、基材上にインクジェットインク組成物を定着するために設計された試薬を含む組成物、も用いることができる。他の組合せが、当技術分野で知られている。
【0059】
本発明が、以下の例によって更に明らかにされるが、これらは本来、例示のためだけを意図している。
【実施例】
【0060】
以下の例のそれぞれにおいては、特に断りのない限り、平均体積顔料粒子径(mv)は、Microtrac Inc.によって製造されたNanotrac 250動的光散乱粒子分析器を用いて測定した。大粒子計数(LPC)は、PSS NICOMPの光学的粒子分析計である、Accusizer 780を用いて測定した。表面張力は、Kruss K-10デジタル張力計を用いて測定した。粘度は、Brookfield LV-DVII+ビスコメータを用いて測定した。ナトリウム数(Na)は、イオン選択性電極を用いて測定した。ポリマー/顔料比は、以下の式を用いて計算した。
【0061】
【数1】

【0062】
式中、%固形分は、分散液を110℃の炉中で加熱し、そして残った固体の質量を測定することによって測定した。%顔料は、UV−可視スペクトル分析法によって測定した。希釈した分散液の550nmにおける吸収を測定し、そして既知の%顔料で作った標準溶液と比較した。
【0063】
例1〜2
以下の例は、本発明の態様に関しており、非反応性希釈剤は、酸性官能基を含まない水溶性ポリマーである。
【0064】
例1
66℃に加熱され、60rpmで回転するローラー羽根を装備されたBrabender kneaderに、Black Pearls(登録商標)700カーボンブラック(26g、Cabot Corporationから商業的に入手可能である)、水(44g)、メタンスルホン酸(2g)、および4−アミノベンジルアミン(4ABA、1.25g)を加えた。亜硝酸ナトリウム溶液(5gの水中に0.72gの固体)を、この混練混合物に、30分間にわたって加え、そしてこの混合物を更に30分間反応させて、ベンジルアミン官能基が結合されているカーボンブラックを含む改質顔料を形成させた。
【0065】
これに、水酸化ナトリウム水溶液(0.83gの水酸化ナトリウムが2gの水中に溶解されている)を加えた。温度を、85℃まで上げて、そして26gのポリエチレングリコールジメチルエーテル(MW 2000)を、非反応性希釈剤として加えた。100℃にまで加熱した後に、13gのJoncryl 683(BASFから入手可能なスチレンアクリル酸共重合体で、質量平均分子量8000と酸価165mgKOH/gポリマー、を有している)を加えた。ポリマーに対する非反応性希釈剤の質量比は、2:1であり、そして改質顔料に対するポリマーと非反応性希釈剤の質量比は、約3:1であった。結果として得られた反応混合物を、次いで170℃に加熱し、そして60分間保持して、ポリマー改質顔料と非反応性希釈剤を含む混合物を生成させた。結果として得たこの混合物を冷却し、そしてブラベンダーから、脆い固体として取り出した。60.81gのこの混合物を、627.5gの水中に、25.12gの水酸化ナトリウムと共に、Silverson商標の回転子−固定子装置(rotor-stator devices)を用いて、4000rpmで、90分間で、分散させた。この分散液を、ダイアフィルトレーションによって250mLに濃縮して、そして次いでダイアフィルトレーションによって、2.5リットルの0.1M水酸化ナトリウム溶液、次いで1.25リットルの水で精製した。ダイアフィルトレーションの間に、水溶性である非反応性希釈剤を除去した。ポリマー改質顔料の水性分散液である、結果として得られた分散液を、次いで超音波処理して、そして平均体積粒子径(mV)が171nm、大粒子(>0.5ミクロン)計数(LPC)が5.6×10/cc、およびナトリウム数が8355ppmを有することを見出した。TGAによるポリマー含量は、15.5%であった。
【0066】
例2
60℃に加熱され、40rpmで回転するローラー羽根を装備されたBrabender kneaderに、例1中に記載した改質カーボンブラックを80g、非反応性希釈剤としてCarbowax Sentry PE68(Dowから入手可能な低分子量水溶性ポリエチレングリコール)を125g、およびスチレンアクリル酸(Joncryl 683、質量平均分子量4000および酸価165mgKOH/gポリマー、を有している)を125g、加えた。ポリマーに対する非反応性希釈剤の質量比は、1:1であり、そして改質含量に対する、ポリマーと非反応性希釈剤の質量比は、約3:1であった。結果として得られた反応混合物を、次いで176℃に加熱し、そして羽根を60rpmで回転させて、60分間保持して、ポリマー改質顔料と非反応性希釈剤を含む混合物を生成させた。結果として得たこの混合物を冷却し、そしてブラベンダーから、脆い固体として取り出した。40.2gのこの混合物を、364.7gの1M水酸化ナトリウム溶液中に、Silverson商標の回転子−固定子装置(rotor-stator devices)を用いて、4000rpmで、90分間で、分散させた。この分散液を、ダイアフィルトレーションによって250mLに濃縮して、そして次いでダイアフィルトレーションによって、2.5リットルの0.1M水酸化ナトリウム溶液、次いで1.25リットルの水で精製した。ダイアフィルトレーションの間に、水溶性である非反応性希釈剤を取り除いた。ポリマー改質顔料の水性分散液である、結果として得られたこの分散液を、2%固形分に希釈し、2時間に亘って4500gで遠心分離し、そして次いでダイアフィルトレーションによって23.1%固形分まで濃縮した。これが、平均体積粒子径(mv)が166nm、大粒子(>0.5ミクロン)計数(LPC)が2.0×10/cc、およびナトリウム数が9306ppmを有することを見出した。TGAによるポリマー含量は、18.5%であった。
【0067】
例3〜5
以下の例は、本発明の具体的な態様に関しており、ポリマー改質顔料は、低酸価を有するポリマーを用いて、低粘度混合条件下で調製された。
【0068】
これらの例のそれぞれでは、下記のように調製した改質カーボンブラックを用いた。Black Pearls(登録商標)880カーボンブラック(700g、Cabot Corporationから商業的に入手可能である)、水(659g)、メタンスルホン酸(400gの水中に20.2gを溶解した)、および3−アミノベンジルアミン(3ABA、13.5g、0.15ミリモル/g処理剤の水準)を、高固形分型Processall混合機中で混合し、70℃に加熱し、そして15分間混合した。亜硝酸ナトリウム溶液(60mLの水中に7.9gを溶解した)を30分間にわたって反応器中に加えて、ベンジルアミン官能基が結合されているカーボンブラックを含む改質顔料を、40%固形分の顔料スラリーとして形成し、これを更なる精製なしで用いた。
【0069】
ポリマー改質顔料を、下記の一般的手順を用いて、この改質顔料、ポリマーおよび非反応性希釈剤を混合することによって調製した。これらの例のそれぞれでは、ポリマーに対する非反応性希釈剤の質量比は、6.5:1であり、そして改質顔料に対するポリマーと非反応性希釈剤の質量比は、3:1であった(従って、改質顔料に対するポリマーの質量比は、0.4:1であった)。これらの成分の具体的な種類およびそれぞれの例の条件は、下記の表1中に示した(示したトルク値は、50ワット以下の動力を用いた攪拌条件を表している)。
【0070】
【表1】

【0071】
60rpmで回転しているローラー羽根を装備されたHaake rheomix 3000pを130℃に加熱した。高温になったら、2000の分子量を有するポリエチレングリコールジメチルエーテル(PEGDME 2000)182gを非反応性希釈剤として加え、そして溶融させた。このPEGDME 2000に、これも溶融させた28gのポリマーを加えた。例3および4では、ポリマーはJoncryl 586であり、これは、4600の質量平均分子量と108gKOH/gポリマーの酸価を有するスチレン−アクリル酸共重合体であり、そして、例5では、ポリマーは、30000の質量平均分子量と95gKOH/gポリマーの酸価を有するスチレン−アクリル酸エステル−アクリル酸ポリマーである、Joncryl 99であった。これに、上記の改質顔料分散液(乾燥量基準で70gの改質顔料)をゆっくりと加えて、水を除去させた。これらの成分が混合されたら、結果として得られた反応混合物は極めて流動性(すなわち、低粘度混合物)であることが見出され、そしてトルクの上昇は観察されなかった(すなわち、出力の増加は必要なかった)。この反応混合物を、60rpmおよび130℃で、1時間に亘り反応させ、そして、ポリマー改質顔料と非反応性希釈剤を含むこの混合物を冷却させた。この混合物は、Haakeから削り取れ、そして収集できるほどに脆い蝋質の固体に固まった。
【0072】
Waringの市販の混合機(型番、51BL20)を用いて、この蝋状の混合物を、過粉砕しないように、そしてこの混合物中の非反応性希釈剤が溶融しないように注意しながら、粉末に粉砕した。化学量論的量の水酸化ナトリウム(14.73g)と残りに水を加えて、この混合物の20%固形分の水性分散液を作った。この分散液を、この混合機から取り出し、そして、60rpmに設定された混合羽根で90分間混合しながら、pHを、水酸化ナトリウムで12.5に調整した。このpHは、精製の間、維持した。この混合物の分散液を、Misonex s-4000を用いて、40分間、そして合計で430000ジュールで、超音波処理し、そして6.5倍の体積の水でダイアフィルトレーションし、非反応性希釈剤を除去して、そして208nmの平均体積粒子径(mv)を有するポリマー改質顔料の分散液を生成させた。この分散液を、次いで、約900000ジュールで、2時間にわたり超音波処理し、13倍の体積の水でダイアフィルトレーションし、Beckman L80を用いて4000rpmで、30分間にわたり遠心分離し、そして0.5ミクロンのPallろ紙を用いてろ過した。結果として得られたポリマー改質顔料の分散液の性質を、下記の表2中に示した。
【0073】
【表2】

【0074】
これらの結果は、ポリマー改質顔料が、低酸価を有するポリマーを用いた本発明の方法を用いて調製することができ、安定な水性分散液をもたらすことを示している。これらの安定な水性分散液は、良好な総合的性質を有する本発明のインクジェットインク組成物を配合するのに用いることができることが期待される。
【0075】
例6〜7
以下の例は、本発明の具体的な態様に関し、ポリマー改質顔料は、低酸価を有するポリマーを用いて、低粘度混合条件の下で調製される。
【0076】
これらの例のそれぞれでは、3−アミノベンジルアミンを1.0ミリモル/g処理剤の水準で用いた以外は、上記の例3〜5中に記載したように、改質カーボンブラック分散液を調製した。ポリマー改質顔料は、以下の一般的手順を用いて、この改質顔料、ポリマー、および非反応性希釈剤を混合することによって調製した。これらの例のそれぞれでは、ポリマーは、Joncryl 99であり、これはスチレン−アクリル酸エステル−アクリル酸ポリマーであり、30000の質量平均分子量および95gKOH/gポリマーの酸価を有しており、そして非反応性希釈剤は、PEGDME 2000であり、これは2000の分子量を有するポリエチレングリコールジメチルエーテルであった。例6では、ポリマーに対する非反応性希釈剤の質量比は16:1であり、そして改質顔料に対するポリマーと非反応性希釈剤の質量比は、4.25:1であった(従って、改質顔料に対するポリマーの質量比は、0.25:1であった)。例7では、ポリマーに対する非反応性希釈剤の質量比は10:1であり、そして改質顔料に対するポリマーと非反応性希釈剤の質量比は、4.4:1であった(従って、改質顔料に対するポリマーの質量比は、0.4:1であった)。
【0077】
ジャケット付のステンレス鋼ビーカーに、非反応性希釈剤を容れ、そしてディスパーザー ブレート(disperser blade)を用いて攪拌した。このビーカーを、オイルヒーターを用いて120℃に加熱した。これにポリマーを加えて、溶融させた。一旦溶融したら、水を除去させながら、改質顔料分散液をゆっくりと加えた。これらの成分のすべてが混合されたら、温度を135℃に上昇させ、そして1時間保持した。この保持の最後に、温度を85℃に低下させ、そして60℃超に加熱した1当量の塩基(水に溶解させ、水対改質顔料が約4:1)をこの反応混合物に加え、これを次いで85℃に0.5時間保持した。
【0078】
室温まで冷却した後に、結果として得た、ポリマー改質顔料と非反応性希釈剤を含む混合物を、Misonex s-4000を用いて1時間にわたって超音波処理し、125ミクロンの篩目を通して注ぎ、そして20倍の体積の水でダイアフィルトレーションして、非反応性希釈剤を除去した。ダイアフィルトレーションの後に、結果として得た分散液を再度、Misonex s-4000を用いて、130nm未満の体積平均粒径にまで超音波処理し、Beckman L80を用いて遠心分離し、そして0.5ミクロンのPallろ紙を用いてろ過した。結果として得られたポリマー改質顔料の分散液の性質を、下記の表3中に示した。
【0079】
【表3】

【0080】
これらの結果は、ポリマー改質顔料がは、低酸価を有するポリマーを用いた低粘度混合条件下で、本発明の方法を用いて調製することができ、安定な水性分散液をもたらすことができることを示している。ポリマー改質顔料のこれらの安定な水性分散液は、良好な総合的性質を有する本発明のインクジェットインク組成物を配合するのに用いることができることが期待される。
【0081】
例8
以下の例は、本発明の具体的な態様に関し、ポリマー改質顔料は、低酸価を有するポリマーを用いた低粘度混合条件下で調製される。
【0082】
改質カーボンブラック分散液を、上記の例3〜5中に記載したように調製した。ポリマー改質顔料は、上記の例6〜7中に記載した一般的手順を用いて、この改質顔料、ポリマー、および非反応性希釈剤を混合することによって調製した。この例では、ポリマーは、Joncryl 586であり、これはスチレン−アクリル酸共重合体であり、4600の質量平均分子量および108gKOH/gポリマーの酸価を有しており、そして非反応性希釈剤は、PEGDME 2000であり、これは2000の分子量を有するポリエチレングリコールジメチルエーテルであった。ポリマーに対する非反応性希釈剤の質量比は10:1であり、そして改質顔料に対するポリマーと非反応性希釈剤の質量比は、4.4:1であった(従って、改質顔料に対するポリマーの質量比は、0.4:1であった)。
【0083】
結果として得られたポリマー改質顔料の分散液の性質を、下記の表4中に示した。
【0084】
【表4】

【0085】
これらの結果は、ポリマー改質顔料が、低酸価を有するポリマーを用いた低粘度混合条件下で、本発明の方法を用いて調製することができ、安定な水性分散液をもたらすことができることを示している。ポリマー改質顔料のこの安定な水性分散液は、良好な総合的性質を有する本発明のインクジェットインク組成物を配合するのに用いることができることが期待される。
【0086】
比較例1
ポリマー改質顔料分散液を、ポリマーがVancryl 68(16800の質量平均分子量と160mgKOH/gポリマーの酸価を有するスチレン−アクリル酸共重合体)であり、高い酸価のポリマーであること以外は、上記の例4中に記載した手順を用いて調製した。結果として得た比較のポリマー改質顔料の分散液の性質を、下記の表5中に示した。
【0087】
【表5】

【0088】
比較例2
ポリマー改質顔料を、非反応性希釈剤が存在していないこと以外は、上記の例4に記載したのと同様の手順を用いて調製した。顔料に対するポリマーの質量比は3:1であった。しかしながら、Joncryl 586でのダイアフィルトレーション実験の結果を基に、このポリマーは、ダイアフィルトレーションによる除去が困難であることが見出された。30倍の体積までの水を用いたJoncryl 586水溶液のダイアフィルトレーションによっては、ポリマーの80%だけが除去することができ、そして水酸化ナトリム水溶液を用いて、更に少ない水準が除去された。顔料の存在下では、ポリマーのより少ない水準が除去されることが予想される。従って、この比較例の改質顔料を形成するには過剰のポリマーが必要とされるので、そしてダイアフィルトレーションによっては80%よりずっと少量しか除去されないので、この低酸性ポリマーを用いて調製された、結果として得られるポリマー改質顔料は、結合されていないポリマーの相当な量を含めて、少なくとも0.6:1の、改質顔料に対するポリマーの質量比を有していることが予想される。このような過剰のポリマーの存在は、この改質顔料を含むインクジェットインク組成物の性能特性に負の影響を有することが予想される。
【0089】
例9および比較例3
本発明のインクジェットインク組成物を、例4のポリマー改質顔料の水性顔料分散液を用いて調製した。更に、比較のインクジェットインク組成物を、比較例1の比較のポリマー改質顔料の水性分散液を用いて調製した。これらのインクジェットインク組成物のそれぞれに用いた配合を、下記の表6中に示した(顔料の質量%は、乾燥量基準である)。
【0090】
【表6】

【0091】
サーマルインクジェットインク組成物を、Canon iP4000サーマルインクジェットプリンタを用いて印刷した。それぞれのサーマルインクジェットインク組成物は、Canon適合性カートリッジ(InkJet Warehouseから入手可能)中に充填し、そして以下のプリンタ設定で印刷した:印刷品質は高、普通紙、グレースケール、そして非写真仕様を選択した。画像は、マグネシウム塩を含む定着剤(15質量%のトリメチロールプロパン、15質量%のポリエチレングリコール(200の質量平均分子量を有する)、0.2質量%の酢酸リチウム、18質量%の硝酸マグネシウム、1質量%のSurfynol 465、および50.8質量%の水)でコーティングされたXerox 4200(X4200)およびXerox 4200上に、この定着剤組成物を、この印画紙に、EpsonプリンタおよびC88カートリッジ(X4200Mg)を用いて適用することによって、印刷した。結果として得られた印刷画像の光学濃度(OD)を、24時間後に測定し、そして下記の表7中に示した。
【0092】
【表7】

【0093】
これらの結果が示すように、高酸価ポリマーを用いた比較のポリマー改質顔料を含む、比較のインクジェットインク組成物を印刷することによって生成された画像は、低酸価ポリマーを用いて調製された本発明のポリマー改質顔料を含む、本発明のインクジェットインク組成物を印刷することによって生成された画像よりも、低い光学濃度を有していた。また、上記の比較例2によって示されるように、同じ低酸性ポリマーを用いて調製されたポリマー改質顔料を含むインクジェットインク組成物は、このポリマー改質顔料は、精製して過剰のポリマーを取り除くことができないために、調製することができなかった。
【0094】
例10
以下の例は、本発明の方法の具体的な態様に関し、改質顔料が、ポリマーと非反応性希釈剤の存在下に調整された。
【0095】
60℃に加熱され、44rpmで回転するローラー羽根を装備されたBrabender kneaderに、90gのBlack Pearls(登録商標)700カーボンブラック(Cabot Corporationから商業的に入手可能である)、非反応性希釈剤として135gのCarbowax Sentry PE68(Dowから入手可能な低分子量の水溶性ポリエチレングリコール)、18.5gのスチレン−アクリル酸共重合体(4000の数平均分子量と165mgKOH/gポリマーの酸価を有するJoncryl 683)、6.92gのメタンスルホン酸、および4.32gの4−アミノベンジルアミン(4−ABA)、を加えた。水(15.6g)を加えて冷却し、そして混合させた。亜硝酸ナトリウムの水溶液(4gの水中に2.48gの固体)を、この混練混合物に、30分間にわたって加えた。更なる30分間の後に、改質顔料を形成するために、2.88gの水酸化ナトリウム(水中に溶解した)をこの混練混合機に加え、次いで更に26.5gのスチレンアクリル酸共重合体(Joncryl 683)加えた。この混合物を、150℃に加熱し、そして60分間保持して、ポリマー改質顔料と非反応性希釈剤を含む混合物を生成し、これを冷却し、そしてブラベンダーから、脆い固体として取り出した。60.81gのこの混合物を、Silverson商標の回転子−固定子装置(rotor-stator devices)を用いて、4000rpmで、90分間で、400gの1M水酸化ナトリム溶液中に分散した。この分散液を、60分間にわたり超音波処理し、そして次いでダイアフィルトレーションによって、4リットルの0.1M水酸化ナトリウム溶液で、次いで2リットルの水で、精製した。ダイアフィルトレーションの間に、水溶性である非反応性希釈剤を除去した。ポリマー改質顔料の水性分散液である、結果として得られたこの分散液は、134nmの平均体積粒径(mv)、1.1×10/ccの大粒子(>0.5ミクロン)計数、および6166ppmのナトリウム数を有することが見出された。TGAによるポリマー含量は、11.0%であった。
【0096】
上述した本発明の好ましい態様の記載は、例示と説明の目的のために提示したものであある。網羅的であること、または本発明を開示した厳密な形に限定することを意図したものではない。修正および変更が、上記の教示を踏まえて可能であり、または本発明の実行を通して取得されることができる。これらの態様は、当業者が、本発明の原理とその実際的な応用を、想定される具体的な用途に適合するように、本発明を種々の態様で、そして種々の変更を加えて用いることができるように、説明するために選択され、そして記載されている。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物によって規定されることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー改質顔料の調製方法であって、以下の工程、
i)いずれかの順番で、少なくとも1つの反応性基が結合されている顔料を含む改質顔料、少なくとも1つの官能基を含むポリマー、および非反応性希釈剤を混合して、反応性混合物を形成する工程であって、該ポリマーの該官能基は該改質顔料の該反応性基と反応することができるものであり、かつ該非反応性希釈剤および該ポリマーは、ポリマー1部に対して非反応性希釈剤が少なくとも1部の比率で混合される、工程;
ii)該反応混合物中の該ポリマーと該改質顔料を反応させて、該ポリマー改質顔料および該非反応性希釈剤を含む混合物を形成する工程;ならびに、
iii)該非反応性希釈剤を該混合物から除去して、該ポリマー改質顔料を形成する工程であって、該ポリマー改質顔料は少なくとも1つのポリマー基が結合されている顔料を含んでおり、かつ該ポリマー基は該ポリマーを含んでいる、工程、
を含んでなる方法。
【請求項2】
工程i)、ii)またはそれらの両方が、50ワット以下の動力での攪拌によって起こる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記改質顔料が、少なくとも1つの有機基が結合されている顔料を含んでおり、該有機基が、前記反応性基を含んでいる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記顔料が、青顔料、黒顔料、茶顔料、シアン顔料、緑顔料、白顔料、紫顔料、マゼンタ顔料、赤顔料、橙顔料、黄顔料、またそれらの混合物を含んでいる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記顔料が、カーボンブラックである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記改質顔料の前記反応性基は、求核基であり、かつ前記ポリマーの前記官能基は親電子基である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記改質顔料の前記反応性基が、親電子基であり、かつ前記ポリマーの前記官能基が、求核基である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記改質顔料の前記反応性基または前記ポリマーの前記官能基が、カルボン酸基、無水物基、アミン基、またはそれらの塩である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記改質顔料の前記反応性基が、アルキルアミンもしくはその塩であるか、または硫酸アルキルである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマーの前記官能基が、カルボン酸基もしくはその塩であるか、または無水物基である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマーが、溶融ポリマーの形態にある、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマーが、約30〜200の範囲の酸価を有している、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記ポリマーが、約30〜100の範囲の酸価を有している、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマーが、約100〜150の範囲の酸価を有している、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマーが、約150〜200の範囲の酸価を有している、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマーが、約50000以下の質量平均分子量を有している、請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマーが、約1000以上の質量平均分子量を有している、請求項1記載の方法。
【請求項18】
工程i)において、前記非反応性希釈剤および前記ポリマーが、ポリマー1部に対して非反応性希釈剤が少なくとも約3部の比率で混合される、請求項1記載の方法。
【請求項19】
工程i)において、前記非反応性希釈剤および前記ポリマーが、ポリマー1部に対して非反応性希釈剤が少なくとも約10部の比率で混合される、請求項1記載の方法。
【請求項20】
工程i)において、前記非反応性希釈剤、前記ポリマー、および前記改質顔料が、改質顔料1.0部に対して、非反応性希釈剤およびポリマーが少なくとも約1.0部の比率で混合される、請求項1記載の方法。
【請求項21】
工程i)において、前記非反応性希釈剤、前記ポリマー、および前記改質顔料が、改質顔料1.0部に対して、非反応性希釈剤およびポリマーが少なくとも約6.5部の比率で混合される、請求項1記載の方法。
【請求項22】
前記非反応性希釈剤が、水に非混和性のオイルもしくは樹脂、約120℃以下の融点を有する無機塩、水溶性の非酸性ポリマー、または150℃以上の沸点を有する非水性溶媒である、請求項1記載の方法。
【請求項23】
前記非反応性希釈剤を除去する工程が、水性溶媒を前記混合物に加えて、前記ポリマー改質顔料の水性分散液を形成することを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項24】
工程iii)において、前記非反応性希釈剤が、相分離によって除去される、請求項1記載の方法。
【請求項25】
工程iii)において、前記非反応性希釈剤が、ろ過によって除去される、請求項1記載の方法。
【請求項26】
工程iii)において、前記非反応性希釈剤が、ダイアフィルトレーションによって除去される、請求項1記載の方法。
【請求項27】
工程iii)において、前記非反応性希釈剤が、蒸留によって除去される、請求項1記載の方法。
【請求項28】
前記ポリマー改質顔料が、液体ビヒクル中の分散液の形態である、請求項1記載の方法。
【請求項29】
前記分散液が、水性分散液である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
工程i)およびii)が、同時に起こる、請求項1記載の方法。
【請求項31】
ポリマー改質顔料の調製方法であって、以下の工程、
i)いずれかの順番で、顔料、芳香族アミン、ジアゾ化剤、少なくとも1つの官能基を含むポリマー、および非反応性希釈剤を混合して、反応性混合物を形成する工程であって、該非反応性希釈剤および該ポリマーが、ポリマー1部に対して非反応性希釈剤が少なくとも約1部の比率で混合される、工程;
ii)該反応混合物中の該顔料、該芳香族アミン、および該ジアゾ化剤を反応させて、少なくとも1つの反応性基が結合されている顔料を含む改質顔料を形成する工程であって、該改質顔料の該反応性基が、該ポリマーの該官能基と反応することができるものである、工程;
iii)該反応混合物中の該ポリマーと該改質顔料を反応させて、該ポリマー改質顔料と該非反応性希釈剤を含む混合物を形成する工程;ならびに、
iv)該非反応性希釈剤を該混合物から除去して、該ポリマー改質顔料を形成する工程であって、該ポリマー改質顔料が少なくとも1つのポリマー基が結合されている顔料を含んでおり、かつ該ポリマー基が該ポリマーを含んでいる、工程、
を含んでなる、方法。
【請求項32】
工程ii)およびiii)が、同時に起こる、請求項31記載の方法。
【請求項33】
工程i)、ii)およびiii)が、同時に起こる、請求項31記載の方法。
【請求項34】
少なくとも1つのポリマー基が結合されている顔料を含むポリマー改質顔料であって、該ポリマー改質顔料が、少なくとも1つの反応性基が結合されている顔料を含む改質顔料と、少なくとも1つの官能基を含むポリマーとの、反応生成物を含み、該ポリマーの該官能基が、該改質顔料の該反応性基と反応し、該ポリマーは、約30〜110の範囲の酸価を有しており、かつ該ポリマー改質顔料が、改質顔料に対するポリマーの2:1以下の質量比を有している、ポリマー改質顔料。
【請求項35】
液体ビヒクルおよび、少なくとも1つのポリマー基が結合されている顔料を含むポリマー改質顔料を含むインクジェットインク組成物であって、該ポリマー改質顔料が、少なくとも1つの反応性基が結合されている改質顔料と、少なくとも1つの官能基を含むポリマーとの、反応生成物であり、該ポリマーの該官能基が、該改質顔料の該反応性基と反応し、該ポリマーは、約30〜110の範囲の酸価を有しており、かつ該ポリマー改質顔料が、改質顔料に対するポリマーの2:1以下の質量比を有している、インクジェットインク組成物。

【公表番号】特表2012−512935(P2012−512935A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542106(P2011−542106)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/006315
【国際公開番号】WO2010/080092
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】