説明

マイクロRNA−196の過剰発現によるC型肝炎ウイルス感染の治療

本発明は、HCVに感染した細胞及びHCV感染に罹患している哺乳動物を、miRNA−196ミミックにより感染細胞をトランスフェクトすることによって治療する方法に関する。miRNA−196ミミックはBach1タンパク質及びHCV遺伝子発現を有意に下方制御し、一方HMOX1遺伝子発現を上方制御する。miRNA−196は、Bach1 mRNAの3’−UTRと結合してBach1の発現を低下させる。miRNA−196は、肝細胞でのHCV複製及びHMOX1/Bach1発現の制御において重要な役割を果たし得る。本発明はまた、Bach1及びHCV遺伝子発現を下方制御し、一方HMOX1発現が増加するように治療有効量のmiRNA−196を含有する、HCVを発現する細胞の治療のための製剤を提供する。製剤は、HCVタンパク質を発現する肝細胞へのmiRNA−196ミミックのトランスフェクションを可能にするように適合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発
本発明は、NIH/NIDDKによって授与されたRO1−DK38825の下に米国政府の助成を受けて為された。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般にC型肝炎感染の治療のための方法及び製剤に関する。より詳細には、本発明はBach1及び/又はHCVを制御することに関する。Bach1及びHCV NS5Aタンパク質をmiR−196によって減少させ、一方でHMOX1を増加させることができる。
【背景技術】
【0003】
C型肝炎ウイルス(HCV)は、フラビウイルス科(Flaviviridae )の小さな(直径50nm)、エンベロープを有するプラスセンス一本鎖RNAウイルスである。A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス及びC型肝炎ウイルスは、それらがすべて肝炎を引き起こすことから類似の名称を有するが、各々は遺伝的にも臨床的にも別個の異なるウイルスである。HCVは、C型肝炎として知られる血液由来の(すなわち血液が血液に混入することによって伝播される)感染症を引き起こす。この感染はしばしば無症候性であるが、ひとたび発症すると、慢性感染は肝臓の炎症を引き起こし得る(慢性肝炎)。この状態は、肝臓の瘢痕化(線維症)、そして進行した瘢痕化(肝硬変)へと進行し得る。一部の症例では、肝硬変を有する患者は肝不全又は肝癌を含む肝硬変の他の合併症を発現するに至る。
【0004】
急性C型肝炎は、HCVによる感染後の最初の6か月を指す。感染した人々の約60%〜70%は、急性期の間は症状を発現しない。急性期症状を経験する少数の患者では、症状は一般に軽度で非特異的であり、C型肝炎の特異的診断に至ることはまれである。急性C型肝炎感染の症状としては、食欲減退、疲労、腹痛、黄疸、掻痒及びインフルエンザ様症状を含む。HCVは通常、感染後1〜3週間以内に血液中で検出可能であり、ウイルスに対する抗体は一般に3〜12週間以内に検出可能である。HCVに感染した人の約15〜40%は、アラニントランスアミナーゼ(ALT)及びアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)の正常化などの肝機能検査(LFT)における正常化、並びに血漿HCV−RNAクリアランス(自発的ウイルスクリアランス)によって示されるように、急性期の間に自らの体内からウイルスを除去する。HCVに感染した患者の残りの60〜85%は慢性C型肝炎(CHC)を発症する。
【0005】
慢性C型肝炎は、6か月以上持続するHCVによる感染と定義される。慢性C型肝炎の自然経過は人によってかなり異なる。HCVに感染した実質的にすべての人々が、肝生検で炎症の痕跡を有する。しかし、肝臓の瘢痕化(線維症)の進行速度は個人間で大きなばらつきを示す。最近のデータは、未治療の患者において、おおよそ3分の1が20年未満で肝硬変へと進行することを示唆する。さらに3分の1が30年以内に肝硬変へと進行する。肝疾患を特異的に示唆する症状は、典型的には肝臓の実質的な瘢痕化が起こるまで存在しない。しかし、C型肝炎は全身性疾患であり、患者は、症状の不在から、進行した肝疾患の発症に先立つより症候性の疾病までにわたる広いスペクトルの臨床症状発現を経験し得る。慢性C型肝炎に関連する全身性徴候及び症状としては、疲労、著しい体重減少、インフルエンザ様症状、筋痛、関節痛、軽度間欠熱、掻痒、睡眠障害、腹痛(特に右上四半部)、食欲の変化、悪心、下痢、消化不良、認知変化、うつ病、頭痛、及び気分変動を含む。
【0006】
ひとたび慢性C型肝炎が肝硬変へと進行すると、一般に、肝機能低下、又は門脈圧亢進症として知られる状態である、肝循環における血圧上昇のいずれかによって引き起こされる徴候及び症状が出現し得る。肝硬変の考えられる徴候及び症状としては、腹水(腹部における液体の貯留)、挫傷及び出血傾向、骨痛、静脈瘤(特に胃及び食道における静脈拡張)、脂肪便(脂肪便症)、黄疸、及び肝性脳症として知られる認知障害症候群を含む。
【0007】
慢性C型肝炎は、他の形態の肝炎よりも、甲状腺機能亢進又は甲状腺機能低下を伴う甲状腺炎(甲状腺の炎症)、晩発性皮膚ポルフィリン症、クリオグロブリン血症(小血管性血管炎の形態)及び糸球体腎炎(腎臓の炎症)、特に膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)などの、HCVの存在に関連する肝臓外症状によって診断される。C型肝炎はまた、乾燥症候群、血小板減少症、扁平苔癬、糖尿病及びB細胞リンパ増殖異常症にも関連する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
C型肝炎ウイルス感染は世界的な健康上の問題であり、そのためのワクチンは現在のところ使用可能ではない。慢性C型肝炎(CHC)のための現在の標準的な治療はペグ化インターフェロン(IFN)とリバビリンの併用であるが、患者の約50%しかそのような治療に反応しない。加えて、この治療は高価であり、長期に及び、多くの不快な副作用を伴う。推定では世界中で1億5000万〜2億人がC型肝炎に感染している。
【0009】
そこで、HCVを標的する、すべての形態のC型肝炎の治療のための抗ウイルス治療及び処置を発見し、開発する必要性が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、C型肝炎ウイルスタンパク質を発現するヒト肝細胞癌細胞におけるBach1タンパク質の発現レベルを低下させることによってHCV感染に罹患している細胞又は哺乳動物を治療する方法を提供することにより、前記の必要性の少なくとも一部に応えるものである。Bach1タンパク質発現レベルの低下は、miRNA−196がBach1のmRNAの3’−UTRと結合してBach1の発現を減少させるように、miRNA−196ミミックにより細胞をトランスフェクトすることによって達成され得る。miRNAは単に、Bach1のmRNAの3’−UTRと有効に結合するためのマッチする「シード領域(seed region)」を含有することしか必要としない。好ましくは、miRNAは、Bach1発現レベルの低下を増大させるように上方制御又は過剰発現される。miRNA−196のレベルは、miRNA経路に侵入して、成熟miRNA−196として働く、合成miRNAミミックによって上方制御される。
【0011】
HCV感染に罹患している哺乳動物はまた、HCV非構造タンパク質を発現する細胞においてHMOX1遺伝子発現を上方制御させることによっても治療できる。様々な実施形態において、HMOX1遺伝子発現の上方制御は、細胞におけるBach1遺伝子発現の下方制御を伴う。同様に、miRNA−196は、HMOX1を負に制御するBach1と結合することによって間接的にHMOX1を上方制御する。各々の制御は、miRNA−196ミミックで細胞をトランスフェクトすることによって達成され得る。加えて、HCVに感染した、肝細胞などの細胞は、miRNA−196ミミックを用いて細胞をトランスフェクトすることにより、感染細胞におけるHCVの発現を減少させることによって治療できる。
【0012】
もう1つの態様では、本発明は、HCVに感染した細胞をmiRNA−196ミミックによりトランスフェクトすることができるように、miRNA−196ミミックを哺乳動物に投与するのに適した医薬製剤を提供する。これらの製剤の投与は、肝細胞においてBach1の発現を翻訳段階で抑制し、HMOX1を増加させ、そしてHCV複製を制御する。
【0013】
重要な点として、本発明は、Bach1遺伝子発現の減少、HMOX1遺伝子発現の増加、及びHCV遺伝子発現の減少を導く、Bach1の3’−UTRにおける機能的miRNA−196結合部位を明らかにする。miRNA−196の使用は、HCVに感染した細胞及びC型肝炎(例えば慢性HCV感染)を有する哺乳動物を治療するため、並びに、おそらく、酸化ストレス上昇を特徴とする他の疾患のための新しい付加的な治療を提供する。
【0014】
本発明を概括的に述べたので、ここで付属の図面を参照するが、これらの図面は必ずしも一定の縮尺で描かれたものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1Aは、miR−196と標的される最初の推定上のBach1の3’−UTR部位との間の最初のシード領域マッチの図式を示す。 図1Bは、miR−196と標的される推定上のBach1の3’−UTR部位との間の2番目のシード領域マッチの図式を示す。
【図2】図2Aは、miRNA−196ミミックでのトランスフェクションに関連する減少したBach1タンパク質レベルを示す。 図2Bは、miRNA−196阻害剤でのトランスフェクションに関連する増加したBach1タンパク質レベルを示す。 図2Cは、miRNA−196ミミックでのトランスフェクションによって変化しなかったBach1 mRNAレベルを示す。
【図3】図3Aは、miRNA−196ミミックに関連するHMOX1のmRNAレベルの増加を示す。 図3Bは、miRNA−196ミミックでのトランスフェクションがCullin−3のmRNAレベルを変化させなかったことを示す。
【図4】図4Aは、miRNA−196ミミックでのトランスフェクションに関連するHCV−NS5Aタンパク質レベルの減少を示す。 図4Bは、miRNA−196阻害剤でのトランスフェクションに関連するHCV−NS5Aタンパク質レベルの増加を示す。 図4Cは、Con1(サブタイプ1b)完全長レプリコン細胞における、miRNA−196ミミックでのトランスフェクションによるHCV−NS5A及びコアmRNAレベルの減少を示す。
【図5】図5Aは、miRNA−196についての2つのBach1の3’−UTRシードマッチ部位を示す。 図5Bは、Lipofectamine2000によりpGL3−Bach1、pRL−TK(ウミシイタケ(renilla))及びmiR−196ミミック又は阻害剤で同時トランスフェクトした細胞において使用したホタルルシフェラーゼ(f−luc)レポーター構築物、pGL3−Bach1の図式的表示を示す。 図5Cは、miRNA−196ミミックがpGL3−Bach1レポーターのf−luc活性を阻害したことを示す。 図5Dは、miRNA−196阻害剤がpGL3−Bach1レポーターのf−luc活性をわずかに上昇させたことを示す。
【図6】図6Aは、Bach1の3’−UTRの2つのシードマッチ部位における4個のヌクレオチドの置換を示す。 図6Bは、miRNA−196ミミックが、変異型pGL3−Bach1又はpGL3−Bach1、pRL−TK(ウミシイタケ)、及びmiR−196ミミックで同時トランスフェクトした細胞においてpGL3−Bach1−WTのf−luc活性を低下させたが、pGL−Bach1−Mutレポーターのf−luc活性は低下させなかったことを示す。 図6Cは、miR−155ミミックが、変異型pGL3−Bach1又はpGL3−Bach1、pRL−TK(ウミシイタケ)、及びmiR−155ミミックで同時トランスフェクトした細胞においてpGL3−Bach1−WTとpGL−Bach1−Mutレポーターの両方のf−luc活性を低下させたことを示す。
【図7】図7Aは、miRNA−196のシードマッチ部位に導入した4ヌクレオチド変異を示す。 図7Bは、pGL3−Bach1、pRL−TK及び漸増濃度のミミック陰性対照、miR−196ミミック又は変異型miR−196で同時トランスフェクトした細胞のルシフェラーゼ活性を示す。
【図8】図8Aは、変異型miRNA−196と変異型Bach1の3’−UTRとの間のシードマッチの回復を示す。 図8Bは、変異型レポーター(pGL3−Bach1−Mut)、pRL−TK、及び変異型miRNA−196又は野生型miRNA−196ミミックで48時間同時トランスフェクトした細胞の測定されたルシフェラーゼ活性を示す。
【図9】図9Aは、J6/JFH1のRNAでトランスフェクトしたHuh−7.5細胞における、miRNA−196ミミックによるHCV−J6/JFH1のRNAレベルの減少を示す。 図9Bは、培養上清中に分泌されたJ6/JFH1−C型肝炎ウイルスに感染したHuh−7.5細胞における、を示す。 図9Cは、培養上清中に分泌されたJ6/JFH1−C型肝炎位に感染したHuh−7.5細胞における、miRNA−196ミミックによるHCV−J6/JFH1タンパク質レベルの減少を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の、すべてではないが一部の実施形態を示す付属の図面を参照して、本発明を以下でより詳細に説明する。実際上、これらの発明は多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書で述べる実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、この開示が、適用される法的必要条件を満たすために提供されるものである。
【0017】
C型肝炎ウイルス(HCV)が、肝細胞において直接酸化ストレスを誘導することは認められている。同様に、ヘムオキシゲナーゼ1(HMOX1)が、抗酸化及び抗炎症活性を有する重要な細胞保護酵素であることも受け入れられている。HMOX1の存在又は使用は、それ自体、HCVによって誘導される酸化ストレスを無効にする又は軽減するための手段とみなすことができる。しかし、塩基性ロイシンジッパー(bZip)型哺乳動物転写リプレッサーであるBach1は、HMOX1を負に制御する。そこで、Bach1レベルの低下は、単独で又はHMOX1レベルの上昇と併せて、潜在的にC型肝炎の予防又は改善を導き得る。
【0018】
Bach1は、cap’n’collar型の塩基性領域ロイシンジッパー因子ファミリー(CNC−bZip)に属する転写因子をコードする遺伝子である。コードされるタンパク質は、CNC−bZipファミリー成員には異型である、broad complex,tramtrack,bric−a−brac/ポックスウイルス及びジンクフィンガー(BTB/POZ)ドメインを含む。これらのBTB/POZドメインは、タンパク質間相互作用並びにホモ及び/又はヘテロオリゴマーの形成を促す。このコードされるタンパク質がMafKとヘテロ二量体を形成する場合、それはMaf認識エレメント(MARE)のリプレッサーとして機能し、転写が抑制される。より明確には、Bach1は、HMOX1遺伝子発現を負に制御するHMOX1の哺乳動物転写リプレッサーである。Bach1はMaf関連癌遺伝子ファミリーと拮抗性ヘテロ二量体を形成する。これらのヘテロ二量体は、Maf認識エレメント(MARE)に結合し、Maf含有ヘテロ二量体及び他の正の転写因子に応答する遺伝子(例えばHMOX1及びNQO1)の発現を抑制する。
【0019】
miRNAは、一般に遺伝子発現の重要な制御因子であるとみなされる小さな非コードRNA(〜22ヌクレオチド)である。本発明以前は、マイクロRNAがBach1又はHCVを制御するか否か、そしてどのようにして制御するかは概して不明であった。本発明は、初めて、miRNA−196が、Bach1のmRNAの3’−UTRに直接作用し、このタンパク質の発現を翻訳段階で抑制して、HMOX1を増加させることを認識する。加えて、miR−196はまた、HCV−NS5Aタンパク質発現も阻害する。従って、miRNA−196は、肝細胞でのHCVの複製及びHMOX1/Bach1発現の制御において重要な、おそらく決定的と言えるほどの役割を果たす。従って、HCVに感染した細胞又は肝炎に罹患している哺乳動物は、感染細胞をmiRNA−196ミミックによりトランスフェクトするためにmiRNA−196ミミックを投与することによって治療できる。好ましくは、miRNA−196の過剰発現及び感染細胞へのそのトランスフェクションは、C型肝炎感染を予防する又は改善するためのアプローチを有利に提供することができる。1つの実施形態では、miRNA−196のレベルは、miRNA経路に侵入して、成熟miRNA−196として作用する合成miRNAミミックによって増加する。
【0020】
上記で言及したように、miRNAは、一般に遺伝子発現の重要な制御因子であるとみなされる小さな非コードRNA(〜22ヌクレオチド)である。より詳細には、miRNAは、主として翻訳抑制を介して遺伝子発現を制御する、約21〜23ヌクレオチド長の一本鎖RNA分子である。miRNAは、DNAから転写されるがタンパク質に翻訳されない遺伝子によってコードされ(非コードRNA)、その代わりにそれらは、プリmiRNAとして知られる一次転写産物からプレmiRNAと呼ばれる短いステムループ構造にプロセシングされ、そして最終的には機能性miRNAへとプロセシングされる。成熟miRNA分子は、1又はそれ以上のメッセンジャーRNA(mRNA)分子に対して部分的に相補的であり、それらの主たる機能は遺伝子発現を減少させることである。miRNAの機能は遺伝子制御にあると思われる。そのために、miRNAは、1又はそれ以上のメッセンジャーRNA(mRNA)の一部に相補的である。動物miRNAは通常、3’UTR内の部位に相補的である。次に、miRNAのmRNAへのアニーリングはタンパク質翻訳を阻害するが、時としてmRNAの切断を促進する。そのような場合、miRNAの結合を介した二本鎖RNAの形成は、RNA干渉(RNAi)に類似したプロセスを介してmRNA転写産物の分解を開始させる。しかし、また別の場合には、miRNA複合体は、mRNAの分解を生じさせることなくタンパク質翻訳機構をブロックする又はさもなければタンパク質翻訳を妨げると考えられる。現在、標的遺伝子が下方制御される正確な機構は不明のままである。
【0021】
本出願に関して、マイクロRNA模倣体(例えばmiRNA−196ミミック)は、それらの安定性を高め、活性を改善するためにON−TARGET(登録商標)で化学修飾された二本鎖RNAオリゴヌクレオチドである。マイクロRNA模倣体(マイクロRNAミミック)は、内因性前駆体miRNAを模倣してmiRNA経路に侵入し、成熟miRNA種として作用する。
【0022】
miRNA−mRNAヘテロ二本鎖の末端の6〜8塩基対の「シード領域」における配列相補性が、miRNA−標的RNA相互作用の特異性を決定すると思われる。miR−196は、最初に、動物における数多くの発生プログラムのための決定的に重要な関連転写因子遺伝子の群である、ホメオボックス(HOX)クラスターに対して広範で進化的に保存された相補性を有し、HOX遺伝子発現を制御することが認められた。
【0023】
発明人は、miRNA−196が、Bach1のmRNAの3’−UTRを標的することによってHCVゲノム並びにHMOX1遺伝子の増加を標的にすることを提案する。従って、HCVに感染した細胞は、感染細胞をmiRNA−196ミミックでトランスフェクトすることによって治療できる。HCV感染細胞をトランスフェクトすることにより、Bach1発現レベルを低下させ、一方でHMOX1レベルを上昇させることができる。好都合にも、HMOX1を負に制御するBach1の下方制御は、HMOX1の発現を上昇させるのに役立つ。上述したように、HMOX1は、HCVによって誘導される酸化ストレスを軽減する抗酸化作用を提供する。加えて、miRNA−196の増加はIFN−β治療によって誘導し得る。miRNA−196のこの誘導は、ヒト肝細胞癌細胞株Huh−7及び一次マウス肝細胞において認めることができる。
【0024】
miRNAの数は増大し続け、さらなるmRNA及びそれらによって制御される候補遺伝子の同定が続いている。肝臓に関しては、miRNA−122が、肝細胞において発現される最も豊富なmiRNAとして同定され、コレステロール代謝のいくつかの酵素に重要な作用を及ぼすことが示された。miRNA−122はまた、HCV発現のために必要であることも示された。一般に、miRNA−122の作用はそのコグネイトシード配列結合部位の状況及び位置に依存し、5’領域内の部位は主として発現の増加に関連し、一方3’非翻訳領域内の部位は主として発現の抑制に関連する。本発明の実施形態は、miRNA−196ミミックをHCV−NS5Aタンパク質発現の下方制御剤として利用することを含む。このタンパク質は、HCVの完全且つ正常な発現のために必須である。そこで、本発明の実施形態は、感染細胞又はC型肝炎に罹患している哺乳動物を治療有効量のmiRNA−196ミミックで治療する方法を含む。治療有効量は公知の管理投与法によって提供され得る。例えば、miRNA−196ミミックを含有する治療薬は、本発明の様々な実施形態に従って局所、経腸的又は非経口的投与経路によって適用され得る。
【0025】
今や、HCV感染が感染肝細胞において、及び、おそらく他の感染細胞においても、酸化ストレスの上昇を生じさせることは一般的に認められている。そのような酸化ストレス上昇の1つの重要なメディエイターはHCVコアタンパク質である。同様に、HMOX1が、過度の酸化ストレスの潜在的損傷作用から数多くの細胞及び組織を保護するのを助けることも広く認められている。上記で言及したように、HMOX1は、HCVによって誘導される酸化ストレスを無効にし得る又は軽減し得る抗酸化及び抗炎症活性を有する重要な細胞保護酵素である。より詳細には、HMOX1は、ヘム分解を触媒し、インビボで抗酸化及び抗炎症活性を有する第一鉄イオン、一酸化炭素及びビリベルジンを生成する、重要な細胞保護酵素である。HMOX1のこれらの有益な特性は、強力な酸化促進剤として作用し得る、「遊離」又は緩く結合したヘムを低減し、強力な抗酸化及び抗炎症及び抗線維形成作用を有する一酸化炭素、ビリベルジン及びビリルビンの産生を高めるHMOX1の能力に基づく。
【0026】
HMOX1遺伝子の発現の制御は複雑である。しかし、発明者は、HMOX1の制御のための重要な部位として、多くの種にわたってHMOX遺伝子の5’非翻訳領域内の一連の拡大AP−1部位(抗酸化剤応答配列とも呼ばれる)、Mafタンパク質応答エレメント[MARE]、及びメタロポルフィリン応答エレメント[MPRE]があることを示した。Bach1は、cap’n’collarファミリーのジンク、ロイシンジッパータンパク質の成員である。Bach1はHMOX1遺伝子の発現の持続的抑制において鍵となる役割を果たす。小さなMafタンパク質とヘテロ二量体を形成し、遺伝子の転写活性化をブロックすることによってそれを行う。Bach1はいくつかのコンセンサス結合部位を含み(すべてCPモチーフを含有する)、それらは、ヘムと結合した場合、Mafタンパク質に対する親和性の著明な低下及びその後のHMOX1遺伝子発現の活性の低下と上昇を伴う、タンパク質の立体配座の変化を導く。主要な刺激性Mafタンパク質の1つはNrf2である。Nrf2の増加はHMOX1遺伝子の発現上昇に結びつく。
【0027】
上記を考慮して、HMOX1活性をHCV感染において上昇させ得る。それにもかかわらず、慢性C型肝炎の状況におけるHMOX1の発現低下が臨床試験で同定されている。そこで、HMOX1遺伝子の発現がより低いレベルとなる遺伝的又は他の因子を有する患者は、HCV急性暴露後に慢性C型肝炎感染を発症する危険度が高い及び/又はHCV感染により進行性肝疾患をより急速に発症する危険度がより高いと考えられる。
【0028】
より低いレベルのHMOX1遺伝子発現は慢性C型肝炎感染に相関すると考えられ、Bach1はHMOX1を負に制御する。従って、HCVに感染した細胞又はC型肝炎に罹患している哺乳動物を、感染細胞におけるBach1のレベルを低下させるように治療することは、HCVの影響を有利に軽減し得る。そこで、本発明の1つの実施形態は、慢性C型肝炎感染に罹患している哺乳動物を、miRNA−196がBach1のmRNAの3’−UTRと結合してBach1の発現を低下させ、HMOX1を増加させように、miRNA−196ミミックで細胞をトランスフェクトすることによって治療するための方法を含む。好ましくは、miRNA−196は、Bach1に結合し、HMOX1を増加させるためにより多くのmiRNA−196を提供するように過剰発現する。
【0029】
本発明に従った1つの実施形態では、HCV感染(例えば慢性C型肝炎)に罹患している哺乳動物をmiRNA−196で治療する。特に、感染細胞を、Bach1の発現を減少させるmiRNA−196ミミックでトランスフェクトする。1つの特定実施形態では、HCV非構造タンパク質を発現する感染細胞におけるBach1タンパク質発現レベルを、miRNA−196がBach1のmRNAの3’−UTRと結合してBach1の発現を低下させるように、miRNA−196ミミックにより細胞をトランスフェクトすることによって低下させ得る。1つの好ましい方法では、Bach1のmRNAの3’−UTRと結合するmiRNA−196を過剰発現させる。1つの特定実施形態では、インターフェロンβを同時に投与することによってmiRNA−196を増加させる。もう1つの実施形態では、miRNA−196をまた、単独又はインターフェロンβと組み合わせたmiRNA−196ミミックの投与によって増加させる。
【0030】
感染細胞の個別の治療又はそのような感染細胞を担持する哺乳動物の治療は、治療有効量のmiRNA−196ミミックを投与することでBach1タンパク質の発現レベルの有意の低下を提供し得る。「治療有効量」とは、感染細胞又は肝炎を有する哺乳動物への、1又はそれ以上の標的とする障害を治療する及び/又は予防するために有効なmiRNA−196ミミックの量を意味する。一般的な指針として、HCV感染の治療のためのmiRNA−196ミミックの1日治療量は、一般に0.5〜5μmol/kg体重、又は1.0〜4μmol/kg体重、又は2〜3μmol/kg体重となり得る。他の実施形態では、miRNA−196ミミックの治療量は、0.1〜1μmol/kg体重、又は0.25〜1μmol/kg体重、又は0.25〜0.75μmol/kg体重となり得る。
【0031】
様々な実施形態において、Bach1タンパク質の発現レベルを約10%〜約75%、又は約25%〜約65%低下させることができる。他の実施形態では、トランスフェクションの24時間後のBach1タンパク質の発現レベルは、約25%〜約75%、又は約50%〜約60%の低下となる。さらにもう1つの実施形態によれば、トランスフェクションの48時間後のBach1タンパク質の発現レベルは、約40%〜約80%、又は約60%〜約70%の低下となる。
【0032】
上記で論じたように、HMOX1遺伝子発現のレベルを上昇させることは、HCVによって誘導される酸化ストレスを無効にする又は軽減する上で有益であり得る。miRNA−196によりトランスフェクトした場合、HCV非構造タンパク質を発現する細胞におけるHMOX1遺伝子発現を有利に上昇させることができる。従って、本発明の1つの実施形態は、HCV非構造タンパク質を発現する細胞においてHMOX1遺伝子発現を増加させることにより、HCVに感染した細胞又はHCV感染に罹患している哺乳動物を治療する方法を含む。HMOX1遺伝子発現は、感染細胞を治療有効量のmiRNA−196ミミックを用いてトランスフェクトすることによって増加する。1つの実施形態では、HMOX1の増加は、細胞におけるBach1遺伝子発現の減少を伴う。1つの好ましい実施形態では、この方法は、肝細胞を治療するためにmiRNA−196を増加又は過剰発現させることを含む。様々な実施形態において、HMOX1の発現は、miRNA−196ミミックによりトランスフェクトしていない細胞におけるHMOX1発現のレベルに比べて約2〜約3倍上昇する。
【0033】
Bach1発現を抑制することに加えて、HCV非構造タンパク質を発現するヒト肝細胞におけるHCV非構造タンパク質5a(HCV−NS5A)の発現も抑制される。そこで、本発明の実施形態は、HCV感染細胞をmiRNAミミックにより治療することを含む。感染細胞を、HCV NS5Aの発現を減少するようにmiRNA−196ミミックによってトランスフェクトすることができる。好ましくは、miRNA−196を過剰発現させる。
【0034】
本発明のある実施形態には、miRNA−196ミミックにより細胞をトランスフェクトすることにより、HCV非構造タンパク質を発現する細胞におけるHCV−NS5Aの発現を低下させることによってHCVに感染した細胞又はHCV感染に罹患している哺乳動物を治療することが含まれる。すなわち、ある実施形態では、HCV感染に罹患している哺乳動物を、miRNAミミックを用いて細胞をトランスフェクトすることにより、HCVレプリコン細胞及びHCV感染細胞におけるHCVのRNAの発現及び/又はタンパク質発現を低下させることによって治療する。そのようなある1つの実施形態では、HCV−NS5Aタンパク質の発現レベルを10〜60%、又は20〜50%低下させる。別の実施形態では、トランスフェクションの24時間後のHCV−NS5Aタンパク質の発現レベルは約45〜約55%の低下となり、一方トランスフェクションの48時間後のHCV−NS5Aタンパク質の発現レベルは約35〜約45%の低下となる。
【0035】
本出願全体を通して使用される「トランスフェクション」という用語は、ウイルスベクター又は他の導入手段を用いた真核細胞への外来性物質の導入を表す。動物細胞のトランスフェクションは、典型的には物質の取込みを可能にするために細胞形質膜に一過性の細孔又は「穴(holes)」をあけることを含む。遺伝物質(スーパーコイルプラスミドDNA又はsiRNA構築物など)、さらには抗体などのタンパク質をトランスフェクトし得る。電気穿孔に加えて、トランスフェクションは、カチオン性脂質を物質と混合してリポソームを作製し、それらを細胞形質膜と融合して、それらの積荷を内部に沈着させることによって実施できる。
【0036】
トランスフェクションの1つの考えられる方法は、リン酸カルシウムを利用し得る。リン酸イオンを含有するHEPES緩衝食塩水(HeBS)を、トランスフェクトしようとする物質を含有する塩化カルシウム溶液と組み合わせる。この2つを組み合わせた場合、正に荷電したカルシウムと負に荷電したリン酸の微細な沈殿物が形成され、トランスフェクトする物質をその表面に結合する。次に、沈殿物の懸濁液をトランスフェクトする細胞に添加する。そのプロセスは完全には理解されていないが、細胞は沈殿物の一部を取り込み、それと共にトランスフェクトする物質を取り込む。
【0037】
他の方法は、高度に分岐した有機化合物(例えばデンドリマー)を使用して、遺伝物質(例えばDNA、RNA又はmiRNA)を結合し、それを細胞に入り込ませる。もう1つの方法は、リポソームによりトランスフェクトする方法、すなわちいくつかの点で細胞の構造に類似し、実際に細胞膜と融合することができ、遺伝物質を細胞内に放出する小さな膜結合体中に、トランスフェクトしようとする遺伝物質を封入することである。真核細胞については、細胞がより感受性であるため、脂質−カチオンに基づくトランスフェクションがより典型的に使用される。
【0038】
もう1つの方法は、DEAE−デキストラン又はポリエチレンイミンなどのカチオン性ポリマーの使用である。負に荷電した遺伝物質はポリカチオンに結合し、その複合体がエンドサイトーシスを介して細胞によって取り込まれる。
【0039】
トランスフェクションへの直接のアプローチは遺伝子銃であり、この場合、遺伝物質を不活性固体(一般的に金)のナノ粒子に結合して、次にそれを標的細胞の核に直接「撃ち込む」。遺伝物質はまた、ウイルスを担体として使用して細胞に導入することができる。そのような場合、その技術はウイルス形質導入と呼ばれ、細胞は形質導入されると言い表される。トランスフェクションの他の方法は、ヌクレオフェクション、電気穿孔、熱ショック、マグネトフェクション、及びLipofectamine、Dojindo Hilymax、Fugene、jetPEI、Effectene又はDreamFectなどの専売トランスフェクション試薬を含む。
【0040】
参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,942,634号は、生物学的に活性な(治療)分子の細胞内への輸送を促進するカチオン性両親媒物質の使用を述べる。米国特許第5,942,634号はまた、1又はそれ以上のカチオン性両親媒物質の分散を治療分子と接触させることによって治療分子を組み込んだ治療組成物を作製する方法を教示する。細胞に送達できる治療分子は、DNA、RNA及びポリペプチドを含む。そのような組成物は、遺伝子治療、及びアンチセンスポリヌクレオチド又は生物活性ポリペプチドの細胞への送達を提供するために使用できる。
【0041】
さらにもう1つの態様では、本発明は、C型肝炎、好ましくは慢性C型肝炎を有する細胞又は哺乳動物の治療のための医薬製剤を提供する。本発明による製剤は、Bach1及び/又はHCV−NS5Aが減少し、一方HMOX1発現が上昇するように、治療有効量のmiRNA−196ミミックを含有すべきである。本発明に従った実施形態は、HCVを発現する肝細胞へのmiRNA−196ミミックのトランスフェクションを可能にするように適合される。本発明の製剤は、遺伝物質を標的細胞にトランスフェクトするための上記手段のいずれかを含み得る又は利用し得るが、それらに限定されない。
【0042】
様々な実施形態によれば、本発明の製剤は経腸投与用の形態で提供され得る。例えば、本発明の実施形態による製剤は、経口投与用の錠剤、カプセル又は液体製剤の形態で提供され得る。最も好ましくは、しかし、製剤は静脈内注射用の液体製剤として提供される。
【0043】
他の実施形態では、製剤は注射又は注入用の形態で提供され得る。例えば、本発明による様々な製剤は、静脈内(静脈内へ)、動脈内(動脈内へ)、筋肉内(筋肉内へ)、皮下(皮膚の下に)、皮内(皮膚自体の内部へ)、髄腔内(脊柱管内へ)、又は腹腔内(腹膜内への注入又は注射)に投与することができる。
【0044】
本発明の実施形態による製剤により、感染細胞の個別の治療又はそのような感染細胞を保有する哺乳動物の治療は、治療有効量のmiRNA−196ミミックを投与することでBach1及びHCV−NS5Aタンパク質の発現レベルの有意の低下並びにHMOX1レベルの上昇を提供し得る。「治療有効量」とは、感染細胞又は肝炎を有する哺乳動物への、1又はそれ以上の標的とする障害を治療する及び/又は予防するために有効なmiRNA−196ミミックの量を意味する。一般的な指針として、HCV感染の治療のためのmiRNA−196ミミックの1日治療量は、一般に0.5〜5μmol/kg体重、又は1.0〜4μmol/kg体重、又は2〜3μmol/kg体重となり得る。他の実施形態では、miRNA−196ミミックの治療量は、0.1〜1μmol/kg体重、又は0.25〜1μmol/kg体重、又は0.25〜0.75μmol/kg体重となり得る。
【実施例】
【0045】
I.材料及び実験
A.試薬及び抗体
BCAタンパク質アッセイ試薬はPierce Biotechnology(Rockford,IL)より入手した。ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)及びウシ胎仔血清(FBS)はHyClone(Logan,UT)より入手した。Dual−Glo(登録商標)ルシフェラーゼアッセイシステムはPromega(Madison,WI)より入手した。TRIzolはInvitrogen(Carlsbad,CA)から購入し、ジェネティシン(G−418)はGibco(Grand Island,NY)から購入した。プライマーはIntegrated DNA Technologies(Coralville,IA)によって合成された。4〜15%勾配のSDS−PAGEゲル及びImmunBlot−PVDF膜はBio−Rad(Hercules,CA)から購入した。マウス抗HCV−NS5A及びマウス抗HCV−NS3モノクローナル抗体はVirogen(Watertown,MA)から購入した。ヤギ抗ヒトBach1及びGAPDHポリクローナル抗体はSanta Cruz Biotechnology(Santa Cruz,CA)から購入した。ECL−PlusはAmersham(Piscataway,NJ)から購入した。
【0046】
B.細胞培養
9−13細胞はUniversity of Heidelberg,Heidelberg,Germanyによって提供された。ヒト肝細胞癌Huh−7細胞集団である9−13細胞株は、複製するHCV非構造領域を保持し、HCV非構造タンパク質NS3〜NS5Bを安定に発現する。細胞を、10%(v/v)FBS、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン及び500μg/mLのG−418を添加したDMEM中に維持した。Con 1(サブタイプ1b)完全長レプリコンHuh−7.5細胞(Con1細胞)はRockefeller University(New York,NY)からであった。Con1細胞株は、ポリペプチドのアミノ酸2204に高度適応性セリンのイソロイシンへの置換を有する完全長HCV遺伝子型1bレプリコンを含むHuh−7.5細胞集団である。Con1細胞を、10%(v/v)FBS及び0.1mM非必須アミノ酸、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン及び選択抗生物質である750μg/mLのG418を添加したDMFM中に維持した。細胞を37℃で95%室内気及び5%COの加湿雰囲気中に維持した。
【0047】
C.マイクロRNA及び構築物
has−miRNA−196、has−miRNA−16、特注作製された変異型has−miRNA−196及びmiRNAミミック陰性対照(MMNC)のためのmiRIDIANマイクロRNAミミックをDharmacon(Lafayette,CO)より入手した。マイクロRNAミミックは、それらの安定性を高め、活性を改善するためにON−TARGET(登録商標)で化学修飾された二本鎖RNAオリゴヌクレオチドである。マイクロRNAミミックは、内因性前駆体miRNAを模倣してmiRNA経路に侵入し、成熟miRNA種として作用する。加えて、以下のmiRNA阻害剤、has−miR−196及びmiRNA阻害剤陰性対照(MINC)もDharmaconより入手した。miRIDIANマイクロRNAヘアピン阻害剤は、天然miRNA活性を抑制するように設計された最も新しい世代の合成オリゴヌクレオチド阻害剤である。pRL−TKベクターはPromegaより入手した。pRL−TKレポーターベクターは、内部対照レポーターとしてウミシイタケルシフェラーゼをコードするcDNA(Rluc)を含む。Bach1の3’−UTRの1837bpフラグメントを含むpGL3−Bach1ルシフェラーゼレポーター構築物は、University of Florida,Gainesville,FLによって提供された。変異型pGL3−Bach1はGENEWIZ,Inc.(South Plainfield,NJ)によって作製された。構築物を制限酵素消化及び配列決定によって確認した。
【0048】
D.トランスフェクション及びルシフェラーゼ活性アッセイ
トランスフェクションは、Lipofectamine2000(Invitrogen)を製造者のプロトコールに従って使用して実施した。簡単に述べると、9−13細胞を、pGL3−Bach1又は変異型pGL3−Bach、pRL−TK及び被検miRNAで同時トランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞を採集し、溶解した。Dual−Glo(登録商標)ルシフェラーゼアッセイシステムを使用してルシフェラーゼレポーター活性を測定した。ホタルルシフェラーゼ活性をウミシイタケルシフェラーゼ活性に対して基準化し、BCAタンパク質アッセイキットを使用して全タンパク質を定量した。比較を容易にするため、pGL3−Bach1及びpRL−TKトランスフェクションを受けた細胞についての値を1に設定した。
【0049】
E.インビトロ転写、トランスフェクション及び感染
感染性J6(遺伝子型2a)からのコア−NS2領域及び感染性JFH1(遺伝子型2a)からのNS3−NS5B領域を有する完全長キメラゲノム、HCV感染性クローンpJ6/JFH1は、C.M.Rice(the Rockefeller University,New York,NY)の好意により提供された。J6/JFH1に基づく細胞培養産生HCV(HCVcc)の作製は以前に報告されている。簡単に述べると、pJ6/JFH1プラスミドをXbaIで線状化し、エタノール沈殿、プロテイナーゼKでの消化及びフェノール−クロロホルム抽出によって精製した。線状化したプラスミドを、MEGAscript−T7キット(Ambion,Austin,TX)を用いたインビトロ転写のための鋳型として使用した。HCVのRNAトランスフェクションのために、トランスフェクションの1日前にHuh−7.5細胞を24穴プレートに播種し、70〜80%の集密度でトランスフェクトした。2μg/穴のHCVのRNA及び4μL/穴のLipofectamine2000を使用することにより、1:2のRNA/リポフェクタミン比で細胞を48時間トランスフェクトした。ナイーブHuh−7.5細胞を感染するために、HCVのRNAで48時間トランスフェクトした細胞からの細胞培養上清を収集し、0.20μmフィルターでろ過して、ナイーブHuh−7.5細胞の培養物に添加した。
【0050】
F.ウエスタンブロット
ウエスタンブロットを先に述べたように実施した。簡単に述べると、全タンパク質(30〜50μg)SDS−PAGEゲルで分離した。ImmunBlot−PVDF膜への電気泳動転写後、5%脱脂粉乳及び0.1%Tween−20を含有するPBS中で膜を1時間ブロックし、その後4℃で一次抗体と共に一晩インキュベートした。一次抗体の希釈は以下の通りであった:抗Bach1抗体については1:1000、並びに抗HCV−NS5A及び抗GAPDH抗体については1:2000。次にホースラディッシュペルオキシダーゼ結合二次抗体(1:10,000希釈)と共に膜を1時間インキュベートした。最後に、製造者のプロトコールに従ってECL−Plus化学発光システムで結合抗体を視覚化した。Kodak 1DV3.6コンピュータイメージングシステム(Rochester,NY)を使用して、ウエスタンブロット法の後に得られた各々の特異的バンドの相対光学密度を測定した。
【0051】
G.定量的RT−PCR
被検細胞からの全RNAを抽出し、cDNAを先に述べたように合成した。使用したプライマーは以下の通りであった:Bach1特異的センスプライマー5’−GGACACTCCTTGCCAAATGCAG−3’(22bp)、アンチセンスプライマー5’−TGACCTGGTTCTGGGCTCTCAC−3’(22bp);HMOX1特異的センスプライマー5’−CGGGCCAGCAACAAAGTG−3’(18bp)、アンチセンスプライマー5’−AGTGTAAGGACCCATCGGAGAA−3’(22bp);Cul3特異的センスプライマー5’−GTGCTCACGACAGGATA−3’(17bp)、アンチセンスプライマー5’−GTTTGGCTAAGTAGAACCTTC−3’(21bp);GAPDH特異的センスプライマー5’−TTGTTGCCATCAATGACCC−3’(19bp)、アンチセンスプライマー5’−CTTCCCGTTCTCAGCCTTG−3’(19bp)。CFX96TMリアルタイムPCR検出システム(Bio−Rad)及びiQ(商標)SYBR Green SupermixリアルタイムPCRキット(Bio−Rad)を使用してリアルタイム定量的RT−PCRを実施した。鋳型及び逆転写酵素を含まない試料を陰性対照として含め、これは、予想されたように、無視し得るシグナル(Ct値>35)を生成した。倍数変化値を、同じ試料中のGAPDHの量に対して基準化した後、比較Ct分析によって計算した。初期実験は、細胞のいくつかの処置及び操作はGAPDH遺伝子の発現に影響を及ぼさないことを示した。
【0052】
H.統計解析
初期解析は、結果が正常に分布することを示した。そのため、パラメトリック統計法を使用した。試料間の差を分析するためにスチューデントt検定(2つの条件の比較の場合)又は分散分析(3以上の間での比較の場合)を使用した。P<0.05の値を統計的に有意とみなした。実験を少なくとも3回反復して類似の結果を得た。すべての実験は各処置群について少なくとも三通りの試料を含んだ。1つの実験からの代表的結果を提示する。SAS Institute(Cary,NC)からのJMP4.0.4ソフトウエアで統計解析を実施した。
【0053】
II.結果
A.コンピュータによる解析はmiR−196とBach1のmRNAの3’−UTRの2つのシード領域マッチを予測する
潜在的miRNA標的を同定するためにバイオインフォマティクスアプローチを利用した。TargetScan4.0データベースのオンライン検索は、少なくとも2つの推定上のmiRNA−196シードマッチ部位がBach1のmRNAの3’−UTR内に保持されることを明らかにした。図1A及びBに示すように、予測結合部位(2280〜2286ヌクレオチド)の一方はヒト、マウス、ラット、ニワトリ及びイヌにおいて高度に保存され、他方の推定上の部位(2161〜2166ヌクレオチド)はいずれの種においてもほとんど保存されていなかった。Nrf2及びHMOX1遺伝子では予測されたmiRNA−196結合部位は認められず、またBach1遺伝子のコード領域において推定上のmiRNA−196結合部位は認められなかった(データは示していない)。
【0054】
B.miRNA−196は、HCV非構造タンパク質を発現する9−13細胞において転写リプレッサーBach1を減少させ、HMOX1を増加させる
推定上のmiR−196結合部位が機能性であることを実験的に立証するため、9−13細胞をmiRNA−196特異的ミミック又は阻害剤によりトランスフェクトした。Bach1タンパク質及びmRNAレベルを、それぞれウエスタンブロット法及びqRT−PCRによって評価した。miRNA−196ミミックによりトランスフェクトした9−13細胞は、miRNAミミック陰性対照(MMNC)と比較してトランスフェクションの24時間後に約55%及びトランスフェクションの48時間後に約64%のBach1タンパク質発現レベルの有意の低下を示した。モックトランスフェクションと比較して、miRNAミミック陰性対照でトランスフェクトした細胞においてBach1タンパク質レベルへの影響は検出できなかった(図2A)。miRNA−196特異的阻害剤によるmiRNA−196の減少は、miRNA阻害剤陰性対照と異なりBach1タンパク質レベルを有意に上昇させた(図2B)。しかし、9−13細胞においてはBach1のmRNAレベルへのmiRNA−196の有意の作用は認められなかった。Bach1のmRNAのレベルはmiRNA−196ミミックトランスフェクションで変化しなかった(図2C)。これらの結果は、ヒト肝細胞癌9−13細胞ではBach1へのmiRNA−196の制御が翻訳レベルで起こり得ることを明らかにした。
【0055】
Bach1はHMOX1遺伝子の広く確立された転写リプレッサーであるので、本発明は次に、miRNA−196によるBach1タンパク質の減少がHMOX1遺伝子発現を上昇させ得るか否かを測定した。そこで、9−13細胞をmiRNA−196ミミック又はmiRNAミミック陰性対照で48時間トランスフェクトした。48時間後、HMOX1及びCullin3(Cul3、非特異的遺伝子対照)のmRNAのレベルをqRT−PCRによって定量した。miRNA−196ミミックは、図3Aに示すように同じ量のmiRNAミミック陰性対照と比較してHMOX1 mRNAレベルを2.4倍に有意に増加させた。図3Bに示すようにCul3のmRNAレベルは増加しなかった。
【0056】
C.miRNA−196は、HCV非構造タンパク質を発現する9−13細胞においてHCV非構造NS5Aタンパク質発現を抑制する
本発明が成されるまでは、HCV非構造タンパク質を発現するヒト肝細胞癌細胞において、miRNA−196がHCV非構造NS5Aタンパク質レベルを変化させるかどうかは不明であった。miRNA−196が、HCV非構造タンパク質を発現するヒト肝細胞癌細胞においてHCV非構造NS5Aタンパク質レベルを変化させるか否かを測定するため、9−13細胞をmiRNA−196ミミック又は阻害剤のいずれかによりトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間及び48時間後に、NS5A及びGAPDHタンパク質レベルを分析するためにウエスタンブロットを実施した。50nMのmiRNA−196ミミックは、図4Aに示すように同じ量のmiRNAミミック陰性対照と比較して、トランスフェクションの24時間後に約52%、及び48時間後に約37%のNS5Aタンパク質発現レベルの有意の低下を生じさせた。これに対し、miRNA−196特異的阻害剤によるmiRNA−196の減少は、図4Bに示すようにNS5Aタンパク質レベルを2.2倍に有意に上昇させた。miRNA−196がHCV複製を阻害し得るか否かを評価するため、Con1完全長HCVレプリコンHuh−7.5細胞を陰性対照又はmiRNA−196ミミックにより48時間トランスフェクトした。図4Cに示すように、miRNA−196は、miRNAミミック陰性対照(MMNC)と比較して、ウイルスRNAレベルの有意の低下を生じさせた。
【0057】
D.miR−196はHCV−JFH1に基づく細胞培養系におけるHCV発現を阻害する
Huh−7.5細胞をLipofectamine2000によって2μg/穴のHCV−J6/JFH1 RNAでトランスフェクトした。48時間後、細胞をmiRNA−196ミミック又はmiRNAミミック陰性対照(MMNC)でトランスフェクトした。HCV感染のために、先に述べたように、ナイーブHuh−7.5をJ6/JFH1トランスフェクト細胞から採集した細胞培養上清1mLと共に培養した。上清への暴露の48時間後、細胞をmiRNA−196ミミック又はmiRNAミミック陰性対照(MMNC)で48時間トランスフェクトした。細胞を採集し、全RNA及びタンパク質を抽出した。HCVのRNAをqRT−PCRによって定量し、HCV−NS3及びGAPDHタンパク質レベルをウエスタンブロット法によって測定した。
【0058】
miRNA−196に対する完全なマッチが、HCV−JFH1ゲノム内のHCV−NS5A遺伝子のコード領域において認められた。HCV−J6/JFH1細胞培養系におけるHCV発現へのmiRNA−196の減少作用が認められた。50nMのmiRNA−196は、J6/JFH1でトランスフェクトしたHuh−7.5細胞ではほぼ70%(図9Aに示すように)、J6/JFH1感染Huh−7.5細胞では〜50%(図9Bに示すように)のHCV−J6/JFH1のRNAの有意の低下、及びJ6/JFH1感染Huh−7.5細胞ではHCV−NS3タンパク質の〜60%の低下(図9Cに示すように)を導いた。これらの結果は、JFH1細胞培養系での以前の所見と一致した。
【0059】
E.miRNA−196は、HCV非構造タンパク質を発現する9−13細胞においてBach1のmRNAの3’UTRと直接相互作用する
miRNA−196が、図5Aに示すようにmiR−196についての2つの予測シードマッチ部位を含むBach1のmRNAの3’−UTRを標的することをさらに確認するため、より直接的でなく、特異的でない制御を及ぼすのではなく、ホタルルシフェラーゼ(f−luc)オープンリーディングフレームの下流にBach1の3’−UTRを有する、pGL3−Bach1と称されるレポーター構築物(図5B)を使用した。9−13細胞をpGL3−Bach1(f−luc)、pRL−TK(ウミシイタケ、トランスフェクション効率に関して基準化するため)、及びmiRNA陰性対照、miRNA−196ミミック若しくは阻害剤又はmiRNA−196(Bach1のmRNAの3’−UTR内に予測結合部位を有さない「陰性」miR)を用いて同時トランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、ルシフェラーゼレポーター活性を検定した。miRNA−196ミミックトランスフェクションはレポーター活性を約53%有意に低下させ、一方miRNAミミック陰性対照及びmiRNA−196ミミックはレポータールシフェラーゼ活性に影響を及ぼさなかった。加えて、miRNA−196阻害剤でトランスフェクトした細胞ではレポーター活性の有意の変化を認めなかった。図5Cに示すように、miRNA−196ミミックはpGL3−Bach1レポーターのf−luc活性を阻害し、一方miRNA−196阻害剤はpGL3−Bach1レポーターのf−luc活性をわずかに上昇させた。
【0060】
次に、9−13細胞を、pGL3−Bach1−Mutと称される4ヌクレオチド変異型Bach1 3’−UTRを含むLucレポーター構築物(図6A)、及びpRL−TK、及びmiRNA−196ミミック又はmiRNA−155ミミック(pGL3−Bach1−WT及びpGL3−Bach1−Mut内に予測miR−155結合部位の変化を有さない「陰性」miR)で同時トランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、PromegaからのDual Luciferase Assay Systemを使用してルシフェラーゼレポーター活性を測定し、ホタルルシフェラーゼ活性をウミシイタケルシフェラーゼ活性及び全タンパク質に対して基準化した。図6Bに示すように、miRNA−196ミミックはpGL3−Bach1−WTのf−luc活性を低下させたが、pGL−Bach1−Mutレポーターのf−luc活性は低下させなかった。miRNA−196ミミックトランスフェクションはルシフェラーゼ活性を用量依存的に有意に低下させたが、miRNA−196は、miRNA−196に対する変異型結合部位を含むレポーター構築物でトランスフェクトした細胞においてレポーター活性を変化させなかった。miRNA−155は、図6Cに示すようにpGL3−Bach1−WT及びpGL3−Bach1−Mutの両方でレポーター活性を有意に低下させた。これらの結果は、miRNA−196がBach1遺伝子発現を直接制御し、miRNA−196がBach1のmRNAの3’−UTRを介してBach1の減少を媒介することを明らかにする。
【0061】
miRNA−196とBach1−3’−UTRとの間の直接相互作用をさらに調べるため、4ヌクレオチド変異体を導入して、Bach1のmRNAの3’−UTRについてのシードマッチ部位が消失した、図7Aに示す変異型miRNA−196を作製した。細胞を、pGL3−Bach1−WT、及びpRL−TK、及び漸増濃度のmiRNAミミック陰性対照、miRNA−196ミミック又は変異型miRNA−196ミミックで同時トランスフェクトし、ルシフェラーゼレポーター活性を測定した。図7Bに示すように、miRNA−196は、我々の先の所見と一致して、用量依存的にルシフェラーゼ活性の有意の低下を生じさせたが、miRNA陰性対照及び変異型miR−196はルシフェラーゼレポーター活性に影響を及ぼさず、miR−196とBach1のmRNAの3’−UTRとの間の直接相互作用をさらに示唆した。
【0062】
変異型pGL3−Bach1(pGL3−Bach1−Mut)と相補的な塩基を含む変異型miRNA−196(miR−196−Mut)は、図8Aに示すようにやはりそれらのシード領域において完全にマッチするので、変異型レポーター(Bach1−3’−UTR−Mut)活性へのその作用を回復するはずである。変異型miRNA−196ミミックは、変異型miRNA−196に「適合する」ように変異した、変異型pGL3−Bach1によりトランスフェクトした細胞においてルシフェラーゼ活性を有意に阻害した。他方で、変異型レポーター(pGL3−Bach1−Mut)ルシフェラーゼ活性へのmiRNA−196野生型の有意の作用は認められなかった。従って、図8Bに示すようにmiRNA−196とBach1のmRNAの3’−UTRとの間の直接相互作用をさらに証明する。
【0063】
上述した実験研究は、miRNA−196ミミックのトランスフェクションがBach1及びHCV非構造NS5Aタンパク質レベルを有意に減少させ、HMOX1遺伝子発現を増加させたことを示す。それ自体で、miRNA−196は、肝細胞でのHCV複製及びHMOX1/Bach1発現の制御において重要な、おそらく決定的と言えるほどの役割を果たし得る。従って、miR−196の増加は、慢性C型肝炎及びおそらく他の肝障害の治療のための付加的な新しい治療アプローチを提供することができる。
【0064】
本明細書で述べた本発明の多くの修正及び他の実施形態が、前記の説明及び付属の図面において提示される教示の恩恵を受ける、これらの発明が関連する分野の当業者に想起される。そのため、本発明は開示される特定実施形態に限定されるべきではないこと及び他の実施形態は付属の特許請求の範囲に包含されるものであることが了解されるべきである。特定の用語が本明細書で使用されるが、それらは単に一般的な説明的意味で使用され、限定を目的としない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HCVを発現する感染細胞においてBach1タンパク質の発現レベルを低下させることを含む、HCV感染に罹患している哺乳動物を治療する方法。
【請求項2】
HCV非構造タンパク質を発現する細胞において前記Bach1タンパク質の発現レベルを低下させることが、miRNA−196がBach1 mRNAの3’−UTRと結合してBach1の発現を低下させるようにmiRNA−196ミミックで前記細胞をトランスフェクトすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
miRNA−196又はmiRNA−196ミミックの増加又は過剰発現をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
インターフェロンβを投与することによってmiRNA−196を増加させる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記Bach1タンパク質の発現レベルが約10%〜約75%低下する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
トランスフェクションの24時間後の前記Bach1タンパク質の発現レベルが約50%〜約60%低下する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
トランスフェクションの48時間後の前記Bach1タンパク質の発現レベルが約60%〜約70%低下する、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
HCVに感染した細胞におけるHMOX1遺伝子発現の増加を含む、HCV感染に罹患している哺乳動物を治療する方法。
【請求項9】
前記細胞におけるBach1遺伝子発現の減少をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
miRNA−196ミミックで前記細胞をトランスフェクトすることによってBach1遺伝子発現を減少させる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
miRNA−196の増加又は過剰発現をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞が肝細胞を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記HMOX1の発現が、miRNA−196ミミックでトランスフェクトしていない細胞におけるHMOX1発現のレベルに比べて約2〜約3倍上昇する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
HCVレプリコン細胞及びHCV感染細胞におけるHCV RNAの発現及びタンパク質発現を、miRNA−196ミミックで前記細胞をトランスフェクトすることによって低下させることを含む、HCV感染に罹患している哺乳動物を治療する方法。
【請求項15】
miRNA−196の増加又は過剰発現をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
HCV NS5Aタンパク質の発現レベルが10〜60%低下する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
トランスフェクションの24時間後の前記HCV NS5Aタンパク質の発現レベルが約45〜約55%低下する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
トランスフェクションの48時間後の前記HCV NS5Aタンパク質の発現レベルが約35〜約45%低下する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
HCV非構造タンパク質を発現する細胞及びC型肝炎を有する哺乳動物の治療のための製剤であって、Bach1及びHCV NS5Aの発現レベルが減少し、一方HMOX1発現が上昇する治療有効量のmiRNA−196ミミックを含有し、HCVタンパク質を発現する肝細胞へのmiRNA−196ミミックのトランスフェクションを可能にするように適合された製剤。
【請求項20】
前記miRNA−196ミミックがHCVタンパク質を発現する細胞中に放出され得るように前記miRNA−196ミミックがリポソームに封入されている、請求項19に記載の製剤。
【請求項21】
前記製剤がカチオン性脂質を含有する、請求項20に記載の製剤。
【請求項22】
前記miRNA−196ミミックがHCVタンパク質を発現する細胞中に放出され得るように、カチオン性両親媒物質をさらに含有する、請求項19に記載の製剤。

【図1】
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【図2A−2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4A−4B】
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【図4C】
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【図5A−5B】
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【図5C−5D】
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【図6A−6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−505233(P2012−505233A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531164(P2011−531164)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/059944
【国際公開番号】WO2010/042683
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(511085002)ザ・シャーロット‐メクレンバーグ・ホスピタル・オーソリティ,ドゥーイング・ビジネス・アズ・キャロライナズ・メディカル・センター (2)
【Fターム(参考)】