マイクロアレイおよび他のマイクロスケール装置上に高濃度スポットを沈着させるためのスポッティング装置および方法
マイクロアッセイ、バイオチップ、バイオセンサー、および細胞培養物を形成するためのスポッター装置および方法を開示する。スポッターを用いて、マイクロアレイスライド、ウェーハ、または他の基質上に、タンパク質または他の材料の高度に濃縮したスポットを沈着させてもよい。スポッターはマイクロ流体導管およびオリフィスを用いて、タンパク質、他の生体分子、または化学物質を基質上のスポットに沈着させる。各オリフィスは、インレットおよびアウトレット導管を含む流体経路の一部である。スポッターが基質と接触するとき、オリフィスと基質との間にシールが形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は該して生物工学に関し、より具体的には、マイクロアッセイ、バイオチップ、およびバイオセンサーの作製に関する。本発明は特に、基質上に物質を沈着させるためのマイクロ流体チャネルのシステムを包含する。
【0002】
優先権の主張
本願は、35 USC.§119(e)の下、2004年7月6日に提出されその全内容が参照により組み入れられる米国特許仮出願第60/585,697号の恩典を主張する。
【背景技術】
【0003】
背景
近年、多数の生物学的/化学的分析技法が、マイクロスケールシステムを用いて実証されており、且つ、微細加工技術を用いて実現されている。分析機器にマイクロスケール技術を用いることの理論的根拠としては、機器のサイズおよび費用が縮小する、試料および試薬の量が減少する、分析時間が短縮する、分析スループットが向上する、ならびに試料調製と分析機能とを統合できる可能性がある、などがある。
【0004】
現在は、GENETIX QARRAY(登録商標)などのロボット型スポッターシステムを用いて高スポット密度アレイが作られている。現在の技術の1つでは、沈着させる材料を針の上に集めるスポッティング「ペン」を使い、次にその材料を基質上に「スポッティング」する。例えばYamamotoらの米国特許第6,733,968号(特許文献1)(「第'968号特許」)「Microarray, Method for Producing the Same, and Method for Correcting Inter-Pin Spotting Amount Error of the Same」を参照されたい。第'968号特許の記載によれば、複数の「ペン」を使用してアレイを作製する場合、全ての「ペン」が顕微鏡的に同じサイズというわけではなく、したがって各「ペン」がブロットする溶液の量は異なる。同特許には、誤差を数学的に考慮に入れることができるよう、任意の「ペン」のセットに対する誤差を決定する方法が開示されている。
【0005】
Moynihanらの米国特許第6,365,349号(特許文献2)「Apparatus and Methods for Arraying Solution onto a Solid Support」には、基質上に試料を施すための、ばねプローブの使用が開示されている。
【0006】
「ペン」の使用と類似するのは毛管の使用である。例えば、Chenらの米国特許出願第20040014102号(特許文献3)「High Density Parallel Printing of Microarrays」を参照されたい。同出願には、マイクロアレイ上に試料をスポッティングするための毛管の使用が開示されている。Chenらの米国特許第6,594,432号(特許文献4)(「第'432号特許」)「Microarray Fabrication Techniques and Apparatus」にも、プローブを基質上にスポッティングするための、シリカチューブなどの毛管の使用が開示されている。第'432号特許において、毛管の1つの端はリザーバに取り付けられていてもよいが、スポッティングされた物質が戻るための経路はなく、したがって、スポット沈着密度を高めるために基質上に物質をフローさせる方法はない。したがって、第'432号特許の毛管現象は、ペンによるものと類似している。さらなる例については、指定された量の試料材料を基質上に送達するため毛管の端のメニスカスをタッピングする方法を開示した、Shalonらの米国特許第6,110,426号(特許文献5)「Methods for Fabricating Microarrays of Biological Samples」を参照されたい。
【0007】
先行技術のシステムは、所望の沈着用分子が非常に低濃度で存在している場合には、制御されたサイズの複数のスポットを作ることができるが、所望の分子が単一のスポットについて表面上に沈着されうる総数は厳しく制限される。スポット中の材料の濃度は、もともとの材料の濃度およびスポットサイズにより制限される。Perkin-Elmer BIOCHIP ARRAYER(登録商標)は、「インクジェット印刷」技術を用いているが、この方法も「ペン」と同じ濃度制限を有する。
【0008】
この他、基質上のマイクロ流体チャネルを用いて、遺伝子、タンパク質、核酸(RNA、DNA、オリゴ核酸など)をパターン形成するシステムも開発されている。そのようなシステムの例としては、Goldらの米国特許第6,503,715号(特許文献6)「Nucleic Acid Ligand Diagnostic Biochip」を参照されたい。個々のマイクロアッセイスポットを撹拌することを試みたバイオチップ製造方法が開発されているが、そのようなシステムはバイオチップの機械的操作を要することが多い。例えば、反応時間を早めるためのバイオチップの回転を開示したKimらの米国特許第6,623,696号(特許文献7)「Biochip, Apparatus for Detecting Biomaterials Using the Same, and Method Therefor」を参照されたい。バイオチップおよびバイオセンサーの開発過程を単純化すること、ならびにバイオチップおよびバイオセンサー上の個々のスポットについてさらに制御を可能にすることへの需要が存在する。
【0009】
理想的には、フロー沈着システムは、所望の分子とのみ接着するように基質表面が調整されているのであれば、高い表面密度をもたらすことができ、不要なバルク材料を洗い流すことを可能にする。しかし、一般的にフロー沈着システムはスポットアレイを作ることができず、個々にアドレス指定されたアレイを作ることはなおさらできない。例えばTomokoらの日本特許出願第10084639号(特許文献8)「Method and Apparatus for Adding Sample」を参照されたい。同出願には、バイオチップを回転させ、遠心力を用いてバイオチップの表面全体に試料を均一に広げるという方法が開示されている。同様に、Parkらの米国特許第6,391,625号(特許文献9)「Biochip and Method for Patterning and Measuring Biomaterial of the Same」には、基質の一部分にレーザーを照射し、次に基質上にプローブ分子をスピンコーティングすることによってバイオチップを作る方法が開示されている。
【0010】
さらに、現在の技術では、個々のスポットを順次化学処理すること、またはレイヤーバイレイヤー自己組織化法(LBL)を行ってスポット濃度を増加させることができない。必要とされているのは、溶液中の分子を取り出して高濃度のそれら分子を基質に付着させる方法である。このことはタンパク質機能の研究に特に有利となると考えられる。
【0011】
さらに、マイクロアレイ式の構造はバイオセンサーの形成にも用いられており、バイオチップに関連するものと同じ問題がバイオセンサーにも当てはまる。例えば、バイオセンサーの形成におけるマイクロアレイ形成技術の利用を開示したYamazakiらの米国特許第6,699,719号(特許文献10)「Biosensor Arrays and Methods」を参照されたい。バイオセンサーの作製を単純化することへの需要が存在している。
【0012】
マイクロアレイの処理に関連する費用および時間を減少させることへの需要も存在している。この需要に対処する試みも行われており、例えば、組立ラインの様式で処理されるマイクロアレイのリニアストリップ(linear strip)によってマイクロアレイ処理を自動化する方法を開示したBassらの米国特許出願第2003/0068253 A1号(特許文献11)「Automation-Optimized Microarray Package」を参照されたい。
【0013】
【特許文献1】米国特許第6,733,968号
【特許文献2】米国特許第6,365,349号
【特許文献3】米国特許出願第20040014102号
【特許文献4】米国特許第6,594,432号
【特許文献5】米国特許第6,110,426号
【特許文献6】米国特許第6,503,715号
【特許文献7】米国特許第6,623,696号
【特許文献8】日本特許出願第10084639号
【特許文献9】米国特許第6,391,625号
【特許文献10】米国特許第6,699,719号
【特許文献11】米国特許出願第2003/0068253 A1号
【発明の開示】
【0014】
本発明の開示
個々にアドレス指定された高濃度スポットを備えるマイクロアレイの表面をパターン形成できるスポッター、ならびに同スポッターを使用および製造する方法を開示する。このスポッターは、高密度のスポットが作製されるまで、所望の物質(プローブおよび/または標的化合物など)のフローをスポットエリア上に誘導することによって、各スポットの表面密度を増大させる。表面上に流してもよいプローブの例としては、タンパク質;デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を含む核酸;細胞;ペプチド;レクチン;修飾多糖;合成複合体高分子;機能性ナノ構造;合成ポリマー;修飾/ブロックされたヌクレオチド/ヌクレオシド;合成オリゴヌクレオチド;修飾/ブロックされたアミノ酸;蛍光体;発色団;リガンド;キレート;ハプテン;薬剤化合物;抗体;糖;脂質;リポソーム;組織;ウイルス;その他任意のナノまたはマイクロスケールの物体;およびこれらの任意の組合せがある。物質は、マイクロアレイ基質の表面上を流れる際に、そのシステムに関連する化学特性に応じて基質の表面に結合または吸着してもよい。
【0015】
スポッター内の導管(コンジット)(マイクロチャネルおよび/または微小管など)を用いて、基質上のスポット沈着エリアへと、および同エリアから物質を導き、このとき、マイクロチャネルまたは微小管を通るフローが、特定の領域において高い表面濃度をもたらす。各沈着領域はそれ自体のマイクロ流体チャネルによって個別にアドレス指定されてもよく、マイクロ流体チャネルは、多数の沈着領域を並列にアドレス指定できるように組み付けられていてもよい。マイクロ流体チャネルのオリフィスは、マイクロ流体チャネル中の溶液が基質表面に接触するよう、基質表面とともにシールを形成するように適合され、これにより、溶液中の物質を基質表面上に沈着させることを可能にする。溶液は、第一の導管のインレットへと注入され、オリフィスにつながる第一のマイクロ流体チャネルを介して沈着スポットエリアへと流され、そして第二の導管を通って流し出されてもよい。
【0016】
1つの態様において、第一および第二の導管は同じリザーバに接続されていてもよく、これにより、その中に含有されている溶液および任意の溶質の再循環が可能となる。
【0017】
別の態様において、マイクロ流体チャネルの第一の導管は第一のリザーバに接続され、マイクロ流体チャネルの第二の導管は第二のリザーバに接続される。各マイクロ流体チャネルの第一の導管が共通の第一のリザーバに接続され、各マイクロ流体チャネルの第二の導管が共通の第二のリザーバに接続されるように、複数のマイクロ流体チャネルが構成されていてもよい。別の態様において、マイクロ流体チャネルの第一および第二の導管の各々は、別の第一および第二のリザーバに接続される。
【0018】
1つの態様において、表面への沈着を促進するため、沈着されるべき物質を含有する溶液の一定の流体フローが長時間にわたって維持され、これにより高密度のスポットを形成する。この態様は、表面への溶質の結合効率低下をユーザーが制御することを可能にし、これにより、はるかに高い信号を有するアレイを形成することを可能にする(例えば、蛍光、化学ルミネセンス、染色、他の光学的マイクロアレイ感知技術、または放射分析を用いる場合)。別の態様において、個別にアドレス指定された沈着部位(スポット)を表面上に生じさせることができるプリントヘッドをもたらすため、1 cm2あたり少なくとも10個のマイクロ流体チャネルが構成される。スポットが2次元配列であることは、各スポットエリアが表面上に任意に(必ずしも格子状の構成でなくてもよい)または非任意に配置された状態で、無制限の数のスポット上に異なる沈着材料で同時に沈着を形成できること、ならびに、各スポットエリアのサイズおよび/または形状が異なっていてもまたは同じであってもよいことを意味する。
【0019】
別の態様において、温度調節要素またはガス拡散要素が1つまたは複数のマイクロ流体経路に接触するように適合され、且つ、これを用いて表面付近の溶液の温度を制御してもよい。さらに別の態様において、フローチャネル(例、マイクロ流体経路)は、表面沈着を対流によって増強するため、ボルテックスインデューサー(vortex inducer)などの流体混合構造をスポットエリア上に組み込んでいてもよい。
【0020】
別の態様において、スポッターを用いて、沈着部位のアセンブリにおいてレイヤーバイレイヤー自己組織化(LBL)を行ってもよい。例えば、スポット上に流す溶液(溶質)を単純に変更することによって、物質(同じ物質かまたは異なる物質のいずれか)の複数の層を生じさせてもよい。1つの態様において、第一の層に核酸が沈着され、第二の層または段階にDNA結合タンパク質が沈着される。別の態様において、スポッターを介して適切な材料を流し基質の表面に接触させることによって、同表面を改変してもよい。スポッターおよびマイクロ流体経路は多数の材料で製造されてもよく、したがって製造材料は、好ましくは、スポッターに流される溶液またはスポッターの作動に関連して用いられる溶液と非反応性である。
【0021】
本明細書に開示するシステムによって作られるスポットアレイは、続いてマイクロ総合分析システム(μTAS)[1]に包埋される表面に適応してもよい。μTASは、マイクロチャネルにより精密に制御される流体にアレイを曝露することを可能にする。遺伝子、タンパク質、核酸(例:RNA、DNA、ポリ核酸)、または他の物質(例:細胞、脂質、糖、およびアレイ形式に組み付けられた他の生体分子)をパターン形成するために基質上のマイクロチャネルを用いるそのようなシステムは、代わりにスポッターとともに作動するように適合してもよい。この態様により、基質中にマイクロ管(microcanal)を構築する必要がなくなり、したがって、製造過程が大幅に単純化されるとともに全体的な費用が低下する。スポッターを用いて他のマイクロ流体システムに流体を装填してもよく、これは単純にスポッター面を表面ポートアレイに押し付けることによって行ってもよい。スポッターはまた、バイオセンサーの構築および試験に用いてもよい。スポッターはまた、細胞培養物の沈着、成長、および維持に用いてもよい。
【0022】
スポッターはまた、例えば表面に構造が組み込まれた基質など、基質上の平らでない表面とともに用いてもよい。スポッターは、多孔質または非多孔質である剛性または可撓性の基質と接合するように設計されていてもよい。基質は、当技術分野において公知の任意の数の材料で作られていてもよい。スポッター面は、種々の任意の基質と接合するよう必要に応じて改変してもよい。
【0023】
スポットのサイズおよび幾何学形状は、スポッターの製造中にオリフィスのサイズおよび幾何学形状を変えることによって変化させてもよい。スポット条件はスポッターの設計に応じて変化してもよい。例えばオリフィスは、狭窄および乱流インデューサー(turbulence inducer)を含むよう、製造中に変えてもよい。スポッター内のフローは、例えば圧力流、動電、重力流、浸透圧、またはこれらの組合せなど、多数の方法により制御してもよい。
【0024】
スポッターは、スポッター内に流される物質と適合する任意の好適な材料で製造してよく、材料の例としては、ケイ素;シリカ;ポリジメチルシロキサン(PDMS);ヒ化ガリウム;ガラス;セラミック;石英;ネオプレン、Teflon(商標)、ポリエチレンエラストマー、ポリブタジエン/SBR、ニトリル、ナイロンなどのポリマー;金属;およびこれらの組合せなどがあるが、それに限定されるわけではない。流される物質(例:溶質)との親和性が低い材料でスポッターを構築し、これにより、スポッターのマイクロチャネル内への物質の結合を低減することが望ましい可能性がある。さらに、流される物質と導管自体との間の親和性を低減するため、導管の内径を好適な材料でコーティングしてもよい。
【0025】
スポッターは、例えば好適な材料のウェーハを洗浄する;必要であればウェーハをプライミングする;注型、成形、酸化、沈着またはその他任意の好適な方法によりウェーハに材料を加える;機械加工、研削、エッチング、または他の何らかの好適な方法により材料を減じるなど、多数の方法で製造できる。任意で、スポッターを製造するため、第一のウェーハに追加のウェーハを接着してもよく、且つ必要に応じて追加の材料を加えるもしくは減じてもよく、または必要に応じて追加のウェーハおよび材料の組合せを加えてもよい。当業者に理解されるであろうとおり、各製造段階は、所望のスポッターを作るのに必要な任意の順序で実施してよい。
【0026】
さらなる製造方法もまた可能であり、例えば、半導体製造方法を用いるのではなくステンレス鋼マイクロワイヤの鋳型を用いてもよい。適切な材料をセットした後、マイクロワイヤを除去し、こうして得られる空隙によってマイクロチャネルを形成してもよい。または、鋳型を用いて、スポッター面と、それに伴うオリフィスおよび/または微小管とを形成してもよく、任意で、成形されたスポッター面またはプリントヘッドの背面に微小管またはマイクロチャネルを接合させてもよい。1つの例示的な態様において、スポッターはほぼ全体的に微小管から製造される。オリフィスのアレイを備えたスポッターを作るために微小管を作成、改変、および連結するため種々の材料(シリカなど)とともに用いることができる、広範な種々の半導体製造技術が当技術分野において公知である。大きい微小管で作られたスポッターは、例えば半導体製造方法を用いるなどの製造を必要としない可能性があり、代わりに、単純に一緒に固定してもよい。
【0027】
本発明は、各スポットが特定の物質および特異的な沈着密度のため個別に適合された、事実上無制限の数の規定されたスポットを備えるマイクロアレイを作る可能性を有している。スポッターはまた、個々のスポットを順次化学処理するのに用いてもよく、好ましくは同じスポッターを用いることによりこれを行うが、複数のスポッターを用いてもよい。
【0028】
本発明を実施するための最良の様式
個々にアドレス指定された高濃度スポットを備えるマイクロアレイの表面をパターン形成できるスポッター、ならびに同スポッターを使用および製造する方法を開示する。本発明の流体チャネルを用いて、所望の表面沈着密度が達成されるまで、所望の物質(プローブおよび/または標的分子など)を運ぶ溶液のフローをスポットエリア上に誘導することによって、各スポットの表面密度を増大させてもよい。本明細書において、「物質」という用語は、プローブ、標的化合物、細胞、栄養素、および/またはキャリヤを含む。「プローブ」の例としては、タンパク質;デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を含む核酸;細胞;ペプチド;レクチン;修飾多糖;合成複合体高分子、機能性ナノ構造;合成ポリマー;修飾/ブロックされたヌクレオチド/ヌクレオシド;合成オリゴヌクレオチド;修飾/ブロックされたアミノ酸;蛍光体;発色団;リガンド;受容体;キレート化剤;ハプテン;薬剤化合物;抗体;糖;脂質;リポソーム;細胞;ウイルス;任意のナノまたはマイクロスケールの物体;ならびに、他のプローブ材料と結合、関連、または相互作用する関連物質を有する任意の化合物などがある。標的化合物は典型的に、すでに基質に結合されたプローブまたはプローブの組合せの上に流される。「キャリア」とは、プローブ、細胞、標的化合物、または栄養素を運搬するためのビークルを指す。「キャリヤ」は溶媒(例、任意の水系または非水系の流体および/またはゲル)を含み、且つ、その中に懸濁された粒子を有していてもよい。
【0029】
1.0 構造
スポッターは、複数の流体経路と、基質の表面上に流体を沈着させるよう適合された静的アレイ中に構成された複数のオリフィスとを含み、流体経路は第一の導管および第二の導管を含み、第一および第二の導管の各々は近位端および遠位端を有し、第一の導管は第一の導管内で第一のチャネルを規定する壁を有し、第二の導管は第二の導管内で第二のチャネルを規定する壁を有し、第一の導管の遠位端は第二の導管の遠位端に操作可能な状態で接続され、第一および/または第二の導管の遠位端はオリフィスを作るように構成され、且つ、オリフィスは表面とともにシールを形成するように操作可能である。流体経路は、オリフィスが表面に対して密封されているとき、流体が第一および第二の導管を通って流れ、基質の表面に接触できるように構成される。
【0030】
導管は、チャネル、マイクロチャネル、管、マイクロ管、微小管、細管、および/またはチューブとも呼ばれ、これらの用語は流体経路を説明するために用いられる。「インレット導管」、「インレットマイクロチャネル」、または「インレット微小管」という用語は第一または第二の導管のいずれかであってもよく、「アウトレット導管」、「アウトレットマイクロチャネル」、または「アウトレット微小管」は経路の別の導管であってもよい。いくつかの態様において、どちらの導管がインレット導管であるかは、物質が導管間を前後に流れるにしたがって変化する。本発明を説明する目的のため、「インレット」または「アウトレット」は、該当する導管の近位端を参照するのに用いられることがある。
【0031】
1.1 導管
図1〜3に、基質の表面上のスポット沈着エリアへとおよび同エリアから物質を導くためのスポッター内の2つのマイクロチャネルを示す。本明細書において、「スポット沈着エリア」は、「スポット」、「スポットエリア」、および/または「ウェル」とも呼ばれる。物質はスポッター内のインレットマイクロチャネルを通り、オリフィスに行き、基質の表面に接触し、そしてスポッター内のアウトレットマイクロチャネルを通って流れる。この流路は、システムに関与する化学特性に応じて、表面に結合または吸着する機会を物質に与える。本明細書において「結合する」という用語は、結合、付着、吸着、関連、または基質に物質を保持するための他の任意の化学的もしくは機械的な過程を指す。特異的結合は、非無作為的な様式で表面に結合する物質(タンパク質など)を指すために用いられる。非特異的結合は、当技術分野において理解されているように、望ましくない結合または付着を指す。
【0032】
本発明の開示に照らして明らかであるように、インレットおよびアウトレット(第一および第二)の導管は、本質的に、基質上に物質を沈着させるための、チャネル内に孔(オリフィス)を備えた単一の湾曲したチャネルであってもよい。しかし、本発明を説明する目的のため、単一のチャネルまたは導管を有するものとしてこれらの態様を参照する代わりに、導管の「セット」または「ペア」という用語を用いて、典型的に分割点を提供するオリフィスを備えたチャネルを説明する。本明細書で論じるように、チャネル(例、マイクロチャネル)のセット間を接続する広範な種々の接続、およびオリフィスを形成するための広範な種々の手段が可能である。
【0033】
1つの態様において、スポッターの各チャネルまたは流体経路は、物質を基質の表面に搬送する手段、基質の表面上の「スポット沈着エリア」の周囲にシールを作る手段、および結合しなかった物質を基質の表面から搬送する手段を含む。マイクロチャネルは任意の長さおよび/または直径であってよい。1つの態様において、導管/チャネルの内径は100μm、90μm、80μm、70μm、60μm、50μm、40μm、30μm、20μm、および/または10μmである。さらに、ナノメートルレンジのマイクロチャネルも当技術分野において公知であり、本発明に用いてもよい。1つの態様において、スポッターの複数のマイクロ流体経路は複数の異なる内径からなる。
【0034】
図4に多オリフィススポッターの態様を示す。この態様において、マイクロチャネルの各ペアは、他のマイクロチャネルのインレットおよびアウトレットとは別のインレットおよびアウトレットを有する。図4には、例えば図1〜3に示すようなマイクロチャネルペアの列が開示されている。本発明の開示に照らして認識されるであろうとおり、所望のプリントヘッドまたはスポッティングパターンを作るため、図4に示すマイクロチャネルペアの列は単一の列または複数の列として構成されていてもよく、同様に、同じ列または異なる列におけるマイクロチャネルペア間の間隔は変化していてもよい。必要なだけ多数のマイクロチャネルペアを収容するため、スポッターの全体的なサイズを調整してもよい。
【0035】
図5に多オリフィススポッターの態様を示す。この態様において、各マイクロチャネルペアのインレットおよびアウトレットは、単一のインレットリザーバおよび単一のアウトレットリザーバに接続される。図5はまた、導管をリザーバに接続するための2つの可能なアプローチも示しており、例えば、「アウトレットチャネル」は相互接続した経路として示されており、「インレットチャネル」はマニホールドを介して接続されている。1つの態様において、単一の列のインレットおよび/またはアウトレットは、共通の列インレットおよび/またはアウトレットに接続されていてもよく、この場合、多列の態様は、別個に接続された個々の列を有していてもよい。例えば、オリフィスを100 x 10の構成で1000個備えたスポッターは、1000個のインレットおよび1000個のアウトレットではなく10個の列インレットおよび10個の列アウトレットを有していてもよい。この態様は、各列を共通のプローブでスポッティングする場合に好ましい可能性があるが、各列上に異なるプローブがスポッティングされる。または、列アウトレットおよび列インレットの全てを、単一のスポッターインレットおよびスポッターアウトレットに接続してもよい。この態様は、単一の物資でアレイ全体を作製または処理する場合に有用である可能性がある。
【0036】
図6に、列のインレットまたはアウトレットが1つの列アウトレットに接続される態様を示す。この態様において意図される用途の1つの実施例は、個々のインレットに異なる物質が流されるが、流出物を再循環させる所望が存在せず、したがって単一のアウトレットを使用できる場合である。
【0037】
別の態様において、アウトレット導管は隣接するインレット導管に、そして接続された一連のオリフィスに接続される。この態様において、オリフィスを100 x 10の構成で1000個備えたスポッター実施例を用いると、各列は単一の流体経路中の100個のオリフィス、および10個の流体経路を有することになる。この態様は、好ましくは、列全体を同じ物質でスポッティングする場合に用いられる。
【0038】
図7に2つの態様を示す。図示した第一の態様は、単一のスポットエリアへと導く2つのインレットマイクロチャネルと、スポットエリアから離れるように導く単一のアウトレットマイクロチャネルとを有する流体経路を含む。この態様は、リザーバ内の溶液を変える必要なくスポットエリア上に2つの異なるプローブを流す場合、または、基質もしくは基質上に存在するプローブの近傍で別の流体流を互いに反応させることが望ましい場合に、有用である可能性がある。この例示的な態様から認識されるであろうとおり、2つより多いインレットマイクロチャネルを使用してもよい。例えば、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つのインレットマイクロチャネルを用いてもよい。
【0039】
図7は輪状の態様の断面として見ることもできる。輪状の態様は、狭い微小管をより大きな微小管の中に置くかまたは狭い微小管をより大きなマイクロチャネルの中に置くことによって作ってもよい。大きなマイクロチャネル内に複数のマイクロチャネルが含有されていてもよい。例えば、各々が異なる物質を運搬する複数のインレットマイクロチャネル(例えば2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つのインレットマイクロチャネル)が、アウトレットマイクロチャネルとして機能するより大きなマイクロチャネル内にあってもよい。
【0040】
さらに、図7に関連して説明する態様を用いて、スポットエリアにわたって所望のフローパターンを作ってもよい。例えば、異なるインレットマイクロチャネルはそれぞれ同じ物質を運搬してもよいが、複数のインレットマイクロチャネルは基質上のフロープロフィールに影響を及ぼすように構成されていてもよい。2つ以上のインレットマイクロチャネルが基質上に同時に物質を流す場合、物質は基質上で直接衝突する。この衝突の乱流を制御して基質上への物質の結合に影響を及ぼしてもよい。
【0041】
しかし、同じオリフィスに流体接続する複数のインレットマイクロチャネルを用いて、異なる物質を異なるタイミングで流してもよい。図7において、左側のインレットマイクロチャネルを通り、基質を横切り、アウトレットマイクロチャネルから出るように1つの物質を流し、続いて、右側のインレットマイクロチャネルを通り、基質を横切り、アウトレットマイクロチャネルから出るように第二の物質を流してもよい。
【0042】
別の例示的な態様において、各々がオリフィス1つにつき複数のマイクロチャネルを有する複数のオリフィスの場合(例えば、各マイクロチャネルをA、B、およびCと呼ぶ)、Aチャネルの全てを接続することが望ましい可能性があり、BおよびCマイクロチャネルについても同様である。
【0043】
図4〜7に示した例示的な態様の任意の組合せを単一のスポッターに組み込んでもよい。例えばスポッターは、図4に開示したような流体経路を含有していてもよく、図5および6に関連して説明したように接続されたインレットおよびアウトレットを有する他の流体経路を含有していてもよく、図7に開示したような複数のインレットマイクロチャネルを有するさらに他の流体経路を含有していてもよく、またはこれらの任意の組合せを含有していてもよい。
【0044】
スポッター面のオリフィスは、マイクロアッセイ上に作られるスポットエリアがチェスボードのパターンになるように配列されていてもよい。換言すると、得られる表面上の各スポットエリアの中心が、他の中心とともに正方形の格子を形成する。オリフィスはまた、スポットエリアがハニカムのパターンになりしたがって各スポットエリアの中心が隣接する中心とともに正三角形を形成するように配列されていてもよい。さらに、オリフィスは、チェスボードパターンとハニカムパターンとが混合した領域が得られるように、スポッター内に分布していてもよい。
【0045】
列には任意の数のオリフィスが含まれていてよく、且つスポッター中には任意の数の列が含まれていてよい。スポッターは、好ましくは、少なくとも約10個、50個、100個、400個、900個、1,600個、2,500個、10,000個、50,000個、100,000個、500,000個、800,000個、1,900,000個、3,000,000個、5,000,000個、7,000,000個、13,000,000個、29,000,000個のオリフィスを含有する。スポッターはまた、好ましくは、1 cm2あたり少なくとも約10個、50個、83個、416個、500個、833個、1000個、4166個、5000個、8,333個、10,000個、20,000個、40,000個、または41,666個のオリフィスを含有する。例えば、オリフィスが、チェスボードパターンにまとめられた外径50ミクロンの微小管で形成されている場合、スポッター面の各1平方センチメートルは40,000個の微小管を含有する。オリフィスはまた任意の直径であってよい。オリフィスの内径は一般的に300ミクロン未満であり、好ましくは100ミクロン以下である。
【0046】
マイクロチャネルは、マイクロチャネルの近位端が、オリフィスが形成されている場所であるマイクロチャネルの遠位端から上に垂直方向に伸びるよう、垂直の配向で図示されている。例えば、オリフィスおよびマイクロチャネル接続部(図8A〜8Cに示すものなど)が表面に対して垂直に統合されるようなスポッターを作ってもよい。しかしマイクロチャネルは、水平も含む広範な種々の配向を有していてもよい。本明細書の図示に照らして認識されるであろうとおり、流体経路は、スポッターのオリフィスからスポッター内の任意の流体接続部までの間に、曲がり、旋回、または継手を有していてもよい。流体経路およびマイクロチャネルという用語は、溶液の入口点(例、スポッターへのリザーバ接続)からオリフィスへ、そしてオリフィスが接触する表面から離れるまで(例、第二のリザーバ)の経路を説明することを意図している。例えば図2には、注射針がリザーバ(例、注射筒)とスポッターとの間の流体接続手段として機能する単一の流体経路を示した。さらに図2において、「インレットマイクロチャネル」という用語は、「流体流入」点からオリフィスまでのチャネルを含み、「アウトレットマイクロチャネル」と言う用語は、オリフィスから「流体流出」点までのチャネルを含む。
【0047】
本発明の説明から明らかであるとおり、導管は任意の長さであってよい。導管は、500ミクロン、1 mm、5 mm、1 cm、5 cm、10 cm、20 cm、100 cm、またはそれ以上の長さであってもよい。導管内径に対する導管長さの比は5、10、15、20、100、500、1000、10,000、または30,000であってもよい。スポッターのマイクロチャネルは、必ずしも長さが全て均一でなくてもよい。
【0048】
短いマイクロチャネルと同じ圧力にさらされる、長いマイクロチャネルは、短いマイクロチャネルと比較して流量が少なくなる。流量が少なくなる原因は、導管の余分の長さに沿って流れる際に、物質が受ける摩擦が増加することにある。流量は、ベルヌーイの方程式の修正形を用いて計算してもよい。
【0049】
基質または表面に対するプローブの結合能は流量による影響を受けるので、異なる流体経路に対する異なる流量を意図的に作り出してもよい。適切な流量を決定する際には2つの要因を考慮すべきである。第一に、基質上のプローブの滞留時間は、プローブを含有する溶液の流量によって決定される。一部のプローブは、基質への結合を最適にするため、異なる滞留時間を要する可能性がある。したがって、プローブが基質に結合するまたは結合しない可能性を上昇させるため、溶液の流量を変化させてもよい。第二に、流量の増加に伴って基質表面をわたる剪断力が増加し、これもプローブの基質への結合能に影響する。流量が少なすぎると、非特異的結合および/または凝集が生じる可能性がある。凝集および/または非特異的結合は、例えば望ましくないタイミングでプローブを非凝集化させるなどにより、得られるアレイの効率に悪影響を及ぼす可能性がある。または、流量が不適切に多い場合は、プローブの結合が非効率的になる可能性がある(例、プローブが表面から実質上洗い流されるか、または所望の結合を生じるには表面近傍への滞留が不十分となる)。したがって本発明は、溶液中または懸濁液中のプローブの結合を最適にするため、特異的なプローブの流量を制御する機構および手段を提供する。注意されるべき点として、本明細書において「溶液」とは懸濁液も含むが、本発明を説明する目的のため溶液という用語を用いる。
【0050】
20μL/分、16μL/分、13μL/分、および12μL/分という4つの流量を反復して、オリフィス8つを備えたスポッターによりプロテインA(ImmunoPure Protein A、カタログ番号21181、Pierce Inc.)のアレイを作ることによって、流量の影響を示した。流量の変化は、オリフィスの各ペアへとおよび各ペアからつながるマイクロチャネルの長さを比例的に変化させることによって作り出した。得られた結合を表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて分析したところ、第一のペア(20μL/分)では、基質上のストレプトアビジン‐金複合体への結合が低かった。第四のペアも基質への結合が低かったが、第二および第二のペアは第一および第三のペアより結合がはるかに良好で、流量の最適化が示された。
【0051】
図16に上述の実験で作られたアレイを示す。反復実験は上から下に反映されており、スポット2と9、またはスポット3と8が同じ流量で作られたものである。スポット3、4、7、および8は他のスポットと比較して最も高い結合レベルを示しており(濃いスポット)、最適な結合に必要な流量が約13〜約16μL/分であることを示唆している。
【0052】
この実験はまた、様々な長さの導管を備えたスポッターを用いて、各流体経路に最適な流量をもたらせる可能性があることも示している。無論、流体に印加する圧力を増加させる、または様々な導管の長さ、直径、および/もしくは圧力を組み合わせるなど、他の手段によって流量を変化させることも可能である。流量は、ベルヌーイの方程式の修正形を用いて、導管の長さ/直径に基づいて計算してもよい。適切な流量の最適化または決定はまた、例えば、1つまたは複数のあらかじめ定められた流量で試料を沈着させ、結合を試験し、そして最適流量を特定するなどによって、経験的に決定してもよい。
【0053】
流量はまた、溶液内の異なる物質の沈着を制御するために調節してもよい。例えば、溶液が2つの異なるタンパク質を含有し、第一のタンパク質が低流量で特異的結合な結合を有し、且つ第二のタンパク質が高流量で最適な結合を有する場合、溶液の流量を変化させることによって物質の結合を制御してもよい。本発明はまた、2つの異なる溶液を流すかまたは両物質を有する単一の溶液の流量を変化させることによって、第一の物質を置き、次に第一の物質の上に別の物質の層を置くという能力を提供する。
【0054】
当業者に認識されるであろうとおり、導管の長さを変化させることは、スポッター内の物質の流量を変化させる1つの手段にすぎない。流量を変化させる他の手段としては、ポンプ、真空、もしくはリザーバの位置の移動によって圧力を変化させる、マイクロチャネルの直径を変更する、またはその他任意の好適な手段などがある。
【0055】
マイクロチャネルは、長方形のチャネル、円形(例えば図1に示すように)、三角形、またはその他任意の望ましい形状であってよい。
【0056】
図には、物質をアレイのスポット/ウェルに運搬するためにマイクロチャネルおよび微小管を用いるスポッター装置を示した。しかし、任意の導管で十分である。アレイ上の特異的なスポットへの流体経路を提供し、そのスポット上に物質を流すための方法は他にも多数存在する。オリフィスを備えた可撓性のチューブを用いてもよい。別の選択肢としては、「V字形」になるよう一緒に接合され、「V」の底部にオリフィスを備えた、剛性の微小管がある。マイクロチャネルの場合は、例えばスポッター本体などの構造内でマイクロチャネルが開通している必要がある。無論、チューブ自体を一緒に束ねてスポッター本体を形成してもよい。微小管を一緒に接続するため多数の手段が当技術分野において公知である。
【0057】
別の例示的な態様において、マイクロチャネルおよび微小管の組合せを利用してスポッターを形成する。例えば、マイクロチャネルを用いて、図8に示すような構造を形成してもよく、次に、マイクロチャネルの遠位端に微小管を取り付けてもよい。微小管は、垂直、水平、または必要な任意の角度に配列されていてよい。
【0058】
物質は、圧力流、重力流、動電的手段、空気圧、その他任意の好適な手段、またはこれらの組合せによってスポッター導管中を通過させてもよい。圧力流および重力流を作り出す方法は、例えばポンプおよび真空など、多数が公知である。アウトレット導管の近位端が、対応するインレット導管の近位端より低い場合は、スポッターを通して物質を流すため、サイホンを確立してもよい。導管を通して流してもよい物質の多くは帯電しており(例えば、DNAは負電荷を有する)、したがって動電ポンプを用いて導管中で荷電物質を移動させてもよい。空気圧を用いて、例えば流体経路に沿って粘性ゲルのプラグを押すことによって溶液を推進させてもよく、またはリザーバを加圧して溶液を推進させてもよい。さらに、導管の負電荷を増大させるため導管の内部をドーピングまたはコーティングすることが望ましい可能性がある。導管の負電荷の増大は、負電荷を有する物質と導管内部との間の摩擦を低減させる。
【0059】
1.2 オリフィス
多数のオリフィス設計が本発明により企図される。図8A〜8Cに、可能なオリフィス構造のごく一部を示す。本発明は、単純に、表面に物質を沈着させるよう適合されたオリフィスが流体経路中に存在することを必要とする。図8Aおよび8Bに、マイクロチャネルとほぼ同面積のオリフィスを示す。しかしオリフィスの断面積は、図8Cおよび9に示すように流体経路の断面積より大きくてもよく、またはより小さい断面積を有していてもよい(図には示していない)。オリフィスは典型的には正方形、長方形、または円形であるが、任意の幾何学形状を用いてよい。
【0060】
オリフィス部またはその付近で終端する導管の遠位端の接合部は、キャビティと呼ばれるものを規定する。キャビティは広範な種々の形状を有していてもよく、且つ多数の構造を組み込んでいてもよい。キャビティは導管と別に形成されていてもまたは導管によって形成されていてもよく、且つ、基質上のスポットエリアにわたって様々なフローパターンおよび剪断力を作り出すためフローの狭窄および乱流インデューサーを伴って設計されていてもよい。図6に、角度を有する、基質表面上の1方向フローを示す。図7に、単一のスポット上で交差するよう2つのインレットマイクロチャネルをどのように設計できるかを示す。交差するフローパターンは、閉じ込められた反応がスポットエリア上で直接生じることを可能にし得る。さらに、1度に1つの物質のみが流されるのであれば、異なる物質で順次にスポットを処理するために図7の態様を用いてもよい。無論、2つより多いインレットマイクロチャネルがキャビティに接続されていてもよい。さらに、2つの導管は、導管を形成するため物理的に接続していなくてもよい。例えば図7は、より大きい微小管の中の1つの微小管の断面図として見ることもでき、この場合、第一および第二の導管はキャビティを作るため互いに接触していなくてもよい。
【0061】
図8Aに、インレットマイクロチャネルが基質に対して角度を有し、キャビティの中に混合羽根が含まれるキャビティを示す。図8Bに、基質上に物質を側方から注入することを可能にし、且つ乱流を増加させしたがって混合を促進するための、インレットマイクロチャネル内の90度の回転を示す。図8Cに、物質の側方からの注入、基質表面にわたるフロー、そして垂直方向への抜けを可能にするキャビティを示す。さらに、図8Cのようなキャビティを用いて基質表面を改変してもよい。通信装置用の光学的誘導構造または細胞培養用の微小足場などの構造を、スポッターによって基質上で微小成形してもよい。
【0062】
スポッター面とは、マイクロアレイ基質など、その上に物質が流される基質と接合するスポッター表面を指す。図15に単オリフィスの態様のスポッター面を示す。図15に、スポッター面が、最終材料の除去後に作られた図15のスポッターの表面である、スポッターを製造する1つの方法の段階を示す。図4に見られるように、スポッター内に含まれるオリフィスの数にかかわらず、スポッター面は平面であってもよい。スポッター面を水平面で見ると、スポッター面が平面であることが望ましい場合、垂直面におけるオリフィスの互いからの逸脱は1 mm未満であることが好ましく、100ミクロン未満であることがより好ましく、50ミクロン未満であることがより好ましく、20ミクロン未満であることがより好ましく、5ミクロン未満であることがより好ましい。
【0063】
しかし、スポッター面は平面でなくてもよい。スポッター面は、単に微小管の束の遠位端のオリフィスであってもよい。この態様において、オリフィスが円形である場合、スポッター面は環の集合になる。微小管の束において、オリフィスの外縁の間に、密な表面ではなくギャップが存在していてもよい。これらのギャップはまた、望ましい場合は、当技術分野において公知の方法で充填してもよい。例えば、微小管の態様において、チャネル間のギャップの充填に用いられるエポキシによって微小管を一緒に保持してもよい。次に、硬化したエポキシおよびチャネルを切断および/または研磨して滑らかな表面を形成してもよい。
【0064】
さらに、基質上の任意の構造に対応するようにスポッター面を設計してもよい。例えば、基質が隆起部を有する場合、基質と接合する谷を有するようにスポッター面を改変してもよく、またはその逆であってもよい。スポッター面はまた、剛性を有するように、または基質表面と一致するよう十分な可撓性を有するように作られていてもよい。
【0065】
スポッター面は任意のサイズまたは幾何学形状であってよい。スポッター面は76 cm x 26 cmの顕微鏡用スライドを覆うように設計されていてもよく、または25 mm、50.8 mm、76.2 mm、100 mm、125 mm、150 mm、200 mm、もしくは300 mmのウェーハすら覆うように設計されていてもよい。本発明のこの優美な単純性により、任意のサイズまたは幾何学形状のスポッター面が許容される。
【0066】
1.3 付属構造
スポッター面内のオリフィスで終端しない(すなわち、基質上のスポットエリアとの直接接触がない)マイクロチャネルを含んでいてもよい温度調節要素またはガス交換要素がスポッターに用いられていてもよい。図9に、オリフィスの近傍で、スポッターの本体の中に組み込まれた追加のマイクロチャネルを示す。図9の追加のマイクロチャネルは、スポットエリア付近のガスの量の制御に用いられ、例えば細胞のスポッティング時またはアッセイ時にCO2の濃度を制御する。この態様における追加のマイクロチャネルは、スポッター材料の壁を通ってガスが拡散できるようスポットエリアに十分近いべきであるが、スポッターの構造完全性を維持するため十分遠いべきである。図9には、スポットエリアにつながるマイクロチャネルより狭いものとして追加のマイクロチャネルが開示されているが、この要素のサイズおよび構造は用途に依存する。図9には1つのスポットエリアにつき1つの追加のマイクロチャネルを示したが、1つの追加のマイクロチャネルが複数のスポットエリアのガス拡散を制御するようにスポッターが設計されていてもよい。例えば、1つの追加のマイクロチャネルを、2つ、3つ、または4つのオリフィスから等距離になるように設計してもよい。図9にはオリフィスの1つの側に追加のマイクロチャネルを示したが、追加のマイクロチャネルはオリフィスを完全に囲むように設計されていてもよい。
【0067】
温度制御のため、他の追加のマイクロチャネルまたは温度調節要素がスポッターに組み込まれていてもよい。追加のマイクロチャネルまたは温度調節要素をスポッター内の熱交換に用いてもよく、例えば、スポッター面または流体経路を加熱するため電気抵抗性ワイヤをスポッターに挿入してもよい。温度調節用マイクロチャネルまたは温度調節要素を必要に応じてスポッター内に配置してもよい。温度調節用マイクロチャネルまたは温度調節要素は、オリフィスの近傍で螺旋を描くように設計してもよく、インレット導管の長さに沿って設計してもよく、またはスポッター自体の全体の周囲に設計してもよい。
【0068】
他の構造もスポッター自体の中に組み込んでよい。いくつかの例として加熱コイルおよびポンプがある。加熱コイルは、あらかじめ形成したコイルを用いて製造中に組み込んでもよく、または、半導体製造技術により十分な電気抵抗性の金属合金の線を形成することによって組み込んでもよい。図10に1つのポンプの態様を開示する。この態様において、可撓性の膜を備えたチャンバーがスポッター内に作られ、アウトレットマイクロチャネルに連結される。導管を通り且つスポットエリアをわたって物質を前後に振動させるため、可撓性の膜に圧力を繰返し印加および解放してもよい。
【0069】
さらに、図10の態様を改変して、導管を通して新鮮な物質を1方向に流してもよい。再度図10において、スポッターを出たアウトレットマイクロチャネルに可撓性のキャビティが追加され、且つ2つの一方向弁(ボールフロート弁など)が可撓性キャビティの前および後のどこかの点に追加されるのであれば、1方向ポンプが作り出される。この態様において、キャビティ内にばね機構を組み込むことが必要である可能性があるが、可撓性の膜がばねとして機能するだけの十分な弾力を有していてもよい。さらに、可撓性の膜を、ピストンまたはその他任意の種類のポンプ装置に置き換えてもよい。スポッター内に組み込まれたポンプは、追加の弁機能を必要としてもまたは必要としなくてもよい。
【0070】
任意の数の装置をスポッターに取り付けてもよい。いくつかの例として、ポンプ、ブロワー、真空、流体ライン、加熱/冷却用ジャケット、取付用ハードウェア、およびビーカーまたはマイクロタイタープレートなどのリザーバがある。同じリザーバに対して、全てのインレットマイクロチャネルが供給を受け、且つ全てのアウトレットマイクロチャネルが戻ってもよい。または、各インレットマイクロチャネルが独自のリザーバから供給を受けそして単一のアウトレットマイクロチャネルがそのリザーバに戻ってもよく、もしくは、アウトレットマイクロチャネルからそのリザーバへの戻りがなくてもよい。任意の数のバリエーションが本発明の範囲内で可能である。
【0071】
1.4 ロボットシステム
本発明のスポッターをロボット型スポッティングシステムに組み込んでもよい。非接触式アレイヤーには流体分配ハードウェア、フロー制御、弁などがすでに統合されているので、非接触式アレイヤーにスポッターを組み込むのが最も単純である可能性がある。しかし、本発明のスポッターをピンスポッターなどの接触式アレイヤーのシステムに統合できるよう、任意の種類のロボットアームおよびロボットシステムを作動できるようにしてもよい。非接触式アレイヤーのいくつかの例としては、BioDotのBioJet Quanti(商標)およびCartesian Dispensing Systems(商標)のsynQUAD(商標)がある。接触式アレイヤーのいくつか例としては、Telechem InternationalのSpotBot(登録商標)、Genomic Solutions(登録商標)のMicroGrid、GenetixのQArray(登録商標)、およびRadius Biosciencesの3XVPがある。
【0072】
本発明のスポッターを組み込んだロボットシステムは、ロボットアームを側方に回転させる必要がないという恩典を有する可能性がある。ロボットは、スポッターを上下に動かすこと、および可能性として前後に動かすことのみを必要とする。例えばピンスポッターでは、ピンを再ディップするため側方に回転させる必要がある。
【0073】
2.0 用途
2.1 マイクロアッセイ
本発明のスポッターは、個々にアドレス指定されたマイクロ流体チャネルを各々が備えたスポットを提供し、且つ、多数のスポットアレイを並列にアドレス指定することができる。一定の物質フローを長時間にわたって保つことができ、したがってスポットエリアに高密度スポットを構築することができる。この技術により、従来のスポッターで標準的な濃度が用いられた場合と比較して、はるかに強い信号を生成することが可能になる。より強い信号は信号対雑音比を上昇させ、したがってより良好なデータを収集できる。より低い濃度を本発明のスポッターで用いてもよく、それでも満足のいく結果が得られ、これは費用削減をもたらす。アレイ上で実施してもよいアッセイのいくつかの例としては、蛍光分光法、化学ルミネセンス検出、染色、他の光学的マイクロアレイ感知技術、または放射分析がある。
【0074】
本発明のスポッターを用いて2次元アレイを作ってもよい。このように本発明のスポッターは、各スポットが特異的な沈着密度となるよう個々に適合された無制限の数の規定のスポットを備えたマイクロアレイを製造するという可能性を有している。同スポッターはまた、同じスポッターを用いるかまたは複数のスポッターを用いることにより、個々のスポットを順次化学処理してもよい。同スポッターを用いてレイヤーバイレイヤー自己組織化法(LBL)を行い、スポット濃度を増加させてもよい。スポット上に流される物質を単に変更することによって、スポットエリア上で複数回の積層および洗浄を行ってもよい。さらに、スポッターを通じて適切な材料を流すことによって基質の表面を改変してもよい。物質の結合を低減させるため、BSA(ウシ血清アルブミン)などの溶液を用いて、スポッターマイクロチャネルの内壁の表面修飾を行ってもよい。例示的な態様において、スポッターは使い捨てのスポッターであり、これにより汚染の問題を解消する。
【0075】
好ましくは、スポッターは、マイクロアッセイの表面をスポッターオリフィスで密封することにより、クロストークが少なく且つバックグラウンドノイズが少ないスポットの製造を可能にする。
【0076】
例示的な態様において、比較的小さなオリフィスを有するスポッターにより比較的小さなスポットを有するマイクロアッセイが作られ、そして、より大きなオリフィスを備えた第二のスポッターを同じマイクロアレイの上に位置決めしてもよい。このことは、タンパク質などの異なるプローブがアレイ上にスポッティングされ、次にアレイ上のタンパク質の上に薬剤または化学化合物が流されるという、薬剤相互反応試験に有用である可能性がある。
【0077】
マイクロアレイは任意の数のプローブを含有していてよく、好ましくはマイクロアッセイ中のプローブの数は少なくとも 約500、1000、5,000、10,000、50,000、100,000、500,000、800,000、1,900,000、3,000,000、5,000,000、7,000,000、13,000,000、または29,000,000である。プローブなどの物質は、次のように多数の方法でマイクロアッセイ基質に固定または結合してもよい:例えばイオン力、極性力、もしくはファンデルワールス力などによる共有結合もしくは非共有結合、またはビオチン‐アビジンもしくはビオチン‐ストレプトアビジンなどの結合部分の配座的相互作用;物質またはプローブのビーズ(磁性または非磁性)への取り付け;またはその他任意の方法。物質またはプローブをまず磁性ビーズに取り付ける場合は、次に磁気引力を用いてビーズをマイクロアッセイ基質に固定してもよい。さらに、磁性ビーズを用いる場合、磁場を用いてスポッターの導管内のプローブのフローを制御してもよい。
【0078】
参照により組み入れられるChenらの米国特許第6,594,432号(「第'432号特許」)「Microarray Fabrication Techniques and Apparatus」には、プローブを基質上にスポッティングするための、シリカチューブなどの毛管の使用が開示されている。同特許は、疎水性であってもよいが適切な波長の光に露光すると親水性に変わる光感受性コーティングを備えた基質が説明されている。光を伝導できるチューブと、最初に疎水性である光感受性コーティングを備えた基質とを用いて、基質にスポッティングする前に導光性チューブを介して光を伝送してもよい。このことにより、親水性となった領域が基質上に作り出され、一方、その領域を囲む基質表面は疎水性のままとなる。次に、水などの極性溶媒中のプローブを基質上にスポッティングする。疎水性表面の領域は、基質表面上の広がりを受けないようにされてもよい。
【0079】
本発明はまた、望ましい場合には、導光性の流体経路構造を利用してもよい。導光性の 微小管およびマイクロチャネルを作る多数の方法が公知である。例えば、シリカよりわずかに低い屈折率を有するポリマーでシリカチューブをコーティングして導光性の微小管を作ってもよい。または、チューブの製造中にチューブの外面をフッ化物にドーピングしてもよく、これによりチューブの残りの部分より屈折率が低い外層が得られる。そして、流体をシリカチューブ(流体よりわずかに高い屈折率を有する)に入れたものを光の伝達に用いてもよい。例えば、製造中に、マイクロチャネルに好適なポリマーを積層し、次に再度シリカを積層してもよい。シリカ以外にも、光を伝導でき且つ半導体製造技術に適する材料がある。したがって、マイクロチャネルに任意の好適な導光性材料を積層してよい。
【0080】
2.2 細胞培養物
図9において、スポッターを用いて、生きた細胞を単独で、グループで、または基質上のヒドロゲルなどのマトリックスとして沈着させてもよく、これにより薬剤スクリーニングまたは薬剤発見などの高スループットアッセイに適した細胞のアレイが作られる。各スポットエリアが個別にアドレス指定されるのであれば、各スポットに異なる種類の細胞を沈着させること、および/または各細胞スポットを異なる化学物質でアドレス指定することができる。このことにより、均一または準均一な細胞アレイと比較して、マイクロアレイからより多くの情報が得られるようになる。さらに、細胞の供給に導管を用いることにより、オリフィスを基質に対して密封したまま細胞を維持することができる。細胞周囲の培地に溶解されたガスは、スポッターオリフィスに隣接する追加の導管を統合することによって制御してもよい。このことは、PDMSなどガス透過性が高い材料でスポッターが構成されている場合は特に有益である可能性がある[2]。細胞は、培養物の下から光学的にモニターしてもよく、またはスポッター自体に統合された導波管/ファイバーを介してモニターしてもよい。
【0081】
図11は本発明のスポッターで作った細胞培養スポットの写真である。溶液のプラグを用いて、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を500μm x 750μmのスポットとしてポリスチレン基質上に沈着させた。溶液中の細胞をオリフィスへと流し、細胞が基質に接着できるようフローを停止し、次に、スポット上に細胞増殖培地を流すことによって、結合しなかった余分の細胞を洗い流した。これらの操作は全て、スポッターを基質に押し付けたまま行った。スポッターのマイクロチャネルの内面に細胞が接着することを防ぐため、Pluronic F108 Prill Surfactant(BASF)の溶液0.63 mol/Lをマイクロチャネルに流し、1晩インキュベートした。
【0082】
細胞をスポッティングする前に、スポッターを介して、細胞培地を基質上に6 mL/時間で4分間流した。655 x 104個/mL懸濁液のCHO細胞300μLを調製し、流量3 mL/時間で8分間、シリンジポンプでスポットに送り出した。この低い流量を用いたのは、流体剪断力による細胞の損傷を防ぐためである。次に、細胞が基質に接着できるよう、フローを20分間停止した。次に、スポッターを介して細胞培地を3 mL/時間で8分間流して余分の細胞を洗い流した。細胞の乾燥を防ぐため、倒立顕微鏡で細胞を撮影する間、スポッターを表面に接触させたままにした。図11は基質上に沈着させた細胞の画像である。
【0083】
多数の細胞と基質との組合せが可能である。必要であれば、加熱コイルなどの加温装置をスポッターに組み込んでもよい。
【0084】
2.3 バイオセンサー
基質がトランスデューサであり、トランスデューサに接着される生物層がスポッターを介してトランスデューサに輸送されるようなバイオセンサーを、本発明のスポッターおよびシステムを用いて製造してもよい。さらに、本発明のシステムおよびスポッターを用いて、既存のバイオセンサーを試験するための生物分子または化学物質を投与してもよい。
【0085】
バイオセンサーは増強されたマイクロアッセイとして見ることもできる。バイオセンサーの表面はプローブのアレイである。標的化合物がバイオセンサー表面の特定のスポットにおけるプローブと反応すると、電気信号が生成され、それは表面上の特定のスポットとともに同定される。特定のスポットにおけるプローブは、多くの場合、流体溶媒中に存在する。プローブと標的化合物との反応は、反応が生じた後の反射光の強度変化を記録する光検出器によって検出してもよい。検出の別の選択肢は、プローブ周囲の流体溶媒の電気特性の変化をモニターすることである。
【0086】
バイオセンサーをより迅速且つ安価に作成および操作するためにスポッターを用いてもよい。これがどのように実現されるかという1つの実施例を、Yamazakiらの米国特許第6,699,719号(「第'719号特許」)「Biosensor Arrays and Methods」との関連において説明する。第'719号特許には、生きた細胞と類似する表面特性を備えた流体二重層膜を個々のアレイスポットが有するバイオセンサーが開示されている。このことは、T細胞、筋肉細胞、神経細胞、および精子など、様々なヒト細胞に似るように二重層膜を構築できる点で有益である可能性がある。第'719号特許には、特異的な受容体を二重層膜の中に含ませ、次に受容体を広範なリガンドに曝露して、どのリガンドがその受容体と結合するかを決定することが開示されている。第'719号特許には、アセチルコリン受容体(AChR)を少なくともいくつかの二重層膜に含ませ、次に組成が未知である溶液をバイオセンサーに流してアセチルコリン(ACh)の存在を検出するという実施例が提供されている。同様に、AChRを用いて、ACh様化合物の互換性を試験してもよい。そのような過程は薬剤発見に有用であると考えられる。
【0087】
第'719号特許には、バイオセンサーを構築するための以下の方法が開示されている。まず、チャンバーより隆起または陥凹した構造を有するように基質を改変する。チャンバーは「二重層適合性」の材料で作られている必要があり、且つ、「二重層適合性」でない「二重層隔壁」によって互いに隔てられている必要がある。所望の受容体を含有するリポソームで二重層膜を形成する。蒸発による流体の損失を防ぐため、加湿チャンバー内でリポソーム懸濁液を基質に適用しなければならない。リポソーム懸濁液は、微小滴として基質上のチャンバーに適用される。同特許では、微小滴の投与法として、改変したインクジェット印刷装置およびマイクロピペットの使用という2つの選択肢が挙げられている。次に、基質のチャンバーが充填されるがあふれ出ないとろこまで、基質の表面全体に水溶液を流す。リポソームの微小滴が広がってフィルムとなるまで、同じ水溶液の霧をチャンバーにスプレーする。次に、追加の水溶液を基質に加える。リポソーム(前述の二重層膜)を基質のチャンバー内に保つための十分な力が存在する。以上でバイオセンサーの使用準備が整う。
【0088】
本発明のスポッターは、第'719号特許に開示されているものと同様のバイオセンサーの形成を大幅に補助すると考えられる。第一に、スポッターオリフィスは基質上に置かれたときにシールを作る。したがって、シリカなど、完全に「二重層適合性」の材料で作られた平らな基質を用いてもよい。スポッターオリフィスと導管の壁とによって表面上に「チャンバー」が作られる。平らな基質を使うことによって製造工程が大幅に簡略化される。第二に、基質全体に水溶液を流す必要がない。スポッター導管により、適量の水溶液を送達することができる。第三に、水溶液を送達した同じスポッター導管で微小滴リポソーム溶液を送達してもよく、または代替として、別の導管で微小滴を送達してもよい。本発明のスポッターは、微小滴投与装置を封入するための別の加湿チャンバーを必要としないという利点を有する。スポッター導管の近位端およびリザーバへの任意の流体接続部を容易に密封して、スポッター自体の導管を加湿チャンバーに変えることができる。さらに、インクジェット、マイクロピペット、およびピンなどを基質の「チャンバー」と並べようとするうえで固有のアライメントの問題は生じない。加湿チャンバーの必要がなくなることおよびアライメントが回避されることはさらに大きな恩恵である。第四に、スポッターオリフィスと導管とにより作られたチャンバー内でリポソーム微小滴のスプレーも実現できる。オリフィスに向けられたノズルを含む導管をスポッターに組み込んでもよい。水溶液をノズルに流して微小滴の霧を生じさせてもよい。第五に、スポッター導管を介して最終的な量の水溶液を追加してもよい。
【0089】
以上で、バイオセンサーは、スポッター導管を介して送達されるリガンドなどの標的化合物を有する準備が整う。正確な組成物または未知の混合物を各「チャンバー」に流してもよい。バイオセンサー「チャンバー」は、塵または他の汚染物が存在しうるスポッター外の環境にさらされることがないため、スポッターの使用により汚染のリスクが低減する。無論、バイオセンサー形成の各段階間において、任意の必要なインキュベーション時間をスポッターとともに実現してもよい。さらに、スポッターの使用により第二および第三の段階の組合せが容易になる可能性がある。スポッターは、基質全体に水溶液を流す必要性を減じる。したがって、2段階ではなく1段階で、リポソーム微小滴を水溶液とともに基質に流せる可能性がある。さらに、必要であれば、スポッター導管の遠位端をドーピングして導管の「二重層適合性」を増大させてもよい。このことは、最終的な量の水溶液が「チャンバー」に加えられる第5段階の後、リポソームが水溶液の表面へと上昇せず、スポッター導管のドーピング領域の高さに沈んだままになるので、有益である可能性がある。
【0090】
2.4 バイオチップ
スポッターをバイオチップの単純化に用いてもよい。バイオチップとは「ラボオンチップ」を作る試みであり、マイクロ総合分析システム(μTAS)として公知である[1]。XEOTRON XEOCHIP(登録商標)は、DNAチップとも呼ばれるDNA用バイオチップの1つの実施例である[4]。XEOCHIP(登録商標)を用いて、DNAおよびRNAなどの化合物を1度に1塩基ずつ構築してもよい。例えば、30個の複製を備えた遺伝子254個のアレイをXEOCHIP(登録商標)上で作成した。XEOCHIP(登録商標)の基質は、個々のチャンバーに塩基を供給するためマイクロ管を用いる。同じ塩基が全ての個々のチャンバーに同時に流される。しかし塩基は、チャンバーが照射済みである場合のみ、成長中のDNA鎖またはRNA鎖に結合する。したがって、様々なオリゴヌクレオチドが成長中で、全てのチャンバーに同じ塩基(たとえばグアニン)が供給されたとしても、照射済みのチャンバー内にある成長中のオリゴヌクレオチドにのみグアニンが結合する。これは、照射されたチャンバー内で光酸(PGA)が形成されるためである。本発明のスポッターを用いてXEOCHIP(登録商標)の操作を単純化してもよい。
【0091】
本発明の使用によって生じうる単純化の1つは、XEOCHIP(登録商標)でチャンバーを照射する必要がなくなることである。XEOCHIP(登録商標)のチャンバーが占める面積は10セント硬貨と同程度である。このため、特定のチャンバーのみを適切に照射するのに精密なマイクロミラーシステムが必要となる。スポッターの個々のオリフィスがXEOCHIP(登録商標)の個々のチャンバーの周囲を密封するよう、本発明のスポッターのスポッター面を改変してもよい。この態様において、チャンバーを照射してPGAを形成させる代わりに、改変対象のチャンバーにのみ、従来のDMT保護ホスホラミダイト・ヌクレオシドを適切な酸とともに流してもよい。しかしこうすると、一部のチャンバーに塩基が供給されないことになる。本発明のスポッターに関する別の選択肢は、各チャンバーに適切な塩基を供給することである。したがって、オリゴヌクレオチドが成長しないときが存在しない(無論、オリゴヌクレオチドが完成している場合を除く)。この態様では、ミラーの必要性がなくなるばかりでなく、1つのチャンバーに塩基が供給されるが他のチャンバーに供給されないというときがないためオリゴヌクレオチドがより迅速に成長する可能性がある。
【0092】
さらに、いったんオリゴヌクレオチドが成長したら、スポッターを介して任意の所望の標的化合物をオリゴヌクレオチドの上に流してもよい。したがって、同じオリゴヌクレオチドの複製物に対して、異なる標的化合物を同時に供給することができる。または、全てのオリゴヌクレオチドに同じ標的化合物を供給してもよい。スポッターをオリゴヌクレオチドの成長に使用し、それに続く試験には使用しなくてもよい。または、オリゴヌクレオチドの成長および試験の両方にスポッターを使用してもよい。
【0093】
本発明のスポッターはまた、ヌクレオチドの成長をさらに単純化するために用いてもよい。XEOCHIP(登録商標)ではマイクロ管およびチャンバーで複雑な基質を形成する必要がある。本発明のスポッターを用いて、前述の様式で、ただしより複雑度の低い基質(スライドガラスなど)の上で、オリゴヌクレオチドを成長させてもよい。マイクロ管およびチャンバーにより提供される機能は、本発明のスポッターで実現することができる。
【0094】
2.5 その他の基質
基質は、プローブが結合できる任意の材料で形成してよい。多孔質または非多孔質の基質を用いてよい。同様に、可撓性または剛性の基質も用いてよい。好ましい基質材料は、シリカ、ガラス、金属、プラスチック、およびポリマーである。
【0095】
ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの固定化用としてガラスは好ましい材料である。なぜなら、ポリヌクレオチドおよびポリペプチドは処理済ガラス表面に共有結合で取り付けることができ、且つ、ガラスが発する蛍光ノイズ信号はごくわずかであるからである。ガラスは、別の材料に積層してもよく、コア材料もしくはベース材料であってもよく、またはその両方であってもよい。基質の別の実施例としては、シリカのコーティングを伴う、ベース基質としてのプラスチックまたはポリマーのテープなどがある。さらに、テープのシリカ層の反対側に、またはシリカ層とポリマーまたはプラスチックとの間に挟んで、金属材料の追加の層を加えてもよい。
【0096】
スポッター導管およびオリフィスはまた、図8Cに示すオリフィスおよびマイクロチャネルなどによって、基質上に構造を成形するように設計されていてもよい。
【0097】
3.0 沈着密度の試験
ストレプトアビジン/金でコーティングした基質に沈着させたビオチン標識タンパク質で第一の試験を行った。このタンパク質の吸着密度を表面プラズモン共鳴(SPR)で測定し、Genetix QArray Miniピンスポッターで生成した変動溶液濃度曲線と比較した。その結果によれば(図12に示す)、本発明のスポッターを循環させた0.15μg/mLの溶液は、ピンスポッティングした13μg/mLの溶液と同じ結果をもたらした。これは86倍(8500%)の増加である。これらの試験で用いた手順を以下に詳しく示す。
【0098】
プロテインA(ImmunoPure Protein A、カタログ番号21181、Pierce Inc.)をビオチン(EZ-Link Sulfo-NHS-Biotin、カタログ番号21217、Pierce Inc.)でビオチン標識して、表面プラズモン共鳴(SPR)ストレプトアビジン・金チップ(8500ストレプトアビジン親和性チップ、パーツ番号4346388、AB)に対する特異的接着性をもたせた。このタンパク質溶液を0.1X PBS緩衝液(0.19 mM NaH2PO4、0.81 mM Na2HPO4、pH 7.4、15 mM NaCl)で濃度0.15μg/mLに希釈し、非特異的接着を防ぐため100μg/mL BSAを添加した。チップ表面に溶液を再循環させるため、プロテインA溶液200μLをPhynexus MicroExtractor 100シリンジポンプに装填し、スポッターを介して75μL/分で1時間にわたって連続的に前後に流した。次に、0.1X PBS 800μLとBSA 100μg/mLを用いて洗浄の段階を行った。最後に、アセンブリを通して空気を抜くことによって表面から試料を除去し、チップを水で洗浄した。連続流による固定化の結果を比較するため、固体ピンスポッティングも用いて同じチップ上にプロテインAを固定化した。連続流送達試験で用いた濃度と同じ濃度(0.15μg/mL)の試料をチップ全体にスポッティングした。2セットのスポットに結合させたことにより、2つの固定化法の感度を比較することができた。固体ピンスポッティングはGenetix QArray Miniスポッターを用いて行った。タンパク質濃度を段階的に上昇させた系列を、ピンスポッターを用いて沈着させ、沈着したプロテインA濃度に対するSPR反応の検量線を生成した。この検量線を用いてスポッターの当量濃度を計算し、沈着密度のファクター増加を決定した。
【0099】
第二の試験は、銅線の鋳型の周囲にPDMSチャネルを注型することによって製造したマイクロスケールの単オリフィススポッターで行った。鋳型のワイヤの端をPDMSの2 mm x 2 mm立方体に挿入することによってスポットエリアを規定した。得られた、より大きなサイズのスポットは、入手できる蛍光試験装置と適合性があった。図2、17、および18を参照されたい。2μg/Lの蛍光色素溶液をスライドガラス上に2 mL/時間で60分間循環させて、合計2 mLの溶液から沈着を生じさせた。以前の技術をシミュレートするため、3μLの同じ溶液をスライドガラスに滴下して乾燥し、スポッターと同じ面積のスポットを形成した。
【0100】
マイクロスケールのスポッターシステムと既存の沈着技術とを比較したところ、図13に示すように、本発明のスポッターにより、典型的なピンスポッターシステムと比較して沈着密度が約5倍上昇していた。図13の棒グラフの誤差バーは、そのデータセットの1標準偏差を示す。図13の差込みグラフは各試験試料のスペクトログラフを示す。この差込みグラフの最も重要なデータは614 nm(蛍光出力の中央)の部分である。これらの全てに表れているピークは、フィルタリングされなかった励起光ピークの残りである。図14は図13の差込みグラフを正規化したものである。
【0101】
4.0 製造
スポッターは、スポッターに流される物質と適合する製造方法に適した任意の材料で製造してよく、そのような材料としては、ケイ素;シリカ;ポリジメチルシロキサン(PDMS);ヒ化ガリウム;ガラス;セラミック;石英;ネオプレン、Teflon(商標)、ポリエチレンエラストマー、ポリブタジエン/SBR、ニトリル、ナイロンなどのポリマー;金属;スポッターに流される物質と適合するその他任意の材料;およびこれらの組合せなどがある。スポッターのマイクロチャネル内への物質の結合を低減するため、流される物質との親和性が低い材料でスポッターを構築することが望ましい可能性がある。さらに、流される物質と導管自体との間の親和性を低減するため、導管の内径を好適な材料でコーティングしてもよい。
【0102】
本発明のスポッターは多数の方法で製造してよい。スポッターは、例えば好適な材料のウェーハを洗浄する;必要であればウェーハをプライミングする;注型、成形、酸化、沈着またはその他任意の好適な方法によりウェーハに材料を加える;機械加工、研削、エッチング、または他の何らかの好適な方法により材料を減じるなどによって製造してもよい。改変したウェーハに追加のウェーハを接着してもよい。スポッターを製造するため、必要に応じて追加の材料を加えるもしくは減じてもよく、または必要に応じて追加のウェーハおよび材料の組合せを加えてもよい。さらに、前述の各段階を、必要な任意の順序で実施してよい。
【0103】
さらなる製造方法もまた可能である。例えば、半導体製造方法を用いるのではなくステンレス鋼マイクロワイヤの鋳型を用いてもよい。適切な材料をセットした後、マイクロワイヤを除去し、こうして得られる空隙によってマイクロチャネルを形成してもよい。
【0104】
または、鋳型を用いてスポッター面を形成してもよく、次に成形したスポッター面の背面に微小管を接合してもよい。このことは、スポッター面を作るのに用いた物質を硬化させる前に微小管を挿入するとうまくゆく可能性がある。
【0105】
さらに、ほぼ完全に微小管からスポッターを製造してもよい。本発明の微小管を作成、改変、および連結するため、シリカとのみでなく、他のチューブ材料とともに用いることができる、広範な種々の半導体製造技術が当技術分野において公知である。シリカをエッチングするための1つの技術は、ゲルマニウムでドーピングしたシリカチューブの部分は、ドーピングしていない領域より速くエッチングされるということである。したがって、適切な領域をドーピングしたチューブをエッチングし、必要であれば所望の様式に連結してもよい。輪状の態様における微小管はエッチングを全く必要としない可能性があり、代わりに、狭い微小管がより大きな微小管の内側に固定される。
【0106】
以下に、標準的な半導体製造技術を用いたいくつかの製造実施例を示す。
【0107】
4.1 実施例I
4.1.1 概要
実施例Iを実施して4オリフィススポッターを形成した。実施した製造過程は、SU-8鋳型の製造および準備;PDMSの注型および硬化;流体ポートの穿孔;PDMSスラブによるチャネル密封;鋭利な刃によるスポッター面の切断という5つの主な段階に分けることができる。SU-8鋳型の形成も含め、この態様の全製造過程は完了まで約10時間を要した。
【0108】
リソグラフでパターン形成したSU-8鋳型からPDMSチャネルを注型することによって、100μmサイズのチャネル4つの線形アレイを製造した[3]。マイクロチャネルが鋳型から出されたらすぐに、酸素プラズマを用いてPDMSのスラブで密封した。改変した20ゲージ注射針でマイクロチャネル基質にポートを穿孔し、この穿孔した孔に改変していない針を挿入することによって、パッケージングを実現した。マイクロチャネルを各オリフィスとペアになるように配列し、各ペアが特定の位置で交差するようにした。マイクロチャネルペアの交点を通ってPDMSを劈開し、マイクロチャネルのペアに接続されたオリフィスを劈開面に作ることによって、各スポットエリアを規定した。全ての交点を直線上に配列したので、1回の切断によって1つの劈開面に全てのスポットを開口させ、これによって線形アレイを得た。次に、劈開したスポット面を沈着基質に押し付けてもよく、すると、劈開面上のオリフィスの断面がスポット沈着エリアを規定する。より詳細な説明を以下に示す。
【0109】
4.1.2 SU-8鋳型の製造および準備
SU-8鋳型をフォトリソグラフィによって構築した。高解像度プリンター(Lithopointe)を用いて、鋳型の前にエマルジョンマスクを製造し、そのまま鋳型製造過程に使用した。流体マイクロチャネルを、各マイクロチャネルの1つの端が出口ポートにつながり、他の端がオリフィス部でそれとペアになるマイクロチャネルと連結するように、ペアにしてマスク上に並べた。全てのマイクロチャネルは幅が100μmで、交差部のオリフィスの幅も100μmであった。単純にマスク設計を変更することにより、狭窄および乱流インデューサーなどのバリエーションをオリフィス付近に容易に作ることができる。4つのスポットを、各スポッティングポートを500μmの間隔で隔てて直線に配列した。出口ポートにつながるマイクロチャネルの他の端は、パッケージングを容易にするため、5 mm間隔とした。わかりやすくするため、図15、19、20および22〜24には単オリフィスの態様のみを示した。
【0110】
76.2 mmの片面研磨シリコンウェーハをSU-8鋳型用の基質として使用した。表面から水を除き接着を向上させるため、ウェーハを95℃で10分間予熱した。ウェーハが冷えたら、SU-8 50(Microchem)を1300 rpmで60秒間回転させて100μm厚の層を得た。図19を参照されたい。ウェーハを65℃で3分間、95℃で2時間ソフトベークして、可能な限り多くのフォトレジスト溶媒を硬化させた。このマイクロチャネル構造の縦横比は1:1であった。ソフトベーク処理の後、露光準備としてウェーハを冷却した。
【0111】
ウェーハの露光は365 nm 光源アライナ(EVG)上で行ったが、エマルジョンマスクの使用を可能にするため露光過程を変更する必要があった。エマルジョン側がSU-8に向くようにマスクをウェーハのほぼ中心に直接乗せ、101.6 mmのガラスプレートで覆った。図7を参照されたい。次にウェーハをアライナに挿入し、430 mJ/cm2の線量で露光した。露光後ベークを65℃で3分間、95℃で15分間行って、露光したレジストの架橋を完了させた。ウェーハを酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGMEA)(Microchem)で20分間浸漬現像し、イソプロピルアルコール中で洗浄し、窒素噴霧で乾燥させた。
【0112】
シリコンウェーハは通常、表面に薄い天然の酸化層を有し、ここにPDMSが強力に接着して、鋳型からの注型物の取り出しを妨げる。これを防ぐため、フルオロシラン化剤である(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン(Gelest)を用いて、天然酸化層をフッ化炭化水素層でコーティングした。図21を参照されたい。ウェーハを入れた真空チャンバー内で2時間、フルオロシランを蒸発させて、制御された速度で表面反応を生じさせるとともに単分子表面層を形成させた。シラン基は酸化層に優先的に結合し、残留したフッ化炭化水素がウェーハ表面から突出するように残るため、PDMSの接着が防がれる。マイクロチャネルのカバースラブの鋳型を得るため、SU-8鋳型とともに76.2 mmのブランクウェーハもコーティングした。
【0113】
4.1.3 PDMSの注型および硬化
PDMSは供給業者(Dow Corning)から入手したままの状態で、且つ指示に従って使用した。原樹脂40 mLを、体積比10:1で硬化剤と混合し、十分混合した。プレポリマー混合物を真空中に1時間置いて気泡を全て除去し、次に、各鋳型用に2等分した。プレポリマーを各ウェーハ上に流し、均一になるまで放置した。次に、ウェーハを真空中に1時間置いて、鋳型とプレポリマーとの間にトラップされた気泡を除去した。鋳型から空気が全て抜けたら、65℃のオーブンに2時間入れて硬化させた。硬化完了後ただちに、注型物を鋳型から剥がし、イソプロピルアルコール中で洗浄して、窒素噴霧で乾燥させた。図22を参照されたい。
【0114】
4.1.4 流体ポートの穿孔
ポート穿孔処理中の塵汚染を防ぐため、密封した容器内にPDMSカバースラブを置いた。注型物のマイクロチャネル側から、PDMSマイクロチャネルスラブにポートを切り込み、これにより、マイクロチャネルの孔とのアライメントを容易にした。穿孔処理は、鋭利且つ斜角の刃先を形成するように先端を改変した20ゲージ注射針を用いて行った。図23を参照されたい。この刃先により、穿孔ツールはPDMSにきれいに切り込むことができ、スラブのマイクロチャネル面から外面まで、針の内径(0.58 mm)とほぼ同じ直径の円筒形の孔を形成することができた。既存の流体システムをこのマイクロチャネルに接続するため、改変していない20ゲージ針をこの孔に挿入し、適切なLUER(商標)接続を針に設けた。針とPDMSとの間の密封は、針のより大きな外径(0.91 mm)の周囲を孔のより小さな直径(0.58 mm)が圧迫することによる、純粋に機械的なものである。この流体接続はきわめて強力であることが実証されており、過酷な機械的衝撃および取り扱い、ならびに針の複数回の挿入および除去にも耐えられる。マイクロチャネルを密封する前に、酸素プラズマチャンバー内にPDMSスラブを水平に置いて表面処理を行うため、針接続を除去した。
【0115】
4.1.5 チャネルの密封
PDMSマイクロチャネル注型物とPDMSカバースラブとの間にハーメチックシールを形成するため、酸素プラズマを用いてシール表面上に薄い二酸化ケイ素層を形成した。図24を参照されたい。酸化した表面を一緒に1回プレスしてただちにハーメチックシールを形成し、これによりマイクロチャネルを効果的に密封した。しかし、この表面処理は、PDMS注型物を鋳型から剥がしてから数時間以内に行わなければならない。酸素プラズマチャンバーに入れる直前に、両方のPDMS注型物を再度イソプロピルアルコール中で洗浄し、窒素噴霧で乾燥させた。酸素プラズマを、パワー125W RF、チャンバー圧300ミリTorr、純酸素75 sccmで45秒間行った。チャンバーから取り出し後数秒以内に、酸化したPDMS表面をアライメントし一緒にプレスして、マイクロチャネルを密封した。スラブの完全な密封を確実にするため、一緒にクランプし室温で2日間放置した。密封処理完了後、スポッター面切断の準備として鋭利な刃でスラブをトリミングした。
【0116】
4.1.6 スポッター面の切断
スポッター面は、流体マイクロチャネルのペア間の交点の断面により規定される。4つの交点を全て1度に劈開し、得られる4つのスポットが単一の面上に形成されるよう、4ペアのマイクロチャネルの交点を直線に並べた。図15を参照されたい。切断のアライメントを容易にするため、マイクロチャネルペアの交差端を伸ばして、長さ約2 mmの単一の100μm x 100μmのチャネルにした。スポット面における死空間を最小限にするため、交点のできるだけ近くでマイクロチャネルに切断を行った。この切断の正確な配置は、複数のスポッターでスポッター面の配置を反復できるようにするためのアライメントされた刃を用いれば精密に制御することが可能であった。スポッター面が切断されたら、注射針の流体接続を元に戻すことによってスポッターの使用準備を整えた。
【0117】
4.1.7 スポッターの作動
スポッターのこの態様を作動させるには、スポッター面が流体シールを形成できるよう、スポッティングされる表面が比較的きれいで滑らかであることが必要とされる。次に、必要とされるエリアにスポッター面を押し付け、流体が流れる時間にわたって保持する。図3を参照されたい。各マイクロチャネルペアは、流体入出力ラインへの流体接続ポートで接続している。新鮮なまたは再循環した流体が流体インレットへと送り込まれ、同時に廃棄/余剰分の流体が外へと送り出される。流量沈着が大きい場合は、スポッターへの流体の注入のみを用いた場合に生じうるリークを、スポッターへの流体の注入および引き出しによって防ぐことができる。スポットエリア上における複数回の積層および洗浄は、単純にスポット上に流される流体を変更することによって実施できる。さらに、単純にスポッター面を表面ポートアレイに押し付けることによって、このスポッターを用いて他のマイクロ流体システムに流体を装填することもできる。材料の蓄積を低減するため、BSA(ウシ血清アルブミン)などの溶液を用いてマイクロチャネルの内壁の表面修飾を容易に行うことができる。しかし、このスポッターは使い捨てにできるほど十分に安く作ることができ、これにより汚染の問題を解消する。
【0118】
4.2 実施例II
スポッター製造は3段階の過程であってもよい。第一に、PDMS(またはその他任意の好適な物質)を用いて鋳型(リソグラフィによって規定した鋳型など)上に膜を形成する。鋳型上の突起を用いてスポッティング孔を規定する。この段階によってスポッター面が作られる。第二に、流体相互接続部に接続するため、マイクロチャネルを第二の鋳型上で形成する。第三に、マイクロチャネル層をスポッター面の背面に接着する。スポッター面およびマイクロチャネル層の両方を同時に鋳型から剥がす。
【0119】
この膜成形過程により滑らかな下面が得られ、したがって、基質が滑らかな場合にスポッターと基質との間の流体シールが容易になる。各スポット上への流体流は個々に制御され、スポットの形状、数、および配列は必要に応じてカスタム化できる。マイクロ総合分析システム、バイオセンサー、およびトランスデューサなど、平らでない基質に対してスポッター面をシールできるように鋳型を適合してもよい。
【0120】
スポッター面とスポッター導管とは、実施例Iのように同時に形成してもよく、または実施例IIのように別々に形成してもよい。いずれの方法においても、各部品は、キャストから成形してもよく、リソグラフィによって形成してもよく、または他の何らかの方法によって形成してもよい。
【0121】
刊行物、特許、および特許出願を含む、本明細書に引用されている全ての参考文献は、個々の参考文献が参照により組み入れられるものとして個別且つ具体的に示され且つその全内容が本明細書に述べられた場合と同程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
【0122】
以上に詳細な開示を行ったが、前述の技術および態様は添付の特許請求の範囲によってさらに完全に説明され、本発明も添付の特許請求の範囲によって記述される。当業者には、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、前述の技術および態様に対して多数且つ様々な変更を行いうることが明らかである。したがって、本発明は特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0123】
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】単オリフィススポッターの図である。
【図2】単オリフィススポッターの図である。
【図3】単オリフィススポッターの図である。
【図4】多オリフィススポッターの図である。
【図5】多オリフィススポッターの図である。
【図6】多オリフィススポッターの図である。
【図7】多インレットスポッター、およびスポッターの輪状の態様の断面を示した図である。
【図8A】増強混合羽根を供えたマイクロチャネルの図である。
【図8B】増強混合ステップを供えたマイクロチャネルの図である。
【図8C】側方インジェクターと垂直ベントとを備えたプリズム鋳型を形成するマイクロチャネルの図である。
【図9】細胞培養物をスポッティングおよび維持するためのスポッターの図である。
【図10】可撓性の膜を備えるスポッターの図である。
【図11】スポッターで作った細胞スポットの図である。
【図12】本発明のスポッターによる沈着密度をピンスポッターと比較したグラフである。
【図13】スポッターで沈着させた色素とピペットで沈着させた色素とを比較した2つのグラフである。
【図14】図13の差込みグラフを正規化したものである。
【図15】スポッター面の切断の方法を示した図である。フォトリソグラフィーによりスポッターを形成する多数の方法のうち1つを示したものである。
【図16】本発明のスポッターで作ったアレイの図である。
【図17】スライドガラス上に色素溶液の沈着を行っている単オリフィススポッターの図である。
【図18】オリフィスを示した、スポッターの1つの実施例の等角図である。
【図19】ウェーハ上へのフォトレジストのスピンコーティングを示した図である。フォトリソグラフィーによりスポッターを形成する多数の方法のうち1つを示したものである。
【図20】フォトレジストの露光を示した図である。フォトリソグラフィーによりスポッターを形成する多数の方法のうち1つを示したものである。
【図21】鋳型の表面修飾を示した図である。フォトリソグラフィーによりスポッターを形成する多数の方法のうち1つを示したものである。
【図22】鋳型から注型物を取り外す実施例である。フォトリソグラフィーによりスポッターを形成する多数の方法のうち1つを示したものである。
【図23】流体ポートを穿孔する1つの方法を示した図である。フォトリソグラフィーによりスポッターを形成する多数の方法のうち1つを示したものである。
【図24】チャネル密封の方法を示した図である。フォトリソグラフィーによりスポッターを形成する多数の方法のうち1つを示したものである。
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は該して生物工学に関し、より具体的には、マイクロアッセイ、バイオチップ、およびバイオセンサーの作製に関する。本発明は特に、基質上に物質を沈着させるためのマイクロ流体チャネルのシステムを包含する。
【0002】
優先権の主張
本願は、35 USC.§119(e)の下、2004年7月6日に提出されその全内容が参照により組み入れられる米国特許仮出願第60/585,697号の恩典を主張する。
【背景技術】
【0003】
背景
近年、多数の生物学的/化学的分析技法が、マイクロスケールシステムを用いて実証されており、且つ、微細加工技術を用いて実現されている。分析機器にマイクロスケール技術を用いることの理論的根拠としては、機器のサイズおよび費用が縮小する、試料および試薬の量が減少する、分析時間が短縮する、分析スループットが向上する、ならびに試料調製と分析機能とを統合できる可能性がある、などがある。
【0004】
現在は、GENETIX QARRAY(登録商標)などのロボット型スポッターシステムを用いて高スポット密度アレイが作られている。現在の技術の1つでは、沈着させる材料を針の上に集めるスポッティング「ペン」を使い、次にその材料を基質上に「スポッティング」する。例えばYamamotoらの米国特許第6,733,968号(特許文献1)(「第'968号特許」)「Microarray, Method for Producing the Same, and Method for Correcting Inter-Pin Spotting Amount Error of the Same」を参照されたい。第'968号特許の記載によれば、複数の「ペン」を使用してアレイを作製する場合、全ての「ペン」が顕微鏡的に同じサイズというわけではなく、したがって各「ペン」がブロットする溶液の量は異なる。同特許には、誤差を数学的に考慮に入れることができるよう、任意の「ペン」のセットに対する誤差を決定する方法が開示されている。
【0005】
Moynihanらの米国特許第6,365,349号(特許文献2)「Apparatus and Methods for Arraying Solution onto a Solid Support」には、基質上に試料を施すための、ばねプローブの使用が開示されている。
【0006】
「ペン」の使用と類似するのは毛管の使用である。例えば、Chenらの米国特許出願第20040014102号(特許文献3)「High Density Parallel Printing of Microarrays」を参照されたい。同出願には、マイクロアレイ上に試料をスポッティングするための毛管の使用が開示されている。Chenらの米国特許第6,594,432号(特許文献4)(「第'432号特許」)「Microarray Fabrication Techniques and Apparatus」にも、プローブを基質上にスポッティングするための、シリカチューブなどの毛管の使用が開示されている。第'432号特許において、毛管の1つの端はリザーバに取り付けられていてもよいが、スポッティングされた物質が戻るための経路はなく、したがって、スポット沈着密度を高めるために基質上に物質をフローさせる方法はない。したがって、第'432号特許の毛管現象は、ペンによるものと類似している。さらなる例については、指定された量の試料材料を基質上に送達するため毛管の端のメニスカスをタッピングする方法を開示した、Shalonらの米国特許第6,110,426号(特許文献5)「Methods for Fabricating Microarrays of Biological Samples」を参照されたい。
【0007】
先行技術のシステムは、所望の沈着用分子が非常に低濃度で存在している場合には、制御されたサイズの複数のスポットを作ることができるが、所望の分子が単一のスポットについて表面上に沈着されうる総数は厳しく制限される。スポット中の材料の濃度は、もともとの材料の濃度およびスポットサイズにより制限される。Perkin-Elmer BIOCHIP ARRAYER(登録商標)は、「インクジェット印刷」技術を用いているが、この方法も「ペン」と同じ濃度制限を有する。
【0008】
この他、基質上のマイクロ流体チャネルを用いて、遺伝子、タンパク質、核酸(RNA、DNA、オリゴ核酸など)をパターン形成するシステムも開発されている。そのようなシステムの例としては、Goldらの米国特許第6,503,715号(特許文献6)「Nucleic Acid Ligand Diagnostic Biochip」を参照されたい。個々のマイクロアッセイスポットを撹拌することを試みたバイオチップ製造方法が開発されているが、そのようなシステムはバイオチップの機械的操作を要することが多い。例えば、反応時間を早めるためのバイオチップの回転を開示したKimらの米国特許第6,623,696号(特許文献7)「Biochip, Apparatus for Detecting Biomaterials Using the Same, and Method Therefor」を参照されたい。バイオチップおよびバイオセンサーの開発過程を単純化すること、ならびにバイオチップおよびバイオセンサー上の個々のスポットについてさらに制御を可能にすることへの需要が存在する。
【0009】
理想的には、フロー沈着システムは、所望の分子とのみ接着するように基質表面が調整されているのであれば、高い表面密度をもたらすことができ、不要なバルク材料を洗い流すことを可能にする。しかし、一般的にフロー沈着システムはスポットアレイを作ることができず、個々にアドレス指定されたアレイを作ることはなおさらできない。例えばTomokoらの日本特許出願第10084639号(特許文献8)「Method and Apparatus for Adding Sample」を参照されたい。同出願には、バイオチップを回転させ、遠心力を用いてバイオチップの表面全体に試料を均一に広げるという方法が開示されている。同様に、Parkらの米国特許第6,391,625号(特許文献9)「Biochip and Method for Patterning and Measuring Biomaterial of the Same」には、基質の一部分にレーザーを照射し、次に基質上にプローブ分子をスピンコーティングすることによってバイオチップを作る方法が開示されている。
【0010】
さらに、現在の技術では、個々のスポットを順次化学処理すること、またはレイヤーバイレイヤー自己組織化法(LBL)を行ってスポット濃度を増加させることができない。必要とされているのは、溶液中の分子を取り出して高濃度のそれら分子を基質に付着させる方法である。このことはタンパク質機能の研究に特に有利となると考えられる。
【0011】
さらに、マイクロアレイ式の構造はバイオセンサーの形成にも用いられており、バイオチップに関連するものと同じ問題がバイオセンサーにも当てはまる。例えば、バイオセンサーの形成におけるマイクロアレイ形成技術の利用を開示したYamazakiらの米国特許第6,699,719号(特許文献10)「Biosensor Arrays and Methods」を参照されたい。バイオセンサーの作製を単純化することへの需要が存在している。
【0012】
マイクロアレイの処理に関連する費用および時間を減少させることへの需要も存在している。この需要に対処する試みも行われており、例えば、組立ラインの様式で処理されるマイクロアレイのリニアストリップ(linear strip)によってマイクロアレイ処理を自動化する方法を開示したBassらの米国特許出願第2003/0068253 A1号(特許文献11)「Automation-Optimized Microarray Package」を参照されたい。
【0013】
【特許文献1】米国特許第6,733,968号
【特許文献2】米国特許第6,365,349号
【特許文献3】米国特許出願第20040014102号
【特許文献4】米国特許第6,594,432号
【特許文献5】米国特許第6,110,426号
【特許文献6】米国特許第6,503,715号
【特許文献7】米国特許第6,623,696号
【特許文献8】日本特許出願第10084639号
【特許文献9】米国特許第6,391,625号
【特許文献10】米国特許第6,699,719号
【特許文献11】米国特許出願第2003/0068253 A1号
【発明の開示】
【0014】
本発明の開示
個々にアドレス指定された高濃度スポットを備えるマイクロアレイの表面をパターン形成できるスポッター、ならびに同スポッターを使用および製造する方法を開示する。このスポッターは、高密度のスポットが作製されるまで、所望の物質(プローブおよび/または標的化合物など)のフローをスポットエリア上に誘導することによって、各スポットの表面密度を増大させる。表面上に流してもよいプローブの例としては、タンパク質;デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を含む核酸;細胞;ペプチド;レクチン;修飾多糖;合成複合体高分子;機能性ナノ構造;合成ポリマー;修飾/ブロックされたヌクレオチド/ヌクレオシド;合成オリゴヌクレオチド;修飾/ブロックされたアミノ酸;蛍光体;発色団;リガンド;キレート;ハプテン;薬剤化合物;抗体;糖;脂質;リポソーム;組織;ウイルス;その他任意のナノまたはマイクロスケールの物体;およびこれらの任意の組合せがある。物質は、マイクロアレイ基質の表面上を流れる際に、そのシステムに関連する化学特性に応じて基質の表面に結合または吸着してもよい。
【0015】
スポッター内の導管(コンジット)(マイクロチャネルおよび/または微小管など)を用いて、基質上のスポット沈着エリアへと、および同エリアから物質を導き、このとき、マイクロチャネルまたは微小管を通るフローが、特定の領域において高い表面濃度をもたらす。各沈着領域はそれ自体のマイクロ流体チャネルによって個別にアドレス指定されてもよく、マイクロ流体チャネルは、多数の沈着領域を並列にアドレス指定できるように組み付けられていてもよい。マイクロ流体チャネルのオリフィスは、マイクロ流体チャネル中の溶液が基質表面に接触するよう、基質表面とともにシールを形成するように適合され、これにより、溶液中の物質を基質表面上に沈着させることを可能にする。溶液は、第一の導管のインレットへと注入され、オリフィスにつながる第一のマイクロ流体チャネルを介して沈着スポットエリアへと流され、そして第二の導管を通って流し出されてもよい。
【0016】
1つの態様において、第一および第二の導管は同じリザーバに接続されていてもよく、これにより、その中に含有されている溶液および任意の溶質の再循環が可能となる。
【0017】
別の態様において、マイクロ流体チャネルの第一の導管は第一のリザーバに接続され、マイクロ流体チャネルの第二の導管は第二のリザーバに接続される。各マイクロ流体チャネルの第一の導管が共通の第一のリザーバに接続され、各マイクロ流体チャネルの第二の導管が共通の第二のリザーバに接続されるように、複数のマイクロ流体チャネルが構成されていてもよい。別の態様において、マイクロ流体チャネルの第一および第二の導管の各々は、別の第一および第二のリザーバに接続される。
【0018】
1つの態様において、表面への沈着を促進するため、沈着されるべき物質を含有する溶液の一定の流体フローが長時間にわたって維持され、これにより高密度のスポットを形成する。この態様は、表面への溶質の結合効率低下をユーザーが制御することを可能にし、これにより、はるかに高い信号を有するアレイを形成することを可能にする(例えば、蛍光、化学ルミネセンス、染色、他の光学的マイクロアレイ感知技術、または放射分析を用いる場合)。別の態様において、個別にアドレス指定された沈着部位(スポット)を表面上に生じさせることができるプリントヘッドをもたらすため、1 cm2あたり少なくとも10個のマイクロ流体チャネルが構成される。スポットが2次元配列であることは、各スポットエリアが表面上に任意に(必ずしも格子状の構成でなくてもよい)または非任意に配置された状態で、無制限の数のスポット上に異なる沈着材料で同時に沈着を形成できること、ならびに、各スポットエリアのサイズおよび/または形状が異なっていてもまたは同じであってもよいことを意味する。
【0019】
別の態様において、温度調節要素またはガス拡散要素が1つまたは複数のマイクロ流体経路に接触するように適合され、且つ、これを用いて表面付近の溶液の温度を制御してもよい。さらに別の態様において、フローチャネル(例、マイクロ流体経路)は、表面沈着を対流によって増強するため、ボルテックスインデューサー(vortex inducer)などの流体混合構造をスポットエリア上に組み込んでいてもよい。
【0020】
別の態様において、スポッターを用いて、沈着部位のアセンブリにおいてレイヤーバイレイヤー自己組織化(LBL)を行ってもよい。例えば、スポット上に流す溶液(溶質)を単純に変更することによって、物質(同じ物質かまたは異なる物質のいずれか)の複数の層を生じさせてもよい。1つの態様において、第一の層に核酸が沈着され、第二の層または段階にDNA結合タンパク質が沈着される。別の態様において、スポッターを介して適切な材料を流し基質の表面に接触させることによって、同表面を改変してもよい。スポッターおよびマイクロ流体経路は多数の材料で製造されてもよく、したがって製造材料は、好ましくは、スポッターに流される溶液またはスポッターの作動に関連して用いられる溶液と非反応性である。
【0021】
本明細書に開示するシステムによって作られるスポットアレイは、続いてマイクロ総合分析システム(μTAS)[1]に包埋される表面に適応してもよい。μTASは、マイクロチャネルにより精密に制御される流体にアレイを曝露することを可能にする。遺伝子、タンパク質、核酸(例:RNA、DNA、ポリ核酸)、または他の物質(例:細胞、脂質、糖、およびアレイ形式に組み付けられた他の生体分子)をパターン形成するために基質上のマイクロチャネルを用いるそのようなシステムは、代わりにスポッターとともに作動するように適合してもよい。この態様により、基質中にマイクロ管(microcanal)を構築する必要がなくなり、したがって、製造過程が大幅に単純化されるとともに全体的な費用が低下する。スポッターを用いて他のマイクロ流体システムに流体を装填してもよく、これは単純にスポッター面を表面ポートアレイに押し付けることによって行ってもよい。スポッターはまた、バイオセンサーの構築および試験に用いてもよい。スポッターはまた、細胞培養物の沈着、成長、および維持に用いてもよい。
【0022】
スポッターはまた、例えば表面に構造が組み込まれた基質など、基質上の平らでない表面とともに用いてもよい。スポッターは、多孔質または非多孔質である剛性または可撓性の基質と接合するように設計されていてもよい。基質は、当技術分野において公知の任意の数の材料で作られていてもよい。スポッター面は、種々の任意の基質と接合するよう必要に応じて改変してもよい。
【0023】
スポットのサイズおよび幾何学形状は、スポッターの製造中にオリフィスのサイズおよび幾何学形状を変えることによって変化させてもよい。スポット条件はスポッターの設計に応じて変化してもよい。例えばオリフィスは、狭窄および乱流インデューサー(turbulence inducer)を含むよう、製造中に変えてもよい。スポッター内のフローは、例えば圧力流、動電、重力流、浸透圧、またはこれらの組合せなど、多数の方法により制御してもよい。
【0024】
スポッターは、スポッター内に流される物質と適合する任意の好適な材料で製造してよく、材料の例としては、ケイ素;シリカ;ポリジメチルシロキサン(PDMS);ヒ化ガリウム;ガラス;セラミック;石英;ネオプレン、Teflon(商標)、ポリエチレンエラストマー、ポリブタジエン/SBR、ニトリル、ナイロンなどのポリマー;金属;およびこれらの組合せなどがあるが、それに限定されるわけではない。流される物質(例:溶質)との親和性が低い材料でスポッターを構築し、これにより、スポッターのマイクロチャネル内への物質の結合を低減することが望ましい可能性がある。さらに、流される物質と導管自体との間の親和性を低減するため、導管の内径を好適な材料でコーティングしてもよい。
【0025】
スポッターは、例えば好適な材料のウェーハを洗浄する;必要であればウェーハをプライミングする;注型、成形、酸化、沈着またはその他任意の好適な方法によりウェーハに材料を加える;機械加工、研削、エッチング、または他の何らかの好適な方法により材料を減じるなど、多数の方法で製造できる。任意で、スポッターを製造するため、第一のウェーハに追加のウェーハを接着してもよく、且つ必要に応じて追加の材料を加えるもしくは減じてもよく、または必要に応じて追加のウェーハおよび材料の組合せを加えてもよい。当業者に理解されるであろうとおり、各製造段階は、所望のスポッターを作るのに必要な任意の順序で実施してよい。
【0026】
さらなる製造方法もまた可能であり、例えば、半導体製造方法を用いるのではなくステンレス鋼マイクロワイヤの鋳型を用いてもよい。適切な材料をセットした後、マイクロワイヤを除去し、こうして得られる空隙によってマイクロチャネルを形成してもよい。または、鋳型を用いて、スポッター面と、それに伴うオリフィスおよび/または微小管とを形成してもよく、任意で、成形されたスポッター面またはプリントヘッドの背面に微小管またはマイクロチャネルを接合させてもよい。1つの例示的な態様において、スポッターはほぼ全体的に微小管から製造される。オリフィスのアレイを備えたスポッターを作るために微小管を作成、改変、および連結するため種々の材料(シリカなど)とともに用いることができる、広範な種々の半導体製造技術が当技術分野において公知である。大きい微小管で作られたスポッターは、例えば半導体製造方法を用いるなどの製造を必要としない可能性があり、代わりに、単純に一緒に固定してもよい。
【0027】
本発明は、各スポットが特定の物質および特異的な沈着密度のため個別に適合された、事実上無制限の数の規定されたスポットを備えるマイクロアレイを作る可能性を有している。スポッターはまた、個々のスポットを順次化学処理するのに用いてもよく、好ましくは同じスポッターを用いることによりこれを行うが、複数のスポッターを用いてもよい。
【0028】
本発明を実施するための最良の様式
個々にアドレス指定された高濃度スポットを備えるマイクロアレイの表面をパターン形成できるスポッター、ならびに同スポッターを使用および製造する方法を開示する。本発明の流体チャネルを用いて、所望の表面沈着密度が達成されるまで、所望の物質(プローブおよび/または標的分子など)を運ぶ溶液のフローをスポットエリア上に誘導することによって、各スポットの表面密度を増大させてもよい。本明細書において、「物質」という用語は、プローブ、標的化合物、細胞、栄養素、および/またはキャリヤを含む。「プローブ」の例としては、タンパク質;デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を含む核酸;細胞;ペプチド;レクチン;修飾多糖;合成複合体高分子、機能性ナノ構造;合成ポリマー;修飾/ブロックされたヌクレオチド/ヌクレオシド;合成オリゴヌクレオチド;修飾/ブロックされたアミノ酸;蛍光体;発色団;リガンド;受容体;キレート化剤;ハプテン;薬剤化合物;抗体;糖;脂質;リポソーム;細胞;ウイルス;任意のナノまたはマイクロスケールの物体;ならびに、他のプローブ材料と結合、関連、または相互作用する関連物質を有する任意の化合物などがある。標的化合物は典型的に、すでに基質に結合されたプローブまたはプローブの組合せの上に流される。「キャリア」とは、プローブ、細胞、標的化合物、または栄養素を運搬するためのビークルを指す。「キャリヤ」は溶媒(例、任意の水系または非水系の流体および/またはゲル)を含み、且つ、その中に懸濁された粒子を有していてもよい。
【0029】
1.0 構造
スポッターは、複数の流体経路と、基質の表面上に流体を沈着させるよう適合された静的アレイ中に構成された複数のオリフィスとを含み、流体経路は第一の導管および第二の導管を含み、第一および第二の導管の各々は近位端および遠位端を有し、第一の導管は第一の導管内で第一のチャネルを規定する壁を有し、第二の導管は第二の導管内で第二のチャネルを規定する壁を有し、第一の導管の遠位端は第二の導管の遠位端に操作可能な状態で接続され、第一および/または第二の導管の遠位端はオリフィスを作るように構成され、且つ、オリフィスは表面とともにシールを形成するように操作可能である。流体経路は、オリフィスが表面に対して密封されているとき、流体が第一および第二の導管を通って流れ、基質の表面に接触できるように構成される。
【0030】
導管は、チャネル、マイクロチャネル、管、マイクロ管、微小管、細管、および/またはチューブとも呼ばれ、これらの用語は流体経路を説明するために用いられる。「インレット導管」、「インレットマイクロチャネル」、または「インレット微小管」という用語は第一または第二の導管のいずれかであってもよく、「アウトレット導管」、「アウトレットマイクロチャネル」、または「アウトレット微小管」は経路の別の導管であってもよい。いくつかの態様において、どちらの導管がインレット導管であるかは、物質が導管間を前後に流れるにしたがって変化する。本発明を説明する目的のため、「インレット」または「アウトレット」は、該当する導管の近位端を参照するのに用いられることがある。
【0031】
1.1 導管
図1〜3に、基質の表面上のスポット沈着エリアへとおよび同エリアから物質を導くためのスポッター内の2つのマイクロチャネルを示す。本明細書において、「スポット沈着エリア」は、「スポット」、「スポットエリア」、および/または「ウェル」とも呼ばれる。物質はスポッター内のインレットマイクロチャネルを通り、オリフィスに行き、基質の表面に接触し、そしてスポッター内のアウトレットマイクロチャネルを通って流れる。この流路は、システムに関与する化学特性に応じて、表面に結合または吸着する機会を物質に与える。本明細書において「結合する」という用語は、結合、付着、吸着、関連、または基質に物質を保持するための他の任意の化学的もしくは機械的な過程を指す。特異的結合は、非無作為的な様式で表面に結合する物質(タンパク質など)を指すために用いられる。非特異的結合は、当技術分野において理解されているように、望ましくない結合または付着を指す。
【0032】
本発明の開示に照らして明らかであるように、インレットおよびアウトレット(第一および第二)の導管は、本質的に、基質上に物質を沈着させるための、チャネル内に孔(オリフィス)を備えた単一の湾曲したチャネルであってもよい。しかし、本発明を説明する目的のため、単一のチャネルまたは導管を有するものとしてこれらの態様を参照する代わりに、導管の「セット」または「ペア」という用語を用いて、典型的に分割点を提供するオリフィスを備えたチャネルを説明する。本明細書で論じるように、チャネル(例、マイクロチャネル)のセット間を接続する広範な種々の接続、およびオリフィスを形成するための広範な種々の手段が可能である。
【0033】
1つの態様において、スポッターの各チャネルまたは流体経路は、物質を基質の表面に搬送する手段、基質の表面上の「スポット沈着エリア」の周囲にシールを作る手段、および結合しなかった物質を基質の表面から搬送する手段を含む。マイクロチャネルは任意の長さおよび/または直径であってよい。1つの態様において、導管/チャネルの内径は100μm、90μm、80μm、70μm、60μm、50μm、40μm、30μm、20μm、および/または10μmである。さらに、ナノメートルレンジのマイクロチャネルも当技術分野において公知であり、本発明に用いてもよい。1つの態様において、スポッターの複数のマイクロ流体経路は複数の異なる内径からなる。
【0034】
図4に多オリフィススポッターの態様を示す。この態様において、マイクロチャネルの各ペアは、他のマイクロチャネルのインレットおよびアウトレットとは別のインレットおよびアウトレットを有する。図4には、例えば図1〜3に示すようなマイクロチャネルペアの列が開示されている。本発明の開示に照らして認識されるであろうとおり、所望のプリントヘッドまたはスポッティングパターンを作るため、図4に示すマイクロチャネルペアの列は単一の列または複数の列として構成されていてもよく、同様に、同じ列または異なる列におけるマイクロチャネルペア間の間隔は変化していてもよい。必要なだけ多数のマイクロチャネルペアを収容するため、スポッターの全体的なサイズを調整してもよい。
【0035】
図5に多オリフィススポッターの態様を示す。この態様において、各マイクロチャネルペアのインレットおよびアウトレットは、単一のインレットリザーバおよび単一のアウトレットリザーバに接続される。図5はまた、導管をリザーバに接続するための2つの可能なアプローチも示しており、例えば、「アウトレットチャネル」は相互接続した経路として示されており、「インレットチャネル」はマニホールドを介して接続されている。1つの態様において、単一の列のインレットおよび/またはアウトレットは、共通の列インレットおよび/またはアウトレットに接続されていてもよく、この場合、多列の態様は、別個に接続された個々の列を有していてもよい。例えば、オリフィスを100 x 10の構成で1000個備えたスポッターは、1000個のインレットおよび1000個のアウトレットではなく10個の列インレットおよび10個の列アウトレットを有していてもよい。この態様は、各列を共通のプローブでスポッティングする場合に好ましい可能性があるが、各列上に異なるプローブがスポッティングされる。または、列アウトレットおよび列インレットの全てを、単一のスポッターインレットおよびスポッターアウトレットに接続してもよい。この態様は、単一の物資でアレイ全体を作製または処理する場合に有用である可能性がある。
【0036】
図6に、列のインレットまたはアウトレットが1つの列アウトレットに接続される態様を示す。この態様において意図される用途の1つの実施例は、個々のインレットに異なる物質が流されるが、流出物を再循環させる所望が存在せず、したがって単一のアウトレットを使用できる場合である。
【0037】
別の態様において、アウトレット導管は隣接するインレット導管に、そして接続された一連のオリフィスに接続される。この態様において、オリフィスを100 x 10の構成で1000個備えたスポッター実施例を用いると、各列は単一の流体経路中の100個のオリフィス、および10個の流体経路を有することになる。この態様は、好ましくは、列全体を同じ物質でスポッティングする場合に用いられる。
【0038】
図7に2つの態様を示す。図示した第一の態様は、単一のスポットエリアへと導く2つのインレットマイクロチャネルと、スポットエリアから離れるように導く単一のアウトレットマイクロチャネルとを有する流体経路を含む。この態様は、リザーバ内の溶液を変える必要なくスポットエリア上に2つの異なるプローブを流す場合、または、基質もしくは基質上に存在するプローブの近傍で別の流体流を互いに反応させることが望ましい場合に、有用である可能性がある。この例示的な態様から認識されるであろうとおり、2つより多いインレットマイクロチャネルを使用してもよい。例えば、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つのインレットマイクロチャネルを用いてもよい。
【0039】
図7は輪状の態様の断面として見ることもできる。輪状の態様は、狭い微小管をより大きな微小管の中に置くかまたは狭い微小管をより大きなマイクロチャネルの中に置くことによって作ってもよい。大きなマイクロチャネル内に複数のマイクロチャネルが含有されていてもよい。例えば、各々が異なる物質を運搬する複数のインレットマイクロチャネル(例えば2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つのインレットマイクロチャネル)が、アウトレットマイクロチャネルとして機能するより大きなマイクロチャネル内にあってもよい。
【0040】
さらに、図7に関連して説明する態様を用いて、スポットエリアにわたって所望のフローパターンを作ってもよい。例えば、異なるインレットマイクロチャネルはそれぞれ同じ物質を運搬してもよいが、複数のインレットマイクロチャネルは基質上のフロープロフィールに影響を及ぼすように構成されていてもよい。2つ以上のインレットマイクロチャネルが基質上に同時に物質を流す場合、物質は基質上で直接衝突する。この衝突の乱流を制御して基質上への物質の結合に影響を及ぼしてもよい。
【0041】
しかし、同じオリフィスに流体接続する複数のインレットマイクロチャネルを用いて、異なる物質を異なるタイミングで流してもよい。図7において、左側のインレットマイクロチャネルを通り、基質を横切り、アウトレットマイクロチャネルから出るように1つの物質を流し、続いて、右側のインレットマイクロチャネルを通り、基質を横切り、アウトレットマイクロチャネルから出るように第二の物質を流してもよい。
【0042】
別の例示的な態様において、各々がオリフィス1つにつき複数のマイクロチャネルを有する複数のオリフィスの場合(例えば、各マイクロチャネルをA、B、およびCと呼ぶ)、Aチャネルの全てを接続することが望ましい可能性があり、BおよびCマイクロチャネルについても同様である。
【0043】
図4〜7に示した例示的な態様の任意の組合せを単一のスポッターに組み込んでもよい。例えばスポッターは、図4に開示したような流体経路を含有していてもよく、図5および6に関連して説明したように接続されたインレットおよびアウトレットを有する他の流体経路を含有していてもよく、図7に開示したような複数のインレットマイクロチャネルを有するさらに他の流体経路を含有していてもよく、またはこれらの任意の組合せを含有していてもよい。
【0044】
スポッター面のオリフィスは、マイクロアッセイ上に作られるスポットエリアがチェスボードのパターンになるように配列されていてもよい。換言すると、得られる表面上の各スポットエリアの中心が、他の中心とともに正方形の格子を形成する。オリフィスはまた、スポットエリアがハニカムのパターンになりしたがって各スポットエリアの中心が隣接する中心とともに正三角形を形成するように配列されていてもよい。さらに、オリフィスは、チェスボードパターンとハニカムパターンとが混合した領域が得られるように、スポッター内に分布していてもよい。
【0045】
列には任意の数のオリフィスが含まれていてよく、且つスポッター中には任意の数の列が含まれていてよい。スポッターは、好ましくは、少なくとも約10個、50個、100個、400個、900個、1,600個、2,500個、10,000個、50,000個、100,000個、500,000個、800,000個、1,900,000個、3,000,000個、5,000,000個、7,000,000個、13,000,000個、29,000,000個のオリフィスを含有する。スポッターはまた、好ましくは、1 cm2あたり少なくとも約10個、50個、83個、416個、500個、833個、1000個、4166個、5000個、8,333個、10,000個、20,000個、40,000個、または41,666個のオリフィスを含有する。例えば、オリフィスが、チェスボードパターンにまとめられた外径50ミクロンの微小管で形成されている場合、スポッター面の各1平方センチメートルは40,000個の微小管を含有する。オリフィスはまた任意の直径であってよい。オリフィスの内径は一般的に300ミクロン未満であり、好ましくは100ミクロン以下である。
【0046】
マイクロチャネルは、マイクロチャネルの近位端が、オリフィスが形成されている場所であるマイクロチャネルの遠位端から上に垂直方向に伸びるよう、垂直の配向で図示されている。例えば、オリフィスおよびマイクロチャネル接続部(図8A〜8Cに示すものなど)が表面に対して垂直に統合されるようなスポッターを作ってもよい。しかしマイクロチャネルは、水平も含む広範な種々の配向を有していてもよい。本明細書の図示に照らして認識されるであろうとおり、流体経路は、スポッターのオリフィスからスポッター内の任意の流体接続部までの間に、曲がり、旋回、または継手を有していてもよい。流体経路およびマイクロチャネルという用語は、溶液の入口点(例、スポッターへのリザーバ接続)からオリフィスへ、そしてオリフィスが接触する表面から離れるまで(例、第二のリザーバ)の経路を説明することを意図している。例えば図2には、注射針がリザーバ(例、注射筒)とスポッターとの間の流体接続手段として機能する単一の流体経路を示した。さらに図2において、「インレットマイクロチャネル」という用語は、「流体流入」点からオリフィスまでのチャネルを含み、「アウトレットマイクロチャネル」と言う用語は、オリフィスから「流体流出」点までのチャネルを含む。
【0047】
本発明の説明から明らかであるとおり、導管は任意の長さであってよい。導管は、500ミクロン、1 mm、5 mm、1 cm、5 cm、10 cm、20 cm、100 cm、またはそれ以上の長さであってもよい。導管内径に対する導管長さの比は5、10、15、20、100、500、1000、10,000、または30,000であってもよい。スポッターのマイクロチャネルは、必ずしも長さが全て均一でなくてもよい。
【0048】
短いマイクロチャネルと同じ圧力にさらされる、長いマイクロチャネルは、短いマイクロチャネルと比較して流量が少なくなる。流量が少なくなる原因は、導管の余分の長さに沿って流れる際に、物質が受ける摩擦が増加することにある。流量は、ベルヌーイの方程式の修正形を用いて計算してもよい。
【0049】
基質または表面に対するプローブの結合能は流量による影響を受けるので、異なる流体経路に対する異なる流量を意図的に作り出してもよい。適切な流量を決定する際には2つの要因を考慮すべきである。第一に、基質上のプローブの滞留時間は、プローブを含有する溶液の流量によって決定される。一部のプローブは、基質への結合を最適にするため、異なる滞留時間を要する可能性がある。したがって、プローブが基質に結合するまたは結合しない可能性を上昇させるため、溶液の流量を変化させてもよい。第二に、流量の増加に伴って基質表面をわたる剪断力が増加し、これもプローブの基質への結合能に影響する。流量が少なすぎると、非特異的結合および/または凝集が生じる可能性がある。凝集および/または非特異的結合は、例えば望ましくないタイミングでプローブを非凝集化させるなどにより、得られるアレイの効率に悪影響を及ぼす可能性がある。または、流量が不適切に多い場合は、プローブの結合が非効率的になる可能性がある(例、プローブが表面から実質上洗い流されるか、または所望の結合を生じるには表面近傍への滞留が不十分となる)。したがって本発明は、溶液中または懸濁液中のプローブの結合を最適にするため、特異的なプローブの流量を制御する機構および手段を提供する。注意されるべき点として、本明細書において「溶液」とは懸濁液も含むが、本発明を説明する目的のため溶液という用語を用いる。
【0050】
20μL/分、16μL/分、13μL/分、および12μL/分という4つの流量を反復して、オリフィス8つを備えたスポッターによりプロテインA(ImmunoPure Protein A、カタログ番号21181、Pierce Inc.)のアレイを作ることによって、流量の影響を示した。流量の変化は、オリフィスの各ペアへとおよび各ペアからつながるマイクロチャネルの長さを比例的に変化させることによって作り出した。得られた結合を表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて分析したところ、第一のペア(20μL/分)では、基質上のストレプトアビジン‐金複合体への結合が低かった。第四のペアも基質への結合が低かったが、第二および第二のペアは第一および第三のペアより結合がはるかに良好で、流量の最適化が示された。
【0051】
図16に上述の実験で作られたアレイを示す。反復実験は上から下に反映されており、スポット2と9、またはスポット3と8が同じ流量で作られたものである。スポット3、4、7、および8は他のスポットと比較して最も高い結合レベルを示しており(濃いスポット)、最適な結合に必要な流量が約13〜約16μL/分であることを示唆している。
【0052】
この実験はまた、様々な長さの導管を備えたスポッターを用いて、各流体経路に最適な流量をもたらせる可能性があることも示している。無論、流体に印加する圧力を増加させる、または様々な導管の長さ、直径、および/もしくは圧力を組み合わせるなど、他の手段によって流量を変化させることも可能である。流量は、ベルヌーイの方程式の修正形を用いて、導管の長さ/直径に基づいて計算してもよい。適切な流量の最適化または決定はまた、例えば、1つまたは複数のあらかじめ定められた流量で試料を沈着させ、結合を試験し、そして最適流量を特定するなどによって、経験的に決定してもよい。
【0053】
流量はまた、溶液内の異なる物質の沈着を制御するために調節してもよい。例えば、溶液が2つの異なるタンパク質を含有し、第一のタンパク質が低流量で特異的結合な結合を有し、且つ第二のタンパク質が高流量で最適な結合を有する場合、溶液の流量を変化させることによって物質の結合を制御してもよい。本発明はまた、2つの異なる溶液を流すかまたは両物質を有する単一の溶液の流量を変化させることによって、第一の物質を置き、次に第一の物質の上に別の物質の層を置くという能力を提供する。
【0054】
当業者に認識されるであろうとおり、導管の長さを変化させることは、スポッター内の物質の流量を変化させる1つの手段にすぎない。流量を変化させる他の手段としては、ポンプ、真空、もしくはリザーバの位置の移動によって圧力を変化させる、マイクロチャネルの直径を変更する、またはその他任意の好適な手段などがある。
【0055】
マイクロチャネルは、長方形のチャネル、円形(例えば図1に示すように)、三角形、またはその他任意の望ましい形状であってよい。
【0056】
図には、物質をアレイのスポット/ウェルに運搬するためにマイクロチャネルおよび微小管を用いるスポッター装置を示した。しかし、任意の導管で十分である。アレイ上の特異的なスポットへの流体経路を提供し、そのスポット上に物質を流すための方法は他にも多数存在する。オリフィスを備えた可撓性のチューブを用いてもよい。別の選択肢としては、「V字形」になるよう一緒に接合され、「V」の底部にオリフィスを備えた、剛性の微小管がある。マイクロチャネルの場合は、例えばスポッター本体などの構造内でマイクロチャネルが開通している必要がある。無論、チューブ自体を一緒に束ねてスポッター本体を形成してもよい。微小管を一緒に接続するため多数の手段が当技術分野において公知である。
【0057】
別の例示的な態様において、マイクロチャネルおよび微小管の組合せを利用してスポッターを形成する。例えば、マイクロチャネルを用いて、図8に示すような構造を形成してもよく、次に、マイクロチャネルの遠位端に微小管を取り付けてもよい。微小管は、垂直、水平、または必要な任意の角度に配列されていてよい。
【0058】
物質は、圧力流、重力流、動電的手段、空気圧、その他任意の好適な手段、またはこれらの組合せによってスポッター導管中を通過させてもよい。圧力流および重力流を作り出す方法は、例えばポンプおよび真空など、多数が公知である。アウトレット導管の近位端が、対応するインレット導管の近位端より低い場合は、スポッターを通して物質を流すため、サイホンを確立してもよい。導管を通して流してもよい物質の多くは帯電しており(例えば、DNAは負電荷を有する)、したがって動電ポンプを用いて導管中で荷電物質を移動させてもよい。空気圧を用いて、例えば流体経路に沿って粘性ゲルのプラグを押すことによって溶液を推進させてもよく、またはリザーバを加圧して溶液を推進させてもよい。さらに、導管の負電荷を増大させるため導管の内部をドーピングまたはコーティングすることが望ましい可能性がある。導管の負電荷の増大は、負電荷を有する物質と導管内部との間の摩擦を低減させる。
【0059】
1.2 オリフィス
多数のオリフィス設計が本発明により企図される。図8A〜8Cに、可能なオリフィス構造のごく一部を示す。本発明は、単純に、表面に物質を沈着させるよう適合されたオリフィスが流体経路中に存在することを必要とする。図8Aおよび8Bに、マイクロチャネルとほぼ同面積のオリフィスを示す。しかしオリフィスの断面積は、図8Cおよび9に示すように流体経路の断面積より大きくてもよく、またはより小さい断面積を有していてもよい(図には示していない)。オリフィスは典型的には正方形、長方形、または円形であるが、任意の幾何学形状を用いてよい。
【0060】
オリフィス部またはその付近で終端する導管の遠位端の接合部は、キャビティと呼ばれるものを規定する。キャビティは広範な種々の形状を有していてもよく、且つ多数の構造を組み込んでいてもよい。キャビティは導管と別に形成されていてもまたは導管によって形成されていてもよく、且つ、基質上のスポットエリアにわたって様々なフローパターンおよび剪断力を作り出すためフローの狭窄および乱流インデューサーを伴って設計されていてもよい。図6に、角度を有する、基質表面上の1方向フローを示す。図7に、単一のスポット上で交差するよう2つのインレットマイクロチャネルをどのように設計できるかを示す。交差するフローパターンは、閉じ込められた反応がスポットエリア上で直接生じることを可能にし得る。さらに、1度に1つの物質のみが流されるのであれば、異なる物質で順次にスポットを処理するために図7の態様を用いてもよい。無論、2つより多いインレットマイクロチャネルがキャビティに接続されていてもよい。さらに、2つの導管は、導管を形成するため物理的に接続していなくてもよい。例えば図7は、より大きい微小管の中の1つの微小管の断面図として見ることもでき、この場合、第一および第二の導管はキャビティを作るため互いに接触していなくてもよい。
【0061】
図8Aに、インレットマイクロチャネルが基質に対して角度を有し、キャビティの中に混合羽根が含まれるキャビティを示す。図8Bに、基質上に物質を側方から注入することを可能にし、且つ乱流を増加させしたがって混合を促進するための、インレットマイクロチャネル内の90度の回転を示す。図8Cに、物質の側方からの注入、基質表面にわたるフロー、そして垂直方向への抜けを可能にするキャビティを示す。さらに、図8Cのようなキャビティを用いて基質表面を改変してもよい。通信装置用の光学的誘導構造または細胞培養用の微小足場などの構造を、スポッターによって基質上で微小成形してもよい。
【0062】
スポッター面とは、マイクロアレイ基質など、その上に物質が流される基質と接合するスポッター表面を指す。図15に単オリフィスの態様のスポッター面を示す。図15に、スポッター面が、最終材料の除去後に作られた図15のスポッターの表面である、スポッターを製造する1つの方法の段階を示す。図4に見られるように、スポッター内に含まれるオリフィスの数にかかわらず、スポッター面は平面であってもよい。スポッター面を水平面で見ると、スポッター面が平面であることが望ましい場合、垂直面におけるオリフィスの互いからの逸脱は1 mm未満であることが好ましく、100ミクロン未満であることがより好ましく、50ミクロン未満であることがより好ましく、20ミクロン未満であることがより好ましく、5ミクロン未満であることがより好ましい。
【0063】
しかし、スポッター面は平面でなくてもよい。スポッター面は、単に微小管の束の遠位端のオリフィスであってもよい。この態様において、オリフィスが円形である場合、スポッター面は環の集合になる。微小管の束において、オリフィスの外縁の間に、密な表面ではなくギャップが存在していてもよい。これらのギャップはまた、望ましい場合は、当技術分野において公知の方法で充填してもよい。例えば、微小管の態様において、チャネル間のギャップの充填に用いられるエポキシによって微小管を一緒に保持してもよい。次に、硬化したエポキシおよびチャネルを切断および/または研磨して滑らかな表面を形成してもよい。
【0064】
さらに、基質上の任意の構造に対応するようにスポッター面を設計してもよい。例えば、基質が隆起部を有する場合、基質と接合する谷を有するようにスポッター面を改変してもよく、またはその逆であってもよい。スポッター面はまた、剛性を有するように、または基質表面と一致するよう十分な可撓性を有するように作られていてもよい。
【0065】
スポッター面は任意のサイズまたは幾何学形状であってよい。スポッター面は76 cm x 26 cmの顕微鏡用スライドを覆うように設計されていてもよく、または25 mm、50.8 mm、76.2 mm、100 mm、125 mm、150 mm、200 mm、もしくは300 mmのウェーハすら覆うように設計されていてもよい。本発明のこの優美な単純性により、任意のサイズまたは幾何学形状のスポッター面が許容される。
【0066】
1.3 付属構造
スポッター面内のオリフィスで終端しない(すなわち、基質上のスポットエリアとの直接接触がない)マイクロチャネルを含んでいてもよい温度調節要素またはガス交換要素がスポッターに用いられていてもよい。図9に、オリフィスの近傍で、スポッターの本体の中に組み込まれた追加のマイクロチャネルを示す。図9の追加のマイクロチャネルは、スポットエリア付近のガスの量の制御に用いられ、例えば細胞のスポッティング時またはアッセイ時にCO2の濃度を制御する。この態様における追加のマイクロチャネルは、スポッター材料の壁を通ってガスが拡散できるようスポットエリアに十分近いべきであるが、スポッターの構造完全性を維持するため十分遠いべきである。図9には、スポットエリアにつながるマイクロチャネルより狭いものとして追加のマイクロチャネルが開示されているが、この要素のサイズおよび構造は用途に依存する。図9には1つのスポットエリアにつき1つの追加のマイクロチャネルを示したが、1つの追加のマイクロチャネルが複数のスポットエリアのガス拡散を制御するようにスポッターが設計されていてもよい。例えば、1つの追加のマイクロチャネルを、2つ、3つ、または4つのオリフィスから等距離になるように設計してもよい。図9にはオリフィスの1つの側に追加のマイクロチャネルを示したが、追加のマイクロチャネルはオリフィスを完全に囲むように設計されていてもよい。
【0067】
温度制御のため、他の追加のマイクロチャネルまたは温度調節要素がスポッターに組み込まれていてもよい。追加のマイクロチャネルまたは温度調節要素をスポッター内の熱交換に用いてもよく、例えば、スポッター面または流体経路を加熱するため電気抵抗性ワイヤをスポッターに挿入してもよい。温度調節用マイクロチャネルまたは温度調節要素を必要に応じてスポッター内に配置してもよい。温度調節用マイクロチャネルまたは温度調節要素は、オリフィスの近傍で螺旋を描くように設計してもよく、インレット導管の長さに沿って設計してもよく、またはスポッター自体の全体の周囲に設計してもよい。
【0068】
他の構造もスポッター自体の中に組み込んでよい。いくつかの例として加熱コイルおよびポンプがある。加熱コイルは、あらかじめ形成したコイルを用いて製造中に組み込んでもよく、または、半導体製造技術により十分な電気抵抗性の金属合金の線を形成することによって組み込んでもよい。図10に1つのポンプの態様を開示する。この態様において、可撓性の膜を備えたチャンバーがスポッター内に作られ、アウトレットマイクロチャネルに連結される。導管を通り且つスポットエリアをわたって物質を前後に振動させるため、可撓性の膜に圧力を繰返し印加および解放してもよい。
【0069】
さらに、図10の態様を改変して、導管を通して新鮮な物質を1方向に流してもよい。再度図10において、スポッターを出たアウトレットマイクロチャネルに可撓性のキャビティが追加され、且つ2つの一方向弁(ボールフロート弁など)が可撓性キャビティの前および後のどこかの点に追加されるのであれば、1方向ポンプが作り出される。この態様において、キャビティ内にばね機構を組み込むことが必要である可能性があるが、可撓性の膜がばねとして機能するだけの十分な弾力を有していてもよい。さらに、可撓性の膜を、ピストンまたはその他任意の種類のポンプ装置に置き換えてもよい。スポッター内に組み込まれたポンプは、追加の弁機能を必要としてもまたは必要としなくてもよい。
【0070】
任意の数の装置をスポッターに取り付けてもよい。いくつかの例として、ポンプ、ブロワー、真空、流体ライン、加熱/冷却用ジャケット、取付用ハードウェア、およびビーカーまたはマイクロタイタープレートなどのリザーバがある。同じリザーバに対して、全てのインレットマイクロチャネルが供給を受け、且つ全てのアウトレットマイクロチャネルが戻ってもよい。または、各インレットマイクロチャネルが独自のリザーバから供給を受けそして単一のアウトレットマイクロチャネルがそのリザーバに戻ってもよく、もしくは、アウトレットマイクロチャネルからそのリザーバへの戻りがなくてもよい。任意の数のバリエーションが本発明の範囲内で可能である。
【0071】
1.4 ロボットシステム
本発明のスポッターをロボット型スポッティングシステムに組み込んでもよい。非接触式アレイヤーには流体分配ハードウェア、フロー制御、弁などがすでに統合されているので、非接触式アレイヤーにスポッターを組み込むのが最も単純である可能性がある。しかし、本発明のスポッターをピンスポッターなどの接触式アレイヤーのシステムに統合できるよう、任意の種類のロボットアームおよびロボットシステムを作動できるようにしてもよい。非接触式アレイヤーのいくつかの例としては、BioDotのBioJet Quanti(商標)およびCartesian Dispensing Systems(商標)のsynQUAD(商標)がある。接触式アレイヤーのいくつか例としては、Telechem InternationalのSpotBot(登録商標)、Genomic Solutions(登録商標)のMicroGrid、GenetixのQArray(登録商標)、およびRadius Biosciencesの3XVPがある。
【0072】
本発明のスポッターを組み込んだロボットシステムは、ロボットアームを側方に回転させる必要がないという恩典を有する可能性がある。ロボットは、スポッターを上下に動かすこと、および可能性として前後に動かすことのみを必要とする。例えばピンスポッターでは、ピンを再ディップするため側方に回転させる必要がある。
【0073】
2.0 用途
2.1 マイクロアッセイ
本発明のスポッターは、個々にアドレス指定されたマイクロ流体チャネルを各々が備えたスポットを提供し、且つ、多数のスポットアレイを並列にアドレス指定することができる。一定の物質フローを長時間にわたって保つことができ、したがってスポットエリアに高密度スポットを構築することができる。この技術により、従来のスポッターで標準的な濃度が用いられた場合と比較して、はるかに強い信号を生成することが可能になる。より強い信号は信号対雑音比を上昇させ、したがってより良好なデータを収集できる。より低い濃度を本発明のスポッターで用いてもよく、それでも満足のいく結果が得られ、これは費用削減をもたらす。アレイ上で実施してもよいアッセイのいくつかの例としては、蛍光分光法、化学ルミネセンス検出、染色、他の光学的マイクロアレイ感知技術、または放射分析がある。
【0074】
本発明のスポッターを用いて2次元アレイを作ってもよい。このように本発明のスポッターは、各スポットが特異的な沈着密度となるよう個々に適合された無制限の数の規定のスポットを備えたマイクロアレイを製造するという可能性を有している。同スポッターはまた、同じスポッターを用いるかまたは複数のスポッターを用いることにより、個々のスポットを順次化学処理してもよい。同スポッターを用いてレイヤーバイレイヤー自己組織化法(LBL)を行い、スポット濃度を増加させてもよい。スポット上に流される物質を単に変更することによって、スポットエリア上で複数回の積層および洗浄を行ってもよい。さらに、スポッターを通じて適切な材料を流すことによって基質の表面を改変してもよい。物質の結合を低減させるため、BSA(ウシ血清アルブミン)などの溶液を用いて、スポッターマイクロチャネルの内壁の表面修飾を行ってもよい。例示的な態様において、スポッターは使い捨てのスポッターであり、これにより汚染の問題を解消する。
【0075】
好ましくは、スポッターは、マイクロアッセイの表面をスポッターオリフィスで密封することにより、クロストークが少なく且つバックグラウンドノイズが少ないスポットの製造を可能にする。
【0076】
例示的な態様において、比較的小さなオリフィスを有するスポッターにより比較的小さなスポットを有するマイクロアッセイが作られ、そして、より大きなオリフィスを備えた第二のスポッターを同じマイクロアレイの上に位置決めしてもよい。このことは、タンパク質などの異なるプローブがアレイ上にスポッティングされ、次にアレイ上のタンパク質の上に薬剤または化学化合物が流されるという、薬剤相互反応試験に有用である可能性がある。
【0077】
マイクロアレイは任意の数のプローブを含有していてよく、好ましくはマイクロアッセイ中のプローブの数は少なくとも 約500、1000、5,000、10,000、50,000、100,000、500,000、800,000、1,900,000、3,000,000、5,000,000、7,000,000、13,000,000、または29,000,000である。プローブなどの物質は、次のように多数の方法でマイクロアッセイ基質に固定または結合してもよい:例えばイオン力、極性力、もしくはファンデルワールス力などによる共有結合もしくは非共有結合、またはビオチン‐アビジンもしくはビオチン‐ストレプトアビジンなどの結合部分の配座的相互作用;物質またはプローブのビーズ(磁性または非磁性)への取り付け;またはその他任意の方法。物質またはプローブをまず磁性ビーズに取り付ける場合は、次に磁気引力を用いてビーズをマイクロアッセイ基質に固定してもよい。さらに、磁性ビーズを用いる場合、磁場を用いてスポッターの導管内のプローブのフローを制御してもよい。
【0078】
参照により組み入れられるChenらの米国特許第6,594,432号(「第'432号特許」)「Microarray Fabrication Techniques and Apparatus」には、プローブを基質上にスポッティングするための、シリカチューブなどの毛管の使用が開示されている。同特許は、疎水性であってもよいが適切な波長の光に露光すると親水性に変わる光感受性コーティングを備えた基質が説明されている。光を伝導できるチューブと、最初に疎水性である光感受性コーティングを備えた基質とを用いて、基質にスポッティングする前に導光性チューブを介して光を伝送してもよい。このことにより、親水性となった領域が基質上に作り出され、一方、その領域を囲む基質表面は疎水性のままとなる。次に、水などの極性溶媒中のプローブを基質上にスポッティングする。疎水性表面の領域は、基質表面上の広がりを受けないようにされてもよい。
【0079】
本発明はまた、望ましい場合には、導光性の流体経路構造を利用してもよい。導光性の 微小管およびマイクロチャネルを作る多数の方法が公知である。例えば、シリカよりわずかに低い屈折率を有するポリマーでシリカチューブをコーティングして導光性の微小管を作ってもよい。または、チューブの製造中にチューブの外面をフッ化物にドーピングしてもよく、これによりチューブの残りの部分より屈折率が低い外層が得られる。そして、流体をシリカチューブ(流体よりわずかに高い屈折率を有する)に入れたものを光の伝達に用いてもよい。例えば、製造中に、マイクロチャネルに好適なポリマーを積層し、次に再度シリカを積層してもよい。シリカ以外にも、光を伝導でき且つ半導体製造技術に適する材料がある。したがって、マイクロチャネルに任意の好適な導光性材料を積層してよい。
【0080】
2.2 細胞培養物
図9において、スポッターを用いて、生きた細胞を単独で、グループで、または基質上のヒドロゲルなどのマトリックスとして沈着させてもよく、これにより薬剤スクリーニングまたは薬剤発見などの高スループットアッセイに適した細胞のアレイが作られる。各スポットエリアが個別にアドレス指定されるのであれば、各スポットに異なる種類の細胞を沈着させること、および/または各細胞スポットを異なる化学物質でアドレス指定することができる。このことにより、均一または準均一な細胞アレイと比較して、マイクロアレイからより多くの情報が得られるようになる。さらに、細胞の供給に導管を用いることにより、オリフィスを基質に対して密封したまま細胞を維持することができる。細胞周囲の培地に溶解されたガスは、スポッターオリフィスに隣接する追加の導管を統合することによって制御してもよい。このことは、PDMSなどガス透過性が高い材料でスポッターが構成されている場合は特に有益である可能性がある[2]。細胞は、培養物の下から光学的にモニターしてもよく、またはスポッター自体に統合された導波管/ファイバーを介してモニターしてもよい。
【0081】
図11は本発明のスポッターで作った細胞培養スポットの写真である。溶液のプラグを用いて、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を500μm x 750μmのスポットとしてポリスチレン基質上に沈着させた。溶液中の細胞をオリフィスへと流し、細胞が基質に接着できるようフローを停止し、次に、スポット上に細胞増殖培地を流すことによって、結合しなかった余分の細胞を洗い流した。これらの操作は全て、スポッターを基質に押し付けたまま行った。スポッターのマイクロチャネルの内面に細胞が接着することを防ぐため、Pluronic F108 Prill Surfactant(BASF)の溶液0.63 mol/Lをマイクロチャネルに流し、1晩インキュベートした。
【0082】
細胞をスポッティングする前に、スポッターを介して、細胞培地を基質上に6 mL/時間で4分間流した。655 x 104個/mL懸濁液のCHO細胞300μLを調製し、流量3 mL/時間で8分間、シリンジポンプでスポットに送り出した。この低い流量を用いたのは、流体剪断力による細胞の損傷を防ぐためである。次に、細胞が基質に接着できるよう、フローを20分間停止した。次に、スポッターを介して細胞培地を3 mL/時間で8分間流して余分の細胞を洗い流した。細胞の乾燥を防ぐため、倒立顕微鏡で細胞を撮影する間、スポッターを表面に接触させたままにした。図11は基質上に沈着させた細胞の画像である。
【0083】
多数の細胞と基質との組合せが可能である。必要であれば、加熱コイルなどの加温装置をスポッターに組み込んでもよい。
【0084】
2.3 バイオセンサー
基質がトランスデューサであり、トランスデューサに接着される生物層がスポッターを介してトランスデューサに輸送されるようなバイオセンサーを、本発明のスポッターおよびシステムを用いて製造してもよい。さらに、本発明のシステムおよびスポッターを用いて、既存のバイオセンサーを試験するための生物分子または化学物質を投与してもよい。
【0085】
バイオセンサーは増強されたマイクロアッセイとして見ることもできる。バイオセンサーの表面はプローブのアレイである。標的化合物がバイオセンサー表面の特定のスポットにおけるプローブと反応すると、電気信号が生成され、それは表面上の特定のスポットとともに同定される。特定のスポットにおけるプローブは、多くの場合、流体溶媒中に存在する。プローブと標的化合物との反応は、反応が生じた後の反射光の強度変化を記録する光検出器によって検出してもよい。検出の別の選択肢は、プローブ周囲の流体溶媒の電気特性の変化をモニターすることである。
【0086】
バイオセンサーをより迅速且つ安価に作成および操作するためにスポッターを用いてもよい。これがどのように実現されるかという1つの実施例を、Yamazakiらの米国特許第6,699,719号(「第'719号特許」)「Biosensor Arrays and Methods」との関連において説明する。第'719号特許には、生きた細胞と類似する表面特性を備えた流体二重層膜を個々のアレイスポットが有するバイオセンサーが開示されている。このことは、T細胞、筋肉細胞、神経細胞、および精子など、様々なヒト細胞に似るように二重層膜を構築できる点で有益である可能性がある。第'719号特許には、特異的な受容体を二重層膜の中に含ませ、次に受容体を広範なリガンドに曝露して、どのリガンドがその受容体と結合するかを決定することが開示されている。第'719号特許には、アセチルコリン受容体(AChR)を少なくともいくつかの二重層膜に含ませ、次に組成が未知である溶液をバイオセンサーに流してアセチルコリン(ACh)の存在を検出するという実施例が提供されている。同様に、AChRを用いて、ACh様化合物の互換性を試験してもよい。そのような過程は薬剤発見に有用であると考えられる。
【0087】
第'719号特許には、バイオセンサーを構築するための以下の方法が開示されている。まず、チャンバーより隆起または陥凹した構造を有するように基質を改変する。チャンバーは「二重層適合性」の材料で作られている必要があり、且つ、「二重層適合性」でない「二重層隔壁」によって互いに隔てられている必要がある。所望の受容体を含有するリポソームで二重層膜を形成する。蒸発による流体の損失を防ぐため、加湿チャンバー内でリポソーム懸濁液を基質に適用しなければならない。リポソーム懸濁液は、微小滴として基質上のチャンバーに適用される。同特許では、微小滴の投与法として、改変したインクジェット印刷装置およびマイクロピペットの使用という2つの選択肢が挙げられている。次に、基質のチャンバーが充填されるがあふれ出ないとろこまで、基質の表面全体に水溶液を流す。リポソームの微小滴が広がってフィルムとなるまで、同じ水溶液の霧をチャンバーにスプレーする。次に、追加の水溶液を基質に加える。リポソーム(前述の二重層膜)を基質のチャンバー内に保つための十分な力が存在する。以上でバイオセンサーの使用準備が整う。
【0088】
本発明のスポッターは、第'719号特許に開示されているものと同様のバイオセンサーの形成を大幅に補助すると考えられる。第一に、スポッターオリフィスは基質上に置かれたときにシールを作る。したがって、シリカなど、完全に「二重層適合性」の材料で作られた平らな基質を用いてもよい。スポッターオリフィスと導管の壁とによって表面上に「チャンバー」が作られる。平らな基質を使うことによって製造工程が大幅に簡略化される。第二に、基質全体に水溶液を流す必要がない。スポッター導管により、適量の水溶液を送達することができる。第三に、水溶液を送達した同じスポッター導管で微小滴リポソーム溶液を送達してもよく、または代替として、別の導管で微小滴を送達してもよい。本発明のスポッターは、微小滴投与装置を封入するための別の加湿チャンバーを必要としないという利点を有する。スポッター導管の近位端およびリザーバへの任意の流体接続部を容易に密封して、スポッター自体の導管を加湿チャンバーに変えることができる。さらに、インクジェット、マイクロピペット、およびピンなどを基質の「チャンバー」と並べようとするうえで固有のアライメントの問題は生じない。加湿チャンバーの必要がなくなることおよびアライメントが回避されることはさらに大きな恩恵である。第四に、スポッターオリフィスと導管とにより作られたチャンバー内でリポソーム微小滴のスプレーも実現できる。オリフィスに向けられたノズルを含む導管をスポッターに組み込んでもよい。水溶液をノズルに流して微小滴の霧を生じさせてもよい。第五に、スポッター導管を介して最終的な量の水溶液を追加してもよい。
【0089】
以上で、バイオセンサーは、スポッター導管を介して送達されるリガンドなどの標的化合物を有する準備が整う。正確な組成物または未知の混合物を各「チャンバー」に流してもよい。バイオセンサー「チャンバー」は、塵または他の汚染物が存在しうるスポッター外の環境にさらされることがないため、スポッターの使用により汚染のリスクが低減する。無論、バイオセンサー形成の各段階間において、任意の必要なインキュベーション時間をスポッターとともに実現してもよい。さらに、スポッターの使用により第二および第三の段階の組合せが容易になる可能性がある。スポッターは、基質全体に水溶液を流す必要性を減じる。したがって、2段階ではなく1段階で、リポソーム微小滴を水溶液とともに基質に流せる可能性がある。さらに、必要であれば、スポッター導管の遠位端をドーピングして導管の「二重層適合性」を増大させてもよい。このことは、最終的な量の水溶液が「チャンバー」に加えられる第5段階の後、リポソームが水溶液の表面へと上昇せず、スポッター導管のドーピング領域の高さに沈んだままになるので、有益である可能性がある。
【0090】
2.4 バイオチップ
スポッターをバイオチップの単純化に用いてもよい。バイオチップとは「ラボオンチップ」を作る試みであり、マイクロ総合分析システム(μTAS)として公知である[1]。XEOTRON XEOCHIP(登録商標)は、DNAチップとも呼ばれるDNA用バイオチップの1つの実施例である[4]。XEOCHIP(登録商標)を用いて、DNAおよびRNAなどの化合物を1度に1塩基ずつ構築してもよい。例えば、30個の複製を備えた遺伝子254個のアレイをXEOCHIP(登録商標)上で作成した。XEOCHIP(登録商標)の基質は、個々のチャンバーに塩基を供給するためマイクロ管を用いる。同じ塩基が全ての個々のチャンバーに同時に流される。しかし塩基は、チャンバーが照射済みである場合のみ、成長中のDNA鎖またはRNA鎖に結合する。したがって、様々なオリゴヌクレオチドが成長中で、全てのチャンバーに同じ塩基(たとえばグアニン)が供給されたとしても、照射済みのチャンバー内にある成長中のオリゴヌクレオチドにのみグアニンが結合する。これは、照射されたチャンバー内で光酸(PGA)が形成されるためである。本発明のスポッターを用いてXEOCHIP(登録商標)の操作を単純化してもよい。
【0091】
本発明の使用によって生じうる単純化の1つは、XEOCHIP(登録商標)でチャンバーを照射する必要がなくなることである。XEOCHIP(登録商標)のチャンバーが占める面積は10セント硬貨と同程度である。このため、特定のチャンバーのみを適切に照射するのに精密なマイクロミラーシステムが必要となる。スポッターの個々のオリフィスがXEOCHIP(登録商標)の個々のチャンバーの周囲を密封するよう、本発明のスポッターのスポッター面を改変してもよい。この態様において、チャンバーを照射してPGAを形成させる代わりに、改変対象のチャンバーにのみ、従来のDMT保護ホスホラミダイト・ヌクレオシドを適切な酸とともに流してもよい。しかしこうすると、一部のチャンバーに塩基が供給されないことになる。本発明のスポッターに関する別の選択肢は、各チャンバーに適切な塩基を供給することである。したがって、オリゴヌクレオチドが成長しないときが存在しない(無論、オリゴヌクレオチドが完成している場合を除く)。この態様では、ミラーの必要性がなくなるばかりでなく、1つのチャンバーに塩基が供給されるが他のチャンバーに供給されないというときがないためオリゴヌクレオチドがより迅速に成長する可能性がある。
【0092】
さらに、いったんオリゴヌクレオチドが成長したら、スポッターを介して任意の所望の標的化合物をオリゴヌクレオチドの上に流してもよい。したがって、同じオリゴヌクレオチドの複製物に対して、異なる標的化合物を同時に供給することができる。または、全てのオリゴヌクレオチドに同じ標的化合物を供給してもよい。スポッターをオリゴヌクレオチドの成長に使用し、それに続く試験には使用しなくてもよい。または、オリゴヌクレオチドの成長および試験の両方にスポッターを使用してもよい。
【0093】
本発明のスポッターはまた、ヌクレオチドの成長をさらに単純化するために用いてもよい。XEOCHIP(登録商標)ではマイクロ管およびチャンバーで複雑な基質を形成する必要がある。本発明のスポッターを用いて、前述の様式で、ただしより複雑度の低い基質(スライドガラスなど)の上で、オリゴヌクレオチドを成長させてもよい。マイクロ管およびチャンバーにより提供される機能は、本発明のスポッターで実現することができる。
【0094】
2.5 その他の基質
基質は、プローブが結合できる任意の材料で形成してよい。多孔質または非多孔質の基質を用いてよい。同様に、可撓性または剛性の基質も用いてよい。好ましい基質材料は、シリカ、ガラス、金属、プラスチック、およびポリマーである。
【0095】
ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの固定化用としてガラスは好ましい材料である。なぜなら、ポリヌクレオチドおよびポリペプチドは処理済ガラス表面に共有結合で取り付けることができ、且つ、ガラスが発する蛍光ノイズ信号はごくわずかであるからである。ガラスは、別の材料に積層してもよく、コア材料もしくはベース材料であってもよく、またはその両方であってもよい。基質の別の実施例としては、シリカのコーティングを伴う、ベース基質としてのプラスチックまたはポリマーのテープなどがある。さらに、テープのシリカ層の反対側に、またはシリカ層とポリマーまたはプラスチックとの間に挟んで、金属材料の追加の層を加えてもよい。
【0096】
スポッター導管およびオリフィスはまた、図8Cに示すオリフィスおよびマイクロチャネルなどによって、基質上に構造を成形するように設計されていてもよい。
【0097】
3.0 沈着密度の試験
ストレプトアビジン/金でコーティングした基質に沈着させたビオチン標識タンパク質で第一の試験を行った。このタンパク質の吸着密度を表面プラズモン共鳴(SPR)で測定し、Genetix QArray Miniピンスポッターで生成した変動溶液濃度曲線と比較した。その結果によれば(図12に示す)、本発明のスポッターを循環させた0.15μg/mLの溶液は、ピンスポッティングした13μg/mLの溶液と同じ結果をもたらした。これは86倍(8500%)の増加である。これらの試験で用いた手順を以下に詳しく示す。
【0098】
プロテインA(ImmunoPure Protein A、カタログ番号21181、Pierce Inc.)をビオチン(EZ-Link Sulfo-NHS-Biotin、カタログ番号21217、Pierce Inc.)でビオチン標識して、表面プラズモン共鳴(SPR)ストレプトアビジン・金チップ(8500ストレプトアビジン親和性チップ、パーツ番号4346388、AB)に対する特異的接着性をもたせた。このタンパク質溶液を0.1X PBS緩衝液(0.19 mM NaH2PO4、0.81 mM Na2HPO4、pH 7.4、15 mM NaCl)で濃度0.15μg/mLに希釈し、非特異的接着を防ぐため100μg/mL BSAを添加した。チップ表面に溶液を再循環させるため、プロテインA溶液200μLをPhynexus MicroExtractor 100シリンジポンプに装填し、スポッターを介して75μL/分で1時間にわたって連続的に前後に流した。次に、0.1X PBS 800μLとBSA 100μg/mLを用いて洗浄の段階を行った。最後に、アセンブリを通して空気を抜くことによって表面から試料を除去し、チップを水で洗浄した。連続流による固定化の結果を比較するため、固体ピンスポッティングも用いて同じチップ上にプロテインAを固定化した。連続流送達試験で用いた濃度と同じ濃度(0.15μg/mL)の試料をチップ全体にスポッティングした。2セットのスポットに結合させたことにより、2つの固定化法の感度を比較することができた。固体ピンスポッティングはGenetix QArray Miniスポッターを用いて行った。タンパク質濃度を段階的に上昇させた系列を、ピンスポッターを用いて沈着させ、沈着したプロテインA濃度に対するSPR反応の検量線を生成した。この検量線を用いてスポッターの当量濃度を計算し、沈着密度のファクター増加を決定した。
【0099】
第二の試験は、銅線の鋳型の周囲にPDMSチャネルを注型することによって製造したマイクロスケールの単オリフィススポッターで行った。鋳型のワイヤの端をPDMSの2 mm x 2 mm立方体に挿入することによってスポットエリアを規定した。得られた、より大きなサイズのスポットは、入手できる蛍光試験装置と適合性があった。図2、17、および18を参照されたい。2μg/Lの蛍光色素溶液をスライドガラス上に2 mL/時間で60分間循環させて、合計2 mLの溶液から沈着を生じさせた。以前の技術をシミュレートするため、3μLの同じ溶液をスライドガラスに滴下して乾燥し、スポッターと同じ面積のスポットを形成した。
【0100】
マイクロスケールのスポッターシステムと既存の沈着技術とを比較したところ、図13に示すように、本発明のスポッターにより、典型的なピンスポッターシステムと比較して沈着密度が約5倍上昇していた。図13の棒グラフの誤差バーは、そのデータセットの1標準偏差を示す。図13の差込みグラフは各試験試料のスペクトログラフを示す。この差込みグラフの最も重要なデータは614 nm(蛍光出力の中央)の部分である。これらの全てに表れているピークは、フィルタリングされなかった励起光ピークの残りである。図14は図13の差込みグラフを正規化したものである。
【0101】
4.0 製造
スポッターは、スポッターに流される物質と適合する製造方法に適した任意の材料で製造してよく、そのような材料としては、ケイ素;シリカ;ポリジメチルシロキサン(PDMS);ヒ化ガリウム;ガラス;セラミック;石英;ネオプレン、Teflon(商標)、ポリエチレンエラストマー、ポリブタジエン/SBR、ニトリル、ナイロンなどのポリマー;金属;スポッターに流される物質と適合するその他任意の材料;およびこれらの組合せなどがある。スポッターのマイクロチャネル内への物質の結合を低減するため、流される物質との親和性が低い材料でスポッターを構築することが望ましい可能性がある。さらに、流される物質と導管自体との間の親和性を低減するため、導管の内径を好適な材料でコーティングしてもよい。
【0102】
本発明のスポッターは多数の方法で製造してよい。スポッターは、例えば好適な材料のウェーハを洗浄する;必要であればウェーハをプライミングする;注型、成形、酸化、沈着またはその他任意の好適な方法によりウェーハに材料を加える;機械加工、研削、エッチング、または他の何らかの好適な方法により材料を減じるなどによって製造してもよい。改変したウェーハに追加のウェーハを接着してもよい。スポッターを製造するため、必要に応じて追加の材料を加えるもしくは減じてもよく、または必要に応じて追加のウェーハおよび材料の組合せを加えてもよい。さらに、前述の各段階を、必要な任意の順序で実施してよい。
【0103】
さらなる製造方法もまた可能である。例えば、半導体製造方法を用いるのではなくステンレス鋼マイクロワイヤの鋳型を用いてもよい。適切な材料をセットした後、マイクロワイヤを除去し、こうして得られる空隙によってマイクロチャネルを形成してもよい。
【0104】
または、鋳型を用いてスポッター面を形成してもよく、次に成形したスポッター面の背面に微小管を接合してもよい。このことは、スポッター面を作るのに用いた物質を硬化させる前に微小管を挿入するとうまくゆく可能性がある。
【0105】
さらに、ほぼ完全に微小管からスポッターを製造してもよい。本発明の微小管を作成、改変、および連結するため、シリカとのみでなく、他のチューブ材料とともに用いることができる、広範な種々の半導体製造技術が当技術分野において公知である。シリカをエッチングするための1つの技術は、ゲルマニウムでドーピングしたシリカチューブの部分は、ドーピングしていない領域より速くエッチングされるということである。したがって、適切な領域をドーピングしたチューブをエッチングし、必要であれば所望の様式に連結してもよい。輪状の態様における微小管はエッチングを全く必要としない可能性があり、代わりに、狭い微小管がより大きな微小管の内側に固定される。
【0106】
以下に、標準的な半導体製造技術を用いたいくつかの製造実施例を示す。
【0107】
4.1 実施例I
4.1.1 概要
実施例Iを実施して4オリフィススポッターを形成した。実施した製造過程は、SU-8鋳型の製造および準備;PDMSの注型および硬化;流体ポートの穿孔;PDMSスラブによるチャネル密封;鋭利な刃によるスポッター面の切断という5つの主な段階に分けることができる。SU-8鋳型の形成も含め、この態様の全製造過程は完了まで約10時間を要した。
【0108】
リソグラフでパターン形成したSU-8鋳型からPDMSチャネルを注型することによって、100μmサイズのチャネル4つの線形アレイを製造した[3]。マイクロチャネルが鋳型から出されたらすぐに、酸素プラズマを用いてPDMSのスラブで密封した。改変した20ゲージ注射針でマイクロチャネル基質にポートを穿孔し、この穿孔した孔に改変していない針を挿入することによって、パッケージングを実現した。マイクロチャネルを各オリフィスとペアになるように配列し、各ペアが特定の位置で交差するようにした。マイクロチャネルペアの交点を通ってPDMSを劈開し、マイクロチャネルのペアに接続されたオリフィスを劈開面に作ることによって、各スポットエリアを規定した。全ての交点を直線上に配列したので、1回の切断によって1つの劈開面に全てのスポットを開口させ、これによって線形アレイを得た。次に、劈開したスポット面を沈着基質に押し付けてもよく、すると、劈開面上のオリフィスの断面がスポット沈着エリアを規定する。より詳細な説明を以下に示す。
【0109】
4.1.2 SU-8鋳型の製造および準備
SU-8鋳型をフォトリソグラフィによって構築した。高解像度プリンター(Lithopointe)を用いて、鋳型の前にエマルジョンマスクを製造し、そのまま鋳型製造過程に使用した。流体マイクロチャネルを、各マイクロチャネルの1つの端が出口ポートにつながり、他の端がオリフィス部でそれとペアになるマイクロチャネルと連結するように、ペアにしてマスク上に並べた。全てのマイクロチャネルは幅が100μmで、交差部のオリフィスの幅も100μmであった。単純にマスク設計を変更することにより、狭窄および乱流インデューサーなどのバリエーションをオリフィス付近に容易に作ることができる。4つのスポットを、各スポッティングポートを500μmの間隔で隔てて直線に配列した。出口ポートにつながるマイクロチャネルの他の端は、パッケージングを容易にするため、5 mm間隔とした。わかりやすくするため、図15、19、20および22〜24には単オリフィスの態様のみを示した。
【0110】
76.2 mmの片面研磨シリコンウェーハをSU-8鋳型用の基質として使用した。表面から水を除き接着を向上させるため、ウェーハを95℃で10分間予熱した。ウェーハが冷えたら、SU-8 50(Microchem)を1300 rpmで60秒間回転させて100μm厚の層を得た。図19を参照されたい。ウェーハを65℃で3分間、95℃で2時間ソフトベークして、可能な限り多くのフォトレジスト溶媒を硬化させた。このマイクロチャネル構造の縦横比は1:1であった。ソフトベーク処理の後、露光準備としてウェーハを冷却した。
【0111】
ウェーハの露光は365 nm 光源アライナ(EVG)上で行ったが、エマルジョンマスクの使用を可能にするため露光過程を変更する必要があった。エマルジョン側がSU-8に向くようにマスクをウェーハのほぼ中心に直接乗せ、101.6 mmのガラスプレートで覆った。図7を参照されたい。次にウェーハをアライナに挿入し、430 mJ/cm2の線量で露光した。露光後ベークを65℃で3分間、95℃で15分間行って、露光したレジストの架橋を完了させた。ウェーハを酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGMEA)(Microchem)で20分間浸漬現像し、イソプロピルアルコール中で洗浄し、窒素噴霧で乾燥させた。
【0112】
シリコンウェーハは通常、表面に薄い天然の酸化層を有し、ここにPDMSが強力に接着して、鋳型からの注型物の取り出しを妨げる。これを防ぐため、フルオロシラン化剤である(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン(Gelest)を用いて、天然酸化層をフッ化炭化水素層でコーティングした。図21を参照されたい。ウェーハを入れた真空チャンバー内で2時間、フルオロシランを蒸発させて、制御された速度で表面反応を生じさせるとともに単分子表面層を形成させた。シラン基は酸化層に優先的に結合し、残留したフッ化炭化水素がウェーハ表面から突出するように残るため、PDMSの接着が防がれる。マイクロチャネルのカバースラブの鋳型を得るため、SU-8鋳型とともに76.2 mmのブランクウェーハもコーティングした。
【0113】
4.1.3 PDMSの注型および硬化
PDMSは供給業者(Dow Corning)から入手したままの状態で、且つ指示に従って使用した。原樹脂40 mLを、体積比10:1で硬化剤と混合し、十分混合した。プレポリマー混合物を真空中に1時間置いて気泡を全て除去し、次に、各鋳型用に2等分した。プレポリマーを各ウェーハ上に流し、均一になるまで放置した。次に、ウェーハを真空中に1時間置いて、鋳型とプレポリマーとの間にトラップされた気泡を除去した。鋳型から空気が全て抜けたら、65℃のオーブンに2時間入れて硬化させた。硬化完了後ただちに、注型物を鋳型から剥がし、イソプロピルアルコール中で洗浄して、窒素噴霧で乾燥させた。図22を参照されたい。
【0114】
4.1.4 流体ポートの穿孔
ポート穿孔処理中の塵汚染を防ぐため、密封した容器内にPDMSカバースラブを置いた。注型物のマイクロチャネル側から、PDMSマイクロチャネルスラブにポートを切り込み、これにより、マイクロチャネルの孔とのアライメントを容易にした。穿孔処理は、鋭利且つ斜角の刃先を形成するように先端を改変した20ゲージ注射針を用いて行った。図23を参照されたい。この刃先により、穿孔ツールはPDMSにきれいに切り込むことができ、スラブのマイクロチャネル面から外面まで、針の内径(0.58 mm)とほぼ同じ直径の円筒形の孔を形成することができた。既存の流体システムをこのマイクロチャネルに接続するため、改変していない20ゲージ針をこの孔に挿入し、適切なLUER(商標)接続を針に設けた。針とPDMSとの間の密封は、針のより大きな外径(0.91 mm)の周囲を孔のより小さな直径(0.58 mm)が圧迫することによる、純粋に機械的なものである。この流体接続はきわめて強力であることが実証されており、過酷な機械的衝撃および取り扱い、ならびに針の複数回の挿入および除去にも耐えられる。マイクロチャネルを密封する前に、酸素プラズマチャンバー内にPDMSスラブを水平に置いて表面処理を行うため、針接続を除去した。
【0115】
4.1.5 チャネルの密封
PDMSマイクロチャネル注型物とPDMSカバースラブとの間にハーメチックシールを形成するため、酸素プラズマを用いてシール表面上に薄い二酸化ケイ素層を形成した。図24を参照されたい。酸化した表面を一緒に1回プレスしてただちにハーメチックシールを形成し、これによりマイクロチャネルを効果的に密封した。しかし、この表面処理は、PDMS注型物を鋳型から剥がしてから数時間以内に行わなければならない。酸素プラズマチャンバーに入れる直前に、両方のPDMS注型物を再度イソプロピルアルコール中で洗浄し、窒素噴霧で乾燥させた。酸素プラズマを、パワー125W RF、チャンバー圧300ミリTorr、純酸素75 sccmで45秒間行った。チャンバーから取り出し後数秒以内に、酸化したPDMS表面をアライメントし一緒にプレスして、マイクロチャネルを密封した。スラブの完全な密封を確実にするため、一緒にクランプし室温で2日間放置した。密封処理完了後、スポッター面切断の準備として鋭利な刃でスラブをトリミングした。
【0116】
4.1.6 スポッター面の切断
スポッター面は、流体マイクロチャネルのペア間の交点の断面により規定される。4つの交点を全て1度に劈開し、得られる4つのスポットが単一の面上に形成されるよう、4ペアのマイクロチャネルの交点を直線に並べた。図15を参照されたい。切断のアライメントを容易にするため、マイクロチャネルペアの交差端を伸ばして、長さ約2 mmの単一の100μm x 100μmのチャネルにした。スポット面における死空間を最小限にするため、交点のできるだけ近くでマイクロチャネルに切断を行った。この切断の正確な配置は、複数のスポッターでスポッター面の配置を反復できるようにするためのアライメントされた刃を用いれば精密に制御することが可能であった。スポッター面が切断されたら、注射針の流体接続を元に戻すことによってスポッターの使用準備を整えた。
【0117】
4.1.7 スポッターの作動
スポッターのこの態様を作動させるには、スポッター面が流体シールを形成できるよう、スポッティングされる表面が比較的きれいで滑らかであることが必要とされる。次に、必要とされるエリアにスポッター面を押し付け、流体が流れる時間にわたって保持する。図3を参照されたい。各マイクロチャネルペアは、流体入出力ラインへの流体接続ポートで接続している。新鮮なまたは再循環した流体が流体インレットへと送り込まれ、同時に廃棄/余剰分の流体が外へと送り出される。流量沈着が大きい場合は、スポッターへの流体の注入のみを用いた場合に生じうるリークを、スポッターへの流体の注入および引き出しによって防ぐことができる。スポットエリア上における複数回の積層および洗浄は、単純にスポット上に流される流体を変更することによって実施できる。さらに、単純にスポッター面を表面ポートアレイに押し付けることによって、このスポッターを用いて他のマイクロ流体システムに流体を装填することもできる。材料の蓄積を低減するため、BSA(ウシ血清アルブミン)などの溶液を用いてマイクロチャネルの内壁の表面修飾を容易に行うことができる。しかし、このスポッターは使い捨てにできるほど十分に安く作ることができ、これにより汚染の問題を解消する。
【0118】
4.2 実施例II
スポッター製造は3段階の過程であってもよい。第一に、PDMS(またはその他任意の好適な物質)を用いて鋳型(リソグラフィによって規定した鋳型など)上に膜を形成する。鋳型上の突起を用いてスポッティング孔を規定する。この段階によってスポッター面が作られる。第二に、流体相互接続部に接続するため、マイクロチャネルを第二の鋳型上で形成する。第三に、マイクロチャネル層をスポッター面の背面に接着する。スポッター面およびマイクロチャネル層の両方を同時に鋳型から剥がす。
【0119】
この膜成形過程により滑らかな下面が得られ、したがって、基質が滑らかな場合にスポッターと基質との間の流体シールが容易になる。各スポット上への流体流は個々に制御され、スポットの形状、数、および配列は必要に応じてカスタム化できる。マイクロ総合分析システム、バイオセンサー、およびトランスデューサなど、平らでない基質に対してスポッター面をシールできるように鋳型を適合してもよい。
【0120】
スポッター面とスポッター導管とは、実施例Iのように同時に形成してもよく、または実施例IIのように別々に形成してもよい。いずれの方法においても、各部品は、キャストから成形してもよく、リソグラフィによって形成してもよく、または他の何らかの方法によって形成してもよい。
【0121】
刊行物、特許、および特許出願を含む、本明細書に引用されている全ての参考文献は、個々の参考文献が参照により組み入れられるものとして個別且つ具体的に示され且つその全内容が本明細書に述べられた場合と同程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
【0122】
以上に詳細な開示を行ったが、前述の技術および態様は添付の特許請求の範囲によってさらに完全に説明され、本発明も添付の特許請求の範囲によって記述される。当業者には、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、前述の技術および態様に対して多数且つ様々な変更を行いうることが明らかである。したがって、本発明は特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0123】
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】単オリフィススポッターの図である。
【図2】単オリフィススポッターの図である。
【図3】単オリフィススポッターの図である。
【図4】多オリフィススポッターの図である。
【図5】多オリフィススポッターの図である。
【図6】多オリフィススポッターの図である。
【図7】多インレットスポッター、およびスポッターの輪状の態様の断面を示した図である。
【図8A】増強混合羽根を供えたマイクロチャネルの図である。
【図8B】増強混合ステップを供えたマイクロチャネルの図である。
【図8C】側方インジェクターと垂直ベントとを備えたプリズム鋳型を形成するマイクロチャネルの図である。
【図9】細胞培養物をスポッティングおよび維持するためのスポッターの図である。
【図10】可撓性の膜を備えるスポッターの図である。
【図11】スポッターで作った細胞スポットの図である。
【図12】本発明のスポッターによる沈着密度をピンスポッターと比較したグラフである。
【図13】スポッターで沈着させた色素とピペットで沈着させた色素とを比較した2つのグラフである。
【図14】図13の差込みグラフを正規化したものである。
【図15】スポッター面の切断の方法を示した図である。フォトリソグラフィーによりスポッターを形成する多数の方法のうち1つを示したものである。
【図16】本発明のスポッターで作ったアレイの図である。
【図17】スライドガラス上に色素溶液の沈着を行っている単オリフィススポッターの図である。
【図18】オリフィスを示した、スポッターの1つの実施例の等角図である。
【図19】ウェーハ上へのフォトレジストのスピンコーティングを示した図である。フォトリソグラフィーによりスポッターを形成する多数の方法のうち1つを示したものである。
【図20】フォトレジストの露光を示した図である。フォトリソグラフィーによりスポッターを形成する多数の方法のうち1つを示したものである。
【図21】鋳型の表面修飾を示した図である。フォトリソグラフィーによりスポッターを形成する多数の方法のうち1つを示したものである。
【図22】鋳型から注型物を取り外す実施例である。フォトリソグラフィーによりスポッターを形成する多数の方法のうち1つを示したものである。
【図23】流体ポートを穿孔する1つの方法を示した図である。フォトリソグラフィーによりスポッターを形成する多数の方法のうち1つを示したものである。
【図24】チャネル密封の方法を示した図である。フォトリソグラフィーによりスポッターを形成する多数の方法のうち1つを示したものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の流体経路であって、各流体経路は少なくとも第一の導管および第二の導管を独立に含み、該第一および第二の導管の各々は近位端および遠位端を有し、該第一および第二の導管の各々は該第一および第二の導管内でチャネルを規定する壁を有し、該第一の導管の該遠位端はオリフィスを含むように該第二の導管の該遠位端に操作可能な状態で接続され、該オリフィスは表面とともにシールを形成するように適合され、これにより表面とともにシールを形成するように適合された複数のオリフィスを有する複数の独立した流体経路を形成する、複数の流体経路と、
指示されたパターンで表面上に流体を沈着させるよう適合された静的アレイ中に構成された該複数のオリフィスとを含む、指示されたパターンで表面上に物質を沈着させるためのスポッター。
【請求項2】
流体経路が第三の導管を含み、該第三の導管は近位端および遠位端、ならびに該第三の導管内で流体経路チャネルを規定する壁を含み、該第三の導管の該遠位端は第一および第二の導管の遠位端に接続されて、3つの流体フローチャネルを有する流体経路を形成する、請求項1記載のスポッター。
【請求項3】
第一の導管が第二の導管の中に輪状に含有され、該第二の導管の遠位端が表面とともにシールを形成するように適合されている、請求項1記載のスポッター。
【請求項4】
複数のオリフィスの静的アレイがチェスボードまたはハニカムの様式に構成される、請求項1記載のスポッター。
【請求項5】
複数の独立した流体経路の各々の第一の導管の2つ以上の近位端が相互接続される、請求項1記載のスポッター。
【請求項6】
複数の流体経路の各々の第二の導管の2つ以上の近位端が相互接続される、請求項5記載のスポッター。
【請求項7】
複数の独立した流体経路の各々の第二の導管の2つ以上の近位端が相互接続される、請求項1記載のスポッター。
【請求項8】
複数の独立した流体経路のうち2つ以上が相互接続されて単一の流体経路になる、請求項1記載のスポッター。
【請求項9】
複数の独立した流体経路が流体ポンプに接続される、請求項1記載のスポッター。
【請求項10】
ポンプが水圧ポンプである、請求項9記載のスポッター。
【請求項11】
複数の流体経路のうち少なくとも1つの経路の狭窄をさらに含む、請求項1記載のスポッター。
【請求項12】
オリフィスの形状が独立に円形、三角形、または正方形である、請求項1記載のスポッター。
【請求項13】
オリフィスが、平らでない表面と接合するように適合されている、請求項1記載のスポッター。
【請求項14】
第一の導管の遠位端と第二の導管の遠位端との間の操作可能な接続が、表面上に物質の乱流遷移流(turbulet transition flow)を提供するように適合されている、請求項1記載のスポッター。
【請求項15】
スポッターが、圧力流によって物質を流すように構成されている、請求項1記載のスポッター。
【請求項16】
スポッターが、動電によって物質を流すように構成されている、請求項1記載のスポッター。
【請求項17】
オリフィスの近傍に温度調節要素またはガス拡散要素をさらに含む、請求項1記載のスポッター。
【請求項18】
温度調節要素が、オリフィス付近で流体経路中の溶液を加熱するように構成されている、請求項1記載のスポッター。
【請求項19】
加熱が電気抵抗によって実現される、請求項18記載のスポッター。
【請求項20】
第二の導管の近位端がリザーバに接続される、請求項1記載のスポッター。
【請求項21】
第一の導管の近位端が1つのリザーバに接続され、且つ第二の導管の近位端が第二のリザーバに接続される、請求項1記載のスポッター。
【請求項22】
各流体経路の第一の導管の各近位端が個々のリザーバに接続され、且つ全ての第二の導管の近位端が第二の個々のリザーバに接続される、請求項1記載のスポッター。
【請求項23】
スポッター材料が、ケイ素、シリカ、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ヒ化ガリウム、ガラス、セラミック、石英、ネオプレン、Teflon(商標)、ポリエチレンエラストマー、ポリブタジエン/SBR、ニトリル、スポッターに流される物質と適合するその他任意の材料、およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項1記載のスポッター。
【請求項24】
導管が、マイクロチャネル、マイクロチューブ、またはマイクロチャネルおよびマイクロチューブの組合せである、請求項1記載のスポッター。
【請求項25】
第一および第二の導管が、指示されたパターンで表面上に流体を沈着させるよう強固に構成される、請求項1記載のスポッター。
【請求項26】
複数のオリフィスが、10、50、100、400、900、1,600、2,500、10,000、50,000、100,000、500,000、800,000、1,900,000、3,000,000、5,000,000、7,000,000、13,000,000、および29,000,000からなる群より選択される数と等しい、請求項1記載のスポッター。
【請求項27】
請求項1記載のスポッターを提供する段階と、
好適な基質を提供する段階と、
複数のオリフィスと該基質の表面との間にシールを形成する段階と、
複数の独立した流体経路を通して少なくとも1つの物質を流し、且つ該基質の該表面に該少なくとも1つの物質を接触させる段階と、
該基質の該表面に該少なくとも1つの物質の少なくとも一部を結合させる段階とを含む、
物質を沈着させるための方法。
【請求項28】
基質が、76 x 26 mm顕微鏡スライド、25 mmウェーハ、50 mmウェーハ、76.2 mmウェーハ、100 mmウェーハ、125 mmウェーハ、150 mmウェーハ、200 mmウェーハ、および300 mmウェーハからなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
少なくとも1つの物質の少なくとも一部を、表面上にチェッカーボードパターンで配列する段階を含む、請求項27記載の方法。
【請求項30】
少なくとも1つの物質の少なくとも一部を、表面上にハニカムパターンで配列する段階を含む、請求項27記載の方法。
【請求項31】
少なくとも1つの物質の少なくとも一部を表面上にスポットとして配列する段階であって、表面の1平方センチメートルあたりのスポット数が10、50、83、416、500、833、1000、4166、5000、8,333、10,000、20,000、40,000、および41,666からなる群より選択される段階をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1つの物質が、DNA分子、RNA分子、タンパク質、および細胞からなる群より独立に選択される、請求項27記載の方法。
【請求項33】
少なくとも1つの物質が、タンパク質;核酸;細胞;レクチン;合成複合体高分子;機能性ナノ構造;合成ポリマー;ヌクレオチド;ヌクレオシド;アミノ酸;リガンド;キレート化剤;ハプテン;化合物;糖;脂質;リポソーム;組織 試料;ウイルス;およびこれらの任意の組合せからなる群より独立に選択される、請求項27記載の方法。
【請求項34】
少なくとも1つの物質が、溶媒、任意の水系または非水系の流体、ゲル、ペースト、パウダー、水系または非水系の液体中に懸濁された粒子、およびこれらの任意の組合せからなる群より独立に選択される溶液中に存在する、請求項27記載の方法。
【請求項35】
基質の表面が平らでない、請求項27記載の方法。
【請求項36】
基質の表面が、管(カナル)、チャンバー、陥凹、隆起、またはこれらの組合せを含む、請求項27記載の方法。
【請求項37】
基質の表面に少なくとも1つの物質の少なくとも一部を結合させる段階が、独立した流体経路を介して少なくとも2つの物質を結合させる段階を含む、請求項27記載の方法。
【請求項38】
少なくとも2つの物質を差異的に結合させるため流体経路中の流量を変更する段階をさらに含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
独立した流体経路中の第一の導管を介して少なくとも2つの物質のうち1つを結合させ、且つ独立した流体経路中の第二の導管を介して少なくとも2つの物質のうち第二の1つを結合させる段階をさらに含む、請求項37記載の方法。
【請求項40】
基質の表面に少なくとも1つの物質の少なくとも一部を結合させる段階が、該基質の該表面上の異なる場所に異なる物質を結合させる段階を含む、請求項27記載の方法。
【請求項41】
基質の表面に少なくとも1つの物質の少なくとも一部を結合させる段階の前に、該基質の該表面が既に1つまたは複数の物質を該基質の該表面上に有する、請求項27記載の方法。
【請求項42】
基質の表面から複数のオリフィスを除去する段階をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項43】
前記方法の段階を少なくとも1回繰り返す段階をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項44】
前記方法の段階の繰り返し毎で異なるスポッターが用いられる、請求項43記載の方法。
【請求項45】
前記方法の段階の繰り返し毎で同じスポッターが用いられる、請求項43記載の方法。
【請求項46】
自動化システムによって行われる、請求項27記載の方法。
【請求項47】
基質が、マイクロ総合分析システム、バイオセンサー、バイオチップおよび細胞培養物からなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項48】
基質が、ケイ素、セラミック、ガラス、石英、可撓性プラスチック、硬質プラスチック、金属、窒化ケイ素、またはこれらの組合せを含む、請求項27記載の方法。
【請求項49】
基質の表面に接着されるのがストレプトアビジン‐ビオチンまたはアビジン‐ビオチンのいずれかである、求項27記載の方法。
【請求項50】
基質が光感受性コーティングでコーティングされる、請求項27記載の方法。
【請求項51】
基質が、スポッターを構成する材料と化学反応性が異なる材料で作られる、請求項27記載の方法。
【請求項52】
複数の独立した流体経路を通して少なくとも1つの物質を流し且つ基質の表面に該複数の物質を接触させる段階が、該少なくとも1つの物質を連続的に流す段階を含む、請求項27記載の方法。
【請求項53】
複数の独立した流体経路を通して少なくとも1つの物質を流し且つ基質の表面に該複数の物質を接触させる段階が、該少なくとも1つの物質を間欠的に流す段階を含む、請求項27記載の方法。
【請求項54】
少なくとも1つの物質を間欠的に流す段階が、まず該物質を1つの方向に流し次に該物質を逆方向に流す段階を含む、請求項53記載の方法。
【請求項55】
少なくとも1つの物質を間欠的に流す段階が、該少なくとも1つの物質のプラグを複数の独立した流体経路に沿って基質の表面へと流し、しばらくの間待ち、そして次に該少なくとも1つの物質の該プラグを該複数の独立した流体経路の残りを通して流す段階を含む、請求項53記載の方法。
【請求項56】
a)好適な材料でできたウェーハを洗浄する段階と、
b)注型、成形、酸化、沈着、またはこれらの組合せによって該ウェーハに1つまたは複数の材料を加える段階と、
c)機械加工、研削、エッチング、またはこれらの組合せによって、所望の量の該1つまたは複数の材料を減じる段階と、
d)段階b)およびc)を行って複数の独立した流体経路を形成する段階とを含む、
請求項1のスポッターを製造する方法。
【請求項57】
複数の流体経路の鋳型を形成する段階と、
該鋳型に好適な材料を加えて該スポッターを作る段階と、
該鋳型から該スポッターを取り出す段階とを含む、
請求項1のスポッターを製造する方法。
【請求項58】
流体経路の鋳型を形成する段階が、スポッター内で導管を形成するワイヤを鋳型中に用いる段階を含む、請求項57記載の方法。
【請求項59】
マイクロチューブを提供する段階と、
該マイクロチューブをエッチングする段階と、
該マイクロチューブを融合させる段階とを含む、
請求項1のスポッターを製造する方法。
【請求項60】
請求項56記載の方法に基づいて該スポッターの一部を形成する段階と、
請求項59記載の方法に基づいて該スポッターの残りの部分を形成する段階とを含む、
請求項1のスポッターを製造する方法。
【請求項61】
電気抵抗性ワイヤがスポッター内に組み込まれる、請求項56〜60のいずれか一項記載の方法。
【請求項1】
複数の流体経路であって、各流体経路は少なくとも第一の導管および第二の導管を独立に含み、該第一および第二の導管の各々は近位端および遠位端を有し、該第一および第二の導管の各々は該第一および第二の導管内でチャネルを規定する壁を有し、該第一の導管の該遠位端はオリフィスを含むように該第二の導管の該遠位端に操作可能な状態で接続され、該オリフィスは表面とともにシールを形成するように適合され、これにより表面とともにシールを形成するように適合された複数のオリフィスを有する複数の独立した流体経路を形成する、複数の流体経路と、
指示されたパターンで表面上に流体を沈着させるよう適合された静的アレイ中に構成された該複数のオリフィスとを含む、指示されたパターンで表面上に物質を沈着させるためのスポッター。
【請求項2】
流体経路が第三の導管を含み、該第三の導管は近位端および遠位端、ならびに該第三の導管内で流体経路チャネルを規定する壁を含み、該第三の導管の該遠位端は第一および第二の導管の遠位端に接続されて、3つの流体フローチャネルを有する流体経路を形成する、請求項1記載のスポッター。
【請求項3】
第一の導管が第二の導管の中に輪状に含有され、該第二の導管の遠位端が表面とともにシールを形成するように適合されている、請求項1記載のスポッター。
【請求項4】
複数のオリフィスの静的アレイがチェスボードまたはハニカムの様式に構成される、請求項1記載のスポッター。
【請求項5】
複数の独立した流体経路の各々の第一の導管の2つ以上の近位端が相互接続される、請求項1記載のスポッター。
【請求項6】
複数の流体経路の各々の第二の導管の2つ以上の近位端が相互接続される、請求項5記載のスポッター。
【請求項7】
複数の独立した流体経路の各々の第二の導管の2つ以上の近位端が相互接続される、請求項1記載のスポッター。
【請求項8】
複数の独立した流体経路のうち2つ以上が相互接続されて単一の流体経路になる、請求項1記載のスポッター。
【請求項9】
複数の独立した流体経路が流体ポンプに接続される、請求項1記載のスポッター。
【請求項10】
ポンプが水圧ポンプである、請求項9記載のスポッター。
【請求項11】
複数の流体経路のうち少なくとも1つの経路の狭窄をさらに含む、請求項1記載のスポッター。
【請求項12】
オリフィスの形状が独立に円形、三角形、または正方形である、請求項1記載のスポッター。
【請求項13】
オリフィスが、平らでない表面と接合するように適合されている、請求項1記載のスポッター。
【請求項14】
第一の導管の遠位端と第二の導管の遠位端との間の操作可能な接続が、表面上に物質の乱流遷移流(turbulet transition flow)を提供するように適合されている、請求項1記載のスポッター。
【請求項15】
スポッターが、圧力流によって物質を流すように構成されている、請求項1記載のスポッター。
【請求項16】
スポッターが、動電によって物質を流すように構成されている、請求項1記載のスポッター。
【請求項17】
オリフィスの近傍に温度調節要素またはガス拡散要素をさらに含む、請求項1記載のスポッター。
【請求項18】
温度調節要素が、オリフィス付近で流体経路中の溶液を加熱するように構成されている、請求項1記載のスポッター。
【請求項19】
加熱が電気抵抗によって実現される、請求項18記載のスポッター。
【請求項20】
第二の導管の近位端がリザーバに接続される、請求項1記載のスポッター。
【請求項21】
第一の導管の近位端が1つのリザーバに接続され、且つ第二の導管の近位端が第二のリザーバに接続される、請求項1記載のスポッター。
【請求項22】
各流体経路の第一の導管の各近位端が個々のリザーバに接続され、且つ全ての第二の導管の近位端が第二の個々のリザーバに接続される、請求項1記載のスポッター。
【請求項23】
スポッター材料が、ケイ素、シリカ、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ヒ化ガリウム、ガラス、セラミック、石英、ネオプレン、Teflon(商標)、ポリエチレンエラストマー、ポリブタジエン/SBR、ニトリル、スポッターに流される物質と適合するその他任意の材料、およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項1記載のスポッター。
【請求項24】
導管が、マイクロチャネル、マイクロチューブ、またはマイクロチャネルおよびマイクロチューブの組合せである、請求項1記載のスポッター。
【請求項25】
第一および第二の導管が、指示されたパターンで表面上に流体を沈着させるよう強固に構成される、請求項1記載のスポッター。
【請求項26】
複数のオリフィスが、10、50、100、400、900、1,600、2,500、10,000、50,000、100,000、500,000、800,000、1,900,000、3,000,000、5,000,000、7,000,000、13,000,000、および29,000,000からなる群より選択される数と等しい、請求項1記載のスポッター。
【請求項27】
請求項1記載のスポッターを提供する段階と、
好適な基質を提供する段階と、
複数のオリフィスと該基質の表面との間にシールを形成する段階と、
複数の独立した流体経路を通して少なくとも1つの物質を流し、且つ該基質の該表面に該少なくとも1つの物質を接触させる段階と、
該基質の該表面に該少なくとも1つの物質の少なくとも一部を結合させる段階とを含む、
物質を沈着させるための方法。
【請求項28】
基質が、76 x 26 mm顕微鏡スライド、25 mmウェーハ、50 mmウェーハ、76.2 mmウェーハ、100 mmウェーハ、125 mmウェーハ、150 mmウェーハ、200 mmウェーハ、および300 mmウェーハからなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
少なくとも1つの物質の少なくとも一部を、表面上にチェッカーボードパターンで配列する段階を含む、請求項27記載の方法。
【請求項30】
少なくとも1つの物質の少なくとも一部を、表面上にハニカムパターンで配列する段階を含む、請求項27記載の方法。
【請求項31】
少なくとも1つの物質の少なくとも一部を表面上にスポットとして配列する段階であって、表面の1平方センチメートルあたりのスポット数が10、50、83、416、500、833、1000、4166、5000、8,333、10,000、20,000、40,000、および41,666からなる群より選択される段階をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1つの物質が、DNA分子、RNA分子、タンパク質、および細胞からなる群より独立に選択される、請求項27記載の方法。
【請求項33】
少なくとも1つの物質が、タンパク質;核酸;細胞;レクチン;合成複合体高分子;機能性ナノ構造;合成ポリマー;ヌクレオチド;ヌクレオシド;アミノ酸;リガンド;キレート化剤;ハプテン;化合物;糖;脂質;リポソーム;組織 試料;ウイルス;およびこれらの任意の組合せからなる群より独立に選択される、請求項27記載の方法。
【請求項34】
少なくとも1つの物質が、溶媒、任意の水系または非水系の流体、ゲル、ペースト、パウダー、水系または非水系の液体中に懸濁された粒子、およびこれらの任意の組合せからなる群より独立に選択される溶液中に存在する、請求項27記載の方法。
【請求項35】
基質の表面が平らでない、請求項27記載の方法。
【請求項36】
基質の表面が、管(カナル)、チャンバー、陥凹、隆起、またはこれらの組合せを含む、請求項27記載の方法。
【請求項37】
基質の表面に少なくとも1つの物質の少なくとも一部を結合させる段階が、独立した流体経路を介して少なくとも2つの物質を結合させる段階を含む、請求項27記載の方法。
【請求項38】
少なくとも2つの物質を差異的に結合させるため流体経路中の流量を変更する段階をさらに含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
独立した流体経路中の第一の導管を介して少なくとも2つの物質のうち1つを結合させ、且つ独立した流体経路中の第二の導管を介して少なくとも2つの物質のうち第二の1つを結合させる段階をさらに含む、請求項37記載の方法。
【請求項40】
基質の表面に少なくとも1つの物質の少なくとも一部を結合させる段階が、該基質の該表面上の異なる場所に異なる物質を結合させる段階を含む、請求項27記載の方法。
【請求項41】
基質の表面に少なくとも1つの物質の少なくとも一部を結合させる段階の前に、該基質の該表面が既に1つまたは複数の物質を該基質の該表面上に有する、請求項27記載の方法。
【請求項42】
基質の表面から複数のオリフィスを除去する段階をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項43】
前記方法の段階を少なくとも1回繰り返す段階をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項44】
前記方法の段階の繰り返し毎で異なるスポッターが用いられる、請求項43記載の方法。
【請求項45】
前記方法の段階の繰り返し毎で同じスポッターが用いられる、請求項43記載の方法。
【請求項46】
自動化システムによって行われる、請求項27記載の方法。
【請求項47】
基質が、マイクロ総合分析システム、バイオセンサー、バイオチップおよび細胞培養物からなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項48】
基質が、ケイ素、セラミック、ガラス、石英、可撓性プラスチック、硬質プラスチック、金属、窒化ケイ素、またはこれらの組合せを含む、請求項27記載の方法。
【請求項49】
基質の表面に接着されるのがストレプトアビジン‐ビオチンまたはアビジン‐ビオチンのいずれかである、求項27記載の方法。
【請求項50】
基質が光感受性コーティングでコーティングされる、請求項27記載の方法。
【請求項51】
基質が、スポッターを構成する材料と化学反応性が異なる材料で作られる、請求項27記載の方法。
【請求項52】
複数の独立した流体経路を通して少なくとも1つの物質を流し且つ基質の表面に該複数の物質を接触させる段階が、該少なくとも1つの物質を連続的に流す段階を含む、請求項27記載の方法。
【請求項53】
複数の独立した流体経路を通して少なくとも1つの物質を流し且つ基質の表面に該複数の物質を接触させる段階が、該少なくとも1つの物質を間欠的に流す段階を含む、請求項27記載の方法。
【請求項54】
少なくとも1つの物質を間欠的に流す段階が、まず該物質を1つの方向に流し次に該物質を逆方向に流す段階を含む、請求項53記載の方法。
【請求項55】
少なくとも1つの物質を間欠的に流す段階が、該少なくとも1つの物質のプラグを複数の独立した流体経路に沿って基質の表面へと流し、しばらくの間待ち、そして次に該少なくとも1つの物質の該プラグを該複数の独立した流体経路の残りを通して流す段階を含む、請求項53記載の方法。
【請求項56】
a)好適な材料でできたウェーハを洗浄する段階と、
b)注型、成形、酸化、沈着、またはこれらの組合せによって該ウェーハに1つまたは複数の材料を加える段階と、
c)機械加工、研削、エッチング、またはこれらの組合せによって、所望の量の該1つまたは複数の材料を減じる段階と、
d)段階b)およびc)を行って複数の独立した流体経路を形成する段階とを含む、
請求項1のスポッターを製造する方法。
【請求項57】
複数の流体経路の鋳型を形成する段階と、
該鋳型に好適な材料を加えて該スポッターを作る段階と、
該鋳型から該スポッターを取り出す段階とを含む、
請求項1のスポッターを製造する方法。
【請求項58】
流体経路の鋳型を形成する段階が、スポッター内で導管を形成するワイヤを鋳型中に用いる段階を含む、請求項57記載の方法。
【請求項59】
マイクロチューブを提供する段階と、
該マイクロチューブをエッチングする段階と、
該マイクロチューブを融合させる段階とを含む、
請求項1のスポッターを製造する方法。
【請求項60】
請求項56記載の方法に基づいて該スポッターの一部を形成する段階と、
請求項59記載の方法に基づいて該スポッターの残りの部分を形成する段階とを含む、
請求項1のスポッターを製造する方法。
【請求項61】
電気抵抗性ワイヤがスポッター内に組み込まれる、請求項56〜60のいずれか一項記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2008−506114(P2008−506114A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520456(P2007−520456)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/023895
【国際公開番号】WO2006/014460
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(507007522)ユニバーシティー オブ ユタ リサーチ ファンデーション (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/023895
【国際公開番号】WO2006/014460
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(507007522)ユニバーシティー オブ ユタ リサーチ ファンデーション (2)
【Fターム(参考)】
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