マイクロフィルターユニット
【課題】 例えば土壌に含まれる有害重金属のように極めて微量な被検出物質の濃度測定であっても、軽便で、且つ現場での検査を容易且つ迅速に行えるマイクロフィルターユニットを提供することを課題とする。
【解決手段】 液体流入側部材13と液体流出側部材12との間に、被検液等の液体が通過するフィルター22a、22bを挟持したマイクロフィルターユニットにおいて、前記液体流入側部材13および液体流出側部材12には、前記フィルター22a、22bを受ける収容凹部205、302が設けられ、前記液体流入側部材13の収容凹部302は、液体流入用の貫通孔302bを中心とする放射状の溝302dを有し、しかも、前記液体流出側部材12の収容凹部205は、一個以上の液体排出用の貫通孔205cを有している。
【解決手段】 液体流入側部材13と液体流出側部材12との間に、被検液等の液体が通過するフィルター22a、22bを挟持したマイクロフィルターユニットにおいて、前記液体流入側部材13および液体流出側部材12には、前記フィルター22a、22bを受ける収容凹部205、302が設けられ、前記液体流入側部材13の収容凹部302は、液体流入用の貫通孔302bを中心とする放射状の溝302dを有し、しかも、前記液体流出側部材12の収容凹部205は、一個以上の液体排出用の貫通孔205cを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば吸引または加圧により液体を供給するラインにおいて、液体中に含まれる目的物を濃縮および/または夾雑物を除去するために用いるマイクロフィルターユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルターを固定する装置として、吸引マニホールドや加圧送液システムなどの固層抽出装置を用いることにより、目的物の濃縮や夾雑物の除去を行う方法が確立されているが、上記抽出装置は高価であり、また微量サンプルの場合にサンプルのロスが多いという問題があった。
【0003】
一方、小型の抽出手段としてシリンジ型にフィルターを接着したカートリッジタイプの製品も広く使用されているが、これらの抽出手段でも溶離液量はまだ多く、サンプルが微量なほど濃縮率が低下する傾向にある。また、作業者がシリンジを押圧することにより、シリンジ内の被検液をフィルターに吸着させるため、被検液をスムーズに流してフィルターの通過率の低下を防止する必要もある。
【0004】
また、分析システムに使用されるカード式使い捨て検査具も開発されている(例えば、特許文献1参照)。かかるカード式使い捨て検査具は、間に薄い仕切り板を挟んで互いに液密に重畳される二枚の基板から構成される。基板の一方は、内面に、検査対象となる人又は動物の体液を通す通路と、この通路の一端に連通するように体液貯蔵部が設けられる。通路の他端には基板を厚さ方向に貫通する体液注入孔が設けられる。センサーは、他方の基板の内面に設けられる。さらに、該他方の基板内面には、センサー校正用の試薬容器を受ける凹部と、仕切り板の開口部を介して上記一方の基板に設けた体液貯蔵部に連通する第2の体液貯蔵部が設けられる。
【0005】
このカード式使い捨て検査具を使用した分析システムは、軽便で、現場での検査が可能であり、検査すべき体液を注射器等の注入器で直接注入できるので、検査すべき体液が雰囲気に触れることを避けることができるという利点がある。しかし、検査対象は、人又は動物の体液といった高濃度の液体であり、例えば土壌に含まれる有害重金属のように極めて微量な被検出物質の濃度測定には、捕集機能を有する濃縮用のフィルターが必要となるうえ、単に二枚の基板で挟持しただけでは、被検液がフィルターをスムーズに通過できない問題もある。
【特許文献1】特開平10―311829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、例えば土壌に含まれる有害重金属のように極めて微量な被検出物質の濃度測定であっても、軽便で、且つ現場での検査を容易且つ迅速に行えるマイクロフィルターユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、液体流入側部材と液体流出側部材との間に、被検液等の液体が通過するフィルターを挟持したマイクロフィルターユニットにおいて、前記液体流入側部材のフィルターを受ける挟持部は、液体流入用の貫通孔を中心とする放射状の溝を有し、しかも、前記液体流出側部材のフィルターを受ける挟持部は、一個以上の液体排出用の貫通孔を有していることにある。
【0008】
本発明は、前記前記液体流出側部材の貫通孔は、フィルターの中心以外の部分に設けられていることにある。
【0009】
本発明は、前記液体流出側部材には、収容凹部が形成され、該収容凹部はテーパー状に形成されていることにある。
【0010】
発明は、前記搭載するフィルターの容積が0.1μl以上で且つ100μlに設定されていることにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、例えば土壌に含まれる有害重金属のように極めて微量な被検出物質の濃度測定であっても、軽便で、且つ現場での検査を容易且つ迅速に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
図1に、本発明の一実施形態のマイクロフィルターユニットとしての検出用カートリッジの一例を分解図で示す。検出用カートリッジは、被検出物質を含む被検液における前記被検出物質の濃度に関連する電気信号を生成するものである。図1においては、検出用カートリッジ1は、4枚の樹脂製のベース基板11、12、13、14を、下からこの順で重ね、組み合わせて構成されている。例えば、各基板の大きさは、平面形状が35mm×50mmであり、一枚の基板の厚さは1mmであり、重ね合わせた状態で約4mmとなる。
【0014】
基板12、13の間には、マイクロフィルターとしてのアニオン性物質を吸着する吸着担体22a、アニオン性物質を検出するための作用極31、32、該作用極31、32に対応する対極33及び参照極34と、マイクロフィルターとしてのカチオン性物質を吸着する吸着担体22b、カチオン性物質を検出するための作用極35、36、参照極37及び対極38が配置される。
【0015】
各吸着担体は、各極の上流側に設けられるように基板12、13に挟持されるもので、膜、繊維体、多孔質体のいずれの形態であってもよく、また、それらの組み合わせであってもよく、吸着担体は、被検出物質に応じて適宜決定される。各吸着担体の容積は、0.1μl以上で且つ100μlに設定されている。カチオン性物質の吸着担体22bは、該担体を構成する材料をスルホン酸基で処理して形成することができる。また、アニオン性物質の吸着担体22aは、該担体を構成する材料を4級アミン基で処理して形成することができる。
【0016】
基板12の上面(吸着担体を受ける挟持部)には、吸着担体22a、22bの下部を受ける一対の吸着担体収容凹部205が形成されている。各吸着担体収容凹部205は、図2に示すように、吸着担体22a、22bの外周部を押圧する環状の座部205aと、座部205aよりも小径の環状溝205bと、中心Oから所定の位置にある複数の貫通孔205c(本実施の形態では、貫通孔205cは中心O以外の部分となるように、同一円周状に3個設けられている。)と、環状溝205bと貫通孔205cとを連通する連通溝205d、205eとからなる。なお、貫通孔205cの形状は特に限定されず、円柱状や下流側(下方)に向けて小径となるテーパー状であってもよい。また、環状溝205bは複数重に設けることも可能である。そして、環状溝205b、連通溝205d、205eおよび貫通孔205cは、吸着担体22a、22bとの間で、下側流通路を形成し、基板12が液体流出側部材を構成する。
【0017】
また、基板12には、前記電極を所定位置に収めるために一対の凹部が形成されている。図1において、基板12の凹部31a、32aが作用極31、32を収める作用電極室であり、凹部33aが対極33を収める対極室、凹部34aが参照電極34を収めるための参照電極室である。同様に、凹部35a、36aが作用電極室を、凹部37aが参照電極室を、凹部38aが対極室をそれぞれ構成する。
【0018】
砒素及びセレン測定用の作用極としては、ガラス基材上にクロム層を介して金層が形成された金電極(3.5mm×8.4mm×0.5mm)を用い、カドミウム、鉛、水銀及び六価クロム測定用の作用極としては板状カーボン電極(3.5mm×8.4mm×0.5mm)を用いる。この実施形態においては、作用極31を砒素及びセレン測定用の金電極とし、作用極32、35、36を、それぞれカドミウム、鉛、水銀及び六価クロム測定用の板状カーボン電極とすることができる。対極33、38には、作用極32と同様の板状カーボン電極(3.5mm×8.4mm×0.5mm)を使用し、参照極34、37には、アルミナ基材上に銀ペースト(日本アチソン社製6022)が塗布された電極(3.5mm×8.4mm×0.5mm)を使用すればよい。もちろん、他の電極構成を採用することも可能である。
【0019】
基板11と基板12の間、基板12と基板13の間、基板13と基板14の間は、粘着テープによって液密に固定される。図1には、基板12、13間に配置される粘着テープ24の例が示されている。他の基板の間に配置される粘着テープも同様な形状であり、各粘着テープは、必要な個所に開口又は孔が形成される。
【0020】
作用極31、32、35、36その他の電極の表面は、粘着テープ24によってマスクされる。図1に示すように、マスク24の電極に対応する8ヶ所の位置に所定の面積の孔を開口することにより、各電極が露出される。図1において、孔241、242が、アニオン性物質を検出するための作用極31、32にそれぞれ対応するものであり、カチオン性物質を検出するための電極列に対応する位置にも同様な孔が形成されている。これらの孔は、電極31〜38が液体と接するようにするためのものである。さらに、粘着テープ24には、吸着担体22a、22bに対応する位置にも該吸着担体22a、22bと同じ大きさの孔243、244が形成されている。個々に説明はしないが、粘着テープ24及び他の粘着テープには、それぞれ基板に形成される凹部等に対応する位置に必要な孔又は開口が形成される。
【0021】
図1に示すように、基板11には、廃液溜110を形成する凹部と、液体流路の一部を形成する一対の流路溝111及び一対の流路溝112が形成されている。各流路溝112は、基板12の各吸着担体収容凹部205に連通している。
【0022】
基板12には、被検液導入のための一対の貫通孔201が形成されており、この貫通孔201の各々は、基板12が基板11に重ねられたとき、該基板11の一対の流路溝111の各々の一端部に連通する位置に配置される。基板12は、さらに、基板11の廃液溜110に重なる開口202を有する。
【0023】
基板13は、該基板13が基板12に重ねられたとき、基板12の一対の貫通孔201に重なる一対の貫通孔301と、一対の吸着担体収容凹部302を有する。各吸着担体収容凹部302は、吸着担体22a、22bの上部を受ける挟持部に設けられ、図3に示すように、基板13の下面に形成され且つ吸着担体22a、22bの外周部を押圧する環状の座部302aと、吸着担体22a、22bの中心に位置する貫通孔302bと、この貫通孔302bを中心にして形成された複数の環状溝302c1、302c2と、貫通孔302bと外側の環状溝302c2とを連通するように、放射状に設けられた直線溝302dとからなる。なお、環状溝302c1、302c2および直線溝302dの数は、単数であってもよく、特に限定されるものではない。そして、環状溝302c1、302c2、直線溝302dおよび貫通孔302bは、吸着担体22a、22bとの間で、上側流通路を形成し、基板13が液体流入側部材を構成する。
【0024】
さらに、基板13は、電極31、32、33、34の列に重なる流路溝303と、電極35、36、37、38の列に重なる流路溝304を有する。また、基板13には、参照電極活性化液としての電解質溶液を入れた電解質溶液パックを収める電解質溶液室305と基板12の孔202に連通する孔306が形成されている。基板12には、基板13の電解質溶液室305内に延びる針状体203が設けられる。
【0025】
基板14には、基板13の一対の貫通孔301にそれぞれ重なる一対の貫通孔401と、基板13の電解質溶液室305に連通する貫通孔402が形成されている。基板14の外側表面には、貫通孔402を塞ぐように、可撓性の薄板部402aが、該基板14と一体に形成されている(図4(a)(c)参照)。参照電極活性化液として機能する電解質溶液は、予めアルミニウム製のパックに入れられた状態で供給され、この電解質溶液パックが電解質溶液室305に収められる。電解質溶液室305は参照電極室に連通している。
【0026】
基板14には、一対の流路溝403が形成されており、この流路溝403の各々の一端は、基板12、13の孔を介して基板11の流路溝111の他端に連通している。また、各流路溝403の他端は、基板13の吸着担体収容凹部302の貫通孔302bに連通している。なお、電極31、32、33、34の列及び電極35、36、37、38の列は、基板12の側縁に露出されている。貫通孔201、301、401は、全体として、被検液導入部1aを構成する。
【0027】
図4(a)に、図1の基板11、12、13、14を重ねて検出用カートリッジを組み立てた状態を示す。図4(b)は、図4(a)のA−A断面図で、吸着担体を通る断面を示し、図4(c)は、図4(a)のB−B断面図で、電極34、38と参照電極用の電解質溶液室305を通る断面を示す。
【0028】
図5に、検出用カートリッジ内における液体流路を、上流側を左に、下流側を右に配置した状態で模式的に示し、図6に、その拡大断面図を示す。なお、便宜上、基板12の各吸着担体収容凹部205は、図2に示すC−C線断面を、基板13の吸着担体収容凹部302は、図3に示すD−D線断面を、それぞれ示す。図5および図6における符号は、それぞれ図1に示す符号に対応する。
【0029】
ここでは、アニオン吸着担体22aを含む砒素、セレン測定用流路を例に説明する。吸着担体22aは、例えば直径5mm×厚さ600μm程度の円形の膜で、その周縁部を、前記基板12の吸着担体収容凹部205の座部205aと、基板13の吸着担体収容凹部302の座部302aとが押し挟んで保持している。両方の座部により、吸着担体22aの周縁方向からの液体の漏れを生じないように形成されている。
【0030】
図5に示すように、基板11の外面には、流路溝111に通じる外部ポート113と、流路溝112の吸着担体収容凹部205寄りの位置に通じる外部ポート114、及び流路溝112の下流側端部寄りの位置に通じる外部ポート115が形成されている。さらに、基板11の外面には、基板12の貫通孔を介して基板13の流路溝304に通じる外部ポート116が形成されている。
【0031】
検出用カートリッジ1は、図示省略の読取装置に接続可能で、ポート113、114、115、116は、読取装置に設けられた弁機構により切り換え可能になっている。なお、読取装置は、カートリッジからの前記電気信号を読み取って前記被検出物質の濃度に関する情報を生成する装置である。
【0032】
次に、前記検出用カートリッジ1を用いて被検出物質を検出する場合について説明する。なお、砒素、セレン、六価クロムの測定の場合には、吸着担体として、3M社からAnion-SRの商標により入手可能なエムポア(TM)ディスクカードリッジを用い、溶離液として、1M−硫酸(pH=約2)を用いる。この吸着担体も、粒径50-100μmの微粒子を繊維状テフロン(登録商標)に固着させ、0.5〜0.75mmの厚みの膜状にしたものである。
【0033】
また、被検出物質が、カドミウム、鉛、水銀測定の場合には、吸着担体として、3M社からCation-SRの商標により入手可能なエムポア(TM)ディスクカードリッジを用い、溶離液として0.4M 塩化カリウム、 10mM クエン酸、3.5mM エチレンジアミンを含む液体(pH=約4)を使用する。この吸着担体は、粒径50-100μmの微粒子を繊維状テフロン(登録商標)に固着させ、0.5〜0.75mmの厚みの膜状にしたものである。微粒子10%、繊維状テフロン(登録商標)90%の構成である。
【0034】
先ず、検出用カートリッジ1は、シリンジホルダのクランプ15、16により保持される。図8は、シリンジを操作するのに使用されるシリンジホルダの一例を示す図である。ホルダは、クランプ15、16を有し、該クランプ15、16により検出用カートリッジ1を強く挟む構造となっている。クランプ16は、使用されない方の被検液導入部1aの貫通孔401を液密に塞ぐ構造を有する。また、クランプ16には、シリンジ17を嵌合させる開口を有する。図8に示す構成のシリンジホルダの代わりに、図4(a)に示す閉塞用の栓41又は弁などを利用してもよい。貫通孔401を塞ぐのは、ポート113から注入した溶離液が吸着担体22aを通過してポート115から流出するのを円滑にするためである。
【0035】
外部ポート113、114を閉じ、外部ポート115を開いた状態にする。そして、最初に被検出物質を含む被検液、及び必要に応じてアニオン吸着担体活性化液を、シリンジホルダを用いて、検出用カートリッジ1の被検液導入部1aを構成する貫通孔401、301、201に注液する。
【0036】
被検液の送液形態を、図7に示す。被検液導入部1aの貫通孔401、301、201からシリンジ17により注入された被検液は、溝111の液体流路を通り、基板12、13の孔を垂直方向上方に抜けて基板14の溝403からなる液体流路を流れて吸着担体22aに達する。ここで、基板14の溝403から出た被検液は、基板13の貫通孔302bから吸着担体収容凹部302に入る。吸着担体収容凹部302に入った被検液は、直線溝302dおよび環状溝302c2を流れることとなり、適量が吸着担体22aに吸着され、流路方向の流れがスムーズとなり、気泡の混入なども生じ難くなる。被検液に含まれる被検出物質は吸着担体22aに吸着される。
【0037】
吸着担体22aを通過した被検液は、基板12の吸着担体収容凹部205に入る。すなわち、被検液は、吸着担体収容凹部205の環状溝205b、連通溝205d、205eおよび各貫通孔205cを通り、流路溝112を介して外部ポート115から排出される。吸着担体22aを通過した被検液は、その流れがスムーズとなる。また、貫通孔205c中心O以外の部分にあるので、被検液の圧力が吸着担体22aの中心に集中することはなく、圧力で吸着担体22aが破損するのを防止できる。このように、被検液を吸着担体22aの上下流位置においてスムーズに流れるようにしたので、作業者は、シリンジ17を容易に操作することができる。
【0038】
電解質溶液室305には、参照電極34を活性化するための電解質溶液が注入される。例えば、参照電極34用の塩化銀形成のための塩化カリウム溶液を参照電極室に満たすため、該溶液が入ったパックを基板13の電解質溶液室305内に配置し、基板14に設けられた押下部すなわち可撓性薄板部402a(図4(a)、(c))を押す。基板12には該容器に対応する位置に針状体203が設けられており、この針状体203によって溶液の入ったパックが破れ、ここから漏れ出た塩化カリウムは、参照電極34が位置する参照電極室に流れ込む。塩化カリウムは、参照電極の表面に銀/塩化銀電極を形成する。
【0039】
次いで、シリンジホルダが外された検出用カートリッジ1が読取装置に挿入される。そして、外部ポート115が閉じられ、外部ポート113が読取装置側に設けられた溶離液供給部に対して開かれる。外部ポート114、116は互いに接続される。図9に、溶離液の流れ径路を示す。溶離液供給部から送られる溶離液は、ポート113から溝403の液体流路を経て吸着担体22aに達し、該吸着担体22aを通過して溝112の液体流路に流れる。この溶離液も前記被検液の場合と同様に吸着担体収容凹部302、吸着担体収容凹部205をスムーズに通過し、この間に、吸着担体22aに吸着されていた被検出物質が溶離液に溶出する。被検出物質を含む溶離液は、溝112の液体流路から基板13の溝303による液体流路に沿って、アニオン検出用電極31、32、33、34の上を流れる。被検出物質を含む溶離液が連続して電極上を流れることにより、電極には、被検出物質の濃度情報に関連する電気信号が発生する。
【0040】
なお、カチオン性物質吸着担体22bを使用したカチオンの測定も同様であるが、カチオン性物質吸着担体22bは活性化液が不要である。このため、上記の工程においては、被検液の注入のみを行えばよい。そして、これらの測定において得られた電気信号に基づいて砒素、セレン、カドミウム、鉛および水銀等の被検出物質の定量分析を行うことができる。
【0041】
図10および図11は、本発明の他の実施の形態をそれぞれ示す。図10は、前記基板12の吸着担体収容凹部205の連通溝205d、205eを、流路方向の流れに沿って流路壁に急激な段差を生じないようにテーパー面に形成している。また、図11は、基板12の吸着担体収容凹部205に連通溝205d、205eを設けることなく、座部205aから中心の貫通孔205cに向けてテーパー面に形成している。このように、吸着担体収容凹部205の所定部分をテーパー面とすることにより、液体の流れを更にスムーズにできる。また、特に図11の吸着担体収容凹部205は、ほとんどの部分をテーパー面としているので、成形も容易にできる。
【0042】
本発明は、前記検出用カートリッジ1に限定されるものではなく、液体中に含まれる目的物を濃縮および/または夾雑物を除去するために用いられるものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態の検出用カートリッジを分解して示す斜視図である。
【図2】同検出用カートリッジの液体流出側部材としての基板の上面に形成された吸着担体収容凹部を示す斜視図である。
【図3】同検出用カートリッジの液体流入側部材としての基板の下面に形成された吸着担体収容凹部を示す斜視図である。
【図4】検出用カートリッジの組立て状態を示すもので、(a)は斜視図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)はB−B断面図である。
【図5】検出用カートリッジの液体流路を概略的に示す断面図である。
【図6】同検出用カートリッジの濃縮部の拡大を示す断面図である。
【図7】検出用カートリッジ内の被検液の流れを示す斜視図である。
【図8】シリンジホルダの取付け状態を示す斜視図である。
【図9】検出用カートリッジ内の溶離液の流れを示す斜視図である。
【図10】他の実施形態による濃縮部の拡大を示す断面図である。
【図11】さらに他の実施形態による濃縮部の拡大を示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
12 基板(液体流出側部材)
13 基板(液体流入側部材)
22a 吸着担体(フィルター)
22b 吸着担体(フィルター)
205 吸着担体収容凹部(収容凹部)
205a 座部
205b 環状溝
205c 貫通孔
302 吸着担体収容凹部(収容凹部)
302a 座部
302b 貫通孔
302c1、302c2 環状溝
302d 直線溝(放射状の溝)
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば吸引または加圧により液体を供給するラインにおいて、液体中に含まれる目的物を濃縮および/または夾雑物を除去するために用いるマイクロフィルターユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルターを固定する装置として、吸引マニホールドや加圧送液システムなどの固層抽出装置を用いることにより、目的物の濃縮や夾雑物の除去を行う方法が確立されているが、上記抽出装置は高価であり、また微量サンプルの場合にサンプルのロスが多いという問題があった。
【0003】
一方、小型の抽出手段としてシリンジ型にフィルターを接着したカートリッジタイプの製品も広く使用されているが、これらの抽出手段でも溶離液量はまだ多く、サンプルが微量なほど濃縮率が低下する傾向にある。また、作業者がシリンジを押圧することにより、シリンジ内の被検液をフィルターに吸着させるため、被検液をスムーズに流してフィルターの通過率の低下を防止する必要もある。
【0004】
また、分析システムに使用されるカード式使い捨て検査具も開発されている(例えば、特許文献1参照)。かかるカード式使い捨て検査具は、間に薄い仕切り板を挟んで互いに液密に重畳される二枚の基板から構成される。基板の一方は、内面に、検査対象となる人又は動物の体液を通す通路と、この通路の一端に連通するように体液貯蔵部が設けられる。通路の他端には基板を厚さ方向に貫通する体液注入孔が設けられる。センサーは、他方の基板の内面に設けられる。さらに、該他方の基板内面には、センサー校正用の試薬容器を受ける凹部と、仕切り板の開口部を介して上記一方の基板に設けた体液貯蔵部に連通する第2の体液貯蔵部が設けられる。
【0005】
このカード式使い捨て検査具を使用した分析システムは、軽便で、現場での検査が可能であり、検査すべき体液を注射器等の注入器で直接注入できるので、検査すべき体液が雰囲気に触れることを避けることができるという利点がある。しかし、検査対象は、人又は動物の体液といった高濃度の液体であり、例えば土壌に含まれる有害重金属のように極めて微量な被検出物質の濃度測定には、捕集機能を有する濃縮用のフィルターが必要となるうえ、単に二枚の基板で挟持しただけでは、被検液がフィルターをスムーズに通過できない問題もある。
【特許文献1】特開平10―311829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、例えば土壌に含まれる有害重金属のように極めて微量な被検出物質の濃度測定であっても、軽便で、且つ現場での検査を容易且つ迅速に行えるマイクロフィルターユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、液体流入側部材と液体流出側部材との間に、被検液等の液体が通過するフィルターを挟持したマイクロフィルターユニットにおいて、前記液体流入側部材のフィルターを受ける挟持部は、液体流入用の貫通孔を中心とする放射状の溝を有し、しかも、前記液体流出側部材のフィルターを受ける挟持部は、一個以上の液体排出用の貫通孔を有していることにある。
【0008】
本発明は、前記前記液体流出側部材の貫通孔は、フィルターの中心以外の部分に設けられていることにある。
【0009】
本発明は、前記液体流出側部材には、収容凹部が形成され、該収容凹部はテーパー状に形成されていることにある。
【0010】
発明は、前記搭載するフィルターの容積が0.1μl以上で且つ100μlに設定されていることにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、例えば土壌に含まれる有害重金属のように極めて微量な被検出物質の濃度測定であっても、軽便で、且つ現場での検査を容易且つ迅速に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
図1に、本発明の一実施形態のマイクロフィルターユニットとしての検出用カートリッジの一例を分解図で示す。検出用カートリッジは、被検出物質を含む被検液における前記被検出物質の濃度に関連する電気信号を生成するものである。図1においては、検出用カートリッジ1は、4枚の樹脂製のベース基板11、12、13、14を、下からこの順で重ね、組み合わせて構成されている。例えば、各基板の大きさは、平面形状が35mm×50mmであり、一枚の基板の厚さは1mmであり、重ね合わせた状態で約4mmとなる。
【0014】
基板12、13の間には、マイクロフィルターとしてのアニオン性物質を吸着する吸着担体22a、アニオン性物質を検出するための作用極31、32、該作用極31、32に対応する対極33及び参照極34と、マイクロフィルターとしてのカチオン性物質を吸着する吸着担体22b、カチオン性物質を検出するための作用極35、36、参照極37及び対極38が配置される。
【0015】
各吸着担体は、各極の上流側に設けられるように基板12、13に挟持されるもので、膜、繊維体、多孔質体のいずれの形態であってもよく、また、それらの組み合わせであってもよく、吸着担体は、被検出物質に応じて適宜決定される。各吸着担体の容積は、0.1μl以上で且つ100μlに設定されている。カチオン性物質の吸着担体22bは、該担体を構成する材料をスルホン酸基で処理して形成することができる。また、アニオン性物質の吸着担体22aは、該担体を構成する材料を4級アミン基で処理して形成することができる。
【0016】
基板12の上面(吸着担体を受ける挟持部)には、吸着担体22a、22bの下部を受ける一対の吸着担体収容凹部205が形成されている。各吸着担体収容凹部205は、図2に示すように、吸着担体22a、22bの外周部を押圧する環状の座部205aと、座部205aよりも小径の環状溝205bと、中心Oから所定の位置にある複数の貫通孔205c(本実施の形態では、貫通孔205cは中心O以外の部分となるように、同一円周状に3個設けられている。)と、環状溝205bと貫通孔205cとを連通する連通溝205d、205eとからなる。なお、貫通孔205cの形状は特に限定されず、円柱状や下流側(下方)に向けて小径となるテーパー状であってもよい。また、環状溝205bは複数重に設けることも可能である。そして、環状溝205b、連通溝205d、205eおよび貫通孔205cは、吸着担体22a、22bとの間で、下側流通路を形成し、基板12が液体流出側部材を構成する。
【0017】
また、基板12には、前記電極を所定位置に収めるために一対の凹部が形成されている。図1において、基板12の凹部31a、32aが作用極31、32を収める作用電極室であり、凹部33aが対極33を収める対極室、凹部34aが参照電極34を収めるための参照電極室である。同様に、凹部35a、36aが作用電極室を、凹部37aが参照電極室を、凹部38aが対極室をそれぞれ構成する。
【0018】
砒素及びセレン測定用の作用極としては、ガラス基材上にクロム層を介して金層が形成された金電極(3.5mm×8.4mm×0.5mm)を用い、カドミウム、鉛、水銀及び六価クロム測定用の作用極としては板状カーボン電極(3.5mm×8.4mm×0.5mm)を用いる。この実施形態においては、作用極31を砒素及びセレン測定用の金電極とし、作用極32、35、36を、それぞれカドミウム、鉛、水銀及び六価クロム測定用の板状カーボン電極とすることができる。対極33、38には、作用極32と同様の板状カーボン電極(3.5mm×8.4mm×0.5mm)を使用し、参照極34、37には、アルミナ基材上に銀ペースト(日本アチソン社製6022)が塗布された電極(3.5mm×8.4mm×0.5mm)を使用すればよい。もちろん、他の電極構成を採用することも可能である。
【0019】
基板11と基板12の間、基板12と基板13の間、基板13と基板14の間は、粘着テープによって液密に固定される。図1には、基板12、13間に配置される粘着テープ24の例が示されている。他の基板の間に配置される粘着テープも同様な形状であり、各粘着テープは、必要な個所に開口又は孔が形成される。
【0020】
作用極31、32、35、36その他の電極の表面は、粘着テープ24によってマスクされる。図1に示すように、マスク24の電極に対応する8ヶ所の位置に所定の面積の孔を開口することにより、各電極が露出される。図1において、孔241、242が、アニオン性物質を検出するための作用極31、32にそれぞれ対応するものであり、カチオン性物質を検出するための電極列に対応する位置にも同様な孔が形成されている。これらの孔は、電極31〜38が液体と接するようにするためのものである。さらに、粘着テープ24には、吸着担体22a、22bに対応する位置にも該吸着担体22a、22bと同じ大きさの孔243、244が形成されている。個々に説明はしないが、粘着テープ24及び他の粘着テープには、それぞれ基板に形成される凹部等に対応する位置に必要な孔又は開口が形成される。
【0021】
図1に示すように、基板11には、廃液溜110を形成する凹部と、液体流路の一部を形成する一対の流路溝111及び一対の流路溝112が形成されている。各流路溝112は、基板12の各吸着担体収容凹部205に連通している。
【0022】
基板12には、被検液導入のための一対の貫通孔201が形成されており、この貫通孔201の各々は、基板12が基板11に重ねられたとき、該基板11の一対の流路溝111の各々の一端部に連通する位置に配置される。基板12は、さらに、基板11の廃液溜110に重なる開口202を有する。
【0023】
基板13は、該基板13が基板12に重ねられたとき、基板12の一対の貫通孔201に重なる一対の貫通孔301と、一対の吸着担体収容凹部302を有する。各吸着担体収容凹部302は、吸着担体22a、22bの上部を受ける挟持部に設けられ、図3に示すように、基板13の下面に形成され且つ吸着担体22a、22bの外周部を押圧する環状の座部302aと、吸着担体22a、22bの中心に位置する貫通孔302bと、この貫通孔302bを中心にして形成された複数の環状溝302c1、302c2と、貫通孔302bと外側の環状溝302c2とを連通するように、放射状に設けられた直線溝302dとからなる。なお、環状溝302c1、302c2および直線溝302dの数は、単数であってもよく、特に限定されるものではない。そして、環状溝302c1、302c2、直線溝302dおよび貫通孔302bは、吸着担体22a、22bとの間で、上側流通路を形成し、基板13が液体流入側部材を構成する。
【0024】
さらに、基板13は、電極31、32、33、34の列に重なる流路溝303と、電極35、36、37、38の列に重なる流路溝304を有する。また、基板13には、参照電極活性化液としての電解質溶液を入れた電解質溶液パックを収める電解質溶液室305と基板12の孔202に連通する孔306が形成されている。基板12には、基板13の電解質溶液室305内に延びる針状体203が設けられる。
【0025】
基板14には、基板13の一対の貫通孔301にそれぞれ重なる一対の貫通孔401と、基板13の電解質溶液室305に連通する貫通孔402が形成されている。基板14の外側表面には、貫通孔402を塞ぐように、可撓性の薄板部402aが、該基板14と一体に形成されている(図4(a)(c)参照)。参照電極活性化液として機能する電解質溶液は、予めアルミニウム製のパックに入れられた状態で供給され、この電解質溶液パックが電解質溶液室305に収められる。電解質溶液室305は参照電極室に連通している。
【0026】
基板14には、一対の流路溝403が形成されており、この流路溝403の各々の一端は、基板12、13の孔を介して基板11の流路溝111の他端に連通している。また、各流路溝403の他端は、基板13の吸着担体収容凹部302の貫通孔302bに連通している。なお、電極31、32、33、34の列及び電極35、36、37、38の列は、基板12の側縁に露出されている。貫通孔201、301、401は、全体として、被検液導入部1aを構成する。
【0027】
図4(a)に、図1の基板11、12、13、14を重ねて検出用カートリッジを組み立てた状態を示す。図4(b)は、図4(a)のA−A断面図で、吸着担体を通る断面を示し、図4(c)は、図4(a)のB−B断面図で、電極34、38と参照電極用の電解質溶液室305を通る断面を示す。
【0028】
図5に、検出用カートリッジ内における液体流路を、上流側を左に、下流側を右に配置した状態で模式的に示し、図6に、その拡大断面図を示す。なお、便宜上、基板12の各吸着担体収容凹部205は、図2に示すC−C線断面を、基板13の吸着担体収容凹部302は、図3に示すD−D線断面を、それぞれ示す。図5および図6における符号は、それぞれ図1に示す符号に対応する。
【0029】
ここでは、アニオン吸着担体22aを含む砒素、セレン測定用流路を例に説明する。吸着担体22aは、例えば直径5mm×厚さ600μm程度の円形の膜で、その周縁部を、前記基板12の吸着担体収容凹部205の座部205aと、基板13の吸着担体収容凹部302の座部302aとが押し挟んで保持している。両方の座部により、吸着担体22aの周縁方向からの液体の漏れを生じないように形成されている。
【0030】
図5に示すように、基板11の外面には、流路溝111に通じる外部ポート113と、流路溝112の吸着担体収容凹部205寄りの位置に通じる外部ポート114、及び流路溝112の下流側端部寄りの位置に通じる外部ポート115が形成されている。さらに、基板11の外面には、基板12の貫通孔を介して基板13の流路溝304に通じる外部ポート116が形成されている。
【0031】
検出用カートリッジ1は、図示省略の読取装置に接続可能で、ポート113、114、115、116は、読取装置に設けられた弁機構により切り換え可能になっている。なお、読取装置は、カートリッジからの前記電気信号を読み取って前記被検出物質の濃度に関する情報を生成する装置である。
【0032】
次に、前記検出用カートリッジ1を用いて被検出物質を検出する場合について説明する。なお、砒素、セレン、六価クロムの測定の場合には、吸着担体として、3M社からAnion-SRの商標により入手可能なエムポア(TM)ディスクカードリッジを用い、溶離液として、1M−硫酸(pH=約2)を用いる。この吸着担体も、粒径50-100μmの微粒子を繊維状テフロン(登録商標)に固着させ、0.5〜0.75mmの厚みの膜状にしたものである。
【0033】
また、被検出物質が、カドミウム、鉛、水銀測定の場合には、吸着担体として、3M社からCation-SRの商標により入手可能なエムポア(TM)ディスクカードリッジを用い、溶離液として0.4M 塩化カリウム、 10mM クエン酸、3.5mM エチレンジアミンを含む液体(pH=約4)を使用する。この吸着担体は、粒径50-100μmの微粒子を繊維状テフロン(登録商標)に固着させ、0.5〜0.75mmの厚みの膜状にしたものである。微粒子10%、繊維状テフロン(登録商標)90%の構成である。
【0034】
先ず、検出用カートリッジ1は、シリンジホルダのクランプ15、16により保持される。図8は、シリンジを操作するのに使用されるシリンジホルダの一例を示す図である。ホルダは、クランプ15、16を有し、該クランプ15、16により検出用カートリッジ1を強く挟む構造となっている。クランプ16は、使用されない方の被検液導入部1aの貫通孔401を液密に塞ぐ構造を有する。また、クランプ16には、シリンジ17を嵌合させる開口を有する。図8に示す構成のシリンジホルダの代わりに、図4(a)に示す閉塞用の栓41又は弁などを利用してもよい。貫通孔401を塞ぐのは、ポート113から注入した溶離液が吸着担体22aを通過してポート115から流出するのを円滑にするためである。
【0035】
外部ポート113、114を閉じ、外部ポート115を開いた状態にする。そして、最初に被検出物質を含む被検液、及び必要に応じてアニオン吸着担体活性化液を、シリンジホルダを用いて、検出用カートリッジ1の被検液導入部1aを構成する貫通孔401、301、201に注液する。
【0036】
被検液の送液形態を、図7に示す。被検液導入部1aの貫通孔401、301、201からシリンジ17により注入された被検液は、溝111の液体流路を通り、基板12、13の孔を垂直方向上方に抜けて基板14の溝403からなる液体流路を流れて吸着担体22aに達する。ここで、基板14の溝403から出た被検液は、基板13の貫通孔302bから吸着担体収容凹部302に入る。吸着担体収容凹部302に入った被検液は、直線溝302dおよび環状溝302c2を流れることとなり、適量が吸着担体22aに吸着され、流路方向の流れがスムーズとなり、気泡の混入なども生じ難くなる。被検液に含まれる被検出物質は吸着担体22aに吸着される。
【0037】
吸着担体22aを通過した被検液は、基板12の吸着担体収容凹部205に入る。すなわち、被検液は、吸着担体収容凹部205の環状溝205b、連通溝205d、205eおよび各貫通孔205cを通り、流路溝112を介して外部ポート115から排出される。吸着担体22aを通過した被検液は、その流れがスムーズとなる。また、貫通孔205c中心O以外の部分にあるので、被検液の圧力が吸着担体22aの中心に集中することはなく、圧力で吸着担体22aが破損するのを防止できる。このように、被検液を吸着担体22aの上下流位置においてスムーズに流れるようにしたので、作業者は、シリンジ17を容易に操作することができる。
【0038】
電解質溶液室305には、参照電極34を活性化するための電解質溶液が注入される。例えば、参照電極34用の塩化銀形成のための塩化カリウム溶液を参照電極室に満たすため、該溶液が入ったパックを基板13の電解質溶液室305内に配置し、基板14に設けられた押下部すなわち可撓性薄板部402a(図4(a)、(c))を押す。基板12には該容器に対応する位置に針状体203が設けられており、この針状体203によって溶液の入ったパックが破れ、ここから漏れ出た塩化カリウムは、参照電極34が位置する参照電極室に流れ込む。塩化カリウムは、参照電極の表面に銀/塩化銀電極を形成する。
【0039】
次いで、シリンジホルダが外された検出用カートリッジ1が読取装置に挿入される。そして、外部ポート115が閉じられ、外部ポート113が読取装置側に設けられた溶離液供給部に対して開かれる。外部ポート114、116は互いに接続される。図9に、溶離液の流れ径路を示す。溶離液供給部から送られる溶離液は、ポート113から溝403の液体流路を経て吸着担体22aに達し、該吸着担体22aを通過して溝112の液体流路に流れる。この溶離液も前記被検液の場合と同様に吸着担体収容凹部302、吸着担体収容凹部205をスムーズに通過し、この間に、吸着担体22aに吸着されていた被検出物質が溶離液に溶出する。被検出物質を含む溶離液は、溝112の液体流路から基板13の溝303による液体流路に沿って、アニオン検出用電極31、32、33、34の上を流れる。被検出物質を含む溶離液が連続して電極上を流れることにより、電極には、被検出物質の濃度情報に関連する電気信号が発生する。
【0040】
なお、カチオン性物質吸着担体22bを使用したカチオンの測定も同様であるが、カチオン性物質吸着担体22bは活性化液が不要である。このため、上記の工程においては、被検液の注入のみを行えばよい。そして、これらの測定において得られた電気信号に基づいて砒素、セレン、カドミウム、鉛および水銀等の被検出物質の定量分析を行うことができる。
【0041】
図10および図11は、本発明の他の実施の形態をそれぞれ示す。図10は、前記基板12の吸着担体収容凹部205の連通溝205d、205eを、流路方向の流れに沿って流路壁に急激な段差を生じないようにテーパー面に形成している。また、図11は、基板12の吸着担体収容凹部205に連通溝205d、205eを設けることなく、座部205aから中心の貫通孔205cに向けてテーパー面に形成している。このように、吸着担体収容凹部205の所定部分をテーパー面とすることにより、液体の流れを更にスムーズにできる。また、特に図11の吸着担体収容凹部205は、ほとんどの部分をテーパー面としているので、成形も容易にできる。
【0042】
本発明は、前記検出用カートリッジ1に限定されるものではなく、液体中に含まれる目的物を濃縮および/または夾雑物を除去するために用いられるものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態の検出用カートリッジを分解して示す斜視図である。
【図2】同検出用カートリッジの液体流出側部材としての基板の上面に形成された吸着担体収容凹部を示す斜視図である。
【図3】同検出用カートリッジの液体流入側部材としての基板の下面に形成された吸着担体収容凹部を示す斜視図である。
【図4】検出用カートリッジの組立て状態を示すもので、(a)は斜視図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)はB−B断面図である。
【図5】検出用カートリッジの液体流路を概略的に示す断面図である。
【図6】同検出用カートリッジの濃縮部の拡大を示す断面図である。
【図7】検出用カートリッジ内の被検液の流れを示す斜視図である。
【図8】シリンジホルダの取付け状態を示す斜視図である。
【図9】検出用カートリッジ内の溶離液の流れを示す斜視図である。
【図10】他の実施形態による濃縮部の拡大を示す断面図である。
【図11】さらに他の実施形態による濃縮部の拡大を示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
12 基板(液体流出側部材)
13 基板(液体流入側部材)
22a 吸着担体(フィルター)
22b 吸着担体(フィルター)
205 吸着担体収容凹部(収容凹部)
205a 座部
205b 環状溝
205c 貫通孔
302 吸着担体収容凹部(収容凹部)
302a 座部
302b 貫通孔
302c1、302c2 環状溝
302d 直線溝(放射状の溝)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体流入側部材と液体流出側部材との間に、被検液等の液体が通過するフィルターを挟持したマイクロフィルターユニットにおいて、前記液体流入側部材のフィルターを受ける挟持部は、液体流入用の貫通孔を中心とする放射状の溝を有し、しかも、前記液体流出側部材のフィルターを受ける挟持部は、一個以上の液体排出用の貫通孔を有していることを特徴とするマイクロフィルターユニット。
【請求項2】
前記液体流出側部材の貫通孔は、フィルターの中心以外の部分に設けられていることを特徴とする請求項1記載のマイクロフィルターユニット。
【請求項3】
前記液体流出側部材の挟持部には、収容凹部が形成され、該収容凹部は、テーパー状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のマイクロフィルターユニット。
【請求項4】
前記搭載するフィルターの容積が、0.1μl以上で且つ100μl以下に設定されていることを特徴とする請求項1記載のマイクロフィルターユニット。
【請求項1】
液体流入側部材と液体流出側部材との間に、被検液等の液体が通過するフィルターを挟持したマイクロフィルターユニットにおいて、前記液体流入側部材のフィルターを受ける挟持部は、液体流入用の貫通孔を中心とする放射状の溝を有し、しかも、前記液体流出側部材のフィルターを受ける挟持部は、一個以上の液体排出用の貫通孔を有していることを特徴とするマイクロフィルターユニット。
【請求項2】
前記液体流出側部材の貫通孔は、フィルターの中心以外の部分に設けられていることを特徴とする請求項1記載のマイクロフィルターユニット。
【請求項3】
前記液体流出側部材の挟持部には、収容凹部が形成され、該収容凹部は、テーパー状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のマイクロフィルターユニット。
【請求項4】
前記搭載するフィルターの容積が、0.1μl以上で且つ100μl以下に設定されていることを特徴とする請求項1記載のマイクロフィルターユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−292676(P2006−292676A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−117079(P2005−117079)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
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