説明

マイクロ中空デバイス及びCBCセンサ並びにそれらの製造方法

【課題】 μTASによる加工技術を応用して、容易かつ低コストに製造することができ、吸光度測定用光学セル、試料搬送流路、圧力チャンバ、試料混合槽、送液ポンプ等の流体要素およびその複合システムを構成する中空構造体からなるマイクロ中空デバイス、特に微量な血液で血球計数を行うのに適したCBC(Complete Blood Count:血球計数)センサおよびこれらの製造方法を提供することにある。
【解決手段】 ベース基板12と、このベース基板上に形成された光硬化型樹脂からなる厚膜レジスト14と、この厚膜レジスト上に載置された現像液注入穴を設けた透明なカバー基板16とからなり、前記厚膜レジストは、ソフトベークし、前記カバー基板上から前記厚膜レジストに対し露光およびベーク処理して、前記厚膜レジストを硬化させると同時に上下基板を接合させ、前記カバー基板の現像液注入穴15a、15bから現像液を注入し不要部分を溶解除去して、所要のマイクロ中空構造部20を形成した構成からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化型樹脂を主構造材料として使用し、パターニング工程と基板面との接合を同時に行うことにより、製造工程を少なくして製造コストを低減し、しかも集積度の高い構造を得ることができるマイクロ中空デバイス及びCBC(Complete Blood Count:血球計数)センサ並びにそれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、混合物中に存在する様々な物質から個々の物質に分析を行う化学分析装置として、クロマトグラフィ装置が使用されており、このクロマトグラフィ装置においては、管の中に吸着剤を詰めて使用する充填カラムや、中空の管の内壁に吸着剤を塗布して使用するキャピラリカラム等の分離カラムが知られている。
【0003】
このようなクロマトグラフィ装置等において、キャピラリ電気泳動を利用する一般的なμTAS(Micro Total Analysis System :微細全分析システム)に使用するためのマイクロ中空構造体は、例えばシリコン基板にウェットエッチングやドライエッチングを用いて溝加工を施した後、カバー用の基板を陽極接合等の方法により接合して、マイクロ中空構造を製作することが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
すなわち、前記特許文献1には、(1) シリコン基板上に、フォトリソグラフィ技術を用いて1本の溝を、例えば蛇行状にエッチングして溝を形成し、(2) 溝の底部には、例えばアルミニウムを蒸着し、アルミニウムを陽極酸化し、アルミナとして吸着剤を形成し、(3) シリコン基板の上にガラス等の基板を、例えば陽極接合により接合することにより、前記吸着剤が内臓された中空の管状のキャピラリカラムが、シリコン基板とガラス基板に京成され、(4) 前記中空の管状のキャピラリカラムの1つの端管には導入口を、もう1つの端管には導出口を形成するクロマトグラフィ装置が記載されている。
【0005】
また、前述したマイクロ中空構造体を利用する装置として、マイクロ血球カウンタが提案されている(特許文献2参照)。すなわち、この特許文献2には、電極リード部の取り出し構造が簡単で、しかも電極リード部が途中で断線したりせず、また検体血液の詰まりが生じたりしないマイクロ血球カウンタを提供するものであって、(1) 流路(マイクロチャンネル)の途中にアパーチャを形成し、このアパーチャの両側の流路にそれぞれ電極を設け、検体血液を一方の流路側からアパーチャを経て他方の流路側に移動させ、前記検体血液が前記アパーチャを通過する時に生ずるインピーダンス変化を前記両電極によって検出するマイクロ血球カウンタにおいて、(2) 前記各電極を各流路の底部に設けると共に、前記各電極にそれぞれ接続された電極リード部を前記流路底部と同じレベル位置になるように形成することが記載されている。
【0006】
このように、マイクロ血球カウンタにおけるマイクロ中空構造体としての血球計数センサを製作する場合においては、電極配線構造を流路(マイクロチャンネル)中に組み込む場合、カバー用の基板を陽極接合する場合の接合面でのシール性が問題になり、配線パターンの構造に工夫が必要であった。また、基板面から垂直方向への積層ができないため、水平方向へ広げるのみで、大規模なマイクロ中空構造体を製造することは困難であった。
【0007】
一方、樹脂系のマイクロ中空構造体の製造には、ソフトLIGAと呼ばれる手法が知られている。すなわち、この手法は、MEMS(Microelectromechanical System :超小型電子機械装置)で加工製作した微細金型を使用して樹脂の成形を行い、成形された微細部品を組み立てるようにしたものである(特許文献3、4、5参照)。
【0008】
すなわち、この特許文献3には、(1) ダミー部材により中空部形成部材用基材としての銅箔を支持し、この銅箔の上にインクジェットでレジストを所定のパターンに描画した後、溶剤により銅箔をエッチングして、レジストにより特定される所定のパターンを有する中空部形成部材を形成し、(2) その後エポキシ樹脂を金型内に注入して硬化させた後、中空部形成部材およびダミー部材を除去して、中空部用凹部を有する第1デバイス本体を形成し、(3) この第1デバイス本体に、無垢の表面を有する第2デバイス本体を接着して、中空部を有する中空デバイスの製造方法が記載されている。
【0009】
また、前記特許文献4には、(1) 微細で複雑な流路パターンを簡易にかつ低コストで多種多様なパターンに設定することを可能とし、流路パターンの設計の自由度を向上させ、様々な用途に的確にかつ容易に対応することができる中空デバイスの製造方法であって、(2) 金型に設定されたパターンにより中空部の流路パターンを特定し、(3) この金型として異なる機能性パターンを有する複数種のセルおよびブランクセルを使用し、これらの各セルを必要に応じて任意に組み合わせて金型のパターンを設定し、中空部の流路パターンを特定するようにしたことが記載されている。
【0010】
さらに、前記特許文献5には、(1) 微細で複雑なパターンの中空部を有する中空デバイスを簡易にかつ低コストで精度良く製造する中空デバイスの製造方法であって、(2) 型枠内に凸部を有する中空部形成用金型を設置し、この型枠内にエポキシ樹脂等の本体用材料を注入して硬化させて第1デバイス本体を形成し、(3) この第1デバイス本体を、中空部形成用金型から離反して、中空部用凹部を形成し、(4) この第1デバイス本体の中空部用凹部を有する面に、無垢の表面を有する第2デバイス本体を接着して、中空部を有する中空デバイスを製造することが記載されている。
【0011】
しかしながら、前述した樹脂系の中空構造体からなる中空デバイスの製造方法においては、製造コストが安く、基板の接合面におけるシール性は良好であるが、極めて微小な成形部品を組み立てる必要があるため、作業性が悪く、品質の安定した製品の量産化が困難である等の難点がある。
【特許文献1】特開2001−343377号公報
【特許文献2】特開2002−277380号公報
【特許文献3】特開2004− 9273号公報
【特許文献4】特開2004− 90242号公報
【特許文献5】特開2004−276124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、μTASによる加工技術を応用して、容易かつ低コストに製造することができ、吸光度測定用光学セル、試料搬送流路、圧力チャンバ、試料混合槽、送液ポンプ等の流体要素およびその複合システムを構成する中空構造体からなるマイクロ中空デバイス、特に微量な血液で血球計数を行うのに適したCBC(Complete Blood Count:血球計数)センサおよびこれらの製造方法を提供することにある。
【0013】
すなわち、本発明においては、従来の製造技術から飛躍的に製造コストや製造工程を削減することができ、しかも集積度の高いマイクロ中空デバイスないしCBCセンサを製造することができるものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するため、本発明に係る請求項1に記載のマイクロ中空デバイスは、ベース基板と、このベース基板上に形成された光硬化型樹脂からなる厚膜レジストと、この厚膜レジスト上に載置された現像液注入穴を設けた透明なカバー基板とからなることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る請求項2に記載のマイクロ中空デバイスの製造方法は、ベース基板上に、光硬化型樹脂からなる厚膜レジストを形成し、この厚膜レジストの上に現像液注入穴を設けた透明なカバー基板を載置し、前記厚膜レジストをソフトベークし、次いで前記厚膜レジストに対し所要のマイクロ中空構造の形状をカバー基板上から露光およびベーク処理して、前記厚膜レジストを硬化させると同時に上下基板を接合させ、前記カバー基板の現像液注入穴から現像液を注入し不要部分を溶解除去して所要のマイクロ中空構造部を形成することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る請求項3に記載のCBCセンサは、ベース基板と、このベース基板上に形成された光硬化型樹脂からなる厚膜レジストと、この厚膜レジスト上に載置された現像液注入穴を設けた透明なカバー基板とからなり、
前記ベース基板上には少なくとも2つ以上の電極を配置し、前記厚膜レジストには前記電極とそれぞれ対応して隣接するチャンバを形成すると共に前記隣接するチャンバの境界部に血液を流過させるアパーチャを設け、その下流側チャンバをディフューザ型または案内羽根型であることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る請求項4に記載のCBCセンサは、前記カバー基板上から前記厚膜レジストに対し露光およびベーク処理して、前記厚膜レジストを硬化させると同時に上下基板を接合させ、前記カバー基板の現像液注入穴から現像液を注入し不要部分を溶解除去してマイクロ中空構造部を形成し、さらに前記カバー基板の現像液注入穴を血液の導入口および導出口として構成してなることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る請求項5に記載のCBCセンサは、前記光硬化型樹脂をエポキシ樹脂からなる厚膜レジストで構成し、前記透明なカバー基板をガラス基板で構成することを特徴とする。
【0019】
本発明に係る請求項6に記載のCBCセンサの製造方法は、ベース基板上に少なくとも2つ以上の電極を配置すると共にこのベース基板上に、光硬化型樹脂からなるレジストを形成し、この厚膜レジスト上に現像液注入穴を設けた透明なカバー基板を載置し、前記厚膜レジストをソフトベークし、次いで前記厚膜レジストに対して前記電極とそれぞれ対応して隣接するチャンバを形成すると共に前記隣接するチャンバの境界部に血液を流過させるアパーチャを設けてその下流側チャンバをディフューザ型または案内羽根型となるように、カバー基板上から前記厚膜レジストに対して露光およびベーク処理して、前記厚膜レジストを硬化させると同時に上下基板を接合させ、前記カバー基板の現像液注入穴から適宜現像液を注入し不要部分を溶解除去してCBCセンサとしてのマイクロ中空構造部を形成することを特徴とする。
【0020】
本発明に係る請求項7に記載のCBCセンサの製造方法は、前記光硬化型樹脂にはエポキシ樹脂からなる厚膜レジストを使用し、前記透明なカバー基板にはガラス基板を使用することを特徴とする。
【0021】
本発明に係る請求項8に記載のCBCセンサの製造方法は、前記ベース基板上に形成した厚膜レジストに対し、カバー基板を載置する際に、前記ソフトベークをその前後において前記厚膜レジストに施すことを特徴とする。
【0022】
本発明に係る請求項9に記載のCBCセンサは、少なくとも1回のフォトリソグラフィ工程を用いて製作される中空構造を有するCBCセンサにおいて、
少なくとも2つ以上の電極を配置し、前記電極とそれぞれ対応して隣接するチャンバを形成し、チャンバ境界部にチャンバと一体で形成されるアパーチャを設け、その下流側チャンバをアパーチャからの開き角10度から40度のディフューザ形状または下流側チャンバのアパーチャ近傍に開き角10度から40度の案内羽根を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る請求項1および請求項2に記載のマイクロ中空デバイスおよびその製造方法によれば、例えばμTASの製作においては、微細部品を組み立てるような細かな作業を必要としないため、工程数が少なく、加工時間が短くなる等、製品コストの低減に寄与する。また、本発明によれば、光硬化型樹脂を使用して、パターニング工程と基板面との接合を同時に行うため、従来の製造方法に比べて、製作工程が少なくなると共に、部品組み立て後に微細加工を施すことができるため、アライメント作業が容易となる等の利点が得られる。
【0024】
さらに、本発明は、μTASの構成要素として、リアクタ、センサ、圧力チャンバ、ポンプ、これらを連結するチャネル、バルブ等の複数の要素の製作に対して、それぞれ適用することができる。そして、本発明によれば、これらの要素を設計への制約が少ない状態で集積することが可能となる。このように、本発明は、配線層を設けることによる密封構造とした場合のシール性悪化も、樹脂層に吸収することが可能となるので、マイクロ中空構造部の製作に広く応用が可能であり、また中空サンドイッチ構造を、複数層重ねて製作することにより、集積度の高いμTASの作成が可能となる。また、集積度を上げた際の上層部への形状転写による面積度の劣化も、1層毎にカバー基板を設けることにより、面積度を保持したまま集積することが可能となる。
【0025】
また、本発明において、集積が望まれる要素として、流体素子に限らず、センサやヒータ、駆動用配線等、電極配線の組み込みが容易であり、一方、化学分析を行う場合に必要な光学計測を行うための光導波路としての機能も容易に組み込むことができる。すなわち、本発明によれば、ベース基板上に、予め電極配線層をパターニングしておけば、流路内に電極を設置することが可能であり、密封構造とした際のシール性の悪化も、樹脂層により吸収されて問題はない。そして、本発明によれば、配線層を設けることによる密封構造とした場合のシール性悪化も、樹脂層に吸収することが可能となるので、これらの設計要素を設計への制約が少ない状態で集積することが可能となる。
【0026】
本発明に係る請求項3ないし請求項8に記載のCBCセンサおよびその製造方法によれば、前述したように、マイクロ中空構造部の製作を容易かつ低コストに行うことができることから、ベース基板から電極配線層、血球計数センサ層、試料混合チャンバ層、試料搬送配管層、圧力チャンバ層と集積することにより、μTAS型の血球計数器を製作することができる。
【0027】
また、本発明のCBCセンサにおいては、測定時に発生する電気分解ガスが、アパーチャ後流の噴流渦によりチャンバ内において循環して、計測信号が不安定になり正確な測定ができなくなるのを回避し得るように設計されている。すなわち、本発明によれば、下流チャンバがディフューザ形状である場合、アパーチャ後流の噴流渦の発生を防止し、また下流チャンバが案内羽根型である場合、アパーチャ後流の噴流渦による流れの淀みを防止して、電気分解ガスの排出効率を高めることができ、計測信号が安定化して、血球細胞の正確な測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に、本発明に係るマイクロ中空デバイス及びCBCセンサの実施例につき、それらの製造方法との関係において、添付図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明に係るマイクロ中空デバイス10の一実施例を示す外観斜視図であり、図2はこのマイクロ中空デバイス10の分解斜視図である。すなわち、図1および図2において、本実施例のマイクロ中空デバイス10は、パイレックス(登録商標)等からなる平坦度が確保されたベース基板12と、このベース基板12上にスピンコーティングにより均一な膜厚で塗布されたエポキシ樹脂等の光硬化型樹脂からなる厚膜レジスト14と、この厚膜レジスト14上に載置された一対の現像液注入穴15a、15bを設けたパイレックス等の酸化ガラス基板からなる透明なカバー基板16とから構成されている。
【0030】
前記ベース基板12上には、一対の電極17a、17bを配置し、前記厚膜レジスト14には前記電極17a、17bとそれぞれ対応して隣接するチャンバ18a、18bを形成すると共に前記隣接するチャンバ18a、18bの境界部に血液を流過させるアパーチャ19を設けた中空構造部20が設けられる(図3参照)。そして、前記中空構造部20のチャンバ18a、18bとそれぞれ対応するように、前記カバー基板16の現像液注入穴15a、15bが位置決めされる。なお、前記カバー基板16の現像液注入穴15a、15bに対しては、それぞれ配管ジョイント21a、21bが結合される。
【0031】
このように構成したマイクロ中空デバイス10は、前記中空構造部20に配管ジョイント21a、21bを介して試料血液を流すことにより、アパーチャ19を通過する時に生じるインピーダンス変化を電極17a、17bによって検出することができるCBCセンサとすることができる。
【0032】
次に、図4の(a)〜(e)に基いて、本発明に係るマイクロ中空デバイス10の製造工程について説明する。最初に、図5に示す製造工程のフローチャートに基いて、本発明に係るマイクロ中空デバイス10の基本的な製造方法について説明する。
【0033】
図4の(a)に示す平坦度が確保された酸化ガラス基板からなるベース基板12上に、図4の(b)に示すように、光硬化型樹脂SU−8からなるレジスト14をスピンコーティングにより均一な膜厚に塗布し(STEP−1)、この厚膜レジスト14の上に、図4の(c)に示すように、一対の現像液注入穴15a、15bを設けた透明な酸化ガラス基板からなるカバー基板16を載置する(STEP−2)。次いで、前記厚膜レジスト14に対し、65℃で10分間、95℃で45分間のプリベーク処理を行って(STEP−3)、図4の(d)に示すように、所要のマイクロ中空構造部の形状22′をカバー基板16上から露光(STEP−4)およびベーク処理して(STEP−5)、前記厚膜レジスト14を硬化させると同時に上下基板12、16を接合させる。その後、前記カバー基板16の現像液注入穴15a、15bから適宜現像液を注入し不要部分を溶解除去して(STEP−6)、図4の(d)に示すように、所要のマイクロ中空構造22を形成する。
【0034】
なお、前記のマイクロ中空デバイス10の基本的な製造方法においては、レジスト14が未硬化時にカバー基板16を設置するために、設置時に気泡が封入される惧れがある。そこで、このような現象を回避するため、カバー基板16の設置の前後においてそれぞれベーク工程を分割して行い、カバー基板16の設置タイミングを変更することにより、好ましい結果が得られた。そこで、この場合の製造工程について、図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0035】
前記製造工程と同様に、まず平坦度が確保された酸化ガラス基板からなるベース基板12上に、光硬化型樹脂SU−8からなるレジスト14をスピンコーティングにより均一な膜厚に塗布する(STEP−11)。次いで、前記厚膜レジスト14に対し、65℃で10分間、95℃で30分間の第1のソフトベーク処理を行い(STEP−12)、溶媒の揮発を行って、自然冷却により硬化させ(STEP−13)、作業性の良い状態でカバー基板14のアライメントおよび設置作業を行う(STEP−14)。カバー基板14の設置後、95℃で12分間の第2のソフトベーク処理を行う(STEP−15)。以下、前記と同様にして、前記厚膜レジスト14に対し、所要のマイクロ中空構造の形状22′をカバー基板16上から露光およびベーク処理して(STEP−16)、前記厚膜レジスト14を硬化させると同時に上下基板12、16を接合させる。その後、前記カバー基板16の現像液注入穴15a、15bから適宜現像液を注入し不要部分を溶解除去して(STEP−17)、図4の(d)に示すように、所要のマイクロ中空構造部22を形成する。
【0036】
図7の(a)、(b)は、本発明に係るCBCセンサのマイクロ中空構造部の一実施例を示すものである。なお、CBCセンサの中空構造部については、前述したマイクロ中空デバイスの製造方法と共通するため、詳細な説明は省略する。また、説明の便宜上、前述した図1ないし図3に示すマイクロ中空デバイスの構成要素と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して説明する。
【0037】
すなわち、本実施例のマイクロ中空構造部30Aは、ベース基板12上には一対の電極17a、17bを配置し、前記厚膜レジスト14には前記電極17a、17bとそれぞれ対応して隣接するチャンバ18a、18bを形成すると共に、前記隣接するチャンバ18a、18bの境界部に血液を流過させるアパーチャ19を設けて、その下流側チャンバ18bをディフューザ型となるように、前記カバー基板16上から前記厚膜レジスト14に対し露光およびベーク処理して、前記厚膜レジスト14を硬化させると同時に上下基板12、16を接合させる。その後、前記カバー基板16の現像液注入穴15a、15bから現像液を適宜注入し不要部分を溶解除去して、前記ディフューザ型のマイクロ中空構造部30Aを形成し、さらに前記カバー基板16の現像液注入穴15a、15bに配管ジョイント21a、21bを接続して、それぞれ血液の導入口および導出口を構成してものである。なお、前記ディフューザ型の下流側チャンバ18bは、開き角が10〜40であり、特に30度が好ましい。
【0038】
図8の(a)、(b)は、本発明に係るCBCセンサのマイクロ中空構造部の別の実施例を示すものである。なお、CBCセンサの中空構造部については、前述したマイクロ中空デバイスの製造方法と共通するため、詳細な説明は省略する。また、説明の便宜上、前述した図1ないし図3に示すマイクロ中空デバイスの構成要素と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して説明する。
【0039】
すなわち、本実施例のマイクロ中空構造部30Bは、ベース基板12上には一対の電極17a、17bを配置し、前記厚膜レジスト14には前記電極17a、17bとそれぞれ対応して隣接するチャンバ18a、18bを形成すると共に、前記隣接するチャンバ18a、18bの境界部に血液を流過させるアパーチャ19を設けて、その下流側チャンバ18bを乱流防止を行う案内羽根型となるように、前記カバー基板16上から前記厚膜レジスト14に対し露光およびベーク処理して、前記厚膜レジスト14を硬化させると同時に上下基板12、16を接合させ、前記カバー基板16の現像液注入穴15a、15bから現像液を注入し不要部分を溶解除去して、前記案内羽根型のマイクロ中空構造部30Bを形成し、さらに前記カバー基板16の現像液注入穴15a、15bに配管ジョイント21a、21bを接続して、それぞれ血液の導入口および導出口を構成したものである。なお、前記案内羽根型の下流側チャンバ18bは、開き角が10〜40であり、特に30度が好ましい。
【0040】
以上、本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は前述した実施例に限定されることなく、例えばカバー基板の上から厚膜レジストに対し、所要の中空構造部のパターンを露光する場合に、ガラスの光の屈折によるパターンの劣化を防止するために、カバー基板の裏側にクロム等により予めパターンを形成しておくことができる等、本発明の精神を逸脱しない範囲内において、多くの設計変更を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係るマイクロ中空デバイスの一実施例を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示すマイクロ中空デバイスの分解斜視図である。
【図3】図1および図2に示すマイクロ中空デバイスのベース基板に配置した電極と中空構造部との位置関係を示す説明図である。
【図4】(a)〜(e)は本発明に係るマイクロ中空デバイスの製造工程を示す概略説明図である。
【図5】本発明に係るマイクロ中空デバイスの製造工程の一実施例を示すフローチャート図である。
【図6】本発明に係るマイクロ中空デバイスの製造工程の別の実施例を示すフローチャート図である。
【図7】(a)は本発明に係るCBCセンサのマイクロ中空構造部の一実施例を示す説明図、(b)は(a)に示すマイクロ中空構造部の拡大説明図である。
【図8】(a)は本発明に係るCBCセンサのマイクロ中空構造部の別の実施例を示す説明図、(b)は(a)に示すマイクロ中空構造部の拡大説明図である。
【符号の説明】
【0042】
10 マイクロ中空デバイス
12 ベース基板
14 厚膜レジスト
15a、15b 現像液注入口
16 カバー基板
17a、17b 電極
18a、18b チャンバ
19 アパーチャ
20 中空構造部
21a、21b 配管ジョイント
22′ マイクロ中空構造部の形状
22 マイクロ中空構造部
30A マイクロ中空構造部
30B マイクロ中空構造部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板と、このベース基板上に形成された光硬化型樹脂からなる厚膜レジストと、この厚膜レジスト上に載置された現像液注入穴を設けた透明なカバー基板とからなることを特徴とするマイクロ中空デバイス。
【請求項2】
ベース基板上に、光硬化型樹脂からなる厚膜レジストを形成し、この厚膜レジストの上に現像液注入穴を設けた透明なカバー基板を載置し、前記厚膜レジストをソフトベークし、次いで前記厚膜レジストに対し所要のマイクロ中空構造の形状をカバー基板上から露光およびベーク処理して、前記厚膜レジストを硬化させると同時に上下基板を接合させ、前記カバー基板の現像液注入穴から現像液を注入し不要部分を溶解除去して所要のマイクロ中空構造部を形成することを特徴とするマイクロ中空デバイスの製造方法。
【請求項3】
ベース基板と、このベース基板上に形成された光硬化型樹脂からなる厚膜レジストと、この厚膜レジスト上に載置された現像液注入穴を設けた透明なカバー基板とからなり、
前記ベース基板上には少なくとも2つ以上の電極を配置し、前記厚膜レジストには前記電極とそれぞれ対応して隣接するチャンバを形成すると共に前記隣接するチャンバの境界部に血液を流過させるアパーチャを設け、その下流側チャンバをディフューザ型または案内羽根型であることを特徴とするCBCセンサ。
【請求項4】
前記カバー基板上から前記厚膜レジストに対し露光およびベーク処理して、前記厚膜レジストを硬化させると同時に上下基板を接合させ、前記カバー基板の現像液注入穴から現像液を注入し不要部分を溶解除去してマイクロ中空構造部を形成し、さらに前記カバー基板の現像液注入穴を血液の導入口および導出口として構成してなることを特徴とする請求項3記載のCBCセンサ。
【請求項5】
前記光硬化型樹脂をエポキシ樹脂からなる厚膜レジストで構成し、前記透明なカバー基板をガラス基板で構成することを特徴とする請求項3または4記載のCBCセンサ。
【請求項6】
ベース基板上に少なくとも2つ以上の電極を配置すると共にこのベース基板上に、光硬化型樹脂からなるレジストを形成し、この厚膜レジスト上に現像液注入穴を設けた透明なカバー基板を載置し、前記厚膜レジストをソフトベークし、次いで前記厚膜レジストに対して前記電極とそれぞれ対応して隣接するチャンバを形成すると共に前記隣接するチャンバの境界部に血液を流過させるアパーチャを設けてその下流側チャンバをディフューザ型または案内羽根型となるように、カバー基板上から前記厚膜レジストに対して露光およびベーク処理して、前記厚膜レジストを硬化させると同時に上下基板を接合させ、前記カバー基板の現像液注入穴から適宜現像液を注入し不要部分を溶解除去してCBCセンサとしてのマイクロ中空構造部を形成することを特徴とするCBCセンサの製造方法。
【請求項7】
前記光硬化型樹脂にはエポキシ樹脂からなる厚膜レジストを使用し、前記透明なカバー基板にはガラス基板を使用することを特徴とする請求項6記載のCBCセンサの製造方法。
【請求項8】
前記ベース基板上に形成した厚膜レジストに対し、カバー基板を載置する際に、前記ソフトベークをその前後において前記厚膜レジストに施すことを特徴とする請求項6または7記載のCBCセンサの製造方法。
【請求項9】
少なくとも1回のフォトリソグラフィ工程を用いて製作される中空構造を有するCBCセンサにおいて、
少なくとも2つ以上の電極を配置し、前記電極とそれぞれ対応して隣接するチャンバを形成し、チャンバ境界部にチャンバと一体で形成されるアパーチャを設け、その下流側チャンバをアパーチャからの開き角10度から40度のディフューザ形状または下流側チャンバのアパーチャ近傍に開き角10度から40度の案内羽根を形成することを特徴とするCBCセンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−51964(P2007−51964A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238268(P2005−238268)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】