説明

マイクロバブル/ナノバブルによる油の微生物分解処理の促進法

【課題】 微生物を用いて、十分な油脂分解を行えると共に、臭気の発生を防止可能な汚水浄化方法および装置を提供すること。
【解決手段】 グリーストラップ2の汚水3の浄化に用いるものであって、油脂を分解する微生物を含有したバイオ剤4をためておく保管庫5と、保管したバイオ剤4を保管庫5からグリーストラップ2に供給するためのバイオ剤供給装置13と、前記グリーストラップ2の汚水3内にマイクロバブルを供給するためのマイクロバブル発生装置15とを備えていることを特徴とする汚水浄化装置1によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロバブルまたは/およびナノバブルを用いた油の微生物分解処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ホテル、レストラン、飲食店などの厨房から排出される廃油や油脂などが直接に下水及び処理場へ流出されることを防止するために、昭和50年から建築基準法により、油脂を捕集するグリーストラップの設置が義務付けられている。グリーストラップは、例えば図1に示すように、内部が複数の槽(例えば、図1には3槽のものを示した)に分かれている。第1槽101〜第3槽103の各槽の間は、下端部分を残して、仕切り板104,105で仕切られている。図示左側の廃水溝106から運ばれてきた廃水は、第1槽101に流し込まれる。このとき、バスケット107によって大きなゴミが捕集される。廃水は第1槽101〜第3槽103を通過する際に油分109と水分とが分離され、このうち水分は廃水トラップ108を通過して第3槽103から下水等に排出される。また、各槽101〜103の最下部には、汚泥110が溜まっていく。
【0003】
グリーストラップには、生ゴミ、油分などが溜まるために、定期的なメンテナンスを行う必要がある。しかし、メンテナンスには非常に手間がかかることに加え、臭いが強いため、メンテナンスが必要な期間以上に放置されがちである。このため、施設の中には、グリーストラップが十分に機能せず、配管詰まりや悪臭の原因となることがあった。
一方、このようなグリーストラップのメンテナンスを微生物を用いて行おうとする試みが知られている(例えば、特許文献1および特許文献2を参照)。
【0004】
上記文献に開示された技術は、オゾンと微生物を用いて、グリーストラップのメンテナンスを行おうとするものである。
グリーストラップの水相上部に集まる油の主成分は油脂であり、これを生物学的に分解するにはリパーゼが不可欠である。このため、グリーストラップに適用される微生物は、リパーゼ生産菌である。また、リパーゼによって分解された油脂は脂肪酸とグリセリンに変換される。この脂肪酸は長い炭素鎖を有しており、油分の一部と考えられるので、脂肪酸を消費する微生物も必要である。ただし、多くのリパーゼ生産菌は脂肪酸消費菌でもある。本明細書中では、これらの微生物を総称して油分解菌と称する。
【0005】
しかし、グリーストラップに油分解菌やリパーゼを投入しても、営業時の廃水の流入・流出がある場合は、分解菌やリパーゼの滞留時間が短いため、十分に油脂を分解することができない。一方、オゾンにより油を分解する技術もあるが、グリーストラップ内の大量の油をオゾンで分解するには致死量を越える濃度のオゾンを使用する必要があり、安全上、重大な問題がある。しかしグリーストラップは悪臭の発生源でもあるので、脱臭を目的としてオゾンを作用させる技術は利用されている。ただし、オゾンには殺菌効果があるため、微生物による油脂の分解とオゾンによる脱臭を両立させることは、困難であった。以上の問題を解決するため、従来技術では、非営業時間帯のみ微生物を働かせ、営業時間帯は汚水中にオゾンを吹き込むことで脱臭対策のみ行っていた。
【0006】
しかし、この方法では営業時間内に溜まった油を、非営業時間帯だけで微生物分解することになり、油の量が多いために十分に油を分解することは不可能であった。逆に営業時間内に微生物を働かそうとしても、先述したとおり滞留時間の問題で効果が期待できないばかりでなく、微生物を働かすために必要な空気を曝気することでトラップ槽内を攪拌してしまい、グリーストラップ本来の機能である固液分離の状態をも乱すことになり、流出する油の量はかえって増大するおそれがあった。
上記事情のために、前記文献に記載の技術では、未だに十分な油脂、油分の分解が行えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−079289号公報
【特許文献2】特開2006−136816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、微生物を用いて、十分な油脂分解に行えると共に、臭気の発生を防止可能な汚水浄化方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために、微生物による油脂分解時に、汚水内にマイクロバブルを供給する方法を試したところ、従来の分解効率をはるかに超えて、良好な油脂分解を行えると共に、臭気の発生を防止できることを見出し、基本的には本発明を完成するに至った。
本発明によれば、マイクロバブルによる曝気を行ってもグリーストラップ本来の固液分離を乱すことがないことに加えて、汚水内の酸素量が増加するため微生物の油脂分解効率を飛躍的に向上させられる。このため、営業時間内でも微生物を作用させることができるため、24時間に渡って微生物を働かすことができる。
【0010】
上記課題を解決するために、第1の発明に係る汚水浄化方法は、グリーストラップの悪臭を脱臭しながら汚水の浄化を行う方法であって、前記グリーストラップの汚水中に油脂を分解する微生物を供給すると共に、前記グリーストラップの汚水内に直径が200μm以下のマイクロバブルを供給することを特徴とする。
本発明においては、前記微生物による油脂の分解操作中のグリーストラップの汚水のpHが、6〜9の範囲であることが好ましい。
また、第2の発明に係る汚水浄化装置は、グリーストラップの汚水の浄化に用いるものであって、油脂を分解する微生物を含有したバイオ剤をためておく保管庫と、保管したバイオ剤を保管庫からグリーストラップに供給するためのバイオ剤供給装置と、前記グリーストラップの汚水内に直径200μm以下のマイクロバブルを供給するためのマイクロバブル発生装置とを備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明において、油脂を分解する微生物とは、油脂を脂肪酸とグリセリンに分解するリパーゼを生産するものであることが好ましく、更に脂肪酸を消費・資化して増殖する能力を有するものが望ましい。
マイクロバブルとは、微細な気泡の意味であり、好ましくは直径が200μm以下のもの、更に好ましくは直径が100μm以下のもの、さらに更に好ましくは直径が50μm以下のものを意味する。通常の気泡とは異なり、マイクロバブルでは、次のような性質が認められる。気泡体積が小さいため、液中での上昇速度が遅く、長時間に渡って液中に滞在し続ける。また、マイクロバブルに掛かる界面圧力が高いため、加圧効果により効果的に気体が水中に溶解する。なお、直径が1μm程度以下のものをナノバブルと称することがあるが、本発明ではナノバブルを用いることもできる。本明細書中において、マイクロバブルとは、ナノバブルの範囲の気泡を含むものである。
【0012】
バイオ剤としては、液体のもの、乾燥体または固形のもの(錠剤、顆粒を含む)などが例示される。バイオ剤を投入するに際しては、適当な投入装置を用いて、定期的に所定量を投入することもできるし、手作業によって適当な時間(例えば、一日の仕事が終了後など)に所定量を投入することもできる。このときバイオ剤が液体のものの場合には、バイオ剤供給装置については、例えば特開2006−136816に開示されたものを用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、マイクロバブルを汚水内に供給しながら、微生物によって油脂を分解する。マイクロバブルの供給時には界面が乱されないので、グリーストラップの固液分離機能を損なうことがない。このため、従来の曝気方法では稼働が困難であった食堂などの営業時にも微生物分解処理を並行することができる。こうして昼夜を通して微生物による油脂分解操作を行えるため、臭気の発生も抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来のグリーストラップの構造を示す模式図である。
【図2】本実施形態における汚水浄化装置の構成図である。
【図3】上記汚水浄化装置を変形させたものの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。
本発明で用いる微生物としては、リパーゼを生産することに加え、生じた脂肪酸を消費・資化して増殖する能力を有するものが望ましい。そのような微生物としては、例えば真性細菌、酵母、真菌類が例示される。これらのうち好ましくは真性細菌と酵母、更に好ましくはグラム陽性細菌、プロテオバクテリア、Candida属酵母がよい。またグラム陽性細菌の中ではBacillus属細菌、Rhodococcus属細菌が特によい。プロテオバクテリアの中ではアルファバクテリア、ベータバクテリア、ガンマバクテリアが特に好ましい。更にこれらの中でも、Acinetobacter属細菌、Pseudomonas属細菌、Alcaligenes属細菌、Rhodobacter属細菌、Ralstonia属細菌、Burkholderia属細菌、Acidovorax属細菌は、前述のCandida属酵母およびグラム陽性細菌に属するBacillus属細菌、Rhodococcus属細菌と並んで、最も好ましい。しかしながら、利用可能な微生物は前記微生物に限定されるわけではない。なお、これら微生物は単独で用いても、複数種類の微生物を含む混合状態で用いてもどちらでもよい。
【0016】
油脂分解能力および脂肪酸消費・資化能力を有する微生物は下記の方法により取得した。寒天培地中に油脂を分散させて白濁させた寒天プレート上に、微生物源を接種し、生じたコロニーの周りに油脂が分解されて生じたクリアゾーンを形成するものを、油分解菌とした。
本発明を実施するに際し、グリーストラップの水相には、従来の微生物処理を行う場合とは異なり、マイクロバブルによる曝気を行う。グリーストラップの水相の温度、pH、及びDO(溶存酸素量)は、特に限定されないが、好ましくは温度が10℃〜40℃、pHが6〜9、DOが1ppm〜10ppmであり、より好ましくは温度が15℃〜35℃、pHが7〜9、DOが2ppm〜10ppmである。ただし、前記範囲を外れても、発明を実施できないわけではない。
本発明で処理することができる廃水は、ホテル、レストラン、飲食店などの厨房から排出されるものであって、油分を含むものである。
【0017】
<汚水浄化装置の構成>
図2は本実施形態の汚水浄化装置を簡略化して示す構成図である。図に示すように、汚水浄化装置1は、グリーストラップ2の汚水3の油分を分解し、汚水3から発生する悪臭を脱臭するために使用される。汚水浄化装置1には、油脂を分解する微生物(油分解菌)を含有した液剤としてのバイオ剤4を貯留する保管庫としてのタンク5と、第1ポンプ6と、コンプレッサー7と、第1タイマ10と、第2タイマ9とを有している。詳細には図示はしないが、タンク5、第1ポンプ6、コンプレッサー7、第1タイマ10、および第2タイマ9は、筐体内に設けられて一体化されている。なお、タンク5は、設計コンセプト(例えば、大型のタンクを必要とする場合など)などに応じて筐体の外部に付設することもできる。タンク5の排出口5aには、タンク配管11の一端が接続されている。
図中において、汚水3の表面に付された符号109は油分(油脂)である。本実施形態の汚水浄化装置1では、マイクロバブルを吹き込んでいる稼働中においても、グリーストラップ2の固液分離状態を攪乱することがないので、微生物により油脂109を分解できる。
なお、グリーストラップ2の構成については、従来公知のものと同様なので、詳しい説明は省略する。
バイオ剤4は、単種類あるいは複数種類の油分解菌を含むことができる。これら微生物は、油分を分解すると共に、脂肪酸資化能力を有するものを用いることが好ましい。
【0018】
第1ポンプ6は、タンク5に貯留したバイオ剤4をグリーストラップ2に供給するためのものであり、その吸込口6aにはタンク配管11の他端が接続されている。また、第1ポンプ6の吐出口6bには、バイオ剤供給管12の一端側が接続されており、このバイオ剤供給管12の他端側は、グリーストラップ2の内部または液面上部に配置されている。供給されたバイオ剤4は、拡散あるいはマイクロバブルの僅かな撹拌作用によって、汚水3中に拡がる。第1ポンプ6は、図示しない外部電源に電気的に接続されており、第1タイマ10から送出される信号に基づいて駆動タイミングおよび駆動時間が制御されるようになっている。こうして、タンク配管11、第1ポンプ6およびバイオ剤供給管12により、タンク5に貯留したバイオ剤4をグリーストラップ2に供給するためのバイオ剤供給装置13が構成されている。
【0019】
上記は、バイオ剤4が液体の性状である場合についての装置について記述したものである。本発明においては、バイオ剤は液体の性状でないもの(例えば錠剤・顆粒状のもの)を用いることも可能である。例えば、微生物細胞を集菌後、適当な大きさに細胞集団を丸めて固め、凍結乾燥して調製した錠剤、または顆粒状のものの他、粉末状のものを使用することができる。これら乾燥品は、水中で速やかに元の性状に戻すことが可能である。また、多くの場合、乾燥品は活性を長期に渡って維持することができ、むしろ液体よりも長期保存性に長けている場合が多い。したがって、バイオ剤供給装置もバイオ剤の性状に応じた形式のものを用いることが可能である。例えば、バイオ剤が錠剤の場合には、貯留庫はタンクでなくても良く、錠剤を保管可能な保管庫とすることもできる。更に、バイオ剤を供給する供給装置は、ポンプ形式でなく、保管庫から適当な時間間隔で、適当な個数の錠剤を落下させる落下形式のものでもよい。
【0020】
コンプレッサー7は、圧縮空気をグリーストラップ2の汚水3内に供給するためのものである。コンプレッサー7には、空気吸込口7aと空気吐出口7bとが備えられており、空気吐出口7bにはエア供給管14の一端側が接続されている。エア供給管14の他端側は、グリーストラップ2の内部に貯留された汚水3の内側に位置している。このエア供給管14の他端側は、空気をマイクロバブルとして供給できるように、グリーストラップ2の底面の近傍に配置されたマイクロバブル発生装置15に接続されている。マイクロバブル発生装置15は、通常の散気管の開口部分を微小開口を備えたフィルム(例えば、モノトランフィルム(株式会社ナック製))で覆ったものである。コンプレッサー7を駆動することで、マイクロバブル発生装置15内部の気体をマイクロバブルとして汚水3内に拡散するように吐出できる。マイクロバブル発生装置15としては、多孔質製セラミックスの周囲を微小開口を備えたフィルムで覆ったものを用いることもできる。
【0021】
コンプレッサー7は、図示しない外部電源および制御部に電気的に接続されており、第2タイマ9から送出される信号に基づいて駆動タイミングおよび駆動時間が制御されるようになっている。こうして、コンプレッサー7、エア供給管14およびマイクロバブル発生装置15により、グリーストラップ2の汚水3内にマイクロバブルを供給するバブル供給装置17が構成されている。
第1タイマ10は、第1ポンプ6の駆動タイミングおよび駆動時間を制御するためのものであり、本実施形態においてはプログラムタイマが用いられている。第1タイマ10は、バイオ剤供給装置13によるグリーストラップ2へのバイオ剤4の供給タイミングおよび供給時間を簡便な構成で自動的に制御することができるようになっている。
第2タイマ9は、コンプレッサー7の駆動タイミングおよび駆動時間を制御するためのものであり、本実施形態においてはプログラムタイマが用いられている。なお、コンプレッサー7を駆動・静止することなく、常時駆動させ続けて一定量のマイクロバブルを発生させる場合には、第2タイマ9は不要となる。
【0022】
なお、第1タイマ10および第2タイマ9は、図示しない電源スイッチ、始動スイッチ、手動操作と自動運転とを切り換える運転切換スイッチ、非常停止スイッチなどのスイッチ類とともに制御盤に配設されている。第1タイマ10および第2タイマ9により、バイオ剤供給装置13によるグリーストラップ2へのバイオ剤4の供給タイミングおよび供給時間を制御する制御装置22が構成されている。
制御装置22としては、少なくともCPU、第1ポンプ6およびコンプレッサー7の駆動を制御するためのプログラムとデータとを格納するためのメモリ、動作状態などを表示する表示装置、設定値の入力に用いる入力装置などを有するマイコンを用いることもできる。
【0023】
<汚水浄化装置の変形例>
図3には、図2に示す構成の一部を変えたものを示した。この構成では、微生物を付着させるための担体として、多孔性固体の木炭を用いている。木炭は、40cm×40cm×5cmの金属メッシュかご30に詰めた。なお、図2と図3とにおいて、同一の構成については、同一の符号を付して、説明を省略した。
このようにして構成した汚水浄化装置1’では、微生物を担体に固定させて使用するので、微生物の添加量を減少させられる。
【0024】
<汚水浄化試験>
名古屋工業大学内の食堂に設けられているグリーストラップ2に上記構成の汚水浄化装置1を設置した。グリーストラップの大きさは、50cmx100cmx40cm(水深)であり、3槽に分離されているものを用いた。食堂の操業時間帯は、7時〜21時であった。
各サンプルは、第3槽(下流側)の水深約15cmの位置で採取した。
【0025】
油脂分解能力を持つ微生物を含有するバイオ剤として、リパーゼ生産能力と脂肪酸の消費・資化能力をもち独自にスクリーニングしてきた微生物の培養液を前記記載の容量の汚水中に400mL添加した。これら微生物の培養原液は、グリーストラップ内の汚水で500分の1に希釈された。このグリーストラップの汚水内に空気をマイクロバブルとして供給し、グリーストラップ内で油の分解処理をした。マイクロバブルは、株式会社ナック製のモノトランフィルムを利用した微細泡発生装置にて連続的に発生させた。微生物は、夜間の測定直後にグリーストラップに添加した。
微生物は添加したがマイクロバブル空気を供給していないときを比較例1、マイクロバブルは供給したが微生物を添加していないときを比較例2とした。両比較例において、夜間と翌朝とのノルマルヘキサン値(mg/L)を表1に示した。比較例1及び比較例2において、汚水の温度範囲は22℃〜32℃、pH範囲は5〜6の弱酸性であった。
【0026】
【表1】

【0027】
微生物を添加しさらにマイクロバブルの供給を開始した翌日、毎夜の微生物の添加とマイクロバブルの連続供給開始4日後、11日後、2週間後を、それぞれ実施例1、実施例2、実施例3、実施例4とした。実施例1〜実施例4において、夜間と翌朝とのノルマルヘキサン値(mg/L)を表2に示した。
実施例1〜実施例4の期間において、汚水の温度範囲は22℃〜32℃、pH範囲は7〜8の中性〜弱アルカリ性であった。
【0028】
【表2】

【0029】
表1及び表2に示すように、実施例3の11日後の翌朝のデータ(9mg/L)に比べると、実施例4の二週間後の翌朝のデータ(26mg/L)の方が高いノルマルヘキサン値となったが、これは日変動の範囲内と考えられ、微生物の添加とマイクロバブルの供給により、グリーストラップ内の油分の顕著な低減効果が認められた。
比較例2から明らかなように、マイクロバブルのみを供給しても、油脂分解微生物を添加しなければ効果がないことから、マイクロバブルは微生物活性の向上に働いているものと考えられた。
【0030】
このように、本実施形態によれば、マイクロバブルを汚水内に供給しながら、微生物によって油脂を分解した。マイクロバブルの供給時には界面が乱されないので、グリーストラップの固液分離機能を損なうことがない。このため、従来の曝気方法では稼働が困難であった食堂などの営業時にも微生物分解処理を並行して実施できた。こうして昼夜を通して微生物による油脂分解操作を行えるため、臭気の発生も抑制できた。このとき、汚水のpHは、中性付近(ややアルカリ性)であったため、酸性条件で発生する臭気も抑制できた。
特に、本実施形態の装置によれば、ノルマルヘキサン濃度の自治体基準値を達成することも可能となった。
<変形例>
上記実施形態においては、下記のように変形して実施することができる。
本実施形態では、マイクロバブル発生装置15に空気を送る機構として、コンプレッサー7を使用したが、本発明によれば、その他に空気を送る機構として、送風ポンプ等を用いることもできる。
本実施形態では、マイクロバブル発生装置15として、微小開口を備えたフィルムを用いているが、本発明によれば、フィルムを利用したものに限らず、マイクロバブルを発生するものであれば装置や手段を選ばず利用できる。例えば、グリーストラップ内の廃水の一部を引き抜いて機械的な発生装置に引き込みマイクロバブルを含む廃水をグリーストラップに戻すといった還流式の機構を採用することもできる。
本発明を用いた場合であっても、なお臭気がひどい場合は、グリーストラップの上面気相にオゾンを補助的に供給する方法を採用してもよい。
【符号の説明】
【0031】
1,1’…汚水浄化装置、2…グリーストラップ、3…汚水、4…バイオ剤、5…保管庫(タンク)、6…第1ポンプ(バイオ剤供給装置)、7…コンプレッサー(バブル供給装置)、13…バイオ剤供給装置、15…マイクロバブル発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリーストラップの悪臭を脱臭しながら汚水の浄化を行う汚水浄化方法であって、
前記グリーストラップの汚水中に油脂を分解する微生物を供給すると共に、前記グリーストラップの汚水内にマイクロバブルを供給することを特徴とする汚水浄化方法。
【請求項2】
グリーストラップの汚水の浄化に用いる汚水浄化装置であって、
油脂を分解する微生物を含有したバイオ剤をためておく保管庫と、保管したバイオ剤を保管庫からグリーストラップに供給するためのバイオ剤供給装置と、前記グリーストラップの汚水内にマイクロバブルを供給するためのマイクロバブル発生装置とを備えていることを特徴とする汚水浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−279862(P2010−279862A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133438(P2009−133438)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【出願人】(599072493)株式会社フジミックス (1)
【Fターム(参考)】