説明

マイクロクラックの検査方法

【課題】 被検査品のマイクロクラックを電気的に精度良く検出することができるマイクロクラック検査方法とマイクロクラック検査装置とを提供すること。
【解決手段】 ワークの検査方法は、弾性体12と、前記弾性体12上に配設された導体部11とを備えたワーク10を検査する方法において、前記弾性体12を変形させ、前記導体部11の電気出力値のパラメータに基づいてマイクロクラックの検出ができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル基板(以下、FPCと称す)及び導体が形成されたシート又はフィルム(以下、単にフィルムと呼ぶ)やゴムコネクタ等の導体パターンの致命的欠陥であるマイクロクラックを検査する方法とそれを実施するためのマイクロクラックの検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のマイクロクラックを検出するための電気検査は、FPC及びフィルム、ゴムコネクタ等の被検査品にプローブピンや検査基板をあてて行なっていた。
【0003】
図5(a)及び(b)は従来技術による電気検査方法の一例を示す斜視図である。
【0004】
図5(a)に示すように、被検査品としてのワークは、フレキシブル基板(FPC)10等からなる。このフレキシブル基板10は、導体11をフレキシブル基材12の一面に設けたものである。
【0005】
図5(b)に示すように、従来技術によるFPCの電気検査方法(導通検査)は、FPC10の夫々導体の両端部に夫々一対のプローブピン1a,1b,1c,1d,1eを配置する。導通検査は、一対のプローブピン1a,1b,1c,1d,1e間に図示しない電源から電流を通電して、その出力波形を検査する。この場合においては、直流電源を用いている。
【0006】
図6(a)及び(b)は従来技術による電気検査方法のもう一つの例を示す斜視図である。図6において、プローブ検査基板5を2点鎖線で示されている。
【0007】
図6(a)を参照すると、ワークは、ゴムコネクタ20からなる。このゴムコネクタ20は、略楕円板状のゴム材からなる大径部15aと、これよりも径の小さな円板状のゴム材からなる小径部15bとを夫々の円板の中心軸方向に交互に重ねた形状のゴム基材15と、大径部15aの外周面に設けられた金属膜17とを備えている。
【0008】
図6(b)に示すように、導通検査方法は、電気検査をしながら、プローブ検査基板5を上下方向から、挟み込んで行う。
【0009】
しかしながら、上記従来技術に示した電気検査方法において、FPC10やゴムコネクタ20等からなるワークの被検査品にマイクロクラックがあっても、通電によって検出出来ない場合がある。
【0010】
一方、FPCに関しては画像処理による外観検査によって検出することも可能であるが、電気的保証に乏しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の技術的課題は、被検査品のマイクロクラックを電気的に精度良く検出することができるマイクロクラック検査方法とマイクロクラック検査装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、弾性体と、前記弾性体上に配設された導体部とを備えたワークを検査する方法において、前記弾性体を変形させ、前記導体部の電気出力値のパラメータに基づいてマイクロクラックの検出ができるようにしたことを特徴とする検査方法が得られる。
【0013】
また、本発明の検査方法において、前記弾性体を押圧することで変形させるか、又は湾曲させて変形させることが好ましい。
【0014】
また、本発明の検査方法において、前記導体部は金属膜を備えていることが好ましい。
【0015】
また、本発明の検査方法において、前記マイクロクラックの検出は、前記電気出力値の波形を読み取ることによって検出されることが好ましい。
【0016】
また、本発明によれば、弾性体と、前記弾性体上に配設された導体部とを有するワークを検査する装置において、前記弾性体を変形させる手段と、
前記導体部に通電する手段と、前記導体部の電気出力値のパラメータの変化を表示する手段とを備え、前記パラメータの変化に基づいて前記導体部のマイクロクラックの検出ができるように構成したことを特徴とする検査装置が得られる。
【0017】
また、本発明の検査装置において、前記弾性体を変形する手段は、前記ワークを押圧することで変形させるか、又は湾曲させて変形させることが好ましい。
【0018】
また、本発明の検査装置において、前記導体部は金属膜を備えていることが好ましい。
【0019】
また、本発明の検査装置において、前記表示されたパラメータの変化は、前記電気出力値の波形の変化であり、前記マイクロクラックの検出は、当該波形の変化を読み取ることによってなされることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明においては、被検査品のマイクロクラックを電気的に精度良く検出することができるマイクロクラックの検査方法とマイクロクラックの検査装置とを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1(a)及び(b)は本発明の第1の実施の形態による電気検査方法を示す斜視図である。
【0023】
図1(a)に示すように、被検査品のワークとして、導体11を弾性体であるフレキシブル基材12の一面に設けたFPC10等の夫々導体11の両端部に夫々一対の通電手段としてのプローブピン1a,1b,1c,1d,1e(纏めて符号1で示す)を配置する。導通検査は、一対のプローブピン1a,1b,1c,1d,1e間に図示しない電源から電流を通電して、その出力波形を検査する。出力波形は、OSC等の表示手段を用いることができる。なお、この場合においては、電源は直流電源を用いている。
【0024】
図1(b)に示すように、通電状態において、FPC10を屈曲させて、プローブ間の電圧、導体抵抗等の出力値を観察測定する。平坦な状態から屈曲までを連続的又は断片的に検査する。尚、弾性体を変形させる、例えば、屈曲等の手段としては、屈曲角度等のパラメータを測定できるものであるならば、どのような手段や装置を用いても良い。また、弾性体を変形させるとしては、押圧する、引っ張る、あるいは、湾曲させて変形させても良い。また、弾性体は、フィルム、シート、ゴム等デ形成されても良い。
【0025】
図2(a)及び図2(b)は、パラメータ変化前後の出力波形の概略を示している。図2(a)及び図2(b)において、パラメータとは、FPC、フィルム等の屈曲角度やゴムコネクタの変位量を示し、出力値は導体抵抗や電圧である。
【0026】
図1(a)及び図1(b)の測定例においては、パラメータは屈曲角度、出力値は電圧である。
【0027】
図2(a)を参照すると、屈曲前の平坦な状態においては、出力値である電圧は一定である。ここで、マイクロクラック等がない場合においては、屈曲前後においても、その出力値、電圧は一定である。しかし、マイクロクラックがある場合には、図2(b)に示すように、屈曲時において、マイクロクラックが広がり屈曲直後においては、出力値の急激な変化(電圧不安定)があり、また、平坦な状態に戻しても、その後においては、変位前の状態に戻らない。
【0028】
図3(a)及び(b)は本発明の第2の実施の形態による電気検査方法を示す斜視図である。ここで、図3(a)及び図3(b)において、挟み込んだゴムコネクタ20が見えるように、プローブ検査基板5の一部を2点鎖線で示してある。図3(a)を参照すると、被検査品であるワークとしてゴムコネクタ20は、弾性体として、略楕円板状のゴム材からなる大径部15aと、これよりも径の小さな円板状のゴム材からなる小径部15bとを夫々の円板の中心軸方向に交互に重ねた形状のゴム基材15と、大径部の外周面に設けられた金属薄膜17とを備えている。
【0029】
導通検査方法は、電気検査をしながら、図3(a)に示すように、ここで、プローブ検査基板5を上下方向から、挟み込んで変形させて行う。ここで、上下一対プローブ検査基板5は、弾性体を変形する手段を構成し、また、図示しない直流電源とともに、通電する手段を構成している。
【0030】
図4は図3(a)および(b)に示したマイクロクラック検査結果を示す図である。また、同じ測定結果を下記表1に示している。図4に示すように、センサー間距離が次第に大きくなって行くことは、圧縮から除々に開放することを示し、一方、センサー間距離が次第に狭くなっていくことは、図3(b)に示す状態から圧縮する場合を示している。
【0031】
下記表1及び図4に示すように、圧縮(センサー間距離が2.0mmから1.0mm)、圧縮から開放(センサー間距離が1.0から2.0mm)のいずれの場合においても、良品の場合には、曲線21,22で示すように、検出電圧(V)は単調な減少又は単調増加という単調な変化を示すが、不良品の場合には、検出電圧は、曲線31,32,33というように、何度測定しても極大値(ピーク)や極小値をもつような急激な変動があった。
【表1】

【0032】
この検査においても、マイクロクラック等がない場合においては、変形する前後の接触状態出力値は一定であり、図3(b)に示すように、ゴムコネクタ20を圧縮すると、マイクロクラックがある場合に、圧縮途中もしくは圧縮から開放の途中においては、出力値の急激な変化が生じる。
【0033】
これによって、マイクロクラックの有無を検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上説明したように、本発明に係る検査方法及び検査装置は、FPC,導体が形成されたフィルムやゴムコネクタ等のワークの導体のマイクロクラックの検出に最適である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(a)及び(b)は本発明の第1の実施の形態によるFPCの電気検査方法の説明に供せられる斜視図である。
【図2】(a)及び(b)は本発明の実施の形態によるマイクロクラックの一検出例を示す図である。
【図3】(a)及び(b)は本発明の第2の実施の形態によるゴムコネクタの電気検査方法を示す斜視図である。
【図4】図3(a)および(b)に示したマイクロクラックの検査結果を示す図である。
【図5】従来技術によるFPCの電気検査方法の説明に供せられる斜視図である。
【図6】従来技術によるゴムコネクタの電気検査方法の説明に供せられる斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
1,1a,1b,1c,1d,1e プローブピン
5 プローブ検査基板
10 FPC
11、11a、11b,11c,11d,11e 導体
12 フレキシブル基材
15 ゴム基材
15a 大径部
15b 小径部
17 金属薄膜
20 ゴムコネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体と、前記弾性体上に配設された導体部とを備えたワークを検査する方法において、
前記弾性体を変形させ、前記導体部の電気出力値のパラメータに基づいてマイクロクラックの検出ができるようにしたことを特徴とする検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の検査方法において、前記弾性体を押圧することで変形させるか、又は湾曲させて変形させることを特徴とする検査方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の検査方法において、前記導体部は金属膜を備えていることを特徴とする検査方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の内のいずれか一つに記載の検査方法において、前記マイクロクラックの検出は、前記電気出力値の波形を読み取ることによって検出されることを特徴とする検査方法。
【請求項5】
弾性体と、前記弾性体上に配設された導体部とを有するワークを検査する装置において、前記ワークは、
前記弾性体を変形させる手段と、前記導体部に通電する手段と、前記導体部の電気出力値のパラメータの変化を表示する手段とを備え、前記パラメータの変化に基づいて前記導体部のマイクロクラックの検出ができるように構成したことを特徴とする検査装置。
【請求項6】
請求項5に記載の検査装置において、前記弾性体を変形する手段は、前記ワークを押圧することで変形させるか、又は湾曲させて変形させることを特徴とする検査装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の検査装置において、前記導体部は金属膜を備えていることを特徴とする検査装置。
【請求項8】
請求項5乃至7の内のいずれか一つに記載の検査装置において、前記表示されたパラメータの変化は、前記電気出力値の波形の変化であり、前記マイクロクラックの検出は、当該波形の変化を読み取ることによってなされることを特徴とする検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−24792(P2007−24792A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210545(P2005−210545)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【出願人】(594157142)オー・エイチ・ティー株式会社 (28)
【Fターム(参考)】