説明

マイクロポンプ

【課題】駆動時の振動や電気ノイズを抑制するとともに、小型・軽量化が可能なマイクロポンプを提供すること。
【解決手段】マイクロポンプ100は、温度変化により体積が膨張または収縮する変形部を有するアクチュエータ10と、アクチュエータ10に液体を供給する液供給部11と、アクチュエータ10と液供給部11との間に設けられた第1の逆止弁12と、アクチュエータ10から液体を供給する液搬送管14と、アクチュエータ10と液搬送管14との間に設けられた第2の逆止弁13とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野やマイクロマシン分野等において、小型のアクチュエータの必要性が高まっている。
中でも、アクチュエータをマイクロポンプといったデバイスに用いる試みが行われている(例えば、特許文献1参照)。
従来のマイクロバルブに用いられているアクチュエータは、電圧の印加による変形を利用したものが主流であり、このようなアクチュエータでは、駆動時の振動や電気ノイズといった問題があった。特に電気ノイズで影響を考慮しないといけない医療用機器などでは使用は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−299597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、駆動時の振動や電気ノイズを抑制するとともに、小型・軽量化が可能なマイクロポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のマイクロポンプは、液体または気体を供給するマイクロポンプであって、
温度変化により体積が膨張または収縮する変形部を有するアクチュエータと、
前記アクチュエータに前記液体または前記気体を供給する側に設けられ、前記アクチュエータ内部から前記液体または前記気体を供給する方向に向かって前記液体または前記気体が逆流するのを防止する第1の逆止弁と、
前記アクチュエータから前記液体または前記気体を排出する側に設けられ、前記液体または前記気体を排出する側から前記アクチュエータ内部に向かって前記液体または前記気体が逆流するのを防止する第2の逆止弁と、を有することを特徴とする。
これにより、駆動時の振動や電気ノイズを抑制するとともに、小型・軽量化が可能なマイクロポンプを提供することができる。
【0006】
本発明のマイクロポンプでは、前記変形部の周囲の一部に設けられた暗色の板状部材と、
前記板状部材に対してレーザを照射するレーザ照射手段とを有し、
前記板状部材にレーザを照射して前記板状部材を加熱することにより、前記変形部の温度を調整することが好ましい。
これにより、アクチュエータの制御をより容易にすることができる。
【0007】
本発明のマイクロポンプでは、前記変形部は、チューブ形状をなしていることが好ましい。
これにより、より容易に小型・軽量化することができる。
本発明のマイクロポンプでは、前記変形部を冷却する冷却手段を有することが好ましい。
これにより、アクチュエータの制御をより容易にすることができる。
【0008】
本発明のマイクロポンプでは、前記冷却手段は、前記変形部が設けられている前記アクチュエータの外周面上に設けられていることが好ましい。
これにより、より容易に小型・軽量化することができるとともに、アクチュエータの制御をより容易にすることができる。
本発明のマイクロポンプでは、前記変形部と、前記アクチュエータ内を流れる前記液体または前記気体とを隔離する収縮性を有する隔壁を有することが好ましい。
これにより、流れる液体または気体とアクチュエータとの接触を防止することができる。
本発明のマイクロポンプでは、前記変形部を構成する材料は、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)を含むことが好ましい。
これにより、変形部の膨張・収縮の応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のマイクロポンプの好適な実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明のマイクロポンプに適用されるアクチュエータの第1実施形態を示す断面図であり、(a)アクチュエータの液体が通過する内部空間の体積が増加している状態を示す図、(b)アクチュエータの液体が通過する内部空間の体積が減少している状態を示す図である。
【図3】本発明のマイクロポンプに適用されるアクチュエータの第2実施形態を示す図であり、(c)アクチュエータの断面図、(d)アクチュエータの斜視図である。
【図4】本発明のマイクロポンプに適用されるアクチュエータの第3実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明のマイクロポンプに適用されるアクチュエータのその他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《マイクロポンプ》
図1は、本発明のマイクロポンプの好適な実施形態を示す模式図である。
図1に示すように、マイクロポンプ100は、後に詳述するアクチュエータ10と、アクチュエータ10に液体を供給する液供給部11と、アクチュエータ10と液供給部11との間に設けられた第1の逆止弁12と、アクチュエータ10から液体を供給する液搬送管14と、アクチュエータ10と液搬送管14との間に設けられた第2の逆止弁13とを有している。
【0011】
アクチュエータ10は、後に詳述するように、液体が通過する内部の空間の体積が変化するよう構成されている。そして、その体積の増減によって、アクチュエータ10内に液体が供給され、または、アクチュエータ10から液体が外部に供給される。
液供給部11は、マイクロポンプ100により供給する液体を貯留し、かつ、上述したアクチュエータ10に液体を供給する機能を有している。
【0012】
第1の逆止弁12は、アクチュエータ10に供給された液体が、液供給部11側に逆流するのを防止する機能を備えた弁である。
液搬送管14は、アクチュエータ10から供給された液体を搬送する管である。
第2の逆止弁13は、アクチュエータ10から液搬送管14に供給された液体が逆流するのを防止する機能を備えた弁である。
【0013】
このような構成のマイクロポンプ100において、まず、アクチュエータ10の液体が通過する内部の空間の体積が増加することにより、アクチュエータ10内が陰圧になる。このとき、第2の逆止弁13が閉じた状態で、第1の逆止弁12が開き、液供給部11からアクチュエータ10内に液体が供給される。そして、逆に、アクチュエータ10の液体が通過する内部の空間の体積が減少する際には、アクチュエータ10内の液体に圧力が掛かり、第1の逆止弁12が閉じた状態で、第2の逆止弁13が開き、アクチュエータ10から液搬送管14に液体が送られる。マイクロポンプ100は、このような機構により、マイクロポンプとして機能する。
このようなマイクロポンプ100では、後述するようなアクチュエータ10を使用しているので、駆動時の振動や電気ノイズを抑制することができるとともに、装置の小型・軽量化を容易に行うことができる。
【0014】
《アクチュエータ》
次に、本発明のマイクロポンプに適用されるアクチュエータの好適な実施形態について詳細に説明する。
[第1実施形態]
まず、アクチュエータの第1実施形態について説明する。
【0015】
図2は、本発明のマイクロポンプに適用されるアクチュエータの第1実施形態を示す断面図であり、a)アクチュエータの液体が通過する内部空間の体積が増加している状態を示す図、(b)アクチュエータの液体が通過する内部空間の体積が減少している状態を示す図である。
図2(a)に示すように、アクチュエータ10は、管6と、管6内に設置され、温度変化により体積が膨張または収縮する変形部1と、該変形部1の外周の一部を覆うように設けられた黒色の板状部材2と、当該板状部材に対してレーザを照射するレーザ照射手段3とを備えている。
管6は、マイクロポンプ100によって送液する液体と外部とを隔離し、当該液体が流れる空間を形成するものである。
変形部1は、図2に示すように、管6の内部に設けられており、温度変化により体積が膨張または収縮する機能を備えている。
【0016】
例えば、常温においては、図2(a)に示すように、変形部1は収縮しており、変形部1と管6の内壁との間に空隙が最大となり、管6内の液体が流れる空間の体積が最も大きい状態となる。これに対して、変形部1の温度が上昇すると、図2(b)に示すように、変形部1の体積が膨張し、変形部1によって、変形部1と管6の内壁との間の空隙が最小となり、管6内の液体が流れる空間の体積が最も小さい状態となる。これらの状態となることを繰り返すことで、マイクロポンプ100は、液体を送液することができることとなる。
【0017】
このような変形部1を構成する材料としては、温度変化により体積が変化するものであれば特に限定されず、例えば、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)やポリカーボネート等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。上述した中でも、特にポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)を用いることにより、変形部1の膨張・収縮の応答性を向上させることができる。
【0018】
板状部材2は、図2に示すように、上記変形部1の一部を覆うように設けられている。
この板状部材2は、その外表面が黒色をなしており、レーザを照射することにより、発熱する機能を備えている。
このような黒色の板状部材2を備えることにより、変形部1の温度を容易に変化させることができる。
【0019】
板状部材2を構成する材料としては、特に限定されず、例えば、アルミやステンレス等を挙げることができる。
レーザ照射手段3は、板状部材2に対して管6の外側からレーザを照射する機能を有している。
このように、管6の外側からレーザを照射するので、管6内に設置する装置をより小型化することができる。
【0020】
以上説明したようなアクチュエータ10を用いたマイクロポンプでは、従来のように電圧の印加による変形を利用したものではないので、駆動時の振動や電気ノイズの発生を抑制することができる。また、装置そのものの構成が簡単なため、小型・軽量化が容易である。
なお、上記説明では、板状部材2として黒色のものについて説明したが、これに限定されず、濃青色、濃緑色等の暗色であればよい。
【0021】
[第2実施形態]
次に、アクチュエータの第2実施形態について詳細に説明する。
本実施形態では、前述した第1実施形態と異なる点について説明し、同様な構成についてはその説明を省略する。
図3は、本発明のマイクロポンプに適用されるアクチュエータの第2実施形態を示す図であり、(c)アクチュエータの断面図、(d)アクチュエータの斜視図である。
【0022】
本実施形態に係るアクチュエータ10は、図3に示すように、前述した第1実施形態と同様に、管6と、管6内に設置され、温度変化により体積が膨張または収縮する変形部1と、該変形部1の外周の一部を覆うように設けられた黒色の板状部材2と、当該板状部材に対してレーザを照射するレーザ照射手段3とを備え、さらに、変形部1を冷却する冷却手段4を有している点で前述した第1実施形態と異なっている。
冷却手段4は、図3(c)および(d)に示すように、管6の変形部1が設けられた部位の外周面上に設けられている。
本実施形態において、冷却手段4は、冷媒(例えば、水、プロピレングリコール等)が循環する構成となっている。
【0023】
このような冷却手段4を備えることにより、温度が上昇した変形部1の温度を迅速に下げることができ、アクチュエータ10の応答性をより高いものとすることができる。その結果、液体の送液速度をさらに向上させることができる。
なお、本実施形態では、冷却手段4として、冷媒を利用したものについて説明したが、これに限定されず、例えば、ペルチェ素子等であってもよい。
また、冷却手段4が、管6の外周面上に設けられた構成について説明したが、これに限定されず、例えば、板状部材2表面に設けられていてもよい。
【0024】
《第3実施形態》
次に、アクチュエータの第3実施形態について詳細に説明する。
本実施形態では、前述した第1実施形態と異なる点について説明し、同様な構成についてはその説明を省略する。
図4は、本発明のマイクロポンプに適用されるアクチュエータの第3実施形態を示す断面図である。
【0025】
本実施形態に係るアクチュエータ10は、図4に示すように、前述した第1実施形態と同様に、管6と、管6内に設置され、温度変化により体積が膨張または収縮する変形部1と、該変形部1の外周の一部を覆うように設けられた黒色の板状部材2と、当該板状部材に対してレーザを照射するレーザ照射手段3とを備え、さらに、管6の内壁面、変形部1および板状部材2を覆う内膜5を有している点で前述した第1実施形態と異なっている。
【0026】
内膜5は、図4に示すように、管6の内壁面、変形部1および板状部材2を覆うように設けられており、管6の内壁面、変形部1および板状部材2と管6内を流れる液体とが接触するのを防止する機能を有している。これにより、液体に対する、管6の内壁面、変形部1および板状部材2の材質等による影響をより小さいものとすることができる。
このような内膜5は、変形部1の変形に対して追従可能は材料で構成されている。このような材料としては、例えば、一般的なチューブの材料として用いられているシリコンゴム等が挙げられる。
【0027】
なお、本実施形態では、管6内全面を内膜5で覆う構成について説明したが、これに限定されず、例えば、変形部1および板状部材2のみを覆うような構成であってもよいし、変形部1のみを覆うような構成であってもよい。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
例えば、前述した実施形態では、液体を送液するマイクロポンプについて説明したが、液体に限定されず、気体であってもよい。
また、前述した実施形態では、マイクロポンプ100を構成するアクチュエータ10として、ブロック状のものについて説明したが、これに限定されず、アクチュエータ10は、例えば、図5に示すようなチューブ形状をなすものであってもよい。このような形状の場合、温度変化により、チューブの内径が増減することで、液体または気体の流路の体積が増減する。これにより、液体または気体が搬送される。
【符号の説明】
【0029】
1…変形部 2…板状部材 3…レーザ照射手段 4…冷却手段 5…内膜 6…管 10…アクチュエータ 11…液供給部 12、13…逆止弁 14…液搬送管 100…マイクロポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体または気体を供給するマイクロポンプであって、
温度変化により体積が膨張または収縮する変形部を有するアクチュエータと、
前記アクチュエータに前記液体または前記気体を供給する側に設けられ、前記アクチュエータ内部から前記液体または前記気体を供給する方向に向かって前記液体または前記気体が逆流するのを防止する第1の逆止弁と、
前記アクチュエータから前記液体または前記気体を排出する側に設けられ、前記液体または前記気体を排出する側から前記アクチュエータ内部に向かって前記液体または前記気体が逆流するのを防止する第2の逆止弁と、を有することを特徴とするマイクロポンプ。
【請求項2】
前記変形部の周囲の一部に設けられた暗色の板状部材と、
前記板状部材に対してレーザを照射するレーザ照射手段とを有し、
前記板状部材にレーザを照射して前記板状部材を加熱することにより、前記変形部の温度を調整する請求項1に記載のマイクロポンプ。
【請求項3】
前記変形部は、チューブ形状をなしている請求項1または2に記載のマイクロポンプ。
【請求項4】
前記変形部を冷却する冷却手段を有する請求項1ないし3のいずれかに記載のマイクロポンプ。
【請求項5】
前記冷却手段は、前記変形部が設けられている前記アクチュエータの外周面上に設けられている請求項1ないし4のいずれかに記載のマイクロポンプ。
【請求項6】
前記変形部と、前記アクチュエータ内を流れる前記液体または前記気体とを隔離する収縮性を有する隔壁を有する請求項1ないし5のいずれかに記載のマイクロポンプ。
【請求項7】
前記変形部を構成する材料は、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)を含む請求項1ないし6のいずれかに記載のマイクロポンプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate