説明

ポリ塩化ビニル系樹脂組成物及びそれを用いたストレッチフィルム

【課題】 食品容器包装用として好適な、押出加工性、薄肉性、包装適性、防曇性を全て満たし、かつn−ヘプタン溶出量が少ないストレッチフィルムを与えるポリ塩化ビニル系樹脂組成物及びそれを用いたストレッチフィルムを提供する。
【解決手段】 (A)ポリ塩化ビニル系樹脂と、その100質量部当たり、(B)重量平均分子量が1,000〜3,000のアジピン酸系ポリエステル可塑剤10〜22質量部、(C)重量平均分子量が1,000〜3,500のアクリル系重合体からなる可塑剤1〜55質量部、及び(D)エポキシ化植物油5〜22質量部とを含むポリ塩化ビニル系樹脂組成物、及びこの組成物を製膜してなる、厚さが10μm以下で、n−ヘプタン抽出量が30質量ppm以下のストレッチフィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品容器包装用フィルムなどの素材として好適なポリ塩化ビニル系樹脂組成物及びそれを用いたストレッチフィルムに関する。さらに詳しくは、本発明は、薄肉であるにもかかわらず食品容器包装や防曇性に優れ、さらには昭和57年厚生省告示20号に定める蒸発残留物試験法にて測定したn−ヘプタン抽出量(以下、「厚生省告示20号に定めるn−ヘプタン抽出量」という場合がある。)が少なく、したがって脂肪性食品への可塑剤の移行性が少ないストレッチフィルムを与えるポリ塩化ビニル系樹脂組成物、及び該樹脂組成物を製膜してなる前記特性を有するストレッチフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品の包装、特に精肉、鮮魚、青果等の生鮮食品の包装分野では、透明性、柔軟性及びヒートシール性などに優れたストレッチフィルムが多数開発され、食品包装用フィルムとして広く使用されている。通常、これらのフィルムは、ポリ塩化ビニル系樹脂にアジピン酸エステル系可塑剤とエポキシ化植物油を可塑剤として使用したポリ塩化ビニル系樹脂組成物を成形したものが一般的である。
従来、これらのフィルムにおいては配合剤の衛生性,食品等への移行性が重要視されている。その衛生性では、米国のFDA規格(Food and Drug Administration)や日本のPL規格(塩化ビニル樹脂製包装容器包装等に関する自主規制基準)等に記載された添加剤より無毒化配合を確立し、また食品等への移行性については昭和57厚生省告示20号試験により蒸発残留物試験法として抽出試験を行っている。このような背景において、配合剤として、これまで種々のものが用いられてきた。しかしながら、可塑剤の種類や量により厚生省告示20号に定めるn−ヘプタン抽出量が150質量ppm近くになったり、あるいは上回る傾向があった。
【0003】
このような問題を解決するために、例えばポリ塩化ビニル系樹脂に、可塑剤として分子量が1,000〜3,000の脂肪族多塩基酸系ポリエステルと、グリセリンエステルとを併用し、該ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、前記ポリエステル系可塑剤を5〜40重量部、グリセリンエステルを40〜1重量部を配合した組成物を用いることにより、可塑剤を減量することなく、前記PL規格や厚生省告示などによって重要視されている可塑剤、安定剤、防曇剤等の添加剤の抽出が極めて少なく安全性に優れた食品包装用塩化ビニル系樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上記組成物においては、たしかにn−ヘプタン抽出量を少なくすることができるが、溶融粘度の増加が大きく、樹脂温度の増加によるフィルムの焼けや押出ライフの低下が問題となる。さらにポリエステル系可塑剤が多い場合にはフィルム表面の滑性が減少し、自動包装機などで包装した場合にトレーの角でやぶれが発生し、仕上がりが悪くなりやすく、また、グリセリンエステル系可塑剤が多い場合には、滑性付与効果により溶融粘度を低減し安定して押出でき、包装適性にも優れる効果があるが、n−ヘプタン抽出量は多くなるなどの問題がある。
したがって、押出加工性、薄肉化、包装適性、防曇性を全て満足し、なおかつオレフィン系フィルム同等のn−ヘプタン溶出量(30質量ppm以下)を達成できるポリ塩化ビニル系樹脂組成物及びフィルムに関する提案は未だないのが現状である。
【0005】
【特許文献1】特許第2773839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況下で、食品容器包装用として好適な、押出加工性、薄肉性、包装適性、防曇性を全て満たし、かつ厚生省告示20号に定めるn−ヘプタン抽出量が少なく、したがって脂肪性食品への可塑剤の移行性が少ないストレッチフィルムを与えるポリ塩化ビニル系樹脂組成物、及び該樹脂組成物を製膜してなる前記の特性を有するストレッチフィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ポリ塩化ビニル系樹脂に、重量平均分子量がある範囲にあるアジピン酸系ポリエステル可塑剤と、重量平均分子量がある範囲にあるアクリル系重合体からなる可塑剤と、エポキシ化植物油を、それぞれ所定の割合で配合してなる樹脂組成物により、ポリエステル系可塑剤の問題点である溶融粘度の増加を抑制しつつ、フィルム表面の滑りも付与でき包装適性に優れ、防曇性の低下も起こらず、前記の特性を有するストレッチフィルムが得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)(A)ポリ塩化ビニル系樹脂と、その100質量部当たり、(B)重量平均分子量が1,000〜3,000のアジピン酸系ポリエステル可塑剤10〜22質量部、(C)重量平均分子量が1,000〜3,500のアクリル系重合体からなる可塑剤1〜55質量部、及び(D)エポキシ化植物油5〜22質量部とを含むことを特徴とするポリ塩化ビニル系樹脂組成物、及び
(2)上記(1)項に記載のポリ塩化ビニル系樹脂組成物を製膜してなり、かつ厚さが10μm以下であって、昭和57年厚生省告示20号に定める蒸発残留物試験法にて測定したn−ヘプタン抽出量が30質量ppm以下であることを特徴とするストレッチフィルム、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、食品容器包装用として好適な、押出加工性、薄肉性、包装適性、防曇性を全て満たし、かつ厚生省告示20号に定めるn−ヘプタン抽出量が少なく、したがって脂肪性食品への可塑剤の移行性が少ないストレッチフィルムを与えるポリ塩化ビニル系樹脂組成物、及び該樹脂組成物を製膜してなる前記の特性を有するストレッチフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、(A)ポリ塩化ビニル系樹脂、(B)アジピン酸系ポリエステル可塑剤、(C)アクリル系重合体からなる可塑剤、及び(D)エポキシ化植物油を含む組成物である。
本発明の樹脂組成物において、(A)成分として用いるポリ塩化ビニル系樹脂としては、平均重合度800〜1,300程度の塩化ビニル単独重合体が好ましく用いられる。この範囲内の平均重合度の塩化ビニル単独重合体であれば、ストレッチフィルムとしての物性、耐熱性及び流動性などの押出成形性が優れたものとなる。また、この塩化ビニル単独重合体のほか、塩化ビニルと共重合可能な単量体との共重合体(以下、塩化ビニル共重合体とする)、該塩化ビニル共重合体以外の重合体に塩化ビニルをグラフト共重合させたグラフト共重合体なども用いることができる。これらの共重合体は、共重合体中の塩化ビニル以外の構成単位の含有量が多くなると機械的特性が低下するので、塩化ビニル単位を60質量%以上含有するものが好ましい。なお、上記各重合体は乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法などいずれの重合方法で得られたものでもよく、それぞれの単独又は2種以上の重合体の組み合わせで使用される。
【0010】
上記の塩化ビニルと共重合可能な単量体としては、分子中に反応性二重結合を有するものであればよく、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのα−オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類;アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸フェニルなどのアクリル酸又はメタクリル酸のエステル類;スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのN−置換マレイミド類;などが挙げられ、これらは1種単独又は2種以上の組み合わせで用いられる。また、上記塩化ビニル共重合体以外の重合体としては、塩化ビニルをグラフト共重合できるものであればよく、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・一酸化炭素共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリルレート・一酸化炭素共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどが挙げられ、これらは1種単独又は2種以上の組み合わせで用いられる。
【0011】
本発明の樹脂組成物における(B)成分のアジピン酸系ポリエステル可塑剤としては、重量平均分子量1,000〜3,000のものが用いられる。このようなアジピン酸系ポリエステル可塑剤は、樹脂組成物中でポリ塩化ビニル系樹脂との絡み合いが増えることで耐溶剤抽出性を向上させる作用を有している。本発明のストレッチフィルムにおいて特に効果的な成分であるが、その反面、高分子量であるため、可塑化効率が低い、流動性が低下するため優れた押出成形性が得にくいなどの相反する作用をも持っている。したがって、このアジピン酸系ポリエステル可塑剤は必要最低限の配合量で使用するのが好ましく、その配合量は、前記(A)成分のポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、10〜22質量部である。10質量部以上では、アジピン酸系ポリエステル可塑剤添加の目的である耐抽出性の向上を図ることができ、22質量部以下では可塑化効率が十分に発揮され、フィルムの透明性が良く、その上、樹脂組成物の流動性が良好であるため均一なフィルム厚さで押出成形が可能になる。好ましい配合量は10〜20質量部である。
【0012】
アジピン酸系ポリエステル可塑剤は、アジピン酸と二価アルコールとの反応物であり、二価アルコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどが挙げられる。これらの二価アルコールは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。当該アジピン酸系ポリエステル可塑剤の具体例としては、ポリ(プロピレングリコール、アジピン酸)エステル、ポリ(ブタンジオール、アジピン酸)エステル、ポリ(エチレングリコール、アジピン酸)エステル、ポリ(1,6−ヘキサンジオール、ブタンジオール、アジピン酸)エステル、ポリ(ブタンジオール、エチレングリコール、アジピン酸)エステル、ポリ(エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、アジピン酸)エステルなどが挙げられる。
当該アジピン酸系ポリエステル可塑剤の重量平均分子量が1,000以上であれば良好な物性の向上効果が発揮される。一方、重量平均分子量が3,000以下であれば押出成形性の低下や、得られるストレッチフィルムの耐寒性の低下を抑制することができる。物性の向上及び押出成形性の点から、重量平均分子量2,000前後のものが好適である。
【0013】
本発明の樹脂組成物における(C)成分のアクリル系重合体からなる可塑剤(以下、アクリル系可塑剤と称することがある。)としては、重量平均分子量1,000〜3,500のものが用いられる。
上記アクリル系重合体は、1種又は2種以上のアクリル系単量体を重合させるか、又は、1種又は2種以上のアクリル系単量体とアクリル系単量体以外の他の単量体との混合物を重合させることにより得られる。
アクリル系単量体としては、アクリロイル基含有単量体及びメタクリロイル基含有単量体が挙げられ、具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸フェノキシエチル等が挙げられる。尚、本明細書において(メタ)アクリルはアクリル又はメタクリルを意味する。
【0014】
前記その他の単量体としては、アクリル系単量体と共重合可能な単量体、例えば酢酸ビニル、スチレン等を用いることができる。
アクリル系重合体は、アクリロイル基含有単量体単位を含み、アクリル系重合体中の全単量体単位に対する上記アクリロイル基含有単量体単位の割合は70質量%以上であることが好ましい。その割合が70質量%以上であればアクリル系可塑剤の耐候性が良好であり、また、その成形物に変色が生じにくい。
アクリル系重合体の重量平均分子量が1,000以上であれば得られるストレッチフィルムはべとつきにくく、一方、重量平均分子量が3,500以下であれば可塑化効果が良好に発揮される。
このアクリル系可塑剤の配合量は、前記(A)成分のポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、1〜55質量部である。この配合量が上記範囲にあれば得られるストレッチフィルムは、物性が向上すると共に、n−ヘプタン溶出量を低く抑えることができる。好ましい配合量は5〜50質量部である。
【0015】
本発明の樹脂組成物において、(D)成分として用いられるエポキシ化植物油は、樹脂組成物の押出成形性、特に押出成形時における熱安定性を向上させる効果を有している。このエポキシ化植物油としては、例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油などが挙げられ、これらは一種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、この中ではエポキシ化大豆油が上記した効果の面で好適に使用される。この配合量は前記(A)成分のポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対し5〜22質量部である。この配合量が5質量部以上では押出成形時の熱安定性が良好であり、22質量部以下ではフィルムの着色が抑制される。好ましい配合量は5〜20質量部である。
【0016】
本発明の樹脂組成物においては、上記した(A)〜(D)成分に加え、必要に応じて防曇剤、安定剤などを適宜選択して配合することができる。防曇剤としては、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルなどが挙げられる。上記グリセリンモノ脂肪酸エステルとしては、炭素数が12〜18の飽和又は不飽和脂肪酸のグリセリンモノエステルが好ましい。具体的にはグリセリンモノラウレート、グリセリンモノミリステート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、グリセリンモノリノレートなどが挙げられる。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、炭素数が12〜18の飽和又は不飽和脂肪酸のポリグリセリンエステルが好ましい。具体的にはポリグリセリンラウレート、ポリグリセリンミリステート、ポリグリセリンパルミテート、ポリグリセリンステアレート、ポリグリセリンオレート、ポリグリセリンリノレートなどが挙げられる。
【0017】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、炭素数が12〜18の飽和又は不飽和脂肪酸のソルビタンエステルが好ましい。具体的にはソルビタンラウレート、ソルビタンミリステート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレート、ソルビタンリノレートなどが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、炭素数が12〜18の飽和アルコールのポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましく、より好ましくは、エチレンオキサイドの付加モル数が3〜7であるポリオキシエチレンアルキルエーテルである。具体的にはポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンパルミチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルなどが挙げられる。
上記の中では、特にグリセリンモノラウレート、グリセリンモノオレート、グリセリンモノリノレート、ポリグリセリンラウレート、ポリグリセリンオレート、ポリグリセリンリノレート、ソルビタンラウレート、ソルビタンオレート、ソルビタンリノレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテルが好ましく、これらは1種又は2種以上の組み合わせで使用すればよい。
【0018】
安定剤としては、2−エチルヘキシル酸、炭素数8〜22の高級脂肪酸、クエン酸、グルコン酸、ソルビン酸、安息香酸、イソデカン酸、ネオデカン酸などのカルシウム塩類、及び2−エチルヘキシル酸、炭素数8〜22の高級脂肪酸、イソデカン酸、ネオデカン酸などの亜鉛塩類からなるCa−Zn系塩類が挙げられ、これらは1種又は2種以上の組み合わせで使用される。なお、上記の安定剤に対して、酸化防止剤を兼ねたものとして、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ジプロピレングリコール、合成イソパラフィン石油炭化水素、トリデシルアルコール、デヒドロ酢酸などを併用してもよい。これらの配合量は、それぞれ前記(A)成分のポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、1質量部以下が好ましい。
【0019】
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、従来公知の方法、例えば前記(A)〜(D)成分及び所望に応じて用いられる各種添加成分を、V型ブレンダ−、リボンブレンダ−、ヘンシェルミキサーなどの混合機により混合する方法、又は押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、ニーダなどの混練機により混練する方法、あるいは混合機と混練機を組み合わせて、混合、混練する方法によって調製することができる。
このようにして得られた本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、以下に示す食品容器包装用のストレッチフィルムの素材などとして好適に用いられる。
【0020】
本発明のストレッチフィルムは、前述のポリ塩化ビニル系樹脂組成物を製膜してなり、かつ厚さ10μm以下であって、厚生省告示20号に定める試験法にて測定したn−ヘプタン抽出量が30質量ppm以下である。
本発明のストレッチフィルムは、従来公知の方法、例えばTダイ法やインフレーション法などにより、該ポリ塩化ビニル系樹脂組成物を製膜することにより、作製することができる。
このフィルムの厚さが10μm以下であれば、前記試験法にて測定したn−ヘプタン抽出量は、ポリ塩化ビニル系樹脂からなる食品包装用フィルムの規制値である150質量ppmよりも少なく、さらにはポリオレフィン系樹脂からなる食品包装用フィルムの規制値である30質量ppm以下を達成することができる。
本発明のストレッチフィルムの好ましい厚さは、n−ヘプタン抽出量及び取り扱い性などを考慮すると8.0〜9.5μmの範囲である。
本発明のストレッチフィルムは、食品容器包装用として好適な、押出加工性、薄肉性、包装適性、防曇性の全てを満たし、かつn−ヘプタン溶出量が低いなどの特性を有している。
【実施例】
【0021】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1〜7及び比較例1〜6
平均重合度1030の塩化ビニル樹脂100質量部に対して、アジピン酸系ポリエステル可塑剤として重量平均分子量2,300のポリ(ブタンジオール、アジピン酸)エステル、アクリル系可塑剤として表1、表2に示す種類の各種ポリ(メタ)アクリル酸エステル、グリセリンモノラウリルジアセテート及びエポキシ化大豆油(ESBO)をそれぞれ表1及び表2に示す量加えてなる各樹脂混合物に、その100質量部当たり、さらにCa−Zn系安定剤:0.5質量部、ポリグリセリン脂肪酸エステル:1.5質量部、ソルビタン脂肪酸エステル1.0質量部及びポリオキシエチレンアルキルエーテル:1.0質量部を配合してポリ塩化ビニル系樹脂組成物を調製した。次いで、この樹脂組成物をTダイ法により口金幅500mm、口金ギャップ0.5mm、樹脂温度200℃でドロー比を変えて押出成形し、ストレッチフィルムを製膜した。各ストレッチフィルムの厚さを測定し、表1及び表2に併記した。得られたフィルムについて下記の方法で評価を行い、その結果を表1及び表2に併記した。
【0022】
[外観]
・下記の基準で評価した。
フィルムに焼け色や異物の発生がなく外観良好 :○
フィルムにやや焼け色(初着)や異物の発生があった:△
フィルムの焼け色が強く、異物の発生が多かった :×
[食品衛生試験]
・n−ヘプタン抽出試験:昭和57年厚生省告示20号に定める蒸発残留物試験法で抽出量を測定した(30質量ppm以下:○、30質量ppm超:×)。
[せり出し]
・紙間に巻いたフィルムの巻物を、温度40℃、湿度60%の恒温恒湿槽に10日間保管した後のフィルム流れ方向と直交する方向への寸法変化を、下記の基準で評価した。
変化なし〜3mm以下の変化 :○
3mmよりも大きく6mm以下の変化:△
8mmよりも大きい変化 :×
【0023】
[防曇性]
・シシャモ8F(商品名;中央化学社製)にシシャモ8尾を盛りつけ、自動包装機A−18X(商品名;フジキカイ社製)により10パック包装した後、−25〜−30℃の冷凍庫内に一週間保存し、その後−2〜5℃のショーケース内に投入して1時間経過した時点における低温防曇性を評価した。被包装物に含まれる水分がフィルム表面に凝結することなく水膜が均一であって被包装物が鮮明に見えた場合、すなわち低温防曇性に優れていた場合を○、被包装物に含まれる水分がフィルム表面に凝結してしまったり、水膜が均一にならずにこの一部がレンズ状になったりした場合を×として評価した。
[包装適性]
・自動包装機適性:PP製のトレーに内容物500gを入れ、フジキカイ社製A−18Kにより包装速度40パック/分で自動包装し、包装装適性を、下記の基準で評価した。
しわや破れがなく包装できたもの:○
やや滑り不足だが包装できたもの:△
しわ、破れで包装不適なもの :×
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

表1及び表2から分かるように、本発明のストレッチフィルム(実施例1〜7)は、外観、n−ヘプタン抽出量、せり出し、防曇性及び包装適性のいずれも合格であるが、比較例のストレッチフィルム(比較例1〜6)は、上記特性のいずれか1つ以上が不合格である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のストレッチフィルムは、特定組成のポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなるものであって、薄肉であるにもかかわらず食品容器包装に優れ、さらには厚生省告示20号に定めるn−ヘプタン抽出量が少なく、したがって脂肪性食品への可塑剤の移行性が少ないなどの特性を有し、食品容器包装用として好適に用いられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリ塩化ビニル系樹脂と、その100質量部当たり、(B)重量平均分子量が1,000〜3,000のアジピン酸系ポリエステル可塑剤10〜22質量部、(C)重量平均分子量が1,000〜3,500のアクリル系重合体からなる可塑剤1〜55質量部、及び(D)エポキシ化植物油5〜22質量部とを含むことを特徴とするポリ塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のポリ塩化ビニル系樹脂組成物を製膜してなり、かつ厚さが10μm以下であって、昭和57年厚生省告示20号に定める蒸発残留物試験法にて測定したn−ヘプタン抽出量が30質量ppm以下であることを特徴とするストレッチフィルム。


【公開番号】特開2006−104241(P2006−104241A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−289614(P2004−289614)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】