ポリマー材料
1つまたは2つ以上の表面を有する本体構造を含む機器が提供され、この表面の少なくとも1つは、直鎖ポリマーの水溶解度が、pHトリガーにおいて、第1の水溶解度から第2の水溶解度へ増加する直鎖ポリマーを含むpH感知層を含む。機器を形成する方法、および感染を予防または緩和する方法がまた記載されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として医療用機器の分野に関する。さらに具体的に言うと、本発明は、pH感知分解性層を含む医療用機器、pH感知層を含む医療用機器の製造方法および、pH感知分解性層を含む医療用機器の使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
患者の体に挿入される医療用機器の使用は、病院および養護施設内でのヘルスケア管理において習慣になっているものである。例えば、カテーテルおよびステント等の挿入された医療用機器の使用に関連した実質的な恩恵があるが、心配なことに患者が病院にいる時間の増加およびさらに重要なことにこれらの機器の使用に関連する患者の死亡数の増加となる場合がある多くの潜在的に危険な合併症がある。これらの合併症は、主に患者の体が医療用機器の挿入に反応する様式および異物と感知するものであるために生じる。したがって患者は、多くの場合、医療用機器の挿入と関連した感染によって病気になり、そしてこれが、そうでなければ非常に効果的かつ有益である治療法の最も重大な不利益の一つとみられる。多くの場合、機器関連感染と呼ばれるものを改善することへの差し迫った必要性がある。
【0003】
典型的には、機器関連感染は、細菌付着から始まり、生物膜の形成とともに進展する。典型的にはカテーテルに定着するバクテリアおよび病原体は、尿素を分解して二酸化炭素およびアンモニアを生成させるウレアーゼを生産する。そうした分解と関連する高いpHにおいて、尿中の鉱物は付着物となる沈殿をし。カテーテルの付着物は、カテーテルが除去され、そして置き換えられなければならない頻度を増加するカテーテルへの妨害を起こす場合がある。付着物はまた、カテーテルの除去での苦痛の増加となる。カテーテル周囲の組織はまた、さらに遙かに感染されやすい。これは、長期間のカテーテル挿入を必要とする患者にとって特に問題である。重大な結果は、敗血症、腎盂腎炎およびショックを含む。
【0004】
さらに、バイオマス内の関連する病原体は、尿素のアンモニアおよび二酸化炭素への転化を通して尿をアルカリ化させるように働く強力なウレアーゼアイソザイムの発現を通して、医療機器の寿命を下げる場合がある。
【0005】
この問題を克服するための以前のアプローチは、感染に対抗するための機器への抗生物質の取り込みを含む。挿入後に、治療薬は拡散によって放出され、そして究極的には機器に隣接した体液中に局所的に存在することができ、こうして細菌付着を防止する。さらに、感染の受けやすさを減らすために機器表面を改質するような試みがなされてきた。
【0006】
集尿機器(urinary device)の使用を難しくする合併症を軽減するための試みにも関わらず、多くの問題が依然存在する。したがって、抗生物質治療および新規表面コーティングは一時的な解決を提供するが、導尿カテーテル挿入および尿道ステントに関連する唯一本当の決定的な解決は、機器の除去である。
【0007】
滑剤中でコーティングされたカテーテル等の医療用機器は公知であり。カルボン酸官能基を含む架橋したヒドロゲルを含む滑剤もまた公知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
米国特許第6306422号明細書は、架橋したポリマーヒドロゲル中にコーティングされた機器、特に導尿カテーテルを開示する。トリガーpHでは、ポリマーは水の吸収を通して膨張する。この水の吸収は、ヒドロゲルの孔サイズを大きくし、持続放出の様式で活性物の放出を高める。米国特許第6306422号明細書のポリマーヒドロゲルは完全に水不溶性のままであり、そして機器の上にコーティングされたままである。活性物は、典型的には1種または2種以上の抗生物質およびウレアーゼ阻害剤である。これらの活性物の放出は、それぞれ、細菌性表面の成長を制御し、そして付着物の形成を制御する。しかし、ウレアーゼ阻害剤の放出は、カテーテル上に既に形成された付着物を除去しない。さらに、米国特許第6306422号明細書中に開示された機器から放出された活性物は、バクテリアによって生成された生物膜を浸透できず、既存の細菌コロニーを除去できない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、合理的な生体内反応の使用を通じて感染に本来的に耐性があり、そして好ましくは抗生物質で含浸されている機器表面を開発した。特に、この機器表面は、現在利用されている材料の代替として、pH変化に応答して減ることができる減量性生体材料を含む。
【0010】
本発明の第1の形態により、少なくとも1つのpH感知分解性層を含む1つまたは2つ以上の表面を有する本体構造を含む機器が提供され、ここで、少なくとも1つのpH感知分解性層は、pH感知ポリマーを含み、pH感知分解性層は、規定されたpHにおいて制御された分解ができる。特定の態様では、機器は、複数の分解性層を含むことができる。
【0011】
本発明により、1つまたは2つ以上の表面を有する本体構造を含む機器が提供され、表面の少なくとも1つは、直鎖ポリマーを含むpH感知層を含む、直鎖ポリマーの水溶解度は、pHトリガーにおいて、第1の水溶解度から第2の水溶解度に増加する。
【0012】
好適に、この態様において、機器は、機器周囲の流体、例えば体液のpHが、規定値、から上昇するかまたは低下する、例えば、感染に応答して生理的pHから上昇または低下できる、任意の機器であることができる。
【0013】
pHトリガーにおいて、直鎖ポリマーはイオン化し、そしてこれがポリマーの水溶解度を増加させる。イオン化された直鎖ポリマーは次に、機器の周囲の水性環境に溶解し、そして機器の新しい表面が現れる。この新しい表面は、その上に何らバクテリアのコロニーを有さず、そして付着物がない。本発明の機器は、従って従来技術の効きに比較して、より長い時間の間インプラントされたままであることができる。本発明の機器の表面が、それまで大きな程度までにバクテリアのコロニーがあった表面が取り除かれ、そして新規な表面が露出するにつれて、感染および付着物のリスクがまた低下する。
【0014】
本発明の機器は、典型的には導尿カテーテルまたは導尿ステントであることができ。典型的にはそうした機器にコロニーを作るバクテリアは、ウレアーゼを放出する。尿はウレアーゼとの接触によってアンモニアおよび二酸化炭素に分解し、カテーテルの周囲の範囲のpHを実質的に高める。pHにおけるこの増加は尿からの無機物の沈殿を生じ、カテーテルの付着物を生じる。アンモニアの生産を通して生成されたpHの増加は、本発明の直鎖ポリマーがイオン化するためのトリガーとなり、そしてポリマーの水溶解度は従って増加する。直鎖ポリマーは周囲の水性環境に溶解し、そして機器の外側表面上に存在するあらゆる付着物は、直鎖ポリマーと伴に除去される。機器の新規な表面が露出される。この新規な表面にはバクテリアおよび付着物がない。
【0015】
あるいは、本発明の機器は、歯列矯正具または義歯の形態であることができる。そうした機器の細菌コロニーにより、周囲のpHは、生理的pHより低くなる。口腔中でバクテリアは酸を生成するので、より高い度合いの細菌コロニー、より多量の酸が生産され、周囲のpHを低下させる。
【0016】
本発明の直鎖ポリマーは、周囲環境のpHが生理的pH(生理的pHは、典型的には6.2である)から離れるにつれて、安定な層から制御された浸食または溶解を受ける層に変化できる、好適には、そうした浸食または溶解は、pH5.5〜pH7の範囲の終点に向かって生じる。この態様において、pH感知ポリマーは、生理的pH、例えば、pH7.0から移動した、感染のpH指標での制御された分解または浸食が可能である。
【0017】
pHトリガーは、本発明の機器周囲の目的とする環境に依存する。機器が膀胱等の中性またはアルカリ環境にインプラントされることを意図する場合、pHトリガーは、典型的には、6.5超;好適に7超;さらに好適には約7.2である。機器が胃等の酸性環境にインプラントされることを意図とする場合、pHトリガーは、典型的には6.0未満;好適に5.5未満である。
【0018】
本発明の機器の周囲の範囲のpHが、トリガーpHから離れ、そして生理的pHに動く場合、pH感知層の水溶解度は、従って低下し、そして第1の水溶解度に向かう。したがって、pH感知層の溶解または浸食速度は低下することができる。1つの態様によれば、pH感知層は、機器がバクテリアによってコロニー化された所のみで溶解するか、または浸食する。pH感知層の溶解または浸食は、機器のコロニーに依存して、開始または停止できる。
【0019】
好適に、態様において、そうしたpH感知層は、生理的pH(例えば、pH6.2)における機能性賦形剤の放出の第1速度および非生理的pH(例えば、pH7.0)における第2の速度を提供できる。通常、第1の速度は、第2の速度より低い。pH感知層の減少が生理的pHにおいて最小限であり、かつ生理的pHから離れたpHにおいて増加する態様において、機能性賦形剤の溶離は、pH感知層の浸食または溶解と相関できる。感染が生理的値から離れてpHを動かす場合があり、このように機能性賦形剤の放出が感染と相関できるので好都合である。
【0020】
好適に、好ましい態様では、直鎖ポリマーは、生体適合性である。「生体適合性」材料は、生きている組織または生きている系と、有毒でなくまたは傷付けないことによって適合する材料である。特定の態様では、機器は、生物学的に安定な層を形成する材料を含むことができる。「非生体吸収性の」または「生物学的に安定な」材料は、実質的な生体吸収がなく体内に留まるポリマーまたはコポリマー等の材料をいう。そうした層は、本発明の機器中に含まれて、機器に構造的支持を提供できる。
【0021】
好適に、態様において、直鎖ポリマーは、pHの変化に関して、構造的な変化を受け、特に直鎖ポリマーは、pHの変化でイオン化されて、直鎖ポリマーが、増加した水溶解度を有するようにさせることができる。
【0022】
本発明の機器での使用のためのポリマーは、通常、架橋であるより直鎖である。本発明の直鎖ポリマーは、pHトリガーにおいてイオン化され、直鎖ポリマーの水溶解度を大幅に増加させる。対照的に、架橋したポリマーは、pHトリガーにおいてポリマーに水を吸収させ、そして膨潤させるイオン化する。架橋したポリマーの水溶解度は、イオン化を通じて変わらず、そしてイオン化の後で、米国特許第6306422号明細書に開示されたもの等の機器上に保持される。そうした架橋したポリマーは、通常ヒドロゲルの形態である。本発明の機器の直鎖ポリマーは、通常、押出可能である。
【0023】
典型的には、pH感知層は、イオン化の前に、30wt%未満の水;通常、20wt%未満の水、好適には10wt%未満の水を吸収する。対照的に、米国特許第6306422号明細書に開示されたもの等の機器との連結した使用のための従来技術の架橋したヒドロゲルは、イオン化の前に水中で数千倍まで水を吸収する。ヒドロゲルの水溶解度は影響されず、そしてこれらのヒドロゲルは、それらの形を維持し、そして周囲の水性環境中に溶解しない。本発明の機器での使用のためのポリマーは、イオン化の前に水の吸収で膨潤することができるが、これは水溶解度の増加および周囲の水性環境への溶解を生じるイオン化の前に起こる。
【0024】
直鎖ポリマー中の構造的変化が、少なくとも6.5のpHにおいてトリガーされることを意図する場合、直鎖ポリマーは、典型的には、SO結合および/または1種または2種以上のカルボキシル基および硫酸基を含む。典型的には、直鎖ポリマーは、pH感知セルロースポリマー、例えば、セルロースエステルまたはセルロースエーテルであることができる。一態様では、直鎖ポリマーは、メタクリレートポリマーまたはメタクリレートを含むポリマーであることができる。1つの態様によれば、ポリマーは、以下の構造を有する:
【0025】
【化1】
【0026】
本発明の態様において、直鎖ポリマーは、メタクリレートポリマーおよびセルロースポリマーから選択できる。態様において、直鎖ポリマーは、例えば、Eudragit(商標)L100、S100、HPMC−AS、HTMAC−Pを含む群から選択でき、そしてこれらのポリマーの組み合わせを使用できる。pH感知層を形成するのに好適に使用できるポリマーは、例えば、信越化学、例えば、信越化学AQOAT、Degussaまたはその同類のものから得ることができるであろう。
【0027】
態様において、直鎖ポリマーは、Eudragit(商標)ポリマーであることができる。Eudragit(商標)ポリマーは、単一の系または2つの異なるタイプのブレンドとして提供されることができる。態様において、Eudragit(商標)L100、S100およびこれらのポリマーの組み合わせを使用できる。
【0028】
態様において、Eudragit(商標)L100は、6超のpH値において浸食できる層を提供するために使用できる。
【0029】
態様において、Eudragit(商標)S100は、7.0を超えるpH値において浸食する層を提供するために使用できる。
【0030】
当然のことながら、機器のpH感知層は、通常の尿の条件下でゆっくりと浸食するが、より高いpH値では急速に減少する系を生成するために、L100とS100との両方の組み合わせを使用して製造できる。異なるpH感知ポリマーの層、例えば、Eudragit(商標)L100、S100およびこれらのポリマーの組み合わせの層を、機器において異なる層が異なるpHレベルで浸食するように、機器を形成するために、使用できる。
【0031】
直鎖ポリマーにおける構造的な変化が、6.0未満のpHにおいてトリガーとなることを意図する場合、直鎖ポリマーは、典型的には、第1、第2および第3級アミン、典型的にはNH2基を含み;好適に、ポリマーは、ジエチルアミノアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレートおよび/または他のアクリレートモノマーを含む。典型的にはポリマーは、ジメチルアミノメタクリレートおよび他のアクリレートモノマーのコポリマーである。好適には、このポリマーは、商標Eudragit(商標)E100の下で販売されているポリマーである。
【0032】
上記で述べたように、本発明の機器の直鎖ポリマーの水溶解度は、pHトリガーにおいて、第1の水溶解度から第2の水溶解度に増加する。
【0033】
典型的には、ポリマーのpKaのpHにおいて、50%以上のポリマーがイオン化される。
【0034】
本発明の1つの形態によって、直鎖ポリマーの第2の水溶解度は、直鎖ポリマーの第1の水溶解度より、少なくとも200%、通常、少なくとも400%、さらに典型的には、少なくとも600%大きい。
【0035】
有利に、溶解または浸食によって、直鎖ポリマーのポリマー鎖は、溶解または浸食の前と同じモノマー単位を含み、損なわれないままである。
【0036】
本発明の機器は、pHの変化がバクテリアを有する機器のコロニーと関連する任意の機器であることができる。本発明の態様において、機器は、医療用機器、例えば、カテーテル、一時的なまたは永続的なインプラント、ステント、グラフト、修繕機器、およびインプラント可能な機器を含む体内または体外機器である。
【0037】
典型的には、機器は、カテーテル、好適に、導尿カテーテル、尿道ステント、鼻腔胃管、CAPD管、胆管ステント、歯列矯正具または義歯である。
【0038】
有利に、本発明の機器は、導尿カテーテルまたは尿道ステントである。
【0039】
pH感知層は、pH感知層の溶解または浸食と伴に放出される機能性賦形剤を含むことができる。機能性賦形剤は、好適に、クエン酸、酒石酸、コハク酸、およびフマル酸、抗菌化合物、レポフロキサシンおよびナリジクス酸、抗生物質化合物、クロルヘキシジン、ポビドンヨード、トリドサン(tridosan)、ウレアーゼ阻害剤、EDTAおよび可塑剤、例えば、クエン酸トリエチル、およびクエン酸トリブチルまたは製造または性能を促進するために使用される他の標準賦形剤等のバッファー群であることができる。
【0040】
典型的には、機能性賦形剤は、機器のインプラントの後で、維持された放出様式で放出される。1つの態様によれば、機能性賦形剤の放出速度は、pH感知層の浸食または溶解で急に増加することができる。
【0041】
機能性賦形剤は、直鎖ポリマーに直接吸着されることができ、または機器の内側に配置されることができ、またはさもなければ、リンカー分子または共有、イオン性、ファンデルワールス結合の1種または2種以上を含む他の結合手段の使用を介して協働できる。機能性賦形剤の制御された放出が起こるように、例えば、機能性賦形剤がゆっくりと長い間に溶離するように、pH感知層および/または表面は、構成されることができる。「制御された放出」は、所与の環境中で医療用機器コーティングからの利用薬または機能性賦形剤の放出の速度の変更を意味する。これは、例えば、時間放出コーティングを使用して達成できる。本発明の機器の態様において、層の異なる部分から2種または3種以上の異なる速度で、または機器の周囲のpHに依存する2種または3種以上の異なる速度で同時に治療薬を放出するように適合された層が提供される。
【0042】
態様において、機器は、機能性賦形剤、特に薬物、例えば、抗生物質を充填した感知ポリマー層を含むことができる層を含むことができる。あるいは、態様において、pHに対して制御された様式で分解するpH感知層および薬物を含む医療用機器または医療用機器コーティングは、直鎖ポリマーで結合されることができる。医療用機器の材料または材料コーティング医療用機器内に薬物を取り込むことによって、pH感知ポリマーを含む層が分解するにつれて、薬物は、徐々に失われる様式で放出される。
【0043】
好適に、態様において、pH感知層の溶解は、抗生物質の放出のトリガーとなる。
【0044】
態様において、本発明の機器は、機器に付着する細菌または機器上に病原体の成長を最小化する薬物、例えば、抗生物質を含むことができる。本発明の機器の利点は、経口で飲んだ錠剤等の薬物治療の従来の経路に比較して、感染の部位において、より遙かに高い薬物濃度を可能にすることである。
【0045】
抗生物質の放出は、機器の表面上の細菌成長を制御できる。しかし、バクテリアが機器上にコロニーを生じると、生物膜が通常生成する。抗生物質化合物は、通常そうした生物膜を浸透できず、したがってそうした細菌性生物膜の除去にはあまり効果的でない。ウレアーゼ阻害剤の放出は、付着物の成長を制御するように働くが、しかし既に形成された付着物を除去しない。本発明の機器の表面は、トリガーpHにおいて、溶解または浸食し始め、そして細菌コロニーおよび付着物は、表面と伴に除去される。新規な表面は、すべての細菌コロニーおよび付着物なしで現れる。
【0046】
実際には、本発明の機器は、いったんバクテリアに感染しても自己クリーニングでき、つまり薬物溶離は細菌付着を抑制せず、そしてその後に尿素へのウレアーゼの作用による尿の増加したpHとなり、機器の層は微生物生物膜の生成を認識でき、そして(クエン酸等の有機酸の取り込みによって制御される)制御された浸食を開始し、このように任意の付着性の塊を除去する。そのようにすることで、機器表面はクリーニングされ、そして膜中に取り込まれた機能性試薬(EDTAおよびクエン酸)は、機器/流体界面に放出されるであろう。これは、クエン酸の作用および非常に重要なことにCa2+およびMg2+金属イオンの封鎖によって尿のpHを制御するであろう。この工程は機器表面を更新し、pHを通常の値に戻し、そして機器表面に堆積する結晶の形成に関連する金属イオンを「掃討する」。
【0047】
これは、機器、そして究極的に機器が使用される期間の間、患者の感染がないままにすることを可能にする。
【0048】
機能性賦形剤の放出により、機器の細菌コロニーは、減少でき、そして機器周辺の範囲のpHは、トリガーpHから離れ、そして生理的pHに移動することができる。従って、pH感知層の水溶解度は、第1の水溶解度に向かって低下できる。
【0049】
直鎖ポリマーは、トリガーpHにおいて水を吸収し、イオン化を生じる。イオン化の速度は、工業化水の吸収速度を制御することによって、典型的には、pH感知ポリマー層の密度を制御することによって工業化できる。pH感知層中で直鎖ポリマーの密度低下は、イオン化速度の低下となる。
【0050】
イオン化の速度は、pH感知層の組成、および機器周囲の範囲のpHによる。
【0051】
1つの態様によると、pH感知層は、第2または第3の親水性ポリマーを含む。好適な親水性ポリマーは、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸および/またはヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体(特に直鎖セルロース誘導体)およびポリビニルピロリドンを含む。1種または2種以上の親水性ポリマーのpH感知層への添加は、ファンデルワールス相互作用等の物理的相互作用を提供する。
【0052】
あるいは、pH感知層は、疎水性ポリマー、特に低分子量疎水性ポリマーを含むことができる。好適な疎水性ポリマーは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリラクチド−コ−グリコリドおよびポリカプロラクトンを含む。通常、疎水性ポリマーは、pH感知層中で実質的に均質に分散している。
【0053】
pH感知層の溶解または浸食の速度は、その組成による。バッファー群は、pH感知層中に取り込まれて、溶解または浸食の速度を低下できる。好適なバッファー群は、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸および関連した化合物を含む。細菌コロニーの程度が低い場合、放出されるイオンの数は小さい。これらのイオンのいくつかは、分解のより遅い速度を生じ、そして本発明の機器の寿命を伸ばすバッファー群によって取り込まれる。放出されるイオンの数は、バッファー群の取り込みにかかわらず、pH感知層の浸食または溶解となる細菌コロニーの増加と伴に、増加するであろう。
【0054】
1つの形態によれば、本発明の機器は、1つ超のpH感知層;典型的には、3つ超のpH感知層;さらに好適には、5つのpH感知層を含むことができる。
【0055】
それぞれのpH感知層は、同じpHトリガーまたは異なるpHトリガーを有することができる。それぞれのpH感知層は、異なる第2の水溶解度を有することができる。あるいはそれぞれのpH感知層は、同じ第2の水溶解度を有することができる。
【0056】
それぞれのpH感知層は、同じイオン化速度および同じ溶解速度または浸食速度を有することができる。あるいは、異なるpH感知層は、同一または相違するイオン化速度および/または溶解または浸食速度を有することができる。
【0057】
1つの態様によれば、隣接したpH感知層は、同じpHトリガーであるが、異なる第2の水溶解度を有することができる。
【0058】
あるいは、隣接したpH感知層は、異なるpHトリガーであるが、同じ第2の水溶解度を有することができる。
【0059】
典型的には、隣接したpH層は、イオン化の異なる速度、または溶解もしくは浸食の異なる速度を有する。
【0060】
1つの態様によれば、異なるpH感知層は、pH感知層の溶解または浸食によって放出される異なる機能性賦形剤を含む。
【0061】
1つの態様によれば、機器は、挿入および除去の容易さを高めるために、潤滑層を含むことができる。典型的には、潤滑層は、1種または2種以上の架橋したポリマーを含むことができる。
【0062】
通常機器は、内側表面および外側表面を含み、該内側表面は管腔を画定する。典型的には、機器の外側表面は、潤滑層を含む。通常、機器の内側表面は、pH感知層を含む。
【0063】
通常、機器は、体内で実質的に非分解性または浸食可能である少なくとも1つの構造層を含み、そして機器の周囲環境のpHにかかわらず機器に構造的安定性を提供する。
【0064】
典型的には、構造層の水溶解度は、2〜10のpHの間で実質的に一定のままである。通常、構造層の水溶解度は、周囲の環境のpHに関わらず実質的に一定のままである。
【0065】
特定の態様では、機器は、pH感知層、例えば、Eudragit(商標)層が、2つの層系の内側上に提供されている2層系を含むことができる。そうした系において、流体、例えば、尿等の体液は、機器の内側管腔を通って流れる(図2a)。
【0066】
ほかの態様において、機器は、2種のpH感知層、例えば、Eudragit(商標)層が、機器の内側層および外側層を形成する3層系を含むことができる。そうした3層系では、流体、例えば、尿等の体液は、内側管腔を通って、そして機器の外側表面の上を流れることができる(図2b)。
【0067】
さらにほかの態様において、複数のpH感知層を含む機器を提供できる。特定の態様では、第1の層の浸食により、第2の層が露出するように、第1のpH感知層を、第2のpH感知層に隣接して提供できる。態様において、pH感知層は、異なるpH値で浸食されることができる。
【0068】
好適に、態様において、機器の内側層および外側層は、溶融押出できる。
【0069】
好適に、態様において、分解性層は、患者の体内からの機器の挿入および除去に従うことができる。態様において、必要な場合には、好適なポリマーを含む構造層は、機器中に分解性層と組み合わせて提供できる。
【0070】
本発明のさらなる形態によれば、機器の表面に少なくとも1つのコーティングが提供される場合、pH感知層が機器上に提供されるように(該pH感知層は、直鎖ポリマーの水溶解度がpHトリガーで第1の水溶解度から第2の水溶解度に増加する直鎖ポリマーを含む)、機器へ適用するためのコーティング、1つまたは2つ以上の表面を有する本体構造を含む機器および機器の少なくとも1つの表面に適用されるように適合されたコーティングが提供される。
【0071】
特定の態様では、機器は、複数のpH感知層を含むコーティングを含むことができる。
【0072】
用語「コーティング」は、本明細書中で使用される場合、そして特に断らなければ、通常、機器に付着した材料をいう。コーティングは医療用機器の任意の部分をコーティングする材料を含むことができ、そして1層または2層以上のコーティング層として構成されることができる。コーティングは、実質的に一定または変化した厚さおよび組成を有することができる。コーティングは、機器表面の任意の部分、例えば管腔表面、管腔と反対の表面、または任意の部分またはそれらの組み合わせを含む医療用機器に付着できる。
【0073】
通常pH感知層は、ポリマーの水溶解度が増加するように、規定されたpHにおいて、例えばポリマーがイオン化できるより高いpHレベルにおいて、溶解できるか、または浸食されることができる層を意味する。好適に、充分な溶解または浸食の後で、機器中の新規な層が露出するように、完全に層が除去されることができる。通常pH感知層の溶解または浸食により、ポリマー鎖は、同じモノマー単位を有し傷ついていないままである。
【0074】
態様において、pH感知層は、クエン酸または他の小さい有機分子等の機能性賦形剤を含み、そしてそうした機能性賦形剤は、pH感知層の溶解または浸食により、通常制御された放出の様式で、放出されるであろう。
【0075】
本発明のさらなる形態によれば、構造層を提供する、および少なくとも1つのpH感知層をそこに適用するステップ(該pH感知層は、直鎖ポリマーの水溶解度が、pHトリガーにおいて第1の水溶解度から第2の水溶解度へ増加する直鎖ポリマーを含む。)を含む機器の形成方法が提供される。
【0076】
典型的には、構造層は、内側表面および外側表面を有し、該内側表面が管腔を画定する。通常、pH感知層は、構造層の内側表面に適用される。この方法は、1超のpH感知層を適用するステップを含むことができる。
【0077】
通常、機器は、人間または動物の体への挿入またはインプラントに好適な医療用機器である。本発明の第2の形態の特定の態様では、この方法は、多層押し出しを含む。
【0078】
好適に上記の様な機器は、本発明の方法により形成される。
【0079】
本発明のさらなる形態により、機器の人間または動物の体へのインプラントまたは挿入ステップを含む、人間または動物の体にインプラントされたか、または挿入された機器と関連した感染を予防もしくは緩和する方法が提供され、該機器は直鎖ポリマー(直鎖ポリマーの水溶解度がpHトリガーで第1の水溶解度から第2の水溶解度に増加する)を含むpH感知層を含む。
【0080】
通常、この方法は、既に生成された任意の感染が除去されることとなる。
【0081】
通常、この方法は、機器の付着物の形成を予防または緩和するステップを含み。典型的には、この方法はまた、既に形成された任意の付着物の除去のステップを含む。
【0082】
典型的には、機器が、関連した感染なしに、人間または動物の体にインプラントまたは挿入される時間は、少なくとも1日、通常、少なくとも3日、好適に、7日以上である。
【0083】
1つの態様によれば、少なくとも1つのpH感知層を含まない均等な機器と比較して、インプラントまたは挿入の時間を、少なくとも100%増加できる。通常、挿入またはインプラントの時間は、少なくとも150%;典型的には少なくとも200%増加できる。
【0084】
1つの態様によれば、インプラントされた機器は上記の様である。
【0085】
典型的には、本発明の方法は、カテーテル、特に導尿カテーテル、ステント、特に尿道ステントまたは胆管ステント、インプラント可能なまたは挿入可能な管、特に鼻腔胃管またはCAPD管、歯列矯正具または義歯の挿入またはインプラントと関連した感染を予防または緩和する。
【0086】
本発明のさらなる形態によれば、少なくとも1つのpH感知層を機器に適用するステップを含む、人間または動物の体にインプラントまたは挿入された機器と関連した感染を予防または緩和する方法が提供され、該pH感知層は、pHトリガーにおいて、直鎖ポリマーの水溶解度が第1の水溶解度から第2の水溶解度に増加する直鎖ポリマーを含む。
【0087】
典型的にはpH感知層を含む機器は、上記の様である。
【0088】
本発明のさらなる形態によれば、治療のために使用される機器が提供され、該機器は、直鎖ポリマーの水溶解度が、pHトリガーにおいて、第1の水溶解度から第2の水溶解度へ増加する直鎖ポリマーを含む少なくとも1つのpH感知層を含む。
【0089】
典型的には、この機器は、上記の様である。
【0090】
通常、この治療は、機器の人間または動物の体への挿入またはインプラントと関連した感染を予防または緩和する。
【0091】
本発明のさらなる形態によれば、治療での使用のための機器が提供され、該機器は、直鎖ポリマーの水溶解度が、pHトリガーにおいて、第1の水溶解度から第2の水溶解度へ増加する直鎖ポリマーを含むpH感知層を含む。
【0092】
この機器は、通常上記のようである。
【0093】
本発明のさらなる形態によれば、感染を予防または緩和するための機器の使用が提供され、該機器は、直鎖ポリマーの水溶解度が、pHトリガーにおいて、第1の水溶解度から第2の水溶解度へ増加する直鎖ポリマーを含む少なくとも1つのpH感知層を含む。
【0094】
この機器は、通常上記のようである。
【0095】
本発明のさらなる形態によれば、感染の予防または防止のための薬物の製造における機器の使用が提供され、該機器は、直鎖ポリマーの水溶解度が、pHトリガーにおいて、第1の水溶解度から第2の水溶解度へ増加する直鎖ポリマーを含む少なくとも1つのpH感知層を含む。
【0096】
この機器は、通常上記のようである。
【0097】
本発明のさらなる形態によれば、pH感知ポリマーが提供され、該ポリマーは、pH5〜pH7.8のpH範囲において、さらに好ましくは、pH6〜pH7.2のpH範囲において、またはあるいは5〜6、好ましくは5.5〜6のpH範囲において、変化する薬物溶離プロファイルを示す。このpH感知ポリマーは、通常直鎖である。
【0098】
変化できる薬物溶離プロファイルによって、所与のpH範囲の第1の終端において第1の速度でおよび所与のpH範囲の第2の反対の終端で第2の速度でポリマーから溶離することを意味する。pH感知ポリマーは、分解を受ける、例えば所与のpH、例えば生理的pHから離れたpHにおいてさらに溶けやすくなるので、薬物放出が起こる。例えば、生理的pHから離れさらに極端なpHにおいて、分解が大きい程、薬物の放出はより大きい。
【0099】
本発明のさらなる形態によれば、該ポリマーが、構造的完全性pH5〜pH7.8のpH範囲、さらに好ましくは、pH6〜pH7.2のpH範囲またあるいは、5〜6の、好ましくは5.5〜6のpH範囲において、構造的完全性における変化を有するpH感知ポリマーが提供される。pH感知ポリマーは通常直鎖である。
【0100】
構造的完全性における変化によって、このポリマーが、pH範囲のほぼ1つの終端において、ポリマーのシートまたは層を形成できるが、しかしpH範囲の反対の終端において分解し、ポリマーのシートまたは層を生成できないことを意味する。
【0101】
本発明のさらなる形態によれば、本明細書中に開示された任意の1種または2種以上の医療用機器を用いて患者を治療するための使用方法が提供され、これは、例えば、患者と、少なくとも1つのpH感知層を含む1つまたは2つ以上の表面を有する本体構造を含む医療用機器とを接触させることを含む患者を治療する方法を含み、少なくとも1つのpH感知層は、直鎖ポリマーの水溶解度が、pHトリガーにおいて、第1の水溶解度から第2の水溶解度へ増加する直鎖ポリマーを含む。この方法は、例えば、本発明の薬物溶離機器を提供することを含む患者の体への薬物化合物の投与のために開示されている。
【0102】
本発明の別の関連した態様において、組成物溶離機器を提供し、そして組成物溶離機器を患者の体内に導入することを含む、患者への組成物の投与方法が開示され、この組成物溶離機器は、少なくとも1つのpH感知層を含む1つまたは2つ以上の表面を有する本体構造を含み、少なくとも1つのpH感知層は、直鎖ポリマーの水溶解度が、pHトリガーにおいて、第1の水溶解度から第2の水溶解度へ増加する直鎖ポリマーを含む。
【0103】
明細書を通して、そうでないと記載がない限り、用語「含む」または「含み」、または「含んだ」または「含んでいる」等の変化形は、記載された、整数または整数の群を含み、任意の他の、整数および整数の群を排除しないことを意味すると理解される。
【0104】
本発明のそれぞれの形態の好ましい特徴および態様は、その内容にそぐわない限り、他の形態を準用する個々に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0105】
本発明の態様は、一例としてのみ、以下の付属の図を参照して、記載されるであろう:
【図1】図1は、本発明のカテーテルの細菌コロニーのステップを具体的に示し、*によって図示されたコロニーを作るバクテリアは、表面がコロニー化(2)されるように、挿入(1)の後で機器のコロニー化を始め、そして微生物の生物膜が形成され(3)、尿素分解バクテリアによって尿のpHが増加し(4)、そしてEudragit(商標)の浸食が上昇したpHを生じ、生物膜および不溶性堆積物の除去(5)となる;
【図2】図2は、2層系(a)および3層系(b)の機器(ii)に構造的完全性を与える薬物溶離/自己クリーニング層(i)および機能性層を具体的に示し;
【図3】図3は、5、10および20%配合のキノロン抗生物質ナリジクス酸を用いた、pH7で溶解するポリマー用スクリュー上でのトルクを具体的に示し;
【図4】図4は、調合物の機械的な特性が引張りモードでのDMTA、すなわちまたは動的機械的熱分析を使用して試験できることを具体的に示し;
【図5】図5は、pH6およびpH7、健康な感染していない尿を表わすために取られたpH6における、pH感知層を有する機器からの10%ナリジクス酸の放出プロファイルを具体的に示し;そして、
【図6】図6は、pH6およびpH7におけるpH感知層を有する機器からの10%ナリジクス酸の放出プロファイルを具体的に示す。
【図7】図7は、pH6.2およびpH7.8における5%レポフロキサシンを含むEudragit(商標)L100のpH感知層を有する機器からの抗菌レポフロキサシンの放出プロファイルを具体的に示し;
【図8】図8は、pH6.2およびpH7.8における10%レポフロキサシンを含むEudragit(商標)L100のpH感知層を有する機器からの抗菌レポフロキサシンの放出プロファイルを具体的に示し;
【図9】図9は、5%、10%および20%レポフロキサシン、それぞれを含むEudragit(商標)L100のpH感知層を有する3つの機器からの抗菌レポフロキサシンの放出プロファイルを具体的に示し;
【図10】図10は、それぞれ5%、10%および20%レポフロキサシンを含むEudragit(商標)4155FのpH感知層を有する3つの機器から抗菌レポフロキサシンの放出プロファイルを具体的に示し;
【図11】図11は、pH6.2およびpH7.8における5%レポフロキサシンを含むEudragit(商標)4155FのpH感知層を有する機器からの抗菌レポフロキサシンの放出プロファイルを具体的に示し;
【図12】図12は、pH6.2およびpH7.8における10%レポフロキサシンを含むEudragit(商標)4155FのpH感知層を有する機器からの抗菌レポフロキサシンの放出プロファイルを具体的に示し;
【図13】図13は、pH6.2およびpH7.8における20%レポフロキサシンを含むEudragit(商標)4155FのpH感知層を有する機器からの抗菌レポフロキサシンの放出プロファイルを具体的に示し;
【図14】図14は、pH6.2で2時間、pH7.8で2時間およびpH6.2で2時間での、Eudragit(商標)4155FのpH感知層を有する第1の機器およびEudragit(商標)L100のpH感知層を有する第2の機器からの抗菌レポフロキサシンの放出プロファイルを具体的に示す。
【図15】図15は、pH7.8で2時間、pH6.2で2時間およびpH7.8で2時間での、Eudragit(商標)4155FのpH感知層を有する第1の機器およびEudragit(商標)L100のpH感知層を有する第2の機器から抗菌レポフロキサシンの放出プロファイルを具体的に示し;
【図16】図16は、10%CAを含むEudragit(商標)4155FのpH感知層を有する第1の機器および10%CAおよび10%ナリジクス酸を含むEudragit(商標)4155FのpH感知層を有する第2の機器の、pH6.2での経時平均質量パーセンテージを具体的に示し;
【図17】図17は、Eudragit(商標)L100のpH感知層を有する第1の機器、10%ナリジクス酸を含むEudragit(商標)L100のpH感知層を有する第2の機器および10%レポフロキサシンを含むEudragit(商標)L100のpH感知層を有する第3の機器の、pH6.2での経時平均質量パーセンテージを具体的に示し;
【図18】図18は、Eudragit(商標)L100のpH感知層を有する第1の機器、10%ナリジクス酸を含むEudragit(商標)L100のpH感知層を有する第2の機器および10%レポフロキサシンを含むEudragit(商標)L100のpH感知層を有する第3の機器の、pH6.2での経時平均質量パーセンテージを具体的に示し;
【図19】図19は、Eudragit(商標)4155FのpH感知層を有する第1の機器、10%ナリジクス酸を含むEudragit(商標)4155FのpH感知層を有する第2の機器および10%レポフロキサシンを含むEudragit(商標)4155FのpH感知層を有する第3の機器の、pH6.2での経時平均質量パーセンテージを具体的に示し;
【図20】図20は、人工の尿中で4時間浸漬後の、Eudragit(商標)4155FのpH感知層を有する第2の機器と比較して、人工の尿中で4時間浸漬後の、PVCで形成された第1の機器へのPMIRの増加した細菌付着を具体的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0106】
ポリマーは、2軸押し出し機を用いた加工を可能にするために、好適な可塑剤と混合された。異なる薬物配合量の異なる抗菌剤を、ポリマー/可塑剤調合物と混合する。調合物を、加工前に24時間、デシケーター中に貯蔵した。種々の濃度の抗菌剤を有する調合物を次に押し出した。サンプルを生体内条件に近い放出媒体中で懸濁した。次にサンプルを0.45μmシリンジフィルターを使用してろ過し、そしてそれらの薬物放出特性を決定するために、UV分光法を使用して分析した。
【0107】
単一の薬物を配合したEudragit(商標)フィルムが、押出機バレルに沿った4つの異なるポートで抗菌剤を供給できる二軸スクリュー押し出しシステム、EDTAおよびクエン酸を使用して製造されることが期待される。これがスクリューのモジュラー設計と結合して、機能性賦形剤の分解なく生産されるように、極めて均一の密度および均質性を有する製品を可能にするであろう。
【0108】
いったん製造されると、フィルムはその後に特徴付けられ、そしてPVCとの共押出のために最適化されたフィルム層の選択が行われる。PVCおよび最適化されたpH応答層の多層押し出しが、最新の多層シート押し出し設備上で行われるであろう。典型的な集尿機器はチューブ状となる傾向があるが、多層化されたシートは、試験を可能にするように押し出されるであろう。
【0109】
共押し出しの前に、薬物を配合したEudragit(商標)ペレットは、二軸スクリューニーダーに接続された空冷ダイフェースペレタイザーを使用して調製されるであろう。これらのペレットは、レオロジー的特性への、可塑剤のタイプ、可塑剤含有量の影響、ならびに他の機能性賦形剤(EDTA、クエン酸、クロルヘキシジンおよびその塩、ナリジクス酸)を含有するEudragit(商標)ポリマーの影響を調べるために使用され;共押し出し工程の操作温度およびフィルムの最終特性を最適化するために、注意深く制御されることが好ましい。
【0110】
いったん最適化された処理条件がmDSCおよび熱レオロジー的実験から得られた知識を使用して決定されると、システムで層の厚さを変えた多層フィルムが製造される。
【実施例】
【0111】
例1
図3に具体的に説明されているように、押出機内で材料の粘度及び流動性の良好な指標を提供するスクリューのトルクを測定でき、そして異なる添加物および機能性試薬の両者がどのように材料の生産の容易性に影響するかについての近似を与える。これは材料の最終の機械的な特性への影響をいくらか有する。このグラフは、5、10および20%の配合量のキノロン抗生物質ナリジクス酸を有するpH7で溶解するポリマーを示す。ナリジクス酸含有量を増加させると非常に小さいトルクへの影響があった。しかし、他の試薬の1つの、レポフロキサシンは、観察されるトルクの増加を示し、加工をさらに難しくすることを示した。
【0112】
増加させたレベルのナリジクス酸がpH6で溶解するポリマーに加えられた場合、スクリューのトルクの低下が観察され、このポリマーを用いると、薬物が加工を助けることを示した。
【0113】
例2
引張りモードでのDMTA、すなわちまたは動的熱機械分析を使用して、調合物の機械的特性を調べることができる。これは、設定点の周りで一定で変動させながら、温度勾配に沿って生産物を加熱することを含む。このデータから、それより下では材料がガラス質状態として存在し、かつそれより上では材料がさらに柔軟なゴム状態で存在するガラス転移点を決定することが可能である。これは、ポリマーが緩和特性を受けることへの理解を提供し、最終製品の可撓性に意義があるであろう。
【0114】
図4は、pH6のポリマーを用いて、ガラス転移点の低下を生じるナリジクス酸を用いた加工の間に観察されたものを反映する値を具体的に示す。以前のように、加工の間に増加したトルクを有した試薬はまた、ガラス転移点を上昇させる。
【0115】
押し出された調合物のストリップを使用して、そして引張りモードでDMTAを使用してそれらを試験し、そしてトルク値を評価することで、レポフロキサシンが観察されるガラス転移点を高め、おそらく抗可塑化効果を有することが観察された。
【0116】
例3
本発明の機器の特別な層を形成するために使用できるであろう本発明の特別な調合物の態様を、pH6.2における薬物の溶離特性を決定するために試験した。調合物を使用して低いレベルで薬物を一定して溶離する層を提供できたが、しかし、機器、安全装置としての機器が配置されれば、感染が検出される場合、すなわち、pHが上昇する場合に、さらに急速な応答に切り替わる能力を有することができたであろう。典型的には、pH6.2が健康な、感染されていない尿のpHであり、一方、pH7.8が感染した尿のpHである。図5に具体的に説明するように、健康な尿を表わすpH6.2および感染した尿を表わすpH7.8で、PBS溶液を用いた溶解装置を使用して、10%ナリジクス酸の薬物放出研究を行った。
【0117】
この試験中で使用した調合物は、Eudragit(商標)S100および10%PEG8000を含む第1の調合物ならびにEudragit(商標)L100および20グリセロールおよび20%PEG8000を含む第2の調合物を含んでいた。
【0118】
例4
本発明の機器の特別な層を形成させるのに使用できるであろう本発明の特別な調合物の態様を、感染された尿を表わすpH7.8の媒体中で試験した。この試験で使用した調合物は、Eudragit(商標)S100および10%PEG8000を含む第1の調合物ならびにEudragit(商標)L100および20グリセロールおよび20%PEG8000を含む第2の調合物を含んでいた。
【0119】
例3において記載したポリマー調合物を熔解するpH6と比較して、ポリマーを溶解するpH7は、より長い時間をかけて、その薬物を放出する。
【0120】
ポリマーを溶解するpH6は、pH7のポリマーと異なるそうした放出プロファイルを示し、感染の存在に急速に応答することを可能にし、一方、ポリマーを溶解するpH7は、低いpH値で保護バリアーを作る。
【0121】
本発明は特に具体例を参照して示され、そして記載されたが、当然のことながら、当業者によって、本発明の範囲から離れることなく、形態および詳細への種々の変更がなされるであろう。
【0122】
例5
Eudragit(商標)L100を含むpH感知層を含む第1の機器、およびEudragit(商標)4155Fを含むpH感知層を含む第2の機器を形成した。これらの機器は、生理的pH(約6.2)での抗菌剤レポフロキサシンおよびナリジクス酸の制御された放出、および尿の感染と通常関連する上昇したpHレベル(約7.8)でのこれらの活性試薬の高められた放出速度を可能にした。
【0123】
抗菌剤の勢いのよい提供に加えて、多層化されたフィルムは、細菌付着がないであろう新規な/クリーンな表面をまた提供するであろう。
【0124】
図7および8は、放出媒体のpHを変えることによって、および抗菌配合量の変化をさらに通して、機器からの抗菌剤の放出を変更できることを証明する。
【0125】
Eudragit(商標)4155Fおよびレポフロキサシンからなるポリマーマトリックスは、Eudragit(商標)L100より、pH6.2において抗菌剤の遙かに制御された放出を有する。これは、pHが7を超えるまでこのポリマーが可溶性にならない事実による。これは、「通常の」条件下で抗菌剤の連続的な溶離を可能にするであろうので、非常に興味深い。これは、細菌付着を防止するであろうが、しかし、(P.mirabilisによって)ウレアーゼが生成され、そしてその後に尿素がアンモニアに分解するであろうし、上昇したpHの増加は、表面浸食となり、そして薬物の放出速度における増加となるであろう。これは、図9〜12中に具体的に説明されている。
【0126】
例6
例5の機器を製造した。機器の周囲のpH条件をpH6.2で2時間維持し、そして次に2時間でpH6.2に戻って調整する前に、pH7.8に2時間維持した。図13および14は、pH条件の変更に応答して、本発明の機器の停止、開始放出プロファイルを具体的に示す。
【0127】
例7
例5の機器を製造した。
【0128】
pH感知層の(指標として質量変化を使用して)浸食を評価し、そしてまたこの加工への抗菌剤を含むことの効果を決定するために、これらの研究を、pH6.2およびpH7.8で行った。pH6.2では、Eudragit(商標)L100を含む機器が明らかに質量を保った。研究の間に水の取り込みにより質量のわずかな増加があった。6を超えたpH値で浸食を開始したEudragit(商標)L100は、24時間後にほとんど完全な損失を示した。
【0129】
Eudragit(商標)L100を含むpH感知層の分解は、pH7.8において極めて速く、そしてこれは予想された。Eudragit(商標)4155Fを含むpH感知層は、pH7.8において質量を維持し、そして水の取り込みにより質量がさらに増加した。
【0130】
pH6.2および7.8でのpH感知層の浸食を、図15および16中に具体的に示す。
【0131】
例8
第1の機器は、PVCでできており、そしてpH感知層を含まなかった。第2の機器は、Eudragit(商標)4155FのpH感知層を含むPVCでできていた。2つの機器を、4時間の間、人工の尿の中に浸した。2つの機器の細菌付着を次に試験した。第1の機器への細菌付着は、第2の機器への細菌付着より遙かに多かった。この細菌付着は、第1の機器で少なくとも8倍であった。これを図20中に具体的に示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として医療用機器の分野に関する。さらに具体的に言うと、本発明は、pH感知分解性層を含む医療用機器、pH感知層を含む医療用機器の製造方法および、pH感知分解性層を含む医療用機器の使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
患者の体に挿入される医療用機器の使用は、病院および養護施設内でのヘルスケア管理において習慣になっているものである。例えば、カテーテルおよびステント等の挿入された医療用機器の使用に関連した実質的な恩恵があるが、心配なことに患者が病院にいる時間の増加およびさらに重要なことにこれらの機器の使用に関連する患者の死亡数の増加となる場合がある多くの潜在的に危険な合併症がある。これらの合併症は、主に患者の体が医療用機器の挿入に反応する様式および異物と感知するものであるために生じる。したがって患者は、多くの場合、医療用機器の挿入と関連した感染によって病気になり、そしてこれが、そうでなければ非常に効果的かつ有益である治療法の最も重大な不利益の一つとみられる。多くの場合、機器関連感染と呼ばれるものを改善することへの差し迫った必要性がある。
【0003】
典型的には、機器関連感染は、細菌付着から始まり、生物膜の形成とともに進展する。典型的にはカテーテルに定着するバクテリアおよび病原体は、尿素を分解して二酸化炭素およびアンモニアを生成させるウレアーゼを生産する。そうした分解と関連する高いpHにおいて、尿中の鉱物は付着物となる沈殿をし。カテーテルの付着物は、カテーテルが除去され、そして置き換えられなければならない頻度を増加するカテーテルへの妨害を起こす場合がある。付着物はまた、カテーテルの除去での苦痛の増加となる。カテーテル周囲の組織はまた、さらに遙かに感染されやすい。これは、長期間のカテーテル挿入を必要とする患者にとって特に問題である。重大な結果は、敗血症、腎盂腎炎およびショックを含む。
【0004】
さらに、バイオマス内の関連する病原体は、尿素のアンモニアおよび二酸化炭素への転化を通して尿をアルカリ化させるように働く強力なウレアーゼアイソザイムの発現を通して、医療機器の寿命を下げる場合がある。
【0005】
この問題を克服するための以前のアプローチは、感染に対抗するための機器への抗生物質の取り込みを含む。挿入後に、治療薬は拡散によって放出され、そして究極的には機器に隣接した体液中に局所的に存在することができ、こうして細菌付着を防止する。さらに、感染の受けやすさを減らすために機器表面を改質するような試みがなされてきた。
【0006】
集尿機器(urinary device)の使用を難しくする合併症を軽減するための試みにも関わらず、多くの問題が依然存在する。したがって、抗生物質治療および新規表面コーティングは一時的な解決を提供するが、導尿カテーテル挿入および尿道ステントに関連する唯一本当の決定的な解決は、機器の除去である。
【0007】
滑剤中でコーティングされたカテーテル等の医療用機器は公知であり。カルボン酸官能基を含む架橋したヒドロゲルを含む滑剤もまた公知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
米国特許第6306422号明細書は、架橋したポリマーヒドロゲル中にコーティングされた機器、特に導尿カテーテルを開示する。トリガーpHでは、ポリマーは水の吸収を通して膨張する。この水の吸収は、ヒドロゲルの孔サイズを大きくし、持続放出の様式で活性物の放出を高める。米国特許第6306422号明細書のポリマーヒドロゲルは完全に水不溶性のままであり、そして機器の上にコーティングされたままである。活性物は、典型的には1種または2種以上の抗生物質およびウレアーゼ阻害剤である。これらの活性物の放出は、それぞれ、細菌性表面の成長を制御し、そして付着物の形成を制御する。しかし、ウレアーゼ阻害剤の放出は、カテーテル上に既に形成された付着物を除去しない。さらに、米国特許第6306422号明細書中に開示された機器から放出された活性物は、バクテリアによって生成された生物膜を浸透できず、既存の細菌コロニーを除去できない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、合理的な生体内反応の使用を通じて感染に本来的に耐性があり、そして好ましくは抗生物質で含浸されている機器表面を開発した。特に、この機器表面は、現在利用されている材料の代替として、pH変化に応答して減ることができる減量性生体材料を含む。
【0010】
本発明の第1の形態により、少なくとも1つのpH感知分解性層を含む1つまたは2つ以上の表面を有する本体構造を含む機器が提供され、ここで、少なくとも1つのpH感知分解性層は、pH感知ポリマーを含み、pH感知分解性層は、規定されたpHにおいて制御された分解ができる。特定の態様では、機器は、複数の分解性層を含むことができる。
【0011】
本発明により、1つまたは2つ以上の表面を有する本体構造を含む機器が提供され、表面の少なくとも1つは、直鎖ポリマーを含むpH感知層を含む、直鎖ポリマーの水溶解度は、pHトリガーにおいて、第1の水溶解度から第2の水溶解度に増加する。
【0012】
好適に、この態様において、機器は、機器周囲の流体、例えば体液のpHが、規定値、から上昇するかまたは低下する、例えば、感染に応答して生理的pHから上昇または低下できる、任意の機器であることができる。
【0013】
pHトリガーにおいて、直鎖ポリマーはイオン化し、そしてこれがポリマーの水溶解度を増加させる。イオン化された直鎖ポリマーは次に、機器の周囲の水性環境に溶解し、そして機器の新しい表面が現れる。この新しい表面は、その上に何らバクテリアのコロニーを有さず、そして付着物がない。本発明の機器は、従って従来技術の効きに比較して、より長い時間の間インプラントされたままであることができる。本発明の機器の表面が、それまで大きな程度までにバクテリアのコロニーがあった表面が取り除かれ、そして新規な表面が露出するにつれて、感染および付着物のリスクがまた低下する。
【0014】
本発明の機器は、典型的には導尿カテーテルまたは導尿ステントであることができ。典型的にはそうした機器にコロニーを作るバクテリアは、ウレアーゼを放出する。尿はウレアーゼとの接触によってアンモニアおよび二酸化炭素に分解し、カテーテルの周囲の範囲のpHを実質的に高める。pHにおけるこの増加は尿からの無機物の沈殿を生じ、カテーテルの付着物を生じる。アンモニアの生産を通して生成されたpHの増加は、本発明の直鎖ポリマーがイオン化するためのトリガーとなり、そしてポリマーの水溶解度は従って増加する。直鎖ポリマーは周囲の水性環境に溶解し、そして機器の外側表面上に存在するあらゆる付着物は、直鎖ポリマーと伴に除去される。機器の新規な表面が露出される。この新規な表面にはバクテリアおよび付着物がない。
【0015】
あるいは、本発明の機器は、歯列矯正具または義歯の形態であることができる。そうした機器の細菌コロニーにより、周囲のpHは、生理的pHより低くなる。口腔中でバクテリアは酸を生成するので、より高い度合いの細菌コロニー、より多量の酸が生産され、周囲のpHを低下させる。
【0016】
本発明の直鎖ポリマーは、周囲環境のpHが生理的pH(生理的pHは、典型的には6.2である)から離れるにつれて、安定な層から制御された浸食または溶解を受ける層に変化できる、好適には、そうした浸食または溶解は、pH5.5〜pH7の範囲の終点に向かって生じる。この態様において、pH感知ポリマーは、生理的pH、例えば、pH7.0から移動した、感染のpH指標での制御された分解または浸食が可能である。
【0017】
pHトリガーは、本発明の機器周囲の目的とする環境に依存する。機器が膀胱等の中性またはアルカリ環境にインプラントされることを意図する場合、pHトリガーは、典型的には、6.5超;好適に7超;さらに好適には約7.2である。機器が胃等の酸性環境にインプラントされることを意図とする場合、pHトリガーは、典型的には6.0未満;好適に5.5未満である。
【0018】
本発明の機器の周囲の範囲のpHが、トリガーpHから離れ、そして生理的pHに動く場合、pH感知層の水溶解度は、従って低下し、そして第1の水溶解度に向かう。したがって、pH感知層の溶解または浸食速度は低下することができる。1つの態様によれば、pH感知層は、機器がバクテリアによってコロニー化された所のみで溶解するか、または浸食する。pH感知層の溶解または浸食は、機器のコロニーに依存して、開始または停止できる。
【0019】
好適に、態様において、そうしたpH感知層は、生理的pH(例えば、pH6.2)における機能性賦形剤の放出の第1速度および非生理的pH(例えば、pH7.0)における第2の速度を提供できる。通常、第1の速度は、第2の速度より低い。pH感知層の減少が生理的pHにおいて最小限であり、かつ生理的pHから離れたpHにおいて増加する態様において、機能性賦形剤の溶離は、pH感知層の浸食または溶解と相関できる。感染が生理的値から離れてpHを動かす場合があり、このように機能性賦形剤の放出が感染と相関できるので好都合である。
【0020】
好適に、好ましい態様では、直鎖ポリマーは、生体適合性である。「生体適合性」材料は、生きている組織または生きている系と、有毒でなくまたは傷付けないことによって適合する材料である。特定の態様では、機器は、生物学的に安定な層を形成する材料を含むことができる。「非生体吸収性の」または「生物学的に安定な」材料は、実質的な生体吸収がなく体内に留まるポリマーまたはコポリマー等の材料をいう。そうした層は、本発明の機器中に含まれて、機器に構造的支持を提供できる。
【0021】
好適に、態様において、直鎖ポリマーは、pHの変化に関して、構造的な変化を受け、特に直鎖ポリマーは、pHの変化でイオン化されて、直鎖ポリマーが、増加した水溶解度を有するようにさせることができる。
【0022】
本発明の機器での使用のためのポリマーは、通常、架橋であるより直鎖である。本発明の直鎖ポリマーは、pHトリガーにおいてイオン化され、直鎖ポリマーの水溶解度を大幅に増加させる。対照的に、架橋したポリマーは、pHトリガーにおいてポリマーに水を吸収させ、そして膨潤させるイオン化する。架橋したポリマーの水溶解度は、イオン化を通じて変わらず、そしてイオン化の後で、米国特許第6306422号明細書に開示されたもの等の機器上に保持される。そうした架橋したポリマーは、通常ヒドロゲルの形態である。本発明の機器の直鎖ポリマーは、通常、押出可能である。
【0023】
典型的には、pH感知層は、イオン化の前に、30wt%未満の水;通常、20wt%未満の水、好適には10wt%未満の水を吸収する。対照的に、米国特許第6306422号明細書に開示されたもの等の機器との連結した使用のための従来技術の架橋したヒドロゲルは、イオン化の前に水中で数千倍まで水を吸収する。ヒドロゲルの水溶解度は影響されず、そしてこれらのヒドロゲルは、それらの形を維持し、そして周囲の水性環境中に溶解しない。本発明の機器での使用のためのポリマーは、イオン化の前に水の吸収で膨潤することができるが、これは水溶解度の増加および周囲の水性環境への溶解を生じるイオン化の前に起こる。
【0024】
直鎖ポリマー中の構造的変化が、少なくとも6.5のpHにおいてトリガーされることを意図する場合、直鎖ポリマーは、典型的には、SO結合および/または1種または2種以上のカルボキシル基および硫酸基を含む。典型的には、直鎖ポリマーは、pH感知セルロースポリマー、例えば、セルロースエステルまたはセルロースエーテルであることができる。一態様では、直鎖ポリマーは、メタクリレートポリマーまたはメタクリレートを含むポリマーであることができる。1つの態様によれば、ポリマーは、以下の構造を有する:
【0025】
【化1】
【0026】
本発明の態様において、直鎖ポリマーは、メタクリレートポリマーおよびセルロースポリマーから選択できる。態様において、直鎖ポリマーは、例えば、Eudragit(商標)L100、S100、HPMC−AS、HTMAC−Pを含む群から選択でき、そしてこれらのポリマーの組み合わせを使用できる。pH感知層を形成するのに好適に使用できるポリマーは、例えば、信越化学、例えば、信越化学AQOAT、Degussaまたはその同類のものから得ることができるであろう。
【0027】
態様において、直鎖ポリマーは、Eudragit(商標)ポリマーであることができる。Eudragit(商標)ポリマーは、単一の系または2つの異なるタイプのブレンドとして提供されることができる。態様において、Eudragit(商標)L100、S100およびこれらのポリマーの組み合わせを使用できる。
【0028】
態様において、Eudragit(商標)L100は、6超のpH値において浸食できる層を提供するために使用できる。
【0029】
態様において、Eudragit(商標)S100は、7.0を超えるpH値において浸食する層を提供するために使用できる。
【0030】
当然のことながら、機器のpH感知層は、通常の尿の条件下でゆっくりと浸食するが、より高いpH値では急速に減少する系を生成するために、L100とS100との両方の組み合わせを使用して製造できる。異なるpH感知ポリマーの層、例えば、Eudragit(商標)L100、S100およびこれらのポリマーの組み合わせの層を、機器において異なる層が異なるpHレベルで浸食するように、機器を形成するために、使用できる。
【0031】
直鎖ポリマーにおける構造的な変化が、6.0未満のpHにおいてトリガーとなることを意図する場合、直鎖ポリマーは、典型的には、第1、第2および第3級アミン、典型的にはNH2基を含み;好適に、ポリマーは、ジエチルアミノアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレートおよび/または他のアクリレートモノマーを含む。典型的にはポリマーは、ジメチルアミノメタクリレートおよび他のアクリレートモノマーのコポリマーである。好適には、このポリマーは、商標Eudragit(商標)E100の下で販売されているポリマーである。
【0032】
上記で述べたように、本発明の機器の直鎖ポリマーの水溶解度は、pHトリガーにおいて、第1の水溶解度から第2の水溶解度に増加する。
【0033】
典型的には、ポリマーのpKaのpHにおいて、50%以上のポリマーがイオン化される。
【0034】
本発明の1つの形態によって、直鎖ポリマーの第2の水溶解度は、直鎖ポリマーの第1の水溶解度より、少なくとも200%、通常、少なくとも400%、さらに典型的には、少なくとも600%大きい。
【0035】
有利に、溶解または浸食によって、直鎖ポリマーのポリマー鎖は、溶解または浸食の前と同じモノマー単位を含み、損なわれないままである。
【0036】
本発明の機器は、pHの変化がバクテリアを有する機器のコロニーと関連する任意の機器であることができる。本発明の態様において、機器は、医療用機器、例えば、カテーテル、一時的なまたは永続的なインプラント、ステント、グラフト、修繕機器、およびインプラント可能な機器を含む体内または体外機器である。
【0037】
典型的には、機器は、カテーテル、好適に、導尿カテーテル、尿道ステント、鼻腔胃管、CAPD管、胆管ステント、歯列矯正具または義歯である。
【0038】
有利に、本発明の機器は、導尿カテーテルまたは尿道ステントである。
【0039】
pH感知層は、pH感知層の溶解または浸食と伴に放出される機能性賦形剤を含むことができる。機能性賦形剤は、好適に、クエン酸、酒石酸、コハク酸、およびフマル酸、抗菌化合物、レポフロキサシンおよびナリジクス酸、抗生物質化合物、クロルヘキシジン、ポビドンヨード、トリドサン(tridosan)、ウレアーゼ阻害剤、EDTAおよび可塑剤、例えば、クエン酸トリエチル、およびクエン酸トリブチルまたは製造または性能を促進するために使用される他の標準賦形剤等のバッファー群であることができる。
【0040】
典型的には、機能性賦形剤は、機器のインプラントの後で、維持された放出様式で放出される。1つの態様によれば、機能性賦形剤の放出速度は、pH感知層の浸食または溶解で急に増加することができる。
【0041】
機能性賦形剤は、直鎖ポリマーに直接吸着されることができ、または機器の内側に配置されることができ、またはさもなければ、リンカー分子または共有、イオン性、ファンデルワールス結合の1種または2種以上を含む他の結合手段の使用を介して協働できる。機能性賦形剤の制御された放出が起こるように、例えば、機能性賦形剤がゆっくりと長い間に溶離するように、pH感知層および/または表面は、構成されることができる。「制御された放出」は、所与の環境中で医療用機器コーティングからの利用薬または機能性賦形剤の放出の速度の変更を意味する。これは、例えば、時間放出コーティングを使用して達成できる。本発明の機器の態様において、層の異なる部分から2種または3種以上の異なる速度で、または機器の周囲のpHに依存する2種または3種以上の異なる速度で同時に治療薬を放出するように適合された層が提供される。
【0042】
態様において、機器は、機能性賦形剤、特に薬物、例えば、抗生物質を充填した感知ポリマー層を含むことができる層を含むことができる。あるいは、態様において、pHに対して制御された様式で分解するpH感知層および薬物を含む医療用機器または医療用機器コーティングは、直鎖ポリマーで結合されることができる。医療用機器の材料または材料コーティング医療用機器内に薬物を取り込むことによって、pH感知ポリマーを含む層が分解するにつれて、薬物は、徐々に失われる様式で放出される。
【0043】
好適に、態様において、pH感知層の溶解は、抗生物質の放出のトリガーとなる。
【0044】
態様において、本発明の機器は、機器に付着する細菌または機器上に病原体の成長を最小化する薬物、例えば、抗生物質を含むことができる。本発明の機器の利点は、経口で飲んだ錠剤等の薬物治療の従来の経路に比較して、感染の部位において、より遙かに高い薬物濃度を可能にすることである。
【0045】
抗生物質の放出は、機器の表面上の細菌成長を制御できる。しかし、バクテリアが機器上にコロニーを生じると、生物膜が通常生成する。抗生物質化合物は、通常そうした生物膜を浸透できず、したがってそうした細菌性生物膜の除去にはあまり効果的でない。ウレアーゼ阻害剤の放出は、付着物の成長を制御するように働くが、しかし既に形成された付着物を除去しない。本発明の機器の表面は、トリガーpHにおいて、溶解または浸食し始め、そして細菌コロニーおよび付着物は、表面と伴に除去される。新規な表面は、すべての細菌コロニーおよび付着物なしで現れる。
【0046】
実際には、本発明の機器は、いったんバクテリアに感染しても自己クリーニングでき、つまり薬物溶離は細菌付着を抑制せず、そしてその後に尿素へのウレアーゼの作用による尿の増加したpHとなり、機器の層は微生物生物膜の生成を認識でき、そして(クエン酸等の有機酸の取り込みによって制御される)制御された浸食を開始し、このように任意の付着性の塊を除去する。そのようにすることで、機器表面はクリーニングされ、そして膜中に取り込まれた機能性試薬(EDTAおよびクエン酸)は、機器/流体界面に放出されるであろう。これは、クエン酸の作用および非常に重要なことにCa2+およびMg2+金属イオンの封鎖によって尿のpHを制御するであろう。この工程は機器表面を更新し、pHを通常の値に戻し、そして機器表面に堆積する結晶の形成に関連する金属イオンを「掃討する」。
【0047】
これは、機器、そして究極的に機器が使用される期間の間、患者の感染がないままにすることを可能にする。
【0048】
機能性賦形剤の放出により、機器の細菌コロニーは、減少でき、そして機器周辺の範囲のpHは、トリガーpHから離れ、そして生理的pHに移動することができる。従って、pH感知層の水溶解度は、第1の水溶解度に向かって低下できる。
【0049】
直鎖ポリマーは、トリガーpHにおいて水を吸収し、イオン化を生じる。イオン化の速度は、工業化水の吸収速度を制御することによって、典型的には、pH感知ポリマー層の密度を制御することによって工業化できる。pH感知層中で直鎖ポリマーの密度低下は、イオン化速度の低下となる。
【0050】
イオン化の速度は、pH感知層の組成、および機器周囲の範囲のpHによる。
【0051】
1つの態様によると、pH感知層は、第2または第3の親水性ポリマーを含む。好適な親水性ポリマーは、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸および/またはヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体(特に直鎖セルロース誘導体)およびポリビニルピロリドンを含む。1種または2種以上の親水性ポリマーのpH感知層への添加は、ファンデルワールス相互作用等の物理的相互作用を提供する。
【0052】
あるいは、pH感知層は、疎水性ポリマー、特に低分子量疎水性ポリマーを含むことができる。好適な疎水性ポリマーは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリラクチド−コ−グリコリドおよびポリカプロラクトンを含む。通常、疎水性ポリマーは、pH感知層中で実質的に均質に分散している。
【0053】
pH感知層の溶解または浸食の速度は、その組成による。バッファー群は、pH感知層中に取り込まれて、溶解または浸食の速度を低下できる。好適なバッファー群は、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸および関連した化合物を含む。細菌コロニーの程度が低い場合、放出されるイオンの数は小さい。これらのイオンのいくつかは、分解のより遅い速度を生じ、そして本発明の機器の寿命を伸ばすバッファー群によって取り込まれる。放出されるイオンの数は、バッファー群の取り込みにかかわらず、pH感知層の浸食または溶解となる細菌コロニーの増加と伴に、増加するであろう。
【0054】
1つの形態によれば、本発明の機器は、1つ超のpH感知層;典型的には、3つ超のpH感知層;さらに好適には、5つのpH感知層を含むことができる。
【0055】
それぞれのpH感知層は、同じpHトリガーまたは異なるpHトリガーを有することができる。それぞれのpH感知層は、異なる第2の水溶解度を有することができる。あるいはそれぞれのpH感知層は、同じ第2の水溶解度を有することができる。
【0056】
それぞれのpH感知層は、同じイオン化速度および同じ溶解速度または浸食速度を有することができる。あるいは、異なるpH感知層は、同一または相違するイオン化速度および/または溶解または浸食速度を有することができる。
【0057】
1つの態様によれば、隣接したpH感知層は、同じpHトリガーであるが、異なる第2の水溶解度を有することができる。
【0058】
あるいは、隣接したpH感知層は、異なるpHトリガーであるが、同じ第2の水溶解度を有することができる。
【0059】
典型的には、隣接したpH層は、イオン化の異なる速度、または溶解もしくは浸食の異なる速度を有する。
【0060】
1つの態様によれば、異なるpH感知層は、pH感知層の溶解または浸食によって放出される異なる機能性賦形剤を含む。
【0061】
1つの態様によれば、機器は、挿入および除去の容易さを高めるために、潤滑層を含むことができる。典型的には、潤滑層は、1種または2種以上の架橋したポリマーを含むことができる。
【0062】
通常機器は、内側表面および外側表面を含み、該内側表面は管腔を画定する。典型的には、機器の外側表面は、潤滑層を含む。通常、機器の内側表面は、pH感知層を含む。
【0063】
通常、機器は、体内で実質的に非分解性または浸食可能である少なくとも1つの構造層を含み、そして機器の周囲環境のpHにかかわらず機器に構造的安定性を提供する。
【0064】
典型的には、構造層の水溶解度は、2〜10のpHの間で実質的に一定のままである。通常、構造層の水溶解度は、周囲の環境のpHに関わらず実質的に一定のままである。
【0065】
特定の態様では、機器は、pH感知層、例えば、Eudragit(商標)層が、2つの層系の内側上に提供されている2層系を含むことができる。そうした系において、流体、例えば、尿等の体液は、機器の内側管腔を通って流れる(図2a)。
【0066】
ほかの態様において、機器は、2種のpH感知層、例えば、Eudragit(商標)層が、機器の内側層および外側層を形成する3層系を含むことができる。そうした3層系では、流体、例えば、尿等の体液は、内側管腔を通って、そして機器の外側表面の上を流れることができる(図2b)。
【0067】
さらにほかの態様において、複数のpH感知層を含む機器を提供できる。特定の態様では、第1の層の浸食により、第2の層が露出するように、第1のpH感知層を、第2のpH感知層に隣接して提供できる。態様において、pH感知層は、異なるpH値で浸食されることができる。
【0068】
好適に、態様において、機器の内側層および外側層は、溶融押出できる。
【0069】
好適に、態様において、分解性層は、患者の体内からの機器の挿入および除去に従うことができる。態様において、必要な場合には、好適なポリマーを含む構造層は、機器中に分解性層と組み合わせて提供できる。
【0070】
本発明のさらなる形態によれば、機器の表面に少なくとも1つのコーティングが提供される場合、pH感知層が機器上に提供されるように(該pH感知層は、直鎖ポリマーの水溶解度がpHトリガーで第1の水溶解度から第2の水溶解度に増加する直鎖ポリマーを含む)、機器へ適用するためのコーティング、1つまたは2つ以上の表面を有する本体構造を含む機器および機器の少なくとも1つの表面に適用されるように適合されたコーティングが提供される。
【0071】
特定の態様では、機器は、複数のpH感知層を含むコーティングを含むことができる。
【0072】
用語「コーティング」は、本明細書中で使用される場合、そして特に断らなければ、通常、機器に付着した材料をいう。コーティングは医療用機器の任意の部分をコーティングする材料を含むことができ、そして1層または2層以上のコーティング層として構成されることができる。コーティングは、実質的に一定または変化した厚さおよび組成を有することができる。コーティングは、機器表面の任意の部分、例えば管腔表面、管腔と反対の表面、または任意の部分またはそれらの組み合わせを含む医療用機器に付着できる。
【0073】
通常pH感知層は、ポリマーの水溶解度が増加するように、規定されたpHにおいて、例えばポリマーがイオン化できるより高いpHレベルにおいて、溶解できるか、または浸食されることができる層を意味する。好適に、充分な溶解または浸食の後で、機器中の新規な層が露出するように、完全に層が除去されることができる。通常pH感知層の溶解または浸食により、ポリマー鎖は、同じモノマー単位を有し傷ついていないままである。
【0074】
態様において、pH感知層は、クエン酸または他の小さい有機分子等の機能性賦形剤を含み、そしてそうした機能性賦形剤は、pH感知層の溶解または浸食により、通常制御された放出の様式で、放出されるであろう。
【0075】
本発明のさらなる形態によれば、構造層を提供する、および少なくとも1つのpH感知層をそこに適用するステップ(該pH感知層は、直鎖ポリマーの水溶解度が、pHトリガーにおいて第1の水溶解度から第2の水溶解度へ増加する直鎖ポリマーを含む。)を含む機器の形成方法が提供される。
【0076】
典型的には、構造層は、内側表面および外側表面を有し、該内側表面が管腔を画定する。通常、pH感知層は、構造層の内側表面に適用される。この方法は、1超のpH感知層を適用するステップを含むことができる。
【0077】
通常、機器は、人間または動物の体への挿入またはインプラントに好適な医療用機器である。本発明の第2の形態の特定の態様では、この方法は、多層押し出しを含む。
【0078】
好適に上記の様な機器は、本発明の方法により形成される。
【0079】
本発明のさらなる形態により、機器の人間または動物の体へのインプラントまたは挿入ステップを含む、人間または動物の体にインプラントされたか、または挿入された機器と関連した感染を予防もしくは緩和する方法が提供され、該機器は直鎖ポリマー(直鎖ポリマーの水溶解度がpHトリガーで第1の水溶解度から第2の水溶解度に増加する)を含むpH感知層を含む。
【0080】
通常、この方法は、既に生成された任意の感染が除去されることとなる。
【0081】
通常、この方法は、機器の付着物の形成を予防または緩和するステップを含み。典型的には、この方法はまた、既に形成された任意の付着物の除去のステップを含む。
【0082】
典型的には、機器が、関連した感染なしに、人間または動物の体にインプラントまたは挿入される時間は、少なくとも1日、通常、少なくとも3日、好適に、7日以上である。
【0083】
1つの態様によれば、少なくとも1つのpH感知層を含まない均等な機器と比較して、インプラントまたは挿入の時間を、少なくとも100%増加できる。通常、挿入またはインプラントの時間は、少なくとも150%;典型的には少なくとも200%増加できる。
【0084】
1つの態様によれば、インプラントされた機器は上記の様である。
【0085】
典型的には、本発明の方法は、カテーテル、特に導尿カテーテル、ステント、特に尿道ステントまたは胆管ステント、インプラント可能なまたは挿入可能な管、特に鼻腔胃管またはCAPD管、歯列矯正具または義歯の挿入またはインプラントと関連した感染を予防または緩和する。
【0086】
本発明のさらなる形態によれば、少なくとも1つのpH感知層を機器に適用するステップを含む、人間または動物の体にインプラントまたは挿入された機器と関連した感染を予防または緩和する方法が提供され、該pH感知層は、pHトリガーにおいて、直鎖ポリマーの水溶解度が第1の水溶解度から第2の水溶解度に増加する直鎖ポリマーを含む。
【0087】
典型的にはpH感知層を含む機器は、上記の様である。
【0088】
本発明のさらなる形態によれば、治療のために使用される機器が提供され、該機器は、直鎖ポリマーの水溶解度が、pHトリガーにおいて、第1の水溶解度から第2の水溶解度へ増加する直鎖ポリマーを含む少なくとも1つのpH感知層を含む。
【0089】
典型的には、この機器は、上記の様である。
【0090】
通常、この治療は、機器の人間または動物の体への挿入またはインプラントと関連した感染を予防または緩和する。
【0091】
本発明のさらなる形態によれば、治療での使用のための機器が提供され、該機器は、直鎖ポリマーの水溶解度が、pHトリガーにおいて、第1の水溶解度から第2の水溶解度へ増加する直鎖ポリマーを含むpH感知層を含む。
【0092】
この機器は、通常上記のようである。
【0093】
本発明のさらなる形態によれば、感染を予防または緩和するための機器の使用が提供され、該機器は、直鎖ポリマーの水溶解度が、pHトリガーにおいて、第1の水溶解度から第2の水溶解度へ増加する直鎖ポリマーを含む少なくとも1つのpH感知層を含む。
【0094】
この機器は、通常上記のようである。
【0095】
本発明のさらなる形態によれば、感染の予防または防止のための薬物の製造における機器の使用が提供され、該機器は、直鎖ポリマーの水溶解度が、pHトリガーにおいて、第1の水溶解度から第2の水溶解度へ増加する直鎖ポリマーを含む少なくとも1つのpH感知層を含む。
【0096】
この機器は、通常上記のようである。
【0097】
本発明のさらなる形態によれば、pH感知ポリマーが提供され、該ポリマーは、pH5〜pH7.8のpH範囲において、さらに好ましくは、pH6〜pH7.2のpH範囲において、またはあるいは5〜6、好ましくは5.5〜6のpH範囲において、変化する薬物溶離プロファイルを示す。このpH感知ポリマーは、通常直鎖である。
【0098】
変化できる薬物溶離プロファイルによって、所与のpH範囲の第1の終端において第1の速度でおよび所与のpH範囲の第2の反対の終端で第2の速度でポリマーから溶離することを意味する。pH感知ポリマーは、分解を受ける、例えば所与のpH、例えば生理的pHから離れたpHにおいてさらに溶けやすくなるので、薬物放出が起こる。例えば、生理的pHから離れさらに極端なpHにおいて、分解が大きい程、薬物の放出はより大きい。
【0099】
本発明のさらなる形態によれば、該ポリマーが、構造的完全性pH5〜pH7.8のpH範囲、さらに好ましくは、pH6〜pH7.2のpH範囲またあるいは、5〜6の、好ましくは5.5〜6のpH範囲において、構造的完全性における変化を有するpH感知ポリマーが提供される。pH感知ポリマーは通常直鎖である。
【0100】
構造的完全性における変化によって、このポリマーが、pH範囲のほぼ1つの終端において、ポリマーのシートまたは層を形成できるが、しかしpH範囲の反対の終端において分解し、ポリマーのシートまたは層を生成できないことを意味する。
【0101】
本発明のさらなる形態によれば、本明細書中に開示された任意の1種または2種以上の医療用機器を用いて患者を治療するための使用方法が提供され、これは、例えば、患者と、少なくとも1つのpH感知層を含む1つまたは2つ以上の表面を有する本体構造を含む医療用機器とを接触させることを含む患者を治療する方法を含み、少なくとも1つのpH感知層は、直鎖ポリマーの水溶解度が、pHトリガーにおいて、第1の水溶解度から第2の水溶解度へ増加する直鎖ポリマーを含む。この方法は、例えば、本発明の薬物溶離機器を提供することを含む患者の体への薬物化合物の投与のために開示されている。
【0102】
本発明の別の関連した態様において、組成物溶離機器を提供し、そして組成物溶離機器を患者の体内に導入することを含む、患者への組成物の投与方法が開示され、この組成物溶離機器は、少なくとも1つのpH感知層を含む1つまたは2つ以上の表面を有する本体構造を含み、少なくとも1つのpH感知層は、直鎖ポリマーの水溶解度が、pHトリガーにおいて、第1の水溶解度から第2の水溶解度へ増加する直鎖ポリマーを含む。
【0103】
明細書を通して、そうでないと記載がない限り、用語「含む」または「含み」、または「含んだ」または「含んでいる」等の変化形は、記載された、整数または整数の群を含み、任意の他の、整数および整数の群を排除しないことを意味すると理解される。
【0104】
本発明のそれぞれの形態の好ましい特徴および態様は、その内容にそぐわない限り、他の形態を準用する個々に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0105】
本発明の態様は、一例としてのみ、以下の付属の図を参照して、記載されるであろう:
【図1】図1は、本発明のカテーテルの細菌コロニーのステップを具体的に示し、*によって図示されたコロニーを作るバクテリアは、表面がコロニー化(2)されるように、挿入(1)の後で機器のコロニー化を始め、そして微生物の生物膜が形成され(3)、尿素分解バクテリアによって尿のpHが増加し(4)、そしてEudragit(商標)の浸食が上昇したpHを生じ、生物膜および不溶性堆積物の除去(5)となる;
【図2】図2は、2層系(a)および3層系(b)の機器(ii)に構造的完全性を与える薬物溶離/自己クリーニング層(i)および機能性層を具体的に示し;
【図3】図3は、5、10および20%配合のキノロン抗生物質ナリジクス酸を用いた、pH7で溶解するポリマー用スクリュー上でのトルクを具体的に示し;
【図4】図4は、調合物の機械的な特性が引張りモードでのDMTA、すなわちまたは動的機械的熱分析を使用して試験できることを具体的に示し;
【図5】図5は、pH6およびpH7、健康な感染していない尿を表わすために取られたpH6における、pH感知層を有する機器からの10%ナリジクス酸の放出プロファイルを具体的に示し;そして、
【図6】図6は、pH6およびpH7におけるpH感知層を有する機器からの10%ナリジクス酸の放出プロファイルを具体的に示す。
【図7】図7は、pH6.2およびpH7.8における5%レポフロキサシンを含むEudragit(商標)L100のpH感知層を有する機器からの抗菌レポフロキサシンの放出プロファイルを具体的に示し;
【図8】図8は、pH6.2およびpH7.8における10%レポフロキサシンを含むEudragit(商標)L100のpH感知層を有する機器からの抗菌レポフロキサシンの放出プロファイルを具体的に示し;
【図9】図9は、5%、10%および20%レポフロキサシン、それぞれを含むEudragit(商標)L100のpH感知層を有する3つの機器からの抗菌レポフロキサシンの放出プロファイルを具体的に示し;
【図10】図10は、それぞれ5%、10%および20%レポフロキサシンを含むEudragit(商標)4155FのpH感知層を有する3つの機器から抗菌レポフロキサシンの放出プロファイルを具体的に示し;
【図11】図11は、pH6.2およびpH7.8における5%レポフロキサシンを含むEudragit(商標)4155FのpH感知層を有する機器からの抗菌レポフロキサシンの放出プロファイルを具体的に示し;
【図12】図12は、pH6.2およびpH7.8における10%レポフロキサシンを含むEudragit(商標)4155FのpH感知層を有する機器からの抗菌レポフロキサシンの放出プロファイルを具体的に示し;
【図13】図13は、pH6.2およびpH7.8における20%レポフロキサシンを含むEudragit(商標)4155FのpH感知層を有する機器からの抗菌レポフロキサシンの放出プロファイルを具体的に示し;
【図14】図14は、pH6.2で2時間、pH7.8で2時間およびpH6.2で2時間での、Eudragit(商標)4155FのpH感知層を有する第1の機器およびEudragit(商標)L100のpH感知層を有する第2の機器からの抗菌レポフロキサシンの放出プロファイルを具体的に示す。
【図15】図15は、pH7.8で2時間、pH6.2で2時間およびpH7.8で2時間での、Eudragit(商標)4155FのpH感知層を有する第1の機器およびEudragit(商標)L100のpH感知層を有する第2の機器から抗菌レポフロキサシンの放出プロファイルを具体的に示し;
【図16】図16は、10%CAを含むEudragit(商標)4155FのpH感知層を有する第1の機器および10%CAおよび10%ナリジクス酸を含むEudragit(商標)4155FのpH感知層を有する第2の機器の、pH6.2での経時平均質量パーセンテージを具体的に示し;
【図17】図17は、Eudragit(商標)L100のpH感知層を有する第1の機器、10%ナリジクス酸を含むEudragit(商標)L100のpH感知層を有する第2の機器および10%レポフロキサシンを含むEudragit(商標)L100のpH感知層を有する第3の機器の、pH6.2での経時平均質量パーセンテージを具体的に示し;
【図18】図18は、Eudragit(商標)L100のpH感知層を有する第1の機器、10%ナリジクス酸を含むEudragit(商標)L100のpH感知層を有する第2の機器および10%レポフロキサシンを含むEudragit(商標)L100のpH感知層を有する第3の機器の、pH6.2での経時平均質量パーセンテージを具体的に示し;
【図19】図19は、Eudragit(商標)4155FのpH感知層を有する第1の機器、10%ナリジクス酸を含むEudragit(商標)4155FのpH感知層を有する第2の機器および10%レポフロキサシンを含むEudragit(商標)4155FのpH感知層を有する第3の機器の、pH6.2での経時平均質量パーセンテージを具体的に示し;
【図20】図20は、人工の尿中で4時間浸漬後の、Eudragit(商標)4155FのpH感知層を有する第2の機器と比較して、人工の尿中で4時間浸漬後の、PVCで形成された第1の機器へのPMIRの増加した細菌付着を具体的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0106】
ポリマーは、2軸押し出し機を用いた加工を可能にするために、好適な可塑剤と混合された。異なる薬物配合量の異なる抗菌剤を、ポリマー/可塑剤調合物と混合する。調合物を、加工前に24時間、デシケーター中に貯蔵した。種々の濃度の抗菌剤を有する調合物を次に押し出した。サンプルを生体内条件に近い放出媒体中で懸濁した。次にサンプルを0.45μmシリンジフィルターを使用してろ過し、そしてそれらの薬物放出特性を決定するために、UV分光法を使用して分析した。
【0107】
単一の薬物を配合したEudragit(商標)フィルムが、押出機バレルに沿った4つの異なるポートで抗菌剤を供給できる二軸スクリュー押し出しシステム、EDTAおよびクエン酸を使用して製造されることが期待される。これがスクリューのモジュラー設計と結合して、機能性賦形剤の分解なく生産されるように、極めて均一の密度および均質性を有する製品を可能にするであろう。
【0108】
いったん製造されると、フィルムはその後に特徴付けられ、そしてPVCとの共押出のために最適化されたフィルム層の選択が行われる。PVCおよび最適化されたpH応答層の多層押し出しが、最新の多層シート押し出し設備上で行われるであろう。典型的な集尿機器はチューブ状となる傾向があるが、多層化されたシートは、試験を可能にするように押し出されるであろう。
【0109】
共押し出しの前に、薬物を配合したEudragit(商標)ペレットは、二軸スクリューニーダーに接続された空冷ダイフェースペレタイザーを使用して調製されるであろう。これらのペレットは、レオロジー的特性への、可塑剤のタイプ、可塑剤含有量の影響、ならびに他の機能性賦形剤(EDTA、クエン酸、クロルヘキシジンおよびその塩、ナリジクス酸)を含有するEudragit(商標)ポリマーの影響を調べるために使用され;共押し出し工程の操作温度およびフィルムの最終特性を最適化するために、注意深く制御されることが好ましい。
【0110】
いったん最適化された処理条件がmDSCおよび熱レオロジー的実験から得られた知識を使用して決定されると、システムで層の厚さを変えた多層フィルムが製造される。
【実施例】
【0111】
例1
図3に具体的に説明されているように、押出機内で材料の粘度及び流動性の良好な指標を提供するスクリューのトルクを測定でき、そして異なる添加物および機能性試薬の両者がどのように材料の生産の容易性に影響するかについての近似を与える。これは材料の最終の機械的な特性への影響をいくらか有する。このグラフは、5、10および20%の配合量のキノロン抗生物質ナリジクス酸を有するpH7で溶解するポリマーを示す。ナリジクス酸含有量を増加させると非常に小さいトルクへの影響があった。しかし、他の試薬の1つの、レポフロキサシンは、観察されるトルクの増加を示し、加工をさらに難しくすることを示した。
【0112】
増加させたレベルのナリジクス酸がpH6で溶解するポリマーに加えられた場合、スクリューのトルクの低下が観察され、このポリマーを用いると、薬物が加工を助けることを示した。
【0113】
例2
引張りモードでのDMTA、すなわちまたは動的熱機械分析を使用して、調合物の機械的特性を調べることができる。これは、設定点の周りで一定で変動させながら、温度勾配に沿って生産物を加熱することを含む。このデータから、それより下では材料がガラス質状態として存在し、かつそれより上では材料がさらに柔軟なゴム状態で存在するガラス転移点を決定することが可能である。これは、ポリマーが緩和特性を受けることへの理解を提供し、最終製品の可撓性に意義があるであろう。
【0114】
図4は、pH6のポリマーを用いて、ガラス転移点の低下を生じるナリジクス酸を用いた加工の間に観察されたものを反映する値を具体的に示す。以前のように、加工の間に増加したトルクを有した試薬はまた、ガラス転移点を上昇させる。
【0115】
押し出された調合物のストリップを使用して、そして引張りモードでDMTAを使用してそれらを試験し、そしてトルク値を評価することで、レポフロキサシンが観察されるガラス転移点を高め、おそらく抗可塑化効果を有することが観察された。
【0116】
例3
本発明の機器の特別な層を形成するために使用できるであろう本発明の特別な調合物の態様を、pH6.2における薬物の溶離特性を決定するために試験した。調合物を使用して低いレベルで薬物を一定して溶離する層を提供できたが、しかし、機器、安全装置としての機器が配置されれば、感染が検出される場合、すなわち、pHが上昇する場合に、さらに急速な応答に切り替わる能力を有することができたであろう。典型的には、pH6.2が健康な、感染されていない尿のpHであり、一方、pH7.8が感染した尿のpHである。図5に具体的に説明するように、健康な尿を表わすpH6.2および感染した尿を表わすpH7.8で、PBS溶液を用いた溶解装置を使用して、10%ナリジクス酸の薬物放出研究を行った。
【0117】
この試験中で使用した調合物は、Eudragit(商標)S100および10%PEG8000を含む第1の調合物ならびにEudragit(商標)L100および20グリセロールおよび20%PEG8000を含む第2の調合物を含んでいた。
【0118】
例4
本発明の機器の特別な層を形成させるのに使用できるであろう本発明の特別な調合物の態様を、感染された尿を表わすpH7.8の媒体中で試験した。この試験で使用した調合物は、Eudragit(商標)S100および10%PEG8000を含む第1の調合物ならびにEudragit(商標)L100および20グリセロールおよび20%PEG8000を含む第2の調合物を含んでいた。
【0119】
例3において記載したポリマー調合物を熔解するpH6と比較して、ポリマーを溶解するpH7は、より長い時間をかけて、その薬物を放出する。
【0120】
ポリマーを溶解するpH6は、pH7のポリマーと異なるそうした放出プロファイルを示し、感染の存在に急速に応答することを可能にし、一方、ポリマーを溶解するpH7は、低いpH値で保護バリアーを作る。
【0121】
本発明は特に具体例を参照して示され、そして記載されたが、当然のことながら、当業者によって、本発明の範囲から離れることなく、形態および詳細への種々の変更がなされるであろう。
【0122】
例5
Eudragit(商標)L100を含むpH感知層を含む第1の機器、およびEudragit(商標)4155Fを含むpH感知層を含む第2の機器を形成した。これらの機器は、生理的pH(約6.2)での抗菌剤レポフロキサシンおよびナリジクス酸の制御された放出、および尿の感染と通常関連する上昇したpHレベル(約7.8)でのこれらの活性試薬の高められた放出速度を可能にした。
【0123】
抗菌剤の勢いのよい提供に加えて、多層化されたフィルムは、細菌付着がないであろう新規な/クリーンな表面をまた提供するであろう。
【0124】
図7および8は、放出媒体のpHを変えることによって、および抗菌配合量の変化をさらに通して、機器からの抗菌剤の放出を変更できることを証明する。
【0125】
Eudragit(商標)4155Fおよびレポフロキサシンからなるポリマーマトリックスは、Eudragit(商標)L100より、pH6.2において抗菌剤の遙かに制御された放出を有する。これは、pHが7を超えるまでこのポリマーが可溶性にならない事実による。これは、「通常の」条件下で抗菌剤の連続的な溶離を可能にするであろうので、非常に興味深い。これは、細菌付着を防止するであろうが、しかし、(P.mirabilisによって)ウレアーゼが生成され、そしてその後に尿素がアンモニアに分解するであろうし、上昇したpHの増加は、表面浸食となり、そして薬物の放出速度における増加となるであろう。これは、図9〜12中に具体的に説明されている。
【0126】
例6
例5の機器を製造した。機器の周囲のpH条件をpH6.2で2時間維持し、そして次に2時間でpH6.2に戻って調整する前に、pH7.8に2時間維持した。図13および14は、pH条件の変更に応答して、本発明の機器の停止、開始放出プロファイルを具体的に示す。
【0127】
例7
例5の機器を製造した。
【0128】
pH感知層の(指標として質量変化を使用して)浸食を評価し、そしてまたこの加工への抗菌剤を含むことの効果を決定するために、これらの研究を、pH6.2およびpH7.8で行った。pH6.2では、Eudragit(商標)L100を含む機器が明らかに質量を保った。研究の間に水の取り込みにより質量のわずかな増加があった。6を超えたpH値で浸食を開始したEudragit(商標)L100は、24時間後にほとんど完全な損失を示した。
【0129】
Eudragit(商標)L100を含むpH感知層の分解は、pH7.8において極めて速く、そしてこれは予想された。Eudragit(商標)4155Fを含むpH感知層は、pH7.8において質量を維持し、そして水の取り込みにより質量がさらに増加した。
【0130】
pH6.2および7.8でのpH感知層の浸食を、図15および16中に具体的に示す。
【0131】
例8
第1の機器は、PVCでできており、そしてpH感知層を含まなかった。第2の機器は、Eudragit(商標)4155FのpH感知層を含むPVCでできていた。2つの機器を、4時間の間、人工の尿の中に浸した。2つの機器の細菌付着を次に試験した。第1の機器への細菌付着は、第2の機器への細菌付着より遙かに多かった。この細菌付着は、第1の機器で少なくとも8倍であった。これを図20中に具体的に示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは2つ以上の表面を有する本体構造を含む機器であって、該表面の少なくとも1つは、直鎖ポリマーを含むpH感知層を含み、該直鎖ポリマーの該水溶解度が、pHトリガーにおいて、第1の水溶解度から第2の水溶解度に増加する、機器。
【請求項2】
該直鎖ポリマーが、該第2の水溶解度における水性環境において、溶解または浸食を受ける、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
該pHトリガーが7以上である、請求項1または2に記載の機器。
【請求項4】
該pHトリガーが5.5以下である、請求項1または2に記載の機器。
【請求項5】
該直鎖ポリマーが、SO結合、カルボキシル基および硫酸基の1つまたは2つ以上を含む、請求項3に記載の機器。
【請求項6】
該直鎖ポリマーがメタクリレートポリマーである、請求項5に記載の機器。
【請求項7】
該直鎖ポリマーが、第1級アミン基、第2級アミン基または第3級アミン基を含む、請求項4に記載の機器。
【請求項8】
該直鎖ポリマーが、ジメチルアミノメチルメタクリレートおよびジエチルアミノアクリレートの1種または2種以上を含む、請求項7に記載の機器。
【請求項9】
カテーテル、ステント、インプラント可能なまたは挿入可能な管、歯列矯正具または義歯の形態である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の機器。
【請求項10】
導尿カテーテル、導尿ステント、胆管ステント、鼻腔胃管、CAPD管の形態である、請求項9に記載の機器。
【請求項11】
該pH感知層が、バッファー群、抗菌化合物、抗生物質化合物、ウレアーゼ阻害剤、EDTAおよび可塑剤の1種または2種以上を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の機器。
【請求項12】
該pH感知層が、クエン酸、クエン酸トリエチル、およびクエン酸トリブチルの少なくとも1種を含む、請求項11に記載の機器。
【請求項13】
該機器周囲の環境が該トリガーpHから生理的pHに向かって移動するにつれて、該直鎖ポリマーの水溶解度が該第2の水溶解度から該第1の水溶解度に向かって減少する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の機器。
【請求項14】
3超のpH感知層を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の機器。
【請求項15】
構造層を提供する工程、そして該構造層へ少なくとも1つのpH感知層を適用する工程の各ステップを含む機器の形成方法であって、該pH感知層は直鎖ポリマーを含み、該直鎖ポリマーの水溶解度が、pHトリガーにおいて、第1の水溶解度から第2の水溶解度へ増加する、方法。
【請求項16】
該構造層が、内側表面および外側表面を有し、該内側表面が管腔を画定し、そして該pH感知層が、該構造層の該内側表面に適用されている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
1超のpH感知層を適用するステップを含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの多層押し出しステップを含む、請求項15〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の機器が形成される、請求項15〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
人間または動物の体にインプラントされたまたは挿入された機器と関連した感染を予防または緩和する方法であって、請求項1〜14のいずれか一項に記載の機器を該人間または動物の体にインプラントまたは挿入するステップを含む、方法。
【請求項21】
既に形成された感染が除去される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
該機器の付着物の形成が予防されるか、または緩和される、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
インプラントまたは挿入の後、少なくとも5日、該機器に感染または付着物がない、請求項20〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
感染のないインプラントまたは挿入の時間が、少なくとも1つのpH感知層を含まない均等な機器と比較して、少なくとも100%増加している、請求項20〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
治療での使用のための請求項1〜14のいずれか一項に記載の機器。
【請求項26】
感染の予防または緩和のための請求項1〜14のいずれか一項に記載の機器の使用。
【請求項27】
感染の予防または緩和のための薬物の製造における請求項1〜14のいずれか一項に記載の機器の使用。
【請求項1】
1つまたは2つ以上の表面を有する本体構造を含む機器であって、該表面の少なくとも1つは、直鎖ポリマーを含むpH感知層を含み、該直鎖ポリマーの該水溶解度が、pHトリガーにおいて、第1の水溶解度から第2の水溶解度に増加する、機器。
【請求項2】
該直鎖ポリマーが、該第2の水溶解度における水性環境において、溶解または浸食を受ける、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
該pHトリガーが7以上である、請求項1または2に記載の機器。
【請求項4】
該pHトリガーが5.5以下である、請求項1または2に記載の機器。
【請求項5】
該直鎖ポリマーが、SO結合、カルボキシル基および硫酸基の1つまたは2つ以上を含む、請求項3に記載の機器。
【請求項6】
該直鎖ポリマーがメタクリレートポリマーである、請求項5に記載の機器。
【請求項7】
該直鎖ポリマーが、第1級アミン基、第2級アミン基または第3級アミン基を含む、請求項4に記載の機器。
【請求項8】
該直鎖ポリマーが、ジメチルアミノメチルメタクリレートおよびジエチルアミノアクリレートの1種または2種以上を含む、請求項7に記載の機器。
【請求項9】
カテーテル、ステント、インプラント可能なまたは挿入可能な管、歯列矯正具または義歯の形態である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の機器。
【請求項10】
導尿カテーテル、導尿ステント、胆管ステント、鼻腔胃管、CAPD管の形態である、請求項9に記載の機器。
【請求項11】
該pH感知層が、バッファー群、抗菌化合物、抗生物質化合物、ウレアーゼ阻害剤、EDTAおよび可塑剤の1種または2種以上を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の機器。
【請求項12】
該pH感知層が、クエン酸、クエン酸トリエチル、およびクエン酸トリブチルの少なくとも1種を含む、請求項11に記載の機器。
【請求項13】
該機器周囲の環境が該トリガーpHから生理的pHに向かって移動するにつれて、該直鎖ポリマーの水溶解度が該第2の水溶解度から該第1の水溶解度に向かって減少する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の機器。
【請求項14】
3超のpH感知層を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の機器。
【請求項15】
構造層を提供する工程、そして該構造層へ少なくとも1つのpH感知層を適用する工程の各ステップを含む機器の形成方法であって、該pH感知層は直鎖ポリマーを含み、該直鎖ポリマーの水溶解度が、pHトリガーにおいて、第1の水溶解度から第2の水溶解度へ増加する、方法。
【請求項16】
該構造層が、内側表面および外側表面を有し、該内側表面が管腔を画定し、そして該pH感知層が、該構造層の該内側表面に適用されている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
1超のpH感知層を適用するステップを含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの多層押し出しステップを含む、請求項15〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の機器が形成される、請求項15〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
人間または動物の体にインプラントされたまたは挿入された機器と関連した感染を予防または緩和する方法であって、請求項1〜14のいずれか一項に記載の機器を該人間または動物の体にインプラントまたは挿入するステップを含む、方法。
【請求項21】
既に形成された感染が除去される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
該機器の付着物の形成が予防されるか、または緩和される、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
インプラントまたは挿入の後、少なくとも5日、該機器に感染または付着物がない、請求項20〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
感染のないインプラントまたは挿入の時間が、少なくとも1つのpH感知層を含まない均等な機器と比較して、少なくとも100%増加している、請求項20〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
治療での使用のための請求項1〜14のいずれか一項に記載の機器。
【請求項26】
感染の予防または緩和のための請求項1〜14のいずれか一項に記載の機器の使用。
【請求項27】
感染の予防または緩和のための薬物の製造における請求項1〜14のいずれか一項に記載の機器の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2012−501712(P2012−501712A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525629(P2011−525629)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051134
【国際公開番号】WO2010/026433
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(511002917)ラボラトリオス ファルマセウティコス ロビ,ソシエダッド アノニマ (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051134
【国際公開番号】WO2010/026433
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(511002917)ラボラトリオス ファルマセウティコス ロビ,ソシエダッド アノニマ (2)
【Fターム(参考)】
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