説明

ポリ乳酸・ポリアミド芯鞘複合糸を用いたカバリング弾性糸およびそれを用いたレッグニット製品、ストッキング

【課題】ポリ乳酸・ポリアミド芯鞘複合糸を用いることにより、染色性、耐久性に良好、カーボンニュートラル特性を持った地球環境型のカバリング弾性糸およびそれを用いたレッグニット、ストッキングを提供する。
【解決手段】芯糸が弾性繊維、巻糸の一部が芯鞘複合繊維を用いるカバリング弾性糸において、芯成分がポリアミド、鞘成分がポリ乳酸の芯鞘複合繊維であり、芯鞘複合比が30/70〜60/40重量%、鞘成分が繊維外周表面を覆っているカバリング弾性糸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリ乳酸単独糸使いのカバリング弾性糸の改良に関する。更に詳しくは、ポリ乳酸・ポリアミド芯鞘複合糸を用いることにより、染色性、耐久性が良好であって、カーボンニュートラル特性を持った地球環境型のカバリング弾性糸およびそれを用いたレッグニット、ストッキングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の問題に関して、京都議定書の発効(2005年2月)、愛知万博の開催(2005年)で、政府や企業だけでなく、国民全体が地球環境について考えるようになってきた。そのため、エコ商品が店頭に並び、国民の認知度は高まってきている。このような状況の中、非石油原料である新しいプラスチック材料としてポリ乳酸樹脂が注目を浴びている。ポリ乳酸樹脂は、植物であるとうもろこしを原料として製造されるため、地球上の二酸化炭素を増やさないカーボンニュートラルの特性をもっており環境対応型樹脂として使用量が増加している。ポリ乳酸樹脂は、融点が175℃と比較的高く、溶融成形可能であり、土木、建築、自動車、インテリア用途など非衣料用分野で用途が広がっている。しかしながら、衣料用分野においては、染色に関わる問題を抱えており商品化が難しかった。例えばポリエステルの一般的染色方法で染色を行った場合、染色温度120〜130℃の加圧下で織編物を染色すると、加水分解反応が進み織編物の機械的特性が低下する問題を抱えている。また、一般的にレッグニット製品はポリアミドをメインに使用しているため、染色は酸性染料又は反応染料を用い、染色温度は95℃×60分程度で行われる。ポリ乳酸は分散染料で染色するため、95℃×60分程度で染色すると、機械的特性の低下はないが、染まらないため発色性、染色堅牢度に劣る問題を抱えている。
【0003】
特許文献1には、ポリ乳酸長繊維を用いたストッキングが提案されている。しかしながら、上記問題改善が必要であり、商品化には至っていない。
【0004】
特許文献2には、ポリ乳酸・ポリアミド芯鞘複合糸のポリ乳酸を溶出することにより得られる高中空繊維布帛が提案されている。当時は、エコ商品に対する認知度が低く、ポリ乳酸がアルカリに対する加水分解速度が早いことに着目し開発を進めていた。従って、特許文献2の基本技術思想としては、高中空形成が主たる思想であり、それから得られるものの特徴は、軽量、保温が主となるものであった。
【特許文献1】特開平7−305203号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2004−300655号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上述したような従来の問題を解決し、ポリ乳酸・ポリアミド芯鞘複合糸を用いることにより、染色性、耐久性に良好、カーボンニュートラル特性を持った地球環境型のカバリング弾性糸およびそれを用いたレッグニット、ストッキングを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的は、以下の通りとすることにより達成される。
(1)芯糸が弾性糸、巻糸の一部が芯鞘複合糸であるカバリング弾性糸において、芯鞘複合糸の芯成分がポリアミド、鞘成分がポリ乳酸であり、芯鞘複合比(芯成分(重量%)/鞘成分(重量%))が30/70〜60/40であり、かつ鞘成分が糸外周表面を覆っていることを特徴とするカバリング弾性糸。
(2)巻糸が全て芯鞘複合糸であることを特徴とする上記(1)記載のカバリング弾性糸。
(3)芯鞘複合糸がフラットヤーンであることを特徴とする上記(1)または(2)記載のカバリング弾性糸。
(4)芯鞘複合糸が仮撚り加工糸であることを特徴とする上記(1)または(2)記載のカバリング弾性糸。
(5)芯鞘複合糸が複合加工糸であることを特徴とする上記(1)または(2)記載のカバリング弾性糸。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載のカバリング弾性糸を一部に有するレッグニット。
(7)上記(1)〜(5)のいずれかに記載のカバリング弾性糸をレッグ部および/またはパンティ部の一部に有するストッキング。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ポリ乳酸・ポリアミド芯鞘複合糸を用いることにより、染色性、耐久性に良好、カーボンニュートラル特性を持った地球環境型のカバリング弾性糸およびそれを用いたレッグニット、ストッキングを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0009】
本発明のカバリング弾性糸を構成する巻糸は、芯鞘複合糸であることが必要である。その芯成分を形成する熱可塑性樹脂がポリ乳酸からなり、鞘成分形成する熱可塑性樹脂がポリアミドよりなる。また、本発明の芯鞘複合糸は鞘成分が繊維外周表面を覆っていることが必要である。鞘成分が繊維外周表面を覆っているとは、芯成分が繊維表面に露出していないことをいい、好ましくは、鞘成分が繊維表面を完全に覆っていることをいう。芯成分のポリ乳酸が繊維表面に露出したいわゆるC型断面などでは、製糸工程において、糸道ガイドが擦過などにより芯成分と鞘成分が割れて糸切れの原因となったり、整経、製織、編成などの後工程においても同様に芯成分と鞘成分が割れて毛羽の原因となるため適さない。また、ポリアミドに一般的に使用される酸性染料で染色した場合、ポリ乳酸は染色されないため、製品とした場合に均一な染色編地とならず、ポリ乳酸が繊維表面に露出した部分にキラツキ等発生し審美性にかけるものとなってしまう。
【0010】
また、本発明で用いる芯鞘複合糸は、芯成分としてポリ乳酸が存在することが重要である。ポリアミド高中空繊維をカバリング弾性糸の巻糸として使用すると、ポリアミド高中空繊維製造過程において、芯糸である弾性糸によってはアルカリに対する耐薬品性に問題がある。アルカリによる劣化を防ぐため製造工程におけるアルカリ濃度を低くする必要があり、そのため長時間を要することなる。
【0011】
芯鞘複合糸の芯鞘複合比(芯成分(重量%)/鞘成分(重量%))は30/70〜60/40重量%である必要がある。芯成分が30重量%未満であると、バイオマスプラスチック度(原材料,製品に含まれるバイオマスプラスチック組成中のバイオマス由来成分の全体量に対する割合(重量%))が低いため、カバリング弾性糸とした場合、ポリ乳酸成分の混率が低下し、環境貢献度が低くなる。また、芯成分が60重量%を超えると製糸性が不安定になるとともに、整経、製織、編成などの後工程においても芯成分と鞘成分が割れて毛羽の原因となり、製品とした場合、着用を繰り返していくと芯成分と鞘成分が割れて鞘成分の染色されていないポリ乳酸が露出し、部分的にキラツキ等が発生し、審美性に欠けるものとなる。好ましくは芯鞘複合比(芯成分(重量%)/鞘成分(重量%))が35/65〜55/45重量%である。
【0012】
本発明で使用するポリ乳酸とは、乳酸やラクチド等の乳酸のオリゴマーを重合したものであり、L体またはD体の光学純度は90%以上であると、融点が高く好ましい態様である。また、ポリ乳酸の性質を損なわない範囲で、乳酸以外の成分を共重合していても、ポリ乳酸以外のポリマーや粒子、難燃剤、帯電防止剤、艶消し剤などの添加物を含有していてもよい。ただし、バイオマス利用、生分解性の観点から、ポリマーとしての乳酸モノマーは50重量%以上とすることが好ましい。乳酸モノマーは好ましくは75重量%以上、より好ましくは96重量%以上である。ポリ乳酸の重量平均分子量は5万〜50万であると、力学特性と製糸性のバランスが良い。ポリ乳酸の分子量は、より好ましくは重量平均分子量で10万〜35万である。
【0013】
また、ポリ乳酸には、酸化防止剤が0.01〜1重量%含有されていることが好ましい。ポリ乳酸は鞘成分に用いられる一般的なポリアミドと比較して耐熱性が低く、複合糸のように両ポリマーを同温度条件で紡糸する必要がある場合には、ポリ乳酸の方が熱劣化が進みやすく、生産性の悪化を招きやすい。そこで、ポリ乳酸に酸化防止剤を少量含有させることにより、ポリ乳酸の熱劣化を抑制し、より厳しい温度条件での溶融紡糸に耐え得ることになる。ここで、酸化防止剤の含有量はポリ乳酸100重量部に対し0.01〜1重量部であることが好ましい。0.01重量%部未満であると添加量が少なすぎて充分な熱劣化抑制効果が得られない。また、1重量部を超えると、紡糸フィルターの詰まりを引き起こすなど生産性が悪化することがある。好ましくは0.02〜0.5重量部である。酸化防止剤の種類に関して特に制限はなく、一般公知のものを使用することができる。一例を挙げるとヒンダードフェノール系、ホスファイト系、硫黄系、リン系、あるいはこれらを複合したものなどによる酸化防止剤である。
【0014】
酸化防止剤を含有せしめる方法としては、ポリ乳酸チップへ酸化防止剤をブレンドし溶融する方法、ポリ乳酸チップへ高濃度の酸化防止剤を含有するマスタペレットをブレンドし溶融する方法、溶融状態のポリ乳酸へ酸化防止剤を添加し混練する方法、ポリ乳酸の重合前あるいは重合中の段階で原料あるいは反応系へ酸化防止剤を添加する方法などが挙げられるが、両者が均一に混ざればいかなる方法でも良い。
【0015】
本発明で使用するポリアミドとは、いわゆる炭化水素基が主鎖にアミド結合を介して連結された高分子量体であって、好ましくは、染色性、洗濯堅牢度、機械特性に優れる点から、主としてポリカプロアミド、もしくはポリヘキサメチレンアジパミドからなるポリアミドである。ここでいう主としてとは、ポリカプロアミドではポリカプロアミドを構成するε−カプロラクタム単位とし、ポリヘキサメチレンアジパミドではポリヘキサメチレンアジパミドを構成するヘキサメチレンジアンモニウムアジペート単位として80モル%以上であることをいい、さらに好ましくは90モル%以上である。その他の成分としては、特に制限されないが、例えば、ポリドデカノアミド、ポリヘキサメチレンアゼラミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンドデカノアミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリヘキサメチレンテレフタラミド、ポリヘキサメチレンイソフタラミド等を構成するモノマーである、アミノカルボン酸、ジカルボン酸、ジアミンなどの単位が挙げられる。特に、溶融紡糸可能であるポリ乳酸樹脂は、一般的に融点が175℃であることから、比較的融点の近い、ポリカプロアミドがさらに好ましい。
【0016】
さらに必要に応じて酸化チタン等の白色顔料、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、末端基調節剤、染色性向上剤等が添加されていてもよい。また、紫外線吸収や接触冷感の付与のため、有機材料や無機粒子の添加を行うことはできる。添加する無機粒子の糸中の平均粒子径を1μm以下とすることが適切である。
【0017】
本発明のカバリング弾性糸を構成する巻糸の芯鞘複合糸を製造する方法は、特に限定されるものではないが、それ自体は一般的な複合紡糸法(溶融紡糸)により製造することができる。また芯鞘複合繊維断面は、芯成分が露出していなければ、同心円、偏心、異形(芯成分)丸型(鞘成分)、異形(芯成分、鞘成分)など紡糸口金の吐出形状により任意に設定できる。また、溶融紡糸による製造方法について、二工程法(未延伸糸を一旦巻き取った後に延伸する方法)で得られるものよりも、一工程である高速紡糸法(紡糸速度を4000m/分以上のように高速として実質的に延伸工程を省略する方法、POYの製造)、高速紡糸延伸法(紡糸−延伸工程を連続して行う方法)により得られたものの方が、製糸工程におけるエネルギー消費量が少ないため、地球規模での環境問題に配慮して好ましいといえる。
【0018】
例えば、同心円芯鞘複合糸の場合、ポリ乳酸(200〜240℃)とポリアミド(240〜300℃)を別々に溶融し、所定の複合比(重量%)に計量されて紡糸パックへ流入し、紡糸口金により合流、同心円芯鞘複合断面に形成されて紡糸口金より吐出される。紡糸口金から吐出された同心円芯鞘複合繊維は、冷却、固化され、交絡処理、油剤が付与された後、1000〜5000m/分で引き取られ、POYの場合は実質的に延伸なしで巻き取り、延伸糸の場合は、伸度が35〜65%の範囲となるように適宜延伸倍率を設定して延伸を行い、巻き取ることにより製造される。
【0019】
なお、伸度は、JIS L 1013−1999 7.5引張強さ及び伸び率に準じて測定を行った。試験条件としては、試験機の種類としては定速緊張形、つかみ間隔50cmにて行った。
【0020】
また、芯鞘複合糸の形態は特に限定するものではないが、フラットヤーン、仮撚加工糸、複合加工糸が好ましく用いられる。フラットヤーンとは、合成繊維のなかで加工が施されていない長繊維であり、繊維は屈曲していない状態の糸である。
【0021】
仮撚加工糸とは、直線的なフィラメントに平面的もしくは立体的な捲縮をを与える加工が施され、大きな伸縮性と嵩高性を持たせた糸である。その製造方法は特に限定するものではないが、一般的な仮撚加工法により製造することができる。例えば、仮撚り加工糸の場合、2対のローラー間にヒーターと仮撚りスピンドルを設置し、ポリアミドフィラメントを連続的に加撚、熱固定、解撚を行うことにより、伸縮性の良好で不規則な三次元構造を発生させ巻き取り製造される。加撚機構は特に限定はなく、中空スピナー方式、摩擦直撚方式(3軸外接方式、内接円筒方式)、ベルトニップ方式などがある。
【0022】
複合加工糸とは、2種類又は2品種以上の繊維(長繊維、短繊維)をインターレース、同時仮撚り、合撚等公知の複合加工法で、異種の素材、品種を混繊させた糸である。その製造方法は特に限定されるものではないが、2本以上のフィラメント糸条からなる構造嵩高加工糸において、少なくとも1本のフィラメント糸条が、芯鞘複合糸を使用する他は、それ自体は一般的な複合加工法により製造することができる。
【0023】
例えば、タスラン加工糸の場合、2本のフィラメントを別々のフィードローラーから異なった速度で供給し、空気乱流加工を施し糸軸方向にループやたるみを発生させ巻き取り製造される。上記芯鞘複合糸を用いた構造嵩高加工糸を構成するに際し、芯鞘複合糸は2本以上使用してもよいし、1本使用してもよい。また、芯鞘複合糸を鞘としても芯としてもよい。また、少なくとも1本は芯鞘複合糸を使用するのであれば、相手糸は特に芯鞘複合糸に限定されるものでなく、天然繊維(綿、ウール)、化学繊維(ポリアミドフィラメント、ポリエステルフィラメント、ポリ乳酸フィラメント、トリメチレンテレフタレートフィラメント、ポリブチレンテレフタレートフィラメント、アクリル)、さらには、化学繊維フィラメントの繊維断面形状がY型、T型、中空、扁平、十字と異形断面化してもよい。
【0024】
本発明のカバリング弾性糸を構成する巻糸は、巻糸の一部が芯鞘複合糸であることが必要であり、全てが芯鞘複合糸であることが好ましい。例えばカバリング弾性糸が、ダブルカバリング弾性糸の場合、下巻糸または上巻糸に芯鞘複合繊維を用いることが好ましい。シングルカバリング弾性糸の場合、巻糸が、上述した2素材からなる複合加工糸を用いることが好ましい。さらに好ましくは、ダブルカバリング弾性糸の下巻糸および上巻糸、シングルカバリング弾性糸の巻糸が芯鞘複合糸であるとよい。この芯鞘複合繊維は、環境貢献度の面から、芯鞘複合糸の混率が高い程好ましく、芯成分であるポリ乳酸はアルカリ加水分解を目的とした溶出処理することなしで、含有した状態であることがより好ましい。
【0025】
本発明のカバリング弾性糸を構成する芯糸は、弾性繊維であることが必要である。弾性繊維の一例を挙げると、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、天然ゴム系繊維、合成ゴム系繊維等が用いられ、弾性特性や熱セット性、耐久性等により適宜選択すればよい。中でも上記特性から好ましいのは、ウレタン系エラストマー及びアミド系エラストマーである。
【0026】
また本発明のカバリング弾性糸は着用時の快適性(例えば、締め付け圧、触感、風合い)を考慮すると、レッグニット製品、例えばストッキング類、タイツ、パンティストッキング類を製造する場合には、芯糸として使用する弾性繊維としてウレタン系エラストマー、オレフィン系エラストマーを用いることが好ましい。ストッキング類、タイツ、パンティストッキング類は、カバリング弾性糸が製品に占める割合が非常に高く、弾性繊維の特性がそのまま着用時の快適性に繋がるためである。着用時の快適性に必要な弾性繊維の特性は、伸長特性ではなく、一定に伸長させた後の回復応力特性が重要となる。例えば300%伸長回復の伸長応力ヒステリシス曲線を描いた場合、特に300%から250%に回復するときの応力低下が3〜30%の範囲内の少ない弾性繊維を選択することが好ましい。応力低下が大きい場合(例えば応力低下が30%を超える場合)は、着用した後にずり落ちや、着用時に引っ張った際に製品形態が変形して好ましい締め付け圧が得られないことがある。また、弾性繊維の繊度についてについても同様で、任意の締め付け圧を得るための繊度を選択する必要があり、ストッキング類、タイツ、パンティストッキング類のレッグ部は、10〜50デシテックスが好ましく、バンド部は90〜155デシテックス、タイツ、パンティストッキング類のパンティ部は30〜100デシテックスが好ましい。
【0027】
また、本発明で用いる芯鞘複合糸は、芯成分としてポリ乳酸が存在することが重要である。本発明の目的である地球環境型のカバリング弾性糸とするためである。すなわち、アルカリ減量加工は、薬品の処理の問題など廃棄の問題が残るため好ましくない。
【0028】
また、弾性繊維を製造する方法は、特に限定するものではないが、一般的な乾式紡糸、溶融紡糸により製造することができる。例えばウレタン系エラストマーの場合、繊維の百科事典(丸善発行、平成14年)p661 「スパンデックス」に記載のとおりである。
【0029】
本発明のカバリング弾性糸を製造する方法は、特に限定されるものではないが、上述したように少なくとも芯鞘複合繊維を使用する他は、それ自体は一般的なカバリング加工法により製造することができる。
【0030】
例えば、ダブルカバリングヤーンの場合、芯糸の弾性繊維を2つのローラー間で2〜4倍に伸長させ、上部と下部の中空ボビンに巻かれた巻糸を上下の回転方向を反対方向にしてトルクを打ち消すようにして二重に巻き付けて製造される。また、シングルカバリングヤーンの場合、中空ボビンに巻かれた巻糸をらせん状に巻き付けて製造される。図1は、本発明で用いるシングルカバリング加工機の一例を示す説明図である。図1において、芯糸となる弾性繊維糸条6は弾性繊維パッケージ1から供給され、2つのフィードローラー2、4の間で伸長させられ、巻糸が巻き付けられたHボビン3から供給された巻糸7で螺旋状に巻き付けられる。その被覆糸が巻き付けられたカバリング弾性糸条8はカバリング弾性糸パッケージ5に巻き取られる。
【0031】
弾性繊維の太さ、撚り数、ドラフト(2ローラー間の伸長率)は、弾性繊維の特性や、用途に応じ適宜選択すればよい。例えば、撚り数であれば、500〜2400t/m、ドラフトは2.6〜3.5が好ましい。
【0032】
本発明のレッグニットとは、(「靴下工学」(日本靴下協会発行、1979年)p13 I−2 くつ下の分類)に記載されるとおり、足袋、くつ下(フットカバー類、ソックス、ストッキング、タイツ)、脚胖(和装用脚胖、スパッツ)に大分類される。
【0033】
本発明のストッキングとは、(「靴下工学」(日本靴下協会発行、1979年)p12−18、第2章 くつ下の分類とくつ下各部の名称および寸法)に記載のうち、ストッキング類(身部がソックスよりも著しく長いストッキング類)、タイツ・パンティストッキング類(上部にパンティ部がついたタイツ・パンティストッキング類)を示している。
【0034】
また、ストッキングを製造する方法は、編機として、通常の靴下編み機を用いることができ、制限はなく、2口あるいは4口給糸の編機を用い、本発明のカバリング弾性糸を供給して編成するという通常の方法で編成すればよい。シングルカバリング糸の場合は、S方向カバリングのシングルカバリング糸とZ方向カバリングのシングルカバリング糸とを交互に編む方法が好適である。さらに編機の針本数としてはおおむね360〜474本が用いられ、針本数が少ないほど、透明性は高くなるが、破裂強さは劣り、針本数が多くなるほど破裂強さは向上するが、透明性は低下する傾向にある。したがって、使用する被覆糸、弾性糸の繊度と狙いとする耐久性、透明性に合わせて選択することができる。一例として被覆糸33〜155デシテックスにて針本数360〜400本、同様に11〜33デシテックスの時針本数380〜440本、特に針本数400〜440本、8〜11デシテックスの時440〜474本とすることが好ましい。
【0035】
さらに編成後の染色やそれに続く後加工、ファイナルセット条件についても公知の方法に従い行えばよく、染料として酸性染料、反応染料を用いることやもちろん色なども限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。
【0037】
なお、実施例および比較例における各測定値は、次の方法で得たものである。
【0038】
A.風合い
検査者(10人)の触感によって、市販品のレッグニット製品と相対評価した。
◎:良好、○:差異なし、△:やや不良、×:不良。
【0039】
B.環境貢献度
日本バイオプラスチック協会が定めるバイオマスプラスチック製品の識別表示制度に従い、バイオマスプラスチック度(原材料,製品に含まれるバイオマスプラスチック組成中のバイオマス由来成分の全体量に対する割合(重量%))で評価した。バイオマスプラスチック度が高い程環境貢献度が高いと言える。尚、バイオマスプラスチック度25%以上が認定基準である。
【0040】
C.発色性
検査者(10人)の触感によって、市販品のレッグニット製品と相対評価した。
◎:良好、○:差異なし、△:やや不良、×:不良。
【0041】
D.耐久性
検査者(10人)が、1日当たり8時間着用し3日間着用後のレッグニット製品つま先部、足裏部について芯鞘複合糸の単糸切れおよび鞘破れについて観察した結果について、市販品のレッグニット製品と相対評価した。
◎:良好、○:差異なし、△:やや不良、×:不良
【0042】
E.ポリアミドの露出の有無
芯鞘複合糸を1本給糸の筒編機で筒編地を作成し、酸性染料(Nylosan Blue N-GFL 167% サンドス社製)、1重量%で染色(95℃×30分)を行った。ポリアミド部分が露出していれば、ポリアミド部分が染色される。ポリアミドの露出の有無を次の基準で相対評価した。
有り:染まる、無し×:染まらない(ポリエステルがポリアミドを覆っている状態)
【0043】
F.98%硫酸相対粘度(ηr)
(a)試料を秤量し、98重量%濃硫酸に試料濃度(C)が1g/100mlとなるように溶解させた。
(b)(a)項の溶液をオストワルド粘度計にて25℃での落下秒数(T1)を測定した。
(c)試料を溶解していない98重量%濃硫酸の25℃での落下秒数(T2)を(2)項と同様に測定した。
(d)試料の98%硫酸相対粘度(ηr)を下式により算出した。測定温度は25℃とした。
(ηr)=(T1/T2)+{1.891×(1.000−C)}
【0044】
G.ポリ乳酸の重量平均分子量(Mw)
試料のクロロホルム溶液にTHF(テトロヒト゛ロフラン)を混合し測定溶液とした。これをWaters社製ゲルパーミテーションクロマトグラフィー(GPC)Waters2690を用いて25℃で測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量を求めた。
【0045】
<ポリ乳酸・ポリアミド芯鞘複合糸および仮撚加工糸の製造>
ポリ乳酸チップ(NatureWorks社製 Polylactide Resin 品番6201D、Mwが14.5万、融点175℃)を芯成分とし、ナイロン6チップ(硫酸相対粘度ηr:2.6、融点215℃)を鞘成分として、それぞれ別々に溶融し、ポリ乳酸/ポリアミドの重量比が20/80(PA-1)、30/70(PA-2)、40/60(PA-3)、50/50(PA-4)、60/40(PA-5)、70/30(PA-6)となるように計量して紡糸口金に導き、ポリ乳酸が芯成分、ナイロン6が鞘成分となるように同心円型に複合した後、48ヶの丸型の吐出孔を有する紡糸口金から吐出し、一方方向からの冷却風で冷却によって冷却し、繊維油剤(油剤有効成分として脂肪酸エステル、非イオン乳化剤、制電剤を含む)を、1.0重量%塗布する給油を行い、交絡を付与したのち、第1ゴデッドローラー(非加熱ローラー)に引取り、引き続き、第2ゴデッドローラー(加熱ローラー、170℃)との間で1.5倍に延伸して、巻き取り速度4000m/分で巻き取りをおこない、鞘成分が繊維表面を完全に覆っている(図2(a))87デシテックス48フィラメントのポリ乳酸・ナイロン6芯鞘複合糸条の4.5kg巻きチーズ状パッケージを得た。
【0046】
得られたポリ乳酸・ナイロン6芯鞘複合糸条PA-1(比較例1)、PA-2(実施例1)、PA-3(実施例2)、PA-4(実施例3)、PA-5(実施例4)、PA-6(比較例2)を、仮撚機としてIVF805(石川製作所社製)を用いて、加工速度500m/分、延伸倍率1.15倍、ヒーター温度130℃、D/Y比1.7(解撚張力/加撚張力=1.04)に設定して仮撚り加工を行い、78デシテックス48フィラメントのポリアミド・ナイロン6仮撚加工糸を得た。
【0047】
<ポリ乳酸糸、および仮撚り加工糸の製造>
ポリ乳酸ポリマー(NatureWorks社製 Polylactide Resin 品番6201D、Mwが14.5万)チップを、220℃で溶融し、紡糸口金に導き、丸型の吐出孔を有する紡糸口金から吐出し、一方向からの冷却風によって冷却し、繊維用油剤を、0.6重量%塗布する給油を行い、交絡を付与したのち、第1ゴデッドローラー(非加熱ローラー)に紡糸速度4500m/分で引取り、引き続き、第2引取ローラー(非加熱ローラー)を介して、巻き取り、94デシテックス48フィラメントのポリ乳酸POY糸条の7.5kg巻きチーズ状パッケージを得た。
【0048】
得られたポリ乳酸糸条(比較例3)を、仮撚機としてIVF805(石川製作所社製)を用いて、加工速度500m/分、延伸倍率1.2倍、ヒーター温度130℃、D/Y比1.7(解撚張力/加撚張力=1.04)に設定して仮撚り加工を行い、78デシテックス48フィラメントのポリ乳酸仮撚加工糸を得た。
【0049】
<ナイロン6糸、および仮撚り加工糸の製造>
98%硫酸相対粘度2.7のナイロン6チップを、260℃で溶融し、孔径0.2mm丸型の吐出孔を有する紡糸口金から吐出し、一方向からの冷却風によって冷却し、繊維用油剤を、0.6重量%塗布する給油を行い、交絡を付与をしたのち、第1ゴデッドローラー(非加熱ローラー)介し、実質延伸しないで第2ゴデッドローラー(非加熱ローラー)4500m/分を介して、巻き取り、94デシテックス48フィラメントのナイロン6フィラメントPOY糸条の7.5kg巻きチーズ状パッケージを得た。
【0050】
得られたナイロン6糸条(比較例4)を、仮撚機としてIVF805(石川製作所社製)を用いて、加工速度500m/分、延伸倍率1.2倍、ヒーター温度180℃、D/Y比1.7(解撚張力/加撚張力=1.04)に設定して仮撚り加工を行い、78デシテックス48フィラメントのナイロン6仮撚加工糸を得た。
【0051】
<ナイロン66糸、および仮撚り加工糸の製造>
98%硫酸相対粘度2.7のナイロン66チップを、290℃で溶融し、孔径0.2mm丸型の吐出孔を有する紡糸口金から吐出し、一方向からの冷却風によって冷却し、繊維用油剤を、0.6重量%塗布する給油を行い、交絡を付与をしたのち、第1ゴデッドローラー(非加熱ローラー)介し、実質延伸しないで第2ゴデッドローラー(非加熱ローラー)4500m/分を介して、巻き取り、94デシテックス48フィラメントのナイロン66フィラメントPOY糸条の7.5kg巻きチーズ状パッケージを得た。
【0052】
得られたナイロン66糸条(比較例5)を、仮撚機としてIVF805(石川製作所社製)を用いて、加工速度500m/分、延伸倍率1.2倍、ヒーター温度190℃、D/Y比1.7(解撚張力/加撚張力=1.04)に設定して仮撚り加工を行い、78デシテックス48フィラメントのナイロン66仮撚加工糸を得た。
【0053】
(実施例1〜4,比較例1〜5)
得られたポリ乳酸・ポリアミド芯鞘複合糸仮撚加工糸、ポリ乳酸仮撚加工糸、ナイロン6仮撚加工糸、ナイロン66仮撚加工糸を巻糸として、図1に示すカバリング機で、芯糸としては“ライクラ T−178C”20デシテックス(東レ・デュポン社製、ウレタン弾性糸)を用いて、ドラフト倍率2.9倍、カバリング撚数800T/mにてS撚、Z撚のカバリング糸を作成した。
【0054】
カバリング糸を用いて永田精機(株)製のスーパー4編機(針数360本)で、S方向シングルカバリング弾性糸とZ方向シングルカバリング弾性糸とを交互に編機の給糸口に供給し、パンティー部およびレッグ部編地をカバリング弾性糸のみで編成した。このようにして編成されたタイツを、常法どおり、精練・染色(98℃×20分)、柔軟剤付与、足型セット(スチームセット、110℃×60sec)してタイツを仕上げた。ただし、酢酸を用いてpHを5に調整した上で酸性染料(三井東圧染料社製 Mitsui Nylon Black GL、4%owf)を用いていた。得られたタイツについて評価した結果を表1に示す。尚、市販品、黒色のタイツ製品とは、比較例5のナイロン66仮撚り加工糸が一般的であるので、相対比較の対象は、比較例5である。また、タイツ中に占める巻糸の混率は90重量%であった。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1に示すように、実施例1〜4のポリ乳酸・ナイロン6芯鞘複合糸のタイツは、風合い、環境貢献度、発色性、耐久性いずれにも優れていることが分かる。一方、比較例3のポリ乳酸単独糸のタイツは、風合い、発色性に劣っていた。ポリ乳酸は脂肪族ポリエステルであるため、曲げ剛性が高くソフト性に劣る、酸性染料では染色できないからである。比較例4、5のナイロン6単独糸、ナイロン66単独糸のタイツは、風合い、発色性、耐久性に優れるが、環境貢献度の面で劣っている。比較例1のポリ乳酸・ポリアミド比率が20/80の芯鞘複合糸は、ポリ乳酸の占める割合が低く、環境貢献度が低いものであった。これに対し、比較例2のポリ乳酸・ポリアミド比率が、70/30の芯鞘複合糸は、鞘のナイロン6の比率が低く、繊維断面積からみた鞘面積が小さいため、発色性が低いことと、芯鞘剥離や芯成分の破損によるポリ乳酸の露出により光沢が発生し耐久性が低いものであった。
【0057】
比較例6
鞘部の導入孔がC型である紡糸口金を用いて芯成分が一部露出している(図2(b))以外は実施例2と同様に紡糸、仮撚り加工を行い、カバリング弾性糸を製造し、タイツを製造した。
【0058】
得られたタイツについて、評価したところ、風合い○、環境貢献度○(バイオマスプラスチック度36%)、発色性×、耐久性×であった。結果を表2に示す。
【0059】
【表2】

【0060】
実施例5
ポリ乳酸チップ(NatureWorks社製 Polylactide Resin 品番6201D、Mwが14.5万、融点175℃)を芯成分とし、ナイロン6チップ(硫酸相対粘度ηr:2.6、融点215℃)を鞘成分として、それぞれ別々に溶融し、ポリ乳酸/ポリアミドの重量比が50/50となるように計量して紡糸口金に導き、ポリ乳酸が芯成分、ナイロン6が鞘成分となるように同心円型に複合した後、24ヶの丸型の吐出孔を有する紡糸口金から吐出し、一方方向からの冷却風で冷却によって冷却し、繊維用油剤を、0.5重量%塗布する給油を行い、交絡を付与したのち、第1ゴデッドローラー(非加熱ローラー)に引取り、引き続き、第2ゴデッドローラー(加熱ローラー、170℃)との間で1.5倍に延伸して、巻き取り速度4000m/分で巻き取りをおこない、鞘成分が繊維表面を完全に覆っている(図2(a))67デシテックス24フィラメントのポリ乳酸・ナイロン6芯鞘複合糸条の4.5kg巻きチーズ状パッケージを得た。
【0061】
得られたポリ乳酸・ナイロン6芯鞘複合糸条を、仮撚機としてIVF805(石川製作所社製)を用いて、加工速度500m/分、延伸倍率1.15倍、ヒーター温度130℃、D/Y比1.7(解撚張力/加撚張力=1.04)に設定して仮撚り加工を行い、56デシテックス24フィラメントのポリアミド・ナイロン6仮撚加工糸を得た。
【0062】
得られたポリアミド・ナイロン6仮撚加工糸と綿糸(56デシテックス)でインターレース加工を行い、複合加工糸とした。尚、ポリアミド・ナイロン6芯鞘複合仮撚加工糸の混率は、60重量%であった。
【0063】
得られた複合加工糸を巻糸として、図1に示すカバリング機で、芯糸としては“ライクラ T−178C”20デシテックス(東レ・デュポン社製、ウレタン弾性糸)を用いて、ドラフト倍率2.9倍、カバリング撚数500T/mにてS撚、Z撚のカバリング糸を作成した。
【0064】
カバリング糸を用いて永田精機(株)製のスーパー4編機(針数360本)で、S方向シングルカバリング弾性糸とZ方向シングルカバリング弾性糸とを交互に編機の給糸口に供給し、パンティー部およびレッグ部編地をカバリング弾性糸のみで編成した。このようにして編成されたタイツを、常法どおり、精練・染色(98℃×20分)、柔軟剤付与、足型セット(スチームセット、110℃×60sec)してタイツを仕上げた。染料は、ナイロンと綿が両方染まる反応染料を用いている。また、タイツ中に占める巻糸の混率は95重量%であった。
【0065】
得られたタイツについて、評価したところ、風合い○、環境貢献度○(バイオマスプラスチック度29%)、発色性○、耐久性○であった。結果を表3に示す。
【0066】
【表3】

【0067】
<実施例7、実施例8のカバリング糸の製造方法>
ポリ乳酸チップ(NatureWorks社製 Polylactide Resin 品番6201D、Mwが14.5万、融点175℃)を芯成分とし、ナイロン6チップ(硫酸相対粘度ηr:2.6、融点215℃)を鞘成分として、それぞれ別々に溶融し、ポリ乳酸/ポリアミドの重量比が50/50となるように計量して紡糸口金に導き、ポリ乳酸が芯成分、ナイロン6が鞘成分となるように同心円型に複合した後、24ヶの丸型の吐出孔を有する紡糸口金から吐出し、一方方向からの冷却風で冷却によって冷却し、繊維用油剤を、0.6重量%塗布する給油を行い、交絡を付与したのち、第1ゴデッドローラー(非加熱ローラー)に引取り、引き続き、第2ゴデッドローラー(加熱ローラー、170℃)との間で1.5倍に延伸して、巻き取り速度4000m/分で巻き取りをおこない、鞘成分が繊維表面を完全に覆っている(図2(a))13デシテックス5フィラメントのポリ乳酸・ナイロン6芯鞘複合糸条(カバリング弾性糸巻糸用)の4.5kg巻きチーズ状パッケージ4個を得た。
【0068】
得られたポリ乳酸・ナイロン6芯鞘複合糸条を巻糸として、図1に示すカバリング機で、芯糸としては“ライクラ T−178C”20デシテックス(東レ・デュポン社製、ウレタン弾性糸)を用いて、ドラフト倍率2.9倍、カバリング撚数2000T/mにてS撚、Z撚のカバリング糸を作成した。
【0069】
<比較例7、比較例8のカバリング糸の製造方法>
98%硫酸相対粘度2.7のナイロン6チップを、260℃で溶融し、孔径0.15mm、24ヶの丸型の吐出孔を有する紡糸口金から吐出し、一方向からの冷却風によって冷却し、繊維用油剤を、0.6重量%塗布する給油を行い、交絡を付与をしたのち、第1ゴデッドローラー(非加熱ローラー)引取り、引き続き、第2ゴデッドローラー(加熱ローラー、150℃)との間で伸度が45%となるような倍率で延伸して、巻き取り速度4000m/分で巻き取りをおこない、13デシテックス5フィラメントのナイロン6繊維糸条(カバリング弾性糸巻糸用)の4.5kg巻きチーズ状パッケージ4個を得た。
【0070】
得られたナイロン6繊維糸条を巻糸として、図1に示すカバリング機で、芯糸としては“ライクラ T−178C”20デシテックス(東レ・デュポン社製、ウレタン弾性糸)を用いて、ドラフト倍率2.9倍、カバリング撚数2000T/mにてS撚、Z撚のカバリング糸を作成した。
【0071】
<実施例8の交編糸の製造方法>
ポリ乳酸チップ(NatureWorks社製 Polylactide Resin 品番6201D、Mwが14.5万、融点175℃)を芯成分とし、ナイロン6チップ(硫酸相対粘度ηr:2.6、酸化チタン0.2%含有、融点215℃)を鞘成分として、それぞれ別々に溶融し、ポリ乳酸/ポリアミドの重量比が50/50となるように計量して紡糸口金に導き、ポリ乳酸が芯成分、ナイロン6が鞘成分となるように同心円型に複合した後、12ヶの丸型の吐出孔を有する紡糸口金から吐出し、一方方向からの冷却風で冷却によって冷却し、繊維用油剤を、0.6重量%塗布する給油を行い、交絡を付与したのち、第1ゴデッドローラー(非加熱ローラー)に引取り、引き続き、第2ゴデッドローラー(加熱ローラー、170℃)との間で1.5倍に延伸して、巻き取り速度4000m/分で巻き取りをおこない、鞘成分が繊維表面を完全に覆っている(図2(a))18デシテックス3フィラメントのポリ乳酸・ナイロン6芯鞘複合糸条(交編糸用)の4.5kg巻きチーズ状パッケージ4個を得た。
【0072】
<比較例8の交編糸の製造方法>
98%硫酸相対粘度2.6、酸化チタン0.2%含有したナイロン6チップを、260℃で溶融し、孔径0.2mm、12ヶの丸型の吐出孔を有する紡糸口金から吐出し、一方向からの冷却風によって冷却し、繊維用油剤を、0.6重量%塗布する給油を行い、交絡を付与をしたのち、第1ゴデッドローラー(非加熱ローラー)引取り、引き続き、第2ゴデッドローラー(加熱ローラー、150℃)との間で伸度が45%となるような倍率で延伸して、巻き取り速度4000m/分で巻き取りをおこない、18デシテックス3フィラメントのナイロン6繊維糸条(交編糸用)の4.5kg巻きチーズ状パッケージ4個を得た。
【0073】
実施例7、比較例7
上述したカバリング糸を用いて永田精機(株)製のスーパー4編機(針数400本)で、S方向シングルカバリング弾性糸とZ方向シングルカバリング弾性糸とを交互に編機の給糸口に供給し、レッグ部編地をカバリング弾性糸のみで編成した。このようにして編成された丈の長さが膝下程度のストッキングを、常法どおり、精練・染色(98℃×20分)、柔軟剤付与、足型セット(スチームセット、110℃×60sec)してストッキングを仕上げた。ただし、酢酸を用いてpHを5に調整した上で酸性染料(三井東圧染料社製 Mitsui Nylon Black GL、4%owf)を用いている。また、ストッキング中に占める巻糸の混率は70重量%であった。
【0074】
実施例8、比較例8
上述したカバリング糸を用いて永田精機(株)製のスーパー4編機(針数400本)で、S方向シングルカバリング弾性糸、上述した交編糸、Z方向シングルカバリング弾性糸、上述した交編糸を順番に編機の給糸口に供給し、レッグ部編地をカバリング弾性糸と交編糸の交互編みで編成した。このようにして編成された丈の長さが膝下程度のストッキングを、常法どおり、精練・染色(98℃×20分)、柔軟剤付与、足型セット(スチームセット、110℃×60sec)してストッキングを仕上げた。ただし、酢酸を用いてpHを5に調整した上で酸性染料(三井東圧染料社製 Mitsui Nylon Black GL、4%owf)を用いている。また、ストッキング中に占めるカバリング弾性糸の混率は50重量%(巻糸の混率は70重量%)であった。
【0075】
【表4】

【0076】
表4に示すように、実施例7、8のポリ乳酸・ナイロン6芯鞘複合糸のストッキングは、風合い、環境貢献度、発色性、耐久性いずれにも優れていることが分かる。一方、比較例7、8のナイロン6単独糸のストッキングは、風合い、発色性、耐久性に優れるが、環境貢献度の面で劣っている。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明で用いるカバリング加工機の一例を示す説明図である。
【図2】(a)本発明の芯鞘複合断面糸の一例を示す図である。
【0078】
(b)比較例の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
1:弾性繊維パッケージ
2、4:フィードローラー
3:巻糸が巻き付けられたHボビン
5:カバリング弾性糸パッケージ
6:弾性繊維糸条
7:巻糸
8:カバリング弾性糸条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯糸が弾性糸、巻糸の一部が芯鞘複合糸であるカバリング弾性糸において、芯鞘複合糸の芯成分がポリアミド、鞘成分がポリ乳酸であり、芯鞘複合比(芯成分(重量%)/鞘成分(重量%))が30/70〜60/40であり、かつ鞘成分が糸外周表面を覆っていることを特徴とするカバリング弾性糸。
【請求項2】
巻糸が全て芯鞘複合糸であることを特徴とする請求項1記載のカバリング弾性糸。
【請求項3】
芯鞘複合糸がフラットヤーンであることを特徴とする請求項1または2記載のカバリング弾性糸。
【請求項4】
芯鞘複合糸が仮撚り加工糸であることを特徴とする請求項1または2記載のカバリング弾性糸。
【請求項5】
芯鞘複合糸が複合加工糸であることを特徴とする請求項1または2記載のカバリング弾性糸。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のカバリング弾性糸を一部に有するレッグニット。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のカバリング弾性糸をレッグ部および/またはパンティ部の一部に有するストッキング。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−215679(P2009−215679A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61946(P2008−61946)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】