説明

マイクロ波支援反応を実行するための装置

【課題】適切なパワーのマイクロ波を照射する方法、およびマイクロ波支援反応装置を提供する。
【解決手段】マイクロ波支援反応装置10を、マイクロ波放射源11、内部に複数の異なるタイプの反応容器14を有するキャビティ12、マイクロ波放射源およびキャビティをマイクロ波連通する導波路13、センサ15、インターフェース20、コンピュータコントローラ21から構成し、キャビティ内に位置決めされた反応容器の数および/またはタイプに応答して、マイクロ波放射源の出力を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、自動化されたマイクロ波支援の化学および物理反応を実行するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]「マイクロ波支援化学」との語は、化学反応の開始、加速、または他の制御にマイクロ波周波数内の電磁波を使用することをいう。本明細書で用いられるように、「マイクロ波」との語は、約1ミリメートル(mm)から1メートル(m)の間の波長の電磁放射をいう。比較として、赤外放射は、一般に、750ナノメートル(nm)から1ミリメートル(mm)までの波長を備え、可視線は、約400ナノメートから約750ナノメートルの波長を備え、紫外線は、約1ナノメートルから約400ナノメートルの波長を備えると考えられる。これらの様々な境界は、もちろん制限的なものでなく例示的なものである。
【0003】
[0003]商業的な導入から、マイクロ波支援化学は、強い無機酸でのサンプルの消化のような、比較的に粗野な化学反応に用いられてきた。マイクロ波支援化学の他の初期の商業的な使用は、損失ベースの乾燥分析である。より最近では、商業的に利用できるマイクロ波支援装置は、有機合成およびペプチド合成を含むより複雑なまたはより繊細な反応を増強することができる。
【0004】
[0004]マイクロ波支援化学において、ユーザーは、典型的には、所望の反応(たとえば、特定の消化または合成反応)が適切に実行されることを確保するために、いくつかの変数(たとえば、マイクロ波パワーまたは望まれる反応温度)に関してマイクロ波装置をプログラムする。消化のような粗野な反応においても、適切なマイクロ波パワーおよび反応温度は、サンプルのサイズ、サンプルを収容する容器のサイズ、および容器の数に依存して変わり得る。さらに、異なるタイプの容器は、温度および圧力の耐性が異なり、これは、たとえば、機械的なロバスト性および異なるタイプの容器の排気能力により影響され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005]一般的に、ユーザーは、これらの変数の観点から、またユーザー自身の判断および経験から、適切なマイクロ波パワーを選択、およびいくつかの場合実験的に決定する必要がある。
【0006】
[0006]実験的にパラメータを展開することは有用であるが、マイクロ波支援反応にユーザーエラーを導入する可能性も高める。多くの解析技術において、この導入されたエラーは存在し続け、低い正確性または低い精度の解析結果に反映される。他の状況において、これらの高温度および高圧力が必要または発生する反応の間、装置の実験または手動による設定のミスは、実験の失敗または物理的損傷を含む装置の故障をも生じさせることがある。
【0007】
[0007]他の劇的でない要因として、手動情報の繰り返しの入力、またはマイクロ波支援の中での手動ステップの実行の必要は、実験が実行されるスピードを減じる。この遅れは、マイクロ波技術が、比較的に迅速に多数の測定を実行できるという利点(またはいくつかの場合は要求に適合するため)を提供する場合において、プロセス効率を低下させる。例として、実行中のオペレーションのリアルタイム分析が望まれることがある。それゆえ、サンプルが同定または特性決定(あるいは両方)されるのがリアルタイムに近づくと、必要な修正がすぐに実行され、監視されるプロセスにおいて無用なまたは望ましくない結果を最小化する。
【0008】
[0008]したがって、ユーザーエラーのリスクを最小化または除去し、マイクロ波支援化学の効率を向上させるマイクロ波装置への需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0009]一側面として、本発明は、マイクロ波源、キャビティ、および、マイクロ波源およびキャビティにマイクロ波連通する導波路を含む、マイクロ波支援反応を実行する機器を包含する。この機器は、典型的には、キャビティ内に位置決めされた反応容器の数および/またはタイプを決定するための少なくとも1つの反応容器センサを含む。この機器は、典型的にはインターフェース(たとえば、ディスプレイおよび1つ以上の入力装置など)を含む。
【0010】
[0010]機器は、また、典型的には、コンピュータコントローラを含み、これは、インターフェース、マイクロ波源、および反応容器センサと連絡している。コンピュータコントローラは、キャビティ内に位置決めされる反応容器の数および/またはタイプに応答して、マイクロ波源の出力を開始、調整、維持することができ、また、反応容器内の温度または圧力などの他のファクターに応答してこれらを行うことができる。
【0011】
[0011]他の側面において、本発明は、マイクロ波支援反応を実行する方法を包含する。この方法は、1つ以上の反応容器をキャビティ内に位置決めすることを含む。典型的には、反応容器は、マイクロ波放射に対して実質的に透明である。この方法は、また、少なくとも1つの反応容器センサを用いて反応容器の数および/またはタイプを検出する。望まれる反応が選択された後(たとえばユーザーにより)、容器およびその中身はマイクロ波で照射される。コンピュータコントローラは、(i)反応容器の数および/またはタイプ、(ii)望まれる反応、に応じてマイクロ波パワーを決定する。
【0012】
[0012]本発明の上述の例示的な概要、および他の例示的な目的および/または利点、および同様のことが達成される手法は、以下の詳細な説明および添付図面にさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明によるマイクロ波機器の線図である。
【図2】本発明によるマイクロ波装置の一部の図である。
【図3】本発明によるコンピュータコントローラの例示的な作動方法のフローチャートである。
【図4】本発明によるコンピュータコントローラの他の例示的な作動方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0017]一側面において、本発明は、自動化されるマイクロ波支援反応を実行するための装置(機器)を包含する。
[0018]したがって、図1に示されるように、本発明の一実施形態において、マイクロ波機器10は、(i)図1にダイオード11の記号で示されるマイクロ波放射源11と、(ii)キャビティ12と、(iii)マイクロ波放射源11およびキャビティ12にマイクロ波連通する導波路13と、を含む。
【0015】
[0019]マイクロ波放射源11はマグネトロンとすることができる。しかし、他のタイプのマイクロ波放射源も本発明の範囲内である。たとえば、マイクロ波源はクライストロン、固体装置、またはスイッチパワー供給源とすることができる。これに関して、スイッチパワー供給源の使用は、「Use of Continuously Variable Power in Microwave Assisted Chemistry」という表題の米国特許第6084226に説明されており、この文献の全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0016】
[0020]マイクロ波機器10は典型的には導波路13を含み、これは、マイクロ波源11をキャビティ12へ接続する。導波路13は、典型的には、マイクロ波をキャビティに伝播させ、望ましくないようにマイクロ波が逃げるのを防止するように、マイクロ波を反射する材料で形成される。典型的には、そのような材料は、マイクロ波を方向づけて閉じ込める適切な金属(たとえばステンレス鋼)であり、コスト、強度、成形性、耐腐食性、その他の望まれるまたは適切な基準により選択することができる。
【0017】
[0021]当業界で理解されているように、消化のような、ある種のタイプの粗野な反応において、単一のマイクロ波キャビティ内の複数の別個の反応容器内で複数の反応を実行させることができる。したがって、マイクロ波機器10は、典型的には、キャビティ12内に位置決めされるターンテーブル16を含む。ターンテーブル16は、典型的には、複数の反応容器の位置を備える。マイクロ波機器12は、キャビティ12内のターンテーブルの相対位置(すなわち、角度位置)を決定するためのロータリーエンコーダを含むことができる。
【0018】
[0022]様々なタイプの反応容器14をマイクロ波キャビティ12内に配置することができる。典型的には、複数の反応容器14をマイクロ波キャビティ12内に配置することができる。反応容器14は、マイクロ波放射に対して実質的に透明な材料から形成される。換言すれば、反応容器14は、典型的には、マイクロ波を吸収せずに透過するように設計される。
【0019】
[0023]適切なマイクロ波透過材料は、(限定するものではないが)ガラス、クオーツ、および様々なポリマーを含む。消化に関して、工業性のまたは他の高性能のポリマーは非常に有用であり、様々な形状に正確に成形でき、典型的な消化反応の温度および圧力に耐えることができる。適切なポリマー材料の選択は、当業者の知識の範囲内である。例示的な選択は、(限定するものではないが)ポリアミド、ポリアミド−イミド、フルオロポリマー、ポリアリルエーテルケトン、自己強化ポリフェニレン、ポリフェニルスルホン、および、ポリスルホンを含む。温度および圧力の要求が厳しくない場合、中間の性能のポリマーを選択することができ、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリエステル、および他の類似の組成物とすることができる。非常に低い性能要求である場合、ポリスチレン、ポリプロピレン、およびポリエチレンのようなポリマーも許容範囲となり得る。
【0020】
[0024]マイクロ波機器10は、典型的には、キャビティ12内に位置決めされている反応容器14の物理的な特性を同定するための、1つまたはそれ以上の反応容器センサ15を備える。たとえば、反応容器センサ15は、典型的には、キャビティ12内に装填されている反応容器の数およびタイプを決定する。
【0021】
[0025]様々なタイプの反応容器センサを採用することができる。たとえば、反応容器センサは光学センサとすることができる。これに関し、各容器のターンテーブル16上の位置27は、1つ以上の穴28を備えることができる(たとえば、図2に示される)。図2に示されるマイクロ波機器10は、さらに、1つ以上の反応容器センサを含むことができ、これの1つが反応容器センサ15として示されている。特に、図2は、1つ以上の穴28が塞がれているかどうかを検出するための1つ以上の光学センサ(たとえば、光学透過ビーム検出器)を含む。
【0022】
[0026]基本的な透過ビームセンサは、トランスミッタおよび別個のレシーバを含む。トランスミッタは典型的には、赤外または可視光のスペクトル内の光を生成し、この光は、対応するレシーバで検出される。レシーバへのビームが遮断されると(たとえば、反応容器により)、レシーバはスイッチされた信号を生成する。レトロ反射センサと称される他のバージョンにおいては、トランスミッタおよびレシーバは、1つのハウジング内に統合され、このシステムは、伝達された光をレシーバへ反射させる反射器を含む。ビーム経路内の物体は、スイッチ動作を起動させる。他の選択肢として、散乱反射センサは、単一のハウジング内にトランスミッタおよびレシーバを含み、動作において、検出される物体は、レシーバが適切な信号を発生させるのに十分な光を反射する。そのような装置は、典型的には、150ミリメートルから80メートルまでの範囲を備えることができる。したがって、適切な透過ビームシステムは、過度の実験なしに当業者が選択でき、組み込むことができる。
【0023】
[0027]典型的には、反応容器センサ15は、キャビティ12内の固定位置に配置される。すなわち、反応容器センサ15は、各センサ15が検出機能(たとえば、各反応容器位置27における1つ以上の穴28が塞がれているかどうかを検出する)を実行することができる任意の適切な位置に配置することができる。
【0024】
[0028]各反応容器14は、ターンテーブル16上の1つ以上の穴28を塞ぐための1つ以上の突起部(たとえば、反応容器の底に配置される)を含むことができる。反応容器14上の突起部の数および配置は、反応容器のタイプ(たとえばサイズ)に対応するものとすることができる。反応容器センサ15は、ターンテーブル16上の各反応容器位置27においてどの穴28が塞がれているかを検出する。したがって、反応容器センサ15(たとえば光学センサ)は、ターンテーブル16上に配置される反応容器の数およびタイプを決定するのに用いることができる。
【0025】
[0029]代替実施形態において、反応容器のタイプを示すバーコードを読むために、1つ以上のバーコードリーダーを採用することができる。図1は、反応容器センサ15により読むことができるバーコード17を備えるものとして、各反応容器14を示している。
【0026】
[0030]他の代替実施形態において、反応容器のタイプを示すRFIDタグを読むために、1つ以上のRFID(電波による個体識別、radio-frequency identification)リーダーを採用することができる。たとえば、各反応容器は、能動、半受動、受動のRFIDタグを含むことができる。
【0027】
[0031]他の実施形態において、各反応容器は、反応容器のタイプを同定する1つ以上の光源(たとえば発光ダイオード)を含むことができる。そのような反応容器の存在およびタイプを検出するために光検出器(たとえばフォトダイオード)を用いることができる。
【0028】
[0032]さらなる実施形態において、マイクロ波機器は、マイクロ波パワー、典型的には低マイクロ波パワーを用いて反応容器の加熱を開始することができる。代替的に、反応容器は、マイクロ波機器内に配置される前に加熱するようにすることができる。反応容器のこの最初の加熱は、周囲の空気温度よりも上に反応容器の温度を上げる。したがって、反応容器の存在および数を検出するために1つ以上の赤外センサを用いることができる。さらに、反応容器の各タイプは、典型的には特有の赤外プロファイルを備える。それゆえ、赤外センサは、測定した赤外プロファイルを、特定のタイプの反応容器に期待される赤外プロファイルとマッチングすることにより、反応容器のタイプを決定するのにも用いることができる。
【0029】
[0033]他のタイプの反応容器センサは、マイクロ波機器の動作に望ましくなく干渉しない限り本発明の範囲内にある。
[0034]いくつかの実施形態において、1つ以上の重量センサ18をキャビティ12内に位置決めすることができる。重量センサは、反応容器内の材料の重量(たとえばサンプル重量)を検出するために用いることができる。例として、重量センサは、天秤、計り、または他の好適な装置とすることができる。
【0030】
[0035]マイクロ波機器は、典型的には、インターフェース20およびコンピュータコントローラ21を含む。
[0036]インターフェース20は、マイクロ波機器10のユーザーが、マイクロ波機器で実行される反応のタイプを特定できるようにする。インターフェース20は、典型的には、ディスプレイ22、および1つ以上の入力装置23を含む。任意の適切な入力装置を採用することができ、たとえば、ボタン、タッチスクリーン、キーボード、コンピュータの「マウス」、またはコンピュータまたは他のパーソナルディジタル機器の他の入力接続部などである。ディスプレイ22は、制御され、またはアドレス可能な液晶ディスプレイ(LCD)のセットで最も一般的に形成される。つまり、ディスプレイは、陰極線管(CRT)、発光ダイオード(LED)、または他の適切なディスプレイ媒体を含むことができる。
【0031】
[0037]コンピュータコントーラ21は、典型的には、インターフェース20、マイクロ波放射源11、および反応容器センサ15と連絡する。また、コンピュータコントローラ21は、典型的には、重量センサまたはロータリーエンコーダのようなマイクロ波機器内の他の装置と連絡する。コンピュータコントローラ21は、典型的には、マイクロ波の適用(たとえばマイクロ波源11から)の制御(たとえば調整)のために用いられ、センサ(たとえば反応容器センサ15)から得られた情報に応答して、マイクロ波機器10内で、マイクロ波適用の開始、停止、または調整などを含む。これに関して、コンピュータコントローラ21は、典型的には、プロセッサ、メモリ、入/出力インターフェースを含む。コントローラおよびマイクロ波プロセッサの動作は、一般に、適切な電子機器分野においてよく理解されており、ここではこれ以上は詳細に説明しない。例示的な議論は、たとえば、DorfによるThe Electrical Engineering Handbook, 2d Edition (1997) by CRT Press at Chapters 79-85 and 100に議論されている。
【0032】
[0038]コンピュータコントローラ21は、反応容器の数およびタイプと、所定の方法(たとえばアルゴリズム)による特定の反応(たとえば、有機材料の硝酸消化のような消化反応)を実行するのに必要なマイクロ波パワーとの間の記憶された関係を含み、図1の符号24で概略的に示されている。コンピュータコントローラ21は、典型的には、複数の予め決定された方法を含み(たとえばROM内に)、それぞれは具体的な反応に関係付けられる。これらのあ予め記憶された関係は、コンピュータコントローラ21が、反応容器センサ15から受け取るデータ(たとえば反応容器の数およびタイプ)に応答してマイクロ波パワーを調整することを可能にする。
【0033】
[0039]反応中にフィードバック情報(たとえば、反応容器14内の温度および圧力)を提供するために、追加のセンサをコンピュータコントローラ21に接続するようにしてもよい。
【0034】
[0040]たとえば、マイクロ波機器10は、1つ以上の圧力センサ25を含むことができる。圧力センサ25は、光学圧力センサを含むことができる。光学圧力センサの例は、独国特許DE19710499号明細書に開示されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0035】
[0041]さらなる例として、反応容器内の温度を検出するための赤外センサ(たとえば、光学温度計)のような1つ以上の温度センサ26を、マイクロ波機器10内に位置決めすることができる。熱電対のような他のタイプの温度センサ26も本発明の範囲内である。
【0036】
[0042]圧力検出は、典型的には、反応容器の中またはそれに隣接してトランスデューサ(図示せず)を適切な位置に配置することで実行でき、容器内で生成される圧力は、トランスデューサを圧迫し、または、トランスデューサに伝達され、これが圧力に基づいて電気信号を生成する。圧力トランスデューサの原理および動作は、当業界でよく知られており、当業者は所望により過度の実験をすることなくトランスデューサを選択および位置決めすることができる。
【0037】
[0043]コンピュータコントローラ21は、このフィードバック情報(たとえば、圧力センサおよび/または温度センサから受け取る情報)に応答して、マイクロ波パワーをさらに調整するようにプログラムすることができる。
【0038】
[0044]例として、それぞれの予め画定された反応方法は、理想的な温度情報を含むことができる。たとえば、予め画定された反応方法は、理想的な温度と時間との関係を含むことができる(たとえば、反応容器内の理想的な温度の時間による関数)。さらに、予め画定された反応方法は、理想的な温度とマイクロ波パワーとの関係を含むことができる。コンピュータコントローラ21は、反応容器内の測定された温度を理想的な温度と比較する。コンピュータコントローラ21は、理想的な温度と測定された温度と間の差を最小化するために、マイクロ波パワーを調整する。
【0039】
[0045]インターフェース20は、マイクロ波機器が実行するプログラムされた反応(たとえば消化または合成反応)をユーザーが選択できるようにする。たとえば、インターフェース20は、タッチスクリーンインターフェースを含むことができる。そのようなタッチスクリーンの入手可能性、プログラミング、および使用は、当業界でよく理解されており、これ以上は詳細に説明しない。
【0040】
[0046]ユーザーが所望の反応を選択した後、インターフェース20はこの情報をコンピュータコントローラ21へ伝達する。コンピュータコントローラ21は、ユーザーが選択した反応に対応する適切なプログラムされた方法を選択する。事実上、ユーザーが特定すべきことは、所望の反応であり(たとえば、ユーザーインターフェースの単一のタッチ);ユーザーは、コンピュータコントローラにより考慮される他の関連する変数(たとえば、反応容器のタイプ、反応容器の数、および/または反応容器内の温度)を特定する必要はない。
【0041】
[0047]本発明の他の側面において、コンピュータコントローラは、典型的には、学習モードを含む。学習モードにおいて、コンピュータコントローラは、ユーザーが選択した反応の間に、理想的な温度とマイクロ波パワーとの関係(たとえば、理想的な温度対マイクロ波パワーのカーブ)のプログラムされた関係と、温度とマイクロ波パワーと実際の関係との差を決定する。コンピュータコントローラは、理想と実際の関係の間のこの差を使用し、ユーザーが選択した反応に対応するプログラムされた方法を修正し、次の反応におけるこのエラーを最小化する。換言すれば、コンピュータコントローラは、プログラムされる方法を修正し、後の反応により生成される実際の温度対パワーの関係をより理想的な関係に近づくようにする。
【0042】
[0048]例として、学習モードは、マイクロ波の上昇の最後において、温度エラー(すなわち、温度対パワーのカーブの理想と実際との間のエラー)を最小化するために用いることができ、それにより、予め画定されたエラー範囲内で、実際の反応温度が、予め決定された理想的な保持温度(または温度範囲)になる時間を最大化する。
【0043】
[0049]コンピュータコントローラは、学習モードにおいて、ユーザーが選択した反応が実行されるユーザーの各時間により実行されることができる。したがって、プログラムされた方法は、連続的に洗練され、温度対パワーのカーブの実際と理想との間の差を最小化し、反応が実行されるにしたがって機器はより効率的に動作できるようになる。
【0044】
[0050]図3は、コンピュータコントローラ21の例示的な作動方法のフローチャートを示している。まず、ステップ30において、インターフェース20は、ユーザーが選択した反応をコンピュータコントローラ21に送る。次に、ステップ31において、コンピュータコントローラ21は、反応容器センサ15と通信して、反応容器の数およびタイプを決定する。ステップ32において、コンピュータコントローラ21は、ユーザーが選択した反応に関連するアルゴリズムを開始する。
【0045】
[0051]ステップ33においては、コンピュータコントローラ21は、アルゴリズムが実行を終了させたかどうかを評価する。アルゴリズムが終了している場合、コントローラ21は、ステップ39において本方法を終了させる。アルゴリズムが終了していない場合、コンピュータコントローラ21は、ステップ34において、反応容器内の温度の決定(たとえば温度センサ26を用いる)を進める。ステップ35において、コンピュータコントローラ21は、測定された温度と理想の温度との間にエラーがあるかどうかを計算する。エラーが存在する場合、コンピュータコントローラ21は、ステップ36において、マイクロ波パワーを調整する(たとえば、マイクロ波放射源11の出力を調整することにより、または、マイクロ波源とキャビティとの間のマイクロ波の伝播を調整することにより行う)。
【0046】
[0052]ステップ37において、コンピュータコントローラ21は、学習モードが可能であるかどうかを評価する。学習モードが可能である場合、ステップ38において、コンピュータコントローラ21は、温度とマイクロ波パワーとの間の記憶された関係を調整し、後の反応でのエラーを減少させる。
【0047】
[0053]図4は、コンピュータコントローラ21を作動させる方法の他の例示的な方法のフローチャートを示している。まず、ステップ40において、インターフェース20は、ユーザーが選択した反応をコンピュータコントローラ21に送る。次に、ステップ41において、コンピュータコントローラ21は反応容器センサ15と通信し、反応容器の数およびタイプを決定する。ステップ42において、コンピュータコントローラ21は、ユーザーが選択した反応に関連付けられるアルゴリズムを開始する。
【0048】
[0054]ステップ43は、コンピュータコントローラ21は、アルゴリズムの動作が終了したかどうかを評価する。アルゴリズムが終了している場合、コントローラ21は、ステップ49において本方法を終了させる。アルゴリズムが終了していない場合、コンピュータコントローラ21は、ステップ44において、反応容器内の温度の決定を進める(温度センサ26を使用して)。
【0049】
[0055]図3に示される方法とは異なり、この方法は、測定した温度と理想の温度との間にエラーが存在するかどうかを決定するステップを含まない。本方法では、ステップ45において、コンピュータコントローラ21は、測定された温度が最大許容温度より高いかどうかを計算する。例として、最大許容温度は、マイクロ波の上昇の最後において理想保持温度に対応させることができる。代替的に、最大許容温度は、安全性を考慮して決定することができる。
【0050】
[0056]温度があまりに高い場合、コンピュータコントローラ21は、ステップ46においてマイクロ波パワーを調整する(たとえば、マイクロ波放射源11の出力を調整することにより、または、マイクロ波源とキャビティとの間のマイクロ波の伝播を調整することにより行う)。
【0051】
[0057]本発明によるマイクロ波機器は、動作エラーを減少させることを助け、マイクロ波支援反応の利便性、安全性、効率を改良する。
[0058]明細書および図面において、本発明の典型的な実施形態が開示された。本発明は、それらの例示的な実施形態に限定されない。「および/または」との語の使用は、関連する列挙される項目の任意の1つ以上のまたはその組み合わせを含む。図面は、概略的な描写であり、寸法通りではない。特別に記載しない限り、個別の用語は、一般的および説明的な意味で用いられており、限定する意味で使用されていない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波支援反応を実行するための機器であって、
マイクロ波放射源と、
キャビティと、
前記マイクロ波放射源および前記キャビティにマイクロ波連通する導波路と、
前記キャビティ内に位置決めされる反応容器の数および/またはタイプを決定するための、少なくとも1つの反応容器センサと、
インターフェースと、
前記インターフェース、前記マイクロ波放射源、および前記反応容器センサに連絡するコンピュータコントローラと、を有し、前記コンピュータコントローラは、前記反応容器センサが前記キャビティ内に位置決めされていると決定した前記反応容器の数および/またはタイプに応答して、前記マイクロ波放射源の出力を調整することができる、機器。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロ波支援反応を実行するための機器であって、さらに、前記コンピュータコントローラと連絡する、前記キャビティ内に位置決めされた反応容器内の温度を検出するための少なくとも1つの温度センサを有する、機器。
【請求項3】
請求項2に記載のマイクロ波支援反応を実行するための機器であって、前記コンピュータコントローラは、前記温度センサから受け取る温度データに応答して、前記マイクロ波放射源の出力を調整することができる、機器。
【請求項4】
請求項2に記載のマイクロ波支援反応を実行するための機器であって、前記コンピュータコントローラは、反応容器内の理想的な温度と、1つまたはそれ以上の反応を実行するのに必要とされるマイクロ波パワーと間の記憶された関係を含み、
前記温度センサから受け取る温度データに応答して、前記コンピュータコントローラは、前記反応容器内の理想的な温度と、1つまたはそれ以上の反応を実行するのに必要とされるマイクロ波パワーとの間の記憶された関係を調整し、理想的な温度と測定された温度との間の差を減少させる、機器。
【請求項5】
請求項1に記載のマイクロ波支援反応を実行するための機器であって、さらに、前記キャビティ内に位置決めされた反応容器内の圧力を検出する、前記コンピュータコントローラと連絡する少なくとも1つの圧力センサを有する、機器。
【請求項6】
請求項5に記載のマイクロ波支援反応を実行するための機器であって、前記コンピュータコントローラは、前記圧力センサから受け取る圧力データに応答して、前記マイクロ波放射源の出力を調整することができる、機器。
【請求項7】
請求項1に記載のマイクロ波支援反応を実行するための機器であって、さらに、マイクロ波放射に実質的に透明な、1つまたはそれ以上の反応容器を有する、機器。
【請求項8】
請求項1に記載のマイクロ波支援反応を実行するための機器であって、さらに、複数の反応容器位置を画定する、前記キャビティ内に位置決めされるターンテーブルを有する、機器。
【請求項9】
請求項8に記載のマイクロ波支援反応を実行するための機器であって、
前記ターンテーブルは、前記反応容器位置の少なくとも1つにおいて、複数の穴を画定し、
前記反応容器センサは、前記穴の1つまたはそれ以上が反応容器により塞がれているかどうかを検出するための、少なくとも1つの光学センサを有する、機器。
【請求項10】
請求項1に記載のマイクロ波支援反応を実行するための機器であって、さらに、反応容器内のサンプル重量を検出するための少なくとも1つの重量センサを有する、機器。
【請求項11】
請求項1に記載のマイクロ波支援反応を実行するための機器であって、前記マイクロ波放射源はマグネトロンを有する、機器。
【請求項12】
請求項1に記載のマイクロ波支援反応を実行するための機器であって、
前記反応容器センサは、前記キャビティ内に位置決めされた反応容器の数およびタイプを決定し、
前記コンピュータコントローラは、前記反応容器センサが前記キャビティ内に位置決めされていると決定した反応容器の数およびタイプに応答して、前記マイクロ波放射源の出力を調整することができる、機器。
【請求項13】
請求項1に記載のマイクロ波支援反応を実行するための機器であって、
前記反応容器センサは少なくとも1つのバーコードリーダーを有する、機器。
【請求項14】
請求項13に記載のマイクロ波支援反応を実行するための機器であって、さらに、マイクロ波放射に実質的に透明な反応容器を有し、前記反応容器はバーコードを含む、機器。
【請求項15】
請求項1に記載のマイクロ波支援反応を実行するための機器であって、前記反応容器センサは、少なくとも1つのRFIDリーダーを有する、機器。
【請求項16】
請求項15に記載のマイクロ波支援反応を実行するための機器であって、さらに、マイクロ波に実質的に透明な反応容器を有し、前記反応容器はRFIDタグを含む、機器。
【請求項17】
請求項1に記載のマイクロ波支援反応を実行するための機器であって、前記コンピュータコントローラは、反応容器の数および/またはタイプと、1つまたはそれ以上の反応を実行するのに必要とされるマイクロ波パワーとの間の記憶された関係を含む、機器。
【請求項18】
マイクロ波支援反応を実行する方法であって、
1つまたはそれ以上の反応容器およびその内容物をキャビティ内に位置決めすることを有し、前記反応容器は、マイクロ波放射に実質的に透明であり、前記キャビティはマイクロ波放射源とマイクロ波連通し、
前記方法はさらに、少なくとも1つの反応容器センサを用いて反応容器の数および/またはタイプを検出することと、
所望の反応を選択することと、
前記容器およびその内容物をマイクロ波で照射し、(i)反応容器の検出された数および/またはタイプ、および(ii)所望の反応、に応答して、コンピュータコントローラでマイクロ波パワーを制御すること、を有する、方法。
【請求項19】
請求項18に記載のマイクロ波支援反応を実行する方法であって、さらに、前記反応容器内の温度を監視することを有する、方法。
【請求項20】
請求項19に記載のマイクロ波支援反応を実行する方法であって、さらに、監視される温度に応答して、マイクロ波パワーを調整することを有する、方法。
【請求項21】
請求項20に記載のマイクロ波支援反応を実行する方法であって、さらに、(i)反応容器内の理想的な温度と、(ii)1つまたはそれ以上の反応を実行するのに必要とされるマイクロ波パワーと、の間の関係を記憶することを有し、前記関係は前記コンピュータコントローラ内に記憶される、方法。
【請求項22】
請求項21に記載のマイクロ波支援反応を実行する方法であって、前記反応容器内の温度を監視するステップは、監視される温度に応答して、反応容器内の理想的な温度と、1つまたはそれ以上の反応を実行するのに必要とされるマイクロ波パワーとの間の記憶された関係を調整し、理想的な温度と監視される温度との間の差の減少を促進する、方法。
【請求項23】
請求項18に記載のマイクロ波支援反応を実行する方法であって、さらに、前記反応容器内の圧力を監視することを有する、方法。
【請求項24】
請求項23に記載のマイクロ波支援反応を実行する方法であって、さらに、監視される圧力に応答して、マイクロ波パワーを調整することを有する、方法。
【請求項25】
マイクロ波支援化学反応を実行する方法であって、
反応容器センサを用いて反応容器の物理的特性を同定することと、
前記反応容器の物理的特性に関する情報をコンピュータコントローラへ伝達することと、
前記反応容器の内容物にマイクロ波放射を適用することと、
前記反応容器の同定された物理的特性に基づいて、マイクロ波パワーをコンピュータコントローラで制御することと、を有する方法。
【請求項26】
請求項25に記載のマイクロ波支援反応を実行する方法であって、さらに、前記反応容器内の温度を監視することを有する、方法。
【請求項27】
請求項26に記載のマイクロ波支援反応を実行する方法であって、さらに、監視される温度に応答してマイクロ波パワーを調整することを有する、方法。
【請求項28】
請求項27に記載のマイクロ波支援反応を実行する方法であって、さらに、(i)反応容器内の理想的な温度と、(ii)1つまたはそれ以上の反応を実行するのに必要とされるマイクロ波パワーと、の間の関係を記憶することを有し、前記関係はコンピュータコントローラ内に記憶される、方法。
【請求項29】
請求項28に記載のマイクロ波支援反応を実行する方法であって、前記容器内の温度を監視するステップは、監視される温度に応答して、反応容器内の理想的な温度と、1つまたはそれ以上の反応を実行するのに必要とされるマイクロ波パワーとの間の記憶された関係を調整し、理想的な温度と監視される温度との間の差の減少を促進する、方法。
【請求項30】
請求項25に記載のマイクロ波支援反応を実行する方法であって、さらに、反応容器内の圧力を監視することを有する、方法。
【請求項31】
請求項30に記載のマイクロ波支援反応を実行する方法であって、さらに、監視される圧力に応答して、マイクロ波パワーを調整することを有する、方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【公開番号】特開2013−13890(P2013−13890A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−145735(P2012−145735)
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【出願人】(500119569)シーイーエム・コーポレーション (16)
【Fターム(参考)】