説明

ポリ乳酸系樹脂シート

【課題】
本発明は、防曇性、透明性、耐ブロッキング性に優れ、特に成形品用途に適したポリ乳酸系樹脂シートを提供せんとするものである。
【解決手段】
ポリ乳酸系樹脂基材の少なくとも片面に、多価アルコール脂肪酸エステル(A)と水溶性アクリル系重合体(B)とを含有する被膜(C)を有するポリ乳酸系樹脂シートであって、多価アルコール脂肪酸エステル(A)の被膜(C)100質量%に対する含有量が20質量%超50質量%未満、または80質量%超95質量%未満であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防曇性、透明性、耐ブロッキング性に優れ、特に成形品用途に適したポリ乳酸系樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気中の炭酸ガス濃度増加による地球温暖化問題が世界的な問題となりつつあり、各産業分野においても、大気中への炭酸ガス排出量を削減する技術の開発が盛んに行われている。プラスチック製品の分野においては、従来、汎用の石油由来原料から製造されたプラスチックが使用後に焼却されるなどして大気中へ炭酸ガスとして放出されてきたが、近年、本来大気中の炭素源(炭酸ガス)に由来する植物由来原料のプラスチックが注目されている。中でも、透明性に優れ、コスト面でも比較的有利なポリ乳酸の実用化に向けた研究開発が盛んである。
【0003】
また、ポリ乳酸は、生分解性プラスチックとしてはガラス転移点が約57℃と比較的高く、硬質な素材であることから、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリスチレン(PS)の代替材料として注目されつつあり、中でも、食品用成形容器へ適したシートの開発が進められている。ポリ乳酸のシートは、そのままの表面は疎水性であり水分は微小な水滴としてシート表面に付着し、その結果表面が曇りやすいため、水分を多く含む野菜や果物などの食品包装用に用いるためにはシートに防曇性を付与する必要がある。
【0004】
一般的にシートに防曇性を付与する方法としては、押出し工程において防曇剤をシートに直接練りこむ方法や、シートの表面に防曇剤を塗布する方法が用いられてきた。ただし、前者の直接防曇剤を練り込む方法では十分な防曇性を付与することが困難であり、強いて十分な防曇性を発揮する量を練り込むと防曇剤が多量過ぎてブリードアウトし過ぎるなどシートの機械特性や外観を損ねたり製膜安定性が確保できないなどの問題があった。
【0005】
また、後者のシートの表面に防曇剤を塗布する方法についても幾つかの検討が試みられている。
【0006】
特許文献1には、ショ糖ラウリン酸エステルと水溶性ポリマーとからなる防曇性被膜を有するシートについて開示されている。しかしながら本技術では、ショ糖ラウリン酸エステルと水溶性ポリマーのそれぞれの選択に当たっての十分な示唆はなく、ポリ乳酸用技術として防曇性付与効果も十分ではなかった。
【0007】
また、特許文献2と3には、それぞれ、非イオン系界面活性剤と水性ポリウレタン樹脂および/または水性ポリエステル樹脂とからなる塗膜層を有するポリ乳酸系二軸延伸フィルム、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステルまたはポリグリセリン脂肪酸エステルと水性アクリル樹脂とからなる塗膜層を有するポリ乳酸系二軸延伸フィルムについて開示されている。いずれの技術も、防曇性と耐ブロッキング性の両立を狙ったものであるが、防曇性付与効果、特に成形品とする際に、熱成形により受ける熱履歴や表面の伸びなどの履歴を経た後の防曇性が十分ではなかった。
【0008】
以上のように、防曇性、透明性、耐ブロッキング性に優れ、特に成形品用途に適したポリ乳酸系樹脂シートは未だに達成されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−280410号公報
【特許文献2】特開2005−194383号公報
【特許文献3】特開2007−331154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、防曇性、透明性、耐ブロッキング性に優れ、特に成形品用途に適したポリ乳酸系樹脂シートを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、
ポリ乳酸系樹脂基材の少なくとも片面に、多価アルコール脂肪酸エステル(A)と水溶性アクリル系重合体(B)とを含有する被膜(C)を有するポリ乳酸系樹脂シートであって、
多価アルコール脂肪酸エステル(A)の被膜(C)100質量%に対する含有量が20質量%超50質量%未満、または80質量%超95質量%未満であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂シート、である。
【0012】
また、上記ポリ乳酸系樹脂シートの好ましい態様は、(1)多価アルコール脂肪酸エステル(A)が、ショ糖脂肪酸エステルであること、(2)ショ糖脂肪酸エステルが、少なくともショ糖ラウリル酸エステルとショ糖ミリスチン酸エステルとを含む2種以上のショ糖脂肪酸エステルからなる混合物であること、(3)被膜(C)の被膜量が10mg/m以上200mg/m以下であること、(4)ヘイズが2.5%以下であることを特徴とするものである。また本発明は、これらのポリ乳酸系樹脂シートを熱板直接加熱方式の真空成形加工または真空圧空成形加工用途に用いることが好ましく、さらに本発明は、これらのポリ乳酸系樹脂シートを用いた成形品も好ましい様態に含まれる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、防曇性、透明性、耐ブロッキング性に優れ、特に成形品用途に適したポリ乳酸系樹脂シートが提供される。本発明のポリ乳酸系樹脂シートを用いてなる成形品、成形容器は、防曇性能に優れ、食料品、特に野菜や果物などに代表される水分を多く含む食料品の包装容器として好ましく用いることができる。さらに本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、熱版直接過熱方式の真空成形加工および真空圧空成形加工用途に適用した際にも、防曇性、透明性、耐ブロッキング性といった点で優れた性質を維持できる効果も有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のポリ乳酸系樹脂シートについて説明する。なお、本明細書において「シート」とは、二次元的な構造物、例えば、フィルム、プレートなどを含む意味に用いる。
【0015】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、ポリ乳酸系樹脂基材の少なくとも片面に、多価アルコール脂肪酸エステル(A)と水溶性アクリル系重合体(B)とを含有する被膜(C)を有する。
【0016】
多価アルコール脂肪酸エステル(A)を構成する多価アルコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのアルキレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリンなどのポリグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのポリヒドロキシ化合物、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール、オリゴ糖などの糖類などが例示される。これらの多価アルコールは単独で、または2種以上組み合わせて使用できる。
【0017】
多価アルコール脂肪酸エステル(A)を構成する脂肪酸の例としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸などの飽和脂肪酸、リンデル酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、イソオレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸などが挙げられる。これらの脂肪酸は単独で、または2種以上で組み合わせて使用し混酸エステルを形成しても良い。
【0018】
本発明において用いられる多価アルコール脂肪酸エステル(A)は、前述の多価アルコールと前述の脂肪酸から構成されることが好ましい。
【0019】
多価アルコール脂肪酸エステル(A)のHLB(hydrophile-lipophile balance)は、特に制限されず、通常5〜18のものが使用されるが、好ましくは12〜17程度である。
【0020】
水溶性アクリル系重合体(B)の例としては、25℃における水への溶解度が1g/100g水以上の水溶性のものであれば特に制限されないが、例えば、アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートを主成分とする重合体があげられる。アルキルアクリレートのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0021】
また、アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートを主成分とする重合体は、ビニル単量体を共重合したものでも良い。共重合可能なビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのカルボキシル基を有するもの、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基を有するもの、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基を有するものなどが挙げられる。
【0022】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートでは、ポリ乳酸系樹脂基材の少なくとも片面に、多価アルコール脂肪酸エステル(A)と水溶性アクリル系重合体(B)とを含有する被膜(C)を有する。
【0023】
例えばこの被膜(C)が多価アルコール脂肪酸エステル(A)のみからなる場合は、ある程度高いレベルの防曇性は得られるものの、この効果が長続きしなかったり、特に低温での防曇性が不十分であったりする。さらにはポリ乳酸系樹脂基材では高いレベルの防曇性を有していても、被膜(C)となる多価アルコール脂肪酸エステル(A)自体は耐熱性が比較的低いために、ポリ乳酸系樹脂シートが真空成形時などに加熱成形された後には、防曇性が大きく低下してしまうことが多い。一方、例えば、前記の被膜(C)が水溶性アクリル系重合体(B)のみからなる場合は、一般的に、多価アルコール脂肪酸エステル(A)程の高い防曇性を得ることが困難であり、さらには、被膜(C)となる水溶性アクリル系重合体(B)はポリ乳酸系樹脂基材の変形への追従性が比較的低いために、真空成形時などに加熱成形された後には被膜(C)に厚薄ができたりクラックが発生したりしてこちらも防曇性が低下してしまう場合がある。
【0024】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートでは、多価アルコール脂肪酸エステル(A)と水溶性アクリル系重合体(B)とを含有する被膜(C)を有するため、多価アルコール脂肪酸エステル(A)により比較的高い防曇性被膜を付与しつつ、水溶性アクリル系重合体(B)により被膜(C)に耐熱性を付与するとともに、ポリ乳酸系樹脂基材との密着性を向上させ、真空成形時などに加熱成形される際も、被膜(C)がポリ乳酸系樹脂基材とともに均一に伸びることで、ポリ乳酸系樹脂シートとして高い防曇性、特に低温での防曇性を維持させることができる。
【0025】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートでは、ポリ乳酸系樹脂基材の少なくとも片面に、多価アルコール脂肪酸エステル(A)と水溶性アクリル系重合体(B)とを含有する被膜(C)を有するが、多価アルコール脂肪酸エステル(A)の被膜(C)100質量%に対する含有量は、20質量%超50質量%未満、または80質量%超95質量%未満である。
【0026】
多価アルコール脂肪酸エステル(A)の被膜(C)100質量%に対する含有量が、0質量%以上20質量%以下の場合、多価アルコール脂肪酸エステル(A)が少な過ぎて防曇性能が十分得られない。また、多価アルコール脂肪酸エステル(A)の被膜(C)100質量%に対する含有量が、95質量%以上100質量%以下の場合、ポリ乳酸系樹脂シートの状態での高い防曇性は比較的容易に付与できるが、真空成形時などにポリ乳酸系樹脂シートを加熱成形した後には、防曇性が大きく低下してしまう。さらに上記の多価アルコール脂肪酸エステル(A)の被膜(C)100質量%に対する含有量が、50質量%以上80質量%以下の場合も、防曇性能が十分得られない。多価アルコール脂肪酸エステル(A)の被膜(C)100質量%に対する含有量が、50質量%以上80質量%以下の場合に、防曇性能が十分得られない理由としては、この割合範囲においては、多価アルコール脂肪酸エステル(A)と水溶性アクリル重合体(B)とを含む混合系とした際に系の相溶性が比較的低く、十分に均質な系となりにくいためと推定している。
【0027】
また、前記した同様の理由から、多価アルコール脂肪酸エステル(A)の被膜(C)100質量%に対する含有量は、30質量%超45質量%未満、または85質量%超95質量%未満であることが好ましい。
【0028】
多価アルコール脂肪酸エステル(A)としては、比較的高い防曇性を付与できることからショ糖脂肪酸エステルが好ましい。より好ましくは、被膜(C)中の多価アルコール脂肪酸エステル(A)を全てショ糖脂肪酸エステルとした態様である(被膜(C)中の多価アルコール脂肪酸エステル(A)を100質量%とした時に、ショ糖脂肪酸エステルが100質量%の態様である)。
【0029】
さらには水溶性アクリル系重合体(B)との混合系とした際により均質な系となり易いことから、ショ糖脂肪酸エステルが、少なくともショ糖ラウリル酸エステルとショ糖ミリスチン酸エステルとを含む混合物であることがさらに好ましい。この場合、ショ糖脂肪酸エステル全体に占めるショ糖ラウリル酸エステルとショ糖ミリスチン酸エステルの割合としては、特に制限を課すものではないが、通常、ショ糖脂肪酸エステル全体100質量%に対して、ショ糖ラウリル酸エステルが30質量%〜70質量%、ショ糖ミリスチン酸エステルが10質量%〜30質量%程度含まれるものが、防曇効果発現の点から好ましく、また容易に入手できることから経済的にも好ましい。なお、ショ糖脂肪酸エステルとしてショ糖ラウリル酸エステルとショ糖ミリスチン酸エステルの混合物を使用する場合には、さらにその他のショ糖脂肪酸エステルを含むことも可能である。
【0030】
また、被膜(C)における水溶性アクリル系重合体(B)の含有量は特に限定されないが、水溶性アクリル系重合体(B)の被膜(C)100質量%に対する含有量は、5質量%超20質量%未満、または50質量%超80質量%未満であることが好ましく、より好ましくは5質量%超15質量%未満、または65質量%超70質量%未満である。
【0031】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートの一部であるポリ乳酸系樹脂基材に用いるポリ乳酸系樹脂は、L−乳酸および/またはD―乳酸を主成分とし、乳酸由来の成分が70質量%以上100質量%以下のものをいい、実質的にL−乳酸および/またはD―乳酸からなるホモポリ乳酸が好ましく用いられる。
【0032】
また本発明に用いるポリ乳酸系樹脂は、結晶性を有することが好ましい。ポリ乳酸系樹脂が結晶性を有するとは、該ポリ乳酸系樹脂を加熱下で十分に結晶化させた後に、適当な温度範囲で示差走査熱量分析(DSC)測定を行った場合、ポリ乳酸成分に由来する結晶融解熱が観測されることを言う。本発明に用いるポリ乳酸系樹脂が結晶性を有する場合には、該ポリ乳酸系樹脂を含んだ組成物をシートにして、ポリ乳酸系樹脂基材とした際の、耐ブロッキング性の付与に好適である。通常、ホモポリ乳酸は、光学純度が高いほど融点や結晶性が高い。ポリ乳酸の融点や結晶性は、分子量や重合時に使用する触媒の影響を受けるが、通常、光学純度が98%以上のホモポリ乳酸では融点が約170℃程度であり結晶性も比較的高い。また、光学純度が低くなるに従って融点や結晶性が低下し、例えば光学純度が88%のホモポリ乳酸では融点は約145℃程度であり、光学純度が75%のホモポリ乳酸では融点は約120℃程度である。光学純度が70%よりもさらに低いホモポリ乳酸では明確な融点は示さず非結晶性となる。
【0033】
本発明に用いるポリ乳酸系樹脂は、ポリ乳酸系樹脂シートとして使用する用途によっては、必要な機能の付与あるいは向上を目的として、結晶性を有するホモポリ乳酸と非晶性のホモポリ乳酸を混合することも可能である。この場合、非晶性のホモポリ乳酸の割合は本発明の効果を損ねない範囲で決定すれば良い。また、ポリ乳酸系樹脂基材(及びポリ乳酸系樹脂シート)とした際に、比較的高い耐熱性を付与したい場合は、使用するポリ乳酸系樹脂のうち少なくとも1種に光学純度が95%以上のポリ乳酸を含むことが好ましい。
【0034】
本発明に用いるポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量は、通常少なくとも5万、好ましくは8万〜40万、さらに好ましくは10万〜30万である。なお、ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミテーションクロマトグラフィー(GPC)でクロロホルム溶媒にて測定を行い、ポリメチルメタクリレート換算法により計算した分子量をいう。
【0035】
ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量を少なくとも5万とすることで、該ポリ乳酸系樹脂を含んだ組成物をシートに加工した際には、ポリ乳酸系樹脂基材及びポリ乳酸系樹脂シートの機械的物性を優れたものとすることができる。
【0036】
また、本発明に用いるポリ乳酸系樹脂は、L−乳酸、D−乳酸のほかにエステル形成能を有するその他の単量体成分を共重合した共重合ポリ乳酸であってもよい。共重合可能な単量体成分としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸類の他、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の分子内に複数の水酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸等の分子内に複数のカルボン酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体が挙げられる。なお、上記した共重合成分の中でも、用途に応じて生分解性を有する成分を選択することが好ましい。
【0037】
ポリ乳酸系樹脂の製造方法としては、詳細は後述するが、既知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法、ラクチドを介する開環重合法などを挙げることができる。
【0038】
本発明のポリ乳酸系樹脂基材は、前述のポリ乳酸系樹脂を50質量%以上100質量%以下含む組成物からなるものを言う。ポリ乳酸系樹脂基材を構成する組成物が、ポリ乳酸系樹脂を50質量%未満しか含まない場合は、本発明が目的とする、植物由来原料の実用化技術としては不十分である。
【0039】
また、本発明のポリ乳酸系樹脂シートに用いるポリ乳酸系樹脂基材は、ポリ乳酸系樹脂以外に、ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルおよび/または脂肪族芳香族ポリエステルを含んでも良い。
【0040】
ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルおよび/または脂肪族芳香族ポリエステルとしては、例えば、ポリグリコール酸、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート・3−ヒドロキシバリレート)、ポリカプロラクトン、あるいはエチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの脂肪族ジオールとコハク酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸よりなる脂肪族ポリエステル、さらにはポリ(ブチレンサクシネート・テレフタレート)、ポリ(ブチレンアジペート・テレフタレート)などの脂肪族ポリエステルと芳香族ポリエステルの共重合体、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。なかでも、耐衝撃性と生分解性の両方に改良効果が大きいものとして、ポリブチレンサクシネートやポリブチレンサクシネート・アジペートなどのポリブチレンサクシネート系樹脂が好ましく用いられる。
【0041】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートに用いるポリ乳酸系樹脂基材は、本発明の効果を損なわない範囲で、公知の酸化防止剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、抗酸化剤、イオン交換剤、結晶核剤、着色顔料等あるいは滑剤として、無機微粒子や有機粒子、有機滑剤を必要に応じて添加してもよい。
【0042】
酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系などが例示される。着色顔料としてはカーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄などの無機顔料の他、シアニン系、スチレン系、フタロシアイン系、アンスラキノン系、ペリノン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、キノクリドン系、チオインディゴ系などの有機顔料等を使
用することができる。
【0043】
また、加工品の易滑性や耐ブロッキング性の向上などを目的として、粒子を添加する際には、例えば無機粒子としては、シリカ等の酸化ケイ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の各種炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の各種硫酸塩、カオリン、タルク等の各種複合酸化物、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等の各種リン酸塩、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の各種酸化物、フッ化リチウム等の各種塩等からなる微粒子を使用することができる。
【0044】
また有機粒子としては、シュウ酸カルシウムや、カルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩などからなる微粒子が使用される。架橋高分子粒子としては、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸のビニル系モノマーの単独または共重合体からなる微粒子が挙げられる。その他、ポリテトラフルオロエチレン、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの有機微粒子も好ましく使用される。
【0045】
無機粒子、有機粒子ともその平均粒径は、特に限定されないが、0.01〜5μmが好ましく、より好ましくは0.05〜3μm、最も好ましくは0.08〜2μmである。
【0046】
有機滑剤としては、例えば、流動パラフィン、天然パラフィン、合成パラフィン、ポリエチレンなどの脂肪族炭化水素系、ステアリン酸、ラウリル酸、ヒドロキシステアリン酸、硬性ひまし油などの脂肪酸系、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド系、ステアリン酸アルミ、ステアリン酸鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩、グリセリン脂肪酸エステル、ルビタン脂肪酸エステルなどの多価アルコールの脂肪酸(部分)エステル系、ステアリン酸ブチルエステル、モンタンワックスなどの長鎖エステルワックスなどの長鎖脂肪酸エステル系などが挙げられる。中でも、ポリ乳酸との適度な相溶性から少量で効果の得られやすい、ステアリン酸アミドやエチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。
【0047】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、特に各種工業製品の包装用途など生分解性を必要としない場合や保管耐久性があった方が好ましい用途においては、ポリ乳酸系樹脂の加水分解による強度低下を抑制し、良好な耐久性を付与する観点から、ポリ乳酸系樹脂基材中のカルボキシル基末端濃度が0当量/10kg以上30当量/10kg以下であることが好ましく、より好ましくは20当量/10kg以下、さらに好ましくは10当量/10kg以下である。ポリ乳酸系樹脂基材中のカルボキシル基末端濃度が30当量/10kg以下であると、加水分解の自己触媒ともなるカルボキシ基末端濃度が十分低いために、用途にもよるが実用的に良好な耐久性を付与できる場合が多い。
【0048】
ポリ乳酸系樹脂基材中のカルボキシル基末端濃度を30当量/10kg以下とする方法としては、例えば、ポリ乳酸系樹脂の合成時の触媒や熱履歴により制御する方法、シート製膜時の押出温度を低下あるいは滞留時間を短時間化する等熱履歴を低減する方法、反応型化合物を用いカルボキシル基末端を封鎖する方法等が挙げられる。
【0049】
反応型化合物を用いカルボキシル基末端を封鎖する方法では、ポリ乳酸系樹脂基材中のカルボキシル基末端の少なくとも一部が封鎖されていることが好ましく、全量が封鎖されていることがより好ましい。反応型化合物としては、例えば、脂肪族アルコールやアミド化合物等の縮合反応型化合物やカルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物等の付加反応型化合物が挙げられるが、反応時に余分な副生成物が発生しにくい点で付加反応型化合物が好ましく、中でも反応効率の点からカルボジイミド化合物が好ましい。
【0050】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、ヘイズが2.5%以下であることが好ましい。ヘイズが2.5%以下であれば、これを用いてなる成形品、成形容器は、内容物の視認性に優れ、商品としての見栄えがよいなど高い意匠性を有した包装容器として好ましく用いることができる。同様の理由から、ヘイズはさらに好ましくは2.0%以下である。なお、ポリ乳酸の一般的な特性から、ポリ乳酸系樹脂基材のヘイズとしては0.5%未満にすることは困難であることから、ポリ乳酸系樹脂シートのヘイズの下限は0.5%程度である。
【0051】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、ポリ乳酸系樹脂基材の片面のみに、多価アルコール脂肪酸エステル(A)と水溶性アクリル系重合体(B)とを含有する被膜(C)を有しても、ポリ乳酸系樹脂基材の両面に被膜(C)を有しても良いが、片面のみに有する場合は、通常その裏面(ポリ乳酸系樹脂基材の被膜(C)を有さない面)にはシリコーン化合物からなる被膜を成形して、耐ブロッキング性を改良することが好ましい。シリコーン化合物からなる被膜の形成は、常法により、シリコーンエマルジョンを塗布し、乾燥することによって行うことができる。シリコーン化合物の例としては、ジメチルシロキサンや、(ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン)メチルポリシロキサン等の共重合型のシリコーンなどを用い、これらの水系エマルジョンを形成して塗付液とすれば良い。
【0052】
次に本発明のポリ乳酸系樹脂シートを製造する方法について具体的に説明する。
【0053】
本発明におけるポリ乳酸系樹脂は、例えば、次のような方法で得ることができる。原料としては、L−乳酸またはD−乳酸の乳酸成分を主体とし、前述した乳酸成分以外のヒドロキシカルボン酸を併用することができる。またヒドロキシカルボン酸の環状エステル中間体、例えば、ラクチド、グリコリド等を原料として使用することもできる。更にジカルボン酸類やグリコール類等も使用することができる。
【0054】
ポリ乳酸系樹脂は、上記原料を直接脱水縮合する方法、または上記環状エステル中間体を開環重合する方法によって得ることができる。例えば直接脱水縮合して製造する場合、乳酸類または乳酸類とヒドロキシカルボン酸類を好ましくは有機溶媒、特にフェニルエーテル系溶媒の存在下で共沸脱水縮合し、特に好ましくは共沸により留出した溶媒から水を除き実質的に無水の状態にした溶媒を反応系に戻す方法によって重合することにより高分子量のポリマーが得られる。
【0055】
また、ラクチド等の環状エステル中間体をオクチル酸錫等の触媒を用い減圧下開環重合することによっても高分子量のポリマーが得られることも知られている。このとき、有機溶媒中での加熱還流時の水分および低分子化合物の除去の条件を調整する方法や、重合反応終了後に触媒を失活させ解重合反応を抑える方法、製造したポリマーを熱処理する方法などを用いることにより、ラクチド量の少ないポリマーを得ることができる。
【0056】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートに用いるポリ乳酸系樹脂基材は、例えば公知のTダイキャスト法、インフレーション法、カレンダー法などの既存のフィルムの製造法により得ることが出来るが、Tダイを用いてポリ乳酸系樹脂を溶融混練して押出すTダイキャスト法が好ましい。例えば、Tダイキャスト法による未延伸シートの製法例としては、チップを60〜110℃にて3時間以上乾燥するなどして、水分量を400ppm以下としたポリ乳酸系樹脂を用い、溶融混練時のシリンダー温度は150℃〜240℃の範囲が好ましく、ポリ乳酸系樹脂の劣化を防ぐ意味から、200℃〜220℃の範囲とすることがより好ましい。また、Tダイ温度も200℃〜220℃の範囲とすることが好ましく、Tダイから押出した後、5〜50℃の冷却ロールにて冷却することで厚み0.1から1.0mm程度の未延伸シートを得る。さらに、シートに成形した後に、コーティング適性を向上させる目的で各種の表面処理を施すことが好ましい。表面処理の方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理などが挙げられ、いずれの方法をも用いることができるが、連続処理が可能であり、既存の製膜設備への装置設置が容易な点や処理の簡便さからコロナ放電処理が最も好ましいものとして例示できる。
【0057】
この未延伸シート状のポリ乳酸系樹脂基材を一旦巻き取った後、または一旦巻き取ることなく連続して、多価アルコール脂肪酸エステル(A)と水溶性アクリル系重合体(B)とを含有する水溶液または水分散液からなる塗剤を塗布し、さらにこれを乾燥させて塗膜の水分を十分に揮発させれば良い。上記の塗剤を塗布する方法としては、ローターダンプニング法、キスロールエアーナイフ法、リバースロール法、グラビアロール法などの従来公知の方法が挙げられる。乾燥についても通常用いられる赤外線ヒーター、電熱炉、加熱除湿熱風など塗剤の水分を十分に揮発させることができれば特に制限されるものではない。
【0058】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートの被膜(C)の被膜量は特に制限されないが、通常10mg/m以上、200mg/m以下である。被膜量が10mg/m未満では防曇効果が付与できない場合が多い。また被膜量が200mg/mを超えてもそれ以上の優位な効果は得られず、むしろ外観不良やブロッキングといった弊害が顕著になる場合が多い。本発明のポリ乳酸系樹脂シートが、間接加熱方式の真空成形加工または真空圧空成形加工に用いられる場合、被膜(C)の被膜量は30mg/m以上、150mg/m以下であることがより好ましい。一方で熱板直接加熱方式の真空成形加工または真空圧空成形加工に用いられる場合の本発明のポリ乳酸系樹脂シートの被膜(C)の被膜量は、シート加熱時に被膜(C)が熱板に奪われてしまうという理由から、被膜量は70mg/m以上、150mg/m以下であることがより好ましい。
【0059】
つまり本発明のポリ乳酸系樹脂シートの被膜(C)の被膜量は、間接加熱方式の真空成形加工、間接加熱方式の真空圧空成形加工、熱板直接加熱方式の真空成形加工、及び熱板直接加熱方式の真空圧空成形加工のいずれの方式にも好適に使用できるという点から、70mg/m以上、150mg/m以下であることが特に好ましい。
【0060】
ポリ乳酸系樹脂基材の厚みとしては、特に制限はないが、通常0.01mmから2.0mm程度であり、容器やブリスターパックなどの成形用シートとしては、通常0.1〜0.7mm程度の厚さのシートが好適に用いられる。
【0061】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートを用いてなる成形品の成形法としては、本発明のポリ乳酸系樹脂シートに対して真空成形、真空圧空成形、プラグアシスト成形、ストレート成形、フリードローイング成形、プラグアンドリング成形、スケルトン成形などの各種成形法を適用できる。各種成形法におけるシート予熱方式としては、間接加熱方式と熱板直接加熱方式があり、間接加熱方式はシートから離れた位置に設置された加熱装置によってシートを予熱する方式であり、熱板直接加熱方式は、シートと熱板が接触することによってシートを予熱する方式である。
【0062】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートを用いてなる成形品としては、例えば食品用の成形容器、飲料用カップ蓋などの容器類や、ブリスターパックなどの各種容器包装類、その他防曇性や帯電防止性を必要とする各種トレーなどの成形品用途などを挙げることができる。なお、被膜(C)の面は使用状況により適宜選択すればよいが、通常は容器、包装やトレーとする際の内側になるよう面を選択する。
【実施例】
【0063】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。
[測定及び評価方法]
実施例中に示す測定や評価は次に示すような条件で行った。
(1)ヘイズ値(%)
ヘイズメーターHGM−2DP型(スガ試験機社製)を用いてヘイズ値を測定した。測定は1水準につき5回行い、5回の測定の平均値から求めた。
(2)防曇性
成形品1:間接加熱方式の真空成形加工
試験サンプルのシートを用い、バッチ式の真空成形機にて上下加熱ヒーター設定温度:290℃、予熱時間12秒にて、上下加熱ヒーターからそれぞれ50mm離れた中央位置に水平に設置されたシートを表裏から加熱後、メス型の成形型をシートに押し当てて内部を減圧することで縦:約9cm、横:約12cm、高さ:約2.5cmの容器蓋材を成形した。この際、シートの防曇性被膜側が容器蓋材の内側となるようにシートの面を選択した。別途準備した前記容器蓋材と対をなす容器底材に25℃の水を100ml入れて、成形した蓋材にて蓋をし、5℃の雰囲気中にて保管後の蓋材の曇りや水滴の付着状況を観察し、以下の基準で判断した。
◎:表面に付着した水滴が全て連なって膜状となっており、内部の視認性良好。
○:表面に付着した水滴が連なっているが一部不均一でゆがんで見える。
△:表面に大きめの水滴が部分的に独立して付着しているが、内部の視認は可能。
×:部分的に独立した微細水滴が付着し、内部の視認困難。
××:全面に独立した微細水滴が付着し、底が見えない。
【0064】
成形品2:直接加熱方式の真空成形加工
試験サンプルのシートを用い、バッチ式の真空成形機にて上下熱板設定温度:85℃、予熱時間1秒にて、上下熱板に接触して挟まれたシートを表裏から加熱後、メス型の成形型をシートに押し当てて内部を減圧することで縦:約9cm、横:約12cm、高さ:約2.5cmの容器蓋材を成形した。この際、シートの防曇性被膜側が容器蓋材の内側となるようにシートの面を選択した。別途準備した前記容器蓋材と対をなす容器底材に25℃の水を100ml入れて、成形した蓋材にて蓋をし、5℃の雰囲気中にて保管後の蓋材の曇りや水滴の付着状況を観察し、以下の基準で判断した。
◎:表面に付着した水滴が全て連なって膜状となっており、内部の視認性良好。
○:表面に大きめの水滴が部分的に独立して付着しているが、内部の視認は可能。
△:部分的に独立した微細水滴が付着し、内部の視認困難。
×:全面に独立した微細水滴が付着し、底が見えない。
(3)耐ブロッキング性
防曇性評価にて作成した蓋材サンプル10個を同じ向きに重ねて、40℃×24hrにて処理後のサンプルの剥離性を観察した。成形品1、2ともに同様の観察をした。
○:容易に剥離可能であり、問題なし。
×:剥離時にブロッキングしていたり、べとつきにより剥離しにくい箇所があった。
[使用したポリ乳酸系樹脂]
(ポリ乳酸PL1)
重量平均分子量=200,000、D体含有量=12.0%、融点=無し
水分量=390ppm、
(ポリ乳酸PL2)
重量平均分子量=220,000、D体含有量=5.0%、融点=150℃、
水分量=330ppm、
なお、上記の重量平均分子量は、日本Warters(株)製、Warters2690を用い、ポリメチルメタクリレートを標準とし、カラム温度40℃、クロロホルム溶媒を用いて測定した。
[使用した防曇剤]
(防曇剤AS1)
ポリグリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン社製、商品名“ポエムJ−0021”、主成分:デカグリセリンラウレート)
(防曇剤AS2)
ショ糖脂肪酸エステル水溶液(三菱化学社製、商品名“L−1695”、主成分:ショ糖ラウリル酸エステル)
(防曇剤AS3)
ショ糖脂肪酸エステル水溶液(理研ビタミン社製、商品名“リケマールA”、主成分:ショ糖ラウリル酸エステルとショ糖ミリスチン酸エステル混合物、固形分40質量%)
(防曇剤AS4)
ポリエチレングリコール(三洋化成工業社製、商品名“PEG−6000S”)
(防曇剤AS5)
水溶性アクリル重合体水溶液(竹本油脂社製、商品名“エレカットC−031K”、固形分15質量%)
(防曇剤AS6)
水溶性アクリル樹脂(日本純薬社製、商品名“ジュリマーFC−80”)
[ポリ乳酸系樹脂シートの作成]
(実施例1〜9、11〜13、比較例1〜9)
表1記載のポリ乳酸樹脂をベント式二軸押出機に供給し、口金温度を210℃に設定したTダイ口金より押出し、互いに接する方向に回転し40℃に冷却した、一対のキャスティングドラムとポリッシングロール間に吐出してキャスティングドラムに密着させ冷却固化し、厚み0.3mmの未延伸シート状のポリ乳酸系樹脂基材を作製した。
【0065】
上記の未延伸シートを巻き取ることなく、引き続き片側ずつ両面にコロナ処理を施し、防曇剤として表1に記載の割合で調合し、かつトータルの固形分濃度として0.94質量%となるよう調整した水性塗液をグラビアロール方式により塗布し、乾燥炉を通して乾燥し、最終的に表1に記載の塗布量(固形分)となるように防曇性被膜(C)を形成した。また、防曇性被膜を形成した後に、引き続いてその反対面にジメチルシリコーンの水エマルジョンを塗布・乾燥し、塗布量が固形分で30mg/mとなるようにシリコーン被膜を形成した後にワインダーにてシートを巻き取った。
【0066】
得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
【0067】
【表1−1】

【0068】
【表1−2】

【0069】
(実施例10)
表1記載のポリ乳酸系樹の混合物を原料として、シリンダー温度190〜210℃、スクリュー径65mmの一軸押出機に供給し、幅300mm、リップクリアランス1.0mm、温度190℃のTダイより押し出し、温度25℃の鏡面ドラムにキャストしてシート状に成形し、引き続いて流れ方向に温度75℃の延伸ロールにより2.5倍に延伸した。引き続き、防曇材塗布面にコロナ処理を施し、防曇剤として表1に記載の割合で調合し、かつトータルの固形分濃度として0.94質量%となるよう調整した水性塗液をグラビアロール方式により塗布した。さらに温度80℃のテンター内にて幅方向に2.5倍に延伸後、130℃にて熱セット処理してエッジ部を切断して、10m/分にて巻き取った。吐出量の調整により最終厚みが0.2mmの2軸延伸シートを得た。
【0070】
得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
【0071】
実施例1〜13のポリ乳酸系樹脂シートは、いずれの水準においても成形品の防曇性、耐ブロッキング性に優れていた。
【0072】
間接加熱方式で真空成形した成形品の防曇性は、特に実施例3〜6、8、9、12が優れており、直接加熱方式で真空成形した成形品の防曇性は、特に実施例4〜6、9が優れていた。
【0073】
一方、比較例においては、いずれの水準においても成形品の防曇性が不十分であり、実施例と間には明らかな差があった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸系樹脂基材の少なくとも片面に、多価アルコール脂肪酸エステル(A)と水溶性アクリル系重合体(B)とを含有する被膜(C)を有するポリ乳酸系樹脂シートであって、多価アルコール脂肪酸エステル(A)の被膜(C)100質量%に対する含有量が20質量%超50質量%未満、または80質量%超95質量%未満であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂シート。
【請求項2】
多価アルコール脂肪酸エステル(A)が、ショ糖脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸系樹脂シート。
【請求項3】
ショ糖脂肪酸エステルが、少なくともショ糖ラウリル酸エステルとショ糖ミリスチン酸エステルとを含む混合物であることを特徴とする請求項2記載のポリ乳酸系樹脂シート。
【請求項4】
被膜(C)の被膜量が10mg/m以上200mg/m以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂シート。
【請求項5】
ヘイズが2.5%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂シート。
【請求項6】
熱板直接加熱方式の真空成形加工または真空圧空成形加工に用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂シート。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂シートを用いてなる成形品。

【公開番号】特開2010−131984(P2010−131984A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248458(P2009−248458)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】