説明

マイクロカプセルの製造方法

【課題】粒度分布の広がりを良好に抑制したマイクロカプセルを簡便に製造することができるマイクロカプセルの製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも芯物質および重合性物質を含有する油相を、非イオン性水溶性分散剤を用いて水相中に乳化し乳化液を調製する乳化工程と、前記乳化液を高温加熱した状態で高分子反応試薬を添加し、前記重合性物質を界面重合してカプセル壁を形成する重合工程と、を有するマイクロカプセルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロカプセルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軽量で柔軟性があり表示メモリ性を示す表示媒体である電子ペーパーの技術として、電気泳動表示、磁気泳動表示、液晶表示などの技術を用いた技術群が知られている。中でも電気泳動表示や液晶表示などは、液状の表示材料をマイクロカプセル中に封入して表示層を形成することによって高い生産性が期待される。
【0003】
近年では、電子ディスプレイや光シャッターの製造に最適な液晶、ポリメリック材料等の使用で、関連技術は一層改良されている。これらの技術では、乳剤法(例えば、特許文献1参照)と相分離法の2つの手法が一般に用いられている。
【0004】
ポリビニールアルコール(PVA)フィルムに分散されている、カプセル化された液晶滴は、オフの状態では光を透さないが、電界が加えられると透過性を示す。NCAP(Nematic Curvilinear Aligned Phase)と呼ばれるポリマー液晶フィルムは、一般にはネマティック型の液晶材で、水性PVAの液晶材を乳化して製造される。乳濁液が、インジウム錫酸化物でコーティングされた基板上に引き出され、乾燥後、別のインジウム錫酸化物でラミネートされる。光の散乱をベースとした液晶/ポリマーフィルムは、機能を発揮するのに偏光プリズムを必要としない。その製造工程では、液晶材に送られる処理水やPVA、ラテックスなどの分散剤に含まれた不純物による汚染がある。
【0005】
また、PVA/液晶の混合比、PVA重合度、PVA鹸化度を規定したPVA分散型液晶/高分子複合膜が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
また、界面重合によるポリウレタン/ポリウレア壁に液晶材を封入したマイクロカプセルが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】米国特許4,435,047号
【特許文献2】特開平6−32959号公報
【特許文献3】特開平11−80734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、マイクロカプセルを用いた表示媒体の表示特性を向上させるためには、粒径の揃った粒子が必要とされている。また、より安価に市場に提供するために製造コストの低減が求められており、特殊な装置を用いず生産性の高い製法が必要とされている。
【0007】
液晶に代表される低粘度の液体を高分子膜で内包する場合、油滴(油相)としての分散安定性の低さから、従来においては粒度分布に広がりが生じてしまう問題があった。粒度分布の広いマイクロカプセルを用いて表示媒体を作製した場合、粒子によって駆動電圧が異なり、急峻な立ち上がりが期待できない。
この問題を改善するため、膜乳化やマイクロチャネル等の精密な液滴形成手段を用いてマイクロカプセルを得る方法も考えられるが、膜乳化やマイクロチャネルは生産性が低く、工業的に適用するには課題が多い。特にイソシアネートと、アミンまたはアルコールとを用いた界面重合を利用する場合、乳化中に反応が進行し固化することから細孔がふさがってしまうという欠点があった。
【0008】
本発明は、粒度分布の広がりを良好に抑制したマイクロカプセルを簡便に製造することができるマイクロカプセルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下の本発明により達成される。
即ち、請求項1に係る発明は、少なくとも芯物質および重合性物質を含有する油相を、非イオン性水溶性分散剤を用いて水相中に乳化し乳化液を調製する乳化工程と、前記乳化液を高温加熱した状態で高分子反応試薬を添加し、前記重合性物質を界面重合してカプセル壁を形成する重合工程と、を有するマイクロカプセルの製造方法である。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記乳化工程の後、前記乳化液における重合性物質の残存基が50%以上残存している状態で前記高分子反応試薬の添加を行う請求項1に記載のマイクロカプセルの製造方法である。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記油相が疎水性低粘度液体である請求項1または請求項2に記載のマイクロカプセルの製造方法である。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記油相が、芯物質として液晶を含有する請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のマイクロカプセルの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、粒度分布の広がりを良好に抑制したマイクロカプセルを簡便に製造することができる。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、粒度分布の広がりをより良好に抑制したマイクロカプセルを簡便に製造することができる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、低粘度の液体を芯物質として用いた場合であっても、粒度分布の広がりを良好に抑制したマイクロカプセルを簡便に製造することができる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、粒度分布の広がりを良好に抑制した液晶含有マイクロカプセルを簡便に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、好ましい実施形態について詳細に説明する。
<マイクロカプセルの製造方法>
第1の実施形態に係るマイクロカプセルの製造方法は、まず、芯物質および重合性物質を含有する油相を、非イオン性水溶性分散剤を用いて水相中に乳化し乳化液を調製する乳化工程と、前記乳化液を高温加熱した状態で高分子反応試薬を添加し、前記重合性物質を界面重合してカプセル壁を形成する重合工程と、を有してなる。
より具体的には、芯物質および油溶性の重合性物質に溶剤を加えて溶解混合した油相を、非イオン性水溶性分散剤を添加した水溶液(水相)中に乳化し、水相との界面に移動した油相中の前記重合性物質を、油相と水相との界面で重合させ、芯物質を包み込む状態で高分子物質(カプセル壁)を形成することにより得ることができる。
【0018】
即ち、第1の実施形態に係る製造方法では、(1)非イオン性水溶性分散剤を用いて乳化した後、(2)乳化液を高温加熱し、(3)加熱された状態で高分子反応試薬を添加して界面重合を行う、ことによりマイクロカプセルを形成することを要する。
(1)界面活性の低い非イオン性水溶性分散剤を用いることにより、過剰な乳化が抑制されて微小粒子の生成が制御され、(2)乳化後に高温加熱することで、カプセル壁の形成初期において高分子物質が軟化されて液滴の合一が促進され、(3)加熱された状態で高分子反応試薬を用いることで、効率的に界面重合が進行するものと推察される。
【0019】
尚、上記重合工程における「高温加熱」とは、少なくとも40℃以上の温度にまで加熱することを表し、更には50℃以上に加熱することがより好ましく、60℃以上に加熱することが特に好ましい。また、加熱温度の上限値としては100℃以下とすることが好ましい。
【0020】
また、上記高分子反応試薬の添加は前記乳化工程の直後に行うことが好ましく、より具体的には、乳化液における重合性物質の残存基が50%以上残存している状態で行うことが好ましい。更には70%以上残存している状態がより好ましく、80%以上残存している状態が特に好ましい。
尚、上記「残存基」とは、イソシアネート基を表し、上記重合性物質の残存基の残存率は、以下の方法により測定することができる。
フーリエ変換赤外分光光度計(HORIBA製作所製、FT−730)を用いてサンプリング液を直接セルに入れ、速やかに赤外吸収スペクトルを測定することによって測定される。標準物質としては、チオシアン酸ナトリウムを加えて定量が行われる。尚、本明細書に記載の数値は、上記方法によって測定したものである。
【0021】
ここで、第1の実施形態に係るマイクロカプセルの製造方法を、図面を用いて説明する。図1は、第1の実施形態に係るマイクロカプセルの製造方法に用いられる製造装置を表す概略構成図である。
図1に示す製造装置は、芯物質、重合性物質および溶剤を少なくとも溶解混合した油相と、非イオン性水溶性分散剤を添加した水溶液(水相)と、が入れられる反応槽101の中に、上記油相および水相を乳化する乳化装置102Aを備える。また、前記反応槽101の上部に高分子反応試薬を投入する反応試薬投入装置104Aを備え、前記反応槽101の下部には乳化液を高温加熱する電磁誘導加熱装置103Aを備える。
【0022】
=乳化工程=
第1の実施形態に係るマイクロカプセルの製造方法において、乳化工程では、水相を入れた反応槽101中に油相を加え、乳化装置102Aによって乳化が行われる。
【0023】
(油相/芯物質)
第1の実施形態に係るマイクロカプセルの製造方法では、芯物質(内包物)として油性組成物であれば何でも用いることができ、低粘度(50mPa・s以下)な油性組成物でも容易に内包することができる。具体的な芯物質としては、液晶材料、インク、オイル、香料、接着剤、生理活性物質、忌避剤、難燃剤、消臭剤、植物精油、ミルク、薬品等が挙げられる。
【0024】
上記液晶材料としては低分子液晶が挙げられ、例えば、ネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶(カイラルネマチック液晶を含む)、あるいはこれらの液晶材料に二色性色素を添加したゲストホスト液晶等が挙げられる。
【0025】
前記コレステリック液晶を芯物質としてカプセル化する場合、コレステリック液晶としては、例えば、ステロイド系コレステロール誘導体;不斉炭素を有するシッフ塩基系、アゾ系、エステル系、ビフェニル系等のカイラル物質;これらのカイラル物質を、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、エタン系、ビフェニル系、ターフェニル系、シクロヘキシルカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、安息香酸エステル系、ピリミジン系、ジオキサン系、トラン系、シクロヘキシルシクロヘキサンエステル系、アルケニル系等のネマチック液晶またはこれらの混合物に添加した液晶材料等が挙げられる。
【0026】
(油相/重合性物質)
カプセル壁形成用の重合性物質としては、重合性の単量体が好ましく用いられ、好ましい具体的としては、イソシアナート化合物、酸ハロゲン化物、エポキシ化合物が挙げられる。
上記イソシアナート化合物としては、メタフェニレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、3,3’−ジメチル−ジフェニル−4,4’−ジイソシアナート、3,3’−ジメチル−ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート等のジイソシアナート、あるいは、いわゆるビュレット型、アダクト型、イソシアヌレート型として知られているポリイソシアナート類が挙げられる。例えば、住友バイエルウレタン社製のスミジュールシリーズ、三井化学ポリウレタン社製のタケネートシリーズ、日本ポリウレタン工業社製のミリオネートシリーズとして市販されているポリイソシアナート類が好適に用いられる。
【0027】
(油相/溶剤)
油相に用いられる溶剤としては、酢酸エステル類、メチレンクロライド、シクロヘキサノン等が挙げられる。また、油相の芯物質を溶解させることができ、かつカプセル壁を溶解しないものなら何でもよく、この条件を満たすものであれば他の溶剤を併用することも可能である。
【0028】
(水相/非イオン性水溶性分散剤)
乳化工程の際水相に添加される非イオン性水溶性分散剤としては、特にセルロース系分散安定剤が好適に使用される。ここで言うセルロース系分散安定剤とは、セルロースを化学的に処理して水溶性としたもので、水溶液を加熱すると白濁して、ゲル化する性質を有するものを意味する。
中でもセルロースを苛性ソーダで処理した後、塩化メチル、酸化プロピレンあるいは酸化エチレン等のエーテル化剤と反応させて得られる水溶性セルロースエーテルが好ましい。その理由は、低濃度でも粘度を高くすることができ、分散安定性に優れているからである。具体的には、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。市販品としては、信越化学社製メトローズシリーズが挙げられ、メトローズ60SH50、65SH50、65SH4000、90SH400、90SH4000、SEB04T等が好ましい。
尚、ゲル化温度が高い方が発泡しにくい傾向にあるため好ましく、60℃以上のものが好ましい。
【0029】
また、非イオン性水溶性分散剤としては、上記セルロース系分散安定剤のほかにも、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリメチルビニルエーテル、ポリアクリロイルモルホリン、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート−コ−アクリルアミド等を好適に用いることができる。
【0030】
これらの非イオン性水溶性分散剤は、水相100部に対して0.1部以上10部以下の範囲で用いることが好ましい。上記非イオン性水溶性分散剤の選択や添加量の調整等によって、形成される油性液滴(油相)の粒子径を自由に設定することができる。
【0031】
(乳化装置)
乳化装置102Aとしては、従来公知の汎用装置を適用することができ、具体例には各種乳化装置、分散機、ホモジナイザー、超音波分散機等が挙げられる。また、マイクロチャネルや膜乳化装置を用いることにより、更に良好な粒度分布を持つマイクロカプセルを得ることもできる。
【0032】
=重合工程=
第1の実施形態に係るマイクロカプセルの製造方法においては、上記乳化工程の後、反応槽101中の乳化液が電磁誘導加熱装置103Aによって高温加熱され、次いで反応試薬投入装置104Aから高分子反応試薬が投入される。これにより、水相との界面に移動した油相中の重合性物質が油相と水相との界面で重合され、芯物質を包み込む状態で高分子物質(カプセル壁)を形成し、重合工程が行われる。
【0033】
(高分子反応試薬)
ここで、「高分子反応試薬」とは、分子量が1000以上でかつ油相中の重合性物質と反応して膜厚50nm以上のカプセル壁を形成し得る試薬を表す。
【0034】
第1の実施形態に用い得る高分子反応試薬としては、まず好適な例として多官能アミン化合物が挙げられる。多官能アミン化合物としては、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、およびポリアリルアミン等が挙げられる。
【0035】
また、分子内に2個以上の、1級もしくは2級アミノ基を有する多官能低分子アミン化合物(分子量1000以下のもの)を併用することが出来る。
上記多官能低分子アミン化合物としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、メンタンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシルノメタン、イソフォロンジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、スピロアセタール系ジアミン等が挙げられる。さらに、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等の高分子量の多官能アミン化合物が挙げられる。好ましくは、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等の高分子量の多官能アミン化合物が挙げられる。
また、場合によっては単官能アミン化合物として、例えばベンジルアミン、フェネチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、n−ペンチルアミン、イソペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ドデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−オクタデシルアミンなどを併用することができる。
【0036】
また、高分子反応試薬としては、上記多官能アミン化合物および単官能アミン化合物のほかにも、例えば、グリコール、多価フェノール等を好適に用いることができる。
【0037】
(加熱方法および加熱装置)
重合工程において乳化液を高温加熱する手段としては、図1に示すとおり(1)乳化後の反応容器101を電磁誘導加熱装置103Aによって加熱する方法が挙げられる。
【0038】
尚、加熱の方法は上記(1)の方法に限定されるものではなく、例えば(2)乳化後の乳化液を、予め加熱しておいた容器(重合槽)に移し替える方法が挙げられる。
ここで、加熱方法として上記(2)の手段を採用した第2の実施形態に係るマイクロカプセルの製造方法を、図面を用いて説明する。図2は、第2の実施形態に係るマイクロカプセルの製造方法に用いられる製造装置を表す概略構成図である。
図2に示す製造装置は、芯物質、重合性物質および溶剤を少なくとも溶解混合した油相と、非イオン性水溶性分散剤を添加した水溶液(水相)と、が入れられる乳化槽105の中に、上記油相および水相を乳化する乳化装置102Bを備える。また、乳化槽105の下部には、乳化後の乳化液がそのまま流し込まれる重合槽106を備える。該重合槽106の上部には高分子反応試薬を投入する反応試薬投入装置104Bを備え、重合槽106の中には前記乳化液と高分子反応試薬とを攪拌する攪拌装置107を備え、更に重合槽106の下部には乳化液を高温加熱する電磁誘導加熱装置103Bを備える。
【0039】
第2の実施形態に係るマイクロカプセルの製造方法において、乳化工程では、水相を入れた乳化槽105中に油相を加え、乳化装置102Bによって乳化が行われる。
次いで、あらかじめ電磁誘導加熱装置103Bによって高温加熱された重合槽106中に、乳化後の乳化液が乳化槽105から流し込まれ、乳化液が高温加熱される。次いで反応試薬投入装置104Bから高分子反応試薬が投入され、攪拌装置107によって攪拌される。これにより、水相との界面に移動した油相中の重合性物質が油相と水相との界面で重合され、芯物質を包み込む状態で高分子物質(カプセル壁)を形成し、重合工程が行われる。
【0040】
上記第1または第2の実施形態に係るマイクロカプセルの製造方法によって得られるマイクロカプセルは、例えば、芯物質として液晶材料を用いたものであれば光書き込み型表示媒体等に好適に用い得る。また、芯物質して香料を用いたものは消臭剤や芳香剤等、芯物質して忌避剤を用いたものは防鼠剤等、芯物質としてインクを用いたものは目詰まり防止インク等に好適に用い得る。
【0041】
<光書き込み型表示媒体>
次いで、前記第1または第2の実施形態に係るマイクロカプセルの製造方法によって製造されたマイクロカプセルが適用される一形態として、光書き込み型表示媒体について図面を参照して説明する。
図3は、上記光書き込み型表示媒体(電子ペーパー)の断面図である。ここでは一例としてコレステリック液晶マイクロカプセルを用いた光書き込み型表示媒体の構成を説明する。
【0042】
前記光書き込み型表示媒体は、透明基板1の上の透明電極2に液晶マイクロカプセル3およびバインダ樹脂4を含む表示層5、接着層6、隔離層7、さらに第二電荷発生層8、電荷輸送層9、第一電荷発生層10からなる感光体層(光スイッチング素子)11、黒色層12、電極13、基板14を順次積層した構成となっている。透明電極2と電極13には電圧印加部(図示せず)が接続される。感光体層11には透明基板1から基板14の方向に画像状の露光パターンが照射されるのと同期して、透明電極2と電極13とで挟持される領域に駆動電圧が印加され、印加電圧除去時に表示層5上に画像が形成される。
【0043】
ここで、前記光書き込み型表示媒体の動作原理は以下のものである。
感光体層11には透明基板1から基板14の方向に光照射が行われ、駆動電圧が印加される。表示層5には、このとき表示層5、接着層6、隔離層7、感光体層11で分圧された駆動電圧が印加される。感光体層11の電気抵抗は露光の強度により変化する。したがって露光強度が大きい場合には電気抵抗が低くなり、表示層5への印加電圧が大きくなる。一方露光強度が小さい場合には電気抵抗は高くなり、表示層5への印加電圧は小さくなる。この電圧の大小により液晶の相は変化して、反射率の大小が生じる。
コレステリック液晶は表示のメモリ性を示すため露光と電圧除去後にも相変化によって生じた反射率の大小は露光像の形のまま残ることとなる。
【0044】
次いで、前記光書き込み型表示媒体の製造方法について説明する。
まず、透明基板1に形成された透明電極2上に表示層5を形成する。表示層5の前駆体は液晶マイクロカプセル3とバインダ樹脂4を含む水系混合物であり、該水系混合物を透明電極2上に塗布乾燥することによって表示層5は形成される。
一方基板14上に形成された電極13に対して、黒色顔料分散物を塗布乾燥して黒色層12を形成し、さらに電荷発生材料分散物、電荷輸送材料混合溶液、電荷発生材料分散物を順次塗布乾燥することにより第一電荷発生層10、電荷輸送層9、第二電荷発生層8からなる感光体層11を形成する。その後感光体層11上にさらに水系樹脂水溶液を塗布乾燥して隔離層7を形成し、接着剤を塗布乾燥して接着層6を形成する。最後に接着層6と表示層5を貼り合せることによって前記光書き込み型表示媒体が得られる。
【0045】
透明基板1としては、透明な絶縁体シートもしくはフィルムを用いることができる。透明基板1として適当な材料としてはポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、トリアセチルセルロースなどの透明性樹脂、ガラス、セラミックスなどが利用できる。透明性樹脂を使う場合には必要に応じて水蒸気バリア層を付加形成することが望ましい。
【0046】
透明電極2としては、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛などの導電性透明金属酸化物、金などの金属薄膜、ポリピロールなどの透明導電性高分子が利用できる。
【0047】
表示層5に含まれる液晶(コレステリック液晶)マイクロカプセル3としては、前述の第1または第2の実施形態に係るマイクロカプセルの製造方法によって得られたマイクロカプセルであって、芯物質としてコレステリック液晶を含有するものが用いられる。
【0048】
バインダ樹脂4としては、透光性を有し適度な強度を持つ材料が用いられる。この素材としてはエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、オレフィン樹脂、ビニル樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、セルロース樹脂などの樹脂や、ガラス、セラミックなどが利用できる。バインダ樹脂4は必要に応じて着色してもよい。
【0049】
表示層5は、バインダ樹脂4中に液晶マイクロカプセル3を分散してなる複合素材である。該構成の表示層5は、液晶マイクロカプセル3の粒径に応じて表面に凹凸が形成される。
表示層5の形成方法としては、スクリーン印刷、凸版印刷、凹版印刷、平板印刷、フレクソ印刷などの印刷法や、スピンコート法、バーコート法、ディップコート法、ロールコート法、ナイフコート法、ダイコート法などの塗布法を用いることができる。尚、表示層5は、透明電極2上に形成されていれば透明電極2と直接接する必要はなく、密着力を向上させるために表示層5と透明電極2とが、短絡を防止するための絶縁層としてのアンカーコート層を介して設けることができる。また、駆動電圧に対する影響が無視できる範囲で、その他表示機能層を設けてもよい。
【0050】
接着層6の素材としては、アクリレート系、ウレタン系、シアノアクリレート系、シリコーン系、イソプレンなどのゴム系、エチレン−酢酸ビニル共重合体など、公知の接着剤が利用できる。接着剤のタイプは、2液硬化型、熱硬化型、湿気硬化型、紫外線硬化型、ホットメルト型、感圧型(粘着剤)など特に限定されるものではない。接着層6の形成は、前記表示層5の形成に用いた方法をそのまま採用することができる。
【0051】
隔離層7としては、水溶性樹脂、水/有機溶剤可溶樹脂、水系のエマルジョン・ディスパージョン・ラテックスなどが利用できる。
水溶性樹脂としてはポリビニルアルコール、メチルセルロース・エチルセルロースなどのアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミドなどのポリアクリル酸エステル、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、澱粉、カゼイン、にかわ、ゼラチン、アラビアゴム、グアーガム、アルギン酸塩、ローカストビーンガム、カラギーナン、タマリンド、ペクチンの他、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基などの親水性基を有するウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などが利用できる。
水/有機溶剤可溶樹脂としてはエチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、ポリグリセリンや、水/有機溶剤に可溶な各種樹脂が利用できる。
水系のエマルジョン・ディスパージョン・ラテックスとしては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリアクリレート、スチレン−ブタジエン・ゴム、ニトリル−ブタジエン・ゴムなどが利用できる。
隔離層7には接着剤に含まれる低分子非水成分、有機溶媒などの拡散を防ぐ目的があるため有機溶媒に膨潤しにくい水溶性樹脂が最も望ましい。
【0052】
第二電荷発生層8および第一電荷発生層10としては、電荷発生物質とバインダ樹脂を含む材料が利用できる。電荷発生物質としては、a−Si、ZnS、ZnO、CdS、CdSe、Se、SeTe、TiOなどの無機材料や、フタロシアニン系、アゾ系、多環キノン系、インジゴ系、キナクリドン系、ペリレン系、スクエアリウム系、アズレニウム系、シアニン系、ピリリウム系などの有機材料を用いることができる。バインダ樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラール、アクリル、メタクリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、これらの共重合体などを用いることができる。
第二電荷発生層8および第一電荷発生層10は、電荷発生物質を、蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、CVD法などによって成膜する、もしくは電荷発生物質をバインダ樹脂に分散させて、バーコート法、スピンコート法、ロールコート法、ディップ法、キャスティング法などによって塗布形成することができる。
【0053】
電荷輸送層9には、電荷輸送物質として、カルバゾール系、トリアゾール系、オキサジアゾール系、イミダゾール系、ピラゾリン系、ヒドラゾン系、スチルベン系、アミン系、ニトロフルオレノン系などの有機材料を用いることができる。
【0054】
尚、感光体層11は、照射光量に応じてインピーダンスが変化するものであればよく、上記の機能分離型の感光体に限定されず、電荷発生材料と電荷輸送材料が混合した一体型の有機感光材料であってもよい。
【0055】
黒色層12は、表示層5からの透過光を吸収する目的で設けられる。吸収が必要な波長範囲は可視波長全域、特に波長400nm以上700nm以下の範囲で遮光性能を示す必要がある。遮光性能としては透過光の光学濃度が0.5以上であることが好ましく、更には1以上がより好ましい。
黒色層12の素材としては、黒色の素材であれば特に限定されるものではなく、カーボンブラック、アニリンブラックなどの有機顔料、CuO、MnO、Cr、Fe−Cr系顔料、Cu−Fe−Mn系顔料などの無機顔料などの黒色顔料を、ポリビニルアルコール樹脂、ナイロン樹脂、ゼラチン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などのバインダ樹脂中に分散した黒色塗料などが利用できる。
黒色層12の形成方法としては、スクリーン印刷、凸版印刷、凹版印刷、平板印刷、フレクソ印刷などの印刷法や、スピンコート法、バーコート法、ディップコート法、ロールコート法、ナイフコート法、ダイコート法などの塗布法を用いることができる。
【0056】
電極13の材料としては、透明電極2と共通の材料系のほかに、光を透過しない金属、カーボンブラックなどの材料が利用できる。
【0057】
基板14の材料としては、透明基板1と共通の材料系のほかに、光を透過しない樹脂、ガラス、セラミックスなどの材料が利用できる。尚、電極13の厚みが充分に大きく、表示層5へ加えられる外力が分散されカプセルの破壊による障害が見られない状況においては、基板14を電極13と共通とみなす、もしくは省略することができる。
【実施例】
【0058】
[実施例1]
(液晶マイクロカプセル塗料の調製)
コレステリック液晶としては、ネマチック液晶E7(メルク社製)84質量部に対して、カイラル剤R811(メルク社製)を12.8質量部と、カイラル剤R1011(メルク社製)を3.2質量部と、を添加して準備し、青緑色の選択反射を有するコレステリック液晶を得た。
【0059】
このコレステリック液晶10質量部に対して、ポリイソシアネート化合物(タケネートD−110N、武田薬品工業社製)を1.2質量部と、酢酸エチルを100質量部加えて油相組成物を調製した。次いで、これを図2に示すマイクロカプセル製造装置における乳化槽105にあらかじめ注いである2質量%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトローズ65SH50:信越化学工業製)水溶液1000質量部の中に投入した。投入後、乳化装置102Bによって攪拌・乳化して6.3μm径のo/wエマルジョンを作製した。
【0060】
次いで、上記o/wエマルジョンをあらかじめ電磁誘導加熱装置103Bによって60℃の温度に加熱された重合槽106に流し込み、反応試薬投入装置104Bから10質量%ポリアリルアミン水溶液(PAA−10C:日東紡製)3.6質量部を添加し(乳化工程終了後1分で添加)、3時間加熱してポリウレタンを壁材とするマイクロカプセルを得た。該マイクロカプセルを遠沈回収後、12質量%ポリビニルアルコール(ポバール217C:クラレ製)水溶液を加えて液晶マイクロカプセル塗料を得た。上記液晶マイクロカプセルについて下記方法により測定を行ったところ、体積平均粒径D50vは6.7μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.24だった。
【0061】
[粒径および粒度分布指標の測定方法]
測定装置としてはコールターカウンターTA−II型(ベックマン−コールター社製)を用い、電解液はアイソトンーIIを使用して、粒径を測定した。
測定法としては、分散剤として界面活性剤を用い、測定試料を懸濁させた電解液を、前記コールターカウンターTA−II型により、アパーチャー径が50μmのアパーチャーを用いて、粒径が1.0μm以上30μm以下の範囲の粒子の粒度分布を測定した。測定する粒子数は10万個以上であった。
【0062】
測定された粒度分布を、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小径側から累積分布を描き、体積で累積16%となる粒径を体積平均粒径D16vと定義する。また、体積で累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、体積で累積84%となる粒径を体積平均粒径D84vとした。
これらを用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)1/2より算出した。
【0063】
(電子ペーパーの作製)
図3に示す透明基板1および透明電極2として、市販のITO蒸着PET樹脂フィルム(ハイビーム:東レ製)を用い、上記液晶マイクロカプセル塗料をアプリケータで、乾燥膜厚30μmとなるように塗布して表示層5とした。
【0064】
一方、市販のITO蒸着PET樹脂フィルムを基板14および電極13として用意した。市販のカーボンブラックの水分散体(WAカラーブラックA01、大日精化社製)と、ポリビニルアルコール(ポバール217C:クラレ製)溶液と、を混合して固形分濃度でカーボンブラック:PVAが3:7となるよう黒色塗料を準備し、これをアプリケータで乾燥膜厚が3μmとなるように電極13上へ塗布して黒色層12を形成した。この黒色層12の光学濃度は1.8であった。
上記黒色層12上に、感光体層11として第一電荷発生層10、電荷輸送層9、第二電荷発生層8の3層を形成した。まず、フタロシアニン顔料系電荷発生材料を分散したポリビニルブチラール樹脂のアルコール溶液をスピンコートして0.1μm厚の第一電荷発生層10を形成した。次いでベンジジン系電荷輸送材料とポリカーボネート樹脂のクロロベンゼン溶液をアプリケータで塗布して4μm厚の電荷輸送層9を形成した。最後に、再度フタロシアニン顔料系電荷発生材料を分散したポリビニルブチラール樹脂のアルコール溶液をスピンコートして0.1μm厚の第二電荷発生層8を形成し、感光体層11を得た。
【0065】
次に感光体層11上にポリビニルアルコール(ポバール117:クラレ製)の7質量%水溶液をスピンコートし、1μm厚の隔離層7を得た。
更に、2液ウレタン系接着剤(タケラックA50/A315、三井化学ポリウレタン製)を隔離層7上にスピンコート法で塗布して、膜厚3μmの接着層6とした。
【0066】
最後に、上記のように準備した透明基板1上の表示層5と基板14上の接着層6とを重ねて90℃に加熱したラミネーターを通して貼合し、電子ペーパーを完成した。
【0067】
[実施例2]
実施例1において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトローズ65SH50)の代わりにヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトローズ60SH50)を用い、反応試薬の添加を乳化工程終了後5分に変更した以外、実施例1に記載の方法により液晶マイクロカプセル塗料を得、更に電子ペーパーを得た。
尚、体積平均粒径は6.9μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.30であった。
【0068】
[実施例3]
実施例1において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトローズ65SH50)の代わりにポリメチルビニルエーテル(Aldrich社製)を用い、反応試薬の添加を乳化工程終了後5分に変更した以外、実施例1に記載の方法により液晶マイクロカプセル塗料を得、更に電子ペーパーを得た。
尚、体積平均粒径は7.0μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.30であった。
【0069】
[実施例4]
実施例1において、10質量%ポリアリルアミン水溶液の代わりにポリエチレンイミン(商品名:エポミンSP−200、日本触媒社製)を用い、反応試薬の添加を乳化工程終了後5分に変更した以外は、実施例1に記載の方法により液晶マイクロカプセル塗料を得、更に電子ペーパーを得た。
尚、体積平均粒径は7.1μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.27であった。
【0070】
[実施例5]
実施例1において、高温加熱の際の温度(60℃)を(50℃)に変更し、反応試薬の添加を乳化工程終了後5分に変更した以外は、実施例1に記載の方法により液晶マイクロカプセル塗料を得、更に電子ペーパーを得た。
尚、体積平均粒径は6.9μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.30であった。
【0071】
[比較例1]
実施例1において、10質量%ポリアリルアミン水溶液(PAA−10C:日東紡製)の添加のタイミングを、乳化直後であって高温加熱前(室温下(25℃))に変更し、10%ポリアリルアミン水溶液を添加した後に高温加熱(60℃)を行った以外は、実施例1に記載の方法により液晶マイクロカプセル塗料を得、更に電子ペーパーを得た。
尚、体積平均粒径は6.9μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.88であった。
【0072】
[比較例2]
実施例1において、10質量%ポリアリルアミン水溶液の代わりに5質量%ジエチレントリアミン水溶液(和光純薬社製)を用い、反応試薬の添加を乳化工程終了後5分に変更した以外は、実施例1に記載の方法により液晶マイクロカプセル塗料を得、更に電子ペーパーを得た。
尚、体積平均粒径は6.0μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.70であった。
【0073】
[比較例3]
実施例1において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトローズ65SH50)の代わりにポリビニルアルコール(商品名:PVA217、クラレ社製)を用い、反応試薬の添加を乳化工程終了後5分に変更した以外、実施例1に記載の方法により液晶マイクロカプセル塗料を得、更に電子ペーパーを得た。
尚、体積平均粒径は6.9μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.88であった。
【0074】
[比較例4]
実施例1において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトローズ65SH50)の代わりにポリビニルアルコール(商品名:PVA117、クラレ社製)を用い、また10質量%ポリアリルアミン水溶液(PAA−10C:日東紡製)の添加のタイミングを乳化工程終了後5分であって高温加熱前(室温下(25℃))に変更し、10%ポリアリルアミン水溶液を添加した後に高温加熱(60℃)を行った以外は、実施例1に記載の方法により液晶マイクロカプセル塗料を得、更に電子ペーパーを得た。
尚、体積平均粒径は6.9μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.78であった。
【0075】
[比較例5]
実施例1において、10質量%ポリアリルアミン水溶液(PAA−10C:日東紡製)の添加のタイミングを、重合性物質の残存基の残存率が43%となるタイミング(具体的には乳化工程終了後3時間)に変更し、且つ10%ポリアリルアミン水溶液を添加した後に高温加熱(60℃)を行った以外は、実施例1に記載の方法により液晶マイクロカプセル塗料を得、更に電子ペーパーを得た。
尚、体積平均粒径は7.2μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.80であった。
【0076】
=評価=
これらの電子ペーパーの駆動テストを行った。パルスジェネレータと高速アンプから構成された電圧印加部に、電子ペーパーの透明電極2と電極13とを接続した。また、明部と暗部を有するマスクパターンと、波長650nmのLED光源からなる露光部を準備して、マスクパターンを透明基板1に密着させて透明基板1から感光体層11をLED光源で露光した。感光体層11を露光しながら、透明電極2と電極13とで挟持される領域に電圧300V、周波数10Hzのバーストパルスを200ms印加し、マスクパターンの像を表示層5へ書き込んだ。
書き込まれた像の表示コントラスト比を、以下の方法により測定した。結果を下記表1に示す。
【0077】
(表示コントラスト比の測定方法)
上記電子ペーパーの透明電極2と電極13とで挟持される領域に、長さ200ms、周波数1KHzの対称矩形波パルスを印加して、印加から3秒後の反射率を測定した。上記の測定を、電圧を変えながら繰返し行って電圧−反射率特性を測定した。電圧−反射率特性における最大反射率と最小反射率との比をコントラスト比と定義した。
【0078】
【表1】

【0079】
尚、前記各比較例の電子ペーパーにおいては、接着層6の膜厚を6μmまで増やして再度評価を行ったところ表示コントラスト比の改善が見受けられたが、何れも各実施例のものには及ばなかった。また、その際の画像を出すために必要な駆動電圧は50V上昇した。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】第1の実施形態に係るマイクロカプセルの製造方法に用いられる製造装置を表す概略構成図である。
【図2】第2の実施形態に係るマイクロカプセルの製造方法に用いられる製造装置を表す概略構成図である。
【図3】光書き込み型表示媒体の断面図である。
【符号の説明】
【0081】
1 透明基板
2 透明電極
3 液晶マイクロカプセル
4 バインダ樹脂
5 表示層
6 接着層
7 隔離層
8 第二電荷発生層
9 電荷輸送層
10 第一電荷発生層
11 感光体層
12 黒色層
13 電極
14 基板
101 反応槽
102A、102B 乳化装置
103A、103B 電磁誘導加熱装置
104A、104B 反応試薬投入装置
105 乳化槽
106 重合槽
107 攪拌機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも芯物質および重合性物質を含有する油相を、非イオン性水溶性分散剤を用いて水相中に乳化し乳化液を調製する乳化工程と、
前記乳化液を高温加熱した状態で高分子反応試薬を添加し、前記重合性物質を界面重合してカプセル壁を形成する重合工程と、を有することを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
【請求項2】
前記乳化工程の後、前記乳化液における重合性物質の残存基が50%以上残存している状態で前記高分子反応試薬の添加を行うことを特徴とする請求項1に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項3】
前記油相が疎水性低粘度液体であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項4】
前記油相が、芯物質として液晶を含有することを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のマイクロカプセルの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−148707(P2009−148707A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329001(P2007−329001)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】