説明

ポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法

【課題】 本発明は、高分子量、高融点を有するポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、重量平均分子量4,000〜30,000のポリ−L−乳酸(L成分)と、重量平均分子量4,000〜30,000ポリ−D−乳酸(D成分)とを、D成分とL成分を、D成分/L成分=40/60〜3/97またはL成分/D成分=40/60〜3/97の重量比で、溶融混合した後、固化し、これを固相重合することからなるポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子量、高融点を有するポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法に関する。また本発明は、機械的強度、耐熱性、熱安定性等に優れるポリ乳酸ブロック共重合体および成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然環境保護の見地から自然環境中で分解する生分解性ポリマーとして、また再生可能な資源を有効利用した環境配慮型プラスチックとして、植物を原料とするバイオプラスチックが注目されている。特に、ポリ乳酸系ポリマーは融点が170℃前後と比較的高く、しかも透明性に優れる溶融成形可能な生分解性ポリマーである。例えば、ポリ−L−乳酸の融点とガラス転移温度とはそれぞれ175℃、60℃であり、その射出成形品はガラス状で硬くて脆い。しかしながら、延伸により分子配向されたポリ−L−乳酸繊維やフィルムは十分な強度を有する。よって、食品用トレーや包装などの短期間で廃棄され、それほどの機械的強度を必要としない製品のほか、長期の寿命と高性能が要求される自動車や家電製品などのエンジニアリング用途にも展開されている。
一方、融点が比較的高いポリ乳酸系ポリマーとして、ポリ(L−ラクチド)とポリ(D−ラクチド)とをブレンドして熱特性を向上させる方法が知られている(特許文献1)。該文献1では、L−ラクチドを開環重合してポリ(L−ラクチド)と、同様にしてD−ラクチドから得たポリ(D−ラクチド)を、溶液中で両者をブレンドすることで高融点のホモポリマーによって形成される結晶相とは全く異なる新しい結晶構造(以下ステレオコンプレックス構造と呼ぶ)を出現させている。
【0003】
また、ポリ(R−ラクチド)の部分と結合されたポリ(S−ラクチド)の部分からなり、その際に少なくとも一つの上記部分が共重合の一部である高分子組成物とエラストマーならびにゲルおよび繊維が開示されている(特許文献2)。これによればポリ(S−ラクチド)とポリ(R−ラクチド)の混合比、分子量比が異なる場合でも、また、ポリ(S−ラクチド)セグメントとポリ(R−ラクチド)セグメントを有するブロック共重合体である場合でも、ステレオコンプレックス構造が出現することが報告されている。
また、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とのブレンド物からなるポリ乳酸繊維も開示されている(特許文献3)。該繊維は、重量平均分子量が20,000〜1,000,000のポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とから1〜50重量%の混合溶液を調製し、これを凝固液によって紡糸して製造されている。
【0004】
一方、上記特許文献1〜3は、いずれもポリ乳酸やポリラクチドを溶媒中に溶解するものであるが、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とをドライブレンドした後に溶融混合し、またはポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸のいずれか一方を溶融させた後に、残る一方を加えて混合してなるポリ乳酸樹脂組成物に関する技術もある(非特許文献1、特許文献4、特許文献5)。特許文献4では、ポリ−D−乳酸またはポリ−L−乳酸の重量平均分子量比が、ポリ−L−乳酸/ポリ−D−乳酸を3以上にすると耐熱性が向上することを見出している。
【0005】
また、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とからなるポリ乳酸ステレオコンプレックス繊維であって、高温結晶溶解相が結晶相全体の90%以上を占め、かつ高温結晶融解相の融解開始温度が190℃であり、アイロンがけによって風合いが硬化することがない繊維も開示されている(特許文献6)。該発明は、ポリ乳酸系繊維が熱処理により硬化する現象は、高温結晶溶融相の溶融開始温度と密接な関係があり、高温結晶溶融相の存在比率を特定範囲とし、かつ高温結晶溶融相の溶融開始温度を特定温度とすることで、熱処理による硬化現象を防止するものである。
【0006】
このようなポリ乳酸のステレオコンプレックスの形成に際して、リン酸エステル金属塩を結晶核剤として使用する技術もある(特許文献7)。リン酸エステル金属塩を核剤として添加することで結晶化ピークをダブルピークにせず、結晶化温度と結晶化速度とを上昇させ、射出成形サイクルを短縮させ得る、というものである。
【0007】
更に、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを混合して混合物として使用するが、該混合物の融点よりも低い温度で固相重合して製造したポリ乳酸ブロック共重合体も開示されている(特許文献8)。
【0008】
このようにステレオコンプレックス構造を応用する技術について各種の検討が行われている。
【特許文献1】特開昭61−36321号公報
【特許文献2】特開昭63−241024号公報
【特許文献3】特開昭63−264913号公報
【特許文献4】特開2003−96285号公報
【特許文献5】特開2000−17163号公報
【特許文献6】特開2003−105629号公報
【特許文献7】特開2003−192884号公報
【特許文献8】特開2003−238672号公報
【非特許文献1】Macromolecules, 24, 5651-5655 (1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のステレオコンプレックスポリ乳酸樹脂は、本来ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との物理的混合物であるため、両者の混合比や、それぞれの重量平均分子量の相違によって物理的特性が変化する。このため、結晶化する際の両者の量比が不適切な場合には、共重合体の分子量が増加し難く、長い重合時間が必要になって、生産性が低下するという問題がある。
また、高価なD−乳酸の効果を十分発揮するため、より高いステレオコンプレックス結晶生成率が要求される。しかし、従来の方法では、高温結晶融解相の形成が十分ではなく、機械的強度や耐熱性に劣る結果となり、電子機器や機械部品等への活用には十分でなかった。
また、結晶核剤を添加すると、得られるポリ乳酸樹脂の生分解性や透明性が低下する場合がある。
【0010】
本発明は、上記の従来技術における問題点を解決しようとするものであり、機械的強度ならびに耐熱性、熱安定性に優れるポリ乳酸ブロック共重合体、その製造方法、該方法により得られたポリ乳酸ブロック共重合体、成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、ポリ−L−乳酸(L成分)とポリ−D−乳酸(D成分)との混合物からポリ乳酸ブロック共重合体を形成させる際に、L成分またはD−成分の比率を偏らせることで、分子量増加率およびステレオコンプレックス結晶生成率が向上することを見い出し、本発明を完成させた。
【0012】
また、その結果、分子量分布が狭く、機械的強度、耐熱性、熱安定性に優れるポリ乳酸ブロック共重合体が簡便に得られることを見い出した。
【0013】
即ち、本発明は、重量平均分子量4,000〜30,000のポリ−L−乳酸(L成分)と、重量平均分子量4,000〜30,000のポリ−D−乳酸(D成分)とを、D成分/L成分=40/60〜3/97またはL成分/D成分=40/60〜3/97の重量比で、溶融混合した後、固化し、これを固相重合することからなるポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法である。
【0014】
また、本発明は上記製造方法により得られたポリ乳酸ブロック共重合体である。さらに該ポリ乳酸ブロック共重合体からなる成形品である。
【0015】
加えて本発明は、下記式で表される乳酸由来の繰り返し単位からなり、かつポリ−L−乳酸ブロック(L単位)およびポリD−乳酸ブロック(D単位)からなり、重量平均分子量が4万以上であるポリ乳酸ブロック共重合体であって、
【0016】
【化1】

【0017】
L単位の重量平均分子量が4,000〜30,000であり、D単位の重量平均分子量が4,000〜30,000であり、L単位とD単位との比が、D単位/L単位=40/60〜3/97またはL単位/D単位=40/60〜3/97であり、D単位およびL単位により形成されたステレオコンプレックス結晶の含有率が5〜39%であるポリ乳酸ブロック共重合体である。
【発明の効果】
【0018】
本発明方法によれば、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の配合比を偏らせることで、ポリ乳酸ブロック共重合体の分子量増加率(%/時間)が15〜80%/時間となり、高い生産性でポリ乳酸ブロック共重合体を製造することが出来る。
【0019】
ステレオコンプレックス結晶は、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との結晶が対になることにより形成される。本発明方法によればポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の配合比を偏らせることにより、少ないほうの成分が効率的にステレオコンプレックス結晶の生成に寄与し、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との量比からみたステレオコンプレックス結晶生成率に優れている。具体的には、ステレオコンプレックス結晶生成率が2.5〜4.4となる。
【0020】
本発明方法において、固相重合を、段階的に重合温度を上げて行く方法により、分子量増加率を向上させることができる。また、ステレオコンプレックス結晶生成率も向上させることができる。
【0021】
本発明方法によれば、ポリ乳酸ブロック共重合体の形成は、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との混合物を溶融成形したり、溶液キャスティングしたりすることで同時に行うことができるため、このような工程で成形される成形品の製造にも応用が容易である。
【0022】
本発明のポリ乳酸ブロック共重合体は、L−乳酸とD−乳酸のみで構成されるため、透明性、安全性に優れ、かつ低刺激であり、生分解性にも優れる。
【0023】
本発明のポリ乳酸ブロック共重合体は、分子量分布(Mw/Mn)が狭く、機械的強度、耐熱性、熱安定性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明方法は、特定の比率でポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸を溶融混合し、固化させて、ポリ−D/L−乳酸ブレンドを形成する工程と、得られたポリ−D/L−乳酸ブレンドを固相重合する工程とを含む。
【0025】
ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸と、その対掌体部分は相互に立体規則性が異なっているため、両者を溶融混合した後に結晶化させると、らせん状のポリ−L−乳酸鎖とポリ−D−乳酸鎖とが相互に隣接して配置され、いわゆる部分的にステレオコンプレックスを形成する。そこで、比率の高いホモ部分が濃縮され、効率的に分子量が増加すると同時に、低分子の部分が優先的に反応されるため、最終分子量分布は狭くなる。
【0026】
本発明では、ポリ−L−乳酸(L成分)とポリ−D−乳酸(D成分)を偏る比率で配合する点に特徴がある。L成分/D成分の比率を偏らせると分子量増加率が上昇し、分子量分布が狭まり、ステレオコンプレックス結晶の生成率が向上する。その結果、得られるポリ乳酸ブロック共重合体の機械的強度、耐熱性、熱安定性が向上する。
【0027】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0028】
(ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸)
本発明で使用するポリ−L−乳酸とは、L−乳酸単位を主として含む重合体であり、またポリ−D−乳酸とはD−乳酸単位を主として含む重合体である。これらの重量平均分子量は4,000〜30,000、好ましくは5,000〜20,000、特に好ましくは6,000〜10,000である。4,000を下回るとポリ乳酸ブロック共重合体の重量平均分子量が低下し、機械特性が低下する場合がある。30,000を上回ると粘度が高すぎ、生産性が低下する場合がある。ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸の重量平均分子量は、後述する方法で測定した数値である。
【0029】
ポリ−L−乳酸は、90〜100モル%、好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは98〜100モル%のL−乳酸単位から構成される。他の単位としては、D−乳酸単位および/またはD−乳酸以外の共重合成分単位が挙げられる。D−乳酸単位および/またはD−乳酸以外の共重合成分単位は、0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜2モル%である。
【0030】
ポリ−D−乳酸は、90〜100モル%、好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは98〜100モル%のD−乳酸単位から構成される。他の単位としては、L−乳酸単位および/またはL−乳酸以外の共重合成分単位が挙げられる。L−乳酸単位および/またはL−乳酸以外の共重合成分単位は、0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜2モル%である。
【0031】
共重合成分単位は、2個以上のエステル結合形成可能な官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等由来の単位およびこれら種々の構成成分からなる各種ポリエステル、各種ポリエーテル、各種ポリカーボネート等由来の単位が例示される。
【0032】
ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。
【0033】
多価アルコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族多価アルコール等あるいはビスフェノールにエチレンオキシドが付加させたものなどの芳香族多価アルコール等が挙げられる。
【0034】
ヒドロキシカルボン酸として、グリコール酸、ヒドロキシブチルカルボン酸等が挙げられる。
【0035】
ラクトンとしては、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。
【0036】
本発明で使用するポリ−L−乳酸および/またはポリ−D−乳酸は、乳酸の環状二量体であるラクチドの開環重合法(特開平7−118259号公報、特開平7−138253号公報参照)、乳酸の直接重縮合法(特開平9−31180号公報)、溶融重合法や固相重合法(特開2001−139672号公報、特開2001−297143号公報)、これらの2種類以上の組み合わせなどの公知の方法で製造することができるが、品質、コストの面から乳酸を脱水縮合する方法で製造したものを用いるのがより好ましい。
【0037】
本発明に用いるポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸は、これらポリ−L−乳酸やポリ−D−乳酸を構成するL−乳酸やD−乳酸の光学純度{100×[L]/([L]+[D])または100×[D]/([L]+[D])}が、92%以上、より好ましくは95%以上、特には96%以上であることが好ましい。光学純度が92%を下回ると、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とのらせん構造が崩れ、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とのステレオコンプレックス構造をとることが困難となり、結晶化度が低下するため耐熱性、機械的強度に優れるポリ乳酸ブロック共重合体が得られない場合がある。
【0038】
(溶融混合)
本発明は、ポリ−L−乳酸(L成分)とポリ−D−乳酸(D成分)を特定の割合で溶融混合した後、放冷固化し、ポリ−D/L−乳酸ブレンドを形成する工程を含む。
【0039】
本工程において用いるポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との割合は、ポリ−L−乳酸が主たる成分となる場合、ポリ−D−乳酸/ポリ−L−乳酸が重量比で40/60〜3/97である。好ましくは35/65〜5/95、より好ましくは30/70〜5/95、さらに好ましくは15/85〜5/95である。また、この逆にポリ−D−乳酸が主たる成分となる場合、ポリ−L−乳酸/ポリ−D−乳酸が重量比で40/60〜3/97である。好ましくは35/65〜5/95、より好ましくは30/70〜5/95、さらに好ましくは15/85〜5/95である。
【0040】
例えば、40/60<(ポリ−D−乳酸/ポリ−L−乳酸)<60/40の場合には、分子量増加率が小さく、耐熱性に優れた高分子量のポリ乳酸ブロック共重合体が得られない場合がある。
【0041】
また、(ポリ−D−乳酸/ポリ−L−乳酸)<(3/97)の場合、または(ポリ−L−乳酸/ポリ−D−乳酸<(3/97)の場合、ポリ−D−乳酸またはポリ−L−乳酸の一方が少な過ぎて、ステレオコンプレックス結晶そのものが生成しなくなる場合もある。
【0042】
本発明方法において、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸は両者を溶融混合した後に放冷し固化させると、容易にステレオコンプレックス部分を形成する。
【0043】
本発明では、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の偏る比率の点に特徴があるが、混合の際の装置等への各化合物の投入順序などは問わない。従って、2成分を同時に混合装置に投入してもよく、例えばポリ−L−乳酸を溶融した後に、ポリ−D−乳酸を投入および混合してもよい。この際、各成分は、粉末状、顆粒状またはペレット状などのいずれの形状であってもよい。混合には、ミルロール、ミキサー、単軸または二軸押出機、加熱可能なバッチ式容器などを用いて加熱し混練すればよい。
【0044】
本発明方法において溶融混合温度は、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸が溶融する温度条件であればよいが、溶融混合中の分解反応を抑えるために、溶融混合物が固まらない程度にできるだけ温度を下げて行うことが好ましい。従って、ポリL−乳酸またはポリD−乳酸の溶融点のいずれか高い方を下限とし、その下限値より50℃、より好ましくは30℃、特には10〜20℃高い温度を上限とする範囲で溶融することが好ましい。具体的には、150℃〜200℃で溶融混合することが好ましい。
【0045】
本発明方法において溶融混合時の雰囲気は特に限定されるものではなく、常圧および減圧のいずれの条件下でも行なうことができる。常圧の場合には、窒素などの不活性ガス流通下で行うのが好ましい。また溶融の際に分解生成するモノマーを取り除くためには、減圧下で行うことが好ましい。
【0046】
ポリ−D/L−乳酸ブレンドの重量平均分子量は、4,000〜30,000、好ましくは5,000〜20,000、特に好ましくは6,000〜10,000である。4,000を下回るとポリ乳酸ブロック共重合体の重量平均分子量が低下し、機械特性が低下する場合がある。なお、ポリ−D/L−乳酸ブレンドの重量平均分子量は、後述する方法で測定した数値である。
【0047】
ポリL−乳酸とポリD−乳酸との溶融混合時に、次の固相重合のために、重合触媒を添加しておくこともできる。このような触媒としては、塩化第一スズ、塩化亜鉛などの金属ハロゲン化物、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化亜鉛などの金属酸化物、オクチル酸スズ、酢酸亜鉛などの有機カルボン酸金属塩などを用いることができる。これらの使用量は、ポリL−乳酸とポリD−乳酸との合計量100重量部に対して0.0001〜0.2重量部、さらに好ましくは0.0005〜0.1重量部である。
【0048】
また、共触媒としてアルミニウム、チタン、ゲルマニウムなどの金属アルコキシドや、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エチルスルホン酸などの有機スルホン酸を用いてもよい。これらの使用量は、ポリL−乳酸とポリD−乳酸との合計量100重量部に対して、0.01〜0.1重量部、さらに好ましくは0.03〜0.1重量部である。これらを単独または併用して用いることができる。なお、このような重合触媒や共触媒が原料化合物であるポリD−乳酸やポリL−乳酸に含まれている場合には、更に添加する必要はない。
【0049】
溶融混合時間は、一般には2〜60分、より好ましくは5〜10分である。溶融が十分に進行し、ステレオコンプレックスが形成されると溶融点が上昇する。それに応じて溶融温度を、溶融混合物が固まらない程度に徐々に上げていくことが好ましい。
【0050】
混合時には原料化合物を溶解または分散できる溶媒を使用してもよい。例えば、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸をそれぞれ別々に溶液に溶解し、それらを混合した後に溶媒を除去させてもよい。溶媒を留去した後に上記条件で加熱により溶融し、次いで冷却すればポリ−D/L−乳酸ブレンドが形成される。また、該混合溶液を加熱下にキャスティングする溶液キャスティングによってもポリ−D/L−乳酸ブレンドを製造することができる。
【0051】
(固相重合)
本発明では、得られたポリ−D/L−乳酸ブレンドを用いて固相重合を行う。本発明方法では固相重合は、ガラス転移温度(Tg)以上で融点(Tm)以下の温度、より好ましくはTg以上であってTmより10℃低い温度、特にはTg以上であってTmより50℃低い温度以下で行う。TgやTmは、DSCによって測定することができる。ガラス転移温度を下回ると重合が進まず、一方、融点を超えると実質的に固相重合ができなくなるため、耐熱性、耐久性に優れるポリ乳酸ブロック共重合体が得られない場合がある。
【0052】
本発明方法では固相重合は、不活性気体流通下もしくは減圧下で行うことが好ましく、例えば、1〜2,000Pa、好ましくは10〜200Paとする。ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とは、エステル反応や脱水縮合反応によって化学的に結合されるため、反応の進行に伴ってH2Oが副生する。減圧下で重合させるとこの副生水を系外に効率的に除去することができ、反応平衡を重合側に移行させることができるので好ましい。2,000Paを上回ると、このような脱水が不十分となり、一方1Paを下回ってもそれ以上の脱水効果が得られず無駄であると同時に副製するラクチドが抜けて収率を低下させるので好ましくない。
【0053】
固相重合の時間は、少なくとも5時間、好ましくは5〜50時間である。
【0054】
本発明においては、重合度の上昇度に対応して固相重合温度を上げることが好ましい。例えば、例えば、固相重合の温度(Tn:℃)および該温度を維持する時間(tn:時間)を、以下の式を満足するn個の段階により行うことが好ましい。
【0055】
140≦Tn≦170
n<Tn+1
1≦tn≦15、
n=1〜10
即ち、140℃から170℃の間で、温度T1でt1時間維持したのち、T1よりも高い温度T2でt2時間維持し、さらに、T2よりも高い温度T3でt3時間維持するというように段階的に重合温度を上げて行くことが好ましい。総重合時間(Σtn)は、5〜50時間が好ましく、さらに好ましくは20〜40時間である。
【0056】
このように段階的に重合温度を上げて行くと、分子量増加率と共に最終の重量平均分子量(Mw)が向上する。また、後述のステレオコンプレックス結晶生成率も増加するので極めて好ましい。徐々に高温にすることで結晶の成長を促し、結晶サイズがそろっていくためと考えられる。
本発明では、固相重合の装置としては特に装置に限定はないが、バッチ式濃縮乾燥装置、連続式固相重合装置などを使用することができる。また、コニカルドライヤー、ドラム式加熱器などを使用こともできる。
【0057】
(ポリ乳酸ブロック共重合体)
本発明のポリ乳酸ブロック共重合体は、下記式で表される乳酸由来の繰り返し単位から実質的になるホモポリマーである。
【0058】
【化2】

【0059】
また、重量平均分子量が4,000〜30,000であるポリ−L−乳酸ブロック(L単位)および重量平均分子量が4,000〜30,000であるポリ−D−乳酸ブロック(D単位)がランダムに配置されたポリマーである。
【0060】
D−乳酸単位とL−乳酸単位との比は、D単位/L単位=40/60〜3/97、好ましくは35/65〜5/95、より好ましくは30/70〜5/95、さらに好ましくは15/85〜5/95である。また、L単位とD単位との比は、L単位/D単位=40/60〜3/97、好ましくは35/65〜5/95、より好ましくは30/70〜5/95、さらに好ましくは15/70〜5/95である。
【0061】
さらに、本発明のポリ乳酸ブロック共重合体は、ステレオコンプレックス結晶の含有率が5〜39%、好ましくは、20〜39%である。ステレオコンプレックス結晶含有率は後述の方法によって計算することが出来る。また、重量平均分子量は40,000以上、好ましくは、40,000〜200,000、より好ましくは80,000〜200,000である。分子量分布(Mw/Mn)は、1.5〜2.5の範囲が好ましい。
【0062】
本発明のポリ乳酸ブロック共重合体は、比較的低温で短い時間で重合できるため、その色相がよいものを得ることも出来る。得られる樹脂の色相はLab値においてL値が99以上、b値の絶対値が1.5以下の範囲となるものを得ることが出来、光学用途、色調が重要な各種用途に好適に用いることができる。
【0063】
本発明のポリ乳酸ブロック共重合体は、185℃以上、より好ましくは190℃以上、特に好ましくは200℃以上の温度域に融解ピークを有する。185℃を下回ると、用途によっては耐熱性や熱安定性が不十分な場合がある。
【0064】
本発明のポリ乳酸共重合体は後述の方法によって測定する、ステレオコンプレックス結晶生成率が2.5〜4.4となる。
【0065】
本発明におけるポリ乳酸ブロック共重合体には、その目的を損なわない範囲内で、通常の添加剤、すなわち紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、離型剤、染料、顔料、抗菌・抗かび剤などを配合することができる。
【0066】
本発明のポリ乳酸ブロック共重合体は、成形品として広く用いることができる。成形品としては、フィルム、シート、繊維、布、不織布、射出成形品、押出成形品、真空圧空気成形品、ブロー成形品、農業用資材、園芸用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品、電気・電子部品などがある。
【実施例】
【0067】
以下、実施例のより本発明を具体的に説明する、なお、本発明はこれらによって限定されるものでない。なお、製造例、実施例および比較例における特性値等の測定は以下に従った。
(1)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレンに換算した。GPC測定機器は、
検出器;示差屈折計島津RID−6A、
ポンプ;島津LC−9A、
カラム;東ソ−TSKgelG3000HXL、TSKgelG4000HXL,TSKgelG5000HXLとTSKguardcokumnHXL−Lを直列に接続したもの、あるいは東ソ−TSKgelG2000HXL、TSKgelG3000HXLとTSKguardcokumnHXL−Lを直列に接続したものを使用した。
【0068】
溶離液としてはクロロホルムを使用し、温度40℃、流速1.0ml/minで流し、濃度1mg/ml(1%ヘキサフルオロイソプロパノールを含むクロロホルム)の試料を10μl注入した。
【0069】
(2)熱的特性
島津DSC−60示差走査熱量測定計DSCを用いた。
測定は、試料10mgを窒素雰囲気下、昇温速度10℃/minで室温から250℃まで昇温し、20分間放冷、再び10℃/minで250℃まで昇温させる方法により行った。第一スキャンでは、ホモ結晶融解温度(Tmh)、ホモ結晶融解熱(ΔHmh)、ステレオコンプレックス結晶融解温度(Tms)、ステレオコンプレックス結晶融解熱(ΔHms)、結晶化温度(Tc)を測定した。第二スキャンではガラス転移点(Tg)を求めた。
【0070】
(3)分子量増加率
分子量増加率は、ポリ−D/L−乳酸ブレンドの重量平均分子量(Mw1)、得られたポリ乳酸ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw2)および重合時間(t)から下記式により算出した。
分子量増加率=[(Mw2−Mw1)/Mw1]/t×100%
【0071】
(4)総結晶化度(χc(総))
結晶化度は、以下のように求めた。
100%結晶化したポリ乳酸ブロック共重合体のホモ結晶融解熱(ΔHmh0)を−203.4J/g、100%結晶化したポリ乳酸ブロック共重合体のステレオコンプレックス結晶融解熱(ΔHms0)を−142J/gとして、DSCから実際に得られたホモ結晶融解熱(ΔHmh)、ステレオコンプレックス結晶化熱融解熱(ΔHms)より、下記式によって算出した。
χc(総)(%)=100×(ΔHmh/ΔHmh0+ΔHms/ΔHms0
【0072】
(5)ステレオコンプレックス結晶の含有率(χc(SC))
さらに、ステレオコンプレックス結晶の含有率は下記式によって算出した。
χc(SC)(%)=100×[(ΔHms/ΔHms0)/(ΔHmh/ΔHmh0+ΔHms/ΔHms0)]
【0073】
(6)ステレオコンプレックス結晶生成率(SC生成率)
ステレオコンプレックス結晶生成率は、ポリ−D−乳酸とポリ−L−乳酸とにより理論的に形成され得るステレオコンプレックス結晶の最大量に対する、実際に形成されたステレオコンプレックス結晶の割合のことをいう。
【0074】
ステレオコンプレックス結晶生成率は、以下のように求めた。
【0075】
100%結晶化したポリ乳酸ブロック共重合体のホモ結晶融解熱(ΔHmh0)を−203.4J/g、100%結晶化したポリ乳酸ブロック共重合体のステレオコンプレックス結晶融解熱(ΔHms0)を−142J/gとして、DSCから実際に得られたホモ結晶融解熱(ΔHmh)、ステレオコンプレックス結晶化熱融解熱(ΔHms)とL/Dセグメント比率(r)より下記式によって算出した。
r=L/(L+D)×100%
(またはD/(L+D)×100%) (r<=1)
ステレオコンプレックス結晶生成率(SC生成率)
=[(ΔHms/ΔHms0)/(ΔHmh/ΔHmh0+ΔHms/ΔHms0)]/(r×2)
【0076】
(7)光学純度(%)
ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸を構成するL−乳酸とD−乳酸の構成比率から光学純度を求めた。
【0077】
試料1gに5M水酸ナトリウム5mlとイソプロパノール2.5mlを添加し、40℃で加熱攪拌しながら加水分解した後に1M硫酸で中和した。中和液1mlを25倍に希釈することで濃度を調整した。これをHPLCにて、紫外光UV254nmでのL−乳酸とD−乳酸との検出ピーク面積を測定し、ポリ乳酸重合体を構成するL−乳酸の重量比率[L](%)とD−乳酸の重量比率[D](%)とをから光学純度(%)、を下記式によって算出した。
なお、HPLC装置として、ポンプ;島津LC−6A、UV検出器;島津SPD−6AV、カラム;SUMICHIRAL OA−5000((株)住化分析センター)を使用し、溶離液には1mM硫酸銅水溶液を用い、流速1.0ml/min、40℃で測定した。
【0078】
光学純度(%)=100×[L]/([L]+[D])
(または 100×[D]/([L]+[D])
【0079】
(8)色相
ポリマーの色相は、得られたポリ乳酸1gを1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム(1/1 vol)10mlに溶解し、光路1cmの石英セルに入れ、SHIMAZDU UV−2400のカラー測定モードにてLab値を測定した。
【0080】
(製造例1)ポリ−L−乳酸の調製
濃度90重量%のL−乳酸水溶液1kgを150℃/4,000Paで6時間撹拌しながら水を留出させてオリゴマー化した。このオリゴマーに塩化第一スズ0.2gとp−トルエンスルホン酸0.2gとを添加し、180℃/1,300Paで6時間溶融重合させた。冷却後、固体を粉砕し、重量平均分子量が7,800、Tmが153℃のポリ−L−乳酸を得た。光学純度は99.2%であった。
(製造例2)ポリ−D−乳酸の調製
濃度90重量%のD−乳酸水溶液を用いて製造例1と同様の操作を行い、重量平均分子量が8,000、Tmが154℃のポリ−D−乳酸を得た。光学純度は99.0%であった。
【0081】
<実施例1>
(ポリ−D/L−乳酸ブレンドの調製)
製造例1で得たポリ−L−乳酸70gと製造例2で得られたポリ−D−乳酸30gを200ccフラスコ中で混合し、常圧で5分加熱した。混合の際、樹脂の温度は、各ポリマーの融点から徐々に昇温し、175℃で均一に混合したことを確認した。このポリ−D/L−乳酸ブレンドの重量平均分子量(Mw1)は7,400、ホモ結晶融解温度(Tmh)は152.8℃であった。このポリ−D/L−乳酸ブレンドを、冷却して固化させ粉砕して粒子状にした。
【0082】
(固相重合)
ついで、減圧下(60Pa)、140℃で固相重合を30時間行い、ポリ乳酸ブロック共重合体を得た。
【0083】
このポリ乳酸ブロック共重合体の、重量平均分子量(Mw2)、数平均分子量(Mn)、ガラス転移点(Tg)、結晶化温度(Tc)、ホモ結晶融解温度(Tmh)、ステレオコンプレックス結晶融解温度(Tms)、光学純度、ホモ結晶融解熱(ΔHmh)、ステレオコンプレックス結晶融解熱(ΔHms)を測定した。その結果を表1に示す。
【0084】
また、総結晶化度(χc(総))、ステレオコンプレックス結晶の含有率(χc(SC))、分子量増加率、ステレオコンプレックス結晶生成率(SC生成率)を表1に示す。
【0085】
<実施例2>
(ポリ−D/L−乳酸ブレンドの調製)
製造例1で得たポリ−L−乳酸70gと製造例2で得られたポリ−D−乳酸30gを混合し、常圧で5分加熱した。混合の際、樹脂の温度は、各ポリマーの融点から徐々に昇温し、175℃で均一に混合したことを確認した。得られたポリ−D/L−乳酸ブレンドの重量平均分子量(Mw1)は7,400、Tmhは152.8℃であった。
【0086】
(固相重合)
このポリ−D/L−乳酸ブレンドを、冷却して固化させ粉砕して粒子状にした。ついで、減圧(0.5mmHg)下、140℃で10時間、次に150℃で10時間、更に160℃で10時間、段階的に昇温し(総時間30時間)固相重合を行い、ポリ乳酸ブロック共重合体を得た。
【0087】
このポリ乳酸ブロック共重合体の、重量平均分子量(Mw2)、分子量分布(Mw/Mn)、ガラス転移点(Tg)、結晶化温度(Tc)、ホモ結晶融解温度(Tmh)、ステレオコンプレックス結晶融解温度(Tms)、光学純度、ホモ結晶融解熱(ΔHmh)、ステレオコンプレックス結晶融解熱(ΔHms)、色相を測定した。その結果を表2に示す。
【0088】
また、総結晶化度(χc(総))、ステレオコンプレックス結晶の含有率(χc(SC))、分子量増加率、ステレオコンプレックス結晶生成率(SC生成率)を表2に示す。
【0089】
<実施例3>
ポリ−L−乳酸:ポリ−D−乳酸=80:20の割合で混合した以外は実施例1と同様に操作してポリ乳酸ブロック共重合体を得た。この共重合体について実施例1と同様に各特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0090】
<実施例4>
ポリ−L−乳酸:ポリ−D−乳酸=80:20の割合で混合した以外は実施例2と同様に操作してポリ乳酸ブロック共重合体を得た。この共重合体について実施例2と同様に各特性を評価した。その結果を表2に示す。
【0091】
<実施例5>
ポリ−L−乳酸:ポリ−D−乳酸=90:10の割合で混合した以外は実施例1と同様に操作してポリ乳酸ブロック共重合体を得た。この共重合体について実施例1と同様に各特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0092】
<実施例6>
ポリ−L−乳酸:ポリ−D−乳酸=90:10の割合で混合した以外は実施例2と同様に操作してポリ乳酸ブロック共重合体を得た。この共重合体について実施例2と同様に各特性を評価した。その結果を表2に示す。
【0093】
<比較例1>
ポリ−L−乳酸:ポリ−D−乳酸=50:50の割合で混合した以外は実施例1と同様に操作してポリ乳酸ブロック共重合体を得た。この共重合体について実施例1と同様に各特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0094】
<比較例2>
ポリ−L−乳酸:ポリ−D−乳酸=50:50の割合で混合した以外は実施例2と同様に操作してフィルムを得た。この共重合体について実施例2と同様に各特性を評価した。その結果を表2に示す。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明によれば、機械的強度、耐熱性、熱安定性に優れ、透明性、安全性、生分解性にも優れたポリ乳酸ブロック共重合体が提供されるので、食品用、包装用、自動車や家電製品などのエンジニアリング用途に使用されることが期待される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量4,000〜30,000のポリ−L−乳酸(L成分)と、重量平均分子量4,000〜30,000のポリ−D−乳酸(D成分)とを、D成分/L成分=40/60〜3/97またはL成分/D成分=40/60〜3/97の重量比で、溶融混合した後、固化し、これを固相重合することからなるポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
【請求項2】
D成分とL成分との重量比が、D成分/L成分=35/65〜5/95またはL成分/D成分=35/65〜5/95である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸が、乳酸を脱水縮合して得られたものである請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
固相重合をガラス転移温度(Tg)以上、融点(Tm)以下で少なくとも5時間行う請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
固相重合をn個の段階で行い、各段階の温度(Tn:℃)および該温度を維持する時間(tn:時間)を、以下の式を満足する条件で行う請求項1に記載の製造方法。
140≦Tn≦170
n<Tn+1
1≦tn≦10
n=1〜10
【請求項6】
ポリ乳酸ブロック共重合体の重量平均分子量が4万以上である請求項1記載の製造方法。
【請求項7】
ポリ乳酸ブロック共重合体の重量平均分子量が8万以上である請求項1記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1記載の製造方法により得られたポリ乳酸ブロック共重合体。
【請求項9】
請求項8記載のポリ乳酸ブロック共重合体からなる成形品。
【請求項10】
下記式で表される乳酸由来の繰り返し単位からなり、かつポリ−L−乳酸ブロック(L単位)およびポリD−乳酸ブロック(D単位)からなり、重量平均分子量が4万以上であるポリ乳酸ブロック共重合体であって、
【化1】

L単位の重量平均分子量が4,000〜30,000であり、D単位の重量平均分子量が4,000〜30,000であり、L単位とD単位との比が、D単位/L単位=40/60〜3/97またはL単位/D単位=40/60〜3/97であり、D単位およびL単位により形成されたステレオコンプレックス結晶の含有率が5〜39%であるポリ乳酸ブロック共重合体。
【請求項11】
下記式で表される乳酸由来の繰り返し単位からなり、かつポリ−L−乳酸ブロック(L単位)およびポリD−乳酸ブロック(D単位)からなり、重量平均分子量が8万以上であるポリ乳酸ブロック共重合体であって、
【化2】

L単位の重量平均分子量が4,000〜30,000であり、D単位の重量平均分子量が4,000〜30,000であり、L単位とD単位との比が、D単位/L単位=40/60〜3/97またはL単位/D単位=40/60〜3/97であり、D単位およびL単位により形成されたステレオコンプレックス結晶の含有率が5〜39%であるポリ乳酸ブロック共重合体。


【公開番号】特開2006−28336(P2006−28336A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−209034(P2004−209034)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年5月10日 社団法人高分子学会発行の「高分子学会予稿集 53巻1号〔2004〕」に発表
【出願人】(390022301)株式会社武蔵野化学研究所 (63)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【出願人】(303066965)株式会社ミューチュアル (33)
【出願人】(503313454)
【Fターム(参考)】