説明

ポンプ要素およびポンプ要素設計方法

【課題】流体ポンプのポンプ要素におけるキャビテーションの発生を抑制する。
【解決手段】ブレードへの入射角α、およびブレード角βを有するブレードを備えるポンプ要素の設計において、α/βの比の値が約0.3よりも小さくなるように入射角αをブレード角βの関数として設計する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプに関し、詳しくは、ポンプの設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体ポンプとしては、軸流ポンプや遠心ポンプがある。ポンプの設計は、一般に、経験に基づいてなされ、ブレード角βと入射角αとの関係については、互いに独立したものとして設計されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
流体ポンプのポンプ要素におけるキャビテーションの発生を抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ブレードへの入射角α、およびブレード角βを有するブレードを備えるポンプ要素の設計において、α/βの比の値が約0.3よりも小さくなるように入射角αをブレード角βの関数として設計する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】ブレード前縁を示す展開図。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1は、ポンプ要素のブレード20を展開して示す。ポンプ要素としては、インデューサやインペラがある。
【0007】
静圧の大きさが、流体の蒸気圧の大きさよりも低下すると、ポンプ要素にキャビテーションが発生する。流体力学では、多様なキャビテーションが発生することが知られている。
【0008】
本明細書中に記載されているパラメータとしては、ブレード間距離dと、接線に対するブレード角βと、ブレード正圧面に対する流体の入射角αと、入射相対速度w1と、キャビティ崩壊位置における相対速度w2と、を含む。ブレード間の流路面積を大きくするために、パラメータdを大きくすることができる。本明細書中に開示するポンプ設計プロセスにおいては、ブレード20の数を減らすことによって、ブレード間距離dの値が大きく設定される。
【0009】
式(1)に示す流速係数(flow coefficient)φは、入口子午面速度(inlet meridional velocity)Cm、ブレード速度U、ブレード角β、および入射角αの関係を定義する。
【0010】
φ=Cm/U=tan(β−α) …(1)
本明細書中に開示する設計方法においては、最初に流速係数φが決められる。このインデューサ流速係数φは、所与のアプリケーションに対して経験的に定められる。インデューサの設計プロセスにおいて、流速係数φは、一般に独立変数であるので、ブレード角βと入射角αとの差は、固定的に定まる。しかし、ブレード角βと入射角αとの比は、制御することができる。換言すれば、α/βの値を選択することができる。このα/βの値は、一実施例においては、0.3以下となるように選択される。例えば、以下の式(2)のように定義される。
【0011】
α=0.3β …(2)
ブレードの数を少なくしてかつα/βの値を小さくするという設計を用いることによって、キャビテーションによって誘発される振動の振幅が小さくなる。α/βの値が小さいことで、キャビテーションが防止ないし抑制されるとともに、流路面積が増えることによって、吸込性能が向上する。式(1)に式(2)を代入すると、次の式(3)が得られる。
φ=tan(0.7β) …(3)
すなわち、流速係数φの値が既知であるので、式(3)をβについて解くことによって、βの値が得られる。さらにβの値を式(2)に代入することによって、αの値を得ることができる。
【0012】
入射角を独立変数とする従来の設計とは異なり、本明細書中に開示した設計方法においては、入射角αをブレード角βの関数とし、入射角αが実質的に従属変数となるようにする。
【0013】
図示した実施例において、特定の構成要素の構成を開示しているが、他の構成にも本発明は適用可能である。特定のステップの手順を示して説明し、特許請求の範囲に記載しているが、これらのステップは、特に示さない限り、別々にされ或いは組み合わされた種々の順序で実行することができ、その場合にも本発明は適用可能である。
【0014】
上記の説明は、例示であり、当業者であれば、本発明のさまざまな変更や変形がなされ得ることを理解されよう。
【符号の説明】
【0015】
20…ブレード
d…ブレード間距離
α…入射角
β…ブレード角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射角αおよびブレード角βを有するブレードを備え、比α/βの値が約0.3よりも小さいことを特徴とするポンプ要素。
【請求項2】
上記α/βの値が約0.3よりも小さい正の数であることを特徴とする請求項1に記載のポンプ要素。
【請求項3】
上記α/βの値が約0.3よりも小さい負の数であることを特徴とする請求項1に記載のポンプ要素。
【請求項4】
ポンプ要素のブレードへの入射角αが、ブレード角βに対して、ほぼα=0.3βの関係をもつ従属変数となるように、入射角αをブレード角βの関数として選択することを含む、ポンプ要素設計方法。

【図1】
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