説明

マイクロホンユニット

【課題】マイク特性の劣化を抑制しつつ薄型化が図れる高品質のマイクロホンユニットを提供する。
【解決手段】マイクロホンユニット1は、音圧によって変位する振動板122を有して音信号を電気信号に変換する電気音響変換部12と、電気音響変換部12が搭載される搭載部材11と、を備える。搭載部材11の電気音響変換部12が搭載される搭載面11aには、第1の開口21と第2の開口22とが設けられる。電気音響変換部12は、振動板122の音圧が加わる面122a、122bと搭載面11aとが略平行になると共に、第1の開口21を覆うように搭載部材に搭載される。搭載部材11には、第1の開口と21第2の開口22とを連通する内部空間23が設けられ、内部空間23には、搭載面11aに略平行な対向する2つの内壁23a、23bに挟持される支持部14が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力音を電気信号に変換して出力する機能を備えたマイクロホンユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、携帯電話やトランシーバ等の音声通信機器、又は音声認証システム等の入力された音声を解析する技術を利用した情報処理システム、或いは録音機器、といった音声入力装置にマイクロホンユニットが適用されている。
【0003】
近年においては電子機器の小型化が進んでおり、音声入力装置に適用されるマイクロホンユニットについても小型・薄型化が望まれている。また、電話などによる通話、音声認識、音声録音に際しては、目的の音声(ユーザの音声)のみを収音するのが好ましい。このため、マイクロホンユニットの性能としては、目的の音声を正確に抽出し、目的の音声以外の雑音(背景雑音等)を除去できることが望まれる。
【0004】
以上のような背景のもと、本出願人らは、振動板の両面から音圧が加わるように形成され、音圧差に基づく振動板の振動に基づいて音信号を電気信号に変換する小型なマイクロホンユニット(以下、差動型のマイクロホンユニットと表現する場合がある)の開発を進めている(例えば、特許文献1や2参照)。
【0005】
特許文献1や2に開示される差動型のマイクロホンユニットでは、マイクロホンユニットの近傍で発生して振動板の両面に入射するユーザ音声は、振動板の一方の面と他方の面とで大きな音圧差を生じて振動板を振動させる。一方、遠方から振動板の両面に入射する雑音は、ほぼ同じ音圧になるために互いに打ち消しあって振動板をほとんど振動させない。このため、振動板を振動させる音圧はユーザ音声を示す音圧であるとみなすことができ、振動板の振動に基づいて取得された電気信号は、雑音が除去された、ユーザ音声を示す電気信号であるとみなすことができる。すなわち、特許文献1や2に開示される差動型のマイクロホンユニットによれば、雑音が除去された目的の音声のみを電気信号に変換して出力することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−258904号公報
【特許文献2】特開2009−135777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、本出願人らは、特許文献1や2に示されるような差動型のマイクロホンユニットの改良を進め、例えば図8に示すような薄型化が可能なマイクロホンユニット100を開発している。図8に示すマイクロホンユニット100は、マイク基板101と、音圧によって変位する振動板103を有して音信号を電気信号に変換するMEMS(Micro Electro Mechanical System)チップ102と、を備えている。
【0008】
マイク基板101の上面101aには、第1の開口104と第2の開口105とが設けられる。第1の開口104と第2の開口105とは、マイク基板101内部に設けられる基板内部空間106によって連通している。MEMSチップ102は、第1の開口104を覆うように配置されている。
【0009】
このようにマイクロホンユニット100を構成することにより、MEMSチップ102の振動板103には、上面103a側及び下面103b側から音圧が加わり、この両面103a、103bに加わる音圧の差によって振動板103は振動する。なお、振動板103の下面103aには、音波が第2の開口105、基板内部空間106、及び第1の開口104をこの順に経て振動板103に至ることによって音圧が加わる。
【0010】
この新たに開発したマイクロホンユニット100では、振動板103とマイク基板101とが略平行になるように配置され、更に、マイク基板10に設けられる基板内部空間106を音道として利用する構成であるために、差動型のマイクロホンユニットの薄型化を図れる。しかしながら、この新たに開発したマイクロホンユニット100には、次のような問題点があることがわかった。
【0011】
すなわち、マイクロホンユニット100の薄型化の要請からマイク基板101を薄くした場合に、基板内部空間106が設けられる部分の実質的な肉厚は非常に薄くなり(例えば0.2mm厚程度)、この部分は撓みやすくなる。そして、この撓みによって基板内部空間106が狭くなることがあった。上述のように基板内部空間106は音道として利用されるものであり、基板内部空間106が狭くなると音響抵抗の増加につながり、結果としてマイク特性の劣化を引き起こす場合があった。
【0012】
また、マイク基板101上にMEMSチップ102をダイボンディングする場合や、配線形成のためにワイヤボンディングを行う場合等に、MEMSチップ102をマイク基板101に向かって押さえ付ける力が加わる。薄型のマイク基板101を用いると、このような力によって基板内部空間106が設けられる部分の撓みが起こりやすく、ダイボンディングの不良や、ワイヤの接続不良を引き起こす場合があった。また、ダイボンディングやワイヤボンディングを行うことで発生した撓みによって基板内部空間106が狭くなり、マイク特性の劣化を引き起こす場合があった。その他、マイクロホニンユニット100を音声入力装置の実装基板に実装する際にもマイク基板101に力が加わり、上記同様の基板内部空間106の狭小化が起こり、マイク特性の劣化を引き起こす場合があった。
【0013】
以上の点を鑑みて、本発明の目的は、マイク特性の劣化を抑制しつつ薄型化が図れる高品質のマイクロホンユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明のマイクロホンユニットは、音圧によって変位する振動板を有して音信号を電気信号に変換する電気音響変換部と、前記電気音響変換部が搭載される搭載部材と、を備えるマイクロホンユニットであって、前記搭載部材の前記電気音響変換部が搭載される搭載面には、第1の開口と第2の開口とが設けられ、前記電気音響変換部は、前記振動板の音圧が加わる面と前記搭載面とが略平行になると共に、前記第1の開口を覆うように前記搭載部材に搭載され、前記搭載部材には、前記第1の開口と前記第2の開口とを連通する内部空間が設けられ、前記内部空間には、前記搭載面に略平行な対向する2つの内壁に挟持される支持部が設けられていることを特徴としている。
【0015】
本構成によれば、電気音響変換部が備える振動板の両面から音圧を加えることが可能であり、差動型のマイクロホンユニットを得られる。そして、振動板の音圧が加わる面と、電気音響変換部が搭載される搭載部材(上述したマイク基板はこの搭載部材の一例である)の搭載面とが略平行であると共に、搭載部材に設けられる内部空間を音道として利用する構成であるために、差動型のマイクロホンユニットの薄型化を図れる。また、搭載部材に形成される内部空間には、電気音響変換部が搭載される搭載面に略平行な対向する2つの内壁に挟持される支持部が設けられているために、搭載部材の厚みを薄くした場合においても、搭載部材の撓みを抑制することができる。すなわち、本構成によれば、搭載部材の撓みに伴う内部空間の狭小化を抑制することが可能であり、マイク特性の劣化を抑制しつつ、マイクロホンユニットの薄型化を図れる。
【0016】
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、前記搭載面に略直交する方向に平面視して、前記支持部が前記電気音響変換部に重なるように設けられているのが好ましい。
【0017】
本構成によれば、マイクロホンユニットの製造時等に、搭載部材に力が加わり易い部分近傍に支持部を設ける構成になるために、製造時等における搭載部材の撓みによる内部空間の狭小化を抑制しやすい。
【0018】
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、前記搭載部材は、複数の部材からなることこととしてもよい。このようにすれば、内部空間を有する搭載部材を形成しやすい。この場合、例えば搭載部材を基板と樹脂とを組み合せて形成する等、複数種類の部材から搭載部材を形成してもよい。
【0019】
また、前記搭載部材は、複数の基板を貼り合わせてなることとしてもよい。そして、この構成の場合、前記支持部は、前記複数の基板のうちの一つに一体的に形成されているのが好ましい。マイクロホンユニットを薄型化する場合、搭載部材に形成される内部空間も非常に薄いものとなるために、支持部を基板とは別部材で設けるよりも、基板と一体的に支持部を設ける方が、マイクロホンユニットの製造を容易にできる。
【0020】
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、第1空間と前記第1空間とは隔離された第2空間とが設けられる蓋体を更に備え、前記蓋体は、前記第1空間が前記電気音響変換部によって前記内部空間と仕切られると共に、前記第2空間が前記第2の開口を介して前記内部空間と連通するように前記搭載部材に搭載され、前記振動板の一方の面は前記第1空間と前記蓋体に設けられる第1音孔とを介して外部に連通し、前記振動板の他方の面は、前記第1の開口、前記内部空間、前記第2の開口、前記第2空間、及び前記蓋体に設けられる第2音孔を介して外部と連通していることとしてもよい。
【0021】
本構成によれば、蓋体を有する差動型のマイクロホンユニットについても、マイク特性の劣化を抑制しつつ、薄型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、マイク特性の劣化を抑制しつつ薄型化が図れる高品質のマイクロホンユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態のマイクロホンユニットの構成を示す概略図
【図2】本実施形態のマイクロホンユニットが備える搭載部材を構成する2つの基板を上から見た場合の概略平面図
【図3】本実施形態のマイクロホンユニットが備えるMEMSチップの構成を示す概略断面図
【図4】内部空間に設けられる支持部の別形態を説明するための概略平面図
【図5】内部空間に設けられる支持部の別形態を説明するための概略平面図
【図6】搭載部材を基板と樹脂成形部材とを用いて構成する場合における、樹脂成形部材の構成例を示す図
【図7】本実施形態のマイクロホンユニットの変形例を示す図で、マイクロホンユニットが蓋体を備える場合の構成を示す図
【図8】本出願人が先に開発した差動型のマイクロホンユニットの構成を示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明が適用されたマイクロホンユニットの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
まず、本実施形態のマイクロホンユニットの構成について説明する。
【0026】
図1は、本実施形態のマイクロホンユニットの構成を示す概略図で、上段は概略断面図、下段はマイクロホンユニットを上から見た場合の概略平面図である。図1に示すように、本実施形態のマイクロホンユニット1は、搭載部材11と、振動板122を有するMEMS(Micro Electro Mechanical System)チップ12と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)13と、を備えている。なお、MEMSチップは、本発明の電気音響変換部の実施形態である。
【0027】
搭載部材11は、MEMSチップ12及びASIC13を搭載する部材である。本実施形態においては、この搭載部材11は2つの基板(部材)を貼り合わせてなり、搭載部材11は、図8に示したマイク基板101に相当するものと言える。図2は、本実施形態のマイクロホンユニットが備える搭載部材を構成する2つの基板を上から見た場合の概略平面図で、図2(a)が上側に配置される第1基板の図、図2(b)が下側に配置される第2基板の図である。
【0028】
搭載部材11を構成する第1基板111と第2基板112は、公知の基板材料からなる基板を用いて形成すればよく、その材質は特に限定されるものではない。ただし、安価に入手でき、剛性が大きいものが好ましく、例えば、FR−4やBTレジン(登録商標)等を用いるのが好ましい。また、第1基板111と第2基板112とは、異なる材料からなる基板でも構わないが、線膨張係数の等しい同一材料からなる基板とするのが好ましい。
【0029】
搭載部材11を構成する第1基板111には、図2(a)に示すように、第1貫通孔111aと第2貫通孔111bとの2つの貫通孔が形成されている。本実施形態のマイクロホンユニット1では、貫通孔111aは平面視略円形状、貫通孔111bは平面視略矩形状となっているが、これらの形状に限定される趣旨ではなく、必要に応じてこれらの形状を変更して構わない。
【0030】
搭載部材11を構成する第2基板112には、図2(b)に示すように、平面視略矩形状の溝112aが形成されている。この溝112aは、第1基板111と第2基板112とを貼り合わせた場合に、第1貫通孔111a及び第2貫通孔111bと重なるような位置に設けられている。
【0031】
また、第2基板112に形成される溝112a内には、溝112aの深さとほぼ同一の高さを有する2つの支持部14が設けられている。これら2つの支持部14は、いずれも溝112aの側壁に対して突出するように設けられている。また、2つの支持部14は、幅方向Wに沿って対向するように設けられている。
【0032】
なお、本実施形態においては、この支持部14は、第2基板112と一体的に形成されている。例えば、第2基板112の図2(b)における斜線部を、所定の深さまでルータによって削り取ることによって、溝112aと支持部14(2つある)を形成することができる。ただし、支持部14は、搭載部材11を構成する基板とは別部材としてもよく、例えばエポキシ樹脂等を溝112aの底面に接着する等して形成しても構わない。
【0033】
第1基板111と第2基板112とは、例えばエポキシ樹脂接着剤、エポキシ樹脂接着シート等により貼り合わされる。そして、これにより、図1に示すように、搭載面11aに第1の開口21及び第2の開口22が設けられると共に、第1の開口21と第2の開口22とを連通する内部空間(基板内部空間)23が設けられる搭載部材11が得られる。
【0034】
また、第1基板111と第2基板112とを貼り合わせた場合、2つの支持部14は、第1基板111の下面と当接するようになっている。換言すると、マイクロホンユニット1においては、2つの支持部14は、搭載部材11の内部空間23の上壁23a及び下壁23b(搭載面11aに略平行な対向する2つの内壁)に挟持されるように設けられている。
【0035】
なお、本実施形態のマイクロホンユニット1においては、搭載面11aに略直交する方向に平面視して、2つの貫通孔111a、111bの全体が溝112aに重なるように第1基板111と第2基板112とは構成されている。また、搭載面11aに略直交する方向に平面視して、支持部14は、MEMSチップ12に重なるように設けられている。
【0036】
また、図示しないが、第1基板111と第2基板112とには、マイクロホンユニット1の機能(入力音を電気信号に変換して出力する機能)を発揮するために必要な各種の配線が形成されている。搭載部材11の下面11a(より詳細には第2基板112の下面)には、これらの配線と電気的に接続される電極15が設けられている。この電極15は、マイクロホンユニット1を音声入力装置(例えば携帯電話等)の実装基板に表面実装する際に使用され、これにより、マイクロホンユニット1への電源電力の供給や、マイクロホンユニット1から音声入力装置への信号の出力が可能になる。
【0037】
図3は、本実施形態のマイクロホンユニットが備えるMEMSチップの構成を示す概略断面図である。図3に示すように、シリコンチップからなるMEMSチップ12は、絶縁性のベース基板121と、振動板122と、絶縁層123と、固定電極124と、を有し、コンデンサ型のマイクロホンを構成している。
【0038】
ベース基板121には平面視略円形状の開口121aが形成されている。ベース基板121の上に設けられる振動板122は、音圧を受けて振動(上下方向に振動)する薄膜で、導電性を有して電極の一端を形成している。固定電極124は、絶縁層123を挟んで振動板122と対向するように配置されている。これにより、振動板122と固定電極124との間で容量が形成される。なお、固定電極124には音波が通過できるように複数の音孔124aが形成されている。
【0039】
MEMSチップ12は、振動板122の上面122a及び下面122bから音圧が加わるように構成されている。このため、振動板122は、上面122aから加わる音圧pfと、下面122bから加わる音圧pbとの差に応じて振動する。振動板123が振動すると、振動板122と固定電極124との間隔Gpが変化して、振動板122と固定電極124との間の静電容量が変化する。この結果、MEMSチップ12に入射した音波(音信号)を電気信号として取り出せる。
【0040】
なお、電気音響変換部としてのMEMSチップの構成は、本実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、本実施形態では振動板122の方が固定電極124よりも下となっているが、これとは逆の関係(振動板が上で、固定電極が下となる関係)となるように構成しても構わない。
【0041】
マイクロホンユニット1においては、MEMSチップ12は、振動板122の上面122a及び下面122bが搭載部材11の搭載面11aにほぼ平行となると共に、第1の開口21を覆うように、搭載部材11に搭載されている(図1参照)。なお、MEMSチップ12は、本実施形態においてはワイヤボンディング実装されている。詳細には、MEMSチップ12は、ダイボンド材(例えばエポキシ樹脂系やシリコーン樹脂系の接着剤等)16によって、搭載部材11の搭載面11aと対向する底面が接合されている。このように接合することにより、搭載部材11の搭載面11aとMEMSチップ12の下面との間にできる隙間から音が漏れ込むということが発生しないようになっている。また、MEMSチップ12はワイヤ17によってASIC13に電気的に接続されている。
【0042】
搭載部材11の搭載面11aに搭載されるASIC13は、MEMSチップ12の静電容量の変化に基づいて取り出される電気信号を増幅処理する集積回路である。この信号処理部として機能するASIC13は、MEMSチップ12における静電容量の変化を精密に取得できるようにチャージポンプ回路とオペアンプとを含む構成としても良い。
【0043】
なお、ASIC13はダイボンディング材18によって、搭載部材11の搭載面11aと対向する底面が接合されている。ASIC13で増幅処理された電気信号は、ワイヤ19によって搭載部材11の搭載面11aに形成される電極に電気的に接続されている。そして、ASIC13で増幅処理された電気信号は、搭載部材11を構成する第1基板111及び第2基板112に形成される配線(貫通配線含む)によってマイクロホンユニット1の外部へと出力できるようになっている。
【0044】
以上では、MEMSチップ12及びASIC13がワイヤボンディング実装される構成としたが、MEMS12及びASIC13はフリップチップ実装しても勿論構わない。フリップチップ実装する場合、MEMSチップ12は、例えば、搭載面11aの第1の開口21を囲むように形成される額縁状の接続パッド(図示せず)に、その下面(MEMSチップ12の下面)が例えば半田等によって接合される。これにより、搭載部材11の搭載面11aとMEMSチップ12の下面との間にできる隙間から音が漏れ込むということが発生しないようにされる。また、MEMSチップ12とASIC13とは、搭載部材11の内部に形成される配線によって電気的に接続される。
【0045】
次に、以上のように構成されるマイクロホンユニット1の作用効果について説明する。
【0046】
マイクロホンユニット1においては、振動板122の上面122aには、MEMSチップ12の上側から固定電極124の音孔124aを通過した音波が音圧として加わる。一方、振動板122の下面122bには、第2の開口22から入力されて、内部空間23、第1の開口21の順に通過した音波が音圧として加わる。
【0047】
音波の音圧(音波の振幅)は、音源からの距離に反比例する。そして、音圧は、音源に近い位置では急激に減衰し、音源から離れる程、なだらかに減衰する。このため、本実施形態のような構成の場合、マイクロホンユニット1の近傍で発生して振動板122の両面122a、122bに入射するユーザ音声は、振動板122の上面122aと下面122bとで大きな音圧差を生じて振動板を振動させる。一方、遠方から振動板122の両面122a、122bに入射する雑音は、ほぼ同じ音圧になるために互いに打ち消しあって振動板をほとんど振動させない。
【0048】
このため、振動板122を振動させる音圧はユーザ音声を示す音圧であるとみなすことができ、振動板122の振動に基づいて取得された電気信号は、雑音が除去された、ユーザ音声を示す電気信号であるとみなすことができる。すなわち、本実施形態のマイクロホンユニット1は、雑音が除去された目的の音声のみを電気信号に変換して出力することができ、高品質のマイクロホンユニットといえる。
【0049】
また、本実施形態のマイクロホンユニット1は、振動板122の音圧が加わる面122a、122bと、MEMSチップ12が搭載される搭載面11aとが略平行であると共に、搭載部材11に設けられる内部空間23を音道として利用する構成となっている。このために、音声入力装置(例えば携帯電話等)の実装基板に表面実装するマイクロホンユニットの薄型化を図れる。
【0050】
更に、本実施形態のマイクロホンユニット1においては、上述の音道として使用される内部空間23に、内部空間23の上壁23a及び下壁23bに挟持される支持部14が設けられている。このために、搭載部材11を構成する第1基板111が薄い(例えば0.2mm程度等)場合でも、支持部14によって第1基板111の撓みを抑制することができる。
【0051】
マイクロホンユニット1の製造時において、例えばMEMSチップ12を搭載部材11に搭載する場合や、ワイヤボディングを行う際等に、MEMSチップ12から搭載部材11に大きな力が加わる場合がある。本実施形態のマイクロホンユニット1では、このような力が加わっても、支持部14によって第1基板111の撓みを抑制できる。
【0052】
すなわち、本実施形態のマイクロホンユニット1によれば、搭載部材11に形成される内部空間23が搭載部材11の一部で発生する撓みによって狭くなることを抑制でき、ダイボンディングやワイヤボンディングの不良を抑制できる。したがって、本実施形態のマイクロホンユニット1によれば、マイク特性の劣化を抑制しつつ、マイクロホンユニットの薄型化を図れる。
【0053】
以上に示したマイクロホンユニット1は本発明の実施形態の一例を示したものであり、本発明の適用範囲は、以上に示した実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の目的を逸脱しない範囲で、以上に示した実施形態について種々の変更を行っても構わない。
【0054】
例えば、以上に示した実施形態では、搭載部材11に形成される内部空間23に2つの支持部14を設ける構成としたが、支持部14の数、形状、及び配置の仕方は、本実施形態の構成に限定されず、適宜変更して構わない。支持部14は搭載部材11の変形によって内部空間23が狭くなることを抑制するように配置されればよい。すなわち、例えば、図4に示すように支持部14を4箇所に配置しても構わない。なお、図4は、内部空間に設けられる支持部の別形態を説明するための概略平面図で、図1の下段の図と同様の図である。
【0055】
また、以上に示した実施形態とは異なり、例えば図5(a)に示すように、支持部14を溝112aの幅方向Wに対向する2つの側壁から離れた位置に形成する構成にしても構わない。図5(a)では、溝112aに、幅方向Wに3つずつ並んだ平面視略矩形状の支持部14を2列設けた構成となっている。また、例えば図5(b)に示すように、支持部14のサイズを以上に示した実施形態の場合より大きくして、溝112aの幅が、MEMSチップ12の下部に相当する部分では狭くなり、第2の開口22の下部に相当する部分では広くなるように支持部14を設けても構わない。この構成によれば、MEMSチップ12下部から第2の開口22の下部に至る音道の断面積をできるだけ広く確保しつつ、次のような効果の期待度を高められる。すなわち、MEMSチップ12を搭載部材11上にダイボンディングする時、或いは、ワイヤボンディングを行う時に、MEMSチップ12が下方に押さえ付けられて、搭載部材11のMEMSチップ12直下部分が撓み、それによりダイボンディング不良、或いは、ワイヤボンディング不良が発生するといった事態を効果的に防止できる。また、搭載部材11のMEMSチップ12直下部分が撓むことにより、内部空間23が圧縮されて狭くなり、音響抵抗が増大してマイクロホンユニット1のマイク特性が劣化するといった事態を効果的に防止できる。
【0056】
また、以上に示した実施形態では、MEMSチップ12が搭載される搭載部材11が、2つの基板111、112を貼り合わせてなる構成とした。しかし、搭載部材の構成は、この構成に限定される趣旨ではない。例えば、搭載部材を3つ以上の基板で形成しても構わないし、場合によっては搭載部材を1つの基板で形成しても構わない。また、搭載部材を例えば基板と樹脂成形部材との組み合わせというように、性質の異なる部材を複数組み合せて構成しても構わない。
【0057】
図6は、搭載部材を基板と樹脂成形部材とを用いて構成する場合における、樹脂成形部材の構成例を示す図で、図6(a)は樹脂成形部材を上から見た場合の概略平面図、図6(b)は図6(a)のA−A位置における概略断面図である。なお、この場合において、搭載部材を構成する基板は、上述した実施形態における第1基板111と同様の構成である。
【0058】
搭載部材を構成する樹脂成形部材113は、収容凹部113aを有する箱形状に形成される。そして、搭載部材は、この収容凹部113aに第1基板111(図2(a)参照)を嵌め込むことによってなる。樹脂成形部材113の収容凹部113aの底面には、平面視略矩形状の溝113bが形成されている。これにより、第1基板111と第2基板112とを貼り合わせた場合と同様に、樹脂形成部材113に第1基板111を嵌め込むことによって、第1の開口と第2の開口とを連通する内部空間が得られる。
【0059】
また、樹脂形成部材113の溝113b内には、樹脂形成部材113と一体成形、或いは、別部材を接着してなる支持部14が形成されており、これにより、以上に示した実施形態同様の効果が得られる。また、図示しないが、樹脂成形部材113には、例えばインサート成型によって、実装基板の接続端子に接続される電極が形成される。
【0060】
なお、樹脂成形部材113を構成する材料は特に限定されるものではないが、例えばLCP(Liquid Crystal Polymer;液晶ポリマ)やPPS(polyphenylene sulfide;ポリフェニレンスルファイド)等の樹脂が用いられる。
【0061】
また、以上に示した実施形態では、マイクロホンユニットが蓋体を備えない構成としたが、勿論、マイクロホンユニットが蓋体を備える場合にも、本発明は適用可能である。図7は、本実施形態のマイクロホンユニットの変形例を示す図で、マイクロホンユニットが蓋体を備える場合の構成を示す図である。図7に示すマイクロホンユニット2は、蓋体30を備える点を除いて、図1に示すマイクロホンユニット1と同様である。このため、図1の構成と重複する部分には同一の符号を付している。
【0062】
蓋体30は、外形が略直方体形状に設けられ、第1空間301と、第1空間301とは隔離された第2空間302と、を有する。この蓋体30は、第1空間301がMEMSチップ12によって内部空間23(搭載部材11に形成される空間である)と仕切られるように、搭載部材11に搭載されている。また、蓋体30は、第2空間302が第2の開口22を介して内部空間23と連通するように搭載部材11に搭載されている。
【0063】
振動板122の上面122aは、第1空間301と蓋体30に設けられる第1音孔31によって外部と連通している。また、振動板122の下面122bは、第1の開口21、内部空間23、第2の開口22、第2空間302、及び蓋体30に設けられる第2音孔32によって外部と連通している。すなわち、マイクロホンユニット2は、外部音を振動板122の上面122aへと導く音道と、外部音を振動板122の下面122bへと導く音道とを有する構成となっており、図6に示すマイクロホンユニット2も、図1に示すマイクロホンユニット1と同様に、差動型のマイクロホンユニットとなっている。
【0064】
また、以上に示した実施形態では、MEMSチップ12とASIC13とは別チップで構成したが、ASIC13に搭載される集積回路はMEMSチップ12を形成するシリコン基板上にモノリシックで形成するものであっても構わない。
【0065】
また、以上に示した実施形態では、音圧を電気信号に変換する電気音響変換部が、半導体製造技術を利用して形成されるMEMSチップ12である構成としたが、この構成に限定される趣旨ではない。例えば、電気音響変換部はエレクトレック膜を使用したコンデンサマイクロホン等であっても構わない。
【0066】
また、以上の実施形態では、マイクロホンユニットが備える電気音響変換部(本実施形態のMEMSチップ12が該当)の構成として、いわゆるコンデンサ型マイクロホンを採用した。しかし、本発明はコンデンサ型マイクロホン以外の構成を採用したマイクロホンユニットにも適用できる。例えば、動電型(ダイナミック型)、電磁型(マグネティック型)、圧電型等のマイクロホン等が採用されたマイクロホンユニットにも本発明は適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のマイクロホンユニットは、例えば携帯電話、トランシーバ等の音声通信機器や、入力された音声を解析する技術を採用した音声処理システム(音声認証システム、音声認識システム、コマンド生成システム、電子辞書、翻訳機、音声入力方式のリモートコントローラ等)、或いは録音機器やアンプシステム(拡声器)、マイクシステムなどに好適である。
【符号の説明】
【0068】
1、2 マイクロホンユニット
11 搭載部材
11a 搭載面
12 MEMSチップ(電気音響変換部)
14 支持部
21 第1の開口
22 第2の開口
23 内部空間
23a 上壁(内部空間の内壁)
23b 下壁(内部空間の内壁)
30 蓋体
31 第1音孔
32 第2音孔
111 第1基板(搭載部材の一部)
112 第2基板(搭載部材の一部)
113 樹脂成形部材(搭載部材の一部)
122 振動板
122a 振動板の上面(振動板の一方の面)
122b 振動板の下面(振動板の他方の面)
301 第1空間
302 第2空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音圧によって変位する振動板を有して音信号を電気信号に変換する電気音響変換部と、
前記電気音響変換部が搭載される搭載部材と、
を備えるマイクロホンユニットであって、
前記搭載部材の前記電気音響変換部が搭載される搭載面には、第1の開口と第2の開口とが設けられ、
前記電気音響変換部は、前記振動板の音圧が加わる面と前記搭載面とが略平行になると共に、前記第1の開口を覆うように前記搭載部材に搭載され、
前記搭載部材には、前記第1の開口と前記第2の開口とを連通する内部空間が設けられ、
前記内部空間には、前記搭載面に略平行な対向する2つの内壁に挟持される支持部が設けられていることを特徴とするマイクロホンユニット。
【請求項2】
前記搭載面に略直交する方向に平面視して、前記支持部が前記電気音響変換部に重なるように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロホンユニット。
【請求項3】
前記搭載部材は、複数の部材からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロホンユニット。
【請求項4】
前記搭載部材は、複数の基板を貼り合わせてなることを特徴とする請求項3に記載のマイクロホンユニット。
【請求項5】
前記支持部は、前記複数の基板のうちの一つに一体的に形成されていることを特徴とする請求項4に記載のマイクロホンユニット。
【請求項6】
第1空間と前記第1空間とは隔離された第2空間とが設けられる蓋体を更に備え、
前記蓋体は、前記第1空間が前記電気音響変換部によって前記内部空間と仕切られると共に、前記第2空間が前記第2の開口を介して前記内部空間と連通するように前記搭載部材に搭載され、
前記振動板の一方の面は前記第1空間と前記蓋体に設けられる第1音孔とを介して外部に連通し、
前記振動板の他方の面は、前記第1の開口、前記内部空間、前記第2の開口、前記第2空間、及び前記蓋体に設けられる第2音孔を介して外部と連通していることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のマイクロホンユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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