説明

マイクロ流体システムおよび試料分析装置

【課題】本発明の目的は、マイクロ流体チップの流路に気泡が入りにくく、デッドボリュームも少ないマイクロ流体システムおよび試料分析装置を提供することにある。
【解決手段】本実施例のマイクロ流体システム3は、試料の操作が行われる流路16を内部に有するマイクロ流体チップ1と、マイクロ流体チップ1に着脱可能に構成され、液滴を吐出することによりマイクロ流体チップ1の流路16内に負圧を発生させて試料を送液するポンプユニット2とを有する。マイクロ流体チップ1は、流路16と、流路16の一端に連通し、流路16に供給される試料を収容する試料収容部14と、流路16の他端に連通し、流路16を通過した試料を収容する廃液収容部15とを有する。ポンプユニット2は、廃液収容部15に接続され、試料とは異なる液体が収容される液体収容部23と、液体収容部23内の液体を液滴として吐出する液滴吐出ヘッド24とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば生体試料の反応を検出するために用いられるマイクロ流体システムおよび試料分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板等に微細流路が設けられたマイクロ流体チップを使用して、化学分析や化学合成、あるいはバイオ関連の分析を行う方法が注目されている。マイクロ流体チップは、マイクロTAS(Total Analytical System)や、Lab-on-a-chip等と呼ばれる、従来の装置に比較して試料の必要量が少ない、反応時間が短い、廃棄物が少ない等のメリットがある。このため、マイクロTASは、診断、環境および食品のオンサイト分析等、広い分野での利用が期待されている。
【0003】
マイクロ流体チップを用いた分析では、チップの微細流路内で試料溶液を混合して反応物質を反応させ、検出を行うため、当該微細流路に安定してかつ速度を制御して試料を送液する手段が必要であり、当該手段としてマイクロポンプやシリンジポンプなどが用いられている。
【0004】
特許文献1には、ポンプとマイクロチップの微細流路とをバルブを介して接続し、送液の停止と送液を行う方法等が開示されている。
【特許文献1】特開2005−227250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された方法では、マイクロチップ、バルブおよび送液ポンプが、キャピラリによって接続されている。これらの接続部は、シリコンチューブ等で接続する必要があるが、接続時に気泡が入ってしまい、試料溶液の流れが妨げられることがある。また、キャピラリの容積はデッドボリュームとなるので、反応時間に遅れが出るとともに、試料溶液の浪費が生じる。一方、キャピラリで接続すると装置全体が嵩高くなり、コンパクトな構成というマイクロ流体システムの利点が生かせないという問題もある。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、マイクロ流体チップの流路に気泡が入りにくく、デッドボリュームも少ないマイクロ流体システムおよび試料分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明のマイクロ流体システムは、試料の操作が行われる流路を内部に有するマイクロ流体チップと、前記マイクロ流体チップに着脱可能に構成され、液滴を吐出することにより前記マイクロ流体チップの前記流路内に負圧を発生させて前記試料を送液するポンプユニットとを有し、前記マイクロ流体チップは、前記流路と、前記流路の一端に連通し、前記流路に供給される前記試料を収容する試料収容部と、前記流路の他端に連通し、前記流路を通過した前記試料を収容する廃液収容部とを有し、前記ポンプユニットは、前記廃液収容部に接続され、前記試料とは異なる液体が収容される液体収容部と、前記液体収容部内の前記液体を前記液滴として吐出する液滴吐出ヘッドとを有する。
【0008】
上記の本発明では、ポンプユニットの液体収容部に液体を収容した状態で、ポンプユニットにマイクロ流体チップが取り付けられる。これにより、マイクロ流体チップの廃液収容部と、ポンプユニットの液体収容部が接続されたマイクロ流体システムが構成される。試料収容部に試料を供給した後に、液滴吐出ヘッドにより液滴を吐出させると、流路が負圧となり、試料収容部内の試料が流路を介して廃液収容部へと移動する。試料収容部には、試料以外の液体も導入される。流路の設計により、所望の操作が実現できる。操作とは、試料の混合、反応、分離、検出を含む物理的あるいは化学的操作と定義する。
【0009】
本発明では、マイクロ流体チップと、ポンプユニットとの間に別個の部品を必要としないことから、気泡が入るという問題が生じにくくなる。また、デッドボリュームが少なくなることから、試料の量を少なくすることができる。また、キャピラリ等を用いないため、マイクロ流体システム全体がコンパクトな構成となる。
【0010】
また、前記マイクロ流体チップは、前記ポンプユニットから着脱可能に構成されていることから、マイクロ流体チップの使い捨てが可能となる。この結果、コンタミネーションの影響を受けやすい低濃度の生体試料の分析等にも好適に用いることができる。
【0011】
好ましくは、前記マイクロ流体チップの前記廃液収容部と、前記ポンプユニットの前記液体収容部との間に、気体を通過させ液体を遮断する気液分離フィルタが配置されている。これにより、ポンプユニット内にマイクロ流体チップの試料が流入しない。このため、当該試料によるポンプユニットの汚染を防止でき、ポンプユニットを繰り返し使用することができる。
【0012】
さらに、上記の目的を達成するため、本発明の試料分析装置は、試料の操作が行われる流路を内部に有するマイクロ流体チップと、前記マイクロ流体チップに着脱可能に構成され、液滴を吐出することにより前記マイクロ流体チップの前記流路内に負圧を発生させて前記試料を送液するポンプユニットとを有するマイクロ流体システムと、前記マイクロ流体チップの内部で生じた反応を検出する検出系とを有し、前記マイクロ流体チップは、前記流路と、前記流路の一端に連通し、前記流路に供給される前記試料を収容する試料収容部と、前記流路の他端に連通し、前記流路を通過した前記試料を収容する廃液収容部とを有し、前記ポンプユニットは、前記廃液収容部に接続され、前記試料とは異なる液体が収容される液体収容部と、前記液体収容部内の前記液体を前記液滴として吐出する液滴吐出ヘッドとを有する。
【0013】
上記の本発明の試料分析装置では、マイクロ流体システムの流路内に試料が順次導入され、流路内で起こる反応が検出系により検出される。マイクロ流体チップがポンプユニットに取り付けられた状態で分析しても、マイクロ流体チップをポンプユニットから取り外した後に分析してもよい。上記したマイクロ流体システムを用いることにより、少ない量であっても試料を分析することができる。
【0014】
好ましくは、試料分析装置は、前記液体収容部および前記試料収容部に液体を供給する液体供給手段をさらに有する。これにより、液体収容部および試料収容部に試料等の液体を供給することができる。
【0015】
好ましくは、試料分析装置は、前記液滴吐出ヘッドのノズルから、前記液滴吐出ヘッド内の気体または液体を吸引する吸引手段をさらに有する。このような構成によれば、ポンプユニットの液体収容部に液体を供給した後、吸引手段を液滴吐出ヘッドに密着させて吸引することにより、液滴吐出ヘッドの先端まで液体を充填することが可能となる。また、吸引手段を液滴吐出ヘッドから離間した位置に置くことにより、液滴吐出ヘッドから吐出された液体を外部に飛散させることなく、吸引することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0017】
本実施例のマイクロ流体システムは、マイクロ流体チップおよびポンプユニットにより構成される。図1(a)はマイクロ流体チップ1の断面図であり、図1(b)はポンプユニット2の断面図である。図2(a)は、マイクロ流体チップ1の上面図であり、図2(b)はポンプユニット2の上面図である。
【0018】
マイクロ流体チップとは、試料の操作が内部で行われるものである。操作には、試料の混合、反応、分離、検出等の物理的操作あるいは化学的操作が含まれる。本実施例のマイクロ流体チップ1は、試料収容部14と、廃液収容部15と、流路16とを有する。流路16の一端は試料収容部14に連通し、流路16の他端は廃液収容部15に連通している。流路16の途中には、流路幅が他の部分よりも狭い絞り部17が設けられている。マイクロ流体チップ1には、貫通孔19が設けられており、廃液収容部15と貫通孔19とが流路18により接続されている。
【0019】
上記のマイクロ流体チップ1は、例えば加工した3枚の基板11,12,13を接着することにより形成される。基板11,12,13は、光透過性のプラスチックあるいはガラスにより構成されていることが好ましい。光透過材料により構成されていることにより、流路16内での発光等の反応を検出しやすくなる。基板材料としてガラスを用いる場合には、エッチングあるいはサンドブラスト法により基板を加工する。基板材料としてプラスチックを用いる場合には、射出成形により基板を加工する。基板11,12,13の接着方法は基板の材料に応じて選択すればよく、一般的には熱接着法を用いればよい。
【0020】
基板12側には絞り部17以外の流路16となる領域に溝が形成されており、基板13側には絞り部17の領域に溝が形成されている。基板13側の溝は、基板12側の溝よりも浅く形成されている。これにより、基板11,12を接着すると、流路16よりも幅の狭い絞り部17が形成される。
【0021】
ポンプユニット2は、マイクロ流体チップ1に着脱可能に構成されており、マイクロ流体チップ1の内部を吸引して試料を送液する役割を果たす。このため、ポンプユニット2は、液体収容部23を有するリザーバプレート20と、リザーバプレート20にゴムパッキン等の接続部25を介して接続された液滴吐出ヘッド24とを有する。液滴吐出ヘッド24は、リザーバプレート20に着脱可能に構成されている。
【0022】
リザーバプレート20には、マイクロ流体チップ1のサイズに対応した溝状の設置部26が設けられている。設置部26と液体収容部23は、貫通孔27により接続されている。貫通孔27は、マイクロ流体チップ1の貫通孔19に対応する位置に設けられている。貫通孔27の周囲には、例えばOリングからなるシール材28が設けられている。液体収容部23には流路29が連通しており、流路29と、液滴吐出ヘッド24の流路24bとが接続される。
【0023】
リザーバプレート20は、例えば加工した2枚の基板21,22を接着することにより形成される。基板21,22は、例えば、透明なプラスチックあるいはガラスにより構成されている。基板材料としてガラスを用いる場合には、エッチングあるいはサンドブラスト法を用いて基板を加工する。基板材料としてプラスチックを用いる場合には、射出成形により基板を加工する。基板21,22の接着方法は基板の材料に応じて選択すればよく、一般的には熱接着法を用いればよい。
【0024】
液滴吐出ヘッド24は、例えば静電駆動式あるいは圧電駆動式の液滴吐出ヘッドである。図示はしないが、静電駆動式の場合には、液滴吐出ヘッド24は、流路24bに接する振動板と、2つの電極を備える。2つの電極間に電圧を印加すると、振動板が変位して流路24b内の液体が加圧されて、液滴がノズル24aから吐出される。
【0025】
上記のマイクロ流体チップ1は、ポンプユニット2の設置部26に取り付けられる。これにより、マイクロ流体チップ1の貫通孔19と、ポンプユニット2の貫通孔27がシール材28を介して接続される。
【0026】
(マイクロ流体システム)
図3は、マイクロ流体チップ1とポンプユニット2により構成されるマイクロ流体システム3の概略断面図である。
【0027】
マイクロ流体チップ1の試料収容部14には試料を含む液体4が導入される。なお、液体4として、試料以外にも、洗浄液等の分析に必要な種々の液体が供給されてもよい。ポンプユニット2の液体収容部23には、液体4とは別の液体5が導入される。液体5は、例えば水である。液体収容部23から液滴吐出ヘッド24のノズル24aにかけて液体5が充填されて使用される。廃液収容部15、流路18および貫通孔19内には、液体は存在せず、気体が存在する。
【0028】
上記した状態において、液滴吐出ヘッド24を動作させと、液滴は水平方向に吐出される。ポンプユニット2の液体収容部23の液体5が排出されると、内部が負圧になる。これによって、図3(b)に示すように、試料収容部14に収容された試料等の液体4は、流路16、絞り部17を通り、廃液収容部15内へ移動する。
【0029】
(試料分析装置)
図4は、マイクロ流体チップ1を用いて試料の分析を行う試料分析装置100の概略構成図である。図5は、試料分析装置の検出系の構成を示す図である。
【0030】
試料分析装置100は、マイクロ流体チップ1とポンプユニット2とを備えるマイクロ流体システム3と、液体収容プレート110と、液体供給手段120と、検出系130と、吸引手段140とを有する。
【0031】
液体収容プレート110には、マイクロ流体チップ1の試料収容部14に供給する種々の液体が収容されている。なお、液体収容プレート110には、試料以外にも分析に必要な他の洗浄液等の液体を収容しておいてもよい。また、液体収容プレート110に、ポンプユニット2の液体収容部23に供給する液体5を収容させてもよい。
【0032】
液体供給手段120は、分注ユニット121と、シリンジポンプ122とを有する。分注ユニット121は、上下左右に移動可能に構成されている。分注ユニット121は、液体収容プレート110に収容されている試料等の液体を吸引した後、吸引した液体をマイクロ流体チップ1に供給する。シリンジポンプ122は、分注ユニット121による液体の吸引および吐出動作を制御する。なお、試料、洗浄液、純水等の液体の種類毎に分注ユニット121を設けても良い。
【0033】
検出系130は、マイクロ流体システム3の流路内で生じた反応を検出する。流路内の反応が蛍光色素により検出される場合には、検出系は、図5に示すように、例えば、励起光を出射する光源131と、光源131から出射された励起光をマイクロ流体システム3へ向けて反射させるミラー132と、蛍光を検出するCCDカメラ等からなる撮像部133とを有する。光源131から出射された励起光は、ミラー132により反射されて絞り部17付近に照射される。絞り部17付近の流路16内に蛍光物質が存在する場合、励起光を受けて蛍光物質から蛍光が発せられ、この蛍光が図示しないフィルタを通って撮像部133により検出される。
【0034】
吸引手段140は、液滴吐出ヘッド24のノズル24aから気体または液体を吸引する。吸引手段140は、例えば、吸引キャップと、チューブポンプとを有する。吸引手段140の吸引キャップは、液滴吐出ヘッド24に対して接近および離間する方向に移動可能に構成されている。
【0035】
(試料分析方法)
次に、図6〜図7を参照して、上記の試料分析装置100による試料分析方法の手順について説明する。
【0036】
まず、図6(a)に示すように、液体供給手段120によりポンプユニット2の液体収容部23に液体5として純水を供給する。
【0037】
次に、図6(b)に示すように、液滴吐出ヘッド24のノズル24aに吸引キャップ141を密着させて、チューブポンプ142を動作させる。これにより、液体収容部23内の液体5は流路29および流路24b内を移動する。液体5がノズル24a先端に到達したら、吸引を終了する。吸引終了後、ノズル24aから吸引キャップ141をわずかに離間させる。
【0038】
次に、マイクロ流体チップ1をポンプユニット2に固定して、マイクロ流体システム3を形成する。続いて、図7(a)に示すように、試料収容部14に、液体4として標的物質に対する抗体が表面に固定化されたビーズを含む懸濁液を供給する。懸濁液は、例えば液体供給手段120により供給される。その後、液滴吐出ヘッド24を動作させると、液体は絞り部17を通過して廃液収容部15へ移動するが、ビーズは絞り部17を通過できず、絞り部17の直前の流路16中に停留する。
【0039】
図8(a)は、絞り部17の拡大断面図であり、図8(b)は絞り部17にビーズが堰き止められた様子を示す図である。
【0040】
抗体を固定化したビーズは、公知の方法に従って調製することができ、流路16の流路径を100μm、絞り部17の流路径を20μm程度とした場合には、直径40μm程度のビーズを用いればよい。
【0041】
液滴吐出ヘッド24の動作中において、液滴吐出ヘッド24から吐出された液滴は、吸引キャップ141に吸収される。例えば、吸引キャップ141内にスポンジが備えられており、液滴吐出ヘッド24から吐出された液滴はスポンジに吸収される。これにより、外部へ液滴が漏出することが防止される。また、定期的にチューブポンプ142を動作させることによって吸引キャップ141のスポンジに吸収された液体は、図示しない廃液タンクに収容される。
【0042】
次に、試料収容部14に、液体4として標的物質を含む可能性のある液状の試料を供給する。試料は、液体供給手段120により供給される。そして、液滴吐出ヘッド24を動作させると、当該試料は、試料収容部14から流路16へ移動し、試料中に標的物質が存在すれば、当該標的物質がビーズ表面の抗体に結合する。
【0043】
次に、試料収容部14に液体4として洗浄液を供給し、液滴吐出ヘッド24を動作させて流路16内に洗浄液を導入する。洗浄液を流路16に送液することにより、非特異的に吸着した物質を洗い流し、抗体に対して特異的に吸着した標的物質のみをビーズ表面に捕捉しておくことが可能となる。このとき、図7(b)に示すように、液滴吐出ヘッド24のノズル24aに吸引キャップ141を密着させて、チューブポンプ142を動作させることにより、洗浄液を流路16内に送液しても良い。洗浄液の流速を厳密に管理する必要がない場合には、吸引手段140を用いて高速に送液することで検査時間を短縮することができる。なお、吸引手段140を用いずに液滴吐出ヘッド24を用いて、洗浄液を送液してもよい。
【0044】
次に、標的物質に親和性を有する二次抗体に蛍光物質を付して、これを溶解した液体を液体供給手段120により試料収容部14に供給する。そして、液滴吐出ヘッド24を動作させると、ビーズ表面の抗体に捕捉された標的物質に二次抗体が結合する。必要に応じて、液体供給手段120により再度洗浄液を試料収容部14内に供給して、吸引手段140あるいは液滴吐出ヘッド24を動作させて洗浄液を送液することにより、非特異的な吸着物を除去するとよい。
【0045】
次に、マイクロ流体チップ1をポンプユニット2に取り付けた状態で、マイクロ流体チップ1の絞り部17付近の蛍光強度を測定する。測定後、試料収容部14をテープで塞いだ後に、ポンプユニット2からマイクロ流体チップ1が取り外されて、廃棄される。
【0046】
あるいは、試料収容部14をテープで塞いだ後、ポンプユニット2からマイクロ流体チップ1を取り外し、マイクロ流体チップ1の絞り部17付近の蛍光強度を測定してもよい。測定後のマイクロ流体チップ1は、外部に試料が漏れることなく廃棄される。
【0047】
上記の本実施例のマイクロ流体システム3によれば、マイクロ流体チップ1と、ポンプユニット2との間に別個の部品を必要としないことから、気泡が入るという問題が生じにくくなる。また、デッドボリュームが少なくなることから、試料の量を少なくすることができる。また、マイクロ流体システム3の構造の簡素化および小型化を図ることができる。
【0048】
また、マイクロ流体チップ1は、ポンプユニット2から着脱可能に構成されていることから、マイクロ流体チップの使い捨てが可能となる。この結果、コンタミネーションの影響を受けやすい低濃度の生体試料の分析等にも好適に用いることができる。
【0049】
さらに、試料収容部14内の試料等の液体4はポンプユニット2へ流入しないことから、ポンプユニット2の汚染を防止でき、ポンプユニット2を繰り返し使用することができる。ポンプユニット2内に液体5として純水のみを使用することにより、吐出液体が変わらないため、安定したポンプ動作を実現することができる。
【0050】
上記のマイクロ流体システム3を用いた試料分析装置および試料分析方法によれば、少ない量であっても試薬を分析することができる。
【実施例2】
【0051】
図9は、実施例2のマイクロ流体システム3の概略断面図である。図10(a)は、マイクロ流体チップ1の上面図であり、図10(b)はポンプユニット2の上面図である。なお、実施例1と同様の構成要素には、同一の符号を付してあり、その説明は省略する。
【0052】
実施例2のマイクロ流体システム3では、廃液収容部15と、液体収容部23との間に、気体を通過させ液体を遮断する気液分離フィルタ10が配置されている。本例では、貫通孔19を塞ぐようにマイクロ流体チップ1中に気液分離フィルタ10が設けられている。気液分離フィルタ10を配置するため、廃液収容部15と貫通孔19とを繋ぐ流路18は、実施例1よりも幅広となっている。気液分離フィルタ10は、例えば、ポリテトラフルオロエチレンからなる。ただし、気液分離フィルタとしては、気体を通過させ液体を遮断できる機能を有すれば良い。
【0053】
実施例1で述べたように、試料収容部14内の試料等の液体4は、流路16を通って廃液収容部15に収容される。本実施例では、廃液収容部15に貯留される液体の量が廃液収容部15の容量に達した場合であっても、気液分離フィルタ10により、マイクロ流体チップ1中の液体がポンプユニット2へ流入することを防止できる。この結果、ポンプユニット2の汚染を防止することができ、ポンプユニット2を繰り返し使用することができる。
【実施例3】
【0054】
図11(a)は実施例3のマイクロ流体チップ1の上面図であり、図11(b)は実施例3のマイクロ流体システム3の概略断面図である。なお、実施例1と同様の構成要素には、同一の符号を付してあり、その説明は省略する。
【0055】
実施例3のマイクロ流体システム3では、マイクロ流体チップ1の廃液収容部15と、ポンプユニット2の液体収容部23との間に、気体を通過させ液体を遮断する気液分離フィルタ10が配置されている。気液分離フィルタ10は、例えば、ポリテトラフルオロエチレンからなる。廃液収容部15と液体収容部23との間にはシール材28が設けられており、密閉されている。実施例3では、廃液収容部15の底面が気液分離フィルタ10により形成される例を示している。ただし、実施例1,2のように流路18および貫通孔19が設けられていても良い。
【0056】
気液分離フィルタ10は空気を通すため、液体収容部23に収容された液体5は液滴吐出ヘッド24から液滴として吐出されることにより、試料収容部14にある液体4を移送することができる。このとき、気液分離フィルタ10は、液体を通さないため、廃液収容部15中の廃液が液体収容部23へ流入することを防止できる。この結果、ポンプユニット2の汚染を防止することができ、ポンプユニット2を繰り返し使用することができる。このように、マイクロ流体チップ1とポンプユニット2との間に気液分離フィルタ10を形成することにより、例えば気液分離フィルタ10の交換等が容易になる。
【0057】
本発明は、上記の実施形態の説明に限定されない。また、流路の構成に限定はなく、流路の数を増やし、各流路を分岐させることにより、種々の化学操作を実現することができる。また、上記の試料分析方法では、抗体を固定化したビーズを用いたが、本発明に係るシステムによれば、抗原抗体反応に限られず、標的物質に親和性を有する物質を用いて、核酸同士のハイブリダイゼーション、酵素基質反応、各種レセプターとリガンドの反応等、種々の反応を検出することが可能である。また、検出も蛍光に限らず、各種の反応による変色・発光反応等を検出してもよい。検出する反応に応じて、本発明に係る試料分析装置の検出系も適宜変更することが可能である。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施例1のマイクロ流体チップおよびポンプユニットの断面図である。
【図2】実施例1のマイクロ流体チップおよびポンプユニットの上面図である。
【図3】実施例1のマイクロ流体システムの概略断面図である。
【図4】試料分析装置の概略断面図である。
【図5】試料分析装置の検出系の詳細な構成を示す図である。
【図6】試料分析方法を説明するための図である。
【図7】試料分析方法を説明するための図である。
【図8】マイクロ流体チップの堰き止め部の拡大断面図である。
【図9】実施例2のマイクロ流体システムの概略断面図である。
【図10】実施例2のマイクロ流体チップおよびポンプユニットの上面図である。
【図11】(a)は実施例3のマイクロ流体チップの上面図、(b)は実施例3のマイクロ流体システムの概略断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1…マイクロ流体チップ、2…ポンプユニット、3…マイクロ流体システム、4…液体、5…液体、10…気液分離フィルタ、11,12,13…基板、14…試料収容部、15…廃液収容部、16…流路、17…絞り部、18…流路、19…貫通孔、20…リザーバプレート、21,22…基板、23…液体収容部、24…液滴吐出ヘッド、24a…ノズル、24b…流路、25…接続部、26…設置部、27…貫通孔、28…シール材、29…流路、100…試料分析装置、110…液体収容プレート、120…液体供給手段、121…分注ユニット、122…シリンジポンプ、130…検出系、131…光源、132…ミラー、133…撮像部、140…吸引手段、141…吸引キャップ、142…チューブポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の操作が行われる流路を内部に有するマイクロ流体チップと、
前記マイクロ流体チップに着脱可能に構成され、液滴を吐出することにより前記マイクロ流体チップの前記流路内に負圧を発生させて前記試料を送液するポンプユニットとを有し、
前記マイクロ流体チップは、
前記流路と、
前記流路の一端に連通し、前記流路に供給される前記試料を収容する試料収容部と、
前記流路の他端に連通し、前記流路を通過した前記試料を収容する廃液収容部と
を有し、
前記ポンプユニットは、
前記廃液収容部に接続され、前記試料とは異なる液体が収容される液体収容部と、
前記液体収容部内の前記液体を前記液滴として吐出する液滴吐出ヘッドと
を有するマイクロ流体システム。
【請求項2】
前記マイクロ流体チップの前記廃液収容部と、前記ポンプユニットの前記液体収容部との間に、気体を通過させ液体を遮断する気液分離フィルタが配置されている
請求項1記載のマイクロ流体システム。
【請求項3】
試料の操作が行われる流路を内部に有するマイクロ流体チップと、前記マイクロ流体チップに着脱可能に構成され、液滴を吐出することにより前記マイクロ流体チップの前記流路内に負圧を発生させて前記試料を送液するポンプユニットとを有するマイクロ流体システムと、
前記マイクロ流体チップの内部で生じた反応を検出する検出系と
を有し、
前記マイクロ流体チップは、
前記流路と、
前記流路の一端に連通し、前記流路に供給される前記試料を収容する試料収容部と、
前記流路の他端に連通し、前記流路を通過した前記試料を収容する廃液収容部と
を有し、
前記ポンプユニットは、
前記廃液収容部に接続され、前記試料とは異なる液体が収容される液体収容部と、
前記液体収容部内の前記液体を前記液滴として吐出する液滴吐出ヘッドと
を有する試料分析装置。
【請求項4】
前記液体収容部および前記試料収容部に液体を供給する液体供給手段をさらに有する
請求項3記載の試料分析装置。
【請求項5】
前記液滴吐出ヘッドのノズルから、前記液滴吐出ヘッド内の気体または液体を吸引する吸引手段をさらに有する
請求項3記載の試料分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−292714(P2007−292714A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−211267(P2006−211267)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】