説明

マイクロ波検知装置

【課題】簡易な構成で5以上の異なる周波数バンドのマイクロ波を検知可能な装置を提供する。
【解決手段】マイクロ波アンテナ1と、アンテナの受信信号の周波数を所定の第1中間周波数に変換する2つの第1局部発信器3と、受信信号と第1局部発信器の出力信号とを混合する第1混合器2と、第1混合器の出力信号を選択的に増幅する第1中間周波増幅器5と、第1中間周波増幅器の出力信号の周波数を所定の第2中間周波数に変換する2つの第2局部発信器7と、第2局部発信器及び第1中間周波増幅器の出力信号を混合する第2混合器6と、第2混合器の出力信号を選択的に通過させる第2中間周波数フィルタ8と、フィルタの出力信号を増幅する第2中間周波増幅器9と、第2中間周波増幅器の出力信号が所定の強度以上か否かを検出する検出器10と、各発信器の発信周波数等を制御する制御部11とを備えるマイクロ波検知装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波検知装置に関し、特に、マルチバンドの周波数のマイクロ波を検知する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の位置測定や、速度測定等の目的でマイクロ波を用いた各種測定装置が広く用いられている。例えば、自動車の速度測定には、マイクロ波を利用したレーダ(以下、「レーダ波」という)を用いるスピード測定装置が用いられている。このレーダ波は、混信等を避けるため、各々異なる周波数バンドを用いて送信される。例えば、Xバンドと呼ばれる10.5GHzのマイクロ波、Kuバンドと呼ばれる13.4GHzのマイクロ波、Kバンドと呼ばれる24.1GHzのマイクロ波、KaバンドLと呼ばれる34.3GHzのマイクロ波、KaバンドUと呼ばれる35.1GHzのマイクロ波が用いられている。
【0003】
そこで、従来、マイクロ波をマルチバンドで検知するにあたって、例えば、特許文献1に記載のマイクロ波検出器は、受信しようとする目的の周波数に応じた電圧領域毎に電圧降下の比率を変え、受信手段が有する電圧制御型発信器における電圧−周波数特性に対して逆特性となるように比率を設定することにより、同一バンドの信号がスイープ中の度量域で検出されても、そのピークの発生する時間の間隔が略々同一になり、検出される真のレーダー波信号の検出間隔が正確になり、その結果として、受信した信号のバンドを判別可能に構成されている。
【0004】
また、特許文献2に記載のレーダデテクタは、VCO回路を用いて広帯域を周波数掃引してレーダ信号を検出するにあたって、アンテナで受信したレーダ信号を電圧制御発信器の出力信号に基づいて復調する受信部と、掃引信号を発生して電圧制御発信器に制御信号として供給する掃引信号発生部と、掃引信号と発振周波数との関係を示すデータを予め格納するメモリ部と、受信部で復調されたレーダ信号を検知したときに、電圧制御発信器の制御信号とメモリ部のデータとを比較してレーダ信号の受信周波数を判定する制御部とを備え、メモリ部には電圧制御発信器の実際の特性が格納されているため、正確な判定が可能になる。
【0005】
【特許文献1】特開平11−160417号公報
【特許文献2】米国特許第5835052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載の従来のマイクロ波検出器においては、第1局部発信器を可変周波数型にする必要があり、高難度の技術を必要とするという問題があった。
【0007】
また、特許文献2に記載のレーダデテクタは、第1局及び第2局部発信器を多数実装しなければならないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来のマイクロ波検出器等における問題点に鑑みてなされたものであって、技術的に難度の高い第1局部発信器を可変にすることなく、あるいは第1局及び第2局部発信器を最小の実装数で検知することができ、簡易な構成によって、5バンド以上の異なる周波数バンドのマイクロ波を検知することが可能なマイクロ波検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、マイクロ波検知装置であって、マイクロ波を受信するマイクロ波アンテナと、該アンテナで受信された信号の周波数を所定の第1中間周波数に変換する2つの第1局部発信器と、前記アンテナの受信信号と、前記第1局部発信器の出力信号とを混合し、第1中間周波数信号を生成する第1混合器と、該第1混合器によって生成された第1中間周波数信号を選択的に増幅して出力する第1中間周波増幅器と、該第1中間周波増幅器の出力信号の周波数を所定の第2中間周波数に変換する2つの第2局部発信器と、該第2局部発信器及び前記第1中間周波増幅器の出力信号を混合し、第2中間周波数信号を生成する第2混合器と、該第2混合器によって生成された第2中間周波数信号を選択的に通過させる第2中間周波数フィルタと、該第2中間周波数フィルタを通過した第2中間周波数信号を増幅して出力する第2中間周波増幅器と、該第2中間周波増幅器の出力信号が所定の強度以上か否かを検出する検出器と、前記第1局部発信器及び第2局部発信器の発信タイミング及び発信周波数を制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【0010】
そして、本発明によれば、従来のように第1局部発信器を可変周波数型にすることもなく、第1局及び第2局部発信器を各々2つ実装するだけで済むため、簡易な構成で、5以上の異なる周波数バンドのマイクロ波を検知することが可能となる。
【0011】
前記マイクロ波検知装置において、前記2つの第2局部発信器を、制御電圧により各々の第2局部発信器の発信周波数が変化するように構成することができる。
【0012】
また、前記マイクロ波検知装置において、前記検出器が前記第2中間周波増幅器の出力信号が所定の強度以上であることを検出した際に、警報を発する警報器を備えるように構成することができる。これによって、自動車の自動速度測定からのレーダ波等を検知して警報を発することができる。
【0013】
さらに、前記マイクロ波検知装置において、前記検出器が前記第2中間周波増幅器の出力信号が所定の強度以上であることを検出した際に、該検出器が検出信号を前記制御部に送信し、該検出信号を受信した前記制御部は、前記警報器に警報を発する旨指令する警報信号を発するように構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、簡易な構成で、5以上の異なる周波数バンドのマイクロ波を検知することが可能なマイクロ波検知装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明においては、本発明にかかるマイクロ波検知装置によって、Xバンドと呼ばれる10.5GHz帯のマイクロ波、Kuバンドと呼ばれる13.4GHz帯のマイクロ波、Kバンドと呼ばれる24.1GHz帯のマイクロ波、Kaバンドと呼ばれる34.3GHz帯及び35.1GHz帯のマイクロ波の異なる5バンドのマイクロ波を検知する場合を例にとって説明する。
【0016】
本発明にかかるマイクロ波検知装置は、図1に示すように、マイクロ波受信用のホーンアンテナ1と、2つの第1局部発信器3(3A、3B)と、第1混合器2と、第1中間周波増幅器5と、2つの第2局部発信器7(7A、7B)と、第2混合器6と、第2中間周波数フィルタ8と、第2中間周波増幅器9と、検出器10と、制御部11と、警報器12とで構成される。
【0017】
2個の第1局部発信器3(3A、3B)は、各々、11.54GHz又は12.05GHzの周波数信号を生成する。この第1局部発信器3A、3Bは、受信するマイクロ波のバンドに合わせ、交互に各々の周波数信号を生成するように制御部11の信号により制御される。
【0018】
第1混合器2は、ホーンアンテナ1が受信した受信信号と、第1局部発信器3で生成された第1局部発信器信号とを混合し、第1中間周波数信号を生成する。また、第1中間周波増幅器5は、第1混合器2が生成した第1中間周波数信号の1GHz〜2GHzの周波数成分のみを増幅する。
【0019】
2個の第2局部発信器(VCO)7(7A、7B)は、1050MHz±100MHzの範囲、又は1865MHz±100MHzの範囲で可変する周波数信号を生成する。この2個の第2局部発信器7A、7Bは、第1局部発信器3と関連して、受信するマイクロ波のバンドに合わせて交互に生成するように制御部11の信号により制御される。
【0020】
第2混合器6は、第1混合器2が生成した第1中間周波数信号と、第2局部発信器7が生成する周波数信号とを混合し、第2中間周波数信号を生成する。
【0021】
第2中間周波数フィルタ8は、第2中間周波数信号の例えば10.7MHz近傍の成分のみを通過させる。尚、この第2中間周波数フィルタ8は、単独の回路構成とすることも、あるいは、第1混合器2及び第2中間周波増幅器9の回路に含めるようにして、単独回路を省くこともできる。第2中間周波増幅器9は、第2中間周波数フィルタ8を通過した第2中間周波数信号を増幅する。検出器10は、第2中間周波増幅器9で増幅された第2中間周波増幅器の第2中間周波数フィルタ8の通過周波数、例えば、10.7MHzの成分を検出し、その強度が所定強度以上である場合には、検出信号を生成して制御部11へ送信する。制御部11は、第1局部発信器3の発信タイミング及び第2局部発信器7の発信、周波数可変タイミング信号を発生させるとともに、検出器10から検出信号を受信すると、警報器12へ警報信号を発する。また、警報器12は、制御部11からの警報信号に従って、LED等の表示器を点滅させたり、ブザー音を発する。
【0022】
上記構成を有するマイクロ波検出装置の構成要素である、第1混合器2、第1局部発信器3、第1中間周波増幅器5、第2混合器6、第2局部発信器7、及び第2中間周波数フィルタ8は、電子プリント基板上に構築され、この電子プリント基板は、図2に示すような筐体20の箱状の回路部実装部21内に収容される。また、筐体20の開口部22は、ホーンアンテナ1を構成する。尚、筐体20を小型にするため、第1混合器2、第1局部発信器3の回路のみを筐体20に実装し、以降の回路は筐体20の外部に実装することもできる。
【0023】
次に、上記構成を有するマイクロ波検知装置の動作について、図表を参照しながら詳細に説明する。尚、表1は、各バンドに対応する局部発信器3、7等の周波数を示す。
【0024】
【表1】

【0025】
Xバンドのマイクロ波を検知するときは、第1局部発信器3Aの11.54GHzと、第2局部発信器7Aの1050MHz±100MHzを使用すれば、検出器10の検波範囲が10.39GHz〜10.59GHzとなり、必要とする10.5GHz近傍のマイクロ波を検知することができる。
【0026】
Kuバンドのマイクロ波を検知するときは、第1局部発信器3Aの11.54GHzと、第2局部発信器7Bの1865MHz±100MHzを使用すれば、検出器10の検波範囲が13.31GHz〜13.50GHzとなり、必要とする13.4GHz近傍のマイクロ波を検知することができる。
【0027】
Kバンドのマイクロ波を検知するときは、第1局部発信器3Aの基本発信周波数11.54GHzの第2高調波を利用し、発信周波数23.08GHzと、第2局部発信器7Aの1050MHz±100MHzを使用すれば、検出器10の検波範囲が24.03GHz〜24.23GHzとなり、必要とする24.1GHz近傍のマイクロ波を検知することができる。
【0028】
KaバンドLのマイクロ波を検知するときは、第1局部発信器3Bの基本発信周波数12.05GHzの第3高調波を利用し、発信周波数36.15GHzと、第2局部発信器7Bの1865MHz±100MHzを使用すれば、検出器10の検波範囲が34.19GHz〜34.38GHzとなり、必要とする34.3GHz近傍のマイクロ波を検知することができる。
【0029】
KaバンドUのマイクロ波を検知するときは、第1局部発信器3Bの基本発信周波数12.05GHzの第3高調波を利用し、発信周波数36.15GHzと、第2局部発信器7Aの1050MHz±100MHzを使用すれば、検出器10の検波範囲が35.00GHz〜35.20GHzとなり、必要とする35.1GHz近傍のマイクロ波を検知することができる。
【0030】
以上、前記のような2つの第1局部発信器3A、3B及び2つの第2局部発信器7A、7Bの発信周波数を組み合わせて順次切り替えることにより、5バンド以上のマルチバンドのマイクロ波を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明にかかるマイクロ波検知装置の一実施の形態の回路構成を示すブロック図である。
【図2】図1のマイクロ波検知装置の外観を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ホーンアンテナ
2 第1混合器
3(3A、3B) 第1局部発信器
5 第1中間周波増幅器
6 第2混合器
7(7A、7B) 第2局部発信器
8 第2中間周波数フィルタ
9 第2中間周波増幅器
10 検出器
11 制御部
12 警報器
20 筐体
21 回路部実装部
22 マイクロ波アンテナ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を受信するマイクロ波アンテナと、
該アンテナで受信された信号の周波数を所定の第1中間周波数に変換する2つの第1局部発信器と、
前記アンテナの受信信号と、前記第1局部発信器の出力信号とを混合し、第1中間周波数信号を生成する第1混合器と、
該第1混合器によって生成された第1中間周波数信号を選択的に増幅して出力する第1中間周波増幅器と、
該第1中間周波増幅器の出力信号の周波数を所定の第2中間周波数に変換する2つの第2局部発信器と、
該第2局部発信器及び前記第1中間周波増幅器の出力信号を混合し、第2中間周波数信号を生成する第2混合器と、
該第2混合器によって生成された第2中間周波数信号を選択的に通過させる第2中間周波数フィルタと、
該第2中間周波数フィルタを通過した第2中間周波数信号を増幅して出力する第2中間周波増幅器と、
該第2中間周波増幅器の出力信号が所定の強度以上か否かを検出する検出器と、
前記第1局部発信器及び第2局部発信器の発信タイミング及び発信周波数を制御する制御部とを備えることを特徴とするマイクロ波検知装置。
【請求項2】
前記2つの第2局部発信器は、制御電圧により各々の第2局部発信器の発信周波数が変化することを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波検知装置。
【請求項3】
前記検出器が前記第2中間周波増幅器の出力信号が所定の強度以上であることを検出した際に、警報を発する警報器を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロ波検知装置。
【請求項4】
前記検出器が前記第2中間周波増幅器の出力信号が所定の強度以上であることを検出した際に、該検出器が検出信号を前記制御部に送信し、該検出信号を受信した前記制御部は、前記警報器に警報を発する旨指令する警報信号を発することを特徴とする請求項3に記載のマイクロ波検知装置。

【図1】
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【図2】
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