説明

ポンプユニット

【課題】 水路の状況に応じて機場スペースを縮小し、狭い用地でも工期短縮と低コストで建設を可能とするコラム型ポンプユニットを提供する。
【解決手段】 流水路Aに吸込口3を開口した吸水槽2に調整吐出槽4を重設し、吸水槽2と調整吐出槽4を仕切る下部隔壁5に下部コラムパイプ7を支架させると共に、調整吐出槽4に排水路Bに連通する吐出口9を開口した吐出槽8を載置して、調整吐出槽4と吐出槽8を仕切る上部隔壁12に上部コラムパイプ10を乗置し、下部コラムパイプ7に水中ポンプ14を吊設してコラム型ポンプユニット1を構成するもので、吸水槽2と吐出槽8の間に調整吐出槽4を設けることにより、流水路Aと排水路Bとの高低差の調整が可能となり、上部コラムパイプ10と下部コラムパイプ7に分割してコラムパイプの長さを短縮して重量を軽減し、経費も削減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流水路にポンプユニットを設置して、上流側より水位の高い灌漑用水路等の排水路に放流するポンプ設備、或は、増水により支流への逆流を防止するために本流と支流の合流部にゲート扉体を設置してゲートの上流側水路又は水路の隣接地に設置するポンプユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の標準的なポンプ設備では用地の確保が難しいため、ポンプユニットを流水路に設置するポンプゲートの需要が高まっている。しかし、ポンプゲートは門柱の建設が必要であり、土木工事に相当の時間と費用を要している。また、水路幅や水位の関係により、既存河川の拡張や河床の堀込みが必要になる等の問題がある。
構造物に固定設置される排水ポンプは、排水機場等で上流側と下流側とを仕切るゲート扉を備え、構造物に固定設置されるコラムの内部に水中ポンプを備えるコラム型ポンプが、特許文献1に開示してある。
そして、コラム型ポンプのケーブル等の保護装置を、特許文献2において本願の出願人が提案し、吸水槽の天壁からコラムを垂下させて、開口したコラムの下端部に水中ポンプを支架させるコラム型ポンプを明細書に記載してある。
また、露天のポンプ設備で、ポンプハウジングと取水室ユニットを含むポンプブロックをプレハブ形式のコンクリートで製作してメンテナンスを容易とするポンプ設備の構築方法が、特許文献3に開示してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3692339号公報(段落番号0050乃至段落番号0053、図1及び図4)
【特許文献2】特許第3534271号公報(段落番号0006、図1及び図2)
【特許文献3】特開平4−1993号公報(特許請求の範囲1及び発明の作用および効果の欄、図2及び図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に記載のコラム式水中ポンプは、水中ポンプをコラム内に着脱自在に垂設しているので、水中ポンプのメンテナンスが容易であるが、コラムを吊設する開閉扉や吸水槽は、製作土木工事に相当の時間と費用を必要とする。
特許文献3に記載の、ポンプハウジングと取水室ユニットを含むポンプブロックをプレハブ形式のコンクリートで製作するポンプ設備の構築方法は、工期短縮と、低コストで建設できる利点があるが、構造物に固定設置されており設備の移設が困難である。また、ポンプハウジングをコンクリートブロックで作成しているので、摩耗や破損した際には、修理・交換等に相当の時間と費用を必要とする。
この発明は、水路の状況に応じて機場スペースを縮小し、工期短縮と低コストで建設を可能とし、既設ポンプ場の増強や移設にも適用できるコラム型ポンプユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係るコラム型ポンプユニットは、流水路から排水路に強制排水するポンプ設備において、流水路に連通する吸込口を開口した吸水槽に調整吐出槽を重設し、吸水槽と調整吐出槽を仕切る下部隔壁に下部コラムパイプを支架させると共に、排水路に連通する吐出口を開口した吐出槽を調整吐出槽に載置して、下部コラムパイプに水中ポンプを吊設してコラム型ポンプユニットを構成するもので、吸水槽と吐出槽の間に調整吐出槽を設けることにより、流水路と排水路との高低差の調整が可能となり、上部コラムパイプと下部コラムパイプに分割してコラムパイプの長さを短縮して重量を軽減し、経費も削減できる。
調整吐出槽を複数段に継足せば、吐出槽を高低差の大きい排水路Bに合わせた高さに調整できる。
吸水槽と吐出槽を上下に設置するため、水路の状況に応じて機場スペースを縮小し、狭い用地でも工期短縮と低コストで建設が可能となる。
【0006】
必要とする排水量に応じて流水路に設置するポンプユニットは、吸水槽に重設する調整吐出槽に、両側壁に連通口を開口した吐出槽を載置して継足コラム型ポンプユニットを構成し、吐出槽の一方の連通口にコラム型ポンプユニットを構成する吐出槽の吐出口を接続して、吐出槽の他端の連通口を排水路に連通させるもので、排水量に応じてポンプ設置台数を増設することが出来る。狭い用地での建設が可能となり、既設のポンプ場の増強にも採用出来て、施工期間も短縮できる。
【0007】
サージング対策として排水機場等のポンプユニットに排水槽を併設し、コラム型ポンプユニットの吐出槽の吐出口、又は継足コラム型ポンプユニットの吐出槽の他端の連通口を排水槽の放水口に接続し、排水槽の放流口を排水路に連通させるもので、コラム型ポンプユニットに排水槽を併設すれば、急激な流量変動と圧力変化を吸収して、豪雨などで増水した支流などの流水路の流水を排水路の本流等に排水できる。
【0008】
工期短縮と低コストで建設できるポンプユニットは、吸水槽と、調整吐出槽、及び吐出槽を角形マンホール又はボックスカルバートで構成すれば、コスト削減と製作期間の短縮が行なえる。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係るコラム型ポンプユニットは、吸水槽と吐出槽の間に調整吐出槽を設けることにより、流水路と排水路との高低差の調整が可能となる。また、コラムを上部コラムパイプと下部コラムパイプに分割し、調整吐出槽自体をコラムとして利用するので、複数の調整吐出槽を重設してもコラムを延長する必要がない。
吸水槽に調整吐出槽、及び吐出槽を重設する構成であり、機場スペースが縮小できる。狭い用地での建設を可能にして、既設のポンプ場の増設にも採用できる。吸水槽の水中ポンプから調整吐出槽を経由してポンプ上部の吐出槽に直接吐き出す構造のため、機器類等の付帯設備も省略でき、製作経費の削減と施工期間の短縮が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明に係るコラム型ポンプユニットの一部縦断正面図である。
【図2】同じく、コラム型ポンプユニットの斜視図である。
【図3】同じく、コラム型ポンプユニットの平面図である。
【図4】同じく、他の実施例のコラム型ポンプユニットに排水槽を併設した一部縦断正面図である。
【図5】同じく、コラム型ポンプユニットに排水槽を併設した平面図である。
【図6】他の実施例のコラム型ポンプユニットに継足コラム型ポンプユニットを並設設置したポンプユニットの一部縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明に係るコラム型ポンプユニットを図面に基づき詳述すると、図1及び図2はコラム型ポンプユニットの一部縦断正面図と斜視図であり、図3は平面図である。
図1及び図2に示すように、コラム型ポンプユニット1は、吸水槽2の上部に調整吐出槽4と吐出槽8を連設し、内部に水中ポンプ14を設置して構成している。
吸水槽2は上流側の流水路Aに対向する側壁に流水の吸込口3を開口し、上端部を開放した角形ブロックで形成している。吸水槽2に角形ブロックの調整吐出槽4を重設し、吸水槽2と調整吐出槽4の間に開口部5aを有する下部隔壁5を挟持している。下部隔壁5に下部フランジ6を係止させて開口部5aから下部コラムパイプ7を着脱自在に支架してある。
調整吐出槽4は上下端部を開放してあり、下端部は下部隔壁5を介して吸水槽2と連結し、上端部は上部隔壁12を介して吐出槽8と連結している。具体的には、調整吐出槽4の上部に吐出槽8を載置し、調整吐出槽4と吐出槽8の間に開口部12aを有する上部隔壁12を挟持している。
吐出槽8は側壁に排水路Bに連通する吐出口9と、上端部に上部コラムパイプ10の挿入口11を開口してある。挿入口11には必要に応じて着脱自在な蓋を設けてもよい。上部隔壁12に上部フランジ13を係止させて上部コラムパイプ10の排出口24を吐出槽8の中間部に拡開してある。実施例では、上部コラムパイプ10の排出口24を吐出口9の上端より上方に設けているので、吐出槽8から調整吐出槽4に流水が逆流することがない。なお、逆流防止機能を有していれば、上部コラムパイプ10を設ける必要はない。
吸水槽2と吐出槽8の間に調整吐出槽4を設けることにより、流水路Aと排水路Bとの高低差の調整が可能となり、コラムパイプを上部コラムパイプ10と下部コラムパイプ7に分割して角型ブロックにかかる重量を軽減できるので、角型ブロックの軽量化、経費の削減が可能となる。
【0012】
図1及び図2に示す水中ポンプ14は、吐出槽8の上端部の挿入口11から吊り降ろし、上部コラムパイプ10の内部を垂下させて、吸水槽2と調整吐出槽4を仕切る下部隔壁5に支架した下部コラムパイプ7に公知の手段で係止させる。水中ポンプ14の下端に吸込ケーシング15を連結して下部コラムパイプ7から垂下させて吸水槽2の槽底近傍に開口してある。水中ポンプ14を作動した時に、吸込口3から流入する流水を整流化させるための渦流防止板25が吸水槽2の内壁に垂設してある。水中ポンプ14は下部コラムパイプ7に着脱自在に垂設しているので、容易に外部に取り出してメンテナンスが可能となる。コラム型ポンプユニット1は吸水槽2に垂下した下部コラムパイプ7から調整吐出槽4に揚水し、上部コラムパイプ10を介して吐出槽8に吐き出す構造のため、吐出弁、フラップ弁、鋳鉄管、逆止弁等の機器が不要となり、低コストで施工できる。
上流側の流水路Aよりも水位の高い灌漑用水路等の排水路Bに放流する場合でも、吸水槽2の上部に重設する調整吐出槽4・・・を複数段に継足せば、吐出槽8を排水路Bに合わせた高さに調整できる。
【0013】
上流側の流水路Aに設置したコラム型ポンプユニット1は、下部コラムパイプ7に支架した水中ポンプ14を作動して、吸水槽2の吸込口3から流入してきた流水路Aの流水を水中ポンプ14の下端に連結した吸込ケーシング15から吸引して、調整吐出槽4に揚水させる。揚水した流水で調整吐出槽4が満たされると上部コラムパイプ10に流入する。上部コラムパイプ10の排出口24から吐出槽8に流入し、吐出口9から排水路Bに排水される。
吸水槽2に重設した調整吐出槽4に吐出槽8を載置するため、コラム型ポンプユニット1として1角型ブロック分の用地しか必要とせず、狭い用地での建設が可能となり、機場スペースが縮小できて、工期短縮と低コストの施工が可能となる。既設のポンプ場の増設にも容易に対応でき、施工期間の短縮や経費削減を実現できる。コラム型ポンプユニット1は設置後も容易に移設可能であり、状況に応じて流水路Aの適所に再設置も可能となる。
なお、コラム型ポンプユニット1を構成する吸水槽2は、流水路Aに隣接する位置に設置してもよいものである。
【0014】
図4及び図5はコラム型ポンプユニットに排水槽を併設した一部縦断正面図と平面図である。コラム型ポンプユニット1に排水槽16が併設してあり、吸水槽2に重設した調整吐出槽4に載置する吐出槽8の側壁の吐出口9に排水槽16の放水口17を接続し、排水槽16の放流口18に連結した放流管19を排水路Bに連通させてある。
コラム型ポンプユニット1に排水槽16を併設すれば、急激な流量変動と、圧力変化を吸収でき、豪雨等による増水した支流の流水路Aの流水を本流等の排水路Bに排水できる。吐出槽8に接続した排水槽16の放流口18を側壁の適所に開口して、排水槽16の放流口18に連結した放流管19を排水路Bの高さに設定すれば、排水槽16の放流口18の高さを調整するだけで、上流側の流水路Aより水位の高い灌漑用水路等の排水路Bに放流することができる。
【0015】
図6は他の実施例のコラム型ポンプユニットに継足コラム型ポンプユニットを並設設置したポンプユニットの一部縦断正面図である。
図1に示すコラム型ポンプユニット1と、両側壁に連通口21,21を有する吐出槽22を使用する継足コラム型ポンプユニット20を並設するもので、詳細な名称及び符号は同一であり省略する。
流水路Aに吸込口3を有するコラム型ポンプユニット1を設置する。吸水槽2に吸込口3と、吐出槽22の両側壁に連通口21,21を有する継足コラム型ポンプユニット20をコラム型ポンプユニット1に並設する。継足コラム型ポンプユニット20の他端には、放水口17と放流口23を有する排水槽16を並設している。継足コラム型ポンプユニット20の一方の連通口21はコラム型ポンプユニット1の吐出口9と連通しており、他方の連通口21は排水槽16の放水口17に連通している。コラム型ポンプユニット1から排出される排水は吐出口9から流出し、継足コラム型ポンプユニット20の前端の連通口21から吐出槽22に流入する。継足コラム型ポンプユニット20から排出される排水と合流し、後端の連通口21から放水口17を通って排水槽16に流入し、放流口23から排水路Bへ排出される。
【0016】
継足コラム型ポンプユニット20は、必要とする排水量に応じて設置台数を増やすことができる。また、既設のポンプ場の増強にも適用できるので、施工期間を短縮できる。本実施例ではコラム型ポンプユニット1と継足コラム型ポンプユニット20を並設しているが、既設の障害物等で並設できない場合、それぞれ離れた位置に設置して、吐出口9と連通口21を配管等で接続してもよい。また、2列以上(例えば3×3列)のポンプユニットを並設する場合、必要に応じて吐出口9と連通口21の開口数を増加してもよい。
なお、継足コラム型ポンプユニット20を構成する吐出槽22の後端の連通口21を直接排水路Bの放流口としても良いものである。
コラム型ポンプユニット1に並設する継足コラム型ポンプユニット20を複数継足せば狭い用地での建設が可能となり、既設のポンプ場の増強にも適用できる。吸水槽2、調整吐出槽4、及び吐出槽8,22に使用する角形ブロックは、角形マンホールあるいはボックスカルバート等の既製品を利用することも可能であり、既製の開口を利用できる。既製のコンクリート製品を使用すれば、施工期間が短縮可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
この発明に係るコラム型ポンプユニットは、吸水槽と吐出槽の間に調整吐出槽を設けることにより、流水路と排水路との高低差の調整が可能となる。コラムを吸水槽から吐出槽まで連通していないので、調整吐出槽による高低差の調整にコラムを延長する必要がなく、機器類等の付帯設備も省略でき、製作経費の削減と施工期間の短縮が実現できる。従って、水路の状況に応じて機場スペースを縮小して、狭い用地での建設が可能となり、工期短縮と低コストで建設でき、既設のポンプ場の増強にも適用できる。
【符号の説明】
【0018】
1 コラム型ポンプユニット
2 吸水槽
3 吸込口
4 調整吐出槽
5 下部隔壁
7 下部コラムパイプ
8、22 吐出槽
9 吐出口
12 上部隔壁
14 水中ポンプ
16 排水槽
17 放水口
18、23 放流口
20 継足コラム型ポンプユニット
21 連通口
A 流水路
B 排水路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流水路(A)から排水路(B)に強制排水するポンプ設備において、流水路(A)に連通する吸込口(3)を開口した吸水槽(2)に調整吐出槽(4)を重設し、吸水槽(2)と調整吐出槽(4)を仕切る下部隔壁(5)に下部コラムパイプ(7)を支架させると共に、排水路(B)に連通する吐出口(9)を開口した吐出槽(8)を調整吐出槽(4)に載置して、下部コラムパイプ(7)に水中ポンプ(14)を吊設してコラム型ポンプユニット(1)を構成したことを特徴とするコラム型ポンプユニット。
【請求項2】
前記調整吐出槽(4)に、両側壁に連通口(21、21)を開口した吐出槽(22)を載置して継足コラム型ポンプユニット(20)を構成し、吐出槽(22)の一方の連通口(21)にコラム型ポンプユニット(1)を構成する吐出槽(8)の吐出口(9)を接続して、吐出槽(22)の他端の連通口(21)を排水路(B)に連通させたことを特徴とする請求項1に記載のポンプユニット。
【請求項3】
前記コラム型ポンプユニット(1)の吐出槽(8)の吐出口(9)、又は継足コラム型ポンプユニット(20)の吐出槽(22)の他端の連通口(21)を排水槽(16)の放水口(17)に接続し、排水槽(16)の放流口(18、23)を排水路(B)に連通させたことを特徴とする請求項1又は2に記載のポンプユニット。
【請求項4】
前記吸水槽(2)と、調整吐出槽(4)、及び吐出槽(8、22)を角形マンホール又はボックスカルバートで構成することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のポンプユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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