説明

ポリ乳酸樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体

【課題】ポリ乳酸樹脂の耐熱性と結晶化度が向上し、射出成形時の成形サイクルを短縮した、生産性に優れた樹脂組成物およびその成形体を提供する。
【解決手段】ポリ乳酸樹脂(A)100質量部、(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)0.01〜5質量部、およびグリセリン脂肪酸エステル(C)0.1〜20質量部からなる樹脂組成物であって、ポリ乳酸樹脂(A)を構成する総乳酸単位に対してD乳酸単位が占める割合が、1.0%モル%以下であるか、または99.0モル%以上である樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的強度、耐熱性および結晶化速度に優れ、石油系製品への依存が低いポリ乳酸樹脂組成物および同組成物を成形してなる成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全の見地からポリ乳酸樹脂が注目されている。中でも、ポリ乳酸樹脂は結晶性高分子であり、他のポリ乳酸樹脂と比較して融点が高く、耐熱性も高い。大量生産可能なためコストも安く、有用性が高い。さらに、ポリ乳酸樹脂の原料となる乳酸はトウモロコシやサツマイモ等の植物を原料として製造可能であり、石油等の枯渇資源の節約に貢献できる。
【0003】
しかし、ポリ乳酸樹脂は、一般的に結晶化速度が遅いとされるポリエチレンテレフタレートよりもさらに結晶化速度が遅い。そのため、成形サイクルが長いだけでなく、得られる成形体の機械的強度や耐熱性に劣るという欠点もあった。
【0004】
そこで、特許文献1には、ポリ乳酸樹脂の結晶化速度を向上させる方法として、ポリ乳酸樹脂に結晶核剤としてタルク、シリカ、乳酸カルシウム等を添加する方法が開示されている。しかし、得られるポリ乳酸樹脂組成物の結晶化速度は十分ではなく、また、この方法により得られる成形体の耐熱性は100℃以下と低いものであった。
【0005】
また、本発明者は、特許文献2で、ポリ乳酸樹脂の結晶化速度を向上させる方法として、ポリ乳酸樹脂に、(メタ)アクリル酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルを配合する方法を開示している。しかしながら、この方法では、結晶化速度を向上させるものの、実用上可能な射出成形サイクルにおいて十分な耐熱性を得ることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−193165号公報
【特許文献2】国際公開第2006/132187号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、前記問題点を解決し、ポリ乳酸樹脂の耐熱性と結晶化度を向上し、射出成形時の成形サイクルを短縮した、生産性に優れた樹脂組成物およびその成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の結晶性ポリ乳酸樹脂を使用することで前記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
【0009】
(1)ポリ乳酸樹脂(A)100質量部、(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)0.01〜5質量部、およびグリセリン脂肪酸エステル(C)0.1〜20質量部からなる樹脂組成物であって、ポリ乳酸樹脂(A)を構成する総乳酸単位に対してD乳酸単位が占める割合が、1.0%モル%以下であるか、または99.0モル%以上である樹脂組成物。
(2)(1)記載の樹脂組成物に、さらに、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して0.03〜5質量部の結晶核剤(D)を含有する樹脂組成物。
(3)グリセリン脂肪酸エステル(C)がグリセリンジアセトモノカプレートまたはグリセリンジアセトモノラウレートである(1)または(2)に記載の樹脂組成物。
(4)結晶核剤(D)が、有機アミド化合物、有機ヒドラジド化合物、カルボン酸エステル系化合物、有機スルホン酸塩、フタロシアニン系化合物、メラミン系化合物、および有機ホスホン酸塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物である(2)または(3)に記載の樹脂組成物。
(5)結晶核剤(D)が、5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩、N,N’,N’’−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド、N,N’−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、およびオクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジドからなる群より選ばれた1種以上の化合物である(2)または(3)に記載の樹脂組成物。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた成形性、生産性を有する石油系製品への依存度の低い樹脂組成物が提供される。この樹脂組成物は各種成形方法により、種々の成形体とすることができる。また、天然物由来の生分解性樹脂を利用しているので、石油等の枯渇資源の節約に貢献でき、産業上の利用価値は極めて高い。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A)、(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)およびグリセリン脂肪酸エステル(C)を含有する。
【0013】
まず、ポリ乳酸樹脂(A)について説明する。
ポリ乳酸樹脂(A)は、D体含有量が1.0モル%以下であるか、または、D体含有量が99.0モル%以上であることが必要である。D体含有量がこの範囲外であるポリ乳酸樹脂を用いた場合、得られる成形体は、結晶化度が低くなり、耐熱性や耐久性に劣るものとなる。中でも、D体含有量は0.1〜0.6モル%であるか、または、99.4〜99.9モル%であることが好ましい。
【0014】
本発明において、ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量とは、ポリ乳酸樹脂(A)を構成する総乳酸単位のうち、D乳酸単位が占める割合(モル%)である。例えば、D体含有量が1.0モル%のポリ乳酸樹脂(A)の場合、このポリ乳酸樹脂(A)は、D乳酸単位が占める割合が1.0モル%であり、L乳酸単位が占める割合が99.0モル%である。
【0015】
本発明においては、ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量は、後述するように、ポリ乳酸樹脂(A)を分解して得られるL乳酸とD乳酸を全てメチルエステル化し、L乳酸のメチルエステルとD乳酸のメチルエステルとをガスクロマトグラフィー分析機で分析する方法により算出するものである。
【0016】
本発明においては、ポリ乳酸樹脂(A)として、2種以上のポリ乳酸樹脂を用いてもよい。この場合、D体含有量が本発明で規定する範囲外であるポリ乳酸樹脂、例えば、D体含有量が1.0モル%を超えるポリ乳酸樹脂を用いてもよい。このようなポリ乳酸樹脂と、本発明で規定するD体含有量を満足するポリ乳酸樹脂とを用いて得られるポリ乳酸樹脂(A)において、そのD体含有量が1.0モル%以下であればよい。同様に、ポリ乳酸樹脂(A)を構成するポリ乳酸樹脂として、D体含有量が99.0%未満のポリ乳酸樹脂を用いてもよく、組み合わせて得られるポリ乳酸樹脂(A)において、そのD体含有量が99.0%以上であればよい。
【0017】
ポリ乳酸樹脂(A)としては、市販の各種ポリ乳酸樹脂のうち、D体含有量が本発明で規定する範囲のポリ乳酸樹脂を用いることができる。また、乳酸の環状2量体であるラクチドのうち、D体含有量が十分に低いL-ラクチド、または、L体含有量が十分に低いD-ラクチドを原料に用い、公知の溶融重合法で、あるいは、さらに固相重合法を併用して製造したものを用いることができる。
【0018】
ポリ乳酸樹脂(A)の後述の測定方法によるメルトフローレート(以下、MFRと略称する。)は、0.1〜50g/10分が好ましく、0.2〜20g/10分がより好ましく、0.5〜15g/10分がさらに好ましい。MFRが50g/10分を超えると、溶融粘度が低すぎて成形物の機械的特性や耐熱性が劣る場合がある。一方、MFRが0.1g/10分未満であると成形加工時の負荷が高くなり、操業性が低下する。
【0019】
ポリ乳酸樹脂(A)のMFRを所定の範囲に調節する方法として、MFRが大きすぎる場合は、少量の鎖長延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、ビスオキサゾリン化合物、エポキシ化合物、酸無水物を用いて樹脂の分子量を増大させる方法が挙げられる。一方、MFRが小さすぎる場合はMFRの大きなポリエステル樹脂や低分子量化合物と混合する方法が挙げられる。
【0020】
ポリ乳酸樹脂(A)は、公知の溶融重合法により、あるいは必要に応じて、さらに固相重合法を併用して製造される。
【0021】
次に、(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)について説明する。
【0022】
(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)は、ポリ乳酸樹脂(A)に架橋構造を導入することを目的として配合されるものである。架橋構造を有する樹脂とすることにより、結晶性が向上し、結晶化速度が速くなり、得られる成形体の結晶化度が高いものとなる。
【0023】
(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)とは、(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物が反応して生成する化合物である。
【0024】
(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)としては、ポリ乳酸樹脂(A)との反応性が高く、モノマーが残りにくく、また、樹脂の着色も少ないことから、分子内に2個以上の(メタ)アクリル基を有するか、または1個以上の(メタ)アクリル基と1個以上のグリシジル基もしくはビニル基を有する化合物が好ましい。例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、グリセロールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオール(メタ)アクリレート、または、これらのアルキレングリコール部が様々な長さのアルキレン鎖の共重合体が挙げられる。中でも、ポリ乳酸樹脂(A)との反応性の理由からポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレートが好ましい。
【0025】
(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)の含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜5質量部が必要であり、0.1〜3質量部が好ましい。(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)の含有量が0.01質量部未満であると、射出成形時のサイクルが短縮できず、一方、(B)の配合量が5質量部を超えると、押出し時の操業性に支障を来たす場合があるので好ましくない。
【0026】
次に、過酸化物(E)について説明する。
【0027】
過酸化物(E)は、ポリ乳酸樹脂(A)に(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)によって架橋構造を導入する際のラジカル発生剤として配合されるものである。
【0028】
過酸化物(E)とは、(−O−O−)で表されるペルオキシド基を分子内に有する化合物である。
【0029】
過酸化物(E)としては、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ビス(ブチルパーオキシ)シクロドデカン、ブチルビス(ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド、ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキシン、ブチルパーオキシクメン等が挙げられる。
【0030】
過酸化物(E)の添加量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部とすることが好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。過酸化物(E)の添加量が0.1質量%未満であると、射出成形時のサイクルの短縮できず、一方、過酸化物(E)の添加量が10質量部を超えるとコスト面で不利になるので好ましくない。なお、過酸化物(E)は、ポリ乳酸樹脂(A)に添加して溶融混練する際に分解するため、本発明の樹脂組成物に、必ずしも含有されているものではない。
【0031】
次に、グリセリン脂肪酸エステル(C)について説明する。
【0032】
グリセリン脂肪酸エステル(C)は、過酸化物(E)と(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)を希釈する可塑剤として配合されるものである。
【0033】
グリセリン脂肪酸エステル(C)とは、グリセリンと脂肪酸が反応して生成する化合物である。
【0034】
グリセリン脂肪酸エステル(C)としては、グリセリンジアセトモノカプレート、グリセリンジアセトモノラウレート等のアセチル化モノグリセライド等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を用いてもよい。
【0035】
グリセリン脂肪酸エステル(C)の含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜20質量部とすることが必要であり、0.1〜10質量部が好ましい。グリセリン脂肪酸エステル(C)の含有量が0.1質量部未満、または20質量部を超えた場合、耐熱性が低下する場合があるだけでなく、可塑剤がブリードアウトする問題が発生するので好ましくない。
【0036】
次に、結晶核剤(D)について説明する。
【0037】
結晶核剤(D)は、ポリ乳酸樹脂(A)の結晶化を促進することを目的として配合されるものである。
【0038】
結晶核剤(D)の含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、0.03〜5質量部とすることが好ましく、0.1〜4質量部がより好ましい。結晶核剤(D)の含有量が0.03質量部未満であると、結晶化を促進する効果が乏しい。一方、結晶核剤(D)の含有量が5質量部を超えると、結晶核剤(D)としての効果が飽和し、経済的に不利であるだけでなく、生分解後の残渣分が増大する。
【0039】
結晶核剤(D)は特に限定されず、種々のものを用いることができる。
【0040】
結晶核剤(D)としては、その結晶化促進効果の点から、有機アミド化合物、有機ヒドラジド化合物、カルボン酸エステル系化合物、有機スルホン酸塩、フタロシアニン系化合物、メラミン系化合物、および有機ホスホン酸塩から選ばれる1種以上のものを用いることが好ましい。
【0041】
有機アミド化合物、有機ヒドラジド化合物としては、一般式(1)〜(3)で表される化合物が好ましい。
1−(CONH−R2a (1)

(式中、R1は炭素数2〜30の炭化水素基を表す。R2は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基あるいはシクロアルケニル基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、あるいは、一般式(a)〜(d)のいずれかで表される基を表す。なお、(1)〜(3)の化合物において、1つ以上の水素原子がヒドロキシル基で置換されていても構わない。aは2〜6の整数を表す。)
【化1】

(式中、R3は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数3〜18のシクロアルキル基、フェニル基、あるいは、ハロゲン原子を表す。oは1〜5の整数を表す。)
【化2】

(式中、R4は炭素数1〜4の直鎖状、あるいは、分岐鎖状のアルキレン基を表す。R5は前記のR3と同義である。pは0〜5の整数を表す。)
【化3】

(式中、R6は前記のR3と同義である。qは1〜5の整数を表す。)
【化4】

(式中、R7は前記のR4と、R8は前記のR3とそれぞれ同義である。rは0〜6の整数を表す。)
9−(NHCO−R10 (2)

(式中、R9は炭素数2〜30の飽和あるいは不飽和の脂肪鎖、不飽和の脂肪環、あるいは、芳香環を表す。R10は前記のR2と同義である。bは2〜6の整数を表す。)
11−(CONHNHCO−R12 (3)

(式中、R11は炭素数2〜30の脂肪鎖、不飽和の脂肪環、あるいは、芳香環を表す。R12は前記のR2と同義である。cは2〜6の整数を表す。)
【0042】
一般式(1)〜(3)で表される化合物としては、ヘキサメチレンビス−9、10−ジヒドロキシステアリン酸ビスアミド、p−キシリレンビス−9、10−ジヒドロキシステアリン酸アミド、デカンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、ヘキサンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアニリド、N,N’,N’’−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアニリド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、N,N’−ジベンゾイル−1,4−ジアミノシクロヘキサン、N,N’−ジシクロヘキサンカルボニル−1,5−ジアミノナフタレン、エチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、オクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド等が挙げられる。中でも、樹脂中への分散性および耐熱性の面から、N,N’,N’’−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド、N,N’−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、オクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジドが好ましく、N,N’−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミドがさらに好ましい。
【0043】
カルボン酸エステル系化合物としては、特に限定されないが、モノカルボン酸エステル、エチレングリコールモノエステル、エチレングリコールジエステル、グリセリンモノエステル、グリセリンジエステル、グリセリントリエステル等が挙げられる。具体的な化合物としては、ラウリン酸セチルエステル、ステアリン酸セチルエステル、モノラウリン酸グリコール、モノステアリン酸グリコール、ジラウリン酸グリコール、ジパルミチン酸グリコール、ジステアリン酸グリコール、モノラウリン酸グリセリンエステル、モノステアリン酸グリセリンエステル、ジラウリン酸グリセリンエステル、ジステアリン酸グリセリンエステル、トリラウリン酸グリセリンエステル、トリステアリン酸グリセリンエステル等が挙げられる。
【0044】
有機スルホン酸塩は特に限定されないが、スルホイソフタル酸塩等が挙げられる。中でも、結晶化促進効果の点から、5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩が好ましく、そのバリウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩がより好ましく、5−スルホイソフタル酸ジメチルバリウムがさらに好ましい。
【0045】
フタロシアニン系化合物は特に限定されないが、遷移金属錯体のフタロシアニン等が挙げられる。中でも、結晶化促進効果の点から、銅フタロシアニンが好ましい。
【0046】
メラミン系化合物は特に限定されないが、メラミンシアヌレート等が挙げられる。
【0047】
有機ホスホン酸化合物は特に限定されないが、フェニルホスホン酸塩等が挙げられる。中でも、結晶化促進効果の点からフェニルホスホン酸亜鉛が好ましい。
【0048】
結晶核剤(D)は、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0049】
これら有機系の結晶核剤に対して、無機系の各種結晶核剤を併用しても構わない。
【0050】
次に、本発明のポリ乳酸樹脂組成物の製造方法について説明する。
本発明の樹脂組成物の製造方法としては、各成分が樹脂組成物中に分散されている状態になれば、特に限定されない。例えば、すべての原料を同時に混合し溶融混練する方法や、事前に一部原料を混合した溶液を押出機の途中から注入する方法が挙げられる。混練状態を良くする意味で、事前に一部原料を混合した溶液を押出機の途中から注入する方法が好ましい。
【0051】
すべての原料を同時に混合し溶融混練する方法としては、すべての原料をドライブレンドして供給し溶融混練する方法や、粉体フィーダーを用いて供給し溶融混練する方法が挙げられる。
【0052】
事前に一部原料を混合した溶液を押出機の途中から注入する方法としては、事前に(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)、過酸化物(E)、グリセリン脂肪酸エステル(C)を混合し、その他の原料が溶融混練したところに、混合した溶液を加圧ポンプで押出機の途中から注入する方法が好ましい。なお、その他の原料が十分に分散できるように、グリセリン脂肪酸エステル(C)だけでなく、それ以外の可塑剤を供給することも可能である。可塑剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
また、グリセリン脂肪酸エステル(C)、または、その他の可塑剤の一部を、ポリ乳酸樹脂(A)と結晶核剤(D)をドライブレンドして押出機トップから供給してもよい。
【0053】
(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)と過酸化物(E)の合計とグリセリン脂肪酸エステル(E)との質量比率は、架橋効率の観点から、(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)と過酸化物(E)の合計:グリセリン脂肪酸エステル(E)=1:2〜10が好ましく、1:3〜5がより好ましい。
【0054】
溶融混練する手段は、特に限定されないが、例えば、一軸あるいは二軸の押出機を用いて溶融混練する方法を挙げることができる。混練状態を良くする意味で、二軸の押出機を用いることが好ましい。
【0055】
混練温度は[(ポリ乳酸樹脂の融点)+5]℃〜[(ポリ乳酸樹脂の融点)+100]℃であることが好ましい。この範囲より低温であると混練や反応が不十分となり、一方、この範囲より高温であると樹脂の分解や着色が起きる場合がある。また、混練時間は20秒〜30分が好ましい。混練時間が20秒より短いと混練や反応が不十分となり、一方、混練時間が30分より長いと樹脂の分解や着色が起きる場合がある。
【0056】
なお、結晶核剤(D)を使用する場合には、ポリ乳酸樹脂(A)とドライブレンドして供給することが好ましい。
【0057】
本発明の樹脂組成物には、その特性を損なわない限りにおいて、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、無機充填材、植物繊維、強化繊維、耐候剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、上記の結晶核剤以外の耐衝撃剤、相溶化剤等の添加剤を添加することができる。
【0058】
顔料としては、チタン、カーボンブラック等を挙げることができる。
【0059】
熱安定剤や酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物等を挙げることができる。
【0060】
無機充填材としては、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、アルミナ、マグネシア、珪酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウィスカー、セラミックウィスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、炭素繊維、層状珪酸塩等を挙げることができる。
【0061】
植物繊維としては、ケナフ繊維、竹繊維、ジュート繊維、その他のセルロース系繊維等が挙げられる。
【0062】
強化繊維としては、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、液晶ポリマー繊維の有機強化繊維等が挙げられる。
【0063】
耐候剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンズオキサジノン等が挙げられる。
【0064】
滑剤としては、各種カルボン酸系化合物等が挙げられる。中でも、各種脂肪酸金属塩が好ましく、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムがさらに好ましい。
【0065】
離型剤としては、各種カルボン酸系化合物等が挙げられる。中でも、各種脂肪酸エステル、各種脂肪酸アミドが好ましい。
【0066】
帯電防止剤としては、アルキルスルホン酸塩、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0067】
耐衝撃剤としては、コアシェル型構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系耐衝撃剤等が挙げられる。市販品としては、三菱レイヨン社製「メタブレンシリーズ」等が挙げられる。
【0068】
相溶化剤としては、オレフィン系共重合樹脂を主鎖に有するグラフト共重合体等が挙げられる。具体的には、ポリ(エチレン/グリシジルメタクリレート)−ポリメチルメタクリレートグラフト共重合体、ポリ(エチレン/グリシジルメタクリレート)−ポリ(アクリロニトリル/スチレン)グラフト共重合体等が挙げられる。市販品としては、日本油脂社製「モディパーシリーズ」等が挙げられる。
【0069】
本発明の樹脂組成物において、添加剤を混合する方法は特に限定されない。
【0070】
また、本発明の樹脂組成物には、ポリ乳酸樹脂以外の樹脂を配合して、アロイとすることもできる。ポリ乳酸樹脂とアロイされる樹脂としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ(メチル)メタアクリレート、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)共重合体、液晶ポリマー、ポリアセタール等が挙げられる。
【0071】
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0072】
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6T等が挙げられる。
【0073】
ポリエステルとしては、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル等多くのものが挙げられる。芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリブチレンアジペートテレフタレート等が挙げられる。脂肪族ポリエステルとしては、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート−乳酸)共重合体、ポリヒドロキシ酪酸等が挙げられる。この他のポリエステル系化合物としては、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレートコテレフタレート、ポリブチレンイソフタレートコテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/シクロへキシレンジメチレンテレフタレート、シクロへキシレンジメチレンイソフタレートコテレフタレート、p−ヒドロキシ安息香酸残基とエチレンテレフタレート残基からなるコポリエステル、植物由来の原料である1,3−プロパンジオールからなるポリトリメチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0074】
本発明の樹脂組成物において、これらの樹脂を混合する方法は特に限定されない。
【0075】
本発明の樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形、押出成形、インフレーション成形、インジェクションブロー成形、発泡シート成形等の成形方法や、シート加工後の真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の成形方法により、各種成形体とすることができる。すなわち、射出成形してなる成形体、ブロー成形してなる中空体、この中空体から加工してなる成形体、押出成形してなるフィルム、シート、これらのフィルムやシートを加工してなる成形体等とすることができる。特に、射出成形法に適しており、一般的な射出成形のほか、ガス射出成形、射出プレス成形等に用いることができる。
【0076】
本発明の樹脂組成物に適した射出成形条件としては、樹脂組成物の種類や含有比率によって適宜選択されるが、シリンダ温度は、樹脂組成物の融点または流動開始温度以上、すなわち、170〜250℃とすることが好ましく、170〜230℃がより好ましい。また、金型温度は(樹脂組成物の融点−40)℃以下とすることが好ましい。シリンダ温度や金型温度が、上記の範囲よりも低いと、成形品にショートショートが発生する等して操業性が不安定になる場合がある。逆に、シリンダ温度や金型温度が上記範囲よりも高いと、樹脂組成物が分解し、得られる成形体の強度が低下したり、着色したりする等の問題が発生する場合がある。
【0077】
本発明の樹脂組成物は、結晶化を促進させることにより、その耐熱性を高めることができる。例えば、射出成形時に金型内で冷却して結晶化を促進させる方法や、成形後に結晶化を促進させる方法等が挙げられる。射出成形時に金型内で冷却して結晶化を促進させる方法としては、樹脂組成物のガラス転移温度以上、(樹脂組成物の融点−40)℃以下に保たれた金型内で、一定時間成形した後、金型より取り出す方法が挙げられる。一方、成形後に結晶化を促進させる方法としては、成形体を、樹脂組成物のガラス転移温度以上、(樹脂組成物の融点−40)℃以下で熱処理することにより、結晶化を促進する方法が挙げられる。
【0078】
本発明の樹脂組成物を用いた成形体の具体例としては、パソコン筐体部品および筐体、携帯電話筐体部品および筐体、その他OA機器筐体部品、コネクター類等の電化製品用樹脂部品、バンパー、インストルメントパネル、コンソールボックス、ガーニッシュ、ドアトリム、天井、フロア、エンジン周りのパネル等の自動車用樹脂部品をはじめ、コンテナーや栽培容器等の農業資材や農業機械用樹脂部品、浮きや水産加工品容器等の水産業務用樹脂部品、皿、コップ、スプーン等の食器や食品容器、注射器や点滴容器等の医療用樹脂部品、ドレーン材、フェンス、収納箱、工事用配電盤等の住宅・土木・建築材用樹脂部品、花壇用レンガ、植木鉢等の緑化材用樹脂部品、クーラーボックス、団扇、玩具等のレジャー・雑貨用樹脂部品、ボールペン、定規、クリップ等の文具用樹脂部品等が挙げられる。中でも、本発明の樹脂組成物は、耐熱性、および、成形サイクル、環境への配慮が必要とされる部品として特に有用である。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、樹脂組成物の物性測定は以下の方法によりおこなった。
【0080】
1.評価項目
(1)D体含有量
ポリ乳酸樹脂を0.3g秤量し、1N−水酸化カリウム/メタノール溶液6mLに加え、65℃にて充分撹拌した。次いで、硫酸450μLを加えて、65℃にて撹拌し、ポリ乳酸樹脂を分解させ、サンプルとして5mLを計り取った。このサンプルに純水3mL、および、塩化メチレン13mLを混合して振り混ぜた。静置分離後、下部の有機層を約1.5mL採取し、孔径0.45μmのHPLC用ディスクフィルターでろ過後、HewletPackard製HP−6890SeriesGCsystemを用いてガスクロマトグラフィー測定した。乳酸メチルエステルの全ピーク面積に占めるD−乳酸メチルエステルのピーク面積の割合(%)を算出し、これをポリ乳酸樹脂のD体含有量(モル%)とした。
【0081】
(2)MFR
JIS規格K−7210(試験条件4)にしたがって、190℃、荷重21.2NでMFRを測定した。
【0082】
(3)混練操業性
溶融混練機から吐出された樹脂をストランド状に曳き、ペレット状に加工する際の操業性の度合いを次に示す基準により2段階で評価した。実用上、「○」が好ましい。
○:溶融混練機から吐出された樹脂をストランド状に安定して曳くことができ、ペレット状に加工できた。
×:ストランドを曳くことができず、樹脂組成物を得ることができなかった。
【0083】
(4)成形サイクル
成形時、樹脂組成物が金型内に射出(充填、保圧)、冷却された後、成形体が金型に固着、または、抵抗なく取り出せるまでの時間(秒)を成形サイクルとした。ただし、80秒以上かかるものに関しては、それ以上の評価はしなかった。実用上、40秒以下が好ましく、30秒以下がより好ましい。
【0084】
(5)曲げ強度
ISO178にしたがって、曲げ強度を測定した。実用上、80MPa以上が好ましい。
【0085】
(6)曲げ弾性率
ISO178にしたがって、曲げ弾性率を測定した。実用上、3.0GPa以上が好ましい。
【0086】
(7)曲げ破断歪
ISO178にしたがって、曲げ破断歪を測定した。実用上、2.0%以上が好ましい。
【0087】
(8)衝撃強度
ISO 179−1にしたがって、シャルピー衝撃強度を測定した。実用上、2.0kJ/m以上が好ましい。
【0088】
(9)熱変形温度
ISO75−1にしたがって、荷重0.45MPaで荷重たわみ温度を測定した。実用上、100℃以上が好ましい。
【0089】
(10)相対結晶化度
金型温度85℃、成形サイクル30秒で、厚さ1.0ミリメートルの成形片を作製した。その成形片を、DSC(示差走査熱量測定)装置(パーキンエルマー社製Pyrisl DSC)を用いて昇温速度5℃/分の条件で200℃まで昇温させ、融解熱量と結晶化熱量を求め、下式で相対結晶化度を計算した。
相対結晶化度(%)=(融解熱量−結晶化熱量)/融解熱量×100
実用上、95%以上が好ましい。
【0090】
2.原料
<ポリ乳酸樹脂(A)>
(1)S−12 D体含有量=0.1%、MFR=8、トヨタ自動車社製
(2)3001D D体含有量=1.4%、MFR=10、ネイチャーワークス社製
【0091】
<(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)>
(1)日本油脂社製 ポリエチレングリコールジメタクリレート
【0092】
<過酸化物(E)>
(1)日本油脂社製 ジ−t−ブチルパーオキサイド
<グリセリン脂肪酸エステル(C)>
(1)C−1 理研ビタミン社製 グリセリンジアセトモノカプレート
(2)C−2 理研ビタミン社製 グリセリンジアセトモノラウレート
(3)C−3 理研ビタミン社製 脂肪酸トリグセライド
(4)C−4 理研ビタミン社製 グリセリンジアセトモノオレート
(5)C−5 理研ビタミン社製 グリセリンモノアセトモノステアレート
(6)C−6 理研ビタミン社製 グリセリンモノステアレート
<その他の脂肪酸エステル>
(1)F−1 理研ビタミン社製 ジエチレングリコールジベンゾエート
(2)F−2 理研ビタミン社製 ジエチレングリコールジエチルエーテル
(3)F−3 花王社製 アセチルトリブチルクエン酸
【0093】
<結晶核剤(D)>
(1)LAK−403 竹本油脂社製 5−スルホイソフタル酸ジメチルバリウム
(2)LAK−301 竹本油脂社製 5−スルホイソフタル酸ジメチルカリウム
(3)WX−1 川研ファインケミカル社製 N,N’−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド
【0094】
実施例1
二軸押出機(東芝機械社製TEM−37BS)を使用し、そのトップフィーダーにポリ乳酸樹脂100質量部、混練機途中からポンプを用いて、ポリエチレングリコールジメタクリレート0.1質量部とジーt−ブチルパーオキサイド0.2質量部をグリセリンジアセトモノカプレート1質量部に溶解した溶液を注入し、加工温度170〜190℃で溶融混練押出しをおこない、吐出された樹脂をペレット状に加工して樹脂組成物を得た。
【0095】
得られた樹脂組成物を、熱風乾燥機で、80℃で5時間乾燥処理した後、射出成形機(東芝機械製IS−80G型)を用いて成形し、各種試験片を得た。すべての樹脂組成物において、シリンダ設定温度170〜190℃で溶融して所定の射出条件で85℃の金型に充填し、得た成形品を用いて評価をおこなった。
【0096】
実施例2〜19、比較例1〜9
樹脂組成を表1、表2のように変更した以外は、実施例1と同様におこない、樹脂組成物の成形片を得た。
【0097】
表1、表2に、実施例1〜19、比較例1〜9の樹脂組成、ポリ乳酸のD体含有量、混練操業性、成形サイクル、成形片の特性値を示す。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【0100】
実施例1〜19で得られた樹脂組成物は、成形サイクルが早く、相対結晶化度が高く結晶化度が高いものであった。
【0101】
それに対して、比較例1は、使用するポリ乳酸樹脂のD体含有量が本発明の範囲から外れていたため、成形サイクルが遅く、相対結晶化度が低かった。
比較例2は、グリセリン脂肪酸エスエルの量が少なかったため、成形サイクルが遅く、相対結晶化度が低かった。
比較例3は、グリセリン脂肪酸エスエルの量が多かったため、成形サイクルが遅く、相対結晶化度が低く、曲げ強度が低かった。
比較例4〜6は、グリセリン脂肪酸エステルを使用しなかったため、成形サイクルが遅く、相対結晶化度が低かった。
比較例7は、(メタ)アクリル酸エステルを使用していなかったため、成形サイクルが非常に遅く、満足な成形体を得ることができなかった。
比較例8は、(メタ)アクリル酸エステルが少なかったため、成形サイクルが非常に遅く、満足な成形体を得ることができなかった。
比較例9は、(メタ)アクリル酸エステルが多かったため、混練して10分後に溶液注入口が詰まって注入できなくなり、樹脂組成物を得ることができなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸樹脂(A)100質量部、(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)0.01〜5質量部、およびグリセリン脂肪酸エステル(C)0.1〜20質量部からなる樹脂組成物であって、ポリ乳酸樹脂(A)を構成する総乳酸単位に対してD乳酸単位が占める割合が、1.0%モル%以下であるか、または99.0モル%以上である樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載の樹脂組成物に、さらに、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して0.03〜5質量部の結晶核剤(D)を含有する樹脂組成物。
【請求項3】
グリセリン脂肪酸エステル(C)がグリセリンジアセトモノカプレートまたはグリセリンジアセトモノラウレートである請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
結晶核剤(D)が、有機アミド化合物、有機ヒドラジド化合物、カルボン酸エステル系化合物、有機スルホン酸塩、フタロシアニン系化合物、メラミン系化合物、および有機ホスホン酸塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物である請求項2または3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
結晶核剤(D)が、5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩、N,N’,N’’−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド、N,N’−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、およびオクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジドからなる群より選ばれた1種以上の化合物である請求項2または3に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。

【公開番号】特開2011−208042(P2011−208042A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77817(P2010−77817)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】