説明

マイクロルーバー層に接して粘着剤層を有する光学シートの製造方法

【課題】マイクロルーバー層に接して粘着剤層を有する光学シートについて、粘着剤層を積層時の残留気泡発生を抑制できる、製造方法を提供する。
【解決手段】(A)延在方向dを互いに平行に面方向に多数配列された直線状の暗色線条部3と暗色線条部を少なくとも側面から支持する透明樹脂層2とからなるマイクロルーバー層4が、透明基材1上に形成され、且つ暗色線条部がその露出面eに凹陥部rを有する光学シート10を準備する光学シート準備工程、(B)光学シートのマイクロルーバー層の暗色線条部が凹陥部を有する側の面に、粘着剤5Cを塗工し粘着剤層5を形成するときに、暗色線条部の延在方向dに平行乃至は略平行な塗工方向dcに塗工する粘着剤塗工工程、(C)粘着剤層を介して機能層6を積層する機能層積層工程、の各工程をこの順に行う、製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイパネルの観察者側に配置して、コントラスト向上や視野角規制を行うマイクロルーバー層を有する光学シートの製造方法に関する。特に、マイクロルーバー層に隣接して粘着剤層を有する光学シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プラズマディスプレイパネル、液晶パネル、EL(電界発光)パネル等の種々のディスプレイパネルが普及し、これらのディスプレイパネルを用いた、テレビジョン、電子看板、モニターディスプレイなどの各種画像表示装置が実用化されている。画像表示装置の画像を、蛍光灯や太陽光等の外光がディスプレイパネルに入り込む明室環境下で観察すると、外光がディスプレイパネルからの画像光に混在して、明室下での画像コントラスト、つまり、明室コントラストが低下する。そこで、この明室下でのコントラストの低下を防ぐために、ディスプレイパネルの画像の観察者側である前面に、コントラスト向上フィルタを配置することが知られている。コントラスト向上フィルタとしては、特許文献1、特許文献2等に開示されるマイクロルーバー構造からなるマイクロルーバー層を有するものが代表的である。また、マイクロルーバー層は、視野角を規制する機能も有することから、覗き見防止フィルタとしても知られている。
【0003】
コントラスト向上フィルタ或いは覗き見防止フィルタとして使用されるマイクロルーバー層は、図4(a)の斜視図で例示する光学シート10の様に、透明基材1上に形成された透明樹脂層2と、この透明樹脂層2で支持される様に形成され延在方向を互いに平行に光学シートの面方向に多数配列された直線状の暗色線条部3とからなる構造である。
【0004】
このマイクロルーバー層4を有する光学シート10の製造は、一般にいわゆるワイピング法を利用して製造される。すなわち、
(a)先ず、透明基材1上に、表面に延在方向が互いに平行な溝状凹部が形成された透明樹脂層2を形成する、
(b)次に、上記溝状凹部の形成面上に、溝状凹部の内部及び外部も含めて全面に、暗色インクを塗工する、
(c)次に、暗色インクが塗工された塗工面をドクターブレード等で掻き取り溝状凹部の外の暗色インクを除去し、溝状凹部の内部のみに暗色インクを充填して暗色線条部3を形成する、
という方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−97904号公報
【特許文献2】特開2008−46644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ディスプレイパネルの前面に配置される光学シートには、コントラスト向上機能、覗き見防止機能以外にも、反射防止機能、防汚機能など各種機能が要求に応じて、付与される。この為、マイクロルーバー層を有する光学シートにおいても、マイクロルーバー層による機能以外を実現する機能層を、粘着剤層を介して積層することが普通である。しかしながら、粘着剤層を介して機能層を積層するとき、その積層面がマイクロルーバー層の面であると、積層時に、空気が積層面と粘着剤層との間に残り残留気泡が生じることがあった。
これは、図4(b)の断面図で示す様に、溝状凹部に充填形成された暗色線条部3は、その製法(ワイピング法)に起因して、一般に、暗色線条部3の表面露出面eには、1〜5μm程度の凹陥部rが不可避的に発生することによる。液状の暗色インクが硬化反応などで固化するときに硬化収縮などによる体積減少が生じるからである。このため、図5の断面図で示す粘着剤層付きの従来の光学シート20の様に、例えば反射防止シートなどを機能層6として、間に粘着剤層5を介してマイクロルーバー層4の面に貼り合せる際に、この凹陥部r内に空気が残留して残留気泡Gが生じ易くなる。残留気泡Gが発生すると、そこで画像光が散乱されるために画面が白化し、画質が低下するという問題があった。
【0007】
すなわち、本発明の課題は、マイクロルーバー層に接して粘着剤層を有する光学シートについて、粘着剤層を積層時の残留気泡発生を抑制できる、製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明では、次の様な構成の製造方法とした。
(A)延在方向を互いに平行に面方向に多数配列された直線状の暗色線条部と該暗色線条部を少なくとも側面から支持する透明樹脂層とからなるマイクロルーバー層が、透明基材上に形成され、且つ暗色線条部がその露出面に凹陥部を有する光学シートを準備する光学シート準備工程、
(B)上記光学シートのマイクロルーバー層の暗色線条部が凹陥部を有する側の面に、粘着剤を塗工し粘着剤層を形成するときに、該暗色線条部の延在方向に平行乃至は略平行な塗工方向に塗工する粘着剤塗工工程、
(C)粘着剤層を介して機能層を積層する機能層積層工程、
の各工程をこの順に行う、マイクロルーバー層に接して粘着剤層を有する光学シートの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、マイクロルーバー層の暗色線条部の凹陥部を有する側の面に粘着剤層を積層しても、該凹陥部の部分に残留気泡が生じることを回避できる。この為、残留気泡による画像の白化を防げる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による光学シートの製造方法を説明する斜視図と平面図。
【図2】暗色線条部の主切断面形状の各種形状を例示する断面図。
【図3】本発明で得られる光学シートの一形態を例示する断面図。
【図4】従来技術によるマイクロルーバー層を有する光学シートの一例を説明する斜視図(a)と暗色線条部の凹陥部を説明する断面図(b)。
【図5】凹陥部に発生する残留気泡を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面は概念図であり、構成要素の縮尺関係、縦横比等は誇張されていることがある。
【0012】
A.定義:
本明細書において、以下の用語の意味は次のとおりである。
「主切断面形状」とは、光学シート10,100における入光面または出光面の平面に立てた法線N(図1に於いてはZ軸方向と一致)を含む断面である「縦断面」のうち、暗色線条部3が延びる延在方向(図1に於いてはY軸方向)に直交する断面(図1に於いてはZX平面)として定義される「主切断面」に於ける断面形状のことを意味する。
「面方向」とは、光学シート10,100の入光面または出光面の平面に平行な特定の方向であり、光学シート10,100の表裏面に平行な方向でもある。図1に於いては、XY平面と平行な面内に於ける特定方向(図1ではY軸方向)である。
【0013】
B.マイクロルーバー層に接して粘着剤層を有する光学シートの製造方法:
本発明による、マイクロルーバー層に接して粘着剤層を有する光学シートの製造方法は、少なくとも、(A)光学シート準備工程、(B)粘着剤塗工工程、(C)機能層積層工程をこの順に実施する製造方法である。
【0014】
《光学シート準備工程》
(A)光学シート準備工程では、図1(a)、図1(b)及び図4で示す様に、延在方向を互いに平行に光学シート10の面方向に多数配列された直線状の暗色線条部3と該暗色線条部3を少なくとも側面から支持する透明樹脂層2とからなるマイクロルーバー構造のマイクロルーバー層4が、透明基材1上に形成され、且つ暗色線条部3がその露出面eに凹陥部rを有する光学シート10を準備する。
この様な暗色線条部3の露出面eに凹陥部rを有する光学シート10としては、従来公知のものを適宜使用することができる。ここでは、この様な光学シート10を構成する各層について、透明基材1、透明樹脂層2、暗色線条部3の順に以下説明する。
【0015】
〔透明基材〕
透明基材1としては、ガラス、樹脂等からなる透明な基材を使用できる。透明基材1の樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、或いはアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等である。これら樹脂は、フィルム、シート、板の形態で使用される。なお、「フィルム」、「シート」、「板」は通常厚みにより大まかに区別されるが、本発明では単に呼称上の違いのみであり、その意味の区別は特にない。なお、透明基材1の厚みは、樹脂シートの場合、例えば20〜500μmである。
これらのなかでも、樹脂シート乃至は樹脂フィルムとして使用される樹脂製の透明基材1は、可撓性を持たせることができるため、ロール・ツー・ロール方式での製造適性の点で好ましい。なお、ロール・ツー・ロール方式とは、透明基材1を、ロール(巻取り)から連続帯状シートとして巻き出して、所定の加工を施した後、ロールに巻き取る生産方式のことを意味する。
【0016】
〔透明樹脂層〕
透明樹脂層2は、暗色線条部3と共にマイクロルーバー層4を構成する。透明樹脂層2は、光学シート10に入射した画像光を透過させて観察者側に出射する光透過部となる。
透明樹脂層2は、透明な樹脂材料から構成され、該樹脂材料としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂でも良いが、固化が迅速などの点で、好ましくは、硬化性樹脂、それも、紫外線や電子線で硬化する電離放射線硬化性樹脂を用いるのが望ましい。電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系、エポキシ系、ポリエステル系などの樹脂が挙げられる。
透明樹脂層2の厚みは、例えば100〜300μm程度である。透明樹脂層2の厚みは、暗色線条部3の厚み以上となる。
【0017】
〔暗色線条部〕
暗色線条部3は、透明樹脂層2と共にマイクロルーバー層4を構成する。暗色線条部3は、外光を吸収してコントラストを向上させたり、画像光の進行方向を規制して視野角を規制したりする光吸収部となる。
暗色線条部3は、少なくとも面方向に於ける両側側面を透明樹脂層2によって支持されることで空間的位置を維持されている。さらに、通常は図1(a)、図1(b)及び図4の様に、暗色線条部3は面方向に垂直な法線Nの方向において、透明基材1側も透明樹脂層2によって支持されている。したがって、暗色線条部3の露出面eは、前記法線Nの方向において透明基材1から遠い方に存在し、この露出面eが平坦面ではなく窪んだ面となっており、凹陥部rを形成する。凹陥部rの深さは1〜5μm程度である。
【0018】
暗色線条部3の主切断面形状は、露出面eの凹陥部rが存在せず平面であったと仮定したときの形状で言うと、図1に例示の形状では、四辺が直線からなる台形形状であり楔形状でもあったが、その他の形状でも良い。例えば、露出面eの凹陥部rが存在せず平面であったと仮定したときの形状で示せば、図2(1)で示す様な斜面が法線Nに平行な四角形状、図2(2)で示す様な三角形形状(含む二等辺三角形形状)、図2(3)で示す様な五角形形状、或いは六角形形状等でも良い。また、図2(4)で示す様に、台形や三角形等の両方又は片方の斜辺が、折れ線化又は曲線化した変調された形状(暗色線条部3の外側に向かって凸形状或いは凹形状)等でも良い(同図では三角形が変調された形状である)。
暗色線条部3の寸法は、例えば、その配列方向での寸法である幅が5〜50μm、高さが50〜300μm、側面の法線Nに対する傾斜角が0〜30°程度である。暗色線条部3の配列周期は50〜200μm程度である。
【0019】
暗色線条部3は面内(図1及び図4でXY平面)において直線状に延びている(図1に於いてはY軸方向に延びている)が、この「直線状」とは文字通りの直線の他に、延在する暗色線条部3を光学シート10の法線Nの方向から見たときに全体として大局的には直線状の延びており、局所的に見たときには折れ線や波形状で延びている形状も含む。文字通りの直線とせずに、折れ線や波形状とするのは、粘着剤層塗工工程でも説明する様に、モアレ解消の為である。全体として大局的に見た時に延びる方向が延在方向dであり、局所的に見たときに延びる方向を局所的延在方向da(不図示)とした時に、局所的延在方向daと大局的な延在方向dとは、略平行関係となっていることが、どの部分でも塗工方向と平行乃至は略平行関係に収めることが出来る点で好ましい。ここで、略平行とは、暗色線条部3の大局的な延在方向dと局所的延在方向daとの成す角度の小さい方の角度(劣角)で、20°以下を意味する。
【0020】
暗色線条部3は、光吸収性の暗色材料で形成することができる。この暗色材料としては有機材料、無機材料、いずれでも良い。例えば、カーボンブラックやアニリンブラック等の光吸収性色材を樹脂バインダに含有させた、塗料(乃至はインク)等の樹脂組成物を用いる。なお、暗色の代表色は黒色だが、画像表示色に悪影響しなければ、低明度の茶褐色、紺色、臙脂色、深緑色等の有彩色もあり得る。
上記樹脂バインダの樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂でも良いが、固化が迅速などの点で、好ましくは、硬化性樹脂、それも、紫外線や電子線で硬化する電離放射線硬化性樹脂を用いるのが望ましい。電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系、エポキシ系、ポリエステル系などの樹脂が挙げられる。
【0021】
〔マイクロルーバー層の形成法〕
透明樹脂層2と暗色線条部3とからなるマイクロルーバー構造のマイクロルーバー層4を形成する方法は(凹陥部rが生じてしまうものであれば)特に限定はない。ここでは、代表的なワイピング法を利用した形成法について説明する。
【0022】
(a)先ず、透明基材1に、暗色線条部3とは逆凹凸形状の溝状凹部が形成された透明樹脂層2を形成する。暗色線条部3とは逆凹凸形状の溝状凹部が形成された透明樹脂層2を形成するには、公知の成形法、例えば、加熱された成形型を熱可塑性樹脂層に押圧する熱プレス法、熱可塑性樹脂組成物を成形型内に注入して固化させるキャスティング法、射出成形法、電離放射線硬化型樹脂組成物を成形型上(内)に注入して電離放射線で硬化させる2P法(フォトポリマー法)等を利用できる。これらの成形法の中でも、2P法は生産性に優れる点でより好ましい。2P法では、シリンダ状(円筒状)の成形型を使用して、暗色線条部3と同形状の凸条部を該シリンダの円周方向に多数、その延在方向を互いに平行にして、所定の間隔で、形成してなる成形型上に、帯状の透明基材シートなどを供給しながら連続的に成形できる。帯状シートとして透明基材1を用いれば、透明基材1上に積層された透明樹脂層2と、その表面に暗色線条部3とは逆凹凸形状で、且つ該帯状透明基材シートの長手方向に延在する溝状凹部とが形成される。
【0023】
(b)次に、上記溝状凹部の形成面上に、溝状凹部の内部及び外部も含めて全面に、暗色線条部3を形成する為の暗色インクを塗工する。暗色インクには、電離放射線硬化性樹脂組成物などの暗色材料を用いることができる。
(c)次に、暗色インクが塗工された塗工面をドクターブレード等で掻き取り溝状凹部の外の暗色インクを除去し、溝状凹部の内部のみに暗色インクを充填して、固化させて暗色線条部3を形成する。
暗色インクの固化時の硬化収縮や溶剤乾燥による体積収縮により、暗色線条部3の露出面には凹陥部rが生成する。
なお、この際、暗色インクの掻き取り方向(ドクターブレード等の透明樹脂層2に対する相対的な進行方向)は、溝状凹部の延在方向と、平行方向、直交方向、或いは斜交方向の何れも可能である。但し、溝状凹部内へは暗色インクを充填し、且つ溝状凹部以外の暗色インクは除去する掻き取り適性が最適な掻き取り方向は、溝状凹部の延在方向と平行方向である。
【0024】
上記の(b)及び(c)の工程がワイピング法に該当する。
以上の結果、透明基材1上に透明樹脂層2と暗色線条部3とからなるマイクロルーバー層4が形成された、光学シート10が得られる。
【0025】
《粘着剤塗工工程》
(B)粘着剤塗工工程では、図1(a)及び図1(b)で示す様に、上記の様にして準備した光学シート10に対して、そのマイクロルーバー層4の暗色線条部3が凹陥部rを有する側の面に、粘着剤5Cを該暗色線条部3の延在方向dに対して、塗工方向dcを平行乃至は略平行な方向に塗工し粘着剤層5を形成する。塗工方向dcとは、粘着剤5Cが被塗工面と初めて接触する部分が、経時的に移動する方向である。
粘着剤の塗工方向dcを、暗色線条部3の延在方向dに対して平行とすることにより、暗色線条部3の露出面eに凹陥部rが存在しても、塗工方向dcでみると、塗工面には凹陥部rに基づく表面凹凸が存在しなくなる。このため、空気の逃げ道が常に確保されることになり、空気が逃げ切れずに残留気泡Gが生じることを回避できる。また、粘着剤5Cの塗工方向dcが暗色線条部3の延在方向dに対して略平行である場合も、空気が逃げ切れない様な急激な表面凹凸が存在しない為に、同様に空気の逃げ道が常に確保されることになり、空気が逃げ切れずに残留気泡Gが生じることを回避できることになる。
【0026】
ところで、暗色線条部3の延在方向dは、長方形など四角形形状とした光学シート100において、四辺のいずれかの辺に対して通常は平行にする。ただ、光学シート100をディスプレイパネルに適用した時に、ディスプレイパネルの配列画素の配列周期と、暗色線条部3の配列周期とが干渉してモアレが発生することを防ぐ為に、上記平行方向からわずかに傾斜させることがある。この様なことも考慮して、塗工方向dcを最終的に四角形形状とする場合の光学シート100に対してその四辺のいずれかの辺に対して平行になる様にして塗工するとき、塗工方向dcと暗色線条部3の延在方向dとは非平行の条件で塗工することになる。しかし、このときでも、塗工方向dcと暗色線条部3の延在方向dとは略平行となる条件で塗工するのが好ましい。ここで、「略平行」とは、暗色線条部3の延在方向dと塗工方向dmとの成す角度の小さい方の角度(劣角)の傾斜角で、20°以下である。この傾斜角が20°を超えると塗工速度を遅くしても残留気泡が生じ易くなる。
【0027】
粘着剤5Cの塗工法は、特に制限はなく公知の方法を適宜採用すれば良い。例えば、ロールコート、ナイフコート、バーコート、カーテンフローコートの他、転写コート等の塗工法である。転写コートとは、予め樹脂フイルムなどの基材上に粘着剤層5として形成した粘着フィルムから、粘着剤層5を転写する方法である。転写コートの場合、粘着フィルムはラミネートローラなどによって被塗工面に加圧して順次転写していく。転写コートでは、粘着剤層5に対する剥離フィルムも同時に転写することもある。
剥離フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂にシリコーン処理などの離型処理した公知のものを用いることができる。
【0028】
粘着剤層5の形成に用いる粘着剤5Cとしては、透明なものであれば特に限定はなく、公知の粘着剤を適宜使用すれば良い。例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ゴム系粘着剤などである。粘着剤層の厚みは、通常15〜50μm程度である。
粘着剤層5は、機能層で述べる近赤外線吸収層など特定光選択層で使用する色素や紫外線吸収剤を含有させて、特定光選択層を兼用させることもできる。或いは、粘着剤層5の厚みを200μm以上(1000μm以下)、より好ましくは500μm以上(800μm以下)とすることによって、耐衝撃層と兼用することもできる。
【0029】
《機能層積層工程》
(C)機能層積層工程では、図1(c)で示す様に、上記粘着剤層塗工工程で形成された粘着剤層5の面に、機能層6を積層して、マイクロルーバー層に接して粘着剤層を有する光学シート100とする。
機能層6は、剛直な板状であっても良いが、フィルム状乃至はシート状のものが積層が容易な点で好ましい。機能層6の積層は、ラミネートローラなどによって粘着剤層面に加圧して順次積層していく。
【0030】
機能層6としては、ディスプレイパネル用の従来の光学シートに於ける各種機能層を適宜採用できる。この様な機能層6は、大別すると光学機能を担う光学機能層と、光学機能以外の機能を担う非光学機能層がある。
光学機能層の例を挙げれば、近赤外線を吸収する近赤外線吸収層、紫外線を吸収する紫外線吸収層、或いは、視覚上の効果が得られる、プラズマディスプレイパネルからのネオン光を吸収するネオン光吸収層、表示画像を好みの色調に補正する色補正層などの、特定波長光の透過を抑制し残りの光は透過させる特定光選択層、通常最外層に設けられる反射防止層(防眩、反射防止、防眩及び反射防止兼用のいずれか)などがある。
光学機能層としては、マイクロルーバー層4であっても良い。この場合、マイクロルーバー層4を2層以上有する光学シート100が得られる。
非光学機能層の例を挙げれば、ディスプレイパネルからの電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽層、表面を保護する表面保護層やハードコート層、帯電防止層、汚染防止層、耐衝撃層、2層間の物質移動を防ぐバリア層などがある。
【0031】
光学機能層及び非光学機能層のそれぞれの各層は、単層で機能を兼用する事もあり、光学機能層と非光学機能層間で兼用する事もある。
【0032】
機能層6は、それ単体では機械的強度が不足する場合など、透明支持体が積層されたものとすることができる。透明支持体には、前記透明基材1で列記した材料を使用することができる。例えば、ハードコート層で言えば、透明支持体とこの透明支持体上に機能実現層として塗工形成された硬質塗膜とからなる構成のハードコート層である。
機能層6の厚みは、例えば20〜1000μmである。
【0033】
機能層6は具体的には、光学機能層では、例えば、近赤外線吸収層、紫外線吸収層、ネオン光吸収層、色補正層などの特定光選択層は、近赤外線吸収層は近赤外線吸収色素を、紫外線吸収層は紫外線吸収剤を、ネオン光吸収層はネオン光吸収色素を、バインダ樹脂中に分散した機能実現層として塗工法などで形成される。
反射防止層としては、例えば、フッ素系化合物を含む低屈折率物質の層や、中空シリカ等の低屈折粒子と樹脂バインダと含む組成物層を、塗工形成したものを用いる。
【0034】
機能層6のうちの非光学機能層では、電磁波遮蔽層の場合では、例えば、ポリエチレンテレフタレートシート等の透明支持体の片面に導電体パターン層を機能実現層として形成する。導電体パターン層には、例えば、導電性組成物(例えば銀ペーストなど)をメッシュ状に透明支持体面に印刷形成した、導電性粒子と樹脂バインダとを含有する導電性組成物層を用いる。導電体パターン層の平面視形状は代表的には正方格子状のメッシュ形状である。
表面保護層やハードコート層は、例えば、硬化性樹脂として熱硬化性ウレタン系樹脂、或いは、アクリル系樹脂等からなる電離放射線硬化性樹脂などが用いられる。表面保護層としては、透明支持体自体でその機能を果たすことも可能である。
【0035】
《その他の工程》
本発明による製造方法は、本発明の主旨を逸脱しない範囲内であれば、上記した工程以外のその他の工程を含んでいても良い。例えば、機能層6は粘着剤層5を介して、透明樹脂層2と暗色線条部3とからなるマイクロルーバー層4の面に積層されるが、透明基材1の面にも機能層6を積層しても良い。或いは、透明基材1の面に、他の層や被着体に貼り付ける為の粘着剤層や、この粘着剤層の面を使用時まで一時的に保護しておく剥離フイルムを積層する工程などである。
【0036】
C.用途
本発明によるマイクロルーバー層に接して粘着剤層を有する光学シート100は、画像表示装置に於ける各種ディスプレイパネルの観察者側に配置される用途に好適に使用される。該ディスプレイパネルは、例えば、プラズマディスプレイパネル、液晶パネル、EL(電界発光)パネルなどである。この様な光学シートを、ディスプレイパネルなどの観察者側に備える画像表示装置は、テレビジョン受像機、測定機器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器、電話機、電子看板、遊戯機器、デジタルフォトフレーム等の画像表示装置として好適である。
この他、住宅、学校、病院、事務所、店舗等の建築物の窓、車両、航空機、船舶等の乗物の窓の覗き見防止或いは直射日光の遮光シートにも使用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 透明基材
2 透明樹脂層
3 暗色線条部
4 マイクロルーバー層
5 粘着剤層
5C 粘着剤
6 機能層
10 光学シート
20 従来の光学シート
100 マイクロルーバー層に接して粘着剤層を有する光学シート
d 暗色線条部の(大局的な)延在方向
dc 塗工方向
e 暗色線条部の露出面
N 法線
r 凹陥部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)延在方向を互いに平行に面方向に多数配列された直線状の暗色線条部と該暗色線条部を少なくとも側面から支持する透明樹脂層とからなるマイクロルーバー層が、透明基材上に形成され、且つ暗色線条部がその露出面に凹陥部を有する光学シートを準備する光学シート準備工程、
(B)上記光学シートのマイクロルーバー層の暗色線条部が凹陥部を有する側の面に、粘着剤を塗工し粘着剤層を形成するときに、該暗色線条部の延在方向に平行乃至は略平行な塗工方向に塗工する粘着剤塗工工程、
(C)粘着剤層を介して機能層を積層する機能層積層工程、
の各工程をこの順に行う、マイクロルーバー層に接して粘着剤層を有する光学シートの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−220739(P2012−220739A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86688(P2011−86688)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】