説明

マイクロリアクターを用いた接触水素化方法

【課題】従来の化学反応条件よりもより穏和な条件で、効率よく不飽和有機化合物(ニトロ化合物、アルデヒド化合物)を水素化する方法を提供すること。
【解決手段】 アルデヒド化合物を水素源と混合した後、水素化触媒を含むマイクロリアクターを通過させて接触水素化させることを特徴とするアルデヒド化合物の水素化方法;ニトロ化合物を水素源と混合した後、水素化触媒を含むマイクロリアクターを通過させて接触水素化させることを特徴とするニトロ化合物の水素化方法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルデヒド化合物またはニトロ化合物を、マイクロリアクターを用いて穏和な条件で効率的に接触水素化(還元)する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題が注目されるようになってきており、環境負荷を低減した各種化学反応方法の開発が求められるようになってきている。
【0003】
環境負荷を低減しつつ各種化学反応を進行させるためには、例えば、微生物や酵素を使用するといった方法が考えられる。しかし、微生物や酵素を用いた反応では、室温で反応を進行させることができるが、これらの反応では、反応系が水系に限定される、分離精製工程が煩雑になる等の問題があった。
【0004】
ところで、近年、1mm以下のマイクロ流路を有する微小反応器として、マイクロリアクターが用いられるようになってきている(例えば、非特許文献1)。マイクロリアクターを用いた反応は、微小空間で行われるため、微少量での合成ができることに加え、温度制御が容易であるといった利点に加え、単位面積当たりの表面積が非常に大きく、レイノルズ数が小さいので層流が容易に達成できるといった利点もある。そのため、穏和な条件で各種反応を進行させることができると期待される。
【0005】
【非特許文献1】”Microreactors New Technology for Modern Chemistry”(Wolfgang Ehrfeld, Volker Hessel, Holger Loewe著、WILEY-VCH社 2000年発行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、マイクロリアクターを用いることにより、従来の化学反応条件よりもより穏和な条件で、効率よく不飽和有機化合物(ニトロ化合物、アルデヒド化合物)を水素化する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、アルデヒド化合物や、ニトロ化合物を、マイクロリアクターを用いて水素化することにより、通常の反応条件と比較して、より穏和な条件でこれらの化合物を効率よく水素化できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、アルデヒド化合物を水素源と混合した後、水素化触媒を含むマイクロリアクターを通過させて接触水素化させることを特徴とするアルデヒド化合物の水素化方法;ニトロ化合物を水素源と混合した後、水素化触媒を含むマイクロリアクターを通過させて接触水素化させることを特徴とするニトロ化合物の水素化方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来の化学反応方法による水素化よりも低温、低圧で反応を効率よく進行させることができるため、反応に使用される消費エネルギーを低減でき、環境負荷を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、アルデヒド化合物またはニトロ化合物(以後、アルデヒド化合物、ニトロ化合物をまとめて単に基質という場合がある。)をマイクロリアクター中で接触水素化することにより穏和な条件で水素化を行う方法に関する。具体的には、粉末状水素化触媒を充填したマイクロリアクターを用い、水素源(水素)によるアルデヒド化合物またはニトロ化合物の水素化反応を促進し、穏和な条件で効率的に還元体を製造する方法であり、マイクロリアクターを用いた固体水素化触媒と、溶液間の二層系(固−液)の還元反応を含む方法である。
【0011】
本発明で水素化の対象となるアルデヒド化合物としては、アルデヒド基を1つ以上有する化合物であれば、特に限定されず、公知のものを用いることができる。当該アルデヒド化合物は、一般式(1):R−CHO(式中、Rは、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、ナフチル基またはビフェニル基を示す。)で表されるものが例示できる。
【0012】
上記式中、アルキル基としては、直鎖または分岐鎖の炭素数1〜20のアルキル基が挙げられる。アルケニル基としては、直鎖または分岐鎖の炭素数1〜20のアルケニル基が挙げられる。アルキニル基としては、直鎖または分岐鎖の炭素数1〜20のアルキニル基が挙げられる。
【0013】
これらの具体例としては、例えば、アクロレイン、グリオキザール、クロトンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、ヘプタナール、オクタナール、ステアリンアルデヒド、クロラール、アセトアルデヒド、フルフラール等の非芳香族アルデヒド化合物、ベンズアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物などが挙げられる。
【0014】
当該アルデヒド化合物のアルデヒド基(−CHO)は、本発明の水素化方法により還元されて、通常、ヒドロキシメチル基(−CHOH)に変換される。置換基として、不飽和結合、ハロゲン原子、カルボニル基等の還元されうる基を有する場合には、これらの基が還元された置換基を有する化合物が得られる。
【0015】
本発明で水素化の対象となるニトロ化合物としては、ニトロ基を1つ以上有する化合物であれば、特に限定されず、公知のものを用いることができる。当該ニトロ化合物は、一般式(2)R−NO(式中、Rは、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、ナフチル基、(その他あれば追加してください)またはビフェニル基を示す。)で表されるものが例示できる。
【0016】
上記式中、アルキル基としては、直鎖または分岐鎖の炭素数1〜20のアルキル基が挙げられる。アルケニル基としては、直鎖または分岐鎖の炭素数1〜20のアルケニル基が挙げられる。アルキニル基としては、直鎖または分岐鎖の炭素数1〜20のアルキニル基が挙げられる。
【0017】
これらの具体例としては、例えば、ニトロエタン、1−ニトロプロパン、2−ニトロプロパン、1−ニトロブタン、1−ニトロ−n−ペンタン等のニトロアルカン類、ニトロエチレン、1−ニトロ−1−プロペン、3−ニトロ−1−プロペン、1−ニトロ−2−メチル−1−プロペン等のニトロアルケン、2−ニトロエタノール、3−ニトロ−1−プロパノール、2−ニトロ−1−プロパノール等のニトロアルコール、メチル−2−ニトロエチルエーテル、3−メトキシ−2−ニトロブタン等のニトロエーテル類、ニトロアセトン等のニトロケトン類などの非芳香族ニトロ化合物、p−ニトロトルエン、o−ニトロトルエン、ニトロベンゼン、ジニトロトルエン、ピクリン酸、テトリル等の芳香族ニトロ化合物などが挙げられる。
【0018】
当該ニトロ化合物のニトロ基(−NO)は、本発明の水素化方法により還元されて、通常、アミノ基(−NH)に変換される。置換基として、不飽和結合、ハロゲン原子、カルボニル基等の還元されうる基を有する場合には、これらの基が還元された置換基を有する化合物が得られる。
【0019】
本発明で用いるマイクロリアクターとは、化学反応を行うために用いられる小型の三次元構造体であり、微細流路を有する微小反応器を意味し、このような微小反応器であれば特に限定されない。当該マイクロリアクターは、例えば、”Microreactors New Technology for Modern Chemistry”(Wolfgang Ehrfeld, Volker Hessel, Holger Loewe著、WILEY-VCH社 2000年発行)等に記載されている。本発明においてはこれらマイクロリアクターを広く用いることができる。
【0020】
マイクロリアクターを用いた反応は、微小空間中で反応を行うため、微少量の合成が可能となるうえ、温度制御を精密に効率よく行うことができる。また、単位面積あたりの表面積が大きくなり、レイノルズ数が小さいために層流が容易に達成できる。
【0021】
マイクロリアクターに供給される原料同士の混合手段は、上述の”Microreactors New Technology for Modern Chemistry”(Wolfgang Ehrfeld, Volker Hessel, Holger Loewe著、WILEY-VCH社 2000年発行)の43〜46頁に記載されている種々のものを用いることができる。
【0022】
マイクロリアクターの具体例としては、インスティテュート・フュール・マイクロテクニック・マインツ社(Institute fur Mikrotechnik Mainz GmbH, Germany)(以下、IMM社という場合がある。)の刊行物に記載されたマイクロリアクター、セルラー・プロセス・ケミストリー社(Cellular Process Chemistry Systems GmbH, Frankfurt/Main)のセレクト(Selecto;商標)、シトス(Cytos;商標)等を挙げることができる。その他、WO96/12540、WO96/12541、特表2001−521816号公報、特開2002−18271号公報、特開2002−58470号公報、特開2002−90357号公報、特開2002−102681号公報等に記載されたマイクロリアクター等を挙げることもできる。
【0023】
本発明のマイクロリアクターの典型例としては、その流路の直径(内径)が1mm程度以下、好ましくは0.01〜1mm程度、より好ましくは0.1〜1mm程度のものが挙げられる。流路をこのような範囲にすることでリアクターの形状は特に限定されない。例えば、キャピラリー状、チューブ状、基板状に流路を形成したものなどが挙げられる。その流路の長さは、還元対象物、水素化反応の条件、触媒の種類などに応じて変化するが、通常、1〜100cm程度、好ましくは5〜50cm程度であればよい。
【0024】
本発明のマイクロリアクターには、後述する水素化触媒が充填されている。具体的には、例えば、内径1mm以下のリアクター流路に、0.1〜100μm程度の微粉末状の水素化触媒が充填されてなる。基質溶液と水素源との混合物を、充填された水素化触媒に接触させながらマイクロリアクターの微細流路を通過させることにより、当該基質を効果的に還元することができる。これにより、バルク還元では達成できない良好な収率で目的物である還元体を得ることができる。
【0025】
本発明のマイクロリアクターの材質は水素化反応に悪影響を与えない材料であれば特に限定はなく、例えば、ガラス、アルミニウム、SUS、プラスチック(特に、ポリエーテルエーテルケトンなどのエンジニアリングプラスチック)などを適宜選択して用いることができる。
【0026】
本発明のマイクロリアクター内で用いられる水素化触媒としては、パラジウム触媒、ニッケル触媒、白金触媒、ルテニウム触媒、レニウム触媒、銅触媒、ロジウム触媒またはこれらの混合触媒等が挙げられ、中でも反応性、経済性の点から、パラジウム触媒、ニッケル触媒、白金触媒、ルテニウム触媒が好ましい。
【0027】
パラジウム触媒としては、例えば、パラジウムカーボン、パラジウムアルミナ、パラジウムシリカ、パラジウムシリカアルミナ、ゼオライト担持パラジウム、などが挙げられ、ニッケル触媒としては、例えばニッケル珪藻土、スポンジニッケル、ニッケルアルミナ、ニッケルシリカ、ニッケルカーボンなどが挙げられ、白金触媒としては、例えば白金シリカ、白金シリカアルミナ、ゼオライト担持白金などが挙げられ、ルテニウム触媒としては、例えばルテニウムカーボン、ルテニウムアルミナ、ルテニウムシリカ、ルテニウムシリカアルミナ、ゼオライト担持ルテニウムなどが挙げられる。
【0028】
水素化触媒は、マイクロリアクターの微細流路に充填できる微粉末が好ましく、その平均粒子径は、通常、0.1〜100μm程度、特に1〜50μm程度が好適である。微細流路に充填する場合には、触媒表面の増大および反応器への触媒充填の容易さの点から、(触媒の平均粒子径)/(流路の直径)を0.1程度以下、特に0.07以下とすることが好ましい。また、流体の圧力損失の点から(触媒の平均粒子径)/(流路の直径)を0.0001程度以上、特に0.001以上とすることが好ましい。
【0029】
水素化触媒は、直接リアクター内に充填しても良く、水素化触媒を担体に担持したものをリアクター内に充填しても良い。水素化触媒を担持する担体としては、例えば、チタニア、シリカ、アルミナ、ジルコニア、活性炭等が挙げられる。水素化触媒を触媒に担持する方法としては、沈殿法、か焼法、含浸法、イオン交換法等の公知の方法を採用すればよい。担体を用いる場合のその粒径は、水素化触媒そのものを用いる場合の前記平均粒子径の範囲とすることが好ましい。
【0030】
水素化触媒をリアクター内に充填する方法としては特に限定されず、公知の方法を採用することができるが、例えば、水素化触媒を、当該触媒を溶解しない溶媒に分散させて、0.01〜10ml/分、好ましくは0.05〜0.5ml/分の流速で加圧・振動させながらマイクロリアクター内に充填することが好ましい。
【0031】
水素化触媒のマイクロリアクター内への充填密度は、通常、0.05〜5g/ml程度、好ましくは0.1〜0.5g/mlであり、水素化触媒の比表面積1〜2000m/g程度、好ましくは50〜1500m/gである。
【0032】
本発明で用いられる水素源としては、水素、ギ酸(またはその塩)およびNHNH等が例示され、好ましくは水素である。
【0033】
本発明で用いられる溶媒は、前記基質および水素源を溶解しやすく、基質と反応せず、その溶媒自身が水素化されないものであり、基質の種類に応じて適宜選択すれば良い。具体的には、例えば、エーテル系溶媒(例えば、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、炭化水素系溶媒(例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル等)、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等)などが挙げられる。なお、これら溶媒は、混合溶媒であっても良い。
【0034】
本発明の水素化は、基質を、マイクロリアクターを通過させることにより行われる。
基質をマイクロリアクターに供給する際には、通常、基質を溶媒に溶解して溶液として供給する。溶液の濃度は、基質の溶媒に対する溶解度にもよるが、通常1〜100重量%程度、特に1〜50重量%程度であれば良い。
【0035】
基質溶液は、通常、送液ポンプによりミキサーに送られ、水素源と混合される。ミキサーとしては、T字型ミキサー等の公知のミキサーを採用することができる。特に、水素源として水素を用いた場合、ミキサーでは気−液混合となるため、混合時に微小流を発生し、効率的に混合できるマイクロミキサーを採用するのが好ましい。マイクロミキサーとは、2種以上の被混合物を微小流とし、これら微小流を衝突させて混合させることにより混合効率を高めることを目的とする混合装置である。マイクロミキサーを用いることにより効率的かつ均質に基質と水素源を混合できるため、マイクロリアクター内での水素化反応の性が向上する。なお、マイクロミキサーの具体例としては、IMM社のマイクロミキサーを例示できる
【0036】
水素源として水素を用いた場合には、ミキサーにおける水素と基質の混合比(モル比)は、反応条件により適宜選択できるが、例えば、水素:基質=0.1:1〜10000:1程度、好ましくは1:1〜100:1程度であればよい。水素の量が少なすぎると還元反応が不十分となり、多すぎると生産性が悪くなる。
【0037】
また、上記の混合物は、基質がリアクター内に0.5〜60分程度滞留するように、その流速を適宜選択すれば良い。
【0038】
ミキサーで混合された混合物は、マイクロリアクターに供給される。リアクター内における反応条件は、基質の種類に応じて適宜選択すればよい。例えば、リアクター内の内応圧力は、常圧でも加圧でも良く、通常0.1〜20MPa程度であれば良い。また、リアクター内の反応温度は、通常10〜300℃程度であればよい。
【0039】
具体的には、アルデヒド化合物の水素化では、通常、圧力0.1〜5MPa程度で、温度10〜100℃程度であればよい。
【0040】
ニトロ化合物の水素化では、通常、圧力0.1〜20MPa程度で、温度10〜250℃程度であればよい。より具体的には、ニッケル触媒を用いる場合には、0.1〜20MPa程度、50〜250℃程度が好ましく、パラジウム触媒、白金触媒、ルテニウム触媒、レニウム触媒を用いる場合には、0.1〜5MPa程度、10〜150℃程度が好ましい。
【0041】
反応後、反応混合物を回収し、公知の方法により所望の水素化物(還元体)を精製単離すれば良い。
【0042】
なお、当該マイクロリアクターに、リアクター内の圧力を一定にするために圧力調節弁(例えば、商品名:バックプレッシャーレギュレーターP−787、Upchurch Scientific製)を用いた場合には、目的物の収率を向上させることができるため好ましい。また、水素ガスの供給速度を一定にするために、ガス流量調節機(例えば、商品名:マスフローコントローラー5850S、Brooks製)を用いた場合には、反応の再現性を向上させることができるため好ましい。
【0043】
なお、本発明のマイクロリアクターを用いて大量に目的物を合成する場合には、ナンバーリングアップという手法を用いることができる。ナンバーリングアップ法とは、複数のリアクターを用いて反応を行い、単位時間当たりの生産性を向上させるための方法である。具体的には、例えば、前記水素化触媒を充填したマイクロリアクターを複数並列に接続する方法や、直径1mm以下の微細流路を複数構成する容器に水素化触媒を充填したリアクターを用いる方法などが挙げられる。
【実施例】
【0044】
実施例1 (オクタナールの水素化反応)
5%Ru/C粉末(平均粒径20μm;エヌ・イー・ケムキャット(株)製)0.05gを充填した内径1mm、長さ15cmのカラムをフローリアクターとして用いた。オクタナールのエタノール溶液(0.03mol/l)と水素ガスをT字型のミキサーで混合し、0.5MPaの圧力でフローリアクターに導入した。なお、オクタナール溶液の送液速度を0.038ml/分に(滞留時間:1.6分)、反応温度を室温に設定した。
反応生成物をガスクロマトグラフにより分析した。その結果、オクタノールが100%得られた。
【0045】
比較例1
内容積50mlのオートクレーブにオクタナールのエタノール溶液(0.03mol/l)15ml、5%Ru/C粉末(平均粒径20μm;エヌ・イー・ケムキャット(株)製)0.05gを入れた。反応器内を3回水素置換した後、0.5MPaの水素を導入し、攪拌を始め室温で1.6分間反応を行った。
反応生成物をガスクロマトグラフにより分析した。その結果、原料のオクタナールが95%残存し、オクタノールが5%得られた。
【0046】
実施例2 (オクタナールの水素化反応)
5%Pd/C粉末(平均粒径37μm;エヌ・イー・ケムキャット(株)製)0.05gを充填した内径1mm、長さ15cmのカラムをフローリアクターとして用いた。オクタナールのエタノール溶液(0.03mol/l)と水素ガスをT字型のミキサーで混合し、0.2MPaの圧力でフローリアクターに導入した。なお、オクタナール溶液の送液速度を0.038ml/分に(滞留時間:1.6分)、反応温度を室温に設定した。
反応生成物をガスクロマトグラフにより分析した。その結果、原料のオクタナールは消失し、オクタノール98%が得られた。
【0047】
比較例2
内容積50mlのオートクレーブにオクタナールのエタノール溶液(0.03mol/l)15ml、5%Pd/C粉末(平均粒径37μm;エヌ・イー・ケムキャット(株)製)0.05gを入れた。反応器内を3回水素置換した後、0.2MPaの水素を導入し、攪拌を始め室温で1.6分間反応を行った。
反応生成物をガスクロマトグラフにより分析した。その結果、原料のオクタナールが92%残存し、オクタノールが8%得られた。
【0048】
実施例3 (1−ニトロプロパンの水素化反応)
5%Pd/C粉末(平均粒径37μm;エヌ・イー・ケムキャット(株)製)0.05gを充填した内径1mm、長さ15cmのカラムをフローリアクターとして用いた。1−ニトロプロパンのエタノール溶液(0.03mol/l)と水素ガスをT字型のミキサーで混合し、0.5MPaの圧力でフローリアクターに導入した。なお、1−ニトロプロパン溶液の送液速度を0.038ml/分に(滞留時間:1.6分)、反応温度を50℃に設定した。
反応生成物をガスクロマトグラフにより分析した。その結果、1−ニトロプロパンが54%残存し、プロピルアミンが45%得られた。
【0049】
比較例3
内容積50mlのオートクレーブに1−ニトロプロパンのエタノール溶液(0.03mol/l)15ml、5%Pd/C粉末(平均粒径37μm;エヌ・イー・ケムキャット(株)製)0.05gを入れた。反応器内を3回水素置換した後、0.5MPaの水素を導入し、攪拌を始め50℃で1.6分間反応を行った。
反応生成物をガスクロマトグラフにより分析した。その結果、原料の1−ニトロプロパンが100%残存した。
【0050】
実施例4 (p−ニトロトルエンの水素化反応)
5%Pd/C粉末(平均粒径37μm;エヌ・イー・ケムキャット(株)製)0.05gを充填した内径1mm、長さ15cmのカラムをフローリアクターとして用いた。p−ニトロトルエンの2−プロパノール溶液(0.03mol/l)と水素ガスをT字型のミキサーで混合し、1MPaの圧力でフローリアクターに導入した。なお、p−ニトロトルエン溶液の送液速度を0.038ml/分に(滞留時間:1.6分)、反応温度を120℃に設定した。
反応生成物をガスクロマトグラフにより分析した。その結果、p−トルイジンが86%得られた。
【0051】
比較例4
内容積50mlのオートクレーブにp−ニトロトルエンの2−プロパノール溶液(0.03mol/l)15ml、5%Pd/C粉末(平均粒径37μm;エヌ・イー・ケムキャット(株)製)0.05gを入れた。反応器内を3回水素置換した後、1MPaの水素を導入し、攪拌を始め室温で1.6分間反応を行った。
反応生成物をガスクロマトグラフにより分析した。その結果、原料のp−ニトロトルエンが98%残存し、p−トルイジンが2%得られた。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】ナンバーリングアップ法についての概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルデヒド化合物を水素源と混合した後、水素化触媒を含むマイクロリアクターを通過させて接触水素化させることを特徴とするアルデヒド化合物の水素化方法。
【請求項2】
ニトロ化合物を水素源と混合した後、水素化触媒を含むマイクロリアクターを通過させて接触水素化させることを特徴とするニトロ化合物の水素化方法。
【請求項3】
水素化触媒を含むマイクロリアクターが、微粉末の水素化触媒が充填されてなるマイクロリアクターである請求項1または2に記載の水素化方法。
【請求項4】
アルデヒド化合物が、一般式(1)R−CHO(式中、Rは、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、ナフチル基、(その他あれば追加してください)またはビフェニル基を示す。)で表される化合物である請求項1または3記載の水素化方法。
【請求項5】
ニトロ化合物が、一般式(2)R−NO(式中、Rは、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、ナフチル基、(その他あれば追加してください)またはビフェニル基を示す。)で表される化合物である請求項2または3記載の水素化方法。
【請求項6】
水素源が、水素、ギ酸またはその塩およびNHNHからなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1〜5のいずれかに記載の水素化方法。
【請求項7】
水素化触媒が、パラジウム触媒、ニッケル触媒、白金触媒、ルテニウム触媒、レニウム触媒、銅触媒およびロジウム触媒からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1〜6のいずれかに記載の水素化方法。
【請求項8】
マイクロリアクターの流路の直径が1mm以下であり、水素化触媒の平均粒子径が0.1〜100μmであり、(水素化触媒の平均粒子径)/(マイクロリアクターの流路の直径)が、0.1以下である請求項3に記載の水素化方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−248972(P2006−248972A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−66775(P2005−66775)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】