説明

ポリマー粒子およびフレグランスデリバリーシステム

本発明はその表面で化学的に官能化されていて、こうしてその上に親水性部分を有する球形の単疎水性ポリマーから形成されるポリマーマイクロおよびナノカプセルに関する。このカプセルは香料を吸収することができ、かつ場合により両親媒性コポリマーでコートされている。このカプセルは賦香材料の徐放を提供し、かつ基材上の香料の直接性を改善する芳香デリバリーシステムの製造を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は香料分野に関する。より詳細には、その表面で化学的に官能化されていて、こうしてその上に親水性部分を有する球形の単疎水性ポリマーから形成されるポリマー粒子に関し、このポリマー粒子はこうして賦香成分または組成物を吸収することができ、効果的な芳香デリバリーシステムを提供する。本発明のデリバリーシステムは基材上の揮発性芳香ノートの長期間継続する放出を付与するために有利に使用することができる。
【0002】
背景の分野
香料およびフレーバー産業は不安定で揮発性であることが公知である成分を取り扱う。最も揮発性の賦香材料、すなわち香料の最初のインパクトおよび新鮮さ効果に責任を有する“トップノート”とも呼ばれる賦香材料は、製造、貯蔵および香料または賦香された消費製品の使用の際に失われる最初のものである。従って、香料の成功はその芳香上の独自性だけではなく、消費製品におけると同様にその安定性にもある。
【0003】
カプセル化技術は、まず第1にフレグランスまたはフレーバーのような揮発性でかつ不安定な成分を、全ての可能な攻撃または分解工程、例えば酸化から保護することにより安定性を改善するための手段として公知技術において広く記載されており、大きな範囲に使用されている。
【0004】
更に、カプセル化は瞬間ではなくて、いくらかでも延長された期間にわたって延長された活性成分の放出を提供する手段でもある。言葉を換えると、カプセル化システムは活性成分の放出をゆっくりとさせることを可能にし、従って、このカプセル化は、香料分野において多くの適用においてそうであるように、制御された放出が望まれる適用に利用するために好適である。事実、前記のように、多くの揮発性成分、または“トップノート”は消費者の感覚への最初のインパクトに責任をおっているので、多くの場合、僅かに揮発性のフレグランスもまたはより揮発性のフレグランスも両方ともゆっくりと放出されることが望ましい。
【0005】
最後に、カプセル化システムは同様に粒子表面または基材との化学的または物理的結合を可能とするシステムを提供することにより基材上での分子の直接性(substantivity)を改善するための手段をも構成することができる。
【0006】
シクロデキストリンのような特別な材料でのマイクロカプセル化および包接化合物は賦香成分の揮発性を減少するために、安定性を改善するためにおよび徐放性を提供するために従来技術において使用されてきた。しかしながら、水性媒体と接触する場合、シクロデキストリンをベースとするシステムはフレグランスを直ちに放出し、このことはその制御された放出システムとしての使用、特に水性媒体に係る適用において、例えば洗剤においての使用を制限する。
【0007】
多くの他のカプセル化技術が従来技術に開示されており、例えばスプレー乾燥、コアセルベーションまたは更に押出成形を含む。これらの技術は香料のような活性成分を安定にし、かつ一定に制御された放出を提供するが、しかしながら基材からの賦香成分の徐放を改善することの可能なシステムを構成しない。今や、特に機能香料分野において、洗剤または繊維柔軟剤のような適用のために、この産業において繊維のような基材上への香料の直接性が最も重要な問題を構成する。
【0008】
表面上への香料の直接性を改善することのできるポリマー担体材料上への香料の吸収が、従来技術からのいくつかの発表、特に特許文献においての課題でもある。特に、適用において、結合させたポリマー担体の使用は、基材上への香料の沈積を改善する目的で香料カプセル化の枠組みの中に記載されている。例えば、US6194375はその中に吸収された香料を有する有機ポリマー粒子を開示しており、その際、遊離ヒドロキシ基を組み込む更なるポリマーが粒子の外面に付加している。洗剤適用においては、後者のポリマーは洗浄サイクルの間水または洗浄液から粒子の沈積を促進する働きを有する。同様に、US6329057は疎水性有機マトリックスを有し、かつ外側に遊離カチオン基を有するマトリックスと遊離ヒドロキシ基を有する更なるポリマーを含有するポリマー粒子を記載している。しかしながら、粒子の表面にグラフトする第2のポリマーの使用により適用において香料の沈積の改善を提供する一方、後者のシステムは延長した期間内での香料の制御された放出を同時に可能にしない。
【0009】
EP1146057は芳香分子を含むポリマーのナノ粒子を開示し、これは適用において所望の持続しかつ制御された放出作用を生じるとして記載されている。この記載されたナノ粒子は、乳化剤を含有する最初の開始剤の水溶液に液体モノマー成分および香料を連続的に添加することからなる半連続的なバッチ重合法により製造される。その後、第2および第3の開始剤を反応混合物に添加する。この方法は、未反応のモノマーでの香料の汚染を含むことがある、モノマーと芳香成分の混合の不利な点を有する。更に、香料は重合の間に遊離基と反応し、こうして分解に曝される。
【0010】
存在する従来技術から、該産業においてポリマーのカプセル化の分野において改善がなお必要とされ、かつ特にそこにカプセル化された活性成分の制御された放出と表面からの徐放を得るための基材上への前記活性成分の効果的な沈積とを同時に提供するデリバリーシステムがなお必要とされているということが推測される。本発明は、香料を効果的に吸収することができるようにその表面で化学的に変性されている単ポリマーの使用をベースとする新規マイクロまたはナノ粒子を提供することにより、従来技術が直面する問題の効果的な解決を提供する。本発明の粒子またはカプセルは、その使用および貯蔵の間香料を保護し、機能消費製品を賦香するために使用する時ベースからの他の成分との相互作用からこれを保護し、かつ基材からカプセル化した香料の放出を延長する。更に、本発明の粒子は、従来技術の場合とは異なり、香料の汚染または分解の全ての問題を回避する方法により製造することができる。
【0011】
本発明の開示
従って、本発明は、第1に次の工程:
a)撹拌下に少なくとも1種の疎水性モノマーをこの相当するポリマーが溶解せず、開始剤、架橋剤および少なくとも1種の安定剤を含有する媒体中に分散させ、こうして懸濁液、分散液またはミニエマルジョンを提供し;b)この懸濁液、分散液またはミニエマルジョンを典型的には50〜90℃の温度に加熱し、こうして重合を誘発し、疎水性ポリマー粒子を提供し;c)場合により有機溶剤の過剰を使用して、未反応のモノマーを除去し;かつd)ポリマー粒子を化学的に変性し、粒子の表面でおよび場合により粒子のコアの部分において、ポリマーの疎水性部分を親水性部分に変換することの可能な化学薬品を添加する、
を有する方法により得ることのできる新規固体マイクロ粒子またはナノ粒子に関する。
【0012】
本発明の粒子は、言い換えると、球状単架橋疎水性ポリマーから形成され、これはその表面で、および場合によりそのコアの部分で、親水性の部分を有するように化学薬品により化学的に変性されている。
【0013】
賦香成分または組成物は、有利に形成された本発明のマイクロまたはナノ粒子の中に自然に吸収され、こうして本発明の他の対象を構成する芳香デリバリーシステムを提供する。このようなデリバリーシステムは任意の種類の賦香適用に、純粋な(fine)香料並びに賦香機能製品に使用することができ、かつ特にシャンプー、洗剤または繊維柔軟剤のような適用に使用する場合に有利であり、その際、デリバリーシステムは香料の徐放、およびより詳細には洗浄またはすすぎサイクルの間の、適用における揮発性トップノートの基材からの持続する放出を提供する。この種の適用においては、本発明のシステムは香料が異なる基材上に沈積すること、およびこの基材上に移行した際には延長した期間にわたって知覚されることを可能にする。
【0014】
その表面および場合によりそのコアに親水性部分を有するように化学的に変性された球状単架橋疎水性ポリマーから形成された固体マイクロまたはナノ粒子は、こうして本発明の第1の対象である。前記のように、従来の今日まで開示されたシステムは、第1のポリマーが、この第1のポリマーから形成される粒子の表面で一定の機能を提供する第2のポリマーと結合されている。本発明は、このシステムが少なくとも表面で変性されている球状単ポリマーを使用することをベースとしているという、従来技術を越える第1の利点を提供する。この変性は有利に粒子に活性成分の吸収を可能にし、従って、これらの成分、典型的には賦香成分または組成物の高含量を保護する手段を提供する。粒子が完全に変性される、すなわち表面でおよびポリマーコアの全体で変性される場合には、親水性薬剤のカプセル化を考慮することができる。
【0015】
こうして、本発明のカプセルは、賦香成分または組成物で充填された場合、該成分または組成物のための効果的なデリバリーシステムを構成する。そのようなデリバリーシステムの製造は、前記のようなすでに製造され、精製されたマイクロまたはナノ粒子を賦香成分または組成物と接触させることを包含する。そのような方法においては、粒子の精製(工程c))、引き続く香料の粒子中への吸収が、未反応モノマーの含有の危険が存在しないシステムを獲得することを可能にし、こうして従来技術と異なり香料の可能な汚染を回避することを可能にする。他方、そのようなデリバリーシステムは球状カプセルの表面の親水性の部分の存在により、更に粒状基材とカプセルとの親和性を改善または変性することのできるコポリマーからなるコーチングを粒子の表面に有することができる。
【0016】
更に、本発明の対象、観点および利点は以下の詳細な説明から明らかになる。
【0017】
本発明の固体マイクロまたはナノ粒子は球状単架橋疎水性ポリマーから形成されており、疎水性ポリマーが少なくともその表面でおよびその体積において(すなわちそのコアの部分においてまたは全体において)化学的に変性され、ポリマーの疎水性部分の化学的変性から生じる親水性部分をそこに有するという事実において特徴を有する。本発明の目的のために好適な疎水性ポリマーは、ビニルモノマーと、重合されるモノマー中に含有される多少の架橋剤および/または連鎖分枝剤とを共重合することにより形成することができ、こうして多少の架橋がポリマー鎖間に生じる。本発明の目的のためのモノマーの好適なカテゴリーは式
【0018】
【化1】

[式中Rは水素または炭素原子1〜6個、有利には1〜3個を有するアルキル基であり、Rは炭素原子1〜8個を有する直鎖または分枝鎖アルキル基である]のエステルである。これらのモノマーの好適な例は、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレートおよびノルボルニル(メタ)アクリレートを包含するが、これに限定されるものではない。
【0019】
特別な実施態様においては、モノマーのこのカテゴリーは本発明の方法の第1工程で三級アミノ基を有する第2のアクリレートモノマーと混合される。
【0020】
本発明のこの目的のために好適である他のモノマーは式
【0021】
【化2】

[ここで、nは0〜3で変化する整数であり、かつRは水素、メチル、エチル、プロピルまたはイソプロピル基である]のスチレン誘導体である。
【0022】
前記モノマーから形成されるポリマー鎖間の架橋はしばしばポリオレフィンまたは多官能性架橋性ポリマーとも呼ばれる、2つの炭素−炭素二重結合を有するモノマーの僅かな量をモノマー混合物中に包含することにより達成することができる。式
【0023】
【化3】

[式中、Rは水素またはメチル基を表し、かつRは炭素原子1〜10個を有する直鎖または分枝鎖の脂肪族または脂環式基を表す]の架橋剤を例として記載することができる。本発明の目的に好適な架橋剤の他の例は、特にジビニルベンゼン、3,9−ジビニル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、ジエトキシジビニルシラン、ジビニルジメチルシラン、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、アジピン酸ジビニルエステル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジビニルセバケート、ジビニルテトラメチルジシラン、1,5−ジビニルヘキサメチルトリシロキサン、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテルまたはテトラ(エチレングリコール)ジビニルエーテルを含む。
【0024】
本発明のカプセルの架橋率はモノマーおよび架橋剤の相対割合により決まる。典型的なこの率は2〜30%である。
【0025】
本発明のマイクロ−またはナノ粒子は、その表面におよび場合によりポリマーのコアで親水性部分を有するように官能化されている球状単ポリマーから形成されているという事実により特徴付けられている。本発明の粒子の表面に存在する親水性部分は、後者の疎水性部分を親水性部分に変換することのできる化学薬品により、ポリマーの疎水性部分を化学的に変性することにより生じる。粒子表面および場合によりコアの化学的変性は、有利にこれを自然に、かつ高い量で任意のフレグランス材料または組成物を吸収することができるようにする。本発明の特別な実施態様においては、粒子の表面に存在する親水性部分がカルボン酸部分からなる。他の実施態様において親水性基は4級アンモニウム部分からなる。しかしながら、これらの例は本発明を制限するべきものではない。事実、ヒドロキシ部分、スルホネート部分またはチオール部分のような他の親水性基も考慮することができる。従って、当業者は開始モノマーを選択することができる。
【0026】
前記のようなマイクロまたはナノ粒子の製造法も、本発明の対象である。そのような方法は、a)撹拌下に少なくとも1種の疎水性モノマーをこの相当するポリマーが溶解せず、開始剤、架橋剤および少なくとも1種の安定剤を含有する媒体中に分散させ、こうして懸濁液、分散液またはミニエマルジョンを提供し;b)この懸濁液、分散液またはミニエマルジョンを典型的には50〜90℃の温度に加熱し、こうして重合を誘発し、疎水性ポリマー粒子を提供し;c)場合により有機溶剤の過剰を使用して、未反応のモノマーを除去し;かつd)ポリマー粒子を化学的に変性し、粒子の表面でおよび場合により粒子のコアの部分において、疎水性部分を親水性部分に変換することの可能な化学薬品を添加する工程を有する。
【0027】
第1の工程においては、ポリマー粒子の最終的に所望のサイズに依存して、懸濁液、分散液またはミニエマルジョンを形成する。より詳細には、ミニエマルジョンは、ナノ粒子、すなわち約50〜約500nmで変化する平均サイズを有する粒子を製造することを可能にする;一方モノマーの分散液および懸濁液はそれぞれ1〜5μmの間で変化する粒径および5μmを越える粒径を有するマイクロ粒子を製造することを可能にする。
【0028】
まだ官能化されていないナノカプセルの製造(すなわち工程a)〜c))は、公知技術において充分に知られている種々の方法で実施することができ、これにはミニエマルジョン重合も含まれ、これはK.Landfester 等著、Miniemulsion Polymerization with Cationic and Nonionic Surfactants, Macromolecules, 1999, 32, 2679-2683中に記載されている。より詳細には、この方法はミニエマルジョンの形成、すなわち50〜500nmの間で変化するサイズを有する安定な液滴の分散で開始する。この分散液は、モノマー、脂溶性開始剤、架橋剤、水、および界面活性剤からなる安定剤系、および“疎水性物”ともいわれるコサーファクタントからなる系を強く撹拌することにより得ることができる。例えば、ナノカプセルはアニオン、カチオンおよび非イオン界面活性剤を使用することにより得られる。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)およびセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)は好適な界面活性剤の例である。本発明の目的に好適なコサーファクタントはヘキサデカンからなる。好適なモノマーおよび架橋剤はすでに前に記載されている。
【0029】
他方、本発明によるマイクロ粒子の製造は、架橋剤、ベンゾイルペルオキシドのような開始剤およびポリビニルアルコールのような安定剤を有する水性媒体中へのモノマーの懸濁液または分散液の形成で開始する。懸濁重合は同様に十分に記載されており、当業者には公知である。
【0030】
重合工程は、ミニエマルジョン、懸濁液または分散液を約50〜90℃の間からなる温度に加熱し、かつ疎水性球状物が得られ、そのサイズは前記のように選択された最初の工程により決定される。
【0031】
未反応のモノマーを除去するために、任意の精製工程を引き続き実施する。精製工程はジクロロメタンのような有機溶剤を過剰に添加することにより実施され、引き続き例えばジオキサンで凍結乾燥する。
【0032】
方法の最後の工程は、必須であり、本発明の生成物を特徴付ける。この工程は疎水性ポリマーの表面および場合によりそのコアの部分の化学的変性からなり、こうしてポリマー粒子の疎水性部分を親水性部分に変換する。この表面および場合によりコア変性は疎水性部分を親水性部分に化学的に変性することのできる“化学薬品”を用いることにより実施される。開始モノマーがエステルである場合には、“化学薬品”は疎水性ポリマーのエステル官能基を化学的加水分解により分解し、こうしてエステル部分をカルボン酸部分に変換することのできる酸からなっていてよい。開始モノマーがスチレン誘導体からなる他の実施態様によれば、化学薬品は、3級アミノ部分を4級アンモニウム親水性部分に変換するヨウ化メチルのようなアミノ官能基を四級化することのできる薬剤であってよい。官能化工程のより詳細な記載は以下の実施例に記載されている。このように得られるカプセルは疎水性コア(または部分的に疎水性のコア)および親水性表面を有する。
【0033】
本発明による方法により得られるマイクロまたはナノ粒子の親水性表面は、これに活性成分、例えば賦香成分または組成物の吸収の有利な可能性を付与し、こうして芳香デリバリーシステムの製造を可能にする。本発明による粒子の親水性表面は親水性コポリマーによる粒子の更なるコーチングを容易にする。
【0034】
前記のような、香料成分または組成物で充填されている固体カプセルからなる芳香デリバリーシステムは同様に本発明の対象である。本発明のデリバリーシステムはそこに吸収された最も揮発性の分子の徐放を提供し、従って、特に機能香料のための適用に有用である。
【0035】
この明細書において使用されている用語“香料成分または組成物”は、天然および合成オリジンの種々のフレグランス材料を定義すると考える。これらは、単独の化合物及び混合物を包含する。本発明のデリバリーシステムは、液体または固体の形であってよい揮発性または不安定な成分をカプセル化することができる。そのような化合物の特別な例は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、アセテート、ニトリル、テルペン炭化水素、複素環式窒素含有または硫黄含有化合物のような種々の化学的群に属する賦香成分、並びに天然または合成オイルを包含する。これらの成分の多くは、S. ArctanderによるPerfume and Flavour Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USA、またはそのより最近の改訂版、またはその類似の本のような参考テキスト中にリストアップされている。
【0036】
本発明のマイクロ粒子の中に賦香成分または組成物を吸収することのできる割合は、粒子の全量に対して80質量%程度であってよく、以下の例において示されているようにフレグランスの極性の変化により影響を受けない。本発明のマイクロ粒子中に含有することのできる非常に高い香料の割合は全く予期されず、今日まで公知のシステムと比較してこのことは、このように得られたデリバリーシステムのための著しく重要な利点を提供する。
【0037】
本発明の特別な実施態様において、このデリバリーシステムは前記のように更に粒子の表面に吸着されたコポリマーの薄層を有する。このコポリマーは、特に水性懸濁液中での粒子の安定性を改善することができる。更に、粒子上のコポリマーの存在は、界面活性剤または機能製品またはベースの他の成分のような材料との相容性を粒子に付与し、そのような適用においてフレグランスの放出を制御することを可能にする。最後に、この任意のコーチングは基材上へのカプセルの沈積を改善しかつ制御する手段を構成しており、これはシャンプーまたは繊維柔軟剤のような機能製品に適用するために非常に有用である。従って、この発明の目的のために好適であるコポリマーの性質はデリバリーシステムで賦香されるべき製品の性質およびそのような製品中に存在する共成分の性質に従って選択される。繊維柔軟剤ベース中に利用するための本発明によるデリバリーシステムのコーチングに好適なコポリマーの例は、両親媒性のランダムまたはマルチブロックコポリマー、例えばポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(プロピレングリコール)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)またはポリ(テトラメチルアンモニウムエチルメタクリレート−コ−メチルメタクリレート)または更にポリ(メタクリル酸−コ−メチルメタクリレート)であるが、これに制限はされない。
【0038】
本発明の粒子の表面でのコポリマーの吸着は本発明のカプセルの表面の親水性部分の存在により容易にかつ物理的に制御可能にさせる。より詳細には、この表面へのコポリマーの吸着は自然であり、荷電コポリマーと粒子の表面での荷電親水性部分との間の静電相互作用に、または単に水素結合に依存する。こうして、pHの変化はコポリマーの吸着を制御するための方法であってもよく、例えば粒子の親水性カルボン酸部分のイオン化を惹起することにより、反対の荷電を有するコポリマーの自然な吸着を可能にする。一般的な方法においては、この吸着は選択されたコポリマーの水溶液に本発明によるデリバリーシステムを添加することにより簡単に実施され、引き続き分離工程を実施する。
【0039】
本発明のデリバリーシステムは前記のように得られた精製されたマイクロまたはナノ粒子を粒子中に直ぐに吸収される賦香成分または組成物と接触する工程からなり、こうして所望の芳香デリバリーシステムが提供される。カプセルの製造において精製工程はこの方法において必須であり、任意の未反応モノマーが賦香成分を汚染することを回避することを可能にする。
【0040】
賦香成分または組成物をカプセル化する本発明のコートされたまたは未コートの粒子は純粋なまたは機能香料のいずれの香料においても多くの適用に使用することができる。特に、香料、オーデコロンまたはアフターシェービングローションにおけるような適用において、更に機能製品、例えばセッケン、バスゲルまたはシャワーゲル、シャンプーまたは他のヘヤーケヤ製品、香粧品、デオドラントまたはエヤーフレッシュナー、洗剤または繊維柔軟剤またはハウスホールド製品の様な製品中に存在するベースの機能成分と一緒に、これらを香料配合物の製造に従来使用されている他の賦香成分、溶剤またはアジュバントと一緒に使用することができる。特に、コートされた粒子は液体および乾燥製品の両方に使用することができ、揮発性分子の効果的な保護、貯蔵の間の損失の強力な減少および更に延長された期間にわたっての徐放を同時に提供する。特別な実施態様においては本発明によるデリバリーシステムは界面活性剤を含有する洗剤または繊維柔軟剤を賦香するために使用され、かつベースの主要な界面活性剤の荷電部分と反対である表面の荷電部分を有するという事実において特徴を有する。
【0041】
一般的に全ての適用において、香料で充填された本発明の粒子またはカプセルはその物として使用することも、または香料配合物の製造に従来使用される他の香料成分、溶剤またはアジュバントからなる香料配合物の一部として使用することもできる。
【0042】
香料配合物の製造に従来使用されている他の香料成分、溶剤またはアジュバントと一緒に本発明によるデリバリーシステムを活性成分として含有する香料配合物は、こうして同様に本発明の対象である。簡単に“香料”ともしばしば呼ばれる用語“香料配合物”は香料産業の分野における枠組みの中で理解されるべきである。該分野においては、この用語は自体のユニークで香粧学的に好適な独自性を有しているとして理解される芳香材料のブレンドを示す。より詳細には、これは各材料がその全体のフレグランスを達成する際にその一部を奏する、一定の構成(特別な成分およびこれらのそれぞれの特別な割合)をベースとする注意深く調節されたブレンドである。こうして、この創造的で、独自性のある組成物は成分自体およびその相対的な割合により構成される配合物により構造的に特徴付けられる。
【0043】
本発明の枠組みの中で、固体デリバリーシステムは、例えば他の乾燥形の賦香共成分と乾燥ブレンドすることができる(押出成形した、スプレー乾燥したまたは他のカプセル化した形も考慮することができる)。
【0044】
香料の分野における香料配合物は心地の良い芳香材料の混合物だけではない。他方、動的なシステムを構成する反応成分および形成された生成物を含有する化学反応は、他に特定されない場合は、芳香材料が出発物質、形成された生成物またはその両方に存在していても芳香配合物であることはない。
【0045】
充分に定義された独自性を有していること以外にも、香料または香料配合物は多くの技術的要求に適合しなければならない。例えば充分に強くなければならず、拡散性でなければならず、持続性でなければならず、かつその主要な芳香特性がその蒸発の間保持されなければならない。
【0046】
更に、香料配合物は所定の適用の機能として適合されなければならない。特に、香料配合物は純粋なフレグランスのためにデザインされてもよいし、または予定される使用に好適な持続の度合いを有する必要のある機能製品(セッケン、洗剤、香粧品など)のためにデザインされてもよい。この配合物は最終製品において化学的にも安定でなければならない。これが達成される技術は香料製造者の分野において主要な部分であり、オリジナルであっても、良好な製品であっても、香料および/または香料配合物に必須の経験のレベルを達成するために献身的な研究が長年にわたって必要である。
【0047】
この技術は香料配合物が、ここでは“香料配合物の製造に現在使用されている溶剤またはアジュバント”として記載されている賦香材料以外の他の成分を含有していてもよいことを含む。
【0048】
先ず、この組成物が純粋な香料のためにまたは技術的な製品に使用するためにデザインされるかということとは独立して、溶剤系は最も多くの場合にフレグランスの一部である。香料配合物を製造する際に一般に使用される溶剤は、ジプロピレングリコール、ジエチルフタレート、イソプロピルミリステート、ベンジルベンゾエート、2−(2−エトキシエトキシ)−1−エタノールまたはクエン酸エチルを含むが、これに限定されることはなく、最も通常に使用される。
【0049】
他方、機能製品のための香料配合物の製造は、香粧品(如何に製品が匂うべきか)の、および製品組成物またはしばしば言う製品ベースへの香料を適合させる技術の両方を考慮することを含む。従って、香料配合物は賦香されるべきベースに依存して多くの異なる機能を有することのできる“アジュバント”を有していてよい。これらのアジュバントは例えば安定剤および抗酸化剤を含む。
【0050】
今日、賦香される製品タイプおよび製品配合物の範囲が広がり、頻繁な変化に曝されるので、製品ベースごとに基づきかつ使用することのできるアジュバントのそれぞれの場合に関する定義に基づくようなアプローチは不可能である。このことが、本発明が香料配合物中に現在使用される溶剤またはアジュバントの詳細なリストまたは詳細なアプローチを含まない理由である。しかしながら、当業者は、すなわち香料の専門家は、賦香されるべき製品の機能としてのこれらの成分の選択および香料中の賦香成分の性質の選択をすることができる。
【0051】
本発明を実施例により詳細に説明するが、この説明中温度は摂氏で示されており、省略形は該分野において通常のものを表す。
【0052】
図面の説明
図1は種々のサンプルからのリナロールおよびシトロネロールの放出キネティックスを示す棒グラフである、すなわち:
・ Ref.:モデル香料を1%含有する柔軟剤ベース;
・ S/B−2:モデル香料で充填され、かつポリ(メチルメタクリレート−コ−トリメチルアンモニウムエチルメタクリレート)でコートされたB−2型ナノカプセルを含有する柔軟剤ベース;および
・ S/B−4:モデル香料で充填され、かつB−2型ナノカプセルと同じコポリマーでコートされたB−4型ナノカプセルを含有する柔軟剤ベース。
【0053】
全てのサンプルは同じ量の香料を含有する。
【0054】
図2は2つのサンプルからの種々の原料のそれぞれ6時間および24時間後のヘッドスペース分析を示す、すなわち:
・ Ref.:モデル香料を0.5%含有するシャンプーベース;
・ S/B−2:モデル香料で充填され、かつポリ(メチルメタクリレート−コ−トリメチルアンモニウムエチルメタクリレート)でコートされたB−2型ナノカプセルを含有するシャンプーベース。
【0055】
香料の最終濃度は2つのサンプルのために同じである。
【実施例】
【0056】
本発明の実施の方法
例1
カルボン酸部分を有するようにその表面で化学的に変性されたバルクナノ粒子の製造
製法(工程a〜c)
水に溶かした界面活性剤、すなわちドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含有するフラスコ中に、テトラブチルアクリレート(tBuA)のような疎水性モノマーを注ぎ、任意に、メチルメタクリレート(MMA)またはヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)のような他のモノマー;エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)のような架橋剤;コサーファクタントまたは疎水性物質、例えばヘキサデカン;および脂溶性開始剤、例えばα,α’−アゾイソブチロニトリル(AIBN)と混合した。
【0057】
従って、次の組成を有する粒状混合物が製造された:
成分 質量[g]
tBuA/EGDMA 6.000
ヘキサデカン 0.125
SDS 0.072
AIBN 0.150
水 24.000
この混合は、1時間撹拌し、次いで60秒超音波を通過させた。エマルジョンは前記組成により水で完成した。多量のモノマーのためにはマイクロフリューダイザーを使用し、平均粒度100〜400nmの範囲のミニエマルジョンを製造した。次いで重合を65℃に加熱し、一夜機械的に撹拌することにより実施した。
【0058】
次いで、ポリマー粒子を、過剰のメタノール中で沈殿させ、フリットガラスで濾過し、メタノールで数回洗浄した。得られた白色生成物を凍結乾燥するためにジオキサン中に分散させた。粒子の5つのサンプルを、下記の第1表に記載したようにモノマーおよび架橋剤の相対割合を変えることによって、種々の架橋率で製造した。モノマー/架橋剤の6gから開始し、純粋なナノカプセル4gが得られた。
【0059】
サイズの分布は、動的光散乱法により検査した。最終カプセル懸濁液を特徴付ける、ミニエマルジョン中の液滴の平均サイズは、200〜260nmからなった。
【0060】
カプセルの官能化(工程d)
典型的な実験法において、カプセル5gおよびセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)1gを濃HCl25ml中に分散させた。ポリマー粒子のタイプに依存して、この混合物を室温で30分間〜24時間の変化させた時間の間撹拌した。次いで、水酸化ナトリウムNaOHの水性溶液を中性pHが得られるまで滴加した。官能化カプセルを抽出するために、ジクロロメタン50mlを懸濁液に添加し、得られた中間相を濃縮し、かつ凍結乾燥した。
【0061】
その上にカルボン酸部分を有するようにその表面が官能化した粒子3.5gが得られた。
【0062】
官能化粒子の特徴付け
赤外線スペクトルは約3300cm−1にバンドの存在を示し、これは酸官能基に特徴的であり、エステル官能基の酸官能基への分解を証明する。このナノカプセルを水中に分散させ、ゼータ電位測定により分析した。これはpH値を4から9に変化させたときゼータ電位の減少を示し、このことは粒子の表面がカルボン酸基を有していることを示している。
【0063】
香料でのナノカプセルの膨潤
カプセルの膨潤のために使用したモデル香料は次の原料を混合することにより製造した:
成分 質量部
リナロール 15
シトロネロール 10
酢酸カルビノール 10
Dihydromyrcenol1) 28
Verdox(R)2) 25
Verdyl acetate3) 12
合計 100
1)製造元:International Flavors and Fragrances, USA
2)2−t−ブチル−1−シクロヘキシルアセテート;製造元:International Flavors and Fragrances, USA
3)製造元:Givaudan-Roure SA, Vernier, Switzerland。
【0064】
5つのカプセルサンプルをそれぞれモデル香料の過剰と混合し、1日〜数日間室温で膨潤させた。次いで、香料の過剰を除去し、B−1、B−2、B−3、B−4およびB−5と呼ばれる最終的に膨潤したカプセル中の香料のフラクションをそれぞれ膨潤工程前および後のカプセルの質量を測定することにより計算した。結果を第1表に記載する。
【0065】
【表1】

【0066】
粒子のコーチング
次いで、モデル香料を含有するナノカプセルをポリ(エチレングリコール−ブロック−プロピレングリコール−ブロック−エチレングリコール)、PEG−PPG−PEG、またはポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)(PDADMAC)のような両親媒性ポリマーの水溶液に添加した。
【0067】
次いで、コートされた粒子を抽出し、例えば特別な適用のためのベース中に分散する(例5および6参照)。
【0068】
例2
カルボン酸部分を有するようにその表面で化学的に変性した中空ナノカプセルの製造 方法(工程a〜c)
水に溶かした界面活性剤、すなわちドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含有するフラスコ中に、モノマー(tBuA)を含有する溶液を、任意に、他のモノマー(MMA);1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート(HDDMA)またはエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)のような架橋剤;多量の(全油相の25質量%の)疎水性物質、すなわちヘキサデカン;および脂溶性開始剤、すなわちα,α’−アゾイソブチロニトリル(AIBN)との混合物の形で添加した。
【0069】
特別な混合物は次の組成を有した:
成分 質量[g]
tBuA/EDDMA 7.030
ヘキサデカン 1.760
SDS 0.500
AIBN 0.132
水 60.000
この混合物を1時間撹拌し、次いでマイクロフリューダイザーを通過させた。サイズの分布を動的光散乱法により検査した後、エマルジョンを65℃に加熱し、一夜機械的に撹拌を実施した。重合反応の最後にサイズの分布を再び測定し、反応の前に得られたものに比較した。
【0070】
次いで、ポリマー粒子を、過剰のメタノール中で沈殿させ、フリットガラスで濾過し、メタノールで数回洗浄した。最後に、得られた生成物を50℃で真空下に乾燥した。次いで得られたナノカプセルをペンタン中に分散させ、数時間撹拌下に保持し、濾過し、真空下に50℃で乾燥した。ナノカプセルの5つのサンプルを異なるタイプのモノマーおよび異なる架橋率で、かつ第2表に示すようにモノマーと架橋剤の相対比を変化させて製造した。
【0071】
カプセルの官能化(工程d)
例1に記載したと同じ方法を存在するカプセルの官能化に使用した。
【0072】
得られたカプセルの特徴付け
エステル基の分解は赤外線スペクトルにより制御した。サイズの分布およびゼータ電位はカプセルサンプルに関して例1に記載されているように測定した。
【0073】
ナノカプセルの香料での膨潤
膨潤実験の方法は、例1に記載されていると同様である。結果は第2表に示されており、ここでは最終的に膨潤したカプセルをそれぞれH−1、H−2、H−3、H−4およびH−5として記載している。
【0074】
【表2】

【0075】
粒子のコーチング
香料でカプセルを膨潤させた後、これらをそれぞれガー(guar)ヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドおよびポリ(メチルメタクリレートトリメチルアンモニウムエチルメタクリレート)の水溶液に添加した。香料を含有するナノカプセル上への吸着をゼータ電位測定により制御する。コーチングのための使用されたポリマーの濃度を相応する放出キネティックスに基づいて最適化した。
【0076】
例3
カチオン部を有するようにその表面で化学的に変性された中空ナノ粒子の製造
製法(工程a〜c)
この方法において、使用されたモノマーの少なくとも1種はジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)のような3級アミン基を含有する。典型的な実験においては、反応混合物は次の組成を有した:
成分 質量[g]
DMAEMA 3.243
tBuA 2.944
EGDMA 0.792
ヘキサデカン 1.837
SDS 0.600
AIBN 0.158
水中にSDSを溶かした後、EGDMA、tBuA、ヘキサデカン、DMAEMAおよびAIBNの混合物を添加し、全ての混合物を1時間撹拌した。次いで、得られたエマルジョンを室温で2分間超音波処理した。サイズの分布を測定し、反応混合物を72℃に加熱し、この温度に1夜保持した。次いで、この混合物を室温に冷却し、ヘプタン50ml中に分散し、濾過した。得られた組成物を次いで真空下に50℃で乾燥した。この組成物で、3級アミン基を有する純粋なナノ粒子が架橋度8%で製造された。
【0077】
カプセルの官能化(工程d)
二頚丸底フラスコ中で、純粋なナノ粒子1.9gを無水テトラヒドロフランTHF(CaH上で蒸留)20ml中に分散させた。この媒体を氷浴により0℃に冷却した。この溶液に、MeSO795mgをシリンジを用いて滴加した(n=6.3ミリモル、M=126.13g.モル−1)。この溶液を0℃で20分間撹拌し、次いで室温で3時間撹拌した。反応混合物を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄し、次いで固相を真空下に50℃で乾燥した。
【0078】
官能化粒子の特徴付け
水中に分散した、官能化ナノカプセルのサイズ分布は動的光散乱測定法で測定した。ナノカプセルの表面のカチオン基の存在は、ゼータ電位測定により制御された。
【0079】
ナノカプセルの香料での膨潤
膨潤実験の方法は例1に報告されたと同じである。同じモデル香料を使用する際に、カプセル化した香料のフラクション48.4%が測定された。
【0080】
例4
カルボン酸部を有する化学的に変性されたマイクロ粒子の製造
方法(工程a〜c)
装置:撹拌機(スチール)、滴加ロート、凝縮器およびアルゴン導入口を備える10lジャケット付きガラス反応器(Schmizo)。
【0081】
水(脱イオン品質の5l)を反応器中に供給し、次いでポリビニルアルコール(100g)を添加し、この混合物を撹拌と共に70℃に加熱した(撹拌速度:480rpm)。溶解した後、t−ブチルアクリレート(tBuA)(155g)、エチレングリコールジメチルアクリレート(4.9g)およびベンゾイルペルオキシド(開始剤)の脱気した溶液を70分間にわたって滴加した。反応混合物を20時間撹拌下に70℃に保持した。次いで、反応混合物を室温に冷却し、濾過した。この固体を脱イオン水で4回洗浄し、その後未反応のモノマーおよびその他の副生成物をテトラヒドロフランでソックスレー(Soxhlet(R))抽出器中で抽出することにより除去した(2操作、それぞれ3時間)。最終的に、マイクロカプセルを50℃で真空下に(20Pa)乾燥し、次いで過篩し(45メッシュ)、白色粉末136gが得られた。このマイクロ粒子の平均直径は、光学顕微鏡により測定され、これは約60μmであった。
【0082】
マイクロカプセルの官能化(工程d)
a)表面で
表面官能化は強酸によるt−ブチルエステル加水分解により達せられた。100mlの丸底フラスコにマイクロ球体2.00g、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HDTMAB)0.10gおよび濃HCl溶液20mlを装入した。このフラスコに冷却器を取り付け、この反応を撹拌下に1夜続けた。次いで、官能化したマイクロ球体を濾過により集め、フィルター上で脱イオン水ですすぎ、かつ最終的に50℃で真空下に乾燥した。
【0083】
b)体積において(コア官能化)
前記の方法で得られたマイクロカプセルの2つの異なる官能化をトリフルオロ酢酸およびジクロロメタンの同体積溶液を用いて実施した。100mlの丸底フラスコにトリフルオロ酢酸(TFAA)およびジクロロメタンの同体積溶液約40mlを装入した。マイクロ球体約2gをこの溶液中に分散させ、フラスコ上に冷却器を取り付けた。この分散液を加熱して還流させ、エステル分解反応を短距離の深さの官能化のために2時間実施し、内部のコア官能化のために20時間実施した。次いで、このマイクロ球体を回転蒸発器を用いてTFAAおよびジクロロメタンの両方を蒸発させることにより乾燥させた。ジクロロメタンを再びフラスコ中に供給し、再蒸留した。最後の工程は、TFAAが生成物中に検出されなくなるまで繰り返した。次いで、マイクロ球体を50℃で真空中で1夜乾燥した。
【0084】
香料でのマイクロカプセルの膨潤
このカプセルをモデル香料(例1参照)の過剰で、1〜3日間膨潤させた。次いで、残りの香料から膨潤したマイクロカプセルを濾過により分離し、エタノールで洗浄した。この実験を種々の化学的官能化度または種々の極性(すなわちLogP、Pはオクタノールおよび水の間の分配係数である)を有する種々の原料に関して繰り返した。第3表は、次の原料に関する最終的に膨潤したマイクロカプセルにおける得られた質量分率を示す:酢酸ベンジル、ゲラニオール、サリチル酸ヘキシルおよびHabanolide(R)
【0085】
【表3】

【0086】
第3表中に報告された値は異なる賦香成分間の極性の差異(logPの変化により示される)がカプセル中にカプセル化される香料のフラクションに影響を与えないことを概略的に示す。
【0087】
例5
繊維柔軟剤中での本発明によるデリバリーシステムの性能の測定
サンプルの製造
例1に記載されているように製造されたナノカプセルを使用した。モデル香料で膨潤した後、カプセルを完全に4級化されたポリ(メチルメタクリレート−コ−ジメチルアミノエチルメタクリレート)の0.05%の水性コポリマー溶液中に分散させた。コポリマーのモノマー組成は1対1であった。コポリマー濃度はフレグランス放出キネティックスに基づいて最適化した。次いで、得られた懸濁液を直接以下の組成の柔軟剤ベースに混合した:
標準柔軟剤ベース:
次の組成の柔軟剤ベースを使用した:
成分 %関数
Stepantex(R)VS90 16.5
塩化カルシウム溶液、10% 0.2
モデル香料1) 1.0
水 82.3
1)例1参照
3種の異なるサンプルを製造:
・柔軟剤ベースにモデル香料1%からなる対照サンプルを柔軟剤ベースに添加、“Ref.”と呼ぶ;
・ナノカプセルB−2(例1の第1表参照)を柔軟剤ベースに添加、S/B−2と呼ぶ;
・ナノカプセルB−4(例1の第1表参照)を柔軟剤ベースに添加、S/B−4と呼ぶ。
【0088】
【表4】

【0089】
ラインテスト:洗濯機シミュレーション
洗濯機条件のために、柔軟剤35ml、綿2kgおよび水15 lからなる組成物が考慮された。我々のサンプルに関しておよび約47gの綿タオル(16×22cm)に関して同じ条件を維持するために、各サンプル0.82gおよび水352.35mlを使用した。綿タオルを1つ1つ7分間ラインテスト容器中の希釈サンプルで濯いだ。次いで、この綿タオルを10秒間遠心分離し、室温で乾燥させた。
【0090】
動的なヘッドスペース分析:
所定の時間での香料放出を追跡するために、7×16cmの綿タオルの切片をシリンダー状のガラス容器(体積=80ml)中に装入した。一定の空気流(160ml/分)下に、揮発性物質をTenax(R)TAカートリッジ上に吸着することにより収集する。次いで、このカートリッジをPerkin Elmer Turbomatrix ATD Desorber中で熱的に脱着させ、AgilentGCで分析した。
【0091】
図1は異なるサンプル、すなわちRef.、B−2およびB−4に関して、リナロールおよびシトロネロールの放出キネティックスを示す。全ての測定は乾燥綿タオル(室内条件で空中で保持)上で実施された。結果は種々のサンプル間に性能に関して明らかな差を示した。カプセルB−2およびB−4は香料の徐放に関して改良した。この効果はカプセル化されたリナロールおよびシトロネロールに関して重要に思われる、それというのも3日後に放出がカプセル化なしで賦香された柔軟剤に比較して約3〜5倍であった。
【0092】
例6
シャンプー適用における本発明によるデリバリーシステムの性能の測定
シャンプーベース
以下の組成のシャンプーベースを使用した:
成分 %関数
脱イオン水 46.80
チロースH10 0.20
Jaguar Exel 0.20
ジメチコン/ラウレス−23/サリチル酸 1.00
Dehyton AB−30 4.00
Texapon NSOIS 40.00
Amphotensid GB2009 3.00
Arylpon F 0.50
Cithrol EGDS3432 0.50
Rewomid IPP240 1.00
セチルアルコール 1.00
Lanette E 0.40
Glydant 0.15
Phenonep 0.05
クエン酸20%水性溶液 0.70
オパシフィアー631 0.50
サンプル製造
・シャンプー+香料(“Ref.”)
香料50mgに水2mlおよびシャンプー8mlを添加した。この混合物を電磁撹拌機により均質にした。
・シャンプー+カプセル+ポリマー(“Sh./B−2”)
香料で膨潤させたナノカプセル(香料50mgに等量)を完全に4級化されたポリ(メチルメタクリレート−コ−ジメチルアミノエチルメタクリレート)溶液2ml中に分散した。コポリマーのモノマー組成は1対2であった。混合物を少なくとも24時間撹拌した。シャンプー8mlを添加し、少なくとも24時間電磁撹拌機で撹拌する。
【0093】
各サンプルの組成を第4表中に示す。
【0094】
【表5】

【0095】
洗浄レポート
毛髪8gのために(2×)2.5gに相当するシャンプーの2つの部分量を製造した。
【0096】
三枚の直径13cmの結晶化皿(cristallisoirs)をそれぞれ15℃の水道水で満たした。ポリエチレン手袋を着用する。
・60秒間35℃の流れる水道水で濯ぐ、
・毛髪を2本の指の間を2回通すことにより過剰の水を除く、
・第1の部分量で60秒間毛髪を泡立てる、
・60秒間35℃の流れる水道水で濯ぐ、
・前記のように過剰の水を除く、
・第2の部分量で60秒間毛髪を泡立てる、
・毛髪のバンドを第1の15℃の結晶化皿に3回浸漬する、
・毛髪を2本の指の間を1回通すことにより過剰の水を除く、
・毛髪のバンドを第2の15℃の結晶化皿に3回浸漬する、
・毛髪を2本の指の間を1回通すことにより過剰の水を除く、
・毛髪のバンドを第3の15℃の結晶化皿に3回浸漬する、
・毛髪を2本の指の間を1回通すことにより過剰の水を除き、10秒間フルーツスピナー(fruit soinner)中に置く。
【0097】
ヘッドスペース測定
香料放出を追跡するために、一定の期間、毛髪バンドをシリンダー状セル(V=80ml)中に置く。一定の空気流(160ml/分間)下に、揮発物質をTenax(R)カートリッジ上に吸収することにより収集した。このカートリッジをPerkin Elmer Turbomatrix ATD Thermo Desorber中で熱的に脱着させ、AgilentGCで分析した。それぞれの実験に関して、全ての方法を2回実施した。
【0098】
結果
図2は、2つのサンプルに関してそれぞれの原料のヘッドスペース分析を示す:対照(Ref.)および香料がB−2−タイプのカプセル中にカプセル化されている以外は対照と同じ条件を有するサンプル。洗浄工程の6時間および24時間後に、フレグランスの放出に関してナノカプセルの強い効果を観察することができた。放出量は原料の特性に依存した。測定は、乾燥した毛髪(室内コンディションで空中に保持)に関して実施した。結果は、サンプル間の性能に関して明らかな差異を示す。カプセルB−2は香料の徐放を改善する。24時間後に、リナロール、シトロネロールおよびカルビノールアセテートの放出が約2倍高く(カプセルなしの賦香シャンプーに比較して)、かつVerdyl acetateの放出は約10倍高い、という効果はより重要のように思われる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】種々のサンプルからのリナロールおよびシトロネロールの放出キネティックスを示す棒グラフ図。
【図2】2つのサンプルからの種々の原料のそれぞれ6時間および24時間後のヘッドスペース分析を示す棒グラフ図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程:
a)撹拌下に疎水性モノマーをこの相当するポリマーが溶解せず、開始剤、架橋剤および少なくとも1種の安定剤を含有する媒体中に分散させ、こうして懸濁液、分散液またはミニエマルジョンを提供し;
b)この懸濁液、分散液またはミニエマルジョンを典型的には50〜90℃の温度に加熱し、こうして重合を誘発し、疎水性ポリマー粒子を提供し;
c)場合により有機溶剤の過剰を使用して、未反応のモノマーを除去し;かつ
d)ポリマー粒子を化学的に変性し、粒子の表面でおよび場合により粒子のコアの部分において、ポリマーの疎水性部分を親水性部分に変換することの可能な化学薬品を添加する、を有する方法により得ることのできる固体マイクロ粒子またはナノ粒子。
【請求項2】
工程a)に使用されるモノマーが式
【化1】

[式中、Rは水素または炭素原子1〜6個を有するアルキル基であり、Rは炭素原子1〜8個を有する直鎖または分枝鎖アルキル基である]のエステル、および式
【化2】

[式中、nは0〜3で変化する整数であり、かつRは水素、メチル、エチル、プロピルまたはイソプロピル基である]のスチレン誘導体からなる群から選択される、請求項1記載のマイクロ粒子またはナノ粒子。
【請求項3】
工程a)で使用されるモノマーが請求項2で定義された式(I)のエステルであり、工程d)で使用される化学薬品がエステル部分をカルボン酸部分に変換することの可能な酸である、請求項2記載のマイクロ粒子またはナノ粒子。
【請求項4】
工程a)で使用されるモノマーが請求項2で定義された式(II)のスチレン誘導体であり、工程d)で使用される化学薬品がアミノ部分を4級アンモニウム部分に4級化することのできる4級化剤である、請求項2記載のマイクロ粒子またはナノ粒子。
【請求項5】
工程a)中の疎水性モノマーが3級アミン基を含有する第2のモノマーとの混合物の形で使用される、請求項1記載のマイクロ粒子またはナノ粒子。
【請求項6】
球状の単架橋疎水性ポリマーから形成された固体マイクロ粒子またはナノ粒子において、このポリマーが化学薬品により化学的に変性されており、その表面および場合によりそのコア中で親水性部分を有することを特徴とする、固体マイクロ粒子またはナノ粒子。
【請求項7】
疎水性ポリマーがポリエステルからなり、かつ親水性部分がカルボン酸部分からなる、請求項6記載の固体マイクロ粒子またはナノ粒子。
【請求項8】
疎水性ポリマーがポリスチレン誘導体からなり、かつ親水性部分が4級アンモニウム部分からなる請求項6記載の固体マイクロ粒子またはナノ粒子。
【請求項9】
請求項1記載の固体マイクロ粒子またはナノ粒子上に賦香成分または組成物の過剰を、該粒子が前記成分または組成物で膨潤するように添加することを含む方法により得ることができる、芳香デリバリーシステム。
【請求項10】
膨潤したマイクロ粒子が該粒子の全質量に対して賦香成分または組成物を80質量%まで含有する、請求項9記載の芳香デリバリーシステム。
【請求項11】
該粒子が賦香成分または組成物で膨潤されている、請求項6記載の固体粒子を有する芳香デリバリーシステム。
【請求項12】
膨潤粒子がその表面に吸着されたコポリマーを有する、請求項11記載の芳香デリバリーシステム。
【請求項13】
延長した期間にわたって、基材上に長期に継続するトップノートを付与するための、請求項9記載のデリバリーシステムの使用。
【請求項14】
香料配合物の調合の際に現在使用されている、他の賦香成分、溶剤またはアジュバントと一緒に請求項9に記載のデリバリーシステムを有する香料配合物。
【請求項15】
香料またはオーデコロンの形の、請求項14記載の香料配合物。
【請求項16】
ベースとなる機能成分と一緒に賦香成分としての請求項9記載のデリバリーシステムまたは請求項14記載の香料配合物を含有する、アフターシェーブローション、セッケン、バスゲルまたはシャワーゲル、シャンプーまたはその他のヘヤーケア製品、香粧品、デオドラント、エヤーフレッシュナー、洗剤または繊維柔軟剤またはハウスホールド製品の形の賦香された機能製品。
【請求項17】
粒子が洗剤または柔軟剤の主要な界面活性剤の電荷と反対の電荷をその表面に有する、少なくとも1種の界面活性剤を含有する洗剤または柔軟剤の形の請求項16記載の賦香された機能製品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−518790(P2006−518790A)
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502368(P2006−502368)
【出願日】平成16年1月22日(2004.1.22)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000200
【国際公開番号】WO2004/067584
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1、route des Jeunes、 CH−1211 Geneve 8、 Switzerland
【Fターム(参考)】