説明

ポンプ式噴霧機構

【課題】乾電池を用いた自動噴霧装置においてポンプ式噴霧器を利用できるようにする。
【解決手段】下端に浸漬チューブ12が連結されたポンプシリンダー13と、このポンプシリンダー13内を往復動する中空のピストン10と、ピストン10の下端部の弁座10hを開閉するポペット14からなる。プランジャーヘッド11を下方に押圧すると、ピストン10とポペット14が下方に移行し、これによりポンプ室20が圧縮されて弁座10hが開放され、ポンプ室20内部の内容液がピストン10の中空通路10pに噴霧される。ピストン10の中空通路10pから連続する通路内には往復動可能にコイルスプリング26によって噴射口30側に付勢された圧力調整弁25を配備する。これによりピストン中空通路10p内に噴霧された霧は一時的に貯留されてその内圧が上昇し、圧力調整弁25が通路を開放し、噴射口30から芳香剤等の内容液が噴霧される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ式噴霧器に設備されるポンプ式噴霧機構に関するものであり、とりわけ、現在市販されている乾電池を用いた芳香剤等の自動噴霧装置に適用できるポンプ式噴霧器用の噴霧機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、乾電池を利用した芳香剤等の自動噴霧装置が市販されている。
この自動噴霧装置は、電源として乾電池を用いて、タイマーをセットしておき、所定時間間隔を置いてモータやプランジャを作動させて、内部のエアゾール缶の噴射ボタンを押圧して、自動的に芳香剤等の内容液を外部に噴霧できるものである。
下記特許文献に記載のものは、何れもエアゾール缶に適用した自動噴霧装置であって、文献1に記載のものは、小型のもので、エアゾール缶の上部に着脱自在に装着できるものであって、モータによって回転される駆動カムにより噴射ノズルが押圧されるものである。
【0003】
文献2及び3に記載のエアゾール缶の自動噴霧装置は、何れも内部にエアゾール缶を内蔵できる収納ケースから形成され、やはり乾電池により噴射ノズルを背後からプランジャで押圧するタイプである。
【特許文献1】特開2005−81223号公報
【特許文献2】特開2003−33684号公報
【特許文献3】特開2002−113398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の自動噴霧装置においては、何れもエアゾール缶を用いており、芳香剤等のその被噴射液には当然噴射ガスが混入されており、エアゾール缶の上端部に設けられているステムを下方に押し下げるのみで、内容液の噴霧が可能となっている。
この噴射ステム或はそれに接続された噴射ノズルを押圧する際には、上記した通り乾電池によりモータを駆動して歯車機構を利用し、或はプランジャを用いて押圧動作を行うのであるが、この押圧動作に際しては、不規則な加重が付加されたり、その押圧ストロークもそれぞれの機種により異なり、一定のものとなっていない。
【0005】
そこで、これまでこの種の自動噴霧装置にはポンプ式噴霧器を使用することができず、上記のようなエアゾール缶を使用していた訳である。
何故ポンプ式噴霧器が使用できないのかというと、ポンプ式噴霧器の場合には所定のストロークで、所定の負荷(押圧)加重を必要とし、上記のような自動噴霧装置の場合には、不規則な加重が掛かったり、ストロークが短かったりで、その押しボタンへの押圧が不規則なものとなっていたからである。
【0006】
また、エアゾール缶を使用した場合には、その容器は金属製缶を使用せざるを得ず、省資源の点で問題が残るし、廃棄の際の危険性もある。
更に、噴霧状態、即ち霧の状態も、必ずしも一定の細かい霧を噴射できるか、という点でも問題を残していた。
【0007】
そこで、本発明においては、上記自動噴霧装置において、エアゾール缶に代えてポンプ式噴霧器を使用できるようにすることをその第一の課題としている。
これにより省資源及び廃棄の際の安全性の観点でも寄与できるものとなる。
更に、このポンプ式噴霧器を使用しても、より細かい霧を噴霧することができ、且つ、噴射口からの液ダレの問題もより少ないものとすることもその課題である。
【0008】
本発明者は、このように、省資源、省エネの観点からエアゾール缶を使用せずに、即ち、プラスチック容器でも可能なポンプ式の噴霧器を利用できないかを鋭意研究し、従来の金属缶を使用するエアゾール缶に代えて、プラスチック製のポンプ式の噴霧器を使用できるようにすることを目的としている。
そのために、このこのポンプ式噴霧器として従来のものを代替使用すると問題が発生するために、その噴霧機構を改良して、ポンプ式噴霧器でも上記自動噴霧装置に使用することができ、これに加えて、よりきめ細かい噴霧を可能とし、しかも、噴射口から液漏れや液ダレ等も起こさないものを提供することをその目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1のものは、芳香剤や消臭剤等の噴霧用内容液が収容された容器の上方開口部に取り付けられるポンプ式噴霧機構であって、下端に浸漬チューブが連結されたポンプシリンダーと、このポンプシリンダー内を往復動する中空のピストンと、ピストンの下端部には開口弁座が設けられ、この弁座を開閉するポペットはポンプシリンダー内でコイルスプリング等の弾性部材により上方の弁座方向に付勢され、プランジャーヘッドを下方に押圧することによって、ピストン及びポペットが下方に押し下げられ、これによりポンプ室が圧縮され、ポペットが下方に移行して弁座が開放され、ポンプ室内部の内容液がピストンの中空通路を通過して噴射口から外界に噴霧されるポンプ式噴霧機構において、上記ピストンの中空通路から連続する通路内に往復動可能にコイルスプリング等の弾性部材によって噴射口側に付勢された圧力調整弁を配備し、プランジャーヘッドの押圧動作によってポンプ室内の内容液が上記弁座を通過してピストンの中空通路内に排出され、その内圧が上昇することにより、上記圧力調整弁が通路を開放することを特徴とするポンプ式噴霧機構である。
【0010】
本発明の第2のものは、上記第1の発明において、ピストンの中空通路から連続する通路を、中空通路から略直角の略水平方向に折曲して形成し、この略水平方向通路の途中に上記圧力調整弁を設けたことを特徴とするポンプ式噴霧機構である。
本発明の第3のものは、上記第1又は第2の発明において、上記圧力調整弁を可能な限り相対的に噴射口側寄りに設けたことを特徴とするポンプ式噴霧機構である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1のものにおいては、従来のポンプ式噴霧器において、そのピストンの中空通路から連続する通路内に往復動可能にコイルスプリングによって噴射口側に付勢された圧力調整弁を設けているために、例えば乾電池を利用した自動噴霧装置に組み込んだ際に、そのプランジャーヘッドへの押圧が不規則、或は不十分な場合には、ピストン内の中空通路の圧力が所定圧力以上にならず、上記圧力調整弁は開口しないのである。
即ち、プランジャーヘッドへの押圧が適切で、十分な加重とストロークが付与された際に、初めて通路内の内圧が所定以上に上って、圧力調整弁が開口することとなり、これにより初めて適切な噴霧が実現されるのである。
従って、本発明に係る圧力調整弁を有する噴霧器を用いることにより、初めて上記自動噴霧装置においてポンプ式噴霧器が使用できることとなるのである。
【0012】
本発明の第2のものにおいては、上記第1の効果と同じ効果を発揮し、しかもその圧力調整弁を略水平方向に設けたものである。
本発明の第3のものにおいては、その圧力調整弁を出来るだけ相対的に噴射口側寄りに設けたため、圧力調整弁と噴射口との間の通路の容積を可能な限り最小とすることができ、噴射口からの液漏れ或は液ダレを最小限に抑制することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付の図面と共に、本発明の最良の実施形態について説明する。
図1は、本発明のポンプ式噴霧機構の第1の実施形態を図示する中央縦断面図であって、芳香剤等の収容された容器の図示は省略している。
本発明に係る要部は、中空のピストン10の上端部に連結されたプランジャーヘッド11の内部構造にある。
ピストン10から下方の部分は、従来のポンプ式噴霧器の噴霧機構と同じである。
【0014】
即ち、この従来のポンプ式噴射機構は、その下端部に浸漬チューブ12が接続されたシリンダ13と、このシリンダ13の上方部分で且つその内部で上下に往復動する中空ピストン10と、ピストン10の下端部には貫通孔からなる弁座10hが穿設され、この弁座10hに嵌合してこの弁座10hの開閉を行うポペット14とからなり、ポペット14はシリンダ13の下方の細径部13s内に配備されたコイルスプリング15によって常に弁座10hの側に付勢された状態に配備されている。
このポンプ式噴霧機構は、シリンダ13を略中央部に固定するキャップ18を被噴射液が収容された容器の上端開口部周辺に形成されている雄ネジ部に螺着され、取り付けられるものである。
【0015】
以上の構成により、ポンプ式噴霧機構は、プランジャーヘッド11が下方向矢印Dに向けて押圧されると、ピストン10及びその弁座10hに嵌合したポペット14とが共に下方に移行する。
ピストン10とポペット14が共に下方に移行すると、ポンプ室20に収容された芳香剤等の被噴射液が加圧されて、圧縮される。
ポンプ室20内の被噴射液が加圧され、圧縮されると、今度はポペット14がコイルスプリング15の付勢力に反して、下方に押し下げられる。
ポペット14が下方に押し下げられると、ポンプ室内の被噴射液が弁座10hとポペット14の先端部の嵌合部14tとの間隔が開き、ピストン10の中空通路10p内に芳香剤等の被噴射液が勢いよく噴射し、噴霧されることとなるのである。
【0016】
次に、本発明の特徴部分であるプランジャーヘッド11の内部構造について説明する。
このプランジャーヘッド11の略中央内部には、略筒形状の孔部が形成され、この孔部内に、その下端部で、上記ピストン10の上端部と嵌合する接続部21と、この接続部21の上方に設けられる筒体部22とからなる内部構成部材23が配備されている。
この内部構成部材23の上方に位置する筒体部22の内部に圧力調整弁25が上下往復動可能に配備され、この圧力調整弁25は、筒体部22の内部でコイルスプリング26によって噴射口30の側(上方)に付勢されている。
【0017】
勿論、内部構成部材23の下方の接続部21から筒体部22の内部へは、通路27を介して連通されている。28、29がそれぞれ導入口を示している。
圧力調整弁25の先端部25tは、プランジャーヘッド11内部の通路32の導入口32iを開閉できるように、その導入口32iに嵌合する。
通路32の先端側は、通路32pに連通して、噴射口30へと更に連通する。
【0018】
以上の構成により、プランジャーヘッド11が下方向矢印Dに向けて押圧されると、ピストン10内の中空通路内に被噴射液が噴射されるのであるが、その噴射された霧は、一時的に圧力調整弁25によって堰き止められた状態となる。
そして、ピストン10の中空通路、通路27、及び筒体部22の上部空間23s内の内圧が所定以上に上昇することにより、コイルスプリング26が下方に圧縮され、圧力調整弁25により通路32pの導入口32iが開放され、噴射口30へと噴射された霧が押し出されて、噴射口30から最適な霧が噴射されることとなるのである。
【0019】
もし仮に、プランジャーヘッド11への押圧が不十分な場合には、ポペット14の先端の嵌合部14tからの噴霧が不十分となり、ピストン10の中空通路10p内の内圧が上昇せずに噴霧は適切に行われないこととなる。
従って、本発明に係る噴霧機構を有するポンプ式噴射器を用いることによって、これを自動噴霧装置に組み込むことにより、適切に被噴射液を自動的に噴霧できる自動噴霧装置を実現することができることとなる。
【0020】
図2は、本発明に係るポンプ式噴霧機構の第2の実施形態に係る中央縦断面図であって、芳香剤等の収容された容器の図示は省略している。
この第2の実施形態においても、ピストン10から下方部分の従来の噴霧機構は、上記第1の実施形態と同じである。
この第2の実施形態においては、ピストン10の中空通路10pから連続するプランジャーヘッド11の下端中央部に設けられた通路11pの上端部から水平方向に折曲する通路27及び通路28が連通する構成が上記第1の実施形態と異なっている。
【0021】
即ち、プランジャーヘッド11内の導通路がいわば上向きから略水平方向に折曲している。
そして、筒体部22が水平方向に配置され、この筒体部22の内部で水平方向に往復動する圧力調整弁25が配置され、その圧力調整弁25の基端部(右)側にコイルスプリリング26が配置され、圧力調整弁25を噴射口側に常に付勢している構成となる。
この圧力調整弁25の先端部25tは、噴射口側の通路32を開閉できるように、その通路32の入口に嵌合している。
【0022】
以上の構成により、プランジャーヘッド11が下方向矢印Dに向けて押圧されると、ピストン10内の中空通路10p内に被噴射液が噴射されるのであるが、その噴射された霧は、一時的に圧力調整弁25によって堰き止められた状態となる。
そして、ピストン10の中空通路10p、通路11p、通路27、通路28及び筒体部22の先端側空間内の内圧が所定以上に上昇することにより、コイルスプリング26が図中右側に向かって圧縮され、圧力調整弁25も右側に移行して、通路32の入口が開放され、通路32pを通過して噴射口30へと噴射された霧が押し出されて、噴射口30から最適な霧が噴射されることとなるのである。
【0023】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明においては以下の通り設計変更が可能である。
本発明は、従来のポンプ式噴霧機構をそのまま利用して、この従来の噴射機構のプランジャーヘッド部分に圧力調整弁を設けたことを特徴としている。
従って、従来のポンプ式噴霧機構としては、現在市場にあるどのような種類のものをも使用することができる。
このポンプ式噴霧機構に本発明の要旨である圧力調整弁が内蔵されたプランジャーヘッドをシリンダの上端に連結、固定すればよいのである。
素材は、金属製のコイルスプリングを除き合成樹脂を用いており、その寸法や大きさ等は適宜必要に応じて設計変更することができる。
【0024】
本発明に係る圧力調整弁は、その内蔵位置を出来る限り噴射口の近傍に設けることが極めて好ましい。
というのも、圧力調整弁から噴射口までの距離を短くすることにより、その間の通路の容積を小さくすることが出来、これにより噴射口からの液漏れ或は液ダレを防止することができるからである。
【0025】
上記第2の実施形態においては、圧力調整弁を略水平方向に往復動できるように形成し、これによりシリンダの中空通路及びプランジャーヘッドの下端部の通路11pの容積を大きく設けることが出来、1ストロークの押圧動作により噴霧できる量を大きくすることができる。
このように、押圧動作と噴霧量との関係も全く自由に設計することができ、必要に応じて設定すればよい。
【0026】
以上、本発明は、圧力調整弁をプランジャーヘッド内部に装備することにより、シリンダ内に噴霧された霧を一時的に貯留し、内圧を上昇させることができ、これにより極めて細かい良好な霧を発生させることができ、更には噴射口から液ダレ等も防止できる極めて著大な効果を有するポンプ式噴霧機構を提供することができた。
そして、このポンプ式噴霧機構は、乾電池式の自動噴霧装置に内蔵させることも可能となり、またこの自動噴霧装置とは別に単にポンプ式噴霧器として極めて良好な細かい霧を発生することのできるポンプ式噴霧器としても単独で利用することも出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のポンプ式噴霧機構の第1の実施形態を図示する中央縦断面図である。
【図2】本発明のポンプ式噴霧機構の第2の実施形態を図示する中央縦断面図である。
【符号の説明】
【0028】
10 ピストン
10h 弁座
10p 中空通路(ピストンの)
11 プランジャーヘッド
12 浸漬チューブ
13 シリンダ
14 ポペット
15、26 コイルスプリング
20 ポンプ室
25 圧力調整弁
27、28、32 通路
30 噴射口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香剤や消臭剤等の噴霧用内容液が収容された容器の上方開口部に取り付けられるポンプ式噴霧機構であって、下端に浸漬チューブ(12)が連結されたポンプシリンダー(13)と、このポンプシリンダー(13)内を往復動する中空のピストン(10)と、ピストン(10)の下端部には開口弁座(10h) が設けられ、この弁座(10h) を開閉するポペット(14)はポンプシリンダー(13)内でコイルスプリング(15)等の弾性部材により上方の弁座(10h) 方向に付勢され、プランジャーヘッド(11)を下方に押圧することによって、ピストン(10)及びポペット(14)が下方に押し下げられ、これによりポンプ室(20)が圧縮され、ポペット(14)が下方に移行して弁座(10h) が開放され、ポンプ室(20)内部の内容液がピストン(10)の中空通路(10p) を通過して噴射口(30)から外界に噴霧されるポンプ式噴霧機構において、
上記ピストン(10)の中空通路(10p) から連続する通路内に往復動可能にコイルスプリング(26)等の弾性部材によって噴射口(30)側に付勢された圧力調整弁(25)を配備し、
プランジャーヘッド(11)の押圧動作によってポンプ室(20)内の内容液が上記弁座(10h) を通過してピストン(10)の中空通路(10p) 内に排出され、その内圧が上昇することにより、上記圧力調整弁(25)が通路を開放することを特徴とするポンプ式噴霧機構。
【請求項2】
ピストン(10)の中空通路(10p) から連続する通路を、中空通路(10p) から略直角の略水平方向に折曲して形成し、この略水平方向通路の途中に上記圧力調整弁(25)を設けたことを特徴とする請求項1に記載のポンプ式噴霧機構。
【請求項3】
上記圧力調整弁(25)を可能な限り相対的に噴射口(30)側寄りに設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のポンプ式噴霧機構。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−51890(P2010−51890A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218916(P2008−218916)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(508260740)株式会社エコテック (1)
【出願人】(505159397)株式会社 ジュピター (2)
【Fターム(参考)】