説明

マイクロカプセル造粒物及びその利用方法

【課題】単位体積当たりの充填密度が高く、折れや剪断に対する強度の高い、流動性に優れるマイクロカプセル造粒物を得る。
【解決手段】マイクロカプセル造粒物の平均粒子径が100μm〜30mmであり、真円率(短径/長径)が0.2〜1の範囲に設定する。マイクロカプセル内の化合物は蓄熱材が好ましく、更に空調用蓄熱材、寝具材料、建材として利用することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化合物を内包するマイクロカプセル、とりわけ蓄熱材を内包したマイクロカプセルを固着又は担持せしめたマイクロカプセル造粒物とその利用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱エネルギーを有効に蓄える方法として各種蓄熱材とりわけ物質の相変化に伴う潜熱蓄熱材を利用した手法が主に空調関係で利用されてきた。この方法は相変化を伴わない顕熱のみを利用する方法に比べ、融点を含む狭い温度域に大量の熱エネルギーを高密度に貯蔵できるため、蓄熱材容量の縮小化がなされるだけでなく、蓄熱量が大きい割に大きな温度差が生じないため熱損失を少量に抑えられる利点を有する。
【0003】
潜熱蓄熱材は融解と凝固の際に固体と液体の相変化を伴い扱いにくいため、見かけ上相変化を抑えるため、蓄熱材をマイクロカプセル化する方法が提案されている。マイクロカプセルは、水などの媒体中に分散された状態では常に液状であり、潜熱を流体の状態で搬送可能であるため、空調用の熱媒体としての提案がされている(例えば、特許文献1参照)。一方、分散媒を乾燥又は濾過などの手法で除去することにより、常に固体の蓄熱材として利用することが可能となり、マイクロカプセルの固形化及びその利用方法として床下空調用、温熱具などに利用する提案がされている(例えば、特許文献2〜5参照)。
【0004】
微小なマイクロカプセルを複数個結着させて数μm〜数cm大の造粒物に加工することができる。造粒物は粉体の場合と異なり、飛散しにくい、粒子間に空隙通路が得られるため、その間を空気を流入させることにより気体と固体間で熱交換可能であり、産業上好ましい形態である。例えば、押出式造粒法では、マイクロカプセル粉体に適度の水分を加えた後、圧力を加え、所望の径の孔から圧力を加えて押し出すことにより、棒状または粒状の造粒物が得られる。造粒物の大きさは、押し出すダイスの径、及び押し出された棒状の造粒物を適当な長さに裁断することにより調節することが可能である(例えば、特許文献2〜4参照)。
【0005】
しかし、上記方法により得られた造粒物の形状が非常に細長いもの、即ち長径と短径の比があまりに大きいと様々な課題が生じることが判明した。例えば空調用固形蓄熱材として利用する場合、あまりに細長いものであると床下や一定容積の容器に充填した場合に嵩密度が小さくなり、収容、保持できる量が僅かとなり、蓄熱量も不十分になることがあった。また建材ボード中に練り込む場合には、ボードから蓄熱材がはみ出したり、あるいはボードの強度が低下したりすることがあった。更に枕などの寝具用途に応用した場合、あまりに長さが長いと使用時に折れたり、曲がったりすることがあった。更に、造粒物同士の滑り性に乏しいため、触感としてゴワゴワとした違和感があること、製造工程上の課題として造粒物をコンベヤーで移動させる場合など、造粒物としての流動性に乏しいため停滞したり、円筒状配管内を搬送する場合など造粒物の閉塞を起こすことがしばしばであった。
【特許文献1】特開平5−163486号公報
【特許文献2】特開2001−81447号公報
【特許文献3】特開2001−303031号公報
【特許文献4】特開2001−303032号公報
【特許文献5】特開2001−58126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、単位体積当たりの充填密度が高く、折れや剪断に対する強度の高い、流動性に優れるマイクロカプセル造粒物を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、化合物を内包するマイクロカプセルを主成分とするマイクロカプセル造粒物において、マイクロカプセル造粒物の平均粒子径が100μm〜30mmであり、真円率(短径/長径)が0.2〜1の範囲に設定することにより解決されることを見出した。
【発明の効果】
【0008】
本発明で示されるマイクロカプセル造粒物は、マイクロカプセルの複数個を固着せしめたもので、その造粒物の最大長さと最短長さの比(真円率)をある一定の範囲内に設定することが特徴であり、その結果、第一に、一定容積内に効率的に多量の造粒物を充填することが可能であり、特に化合物が蓄熱材の場合など床下や天井裏などに利用した蓄熱式空調システムに利用することにより最大効率の蓄熱密度が得られること。第2に物理的な外圧に対して壊れにくくなること、特に寝具などに充填した場合に壊れにくく、セメント、石膏、樹脂などに練り込んだ際に非常に安定な建材として利用できること、第3に造粒物の流動性が増し、搬送性及び袋への充填物の触感も好ましいこと、等の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いられるマイクロカプセルに内包される化合物として、香料、染料、医薬品、食品、接着剤等が挙げられるが蓄熱材を用いることが最も好ましい。特に潜熱蓄熱材は相転移に伴う潜熱を利用して蓄熱する目的で用いられるものであり、融点あるいは凝固点を有する化合物であれば使用可能である。具体的な蓄熱材としては、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、パラフィンワックス等の脂肪族炭化水素化合物(パラフィン類化合物)、無機系共晶物及び無機系水和物、パルミチン酸、ミリスチン酸等の脂肪酸類、ベンゼン、p-キシレン等の芳香族炭化水素化合物、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル等のエステル化合物、ステアリルアルコール等のアルコール類等の化合物が挙げられ、好ましくは融解熱量が約80kJ/kg以上の化合物で、化学的、物理的に安定でしかも安価なものが用いられる。これらは混合して用いても良いし、必要に応じ過冷却防止材、比重調節材、劣化防止剤等を添加することができる。また、融点の異なる2種以上のマイクロカプセルを混合して用いることも可能である。
【0010】
本発明のマイクロカプセルの製法として物理的方法と化学的方法が知られているが、特に潜熱蓄熱材をマイクロカプセル化する方法としては、複合エマルジョン法によるカプセル化法(特開昭62−1452号公報)、蓄熱材粒子の表面に熱可塑性樹脂を噴霧する方法(特開昭62−45680号公報)、蓄熱材粒子の表面に液中で熱可塑性樹脂を形成する方法(特開昭62−149334公報)、蓄熱材粒子の表面でモノマーを重合させ被覆する方法(特開昭62−225241公報)、界面重縮合反応によるポリアミド皮膜マイクロカプセルの製法(特開平2−258052公報)等に記載されている方法が用いられる。
【0011】
マイクロカプセルの膜材としては、界面重合法、インサイチュー(in−situ)法、ラジカル重合法等の手法で得られるポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアミド、ポリアクリルアミド、エチルセルロース、ポリウレタン、アミノプラスト樹脂、またはゼラチンとカルボキシメチルセルロース若しくはアラビアゴムとのコアセルベーション法を利用した合成あるいは天然の樹脂が用いられるが、メラミンホルマリン樹脂、尿素ホルマリン樹脂、ポリアミド、ポリウレア、ポリウレタンウレアが好ましく、さらに物理的、化学的に安定なインサイチュー法によるメラミンホルマリン樹脂皮膜、尿素ホルマリン樹脂皮膜を用いたマイクロカプセルを使用することが特に好ましい。
【0012】
本発明に係るマイクロカプセル単一粒子の体積平均粒子径は0.1〜20μmの範囲にすることが好ましく、さらに1〜10μmの範囲にすることが好ましい。20μmより大きい粒子径では機械的剪断力に極めて弱くなる傾向があり、0.1μmより小さい粒子径では破壊は抑えられるものの、膜厚が薄くなり耐熱性に乏しくなる傾向がある。本発明で述べる体積平均粒子径とはマイクロカプセル粒子の体積換算値の平均粒子径を表わすものであり、原理的には一定体積の粒子を小さいものから順に篩分けし、その50%体積に当たる粒子が分別された時点での粒子径を意味する。体積平均粒子径の測定は顕微鏡観察による実測でも算定可能であるが、市販の電気的、光学的粒子径測定装置を用いることにより自動的に測定可能であり、本発明における体積平均粒子径は米国コールター社製粒度測定装置マルチサイザーII型を用いて測定を行なった。
【0013】
本発明のマイクロカプセル造粒物とは、マイクロカプセルを単独又は結着剤等と共に固着された形態の粒子である。本発明の造粒物を得る方法としては、マイクロカプセル分散液をスプレードライヤー、ドラムドライヤー、フリーズドライヤーなどの各種乾燥装置を用いて一段階で粉体や造粒物を得る方法がある。しかしながらこの乾燥工程のみでは大きくても数10μm程度の、しかも嵩密度の低い粉体しか得られず、直径数ミリ〜数センチ大の高嵩密度の造粒物に仕上げることは困難であった。
【0014】
上記方法に対して、マイクロカプセル分散液の流動性をなくして粘土状に加工したものに圧力を加えて所望の形状、大きさに造粒する方法が知られている。加圧式の造粒法はマイクロカプセル粒子が細密充填構造に近くなり嵩密度が高まる結果、粒子強度も高くなる。マイクロカプセル分散液を粘土状に加工する方法として分散液が粘土状になるまで吸水性の顔料を加えてたり、マイクロカプセル分散液を一旦粉体にした後、結着剤や適度の水分を加える方法が挙げられる。加圧式の造粒方法の具体例として、押出し式造粒法、転動造粒法、圧縮成型機などが好ましい方法である。また真円率を高める手法として、回転する鑢目の円盤上で高速で回転させながら衝撃を与え徐々に角を落としながら整粒する方法があり、真円率をより高めるために回転数を早めたり、且つ長時間整粒することにより真円率はより1に近づく。
【0015】
更に真円率の高いマイクロカプセル造粒物を得る方法として、核材となる真球状に近い固体粒子にマイクロカプセルを付着させる方法が挙げられる。固体粒子として例えば、多孔質のシリカ、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、有機高分子粒子、繊維質粒子を母体粒子として用いることが可能で、マイクロカプセル分散液またはマイクロカプセル粉体をこれらの固体粒子の周りに流動させながら付着させることにより固体粒子と相似形の造粒物が得られる。固体粒子に対するマイクロカプセル質量比率は多いほど好ましく、固体粒子の質量比率は完成したマイクロカプセル造粒物質量の50%以下、好ましくは30%以下に留めることが好ましい。
【0016】
本発明のマイクロカプセル造粒物は蓄熱材を内包したマイクロカプセルを用いることが好ましく、特に空調用蓄熱材、寝具材料、建材として利用することにおいて効果が最も発揮されるため好ましい。これらの用途においてはマイクロカプセル造粒物の平均粒子径が100μm〜30mm、好ましくは500μm〜10mmであり、真円率(短径/長径)が0.2〜1、更に好ましくは0.5〜1の範囲で1に近いほど、即ち真球に近いほど単位体積当たりの充填密度が高く、折れ強度の高い、しかも流動性に優れる造粒物を得ることが可能となる。平均粒子径が100μmより小さい造粒物はほとんど粉状の性質を示し取り扱い上粉舞が激しくなることがあり、30mmを超えると、大きすぎて寝具、建材としての利用が極めて困難になることがある。また、上記真円率以下では本発明の目的が達せられないことがる。尚、本発明で述べる短径、長径、平均粒子径とは最低10ケ以上の造粒物粒子を工業用ノギスもしくは計測機能のある光学顕微鏡で測定した最短径、最長径及びその平均値を示す。
【0017】
本発明のマイクロカプセル造粒物に用いられる結着剤はマイクロカプセル同士の凝集力、耐水性、強度を高める作用をもたらす成分であり、マイクロカプセルが分散液状態あるいは造粒工程前の粉体状態の中に添加される。本発明で用いられる結着剤の具体例としては結着能及び皮膜形成能を有する従来より公知の天然高分子、天然高分子変性品(半合成品)、合成高分子および無機系化合物を用いることができる。
【0018】
天然高分子物質としては、酸化でんぷん、リン酸エステル化でんぷん等の多糖類、並びにゼラチン、カゼイン、にかわ、及びコラーゲン等のタンパク質等が挙げられる。また、半合成品としては、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ビスコース、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等の繊維素誘導体が用いられる。
【0019】
また、合成高分子としては、ポリビニルアルコール、部分アセタール化ポリビニルアルコール、アリル変性ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、及びポリビニルイソブチルエーテル等の変性ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル部分けん化物、及びポリ(メタ)アクリルアマイド等のポリ(メタ)アクリル酸誘導体、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、及びビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体の親水性高分子や、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、スチレンブタジエン共重合体、カルボキシ変性スチレンブタジエン共重合体、アクリロニトリルブタジエン共重合体、アクリル酸メチルブタジエン共重合体、及びエチレン酢酸ビニル共重合体等のラテックス類等、メラミンホルムアルデヒド初期縮合物、尿素ホルマリン初期縮合物、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0020】
前記結着剤は、マイクロカプセル固形分質量に対し1〜80%(m/m)、好ましくは3〜50%(m/m)の範囲で用いられる。80%(m/m)を超えると蓄熱性能の低下が生じることがあり、1%(m/m)未満であると結着能力の低下が生じることがある。
【0021】
本発明によるマイクロカプセル造粒物は、それ単独でも利用可能であるが、繊維、樹脂、セメント、石膏などとともに分散・混合したり、ガス吸着材や発熱材と複合したり、包材中に充填して利用することが可能である。更に芳香剤、防腐剤、着色剤、劣化防止剤、ガス吸着剤、発熱材などと併用することも可能である。
【0022】
以下実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の百分率は質量基準である。実施例及び比較例で述べる嵩密度とは、造粒物の振動やタップ等の強制充填を行わない状態での嵩密度を示す。
【実施例1】
【0023】
マイクロカプセル分散液の作製:pHを4.5に調整した5%のスチレン−無水マレイン酸共重合体のナトリウム塩水溶液100gの中に、潜熱蓄熱材として融点28℃のノルマルオクタデカン60gとノルマルノナデカン20gの混合物(融点約30℃)を激しく撹拌しながら添加し、乳化を行なった。次にメラミン6gと37%ホルムアルデヒド水溶液9g及び水15gを混合し、これをpH8に調整し、約80℃でメラミン−ホルマリン初期縮合物水溶液を調製した。この全量を上記乳化液に添加し70℃で2時間加熱撹拌を施してカプセル化反応を行なった後、この分散液のpHを9に調整してカプセル化を終了し、蓄熱材マイクロカプセル分散液を得た。得られたマイクロカプセルの体積平均粒子径は2.5μmであった。
【0024】
このマイクロカプセル分散液をスプレードライヤーで噴霧乾燥させたところ体積平均粒子径が50μmの粉体が得られた。この粉体100gに市販の固形分濃度40%のアクリルラテックスを分散液で50gを添加しよく混合した後、押出式造粒機を用いて、短径3mm、長径20mmの造粒物を得た。更に整粒機を用いて造粒物を裁断し、短径3mm、長径6mmの湿潤状態の粒子が得られた。この湿潤状態の粒子を100℃で30分乾燥することにより粒子径4.5mm、真円率0.50の高強度且つ流動性に富むマイクロカプセル造粒物が得られた。この造粒物の嵩密度は0.53g/cm3であった。
【0025】
この造粒物をポルトランドセメント100gと水30gとを2分間よく混合した後、実施例1で得られた造粒物30gを添加し更に2分間混練してモルタルスラリーを得た。得られたモルタルスラリーを金型を用いて脱水プレス成形し、30℃で12時間養生して板状成形体を得た。得られた板状成形体は建材として充分な強度を有するものであった。また、この蓄熱性を有する建材を住宅の内装材として用いることにより夏場30℃以上に上昇しにくい室内環境が得られることが確認できた。
【実施例2】
【0026】
潜熱蓄熱材として融点23℃のデカン酸ドデシル80gに多価イソシアネートとして、ジシクロヘキシルメタン4,4−ジイソシアネート(住友バイエルウレタン(株)製脂肪族イソシアネート、商品名デスモジュールW)15gを溶解した物を、5%ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、商品名ポバール117)水溶液100g中に添加し、平均粒径が3μmになるまで室温で撹拌乳化を行った。次にこの乳化液に3%ポリエーテル水溶液(旭電化工業(株)製ポリエーテル、商品名アデカポリエーテルEDP−450)60gを添加した後、60℃で加熱と撹拌を施した。低粘度で分散安定性が良好な、蓄熱材マイクロカプセル分散液が得られた。得られたマイクロカプセルの体積平均粒子径は3.2μmであった。
【0027】
このマイクロカプセル分散液100gに市販の固形分濃度40%のアクリルラテックス20部と吸水材として微細シリカ粒子20gを混合しニーダーでよく混合し粘土状とした後、押出型造粒機を用いて短径200μm、長径5mmの湿潤状態の造粒物が得られた。この造粒物を整粒機を用いて短径200μm、長径500μmに長さを揃え、実施例1と同様に熱乾燥して、粒子径350μm、真円率0.40、嵩密度は0.42g/cm3のマイクロカプセル造粒物を得た。この造粒物200gとβ半水石膏800gに、水500部、減水剤13gを加えミキサーで攪拌して型枠に流し込んで厚さ10mmの蓄熱性能を有する石膏ボードを得た。
【0028】
ここで得られた石膏ボードを試験用木造住宅の6畳間の壁4面に貼り付けて、外気温を15℃と30℃の間で3時間周期で熱履歴を与えて室温を測定したところ、室温は23℃以上に上昇することはなく体感でも暑く感じることはなかった。一方、蓄熱シートのない石膏ボードだけを用いて同様の条件で熱履歴を与えると室温はほぼ外気温と差のない温度変化挙動を示し極めて不快な環境であった。
【実施例3】
【0029】
蓄熱材として融点22℃のヘプタデカンを用いた以外は実施例1と同様の製法でマイクロカプセル粉体を得た。粒径10mmの多孔質珪酸カルシウム製の球状粒子100gを回転する円盤上で転動させながら、このマイクロカプセル粉体100gと固形分濃度40%のアクリルラテックス20gを徐々に滴下しながら球状粒子の周りに付着せしめ、粒子径20mm、真円率0.90、嵩密度0.52g/cm3の丈夫なマイクロカプセル造粒物を得た。この造粒物を住宅室内の床下に約4kg/m2の割合で敷き詰め、その粒子間を夜間の内に冷風を通過させ冷熱を蓄えておく床下蓄熱式空調システムに応用したところ、昼間必要な冷房能力のほとんどを床下の空間で賄うことが可能であった。
【実施例4】
【0030】
実施例1のn−ヘキサデカンの代わりに木材より抽出された芳香及び忌避成分であるヒバオイルを用いた以外は同様にしてマイクロカプセル分散液を得た。このヒバオイル内包マイクロカプセル分散液をスプレードライヤーを用いて粒子径50μm粉体を得た。この粉体100gに固形分濃度50%の酢酸ビニル共重合体ラテックスを水込みで30g添加した後、実施例2と同様の押出型造粒機を用いて短径1mm、長径5mmの棒状の湿潤造粒物を得、100℃で30分乾燥させた。乾燥後の造粒物を乾式ミルを用いて、長径を2.5mm、真円率0.40、嵩密度0.56g/cm3のヒバオイルマイクロカプセル造粒物に調製した。
【0031】
この造粒物100gと木材粉砕物400gをよく混合し熱硬化性樹脂20gを混合した後、150℃20分加圧成型することによりヒバオイル内包マイクロカプセルが練り混まれたパーティクルボードを得た。ボードの中のヒバオイル内包のマイクロカプセルの破壊は見られなかった。この造粒物の嵩密度は0.42g/cm3であった。このヒバオイル内包マイクロカプセル造粒物を充填したボードは長期間芳香と防虫効果を持続するものであった。
【0032】
(比較例1)
実施例3で用いたマイクロカプセル粉体100gと同アクリルラテックス20gをよく混合した後、圧縮成型機ブリケットマシンを用いて、粒子径50mm、真円率0.90、嵩密度0.30g/cm3のマイクロカプセル造粒物を得た。この造粒物を寝具の枕用に使用を試みたが違和感が大きく枕として使用できなかった。また、実施例1及び実施例3と同様の建材用蓄熱材、空調用蓄熱材として利用を試みたが充填密度が小さかったり、ボード中に練り込みができなかった。
【0033】
(比較例2)
実施例1で得られたマイクロカプセル分散液をドラムドライヤーで乾燥したところ、粒子径80μm、真円率0.18、嵩密度0.12g/cm3の粉体が得られた。この造粒物は粒子径が小さく粉舞が多いばかりか、極めて嵩高いために充填効率が悪く、空調用蓄熱材、寝具、建材の何れの用途にも使いにくいものであった。
【0034】
(比較例3)
実施例1で得られた整粒機を施す前の短径3mm、長径20mmの湿潤状態の造粒物を乾燥させて粒子径11.5mm、真円率0.15、嵩密度0.18g/cm3のマイクロカプセル造粒物を得た。この造粒物は極めて折れやすい、嵩高いために空調用蓄熱材、寝具、建材の何れの用途にも使いにくいものであった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によるマイクロカプセル造粒物、天井・壁・床などの建築材料、枕やベッドパッドなどの寝具、建築物の躯体蓄熱用途に加え、床暖房用、過熱防止、吸着熱抑制用途、給湯蓄熱用途、空調用途、道路や橋梁などの土木用材料、産業用及び農業用保温材料、衣服用材料、家庭用品、健康用品、医療用材料など様々な利用分野に応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物を内包するマイクロカプセルを主成分とするマイクロカプセル造粒物において、マイクロカプセル造粒物の平均粒子径が100μm〜30mm、真円率(短径/長径)が0.2〜1の範囲であるマイクロカプセル造粒物。
【請求項2】
化合物が蓄熱材である請求項1記載のマイクロカプセル造粒物。
【請求項3】
請求項2記載のマイクロカプセル造粒物を含有することを特徴とする空調用蓄熱材。
【請求項4】
請求項2記載のマイクロカプセル造粒物を含有することを特徴とする寝具材料。
【請求項5】
請求項2記載のマイクロカプセル造粒物を含有することを特徴とする建材。

【公開番号】特開2006−263681(P2006−263681A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−89796(P2005−89796)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】