説明

マイクロ波化学反応装置および方法

【課題】加熱効率が高く、加熱ムラが少ないマイクロ波化学反応装置および方法の提供。
【解決手段】導波管からのマイクロ波が照射されるマイクロ波透過材で構成された照射部を有する管状容器と、管状容器を所定の間隔で仕切る仕切部材と、前記仕切部材間に位置する1以上の撹拌翼を有し、前記管状容器を軸通する撹拌軸と、マイクロ波加熱手段と、を設け、前記管状容器内を流れる被加熱物を、撹拌翼で撹拌しながらマイクロ波加熱するマイクロ波化学反応方法および当該方法を実施するための装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱効率が高く、加熱ムラが少ないマイクロ波化学反応装置に関し、特に、連続的に被加熱物が流通する管状のマイクロ波化学反応装置および方法に関する。
なお、本明細書における「管状」とは、管型ないしは筒型の形状を言うものとする。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波に、反応速度の向上や従来の加熱法とは異なる反応が促進するなどの化学反応促進効果が認められていることは公知である(例えば、特許文献1)。これらの効果はしばしばマイクロ波による加熱効果以外の効果、または加熱効果以上の効果という観点からマイクロ波効果またはマイクロ波電界効果、若しくは非熱的効果と呼ばれている。マイクロ波の応用分野は、有機化学、無機化学、セラミックス、医療等幅広く、例えば、有機化学反応としては、特許文献2に開示されるポリエステル樹脂の製造、或いは、特許文献3に示される銅フタロシニアンの製造などが知られている。
【0003】
一般に高温高圧下での被処理物を処理することにより化学反応は促進される。そのための加熱源としては電気ヒーター、バーナー、蒸気などが使用されるが、それらは何れも被加熱物を外部からまたは表面から加熱する手法(外部加熱法)であった。
そこで、出願人等は、開口部に仕切窓としての第1の窓を設置した中空の導波管または同軸線路よりなる化学反応促進用マイクロ波供給装置を設けた高温高圧容器であって、該容器が耐圧容器および反応容器で構成され、耐圧容器の内側に耐熱および/または耐食性の密閉式反応容器を備え、耐圧容器と反応容器の内圧を制御できるようにしたこと、好ましくは内圧を等しくしたものであることを特徴とする高温高圧容器を提言した(特許文献4)。
【0004】
また、大型の反応容器で大量の被加熱物を取り扱いというというニーズがあるが、大型の反応容器では温度制御が難しく、反応が暴走しやすいという問題があった。そこで、出願人等は反応容器の温度に応じて出力を制御しながらマイクロ波を照射できるように反応溶液の加熱手段とともに、該反応溶液を外部強制冷却可能な手段を有し、反応温度の精密制御を可能にしたことを特徴とするマイクロ波化学反応装置(特許文献5)、中空構造の内部を冷媒が循環する冷却部を有する化学反応装置であって、前記冷却部はマイクロ波吸透過性の材質で作られており、且つ冷媒としてマイクロ波透過性の液体冷媒を使用することを特徴とするマイクロ波化学反応装置(特許文献6)を提言した。
【0005】
ところで、マイクロ波を用いない縦型の連続接触反応装置の分野においては、装置反応混合物の流れ方向の逆混合を小さくするために、仕切板を設けて多段構造とすることが一般に行われている(特許文献7)。
また、管内の被処理物を撹拌するために、マイクロ波の反射可能な撹拌羽根を用いることが知られている(特許文献8)。
【特許文献1】特開平11−21127
【特許文献2】特開2003−292594
【特許文献3】特開2003−4544
【特許文献4】特開2002−113349
【特許文献5】WO2005/102510
【特許文献6】WO2005/113133
【特許文献7】特公昭51−18903
【特許文献8】特公平4−68759
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マイクロ波援用合成において再現性と精度を高めるためには、均一混合物の均一加熱パターンを得ることが必須である。加熱ムラの問題は、反応容器の容量が増えるほど顕著となるといえる。また、加熱された金属機器の周辺部分だけ異なる条件で加熱され、均一加熱が妨げられるという問題もある。
【0007】
ところで、管状の反応容器に撹拌翼を設けることで、被加熱物は均一に混合されるため、温度ムラを少なくできることが知られている。しかし、撹拌翼を設けると、流れ方向とは逆方向の混合(逆混合)が発生し、いわゆる押出流れの実現が困難となる。管状容器において、滞留時間分布を狭く保つことは、本発明が解決すべき重要な課題である。
【0008】
本発明は、上記課題を解決することで、加熱効率が高く、加熱ムラが少ないマイクロ波化学反応装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
管状容器における逆混合の問題を解決するためには、管状容器内を仕切部材によって小スペースに仕切ることにより、押出流れにより近い流通を実現し、滞留時間分布を狭くすることが可能である。仕切部材の実現態様としては、管に仕切板を設ける構成や管を軸通する撹拌軸に仕切板を設ける構成が開示される。特に、撹拌軸に仕切板を設ける態様では、既存の管状容器においても、押出流れを実現することが可能である。
【0010】
反応容器にマイクロ波を照射するためには、マイクロ波が照射される箇所がマイクロ波透過材で構成されている必要がある。反応容器の全部をマイクロ波透過材で構成してもよいし、マイクロ波透過材からなる誘電体窓を設けてもよい。前者の場合、導波管の接続箇所が照射部となり、後者の場合、誘電体窓が照射部となる。
【0011】
マイクロ波透過材を通してのマイクロ波照射態様には、空中照射方式と液中照射方式がある。どちらの方式を採用するかは設計事項であるが、加熱効率の観点からは、マイクロ波が被加熱物の直接照射される液中照射方式の方が優れている。
また、液中照射方式ではマイクロ波が被加熱物に直接照射されるため、熱電対や撹拌軸等の金属製部品に高出力のマイクロ波エネルギーが直接作用することを防ぐという有利な効果を奏する場合がある(図6の構成参照)。マイクロ波が誘電体に進入すると、熱に変化して急激に強度が弱くなるので、液中の金属棒への作用は極めて限られたものとなるからである。例えば、25℃の水の場合、わずか1.3cmでマイクロ波の電力密度が1/2に減衰することが知られている。
【0012】
また、反応容器の形状によっては、液中照射方式を採用することで、設計の自由度が高まる場合がある。具体的には、空間照射方式の場合、反応容器に保持された被加熱物を加熱するためのマイクロ波照射位置(または導波管の接続位置)は被加熱物の上面に限定されるため、マイクロ波照射面積(伝熱面積)は制限される。この点、液中照射方式であれば、導波管の接続位置を被加熱物と直に接する場所とすればよく、マイクロ波照射位置の制限は緩和されることとなる。
また、図6に示すように、複数の導波管を設置した場合にも、空間部での反射が無いため、他の導波管の反射波の影響を低減することができ、電波漏れのおそれが少ないという効果もある。マイクロ波の導波管への進入によりインピーダンス整合器(スリースタブチューナー)で整合の調整が極端に難しくなるという問題もない。
また、キャビティ型と比べ、装置全体の大きさを小さくすることができ、電波漏れのおそれが低いことも開示される。
【0013】
また、発明者は、誘電体窓の構成にも工夫を施した。具体的には、(一)窓の面積を導波管の断面積と比べ広くすること、(二)窓の厚さを最適化すること、(三)窓をレンズ形状に構成することにより、次に述べる効果を奏することを可能とした。
(一)誘電体窓の面積を導波管の断面積と比べ広くすることにより、マイクロ波照射面積(伝熱面積)が大きくなり、単位面積当たりのマイクロ波投入エネルギーを低下することができる。その結果、被加熱物に対してマイクロ波を均一に照射することが可能となり、加熱ムラの問題を改善できる。但し、単に面積を広くすればよいという訳ではなく、電磁界の均一性を考慮するのが望ましい。
一般に誘電体中でのマイクロ波の波長は、空気中と比較して1/√ε(ε:誘電体の誘電率)だけ短縮される。例えば、電子レンジ等で使用される2.45GHzの周波数の場合、空気中での波長は約12cmであるが、誘電率ε≒2のテフロン(登録商標)中では約8cmとなり、電界強度の高い場所と低い場所の間隔が狭くなる(例えば、空中照射では約3cmであった間隔が、液中照射では約2cmとなる)。
液中照射の場合、誘電体の窓が直接被加熱物に接触しているため、電界の高い場所と低い場所の間隔が狭い状態で被加熱物にマイクロ波を照射することができ、加熱ムラの問題を改善することができる。
(二)誘電体窓の厚さを最適化することで、誘電体窓から被加熱物を見たインピーダンスと、誘電体窓からマグネトロン側を見たインピーダンスの整合を行い、マイクロ波を効率的に被加熱物に供給することができる。マイクロ波透過材の材質がテフロンであり、被加熱物が水であり、水と接するテフロンの断面積が90×110mmである場合の電磁界解析ソフト(KCC社マイクロストライプス)を用いたシミュレーション結果では、誘電体窓の厚さを15〜50mmの範囲で調整することが望ましいことが分かった。なお、誘電体窓の厚さは、被加熱物の特性、および被加熱物と接する窓の断面積により、適宜最適するものであるが、その際は、反射波がどのぐらい生じるかを指標とするのがよい。
(三)窓を平面とした場合、被加熱物に垂直にマイクロ波が照射されることとなるが、インピーダンスの急激な変化があるため、照射されたマイクロ波の反射率が高く加熱効率が悪い。この点、窓の形状をレンズにすることにより、被加熱物に斜め方向からマイクロ波が照射されることとなり、インピーダンスの変化がマイルドとなり、加熱効率がよくなる。また、レンズ形状を導波管側に構成した場合には、マイクロ波発信器への高周波電力の反射が軽減されるという効果もある。
【0014】
すなわち、第1の発明は、導波管からのマイクロ波が照射されるマイクロ波透過材で構成された照射部を有する管状容器と、管状容器を所定の間隔で仕切る仕切部材と、前記仕切部材間に位置する1以上の撹拌翼を有し、前記管状容器を軸通する撹拌軸と、マイクロ波加熱手段と、を備え、前記管状容器内を流れる被加熱物を、撹拌翼で撹拌しながらマイクロ波加熱するマイクロ波化学反応装置である。
第2の発明は、第1の発明において、前記撹拌軸は、中空の管であり、その内部に熱媒体を循環できることを特徴とする。
第3の発明は、第1または2の発明において、前記仕切部材は、前記撹拌軸に所定の間隔で配設された仕切板により構成されることを特徴とする。
第4の発明は、第3の発明において、前記仕切板が、一部または全部が撹拌翼の形状に構成されることを特徴とする。
第5の発明は、第1ないし4のいずれかの発明において、前記仕切部材は、前記管状容器の内壁に所定の間隔で配設された仕切板により構成されることを特徴とする。
第6の発明は、第1ないし5のいずれかの発明において、前記管状容器は、マイクロ波透過材により構成され、マイクロ波の照射箇所が照射部を構成することを特徴とする。
例えば、図10に示すように、管状容器の全体がマイクロ波透過材からなる構成である。マイクロ波の照射は、図10のような空中照射方式であってもよいし、導波管を直接当接させる液中照射方式であってもよい。
第7の発明は、第1ないし5のいずれかの発明において、前記照射部は、その断面積が導波管の断面積よりも広く、その外側が導波管の内径と同寸の開口部を構成するようマイクロ波漏洩防止部材で覆われることを特徴とする。
例えば、図1〜6に示すように、濡れる側の面の断面積が広い窓を有する構成である。
第8の発明は、第7の発明において、前記開口部と前記照射部の被加熱物側の面との面積比が概ね1.3倍以上となるよう構成したことを特徴とする。
第9の発明は、第6、7または8の発明において、前記照射部の一方の面を、管状容器の内側でマイクロ波を収束させるレンズ形状とすることを特徴とする。
第10の発明は、第6ないし9のいずれかの発明において、前記照射部の一方の面を、管状容器の内側でマイクロ波を発散させるレンズ形状とすることを特徴とする。
第11の発明は、第9または10の発明において、前記照射部の一方の面が、管状容器の外側の面であることを特徴とする。
第12の発明は、第1ないし5のいずれかの発明において、前記管状容器は、マイクロ波透過材により構成され、前記導波管の当接箇所が照射部を構成する反応管と、管部の両端を覆うフランジ部とから構成されることを特徴とする。
例えば、図11に示すように、反応管の両端がフランジ部により覆われる構成である。
第13の発明は、第12の発明において、前記フランジ部の導波管から遠い箇所に熱電対を配設したことを特徴とする。
第14の発明は、第12または13の発明において、前記反応管は複数あり、さらに、二の反応管を連結する反応管より狭径で、撹拌軸が軸通される仕切管を備えることを特徴とする。
例えば、図11に示すように、複数の反応管が仕切管により連結される構成である。
第15の発明は、第14の発明において、前記撹拌軸は、仕切管を軸通する部分において断熱材により被覆されていることを特徴とする。
第16の発明は、第1ないし15のいずれかの発明において、前記導波管が、その長手方向と管状容器の流れ方向が一致するよう接続されることを特徴とする。
第17の発明は、第1ないし16のいずれかの発明において、 前記撹拌翼は、マイクロ波を反射可能に構成されることを特徴とする。
【0015】
第18の発明は、導波管からのマイクロ波が照射されるマイクロ波透過材で構成された照射部を有する管状容器と、管状容器を所定の間隔で仕切る仕切部材と、前記仕切部材間に位置する1以上の撹拌翼を有し、前記管状容器を軸通する撹拌軸と、マイクロ波加熱手段と、を設け、前記管状容器内を流れる被加熱物を、撹拌翼で撹拌しながらマイクロ波加熱するマイクロ波化学反応方法である。
第19の発明は、第18の発明において、前記撹拌軸は、中空の管であり、その内部に熱媒体を循環しながらマイクロ波加熱することを特徴とする。
第20の発明は、第18または19の発明において、前記管状容器の内周面と前記回転軸の外周面との距離が、被加熱物におけるマイクロ波の半減深度の概ね2〜10倍の範囲内であることを特徴とする。
第21の発明は、第18、19または20の発明において、前記撹拌翼は、マイクロ波を反射可能に構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、加熱効率が高く、加熱ムラが少ないマイクロ波化学反応環境を提供することができる。
また、本発明の構造によれば、スケールアップが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のマイクロ波化学反応装置は、大別すると、反応容器そのものがマイクロ波透過材により構成される第一類型と、マイクロ波透過材からなる照射部を有する反応容器を備える第二類型に分類される。以下では、各類型のマイクロ波化学反応装置について説明する。
【0018】
《第一類型》
第一類型のマイクロ波化学反応装置は反応容器自体がマイクロ波透過材により構成され、マイクロ波の照射箇所が照射部となる。また、管状容器を所定の間隔で仕切る仕切部材と、管状容器を軸通し、撹拌翼を有する中空の撹拌軸とを備え、管状容器内を流れる被加熱物を、撹拌軸内を循環する熱媒体で冷却または加熱しながら撹拌翼で撹拌してマイクロ波加熱することができる。かかる構成では、上述のとおり、仕切部材で管状容器内を仕切ることで逆混合の問題を解消することができ、しかも、冷媒で冷却しながらマイクロ波を照射することで、通常より高出力のマイクロ波を照射することが可能となる(特許文献6参照)。
マイクロ波透過材は、マイクロ波を吸収しないマイクロ波透過性の材料であり、例えば、石英やポリテトラフルオロエチレン等をあげることができる。
高出力のマイクロ波を照射する場合には、反応容器に接続する導波管は複数とするのが好ましい。被加熱物の均一加熱を実現するためには、一つの窓から超高出力のマイクロ波を照射するよりも、複数箇所から分散した方がよいからである。
【0019】
前記管状容器を、マイクロ波透過材により構成された反応管と、管部の両端を覆うフランジ部とから構成することも可能である(図11参照)。かかる構成では、反応管を仕切管で連結することにより、異なる条件(例えば異なる温度条件)で反応を行わせる多段の反応槽を有するマイクロ波化学反応装置を実現することも可能である。
また、反応管を仕切管で連結する構成においては、所望の条件に応じたスケールアップも容易である。
なお、第二類型においては、マイクロ波透過材の窓をポリテトラフルオロエチレンやシリカウール等の高温に耐えられるシール材によりシールする必要があるが、第一類型においては窓部のシールは不要となる。
【0020】
《第二類型》
第二類型のマイクロ波化学反応装置は、導波管に接続してマイクロ波を照射するためのマイクロ波透過材からなる窓を有しており、窓の面積は導波管の断面積よりも広く、規定量の被加熱物投入時にその全面が被加熱物と接触状態となる位置にあり、その外側に導波管の内径と同寸の開口部を構成するようマイクロ波漏洩防止部材で覆われている。
第二類型おいては、被加熱物が窓の全面と直接触れた状態で使用されるものであるから、被加熱物が漏れないようにシールすることが必須である。
【0021】
図1は、第二類型にかかる反応容器の特徴を説明するための側面断面図である(なお、原料供給口と被加熱物取出口等は省略している)。同図に示すように、容器本体1には、被加熱物2が注入されており、容器本体1の側部には被加熱物2と全面が接触する位置にマイクロ波透過材3からなる窓が設けられている。窓の外部側の面は、公知のマイクロ波漏洩防止部材4で覆われており、開口部の面積が導波管5の断面積と同じとなるよう構成されている。マイクロ波発信器7から照射されたマイクロ波は、導波管5を通り、窓を通過して、被加熱物2に照射される。マイクロ波透過材3とマイクロ波漏洩防止部材4は必ずしも接触させる必要はなく、同図(b)のごとく、テーパー形状としてもよい。但し、空間体積が増加して複数のマイクロ波のモードが発生すると、後述の液中照射方式の効果を得られ難くなくなるので、複数のモードが発生しない範囲でテーパーさせる。例えば、2.45GHzの場合、導波管の先に設けられた空間長が20cmを越えると複数のモードが発生する可能性が高くなる。
高出力のマイクロ波を照射する場合には、マイクロ波照射用の窓を反応容器に複数設け、複数の導波管を接続するのが好ましい。
【0022】
図2は、誘電体窓を管状に構成した実施態様を示している。同図において、容器本体1は、管状の形状であり、容器本体の内周壁を覆うように管状のマイクロ波透過材3が嵌合されている。容器本体1の側面には導波管5の断面積と同じ面積の開口部6が形成され、窓を構成している。この実施態様において、例えば、管径が150mm(円周約471mm)、マイクロ波透過材3の高さが110mmの場合、マイクロ波透過材の断面積は110×470mmとなる。マイクロ波透過材3に接続される導波管の断面積が110×55mmとすると、導波管の断面積と前記窓の被加熱物側の面との面積比は概ね1:8.5となる。
図3は、図2の窓を複数有した管状の反応容器における実施態様を示している。図2に示すような管状のマイクロ波透過材3を、管状容器11の長さ方向に複数併設した構成例である。この種の管状容器でマイクロ波透過材3を凹形状とした場合、容器の内周壁と同一Rで窓の面を構成すれば、反応容器の内周壁に凹凸を生じさせることなく、凹レンズを取り付けることができる。なお、取り付けるマイクロ波透過材3は、凹形状に限定されるものではなく、凸形状や傾斜面形状等であってもよい。
以上のような管状容器においては、被加熱物との接触面積を増加し、より高レベルでの均一加熱が可能となる。
【0023】
《液中照射方式》
液中照射方式を採用することの技術的意義を説明する。
反応容器の形状によっては、空中照射方式ではなく、液中照射方式を採用した方がよい場合がある。図6の構成で反応容器を大容量化すると、反応溶液の温度が上下に波打つハンチング現象を起こすことが知られており、そのため、反応容器の外部に装着したジャケット等により、外部強制冷却することが行われている。ここで、空中照射方式の場合、先に述べたように、被加熱物の上面が加熱されることとなるが、冷却は反応容器の全体を対象とするため、被加熱物を強く撹拌する必要が生じる。しかし、数十mlクラスの容器であればまだしも、数リットルクラスの容器では、撹拌により熱を均一な状態とすることは難しい。かかる問題は、液中照射方式を利用することで解決できる。例えば、ISM周波帯のマイクロ波(2.45GHz)で利用する導波管の断面積はJIS規格で110×55mmとなるが、本発明では、導波管の断面積と比べ、被加熱物側の窓の断面積が広く構成する必要があり、反応容器が図6のような形状であるとすると、反応容器の直径は少なくとも110mm以上、高さは55mm以上となり、そうすると容器の容量はπr×高さ≒522ml以上となる。すなわち、液中照射方式を利用する本発明の反応容器は、500ml以上で有利な効果を奏し、撹拌軸や原料供給口等の設置スペースを考慮すると、反応容器の容量が1リットル以上の場合に、特に優れた効果を奏する。
【0024】
《照射部の形状》
照射部の面(一面または両面)をレンズ形状にすることの技術的意義を説明する。
照射部が構成する好ましいレンズ形状としては、凹形状、凸形状、または傾斜面形状があげられる。被加熱物との接触面がレンズ形状であり、窓の屈折率と比べ被加熱物の屈折率が大きい場合の例で説明する(図4参照)。
凹形状においては、導波管から照射されたマイクロ波が反応容器の内壁面と近い距離に収束されることとなり、他の窓から照射されたマイクロ波の干渉は最小限とすることができる。また、マイクロ波が収束することにより、スーパーヒート現象が起こりやすくなり、より高いマイクロ波効果を引き出すことが可能になると考えられる。一方で、凹形状とした場合、加熱ムラが生じやすいので、好ましくは複数の導波管を等間隔に配置し、より好ましくは3箇所以上配置することで、複数箇所から分散して加熱を行う構成とするのがよい。さらには、後述するようにマイクロ波は所定の照射角で照射するのが効率的であり、被加熱物に斜め方向からマイクロ波が照射されることにより加熱効率を高めることができる。
傾斜面形状においては、被加熱物に斜め方向からマイクロ波が照射されることにより加熱効率を高めることができる。傾斜面の方向は、反応容器の形状に応じて、上傾斜または下傾斜を選択することができ、反応容器の設計の自由度を高めることができる。
凸形状においては、導波管から照射されたマイクロ波が反応容器内で発散される。すなわち、マイクロ波エネルギーを発散させることによりマイクロ波の照射体積を増加することができるので、加熱ムラが生じにくく、均一加熱を実現することができる。また、被加熱物に斜め方向からマイクロ波が照射されることにより加熱効率を高めることができる。
【0025】
好ましいマイクロ波の照射角は、被加熱物の種類等により一概に言えないが、通常液面に垂直の線からの角度で10°〜85°程度であり、好ましくは20°〜80°程度、より好ましくは30°〜70°、更に好ましくは40〜°65°程度である。そのため、当該好ましい照射角により効率的に加熱できるように、照射部のレンズ形状を適宜設計する。
【0026】
また、照射部の一方の面で構成するレンズ形状は、導波管側(外部側)に、設けてもよい(図5参照)。導波管側に傾斜面形状、凹形状、または凸形状を設けることにより、導波管内における空気中からマイクロ波透過材3へのインピーダンスの変化が徐々に起こるため、マイクロ波発信器7への高周波電力の反射は軽減されることになり、マイクロ波発信器7の寿命を延ばすとことができ、しかも上述の被加熱物側をレンズ形状とした場合の効果を奏することができる。
【0027】
《その他の構成》
最良の形態のマイクロ波発振器は、主にISM周波数帯に該当する2.45GHzのマイクロ波を発生するマグネトロンを使用する。一般に電子レンジ用では単体出力で、500W〜1kWと言われているが、本発明の装置は工業用であるため、1.5kW以上のマグネトロンを使用し、さらに高出力を得るために複数のマグネトロンを用いることを前提としている。
マイクロ波の照射は、連続照射のみならずパルス照射ができることが好ましい。パルス照射することにより通常の加熱法では得られない効果が得られることもあるため、パルス幅と間隔を可変で照射する機能を設けるのがよい。
【0028】
導波管は、マイクロ波が外部に漏れないような素材(例えば、ステンレス製、アルミニウム製など)であればよく、公知の導波管が利用できる。導波管の内径寸法は国内または国際規格で定められており、例えば、マイクロ波の周波数帯が2.45GHzの場合における方形導波管のJIS規格はWRJ−2(110×55mm)となる。
【0029】
反応温度を一定の範囲内に保つ必要がある場合においては、高出力のマイクロ波を照射しながら、反応物を冷却する必要がある。特に、選択した化学反応が発熱反応である場合、マイクロ波照射をOFFにした場合でも自己発熱により自然に反応が進行し、熱暴走につながる危険性がある。
そのため、特許文献5および6に開示されるように、内部を冷媒が循環するジャケットや冷却部で反応容器を覆い、反応容器の温度を制御することが行われる。反応容器が高圧・腐食などにより破損した場合には、ジャケット等が安全カバーの役割を果たすことが期待される。なお、液中照射方式を実現するためには、ジャケット等にも開口部ないしは窓を設ける必要がある。
その他通常の工業用化学反応容器が有する溶媒蒸気凝縮用コンデンサー、不活性ガス導入用ノズル、ガス排出口および被加熱物抜取口等を必要に応じて適宜備えることもできる。
【0030】
以下では、本発明の詳細を実施例で説明するが、本発明は実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0031】
本実施例は、図10に示すように、管状容器11と管状撹拌軸21を組み合わせて構成したマイクロ波化学反応装置に関する。マイクロ波透過材からなる管状容器11は、キャビティ15内を通過するよう構成されており、キャビティ15内を被加熱物2が通過する際に、導波管5からのマイクロ波により、被加熱物2が加熱される。キャビティ15の奥行きは管状容器11の直径と比べ充分に広く、ボックス状のキャビティ15内を貫通する管状容器11にマイクロ波が空中照射方式を採用している。
【0032】
管状容器内に撹拌翼を設けると、流れ方向とは逆方向の混合(逆混合)が発生するという問題が生ずるため、本実施例では、管状容器11内を仕切板によって小スペースに仕切ることにより、押出流れにより近い流通を実現し、滞留時間分布を狭くすることを可能とした。本実施例では、管付け仕切板41と、軸付け仕切板42の2種類の仕切板により管状容器11内を仕切っているが、いずれか一方のみを用いてもよく、管付け仕切板41を設けることが材料工学上難しい場合には、軸付け仕切板42のみで小スペースを構成してもよい。
【0033】
管状容器11内を仕切る際には、少なくとも1以上の撹拌翼が小スペース内に存在することが重要である。本実施例では、管状撹拌軸21に固設した撹拌翼22が小スペース内に1つ存在するよう構成した。なお、小スペースとは、管付け仕切板41と軸付け仕切板42により構成される空間のことであり、図10においては3つの小スペースが開示されている。撹拌翼22は、いわゆるタービン翼の形状に構成されており、撹拌翼としての作用と仕切板としての作用を同時に奏することができる。
【0034】
また、撹拌翼22は、マイクロ波を反射可能な金属で構成されている。マイクロ波の反射可能な金属の攪拌翼を使用する場合には、被加熱物の攪拌ばかりでなく、被加熱物中に照射されたマイクロ波を攪拌散乱させるファンとしての効果と相俟って、容器内の被加熱物を温度ムラ無く、極めて均一に加熱する事が可能となる。
【0035】
また、撹拌軸は、その内部に熱媒体12を流中させることができる管体により構成するのが好ましい。本実施例では、管状撹拌軸21を用いているので、その内部を冷媒または熱媒を流通させることができる。
【実施例2】
【0036】
本実施例のマイクロ波化学反応装置は、図11に示すように、マイクロ波透過材からなる反応管35と、その両端に固設された二つのフランジ部36からなる管状容器11を、仕切管43により連結して構成される。フランジ部36で反応管を閉塞する構成であるため、反応管35の長さや断面積を、所望の条件に合致するものに容易に変更することが可能である。
管状容器11および仕切管43内には、その内部に熱媒体12を循環させることができる管状撹拌軸21が軸通されている。管状撹拌軸21には、軸付け仕切板42が反応管35の長手方向中心に位置するよう設けられており、仕切板42の両側に撹拌翼22が設けられている。本実施例の撹拌翼22の形状は、いわゆるプロペラ型である。
【0037】
図12は、管状容器11内の各要素を分解した斜視図である。同図に示すように、反応管35内には、管状撹拌軸21に設けられた二つの撹拌翼22と、円盤状の軸付け仕切板42が位置し、管状撹拌軸21と反応管35の間に被加熱物2が流通する。
管状撹拌軸21は直径50mmであり、撹拌翼22は厚み15mmであり、軸付け仕切板42は厚み10mmである。反応管35は厚み20mmで、テフロン(登録商標)で構成されている。
【0038】
被加熱物中での電界分布を均一とするためには、管状容器11の液深が最適な範囲となるよう構成するのが好ましい。液深としては、マイクロ波の半減深度(マイクロ波の電界密度が物体表面の値に対して1/2に減衰する深さ)の概ね2〜10倍の範囲内となるよう構成するのが好ましい。液深が半減深度の2倍以下の場合には、マイクロ波が被加熱物に充分吸収される前に撹拌軸で反射されてしまうため、マイクロ波が効率的に吸収されない。一方、液深が半減深度の10倍以上になると、マイクロ波の吸収効率は向上するが、液深の小さい部分で大部分のマイクロ波が吸収されてしまい、液深の大きな部分までマイクロ波が進入しないため、均一な加熱ができない。例えば、半減深度が約13mmの水(25℃)の場合は、液深が26〜130mmとなるよう構成し、半減深度が約4mmのエチレングリコール(25℃)の場合は、液深が8〜40mmの液深になるよう構成する。本実施例では、液深が32.5mmとなるよう構成した。
【0039】
導波管5は、WRJ−2(JIS規格)のもので、その長辺方向が流れ方向と一致するよう配設される。長辺方向と流れ方向とを一致させることにより、マイクロ波が均一に照射されることを、シミュレーション結果から確認することができる。図15は、(1)〜(5)の点線箇所における断面の電界分布を示したシミュレーション結果である。
【0040】
仕切管43の長さは、反応管35の約半分であり、その内周の断面積は反応管の約10分の1となるよう構成されている。仕切管43通過時の被加熱物には、マイクロ波が照射されないため、被加熱物が仕切管43を通過する間に、熱媒体の影響により温度が下降または上昇することが考えられる。そこで、図13に示すように、仕切管43の部分に位置する管状撹拌軸21の周りを熱伝導の悪い断熱材23(テフロン筒)で覆う構成とした。
【0041】
管状容器11a〜11cを構成するフランジ部36には、夫々熱電対13が設けられている。反応管35内に挿入された熱電対13により、反応管35内の温度をモニターすることで、所望の条件となるようにマイクロ波出力を制御することが可能となる。また、マイクロ波透過材で構成された反応管35に挿入孔を設ける場合と比べ、シール構造も複雑にならない。なお、マイクロ波の吸収性の悪い被加熱物を用いる場合には、熱電対13を設ける位置を導波管5からできるだけ遠くにすることで、熱電対13の自己加熱を回避することが好ましい。
【0042】
管状容器11cに被加熱物を注入し、流通させずに効率試験を実施したところ、表1の結果となった。なお、熱媒体12は、35℃で循環させた。
【表1】

【0043】
図14は、図11のAおよびBの位置における温度分布を示すグラフである。図11ではB地点に熱電対は設けられていないが、A地点の熱電対13と対角の位置に測定用熱電対を特別に設けて測定を行った。
図14の線分A(上方の線分)から、A地点での温度が128.7±0.1℃に制御できていることが、線分B(下方の線分)から、B地点での温度が128.3±0.2℃に制御できていることが確認できる。
以上のとおり、本実施例の化学反応装置では、反応容器35無いでは被加熱物が均一に撹拌されており、液だまり(デッドスペース)等が存在しないことを確認することができた。
【実施例3】
【0044】
図7に示すごとく、マイクロ波が3方向から照射可能な装置を用いて水を被加熱物とした加熱試験を実施した。反応容器は金属製10リットル釜(SUS316)であり、ジャケット釜構造となっており、急速降温が可能となっている。また、図示していないが、反応容器の上部には仕込みマンホール、溶媒蒸気凝縮用のコンデンサー、温度センサー挿入用ノズル、不活性ガス導入用ノズルを設け、下部には緊急時或いは切り替え洗浄時に反応基質を抜き出せるノズル(抜き取り口)が設けてある。内部には、回転数が可変なモーターおよび回転軸を介して回転駆動される撹拌羽根が設けてある。
【0045】
反応容器の側面には、テフロン(登録商標)製の誘電体窓が3つ設けられている。3つの窓は全て同一形状であり、厚みは50mm、被加熱物との接触面の曲率はR100であり、窓の被加熱物との接触面の断面積は90×110mmである(図8参照)。ここで、出願人は、図9に示す5つのパターンについて、電磁界解析ソフト(KCC社マイクロストライプス)を用いてシミュレーションを行ったところ(厚み50mmを前提)、伝熱面積の大きさと電磁界の均一性のバランスがよいのは窓の断面積が導波管の断面積の約1.34〜1.82倍の範囲であり、最も好ましい断面積は約1.64倍(90×110mm)であったことを根拠とする。
【0046】
導波管は幅と高さの比率が2:1の標準矩形導波管であり、導波管の断面積は、55×110mmである。マイクロ波の周波数は2.45GHzであり、シングルモード(TE01)、出力は4.5kW(1.5kW×3)である。導波管は反応容器に設けられた3つの窓に接続されている。
反応容器内に水6.5kgを注入したところ、3つの窓の全面積が被加熱物である水と接触状態となった。この状態で、30℃の水を10℃温度昇温させるために必要なマイクロ波の照射時間は4.5kW×70秒であり、加熱効率86%を達成することができた。
【実施例4】
【0047】
実施例3の反応容器において、誘電体窓の厚みを20mmとし、テトラエチレングリコールを被加熱物として加熱試験を実施した。テフロン(登録商標)製の誘電体窓が反応容器の側面に3つ設けられ、各窓の被加熱物との接触面の曲率はR100であり、被加熱物との接触面の断面積は90×110mmである点は、実施例3と同じである。
反応容器内にテトラエチレングリコールを6.5kg注入したところ、3つの窓の全面積が被加熱物である水と接触状態となった。この状態で、30℃のテトラエチレングリコールを10℃温度昇温させるために必要なマイクロ波の照射時間は4.5kW×38秒であり、加熱効率83%を達成することができた。
本実施例により、テトラエチレングリコールを被加熱物とした場合には、水を被加熱物とする場合と比べ、誘電体窓の厚みを薄くできることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の適用対象となるマイクロ波化学反応の種類としては、(1)転移反応、(2)置換反応、(3)付加反応、(4)環化反応、(5)還元反応、(6)酸化反応、(7)ラセミ化反応、(8)開裂反応および脱保護基反応、(9)エステル化反応、(10)合成樹脂の改質反応等が例示されるが、これらに限定されず種々の化学反応に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の反応容器の特徴を説明するための側面断面図である
【図2】誘電体窓を管状に構成した実施態様を示す側面断面図および平面断面図である。
【図3】図2の窓を複数備えた実施態様を示す側面断面図である。
【図4】反応容器に設けた窓の内部側をレンズ形状とした場合の側面断面図である。
【図5】反応容器に設けた窓の外部側をレンズ形状とした場合の側面断面図である。
【図6】空中照射方式と液中照射方式との相違点を説明するための側面断面図である。
【図7】実施例3の装置の要部平面図である。
【図8】実施例3の装置におけるマイクロ波透過材および導波管の接続状況を説明するための斜視図である。
【図9】実施例3の装置におけるマイクロ波透過材の最適断面積算出のシミュレーション結果(上が正面図、下が導波管を含む側面断面図)である。
【図10】実施例1の装置の構成を示した側面断面図である。
【図11】実施例2の装置の構成を示した側面断面図である。
【図12】実施例2の装置の構成要素を説明するための斜視図である。
【図13】実施例2の装置における仕切り管部部分を拡大した側面断面図である。
【図14】実施例2の装置における反応容器内の温度分布を示したグラフである。
【図15】実施例2の装置におけるシミュレーション結果である。
【符号の説明】
【0050】
1 容器本体
2 被加熱物
3,33,34 マイクロ波透過材
4 マイクロ波漏洩防止部材
5 導波管
6 開口部
7,71〜75 マイクロ波発信器
8 撹拌軸
9 温度計
11 管状容器
12 熱媒体
13 熱電対
15 キャビティ
21 管状撹拌軸
22 撹拌翼
23 断熱材
35 反応管
36 フランジ部
41 管付け仕切板
42 軸付け仕切板
43 仕切管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波管からのマイクロ波が照射されるマイクロ波透過材で構成された照射部を有する管状容器と、
管状容器を所定の間隔で仕切る仕切部材と、
前記仕切部材間に位置する1以上の撹拌翼を有し、前記管状容器を軸通する撹拌軸と、
マイクロ波加熱手段と、を備え、
前記管状容器内を流れる被加熱物を、撹拌翼で撹拌しながらマイクロ波加熱するマイクロ波化学反応装置。
【請求項2】
前記撹拌軸は、中空の管であり、その内部に熱媒体を循環できることを特徴とする請求項1のマイクロ波化学反応装置。
【請求項3】
前記仕切部材は、前記撹拌軸に所定の間隔で配設された仕切板により構成されることを特徴とする請求項1または2のマイクロ波化学反応装置。
【請求項4】
前記仕切板が、一部または全部が撹拌翼の形状に構成されることを特徴とする請求項3のマイクロ波化学反応装置。
【請求項5】
前記仕切部材は、前記管状容器の内壁に所定の間隔で配設された仕切板により構成されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかのマイクロ波化学反応装置。
【請求項6】
前記管状容器は、マイクロ波透過材により構成され、マイクロ波の照射箇所が照射部を構成することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかのマイクロ波化学反応装置。
【請求項7】
前記照射部は、その断面積が導波管の断面積よりも広く、その外側が導波管の内径と同寸の開口部を構成するようマイクロ波漏洩防止部材で覆われることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかのマイクロ波化学反応装置。
【請求項8】
前記開口部と前記照射部の被加熱物側の面との面積比が概ね1.3倍以上となるよう構成したことを特徴とする請求項7のマイクロ波化学反応装置。
【請求項9】
前記照射部の一方の面を、管状容器の内側でマイクロ波を収束させるレンズ形状とすることを特徴とする請求項6、7または8のマイクロ波化学反応装置。
【請求項10】
前記照射部の一方の面を、管状容器の内側でマイクロ波を発散させるレンズ形状とすることを特徴とする請求項6ないし9のいずれかのマイクロ波化学反応装置。
【請求項11】
前記照射部の一方の面が、管状容器の外側の面であることを特徴とする請求項9または10のマイクロ波化学反応装置。
【請求項12】
前記管状容器は、マイクロ波透過材により構成され、前記導波管の当接箇所が照射部を構成する反応管と、管部の両端を覆うフランジ部とから構成されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかのマイクロ波化学反応装置。
【請求項13】
前記フランジ部の導波管から遠い箇所に熱電対を配設したことを特徴とする請求項12のマイクロ波化学反応装置。
【請求項14】
前記反応管は複数あり、さらに、二の反応管を連結する反応管より狭径で、撹拌軸が軸通される仕切管を備えることを特徴とする請求項12または13のマイクロ波化学反応装置。
【請求項15】
前記撹拌軸は、仕切管を軸通する部分において断熱材により被覆されていることを特徴とする請求項14のマイクロ波化学反応装置。
【請求項16】
前記導波管が、その長手方向と管状容器の流れ方向が一致するよう接続されることを特徴とする請求項1ないし15のいずれかのマイクロ波化学反応装置。
【請求項17】
前記撹拌翼は、マイクロ波を反射可能に構成されることを特徴とする請求項1ないし16のいずれかのマイクロ波化学反応装置。
【請求項18】
導波管からのマイクロ波が照射されるマイクロ波透過材で構成された照射部を有する管状容器と、管状容器を所定の間隔で仕切る仕切部材と、前記仕切部材間に位置する1以上の撹拌翼を有し、前記管状容器を軸通する撹拌軸と、マイクロ波加熱手段と、を設け、前記管状容器内を流れる被加熱物を、撹拌翼で撹拌しながらマイクロ波加熱するマイクロ波化学反応方法。
【請求項19】
前記撹拌軸は、中空の管であり、その内部に熱媒体を循環しながらマイクロ波加熱することを特徴とする請求項18のマイクロ波化学反応方法。
【請求項20】
前記管状容器の内周面と前記回転軸の外周面との距離が、被加熱物におけるマイクロ波の半減深度の概ね2〜10倍の範囲内であることを特徴とする請求項18または19のマイクロ波化学反応方法。
【請求項21】
前記撹拌翼は、マイクロ波を反射可能に構成されることを特徴とする請求項18、19または20のマイクロ波化学反応方法。

【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−302281(P2008−302281A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150492(P2007−150492)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000180313)四国計測工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】