説明

マイクロプラズマ反応装置

【課題】常温・常圧下に極微小空間に低エネルギーで安定発生させることができる低温マイクロプラズマ発生機構(トーチ)を備えたマイクロプラズマ反応装置を提供する。
【解決手段】試料ガス導入管が接続されたプラズマトーチ外管の内部にプラズマガス導入管が接続されたプラズマトーチ内管を設けてなる筒状のプラズマトーチ、前記プラズマトーチ内管の出口部近傍の外周に設けられたプラズマガス励起用高周波コイル、および原料モノマーガス供給手段を備えたマイクロプラズマ反応装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温・常圧下に極微小空間に低エネルギーで安定発生させることができる低温マイクロプラズマ発生機構(トーチ)を備えたマイクロプラズマ反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマ重合膜の高耐久性に着目したバイオセンサーや化学センサーの分子認識膜への応用が目覚ましい発展を遂げている。プラズマ重合法は真空反応容器中での高周波放電による熱的非平衡状態(低温プラズマ)を利用し、超薄膜を得る手法である。原料となるモノマーガスはプラズマ空間中で励起され、高速電子、カチオン、ラジカル等の反応活性種を含んだプラズマ化する。プラズマ空間のガス温度は比較的低温(〜100K)であるため、多くの有機化合物は熱分解しにくい。プラズマ空間のエネルギー分布は非常に広く、一部の電子エネルギーは化学反応の進行に必要な数十kcalに達する。このためプラズマ重合に適用できる原料モノマーは広範であり、例えば通常の重合法では重合できない重合性の感応基を持たないメタン、ベンゼン、ポルフィリンもモノマーとして利用できる。プラズマ重合はドライプロセスで進行し、気相から直接、基材上を超薄膜で被覆できる。プラズマ重合膜は高架橋構造を持つため基材に対する接着性は大変に強固で、被膜は物理的・化学的に大変安定であり、プラズマ重合条件を制御すればモノマーの構造と機能を保持した超薄膜が得られる。
【0003】
一方、非特許文献1に記載のように、ダイオキシン類や環境ホルモン等を始めとする環境汚染物質の環境実試料中の存在濃度のモニタリングや、細菌・ウイルス感染症、ストレスマーカー、疾病マーカー等の臨床医療診断用途の測定対象物質の簡易・迅速・高選択性を有し高感度な免疫センサーの開発は急務である。
【0004】
従来のプラズマ重合法では、真空中で一回の重合反応プロセスで基材との接着性が高く物理的にも安定なプラズマ重合膜を合成することができる。また、プラズマ重合時の電源出力やモノマーガスの圧力を変化させることにより、生成する重合膜の化学構造や組成・物理構造を制御することが可能である。グロー放電の場合、電子のみが高いエネルギーを有しており、系全体は室温程度にしかならならず電子温度と気体温度が平衡状態にある高温プラズマに対して、非平衡プラズマ(低温プラズマ)と呼ばれている。低圧グロー放電は、低温プラズマ状態であるので熱に弱い有機化合物でも室温に近い状態でプラズマ反応による重合が行えるという利点がある。これは、熱分解や熱重合などの副反応による邪魔が生じにくいためである。このため従来のプラズマ重合の研究では、安定したグロー放電を形成するためにラジオ波である13.56MHzの高周波電源と誘導型もしくは平行平板型の電極をプラズマ発生に使用した。高周波放電を用いるのはプラズマ中の荷電粒子の偏析をなくして均一なプラズマの空間を得るためであり、放電ガスと電気的カップリングが容易で同調回路の安定性もよく、取り扱いが簡単である。
【0005】
プラズマ重合法による薄膜の作成法では、一般の方法と比べると以下のような特徴がある。(1)高分子合成、薄膜作成工程をひとつの作業で行え、膜の表面改質も同時に行える。(2)膜作製が低温でかつ完全なドライプロセスで行え、薄膜は高架橋構造体を持つ非晶質であり、化学的にも機械的にも安定な膜が得られる。(3)使用するモノマーの選択範囲が広く、超薄膜(膜厚100nm以下)でもピンホールフリーである。
【0006】
プラズマ重合の反応過程は順に、モノマーの活性過程、活性粒子の基板への輸送過程、重合過程の3つに分かれていると考えられている。プラズマ重合では、ラジカル、イオンなどの重合反応活性種は気相中で生成し、これらの活性種は互いにもしくはモノマー分子と気相中で反応し、重合中間体を生成し、次第に成長していく。これらは微細な球状粉末を形成し、次第に基板上に堆積する。基板上でも吸着モノマーと反応してさらに重合は進行し薄膜化する。重合反応は主にラジカル重合で進むとされている。
【0007】
従来、プラズマ重合させるためには、並行平板の電極を設け、容器内を適度な真空状態にしてプラズマを発生させていた。装置内には原料となるガスを入れ、電極上に成膜素材を置いていた。マイクロプラズマ反応装置を使ったとしても、単一のガラスチューブ内でマイクロプラズマを発生させ、その中で2種類のガスを重合して使用していた。あるいは、単一のガラスチューブ内でマイクロプラズマを発生させ、もう1つの原料ガスを他の装置よりマイクロプラズマ反応装置の近くで加えていた。しかし、単一のガラスチューブ内でマイクロプラズマを発生させ、その中で2種類のガスを重合させると、安定なプラズマが発生しにくい。また、他の気化装置から原料ガスを加える場合は、モノマーガスの輸送過程の制御が難しく安定なプラズマの維持が困難となり、その結果、発生したプラズマが経時的に安定な重合ができない。
【0008】
また、従来のプラズマ反応装置としては、例えば、特許文献1又は2に記載された装置が挙げられる。しかし、特許文献1記載のマイクロプラズマCVD装置では、プラズマはアーク状態で非常に高温であり、カーボンナノチューブやフラーレンなどの炭素材料や金属を合成したものである。また、特許文献2記載のプラズマジェット発生装置では、アーク放電の高温や高エネルギー、高密度の活性ラジカルを利用した反応プロセスである。
従って、従来のマイクロプラズマ反応装置に関する発明では、有機化合物や有機金属化合物を原料とした高分子合成に用いることが可能なプラズマガス温度が著しく低温のマイクロプラズマの発生には達成していなかった。さらに、反応容器は通常、固定して設置する形態をとるため、例えば絶縁性を有するプラズマ重合膜を基板上の一部の望んだ場所に、所定の大きさで、かつ所定の厚みで作製するためには、それ以外の部分を予め被覆するマスクやシャッター機構の存在が不可欠であり、大量の他品種・少量部品を、常時、複雑に生産項目を切り替えながら生産する工業材料の製造技術には不適とされていた。本発明は、これを、基板およびプラズマトーチ部の独立制御する三次元駆動機構で可能とした。
【特許文献1】特開2003−328138号公報
【特許文献2】特開2003−109795
【非特許文献1】「メジャーメント・サイエンス・アンド・テクノロジー(MeasurementScience and Technology)」,2003年,第14巻,第11号,p.1882−1887
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、常温・常圧下に極微小空間に低エネルギーで安定発生させることができる低温マイクロプラズマ発生機構(トーチ)を備えたマイクロプラズマ反応装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、二重構造のプラズマトーチを用いることで、安定したプラズマを発生させ、しかも安定したマイクロプラズマ重合反応を行うことができることを見出した。本発明はこのような知見に基づきなされるに至ったものである。
すなわち、本発明は、
(1)試料ガス導入管が接続されたプラズマトーチ外管の内部にプラズマガス導入管が接続されたプラズマトーチ内管を設けてなる筒状のプラズマトーチ、前記プラズマトーチ内管の出口部近傍の外周に設けられたプラズマガス励起用高周波コイル、および原料モノマーガス供給手段を備えたことを特徴とするマイクロプラズマ反応装置、
(2)前記高周波コイルに環囲されるプラズマトーチ内管内の位置又はその近傍に導線先端部が配設される高融点導線、および該高融点導線に電圧を印加するイグナイターを備えたことを特徴とする(1)項に記載のマイクロプラズマ反応装置、
(3)筒状のプラズマトーチ、前記プラズマトーチの出口部近傍の外周に設けられたプラズマガス励起用高周波コイル、前記高周波コイルに高周波電力を供給する高周波電源、および原料モノマーガス供給手段を備えたことを特徴とするマイクロプラズマ反応装置、
(4)前記高周波コイルに環囲されるプラズマトーチ内の位置又はその近傍に導線先端部が配設される高融点導線、および該高融点導線に電圧を印加するイグナイターを備えたことを特徴とする(2)項に記載のマイクロプラズマ反応装置、
(5)前記高融点導線が直径0.05〜0.5mmタングステン製の単心線であることを特徴とする(2)又は(4)項に記載のマイクロプラズマ反応装置、
【0011】
(6)原料モノマーが、標準状態(1気圧、20℃)で気体状、液体状、または固体状の化合物であって、重合性の官能基を有する、有機化合物、有機金属化合物、ケイ素化合物、有機ケイ素化合物および無機化合物からなる群から選ばれる少なくとも一つの化合物であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載のマイクロプラズマ反応装置、
(7)原料モノマーが、標準状態(1気圧、20℃)で気体状、液体状、または固体状の化合物であって、マイクロプラズマで部分分解することで重合性に変換できる少なくとも一つの化合物であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載のマイクロプラズマ反応装置、
(8)原料モノマーガスがキャリアーガスによって希釈されることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載のマイクロプラズマ反応装置、
(9)放電出力が10〜100Wであり、印可交流電圧が10〜1000Vであり、印可電流が1〜10Aであり、放電周波数が1Hz〜1,000MHzであることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載のマイクロプラズマ反応装置、
【0012】
(10)マイクロプラズマ温度が−5℃〜60℃であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項に記載のマイクロプラズマ反応装置、
(11)プラズマガス及びキャリアーガスがアルゴン等の不活性ガスであることを特徴とする(1)〜(10)のいずれか1項に記載のマイクロプラズマ反応装置、
(12)プラズマガス及びキャリアーガスが、不活性ガス、清浄空気、乾燥空気、酸素、窒素、水素、ハロゲンガス、オゾンガス、クロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、ペルフルオロカーボン、CF4、C26、およびSF6からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれか1項に記載のマイクロプラズマ反応装置、
(13)マイクロ秒〜ナノ秒単位で磁極を切り替え、ラジカル密度を均一化する機能を備えたことを特徴とする(1)〜(12)のいずれか1項に記載のマイクロプラズマ反応装置、
(14)プラズマガス及び原料モノマーガスの流速と流量を制御して、プラズマ発生を安定化する機能を備えたことを特徴とする(1)〜(13)のいずれか1項に記載のマイクロプラズマ反応装置、
(15)プラズマトーチを1〜100個備えたことを特徴とする(1)〜(14)のいずれか1項に記載のマイクロプラズマ反応装置、
【0013】
(16)プラズマ発生トーチまたは重合物堆積基板のいずれか少なくとも一つが、二次元であるXY軸方向もしくは三次元の空間であるXYZ軸方向への数値制御による厳密な位置決めが可能なアクチュエーター(作動装置)に搭載したことを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載のマイクロプラズマ反応装置、
(17)前記アクチュエーター(作動装置)による厳密な位置決めより複数の基材上への薄膜作成を厳密に制御可能であることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載のマイクロプラズマ反応装置、
(18)(1)〜(17)のいずれか1項に記載のマイクロプラズマ反応装置を用いたマイクロプラズマCVD装置であって、前記プラズマトーチの出口から0.5〜2mmの位置に基板が配置されることを特徴とするマイクロプラズマCVD装置、
(19)前記基板の材料が、シリコン、ガラス、金属、または合成高分子であることを特徴とする(18)項に記載のマイクロプラズマCVD装置、
(20)前記基板上に膜厚1Å〜1mmの薄膜が形成されることを特徴とする(18)又は(19)項に記載のマイクロプラズマCVD装置、
(21)前記プラズマトーチが基板に対して90〜30度の範囲内で配置されることを特徴とする(18)〜(20)のいずれか1項に記載のマイクロプラズマCVD装置、
(22)前記のマイクロプラズマ重合反応や表面エッチングした重合膜堆積基板がバイオセンサーや化学センサーの情報変換素子である圧電素子(水晶振動子、表面弾性波素子、表面剪断波素子等)や表面プラズモン共鳴素子、電気化学センサー用の電極、DNAチップ、RNAチップ、タンパクチップ、ELISA基板などであることを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載のマイクロプラズマCVD装置とそれを用いたバイオセンサーや化学センサーなどのセンサー素子や環境モニタリング、臨床医療診断用の分析用の分子認識素子固定化基板の作成法、
(23)前記のマイクロプラズマ重合反応や表面エッチングした重合膜堆積基板がバイオセンサーや化学センサーの情報変換素子であるや表面プラズモン共鳴素子、電気化学センサー用の電極、DNAチップ、RNAチップ、タンパクチップ、ELISA基板などであることを特徴とする請求項1〜22のいずれか1項に記載のマイクロプラズマ重合反応装置とそれを用いて含水酸基を有するマイクロプラズマ重合膜を得る反応条件及びプロセス、
(24)前記のマイクロプラズマプロパルギルアルコール重合膜を基体として、官能基を臭素化変換後にアクリル酸tert−ブチルをモノマーとしたリビングラジカル重合にて、鎖長と鎖密度の明確なグラフト高分子を合成し、tert−ブチル基を脱離後のポリアクリル酸を得、このカルボキシル基を活性エステル化して抗体分子を固定化するプロセス。この抗体固定化センサー素子を用いたバイオセンサーや化学センサーなどのセンサー素子や環境モニタリング、臨床医療診断用の分析用の分子認識素子固定化基板の作成法
を提供するものである。
本発明において、低温マイクロプラズマとは、プラズマガス温度が−273℃〜+300℃であって、発生するプラズマの大きさが直径ミリメートル〜サブマイクロメートル単位のものをいう。
【発明の効果】
【0014】
本発明のマイクロプラズマ反応装置は、常温・常圧下に極微小空間に低エネルギーで時間的・空間的に安定に定発生させることができ、しかも安定したマイクロプラズマ重合反応を行うことができる。
また、本発明のマイクロプラズマ反応装置は、原料モノマーガスをキャリアーガスで希釈することでプラズマ温度を低温に制御することができる。
また、本発明のマイクロプラズマ反応装置は、モノマーを溶解する溶媒、重合開始剤等の通常の高分子合成で必要とされる試薬、開始剤、フラスコやオートクレーブなどの反応容器などが不要であり、しかも真空状態や高圧状態にすることなく、高分子を単離するための洗浄操作やその溶媒も不要であり、かつ環境負荷の小さな常温・常圧下で重合反応を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の好ましい一実施態様について、添付の図面に基づいて詳細に説明をする。なお、各図の説明において同一の要素には同一の符号を付す。
【0016】
図1は、2重管プラズマトーチを用いた高密度マイクロプラズマ反応装置の全体図である。図1のマイクロプラズマ反応装置は、高周波電源1、高周波マッチングボックス2、同軸ケーブル3、イグナイター4、高融点導線5、プラズマトーチ外管6、プラズマトーチ内管7、高周波コイル8、プラズマトーチ管支持具9、基板10、キャリアーガス導入管11、プラズマガス導入管12、試料ガス導入管13、プラズマガス導入バルブ14、キャリアーガス導入バルブ15、オイルバス16、オイル17、試料溶液18、試料溶液タンク19、試料溶液タンク栓20、三次元移動式基板支持台21で構成されている。
【0017】
図3に本実施態様のプラズマトーチの拡大図を示す。本実施態様のプラズマトーチは、プラズマトーチ外管6の中にプラズマトーチ内管7を入れ子にした二重構造になっている。プラズマトーチ内管7にはプラズマガス導入管12が接続されており、プラズマトーチ内管7の出口部近傍の外周にはプラズマガス励起用の高周波コイル8が設けられている。また、プラズマトーチ外管6には試料ガス導入管が接続されている。従来の、単一のガラスチューブ内でマイクロプラズマを発生させ、その中で2種類のガスを重合させる方法では、安定なプラズマが発生しにくく、また、単一のガラスチューブ内でマイクロプラズマを発生させ、もう1つの原料ガスを他の装置からマイクロプラズマ反応装置の近くで加える方法では、安定な重合ができないという問題があった。しかし、本実施態様のような二重構造とすることでこのような問題を解消することができる。
【0018】
プラズマトーチの筐体材料としては、好ましくは、ガラス、石英、ステンレスなどの金属、アルミナ、窒化ケイ素などのセラミックス、人工樹脂、天然樹脂などの樹脂、粘土、セメント、天然石・人工石、水晶、木材であり、より好ましくはガラス、石英、アルミナ、窒化ケイ素などのセラミックであり、最も好ましくは石英、アルミナである。
プラズマトーチの大きさは特に限定されないが、好ましくは1μm〜1000mmであり、より好ましくは10mm〜100mmであり、最も好ましくは10mm〜70mmである。
また、プラズマトーチの数は、好ましくは1個〜10000個であり、より好ましくは1個〜1000個であり、最も好ましくは1個〜100個であり、これらのプラズマトーチは個別にマイクロプラズマを発生させることが可能であることが好ましい。
【0019】
図1において、プラズマトーチ内管7の外周に設けられた高周波コイル8には、高周波電源1から、同軸ケーブル3で接続された高周波マッチングボックス2を介して高周波電力が供給される。また、プラズマトーチ内管7内には高融点導線5が配置され、導線の先端部が高周波コイル8に環囲されるような位置又はその近傍に配設される。高融点導線5には、電圧を印加するためのイグナイター4が接続される。
プラズマトーチ内管7に巻きつけた高周波コイル8に高周波電源1から高周波を印加することでトーチ内に設置された高融点導線5の先端部が高周波加熱され、この状態において点火装置(イグナイター)4を用いて高融点導線5に高電圧を印加すると高周波コイル8を介して供給された高周波電力による誘導プラズマを安定に発生させる。
高融点導線5の材料としては、好ましくはタングステン、白金、モリブデン、タンタル、導電性セラミックス、ステンレスであり、より好ましくはタングステン、白金、モリブデンであり、最も好ましくはタングステンである。高融点導線5の形状としては、好ましくは単心線、多心線、縒り線であり、より好ましくは単心線、多心線であり、最も好ましくは単心線である。高融点導線5の太さとしては、好ましくは直径が0.01mm〜5mmであり、より好ましくは0.02mm〜2mmであり、最も好ましくは0.05mm〜0.5mmである。
なお、図4に示すように、高融点導線を用いない構成としてもよいが、上記のような高融点導線5を用いる構成の方が好ましい。
【0020】
放電出力は、好ましくは0.1W〜1kWであり、より好ましくは5W〜500Wであり、最も好ましくは10W〜100Wである。印可する交流電圧は、好ましくは0.1V〜1MVであり、より好ましくは50V〜10kVであり、最も好ましくは10V〜1000Vである。印可する電流は、好ましくは1mA〜1kAであり、より好ましくは0.1A〜100Aであり、最も好ましくは1A〜50Aである。放電に用いるRF周波数は、好ましくは1Hz〜10GHzであり、より好ましくは100Hz〜1GHzであり、最も好ましくはRF電源の市販品が多く、その製造の容易な、10MHz〜500MHzである。
【0021】
プラズマトーチ内管7に接続されたプラズマガス導入管12からはプラズマガスが導入される。プラズマガスとしては不活性ガスを用いることが好ましい。好ましくは、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、キセノン(Xe)、ネオン(Ne)であり、より好ましくは比較的価格の安価なアルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、であり、最も好ましくはアルゴンである。導入量は、プラズマガス導入バルブ14によって調節される。
【0022】
プラズマトーチ外管6に接続された試料ガス導入管13から試料となる原料モノマーガスが導入される。原料モノマーとしては、通常の高分子合成での高分子の原料モノマーとして用いられる任意の化合物を用いることができ、有機化合物、有機金属化合物、ケイ素化合物、有機ケイ素化合物、無機化合物等を用いることができる。好ましくは、標準状態(1気圧、20℃)で気体状、液体状、または固体状の化合物であって、重合性の官能基を有する、有機化合物、有機金属化合物、ケイ素化合物、有機ケイ素化合物および無機化合物からなる群から選ばれる少なくとも一つの化合物や、標準状態(1気圧、20℃)で気体状、液体状、または固体状の化合物であって、マイクロプラズマで部分分解することで重合性に変換できる少なくとも一つの化合物である。また、固体状の化合物でも温度を上げることなどで気化することで、プラズマトーチ内にガス化して導入できれば原料として供することができる。また、反応性が低く重合性でない化合物も試料として用いることができ、該化合物を基板上に堆積させた後に、重合性の他のモノマー原料をプラズマ重合処理で堆積することにより、複合材料化することができる。
【0023】
標準状態で気体状の化合物は試料ガス導入管13から直接導入することが可能であるが、標準状態で液体状又は固体状の化合物の場合、図1に示したような原料モノマーガス供給手段を用いてガス化することができる。例えば液体化合物の場合、試料溶液タンク19内に液体化合物18を入れて試料溶液タンク栓20にて栓をし、これをオイル17の入ったオイルバス16に入れて加熱することでガス化することができる。試料溶液タンク栓20には、キャリアーガス導入管11が接続され、ガス化した試料はキャリアーガスとともに試料ガス導入管13を通ってプラズマトーチ外管6へ導入される。導入量は、キャリアーガス導入バルブ15によって調節される。
【0024】
当該装置では、原料モノマーのマイクロプラズマ重合反応に、真空反応容器やモノマーを溶解する溶媒、重合開始剤等の通常の高分子合成で必要とされる装置が不要であり、環境負荷の小さな常温・常圧下でマイクロプラズマ重合反応が可能である。
【0025】
マイクロプラズマ反応温度は好ましくは−50℃〜500℃であり、より好ましくは−50℃〜200℃であり、最も好ましくは−5℃〜60℃である。
【0026】
マイクロプラズマの反応温度は、放電条件で制御、すなわち放電出力、プラズマトーチ内管のコイルの巻き数およびコイルに使用する導線の直径、プラズマトーチ内管に通された高融点導線の直径、プラズマトーチ内管及び外管を流通する不活性ガスの流量によって可変することができ、−273℃〜500℃での使用が可能である。
【0027】
原料モノマーのマイクロプラズマ重合反応により薄膜、粉体、液体またはそれらが混合した重合体を得られる。マイクロプラズマ反応で得られる重合堆積物の形状としては、好ましくは薄膜、粉体、液体またはそれらが混合した重合体であり、より好ましくは薄膜、粉体であり、最も好ましくは薄膜である。重合堆積物を堆積する基材上に作成される薄膜の厚さは、反応時間、反応時における放電出力、温度、プラズマフレーム、基材とプラズマトーチとの間隔によって制御される。作成可能な膜厚は、マイクロプラズマ重合時間により制御でき、一般的には、1Å〜1mmである。
【0028】
マイクロプラズマ重合反応により得られる重合堆積物の大きさを制御したものが得られる。マイクロプラズマ反応で得られる重合堆積物の大きさとしては、好ましくは1nm〜1mの大きさであり、より好ましくは1μm〜100mmであり、最も好ましくは10μm〜10mmである。
【0029】
適したマイクロプラズマ反応の周囲圧力範囲でのマイクロプラズマ重合反応により重合堆積物を得られる。ステンレスやガラスで作成した密閉空間の反応容器を用いることにより、マイクロプラズマ反応の周囲圧力範囲としては、好ましくは1mPa〜10MPaであり、より好ましくは1Pa〜1MPaであり、最も好ましくは10Pa〜100kPaである。通常の使用環境では、開放系を用いることで、常圧での使用を基本とする。
【0030】
適した不活性ガスとその希釈ガスや反応ガスでマイクロプラズマ重合反応する。マイクロプラズマ反応に使用する不活性ガスの希釈ガスや反応ガスとしては、好ましくは清浄空気、乾燥空気、酸素、窒素、水素、ハロゲンガス、オゾンガス、クロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、ペルフルオロカーボン、CF4、C26、SF6のいずれか少なくとも一つを用いるかまたは、全く用いない。
【0031】
キャリアーガスの導入管を通して不活性ガスを供給し、不活性ガスとモノマーの混合ガスが試料ガス導入管を経てプラズマトーチの内管とプラズマトーチの外管の間に供給させる。キャリアーガス導入管の材料として好ましくは石英、ガラス、ステンレス、銅などの金属、天然樹脂、人工樹脂、フッ素樹脂などの樹脂、アルミナ、窒化ケイ素などのセラミックであり、より好ましくは耐熱性の石英、ガラス、ステンレスなどの金属であり、最も好ましくは石英、ステンレスなどの金属またはアルミナ、窒化ケイ素などのセラミックである。
【0032】
マイクロプラズマ重合に同時に供給する原料モノマーの数が、好ましくは1〜1000種類であり、より好ましくは1〜10種類であり、最も好ましくは1〜2種類のモノマーの混合ガスが独立した各モノマーガス導入管を経てプラズマトーチ内管とプラズマトーチ外管の間に制御されたガス流速で供給させ、1以上のモノマーのマイクロプラズマ共重合により、任意の構造や元素組成の制御された高分子材料を常温・常圧で合成できる。
【0033】
本発明のマイクロプラズマ反応装置は、マイクロプラズマ重合に同時に供給する原料モノマーと不活性ガスの混合ガスが独立した各モノマーガス導入管を経て制御されたガス流速で、プラズマトーチ内管とプラズマトーチ外管の間に供給させ、かつその封じ込め、混合、均一化を促進させるためにトーチ外部に設置した誘導性プラズマ発生部またはマイクロ秒やナノ秒の時間スケールでのオン・オフによって磁極が切り替わることでプラズマの閉じ込め・攪拌・混合したプラズマ及びモノマーガス中でのラジカル密度を均一化する機能を備える。
【0034】
本発明のマイクロプラズマ反応装置は、マイクロプラズマ重合に同時に供給する原料モノマーと不活性ガスの混合ガスが独立したモノマーガス導入管もしくは不活性ガス導入管を経て制御されたガス流速で、プラズマトーチ内管とプラズマトーチ外管の間に供給し、かつプラズマの封じ込めとプラズマ発生の安定化とその混合・均一化を促進させるために不活性ガスの流速と流量を制御する機能を備える。このことで、プラズマ反応空間中での反応ガスやモノマーガス、活性化されたモノマー等の混合がなされ、その結果、各濃度の均一化が達成される。
【0035】
本発明のマイクロプラズマ反応装置は、適した温度範囲でマイクロプラズマ重合反応する。マイクロプラズマ反応に使用する温度としては、好ましくは−273℃〜1000℃であり、より好ましくは−50℃〜100℃であり、最も好ましくは−20℃〜40℃である。
【0036】
本発明のマイクロプラズマ反応装置は、適した反応時間範囲でマイクロプラズマ反応する。マイクロプラズマ反応に使用する時間としては、好ましくは0.1分〜1000分であり、より好ましくは1分〜100分であり、最も好ましくは3分〜30分である。
【0037】
本発明のマイクロプラズマ反応装置は、適したプラズマ発生トーチと重合物堆積基板との距離範囲でマイクロプラズマ反応する。マイクロプラズマ反応に使用する距離としては、好ましくは0.01mm〜100mmであり、より好ましくは0.1mm〜10mmであり、最も好ましくは0.5mm〜2mmである。
【0038】
本発明のマイクロプラズマ反応装置は、適したプラズマトーチと重合物堆積基材からの角度範囲でマイクロプラズマ反応する。マイクロプラズマ反応に使用する角度としては、好ましくは0度〜360度の範囲であり、より好ましくは0度〜180度の範囲であり、最も好ましくは90度〜30度の範囲である。
【0039】
本発明のマイクロプラズマ反応装置は、適したトーチの電極材料の形状で構成されたマイクロプラズマ発生用のトーチでマイクロプラズマ反応する。マイクロプラズマ反応に使用するトーチの内管のコイルの巻数は、好ましくは1回〜1000回であり、より好ましくは、2回〜100回であり、最も好ましくは10回〜50回である。
【0040】
本発明のマイクロプラズマ反応装置は、適したプラズマ発生トーチと重合物堆積基板で構成される。マイクロプラズマ反応に使用する重合物堆積基板材料としては、好ましくはシリコン、ガラス、ステンレス、セラミックス、人工プラスチック、天然樹脂、合成高分子、粘土、セメント、天然石・人工石、水晶、木材であり、より好ましくはシリコン、ガラス、金属、ステンレス、合成高分子であり、最も好ましくはシリコン、ガラス、金属、合成高分子である。
【0041】
本発明のマイクロプラズマ反応装置は、適した重合物堆積基板の形状で構成される。マイクロプラズマ反応に使用する重合物堆積基板材料の代表的な形状としては、好ましくは立方体、直方体、円筒、円錐型、球体、楕円体等であり、基板の形状やその材料に依存せずほとんどの重合物堆積基板上に重合堆積物を堆積できる。
【0042】
本発明のマイクロプラズマ反応装置のプラズマトーチは、二次元であるXY軸方向もしくは三次元の空間であるXYZ軸方向への数値制御による厳密な位置決めが可能なアクチュエーター(作動装置)に搭載することで、複数の基材上への薄膜作成が厳密に制御することが可能である。また、該装置の重合物堆積基板は、二次元であるXY軸方向もしくは三次元の空間であるXYZ軸方向への数値制御による厳密な位置決めが可能なアクチュエーター(作動装置)に搭載することで、複数の基材上への薄膜作成が厳密に制御することが可能である。また、該装置のプラズマトーチ部及び重合物堆積基板の両者が個々独立して制御が可能な二次元であるXY軸方向もしくは三次元の空間であるXYZ軸方向への数値制御による厳密な位置決めが可能なアクチュエーター(作動装置)に搭載することで、複数の基材上への薄膜作成が厳密に制御することが可能である。
【0043】
本発明によれば、常温・常圧下で発生可能な、プラズマガス温度が低温(−273℃〜+300℃)であるマイクロプラズマの発生方法で、熱プラズマをキャリアーガスの不活性ガスで希釈することでガス温度を低温に制御することを可能とした説明図1または図2に記載のマイクロプラズマ発生装置を用い、プラズマトーチの構造が、説明図3から図6の構成を用いることで低温マイクロプラズマの発生が実現でき、さらに低温プラズマであることから通常の高分子合成での高分子の原料モノマーである所の有機化合物、有機金属化合物、ケイ素化合物、有機ケイ素化合物、無機化合物等を原料モノマーとしたマイクロプラズマ重合反応に利用できる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
本発明では、常温・常圧下に基材材料上に、スチレン及びプロパルギルアルコールをモノマーとして、フェニル基または水酸基を含むマイクロプラズマ重合膜を合成した実施例を示す。フーリエ変換赤外線分光光度計(FT−IR)、接触角測定、および走査型電子顕微鏡(SEM)により、マイクロプラズマ重合膜並びにプラズマ重合膜のキャラクタリゼーションを行った。
【0046】
下記の参考例に記載の方法で、水晶振動子や表面プラズモン共鳴素子、電気化学反応電極の金電極上に表面化学修飾の開始点となるプラズマ重合膜に含まれる水酸基の割合をマイクロプラズマ重合の反応条件により制御し、ここを基点とした水酸基の臭素基への官能基変換を行い、ここからアクリル酸t−ブチルのリビングラジカル重合を文献の手法に従い行う。リビングラジカル重合の重合反応条件を制御することにより、アクリル酸t−ブチルのグラフト鎖の密度と鎖長を制御することが可能となる。次に、トリフルオロ酢酸を用いて、保護基のt−ブチル基を除去し、ポリアクリル酸を得た。少し複雑な手順となるが、他の手法では不可能な抗体を結合させるポリアクリル酸のグラフト鎖の密度と鎖長を確実に制御することが可能となる。この構造の明確なポリアクリル酸のグラフト鎖上に、例えばC反応性タンパクを検出対象に対する抗CRP抗体分子を活性エステル法の経由で固定化した所、従来の自己組織化膜により得られる固定化量に比べて10倍量の抗体を固定化できることが明らかとなった。これは従来の固定化法が二次元的な平面のみで抗体を固定化するのみに対して、本発明ではグラフト高分子を用いた三次元的な固定化による効果である。さらに抗CRP抗体固定化した水晶振動子を用いて、CRP濃度測定を行った所、自己組織化膜で得られるセンサー応答の10倍量の反応が得られた。以上、抗体を用いたバイオセンサーの高感度化のための抗体固定化反応基板の作製にマイクロプラズマ重合反応と得られた重合膜は有用である。
【0047】
参考例
分子構造の明確なポリアクリル酸上に固定化した抗体によるセンサー応答の増幅反応
(プラズマ重合膜の被覆)
At−cut 9MHz水晶振動子上にプロパルギルアルコールをモノマーとしてマイクロプラズマ重合プロパルギルアルコール膜(pp−プロパルギルアルコール膜)を重合する。重合前に水晶振動子表面をヘリウムガス中で、放電出力100W、反応圧力100Paの条件で2分間エッチングを行った。プラズマ重合の条件は、水酸基の割合が高くかつ重合膜の溶媒への耐久性が高い条件である、放電出力40W、モノマー圧力100Paを用いた。重合時間は、1分間とした。
重合後にプラズマ重合膜被覆前後の水晶振動子の発振周波数を計測し、水晶振動子電極上の重合膜の量を測定した。
【0048】
(プラズマ重合膜表面の官能基変換)
水晶振動子表面の水酸基に臭化2−ブロモイソブチリルを結合し、表面の官能基を水酸基から臭素基に変換する。水晶振動子をジクロロメタンに浸し、等モルのトリチルアミンと臭化2−ブロモイソブチリルを加えて、窒素雰囲下、0℃で1時間反応させた。
【0049】
(原子移動ラジカル重合)
スターラーバーを入れたねじ口試験管内を窒素ガスで置換する。触媒となる臭化第一銅の粉末を試験管にいれ、窒素ガスで置換する。以後、試薬を加えるためにふたを開けるたびに窒素ガスで試験管内を充填する。次にモノマーであるアクリル酸t−ブチルを加える。溶媒としてアセトンを加えて、スターラーで攪拌する。触媒の活性化剤として、N,N,N’,N’,N”,−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)を加えて攪拌する。反応開始剤として2−ブロモイソ酪酸エチルを加えてしっかりと栓を締めて、オイルバスで摂氏60度に保った。モノマーのアクリル酸tert−ブチルのモル数を基準とし、このモル数を目的の重合度で割ったモル数をモノマー以外の試薬の必要量とした。ただし、溶媒のアセトンはその比率に関係なく、重合後の溶液の粘度により調整し、モノマー5mLに対してアセトン1mLを加えた。
【0050】
(加水分解)
ジクロロメタンに対し、10%トリフロオロ酢酸を含む溶液に水晶振動子を浸漬し、振盪機で15時間振盪して加水分解した。
(抗体固定化のための官能基の活性化)
1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、N−ヒドロキシこはく酸イミド(NHS)を10mlの蒸留水が入ったシャーレに混ぜ入れ、その溶液に加水分解した水晶振動子を浸漬し、1時間活性化処理を行った。
【0051】
(抗体固定化のための官能基の活性化)
1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、N−ヒドロキシこはく酸イミド(NHS)を10mlの蒸留水が入ったシャーレに混ぜ入れ、その溶液に加水分解した水晶振動子を浸漬し、1時間活性化処理を行った。
【0052】
(抗体の固定化と抗原抗体反応)
はじめに活性基導入後の水晶振動子の発振周波数(F)を測定した。活性化した水晶振動子電極上に抗CRP抗体を30ml滴下し、25.0±0.1℃の空気恒温槽中で90分間、抗CRP抗体の固定化反応を行った。90分経過後、3ml(1ml×3回)の純水で洗浄し、流速2.5l/minの窒素流通下で90分間乾燥後、残った水晶振動子の発振周波数(F)を測定した。個々の水晶振動子の発振周波数差を求めてその平均値を算出し、水晶振動子上に固定化した抗体量を得た(DF=F−F)。続いて、未反応のアルデヒド基をブロッキング処理するために水晶振動子上に0.02Mのグリシン溶液を30ml滴下し、25.0±0.1℃の空気恒温槽中で20分間反応させた。3ml(1ml×3回)の純水で洗浄し、流速2.5l/minの窒素流通下で90分の間乾燥後、水晶振動子の発振周波数(F3)を測定した。水晶振動子の発振周波数変化の平均値からCRP抗体固定化及びグリシン処理で水晶振動子電極上に導入した抗体量を算出した(DF=(F−F)−DF)。抗CRP抗体を固定化した後、グリシンブロッキングした各水晶振動子上にCRPを30ml滴下し、25.0±0.1℃の空気恒温槽中で90分間の抗原抗体反応を行った。その後、3ml(1ml×3回)の純水で洗浄し、流速2.5l/minの窒素流通下で90分間の乾燥後に、各水晶振動子の発振周波数(F4)を測定した。各水晶振動子での発振周波数変化の平均値から各濃度のCRPとの抗原抗体反応量を算出し、その平均値(DF)を求めた(DF=(F−F)−DF−DF)。
【0053】
実施例1
本発明の効果(従来の真空での低温プラズマ重合や大気圧プラズマ重合では実現できない、低温マイクロプラズマ重合反応による常温・常圧下での任意の大きさ、時間制御が可能な重合堆積物の合成)を示す具体的な実施例として、図1または図2に示す反応装置を用いて、重合性の官能基を有する常温・常圧下に液体状の有機化合物モノマーを原料として2重管プラズマトーチを用いて、基板10の上に重合堆積物(ポリマー薄膜、粒子、または重合度の低いオリゴマーを含む粘調なオイル状の液体の単体が反応条件により選択的に得られる。あるいは、それらの一つ以上が含まれる混合物もマイクロプラズマ重合の反応条件を選択すれば合成できる)を形成させる重合堆積物合成反応の工程を以下に説明する。液体モノマーを試料溶液タンク19内に5ml入れる。オイルを混合・加熱・冷却して液温を制御したオイルバス16を用いて液体モノマーの温度をおよそ40℃に調節する。プラズマトーチ内部には、ガス導入管12を通してアルゴンガスを供給する。このときガス供給量は100ccmから3000ccmまで変化させることが出来たが、100ccmではプラズマ生成による発熱によりトーチ温度が上がり過ぎてしまう、また3000ccmではアルゴンガス流通での風圧が大きく均一な製膜が難しいことから500ccmを選択した。
【0054】
プラズマトーチ内部に導入するアルゴンガスの流量が安定したところで、450MHz程度の高周波電圧を50Wの出力で高周波コイル8に印加する。これにより、プラズマトーチの内管7内のコイル捲き回し部分に高周波電磁界が発生し、それと共にコイル内に届いている高融点導線5の先端部が高周波誘導加熱を受け、加熱状態となる。この状態において、イグナイター4を作動させ、高融点導線5に、例えば、15kV程度の高電圧を印加すると、高融点導線5と高周波コイル8の間に放電が発生し、この放電により発生したプラズマを種火として、高周波コイル8を介して供給された高周波電力による誘導プラズマが発生する。発生した誘導プラズマは、高温状態の高融点導線5から発生される熱電子の供給を受け、安定に維持される。その結果、プラズマトーチ内管の先端からは、微少径を持つプラズマフレームが噴出する。その後、高周波マッチングボックス3を用いてマッチングをとりプラズマを安定に発生させる。次に、液体モノマーのキャリアーとなるアルゴンガス導入管11を通してアルゴンガスをモノマー溜に供給し、アルゴンとモノマーの混合ガスは試料ガス導入を経てプラズマトーチ内管7とプラズマトーチ外管6の間に供給させる。このときのガス供給量は500ccmとした。その後、基板10をプラズマトーチから所定の距離に設置し、基板10上に重合堆積物(一般には、高分子薄膜)を形成させる。
【0055】
実施例2
スチレンのマイクロプラズマ重合反応の実験条件
前記の図1または図2の装置を使い、モノマー材料にスチレンを用いたマイクロプラズマ重合反応について記載する。プラズマトーチ形状は内径がおよそ1mmの石英ガラス製プラズマトーチ内管と管の先端内径がおよそ3mmパイレックス(登録商標)耐熱硬質ガラス製プラズマトーチ外管であり、反応装置の周囲の圧力は大気圧の760mTorrであり、周囲温度は室温の20℃である。プラズマガスとしてアルゴンガス、重合物を堆積する基板として、(1)錠剤に成形したKBr、(2)シリコン基板(1.0.0面の厚さ1mmの4インチの片面ミラーウェーハを10mm角で切断して使用)、(3)水晶振動子を用いた。基板とプラズマトーチ先端部との距離を5mmと10mm、プラズマガスとキャリアーガスの供給量を共に500ccmの流量の条件下で5分間、10分間、20分間基板上にポリマー薄膜を形成させた。図11にモノマー材料としてスチレンを使用して形成した高分子薄膜の化学構造をFT−IRで測定した。
【0056】
実施例3
プロパギルアルコールのマイクロプラズマ重合反応の実験条件
前記の装置を使いモノマーにプロパギルアルコールを用い、プラズマトーチ形状は内径がおよそ1mmの石英ガラス製プラズマトーチ内管と管の先端内径がおよそ3mm耐熱硬質ガラス(パイレックス(登録商標))製プラズマトーチ外管、圧力は空気中760mTorr、プラズマガスとしてアルゴンガス、基板として錠剤KBr、基板とプラズマトーチ先端部との距離を5mmと10mm、プラズマガスとキャリアーガスの供給量を共に500ccmの流量の条件下で5分間、10分間、20分間基板上にポリマー薄膜を形成させた。図12にモノマー材料としてプロパギルアルコールを使用して形成した高分子薄膜の化学構造をFT−IRで測定した。
【0057】
実施例4
プラズマ重合膜とマイクロプラズマ重合膜の赤外線吸収スペクトル測定
スチレン及びプロパルギルアルコールは、蒸留等は行わずにそのままモノマーとして用いた。プラズマ重合装置は、サムコインターナショナル製のBP−1 Mark II(商品名)を用いた。プラズマ重合の装置図を図9に示す。FT−IRは、Jasco 610 FT−IR(商品名)を用いた。水晶振動子の発振回路は、研究室で作成したTransistor−Transistor Logic回路を用いた。周波数計は、UNIVERSAL COUNTER SC−7201(岩崎通信社製、商品名)を用い、1秒間に1Hzの分解能で9MHzの水晶振動子の発振周波数を測定し、データはパーソナルコンピューターで記録した。水晶振動子は、AT−cut金電極9MHz水晶振動子(8×8×0.185mm)の日本電波(株)製#4000研磨のものを用いた。
【0058】
臭化カリウム(KBr)の錠剤を作り、この錠剤を用いて赤外線吸収スペクトル(FT−IR)の測定試料とした。KBr錠剤は、図10に示すように、プラズマ重合装置の下部電極上の中央に配置して実験を行った。
【0059】
プラズマ重合の前に、ヘリウムガスで反応容器内を充填して圧力を100Paとして、放電出力100Wで2分間エッチングを行った。エッチングは、基材の表面をクリーニングしプラズマ重合膜と基材との接着を高めることが知られている。プラズマ重合条件は、100Wの放電出力で、スチレン、プロパルギルアルコールをモノマーとしてプラズマ重合をおこなった。いずれの条件でも、反応容器内圧力は、100Paとし、重合時間は5分間とした。液体モノマーはオイルバスを用いて60℃を保ち、モノマーの気化を促した。モノマーガスの液化を阻止するために、モノマー容器から重合装置の反応容器内までの配管も、リボンヒーターおよび温度調節装置を用いて温度を60℃に保つようにした。
【0060】
図11と図12に、室温(20℃)下に反応モノマーガス圧力100Pa固定で、100Wの放電出力でプラズマ重合した際のプラズマ重合スチレン膜とプラズマ重合プロパルギルアルコール膜のIRスペクトルをそれぞれ示す。スチレンとプロパルギルアルコールの赤外吸収スペクトルは、それぞれ上から順にモノマー、プラズマ重合法(従来法)そして大気圧かつ室温(20℃)下でマイクロプラズマ重合した際の重合堆積物(この条件下では薄膜状)のIRスペクトルをそれぞれ示す。スチレン及びプロパルギルアルコールの原料とも得られた重合膜表面の色は、薄い黄色である。
【0061】
これらのIRスペクトルから、プラズマ重合手法により重合膜の構造に与える影響が大きいことか明らかである。これらの重合膜のIRスペクトルには、O−Hの伸縮振動とC−Oの伸縮振動が顕著に現れている。O−Hの伸縮振動は3502〜3336cm-1の領域に、C−Oの伸縮振動は1040〜1031cm-1の領域にそれぞれ大きなピークが存在する。O−Hの伸縮振動は、100Wでは3363cm-1であることからも、これらの振動は水素結合に敏感であることがわかる。
【0062】
これらのスペクトルから、プラズマ重合スチレン膜とプラズマ重合プロパルギルアルコール膜に大きな違いがあることがわかる。
【0063】
プラズマ重合スチレン膜は、プラズマ重合の際の放電出力の変化に対するフェニル基のピークの高さの変化に対して、プラズマ重合プロパルギルアルコール膜の変化は大きく、放電出力が大きくなるにつれてO−Hのピークの高さが低くなっている。O−Hのピークとは対照的に、2927cm-1に現れるC−Hの振動を示すピークは、放電出力の増加に伴いピークが高くなり、この変化量はプラズマ重合プロパルギルアルコール膜のほうが大きい。これらの結果、プラズマ放電出力が大きくなるにつれて、モノマー構造の解裂が促進されていることを示しており、放電出力が低いほうが水酸基の残りやすいことが示唆される。
【0064】
モノマーとこれらのプラズマ重合膜のスペクトルを比較すると、スチレンに含まれるC=C結合(1630cm-1付近)と、プロパルギルアルコールに含まれるC≡C結合(2122cm-1付近)のピークは、それらのプラズマ重合膜では確認できない。マイクロプラズマ重合での放電出力が低くても、不飽和結合の結合エネルギーは小さいため重合または解裂が進行することが示唆される。又、不飽和結合のピークの代わりにC−C結合を示すピークが大きくなっている。プラズマ重合プロパルギルアルコール膜のスペクトルでは3300cm-1付近にC≡C結合を示すピークがあることから、この反応条件で合成されたマイクロプラズマ重合膜にはモノマーの構造を維持したものと重合したものが混在していると考えられる。
【0065】
FT−IRスペクトルから、プラズマ重合では放電出力が低いと、モノマーのピークと類似したところにピークが現れ、出力が高くなるにつれてモノマーと同じピークは低くなり、その代わりに重合が進んだことを示すC−Cのピークが高くなっているのがわかる。
【0066】
表1に各プラズマ反応での表面処理反応後の純水に対する接触角を示す。各表面修飾反応後の接触角の値は処理に伴い変化し、その値の変化はプラズマ反応処理内容に矛盾なく対応し、従来技術により得られる値とほぼ同一であった。
【0067】
【表1】

【0068】
以上の実施例から以下のことがわかった。
マイクロプラズマ重合スチレン重合膜は、従来技術と同様にプラズマ重合の放電出力が低いほうがモノマーの構造が維持され、重合膜に含まれるフェニル基の割合が多い。
マイクロプラズマプラズマ重合プロパルギルアルコール膜は、従来技術と同様にプラズマ重合の放電出力が低いほうがモノマーの構造が維持され、重合膜に含まれる水酸基の割合が多い。
マイクロプラズマ重合膜に含まれる水酸基の割合は、マイクロプラズマ重合時の諸反応条件で制御することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】2重管プラズマトーチを用いた高密度マイクロプラズマ反応装置全体図である。
【図2】単管プラズマトーチを用いた高密度マイクロプラズマ反応装置全体図である。
【図3】高密度マイクロプラズマ反応装置に用いる2重管プラズマトーチの形状図である。
【図4】高密度マイクロプラズマ反応装置に用いる高融点導線無し2重管プラズマトーチの形状図である。
【図5】高密度マイクロプラズマ反応装置に用いる単管プラズマトーチの形状図である。
【図6】高密度マイクロプラズマ反応装置に用いる高融点導線無し単管プラズマトーチの形状図である。
【図7】段差のある基板を使用する際の2重管プラズマトーチを用いた高密度マイクロプラズマ反応装置全体図である。
【図8】高密度マイクロプラズマ反応装置に用いる複数本試料ガス導入管を取り付けた単管プラズマトーチの形状図である。
【図9】従来から使用されている平行平板型プラズマ重合装置全体図である。
【図10】従来から使用されている平行平板型プラズマ重合装置の下部電極への配置図である。
【図11】2重管プラズマトーチを用いた高密度マイクロプラズマ反応装置を使用し、スチレンを錠剤KBr上へプラズマ重合した後の錠剤KBrをFT−IRを用いて吸光度を測定し得られたグラフである。
【図12】2重管プラズマトーチを用いた高密度マイクロプラズマ反応装置を使用し、プロパギルアルコールを錠剤KBr上へプラズマ重合した後の錠剤KBrをFT−IRを用いて吸光度を測定し得られたグラフである。
【図13(a)】2重管プラズマトーチを用いた高密度マイクロプラズマ反応装置を使用し、スチレンをシリコン基板上にプラズマ重合する前の電子顕微鏡写真である。
【図13(b)】2重管プラズマトーチを用いた高密度マイクロプラズマ反応装置を使用し、スチレンをシリコン基板上にプラズマ重合した後の電子顕微鏡写真である。
【図14】分子構造の明確なポリアクリル酸上に固定化した抗体によるセンサー応答の増幅反応の実験の流れ図である。
【図15】ポリアクリル酸が固定化された水晶振動子のpH変化実験の模式図である。
【図16】pH変化に対するポリアクリル酸被覆水晶振動子の発振周波数変化の図である。
【符号の説明】
【0070】
1 高周波電源
2 高周波マッチングボックス
3 同軸ケーブル
4 イグナイター
5 高融点導線
6 プラズマトーチ外管
7 プラズマトーチ内管
8 高周波コイル
9 プラズマトーチ管の支持具
10 重合堆積物の堆積用基板
11 液体モノマーのキャリアーガス(アルゴンガス)の導入管
12 プラズマトーチへのアルゴンガス導入管
13 試料ガスとキャリアーガス混合ガスの導入管
14 プラズマトーチへのアルゴンガスの導入バルブ
15 キャリアーガスの導入バルブ
16 オイルバス
17 オイル
18 液体モノマー
19 液体モノマーの貯蔵溜
20 液体モノマーの貯蔵溜栓
21 三次元移動式基板支持台
22 三次元移動式プラズマトーチ支持台
23 ガス混合用導入管支持具
24 混合ガス排出管
25 高周波電源(13.56MHz)
26 上部電極
27 下部電極
28 ボールバルブ
29 圧力計
30 モノマー導入管
31 ニードルバルブ
32 モノマー容器
33 オイルバス
34 スターラー
35 ベローズバルブ
36 コールドトラップ
37 真空ポンプ
38 重合対象物
39 5V直流電源
40 発振回路
41 周波数カウンター
42 コンピューター
43 緩衝溶液
44 水晶板
45 シリコンシーラント
46 9MHz水晶振動子
47 片面封止水晶振動子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ガス導入管が接続されたプラズマトーチ外管の内部にプラズマガス導入管が接続されたプラズマトーチ内管を設けてなる筒状のプラズマトーチ、前記プラズマトーチ内管の出口部近傍の外周に設けられたプラズマガス励起用高周波コイル、および原料モノマーガス供給手段を備えたことを特徴とするマイクロプラズマ反応装置。
【請求項2】
前記高周波コイルに環囲されるプラズマトーチ内管内の位置又はその近傍に導線先端部が配設される高融点導線、および該高融点導線に電圧を印加するイグナイターを備えたことを特徴とする請求項1記載のマイクロプラズマ反応装置。
【請求項3】
筒状のプラズマトーチ、前記プラズマトーチの出口部近傍の外周に設けられたプラズマガス励起用高周波コイル、前記高周波コイルに高周波電力を供給する高周波電源、および原料モノマーガス供給手段を備えたことを特徴とするマイクロプラズマ反応装置。
【請求項4】
前記高周波コイルに環囲されるプラズマトーチ内の位置又はその近傍に導線先端部が配設される高融点導線、および該高融点導線に電圧を印加するイグナイターを備えたことを特徴とする請求項2記載のマイクロプラズマ反応装置。
【請求項5】
前記高融点導線が直径0.05〜0.5mmタングステン製の単心線であることを特徴とする請求項2又は4に記載のマイクロプラズマ反応装置。
【請求項6】
原料モノマーが、標準状態(1気圧、20℃)で気体状、液体状、または固体状の化合物であって、重合性の官能基を有する、有機化合物、有機金属化合物、ケイ素化合物、有機ケイ素化合物および無機化合物からなる群から選ばれる少なくとも一つの化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のマイクロプラズマ反応装置。
【請求項7】
原料モノマーが、標準状態(1気圧、20℃)で気体状、液体状、または固体状の化合物であって、マイクロプラズマで部分分解することで重合性に変換できる少なくとも一つの化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のマイクロプラズマ反応装置。
【請求項8】
原料モノマーガスが不活性ガス等のキャリアーガスによって希釈されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のマイクロプラズマ反応装置。
【請求項9】
放電出力が10〜100Wであり、印可交流電圧が10〜1000Vであり、印可電流が1〜10Aであり、放電周波数が1Hz〜1,000MHzであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のマイクロプラズマ反応装置。
【請求項10】
マイクロプラズマ温度が−5℃〜60℃であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のマイクロプラズマ反応装置。
【請求項11】
プラズマガス及びキャリアーガスがアルゴン等の不活性ガス(希ガスのヘリウム、クリプトン、キセノン)であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のマイクロプラズマ反応装置。
【請求項12】
プラズマガス及びキャリアーガスが、不活性ガス、清浄空気、乾燥空気、酸素、窒素、水素、ハロゲンガス、オゾンガス、クロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、ペルフルオロカーボン、CF4、C26、およびSF6からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のマイクロプラズマ反応装置。
【請求項13】
マイクロ秒〜ナノ秒単位で磁極を切り替え、ラジカル密度を均一化する機能を備えたことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のマイクロプラズマ反応装置。
【請求項14】
プラズマガス及び原料モノマーガスの流速と流量を制御して、プラズマ発生を安定化する機能を備えたことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のマイクロプラズマ反応装置。
【請求項15】
プラズマトーチを1〜100個備えたことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載のマイクロプラズマ反応装置。
【請求項16】
プラズマ発生トーチまたは重合物堆積基板のいずれか少なくとも一つまたは両者が、二次元であるXY軸方向もしくは三次元の空間であるXYZ軸方向への数値制御による厳密な位置決めが可能なアクチュエーター(作動装置)に上に搭載したことを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載のマイクロプラズマ反応装置。
【請求項17】
前記アクチュエーター(作動装置)による厳密な位置決めより複数のプラズマ発生反応トーチまたは、基板の位置を三次元的に厳密に機械制御することにより基材上への望みの場所に望みの大きさ、かつ望みの量(膜厚を時間制御可能なため)の薄膜作成を厳密に制御可能であることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載のマイクロプラズマ反応装置。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載のマイクロプラズマ反応装置を用いたマイクロプラズマCVD装置であって、前記プラズマトーチの出口から0.5〜2mmの位置に基板が配置されることを特徴とするマイクロプラズマCVD装置。
【請求項19】
前記基板の材料が、シリコン、ガラス、金属、または合成高分子であることを特徴とする請求項18記載のマイクロプラズマCVD装置。
【請求項20】
前記基板上に膜厚1Å〜1mmの薄膜が形成されることを特徴とする請求項18又は19に記載のマイクロプラズマCVD装置。
【請求項21】
前記プラズマトーチが基板に対して90〜30度の範囲内で配置されることを特徴とする請求項18〜20のいずれか1項に記載のマイクロプラズマCVD装置。
【請求項22】
前記のマイクロプラズマ重合反応やマイクロプラズマ反応で表面をエッチングした重合膜堆積基板がバイオセンサーや化学センサーの情報変換素子である圧電素子(水晶振動子、表面弾性波素子、表面剪断波素子等)や表面プラズモン共鳴素子、電気化学センサー用の電極、DNAチップ、RNAチップ、タンパクチップ、ELISA基板などであることを特徴とする請求項1〜21のいずれか1項に記載のマイクロプラズマCVD装置とそれを用いたバイオセンサーや化学センサーなどのセンサー素子や環境モニタリング、臨床医療診断用の分析用の分子認識素子固定化基板の作成法。
【請求項23】
前記のマイクロプラズマ重合反応や表面エッチングした重合膜堆積基板がバイオセンサーや化学センサーの情報変換素子であるや表面プラズモン共鳴素子、電気化学センサー用の電極、DNAチップ、RNAチップ、タンパクチップ、ELISA基板などであることを特徴とする請求項1〜22のいずれか1項に記載のマイクロプラズマ重合反応装置とそれを用いて含水酸基を有するマイクロプラズマ重合膜を得るプロセス。
【請求項24】
前記のマイクロプラズマプロパルギルアルコール重合膜を基体として、官能基を臭素化変換後にアクリル酸tert−ブチルをモノマーとしたリビングラジカル重合にて、鎖長と鎖密度の明確なグラフト高分子を合成し、tert−ブチル基を脱離後のポリアクリル酸を得、このカルボキシル基を活性エステル化して抗体分子を固定化するプロセス。この抗体固定化センサー素子を用いたバイオセンサーや化学センサーなどのセンサー素子や環境モニタリング、臨床医療診断用の分析用の分子認識素子固定化基板の作成法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図13(a)】
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【図13(b)】
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【公開番号】特開2006−104545(P2006−104545A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295457(P2004−295457)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年度、文部科学省、特定領域研究「プラズマを用いたミクロ反応場の創成とその応用」委託研究、産業再生法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】