説明

マイクロホンユニットおよび電子機器

【課題】音源が近接している場合には音源の音を拾いながらノイズを拾わないようにすることができるとともに、音源が近接せずに離れている場合にも音源の音を十分に拾うことが可能なマイクロホンユニットを提供する。
【解決手段】この差動マイクロホンユニット100(マイクロホンユニット)は、振動部11が配置され、距離D1を隔てて配置されるカバー部側音孔33および35と距離D2を隔てて配置されるカバー部側音孔32および37とが表面に設けられるカバー部30と、距離D1を隔てて配置されたカバー部側音孔33および35から入力された音が振動部11の一方側と他方側とに伝達される状態と、距離D2を隔てて配置されたカバー部側音孔32および37から入力された音が振動部11の一方側と他方側とに伝達される状態とに音道を切り替える音道切替部22および34とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マイクロホンユニットおよび電子機器に関し、特に、複数の音孔を有するマイクロホンユニットおよび電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の音孔を有するマイクロホンユニットおよび電子機器が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、内部空間を有する筐体と、筐体の内部に設けられる振動膜と、振動膜の振動に基づく電気信号を出力するための出力部とを備えるマイクロホンユニット(差動マイクロホンユニット)が開示されている。上記特許文献1に記載のマイクロホンユニットでは、筐体の表面に第1の開口部(音孔)と第2の開口部(音孔)とが設けられており、第1の開口部から入力された音は、振動膜の一方側に伝達されるとともに、第2の開口部から入力された音は、振動膜の他方側に伝達されるように構成されている。
【0004】
そして、上記特許文献1では、ユーザとマイクロホンユニットとが近接している状態において、第1の開口部から入力されたユーザの音声の音圧と、第2の開口部から入力されたユーザの音声の音圧との差圧を電気信号に変換するとともに出力される(ユーザの音声を拾う)ように構成されている。また、マイクロホンユニットから比較的遠い位置から発せられるノイズについては、第1の開口部から入力されたノイズの音圧と、第2の開口部から入力されたノイズの音圧との差圧が小さいので、ノイズが電気信号に変換されて出力される(ノイズを拾う)のが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−135777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般的には、音源からマイクロホンユニットまでの距離とマイクロホンユニットに入力される音の差圧とは反比例の関係にあり、上記特許文献1に記載のマイクロホンユニットでは、ユーザ(音源)とマイクロホンユニットとが近接せずに離れている場合では、第1の開口部から入力されたユーザの音声の音圧と、第2の開口部から入力されたユーザの音声の音圧との差圧が小さいので、ユーザの音声を十分に拾えないという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、音源が近接している場合には音源の音を拾いながらノイズを拾わないようにすることができるとともに、音源が近接せずに離れている場合にも音源の音を十分に拾うことが可能なマイクロホンユニットおよび電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
この発明の第1の局面によるマイクロホンユニットは、音圧により振動する振動部が配置され、第1の距離および第1の距離よりも大きい第2の距離を隔てて配置される複数の音孔が表面に設けられるマイクロホン筐体と、複数の音孔のうちの第1の距離を隔てて配置された複数の音孔から入力された音が振動部の一方側と他方側とに伝達される状態と、第2の距離を隔てて配置された複数の音孔から入力された音が振動部の一方側と他方側とに伝達される状態とに音道を切り替える音道切替部とを備える。
【0009】
この第1の局面によるマイクロホンユニットでは、上記のように、音道切替部によって、複数の音孔のうちの第1の距離を隔てて配置された複数の音孔から入力された音が振動部の一方側と他方側とに伝達される状態に音道を切り替えることによって、マイクロホンユニットに近接している音源の音は、複数の音孔からそれぞれ振動部の一方側と他方側とに伝達されて、振動部の一方側と他方側とに伝達された音の差圧に基づいて音源の音を拾うことができる。また、マイクロホンユニットから比較的遠い位置から発せられるノイズについては、複数の音孔から入力されたノイズの差圧が小さいので、ノイズを拾うのを抑制することができる。また、一般的には音源からマイクロホンユニットまでの距離とマイクロホンユニットに入力される音の差圧とは反比例の関係にあり、音道切替部によって、第1の距離よりも大きい第2の距離を隔てて配置された複数の音孔から入力された音が振動部の一方側と他方側とに伝達される状態に音道を切り替えることによって、マイクロホンユニットに近接せずに離れている音源の音でも、複数の音孔から入力された音源の音の差圧が十分に得られる。これにより、音源の音を十分に拾うことができる。このように、第1の距離を隔てて配置された複数の音孔から入力される状態と、第2の距離を隔てて配置された複数の音孔から入力される状態とに音道を切り替えることによって、音源が近接している場合には音源の音を拾いながらノイズを拾わないようにすることができるとともに、音源が近接せずに離れている場合にも音源の音を十分に拾うことができる。
【0010】
上記第1の局面によるマイクロホンユニットにおいて、好ましくは、複数の音孔は、振動部の一方側に伝達される音が入力される第1音孔と、第1音孔と第1の距離を隔てて配置され、振動部の他方側に伝達される音が入力される第2音孔と、第3音孔と、第3音孔と第2の距離を隔てて配置され、振動部の他方側に伝達される音が入力される第4音孔とを含み、音道切替部は、第1音孔および第2音孔から入力された音がそれぞれ振動部の一方側および他方側に伝達される状態と、第3音孔および第4音孔から入力された音がそれぞれ振動部の一方側および他方側に伝達される状態とに音道を切り替えるように構成されている。このように構成すれば、音源が近接している場合には、第1音孔および第2音孔から入力される近接している音源の音を拾うとともに、第1音孔および第2音孔から入力されるノイズを拾わないようにすることができる。また、音源が近接せずに離れている場合にも、第3音孔および第4音孔から入力される近接せずに離れている音源の音を十分に拾うことができる。
【0011】
この場合、好ましくは、音道切替部は、音源と振動部とが近接している場合に、第1音孔および第2音孔から入力された音がそれぞれ振動部の一方側および他方側に伝達される状態に設定されるとともに、音源と振動部とが近接せずに離れている場合に、第3音孔および第4音孔から入力された音がそれぞれ振動部の一方側および他方側に伝達される状態に設定されるように構成されている。このように構成すれば、音源と振動部とが近接している場合に、容易に、近接している音源の音を拾いながらノイズを拾わないようにすることができるとともに、音源と振動部とが近接せずに離れている場合にも、容易に、近接せずに離れている音源の音を十分に拾うことができる。
【0012】
上記第1音孔、第2音孔、第3音孔および第4音孔を含むマイクロホンユニットにおいて、好ましくは、第1音孔の開口端から振動部の一方側まで音が伝達する第1音道の長さと、第2音孔の開口端から振動部の他方側まで音が伝達する第2音道の長さとは、略等しく、第3音孔の開口端から振動部の一方側まで音が伝達する第3音道の長さと、第4音孔の開口端から振動部の他方側まで音が伝達する第4音道の長さとは、略等しくなるように構成されている。このように構成すれば、第1音道(第3音道)から振動部の一方側に伝達される音の位相と、第2音道(第4音道)から振動部の他方側に伝達される音の位相とが略等しくなるので、第1音道(第3音道)側のマイクロホンユニットの指向性と、第2音道(第4音道)側のマイクロホンユニットの指向性とを略等しくすることができる。
【0013】
上記第1音孔、第2音孔、第3音孔および第4音孔を含むマイクロホンユニットにおいて、好ましくは、音道切替部は、音孔または音道を開閉することにより、第1音孔および第2音孔から入力された音がそれぞれ振動部の一方側および他方側に伝達される状態と、第3音孔および第4音孔から入力された音がそれぞれ振動部の一方側および他方側に伝達される状態とに音道を切り替えるように構成されている。このように構成すれば、音道切替部の開閉により、容易に、音道を切り替えることができる。
【0014】
この場合、好ましくは、第1音孔の開口端から振動部の一方側まで音が伝達する第1音道と、第3音孔の開口端から振動部の一方側まで音が伝達する第3音道とは、共通の部分を含み、音道切替部は、第1音道と第3音道とが共通の部分から分岐する部分に設けられるとともに、第2音孔の開口端から振動部の他方側まで音が伝達する第2音道と、第4音孔の開口端から振動部の他方側まで音が伝達する第4音道とは、共通の部分を含み、音道切替部は、第2音道と第4音道とが共通の部分から分岐する部分に設けられており、音道切替部は、第1音道または第3音道のいずれか一方を閉じるとともに、第2音道または第4音道のいずれか一方を閉じるように構成されている。このように構成すれば、第1音道、第2音道、第3音道および第4音道が別個に設けられ、第1音道、第2音道、第3音道および第4音道のそれぞれに音道切替部が設けられる場合(合計4個の音道切替部)と異なり、音道の分岐する部分にそれぞれ1つ音道切替部(合計2個の音道切替部)を設けるだけでよい分、音道切替部の数を少なくすることができる。
【0015】
この発明の第2の局面による電子機器は、音圧により振動する振動部が配置され、第1の距離および第1の距離よりも大きい第2の距離を隔てて配置される複数の音孔が表面に設けられるマイクロホン筐体と、複数の音孔のうちの第1の距離を隔てて配置された複数の音孔から入力された音が振動部の一方側と他方側とに伝達される状態と、第2の距離を隔てて配置された複数の音孔から入力された音が振動部の一方側と他方側とに伝達される状態とに音道を切り替える音道切替部とを含むマイクロホンユニットを備える。
【0016】
この第2の局面による電子機器では、上記のように、音道切替部によって、複数の音孔のうちの第1の距離を隔てて配置された複数の音孔から入力された音が振動部の一方側と他方側とに伝達される状態に音道を切り替えることによって、マイクロホンユニットに近接している音源の音は、複数の音孔からそれぞれ振動部の一方側と他方側とに伝達されて、振動部の一方側と他方側とに伝達された音の差圧に基づいて音源の音を拾うことができる。また、マイクロホンユニットから比較的遠い位置から発せられるノイズについては、複数の音孔から入力されたノイズの差圧が小さいので、ノイズを拾うのを抑制することができる。また、音道切替部によって、第1の距離よりも大きい第2の距離を隔てて配置された複数の音孔から入力された音が振動部の一方側と他方側とに伝達される状態に音道を切り替えることによって、マイクロホンユニットに近接せずに離れている音源の音でも、複数の音孔から入力された音源の音の差圧が十分に得られるので、音源の音を十分に拾うことができる。このように、第1の距離を隔てて配置された複数の音孔から入力される状態と、第2の距離を隔てて配置された複数の音孔から入力される状態とに音道を切り替えることによって、音源が近接している場合には音源の音を拾いながらノイズを拾わないようにすることができるとともに、音源が近接せずに離れている場合にも音源の音を十分に拾うことができる。
【0017】
上記第2の局面による電子機器において、好ましくは、電子機器筐体をさらに備え、複数の音孔は、電子機器筐体とマイクロホン筐体とを貫通するように設けられており、複数の音孔は、振動部の一方側に伝達される音が入力される第1音孔と、第1音孔と第1の距離を隔てて配置され、振動部の他方側に伝達される音が入力される第2音孔と、第3音孔と、第3音孔と第2の距離を隔てて配置され、振動部の他方側に伝達される音が入力される第4音孔とを含み、音道切替部は、第1音孔および第2音孔から入力された音がそれぞれ振動部の一方側および他方側に伝達される状態と、第3音孔および第4音孔から入力された音がそれぞれ振動部の一方側および他方側に伝達される状態とに音道を切り替えるように構成されている。このように構成すれば、音源が近接している場合には、第1音孔および第2音孔から入力される近接している音源の音を拾うとともに、第1音孔および第2音孔から入力されるノイズを拾わないようにすることができる。また、音源が近接せずに離れている場合にも、第3音孔および第4音孔から入力される近接せずに離れている音源の音を十分に拾うことができる。
【0018】
この場合、好ましくは、ユーザの操作に基づいて、音道切替部は、音源と振動部とが近接している場合に、第1音孔および第2音孔から入力された音がそれぞれ振動部の一方側および他方側に伝達される状態に設定されるとともに、音源と振動部とが近接せずに離れている場合に、第3音孔および第4音孔から入力された音がそれぞれ振動部の一方側および他方側に伝達される状態に設定されるように構成されている。このように構成すれば、ユーザの操作に基づいて、容易に、音源と振動部とが近接している場合に、近接している音源の音を拾いながらノイズを拾わないようにすることができるとともに、音源と振動部とが近接せずに離れている場合にも、近接せずに離れている音源の音を十分に拾うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態によるICレコーダの全体構成を示した図である。
【図2】本発明の第1実施形態による差動マイクロホンユニットの断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による差動マイクロホンユニットの表面側の平面図である。
【図4】本発明の第1実施形態による差動マイクロホンユニットの裏面側の平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態による差動マイクロホンユニットの分解斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態による差動マイクロホンユニットの動作を説明するための図である。
【図7】本発明の第1実施形態による差動マイクロホンユニットの動作を説明するための図である。
【図8】本発明の第2実施形態による差動マイクロホンユニットの断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態による差動マイクロホンユニットの断面図である。
【図10】本発明の第4実施形態による差動マイクロホンユニットの音源が近接している場合の断面図である。
【図11】本発明の第4実施形態による差動マイクロホンユニットの音源が近接せずに離れている場合の断面図である。
【図12】本発明の第5実施形態による差動マイクロホンユニットの断面図である。
【図13】図12に示した本発明の第5実施形態による差動マイクロホンユニットの分解斜視図である。
【図14】本発明の第6実施形態による差動マイクロホンユニットの断面図である。
【図15】図14に示した本発明の第6実施形態による差動マイクロホンユニットの分解斜視図である。
【図16】本発明の第1〜第6実施形態の第1変形例による差動マイクロホンユニットの断面図である。
【図17】図16に示した本発明の第1〜第6実施形態の第1変形例による差動マイクロホンユニットの平面図である。
【図18】本発明の第1〜第6実施形態の第2変形例による差動マイクロホンユニットの断面図である。
【図19】図18に示した本発明の第1〜第6実施形態の第2変形例による差動マイクロホンユニットの平面図である。
【図20】本発明の第1〜第6実施形態の第3変形例による携帯電話の全体構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
(第1実施形態)
図1〜図7を参照して、本発明の第1実施形態による差動マイクロホンユニット100と、差動マイクロホンユニット100を備えるICレコーダ200との構成について説明する。なお、差動マイクロホンユニット100は、本発明の「マイクロホンユニット」の一例であり、ICレコーダ200は、本発明の「電子機器」の一例である。
【0022】
本発明の第1実施形態によるICレコーダ200には、図1に示すように、ICレコーダ筐体部1と、録音ボタン2と、液晶ディスプレイからなる表示画面部3と、差動マイクロホンユニット100とが設けられている。なお、録音ボタン2と表示画面部3とは、ICレコーダ筐体部1の表面側に設けられている。また、差動マイクロホンユニット100は、差動マイクロホンユニット100の長手方向がX方向に沿うように配置されている。そして、差動マイクロホンユニット100は、矢印X1方向側と矢印X2方向側との両指向性を有する。なお、ICレコーダ筐体部1は、本発明の「電子機器筐体」の一例である。
【0023】
また、図2に示すように、差動マイクロホンユニット100は、ICレコーダ筐体部1の裏面側(矢印Z2方向側)に配置されている。また、差動マイクロホンユニット100は、基板10と、カバー部30と、ガスケット40とが積層された構造を有する。なお、基板10とカバー部30とは、本発明の「マイクロホン筐体」の一例である。
【0024】
また、基板10は、約0.4mm以上約0.8mm以下の厚みを有するガラスエポキシなどの絶縁性の材料からなる。また、基板10の表面上には、外部から入力された音の音圧により振動する振動部11を有するMEMS(Micro Electro Mechanical System)チップ12が設けられている。また、基板10の表面上には、MEMSチップ12に隣接するように、電気信号出力IC13が配置されている。電気信号出力IC13は、MEMSチップ12の振動部11の振動に基づいて電気信号を出力するための集積回路である。また、MEMSチップ12と、電気信号出力IC13とは、配線14aおよび配線14bにより電気的に接続されている。
【0025】
また、図2および図3に示すように、基板10には、貫通孔15a、貫通孔15bおよび貫通孔15cが形成されている。貫通孔15a、貫通孔15bおよび貫通孔15cには、それぞれ、配線16a、配線16bおよび配線16cが埋め込まれている。そして、図4に示すように、基板10のZ2方向側の表面上には、配線16a、配線16bおよび配線16cにそれぞれ接続するように、電極部17a、電極部17bおよび電極部17cが形成されている。電極部17a、電極部17bおよび電極部17cは、それぞれ、電気信号出力IC13への電力の供給、電気信号出力IC13からの電気信号の出力およびGND(接地)接続を行うために設けられている。
【0026】
また、図2に示すように、基板10には、略直方体形状の基板側空洞部18が設けられている。そして、基板側空洞部18の矢印X1方向側の端部に連結されるとともに、MEMSチップ12の振動部11の矢印Z2方向側に接続されるMEMSチップ側音孔19が設けられている。また、基板10には、基板側空洞部18の矢印X2方向側の端部に連結されるとともに、後述するカバー部側空洞部36に連結される基板側音孔20が設けられている。また、基板10のMEMSチップ側音孔19と基板側音孔20との間に対応する領域には、基板側空洞部18に連結されるとともに、後述するカバー部側音孔35に連結される基板側音孔21が設けられている。なお、基板側音孔20および基板側音孔21は、図5に示すように、平面的に見て、長丸形状(長孔形状)を有する。また、MEMSチップ側音孔19は、平面的に見て、真円形状を有する。
【0027】
また、第1実施形態では、図2に示すように、基板側空洞部18の基板側音孔20と基板側音孔21との間に対応する領域で、かつ、基板側空洞部18の矢印Z2方向側の内表面には、音道切替部22が設けられている。つまり、音道切替部22は、後述する音道A1およびA3(図6および図7参照)が共通の部分から分岐する部分に設けられている。なお、音道切替部22は、回転することにより、基板側音孔20、または、音道A3(図7参照)のうちの一方を閉じるように構成されている。つまり、音道切替部22は、基板側音孔20、または、音道A3を開閉することにより、音道A1およびA3(図6および図7参照)を切り替えるように構成されている。
【0028】
また、図2に示すように、カバー部30は、図示しない約50μm(約0.05mm)の厚みを有する接着剤層を用いて、基板10のZ1方向側の表面に接着されている。また、カバー部30は、約0.6mm以上約1.0mm以下の厚みを有する耐熱性樹脂からなる。また、カバー部30の矢印X1方向側には、略直方体形状のカバー部側空洞部31が設けられている。そして、カバー部30が基板10の表面上に接着された状態で、MEMSチップ12および電気信号出力IC13は、カバー部側空洞部31の内部に収納される。また、カバー部30には、カバー部側空洞部31に連結されるとともに、後述するガスケット側音孔41に連結されるカバー部側音孔32が設けられている。また、カバー部30のMEMSチップ12とカバー部側音孔32との間に対応する領域には、カバー部側空洞部31に連結されるとともに、後述するガスケット側音孔42に連結されるカバー部側音孔33が設けられている。
【0029】
また、第1実施形態では、カバー部側空洞部31のカバー部側音孔32とカバー部側音孔33との間に対応する領域で、かつ、カバー部側空洞部31の矢印Z2方向側の内表面には、音道切替部34が設けられている。つまり、音道切替部34は、後述する音道A2およびA4(図6および図7参照)が共通の部分から分岐する部分に設けられている。なお、音道切替部34は、回転することにより、カバー部側音孔33、または、音道A4(図7参照)のうちの一方を閉じるように構成されている。つまり、音道切替部34は、カバー部側音孔33、または、音道A4を開閉することにより、音道A2およびA4(図6および図7参照)を切り替えるように構成されている。
【0030】
また、MEMSチップ12の矢印X2方向側に対応するカバー部30の領域には、カバー部側音孔35が設けられている。カバー部側音孔35は、基板側音孔21に連結されるとともに、後述するガスケット側音孔43に連結されている。
【0031】
また、カバー部30の矢印X2方向側には、略直方体形状のカバー部側空洞部36が設けられている。カバー部側空洞部36の矢印X1方向側の端部は、基板側音孔20に連結されている。また、カバー部30には、カバー部側空洞部36に連結されるとともに、後述するガスケット側音孔44に連結されるカバー部側音孔37が設けられている。なお、図5に示すように、カバー部側音孔32、カバー部側音孔33、カバー部側音孔35およびカバー部側音孔37は、平面的に見て、長丸形状(長孔形状)を有する。
【0032】
また、図2に示すように、ガスケット40は、弾性変形可能なゴム部材などからなり、ガスケット40は、カバー部30の矢印Z1方向側の表面上に配置されている。また、ガスケット40には、カバー部側音孔32、カバー部側音孔33、カバー部側音孔35およびカバー部側音孔37にそれぞれ連結するように、ガスケット側音孔41、ガスケット側音孔42、ガスケット側音孔43およびガスケット側音孔44が設けられている。なお、図5に示すように、ガスケット側音孔41、ガスケット側音孔42、ガスケット側音孔43およびガスケット側音孔44は、平面的に見て、長丸形状(長孔形状)を有する。
【0033】
また、図2に示すように、ICレコーダ筐体部1には、ガスケット側音孔41、ガスケット側音孔42、ガスケット側音孔43およびガスケット側音孔44とそれぞれ連結するように、ICレコーダ筐体音孔51、ICレコーダ筐体音孔52、ICレコーダ筐体音孔53およびICレコーダ筐体音孔54が設けられている。なお、図5に示すように、ICレコーダ筐体音孔51、ICレコーダ筐体音孔52、ICレコーダ筐体音孔53およびICレコーダ筐体音孔54は、平面的に見て、長丸形状(長孔形状)を有する。なお、ICレコーダ筐体音孔51およびカバー部側音孔32は、本発明の「第4音孔」の一例である。また、ICレコーダ筐体音孔52およびカバー部側音孔33は、本発明の「第2音孔」の一例である。また、ICレコーダ筐体音孔53およびカバー部側音孔35は、本発明の「第1音孔」の一例である。また、ICレコーダ筐体音孔54およびカバー部側音孔37は、本発明の「第3音孔」の一例である。
【0034】
また、図3に示すように、カバー部側音孔32およびガスケット側音孔41は、約0.5mmのX方向側の孔幅W1を有するとともに、約1.5mm以上約2.0mm以下のY方向側の孔幅W2を有する。そして、図2に示すように、カバー部側音孔32およびガスケット側音孔41の内側面が面一になる。
【0035】
また、カバー部側音孔33およびガスケット側音孔42も、X方向側の孔幅W1を有するとともに、Y方向側の孔幅W2を有する。そして、カバー部側音孔33およびガスケット側音孔42の内側面が面一になる。
【0036】
また、基板側音孔21、カバー部側音孔35およびガスケット側音孔43も、X方向側の孔幅W1を有するとともに、Y方向側の孔幅W2を有する。そして、基板側音孔21、カバー部側音孔35およびガスケット側音孔43の内側面が面一になる。
【0037】
また、カバー部側音孔37およびガスケット側音孔44も、X方向側の孔幅W1を有するとともに、Y方向側の孔幅W2を有する。そして、カバー部側音孔37およびガスケット側音孔44の内側面が面一になる。
【0038】
また、図3に示すように、ICレコーダ筐体音孔51、ICレコーダ筐体音孔52、ICレコーダ筐体音孔53およびICレコーダ筐体音孔54は、孔幅W1よりも大きいX方向側の孔幅W3を有するとともに、孔幅W2よりも大きいY方向側の孔幅W4を有する。
【0039】
また、第1実施形態では、図2に示すように、平面的に見て、カバー部側音孔33(ガスケット側音孔42)とカバー部側音孔35(基板側音孔21、ガスケット側音孔43)とは、X方向に沿って約5mmの距離D1を隔てて配置されている。また、平面的に見て、カバー部側音孔32(ガスケット側音孔41)とカバー部側音孔37(ガスケット側音孔44)とは、X方向に沿って約50mmの距離D2を隔てて配置されている。なお、距離D1は、本発明の「第1の距離」の一例である。また、距離D2は、本発明の「第2の距離」の一例である。
【0040】
また、図6に示すように、第1実施形態では、ICレコーダ筐体音孔53、ガスケット側音孔43、カバー部側音孔35、基板側音孔21、基板側空洞部18およびMEMSチップ側音孔19(ICレコーダ筐体音孔53の開口端から振動部11の矢印Z2方向側)によって構成される音道A1の長さと、ICレコーダ筐体音孔52、ガスケット側音孔42、カバー部側音孔33およびカバー部側空洞部31(ICレコーダ筐体音孔52の開口端から振動部11の矢印Z1方向側)によって構成される音道A2の長さとは、略等しい。また、図7に示すように、ICレコーダ筐体音孔54、ガスケット側音孔44、カバー部側音孔37、カバー部側空洞部36、基板側音孔20、基板側空洞部18およびMEMSチップ側音孔19(ICレコーダ筐体音孔54の開口端から振動部11の矢印Z2方向側)によって構成される音道A3の長さと、ICレコーダ筐体音孔51、ガスケット側音孔41、カバー部側音孔32およびカバー部側空洞部31(ICレコーダ筐体音孔51の開口端から振動部11の矢印Z1方向側)によって構成される音道A4の長さとは、略等しい。なお、第1実施形態では、少なくとも、カバー部側音孔35、基板側音孔21、基板側空洞部18およびMEMSチップ側音孔19によって構成される音道の長さと、カバー部側音孔33およびカバー部側空洞部31によって構成される音道の長さとが略等しいとともに、カバー部側音孔37、カバー部側空洞部36、基板側音孔20、基板側空洞部18およびMEMSチップ側音孔19によって構成される音道の長さと、カバー部側音孔32およびカバー部側空洞部31によって構成される音道の長さとが略等しければよい。なお、音道A1は、本発明の「第1音道」の一例であるとともに、音道A2は、本発明の「第2音道」の一例である。また、音道A3は、本発明の「第3音道」の一例であるとともに、音道A4は、本発明の「第4音道」の一例である。
【0041】
次に、図6および図7を参照して、第1実施形態による差動マイクロホンユニット100の動作について説明する。
【0042】
図6に示すように、音道切替部22が、音道A3(図7参照)を閉じている状態では、MEMSチップ12の振動部11の矢印Z2方向側には、音道A1を介して外部からの音が伝達される。また、音道切替部34が、音道A4(図7参照)を閉じている状態では、MEMSチップ12の振動部11の矢印Z1方向側には、音道A2を介して外部からの音が伝達される。そして、振動部11の矢印Z1方向側に伝達された音の音圧と、振動部11の矢印Z2方向側に伝達された音の音圧との差を、電気信号出力IC13によって電気信号に変換する。なお、カバー部側音孔33とカバー部側音孔35との間の距離D1が、約5mmと比較的小さいことにより、接話状態(音源と差動マイクロホンユニット100とが近接している状態)では、差動マイクロホンユニット100によって音源の音が明確に拾われる。一方、差動マイクロホンユニット100から離れた位置から発せられるノイズにおいては、振動部11の矢印Z1方向側と矢印Z2方向側とにそれぞれ入力されるノイズの音の差圧は小さい。これにより、差動マイクロホンユニット100がノイズを拾うのを抑制することが可能となる。
【0043】
次に、図7に示すように、たとえばユーザの操作によって、音道切替部22および音道切替部34を回転させる。これにより、音道が接話状態(音源と差動マイクロホンユニット100とが近接している状態)に対応する音道から、音源が差動マイクロホンユニット100までの距離が大きい状態に対応する音道に切り替えられる。この切り替えにより、音道切替部22が、基板側音孔21を閉じている状態になるので、振動部11の矢印Z2方向側には、音道A3を介して外部からの音が伝達される。また、音道切替部34が、カバー部側音孔33を閉じている状態になるので、振動部11の矢印Z1方向側には、音道A4を介して外部からの音が伝達される。
【0044】
一般的には、音源から差動マイクロホンユニット100までの距離と、差動マイクロホンユニット100に入力される音の差圧とは、反比例の関係にある。そして、音源から差動マイクロホンユニット100までの距離が小さい場合には、振動部11の矢印Z1方向側および矢印Z2方向側にそれぞれ音を入力する2つの音孔の間隔が小さくても、十分な音の差圧を得ることが可能となる。一方、音源から差動マイクロホンユニット100までの距離が大きい場合には、2つの音孔の間隔が小さい状態では、十分な音の差圧を得ることができない。しかしながら、図7に示す状態では、カバー部側音孔32とカバー部側音孔37との間の距離D2が、約50mmと比較的大きいことにより、音源と差動マイクロホンユニット100とが離れている状態でも、振動部11の矢印Z1方向側に伝達された音と、振動部11の矢印Z2方向側に伝達された音との差圧が比較的大きくなる。これにより、音源の音を十分に差動マイクロホンユニット100によって拾うことが可能となる。
【0045】
なお、音孔の間の距離(D1およびD2)により、差動マイクロホンユニット100の特性が変化する。人の聴感感度が高いとされる1kHzの周波数では、たとえば、音孔の間の距離が5mmと50mmとでは利点が異なってくる。音孔の間の距離が大きい(D2=50mm)場合では、2つの音孔(カバー部側音孔32、カバー部側音孔37)から入力される音の音圧差および位相差が大きくなるので、振動部11の振動振幅も大きくなり、差動マイクロホンユニット100の出力振幅も増大する。すなわち、感度の高い差動マイクロホンユニット100が実現できる。
【0046】
また、音孔の間の距離が短い(D1=5mm)場合では、差動マイクロホンユニット100としての感度は低くなる一方、遠方音源から到来して2つの音孔(カバー部側音孔33、カバー部側音孔35)に入力される音の位相差が指向性の全方位で小さくなる。これにより、入力された音の差圧を振動部11で検出したときに、ほとんど打ち消されるように作用する。すなわち、ノイズ抑圧効果の高い差動マイクロホンユニット100が実現できる。
【0047】
そして、話者(音源)周辺の音も含め広い範囲の音を収音したいときには、音孔の間の距離を広くするとともに、収音範囲を狭くして遠方音源の音を抑圧したいときには音孔の間の間隔を狭くするとよい。ここで、話者周辺の音も含め広い範囲の音を収音する場合には、収音したい最大距離において所望のSNR(Signal to Noise Ratio)が確保できるような音孔の間の距離、たとえば50mmに設定する。また、音声帯域における全方位の遠方雑音を抑圧するためには、音孔の間の距離を5mm以下に設定することが望ましい。
【0048】
第1実施形態では、上記のように、音道切替部22および34によって、複数の音孔のうちの距離D1を隔てて配置された複数の音孔から入力された音が振動部11の一方側と他方側とに伝達される状態に音道を切り替えることによって、差動マイクロホンユニット100に近接している音源の音は、複数の音孔からそれぞれ振動部11の一方側と他方側とに伝達されて、振動部11の一方側と他方側とに伝達された音の差圧に基づいて音源の音を拾うことができる。また、差動マイクロホンユニット100から比較的遠い位置から発せられるノイズについては、複数の音孔から入力されたノイズの差圧が小さいので、ノイズを拾うのを抑制することができる。また、音道切替部22および34によって、距離D1の距離よりも大きい距離D2を隔てて配置された複数の音孔から入力された音が振動部11の一方側と他方側とに伝達される状態に音道を切り替えることによって、差動マイクロホンユニット100に近接せずに離れている音源の音でも、複数の音孔から入力された音源の音の差圧が十分に得られるので、音源の音を十分に拾うことができる。このように、距離D1を隔てて配置された複数の音孔から入力される状態と、距離D2を隔てて配置された複数の音孔から入力される状態とに音道を切り替えることによって、音源が近接している場合には音源の音を拾いながらノイズを拾わないようにすることができるとともに、音源が近接せずに離れている場合にも音源の音を十分に拾うことができる。
【0049】
また、第1実施形態では、音道切替部22を、カバー部側音孔35(ガスケット側音孔43、ICレコーダ筐体音孔53)から入力された音が振動部11の矢印Z2方向側に伝達される状態と、カバー部側音孔37(ガスケット側音孔44、ICレコーダ筐体音孔54)から入力された音が振動部11の矢印Z2方向側に伝達される状態とに音道を切り替えるように構成した。また、音道切替部34を、カバー部側音孔33(ガスケット側音孔42、ICレコーダ筐体音孔52)から入力された音が振動部11の矢印Z1方向側に伝達される状態と、カバー部側音孔32(ガスケット側音孔41、ICレコーダ筐体音孔51)から入力された音が振動部11の矢印Z1方向側に伝達される状態とに音道を切り替えるように構成した。これにより、音源が近接している場合には、カバー部側音孔35(ガスケット側音孔43、ICレコーダ筐体音孔53)およびカバー部側音孔33(ガスケット側音孔42、ICレコーダ筐体音孔52)から入力される近接している音源の音を拾うとともに、カバー部側音孔35(ガスケット側音孔43、ICレコーダ筐体音孔53)およびカバー部側音孔33(ガスケット側音孔42、ICレコーダ筐体音孔52)から入力されるノイズを拾わないようにすることができる。また、音源が近接せずに離れている場合にも、カバー部側音孔37(ガスケット側音孔44、ICレコーダ筐体音孔54)およびカバー部側音孔32(ガスケット側音孔41、ICレコーダ筐体音孔51)から入力される近接せずに離れている音源の音を十分に拾うことができる。
【0050】
また、第1実施形態では、上記のように、音道切替部22および34を、音源と振動部11とが近接している場合に、カバー部側音孔35(ガスケット側音孔43、ICレコーダ筐体音孔53)およびカバー部側音孔33(ガスケット側音孔42、ICレコーダ筐体音孔52)から入力された音がそれぞれ振動部11の矢印Z2方向側および矢印Z1方向側に伝達される状態に設定するようにした。また、音道切替部22および34を、音源と振動部11とが近接せずに離れている場合に、カバー部側音孔37(ガスケット側音孔44、ICレコーダ筐体音孔54)およびカバー部側音孔32(ガスケット側音孔41、ICレコーダ筐体音孔51)から入力された音がそれぞれ振動部11の矢印Z2方向側および矢印Z1方向側に伝達される状態に設定するように構成した。これにより、音源と振動部11とが近接している場合に、容易に、近接している音源の音を拾いながらノイズを拾わないようにすることができるとともに、音源と振動部11とが近接せずに離れている場合にも、容易に、近接せずに離れている音源の音を十分に拾うことができる。
【0051】
また、第1実施形態では、上記のように、ICレコーダ筐体音孔53の開口端から振動部11の矢印Z2方向側まで音が伝達する音道A1の長さと、ICレコーダ筐体音孔52の開口端から振動部11の矢印Z1方向側まで音が伝達する音道A2の長さとは、略等しく、ICレコーダ筐体音孔54の開口端から振動部11の矢印Z2方向側まで音が伝達する音道A3の長さと、ICレコーダ筐体音孔51の開口端から振動部11の矢印Z1方向側まで音が伝達する音道A4の長さとは、略等しくなるように構成した。これにより、音道A1(音道A3)から振動部11の矢印Z2方向側に伝達される音の位相と、音道A2(音道A4)から振動部11の矢印Z1方向側に伝達される音の位相とが略等しくなるので、音道A1(音道A3)側の差動マイクロホンユニット100の指向性と、音道A2(音道A4)側の差動マイクロホンユニット100の指向性とを略等しくすることができる。
【0052】
また、第1実施形態では、上記のように、音道切替部22が開閉することにより、カバー部側音孔35(ガスケット側音孔43、ICレコーダ筐体音孔53)から入力された音が振動部11の矢印Z2方向側に伝達される状態と、カバー部側音孔37(ガスケット側音孔44、ICレコーダ筐体音孔54)から入力された音が振動部11の矢印Z2方向側に伝達される状態とに音道を切り替えるように構成した。また、音道切替部34が開閉することにより、カバー部側音孔33(ガスケット側音孔42、ICレコーダ筐体音孔52)から入力された音が振動部11の矢印Z1方向側に伝達される状態と、カバー部側音孔32(ガスケット側音孔41、ICレコーダ筐体音孔51)から入力された音が振動部11の矢印Z1方向側に伝達される状態とに音道を切り替えるように構成した。これにより、音道切替部22および34の開閉により、容易に、音道を切り替えることができる。
【0053】
また、第1実施形態では、上記のように、音道切替部22を、音道A1と音道A3とが共通の部分から分岐する部分に設けるとともに、音道切替部34を、音道A2と音道A4とが共通の部分から分岐する部分に設けて、音道切替部22を、音道A1または音道A3のいずれか一方を閉じるとともに、音道切替部34を、音道A2または音道A4のいずれか一方を閉じるように構成した。これにより、音道A1、音道A2、音道A3および音道A4が別個に設けられ、音道A1、音道A2、音道A3および音道A4のそれぞれに音道切替部が設けられる場合(合計4個の音道切替部)と異なり、音道の分岐する部分にそれぞれ1つ音道切替部(合計2個の音道切替部22および34)を設けるだけでよい分、音道切替部の数を少なくすることができる。
【0054】
(第2実施形態)
次に、図8を参照して、第2実施形態による差動マイクロホンユニット101の構成について説明する。この第2実施形態では、上記音道切替部22および34が回転することにより音孔または音道を開閉するように構成されている上記第1実施形態と異なり、音道切替部22aおよび34aが湾曲することにより音孔または音道を開閉するように構成されている例について説明する。なお、差動マイクロホンユニット101は、本発明の「マイクロホンユニット」の一例である。
【0055】
図8に示すように、第2実施形態による差動マイクロホンユニット101では、基板側空洞部18の基板側音孔20と基板側音孔21との間に対応する領域で、かつ、基板側空洞部18の矢印Z2方向側の内表面には、音道切替部22aが設けられている。なお、音道切替部22aは、熱膨張率の異なる2つの金属板221および222が貼り合わされた構造を有する。そして、音道切替部22aの温度を変化させることにより、音道切替部22aは、矢印Z2方向に湾曲した状態と平板の状態とに変化するように構成されている。これにより、音道切替部22aは、基板側音孔20、または、音道A3(図7参照)を開閉するように構成されている。
【0056】
また、カバー部側空洞部31のカバー部側音孔32とカバー部側音孔33との間に対応する領域で、かつ、カバー部側空洞部31の矢印Z2方向側の内表面には、音道切替部34aが設けられている。なお、音道切替部34aも、熱膨張率の異なる2つの金属板341および342が貼り合わされた構造を有する。そして、音道切替部34aの温度を変化させることにより、音道切替部34aは、矢印Z2方向に湾曲した状態と平板の状態とに変化するように構成されている。これにより、音道切替部34aは、カバー部側音孔33、または、音道A4(図7参照)を開閉するように構成されている。
【0057】
なお、第2実施形態のその他の構成および効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0058】
(第3実施形態)
次に、図9を参照して、第3実施形態による差動マイクロホンユニット102の構成について説明する。この第3実施形態では、上記音道切替部22および34が回転することにより音孔または音道を開閉するように構成されている上記第1実施形態と異なり、音道切替部22bおよび34bがX方向にスライドすることにより音孔または音道を閉じるように構成されている例について説明する。なお、差動マイクロホンユニット102は、本発明の「マイクロホンユニット」の一例である。
【0059】
図9に示すように、第3実施形態による差動マイクロホンユニット102では、基板側空洞部18の矢印Z2方向側の内表面には、音道切替部22bが設けられている。また、カバー部側空洞部31の矢印Z2方向側の内表面には、音道切替部34bが設けられている。そして、音道切替部22bおよび音道切替部34bは、たとえば電磁的な方法によりX方向にスライドされるように構成されている。これにより、音道切替部22bは、基板側音孔20または基板側音孔21を開閉するとともに、音道切替部34bは、カバー部側音孔32またはカバー部側音孔33を開閉するように構成されている。
【0060】
なお、第3実施形態のその他の構成および効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0061】
(第4実施形態)
次に、図10および図11を参照して、第4実施形態による差動マイクロホンユニット103の構成について説明する。この第4実施形態では、上記音道切替部22および34がそれぞれ、基板10およびカバー部30内に設けられていた上記第1実施形態と異なり、音道切替部60がガスケット40の表面上に配置されている例について説明する。なお、差動マイクロホンユニット103は、本発明の「マイクロホンユニット」の一例である。
【0062】
図10に示すように、第4実施形態による差動マイクロホンユニット103では、ガスケット40の矢印Z1方向側の表面上には、音道切替部60が設けられている。音道切替部60には、音道切替部側音孔61、音道切替部側音孔62、音道切替部側音孔63および音道切替部側音孔64が設けられている。そして、音道切替部60は、電磁的な方法または手動により、X方向にスライド可能に構成されている。
【0063】
そして、図10に示すように、音源が近接している場合(接話状態)には、音道切替部60を矢印X2方向側にスライドされた状態にすることにより、音道切替部側音孔62と、ガスケット側音孔42と、カバー部側音孔33とが連結された状態となる。また、音道切替部側音孔63と、ガスケット側音孔43と、カバー部側音孔35と、基板側音孔21とが連結された状態となる。これにより、音道B1を介して、MEMSチップ12の振動部11の矢印Z2方向側の表面に音が伝達される。また、音道B2を介して、MEMSチップ12の振動部11の矢印Z1方向側の表面に音が伝達される。
【0064】
また、図11に示すように、音源が近接せずに離れている場合には、音道切替部60を矢印X1方向側にスライドされた状態にすることにより、音道切替部側音孔61と、ガスケット側音孔41と、カバー部側音孔32とが連結された状態となる。また、音道切替部側音孔64と、ガスケット側音孔44と、カバー部側音孔37とが連結された状態となる。これにより、音道B3を介して、MEMSチップ12の振動部11の矢印Z2方向側の表面に音が伝達される。また、音道B4を介して、MEMSチップ12の振動部11の矢印Z1方向側の表面に音が伝達される。
【0065】
なお、第4実施形態のその他の構成および効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0066】
(第5実施形態)
次に、図12および図13を参照して、第5実施形態による差動マイクロホンユニット104の構成について説明する。この第5実施形態では、上記単一の基板から基板10が構成される上記第1〜第4実施形態と異なり、2つの基板から基板70が構成される例について説明する。なお、差動マイクロホンユニット104は、本発明の「マイクロホンユニット」の一例である。
【0067】
図12および図13に示すように、第5実施形態による差動マイクロホンユニット104では、基板70は、凹部71が形成される基板72と、基板側音孔20および基板側音孔21が形成される基板73とによって構成されている。そして、基板72と基板73とが張り合わされる。その結果、基板72の凹部71と基板73とに囲まれた空間によって、基板側空洞74が形成される。なお、基板72および73は、本発明の「マイクロホン筐体」の一例である。また、第5実施形態のその他の構成および効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0068】
(第6実施形態)
次に、図14および図15を参照して、第6実施形態による差動マイクロホンユニット105の構成について説明する。この第6実施形態では、上記単一の基板から基板10が構成される上記第1〜第4実施形態と異なり、3つの基板から基板80が構成される例について説明する。なお、差動マイクロホンユニット105は、本発明の「マイクロホンユニット」の一例である。
【0069】
図14および図15に示すように、第6実施形態による差動マイクロホンユニット105では、基板80は、平板状の基板81と、貫通孔82が形成される基板83と、基板側音孔20および基板側音孔21が形成される基板84とによって構成されている。そして、基板81と、基板83と、基板84とが張り合わされる。その結果、基板81と基板84とによって囲まれる基板83の貫通孔82によって、基板側空洞85が形成される。なお、基板81、83および84は、本発明の「マイクロホン筐体」の一例である。なお、第6実施形態のその他の構成および効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0070】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0071】
たとえば、上記第1〜第6実施形態では、カバー部(ガスケット、ICレコーダ筐体部)に4個の音孔が設けられる例を示したが、本発明はこれに限らない。たとえば、図16および図17に示す第1変形例のように、カバー部30に3個のカバー部側音孔32、33および35を設けるとともに1つの音道切替部34を設けて、3個のカバー部側音孔のうち、距離D3(約5mm)を隔てて近接している2つのカバー部側音孔33および35から入力された音を、それぞれ振動部11の一方側と他方側とに伝達する状態と、距離D4(約50mm)を隔てて近接せずに離れている2つのカバー部側音孔32および35から入力された音を、それぞれ振動部11の一方側と他方側とに伝達する状態とに1つの音道切替部34のみを用いて音道を切り替えるようにしてもよい。また、カバー部に5個以上の音孔を設けてもよい。
【0072】
また、上記第1〜第6実施形態では、ユーザの操作によって、音道切替部が音孔または音道を開閉する例を示したが、本発明はこれに限らない。たとえば、音源の距離を検知することにより、自動的に音道切替部が音孔または音道を開閉するように構成してもよい。
【0073】
また、上記第1〜第6実施形態では、MEMSチップの振動部には、基板の表面に沿った方向と垂直な方向(Z方向)から音が伝達される例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、MEMSチップの振動部を基板の表面に沿った方向と垂直な方向(Z方向)に沿うように配置して、MEMSチップの振動部には、基板の表面に沿った方向(X方向)から音が伝達されるように構成してもよい。
【0074】
また、上記第1〜第6実施形態では、カバー部側音孔33とカバー部側音孔35との間の距離D1が約5mmであるとともに、カバー部側音孔32とカバー部側音孔37との間の距離D2が約50mmである例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、カバー部側音孔33とカバー部側音孔35との間の距離D1と、カバー部側音孔32とカバー部側音孔37との間の距離D2とは、音源と差動マイクロホンユニット100との間の距離によって、最適に定められる。
【0075】
また、上記第1〜第6実施形態では、MEMSチップと電気信号出力ICとを配線により電気的に接続する例を示したが、本発明はこれに限らない。たとえば、図18および図19に示す第2変形例のように、フリップチップにより電気的に接続してもよい。具体的には、MEMSチップ12と電気信号出力IC13とは、基板10の表面上に形成された配線90および91により電気的に接続される。また、電気信号出力IC13は、基板10の表面上に設けられた配線92、93および94により、配線16a、16bおよび16cと電気的に接続される。
【0076】
また、上記第1〜第6実施形態では、電子機器の一例として、ICレコーダに本発明を適用する例を示したが、本発明はこれに限らない。たとえば、本発明を図20に示す第3変形例のように、携帯電話201に適用してもよい。なお、図20に示す携帯電話201では、差動マイクロホンユニット100は、差動マイクロホンユニット100の長手方向がX方向に沿うように配置されている。また、本発明を、固定電話、PDA(携帯情報端末)、携帯型のゲーム機などの差動マイクロホンを有する電子機器にも適用可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 ICレコーダ筐体部(電子機器筐体)
10、72、73、81、83、84 基板(マイクロホン筐体)
11 振動部
22、22a、22b、34、34a、34b、60 音道切替部
30 カバー部(マイクロホン筐体)
32 カバー部側音孔(第4音孔)
33 カバー部側音孔(第2音孔)
35 カバー部側音孔(第1音孔)
37 カバー部側音孔(第3音孔)
51 ICレコーダ筐体音孔(第4音孔)
52 ICレコーダ筐体音孔(第2音孔)
53 ICレコーダ筐体音孔(第1音孔)
54 ICレコーダ筐体音孔(第3音孔)
100、101、102、103、104、105 差動マイクロホンユニット(マイクロホンユニット)
200 ICレコーダ(電子機器)
201 携帯電話(電子機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音圧により振動する振動部が配置され、第1の距離および前記第1の距離よりも大きい第2の距離を隔てて配置される複数の音孔が表面に設けられるマイクロホン筐体と、
前記複数の音孔のうちの前記第1の距離を隔てて配置された複数の音孔から入力された音が前記振動部の一方側と他方側とに伝達される状態と、前記第2の距離を隔てて配置された複数の音孔から入力された音が前記振動部の一方側と他方側とに伝達される状態とに音道を切り替える音道切替部とを備える、マイクロホンユニット。
【請求項2】
前記複数の音孔は、前記振動部の一方側に伝達される音が入力される第1音孔と、前記第1音孔と前記第1の距離を隔てて配置され、前記振動部の他方側に伝達される音が入力される第2音孔と、第3音孔と、前記第3音孔と前記第2の距離を隔てて配置され、前記振動部の他方側に伝達される音が入力される第4音孔とを含み、
前記音道切替部は、前記第1音孔および前記第2音孔から入力された音がそれぞれ前記振動部の一方側および他方側に伝達される状態と、前記第3音孔および前記第4音孔から入力された音がそれぞれ前記振動部の一方側および他方側に伝達される状態とに音道を切り替えるように構成されている、請求項1に記載のマイクロホンユニット。
【請求項3】
前記音道切替部は、音源と前記振動部とが近接している場合に、前記第1音孔および前記第2音孔から入力された音がそれぞれ前記振動部の一方側および他方側に伝達される状態に設定されるとともに、前記音源と前記振動部とが近接せずに離れている場合に、前記第3音孔および前記第4音孔から入力された音がそれぞれ前記振動部の一方側および他方側に伝達される状態に設定されるように構成されている、請求項2に記載のマイクロホンユニット。
【請求項4】
前記第1音孔の開口端から前記振動部の一方側まで音が伝達する第1音道の長さと、前記第2音孔の開口端から前記振動部の他方側まで音が伝達する第2音道の長さとは、略等しく、
前記第3音孔の開口端から前記振動部の一方側まで音が伝達する第3音道の長さと、前記第4音孔の開口端から前記振動部の他方側まで音が伝達する第4音道の長さとは、略等しくなるように構成されている、請求項2または3に記載のマイクロホンユニット。
【請求項5】
前記音道切替部は、前記音孔または前記音道を開閉することにより、前記第1音孔および前記第2音孔から入力された音がそれぞれ前記振動部の一方側および他方側に伝達される状態と、前記第3音孔および前記第4音孔から入力された音がそれぞれ前記振動部の一方側および他方側に伝達される状態とに音道を切り替えるように構成されている、請求項2〜4のいずれか1項に記載のマイクロホンユニット。
【請求項6】
前記第1音孔の開口端から前記振動部の一方側まで音が伝達する第1音道と、前記第3音孔の開口端から前記振動部の一方側まで音が伝達する第3音道とは、共通の部分を含み、前記音道切替部は、前記第1音道と前記第3音道とが前記共通の部分から分岐する部分に設けられるとともに、
前記第2音孔の開口端から前記振動部の他方側まで音が伝達する第2音道と、前記第4音孔の開口端から前記振動部の他方側まで音が伝達する第4音道とは、共通の部分を含み、前記音道切替部は、前記第2音道と前記第4音道とが前記共通の部分から分岐する部分に設けられており、
前記音道切替部は、前記第1音道または前記第3音道のいずれか一方を閉じるとともに、前記第2音道または前記第4音道のいずれか一方を閉じるように構成されている、請求項5に記載のマイクロホンユニット。
【請求項7】
音圧により振動する振動部が配置され、第1の距離および前記第1の距離よりも大きい第2の距離を隔てて配置される複数の音孔が表面に設けられるマイクロホン筐体と、前記複数の音孔のうちの前記第1の距離を隔てて配置された複数の音孔から入力された音が前記振動部の一方側と他方側とに伝達される状態と、前記第2の距離を隔てて配置された複数の音孔から入力された音が前記振動部の一方側と他方側とに伝達される状態とに音道を切り替える音道切替部とを含むマイクロホンユニットを備える、電子機器。
【請求項8】
電子機器筐体をさらに備え、
前記複数の音孔は、前記電子機器筐体と前記マイクロホン筐体とを貫通するように設けられており、
前記複数の音孔は、前記振動部の一方側に伝達される音が入力される第1音孔と、前記第1音孔と前記第1の距離を隔てて配置され、前記振動部の他方側に伝達される音が入力される第2音孔と、第3音孔と、前記第3音孔と前記第2の距離を隔てて配置され、前記振動部の他方側に伝達される音が入力される第4音孔とを含み、
前記音道切替部は、前記第1音孔および前記第2音孔から入力された音がそれぞれ前記振動部の一方側および他方側に伝達される状態と、前記第3音孔および前記第4音孔から入力された音がそれぞれ前記振動部の一方側および他方側に伝達される状態とに音道を切り替えるように構成されている、請求項7に記載の電子機器。
【請求項9】
ユーザの操作に基づいて、前記音道切替部は、音源と前記振動部とが近接している場合に、前記第1音孔および前記第2音孔から入力された音がそれぞれ前記振動部の一方側および他方側に伝達される状態に設定されるとともに、前記音源と前記振動部とが近接せずに離れている場合に、前記第3音孔および前記第4音孔から入力された音がそれぞれ前記振動部の一方側および他方側に伝達される状態に設定されるように構成されている、請求項8に記載の電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2011−124707(P2011−124707A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279569(P2009−279569)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】