説明

マイクロポンプ

【課題】 構造が簡単ながら省エネが達成されると同時に、作動流体の微細な流量制御の可能なマイクロポンプを提供する。
【解決手段】 駆動流体の流入通路と流出通路とが備えられたポンプチャンバ100と、前記流入通路を選択的に開閉させる第1バルブ120と、前記流出通路を選択的に開閉させる第2バルブ140と、前記ポンプチャンバを加熱あるいは冷却させるためのポンプチャンバ冷温ユニット160とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型流体システムに関し、詳細には小型流体システムに適用されることのできるマイクロポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、マイクロンマシニング技術の飛躍的な発展は様々な機能を行うマイクロ電子機械システム(Micro Electro Mechanical System:MEMS)の開発を可能にした。係るマイクロ電子機械システムは、遺伝工学、医療診断、新薬開発などの分野で幅広く適用・使用されている。特に、通常化学反応及び分析など、必要とされる全ての工程が1つのチップ上で行われる、いわゆるLOC(Lab On a Chip)概念が導入されてマイクロ電子機械システムに対する研究がより盛んになっている。
【0003】
係るチップあるいは小型流体システムを駆動させるためには試料または試薬などの流体をマイクロリットル単位に流動させなければならない。したがって、流体を流動するための駆動源が必要になる。その駆動源の一例としてマイクロポンプが挙げられる。
前記マイクロポンプは、チャンバを加熱しチャンバ内に充電された流体にバブルを発生させ、発生されたバブルの圧力により作動流体を流動させるバブルポンプ(Bubble Pump)と、静電力を用いてチャンバを収縮及び圧縮することにより作動流体を流動させるメンブレインポンプ(Membrane Pump)と、外周に複数のブレードを備えた回転子を回転させ流体を流入及び流出させるロタリーポンプ(Rotary Pump)などがある。
【0004】
バブルポンプの場合、その構造が複雑で作動流体を流動させるための駆動流体を加熱するために長時間かかる短所がある。また、前記メンブレインポンプもその構造が複雑で静電力を発生させるためには多くのエネルギーが要される短所を持っている。そして、ロタリーポンプは、その構造が複雑だけでなく組立が困難であり、かつ信頼性が低い短所を持つ。一方、前述したポンプは作動流体の微細流動量を調節し難い短所を持っている。
【特許文献1】特開平16−036471号公報
【特許文献2】特開平15−211701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前述した問題点を解決するために案出されたもので、本発明の目的は、構造の簡単なマイクロポンプを提供することにある。
本発明の他の目的は、省エネが図れるマイクロポンプを提供することにある。
さらに、本発明の更なる目的は、作動流体の微細流量制御が可能なマイクロポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明1は、下記の構成要素を有するマイクロポンプを提供する。
・駆動流体の流入通路と流出通路とが備えられたポンプチャンバ、
・前記流入通路を選択的に開閉させる第1バルブ、
・前記流出通路を選択的に開閉させる第2バルブ、
・前記ポンプチャンバを加熱あるいは冷却させるためのポンプチャンバ冷温ユニット。
【0007】
本発明2は、前記発明1において、前記ポンプチャンバ冷温ユニットが、下記の構成要素を有するマイクロポンプを提供する。
・前記ポンプチャンバに固定され、電流の供給方向に応じて選択的に一面が加熱され他面が冷却されるポンプチャンバ用熱電素子、
・前記ポンプチャンバ用熱電素子に電源を印加するためのポンプチャンバ用電源。
【0008】
本発明3は、前記発明1において、前記第1バルブ及び前記第2バルブは、流体が一方向にのみ流れることを許容するパッシブバルブであるマイクロポンプを提供する。
本発明4は、前記発明1において、前記第1バルブが下記の構成要件を有するマイクロポンプを提供する。
・収縮及び膨張することにより前記流入通路を開閉する第1バルブチャンバ、
・前記第1バルブチャンバに固定され、前記第1バルブチャンバを収縮または膨張させる第1バルブチャンバ用熱電素子。
【0009】
本発明5は、前記発明4において、前記第1バルブチャンバの前記流入通路と向かい合う面は、伸縮可能な薄膜を用いて形成されているマイクロポンプを提供する。
本発明6は、前記発明5において、前記第2バルブが下記の構成要件を含むマイクロポンプを提供する。
・収縮及び膨張することにより前記流出通路を開閉する第2バルブチャンバ、
・前記第2バルブチャンバに固定され、前記第2バルブチャンバを収縮または膨張させる第2バルブチャンバ用熱電素子。
【0010】
本発明7は、前記発明6において、前記第2バルブチャンバの前記流入通路と向かい合う面は、伸縮可能な薄膜を用いて形成されているマイクロポンプを提供する。
本発明8は、下記の構成要件を有するマイクロポンプを提供する。
・前記第1バルブチャンバ及び前記第2バルブチャンバそれぞれの物理的な情報を検知する第1バルブセンサ及び第2バルブセンサ、
・前記第1バルブチャンバ用熱素子及び前記第2バルブチャンバ用熱素子それぞれに電流を供給するための第1バルブ用電源及び第2バルブ用電源、
・前記第1バルブ用電源及び第2バルブ用電源と通信可能に接続され、前記第1バルブセンサ及び前記第2バルブセンサにより検知された物理的な情報に基づいて前記第1バルブ用電源及び前記第2バルブ用電源を制御する制御部。
【0011】
本発明9は、前記発明8において、前記ポンプチャンバの物理的な情報を検知するためのポンプチャンバ用センサを更に含むマイクロポンプを提供する。このマイクロポンプにおいて、前記制御部は、前記ポンプチャンバ用センサにより検知された物理的な情報にさらに基づいて、前記第1バルブ用電源及び前記第2バルブ用電源を制御する。
本発明10は、以下の構成要件を有するマイクロポンプを提供する。
・ポンプチャンバ用垂直型熱電素子が取り付けられ、駆動流体の流入通路及び流出通路が備えられたポンプチャンバ、
・第1バルブ用垂直型熱電素子が取り付けられ、前記熱電素子により収縮及び膨張することにより前記流入通路を選択的に開閉する第1バルブチャンバ、
・第2バルブ用垂直型熱電素子が取り付けられ、前記熱電素子により収縮及び膨張することにより前記流出通路を選択的に開閉させる第2バルブチャンバ。
【0012】
本発明11は、前記発明10において、以下の構成要件をさらに有するマイクロポンプを提供する。
・前記各熱電素子に電流を供給する複数の電源、
・前記各チャンバの物理的な情報を検知する複数のセンサ、
・前記センサから検知された物理的な情報に基づいて前記電源を制御する制御部。
【0013】
本発明12は、前記発明11において、前記物理的な情報が、各チャンバの温度、圧力、及び電源供給時間のうち、少なくとも1つから選択された情報であるマイクロポンプを提供する。
本発明13は、以下の構成要件を有するマイクロポンプを提供する。
・駆動流体の流入通路及び流出通路が備えられたポンプチャンバ、
・垂直型熱電素子が取り付けられ、該垂直型熱電素子により選択的に収縮及び膨張することにより前記流入通路を開閉する第1バルブチャンバ、
・収縮及び膨張することにより前記流出通路を開閉させる第2バルブチャンバ、
・前記ポンプチャンバと前記第2バルブチャンバとを選択的に加熱または冷却させるための水平型熱電素子。
【0014】
本発明14は、前記発明13において、前記水平型熱電素子が以下の構成要件を有するマイクロポンプを提供する。
・前記ポンプチャンバに取り付けられる第1プレート、
・前記第2バルブチャンバに取り付けられる第2プレート、
・前記第1プレートと前記第2プレートとの間に配置され、互いに電気的に接続された複数の半導体。
【0015】
本発明15は、前記発明13,14において、前記第1バルブチャンバの前記流入通路と向かい合う面は、伸縮可能な薄膜を用いて形成されているマイクロポンプを提供する。
本発明16は、前記発明13,14において、前記第2バルブチャンバの前記流出通路と向かい合う面は、伸縮可能な薄膜を用いて形成されているマイクロポンプを提供する。
本発明17は、以下の構成要件を有するマイクロポンプを提供する。
・流入通路と流出通路とを備えるポンプチャンバ、
・前記流入通路を選択的に開閉する第1バルブチャンバ、
・前記流出通路を選択的に開閉する第2バルブチャンバ、
・前記ポンプチャンバと、前記第1バルブチャンバと、第2バルブチャンバと、を加熱または冷却させるための水平型熱電素子。
【0016】
本発明18は、前記発明17において、前記水平型熱電素子が以下の構成要件を有するマイクロポンプを提供する。
・前記ポンプチャンバと前記第1バルブに取り付けられる第1プレート、
・前記第2バルブチャンバに取り付けられる第2プレート、
・前記第1プレートと前記第2プレートとの間に配置され、互いに電気的に接続された複数の半導体。
【0017】
本発明19は、前記発明18において、前記第1バルブチャンバの前記流入通路と向かい合う面及び前記第2バルブチャンバの前記流出通路と向かい合う面は、それぞれ伸縮可能な薄膜を用いて形成されているマイクロポンプを提供する。
【発明の効果】
【0018】
以上、本発明によると、繰り返しポンピング作業を行ってもマイクロポンプの構造を簡単にすることができる。簡単な構造を有することで超小型流体システムの適用が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付の図面に基づいて本発明の好適な実施形態を詳述する。
<第1実施形態>
図1ないし図2bに示したように、本発明の第1の実施形態に係るマイクロポンプは、駆動流体が流入される流入通路102と流入された駆動流体が流出される流出通路104が形成されたポンプチャンバ100と、流入通路102を選択的に開閉させる第1バルブ120と、流出通路104を選択的に開閉させる第2バルブ140と、ポンプチャンバ100を加熱あるいは冷却させるための冷温ユニット160と、制御部180を含む。
【0020】
ポンプチャンバ100は伸縮されない隔壁から形成された空間であって、作動流体を駆動させるための駆動流体が充電される。係る駆動流体は温度により体積変化の大きい空気のような気体が使用されることが好ましいが、バブルを発生させ作動流体(R)と溶解されない液体が使用されることもできる。本実施の形態では、駆動流体として空気を使用して説明する。このようなポンプチャンバ100の図面の左側には、空気が流入される流入通路102が形成され、該流入通路102は大気中に露出された状態で大気圧が維持される。しかし、流入通路102は駆動流体として空気でない別の気体あるいは液体が使用されれば、駆動流体を格納している格納部(図示せず)と連結される。そして、図面の右側にはバイオチップなどに分析される試料または該試料を分析するための試薬のような作動流体(R)が充電された流出通路104が形成されている。
【0021】
第1バルブ120は、本実施形態ではパッシブバルブ(passive valve)を使用した。したがって、大気圧がポンプチャンバ100の圧力より大きい場合のみ流入通路102を開放させる。
前記第2バルブ140も第1バルブ120と同様にパッシブバルブを使用してポンプチャンバ100の圧力が流出通路104の圧力より大きい場合のみ開放される。
【0022】
冷温ユニット160は、熱電素子162と該熱電素子162に電流を供給するための電源177を含む。
熱電素子162はポンプチャンバ100の下面に接着材などの固定手段により固定され、垂直型熱電素として、ポンプハンバー100の下面と接触する第1プレート164と、該第1プレート164と向かい合う第2プレート168と、第1及び第2プレート164、168の間に介在される半導体層166を含んでなる。半導体層166には電源177が連結されて電流が供給され、供給された電流の方向により第1及び第2プレート164,168を選択的に加熱または冷却させる。言わば、熱電素子162の ペルティエ効果(Peltier effect)が発生する。例えば、半導体層166に電源が印加されれば、第1プレート164を冷却させ、第1プレート164から吸収した熱を第2プレート168に伝達して第2プレート168を加熱させる。そして電源177の電流方向を反対にする場合、前述と反対に加熱及び冷却される。係る熱電素子162は既に公知された技術であってその説明は除く。
【0023】
制御部180は、電源177と信号可能に接続され、熱電素子162に供給される電流の方向を制御する。
以下、図3a及び図3bに基づいて本発明の第1の実施形態に係るマイクロポンプの動作について説明する。
図3aに基づくと、制御部180は電源177を制御し熱電素子162に電流を供給する。すると、ポンプチャンバ100は冷却(C)され、ポンプチャンバ100に存在する空気は凝縮されてポンプチャンバ100の圧力が流入通路102の大気圧より低くなる。したがって、第1バルブ120は開放され大気中の空気はポンプチャンバ100に流入される。
【0024】
図3bに示したように、制御部180は熱電素子162に供給される電流の方向を変える。すると、ポンプチャンバ100は加熱(H)され、ポンプチャンバ100の空気が膨張されてポンプチャンバ100の圧力が上昇される。ポンプチャンバ100の圧力が上昇し大気圧より大きくなると、第1バルブ120は流入通路102を遮断する。そして、ポンプチャンバ100の圧力が流出通路104の圧力より高くなると、第2バルブ140が開放される。すると、ポンプチャンバ100に存在する空気は流出通路104に移動しつつ作動流体(R)を流動させる。
【0025】
前述した過程を繰り返し行うことにより作動流体を必要な量だけ所要される場所に流動させることができる。
<第2実施形態>
以下、図4ないし図6bに基づいて本発明の第2の実施形態に係るマイクロポンプを詳説する。
【0026】
図4及び図5に示したように、本発明の第2の実施形態に係るマイクロポンプは、第1の実施形態と相違に、第1バルブ220、第2バルブ240をそれぞれ制御することのできる構造である。係るマイクロポンプは、流入通路202と流出通路204が形成されたポンプチャンバ200と、流入通路202を選択的に開閉させる第1バルブ220と、流出通路204を選択的に開閉させる第2バルブ240と、ポンプチャンバ200を加熱または冷却させるためのポンプチャンバ用冷温ユニット260、及び制御部280を含む。
【0027】
ポンプチャンバ200の上部両側のそれぞれには第1バルブ220及び第2バルブ240が固定され支持される支持部210がそれぞれ2つずつ上向き突設されている。そして、支持部210と段付けるよう第1及び第2チャネル206、208が形成され、該第1及び第2チャネル206、208のそれぞれに流入通路202及び流出通路204がポンプチャンバ200と連通して形成されている。第1チャネル206は駆動流体である空気が流動される通路であって、大気中の空気が吸入できるよう外部大気に開放されている。そして、第2チャネル208は作動流体が流動されるチャネルであって、作動流体が所要される場所と連結されている。そして、ポンプチャンバ200にはポンプチャンバ200の物理的な情報を検知するためのポンプチャンバ用センサ214が設けられる。前記物理的な情報は、ポンプチャンバ200の温度、圧力、電流供給時間などである。
【0028】
第1バルブ220は、第1バルブチャンバ222と、該第1バルブチャンバ222を加熱または冷却するための第1バルブ冷温ユニット226と、第1バルブチャンバ222の物理的な情報を検知するための第1バルブセンサ232を含んでなる。
第1バルブチャンバ222は支持部210に接着材などの固定手段により固定される。そして第1バルブチャンバ222の下面は伸縮可能な薄膜224からなり、第1バルブチャンバ222の圧力により収縮及び膨張する。係る薄膜224の収縮及び膨張により流入通路202が選択的に開放あるいは遮断される。
【0029】
第1バルブ冷温ユニット226は、垂直型熱電素子228、該垂直型熱電素子228に電流を共供するための電源230を含む。熱電素子228は第1バルブチャンバ222を冷却あるいは加熱することができるよう、その上面に接着材などの固定手段により取り付けられる。
第1バルブセンサ232は、第1バルブチャンバ222内に設けられ、第1バルブチャンバ222の物理的な情報を検知する。
【0030】
第2バルブ240は、第1バルブ220とその構成及び動作原理が同一である。即ち、第2バルブ240は第1バルブ220と同様に、第2バルブチャンバ242、第2バルブ冷温ユニット246、第2バルブセンサ252を含んでなり、第2バルブ冷温ユニット246は垂直型熱電素子248、電源250を含んでなる。
ポンプチャンバ用冷温ユニット260は、ポンプチャンバ200の下面に固定される熱電素子262と、該熱電素子262に電源を供給するための電源270を含む。
【0031】
制御部280は、それぞれの電源230、250、270及び各センサ214、232、252と信号通信が可能に接続されており、該センサ214、232、252により検知された物理的な情報に基づいて電源230、250、270の電源のON/OFF及びそれぞれの熱電素子228、248、262に供給される電流の方向を制御する。電流の制御に用いられる物理的な情報は、各チャンバの温度、圧力、及び電源供給時間のうち、少なくとも1つから選択された情報であることができる。
【0032】
以下、図6a及び図6bに基づいて本発明の第2の実施形態に係るマイクロポンプの動作について説明する。
図6aに示したように、制御部280は各電源230、250、270を制御し各熱電素子228、248、262に電流を供給する。各熱電素子228、248、262に電流を供給することによって、ポンプチャンバ200及び第1バルブチャンバ222は冷却(C)され、第2バルブチャンバ242は加熱(H)される。第1バルブチャンバ222は冷却(C)された状態なのでその下面の薄膜224は収縮しており、流出通路204が開放される。そして、第2バルブチャンバ242が加熱(H)されると、第2バルブチャンバ242に充電された空気は膨張され下面の薄膜244も膨張される。これにより流出通路204が遮断される。従って、流入通路202は遮断された状態になり流出通路204は遮断される。そして、ポンプチャンバ200が冷却(C)されることによりポンプチャンバ200の空気は凝縮され、これによりポンプチャンバ200の圧力は大気圧より低くなる。係る圧力差により大気中の空気は第1チャネル206と開放された流入通路202を順次通過しポンプチャンバ200に流入される。
【0033】
図6bに示したように、制御部280は各電源230、250、270を制御し各熱電素子228、248、262に供給される電流の方向を切替える。すると、ポンプチャンバ200及び第1バルブチャンバ222は加熱(H)され、第2バルブチャンバ242は冷却(C)される。したがって、第1バルブチャンバ222の薄膜224は膨張し流出通路202を遮断し、第2バルブチャンバ242の薄膜244は収縮して流出通路204を開放させる。そして、ポンプチャンバ200の空気は加熱(H)されてポンプチャンバ200の圧力は上昇される。上昇された圧力は空気を流出通路204から流出させ、流出される空気は第2チャネル208を介して所要される場所に移動され作動流体を移動させる。
【0034】
一方、各センサ214,232,252は各チャンバ200、222、242の物理的な情報を検知して制御部280に伝達し、伝達された物理的な情報に基づいて各電源230、250、270を制御し電流が供給される時間及び供給される電流の強さなどを調節する。このような調節により、流入通路202及び流出通路204の開放程度が調節される。これによりポンプチャンバ200内に流入される空気の量、ポンプチャンバ200から流出される空気の量、及びポンプチャンバ200内の加熱量を調節することが可能となり、係る調節により作動流体を移動させる流量及び作動流体圧力の調節が可能になる。作動流体の微細流量の制御が可能になって精密な流体システムが具現される。
【0035】
<第3実施形態>
図7ないし図9bは、本発明の第3の実施形態を示す図であって、これに基づいて本発明の第3の実施形態に係るマイクロンポンプについて詳説する。本発明の第3の実施形態に係るマイクロポンプは、第2バルブチャンバ342及びポンプチャンバ300を加熱及び冷却するための手段であって、水平型熱電素子362が使用されることが前述の第2の実施形態と相違している。すなわち、第1バルブチャンバ322の下面は伸縮可能な薄膜324を用いて形成されている。この薄膜324は、第1バルブチャンバ322の圧力により収縮及び膨張する。係る薄膜324の収縮及び膨張により流入通路302が選択的に開放あるいは遮断される。熱電素子328は、第1バルブチャンバ322を冷却あるいは加熱することができるよう、その上面に接着材などの固定手段により取り付けられる。垂直型熱電素子328には、電源330から電流が供給される。以下、本発明の第3の実施形態の構成について第2の実施形態と相違しているところのみ説明する。
【0036】
図7及び図8に基づくと、水平型熱電素子362は、ポンプチャンバ300と第2バルブチャンバ342の上面に接着剤などの固定手段により取り付けられる。この水平型熱電素子362はフレーム364と、該フレーム364の両側にそれぞれ形成される第1及び第2プレート366,372と、該第1及び第2プレート366,372との間に位置すべくフレーム364に設けられる複数の半導体370と、両端が電源374に連結され複数の半導体370を連結させる伝導体368と、を含んでいる。
【0037】
第1プレート366はポンプチャンバ300の上面に位置し、第2プレート372は第2バルブチャンバ342の上面に位置する。したがって、電源374が伝導体368に電流を供給すると、第1プレート366及び第2プレート372のうちいずれか1つは加熱され、他の1つは冷却される。よって、水平型熱電素子362に電源を印加すると、ポンプチャンバ300と第2バルブチャンバ342のうち1つは加熱され他の1つは冷却される。水平型熱電素子362は既に公知された技術であるため詳説は除く。そして、前述した構成以外に他の構成は前述した第2の実施形態と同一であるためその詳説は除く。
【0038】
図9a及び図9bに基づいて本発明の第3の実施形態に係るマイクロポンプの動作について説明する。
図9aに示すように、制御部380が各電源330、374を制御し第1バルブ用熱電素子328及び水平型熱電素子362に電源を供給すると、第1バルブチャンバ322及びポンプチャンバ300は冷却(C)され、第2バルブチャンバ342は加熱(H)される。よって、第1バルブチャンバ322の薄膜324は収縮され流入通路302は開放される一方、第2バルブチャンバ342の薄膜344は膨張して流出通路304は遮断される。ポンプチャンバ300の空気は凝縮されてポンプチャンバ300の圧力は低くなる。したがって、大気中の空気が第1チャネル306及び流入通路302を介して外部空気がポンプチャンバ300に流入される。
【0039】
図9bに示すように、空気の吸入過程が終了されれば、制御部380は各熱電素子328、362に供給される電流の方向を切替える。すると、第1バルブチャンバ322及びポンプチャンバ300は加熱(H)され、第2バルブチャンバ342は冷却(C)される。すると、第1バルブチャンバ322の薄膜324は膨張して流入通路302を遮断し、第2バルブチャンバ342の薄膜344は収縮して流出通路304を開放させる。そして、ポンプチャンバ300の空気は膨張しポンプチャンバ300の圧力は上昇する。前記ポンプチャンバ300の圧力が上昇すると、ポンプチャンバ300の空気は開放された流出通路304を介して第2チャネル308に流出される。流出された空気は作動流体を所要される場所に流出させる。
【0040】
このように、1つの水平型熱電素子362にポンプチャンバ300及び第2バルブチャンバ342を加熱あるいは冷却させることによりマイクロポンプの構造がより簡単になる。また、一面の加熱あるいは冷却されるエネルギーのみが使用される垂直型熱電素子の代わりに両側の加熱及び冷却エネルギーが全て使用されることから省エネを達成することができる。
【0041】
<第4実施形態>
図10は本発明の第4の実施形態に係るマイクロポンプの断面図である。
同図に示したように、本発明の第4の実施形態に係るマイクロポンプは1つの水平型熱電素子462を用いて第1及び第2バルブチャンバ422,442とポンプチャンバ400を加熱あるいは冷却させる点が第3の実施形態と相違している。即ち、第1プレート466は第1バルブチャンバ422の上面とポンプチャンバ400の上面に取り付けられ、第2プレート468は第2バルブチャンバ442の上面に取り付けられる。複数の半導体(図示せず)は、第1プレート466及び第2プレート468の間に位置すべくフレーム(図示せず)に設けられる。その他の構成は前述した第3の実施形態と同一であるため詳説は除く。
【0042】
以下、図11a及び図11bに基づいて本発明の第4の実施形態に係るマイクロポンプを詳説する。
図11aに示したように、制御部480は電源474を制御し水平型熱電素子462に電流を供給する。第1プレート466が冷却されながら、第1バルブチャンバ422及びポンプチャンバ400を冷却(C)させる。すると、第1バルブチャンバ422の薄膜424は収縮しながら流入通路402を開放させ、ポンプチャンバ400の空気は冷却(C)され凝縮されることにより、大気圧より低い圧力が形成される。大気圧とポンプチャンバ400圧力の差異により大気中の空気は第1チャネル406を介してポンプチャンバ400に流入される。そして、第2プレート468は第2バルブチャンバ442を加熱し薄膜444を膨張させ、膨張荒れた薄膜444は流出通路404を遮断する。
【0043】
図11bに基づいて説明すると、制御部480は水平型熱電素子462に供給される電流を切替えると、第1プレート466は加熱され、第2プレート468は冷却されて第1バルブチャンバ422とポンプチャンバ400は加熱(H)される一方、第2バルブチャンバ422は冷却(C)される。したがって、第1バルブチャンバ422の薄膜424は膨張し流入通路402を遮断する。そして、第2バルブチャンバ442の薄膜444が収縮されて流出通路404を開放させる。さらに、ポンプチャンバ400の空気が膨張することによりポンプチャンバ400の圧力が上昇しポンプチャンバ400の空気は開放された流出通路404を介して第2チャネル408に流出される。流出された空気は所要される場所に作動流体を移動させる。このように、1つの水平型熱電素子462を用いて第1及び第2バルブチャンバ422,442のみならず、ポンプチャンバ400を加熱あるいは冷却することにより省エネを達成すると同時に、その構造をより簡単に構成できる。
【0044】
<効果>
以上、本発明の各実施形態によると、繰り返しポンピング作業を行ってもマイクロポンプの構造を簡単にすることができる。簡単な構造を有することで超小型流体システムの適用が容易になる。
そして、流入通路及び流出通路の開閉量を制御するだけでなく、ポンプチャンバの駆動流体の加熱程度を調節することができるので、作動流体の微細流量の制御が可能になり、より精密な流体システムが具現できる。
【0045】
また、熱電素子を用いてチャンバの空気の凝縮及び膨張を迅速に制御することによって、マイクロポンプの応答速度を向上させることができる。
また、1つの水平型熱電素子でバルブの開閉及びポンプチャンバのポンピング作業を行うための駆動力を提供することによって、その構造がより簡単になるのみならず、加熱あるいは冷却される熱について再度用いることにより省エネが達成される。
【0046】
一方、駆動流体として空気圧を用いることによって作動流体を流動させるためのより高い圧力を生成することができる。
以上、図面に基づいて本発明の好適な実施形態を図示及び説明してきたが本発明の保護範囲は、前述の実施形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物にまで及ぶものである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は小型流体システムを駆動させるために試料あるいは試薬などの流体をマイクロリットル単位で流動させるために使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るマイクロポンプを概略的に示す平面図である。
【図2a】図1のII−IIに沿って切開した断面図である。
【図2b】図2aの一部分の拡大図である。
【図3a】図1に示したマイクロポンプの動作を説明するための断面図(1)である。
【図3b】図1に示したマイクロポンプの動作を説明するための断面図(2)である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るマイクロポンプを概略的に示す分解斜視図である。
【図5】図4のV−Vに沿って切開した断面図である。
【図6a】図4に示すマイクロポンプの動作を説明するための断面図(1)である。
【図6b】図4に示すマイクロポンプの動作を説明するための断面図(2)である。
【図7】本発明の第3実施形態にかかるマイクロポンプを概略的に示す分解斜視図である。
【図8】図7のVIII−VIIIに沿って切開した断面図である。
【図9a】図7に示すマイクロポンプの動作を説明するための断面図(1)である。
【図9b】図7に示すマイクロポンプの動作を説明するための断面図(2)である。
【図10】本発明の第4実施形態に係るマイクロポンプを概略的に示す断面図である。
【図11a】図10に示すマイクロポンプの動作を説明するための断面図(1)である。
【図11b】図10に示すマイクロポンプの動作を説明するための断面図(2)である。
【符号の説明】
【0049】
100、200、300、400 ポンプチャンバ
120、220、320、420 第1バルブ
140、240、340、440 第2バルブ
162、262、362、462 熱電素子
180、280、380、480 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動流体の流入通路と流出通路とが備えられたポンプチャンバと、
前記流入通路を選択的に開閉させる第1バルブと、
前記流出通路を選択的に開閉させる第2バルブと、
前記ポンプチャンバを加熱あるいは冷却させるためのポンプチャンバ冷温ユニットと、
を有することを特徴とするマイクロポンプ。
【請求項2】
前記ポンプチャンバ冷温ユニットは、
前記ポンプチャンバに固定され、電流の供給方向に応じて選択的に一面が加熱され他面が冷却されるポンプチャンバ用熱電素子と、
前記ポンプチャンバ用熱電素子に電源を印加するためのポンプチャンバ用電源と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のマイクロポンプ。
【請求項3】
前記第1バルブ及び前記第2バルブは、流体が一方向にのみ流れることを許容するパッシブバルブであることを特徴とする請求項1に記載のマイクロポンプ。
【請求項4】
前記第1バルブは、
収縮及び膨張することにより前記流入通路を開閉する第1バルブチャンバと、
前記第1バルブチャンバに固定され、前記第1バルブチャンバを収縮または膨張させる第1バルブチャンバ用熱電素子と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のマイクロポンプ。
【請求項5】
前記第1バルブチャンバの前記流入通路と向かい合う面は、伸縮可能な薄膜を用いて形成されていることを特徴とする請求項4に記載のマイクロポンプ。
【請求項6】
前記第2バルブは、
収縮及び膨張することにより前記流出通路を開閉する第2バルブチャンバと、
前記第2バルブチャンバに固定され、前記第2バルブチャンバを収縮または膨張させる第2バルブチャンバ用熱電素子と、
を含むことを特徴とする請求項5に記載のマイクロポンプ。
【請求項7】
前記第2バルブチャンバの前記流入通路と向かい合う面は、伸縮可能な薄膜を用いて形成されていることを特徴とする請求項6に記載のマイクロポンプ。
【請求項8】
前記第1バルブチャンバ及び前記第2バルブチャンバそれぞれの物理的な情報を検知する第1バルブセンサ及び第2バルブセンサと、
前記第1バルブチャンバ用熱素子及び前記第2バルブチャンバ用熱素子それぞれに電流を供給するための第1バルブ用電源及び第2バルブ用電源と、
前記第1バルブ用電源及び第2バルブ用電源と通信可能に接続され、前記第1バルブセンサ及び前記第2バルブセンサにより検知された物理的な情報に基づいて前記第1バルブ用電源及び前記第2バルブ用電源を制御する制御部と、
を更に有することを特徴とする請求項7に記載のマイクロポンプ。
【請求項9】
前記ポンプチャンバの物理的な情報を検知するためのポンプチャンバ用センサを更に含み、
前記制御部は、前記ポンプチャンバ用センサにより検知された物理的な情報にさらに基づいて、前記第1バルブ用電源及び前記第2バルブ用電源を制御することを特徴とする、請求項8に記載のマイクロポンプ。
【請求項10】
ポンプチャンバ用垂直型熱電素子が取り付けられ、駆動流体の流入通路及び流出通路が備えられたポンプチャンバと、
第1バルブ用垂直型熱電素子が取り付けられ、前記熱電素子により収縮及び膨張することにより前記流入通路を選択的に開閉する第1バルブチャンバと、
第2バルブ用垂直型熱電素子が取り付けられ、前記熱電素子により収縮及び膨張することにより前記流出通路を選択的に開閉させる第2バルブチャンバと、
を有することを特徴とするマイクロポンプ。
【請求項11】
前記各熱電素子に電流を供給する複数の電源と、
前記各チャンバの物理的な情報を検知する複数のセンサと、
前記センサから検知された物理的な情報に基づいて前記電源を制御する制御部と、
を有することを特徴とする請求項10に記載のマイクロポンプ。
【請求項12】
前記物理的な情報は、各チャンバの温度、圧力、及び電源供給時間のうち、少なくとも1つから選択された情報であることを特徴とする請求項11に記載のマイクロポンプ。
【請求項13】
駆動流体の流入通路及び流出通路が備えられたポンプチャンバと、
垂直型熱電素子が取り付けられ、該垂直型熱電素子により選択的に収縮及び膨張することにより前記流入通路を開閉する第1バルブチャンバと、
収縮及び膨張することにより前記流出通路を開閉させる第2バルブチャンバと、
前記ポンプチャンバと前記第2バルブチャンバとを選択的に加熱または冷却させるための水平型熱電素子と、
を有することを特徴とするマイクロポンプ。
【請求項14】
前記水平型熱電素子は、
前記ポンプチャンバに取り付けられる第1プレートと、
前記第2バルブチャンバに取り付けられる第2プレートと、
前記第1プレートと前記第2プレートとの間に配置され、互いに電気的に接続された複数の半導体と、
を有することを特徴とする請求項13に記載のマイクロンポンプ。
【請求項15】
前記第1バルブチャンバの前記流入通路と向かい合う面は、伸縮可能な薄膜を用いて形成されていることを特徴とする請求項13または14に記載のマイクロポンプ。
【請求項16】
前記第2バルブチャンバの前記流出通路と向かい合う面は、伸縮可能な薄膜を用いて形成されていることを特徴とする請求項13または14に記載のマイクロポンプ。
【請求項17】
流入通路と流出通路とを備えるポンプチャンバと、
前記流入通路を選択的に開閉する第1バルブチャンバと、
前記流出通路を選択的に開閉する第2バルブチャンバと、
前記ポンプチャンバと、前記第1バルブチャンバと、第2バルブチャンバと、を加熱または冷却させるための水平型熱電素子と、
を有することを特徴とするマイクロポンプ。
【請求項18】
前記水平型熱電素子は、
前記ポンプチャンバと前記第1バルブに取り付けられる第1プレートと、
前記第2バルブチャンバに取り付けられる第2プレートと、
前記第1プレートと前記第2プレートとの間に配置され、互いに電気的に接続された複数の半導体と、
を有することを特徴とする請求項17に記載のマイクロンポンプ。
【請求項19】
前記第1バルブチャンバの前記流入通路と向かい合う面及び前記第2バルブチャンバの前記流出通路と向かい合う面は、それぞれ伸縮可能な薄膜を用いて形成されていることを特徴とする請求項18に記載のマイクロポンプ。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【公開番号】特開2007−247404(P2007−247404A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353509(P2005−353509)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】