説明

マイクロ流路デバイス及び分析装置

【課題】 マイクロ流路を流れる流体と光とが相互作用可能な距離を長くすることができるマイクロ流路デバイス及び分析装置を提供する。
【解決手段】 分析装置10は、光導波路6と、光導波路8と、光導波路6の所定部分6cと光導波路8の所定部分8cとの間に配置され流体試料aが流れるマイクロ流路4とを有する基板2と、光導波路6の一端6aに光学的に結合された光源14と、光導波路6の他端6bに光学的に結合された光検出器16と、光導波路8の一端8bに光学的に結合された光検出器18とを備える。光導波路6の所定部分6c及び光導波路8の所定部分8cは、方向性結合器を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流路デバイス及び分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、マイクロ流路を流れる試料溶液に、マイクロ流路の上方から光を照射することによって当該試料溶液の吸光度を測定することができるマイクロ化学分析装置が知られている。具体的には、このマイクロ化学分析装置では、吸光光度法を用いて試料溶液中のリン酸イオン濃度の測定を行うことができる。測定は、レーザダイオードを用いて波長790nmの光を試料溶液に照射した時のPINフォトダイオードのフォトダイオード電流値を計測することにより行われる。
【特許文献1】特開2004−85506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述のマイクロ化学分析装置では高い測定感度が得られない。これは、光が試料溶液を透過する時に光の透過距離が短いため、光と試料溶液とが十分に相互作用することができないからと推測される。特に、微量の試料溶液においては、光の透過距離を十分長くすることができないため、測定感度の低下は顕著になる。
【0004】
そこで本発明は、マイクロ流路を流れる流体と光とが相互作用可能な距離を長くすることができるマイクロ流路デバイス及び分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するため、本発明のマイクロ流路デバイスは、第1の光導波路と、第2の光導波路と、前記第1の光導波路の所定部分と前記第2の光導波路の所定部分との間に配置され流体が流れるマイクロ流路とを有する基板を備え、前記第1の光導波路の前記所定部分及び前記第2の光導波路の前記所定部分は、方向性結合器を形成している。
【0006】
本発明のマイクロ流路デバイスでは、第1の光導波路の一端に光を供給すると、当該光はマイクロ流路を流れる流体と相互作用する。ここで、第1の光導波路の所定部分と第2の光導波路の所定部分とは方向性結合器を形成しているので、光は、第1の光導波路及び第2の光導波路の両方を伝搬することとなる。その結果、第1の光導波路の他端及び第2の光導波路の一端から光が出射される。
【0007】
本発明のマイクロ流路デバイスによれば、マイクロ流路を流れる流体と第1の光導波路の一端に供給された光とが相互作用可能な距離を長くすることができる。
【0008】
また、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路はシングルモード光導波路であることが好ましい。これにより、例えばレーザ光を第1の光導波路の一端に供給する場合に、レーザ光とマイクロ流路を流れる流体とが高効率に相互作用することができる。
【0009】
また、前記基板は、石英ガラスから構成されることが好ましい。この場合、基板の耐薬品性が向上するので、比較的幅広い種類の流体をマイクロ流路に流すことができる。
【0010】
本発明の分析装置は、第1の光導波路と、第2の光導波路と、前記第1の光導波路の所定部分と前記第2の光導波路の所定部分との間に配置され流体試料が流れるマイクロ流路とを有する基板と、前記第1の光導波路の一端に光学的に結合された光源と、前記第1の光導波路の他端に光学的に結合された第1の光検出器と、前記第2の光導波路の一端に光学的に結合された第2の光検出器とを備え、前記第1の光導波路の前記所定部分及び前記第2の光導波路の前記所定部分は、方向性結合器を形成している。
【0011】
本発明の分析装置では、光源から出射された光を第1の光導波路の一端に供給すると、当該光はマイクロ流路を流れる流体試料と相互作用する。ここで、第1の光導波路の所定部分と第2の光導波路の所定部分とは方向性結合器を形成しているので、光は、第1の光導波路及び第2の光導波路の両方を伝搬することとなる。その結果、第1の光導波路の他端及び第2の光導波路の一端から光が出射される。第1の光導波路の他端から出射された光は第1の光検出器に到達する。第2の光導波路の一端から出射された光は第2の光検出器に到達する。
【0012】
本発明の分析装置によれば、マイクロ流路を流れる流体試料と光源から出射された光とが相互作用可能な距離を長くすることができる。したがって、光源から出射された光に対する流体試料の光学特性を高感度で分析することができる。
【0013】
また、上記分析装置は、前記第1の光導波路の前記一端に光学的に結合された一端と、前記光源に光学的に結合された他端とを有する光ファイバを更に備えることが好ましい。この場合、光ファイバによって光源から出射される光を第1の光導波路の一端に導入し易くなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、マイクロ流路を流れる流体と光とが相互作用可能な距離を長くすることができるマイクロ流路デバイス及び分析装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、実施形態に係る分析装置を模式的に示す平面図である。図1に示される分析装置10は、マイクロ流路デバイス1、光源14、第1の光検出器16及び第2の光検出器18を備える。
【0017】
マイクロ流路デバイス1は、一端6aと他端6bと一端6a及び他端6bの間に位置する所定部分6cとを有する第1の光導波路6と、一端8bと他端8aと一端8b及び他端8aの間に位置する所定部分8cとを有する第2の光導波路8と、流体試料a(流体)が流れるマイクロ流路4とを有する基板2を備える。マイクロ流路4は、光導波路6の所定部分6cと光導波路8の所定部分8cとの間に配置されている。光導波路6の所定部分6cと光導波路8の所定部分8cとは、いずれもマイクロ流路4に沿って延びている。光導波路6の所定部分6c及び光導波路8の所定部分8cは、方向性結合器12を形成している。
【0018】
流体試料aとしては、例えば水溶液、有機溶媒、酸性溶液、アルカリ性溶液等の液体、酸性ガス、アルカリ性ガス等の気体、気液混合物、又は、粉末が混入した気体若しくは液体等が挙げられる。
【0019】
基板2は、石英ガラスから構成されることが好ましい。この場合、基板2の耐薬品性が向上するので、比較的幅広い種類の流体試料aをマイクロ流路4に流すことができる。なお、基板2は、例えばソーダライムガラス等のガラスから構成されるとしてもよい。
【0020】
光導波路6及び光導波路8は、コアとなり、例えばGeが添加された石英ガラスから構成される。クラッドは、例えばコアよりもGe添加量が低い石英ガラスから構成される。Ge添加量を調整することにより、コアとクラッドとの所望の比屈折率差Δ1(比屈折率差Δ1≒(コアの屈折率−クラッドの屈折率)/(コアの屈折率))が得られる。コア外への光漏れを小さくする観点から、コアの屈折率は流体試料aの屈折率よりも高いことが好ましく、クラッドの屈折率は流体試料aの屈折率よりも低いことが好ましい。また、コア外への光漏れを小さくする観点から、流体試料aの屈折率は、クラッドとの比屈折率差Δ2(比屈折率差Δ2≒(試料aの屈折率−クラッドの屈折率)/(試料aの屈折率))に換算した値が0〜0.1%となるように設定されることが好ましい。
【0021】
一実施例において、クラッドへのGe添加量は0、コアとクラッドとの比屈折率差Δ1は0.3%である。また、一実施例において、光導波路6及び光導波路8の幅及び高さはいずれも7.5μmであり、光導波路6の所定部分6c及び光導波路8の所定部分8cの間の距離は5μmである。
【0022】
マイクロ流路4は、例えば溝又は空洞である。マイクロ流路4の幅は5μm以下であることが好ましい。マイクロ流路4は、流体試料aを供給するための供給口4aと、流体試料aを排出するための排出口4bと、供給口4a及び排出口4bの間に位置する流路部4cとを有することが好ましい。供給口4aには、チューブ30を介して流体試料aを供給する流体試料供給源34が接続されることが好ましい。排出口4bにはチューブ32が接続されていることが好ましい。チューブ30,32は例えばポリテトラフルオロエチレンから構成される。流体試料aは、流体試料供給源34からチューブ30を経由して供給口4aに供給される。その後、流体試料aは、流路部4cを流れて排出口4bからチューブ32を経由して外部に排出される。
【0023】
光源14は、光導波路6の一端6aに光学的に結合されている。光源14は、例えば半導体レーザである。光源14からは光L1が出射される。光L1の波長は例えば1.55μmである。光検出器16は、光導波路6の他端6bに光学的に結合されている。光検出器18は、光導波路8の一端8bに光学的に結合されている。光検出器16,18は例えばフォトダイオードである。また、本実施形態では、光導波路8の他端8aが基板2の一端に到達しているが、到達していなくてもよい。光導波路6の一端6a及び光導波路8の他端8aは、方向性結合器12の入力端となっている。光導波路6の他端6b及び光導波路8の一端8bは、方向性結合器12の出力端となっている。
【0024】
分析装置10は、光導波路6の一端6aに光学的に結合された一端20bと、光源14に光学的に結合された他端20aとを有する光ファイバ20を更に備えることが好ましい。光ファイバ20の一端20bは、例えば光ファイバアレイ26によって基板2に固定されることが好ましい。
【0025】
分析装置10は、光導波路6の他端6bに光学的に結合された一端22aと、光検出器16に光学的に結合された他端22bとを有する光ファイバ22を更に備えることが好ましい。また、分析装置10は、光導波路8の一端8bに光学的に結合された一端24aと、光検出器18に光学的に結合された他端24bとを有する光ファイバ24を更に備えることが好ましい。光ファイバ22の一端22a及び光ファイバ24の一端24aは、例えば二芯光ファイバアレイ28によって基板2に固定されることが好ましい。
【0026】
本実施形態の分析装置10では、光源14から出射された光L1は、例えば光ファイバ20を伝搬して光導波路6の一端6aに供給される。光導波路6の一端6aに供給された光L1は、マイクロ流路4を流れる流体試料aと相互作用する。ここで、光導波路6の所定部分6cと光導波路8の所定部分8cとは方向性結合器12を形成しているので、光L1は、光導波路6及び光導波路8の両方を伝搬することとなる。光L1は、光導波路6と光導波路8との間を往復することにより流体試料aと相互作用する。その結果、光導波路6の他端6bから光L2が出射されると共に、光導波路8の一端8bから光L3が出射される。
【0027】
光導波路6の他端6bから出射された光L2は、例えば光ファイバ22を伝搬して光検出器16に到達する。光導波路8の一端8bから出射された光L3は、例えば光ファイバ24を伝搬して光検出器18に到達する。光検出器16,18に到達した光L2,L3は、電気信号に変換された後に加算される。これにより、光L2と光L3との合計の光強度を測定することができる。流体試料aと同じ屈折率を有する標準試料をマイクロ流路4に流したときの光強度を予め測定しておくことにより、上記合計の光強度から流体試料aの吸光度を測定することができる。
【0028】
本実施形態の分析装置10によれば、マイクロ流路4を流れる流体試料aと光源14から出射された光L1とが相互作用可能な距離を長くすることができる。したがって、光源14から出射された光L1に対する流体試料aの光学特性を高感度で分析することができる。さらに、光L1の光強度が小さくても、流体試料aと光L1との相互作用可能な距離を長くすることによって、流体試料aの光学特性を高感度で分析することができる。
【0029】
また、分析装置10が光ファイバ20を備える場合、光ファイバ20によって光源14から出射される光L1を光導波路6の一端6aに導入し易くなる。
【0030】
また、光導波路6及び光導波路8はシングルモード光導波路であることが好ましい。これにより、光L1として例えばレーザ光を光導波路6の一端6aに供給する場合に、レーザ光とマイクロ流路4を流れる流体試料aとが高効率に相互作用することができる。
【0031】
図2は、実施形態に係るマイクロ流路デバイスを模式的に示す斜視図である。図3は、図2に示されるIII−III線に沿った断面図である。図2及び図3に示されるマイクロ流路デバイス1は、上述のように基板2を備える。基板2は、例えば、マイクロ流路4を形成するための溝が形成された基板42と、溝を覆うように基板2上に設けられた基板40とを備える。基板40,42は例えば石英ガラスから構成される。マイクロ流路デバイス1によれば、マイクロ流路4を流れる流体試料aと光導波路6の一端6aに供給された光L1とが相互作用可能な距離を長くすることができる。よって、光L1の光強度が小さくても、流体試料aと光L1との相互作用可能な距離を長くすることによって、流体試料aと光L1とを十分に相互作用させることができる。したがって、例えばマイクロ流路デバイス1を用いて流体試料aと光L1とを反応させる場合であっても、反応率を向上させることができる。
【0032】
続いて、上述のマイクロ流路デバイス1について行った光学シミュレーションの結果について説明する。図4は、光学シミュレーションの対象となるマイクロ流路デバイス1を模式的に示す図である。マイクロ流路4の延びる方向における基板2の一端からの距離はxである。また、マイクロ流路4の延びる方向において、基板2の一端から光導波路6,8の合流地点xまでの距離はd1であり、合流地点xから光導波路6,8の分岐地点xまでの距離はLであり、分岐地点xから基板2の他端までの距離はd2である。また、光導波路6の一端6aと光導波路8の他端8aとの間の距離の半分はd3である。
【0033】
以下の光学シミュレーションの第1の例及び第2の例では、d1及びd2が5000μm、d3が125μmである。光L1の波長は1.55μmである。マイクロ流路4の深さは7.5μmである。光導波路6,8はコアとなっており、コアの幅及び高さは7.5μmである。波長1.55μmの光に対するコアの屈折率は1.448である。波長1.55μmの光に対するクラッドの屈折率は1.444である。コアとクラッドとの比屈折率差Δ1は0.3%である。
【0034】
(光学シミュレーションの第1の例)
本例では、波長1.55μmの光に対する流体試料aの屈折率は1.445である。また、マイクロ流路4の幅Dは5μmである。図5及び図6に光学シミュレーション結果を示す。
【0035】
図5は、Lが5000μmの場合におけるxと光強度との関係を示すグラフである。グラフ中、ひし形で示されるプロットを結ぶ波形W1は、光導波路6を伝搬する光の光強度の変化を示す。グラフ中、正方形で示されるプロットを結ぶ波形W2は、光導波路8を伝搬する光の光強度の変化を示す。グラフ中、三角形で示されるプロットを結ぶ波形C1は、マイクロ流路4を流れる流体試料a中を伝搬する光の光強度を示す。
【0036】
図6は、Lが15000μmの場合におけるxと光強度との関係を示すグラフである。グラフ中、ひし形で示されるプロットを結ぶ波形W11は、光導波路6を伝搬する光の光強度の変化を示す。グラフ中、正方形で示されるプロットを結ぶ波形W12は、光導波路8を伝搬する光の光強度の変化を示す。グラフ中、三角形で示されるプロットを結ぶ波形C11は、マイクロ流路4を流れる流体試料a中を伝搬する光の光強度を示す。
【0037】
図5及び図6に示されるグラフから、Lの値にかかわらず、光L1の光強度の1割に相当する光強度を有する光が流体試料a中を伝搬することが確認される。また、光導波路6を伝搬する光の光強度と光導波路8を伝搬する光の光強度との合計値は、xの値にかかわらず略一定であることが確認される。これは、コア外への光の漏れが殆ど無いことを示す。
【0038】
(光学シミュレーションの第2の例)
本例では、波長1.55μmの光に対する流体試料aの屈折率を、1.444、1.445、1.446、1.447及び1.448と変化させている。このとき、クラッドと流体試料aとの比屈折率差Δ2はそれぞれ0%、0.07%、0.14%、0.21%及び0.28%である。また、マイクロ流路4の幅Dを、5μm、10μm、15μm及び20μmと変化させている。図7及び図8に光学シミュレーション結果を示す。
【0039】
図7は、流体試料aの屈折率と流体試料a中を伝搬する光の光強度との関係を示すグラフである。グラフ中、ひし形で示されるプロットD5は、マイクロ流路4の幅Dが5μmの場合における光強度を示す。グラフ中、正方形で示されるプロットD10は、マイクロ流路4の幅Dが10μmの場合における光強度を示す。グラフ中、三角形で示されるプロットD15は、マイクロ流路4の幅Dが15μmの場合における光強度を示す。グラフ中、×印で示されるプロットD20は、マイクロ流路4の幅Dが20μmの場合における光強度を示す。
【0040】
図8は、流体試料aの屈折率と光導波路6,8から漏れる光の光強度との関係を示すグラフである。光導波路6,8から漏れる光は光検出器16,18に到達しないので、光漏れは測定誤差の原因の一つとなる。グラフ中、ひし形で示されるプロットD105は、マイクロ流路4の幅Dが5μmの場合における光強度を示す。グラフ中、正方形で示されるプロットD110は、マイクロ流路4の幅Dが10μmの場合における光強度を示す。グラフ中、三角形で示されるプロットD115は、マイクロ流路4の幅Dが15μmの場合における光強度を示す。グラフ中、×印で示されるプロットD120は、マイクロ流路4の幅Dが20μmの場合における光強度を示す。
【0041】
図7及び図8に示されるグラフから、流体試料aの屈折率が高くなるほど流体試料a中を伝搬する光の割合が大きくなる傾向にあることが確認される。この場合、高感度な測定が可能となる。一方、流体試料aの屈折率がコアの屈折率に近づくと、光漏れが大きくなる傾向にあることが確認される。したがって、流体試料aの屈折率を、コアの屈折率よりも低くすることが好ましく、クラッドの屈折率よりも高くすることが好ましい。さらに、流体試料aの屈折率を、クラッドと流体試料aとの比屈折率差Δ2に換算したときの値が0〜0.1%となるようにすることが特に好ましい。この場合、光漏れを十分に抑制することができる。なお、コアとクラッドとの比屈折率差Δ1は略一定であることが好ましい。これにより、例えば、コアの幅、コアが曲がっている部分の曲率半径、又は、隣り合うコア間の距離等を変える必要がなくなる。このため、高価なフォトマスクを新たに用意する必要がない。
【0042】
さらに、マイクロ流路4の幅Dを小さくすると、光漏れが小さくなる傾向にあることが確認される。したがって、マイクロ流路4の幅Dは5μm以下であることが好ましい。この場合、流体試料aの屈折率が、例えば温度変動等により変動しても光漏れが発生し難い。
【0043】
続いて、図9(a)〜図9(f)及び図10(a)〜図10(e)を参照して、マイクロ流路デバイス1の製造方法の一例について説明する。図9(a)〜図9(f)及び図10(a)〜図10(e)は、マイクロ流路デバイス1の製造方法の一例を示す工程断面図である。
【0044】
まず、図9(a)に示されるように、石英基板等の基板50上にエッチング用マスク52を形成する。エッチング用マスク52は例えばパターニングされたレジスト膜からなる。
【0045】
次に、図9(b)に示されるように、エッチング用マスク52を用いて基板50をエッチングすることにより、溝56が形成された基板54を形成する。エッチング方法としては、リアクティブイオンエッチング(RIE)法を好適に用いることができる。
【0046】
次に、図9(c)に示されるように、溝56を埋め込むように基板54上にコア膜58を形成する。コア膜58は、例えばプラズマCVD法を用いて形成される。コア膜58は、溝56に対応する窪み59を表面に有する。
【0047】
次に、図9(d)に示されるように、コア膜58上にレジスト膜60を塗布する。レジスト膜60は、コア膜58の窪み59を埋め込むように形成されるので、平坦な表面を有する。
【0048】
次に、図9(e)に示されるように、例えばRIE法を用いてレジスト膜60及びコア膜58をエッチングすることによりコアとなる光導波路6,8を溝56内に形成する。これにより、光導波路6,8の表面が平坦化される。
【0049】
次に、図9(f)に示されるように、基板54及び光導波路6,8上にエッチング用マスク62を形成する。エッチング用マスク62は例えばパターニングされたレジスト膜からなる。エッチング用マスク62は、光導波路6と光導波路8との間に開口を有する。
【0050】
次に、図10(a)に示されるように、エッチング用マスク62を用いて基板54をエッチングすることにより、溝4dが形成された基板42を形成する。エッチング方法としては、RIE法を好適に用いることができる。
【0051】
次に、図10(b)に示されるように、溝4d及び光導波路6,8を覆うように、例えば接着剤等を用いて基板42に基板64を張り合わせる。基板64はカバー部材となる。
【0052】
次に、図10(c)に示されるように、基板64上にエッチング用マスク66を形成する。エッチング用マスク66は例えばパターニングされたレジスト膜からなる。エッチング用マスク66は、流路部4cの上方に開口を有する。
【0053】
次に、図10(d)に示されるように、エッチング用マスク66を用いて基板64をエッチングすることにより、供給口4aが形成された基板40を形成する。エッチング方法としては、RIE法を好適に用いることができる。これにより、マイクロ流路デバイス1を製造することができる。
【0054】
次に、必要に応じて、図10(e)に示されるように、供給口4aにチューブ30を接続する。
【0055】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施形態に係る分析装置を模式的に示す平面図である。
【図2】実施形態に係るマイクロ流路デバイスを模式的に示す斜視図である。
【図3】図2に示されるIII−III線に沿った断面図である。
【図4】光学シミュレーションの対象となるマイクロ流路デバイスを模式的に示す図である。
【図5】Lが5000μmの場合におけるxと光強度との関係を示すグラフである。
【図6】Lが15000μmの場合におけるxと光強度との関係を示すグラフである。
【図7】流体試料aの屈折率と流体試料a中を伝搬する光の光強度との関係を示すグラフである。
【図8】流体試料aの屈折率と光導波路6,8から漏れる光の光強度との関係を示すグラフである。
【図9】図9(a)〜図9(f)は、マイクロ流路デバイス1の製造方法の一例を示す工程断面図である。
【図10】図10(a)〜図10(e)は、マイクロ流路デバイス1の製造方法の一例を示す工程断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1…マイクロ流路デバイス、2…基板、4…マイクロ流路、6…第1の光導波路、6a…第1の光導波路の一端、6b…第1の光導波路の他端、6c…第1の光導波路の所定部分、8…第2の光導波路、8b…第2の光導波路の一端、8c…第2の光導波路の所定部分、10…分析装置、12…方向性結合器、14…光源、16…第1の光検出器、18…第2の光検出器、20…光ファイバ、20a…光ファイバの他端、20b…光ファイバの一端、a…流体試料(流体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光導波路と、第2の光導波路と、前記第1の光導波路の所定部分と前記第2の光導波路の所定部分との間に配置され流体が流れるマイクロ流路と、を有する基板を備え、
前記第1の光導波路の前記所定部分及び前記第2の光導波路の前記所定部分は、方向性結合器を形成している、マイクロ流路デバイス。
【請求項2】
前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路はシングルモード光導波路である、請求項1に記載のマイクロ流路デバイス。
【請求項3】
前記基板は、石英ガラスから構成される、請求項1又は2に記載のマイクロ流路デバイス。
【請求項4】
第1の光導波路と、第2の光導波路と、前記第1の光導波路の所定部分と前記第2の光導波路の所定部分との間に配置され流体試料が流れるマイクロ流路と、を有する基板と、
前記第1の光導波路の一端に光学的に結合された光源と、
前記第1の光導波路の他端に光学的に結合された第1の光検出器と、
前記第2の光導波路の一端に光学的に結合された第2の光検出器と、
を備え、
前記第1の光導波路の前記所定部分及び前記第2の光導波路の前記所定部分は、方向性結合器を形成している、分析装置。
【請求項5】
前記第1の光導波路の前記一端に光学的に結合された一端と、前記光源に光学的に結合された他端と、を有する光ファイバを更に備える、請求項4に記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−300563(P2006−300563A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−118812(P2005−118812)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】