説明

マイクロペレット及び中空成形体

【課題】多層構造を持つ成形体を回転成形により製造する場合であっても、気泡が生じにくく平滑性に優れ、高い接着強度を持った成形体を得ることができる成形用原料を提供する。
【解決手段】本発明は、溶融加工可能なフルオロポリマーのマイクロペレットであり、上記マイクロペレットの少なくとも80%以上が200〜800μmの大きさを有し、上記フルオロポリマーは、主鎖炭素数10個あたり80〜500個の接着性官能基を有することを特徴とするマイクロペレットである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロペレット及び中空成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素樹脂の成形方法として、回転成形が知られている。回転成形は、金型費が安く大型製品や少量生産に有利な方法であり、成形体の大きさやデザインの幅が広くとれ、肉厚の調整も容易であるといった利点がある反面、肉厚の均一性が劣りやすいという問題がある。また、溶融時にフッ素樹脂が圧力を受けないので、成形体中に気泡が残りやすく、成形体の内表面の平滑性に劣りやすいという問題もある。
【0003】
これらの問題を解決するため、特許文献1では、不安定末端基が炭素原子10個当たりに10個未満であり、特定の大きさを持つテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体の溶融押出キューブが提案された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−534940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フッ素樹脂は本来他材との接着性に劣るので、上記の溶融押出キューブを原料として回転成形により多層構造を持つ成形体を製造しても、層間が充分に接着しない。
【0006】
そこで、本発明は、多層構造を持つ成形体を回転成形により製造する場合であっても、気泡が生じにくく平滑性に優れ、高い接着強度を持った成形体を得ることができる成形用原料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、溶融加工可能なフルオロポリマーのマイクロペレットであり、上記マイクロペレットの少なくとも80%以上が200〜800μmの大きさを有し、上記フルオロポリマーは、主鎖炭素数10個あたり80〜500個の接着性官能基を有することを特徴とするマイクロペレットである。
【0008】
上記フルオロポリマーは、エチレン/テトラフルオロチレン共重合体及びクロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0009】
本発明は、押出機のシリンダー内でフルオロポリマーを溶融させ、溶融させたフルオロポリマーを上記押出機に備えられたダイを通して押出し、押し出されたフルオロポリマーを冷却し、所望の長さに切断して、上記マイクロペレットを得ることを特徴とするマイクロペレットの製造方法でもある。
【0010】
本発明は、熱可塑性樹脂を金型に投入し、上記金型を炉の中で回転させながら加熱して上記熱可塑性樹脂を金型面に沿って溶融させ、更に上記金型に上記のマイクロペレットを投入し、上記金型を炉の中で回転させながら加熱して上記マイクロペレットを金型面に沿って溶融させ、金型を回転させながら冷却し、熱可塑性樹脂層とフルオロポリマー層とを含む中空成形体を金型から取り出すことを特徴とする中空成形体の製造方法でもある。
【0011】
熱可塑性樹脂は、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、及び、変性ポリオレフィン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0012】
本発明は、上記の製造方法により得られる中空成形体でもある。
【発明の効果】
【0013】
本発明のマイクロペレットからは、回転成形により、平滑で高い接着強度を持った多層構造の中空成形体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のフルオロポリマーのマイクロペレットは、フルオロポリマーが主鎖炭素数10個あたり80〜500個の接着性官能基を有することを一つの特徴とし、この接着性官能基の存在が高い接着強度をもたらすものと推測される。
【0015】
一方、接着性官能基は加熱により分解しやすいので、溶融成形時に気泡を生じさせるおそれがある。特に、フルオロポリマー層が内層に位置する成形体を回転成形により製造しようとすると、外層に遮られて熱が伝わりにくいので、一度でも気泡を生じさせてしまうと消滅しにくい。そうすると、高い平滑性を持った成形体を得ることはできない。
【0016】
本発明者らは、限定された接着性官能基数を持つフルオロポリマーを選択し、かつ、マイクロペレットの大きさを特定することで、高い平滑性と高い接着強度とを有する成形体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
この理由は次のように推測される。すなわち、接着性官能基が層間の接着に寄与して高い接着強度が得られる。接着性官能基は成形体の平滑性に悪影響を与えるが、驚くべきことに、限定された大きさを有するマイクロペレットが成形時間の短縮を実現し、これによって接着性官能基の分解が抑制されるものと推測され、高い平滑性を有すると同時に高い接着強度を有する成形体が得られる。
【0018】
本発明のマイクロペレットは、少なくとも80%以上が200〜800μmの大きさを有する。マイクロペレットが大きすぎると、平滑な表面を有する成形体を得ることができない。この問題は高温で長時間加熱することにより解決され得るが、長時間の加熱は層間の接着強度の低下を招く。一方、小さすぎるマイクロペレットは取り扱いが困難であるし、取り込まれた気泡が残りやすい。気泡は低温で長時間加熱すれば解消され得るが、長時間の加熱は層間の接着強度の低下を招く。
【0019】
マイクロペレットの好ましい大きさは300〜600μmである。マイクロペレットの好ましい形状は、製造が容易であることから、直径200〜800μm、長さ200〜800μmの円柱状である。
【0020】
特定の大きさを有するマイクロペレットがマイクロペレット全体に対して占める割合は、ふるい分けによって測定することができ、マイクロペレットが通過できるふるいの目とマイクロペレットが通過できないふるいの目との間の大きさを持つマイクロペレットが、マイクロペレット全体の質量に対して占める質量割合を算出することで求められる。
【0021】
上記フルオロポリマーは、主鎖炭素数10個あたり80〜500個の接着性官能基を有する。接着性官能基が多すぎると、平滑な表面を有する成形体を得ることができず、成形体の内部にも気泡を含有しやすい。接着性官能基が少なすぎると、他の材料から形成される層と接着しにくい。
【0022】
上記接着性官能基としては、カルボニル基、ヒドロキシル基及びアミノ基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記接着性官能基は、接着性官能基を有する単量体に由来する官能基であってもよいし、重合開始剤に由来する官能基であってもよい。
【0023】
上記「カルボニル基」は、炭素−酸素二重結合から構成される炭素2価の基であり、−C(=O)−で表されるものに代表される。上記カルボニル基としては特に限定されず、例えば、カーボネート基、カルボン酸ハライド基(ハロゲノホルミル基)、ホルミル基、カルボキシル基、エステル結合〔−C(=O)O−〕、酸無水物結合〔−C(=O)O−C(=O)−〕、イソシアネート基、アミド基、イミド基〔−C(=O)−NH−C(=O)−〕、ウレタン結合〔−NH−C(=O)O−〕、カルバモイル基〔NH−C(=O)−〕、カルバモイルオキシ基〔NH−C(=O)O−〕、ウレイド基〔NH−C(=O)−NH−〕、オキサモイル基〔NH−C(=O)−C(=O)−〕等の化学構造上の一部分であるもの等が挙げられる。
【0024】
上記カーボネート基は、−OC(=O)O−R(式中、Rはアルキル基を表す。)で表されるものである。Rとしては、炭素数1〜20のアルキル基又はエーテル結合を有する炭素数2〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜8のアルキル基又はエーテル結合を有する炭素数2〜4のアルキル基であることがより好ましい。上記カーボネート基としては、例えば−OC(=O)OCH、−OC(=O)OC、−OC(=O)OC17、−OC(=O)OCHCHCHOCHCH等が好ましく挙げられる。
【0025】
アミド基、イミド基、ウレタン結合、カルバモイル基、カルバモイルオキシ基、ウレイド基、オキサモイル基等の窒素原子に結合する水素原子は、例えばアルキル基等の炭化水素基により置換されていてもよい。
【0026】
上記接着性官能基は、導入が容易である点、及び、得られる樹脂が適度な耐熱性と比較的低温での良好な接着性とを有する点で、アミド基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カーボネート基、カルボン酸ハライド基が好ましく、なかでも、国際公開99/45044号パンフレットに記載のカーボネート基及び/又はカルボン酸ハライド基を有するものが特に好ましい。
【0027】
上記接着性官能基の個数は、特公昭37−3127号公報および国際公開第99/45044号パンフレットに記されている方法にて測定することができる。例えば、赤外分光光度計を用いてフルオロポリマーのフィルムシートを赤外吸収スペクトル分析し、官能基特有の周波数の吸収帯からその官能基の数を測定する場合、例えば、−COF末端は1884cm−1の吸収帯、−COOH末端は1813cm−1と1775cm−1の吸収帯、−COOCH末端は1795cm−1の吸収帯、−CONH末端は3438cm−1の吸収帯、−CHOH末端は3648cm−1の吸収帯、−CF=CF末端は1790cm−1の吸収帯から計算することができる。
【0028】
上記フルオロポリマーは、溶融加工可能なフルオロポリマーであれば特に限定されないが、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、フッ化ビニル、へキサフルオロプロピレン〔HFP〕、へキサフルオロイソブテン、CH=CX(CF(式中、XはH又はF、XはH、F又はCl、nは1〜10の整数である。)で示される単量体、CF=CF−ORf(式中、Rfは、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕、及び、CF=CF−OCH−Rf(式中、Rfは、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の含フッ素エチレン性単量体に由来する繰り返し単位を有することが好ましい。
【0029】
上記PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)〔PEVE〕、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)等が挙げられ、なかでも、PMVE、PEVE又はPPVEがより好ましい。
【0030】
上記アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体としては、Rfが炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であるものが好ましく、CF=CF−OCH−CFCFがより好ましい。
【0031】
上記フルオロポリマーは、フッ素原子を有さないエチレン性単量体に由来する繰り返し単位を有してもよく、耐熱性や耐薬品性等を維持する点で、炭素数5以下のエチレン性単量体に由来する繰り返し単位を有することが好ましく、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン及び不飽和カルボン酸からなる群より選択される少なくとも1種のフッ素非含有エチレン性単量体を有することがより好ましい。
【0032】
上記不飽和カルボン酸としては、共重合を可能にする炭素−炭素不飽和結合を1分子中に少なくとも1個有し、且つ、カルボニルオキシ基〔−C(=O)−O−〕を1分子中に少なくとも1個有するものが好ましく、脂肪族不飽和モノカルボン酸であってもよいし、カルボキシル基を2個以上有する脂肪族不飽和ポリカルボン酸であってもよく、例えば、国際公開第2005/100420号パンフレットに記載の不飽和カルボン酸が挙げられる。
【0033】
上記脂肪族不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、イタコン酸、イタコン酸無水物、シトラコン酸、シトラコン酸無水物、メサコン酸及びアコニット酸からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0034】
上記フルオロポリマーとしては、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体〔ETFE〕、クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体〔FEP〕、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体〔PFA〕、及び、ポリビニリデンフルオライド〔PVdF〕からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、ETFE及びクロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0035】
上記ETFEは、TFE単位とエチレン単位とのモル比が20:80〜90:10であることが好ましく、37:63〜85:15であることがより好ましく、38:62〜80:20であることが更に好ましい。エチレン単位が少なすぎると薬液低透過性が悪化し、多すぎると成型時の耐熱性、耐薬品性が悪化する場合がある。
【0036】
ETFEは、TFE、エチレン、並びに、TFE及びエチレンと共重合可能な単量体からなる共重合体であってもよい。共重合可能な単量体としては、下記式
CH=CX、CF=CFR、CF=CFOR、CH=C(R
(式中、Xは水素原子またはフッ素原子、Rはエーテル結合性酸素原子を含んでいてもよいフルオロアルキル基を表す。)
で表される単量体が挙げられる。
【0037】
共重合可能な単量体としては、なかでも、ヘキサフルオロプロピレン及びCH=CXで表される含フッ素ビニルモノマーからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、ヘキサフルオロプロピレン及びRが炭素数1〜8のフルオロアルキル基であるCH=CXで表される含フッ素ビニルモノマーからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、ヘキサフルオロプロピレンであることが更に好ましい。
【0038】
上記式で示される含フッ素ビニルモノマーの具体例としては、1,1−ジヒドロパーフルオロプロペン−1、1,1−ジヒドロパーフルオロブテン−1、1,1,5−トリヒドロパーフルオロペンテン−1、1,1,7−トリヒドロパーフルオロへプテン−1、1,1,2−トリヒドロパーフルオロヘキセン−1、1,1,2−トリヒドロパーフルオロオクテン−1、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルビニルエーテル、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロペン、パーフルオロブテン−1、3,3,3−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)プロペン−1、2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロ−1−ペンテン(CH=CFCFCFCFH)があげられる。
【0039】
また、TFE及びエチレンと共重合可能な単量体としては、上述したイタコン酸、無水イタコン酸等の脂肪族不飽和カルボン酸であってもよい。
【0040】
TFE及びエチレンと共重合可能な単量体は、含フッ素エチレン性重合体に対して0.1〜10モル%が好ましく、0.1〜5モル%がより好ましく、0.2〜4モル%が特に好ましい。
【0041】
上記クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕/テトラフルオロエチレン〔TFE〕共重合体は、CTFE単位とTFE単位とのモル比がCTFE:TFE=2:98〜98:2であることが好ましく、5:95〜90:10であることがより好ましく、20:80〜90:10であることが更に好ましい。CTFE単位が少なすぎると薬液低透過性が悪化しまた溶融加工が困難になる傾向があり、多すぎると成型時の耐熱性、耐薬品性が悪化する場合がある。
【0042】
CTFE/TFE共重合体は、CTFE、TFE、並びに、CTFE及びTFEと共重合可能な単量体からなる共重合体であることが好ましい。CTFE及びTFEと共重合可能な単量体としては、エチレン、VdF、HFP、CH=CX(CF(式中、XはH又はF、XはH、F又はCl、nは1〜10の整数である。)で示される単量体、CF=CF−ORf(式中、Rfは、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕、及び、CF=CF−OCH−Rf(式中、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられ、なかでも、エチレン、VdF、HFP及びPAVEからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、PAVEであることがより好ましい。
【0043】
上記PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)〔PEVE〕、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕、及び、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、なかでも、PMVE、PEVE及びPPVEからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0044】
上記アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体としては、Rfが炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であるものが好ましく、CF=CF−OCH−CFCFがより好ましい。
【0045】
上記CTFE/TFE共重合体は、CTFE及びTFEと共重合可能な単量体に由来する単量体単位が0.1〜10モル%であり、CTFE単位およびTFE単位が合計で90〜99.9モル%であることが好ましい。共重合可能な単量体単位が少なすぎると成形性、耐環境応力割れ性および耐ストレスクラック性に劣りやすく、多すぎると薬液低透過性、耐熱性、機械特性、生産性などに劣る傾向にある。より好ましい下限は0.5モル%、より好ましい上限は5モル%である。
【0046】
上述した共重合体の各単量体の含有量は、NMR、FT−IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0047】
上記フルオロポリマーは、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等の重合方法によっても製造することができるが、工業的に実施が容易である点で、乳化重合又は懸濁重合により製造することが好ましい。
【0048】
上記の重合においては、重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤、及び、溶媒を使用することができ、それぞれ従来公知のものを使用することができる。
【0049】
上記重合開始剤としては、油溶性ラジカル重合開始剤、または水溶性ラジカル開始剤を使用できる。
【0050】
油溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性の過酸化物であってよく、たとえばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジsec−ブチルパーオキシジカーボネートなどのジアルキルパーオキシカーボネート類、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレートなどのパーオキシエステル類、ジt−ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類などが、また、ジ(ω−ハイドロ−ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω−ハイドロ−テトラデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω−ハイドロ−ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(パーフルパレリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−ヘキサフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−デカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ω−ハイドロ−ドデカフルオロヘプタノイル−ω−ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル−パーオキサイド、ω−クロロ−ヘキサフルオロブチリル−ω−クロ−デカフルオロヘキサノイル−パーオキサイド、ω−ハイドロドデカフルオロヘプタノイル−パーフルオロブチリル−パーオキサイド、ジ(ジクロロペンタフルオロブタノイル)パーオキサイド、ジ(トリクロロオクタフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(テトラクロロウンデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ペンタクロロテトラデカフルオロデカノイル)パーオキサイド、ジ(ウンデカクロロドトリアコンタフルオロドコサノイル)パーオキサイドのジ[パーフロロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類などが代表的なものとして挙げられる。
【0051】
水溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の水溶性過酸化物であってよく、たとえば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸などのアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、t−ブチルパーマレエート、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどがあげられる。サルファイト類、亜硫酸塩類のような還元剤を過酸化物に組み合わせて使用してもよく、その使用量は過酸化物に対して0.1〜20倍であってよい。
【0052】
上記界面活性剤としては、公知の界面活性剤が使用でき、例えば、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤などが使用できる。なかでも、含フッ素アニオン性界面活性剤が好ましく、エーテル結合性酸素を含んでもよい(すなわち、炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい)、炭素数4〜20の直鎖又は分岐した含フッ素アニオン性界面活性剤がより好ましい。添加量(対溶媒)は、好ましくは50〜5000ppmである。
【0053】
上記連鎖移動剤としては、例えば、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族類;アセトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類;メタノール、エタノールなどのアルコール類;メチルメルカプタンなどのメルカプタン類;四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル等のハロゲン化炭化水素などがあげられる。添加量は用いる化合物の連鎖移動定数の大きさにより変わりうるが、通常重合溶媒に対して0.01質量%から20質量%の範囲で使用される。
【0054】
上記溶媒としては、水、水とアルコールとの混合溶媒等が挙げられる。
【0055】
上記懸濁重合では、水に加えて、フッ素系溶媒を使用してもよい。フッ素系溶媒としては、CHCClF、CHCClF、CFCFCClH、CFClCFCFHCl等のハイドロクロロフルオロアルカン類;CFClCFClCFCF、CFCFClCFClCF等のクロロフルオロアルカン類;パーフルオロシクロブタン、CFCFCFCF、CFCFCFCFCF、CFCFCFCFCFCF等のパーフルオロアルカン類等が挙げられ、なかでも、パーフルオロアルカン類が好ましい。フッ素系溶媒の使用量は、懸濁性及び経済性の面から、水性媒体に対して10〜100質量%が好ましい。
【0056】
重合温度としては特に限定されず、0〜100℃であってよい。重合圧力は、用いる溶媒の種類、量及び蒸気圧、重合温度等の他の重合条件に応じて適宜定められるが、通常、0〜9.8MPaGであってよい。
【0057】
本発明のマイクロペレットは、更に、目的や用途に応じてその性能を損なわない範囲で、無機質粉末、ガラス繊維、金属酸化物等の種々の充填剤を配合したものであってもよく、また、充填剤以外に、熱安定化剤、補強剤、紫外線吸収剤、顔料等、その他任意の添加剤を配合したものであってもよい。
【0058】
上記添加剤として、例えば、薬液透過低減の点で、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ノントロナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のスメクタイト系の層状粘度鉱物や、雲母等の高アスペクト比を有する微小層状鉱物を添加してもよい。
【0059】
上記添加剤として、例えば、導電性を付与するために、導電性フィラーを添加してもよい。導電性フィラーとしては特に限定されず、例えば、金属、炭素等の導電性単体粉末又は導電性単体繊維;酸化亜鉛等の導電性化合物の粉末;表面導電化処理粉末等が挙げられる。上記導電性単体粉末又は導電性単体繊維としては特に限定されず、例えば、銅、ニッケル等の金属粉末;鉄、ステンレス等の金属繊維;カーボンブラック、炭素繊維、特開平3−174018号公報等に記載の炭素フィブリル等が挙げられる。上記表面導電化処理粉末は、ガラスビーズ、酸化チタン等の非導電性粉末の表面に導電化処理を施して得られる粉末である。
【0060】
本発明のマイクロペレットは、
押出機のシリンダー内で上記フルオロポリマーを溶融させ、
溶融させたフルオロポリマーを上記押出機に備えられたダイを通して押出し、
押し出されたフルオロポリマーのストランドを冷却し、
所望の長さに切断して、
製造することができる。
【0061】
押出機に投入するフルオロポリマーの形状は特に限定されず、粉末であってよい。
【0062】
上記押出機としては、一軸又は二軸のスクリュー押出機を使用することができる。溶融させる温度は、フルオロポリマーの融点以上、かつ、熱分解温度以下であればよい。上記ダイとしては多孔ダイを使用することができ、当該多孔ダイには所望の直径を得るための大きさを有する複数の孔が備えられる。ダイから押し出された押出物(フルオロポリマーのストランド)は冷却され、カッターにより所望の長さに切断される。
【0063】
押出物の引き取り速度を調整することにより所望の直径のマイクロペレットを得ることができる。
【0064】
本発明のマイクロペレットは、回転成形用途に好適に使用でき、特に多層成形体の回転整形用途に好適に使用できる。
【0065】
本発明は、熱可塑性樹脂を金型に投入し、
上記金型を炉の中で回転させながら加熱して上記熱可塑性樹脂を金型面に沿って溶融させ、
更に上記金型に本発明のフルオロポリマーのマイクロペレットを投入し、
上記金型を炉の中で回転させながら加熱して上記マイクロペレットを金型面に沿って溶融させ、
金型を回転させながら冷却し、
熱可塑性樹脂層とフルオロポリマー層とを含む中空成形体を金型から取り出す
ことを特徴とする中空成形体の製造方法でもある。
【0066】
上記熱可塑性樹脂の形状は、本発明のフルオロポリマーのマイクロペレット同様に、大きさが200〜800μmのマイクロペレットであることが、平滑で気泡を含まない成形体が得られることから好ましい。
【0067】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、上記フルオロポリマー以外のその他のフッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂[PPO]等のポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂[ABS]、塩化ビニル系樹脂、エチレン/ビニルアルコール樹脂、セルロース系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂[PEEK]、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂[PES]、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリオレフィン樹脂、変性ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0068】
なかでも、フルオロポリマー層との接着が良好であることから、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂及び変性ポリオレフィン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0069】
ポリアミド樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6/66、ポリアミド66/12、ポリアミド46、メタキシリレンジアミン/アジピン酸共重合体、ポリアミド6/ポリエステル共重合体、ポリアミド6/ポリエーテル共重合体、ポリアミド12/ポリエステル共重合体及びポリアミド12/ポリエーテル共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0070】
ポリオレフィン樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及び超高密度ポリエチレンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記変性ポリオレフィン樹脂としては、マレイン酸変性ポリオレフィン、エポキシ変性ポリオレフィン、及び、アミン変性ポリオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0071】
本発明の製造方法により得られる中空成形体も本発明の1つである。
【0072】
上記中空成形体は、熱可塑性樹脂層が50μm〜2mmであり、フルオロポリマー層が50μm〜2mmであることが好ましい。
【0073】
本発明の中空成形体は、例えば、自動車のガソリンタンク、軽油タンク等の燃料用タンク、ラジエータータンク、溶剤用タンク、塗料用タンク、半導体用薬液等の酸・アルカリ等の腐食性、侵食性の強い薬液の容器や研磨材のスラリー用の容器、飲料用又は飲食物用タンク等、液体を収容するボトル、容器、タンク、袋等として好適に用いることができる。
【0074】
また、本発明の中空成形体はディーゼルエンジン排ガスに尿素水を噴霧してNOを低減するシステムにおける尿素水用容器としても、その優れた耐薬品性から好適に使用できる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。なお、各物性は以下の方法により測定した。
【0076】
カーボネート基の個数
フルオロポリマーの白色粉末又は溶融押出ペレットの切断片を室温で圧縮成形し、厚さ50〜200μmのフィルムを作成した。このフィルムの赤外吸収スペクトル分析によってカーボネート基〔−OC(=O)O−〕のカルボニル基由来のピークが1810〜1815cm−1〔ν(C=O)〕の吸収波長に現れるので、そのν(C=O)ピークの吸光度を測定し、下記式(a)により共重合体の主鎖炭素数10個あたりのカーボネート基の個数Nを算出した。
N=500AW/εdf (a)
A:カーボネート基〔−OC(=O)O−〕由来のν(C=O)ピークの吸光度
ε:カーボネート基〔−OC(=O)O−〕由来のν(C=O)ピークのモル吸光度係数。モデル化合物からε=170(l・cm−1・mol−1)とした。
W:共重合体の組成から計算される単量体の平均分子量
d:フィルムの密度(g/cm
f:フィルムの厚さ(mm)
なお、赤外吸収スペクトル分析は、Perkin−Elmer FT−IRスペクトロメーター1760X(パーキンエルマー社製)を用いて40回スキャンした。得られたIRスペクトルをPerkin−Elmer Spectrum for windows Ver.1.4Cを用いて自動でベースラインを判定させ、1810〜1815cm−1のピークの吸光度を測定した。なお、フィルムの厚さはマイクロメーターを用いて測定した。
【0077】
接着強度
長さ5cm、幅1cmのサンプルを成形体から切り出し、成形体の最も接着の弱い部分を剥離し、テンシロン(オリエンテック製)を用いて180度の剥離試験を行い、N/cmを単位とする接着強度を測定した。
【0078】
発泡の有無
成形体をナイフで縦に切断し、長さ100mmの切断面に存在する気泡の数を目視で測定した。
【0079】
実施例1
ポリアミドのマイクロペレットの作製
二軸押出機のシリンダー内でポリアミド(ポリアミド12、デグッサ社製LX9011)を溶融混練し、溶融させたポリアミドを上記押出機に備えられたダイを通して押出し、押し出されたポリアミドのストランドを冷却し、カッターで切断して、直径が0.5mm、長さが0.5mmの円柱状のマイクロペレットを得た。
【0080】
マイクロペレットのマイクロペレットの作製
二軸押出機のシリンダー内でフルオロポリマー(エチレン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ダイキン工業社製RP−4020)を溶融混練し、溶融させたフルオロポリマーを上記押出機に備えられたダイを通して押出し、押し出されたフルオロポリマーのストランドを冷却し、カッターで切断して、直径が0.5mm、長さが0.5mmの円柱状のマイクロペレットを得た。
【0081】
得られたマイクロペレットをふるいにかけ、全体の80%が200〜800μmの大きさを有することを確認した。
【0082】
中空成形体の作製
ブラスト処理した内容積3Lのボトル成形用回転成形金型(φ50×160mm)に離型剤を塗布したのち、ポリアミドのマイクロペレットを320g投入し、内温を290℃に設定したオーブンの中で25分間回転成形(回転数:自転8rpm、公転4rpm)した。
【0083】
次に、温度設定を240℃に変更し、温度が安定したら、型を開きマイクロペレットを540g投入し、20分間回転成形(回転数:自転8rpm、公転4rpm)して、冷却後金型から円筒状の成形体を取り出した。
【0084】
得られた成形体について接着強度と発泡の有無を評価した。結果を表1に示す。
【0085】
比較例1
フルオロポリマーのマイクロペレットを、直径が2.5mm、長さが2.5mmのペレットに変更する以外は実施例1と同様にして回転成形を行ったが、フルオロポリマーの溶融不足により成形体を得ることができなかった。
【0086】
比較例2
フルオロポリマーのマイクロペレットを、直径が2.5mm、長さが2.5mmのペレットに変更し、フルオロポリマーのペレット投入後の焼成時間を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして円筒状の成形体を得た。
【0087】
比較例3
フルオロポリマーのマイクロペレットを粉体塗装用のフルオロポリマー粉体(平均粒径200μmの球状粒子)に変更した以外は実施例1と同様にして円筒状の成形体を得た。
【0088】
比較例4
フルオロポリマーを接着性官能基を有さないフルオロポリマー(エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、ダイキン工業社製EP−610)に変更した以外は実施例1と同様にして円筒状の成形体を得た。
【0089】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明のマイクロペレットは、回転成形に使用する成形用材料として好適に利用でき、特に回転成形により多層成形体を得るための成形用材料として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融加工可能なフルオロポリマーのマイクロペレットであり、
前記マイクロペレットの少なくとも80%以上が200〜800μmの大きさを有し、
前記フルオロポリマーは、主鎖炭素数10個あたり80〜500個の接着性官能基を有する
ことを特徴とするマイクロペレット。
【請求項2】
フルオロポリマーは、エチレン/テトラフルオロチレン共重合体及びクロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1記載のマイクロペレット。
【請求項3】
押出機のシリンダー内でフルオロポリマーを溶融させ、
溶融させたフルオロポリマーを前記押出機に備えられたダイを通して押出し、
押し出されたフルオロポリマーを冷却し、
所望の長さに切断して、
請求項1又は2記載のマイクロペレットを得る
ことを特徴とするマイクロペレットの製造方法。
【請求項4】
熱可塑性樹脂を金型に投入し、
前記金型を炉の中で回転させながら加熱して前記熱可塑性樹脂を金型面に沿って溶融させ、
更に前記金型に請求項1又は2記載のマイクロペレットを投入し、
前記金型を炉の中で回転させながら加熱して前記マイクロペレットを金型面に沿って溶融させ、
金型を回転させながら冷却し、
熱可塑性樹脂層とフルオロポリマー層とを含む中空成形体を金型から取り出す
ことを特徴とする中空成形体の製造方法。
【請求項5】
熱可塑性樹脂は、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、及び、変性ポリオレフィン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である請求項4記載の中空成形体の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5記載の製造方法により得られる中空成形体。

【公開番号】特開2010−234778(P2010−234778A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88267(P2009−88267)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】