説明

マイクロホンユニットおよびその筐体の製造方法

【課題】電磁シールドによる電磁妨害抑制と量産性とを両立できるマイクロホンユニットを提供する。
【解決手段】マイクロホンユニット120は、開口部130を有し導電性樹脂からなるカバー200と、第1の基板210と、電極パッド370,380を有する第2の基板220と、開口部130からオフセットされた位置に配置され振動板232を有する振動ユニット230と、振動ユニット230に電気的に接続されたASIC240とを備える。カバー200の内部の空間には、カバー200を構成する導電性樹脂の剥離を防ぐための保護膜330,340が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロホンユニットに関し、特に、マイクロホンユニットの構造および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電話などによる通話や、音声認識、音声録音などに際しては、目的の音声(話者の声)のみを集音することが好ましい。しかし、集音のための音声入力装置の使用環境では、背景雑音など目的の音声以外の音が存在することがある。そのため、雑音が存在する環境で使用される場合にも目的の音声を正確に抽出することを可能にする、すなわち雑音を除去する機能を有する音声入力装置の開発が進んでいる。また、近年では、電子機器の小型化が進んでおり、音声入力装置(以下「マイクロホン」ともいう。)の小型化も進められている。
【0003】
たとえば、特開2007−329559号公報(特許文献1)は、「安価且つ簡単に、振動板の機械的強度が確保されたコンデンサ型マイクロホンを製造する方法」を開示している([要約]の[課題])。この方法は、「振動板Mと背極板Bとの間にスペーサ部材Sが配置されるコンデンサ部Cを備えるコンデンサ型マイクロホンの製造方法であって、単結晶シリコンからなる基板1の一方の表面にイオン注入を行って基板1の一方の表面に犠牲層2を形成する工程と、犠牲層2上に単結晶シリコン層3を堆積させる工程と、基板1の複数の箇所を基板1の他方の表面から犠牲層2までエッチングして基板1に複数の孔7を形成する工程と、複数の孔7を介して犠牲層2の一部をエッチングして基板1と単結晶シリコン層3との間に空間8を設けることで、単結晶シリコン層3からなる振動板Mと、複数の孔7を有する基板1からなる背極板Bと、残された犠牲層2からなるスペーサ部材Sとを形成する工程とを含む([要約]の[解決手段])。特開2007−329559号公報に開示された方法によると、コンデンサ型マイクロホンは、SOIなどの高価な基板ではなく、単結晶シリコンからなる基板1が出発材料となるので、コンデンサ型マイクロホンを低コストで製造できる、というものである(段落0028)。
【0004】
特開2007−043327号公報(特許文献2)は、「電磁シールド性を得ることができるとともに、電磁シールド性を保持するための部品点数を少なくでき、その結果、コスト低減を図ることができるコンデンサマイクロホン」を開示している([要約]の[課題])。このコンデンサマイクロホンは、「ダイヤフラム17と、バックプレート15が対向配置されたコンデンサ部と、該コンデンサ部の静電容量の変化を電気インピーダンス変換するインピーダンス変換素子と、コンデンサ部とインピーダンス変換素子を電気的に接続する回路を備えて」おり、又、「コンデンサ部、インピーダンス変換素子及び前記回路を収納するとともに、電気絶縁体からなる筐体12を備え」、「筐体12の外周に導電層12bを設けて電磁シールド性を持たせる」というものである([要約]の[解決手段])。
【0005】
特開2008−067383号公報(特許文献3)は、「樹脂からなるケースボディにメッキ層を形成した構造のケースを用いるシリコンコンデンサマイクロホン」を開示している([要約]の[課題])。特開2008−067383号公報に開示されたマイクロホンは、「一面が開放された筒形の樹脂からなるボディと前記ボディに形成されたメッキ層とで構成されるケースと、MEMSマイクロホンチップと、前記MEMSマイクロホンチップの電気的な信号を処理するための特殊目的型半導体(ASIC)チップが実装されており、前記ケースと接合するための接続パターンが形成されている基板と、を含み、導電性接着剤により前記ケースと前記接続パターンが接合。前記メッキ層は、前記ボディの内部や外部あるいは全体面に形成されることが可能であり、前記ボディの開放面端部には内週面に沿って段差が形成されて、前記基板が前記段差に挿入されるようになっている。成形を容易にし、樹脂ボディの内部、外部または全体面にメッキ層を形成して、電磁波雑音などの外部ノイズを遮断できる」というものである([要約]の[解決手段])。
【0006】
特開2008−048329号公報(特許文献4)は、「部品点数を少なくするとともに小型化を図り、この結果、製造コストを下げながら容易に電磁シールド効果を発揮することができるコンデンサマイクロホン及びコンデンサマイクロホンの積層構造体の製造方法」を開示している([要約]の[課題])。特開2008−048329号公報によると、「コンデンサマイクロホン10の筐体基枠13にはスペーサ18と回路基板12の導電パターン12aを電気接続する導電パターン13b,13c,13d、及び導電層が設けられて」おり、「トップ基板14に設けられた導電パターン14a,14bとスペーサ18とが導電性樹脂27により、電気接続されている」というものである([要約]の[解決手段])。
【0007】
特開2008−011154号公報(特許文献5)は、「シリコン基板をマイクロ加工して形成されるコンデンサマイクロホン用チップの微細化および高感度化を図る」ための技術を開示している。特開2008−011154号公報に開示された技術によると、「マイクロホン用チップのシリコン基板をほぼ六角形状、望ましくは正六角形状をなすようにダイシングし、背気室を円形または、正六角形とする。」というものである([要約]の[解決手段])。
【特許文献1】特開2007−329559号公報
【特許文献2】特開2007−043327号公報
【特許文献3】特開2008−067383号公報
【特許文献4】特開2008−048329号公報
【特許文献5】特開2008−011154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
量産性の観点からは、複数のマイクロホンが搭載されたシートからダイシング工程により、マイクロホンユニットの複数の個片に分離する工法が優れている。一方、電磁妨害の影響を避けるためには、振動板を覆うカバー(筐体)を金属製にするか、あるいは金属コーティングすることが好ましい。しかしながら、金属製カバーを切断(ダイシング)することは困難である。また、金属コーティングされたカバーをダイシングすると、金属材料の剥がれの問題が発生する。
【0009】
本発明は、上述のような問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、電磁シールドによる電磁妨害抑制と量産性とを両立することができるマイクロホンユニットを提供することである。他の目的は、音響特性の低下を防止できるマイクロホンユニットを提供することである。
【0010】
他の目的は、電磁シールドによる電磁妨害抑制と量産性とを両立することができるマイクロホンユニットの筐体の製造方法を提供することである。他の目的は、音響特性の低下を防止できるマイクロホンユニットの筐体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明のある局面に従うマイクロホンユニットは、音響振動を電気信号に変換する振動板と、振動板を搭載し信号を伝送する導電パターン領域をもつ基板と、基板に接合され、開口部を有し、振動板を囲むカバー部とを備える。カバー部は導電性樹脂で形成されている。カバー部の表面のうちの少なくとも振動板に対向する面に保護膜が形成されている。
【0012】
好ましくは、カバー部の基板部と接合される部分には、保護膜が形成されていない。
好ましくは、開口部は、基板の一部に対向している。
【0013】
好ましくは、振動板は、開口部に対向しないようにずれて配置されている。
好ましくは、カバー部の一部は、振動板に対向している。
【0014】
好ましくは、カバー部のうちの基板に接合される部分は、基板のグランドパターンに接合される。
【0015】
好ましくは、基板に接合される部分は、導電性接着材または導電性ペーストにより接合されている。
【0016】
好ましくは、導電性樹脂は、エポキシ系の樹脂に分散された導電性カーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、または金属の導電性フィラーのいずれかを含む。
【0017】
好ましくは、導電性樹脂は、200度以上の耐熱性を有する。
好ましくは、カバー部の端面は、ダイシングによる切断面である。
【0018】
好ましくは、保護膜は樹脂である。
この発明の他の局面に従うと、マイクロホンユニットの筐体の製造方法が提供される。この製造方法は、樹脂板を、複数の筐体の形状に成型するステップと、成型された樹脂板に保護膜を形成するステップと、保護膜が形成された樹脂板を切断するステップとを含む。
【0019】
好ましくは、保護膜を形成するステップは、微小粒子を塗布するステップを含む。
好ましくは、保護膜を形成するステップは、樹脂フィルムを樹脂板に付着させるステップを含む。
【0020】
好ましくは、筐体は、開口部を有している。保護膜を形成するステップは、開口部に保護膜を形成するステップを含む。
【0021】
好ましくは、開口部は複数である。開口部に保護膜を形成するステップは、各開口部に保護膜を形成するステップを含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、電磁シールドによる電磁妨害抑制と量産性とを両立することができる。また、音響特性の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。また、異なる実施の形態が説明される場合には、その実施の形態に係る構成の説明は、当該実施の形態に固有な構成を除き、繰り返さない。
【0024】
[マイクロホンユニットの使用態様]
図1を参照して、本発明の実施の形態に係るマイクロホンユニットの使用態様について説明する。図1は、マイクロホンユニット120を使用する携帯電話機100の構成の概略を表わす図である。携帯電話機100は、システムボード110を備える。システムボード110は、マイクロホンユニット120を含む。マイクロホンユニット120には、開口部130が形成されている。システムボード110には、携帯電話機100の動作を実現するための回路素子が搭載される。開口部130の形状は、図1から特定される形状に限られない。開口部130の形状は、円形、楕円形、矩形等を含む。
【0025】
[マイクロホンユニットの構成]
図2を参照して、本発明の実施の形態に係るマイクロホンユニット120の構成について説明する。図2は、マイクロホンユニット120のカバー部200の上部をシステムボード110に平行な面で切断した状態を表わす図である。
【0026】
マイクロホンユニット120は、カバー部200と、第1の基板210と、第2の基板220と、振動ユニット230と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)240とを備える。振動ユニット230は、振動板232を含む。本実施の形態に係るマイクロホンユニット120は、たとえば、コンデンサ型マイクロホンであるが、その他のマイクロホンであってもよい。また、他の局面において、第1の基板210と第2の基板220とは、一体の基板として構成されてもよい。
【0027】
カバー部200は、導電性の樹脂により構成される。導電性の樹脂は、たとえば、エポキシ樹脂であるが、その他の樹脂であってもよい。導電性の樹脂は、たとえば、エポキシ系の樹脂に、導電性のカーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、金属製の導電性フィラー(filler、充填材)のいずれかを分散させることにより構成されている。
【0028】
導電性の樹脂は、耐熱性を有することが好ましく、たとえば、200度以上の耐熱性を有することが好ましい。耐熱性を有することにより、後述するカバー部200の製造時における発熱にも耐えることができる。たとえば、一枚の樹脂板から複数のカバー部200を成型するときの発熱、あるいは、一枚の樹脂板に形成された複数のカバー部200から、各カバー部200を切断するときの摩擦熱に耐えることができる。
【0029】
また、さらに第1の基板210、第2の基板220についても、例えば、それらの材料をFR4(Flame Retardant 4)、FR5、BT(Bismaleimide Triazine)レジン等の耐熱性材料とすることで、マイクロホンユニット120をリフロー対応化にすることが可能である。マイクロホンユニット120を別基板に実装する場合に他のチップ部品と同様にリフロー工程を通すことができるため、製造時の工数削減に貢献することができる。
【0030】
また、特に、分散材としてカーボンナノチューブを使用することで、カバー部200の導電抵抗を低減し、電磁シールドの効果を向上させることが可能である。
【0031】
振動板232は、たとえば、無機圧電薄膜もしくは有機圧電薄膜を使用して、圧電効果により音響−電気変換する構成、又は、エレクトレット膜を使用する構成であるが、これらの構成に限られない。第1の基板210、第2の基板220によって構成されるマイク基板は、たとえば、絶縁成形基材、焼成セラミックス、ガラスエポキシ樹脂、プラスチック等の材料により構成されるが、材料はこれらに限られず、その他の絶縁性の材料が使用されてもよい。
【0032】
振動板232は、音波の入射に応答して法線方向に振動する。振動ユニット230は、振動板232に入射した音声に応じた電気信号を出力する。振動板232は、たとえば、動電型(ダイナミック型)、電磁型(マグネティック型)、圧電型(クリスタル型)等の、種々のマイクロホンの振動板であり得る。
【0033】
あるいは、振動板232は、半導体膜(たとえばシリコン膜)、シリコンマイク(Siマイク)の振動板であってもよい。シリコンマイクを利用することで、マイクロホンユニット120の小型化および高性能化が実現され得る。なお、振動板232の形状は、特に限定されない。たとえば、振動板232の外形は、円形、楕円形、多角形等であってもよい。
【0034】
図3を参照して、本実施の形態に係るマイクロホンユニット120の構成についてさらに説明する。図3は、システムボード110に垂直な平面でマイクロホンユニット120を切断した状態を表わす図である。カバー部200は、振動ユニット230と振動板232とASIC240とを囲むように構成されている。振動ユニット230とASIC240とは、第1の基板に取り付けられている。開口部130は、振動板232に対してオフセットされた位置に構成されている。このような配置により、塵などの微小物が開口部130から入った場合でも、振動板232に到達しにくくなるため、振動板232の振動に影響を及ぼしにくくなる。その結果、微小物による音響特性の低下が防止される。
【0035】
カバー部200の内部において、保護膜330,340が、カバー部200の表面に形成されている。ある局面において、保護膜330,340は、複数のカバー部200が成形された1枚の樹脂に対して、当該保護膜を構成する材質が溶融された液槽に浸すことにより形成される。保護膜330,340により、カバー部200を構成する部材の一部が剥離し、あるいは磨耗することが防止される。
【0036】
なお、カバー部200と第1の基板210との接合部には、保護膜が形成されていないことが好ましい。保護膜が形成されていないとカバー部200の高さを一定の範囲内に収め易くなる。これにより、カバー部200と第1の基板210との接合精度を高めることができ、量産性を向上し得る。
【0037】
カバー部200と第1の基板210とは、たとえば、導電性接着剤、導電性ペースト等により接合される。導電性接着剤は特に限定されず、たとえば、銀粉や銅粉あるいはカーボンファイバー等の導電性のよい材料が混合された接着剤であればよい。導電性ペーストの種類も限定されない。
【0038】
第1の基板210と第2の基板220との間には、導電パターン350,360が形成されている。導電パターン350は、ASIC240に電気的に結合されている。導電パターン360は、グランドに接続されている。振動ユニット230の支持部とASIC240とも、同様に導電パターンによって電気的に接続されている。振動板232における音響振動は、振動ユニット230において電気信号に変換され、その信号は、導電パターン352を経由してASIC240に送出される。
【0039】
第2の基板220の裏面には、電極パッド370,380が形成されている。電極パッド370,380は、システムボード110に設けられた端子(図示しない)に電気的に接続されている。
【0040】
[製造方法]
図4および図5を参照して、本実施の形態に係るマイクロホンユニット120の製造方法について説明する。図4は、複数のマイクロホンユニット120が成形された樹脂板400を上面から表わす図である。
【0041】
樹脂板400は、射出成形によって形成された複数のマイクロホンユニット120−1,120−2,120−3などを含む。互いに隣接するマイクロホンユニットの間には、切断領域401,402,403などが形成されている。各切断領域は、後述するダイシングの際に使用される。
【0042】
複数のマイクロホンユニット120および切断領域が樹脂板400に形成されると、前述の保護膜をその表面に形成するために、樹脂板400は、当該保護膜の材料が溶融された液槽に入れられる。なお、保護膜の形成の方法はこれに限られない。たとえば、他の局面において、樹脂板400を当該液槽に入れる代わりに、樹脂板400の裏面(振動板232と対向する面)に対して、当該保護膜を構成する材質をスプレーにより付着させてもよい。
【0043】
また、樹脂板400の片面にのみ保護膜を形成するために、保護膜を必要としない他の面を予めマスクしておき、保護膜を形成する処理が行なわれた後に当該マスクを除去する工程が行なわれてもよい。
【0044】
また、カバー部200と第1の基板210との接合部には保護膜が形成されていないことが好ましい。そこで、樹脂板400に保護膜が形成された後、接合部に相当する領域に形成された保護膜を除去するために、樹脂板400を研磨する工程が行なわれてもよい。
【0045】
図5は、本実施の形態に係るマイクロホンユニット120の製造方法の一部を表わすフローチャートである。
【0046】
ステップS510にて、1枚の樹脂パネル(たとえば樹脂板400)を複数のカバー部(たとえば複数のマイクロホンユニット120)を含むパネルとして成型する。
【0047】
ステップS520にて、成型したパネルの一面(たとえば振動板232に対向する面)に保護膜を形成する。保護膜の形成は、たとえば、当該保護膜を構成する液体の層に当該パネルを入れて、その後当該パネルを乾燥させることによって実現される。あるいは、他の局面において、保護膜を構成する液状の粒子をパネルの一面に塗布してもよい。あるいは、さらに他の局面において、保護膜を構成する薄型フィルムをパネルに付着させてもよい。この場合、ステップS510の処理後に薄型フィルムを付着させる工程に代えて、薄型フィルムを付着後にステップS510における成型処理が行なわれてもよい。このようにすると、形成される筐体の加工精度の低下が防止され得る。
【0048】
ステップS530にて、保護膜が形成されたパネルを各カバー部ごとに(マイクロホンユニット120ごとに)切断(ダイシング)する。これにより、各マイクロホンユニットが生成される。
【0049】
[実施の形態の効果]
以上のようにして、本発明の実施の形態に係るマイクロホンユニット120は、導電性樹脂で形成された筐体を有する。筐体は導電性樹脂により構成されている。この筐体の表面には、保護膜が形成されている。このようにすると、導電性樹脂の剥離が防止されるため、剥離した粒子が振動板232に付着することなどによる音響性能の低下を防ぐことができる。
【0050】
また、マイクロホンユニット120の筐体が導電性樹脂で構成されているため、電磁シールドによる電磁妨害を抑制することができる。また、筐体が樹脂からなることにより、加工が容易となり、たとえば、ダイシングによって一枚のパネルから複数の筐体を切り出すことができる。これにより、量産性が向上する。
【0051】
また、上記のように、カバー部200の導電性樹脂の表面に保護膜330,340を表面に形成することで、導電性樹脂の中に分散されている、導電性カーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、金属製のフィラー等の粉塵が飛散し、振動板に付着あるいは突き刺さることによって、振動ユニット230の振動特性が変化して音響特性が劣化したり、あるいは電気的ショートが発生してダイアフラムあるいはASIC240が破損することを防止することができる。
【0052】
また、さらに第1の基板210、第2の基板220についても、それらの素材を、例えば、FR4,FR5、BTレジン等の耐熱性材料とすることで、マイクロホンユニット120をリフロー対応可能にすることが可能である。マイクロホンユニット120をシステムボード110に実装する場合に他のチップ部品と同様にリフロー工程を通すことができるため、製造時の工数削減に貢献することができる。
【0053】
<変形例>
以下、本発明の実施の形態の変形例について説明する。本変形例に係るマイクロホンユニット620は、いわゆる差動マイクの構成を有する点で、前述のマイクロホンユニット120と異なる。なお、前述のマイクロホンユニット120と同じ構成要素には同じ番号を付してある。それらの機能も同じである。したがって、同じ構成要素の説明は繰り返さない。
【0054】
[構成]
図6を参照して、本実施の形態に係るマイクロホンユニット620の構成について説明する。図6は、マイクロホンユニット620をシステムボード110に垂直な面で切断した状態を表わす図である。
【0055】
マイクロホンユニット620は、図3に示されるマイクロホンユニット120の構成に加えて、開口部132をさらに備える。開口部132におけるカバー部200の表面には、保護膜310,320が形成されている。保護膜310,320は、保護膜330,340と同様に形成される。
【0056】
このような構成によると、カバー部200の表面の材質が剥離して、その剥離した物質が、振動板232の上面および下面に付着しにくくなる。したがって、振動板232における音響振動はそのような剥離物によって影響を受けない。その結果、マイクロホンユニット620の音声特性の低下が防止される。
【0057】
以上のようにして、本発明の実施の形態の変形例に係るマイクロホンユニット620は、導電性樹脂で形成された筐体を有する。筐体は導電性樹脂により構成されている。この筐体の表面には、保護膜が形成されている。このようにすると、導電性樹脂の剥離が防止されるため、剥離した粒子が振動板232に付着することなどによる音響性能の低下を防ぐことができる。
【0058】
また、マイクロホンユニット620の筐体が導電性樹脂で構成されているため、電磁シールドによる電磁妨害を抑制することができる。また、筐体が樹脂からなることにより、加工が容易となり、たとえば、ダイシングによって一枚のパネルから複数の筐体を切り出すことができる。これにより、量産性が向上する。マイクロホンユニット620は、2つの開口部130,132を有するためノイズが相殺される。これにより、量産性を維持しつつ音響特性の低下が防止されるマイクロホンユニットを提供することができる。
【0059】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本実施の形態に係るマイクロホンユニットは、携帯電話機、ボイスレコーダその他の小型の音声入力装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態に係るマイクロホンユニット120を使用する携帯電話機100の構成の概略を表わす図である。
【図2】マイクロホンユニット120のカバー部200の上部をシステムボード110に平行な面で切断した状態を表わす図である。
【図3】システムボード110に垂直な平面でマイクロホンユニット120を切断した状態を表わす図である。
【図4】複数のマイクロホンユニット120が成形された樹脂板400を上面から表わす図である。
【図5】マイクロホンユニット120の製造方法の一部を表わすフローチャートである。
【図6】本実施の形態の変形例に係るマイクロホンユニット620をシステムボード110に垂直な面で切断した状態を表わす図である。
【符号の説明】
【0062】
100 携帯電話機、110 システムボード、120,620 マイクロホンユニット、130,132 開口部、200 カバー、210 第1の基板、220 第2の基板、230 振動ユニット、232 振動板、240 ASIC、400 樹脂板、310,320,330,340 保護膜、350,352,360 導電パターン、370,380 電極パッド、401−406,411−415 切断領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響振動を電気信号に変換する振動板と、
前記振動板を搭載し前記信号を伝送する導電パターン領域をもつ基板と、
前記基板に接合され、開口部を有し、前記振動板を囲むカバー部とを備え、
前記カバー部は導電性樹脂で形成されており、
前記カバー部の表面のうちの少なくとも前記振動板に対向する面に保護膜が形成されている、マイクロホンユニット。
【請求項2】
前記カバー部の前記基板部と接合される部分には、前記保護膜が形成されていない、請求項1に記載のマイクロホンユニット。
【請求項3】
前記開口部は、前記基板の一部に対向している、請求項1または請求項2に記載のマイクロホンユニット。
【請求項4】
前記振動板は、前記開口部に対向しないようにずれて配置されている、請求項1から請求項3のいずれかに記載のマイクロホンユニット。
【請求項5】
前記カバー部の一部は、前記振動板に対向している、請求項1から請求項4のいずれかに記載のマイクロホンユニット。
【請求項6】
前記カバー部のうちの前記基板に接合される部分は、前記基板のグランドパターンに接合される、請求項1から請求項5のいずれかに記載のマイクロホンユニット。
【請求項7】
前記基板に接合される部分は、導電性接着材または導電性ペーストにより接合されている、請求項6に記載のマイクロホンユニット。
【請求項8】
前記導電性樹脂は、エポキシ系の樹脂に分散された導電性カーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、または金属の導電性フィラーのいずれかを含む、請求項1から請求項7のいずれかに記載のマイクロホンユニット。
【請求項9】
前記導電性樹脂は、200度以上の耐熱性を有する、請求項1から請求項8のいずれかに記載のマイクロホンユニット。
【請求項10】
前記カバー部の端面は、ダイシングによる切断面である、請求項1から請求項9のいずれかに記載のマイクロホンユニット。
【請求項11】
前記保護膜は樹脂である、請求項1から請求項10のいずれかに記載のマイクロホンユニット。
【請求項12】
マイクロホンユニットの筐体の製造方法であって、
樹脂板を、複数の筐体の形状に成型するステップと、
成型された前記樹脂板に保護膜を形成するステップと、
前記保護膜が形成された樹脂板を切断するステップとを含む、マイクロホンユニットの筐体の製造方法。
【請求項13】
前記保護膜を形成する前記ステップは、微小粒子を塗布するステップを含む、請求項12に記載のマイクロホンユニットの筐体の製造方法。
【請求項14】
前記保護膜を形成する前記ステップは、樹脂フィルムを前記樹脂板に付着させるステップを含む、請求項12に記載のマイクロホンユニットの筐体の製造方法。
【請求項15】
前記筐体は、開口部を有しており、
前記保護膜を形成する前記ステップは、前記開口部に保護膜を形成するステップを含む、請求項12から請求項14のいずれかに記載のマイクロホンユニットの筐体の製造方法。
【請求項16】
前記開口部は複数であり、
前記開口部に保護膜を形成する前記ステップは、各前記開口部に前記保護膜を形成するステップを含む、請求項15に記載のマイクロホンユニットの筐体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−41565(P2010−41565A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204178(P2008−204178)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【出願人】(505303059)株式会社船井電機新応用技術研究所 (108)
【Fターム(参考)】