説明

マイクロカプセルの製造方法

【課題】本発明の課題は、マイクロカプセルの製造において、均一な粒径分布を有する芯物質の乳化分散液を作製することにより均一な粒径分布のマイクロカプセルを得ることを目的とし、これを工業的規模で安定して製造できる製造方法を提供することである。更には、発色性能が良く、粗大粒子による発色汚れが少なく、且つ発色効率の良いノーカーボン感圧複写紙用マイクロカプセルや通常使用条件下で異常破壊の少ない蓄熱材マイクロカプセルの製造方法を提供することである。
【解決手段】円筒形の撹拌槽と、この攪拌槽と同心にて外径が攪拌槽内径より僅かに小さい回転羽根と、この回転羽根を端部に有する高速回転可能なシャフトとを備え、シャフトを高速回転させて回転羽根を高速回転させることにより、攪拌槽に導入された被処理液を攪拌槽の内周面に沿って薄膜円筒状に高速回転させながら攪拌する高速攪拌装置であって、前記回転羽根が、回転羽根の円筒体の周面に小孔を多数貫通して設けた多孔円筒部分を外周側に有し、当該多孔円筒部の中央にてアームでボスと一体的にしてホイール状に形成されており、該高速撹拌装置により、疎水性液体を親水性液体中に乳化分散し、その乳化分散された疎水性液体の周囲に皮膜を形成することによりマイクロカプセルを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロカプセルの製造方法に関するものであり、更には、良好な蓄熱材を内包したマイクロカプセル(以下、蓄熱材マイクロカプセルと称す)やノーカーボン感圧複写紙用のマイクロカプセルを得るのに適したマイクロカプセルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロカプセルは、芯物質を微小油滴状に分散し、その周囲を皮膜で被覆したものであり、不安定な物質や液状物質などを皮膜で保護することにより、芯物質を安定に内包し、取り扱いを容易にすることができる。マイクロカプセルの芯物質としては、医薬品、農薬、香料、接着剤、染料、液晶、示温剤、紫外線吸収剤、蓄熱材、フォトクロミック材料などが知られており、芯物質の保持、放出制御や表面改質、液体の粉体化などを目的として、広い分野で応用されている。その中で、ノーカーボン感圧複写紙は最も代表的な用途の一つであり、電子供与性発色剤(以下、発色剤と称す)を溶解して含む疎水性液体を微小油滴として内包した発色剤マイクロカプセルを支持体の片面に塗工した上用紙と、電子受容性顕色剤(以下顕色剤と称す)を支持体の片面に塗工した下用紙、支持体の片面に顕色剤、裏面に発色剤マイクロカプセルを塗工した中用紙の3種類の用紙を、上、下用紙あるいは上、中、下用紙のように組み合わせて、ノーカーボン感圧複写紙の帳票類として用いられている。また、顕色剤、発色剤マイクロカプセルを支持体の同一面に塗工した自己発色型ノーカーボン感圧複写紙もノーカーボン感圧複写紙の一形態としてよく知られている。
【0003】
また、近年では、液相、固相間の相変化時に発生する融解熱または凝固熱を利用した潜熱蓄熱材を芯物質として内包するマイクロカプセルが開発され、保温、保冷や急激な温度変化を抑制する目的で、衣料、建材、ビルの空調、電子機器の昇温抑制、医薬品や生鮮品の輸送システムへの利用等の多方面に使用されている。マイクロカプセル化に適した潜熱蓄熱材としては、ノルマルパラフィン類、高級アルコール類、高級脂肪酸類、高級脂肪酸エステル類などの蓄熱材が用いられている。
【0004】
マイクロカプセルの製造方法としては、コアセルベーション法、インサイチュー重合法、界面重合法等が代表的な方法として知られている。コアセルベーション法は、両性高分子電解質であるゼラチンとアニオン性高分子電解質であるアラビアゴム、カルボキシメチルセルロース等との電気的相互作用による相分離を利用したものである。インサイチュー重合法は、芯物質の内側あるいは外側の一方のみから皮膜材料のモノマーおよび重合触媒を供給し、芯物質の表面でモノマーの重合あるいは縮合によりポリマー皮膜を形成する方法であり、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂等が皮膜材料として知られている。界面重合法は、芯物質とその媒体の双方に異なる種類のモノマーをそれぞれ含有させ、両者の界面すなわち芯物質の表面でポリマーの皮膜を形成させる方法であり、ポリウレア樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリアミド樹脂等が皮膜材料として知られている。
【0005】
マイクロカプセルの製造工程の一部に、芯物質を媒体中に分散して微粒子状の油滴を形成させる工程があり、この際に芯物質の平均粒子径をある一定の値にできる限り粒径分布を狭くして均一な粒子径の油滴に揃えることが、安定した品質を得る上で重要である。粒径分布が広く、大粒径のマイクロカプセルが多く存在する場合には、外圧に対し壊れやすく、例えばノーカーボン感圧複写紙の場合には、通常必要とする圧力よりも弱い力で発色剤マイクロカプセルが破壊し、発色剤と顕色剤の発色反応が生じるために発色汚れの原因となり、商品価値を損ねることとなる。また、小粒径のマイクロカプセルが多く存在する場合には、通常の筆圧等での圧力では発色剤マイクロカプセルが破壊せず発色に寄与しないため、発色性能の劣ったノーカーボン感圧複写紙となる。
【0006】
蓄熱材マイクロカプセルは、マイクロカプセルが水性媒体中に分散されたスラリー状、これをスプレードライヤー等で乾燥させた粉体状、更に粉体カプセルを凝集させたペレット状等の種々形態で用いられるが、マイクロカプセルの粒径分布が広く、粗大粒子が多く存在する場合には、予期せざる強めの外圧が掛かった時に破壊するマイクロカプセルが多くなり、芯物質である蓄熱材が流出するために、融解あるいは凝固の際の蓄熱エネルギーの減少やマイクロカプセルを保管する系全体の汚損等の原因となる。また、微小粒子が多く存在する場合は、マイクロカプセルの製造において投入した壁膜材料量に対するマイクロカプセルの総表面積の比率が設計よりも増大するためにマイクロカプセルの皮膜厚さが薄くなり、熱、圧力や溶剤等の外部因子に対する耐性が低下し、マイクロカプセルの破壊あるいは機能損失の原因となる。
【0007】
芯物質を含む疎水性液体の乳化分散は、乳化機と呼ばれる分散機を用いて行われ、工業的には、4〜6枚の羽根刃を有するローターと、ローターと合致する円筒状で乳化分散液を通すための穴を有したステーターとの組み合わせで、ローターを高速回転させることによりローターとステーターとの隙間に剪断力を生じさせ疎水性液体を微粒子化し乳化分散させる方式の分散機が広く使われている。
【0008】
また、乳化分散の方式には、バッチ式と連続式の2種類があり、ともに工業的に実施されている。バッチ式は、タンク内にローターとステーターを設置し、ローターを高速回転させることにより乳化液の循環を行いながら芯物質を含む疎水性液体を目的の平均粒子径まで微粒子化する方式であるが、タンク内での乳化液の流れを完全に均一化することは難しく、そのために均一な粒径分布を得ることは困難であった。連続式は、ローターとステーターを円筒中にセットして配管に組み込み、配管中で疎水性液体を微粒子化して乳化分散する方式であり、分散効率を上げて目的の平均粒子径を得るために、ローターとステーターとを複数組セットしたり、乳化分散液を複数回循環するラインを組む等が行われているが、剪断回数を均一にすることは難しく、粒径分布が狭く均一なマイクロカプセルを得ることは困難であった。連続式は、バッチ式に比べ比較的短時間で目的の平均粒子径まで乳化分散することが必要な界面重合法のマイクロカプセル化に適しているが、均一な粒径分布のマイクロカプセルを得にくいのが難点であった。
【0009】
前述の通り、芯物質の粒径分布をできる限り狭く均一に乳化分散することはマイクロカプセルの製造において非常に重要であり、種々の方法により改良の取り組みが行われてきた。例えば、膜形成反応においては良好に作用する分散剤の開発が行われてきたが(例えば、特許文献1〜4参照)、均一な粒径分布の分散液を得るにはまだ不十分であった。また、芯物質を分散する際の分散機の機構を改良することにより均一な粒径分布の分散液を得る方法(例えば、特許文献5〜7参照)が提案されているが、構造が複雑で系内の洗浄に多大な時間と労力を有するため生産効率が悪いとか、分散時に発熱が著しく、芯物質や壁膜材料等の素材を劣化させるために長時間の運転には不適である等の理由により、工業的規模のマイクロカプセルの製造において十分満足し得る装置が未だ無いのが実状である。
【特許文献1】特開昭56−15836号公報
【特許文献2】特開昭58−40142号公報
【特許文献3】特開昭58−55036号公報
【特許文献4】特開平10−139820号公報
【特許文献5】特開平10−137577号公報
【特許文献6】特開平11−57456号公報
【特許文献7】特開平11−57457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、マイクロカプセルの製造において、均一な粒径分布を有する芯物質の乳化分散液を作製することにより均一な粒径分布のマイクロカプセルを得ることを目的とし、これを工業的規模で安定して製造できる製造方法を提供することである。更には、発色性能が良く、粗大粒子による発色汚れが少なく、且つ発色効率の良いノーカーボン感圧複写紙用マイクロカプセルや通常使用条件下で異常破壊の少ない蓄熱材マイクロカプセルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、これらの課題を解決するため研究を行った結果、円筒形の撹拌槽と、この攪拌槽と同心にて外径が攪拌槽内径より僅かに小さい回転羽根と、この回転羽根を端部に有する高速回転可能なシャフトとを備え、シャフトを高速回転させて回転羽根を高速回転させることにより、攪拌槽に導入された被処理液を攪拌槽の内周面に沿って薄膜円筒状に高速回転させながら攪拌する高速攪拌装置であって、前記回転羽根が、回転羽根の円筒体の周面に小孔を多数貫通して設けた多孔円筒部分を外周側に有し、当該多孔円筒部の中央にてアームでボスと一体的にしてホイール状に形成されており、該高速撹拌装置により、疎水性液体を親水性液体中に乳化分散し、その乳化分散された疎水性液体の周囲に皮膜を形成することにより、所期の目的である均一な粒径分布のマイクロカプセルを製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のマイクロカプセルの製造方法を用いて均一な粒径分布のマイクロカプセルを作製することにより、良好な蓄熱材マイクロカプセルやノーカーボン感圧複写紙用マイクロカプセルを得ることができ、マイクロカプセルの皮膜を多価イソシアネートと多価アミンとの反応を利用したポリウレア樹脂あるいはポリウレタンウレア樹脂とすることで、更に製品価値を高めた蓄熱材マイクロカプセルやノーカーボン感圧複写紙用マイクロカプセルを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明のマイクロカプセルの製造方法について詳細に説明する。本発明のマイクロカプセルの製造方法は、円筒形の撹拌槽と、この攪拌槽と同心にて外径が攪拌槽内径より僅かに小さい回転羽根と、この回転羽根を端部に有する高速回転可能なシャフトとを備え、シャフトを高速回転させて回転羽根を高速回転させることにより、攪拌槽に導入された被処理液を攪拌槽の内周面に沿って薄膜円筒状に高速回転させながら攪拌する高速攪拌装置であって、前記回転羽根が、回転羽根の円筒体の周面に小孔を多数貫通して設けた多孔円筒部分を外周側に有し、当該多孔円筒部の中央にてアームでボスと一体的にしてホイール状に形成されており、該高速撹拌装置により、疎水性液体を親水性液体中に乳化分散し、その乳化分散された疎水性液体の周囲に皮膜を形成することを特徴としている。
【0014】
図1から図3により、本発明で用いられる高速攪拌装置の好適態様を説明する。図1は、本実施形態に係る高速攪拌装置を示す詳細部分断面切欠図である。図2は、本実施形態に係る高速攪拌装置の縦断面及び一部断面図である。図3は、回転羽根の断面図(a)、平面図(b)及び側面図(c)である。高速攪拌装置は、円筒状の攪拌槽2と、この攪拌槽2の底面を含む外周面に温度調節用媒体を供給かつ排出する温度調節媒体用配管6と、温度調節媒体用配管6が接続された外槽4と、攪拌槽2の内周面と僅かの間隙を有して攪拌槽2と同心にて高速回転可能な回転羽根8と、この回転羽根8を端部に支持して正逆高速回転駆動可能なシャフト10と、堰板12を介して攪拌槽2の上部に設けられ製品を排出する排出管13を有する上部容器14と、この上部容器14を密閉する蓋16とを備え、攪拌槽2の底部に原料を供給する供給管17、18が弁19、20を介して設けられている。なお、図1では、蓋16,弁19,20など一部を省略している。
【0015】
上部容器14は、図2に示すように、その周面に温度調節用媒体が供給される温度調節用媒体室15を備えている。媒体としては、冷水や温水が主として用いられる。堰板12は、被処理液をバッチ式で処理する場合には図2に示すように攪拌軸に対してわずかな隙間しかない小径穴のものを使用し、連続式で処理する場合には被処理液が流出管13から排出可能なように、図1に示すような開口部の広い堰板を使用する。
【0016】
回転羽根8は、図3の(a)、(b)及び(c)に示すように、外周側の多孔円筒部24をアーム26でボス28と一体にしてホイール状にしたもので、多孔円筒部24には、アーム26が連設されている部分以外の円筒状部分に無数の小孔30が穿設されており、アーム26には適数の連通孔32が設けられている。
【0017】
次に高速攪拌装置を用いた乳化分散方法について、連続式乳化の場合を例にとって説明する。攪拌槽2に堰板12を設置し、攪拌槽2内に予め設定した比率、供給速度で疎水性液体と親水性媒体を供給管17,18より供給しながら、シャフト10を高速回転駆動して回転羽根8を高速回転する。この時、被処理液は回転羽根8の高速回転によって円周方向に付勢され、遠心力により攪拌槽2の内面に薄膜円筒状の液層となって密着しながら回転する。被処理液表面と攪拌槽2の内面との相対速度差によるずれによって攪拌作用が生じ、疎水性液体が親水性媒体中に微小油滴状に分散乳化される。また、被処理液は回転羽根8の表面に無数に設けた小孔30を通過する際にも流れに乱れが生じることによりさらに攪拌作用が強くなり、乳化分散効果が助長される。このようにして、原料を供給管17、18から連続供給し、乳化分散後の被処理液が堰板12を越えて連続的に流出管13から流出する。
【0018】
本発明で使用されるこのような高速攪拌装置としては、特許第3256801号公報、特許第3318893号公報や特開2007−125454号公報の各公報に開示された装置等が適用できる。本発明に係る高速攪拌装置の市販の具体例としては、プライミクス社製の薄膜旋回型高速ミキサー「TKフィルミックス」を挙げることができる。
【0019】
これらの装置の特徴は、円筒形の攪拌槽内に設置された回転羽根の形状、周速等によるものであり、回転羽根の多孔円筒部に設けられた多数の小孔から遠心力で被処理液を攪拌槽内壁に向け放出して薄い円筒状膜と成し、且つ、回転羽根を高速回転させて極めて大きな攪拌エネルギーを与えることにより、短時間で被処理液を微細粒子化することができる。
【0020】
これらの装置の極めて優れた点として、装置の構造が単純化されており、容易に分解して洗浄することが可能であること、被処理液が攪拌槽内壁に薄膜状に集中して存在するために冷却効率が高いこと等が挙げられる。通常、機械的に乳化分散する際には被処理液の温度上昇が起こるが、特にポリウレア樹脂、ポリウレタンウレア樹脂を壁膜とする界面重合マイクロカプセルの製造においては、壁膜材料であるイソシアネート化合物が媒体の水と反応するのを抑えるため温度上昇を制御する必要があり、その点において、冷却効率の良い本装置は好適である。
【0021】
また、高融点の蓄熱材を芯物質とする蓄熱材マイクロカプセルの製造において、高融点蓄熱材の乳化分散は蓄熱材が凝固しやすくトラブルの発生しやすい工程であるが、被処理液を薄膜化して処理することで効率良く高熱を与えることができ、しかも短時間で小粒径化が可能な本装置は、高融点蓄熱材マイクロカプセルの製造においても好適である。
【0022】
マイクロカプセルの製造方法としては、前述の通り種々方法が知られており、本発明においてはいずれの方法も用いることができるが、本発明で使用される高速攪拌装置は短時間での乳化分散に適しているという特徴を有しており、壁膜材料が反応しやすく短時間に乳化分散を終えた方が良い素材を用いる界面重合法マイクロカプセル化において、その特徴が最も発揮され有効である。
【0023】
界面重合法マイクロカプセル化で使用される多価イソシアネートとしては、少なくとも2個以上のイソシアネート基を有する化合物であり、芯物質中に可溶な化合物が好ましい。
具体例としては、m−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、トルエン−2,4,6−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4′−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、などのイソシアネート単量体が挙げられる。また、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートなどのイソシアネートオリゴマーまたはイソシアネートポリマーも用いることができる。更に、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールの付加物、ヘキサメチレンジイソイアネートのビュレット付加物、イソシアネート単量体、イソシアネートオリゴマーまたはイソシアネートポリマーのポリオール変性体やカルボジイミド変性体等が挙げられる。これらは組み合わせて用いることもできる。芳香族イソシアネートを用いた場合、熱的または化学的に安定なマイクロカプセル皮膜樹脂を得ることができる。一方、脂肪族系イソシアネートを用いると高温多湿条件下での保管時に黄変しにくいマイクロカプセル皮膜樹脂を得ることができる。多価イソシアネート化合物は、芯物質に対し1〜50質量%の範囲で添加される。
【0024】
多価アミン化合物として、低分子多価アミン化合物、高分子多価アミン化合物が用いられる。低分子多価アミン化合物としては、少なくとも2個以上の第1級アミノ基及び/または第2級アミノ基を有する低分子化合物が用いられ、具体例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン等の脂肪族アミン類やその誘導体、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ジアミノナフタレン、キシレンジアミン等の芳香族アミン類を挙げることができる。高分子アミン化合物の具体例としては、ポリエチレンイミン及びその誘導体、ポリプロピレンアミン、ポリビニルアミン及びその誘導体、ポリアリルアミン及びその誘導体、ポリエーテルアミン、ポリ−L−リジン、ポリ−L−オルニチン等を挙げることができる。
【0025】
蓄熱材マイクロカプセルの製造方法において、疎水性液体である蓄熱材は、相転移に伴う潜熱を利用して蓄熱する目的で用いられるものであり、融点あるいは凝固点を有する化合物であれば使用可能で、具体的な蓄熱材としては、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、パラフィンワックス等の脂肪族炭化水素化合物、パルミチン酸、ミリスチン酸等の脂肪酸類、ベンゼン、p−キシレン等の芳香族炭化水素化合物、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル等のエステル化合物、ステアリルアルコール等のアルコール類等の化合物が挙げられ、好ましくは融解熱量が約80kJ/kg以上の化合物で、化学的、物理的に安定なものが用いられる。これらは2種以上を混合して用いても良いし、また、常温で固体のものは加熱溶解したり、他の疎水性液体に溶解させて用いても良い。必要に応じて過冷却防止剤、比重調節剤、劣化防止剤等を添加することができる。
【0026】
また、乳化分散時に水性媒体中に添加して用いられる分散剤としては、熱的に安定でマイクロカプセル化するために適するものであれば使用可能であり、カチオン系、アニオン系、ノニオン系または両性の水溶性高分子化合物が用いられる。例えば、ゼラチン、アラビアゴム、アルギン酸ソーダ等の天然高分子、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチル化澱粉、リン酸化澱粉、リグニンスルホン酸ナトリウム等の半合成高分子、エチレン−無水マレイン酸共重合体、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等の無水マレイン酸共重合体の水溶性塩やアクリル酸系あるいはメタクリル酸系の重合体や共重合体化合物、ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、スルホン変性ポリビニルアルコール等の合成高分子を挙げることができる。
【0027】
ノーカーボン感圧複写紙用マイクロカプセルの作製においても、前記の多価イソシアネート化合物、多価アミン化合物や分散剤を用いることができる。また、芯物質である疎水性液体としては、フェニルキシリルエタン、フェニルイソプロピルフェニルエタン、フェニルブチルフェニルエタン等のジアリールアルカン化合物、モノイソプロピルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン等のアルキルナフタレン化合物、モノイソプロピルビフェニール、ジイソプロピルビフェニールなどのアルキルビフェニール類、部分水素化ターフェニル化合物、アルキルベンゼン化合物、パラフィン類、植物油、脂肪酸エステル化合物等が用いられる。
【0028】
電子供与性発色剤としては、ノーカーボン感圧複写紙用として公知の化合物を単独あるいは混合して用いることができ、トリフェニルメタン系化合物、フェノチアジン系化合物、インドリルフタリド系化合物、インドリルアザフタリド系化合物、ロイコオーラミン系化合物、スピロピラン系化合物等を挙げることができる。これらの発色剤は、疎水性液体中に、0.1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%程度の濃度となるように溶解あるいは分散して用いられる。
【0029】
マイクロカプセルの体積平均粒子径は、0.2〜20μmが好ましく、更には1〜10μmの範囲が最も好ましい。蓄熱材マイクロカプセルを例にとると、体積平均粒子径が1μmより小さいと物理的強度が高くなり、破壊は抑えられるものの、膜厚が薄くなるため耐熱性が低下する場合がある。また、平均粒子径が20μmを超えると、物理的強度が低下することがあり、機械的剪断力に対して極めて弱くなる場合がある。
【0030】
本発明の製造方法により得られるマイクロカプセルは、通常水分散液の形態で得られ、液状スラリーとして使用することができる。また、分散媒である水を乾燥又は脱水することにより固形物とすることが可能である。固形物としては、水分をほとんど含まない状態の完全な固形物に限らず、常温で流動性がないケーキ状態の形態もあり、例えばフィルタープレス、スクリュープレス、遠心分離法、蒸発乾燥法、噴霧乾燥法等の装置を用いて得られた水分含有量が40質量%以下に脱水したウェットケーキも含まれる。固形化処理を行う前に、金属粉、着色剤、比重調節剤、分散助剤、接着剤、湿潤剤等をマイクロカプセル分散液中に添加することができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。体積平均粒子径は、レーザー回折・散乱法による粒度分布測定装置(日機装社製、商品名:マイクロトラックMT3300型)により測定を行った。なお、実施例中の部数や百分率は固形質量基準である。
【0032】
(実施例1)
薄膜旋回型高速ミキサー(プライミクス社製、商品名:TKフィルミックスFM−80−50型)を用いてバッチ式での蓄熱材マイクロカプセル用乳化分散液の作製を行った。ラウリル酸ラウリル120部、ラウリン酸アマイド1.2部及びトリレンジイソシアネート(三井化学ポリウレタン社製、商品名:コスモネートT−80)9部を均一に溶解した溶液をポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:ポバール117)の7%水溶液150部中に加え、50℃にて周速20m/分で30秒間高速攪拌して体積平均粒子径が4.0μmの乳化分散液を調製した。この乳化液にトリエチレンテトラミンの15%水溶液30部を加えて、80℃にて2時間加熱攪拌を行い、蓄熱材マイクロカプセルの分散液を得た。
【0033】
(実施例2)
ラウリル酸ラウリルをミリスチン酸ラウリルに、ラウリン酸アマイド1.2部をN−ラウリルラウリン酸アマイド2.4部とする以外は実施例1と同様にして、体積平均粒子径が2.4μmの乳化分散液を調製した。この乳化液に変性脂肪族アミン(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:JERキュアU)の15%水溶液30部を加えて、80℃にて2時間加熱攪拌を行い、蓄熱材マイクロカプセルの分散液を得た。
【0034】
(実施例3)
ラウリル酸ラウリルをミリスチン酸ラウリルに、ラウリン酸アマイド1.2部をN−ラウリルラウリン酸アマイド2.4部とする以外は実施例1と同様にして、体積平均粒子径が2.5μmの乳化分散液を調製した。この乳化液に変性脂肪族アミン(ADEKA社製、商品名:アデカハードナーEH−203A)の15%水溶液30部を加えて、80℃にて2時間加熱攪拌を行い、蓄熱材マイクロカプセルの分散液を得た。
【0035】
(実施例4)
トリレンジイソシアネートをカルボジイミド変性ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(三井化学ポリウレタン社製、商品名:コスモネートLL)に、ポリビニルアルコール水溶液をスチレン−無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩水溶液に変え、高速攪拌条件を周速30m/分で30秒間とする以外は実施例1と同様にして、体積平均粒子径が3.6μmの乳化分散液を調製した。この乳化液に変性脂肪族アミン(大都産業社製、商品名:ダイトクラールHD−110TP)の15%水溶液30部を加えて、80℃にて2時間加熱攪拌を行い、蓄熱材マイクロカプセルの分散液を得た。
【0036】
(実施例5)
ラウリル酸ラウリルをミリスチン酸ラウリルに、ラウリン酸アマイド1.2部をN−ラウリルラウリン酸アマイド2.4部に、トリレンジイソシアネートをノルボルナンジイソシアネート(三井化学ポリウレタン社製、商品名:コスモネートNBDI)に、ポリビニルアルコール水溶液をスチレン−無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩水溶液に変え、高速攪拌条件を周速30m/分で30秒間とする以外は実施例1と同様にして、体積平均粒子径が2.5μmの乳化分散液を調製した。この乳化液に変性脂肪族アミン(ジャパンエポキシレジン(株)社製、商品名:JERキュアTO184)の15%水溶液30部を加えて、80℃にて2時間加熱攪拌を行い、蓄熱材マイクロカプセルの分散液を得た。
【0037】
(実施例6)
ポリビニルアルコールをスチレン−無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩水溶液に変え、高速攪拌条件を周速25m/分、乳化時間15秒とすること以外は実施例1と同様にして体積平均粒子径3.6μmの乳化分散液を調整した。この乳化液にトリエチレンテトラミンの15%水溶液を実施例1と同様の比率になるように加えて、80℃にて2時間加熱攪拌を行い、蓄熱材マイクロカプセルの分散液を得た。
【0038】
(実施例7)
トリレンジイソシアネートをカルボジイミド変性ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(コスモネートLL)に、ポリビニルアルコール水溶液をスチレン−無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩水溶液に変え、高速攪拌条件を周速25m/分、乳化時間15秒とすること以外は実施例1と同様にして体積平均粒子径3.5μmの乳化分散液を調整した。この乳化液に変性脂肪族アミン(ADEKA社製、商品名:アデカハードナーEH−427)の15%水溶液を実施例1と同様の比率になるように加えて、80℃にて2時間加熱攪拌を行い、蓄熱材マイクロカプセルの分散液を得た。
【0039】
(実施例8)
実施例7と同様にして、連続式乳化による乳化分散液の調製を行った。体積平均粒子径は3.4μmであった。この乳化液にN−(2−ヒドロキシプロピル)トリエチレンテトラミンの15%水溶液を実施例1と同様の比率になるように加えて、80℃にて2時間加熱攪拌を行い、蓄熱材マイクロカプセルの分散液を得た。
【0040】
(実施例9)
高速攪拌条件を周速25m/分、乳化時間15秒とすること以外は実施例1と同様にして、連続式乳化による乳化分散液の調製を行った。体積平均粒子径は3.3μmであった。この乳化液にN−(2−ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミンの15%水溶液を実施例1と同様の比率になるように加えて、80℃にて2時間加熱攪拌を行い、蓄熱材マイクロカプセルの分散液を得た。
【0041】
(実施例10)
高速攪拌条件を周速35m/分、乳化時間15秒とすること以外は実施例5と同様にして、連続式乳化による乳化分散液の調製を行った。体積平均粒子径は2.5μmであった。この乳化液に変性脂肪族アミン(JERキュアTO−184)の15%水溶液30部を加えて、80℃にて2時間加熱攪拌を行い、蓄熱材マイクロカプセルの分散液を得た。
【0042】
(比較例1)
ラウリル酸ラウリル、ラウリン酸アマイド、トリレンジイソシアネート及びスチレン−無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩水溶液の添加比率は実施例3と同様にして、ローター、ステーター配管組み込み型のパイプラインミキサー型連続式乳化機(プライミクス社製、商品名:TKホモミックラインフローFL−100型)を用いて、回転数7000rpm、出口送液量70kg/時の条件で、体積平均粒子径が3.9μmの乳化分散液の調製を行った。この乳化液を実施例3と同様に処理して蓄熱材マイクロカプセルの分散液を得た。
【0043】
(比較例2)
パイプラインミキサー型連続式乳化機にラウリル酸ラウリル、ラウリン酸アマイド、トリレンジイソシアネート及びポリビニルアルコールを供給する前に、羽根刃ローターとステーターを組み合わせたバッチ式の乳化分散機(プライミクス社製、商品名:TKホモミキサー)を用いて予備分散を行い、連続式乳化機に回転数7000rpm、出口送液量66kg/時の条件で供給した以外は比較例1と同様にして、体積平均粒子径が3.7μmの乳化分散液の調製を行った。この乳化液を実施例3と同様に処理して蓄熱材マイクロカプセルの分散液を得た。なお、この乳化液作製においては、2台の乳化分散機を使ったために液ロスが大きく、また、準備や清掃に多大な労力を要し、時間当たりの生産性としては非常に効率の悪い作業であった。
【0044】
(比較例3)
バッチ式の乳化分散機(TKホモミキサー)を用いて、回転数9000rpmで10分間攪拌乳化して、体積平均粒子径が4.0μmの乳化分散液を作製した以外は実施例1と同様にして、蓄熱材マイクロカプセルの分散液を得た。
【0045】
「粒度分布の広がりの評価」
粒度分布測定結果で、小粒径側から測定した場合の粒子体積が20%、50%、80%の時の粒径値をD20、D50、D80として、(D80−D20)/D50の計算値により粒度分布の広がりの目安とし、評価した。数値が小さい方が粒度分布が狭く、均一な粒度分布を有していることを表し、数値が大きい方が粒度分布が広く、粗大粒子や極微小粒子が多く存在することを表す。
【0046】
「耐熱性の評価」
蓄熱材マイクロカプセル分散液2gを底面内径5cmのアルミカップに採取し、恒温乾燥機中で100℃、2時間加熱して得た乾燥物(質量W1)を、更に200℃で3時間加熱してその質量W2を測定した。熱減率(%)=(W1−W2)/W1×100を計算して耐熱性の指標とした。芯物質が同じであれば、熱減率が小さい方がマイクロカプセルの耐熱性が優れていることを表す。
【0047】
実施例1〜10及び比較例1〜3で得られた蓄熱材マイクロカプセル分散液について、「粒度分布の広がり」、「耐熱性」の評価を行い、表1に示した。
【0048】
【表1】

【0049】
表1の結果より、薄膜旋回型高速ミキサーを用いた場合は、バッチ式乳化、連続式乳化のいずれの方法を用いても粒度分布の狭い乳化分散液が得られ、蓄熱材マイクロカプセルとしても耐熱性の優れたマイクロカプセルであるが、従来型のバッチ式分散機やパイプラインミキサー型連続式乳化機を単独で用いた場合は粒度分布の広い乳化液しか得られず、耐熱性の劣ったマイクロカプセルであることが分かる。従来型のバッチ式分散機を用いた場合には、小粒径化に時間を長く要するために、その間にイソシアネートと水との反応が進み耐性の弱い皮膜になったと考えられる。また、従来型パイプラインミキサー型連続式乳化機の乳化能力を補うために従来型のバッチ式分散機を用いて予備分散を行った場合は、比較的粒度分布の狭い乳化液が得られたが、薄膜旋回型高速ミキサーで得られる性能には及ばないことが分かる。
【0050】
(実施例11)
実施例1で使用した薄膜旋回型高速ミキサーを用いて、連続式乳化分散によりノーカーボン感圧複写紙用発色剤マイクロカプセル用の乳化分散液を作製した。フェニルキシリルエタンを主成分とする溶剤(日本石油化学社製、商品名:ハイゾールSAS−296)にクリスタルバイオレットラクトン(CVL)を3%、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(日本ポリウレタン社製、商品名:MR−300)を4%、ビュレット体を有するヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(住友バイエルウレタン社製、商品名:スミジュールN−3200)を4%溶解した疎水性液体とスチレン−無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩の5%水溶液を質量比が1:1となるように薄膜旋回型高速ミキサーに供給し、30℃にて周速30m/分、乳化時間15秒の条件で連続式乳化を行い、体積平均粒子径が6.7μmの乳化分散液を得た。この乳化分散液200部に変性脂肪族アミン(JERキュアTO−184)の10%水溶液10部を添加して、攪拌しながら80℃まで昇温して3時間反応させた後、室温まで温度を下げて発色剤マイクロカプセル分散液を得た。
【0051】
(実施例12)
スチレン−無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩の代わりにポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:ポバール217)を用い、周速を25m/分、乳化時間10秒とする以外は実施例11と同様にして、体積平均粒子径が6.0μmの乳化分散液を得た。この乳化分散液200部にトリエチレンテトラミンの10%水溶液10部を添加して、攪拌しながら80℃まで昇温して3時間反応させた後、室温まで温度を下げて発色剤マイクロカプセル分散液を得た。
【0052】
(実施例13)
フェニルキシリルエタンを主成分とする溶剤(ハイゾールSAS−296)にクリスタルバイオレットラクトン(CVL)を3%、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(MR−300)を4%、ビュレット体を有するヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(スミジュールN−3200)を4%溶解した疎水性液体114部をポリビニルアルコール(ポバール217)の5%水溶液136部に加えて、薄膜旋回型高速ミキサーを用いて、30℃にて周速25m/分、乳化時間15秒の条件でバッチ式乳化を行い、体積平均粒子径が6.0μmの乳化分散液を得た。この乳化分散液に、トリエチレンテトラミンの10%水溶液12.5部を加えて、攪拌しながら80℃まで昇温して3時間反応させた後、室温まで温度を下げて発色剤マイクロカプセル分散液を得た。
【0053】
(実施例14)
フェニルキシリルエタンを主成分とする溶剤(ハイゾールSAS−296)にクリスタルバイオレットラクトン(CVL)を3%溶解した疎水性液体とスチレン−無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩の5%水溶液を質量比が1:1となるように薄膜旋回型高速ミキサーに供給し、60℃にて周速30m/分、乳化時間10秒の条件で連続式乳化を行い、体積平均粒子径が6.6μmの乳化分散液を得た。この乳化分散液200部に、メラミン粉末10部に37%ホルムアルデヒド水溶液19.3部と水30部を加えて加熱溶解したメラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物水溶液を加えて、攪拌しながら80℃まで昇温して3時間反応させた後、室温まで温度を下げて発色剤マイクロカプセル分散液を得た。
【0054】
(比較例4)
実施例8と同様の配合比率で、バッチ式の乳化分散機(TKホモミキサー)を用い、回転数9000rpmで体積平均粒子径が6.0μmの乳化分散液を作製しようとしたが、乳化開始から2分後に約10μmとなった以降は小粒径化が進まず、乳化分散液の作製を断念した。これは、小粒径化よりも早くイソシアネートの反応が進み、乳化途中で皮膜が形成されてしまったためと思われる。
【0055】
(比較例5)
パイプラインミキサー型の連続式乳化機(TKホモミックラインフローFL−100型)を用いて、実施例14と同様の添加比率で、回転数6000rpm、出口送液量70kg/時の条件で、体積平均粒子径が6.0μmの乳化分散液の調製を行った。この乳化液を実施例14と同様に処理して発色剤マイクロカプセルの分散液を得た。
【0056】
「ノーカーボン感圧複写紙の作製」
実施例11〜14及び比較例5で得られた発色剤マイクロカプセル分散液100部に、澱粉粒子20部、ポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:ポバール110)10%水溶液20部を加え、メイヤーバーで坪量が40g/m2の原紙に固形分として3.5g/m2となるように塗工してノーカーボン感圧複写紙上用紙を作製した。
「発色性試験」
作製した上用紙と市販のノーカーボン感圧複写紙下用紙(三菱製紙社製、商品名:三菱NCR紙N−40下)を組み合わせ、カレンダーロールに20kg/cm2の荷重を掛けて通紙し、発色させた。マクベス濃度計にて発色濃度を測定した。数値の大きい方が発色濃度が高く良好なことを表す。
「汚染性試験」
作製した上用紙と市販のノーカーボン感圧複写紙下用紙(三菱NCR紙N−40下)を組み合わせ、4kg/cm2の荷重を掛けて3回擦り合わせた。下用紙表面の発色汚れの程度を目視で判定した。判定基準は、○:ほとんど汚れ無し、△:やや汚れあり、×:汚れあり、とした。○、△は実用可能なレベルである。
【0057】
実施例11〜14及び比較例5で得られた発色剤マイクロカプセル分散液の「粒度分布の広がり」と、作製した上用紙の発色性、汚染性の評価を行い、表2に示した。
【0058】
【表2】

【0059】
表2の結果より、薄膜旋回型高速ミキサーを用いた場合は、バッチ式乳化、連続式乳化のいずれの方法を用いても粒度分布の狭い乳化分散液が得られ、発色性に優れ、発色汚れの少ないノーカーボン感圧複写紙用マイクロカプセルであることが分かる。一方、従来型のパイプラインミキサー型連続式乳化機を用いた場合は粒度分布の広い乳化液しか得られず、発色性、発色汚れの点で劣ったノーカーボン感圧複写紙マイクロカプセルとなった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のマイクロカプセルの製造方法を用いることにより、熱、圧力、溶剤等の外部因子に対する耐性において優れた蓄熱材マイクロカプセルが得られ、長期間あるいは多数回の熱刺激環境での使用に耐える蓄熱商品の製造が可能となる。また、ノーカーボン感圧複写紙用として、発色性、発色汚れにおいて優れたマイクロカプセルを効率良く生産することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本実施形態に係わる高速攪拌装置を示す詳細部分断面切欠図である。
【図2】本実施形態に係わる高速攪拌装置の縦断面及び一部断面図である。
【図3】回転羽根の断面図(a)、平面図(b)及び側面図(c)である。
【符号の説明】
【0062】
1 高速攪拌装置
2 攪拌槽
4 外槽
6 温度調節媒体用配管
8 回転羽根
10 シャフト
11 開口部
12 堰板
13 排出管
14 上部容器
15 温度調節用媒体室
16 蓋
17、18 供給管
19、20 弁
24 多孔円筒部
26 アーム
28 ボス
30 小孔
32 連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形の撹拌槽と、この攪拌槽と同心にて外径が攪拌槽内径より僅かに小さい回転羽根と、この回転羽根を端部に有する高速回転可能なシャフトとを備え、シャフトを高速回転させて回転羽根を高速回転させることにより、攪拌槽に導入された被処理液を攪拌槽の内周面に沿って薄膜円筒状に高速回転させながら攪拌する高速攪拌装置であって、前記回転羽根が、回転羽根の円筒体の周面に小孔を多数貫通して設けた多孔円筒部分を外周側に有し、当該多孔円筒部の中央にてアームでボスと一体的にしてホイール状に形成された構造を有しており、該高速撹拌装置により疎水性液体を親水性液体中に乳化分散した後、疎水性液体の周囲に皮膜を形成することを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
【請求項2】
皮膜が、多価イソシアネートと多価アミンとの反応を利用したポリウレア樹脂あるいはポリウレタンウレア樹脂である請求項1記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項3】
疎水性液体が、蓄熱材である請求項1または2記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項4】
疎水性液体が、電子供与性発色剤を含有し、マイクロカプセルがノーカーボン感圧複写紙用である請求項1または2記載のマイクロカプセルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−148676(P2009−148676A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327809(P2007−327809)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】