マイコプラズマスイスの予防接種および検出のための抗原
本発明は、マイコプラズマスイス(M. suis)および関連する赤血球付着性マイコプラズマ種の予防接種および検出のための抗原に関する。さらに、本発明はかかる抗原をコードするポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含むベクター、ポリヌクレオチドおよび/またはベクターを含む宿主細胞、ならびにM. suisや関連する病原体による感染症の治療方法および予防接種の方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、マイコプラズマスイス(M. suis)および関連する赤血球付着性マイコプラズマ種の予防接種および検出のための抗原に関する。さらに、本発明はかかる抗原をコードするポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含むベクター、ポリヌクレオチドおよび/またはベクターを含む宿主細胞、ならびにM. suisや関連する病原体による感染症の治療方法および予防接種の方法に関する。
【0002】
M. suis(以前はエペリスロゾーンスイス)は、赤血球付着性バクテリアのグループに属する。M. suisは、ブタの赤血球に付着してその変形や損傷を引き起こすエピセルラーヘモパラサイトである。その結果として生じる病気は、伝統的にブタエペリスロゾーン症(PE)と呼ばれるが、世界中で報告され、低い罹患率と高い死亡率の熱性急性黄疸性貧血として現れる、家畜のブタの問題と考えられている。慢性の軽度のM. suis感染症は、無症状の感染から、(i)貧血、軽度の黄疸、および新生児における全般的に丈夫でないこと、(ii)家畜のブタにおける成長遅延、および(iii)雌ブタにおける低い繁殖成績を含む臨床症状の範囲まで様々である。さらに、M.suisは、宿主の免疫反応を抑制し、ブタの呼吸器および腸の病気の他の感染体にかかりやすくすると思われている。
【0003】
in vitroの培養系の欠如は、M. suisの生態を系統的に解析することや、例えばブタ集団におけるM. suisの有病率や重大性を正確に評価するための有益な診断方法を開発することの重大な障壁である。これまではM. suisの検査診断は、化学的に染色された末梢血の塗抹標本の顕微鏡試験によっており、赤血球に付着した微生物を直接視覚化する。急性疾患の発症に関連する、すぐに同定できるけれども短期間である菌血症が慢性感染において欠けているため、顕微鏡の欠点は特異性および感受性の両方の問題を含む。
【0004】
M. suisが引き起こすブタのエペリスロゾーン症を制御する有効な方法は、感染したキャリア動物を検出し除去することによって感染を根絶することである。これらの目的のために、血清学的アッセイが未だに最適な方法である。規定されたM. suis抗原に基づく特異的で感受性の高い血清学的アッセイは、広範囲な有病率の研究を可能とし、診断検査室における日常のこととして適用される。しかし、M. suisに対するブタの体液性免疫反応を解析する試みは、補体結合テスト(CFT)、間接赤血球凝集アッセイ(IHA)、および酵素結合免疫測定法(ELISA)を含む、現在の抗体アッセイの低い感受性および特異性により阻害されていた。今まで記載されている血清診断アッセイは、実験的に感染させたブタの末梢血から得た複雑で定義されていないM. suis抗原を採用するという本質的な欠点を有する。ブタの集団を慢性のM. suis感染について試験するための優れた標準と現在考えることができる唯一のアッセイは、脾臓を摘出することにより急性の病気を誘発し、顕微鏡を用いてブタの菌血症を確認することである(Heinritzi, 1984 Tierarztl. Prax. 12: 451−454)。
【0005】
しかしながら、ブタの脾臓摘出は日常の診断には適さない。最近、DNAハイブリダイゼーションやPCRアッセイなどのような分子的な方法が開発され、低レベルの菌血症を伴う慢性PEの顕微鏡による診断における低感受性に関連する問題は解決された。しかし、日常の検査室で使用されうる標準的な方法が存在しない。
【0006】
M. suisはテトラサイクリンを用いて薬学的に治療される。この治療法を行う場合、PEの発作中の臨床症状から感染したブタを治療することができるが、感染したブタからM. suisを排除することはできない。したがって、持続性で臨床的に不顕性の感染したブタは、集団内または集団間におけるM. suisの伝染のホットスポットであるキャリア動物のままである。
【0007】
M. suisをin vitroで培養できないため、予防接種は開発されていない。したがって、潜在的なワクチン候補は、臨床的に急性の病気のブタのブタ血液に由来し、それは、i)ワクチンが、副作用、すなわち同種抗原に対する免疫反応(同種免疫)につながると考えられるブタ血液の成分を含むこと、ii)M. suis分離株が完全に毒性が強く、これらの分離株を、例えば培養継代により弱毒化する可能性がないことという2つの主要な制限につながる。さらに、今まで、適したワクチンコンストラクト選択の基礎とすることができるM. suisの免疫原性の構造およびPEの免疫反応についての情報は入手できていない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明の根底にある技術的な課題は、信頼できる診断(血清学、分子)のための新しい化合物および方法、ならびにM. suisや関連するバクテリアによる予防接種および治療の提供である。
【0009】
上記の技術的な課題の解決法は、請求項に定義されたように、本発明の実施態様により提供される。
【0010】
本発明は特に、M. suisの抗原構造および遺伝子構造についての研究を可能とする、実験的に感染させたブタにおいて作られた大量のM. suisバクテリアの利用に基づく。この事実によって、詳細な一次元および二次元ウェスタンブロット解析を行うこと、およびM. suisのゲノムDNAライブラリーを構築することが可能となった。さらに、このブタモデルは、M. suisの使用における免疫反応の性質および動力学の解析を可能とした。
【0011】
よって、第一の形態にしたがって、本発明は赤血球付着性マイコプラズマ種、特にM. suisに対するワクチンに関するものであって、該ワクチンは、M. suisのタンパク質から選択されたタンパク質の少なくとも一の抗原決定基を含んでいる、少なくとも一のぺプチドまたはポリペプチドを含むものであって、該M. suisのタンパク質は、0.025M トリス/0.192M グリシン/0.1%SDS水溶液の連続的な12%ポリアクリルアミドゲル中で約33kDa、40kDa、45kDa、57kDa、61kDa、70kDa、73kDa、および83kDaの見かけの分子量を有し、M. suis陽性動物、特にM. suisに感染したブタ由来の血清に対して反応する。
【0012】
好ましい実施態様によれば、ワクチンは少なくとも一のタンパク質の抗原決定基を含んでいる少なくとも一のペプチドまたはポリペプチドを含み、そのタンパク質は上記の実験条件で判定するとき40kDaの見かけの分子量を有する。
【0013】
したがって、本発明による上記抗原は、標準的なSDS−PAGE(Laemmli (1970) Nature 227、 689参照)および(例えば、前述のように、脾臓の摘出および顕微鏡による菌血症の確認等のようなこれまでの通常のM. suisの検出方法によって)M. suisに感染したことがわかっている一以上のブタ由来の血清を用いたウエスタンブロッティングにより判定されたように、上記M. suis由来のタンパク質の少なくとも一のエピトープ(抗原決定基)を含む。
【0014】
上記のようなM. suisタンパク質の源は、M. suisおよびこの病原体に由来する物質が発見されうる任意の試料または検査サンプルとしてもよい。特に、M. suisの物質の源は好ましくは感染した個体、特にブタ由来の、臓器組織および体液(例えば、脾臓組織、血液およびその一部、例えば血清、脳脊髄液、滑液、リンパ液など)のような検査サンプルである。M. suis細胞は、Hoelzle et al. (2003) Vet Microbiol.93: 185−196に記載されているような源から精製されてもよい。
【0015】
さらに、精製は一以上の遠心分離の工程を含んでもよい。M. suisの試料は、ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に使用するまで保存されてもよい。電気泳動のために、M. suis細胞は、当業者に知られている溶解バッファーに都合よく溶解される。M. suis細胞の溶解後、溶解液は上記Laemmli(1979)により記載された方法に従って、SDS−PAGEにかけられる。分離されたタンパク質の見かけの分子量を決定するために、Mw スタンダード(例えば、Sigma Aldrich、Munich、Germanyから市販)は同じゲル上に流される。電気泳動後、ゲルはウェスタンブロッティングにかけられる。例えばセミドライブロッティング装置(例えば、Hoefer、Amersham Bioscienceから市販)において、SDSゲル中で分離されたタンパク質をメンブレン(例えばニトロセルロース、PVDF)上に固定する。上記M. suis由来の抗原タンパク質は、M. suisに感染した動物由来の血清とのインキュベーションと、その後、例えば西洋わさびペルオキシダーゼ、ビオチン、放射活性ヨウ素等の適したマーカーでラベルされたヤギ抗ブタIgGのような二次抗体の使用により同定される。その後、ブロットは通常、感染していない動物の体液由来のネガティブコントロールの抗原と比較される。さらに、上記のM. suis由来の抗原タンパク質の同定方法は、タンパク質をSDSゲルから得て、そのまま本発明のワクチン中の抗原として使用する、またはタンパク質はさらに精製され、および/または抗原決定基を含む適したペプチド断片に断片化されることができるように、調製用の、またはマイクロ調製用のスケールに適合させてもよい。
【0016】
本発明によると、“ペプチド”および“ポリペプチド”の語は同意語として使用される、つまり上記の語は、酸アミドの方法でのペプチド結合により互いに結合しているアミノ酸の任意の縮合産物を含む。かかるペプチドまたはポリペプチドのさらに必要な特徴は、それぞれの化学的実体が、M. suisまたは関連する種由来の“抗原決定基”を含むことのみである。
【0017】
ここで用いられる場合、“抗原決定基”は、免疫反応、特に、抗原決定基(エピトープ)に抗原結合領域を介して特異的に結合できる抗体が産生されるような免疫反応を誘導することができる抗原表面上の3次元構造を意味する。抗原決定基は、アミノ酸、糖、または脂質を含んでもよい。本発明のタンパク質上に存在する抗原決定基は、通常、少なくとも5、より好ましくは少なくとも7アミノ酸により形成される。抗原決定基は連続的な配列に存在するアミノ酸により形成されてもよく(連続的な、または配列決定因子)、またはポリペプチドのフォールディングによりエピトープに集まるアミノ酸によって形成されてもよい(非連続的な、またはコンフォメーションの決定因子)。
【0018】
抗原決定基はタンパク質またはタンパク質自体の断片上に存在してもよく、または適したハプテンと結合してもよい。
【0019】
本発明のワクチンの好ましいさらなる成分は、抗原決定基に対する免疫反応を向上させるアジュバントである。典型的なアジュバントは、不活性化したバクテリアと一緒にまたはなしで適用されるアルミニウム化合物、特に水酸化アルミニウムおよびミネラルオイルである。もっともよく知られたアジュバントは、通常ミネラルオイル、乳化剤(ラノリン)および不活性化したマイコバクテリアの懸濁液を含む完全なフロイントアジュバントである。不完全なフロイントアジュバントは、マイコバクテリアを含まない。適したワクチンアジュバントは、先行技術に開示されている;例えばHackett (2003) Vaccine Adjuvants, Humana Press: Topowa, New Jersey参照。
【0020】
さらに本発明は、赤血球付着性マイコプラズマに特異的な診断、検出、予防接種、および治療のために特に有用なタンパク質の抗原決定基の特異的な配列を提供する。
【0021】
したがって、本発明のさらなる一形態は、図4B(SEQ ID No:2)または5B(SEQ ID NO:4)に示されているアミノ酸配列の少なくとも一の抗原決定基(エピトープ)を含むアミノ酸配列をコードする配列を含むポリヌクレオチドである。
【0022】
好ましい実施態様によると、本発明は、図4B(SEQ ID No:2)または5B(SEQ ID NO:4)に示されている配列中に含まれる連続した抗原決定基をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドに関する。好ましくは、ポリヌクレオチドは、図4B(SEQ ID No:2)または5B(SEQ ID NO:4)に示されているアミノ酸配列の少なくとも5、好ましくは少なくとも7の連続したアミノ酸と、少なくとも80%、好ましくは90%、特には少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列をコードしている配列を含む。
【0023】
より好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、図4B(SEQ ID No:2)または5B(SEQ ID NO:4)に示されている配列と、少なくとも80%、好ましくは90%、特には少なくとも95%の相同性を有するタンパク質をコードする配列、または抗原断片、変異体、突然変異体、または前記配列の類似体を含む。
【0024】
“相同性”の語は、当該タンパク質配列がそれらのアミノ酸残基のあるパーセンテージを共通して有することである。したがって、50%の相同性とは、配列中の100のアミノ酸の位置の50が同じものであることを意味する。
【0025】
本発明に従うポリヌクレオチドは、DNA、RNA、または一以上の改変されたヌクレオチドを含むポリヌクレオチドでもよい。ポリヌクレオチドは一本鎖または二本鎖の形であってもよい。DNA、特に二本鎖DNAの形がとりわけ好ましい。本発明のポリヌクレオチドは、化学合成または酵素合成により生産されうる(Gassen et al., Chemical and Enzymatic Synthesis of Gene Fragments: A Laboratory Manual, Weinheim: Verl. Chemie 1982参照)。好ましくは、本発明のポリヌクレオチドコンストラクトは、組換え遺伝子技術により作られる(例えばSambrook et al., “Molecular Cloning”、 Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 1989参照)。
【0026】
本発明のポリヌクレオチドによりコードされたポリペプチドの“抗原フラグメント”は、完全なポリペプチドの一部または領域であり、特に動物またはヒト、とりわけ赤血球付着性マイコプラズマ種による感染を疑われる動物またはヒトにおいて免疫反応を誘導することができるフラグメントである。本発明のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの“変異体”は、そのほかの種、特に赤血球付着性マイコプラズマ種に由来する元のポリペプチドの機能的若しくは非機能的な等価物、または、選択的スプライシングまたは翻訳後プロセシングにより生じる元のポリペプチドの機能的若しくは非機能的な誘導体であるが、変異体は少なくとも抗原断片について上記のような抗原の機能は保持する。
【0027】
本発明のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの“突然変異体”は、一以上のアミノ酸残基の挿入、置換、付加、および/または欠失により自然に生じたタンパク質に由来する。アミノ酸置換は、保存されてもよく、保存されなくてもよい。保存されたアミノ酸置換は、置換されたアミノ酸残基の化学的な特徴(例えば大きさ、疎水性/親水性の性質、電荷、脂肪族/芳香族の性質等)が実質的に変化しない置換である。保存されたアミノ酸置換の例は、Val/Ala、Asn/Gln、Asp/Glu、およびSer/Thr置換である。
【0028】
本発明の特に好ましいポリヌクレオチドは、図4Aに示される配列(SEQ ID NO: 1)、最も好ましくはその1397から2407のヌクレオチド、または図5Aに示される配列(SEQ ID NO:3)、最も好ましくはその1792から3621のヌクレオチド、または前記配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、特に95%の相同性を有する配列、ならびに標準的なハイブリダイゼーション条件下で、前記配列およびその相補配列とハイブリダイズする配列である。
【0029】
核酸の種類によって、標準的なハイブリダイゼーション条件は、約0.1から5xSSC(1xSSC=0.15M 塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム、pH7.2)間の水性バッファー中、任意に約50%ホルムアミドの存在下で、約42から約58℃の間の温度により表される。例えば、5xSSCで42℃、50%ホルムアミド。DNA:DNAハイブリダイズのための好ましいハイブリダイゼーション条件は、約20から45℃の間の温度の0.1xSSCであり、より好ましくは約30から45℃の間の温度である。DNA:RNAハイブリダイズのための好ましいハイブリダイゼーション条件は、約30から55℃の間の温度の0.1xSSCであり、より好ましくは約45から55℃の間の温度である。上記のハイブリダイゼーション温度は、ホルムアミド非存在下、約100のヌクレオチド長で50%のG+C含有量を有する核酸のために計算された融点の例である。DNAハイブリダイゼーションのための実験条件は、先行技術(例えば、Sambrook et al., “Molecular Cloning”, Cold Spring Harbor Laboratory, 1989)に記載され、当業者は核酸の長さ、ハイブリットの型、およびG+C含有量によって個々の条件を計算することができる。核酸ハイブリダイゼーションについてのさらなる情報は、次の引用により提供される:Ausubel et al.,(eds)、1985、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York; Hames and Higgins(eds)、1985、 Nucleic Acids Hybridization: A Practical Approach、IRL Press at Oxford University Press, Oxford; Brown(ed)、1991、Essential Molecular Biology: A Practical Approach, IRL Press at Oxford University Press, Oxford。
【0030】
本発明のポリヌクレオチドは、図4A(SEQ ID NO: 1)および5A(SEQ ID NO: 3)に示された配列のフラグメント、変異体、突然変異体、ならびに類似体、特に図4A(SEQ ID NO: 1)に示された1397から2407のヌクレオチド、または図5A(SEQ ID NO: 3)に示された1792から3261のヌクレオチドの配列のフラグメント、変異体、突然変異体、ならびに類似体を含む。上記配列の“フラグメント”とは、元の配列の一部または領域である。“変異体”とは、元の配列と比較して異なる種において発見される配列であり、または元のヌクレオチド配列がコードするポリペプチドのスプライシングバリアント若しくは翻訳後にプロセシングされたバージョンをコードしてもよい。本発明によるポリヌクレオチドの特定の変異体は、例えばM. wenyonii、M. haemofelisおよびM. haemocanis等のようなM. suis以外の赤血球付着性マイコプラズマ種において発見される。
【0031】
ポリヌクレオチドの“突然変異体”は、一以上のヌクレオチドの挿入、置換、付加、逆位、および/または欠失により、親ポリヌクレオチドから得られる。図4A(SEQ ID NO: 1)および5A(SEQ ID NO: 3)に示される配列の特定の突然変異体は、赤血球付着性マイコプラズマ種において見られるコドン使用に比べて異なるコドン使用により得られる。特に好ましい変異体は、例えば対応するポリペプチドを生成するための大腸菌などのような、適した宿主細胞のコドン使用を利用するように設計される。特に、TGAは標準的なコドン使用において終止コドンであるにもかかかわらず、Trpをコードする;NCBIの分類学データベースの翻訳表4; Benson et al.(2000)Nucleic Acids Res. 28: 15−18; Wheeler et al.(2000) Nucleic Acids Res. 28: 10−14参照。
【0032】
ポリヌクレオチドの“類似体”は、ポリヌクレオチドの機能的な等価物をコードするが、一以上の天然に生じないヌクレオチドを含む。類似体の修飾は、天然のヌクレオチドと比較して核酸構成要素の塩基ならびに糖および/またはリン酸部分において起こりうる。ヌクレオチド類似体の具体例は、ホスホロアミデート、ホスホロチオエート、ペプチド核酸(すなわち、ポリヌクレオチドは少なくとも一部においてペプチド結合の主鎖により特徴付けられ、したがってPNAを表す)、メチルホスホネート、7−デアザグアノシン、5−メチルシトシンおよびイノシンである。
【0033】
本発明は、上記で規定された本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現を制御することができるヌクレオチド配列にも関する。かかる制御配列は、本発明のポリペプチドのコード配列を含む遺伝子に由来する。好ましいヌクレオチド配列は、図4A(SEQ ID NO: 1)に示される1から1396までのヌクレオチド、および/または2408から2607までのヌクレオチド、および/または5A(SEQ ID NO: 3)に示される1から1791までのヌクレオチド、および/または3622から4350までのヌクレオチド、または前記配列の機能的に活性のあるフラグメント、変異体、突然変異体、若しくは類似体である。
【0034】
図4B(SEQ ID NO: 2)に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、または前記アミノ酸配列に由来するポリペプチドの発現を制御するために好ましい配列は、図4A(SEQ ID NO: 1)に示される1から1396のヌクレオチド、および/または2408から2607のヌクレオチドに由来する。図5B(SEQ ID NO: 4)に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、または前記アミノ酸配列に由来するポリペプチドの発現を制御するために好ましい配列は、図5A(SEQ ID NO: 3)に示される1から1791のヌクレオチド、および/または3622から4350のヌクレオチドに由来する。
【0035】
本発明のさらなる実施態様は、上記ポリヌクレオチドに対するアンチセンス核酸である。
【0036】
アンチセンス核酸は、少なくとも一部はターゲット配列に相補的であるヌクレオチド配列を有する。本発明のアンチセンス核酸は、一本鎖または二本鎖の核酸であり、その核酸は少なくとも一部は図4A(SEQ ID NO: 1)に示される1397から2407までのヌクレオチド配列または図5A(SEQ ID NO: 3)に示される1792から3621までのヌクレオチド配列の少なくとも8、好ましくは少なくとも10の連続したヌクレオチドに相補的である。本発明に従う好ましいアンチセンス核酸は、図4A(SEQ ID NO: 1)に示される1397から2407の、または図5A(SEQ ID NO: 3)に示される1792から3621のヌクレオチドの全長または部分配列を有するポリヌクレオチドに結合できる分子である。
【0037】
本発明によると、“アンチセンス核酸”の語は、核酸塩基を結合するペプチド主鎖によって特徴付けられるペプチド核酸(PNA)も含む。本発明において使用するさらに好ましいアンチセンス核酸は、リボザイム、特にハンマーヘッドリボザイム、またはDNAエンザイム、特に10−23型のもの等のような触媒的な核酸の部分である。リボザイムは触媒として活性なRNAであり、DNAエンザイムは触媒として活性なDNAである。
【0038】
本発明との関連で有用なアンチセンス核酸は、通常、修飾されていないまたは修飾されたヌクレオチドを含む、またはそのようなヌクレオチドからなるDNAまたはRNA種である。特に、アンチセンスRNA分子の場合、リボヌクレアーゼによる分解に対する抵抗性を増大させるため、天然に生じるヌクレオチドの少なくとも一の類似体を組み込むことが好ましい。これは、細胞のRNA分解酵素は、天然に生じるヌクレオチドを好んで認識する、という事実によるものである。したがって、RNAに核酸類似体を組み込むことによって、RNAの分解をうまく減少させることができる。
【0039】
本発明に従うポリヌクレオチドの類似体についてすでに述べた通り、天然のヌクレオチドに比べて類似体の修飾は、核酸構成要素の塩基ならびに糖および/またはリン酸部分において起こりうる。ヌクレオチド類似体の具体例は、前記で言及される。
【0040】
好ましい実施態様によると、本発明のアンチセンス核酸は、本発明のポリヌクレオチドの発現を実質的に阻害することができ、例えば、赤血球付着性マイコプラズマ種、特にM. suisにおいて見られる通常のまたは天然に生じる発現レベルに比べて、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、またはより一層の差である。
【0041】
さらに本発明は、上記の、ポリヌクレオチドおよび/またはアンチセンス核酸を含むベクターに関連する。
【0042】
本発明に従うベクターは、直鎖状のまたは環状の核酸分子であり、好ましくは適した宿主においてポリヌクレオチドまたはアンチセンス核酸を導入、および増幅/複製することができるプラスミド、ウイルス、ファージ、若しくはコスミド、または他の人工的な核酸コンストラクトに由来するものである。本発明のベクターは好ましくは宿主において自律的に複製されることができる。したがって、ベクターは通常、少なくとも一の複製の起点(Ori)、一以上の他とは異なる制限酵素認識部位(MCS、多重クローニング部位)、うまく形質転換された宿主細胞を選択するため、例えば、カナマイシン、アンピシリン、ゲンタマイシン、クロラムフェニコール等の抗生物質耐性遺伝子等のような一以上のマーカー遺伝子、といった成分を含む。本発明の特に好ましいベクターは、好ましくは転写に適したプロモーター、オペレーター、および転写終結配列、ならびに対応するmRNAの翻訳を開始するためのリボソーム侵入部位の配列を含む発現ベクターである。
【0043】
したがって、好ましい実施態様によると、本発明のベクターは、ポリヌクレオチドおよび/またはアンチセンス配列に作用可能なように結合し、それゆえに前記ポリヌクレオチド/アンチセンス核酸の発現を制御することができる、少なくとも一のプロモーター配列を含む。本発明のコンストラクトにおいて適したプロモーターは、例えば、lacプロモーターやその誘導体等のような一般的なバクテリアのプロモーター、例えばIPTGの添加により誘導することができるtacである。他の好ましい誘導できるバクテリアのプロモーターは、AraC/pBADシステムである。さらに、本発明のベクターは、バクテリアのシステムにおいて発現させるためのファージプロモーターを含んでもよい。ファージプロモーターの好ましい例は、T7、ラムダPLおよびSP6プロモーターである。本発明のベクター中に存在しうるさらに好ましい要素は、転写の終了のための配列(転写終結配列)、ならびに、例えばエンハンサーおよび/またはリプレッサー配列等のような、ポリヌクレオチドおよび/またはアンチセンス核酸の発現を制御する配列である。本発明のベクターは、好ましくは本発明のポリペプチドをコードする遺伝子に由来する制御配列を含む。特に好ましい制御配列は前に記載される。
【0044】
本発明に従う特に好ましいベクターは、バクテリアの発現ベクターであって、ポリヌクレオチドは、コンストラクトの検出および/または精製を促進するためのマーカーまたはタグとして働くペプチド/ポリペプチドをコードする一以上の配列中にインフレームでクローン化されることができる。かかるタグまたはマーカーは、発現したポリペプチド上のN末端および/またはC末端に存在しうる。具体例は、ヒスチジンタグ、GST(グルタチオンSトランスフェラーゼ)、GFP、YFP等の蛍光マーカーを提供するタンパク質をコードする配列である。
【0045】
本発明のさらなる形態は、本発明のポリヌクレオチドおよび/またはアンチセンス核酸、および/またはベクターを含む宿主細胞である。通常、宿主細胞は、(かかる媒介物が使用される場合)ポリヌクレオチド/アンチセンス核酸の伝播/発現のために選択されたベクターにしたがって選択される。
【0046】
好ましい宿主細胞は、例えばバクテリア、特に大腸菌および赤血球付着性マイコプラズマ種、とりわけM. suis、M. wenyonii、M. haemofelis、およびM. haemocanisなどのような原核生物の宿主から選択される。他の有用な宿主細胞は、真核生物の宿主細胞、例えばS. cerevisiae、P. pastoris等の酵母細胞である。
【0047】
さらに本発明は、上記のように、ポリヌクレオチドによりコードされたポリペプチドに関する。したがって、本発明によるポリペプチドは、MSG1(図4Bに従うアミノ酸配列(SEQ ID NO: 2))またはMSA1(図5Bに従うアミノ酸配列(SEQ ID NO: 4))の少なくとも一の抗原決定基を含む。本発明に従うポリペプチドの好ましい実施態様は、図4B(SEQ ID NO: 2)若しくは図5Bに示されたアミノ酸配列(SEQ ID NO: 4)、または前記配列の抗原性のフラグメント、変異体、類似体、若しくは突然変異体を含むアミノ酸配列を含む。
【0048】
本発明は、上記のポリペプチドに対する抗体にも関連する。“抗体”の語は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、キメラ抗体、遺伝子工学により合成された、例えばヒト化抗体を含み、それらは結合したまたは溶解した形で存在しうる。さらに、本発明に従う“抗体”は、前述の種のフラグメントまたは誘導体としてもよい。かかる抗体または抗体フラグメントは、組換え型分子として、例えば他の(タンパク質性の)成分との融合タンパク質として存在してもよい。抗体フラグメントは、通常、酵素消化、タンパク質合成により、または当業者に知られている組換え技術により生産される。したがって、本発明において使用するための抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、ヒトの若しくはヒト化された若しくは組換え型の抗体、またはそれらのフラグメント、および一本鎖抗体、例えばscFv−コンストラクト、または合成抗体である。
【0049】
ポリクローナル抗体は、抗原で免疫された動物の血清から生産された抗体分子の不均一な混合物である。本発明は、抗体混合物の精製により(例えば、特異的なエピトープのペプチドを持つカラムを用いたクロマトグラフィーを通して)得られるポリクローナルの単一特異性抗体もある。モノクローナル抗体は、抗原の単一のエピトープに特異的な抗体の均一な集合を表す。モノクローナル抗体は、先行技術に記載された方法にしたがって調製することができる(例えば、Kohler and Milstein, Nature, 256, 495−397,(1975); 米国特許4376110号; Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring, Harbor Laboratory(1988); Ausubel et al.,(eds), 1998, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York)。言及した資料の開示は、引用により本発明に全て組み込まれる。
【0050】
本発明において使用するための遺伝子工学により合成された抗体は、上記の参考文献において記載されているような方法に従って生産されてもよい。つまり、抗体産生細胞は十分な吸光度まで培養され、全RNAは、グアニジウムチオシアネートを用いた細胞の溶解、酢酸ナトリウムを用いた酸性化、フェノール、クロロホルム/イソアミルアルコールを用いた抽出、イソプロパノールを用いた沈殿、およびエタノールを用いた洗浄により調製される。mRNAは通常、オリゴdTを結合した樹脂(例えばセファロース)を用いたクロマトグラフィーまたはバッチ吸収によって、全RNAから単離される。cDNAは、逆転写によりmRNAから調製される。このようにして得たcDNAを、適したベクター(動物、真菌、バクテリア、またはウイルスに由来するもの)にすぐに、または“部位特異的突然変異誘発”(一以上の塩基対の挿入、逆位、欠失、または置換を導く)による遺伝子操作後に挿入することができ、対応する宿主生物中で発現させることができる。適したベクターおよび宿主生物は、当業者によく知られている。pBR322、pUC18/19、pACYC184、ラムダ、または酵母ミューベクター等のようなバクテリアまたは酵母に由来するベクターは、好ましい例として挙げられてもよい。かかるベクターは、対応する遺伝子のクローニングおよび大腸菌等のバクテリア若しくはS. cerevisiae等の酵母中での発現のためにうまく使用される。
【0051】
本発明において使用するための抗体は、次の免疫グロブリンクラスのいずれかに属することができる:IgG、IgM、IgE、IgA、GILD、および前記クラスのサブクラス、例えばIgGクラスのサブクラスを適用できる。IgG1、IgG2、IgG2a、IgG2b、IgG3、またはIgGM等のようなIgGおよびそのサブクラスが好ましい。IgGサブタイプのIgG1/kまたはIgG2b/kは、特に好ましい。本発明において使用するためのモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローンは、in vitro、in situ、またはin vivoで培養することができる。高力価のモノクローナル抗体は、好ましくはin vivoまたはin situで産生される。
【0052】
キメラ抗体は、異なる起源の成分を含んでいる種である(例えば、マウスモノクローナル抗体に由来する可変領域およびブタ免疫グロブリンに由来する定常領域を含んでいる抗体)。キメラ抗体は、患者に投与する際に種の免疫原生を減少させるため、および産生収率を向上させるために採用される。例えば、ハイブリドーマ細胞系と比較して、マウスモノクローナル抗体は高い収率を与える。しかし、それは非マウス、例えばブタの患者において、より高い免疫原生を引き起こす。したがって、キメラの非マウス(特にブタ)/マウス抗体が、好ましくは使用される。マウスモノクローナル抗体の超可変相補性決定領域(CDR)が、非マウス、好ましくはブタの抗体のさらなる抗体領域と結合するモノクローナル抗体は、なおさら好ましい。キメラ抗体およびその製造方法は、先行技術に記載されている(Cabilly et al., Proc. Natl. Sci. USA 81: 3273−3277(1984); Morrison et al. Proc. Natl. Sci. USA 81: 6851−6855(1984); Boulianne et al. Nature 312 643−646(1984); Cabilly et al., EP−A−125023; Neuberger et al., Nature 314: 268−270(1985); Taniguchi et al., EP−A−171496; Morrion et al., EP−A−173494; Neuberger et al., WO 86/01553; Kudo et al., EP−A−184187; Sahagan et al., J. Immunol. 137: 1066−1074(1986); Robinson et al., WO 87/02671; Liu et al., Proc. Natl. Sci. USA 84: 3439−3443(1987); Sun et al., Proc. Natl. Sci. USA 84: 214218(1987); Better et al., Science 240: 1041−1043(1988)およびHarlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, 上記)。前述の資料の開示内容は、引用により本明細書中に組み込まれる。
【0053】
本発明によると、“抗体”の語は、完全な抗体分子およびMSG1またはMSA1に結合することができるそれらのフラグメント、またはそれらのフラグメント、誘導体、類似体および他の血球付着性マイコプラズマ種に由来する関連するタンパク質を含む。抗体フラグメントは、抗原への一または二の結合部位、すなわちMSG1またはMSA1または関連する分子の一以上のエピトープを有する任意の欠失したまたは誘導体化された抗体部分を含む。かかる抗体フラグメントの具体例は、Fv、Fab若しくはF(ab’)2フラグメントまたはscFv等のような一本鎖フラグメントである。Fv、Fab、F(ab’)2等のような二本鎖フラグメントが好ましい。FabおよびF(ab’)2フラグメントは、原型の抗体に含まれるFcフラグメントを持たない。有益な結果として、かかるフラグメントは、完全な抗体種に比較して、循環器系においてより速く運ばれ、より少ない非特異的な組織結合を示す。かかるフラグメントは、パパイン(Fabフラグメントを産生するため)もしくはペプシン(F(ab’)2フラグメントを産生するため)等のようなプロテアーゼを用いたタンパク質分解、または化学的酸化によって原型の抗体から産生されてもよい。
【0054】
好ましくは、抗体フラグメントまたは抗体コンストラクトは、対応する抗体遺伝子の遺伝子操作を経て産生される。組換え抗体コンストラクトは、通常、一本鎖Fv分子(scFvs、〜30kDaの大きさ)を含み、そこにおいてVHおよびVLドメインはポリペプチドリンカーを介して一緒に連結され、発現およびフォールディング効率が改善される。機能的な親和性(結合活性)を向上させるため、および大きさを増大させてそれにより血液クリアランス率を減少させるため、単量体のscFvフラグメントは、接着タンパク質ドメインまたはペプチドリンカーを用いて、二量体、三量体、またはより大きな凝集体を形成することができる。二価のscFv二量体のかかるコンストラクトの一例は、60kDaのダイアボディであり、各scFvのVH−とVLドメイン間の短い、例えば5残基のリンカーは、V−ドメインの配置が単一のFvモジュールとなるのを妨げ、その代わりに二つのscFv分子の会合を生じる。ダイアボディは、2つの機能的な抗原結合部位を有する。リンカーは3残基未満に減らすこともでき、これはダイアボディの形成を阻害し、代わりにscFv3分子が3つの機能的な抗原結合部位で三量体(三重特異性抗体90kDa)に会合するように導く。4つのscFvの四価の四重特異性抗体への会合も可能である。本発明における使用のためにさらに好ましい抗体コンストラクトは、scFv−CH3融合タンパク質の二量体である(80kDa;いわゆる“ミニボディ”)。
【0055】
本発明によると、ここに記載された一以上のアンチセンス核酸、ベクター(特にアンチセンス核酸を発現することができるもの)、および/または抗体は、通常、前記のような活性成分や、薬学的に許容される賦形剤、添加剤および/または担体(例えば可溶化剤も)を含む医薬組成物に含まれる。したがって、本発明は、前記のような活性成分、および少なくとも一の薬学的に許容される担体、賦形剤、および/または添加剤の組み合わせを開示する。本発明の医薬組成物を処方する対応する方法は、例えば本発明の開示の一部である“Remingston’s Pharmaceutical Sciences”(Mack Pub. Co., Easton, PA, 1980)において開示される。非経口投与のための担体の例は、例えば、滅菌水、無菌の塩化ナトリウム溶液、ポリアルキレングリコール、水素化ナフタレン、および特に生体適合性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー、またはポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーである。本発明に従うかかる組成物は、M. suisおよび関連する赤血球付着性マイコプラズマ種による感染症の治療のために想定される。さらに、本発明に従う組成物は、ラクトース、マンニトール等のような充てん剤若しくは物質、例えばポリエチレングリコール等のようなポリマーを本発明において開示されるようなポリペプチド、抗体、および誘導体、もしくはそれらのフラグメントに共有結合するための基質、金属イオンと複合体を形成するための基質、またはポリマー化合物の特別な製剤、例えばポリアセテート、ポリグリコール酸、ヒドロゲル、またはリポソーム、マイクロエマルジョン、ミセル、単層若しくは多層のベシクル、赤血球フラグメントまたはスフェロプラスト等の中に材料を封入するための基質を含んでもよい。組成物の具体例は、物理的な挙動、例えば溶解性、安定性、バイオアベイラビリティ、または分解性により選択される。組成物中の本発明の活性基質の制御放出または定常放出は、脂溶性デポーに基づく製剤も含む(例えば脂肪酸、ワックス、またはオイル)。本発明との関連で、かかる基質を含む本発明に従う基質または組成物のコーティング、つまりポリマーでのコーティングも開示される(例えばポリオキサマー、またはポリオキサミン)。さらに、本発明に従う基質または組成物は、プロテアーゼ阻害剤または浸透性増幅剤等の保護用のコーティングを含んでもよい。前記任意の含有物は、本発明のワクチン中に含まれてもよい。
【0056】
原則として、本発明との関連で、本発明に従う基質または組成物(ワクチン、薬剤)のための、先行技術において知られている全ての投与経路は、開示される。好ましくは、前記M. suisまたは関連する種による感染症の治療または予防それぞれのための薬剤またはワクチンの投与は、非経口の、つまり、例えば、皮下、筋肉内、もしくは静脈内、経口、または鼻腔内の投与経路を介して行われる。本発明のポリペプチドを含むワクチンは、通常、皮下に投与される。遺伝子ワクチンの場合、筋肉注射が好ましい投与経路である。通常、本発明に従う医薬組成物およびワクチンは、製剤の型によって固体、液体、またはエアロゾル(例えばスプレー)の形とする。
【0057】
M. suisおよび関連する赤血球付着性マイコプラズマ種(例えばM. wenyonii、M. haemofeilsおよびM. haemocanis)による感染症の治療およびそれに対する予防接種のスケジュールは、治療される個人、感染症の重症度、および分子の型次第である。本発明の通常の医薬/ワクチン組成物は、有効成分を1から1000μg含む。本発明のワクチンは、複数回患者に投与され(上記のような経路を介して)、免疫される。通常、本発明のワクチンは、例えば1:10から10:1まで、好ましくは1:2から2:1まで、とりわけ1:1の一以上のアジュバントとの混合物として、一次免疫において投与され、一次免疫は通常一週間以上隔てた一以上のさらなる投与により追加免疫することができる。適したスケジュールは、0、14、21、および/または28日目における投与である。
【0058】
本発明の医薬組成物は、感染した個体における病原体が少なくとも実質的に減少、好ましくは根絶するのに有効な期間にわたって、毎日一回以上投与されてもよい。
【0059】
したがって、本発明の上記実施態様、つまりポリヌクレオチド、アンチセンス核酸、ベクター、宿主細胞、ポリペプチド、および/または抗体は、M. suisによる感染症の治療および/または予防に有用である。
【0060】
本発明のさらなる実施態様は、上記のようにポリペプチドの製造に関連し、
(a)本発明の宿主細胞および適した培養液を、ポリペプチドを発現させることができる条件下で培養する工程;および
(b)培養液および/または宿主細胞からポリペプチドを回収する工程
を含む。
【0061】
好ましくは、工程(a)に従って培養される宿主細胞は、適した宿主を形質転換することによって、例えば大腸菌等のような適した細菌のエレクトロポレーション、または化学的なトランスフェクションによって、生産される。
【0062】
本発明に従うポリペプチドの製造方法の工程(b)は、通常、便利なタンパク質精製工程を含む。特に、宿主細胞は普通、遠心分離により回収され(または所望の発現産物を含んでいる培養液から除去され)、凍結/解凍サイクル、ソニケーション、および/または高圧力の適用により破壊されてもよい。細胞溶解液(ポリペプチドが細胞から回収される場合)は、ろ過され、および/または遠心分離されてもよい。ポリペプチドを含んでいる細胞溶解液または培養液は、トリス、リン酸バッファー等を主原料としうる適した精製バッファーに対して透析されてもよい。さらなる精製工程は、分画された塩化アンモニウム沈殿を含んでもよい。さらなる精製方法は、例えばデキストラン(例えばセファデックス)、アガロース(例えばセファロース)、ポリアクリルアミド(例えばセファクリル)、またはセルロースを主原料とした適した樹脂を用いた交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、および/またはアフィニティクロマトグラフィーによるクロマトグラフィー分画工程を含む。特に、興味あるポリペプチドが適したタグ、例えばヒスチジンタグをつけられた場合、通常の精製スキームは、アフィニティクロマトグラフィー、特にキレート基を介して適した樹脂に連結したNi2+またはZn2+イオンを用いた金属キレートクロマトグラフィーを含む。すべてのクロマトグラフィーの工程は、FPLCまたはHPLC装置に適応されうる。一般に、当業者は、使用される発現系の源によって、および、興味あるタンパク質の性質(特にアミノ酸配列)によって、容易に精製スキームを立ち上げて実行することができる(例えば、Scopes, Protein Purification−Principles and Methods, 3rd edition, Springer Verlag, Berlin, Germany, 1993; Deutscher(ed.), Guide to Protein Purification−Methods in Enzymology Edition, Vol. 182, Academic Press, San Diego, CA, USA, 1990参照)。
【0063】
本発明の実施態様に基づいて、かかる感染顆粒により引き起こされると考えられる病気の全ての病期における、ウシにおけるM. wenyonii、ネコにおけるM. hemofelis、イヌにおけるM. haemocanis、および特にブタにおけるM. suisなどのような赤血球付着性マイコプラズマ種による感染症の検出方法、特にELISA、免疫ブロット等の診断アッセイを確立することができる。特に、かかる検出方法は、キャリア動物を検出するのに有用である。例えば、血清は、血清有病率の研究および群れの診断のそれぞれを実行するために、臨床的に疑われる動物(血清同等者)から、またはブタの群れのような動物の群れの中の代表する数の動物から採取してもよい。血清は、例えば、溶液希釈の後、既知のポジティブおよびネガティブコントロール血清と比較して、本発明のポリペプチドに対する反応性が調査される。
【0064】
感染症が検出により示され、感染したキャリア動物から除去されうるので、本発明の診断アッセイは、有用なPEの制御手段を提供する。
【0065】
したがって、一般に、本発明は、前記の通り前記実施態様の検出手段、つまりポリヌクレオチド、アンチセンス核酸、ポリペプチドおよび/または抗体とともに用いられる、ポリヌクレオチドおよび/またはアンチセンス核酸および/またはポリペプチドおよび/または抗体を含む診断キットに関連する。
【0066】
上記分子の“検出手段”は、通常、直接または間接にポリヌクレオチド、アンチセンス核酸、ポリペプチド、および/または抗体を用いて取り付けられうる分子マーカーである。かかるマーカーまたはラベルは、例えば特徴的な光吸収、発光(特に蛍光)、放射活性等のような直接または間接に測定することができるシグナルを提供する多様な適した化合物または化学基から選択されうる。具体例は、放射活性マーカー、蛍光マーカー、色素、およびビオチン/ストレプトアビジン等のような特定の結合ペアの要素である。
【0067】
好ましくは、ポリヌクレオチド、アンチセンス核酸、ポリペプチド、および/または抗体は、メンブレン(例えば、核酸分子のためのニトロセルロース、またはペプチド若しくはポリペプチドのためのPVDF)、樹脂、マイクロビーズ、培養皿、マイクロタイタープレートのウェル、マイクロアレイ等のような固定担体に結合される。
【0068】
本発明の診断キットのさらなる実施態様は、図4A(SEQ ID NO: 1)に示される配列、好ましくは1397から2407までのヌクレオチド配列、または図5A(SEQ ID NO: 3)に示される配列、好ましくは1792から3621までのヌクレオチド配列、またはプライマーペアが関連する配列とうまくハイブリダイズできるように一定の相同性を有する関連する配列、特にM. suis以外の赤血球付着性マイコプラズマ種に由来する配列の部分、フラグメント、または領域を増幅するためのプライマーペアを含む。好ましい実施態様によると、本発明の診断キットは少なくとも一のオリゴヌクレオチドペアを含むものであって、一のオリゴヌクレオチド(アンチセンスオリゴヌクレオチド)は、図4A(SEQ ID NO: 1)に示される配列、好ましくは1397から2407までのヌクレオチド配列、または図5A(SEQ ID NO: 3)に示される配列、好ましくは1792から3621までのヌクレオチド配列に相補的な、少なくとも9、好ましくは12、より好ましくは15ヌクレオチドの配列を含み、他のオリゴヌクレオチド(センスオリゴヌクレオチド)はそれぞれ図4A(SEQ ID NO: 1)に示される配列、好ましくは1397から2407までのヌクレオチド配列、または図5A(SEQ ID NO: 3)に示される配列、好ましくは1792から3621までのヌクレオチド配列の少なくとも9、好ましくは12、より好ましくは15ヌクレオチドの配列を含むものであって、センスオリゴヌクレオチドの配列における最も3’側のヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの配列における最も3’側のヌクレオチドから上流に少なくとも20、好ましくは少なくとも50、より好ましくは少なくとも100ヌクレオチドである。
【0069】
本発明にしたがう診断キットの構成要素は、M. suisおよび関連する種の検出のため、特に、感染しやすい動物、例えばブタ、ウシ、ネコ、イヌ、ウマ、およびヒトにおける対応する感染症の検出においてうまく用いられうる。
【0070】
本発明の好ましい実施態様によると、M. suisおよび関連する種を検出する方法は、
(a)M. suis(または関連する種)を含んでいると思われる試料、またはそれらに由来する材料を得る工程;
(b)工程(a)の試料を、ここに開示された好ましい実施態様、すなわち上記のようなポリヌクレオチド、アンチセンス核酸、ポリペプチド、および/または抗体の少なくとも一と、前記ポリヌクレオチド、アンチセンス核酸、ポリペプチド、および/または抗体が試料/それらに由来する材料中に存在する成分と結合できる条件下で接触させる工程;
(c)非結合性ポリヌクレオチド、抗体、および/またはアンチセンス核酸を除去するために一回以上洗浄する工程;および
(d)工程(b)において結合した前記ポリヌクレオチド、アンチセンス核酸、および/または抗体の存在を検出する工程
を含む。
【0071】
上記のM. suisなどの赤血球付着性マイコプラズマ種の検出方法は、感染顆粒/特定の成分の検出のために使用される特定の分子次第で、異なる形式に適用することができる。
【0072】
したがって、本発明のポリヌクレオチドおよびアンチセンス核酸の使用は、通常、テストする試料中に存在する相補的な配列(少なくとも一部は相補的な配列)とのハイブリダイゼーションに依存する。したがって、本発明のポリヌクレオチドおよび/またはアンチセンス核酸が用いられる場合、本検出方法は通常、サザンブロットまたはノーザンブロットの形をとる。かかるブロッティング技術の詳しい実験装置は、当業者によく知られている;Sambrook et al., 上記参照。
【0073】
本発明に従うポリペプチドは、通常感染した個体中でM. suis または関連する種に対して作られる、試料中に存在する免疫グロブリン、特に抗体により認識される。言い換えると、本発明の抗体は、抗体が特異的である抗原決定基(エピトープ)を認識することにより試料中で成分に結合する。
【0074】
ここに開示されたように、本発明に従うポリペプチドまたは抗体がM. suis(または関連する種)に由来する成分の検出のために使用される場合、上記検出方法はウエスタンブロット実験の形をとるが、通常、酵素免疫アッセイ、特に酵素結合免疫測定法(ELISA)として設計される。実験装置および試薬(二次抗体、カップリングの化学反応等)は、当業者に知られている(例えば、Anal. Methods Instrument. 1, 134−144(1993)、Coligan et al.(1991) Eds., Current Protocols in Immunology, Wiley, New York、またはCrowther, The ELISA Guidebook: Methods in molecular biology 49, Humana Press, Totowa NY, USA(2000))。もちろん、上記に該当する他の検出方法を想定することもできる。酵素免疫アッセイ以外の具体例は、ラジオイムノアッセイ型のアッセイである。適した技術は、例えばLefkovitz(Ed.), Immunology Methods Manual, Vol. 1−4, San Diego, Academic Press 1997、およびChard, An Introduction to Radioimmunoassay and Related Techniques, Amsterdam, Elsevier 1995に開示される。
【0075】
検出方法のために使用される試料は、M. suisまたは関連する種を含む可能性がある検査サンプルまたは試料であってもよい。好ましい試料は、問題の病原体の少なくとも一による感染が疑われる個体(動物、ヒト)に由来する。試料は、M. suisまたは関連する種による感染が疑われる個体に由来する任意の組織(例えば脾臓)または体液でもよい。好ましい体液は、血液および血液産物、特に血清、リンパ液、脳脊髄液、滑液などである。
【0076】
赤血球付着性マイコプラズマ種、好ましくはM. suisの検出方法または対応する診断方法のさらに好ましい実施態様は、ここに開示したように、少なくとも一の対応するプライマーペアを用いた、配列をコードする赤血球付着性マイコプラズマ特異的抗原の増幅に依存する。
【0077】
したがって、本発明は対応する検出方法または診断方法に関連するものであって、該方法は
(a)M. suis(または関連する種)を含んでいると思われる試料、またはそれらに由来する材料を得る工程(詳細例はすでに前述);
(b)図4A(SEQ ID No:1)若しくは5A(SEQ ID NO:3)に開示された配列、または関連する配列に特異的な、少なくとも一のプライマーペアを提供する工程;
(c)テンプレートとして工程(a)における試料を使用し、工程(b)に従うプライマーペアを使用して、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)を行う工程;および
(d)工程(c)において生産された増幅産物を解析する工程
を含む。
【0078】
好ましくは、上記方法のプライマーペアは、上記診断キットの記載に従って規定される。すなわち、図4A(SEQ ID NO: 1)に開示される配列の少なくとも一部、好ましくはその1397から2407までのヌクレオチド配列、または図5A(SEQ ID NO: 3)に開示される配列の一部、好ましくは1792から3621までのヌクレオチド配列、または関連する配列のPCR増幅のためのプライマーとして働くことができるオリゴヌクレオチドペアである。もちろん、ここに開示されたような配列または関連する配列に基づいて、逆転写PCR(RT−PCR)法を確立することも可能である。当業者に知られているように、RT−PCR法は、配列特異的プライマーを一つだけ使用してもよく、一方で他のプライマーは、ランダムヘキサプライマーやオリゴdTプライマー等のような非特異的なプライマーから選択されてもよい。対応するPCRおよびRT−PCRキット、ならびに他の製品は、Stratagene(La Jolla, CA, USA)、BD Bioscience(Franklin Lakes, NJ USA)、Amersham Bioscience(Uppsala, Sweden)等のようなさまざまな製造業者から市販される。PCR法は、当業者に知られており、特有の実験装置は、McPherson et al.(Eds.), PCR2, A Practical Approach, Oxfor, IRL Press 1995; Rolfs et al. Methods in DNA Amplification, New York、Plenum Press 1994; Crit. Rev. Biochem. Mol. Bio. 26, 301−334(1991)等のような、さまざまな実践的および理論的な参考文献から導き出すことができる。
【0079】
M. suisおよび関連する種の検出、またはかかる細菌による感染症の診断のための増幅方法の特に好ましい実施態様は、PCRの方法論により提供され、その方法論は増幅が完了した後(終点決定)、または増幅サイクル中に同時に(リアルタイムPCR)、作り出されたPCR産物を定量化することができるものである。リアルタイムPCR増幅のプロトコルは、検査試料中に存在する元のテンプレートの量を定量化することができる。リアルタイムPCR法の概論および特有の実験装置は、例えばhttp://dorakmt.tripot.com/genetics/realtime.htmlおよびこのURLで引用される参考文献; Fenollar and Raoult, 2004 APMIS 112: 785−807に、概説される。したがって、本発明に基づいて、リアルタイムPCRアッセイを利用することができ、そのアッセイはM. suisまたは他の赤血球付着性マイコプラズマ種による感染症が疑われる個体に由来する血液、および器官の検査サンプル中のM. suisまたは関連する種の定量的な検出に適している。ここに開示される赤血球付着性マイコプラズマ種に特異的な特有のコード配列に由来するプライマーターゲットを使用して、本発明のPCRアッセイは、リボソームのターゲット配列に基づくアッセイに比較して、優れた特異性を提供するという利点がある。さらに、PCR,特にリアルタイムPCR技術の標準化および自動化の容易性、ならびにかかる分析装置における混入の効果的な防止は、ありふれた検査室において相対的な条件下での本発明のアッセイの使用を可能とする。したがって、異なる国の異なる検査室において得られた結果の有益な比較を利用することができる。
【0080】
本発明に従うベクターおよびポリペプチドは、M. suisまたは関連する種による感染症に対する予防接種に特に有用である。したがって、本発明は、本発明のベクターおよび/または本発明のポリペプチドを含むワクチンにも関連する。
【0081】
本発明に従う少なくとも一のポリペプチドを含むワクチンは、したがって、図4B(SEQ ID NO: 2)および/または図5B(SEQ ID NO:4)において開示される配列により規定されるタンパク質の少なくとも一の抗原決定基を含む。本発明に従うワクチンは、図4B(SEQ ID NO: 2)および/または図5B(SEQ ID NO:4)に示されるアミノ酸配列に由来する複数の配列フラグメントを含むポリタンパク質を含んでもよい。好ましくは、本発明に従うワクチンは、一以上のアジュバントおよび/または他の免疫刺激剤を含む。適したワクチン、特にフロイントの不完全なまたは完全なアジュバントは、前述されている。
【0082】
本発明に従うワクチンのさらなる実施態様は、遺伝子ワクチンによって代表される。本発明に従う遺伝子ワクチンは、例えばRNAまたはDNAに基づくベクターにより代表される、本発明に従うポリペプチドの発現によく適合する、前記のようなベクターを含む。したがって、本発明の遺伝子ワクチンは、好ましくは図4B(SEQ ID NO: 2)および5B(SEQ ID NO:4)に示される配列の一方または両方に含まれる一以上の抗原決定基の発現に適したベクターを含む。もちろん、本発明に従う遺伝子ワクチン中に含まれるベクターは、ここに開示された配列に含まれる複数のエピトープをコードするポリジーンを含んでもよい。適した遺伝子ワクチンは、例えばIvory et al.(2004) Genetic Vaccines and Therapy, 2, 17に概説されるよく知られた原理に従って設計してもよい。したがって、本発明の遺伝子ワクチンの使用によるT細胞の誘導は、感染した個体、特にブタ、ウシ、ネコ、およびイヌ等のような動物から、病原体(M. suisまたは関連する種)を除去するための戦略を提供する。
【0083】
本発明のさらなる実施態様は、したがって、M. suisまたは関連する種による感染症の予防方法に関連し、その方法は、本発明のワクチンの有効量を、上記のように、対応する病原体による感染症が疑われる動物に投与することを含む。
【0084】
前述したように、本発明の実施態様は、M. suisおよび関連する病原体による感染症の治療に有用である。したがって、本発明に従う医薬組成物は、本発明に従う治療効果のある量のアンチセンス核酸、および/またはベクター、および/または抗体を、少なくとも一の薬学的に受け入れられる担体、賦形剤、および/または添加剤と一緒に含む。
【0085】
したがって、本発明の医薬組成物中のアンチセンス核酸は、ここに記載されたポリペプチドの発現を阻害し、それゆえに病原体を除去、または少なくとも制御する。さらに、ここに記載したようなアンチセンス核酸を発現することができるベクターは、一般に同じ方法で機能する。本発明に従う抗体は、抗体の投与後、病原体が顕著に減少または除去までされるように、M. suisおよび関連する種に由来する免疫優性のポリペプチドに結合することができる。
【0086】
図1は、10%ラエムリゲルの一次元ウェスタンブロットの写真を示し、これは、感染したブタの全血から得たM. suis抽出物中に存在する、8つのM. suis特異的抗原の検出を説明する。パネル(A)は、M. suis陽性ブタから得た血清とインキュベートされたブロットを示す。M. suis陽性血清と特異的に反応しているバンドは、それぞれ分子量により表示される。免疫優性タンパク質(p40,p45およびp70)は、アスタリスクでマークされている。M. suis陰性血清および抗ブタIg複合体によっても検出された非特異的なバンドは、長方形でマークされている(パネル(B)および(C)参照、それぞれ:p26、p56、およびp77)。パネル(B)は、M. suis陰性血清とインキュベートされた後の対応する対照ブロットを示し、パネル(C)は、抗ブタIg複合体とインキュベートされた後の対照ブロットを示す。各ブロットにおけるレーンは左から右に:左のレーン:分子量マーカー;中央のレーン:感染したブタの全血から得たM. suis抽出物;右のレーン:感染していないブタ由来の全血抽出物である。
【0087】
図2は、(A)感染したブタの全血から得たM. suis抽出物の、(B)健康な対照動物から得た全血の、三通りの二次元SDS−PAGE解析(分画電気泳動/ラエムリ)の写真を示す。
【0088】
図3は、感染したブタの血清中の免疫優性M. suisポリペプチドの同定を明示する、二次元ウエスタンブロットの写真を示す。パネル(A)は、実験的に感染させたブタの全血から得られたM. suis抽出物の、クマジー染色した2次元PVDFブロットを示す。パネル(B)は、M. suisに感染したブタ由来の血清とインキュベートした後の、同じ2次元ブロットを示す。パネル(C)は、健康な対照動物から得た血清とインキュベートされた対照ブロットを示す。パネル(D)は、二次(抗ブタ)抗体のみとインキュベートされた対照ブロットを示す。M. suis陽性血清と反応する点は、文字でマークされている。点a、e、f、g、およびkは、(C)も同様にM. suis陰性血清によって認識されたので、M. suis特異的ではなかった。一見M. suis陽性血清によって認識されているが、正しく指定することができなかった点を、(B)において疑問符で示す。
【0089】
図4(A)は、遺伝子msg1の部分的なヌクレオチド配列を示す。このゲノムフラグメントは、M. suisの免疫優性タンパク質(分子量、約40kDa)をコードする1397から2407ヌクレオチドまでの翻訳領域(ORF)を含む。開始コドンおよび終止コドンは、太字でマークされている。(B)は、(A)に由来するタンパク質(MSG1)の推定アミノ酸配列を示す。
【0090】
図5(A)は、M. suisのさらなる免疫優性タンパク質(分子量、約70kDa)をコードする1792から3627ヌクレオチドまでのORFを含む、遺伝子msa1の部分的なヌクレオチド配列を示す。開始コドンおよび終止コドンは、太字でマークされている。(B)は、(A)に由来するタンパク質(MSA1)の推定アミノ酸配列を示す。
【0091】
本発明は、以下の限定しない実施例によってさらに説明される。
【実施例】
【0092】
M. suis特異的な抗原の同定
【0093】
マイコプラズマスイス抗原の調製
M. suis感染性の全血は、実験的に感染させた血液ドナー動物から、臨床的に急性のPEの菌血症が最大の時に得た。200mlの末梢全血は、200mlのアルセバー溶液中に1:1の比で採取された。M. suis細胞は、すでに記載されている通りに精製された(Hoelzle et al.(2003) Vet. Microbiol. 93: 185−196)。M. suis細胞を宿主細胞成分からさらに精製するために、結果として生じたM. suisペレットは、無菌のPBS中に再懸濁され、20%ジアトロゾートメグルミンナトリウムおよびジアトロゾートナトリウム(Urografin 76%、Schering、Berlin、Germany)を通した25000x gで1時間4℃の遠心によって、宿主細胞成分からさらに精製された(Allemann et al.(2001) J. Clin. Microbiol. 37: 1474−1479)。最終ペレットは1.0mlのPBS中に再懸濁され、使用するまで−80℃で保存された(M. suis、(Ms)抗原)。ネガティブコントロール抗原は、前記のようにM. suisがないことが確認された3頭の感染していない動物の抗凝固血液から、同様の方法で調製された。
【0094】
一次元SDS−PAGEおよびウェスタンブロット解析
ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)は、標準的な手順に従って行われた(Laemmli(1970) Nature 227: 680−685)。つまり、分子量マーカーおよびネガティブコントロール抗原は、62.5mM トリス(pH6.8)、2.0%(wt/vol) ドデシル硫酸ナトリウム、25.0% グリセロール、5.0%(vol/vol) β−メルカプトエタノール、および0.00125% ブロモフェノルブルーを含んでいる試料バッファー中で10分間煮沸された。抗原は10.0% ポリアクリルアミドゲル(BioRad, Reinach, Switzerland, Miniprotean III;アクリルアミド/ビスアクリルアミドの比、37.5:1)上で、トラックあたり8.0μgのタンパク質ローディング濃度で分離された。電気泳動は、200vの定常電圧下で、色素の最前部がゲルの下部に到達するまで(〜40分)行われた。分離されたタンパク質は、ニトロセルロースのメンブレン(細孔の大きさ45μm; BA85、 Schleicher & Schuell, Riechen, Switzerland)に、セミドライ電気泳動トランスファーセル(Trans Blot, BioRad)、トランスファーバッファー(25.0mM トリス、0.2M グリシン、20.0%(vol/vol) メタノール)、および30分間の10Vの定常電圧を用いて転写された。メンブレンはトリス緩衝食塩水(TBS、0.01Mトリス、0.15M食塩、pH8.5)3.0%(wt/vol)脱脂粉乳液で、1時間ブロッキングされた。その後、メンブレンは37℃にて2時間、ブロッキング溶液中に1:100で希釈された実験用子豚由来の血清存在下でインキュベートされた。スロットブロット装置(マルチスクリーン装置、BioRad)を適用して、8頭の実験的に感染させたブタの連続した血清試料が解析された。
【0095】
メンブレンを、TBSで10分間、2回洗浄した。西洋わさびペルオキシダーゼでラベルされたヤギ抗ブタIgG(H+L鎖特異的、Sigma)、ヤギ抗ブタIgG(γ鎖特異的、KPL−Bioreba、Reinach、Switzerland)、およびヤギ抗ブタIgM(μ鎖特異的、KPL)を、それぞれ二次抗体として用いた。全ての二次抗体は1:2000でブロッキング溶液に希釈された。ブロットは、H2O2および4−クロロ−1−ナフトールを発色試薬(BioRad)として用いて、発色させた。酵素反応は、蒸留水中でブロットを洗浄することにより止められた。タンパク質のバンドは、コンピューターを利用したバイオイメージシステム(BioProfil 3.1、LTF、Wasserburg、Germany)を用いて、分子量マーカーレーン(着色分子量サイズスタンダード、6.5から175kDaまで、Bioconcept、Allscwil、Switzerland)を参照することにより大きさが決められた。
【0096】
結果
実験的に感染させた動物由来の血清を用いた1次元ウエスタンブロッティングは、3つの主要な結果を明らかとした:
i)M. suis特異的抗原に対するIgG免疫反応は、感染中に見られる、
ii)少なくとも8のつのM. suis特異的抗原(ラエムリにしたがった10%SDS−PAGEによって決定されるように、33kDa、40kDa、45kDa、57kDa、61kDa、70kDa、73kDa、および83kDa)がある(図1A)、および
iii)免疫グロブリン(IgGおよびIgM)は、ブタの血液由来のM. suisと同時精製される(図1B、1C)。
【0097】
M. suis抗原調製物の構成成分として同時精製された免疫グロブリンの存在は、同時精製されたタンパク質が、一次抗体により検出されたタンパク質と二次抗体により検出されたタンパク質を区別することができないELISA等のような間接的な血清学アッセイを困難なものとするので、M.suisに特異的な血清学の検査が今のところ利用できないということを明らかにした。
【0098】
免疫グロブリンを除去することによるM. suis抗原のさらなる精製は、免疫ブロットやELISAによる免疫反応動力学の詳しい研究を可能とした。
【0099】
3つのM. suis特異的なタンパク質は、免疫優性である(40kDa、45kDa、70kDa;図1A参照)。全てのM. suisに感染した動物は、3つの免疫優性タンパク質の少なくとも1つと、遅くとも感染の2週間目の間および実験の終了まで(18週間)、血清反応性を示した。したがって、これらの3つのM. suis抗原は、特に血清診断および予防接種に有用である。
【0100】
先行研究に反して、M. suis特異的な体液性免疫反応が波状の経過を示さず、バクテリアに対する古典的な免疫反応の速度論、つまり抗体の最初の存在は感染の約8−10日後、最初の臨床症状より前に、およびM. suis特異的な抗体の何ヶ月もの持続に基本的に従うということが明らかになった。
【0101】
2次元ウェスタンブロッティング/MALDI−TOF−MSによるM. suis特異的な抗原の部分的な特徴づけ
【0102】
免疫反応性M. suisタンパク質の性質および遺伝学をさらに同定するために、患者の血清プールを用いて、2次元免疫ブロッティングを行った(免疫プロテオミクス)。免疫反応性タンパク質の点は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI−TOF−MS)を用いたペプチドマスフィンガープリント(PMF)によってさらに解析された。
【0103】
2次元ゲル電気泳動およびウェスタンブロッティング
抗原試料(750μ M. suis抗原およびネガティブコントロール抗原それぞれ)は、スピンカラム(Vivaspin、10kDa VS0101)を4000xg10℃で用いて、最終体積200μlに濃縮された。その後、試料は500μlの溶解バッファー(7M 尿素、2M チオ尿素、4% CHAPS、2% DTT、1%[v/v] ファルマライト pH3−10)で希釈された。20℃で30分間振とうした後、試料は16000xg20℃で5分間遠心された。透明な上清の一定分量のタンパク質含有量は、ブラッドフォード法(x−テスト、BioRad)により決定され、試料は解析まで一定分量で−80℃にて保存された。二次元ゲルには、全タンパク質の300μgがロードされた。最初の次元(等電点電気泳動)において、タンパク質は、pH3から10にわたるpH勾配を持った18cmのIPG(固定されたpH勾配)条片中に分離された(Amersham Bioscience, Munich, Germany)。各試料の5つのゲルは、同一の実行条件で行われた(30kVh/IPG条片)。定常状態に着目した後、Gorg et al(2000) Electrophoresis 21: 1037−53に従って、条片はSDSでロードされ、DTTおよびロダセタミド中で平衡化された。二番目の次元において、ラエムリバッファー系が使用された(Laemmli(1970) Nature 227, 689)。タンパク質は、Hoefer ISO − Saltチャンバー(Amersham Bioscience)中で10個のゲルで平行して垂直に流される標準的な連続した12%SDSゲルで、分離された。一般に、1800Vhから2000Vhの間が適用される。ブロモフェノールブルーの最前部がゲルから消えたとき、SDS PAGEを停止した。
【0104】
電気泳動後、ゲルはガラス板から取り外され、製造業者のプロトコールに従ってColloidal Coomassie(Roth、Heidelberg、Germany)で染色された。ウエスタンブロッティングのために、セミドライブロッティング装置(Hoefer、AmershamBioscience)は、染色されていない二次元ゲルをPVDFメンブレンで挟んで使用された。トランスファーバッファーは50mM トリス、50mM ホウ酸、および10%メタノール(vol/vol)を含み;1.5mA/cm2が3時間適用された。
【0105】
クマジー染色した2次元ゲルは、ペプチドマスフィンガープリントによるタンパク質の同定のために使用され、クマジー染色されたPVDFブロットは免疫学的染色のために使用された。さらに、クマジー染色されたマイクロ調製ゲルは、少量の点の同定のために、ゲルあたり500μgのタンパク質がロードされて行われた。
【0106】
ネガティブコントロール抗原と比較するM. suis抗原の2次元電気泳動の解析は、Proteom Weaverソフトウェアを用いて行われた(Definiens、ProteomWeaver Version 2.1.1)。
【0107】
タンパク質の同定
タンパク質の点は、ペプチドマスフィンガープリンティング(PMF)−MALDI−TOF解析により同定された。点はクマジー染色された調製されたゲルから切り出され、10mM NH4HCO3、30% アセトニトリル(ACN)を用いた3回の洗浄により脱色された。5μlのトリプシンバッファー(10mM NH4HCO3に溶解された25ng/μl トリプシン(Roche)、pH8)中、37℃で一晩分解された後、試料は25℃で20分間、ソニケーションバス中に置かれた。上清が取り除かれ、スピードバック濃縮機を用いて濃縮された。脱塩のため、濃縮された溶液はC18逆相ZipTipカラム(Millipore)を通して処理され、0.1% トリフルオロ酢酸(TFA)と80% ACNを用いて溶出された。溶出されたペプチドは、ターゲット上に置かれ、ジヒドロキシ安息香酸(1μl)を用いて共結晶化される。MALDI−TOF解析(Applied Biosystems Voyager STR)は、リフレクターモードで700から4000ダルトンのペプチド範囲において実行された。得られたスペクトルは、NCBIのデータベースに一致し、ProFoundソフトウェア(Genomic Solution V. 2003)を用いて対応するタンパク質が同定された。
【0108】
結果
前記M. suis抗原の6つのデータが得られ、それを表1に示す(図2も参照)。
【0109】
【表1】
【0110】
免疫優性M. suis特異的抗原のクローニング
【0111】
実験的に感染させたブタを使用して、M. suisのゲノムライブラリーが構築された。ハイブリダイゼーションとショットガン配列決定法によるライブラリーのスクリーニングは、2つの免疫優性抗原(MSG1、40kDa; MSA1、70kDa)をコードする全長ヌクレオチド配列を明らかにした。クローンmsg1のヌクレオチド配列(SEQ ID NO: 1)は図4Aに示され、それは1397ヌクレオチドから2407ヌクレオチドまでのORFを含む。タンパク質MSG1の推定アミノ酸配列(SEQ ID NO: 2)は、図4Bに示される。クローンmsa1のヌクレオチド配列(SEQ ID NO: 3)は、図5Aに示され、それは1792ヌクレオチドから3261ヌクレオチドまでのORFを含む。タンパク質MSA1の推定アミノ酸配列(SEQ ID NO: 4)は、図5Bに示される。
【0112】
2つのタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、これらの遺伝子において発見されたコドン使用によってエペリスロゾーンスイスをマイコプラズマ属へ再分類することが正当であるとする理由を提供する(Benson et al.(2000) Nucleic Acids Res. 28:15−18、Wheeler et al.(2000) Nucleic Acids Res. 28:10−14参照)。
【0113】
免疫優性M. suis特異的抗原の組換え発現
【0114】
2つの免疫優性抗原MSG1およびMSA1は、大腸菌中に、合成遺伝子工学によりマイコプラズマのコドン使用を大腸菌のそれに変更した後、組み換えて発現された。
【0115】
組換え発現のために、合成遺伝子msg1およびmsa1のコード配列はpBADMycHisベクター(Invitrogen、Netherlands)の中に連結された。連結混合物を使用して、プラスミドDNAの単離のためにコンピテント大腸菌系統TOP10に、タンパク質発現のためにコンピテント大腸菌系統LMG194に形質転換された。形質転換体は、100μg/mlのアンピシリンを加えたLuria Bertani(LB)アガープレートから選択された。導入されたフラグメントの正しい位置およびヌクレオチド含有量は、配列決定により検査された。発現条件は、各プラスミドコンストラクトに最適化された。100μg/mlのアンピシリンを含む200mlのRM培地(Invitrogen)は、大腸菌LMG194形質転換体の単一のコロニーに由来する2mlの新鮮な一晩培養したものを植菌され、約108細胞/mlに相当する600nmにおいて0.6の吸光度(OD)となるまで37℃で培養された。0.2% アラビノースはMSG1およびMSA1の発現を誘導するために加えられ、培養物はさらに1−4時間インキュベートされた。バクテリアは遠心(5000xg、15分)により回収され、タンパク質精製が行われた。
【0116】
大腸菌形質転換体の細胞質タンパク質凝集体からのMSG1およびMSA1の精製は、Ni2+−NTAアガロース(Qiagen)を用いて行われた。バクテリアのペレットは、20mlのPBS中に再懸濁され、細胞は氷上でのウルトラソニケーション(35W、3x10秒)により溶解された。不溶物は遠心(28000xg、30分)により除去された。上清を1mlのNi2+−NTAアガロースと混合した。チューブは、Hisタグタンパク質が最大に結合できるように、穏やかに攪拌されながらインキュベートされた(120分、37℃)。遠心(3000xg、10分)後、タンパク質を積んでいるNi2+−NTAアガロースは、10mMのイミダゾールを含むPBSで2回洗浄され(3000xg、10分)、その後MSG1およびMSA1は、400mMのイミダゾールを含むPBS0.5mlで3回溶出された。精製されたタンパク質は−70℃にて保存された。
【0117】
組換えM. suis特異的抗原のSDS−PAGEおよびウェスタン免疫ブロッティング
【0118】
組換えタンパク質の免疫原性は、免疫したウサギおよびブタにより試験された。血清学的アッセイにおける組換えタンパク質の抗原としての有用性は、ELISAおよびウェスタンブロッティングにより確認できた。
【0119】
500ngの量の精製されたMSG1およびMSA1ならびにネガティブコントロール(大腸菌LMG194)から得たタンパク質は、5x試料バッファー[62.5mM トリス pH6.8、10%(v/v) グリセロール、5%(v/v) 2−メルカプトエタノール、2.0% ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.001%ブロモフェノルブルー]中で10分間煮沸された後、ラエムリバッファーシステム(Laemmli(1970) Nature 227: 680−685)を用いて、200Vの定常電圧にて、2.4%ポリアクリルアミドスタッキングゲルおよび10%ポリアクリルアミド分離ゲルに通して電気泳動された。ゲルは、Silver Stain Plus Kit(BioRad、Reinach、Switzerland)を用いて、硝酸銀で染色された。免疫ブロッティングのために、タンパク質は、25mM トリス、192mM グリシン、20%(v/v) メタノール中で、電気泳動的に0.45μ細孔サイズのニトロセルロース膜(Schleicher & Schuell、Riechen、Switzerland)にトランスファーされた。メンブレンは室温で60分間、3%ウシ血清アルブミン(BSA)(wt/vol)を含むトリス緩衝食塩水(TBS; 10mM トリス、150mM NaCl、pH7.5)中でブロッキングされた。メンブレンは37℃で2時間、ブタ免疫血清またはウサギ免疫血清(TBS 3% BSAに1:250で希釈)とインキュベートされた。免疫前の血清、および挿入のないpBADMycHisプラスミドを含んでいる大腸菌LMG194形質転換体に対して生じた抗血清が、コントロールとして使用された。メンブレンはTBSで10分間、2回洗浄された。西洋わさびペルオキシダーゼでラベルされたウサギ抗ブタまたはヤギ抗ウサギIgG(Sigma、TBS 3% BSAに1:1000で希釈)が、二次抗体として使用された。抗原抗体反応は、H2O2および4−クロロ−1−ナフトールを発色試薬(BioRad)として用いて視覚化された。酵素反応は、蒸留水中でブロットを洗浄することにより終了した。
【0120】
組換えM. suis特異的抗原を用いたELISA
【0121】
マイクロタイタープレート(Microlon、Greiner、Nurtingen、Germany)は、炭酸塩−炭酸水素塩バッファー(15.0mM Na2CO3、34.9mM NaHCO3、3.1mM NaN3、pH9.6)中にウェルあたり100μlの抗原(精製された組換えMSG1、MSA1、または大腸菌LMG194由来のコントロール抗原;f.c. 400ng/ml)を用いて、4℃にて一晩コートされた。0.05% Tween 20を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS; 136.9mM NaCl、1.46mM KH2PO4、8.1mM Na2HPO4・2H2O、2.7mM KCl、pH7.4)が、洗浄およびインキュベーション希釈液として使用された。コーティングの後、プレートは自動プレート洗浄機(Tecan、Maennedorf、Switzerland)を用いることにより3回洗浄された。ウェルは200μlのブロッキングバッファー[0.05% Tween 20、1%(wt/vol)プロテオースペプトンを含むPBS; Difco−Brunschwig、Basel、Switzerland]でブロッキングされた。残っている洗浄およびインキュベーション工程は、ウェルあたり100μlの量で行われ、ウェルはインキュベーション工程間で3回洗浄された。マイクロタイター振とう機上で15分一定の攪拌から始まるインキュベーションは、室温にて1時間行われた。プレートは、各試料の2倍の希釈範囲(1:200から1:102400;ウサギ、ブタ)でインキュベートされた。各ウェルはその後、所定の濃度の西洋わさびペルオキシダーゼに結合したヤギ抗ウサギIgGまたはウサギ抗ブタIgG(H+L鎖特異的、Sigma)を受け取った。抗原抗体反応は、使用する直前の2mM H2O2の添加により活性化された、0.1M クエン酸リン酸バッファーpH4.25中0.73mM 2,2’−アジノビス[3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸](ABTS)を用いて可視化された。色は20−30分間発色することができた。OD値は、コンピューターを利用したマイクロプレートリーダー(Tecan)によって405nmにおいて記録された。
【0122】
リアルタイムPCRによるM. suis感染症の発病の診断および研究
【0123】
msg1遺伝子(約40kDaのタンパク質MSG1をコードする)のヌクレオチド配列に基づいて、M. suis感染症の発病を診断および研究するためのリアルタイムPCRを確立することができた。
【0124】
PCR増幅のため、全ての血液試料(実験的に感染させたブタ、健康なコントロールブタ)は、次の通りに調製された:200μlの全抗凝固血は等量の溶解バッファー(10.0mM Tris−HCl、pH7.5、5.0mM MgCl2、0.32M スクロース、1%[v/v] Triton X−100)と混合され、遠心された(8000xg、22℃、60秒)。ペレットは、400μlの溶解バッファー中に再懸濁され、再び遠心された。この工程をもう一度繰り返した後、ペレットは400μlのPBS中に再懸濁された。DNAは、フェノール−クロロフォルム−イソアミルアルコールを使用した標準的なプロトコール(Sambrook and Russell(2001) Molecular cloning:a laboratory manual. 3rd edition、 New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor)に従って、またはMagNA Pure compact装置(Roche Applied Science)を用いて抽出された。MagNA Pure Compact核酸単離キットIは、製造業者の使用説明書に従って使用された。
【0125】
M. suisDNAは、Light Cyclerシステム(Roche Applied Science)を用いて検出され、定量された。プライマーおよびハイブリダイゼーションプローブは、msg1中に規定されるが、それは以下の通りであった:msg1f(センス)、5’−ACAACTAATGCACTAGCTCCTATC−3’(SEQ ID NO: 8)およびmsg1r(アンチセンス)、5’−GCTCCTGTAGTTGTAGGAATAATTGA−3’(SEQ ID NO: 9)。
【0126】
プローブは:LC Red 640−5’−CAAGACTCTCCTCACTCTGACCTAAGAAGAGC−リン酸−3’(SEQ ID NO: 10)および5’−TTCACGCTTTCACTTCTGACCAAAGAC−3’−フルオレッセイン(SEQ ID NO: 11)である。
【0127】
増幅産物の大きさは178塩基対だった。リアルタイムPCRはLightCycler Fast Start DNA MasterPLUSハイブリダイゼーションプローブ(Roche Applied Science)を用いて実行された。抽出されたDNA(5μl)は、4μlのMaster Mix(5x濃度)、2μlのPrimer−Probe Mix(10x濃度、終濃度が0.5μMの各プライマーと0.2μMの各プローブを含む)、および9μlの水(PCRグレード)を含む15μlのPCR混合物に添加された。PCR条件は次の通り:15分95℃にて1サイクルの最初の変性、続いて15秒95℃、20秒60℃、および10秒72℃の40サイクル。反応、データ収集、および解析は、すべてLightCycler装置を用いることによって行われた。
【0128】
要約すれば、前記実施例は次のこと:
−M. suis特異的抗原の検出
−M. suis感染症におけるIgG免疫反応の検出
−診断および予防接種に有益な手段である、3つの免疫優性M. suis特異的抗原の検出
−免疫優性M. suisタンパク質の構造および機能の検出
−免疫優性M. suisタンパク質をコードしている遺伝子の解明
−赤血球付着性マイコプラズマ種のメンバーに由来する免疫反応性タンパク質の組換え発現
−本発明に開示された抗原に基づくM. suis血清学のためのテスト抗原の組換え産生は、動物実験に置き換えることができ、テスト抗原の高い標準化および均一化が可能である
−M. suis特異的組換え血清学的診断アッセイの確立
−M. suis特異的リアルタイムPCRアッセイの確立
を示す。
【0129】
本発明の実施態様は、M. suis以外の赤血球付着性マイコプラズマ種、例えばウシでのM. wenyonii、ネコでのM. haemofelis、イヌでのM. haemocanisによる感染症の診断および予防接種を可能とする。全赤血球付着性マイコプラズマ特異的診断アッセイの確立は、ヒトにおけるかかるマイコプラズマ微生物の重要性についてさらなる見識を与える。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1A】10%ラエムリゲルの一次元ウェスタンブロットの写真を示す。
【図1B】10%ラエムリゲルの一次元ウェスタンブロットの写真を示す。
【図1C】10%ラエムリゲルの一次元ウェスタンブロットの写真を示す。
【図2A】三通りの二次元SDS−PAGE解析(分画電気泳動/ラエムリ)の写真を示す。
【図2B】三通りの二次元SDS−PAGE解析(分画電気泳動/ラエムリ)の写真を示す。
【図3A】二次元ウエスタンブロットの写真を示す。
【図3B】二次元ウエスタンブロットの写真を示す。
【図3C】二次元ウエスタンブロットの写真を示す。
【図3D】二次元ウエスタンブロットの写真を示す。
【図4A】遺伝子msg1の部分的なヌクレオチド配列およびそれに由来するタンパク質(MSG1)の推定アミノ酸配列を示す。
【図4B】遺伝子msg1の部分的なヌクレオチド配列およびそれに由来するタンパク質(MSG1)の推定アミノ酸配列を示す。
【図5A−1】遺伝子msa1の部分的なヌクレオチド配列およびそれに由来するタンパク質(MSA1)の推定アミノ酸配列を示す。
【図5A−2】遺伝子msa1の部分的なヌクレオチド配列およびそれに由来するタンパク質(MSA1)の推定アミノ酸配列を示す。
【図5B】遺伝子msa1の部分的なヌクレオチド配列およびそれに由来するタンパク質(MSA1)の推定アミノ酸配列を示す。
【背景技術】
【0001】
本発明は、マイコプラズマスイス(M. suis)および関連する赤血球付着性マイコプラズマ種の予防接種および検出のための抗原に関する。さらに、本発明はかかる抗原をコードするポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含むベクター、ポリヌクレオチドおよび/またはベクターを含む宿主細胞、ならびにM. suisや関連する病原体による感染症の治療方法および予防接種の方法に関する。
【0002】
M. suis(以前はエペリスロゾーンスイス)は、赤血球付着性バクテリアのグループに属する。M. suisは、ブタの赤血球に付着してその変形や損傷を引き起こすエピセルラーヘモパラサイトである。その結果として生じる病気は、伝統的にブタエペリスロゾーン症(PE)と呼ばれるが、世界中で報告され、低い罹患率と高い死亡率の熱性急性黄疸性貧血として現れる、家畜のブタの問題と考えられている。慢性の軽度のM. suis感染症は、無症状の感染から、(i)貧血、軽度の黄疸、および新生児における全般的に丈夫でないこと、(ii)家畜のブタにおける成長遅延、および(iii)雌ブタにおける低い繁殖成績を含む臨床症状の範囲まで様々である。さらに、M.suisは、宿主の免疫反応を抑制し、ブタの呼吸器および腸の病気の他の感染体にかかりやすくすると思われている。
【0003】
in vitroの培養系の欠如は、M. suisの生態を系統的に解析することや、例えばブタ集団におけるM. suisの有病率や重大性を正確に評価するための有益な診断方法を開発することの重大な障壁である。これまではM. suisの検査診断は、化学的に染色された末梢血の塗抹標本の顕微鏡試験によっており、赤血球に付着した微生物を直接視覚化する。急性疾患の発症に関連する、すぐに同定できるけれども短期間である菌血症が慢性感染において欠けているため、顕微鏡の欠点は特異性および感受性の両方の問題を含む。
【0004】
M. suisが引き起こすブタのエペリスロゾーン症を制御する有効な方法は、感染したキャリア動物を検出し除去することによって感染を根絶することである。これらの目的のために、血清学的アッセイが未だに最適な方法である。規定されたM. suis抗原に基づく特異的で感受性の高い血清学的アッセイは、広範囲な有病率の研究を可能とし、診断検査室における日常のこととして適用される。しかし、M. suisに対するブタの体液性免疫反応を解析する試みは、補体結合テスト(CFT)、間接赤血球凝集アッセイ(IHA)、および酵素結合免疫測定法(ELISA)を含む、現在の抗体アッセイの低い感受性および特異性により阻害されていた。今まで記載されている血清診断アッセイは、実験的に感染させたブタの末梢血から得た複雑で定義されていないM. suis抗原を採用するという本質的な欠点を有する。ブタの集団を慢性のM. suis感染について試験するための優れた標準と現在考えることができる唯一のアッセイは、脾臓を摘出することにより急性の病気を誘発し、顕微鏡を用いてブタの菌血症を確認することである(Heinritzi, 1984 Tierarztl. Prax. 12: 451−454)。
【0005】
しかしながら、ブタの脾臓摘出は日常の診断には適さない。最近、DNAハイブリダイゼーションやPCRアッセイなどのような分子的な方法が開発され、低レベルの菌血症を伴う慢性PEの顕微鏡による診断における低感受性に関連する問題は解決された。しかし、日常の検査室で使用されうる標準的な方法が存在しない。
【0006】
M. suisはテトラサイクリンを用いて薬学的に治療される。この治療法を行う場合、PEの発作中の臨床症状から感染したブタを治療することができるが、感染したブタからM. suisを排除することはできない。したがって、持続性で臨床的に不顕性の感染したブタは、集団内または集団間におけるM. suisの伝染のホットスポットであるキャリア動物のままである。
【0007】
M. suisをin vitroで培養できないため、予防接種は開発されていない。したがって、潜在的なワクチン候補は、臨床的に急性の病気のブタのブタ血液に由来し、それは、i)ワクチンが、副作用、すなわち同種抗原に対する免疫反応(同種免疫)につながると考えられるブタ血液の成分を含むこと、ii)M. suis分離株が完全に毒性が強く、これらの分離株を、例えば培養継代により弱毒化する可能性がないことという2つの主要な制限につながる。さらに、今まで、適したワクチンコンストラクト選択の基礎とすることができるM. suisの免疫原性の構造およびPEの免疫反応についての情報は入手できていない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明の根底にある技術的な課題は、信頼できる診断(血清学、分子)のための新しい化合物および方法、ならびにM. suisや関連するバクテリアによる予防接種および治療の提供である。
【0009】
上記の技術的な課題の解決法は、請求項に定義されたように、本発明の実施態様により提供される。
【0010】
本発明は特に、M. suisの抗原構造および遺伝子構造についての研究を可能とする、実験的に感染させたブタにおいて作られた大量のM. suisバクテリアの利用に基づく。この事実によって、詳細な一次元および二次元ウェスタンブロット解析を行うこと、およびM. suisのゲノムDNAライブラリーを構築することが可能となった。さらに、このブタモデルは、M. suisの使用における免疫反応の性質および動力学の解析を可能とした。
【0011】
よって、第一の形態にしたがって、本発明は赤血球付着性マイコプラズマ種、特にM. suisに対するワクチンに関するものであって、該ワクチンは、M. suisのタンパク質から選択されたタンパク質の少なくとも一の抗原決定基を含んでいる、少なくとも一のぺプチドまたはポリペプチドを含むものであって、該M. suisのタンパク質は、0.025M トリス/0.192M グリシン/0.1%SDS水溶液の連続的な12%ポリアクリルアミドゲル中で約33kDa、40kDa、45kDa、57kDa、61kDa、70kDa、73kDa、および83kDaの見かけの分子量を有し、M. suis陽性動物、特にM. suisに感染したブタ由来の血清に対して反応する。
【0012】
好ましい実施態様によれば、ワクチンは少なくとも一のタンパク質の抗原決定基を含んでいる少なくとも一のペプチドまたはポリペプチドを含み、そのタンパク質は上記の実験条件で判定するとき40kDaの見かけの分子量を有する。
【0013】
したがって、本発明による上記抗原は、標準的なSDS−PAGE(Laemmli (1970) Nature 227、 689参照)および(例えば、前述のように、脾臓の摘出および顕微鏡による菌血症の確認等のようなこれまでの通常のM. suisの検出方法によって)M. suisに感染したことがわかっている一以上のブタ由来の血清を用いたウエスタンブロッティングにより判定されたように、上記M. suis由来のタンパク質の少なくとも一のエピトープ(抗原決定基)を含む。
【0014】
上記のようなM. suisタンパク質の源は、M. suisおよびこの病原体に由来する物質が発見されうる任意の試料または検査サンプルとしてもよい。特に、M. suisの物質の源は好ましくは感染した個体、特にブタ由来の、臓器組織および体液(例えば、脾臓組織、血液およびその一部、例えば血清、脳脊髄液、滑液、リンパ液など)のような検査サンプルである。M. suis細胞は、Hoelzle et al. (2003) Vet Microbiol.93: 185−196に記載されているような源から精製されてもよい。
【0015】
さらに、精製は一以上の遠心分離の工程を含んでもよい。M. suisの試料は、ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に使用するまで保存されてもよい。電気泳動のために、M. suis細胞は、当業者に知られている溶解バッファーに都合よく溶解される。M. suis細胞の溶解後、溶解液は上記Laemmli(1979)により記載された方法に従って、SDS−PAGEにかけられる。分離されたタンパク質の見かけの分子量を決定するために、Mw スタンダード(例えば、Sigma Aldrich、Munich、Germanyから市販)は同じゲル上に流される。電気泳動後、ゲルはウェスタンブロッティングにかけられる。例えばセミドライブロッティング装置(例えば、Hoefer、Amersham Bioscienceから市販)において、SDSゲル中で分離されたタンパク質をメンブレン(例えばニトロセルロース、PVDF)上に固定する。上記M. suis由来の抗原タンパク質は、M. suisに感染した動物由来の血清とのインキュベーションと、その後、例えば西洋わさびペルオキシダーゼ、ビオチン、放射活性ヨウ素等の適したマーカーでラベルされたヤギ抗ブタIgGのような二次抗体の使用により同定される。その後、ブロットは通常、感染していない動物の体液由来のネガティブコントロールの抗原と比較される。さらに、上記のM. suis由来の抗原タンパク質の同定方法は、タンパク質をSDSゲルから得て、そのまま本発明のワクチン中の抗原として使用する、またはタンパク質はさらに精製され、および/または抗原決定基を含む適したペプチド断片に断片化されることができるように、調製用の、またはマイクロ調製用のスケールに適合させてもよい。
【0016】
本発明によると、“ペプチド”および“ポリペプチド”の語は同意語として使用される、つまり上記の語は、酸アミドの方法でのペプチド結合により互いに結合しているアミノ酸の任意の縮合産物を含む。かかるペプチドまたはポリペプチドのさらに必要な特徴は、それぞれの化学的実体が、M. suisまたは関連する種由来の“抗原決定基”を含むことのみである。
【0017】
ここで用いられる場合、“抗原決定基”は、免疫反応、特に、抗原決定基(エピトープ)に抗原結合領域を介して特異的に結合できる抗体が産生されるような免疫反応を誘導することができる抗原表面上の3次元構造を意味する。抗原決定基は、アミノ酸、糖、または脂質を含んでもよい。本発明のタンパク質上に存在する抗原決定基は、通常、少なくとも5、より好ましくは少なくとも7アミノ酸により形成される。抗原決定基は連続的な配列に存在するアミノ酸により形成されてもよく(連続的な、または配列決定因子)、またはポリペプチドのフォールディングによりエピトープに集まるアミノ酸によって形成されてもよい(非連続的な、またはコンフォメーションの決定因子)。
【0018】
抗原決定基はタンパク質またはタンパク質自体の断片上に存在してもよく、または適したハプテンと結合してもよい。
【0019】
本発明のワクチンの好ましいさらなる成分は、抗原決定基に対する免疫反応を向上させるアジュバントである。典型的なアジュバントは、不活性化したバクテリアと一緒にまたはなしで適用されるアルミニウム化合物、特に水酸化アルミニウムおよびミネラルオイルである。もっともよく知られたアジュバントは、通常ミネラルオイル、乳化剤(ラノリン)および不活性化したマイコバクテリアの懸濁液を含む完全なフロイントアジュバントである。不完全なフロイントアジュバントは、マイコバクテリアを含まない。適したワクチンアジュバントは、先行技術に開示されている;例えばHackett (2003) Vaccine Adjuvants, Humana Press: Topowa, New Jersey参照。
【0020】
さらに本発明は、赤血球付着性マイコプラズマに特異的な診断、検出、予防接種、および治療のために特に有用なタンパク質の抗原決定基の特異的な配列を提供する。
【0021】
したがって、本発明のさらなる一形態は、図4B(SEQ ID No:2)または5B(SEQ ID NO:4)に示されているアミノ酸配列の少なくとも一の抗原決定基(エピトープ)を含むアミノ酸配列をコードする配列を含むポリヌクレオチドである。
【0022】
好ましい実施態様によると、本発明は、図4B(SEQ ID No:2)または5B(SEQ ID NO:4)に示されている配列中に含まれる連続した抗原決定基をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドに関する。好ましくは、ポリヌクレオチドは、図4B(SEQ ID No:2)または5B(SEQ ID NO:4)に示されているアミノ酸配列の少なくとも5、好ましくは少なくとも7の連続したアミノ酸と、少なくとも80%、好ましくは90%、特には少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列をコードしている配列を含む。
【0023】
より好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、図4B(SEQ ID No:2)または5B(SEQ ID NO:4)に示されている配列と、少なくとも80%、好ましくは90%、特には少なくとも95%の相同性を有するタンパク質をコードする配列、または抗原断片、変異体、突然変異体、または前記配列の類似体を含む。
【0024】
“相同性”の語は、当該タンパク質配列がそれらのアミノ酸残基のあるパーセンテージを共通して有することである。したがって、50%の相同性とは、配列中の100のアミノ酸の位置の50が同じものであることを意味する。
【0025】
本発明に従うポリヌクレオチドは、DNA、RNA、または一以上の改変されたヌクレオチドを含むポリヌクレオチドでもよい。ポリヌクレオチドは一本鎖または二本鎖の形であってもよい。DNA、特に二本鎖DNAの形がとりわけ好ましい。本発明のポリヌクレオチドは、化学合成または酵素合成により生産されうる(Gassen et al., Chemical and Enzymatic Synthesis of Gene Fragments: A Laboratory Manual, Weinheim: Verl. Chemie 1982参照)。好ましくは、本発明のポリヌクレオチドコンストラクトは、組換え遺伝子技術により作られる(例えばSambrook et al., “Molecular Cloning”、 Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 1989参照)。
【0026】
本発明のポリヌクレオチドによりコードされたポリペプチドの“抗原フラグメント”は、完全なポリペプチドの一部または領域であり、特に動物またはヒト、とりわけ赤血球付着性マイコプラズマ種による感染を疑われる動物またはヒトにおいて免疫反応を誘導することができるフラグメントである。本発明のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの“変異体”は、そのほかの種、特に赤血球付着性マイコプラズマ種に由来する元のポリペプチドの機能的若しくは非機能的な等価物、または、選択的スプライシングまたは翻訳後プロセシングにより生じる元のポリペプチドの機能的若しくは非機能的な誘導体であるが、変異体は少なくとも抗原断片について上記のような抗原の機能は保持する。
【0027】
本発明のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの“突然変異体”は、一以上のアミノ酸残基の挿入、置換、付加、および/または欠失により自然に生じたタンパク質に由来する。アミノ酸置換は、保存されてもよく、保存されなくてもよい。保存されたアミノ酸置換は、置換されたアミノ酸残基の化学的な特徴(例えば大きさ、疎水性/親水性の性質、電荷、脂肪族/芳香族の性質等)が実質的に変化しない置換である。保存されたアミノ酸置換の例は、Val/Ala、Asn/Gln、Asp/Glu、およびSer/Thr置換である。
【0028】
本発明の特に好ましいポリヌクレオチドは、図4Aに示される配列(SEQ ID NO: 1)、最も好ましくはその1397から2407のヌクレオチド、または図5Aに示される配列(SEQ ID NO:3)、最も好ましくはその1792から3621のヌクレオチド、または前記配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、特に95%の相同性を有する配列、ならびに標準的なハイブリダイゼーション条件下で、前記配列およびその相補配列とハイブリダイズする配列である。
【0029】
核酸の種類によって、標準的なハイブリダイゼーション条件は、約0.1から5xSSC(1xSSC=0.15M 塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム、pH7.2)間の水性バッファー中、任意に約50%ホルムアミドの存在下で、約42から約58℃の間の温度により表される。例えば、5xSSCで42℃、50%ホルムアミド。DNA:DNAハイブリダイズのための好ましいハイブリダイゼーション条件は、約20から45℃の間の温度の0.1xSSCであり、より好ましくは約30から45℃の間の温度である。DNA:RNAハイブリダイズのための好ましいハイブリダイゼーション条件は、約30から55℃の間の温度の0.1xSSCであり、より好ましくは約45から55℃の間の温度である。上記のハイブリダイゼーション温度は、ホルムアミド非存在下、約100のヌクレオチド長で50%のG+C含有量を有する核酸のために計算された融点の例である。DNAハイブリダイゼーションのための実験条件は、先行技術(例えば、Sambrook et al., “Molecular Cloning”, Cold Spring Harbor Laboratory, 1989)に記載され、当業者は核酸の長さ、ハイブリットの型、およびG+C含有量によって個々の条件を計算することができる。核酸ハイブリダイゼーションについてのさらなる情報は、次の引用により提供される:Ausubel et al.,(eds)、1985、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York; Hames and Higgins(eds)、1985、 Nucleic Acids Hybridization: A Practical Approach、IRL Press at Oxford University Press, Oxford; Brown(ed)、1991、Essential Molecular Biology: A Practical Approach, IRL Press at Oxford University Press, Oxford。
【0030】
本発明のポリヌクレオチドは、図4A(SEQ ID NO: 1)および5A(SEQ ID NO: 3)に示された配列のフラグメント、変異体、突然変異体、ならびに類似体、特に図4A(SEQ ID NO: 1)に示された1397から2407のヌクレオチド、または図5A(SEQ ID NO: 3)に示された1792から3261のヌクレオチドの配列のフラグメント、変異体、突然変異体、ならびに類似体を含む。上記配列の“フラグメント”とは、元の配列の一部または領域である。“変異体”とは、元の配列と比較して異なる種において発見される配列であり、または元のヌクレオチド配列がコードするポリペプチドのスプライシングバリアント若しくは翻訳後にプロセシングされたバージョンをコードしてもよい。本発明によるポリヌクレオチドの特定の変異体は、例えばM. wenyonii、M. haemofelisおよびM. haemocanis等のようなM. suis以外の赤血球付着性マイコプラズマ種において発見される。
【0031】
ポリヌクレオチドの“突然変異体”は、一以上のヌクレオチドの挿入、置換、付加、逆位、および/または欠失により、親ポリヌクレオチドから得られる。図4A(SEQ ID NO: 1)および5A(SEQ ID NO: 3)に示される配列の特定の突然変異体は、赤血球付着性マイコプラズマ種において見られるコドン使用に比べて異なるコドン使用により得られる。特に好ましい変異体は、例えば対応するポリペプチドを生成するための大腸菌などのような、適した宿主細胞のコドン使用を利用するように設計される。特に、TGAは標準的なコドン使用において終止コドンであるにもかかかわらず、Trpをコードする;NCBIの分類学データベースの翻訳表4; Benson et al.(2000)Nucleic Acids Res. 28: 15−18; Wheeler et al.(2000) Nucleic Acids Res. 28: 10−14参照。
【0032】
ポリヌクレオチドの“類似体”は、ポリヌクレオチドの機能的な等価物をコードするが、一以上の天然に生じないヌクレオチドを含む。類似体の修飾は、天然のヌクレオチドと比較して核酸構成要素の塩基ならびに糖および/またはリン酸部分において起こりうる。ヌクレオチド類似体の具体例は、ホスホロアミデート、ホスホロチオエート、ペプチド核酸(すなわち、ポリヌクレオチドは少なくとも一部においてペプチド結合の主鎖により特徴付けられ、したがってPNAを表す)、メチルホスホネート、7−デアザグアノシン、5−メチルシトシンおよびイノシンである。
【0033】
本発明は、上記で規定された本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現を制御することができるヌクレオチド配列にも関する。かかる制御配列は、本発明のポリペプチドのコード配列を含む遺伝子に由来する。好ましいヌクレオチド配列は、図4A(SEQ ID NO: 1)に示される1から1396までのヌクレオチド、および/または2408から2607までのヌクレオチド、および/または5A(SEQ ID NO: 3)に示される1から1791までのヌクレオチド、および/または3622から4350までのヌクレオチド、または前記配列の機能的に活性のあるフラグメント、変異体、突然変異体、若しくは類似体である。
【0034】
図4B(SEQ ID NO: 2)に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、または前記アミノ酸配列に由来するポリペプチドの発現を制御するために好ましい配列は、図4A(SEQ ID NO: 1)に示される1から1396のヌクレオチド、および/または2408から2607のヌクレオチドに由来する。図5B(SEQ ID NO: 4)に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、または前記アミノ酸配列に由来するポリペプチドの発現を制御するために好ましい配列は、図5A(SEQ ID NO: 3)に示される1から1791のヌクレオチド、および/または3622から4350のヌクレオチドに由来する。
【0035】
本発明のさらなる実施態様は、上記ポリヌクレオチドに対するアンチセンス核酸である。
【0036】
アンチセンス核酸は、少なくとも一部はターゲット配列に相補的であるヌクレオチド配列を有する。本発明のアンチセンス核酸は、一本鎖または二本鎖の核酸であり、その核酸は少なくとも一部は図4A(SEQ ID NO: 1)に示される1397から2407までのヌクレオチド配列または図5A(SEQ ID NO: 3)に示される1792から3621までのヌクレオチド配列の少なくとも8、好ましくは少なくとも10の連続したヌクレオチドに相補的である。本発明に従う好ましいアンチセンス核酸は、図4A(SEQ ID NO: 1)に示される1397から2407の、または図5A(SEQ ID NO: 3)に示される1792から3621のヌクレオチドの全長または部分配列を有するポリヌクレオチドに結合できる分子である。
【0037】
本発明によると、“アンチセンス核酸”の語は、核酸塩基を結合するペプチド主鎖によって特徴付けられるペプチド核酸(PNA)も含む。本発明において使用するさらに好ましいアンチセンス核酸は、リボザイム、特にハンマーヘッドリボザイム、またはDNAエンザイム、特に10−23型のもの等のような触媒的な核酸の部分である。リボザイムは触媒として活性なRNAであり、DNAエンザイムは触媒として活性なDNAである。
【0038】
本発明との関連で有用なアンチセンス核酸は、通常、修飾されていないまたは修飾されたヌクレオチドを含む、またはそのようなヌクレオチドからなるDNAまたはRNA種である。特に、アンチセンスRNA分子の場合、リボヌクレアーゼによる分解に対する抵抗性を増大させるため、天然に生じるヌクレオチドの少なくとも一の類似体を組み込むことが好ましい。これは、細胞のRNA分解酵素は、天然に生じるヌクレオチドを好んで認識する、という事実によるものである。したがって、RNAに核酸類似体を組み込むことによって、RNAの分解をうまく減少させることができる。
【0039】
本発明に従うポリヌクレオチドの類似体についてすでに述べた通り、天然のヌクレオチドに比べて類似体の修飾は、核酸構成要素の塩基ならびに糖および/またはリン酸部分において起こりうる。ヌクレオチド類似体の具体例は、前記で言及される。
【0040】
好ましい実施態様によると、本発明のアンチセンス核酸は、本発明のポリヌクレオチドの発現を実質的に阻害することができ、例えば、赤血球付着性マイコプラズマ種、特にM. suisにおいて見られる通常のまたは天然に生じる発現レベルに比べて、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、またはより一層の差である。
【0041】
さらに本発明は、上記の、ポリヌクレオチドおよび/またはアンチセンス核酸を含むベクターに関連する。
【0042】
本発明に従うベクターは、直鎖状のまたは環状の核酸分子であり、好ましくは適した宿主においてポリヌクレオチドまたはアンチセンス核酸を導入、および増幅/複製することができるプラスミド、ウイルス、ファージ、若しくはコスミド、または他の人工的な核酸コンストラクトに由来するものである。本発明のベクターは好ましくは宿主において自律的に複製されることができる。したがって、ベクターは通常、少なくとも一の複製の起点(Ori)、一以上の他とは異なる制限酵素認識部位(MCS、多重クローニング部位)、うまく形質転換された宿主細胞を選択するため、例えば、カナマイシン、アンピシリン、ゲンタマイシン、クロラムフェニコール等の抗生物質耐性遺伝子等のような一以上のマーカー遺伝子、といった成分を含む。本発明の特に好ましいベクターは、好ましくは転写に適したプロモーター、オペレーター、および転写終結配列、ならびに対応するmRNAの翻訳を開始するためのリボソーム侵入部位の配列を含む発現ベクターである。
【0043】
したがって、好ましい実施態様によると、本発明のベクターは、ポリヌクレオチドおよび/またはアンチセンス配列に作用可能なように結合し、それゆえに前記ポリヌクレオチド/アンチセンス核酸の発現を制御することができる、少なくとも一のプロモーター配列を含む。本発明のコンストラクトにおいて適したプロモーターは、例えば、lacプロモーターやその誘導体等のような一般的なバクテリアのプロモーター、例えばIPTGの添加により誘導することができるtacである。他の好ましい誘導できるバクテリアのプロモーターは、AraC/pBADシステムである。さらに、本発明のベクターは、バクテリアのシステムにおいて発現させるためのファージプロモーターを含んでもよい。ファージプロモーターの好ましい例は、T7、ラムダPLおよびSP6プロモーターである。本発明のベクター中に存在しうるさらに好ましい要素は、転写の終了のための配列(転写終結配列)、ならびに、例えばエンハンサーおよび/またはリプレッサー配列等のような、ポリヌクレオチドおよび/またはアンチセンス核酸の発現を制御する配列である。本発明のベクターは、好ましくは本発明のポリペプチドをコードする遺伝子に由来する制御配列を含む。特に好ましい制御配列は前に記載される。
【0044】
本発明に従う特に好ましいベクターは、バクテリアの発現ベクターであって、ポリヌクレオチドは、コンストラクトの検出および/または精製を促進するためのマーカーまたはタグとして働くペプチド/ポリペプチドをコードする一以上の配列中にインフレームでクローン化されることができる。かかるタグまたはマーカーは、発現したポリペプチド上のN末端および/またはC末端に存在しうる。具体例は、ヒスチジンタグ、GST(グルタチオンSトランスフェラーゼ)、GFP、YFP等の蛍光マーカーを提供するタンパク質をコードする配列である。
【0045】
本発明のさらなる形態は、本発明のポリヌクレオチドおよび/またはアンチセンス核酸、および/またはベクターを含む宿主細胞である。通常、宿主細胞は、(かかる媒介物が使用される場合)ポリヌクレオチド/アンチセンス核酸の伝播/発現のために選択されたベクターにしたがって選択される。
【0046】
好ましい宿主細胞は、例えばバクテリア、特に大腸菌および赤血球付着性マイコプラズマ種、とりわけM. suis、M. wenyonii、M. haemofelis、およびM. haemocanisなどのような原核生物の宿主から選択される。他の有用な宿主細胞は、真核生物の宿主細胞、例えばS. cerevisiae、P. pastoris等の酵母細胞である。
【0047】
さらに本発明は、上記のように、ポリヌクレオチドによりコードされたポリペプチドに関する。したがって、本発明によるポリペプチドは、MSG1(図4Bに従うアミノ酸配列(SEQ ID NO: 2))またはMSA1(図5Bに従うアミノ酸配列(SEQ ID NO: 4))の少なくとも一の抗原決定基を含む。本発明に従うポリペプチドの好ましい実施態様は、図4B(SEQ ID NO: 2)若しくは図5Bに示されたアミノ酸配列(SEQ ID NO: 4)、または前記配列の抗原性のフラグメント、変異体、類似体、若しくは突然変異体を含むアミノ酸配列を含む。
【0048】
本発明は、上記のポリペプチドに対する抗体にも関連する。“抗体”の語は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、キメラ抗体、遺伝子工学により合成された、例えばヒト化抗体を含み、それらは結合したまたは溶解した形で存在しうる。さらに、本発明に従う“抗体”は、前述の種のフラグメントまたは誘導体としてもよい。かかる抗体または抗体フラグメントは、組換え型分子として、例えば他の(タンパク質性の)成分との融合タンパク質として存在してもよい。抗体フラグメントは、通常、酵素消化、タンパク質合成により、または当業者に知られている組換え技術により生産される。したがって、本発明において使用するための抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、ヒトの若しくはヒト化された若しくは組換え型の抗体、またはそれらのフラグメント、および一本鎖抗体、例えばscFv−コンストラクト、または合成抗体である。
【0049】
ポリクローナル抗体は、抗原で免疫された動物の血清から生産された抗体分子の不均一な混合物である。本発明は、抗体混合物の精製により(例えば、特異的なエピトープのペプチドを持つカラムを用いたクロマトグラフィーを通して)得られるポリクローナルの単一特異性抗体もある。モノクローナル抗体は、抗原の単一のエピトープに特異的な抗体の均一な集合を表す。モノクローナル抗体は、先行技術に記載された方法にしたがって調製することができる(例えば、Kohler and Milstein, Nature, 256, 495−397,(1975); 米国特許4376110号; Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring, Harbor Laboratory(1988); Ausubel et al.,(eds), 1998, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York)。言及した資料の開示は、引用により本発明に全て組み込まれる。
【0050】
本発明において使用するための遺伝子工学により合成された抗体は、上記の参考文献において記載されているような方法に従って生産されてもよい。つまり、抗体産生細胞は十分な吸光度まで培養され、全RNAは、グアニジウムチオシアネートを用いた細胞の溶解、酢酸ナトリウムを用いた酸性化、フェノール、クロロホルム/イソアミルアルコールを用いた抽出、イソプロパノールを用いた沈殿、およびエタノールを用いた洗浄により調製される。mRNAは通常、オリゴdTを結合した樹脂(例えばセファロース)を用いたクロマトグラフィーまたはバッチ吸収によって、全RNAから単離される。cDNAは、逆転写によりmRNAから調製される。このようにして得たcDNAを、適したベクター(動物、真菌、バクテリア、またはウイルスに由来するもの)にすぐに、または“部位特異的突然変異誘発”(一以上の塩基対の挿入、逆位、欠失、または置換を導く)による遺伝子操作後に挿入することができ、対応する宿主生物中で発現させることができる。適したベクターおよび宿主生物は、当業者によく知られている。pBR322、pUC18/19、pACYC184、ラムダ、または酵母ミューベクター等のようなバクテリアまたは酵母に由来するベクターは、好ましい例として挙げられてもよい。かかるベクターは、対応する遺伝子のクローニングおよび大腸菌等のバクテリア若しくはS. cerevisiae等の酵母中での発現のためにうまく使用される。
【0051】
本発明において使用するための抗体は、次の免疫グロブリンクラスのいずれかに属することができる:IgG、IgM、IgE、IgA、GILD、および前記クラスのサブクラス、例えばIgGクラスのサブクラスを適用できる。IgG1、IgG2、IgG2a、IgG2b、IgG3、またはIgGM等のようなIgGおよびそのサブクラスが好ましい。IgGサブタイプのIgG1/kまたはIgG2b/kは、特に好ましい。本発明において使用するためのモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローンは、in vitro、in situ、またはin vivoで培養することができる。高力価のモノクローナル抗体は、好ましくはin vivoまたはin situで産生される。
【0052】
キメラ抗体は、異なる起源の成分を含んでいる種である(例えば、マウスモノクローナル抗体に由来する可変領域およびブタ免疫グロブリンに由来する定常領域を含んでいる抗体)。キメラ抗体は、患者に投与する際に種の免疫原生を減少させるため、および産生収率を向上させるために採用される。例えば、ハイブリドーマ細胞系と比較して、マウスモノクローナル抗体は高い収率を与える。しかし、それは非マウス、例えばブタの患者において、より高い免疫原生を引き起こす。したがって、キメラの非マウス(特にブタ)/マウス抗体が、好ましくは使用される。マウスモノクローナル抗体の超可変相補性決定領域(CDR)が、非マウス、好ましくはブタの抗体のさらなる抗体領域と結合するモノクローナル抗体は、なおさら好ましい。キメラ抗体およびその製造方法は、先行技術に記載されている(Cabilly et al., Proc. Natl. Sci. USA 81: 3273−3277(1984); Morrison et al. Proc. Natl. Sci. USA 81: 6851−6855(1984); Boulianne et al. Nature 312 643−646(1984); Cabilly et al., EP−A−125023; Neuberger et al., Nature 314: 268−270(1985); Taniguchi et al., EP−A−171496; Morrion et al., EP−A−173494; Neuberger et al., WO 86/01553; Kudo et al., EP−A−184187; Sahagan et al., J. Immunol. 137: 1066−1074(1986); Robinson et al., WO 87/02671; Liu et al., Proc. Natl. Sci. USA 84: 3439−3443(1987); Sun et al., Proc. Natl. Sci. USA 84: 214218(1987); Better et al., Science 240: 1041−1043(1988)およびHarlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, 上記)。前述の資料の開示内容は、引用により本明細書中に組み込まれる。
【0053】
本発明によると、“抗体”の語は、完全な抗体分子およびMSG1またはMSA1に結合することができるそれらのフラグメント、またはそれらのフラグメント、誘導体、類似体および他の血球付着性マイコプラズマ種に由来する関連するタンパク質を含む。抗体フラグメントは、抗原への一または二の結合部位、すなわちMSG1またはMSA1または関連する分子の一以上のエピトープを有する任意の欠失したまたは誘導体化された抗体部分を含む。かかる抗体フラグメントの具体例は、Fv、Fab若しくはF(ab’)2フラグメントまたはscFv等のような一本鎖フラグメントである。Fv、Fab、F(ab’)2等のような二本鎖フラグメントが好ましい。FabおよびF(ab’)2フラグメントは、原型の抗体に含まれるFcフラグメントを持たない。有益な結果として、かかるフラグメントは、完全な抗体種に比較して、循環器系においてより速く運ばれ、より少ない非特異的な組織結合を示す。かかるフラグメントは、パパイン(Fabフラグメントを産生するため)もしくはペプシン(F(ab’)2フラグメントを産生するため)等のようなプロテアーゼを用いたタンパク質分解、または化学的酸化によって原型の抗体から産生されてもよい。
【0054】
好ましくは、抗体フラグメントまたは抗体コンストラクトは、対応する抗体遺伝子の遺伝子操作を経て産生される。組換え抗体コンストラクトは、通常、一本鎖Fv分子(scFvs、〜30kDaの大きさ)を含み、そこにおいてVHおよびVLドメインはポリペプチドリンカーを介して一緒に連結され、発現およびフォールディング効率が改善される。機能的な親和性(結合活性)を向上させるため、および大きさを増大させてそれにより血液クリアランス率を減少させるため、単量体のscFvフラグメントは、接着タンパク質ドメインまたはペプチドリンカーを用いて、二量体、三量体、またはより大きな凝集体を形成することができる。二価のscFv二量体のかかるコンストラクトの一例は、60kDaのダイアボディであり、各scFvのVH−とVLドメイン間の短い、例えば5残基のリンカーは、V−ドメインの配置が単一のFvモジュールとなるのを妨げ、その代わりに二つのscFv分子の会合を生じる。ダイアボディは、2つの機能的な抗原結合部位を有する。リンカーは3残基未満に減らすこともでき、これはダイアボディの形成を阻害し、代わりにscFv3分子が3つの機能的な抗原結合部位で三量体(三重特異性抗体90kDa)に会合するように導く。4つのscFvの四価の四重特異性抗体への会合も可能である。本発明における使用のためにさらに好ましい抗体コンストラクトは、scFv−CH3融合タンパク質の二量体である(80kDa;いわゆる“ミニボディ”)。
【0055】
本発明によると、ここに記載された一以上のアンチセンス核酸、ベクター(特にアンチセンス核酸を発現することができるもの)、および/または抗体は、通常、前記のような活性成分や、薬学的に許容される賦形剤、添加剤および/または担体(例えば可溶化剤も)を含む医薬組成物に含まれる。したがって、本発明は、前記のような活性成分、および少なくとも一の薬学的に許容される担体、賦形剤、および/または添加剤の組み合わせを開示する。本発明の医薬組成物を処方する対応する方法は、例えば本発明の開示の一部である“Remingston’s Pharmaceutical Sciences”(Mack Pub. Co., Easton, PA, 1980)において開示される。非経口投与のための担体の例は、例えば、滅菌水、無菌の塩化ナトリウム溶液、ポリアルキレングリコール、水素化ナフタレン、および特に生体適合性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー、またはポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーである。本発明に従うかかる組成物は、M. suisおよび関連する赤血球付着性マイコプラズマ種による感染症の治療のために想定される。さらに、本発明に従う組成物は、ラクトース、マンニトール等のような充てん剤若しくは物質、例えばポリエチレングリコール等のようなポリマーを本発明において開示されるようなポリペプチド、抗体、および誘導体、もしくはそれらのフラグメントに共有結合するための基質、金属イオンと複合体を形成するための基質、またはポリマー化合物の特別な製剤、例えばポリアセテート、ポリグリコール酸、ヒドロゲル、またはリポソーム、マイクロエマルジョン、ミセル、単層若しくは多層のベシクル、赤血球フラグメントまたはスフェロプラスト等の中に材料を封入するための基質を含んでもよい。組成物の具体例は、物理的な挙動、例えば溶解性、安定性、バイオアベイラビリティ、または分解性により選択される。組成物中の本発明の活性基質の制御放出または定常放出は、脂溶性デポーに基づく製剤も含む(例えば脂肪酸、ワックス、またはオイル)。本発明との関連で、かかる基質を含む本発明に従う基質または組成物のコーティング、つまりポリマーでのコーティングも開示される(例えばポリオキサマー、またはポリオキサミン)。さらに、本発明に従う基質または組成物は、プロテアーゼ阻害剤または浸透性増幅剤等の保護用のコーティングを含んでもよい。前記任意の含有物は、本発明のワクチン中に含まれてもよい。
【0056】
原則として、本発明との関連で、本発明に従う基質または組成物(ワクチン、薬剤)のための、先行技術において知られている全ての投与経路は、開示される。好ましくは、前記M. suisまたは関連する種による感染症の治療または予防それぞれのための薬剤またはワクチンの投与は、非経口の、つまり、例えば、皮下、筋肉内、もしくは静脈内、経口、または鼻腔内の投与経路を介して行われる。本発明のポリペプチドを含むワクチンは、通常、皮下に投与される。遺伝子ワクチンの場合、筋肉注射が好ましい投与経路である。通常、本発明に従う医薬組成物およびワクチンは、製剤の型によって固体、液体、またはエアロゾル(例えばスプレー)の形とする。
【0057】
M. suisおよび関連する赤血球付着性マイコプラズマ種(例えばM. wenyonii、M. haemofeilsおよびM. haemocanis)による感染症の治療およびそれに対する予防接種のスケジュールは、治療される個人、感染症の重症度、および分子の型次第である。本発明の通常の医薬/ワクチン組成物は、有効成分を1から1000μg含む。本発明のワクチンは、複数回患者に投与され(上記のような経路を介して)、免疫される。通常、本発明のワクチンは、例えば1:10から10:1まで、好ましくは1:2から2:1まで、とりわけ1:1の一以上のアジュバントとの混合物として、一次免疫において投与され、一次免疫は通常一週間以上隔てた一以上のさらなる投与により追加免疫することができる。適したスケジュールは、0、14、21、および/または28日目における投与である。
【0058】
本発明の医薬組成物は、感染した個体における病原体が少なくとも実質的に減少、好ましくは根絶するのに有効な期間にわたって、毎日一回以上投与されてもよい。
【0059】
したがって、本発明の上記実施態様、つまりポリヌクレオチド、アンチセンス核酸、ベクター、宿主細胞、ポリペプチド、および/または抗体は、M. suisによる感染症の治療および/または予防に有用である。
【0060】
本発明のさらなる実施態様は、上記のようにポリペプチドの製造に関連し、
(a)本発明の宿主細胞および適した培養液を、ポリペプチドを発現させることができる条件下で培養する工程;および
(b)培養液および/または宿主細胞からポリペプチドを回収する工程
を含む。
【0061】
好ましくは、工程(a)に従って培養される宿主細胞は、適した宿主を形質転換することによって、例えば大腸菌等のような適した細菌のエレクトロポレーション、または化学的なトランスフェクションによって、生産される。
【0062】
本発明に従うポリペプチドの製造方法の工程(b)は、通常、便利なタンパク質精製工程を含む。特に、宿主細胞は普通、遠心分離により回収され(または所望の発現産物を含んでいる培養液から除去され)、凍結/解凍サイクル、ソニケーション、および/または高圧力の適用により破壊されてもよい。細胞溶解液(ポリペプチドが細胞から回収される場合)は、ろ過され、および/または遠心分離されてもよい。ポリペプチドを含んでいる細胞溶解液または培養液は、トリス、リン酸バッファー等を主原料としうる適した精製バッファーに対して透析されてもよい。さらなる精製工程は、分画された塩化アンモニウム沈殿を含んでもよい。さらなる精製方法は、例えばデキストラン(例えばセファデックス)、アガロース(例えばセファロース)、ポリアクリルアミド(例えばセファクリル)、またはセルロースを主原料とした適した樹脂を用いた交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、および/またはアフィニティクロマトグラフィーによるクロマトグラフィー分画工程を含む。特に、興味あるポリペプチドが適したタグ、例えばヒスチジンタグをつけられた場合、通常の精製スキームは、アフィニティクロマトグラフィー、特にキレート基を介して適した樹脂に連結したNi2+またはZn2+イオンを用いた金属キレートクロマトグラフィーを含む。すべてのクロマトグラフィーの工程は、FPLCまたはHPLC装置に適応されうる。一般に、当業者は、使用される発現系の源によって、および、興味あるタンパク質の性質(特にアミノ酸配列)によって、容易に精製スキームを立ち上げて実行することができる(例えば、Scopes, Protein Purification−Principles and Methods, 3rd edition, Springer Verlag, Berlin, Germany, 1993; Deutscher(ed.), Guide to Protein Purification−Methods in Enzymology Edition, Vol. 182, Academic Press, San Diego, CA, USA, 1990参照)。
【0063】
本発明の実施態様に基づいて、かかる感染顆粒により引き起こされると考えられる病気の全ての病期における、ウシにおけるM. wenyonii、ネコにおけるM. hemofelis、イヌにおけるM. haemocanis、および特にブタにおけるM. suisなどのような赤血球付着性マイコプラズマ種による感染症の検出方法、特にELISA、免疫ブロット等の診断アッセイを確立することができる。特に、かかる検出方法は、キャリア動物を検出するのに有用である。例えば、血清は、血清有病率の研究および群れの診断のそれぞれを実行するために、臨床的に疑われる動物(血清同等者)から、またはブタの群れのような動物の群れの中の代表する数の動物から採取してもよい。血清は、例えば、溶液希釈の後、既知のポジティブおよびネガティブコントロール血清と比較して、本発明のポリペプチドに対する反応性が調査される。
【0064】
感染症が検出により示され、感染したキャリア動物から除去されうるので、本発明の診断アッセイは、有用なPEの制御手段を提供する。
【0065】
したがって、一般に、本発明は、前記の通り前記実施態様の検出手段、つまりポリヌクレオチド、アンチセンス核酸、ポリペプチドおよび/または抗体とともに用いられる、ポリヌクレオチドおよび/またはアンチセンス核酸および/またはポリペプチドおよび/または抗体を含む診断キットに関連する。
【0066】
上記分子の“検出手段”は、通常、直接または間接にポリヌクレオチド、アンチセンス核酸、ポリペプチド、および/または抗体を用いて取り付けられうる分子マーカーである。かかるマーカーまたはラベルは、例えば特徴的な光吸収、発光(特に蛍光)、放射活性等のような直接または間接に測定することができるシグナルを提供する多様な適した化合物または化学基から選択されうる。具体例は、放射活性マーカー、蛍光マーカー、色素、およびビオチン/ストレプトアビジン等のような特定の結合ペアの要素である。
【0067】
好ましくは、ポリヌクレオチド、アンチセンス核酸、ポリペプチド、および/または抗体は、メンブレン(例えば、核酸分子のためのニトロセルロース、またはペプチド若しくはポリペプチドのためのPVDF)、樹脂、マイクロビーズ、培養皿、マイクロタイタープレートのウェル、マイクロアレイ等のような固定担体に結合される。
【0068】
本発明の診断キットのさらなる実施態様は、図4A(SEQ ID NO: 1)に示される配列、好ましくは1397から2407までのヌクレオチド配列、または図5A(SEQ ID NO: 3)に示される配列、好ましくは1792から3621までのヌクレオチド配列、またはプライマーペアが関連する配列とうまくハイブリダイズできるように一定の相同性を有する関連する配列、特にM. suis以外の赤血球付着性マイコプラズマ種に由来する配列の部分、フラグメント、または領域を増幅するためのプライマーペアを含む。好ましい実施態様によると、本発明の診断キットは少なくとも一のオリゴヌクレオチドペアを含むものであって、一のオリゴヌクレオチド(アンチセンスオリゴヌクレオチド)は、図4A(SEQ ID NO: 1)に示される配列、好ましくは1397から2407までのヌクレオチド配列、または図5A(SEQ ID NO: 3)に示される配列、好ましくは1792から3621までのヌクレオチド配列に相補的な、少なくとも9、好ましくは12、より好ましくは15ヌクレオチドの配列を含み、他のオリゴヌクレオチド(センスオリゴヌクレオチド)はそれぞれ図4A(SEQ ID NO: 1)に示される配列、好ましくは1397から2407までのヌクレオチド配列、または図5A(SEQ ID NO: 3)に示される配列、好ましくは1792から3621までのヌクレオチド配列の少なくとも9、好ましくは12、より好ましくは15ヌクレオチドの配列を含むものであって、センスオリゴヌクレオチドの配列における最も3’側のヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの配列における最も3’側のヌクレオチドから上流に少なくとも20、好ましくは少なくとも50、より好ましくは少なくとも100ヌクレオチドである。
【0069】
本発明にしたがう診断キットの構成要素は、M. suisおよび関連する種の検出のため、特に、感染しやすい動物、例えばブタ、ウシ、ネコ、イヌ、ウマ、およびヒトにおける対応する感染症の検出においてうまく用いられうる。
【0070】
本発明の好ましい実施態様によると、M. suisおよび関連する種を検出する方法は、
(a)M. suis(または関連する種)を含んでいると思われる試料、またはそれらに由来する材料を得る工程;
(b)工程(a)の試料を、ここに開示された好ましい実施態様、すなわち上記のようなポリヌクレオチド、アンチセンス核酸、ポリペプチド、および/または抗体の少なくとも一と、前記ポリヌクレオチド、アンチセンス核酸、ポリペプチド、および/または抗体が試料/それらに由来する材料中に存在する成分と結合できる条件下で接触させる工程;
(c)非結合性ポリヌクレオチド、抗体、および/またはアンチセンス核酸を除去するために一回以上洗浄する工程;および
(d)工程(b)において結合した前記ポリヌクレオチド、アンチセンス核酸、および/または抗体の存在を検出する工程
を含む。
【0071】
上記のM. suisなどの赤血球付着性マイコプラズマ種の検出方法は、感染顆粒/特定の成分の検出のために使用される特定の分子次第で、異なる形式に適用することができる。
【0072】
したがって、本発明のポリヌクレオチドおよびアンチセンス核酸の使用は、通常、テストする試料中に存在する相補的な配列(少なくとも一部は相補的な配列)とのハイブリダイゼーションに依存する。したがって、本発明のポリヌクレオチドおよび/またはアンチセンス核酸が用いられる場合、本検出方法は通常、サザンブロットまたはノーザンブロットの形をとる。かかるブロッティング技術の詳しい実験装置は、当業者によく知られている;Sambrook et al., 上記参照。
【0073】
本発明に従うポリペプチドは、通常感染した個体中でM. suis または関連する種に対して作られる、試料中に存在する免疫グロブリン、特に抗体により認識される。言い換えると、本発明の抗体は、抗体が特異的である抗原決定基(エピトープ)を認識することにより試料中で成分に結合する。
【0074】
ここに開示されたように、本発明に従うポリペプチドまたは抗体がM. suis(または関連する種)に由来する成分の検出のために使用される場合、上記検出方法はウエスタンブロット実験の形をとるが、通常、酵素免疫アッセイ、特に酵素結合免疫測定法(ELISA)として設計される。実験装置および試薬(二次抗体、カップリングの化学反応等)は、当業者に知られている(例えば、Anal. Methods Instrument. 1, 134−144(1993)、Coligan et al.(1991) Eds., Current Protocols in Immunology, Wiley, New York、またはCrowther, The ELISA Guidebook: Methods in molecular biology 49, Humana Press, Totowa NY, USA(2000))。もちろん、上記に該当する他の検出方法を想定することもできる。酵素免疫アッセイ以外の具体例は、ラジオイムノアッセイ型のアッセイである。適した技術は、例えばLefkovitz(Ed.), Immunology Methods Manual, Vol. 1−4, San Diego, Academic Press 1997、およびChard, An Introduction to Radioimmunoassay and Related Techniques, Amsterdam, Elsevier 1995に開示される。
【0075】
検出方法のために使用される試料は、M. suisまたは関連する種を含む可能性がある検査サンプルまたは試料であってもよい。好ましい試料は、問題の病原体の少なくとも一による感染が疑われる個体(動物、ヒト)に由来する。試料は、M. suisまたは関連する種による感染が疑われる個体に由来する任意の組織(例えば脾臓)または体液でもよい。好ましい体液は、血液および血液産物、特に血清、リンパ液、脳脊髄液、滑液などである。
【0076】
赤血球付着性マイコプラズマ種、好ましくはM. suisの検出方法または対応する診断方法のさらに好ましい実施態様は、ここに開示したように、少なくとも一の対応するプライマーペアを用いた、配列をコードする赤血球付着性マイコプラズマ特異的抗原の増幅に依存する。
【0077】
したがって、本発明は対応する検出方法または診断方法に関連するものであって、該方法は
(a)M. suis(または関連する種)を含んでいると思われる試料、またはそれらに由来する材料を得る工程(詳細例はすでに前述);
(b)図4A(SEQ ID No:1)若しくは5A(SEQ ID NO:3)に開示された配列、または関連する配列に特異的な、少なくとも一のプライマーペアを提供する工程;
(c)テンプレートとして工程(a)における試料を使用し、工程(b)に従うプライマーペアを使用して、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)を行う工程;および
(d)工程(c)において生産された増幅産物を解析する工程
を含む。
【0078】
好ましくは、上記方法のプライマーペアは、上記診断キットの記載に従って規定される。すなわち、図4A(SEQ ID NO: 1)に開示される配列の少なくとも一部、好ましくはその1397から2407までのヌクレオチド配列、または図5A(SEQ ID NO: 3)に開示される配列の一部、好ましくは1792から3621までのヌクレオチド配列、または関連する配列のPCR増幅のためのプライマーとして働くことができるオリゴヌクレオチドペアである。もちろん、ここに開示されたような配列または関連する配列に基づいて、逆転写PCR(RT−PCR)法を確立することも可能である。当業者に知られているように、RT−PCR法は、配列特異的プライマーを一つだけ使用してもよく、一方で他のプライマーは、ランダムヘキサプライマーやオリゴdTプライマー等のような非特異的なプライマーから選択されてもよい。対応するPCRおよびRT−PCRキット、ならびに他の製品は、Stratagene(La Jolla, CA, USA)、BD Bioscience(Franklin Lakes, NJ USA)、Amersham Bioscience(Uppsala, Sweden)等のようなさまざまな製造業者から市販される。PCR法は、当業者に知られており、特有の実験装置は、McPherson et al.(Eds.), PCR2, A Practical Approach, Oxfor, IRL Press 1995; Rolfs et al. Methods in DNA Amplification, New York、Plenum Press 1994; Crit. Rev. Biochem. Mol. Bio. 26, 301−334(1991)等のような、さまざまな実践的および理論的な参考文献から導き出すことができる。
【0079】
M. suisおよび関連する種の検出、またはかかる細菌による感染症の診断のための増幅方法の特に好ましい実施態様は、PCRの方法論により提供され、その方法論は増幅が完了した後(終点決定)、または増幅サイクル中に同時に(リアルタイムPCR)、作り出されたPCR産物を定量化することができるものである。リアルタイムPCR増幅のプロトコルは、検査試料中に存在する元のテンプレートの量を定量化することができる。リアルタイムPCR法の概論および特有の実験装置は、例えばhttp://dorakmt.tripot.com/genetics/realtime.htmlおよびこのURLで引用される参考文献; Fenollar and Raoult, 2004 APMIS 112: 785−807に、概説される。したがって、本発明に基づいて、リアルタイムPCRアッセイを利用することができ、そのアッセイはM. suisまたは他の赤血球付着性マイコプラズマ種による感染症が疑われる個体に由来する血液、および器官の検査サンプル中のM. suisまたは関連する種の定量的な検出に適している。ここに開示される赤血球付着性マイコプラズマ種に特異的な特有のコード配列に由来するプライマーターゲットを使用して、本発明のPCRアッセイは、リボソームのターゲット配列に基づくアッセイに比較して、優れた特異性を提供するという利点がある。さらに、PCR,特にリアルタイムPCR技術の標準化および自動化の容易性、ならびにかかる分析装置における混入の効果的な防止は、ありふれた検査室において相対的な条件下での本発明のアッセイの使用を可能とする。したがって、異なる国の異なる検査室において得られた結果の有益な比較を利用することができる。
【0080】
本発明に従うベクターおよびポリペプチドは、M. suisまたは関連する種による感染症に対する予防接種に特に有用である。したがって、本発明は、本発明のベクターおよび/または本発明のポリペプチドを含むワクチンにも関連する。
【0081】
本発明に従う少なくとも一のポリペプチドを含むワクチンは、したがって、図4B(SEQ ID NO: 2)および/または図5B(SEQ ID NO:4)において開示される配列により規定されるタンパク質の少なくとも一の抗原決定基を含む。本発明に従うワクチンは、図4B(SEQ ID NO: 2)および/または図5B(SEQ ID NO:4)に示されるアミノ酸配列に由来する複数の配列フラグメントを含むポリタンパク質を含んでもよい。好ましくは、本発明に従うワクチンは、一以上のアジュバントおよび/または他の免疫刺激剤を含む。適したワクチン、特にフロイントの不完全なまたは完全なアジュバントは、前述されている。
【0082】
本発明に従うワクチンのさらなる実施態様は、遺伝子ワクチンによって代表される。本発明に従う遺伝子ワクチンは、例えばRNAまたはDNAに基づくベクターにより代表される、本発明に従うポリペプチドの発現によく適合する、前記のようなベクターを含む。したがって、本発明の遺伝子ワクチンは、好ましくは図4B(SEQ ID NO: 2)および5B(SEQ ID NO:4)に示される配列の一方または両方に含まれる一以上の抗原決定基の発現に適したベクターを含む。もちろん、本発明に従う遺伝子ワクチン中に含まれるベクターは、ここに開示された配列に含まれる複数のエピトープをコードするポリジーンを含んでもよい。適した遺伝子ワクチンは、例えばIvory et al.(2004) Genetic Vaccines and Therapy, 2, 17に概説されるよく知られた原理に従って設計してもよい。したがって、本発明の遺伝子ワクチンの使用によるT細胞の誘導は、感染した個体、特にブタ、ウシ、ネコ、およびイヌ等のような動物から、病原体(M. suisまたは関連する種)を除去するための戦略を提供する。
【0083】
本発明のさらなる実施態様は、したがって、M. suisまたは関連する種による感染症の予防方法に関連し、その方法は、本発明のワクチンの有効量を、上記のように、対応する病原体による感染症が疑われる動物に投与することを含む。
【0084】
前述したように、本発明の実施態様は、M. suisおよび関連する病原体による感染症の治療に有用である。したがって、本発明に従う医薬組成物は、本発明に従う治療効果のある量のアンチセンス核酸、および/またはベクター、および/または抗体を、少なくとも一の薬学的に受け入れられる担体、賦形剤、および/または添加剤と一緒に含む。
【0085】
したがって、本発明の医薬組成物中のアンチセンス核酸は、ここに記載されたポリペプチドの発現を阻害し、それゆえに病原体を除去、または少なくとも制御する。さらに、ここに記載したようなアンチセンス核酸を発現することができるベクターは、一般に同じ方法で機能する。本発明に従う抗体は、抗体の投与後、病原体が顕著に減少または除去までされるように、M. suisおよび関連する種に由来する免疫優性のポリペプチドに結合することができる。
【0086】
図1は、10%ラエムリゲルの一次元ウェスタンブロットの写真を示し、これは、感染したブタの全血から得たM. suis抽出物中に存在する、8つのM. suis特異的抗原の検出を説明する。パネル(A)は、M. suis陽性ブタから得た血清とインキュベートされたブロットを示す。M. suis陽性血清と特異的に反応しているバンドは、それぞれ分子量により表示される。免疫優性タンパク質(p40,p45およびp70)は、アスタリスクでマークされている。M. suis陰性血清および抗ブタIg複合体によっても検出された非特異的なバンドは、長方形でマークされている(パネル(B)および(C)参照、それぞれ:p26、p56、およびp77)。パネル(B)は、M. suis陰性血清とインキュベートされた後の対応する対照ブロットを示し、パネル(C)は、抗ブタIg複合体とインキュベートされた後の対照ブロットを示す。各ブロットにおけるレーンは左から右に:左のレーン:分子量マーカー;中央のレーン:感染したブタの全血から得たM. suis抽出物;右のレーン:感染していないブタ由来の全血抽出物である。
【0087】
図2は、(A)感染したブタの全血から得たM. suis抽出物の、(B)健康な対照動物から得た全血の、三通りの二次元SDS−PAGE解析(分画電気泳動/ラエムリ)の写真を示す。
【0088】
図3は、感染したブタの血清中の免疫優性M. suisポリペプチドの同定を明示する、二次元ウエスタンブロットの写真を示す。パネル(A)は、実験的に感染させたブタの全血から得られたM. suis抽出物の、クマジー染色した2次元PVDFブロットを示す。パネル(B)は、M. suisに感染したブタ由来の血清とインキュベートした後の、同じ2次元ブロットを示す。パネル(C)は、健康な対照動物から得た血清とインキュベートされた対照ブロットを示す。パネル(D)は、二次(抗ブタ)抗体のみとインキュベートされた対照ブロットを示す。M. suis陽性血清と反応する点は、文字でマークされている。点a、e、f、g、およびkは、(C)も同様にM. suis陰性血清によって認識されたので、M. suis特異的ではなかった。一見M. suis陽性血清によって認識されているが、正しく指定することができなかった点を、(B)において疑問符で示す。
【0089】
図4(A)は、遺伝子msg1の部分的なヌクレオチド配列を示す。このゲノムフラグメントは、M. suisの免疫優性タンパク質(分子量、約40kDa)をコードする1397から2407ヌクレオチドまでの翻訳領域(ORF)を含む。開始コドンおよび終止コドンは、太字でマークされている。(B)は、(A)に由来するタンパク質(MSG1)の推定アミノ酸配列を示す。
【0090】
図5(A)は、M. suisのさらなる免疫優性タンパク質(分子量、約70kDa)をコードする1792から3627ヌクレオチドまでのORFを含む、遺伝子msa1の部分的なヌクレオチド配列を示す。開始コドンおよび終止コドンは、太字でマークされている。(B)は、(A)に由来するタンパク質(MSA1)の推定アミノ酸配列を示す。
【0091】
本発明は、以下の限定しない実施例によってさらに説明される。
【実施例】
【0092】
M. suis特異的な抗原の同定
【0093】
マイコプラズマスイス抗原の調製
M. suis感染性の全血は、実験的に感染させた血液ドナー動物から、臨床的に急性のPEの菌血症が最大の時に得た。200mlの末梢全血は、200mlのアルセバー溶液中に1:1の比で採取された。M. suis細胞は、すでに記載されている通りに精製された(Hoelzle et al.(2003) Vet. Microbiol. 93: 185−196)。M. suis細胞を宿主細胞成分からさらに精製するために、結果として生じたM. suisペレットは、無菌のPBS中に再懸濁され、20%ジアトロゾートメグルミンナトリウムおよびジアトロゾートナトリウム(Urografin 76%、Schering、Berlin、Germany)を通した25000x gで1時間4℃の遠心によって、宿主細胞成分からさらに精製された(Allemann et al.(2001) J. Clin. Microbiol. 37: 1474−1479)。最終ペレットは1.0mlのPBS中に再懸濁され、使用するまで−80℃で保存された(M. suis、(Ms)抗原)。ネガティブコントロール抗原は、前記のようにM. suisがないことが確認された3頭の感染していない動物の抗凝固血液から、同様の方法で調製された。
【0094】
一次元SDS−PAGEおよびウェスタンブロット解析
ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)は、標準的な手順に従って行われた(Laemmli(1970) Nature 227: 680−685)。つまり、分子量マーカーおよびネガティブコントロール抗原は、62.5mM トリス(pH6.8)、2.0%(wt/vol) ドデシル硫酸ナトリウム、25.0% グリセロール、5.0%(vol/vol) β−メルカプトエタノール、および0.00125% ブロモフェノルブルーを含んでいる試料バッファー中で10分間煮沸された。抗原は10.0% ポリアクリルアミドゲル(BioRad, Reinach, Switzerland, Miniprotean III;アクリルアミド/ビスアクリルアミドの比、37.5:1)上で、トラックあたり8.0μgのタンパク質ローディング濃度で分離された。電気泳動は、200vの定常電圧下で、色素の最前部がゲルの下部に到達するまで(〜40分)行われた。分離されたタンパク質は、ニトロセルロースのメンブレン(細孔の大きさ45μm; BA85、 Schleicher & Schuell, Riechen, Switzerland)に、セミドライ電気泳動トランスファーセル(Trans Blot, BioRad)、トランスファーバッファー(25.0mM トリス、0.2M グリシン、20.0%(vol/vol) メタノール)、および30分間の10Vの定常電圧を用いて転写された。メンブレンはトリス緩衝食塩水(TBS、0.01Mトリス、0.15M食塩、pH8.5)3.0%(wt/vol)脱脂粉乳液で、1時間ブロッキングされた。その後、メンブレンは37℃にて2時間、ブロッキング溶液中に1:100で希釈された実験用子豚由来の血清存在下でインキュベートされた。スロットブロット装置(マルチスクリーン装置、BioRad)を適用して、8頭の実験的に感染させたブタの連続した血清試料が解析された。
【0095】
メンブレンを、TBSで10分間、2回洗浄した。西洋わさびペルオキシダーゼでラベルされたヤギ抗ブタIgG(H+L鎖特異的、Sigma)、ヤギ抗ブタIgG(γ鎖特異的、KPL−Bioreba、Reinach、Switzerland)、およびヤギ抗ブタIgM(μ鎖特異的、KPL)を、それぞれ二次抗体として用いた。全ての二次抗体は1:2000でブロッキング溶液に希釈された。ブロットは、H2O2および4−クロロ−1−ナフトールを発色試薬(BioRad)として用いて、発色させた。酵素反応は、蒸留水中でブロットを洗浄することにより止められた。タンパク質のバンドは、コンピューターを利用したバイオイメージシステム(BioProfil 3.1、LTF、Wasserburg、Germany)を用いて、分子量マーカーレーン(着色分子量サイズスタンダード、6.5から175kDaまで、Bioconcept、Allscwil、Switzerland)を参照することにより大きさが決められた。
【0096】
結果
実験的に感染させた動物由来の血清を用いた1次元ウエスタンブロッティングは、3つの主要な結果を明らかとした:
i)M. suis特異的抗原に対するIgG免疫反応は、感染中に見られる、
ii)少なくとも8のつのM. suis特異的抗原(ラエムリにしたがった10%SDS−PAGEによって決定されるように、33kDa、40kDa、45kDa、57kDa、61kDa、70kDa、73kDa、および83kDa)がある(図1A)、および
iii)免疫グロブリン(IgGおよびIgM)は、ブタの血液由来のM. suisと同時精製される(図1B、1C)。
【0097】
M. suis抗原調製物の構成成分として同時精製された免疫グロブリンの存在は、同時精製されたタンパク質が、一次抗体により検出されたタンパク質と二次抗体により検出されたタンパク質を区別することができないELISA等のような間接的な血清学アッセイを困難なものとするので、M.suisに特異的な血清学の検査が今のところ利用できないということを明らかにした。
【0098】
免疫グロブリンを除去することによるM. suis抗原のさらなる精製は、免疫ブロットやELISAによる免疫反応動力学の詳しい研究を可能とした。
【0099】
3つのM. suis特異的なタンパク質は、免疫優性である(40kDa、45kDa、70kDa;図1A参照)。全てのM. suisに感染した動物は、3つの免疫優性タンパク質の少なくとも1つと、遅くとも感染の2週間目の間および実験の終了まで(18週間)、血清反応性を示した。したがって、これらの3つのM. suis抗原は、特に血清診断および予防接種に有用である。
【0100】
先行研究に反して、M. suis特異的な体液性免疫反応が波状の経過を示さず、バクテリアに対する古典的な免疫反応の速度論、つまり抗体の最初の存在は感染の約8−10日後、最初の臨床症状より前に、およびM. suis特異的な抗体の何ヶ月もの持続に基本的に従うということが明らかになった。
【0101】
2次元ウェスタンブロッティング/MALDI−TOF−MSによるM. suis特異的な抗原の部分的な特徴づけ
【0102】
免疫反応性M. suisタンパク質の性質および遺伝学をさらに同定するために、患者の血清プールを用いて、2次元免疫ブロッティングを行った(免疫プロテオミクス)。免疫反応性タンパク質の点は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI−TOF−MS)を用いたペプチドマスフィンガープリント(PMF)によってさらに解析された。
【0103】
2次元ゲル電気泳動およびウェスタンブロッティング
抗原試料(750μ M. suis抗原およびネガティブコントロール抗原それぞれ)は、スピンカラム(Vivaspin、10kDa VS0101)を4000xg10℃で用いて、最終体積200μlに濃縮された。その後、試料は500μlの溶解バッファー(7M 尿素、2M チオ尿素、4% CHAPS、2% DTT、1%[v/v] ファルマライト pH3−10)で希釈された。20℃で30分間振とうした後、試料は16000xg20℃で5分間遠心された。透明な上清の一定分量のタンパク質含有量は、ブラッドフォード法(x−テスト、BioRad)により決定され、試料は解析まで一定分量で−80℃にて保存された。二次元ゲルには、全タンパク質の300μgがロードされた。最初の次元(等電点電気泳動)において、タンパク質は、pH3から10にわたるpH勾配を持った18cmのIPG(固定されたpH勾配)条片中に分離された(Amersham Bioscience, Munich, Germany)。各試料の5つのゲルは、同一の実行条件で行われた(30kVh/IPG条片)。定常状態に着目した後、Gorg et al(2000) Electrophoresis 21: 1037−53に従って、条片はSDSでロードされ、DTTおよびロダセタミド中で平衡化された。二番目の次元において、ラエムリバッファー系が使用された(Laemmli(1970) Nature 227, 689)。タンパク質は、Hoefer ISO − Saltチャンバー(Amersham Bioscience)中で10個のゲルで平行して垂直に流される標準的な連続した12%SDSゲルで、分離された。一般に、1800Vhから2000Vhの間が適用される。ブロモフェノールブルーの最前部がゲルから消えたとき、SDS PAGEを停止した。
【0104】
電気泳動後、ゲルはガラス板から取り外され、製造業者のプロトコールに従ってColloidal Coomassie(Roth、Heidelberg、Germany)で染色された。ウエスタンブロッティングのために、セミドライブロッティング装置(Hoefer、AmershamBioscience)は、染色されていない二次元ゲルをPVDFメンブレンで挟んで使用された。トランスファーバッファーは50mM トリス、50mM ホウ酸、および10%メタノール(vol/vol)を含み;1.5mA/cm2が3時間適用された。
【0105】
クマジー染色した2次元ゲルは、ペプチドマスフィンガープリントによるタンパク質の同定のために使用され、クマジー染色されたPVDFブロットは免疫学的染色のために使用された。さらに、クマジー染色されたマイクロ調製ゲルは、少量の点の同定のために、ゲルあたり500μgのタンパク質がロードされて行われた。
【0106】
ネガティブコントロール抗原と比較するM. suis抗原の2次元電気泳動の解析は、Proteom Weaverソフトウェアを用いて行われた(Definiens、ProteomWeaver Version 2.1.1)。
【0107】
タンパク質の同定
タンパク質の点は、ペプチドマスフィンガープリンティング(PMF)−MALDI−TOF解析により同定された。点はクマジー染色された調製されたゲルから切り出され、10mM NH4HCO3、30% アセトニトリル(ACN)を用いた3回の洗浄により脱色された。5μlのトリプシンバッファー(10mM NH4HCO3に溶解された25ng/μl トリプシン(Roche)、pH8)中、37℃で一晩分解された後、試料は25℃で20分間、ソニケーションバス中に置かれた。上清が取り除かれ、スピードバック濃縮機を用いて濃縮された。脱塩のため、濃縮された溶液はC18逆相ZipTipカラム(Millipore)を通して処理され、0.1% トリフルオロ酢酸(TFA)と80% ACNを用いて溶出された。溶出されたペプチドは、ターゲット上に置かれ、ジヒドロキシ安息香酸(1μl)を用いて共結晶化される。MALDI−TOF解析(Applied Biosystems Voyager STR)は、リフレクターモードで700から4000ダルトンのペプチド範囲において実行された。得られたスペクトルは、NCBIのデータベースに一致し、ProFoundソフトウェア(Genomic Solution V. 2003)を用いて対応するタンパク質が同定された。
【0108】
結果
前記M. suis抗原の6つのデータが得られ、それを表1に示す(図2も参照)。
【0109】
【表1】
【0110】
免疫優性M. suis特異的抗原のクローニング
【0111】
実験的に感染させたブタを使用して、M. suisのゲノムライブラリーが構築された。ハイブリダイゼーションとショットガン配列決定法によるライブラリーのスクリーニングは、2つの免疫優性抗原(MSG1、40kDa; MSA1、70kDa)をコードする全長ヌクレオチド配列を明らかにした。クローンmsg1のヌクレオチド配列(SEQ ID NO: 1)は図4Aに示され、それは1397ヌクレオチドから2407ヌクレオチドまでのORFを含む。タンパク質MSG1の推定アミノ酸配列(SEQ ID NO: 2)は、図4Bに示される。クローンmsa1のヌクレオチド配列(SEQ ID NO: 3)は、図5Aに示され、それは1792ヌクレオチドから3261ヌクレオチドまでのORFを含む。タンパク質MSA1の推定アミノ酸配列(SEQ ID NO: 4)は、図5Bに示される。
【0112】
2つのタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、これらの遺伝子において発見されたコドン使用によってエペリスロゾーンスイスをマイコプラズマ属へ再分類することが正当であるとする理由を提供する(Benson et al.(2000) Nucleic Acids Res. 28:15−18、Wheeler et al.(2000) Nucleic Acids Res. 28:10−14参照)。
【0113】
免疫優性M. suis特異的抗原の組換え発現
【0114】
2つの免疫優性抗原MSG1およびMSA1は、大腸菌中に、合成遺伝子工学によりマイコプラズマのコドン使用を大腸菌のそれに変更した後、組み換えて発現された。
【0115】
組換え発現のために、合成遺伝子msg1およびmsa1のコード配列はpBADMycHisベクター(Invitrogen、Netherlands)の中に連結された。連結混合物を使用して、プラスミドDNAの単離のためにコンピテント大腸菌系統TOP10に、タンパク質発現のためにコンピテント大腸菌系統LMG194に形質転換された。形質転換体は、100μg/mlのアンピシリンを加えたLuria Bertani(LB)アガープレートから選択された。導入されたフラグメントの正しい位置およびヌクレオチド含有量は、配列決定により検査された。発現条件は、各プラスミドコンストラクトに最適化された。100μg/mlのアンピシリンを含む200mlのRM培地(Invitrogen)は、大腸菌LMG194形質転換体の単一のコロニーに由来する2mlの新鮮な一晩培養したものを植菌され、約108細胞/mlに相当する600nmにおいて0.6の吸光度(OD)となるまで37℃で培養された。0.2% アラビノースはMSG1およびMSA1の発現を誘導するために加えられ、培養物はさらに1−4時間インキュベートされた。バクテリアは遠心(5000xg、15分)により回収され、タンパク質精製が行われた。
【0116】
大腸菌形質転換体の細胞質タンパク質凝集体からのMSG1およびMSA1の精製は、Ni2+−NTAアガロース(Qiagen)を用いて行われた。バクテリアのペレットは、20mlのPBS中に再懸濁され、細胞は氷上でのウルトラソニケーション(35W、3x10秒)により溶解された。不溶物は遠心(28000xg、30分)により除去された。上清を1mlのNi2+−NTAアガロースと混合した。チューブは、Hisタグタンパク質が最大に結合できるように、穏やかに攪拌されながらインキュベートされた(120分、37℃)。遠心(3000xg、10分)後、タンパク質を積んでいるNi2+−NTAアガロースは、10mMのイミダゾールを含むPBSで2回洗浄され(3000xg、10分)、その後MSG1およびMSA1は、400mMのイミダゾールを含むPBS0.5mlで3回溶出された。精製されたタンパク質は−70℃にて保存された。
【0117】
組換えM. suis特異的抗原のSDS−PAGEおよびウェスタン免疫ブロッティング
【0118】
組換えタンパク質の免疫原性は、免疫したウサギおよびブタにより試験された。血清学的アッセイにおける組換えタンパク質の抗原としての有用性は、ELISAおよびウェスタンブロッティングにより確認できた。
【0119】
500ngの量の精製されたMSG1およびMSA1ならびにネガティブコントロール(大腸菌LMG194)から得たタンパク質は、5x試料バッファー[62.5mM トリス pH6.8、10%(v/v) グリセロール、5%(v/v) 2−メルカプトエタノール、2.0% ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.001%ブロモフェノルブルー]中で10分間煮沸された後、ラエムリバッファーシステム(Laemmli(1970) Nature 227: 680−685)を用いて、200Vの定常電圧にて、2.4%ポリアクリルアミドスタッキングゲルおよび10%ポリアクリルアミド分離ゲルに通して電気泳動された。ゲルは、Silver Stain Plus Kit(BioRad、Reinach、Switzerland)を用いて、硝酸銀で染色された。免疫ブロッティングのために、タンパク質は、25mM トリス、192mM グリシン、20%(v/v) メタノール中で、電気泳動的に0.45μ細孔サイズのニトロセルロース膜(Schleicher & Schuell、Riechen、Switzerland)にトランスファーされた。メンブレンは室温で60分間、3%ウシ血清アルブミン(BSA)(wt/vol)を含むトリス緩衝食塩水(TBS; 10mM トリス、150mM NaCl、pH7.5)中でブロッキングされた。メンブレンは37℃で2時間、ブタ免疫血清またはウサギ免疫血清(TBS 3% BSAに1:250で希釈)とインキュベートされた。免疫前の血清、および挿入のないpBADMycHisプラスミドを含んでいる大腸菌LMG194形質転換体に対して生じた抗血清が、コントロールとして使用された。メンブレンはTBSで10分間、2回洗浄された。西洋わさびペルオキシダーゼでラベルされたウサギ抗ブタまたはヤギ抗ウサギIgG(Sigma、TBS 3% BSAに1:1000で希釈)が、二次抗体として使用された。抗原抗体反応は、H2O2および4−クロロ−1−ナフトールを発色試薬(BioRad)として用いて視覚化された。酵素反応は、蒸留水中でブロットを洗浄することにより終了した。
【0120】
組換えM. suis特異的抗原を用いたELISA
【0121】
マイクロタイタープレート(Microlon、Greiner、Nurtingen、Germany)は、炭酸塩−炭酸水素塩バッファー(15.0mM Na2CO3、34.9mM NaHCO3、3.1mM NaN3、pH9.6)中にウェルあたり100μlの抗原(精製された組換えMSG1、MSA1、または大腸菌LMG194由来のコントロール抗原;f.c. 400ng/ml)を用いて、4℃にて一晩コートされた。0.05% Tween 20を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS; 136.9mM NaCl、1.46mM KH2PO4、8.1mM Na2HPO4・2H2O、2.7mM KCl、pH7.4)が、洗浄およびインキュベーション希釈液として使用された。コーティングの後、プレートは自動プレート洗浄機(Tecan、Maennedorf、Switzerland)を用いることにより3回洗浄された。ウェルは200μlのブロッキングバッファー[0.05% Tween 20、1%(wt/vol)プロテオースペプトンを含むPBS; Difco−Brunschwig、Basel、Switzerland]でブロッキングされた。残っている洗浄およびインキュベーション工程は、ウェルあたり100μlの量で行われ、ウェルはインキュベーション工程間で3回洗浄された。マイクロタイター振とう機上で15分一定の攪拌から始まるインキュベーションは、室温にて1時間行われた。プレートは、各試料の2倍の希釈範囲(1:200から1:102400;ウサギ、ブタ)でインキュベートされた。各ウェルはその後、所定の濃度の西洋わさびペルオキシダーゼに結合したヤギ抗ウサギIgGまたはウサギ抗ブタIgG(H+L鎖特異的、Sigma)を受け取った。抗原抗体反応は、使用する直前の2mM H2O2の添加により活性化された、0.1M クエン酸リン酸バッファーpH4.25中0.73mM 2,2’−アジノビス[3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸](ABTS)を用いて可視化された。色は20−30分間発色することができた。OD値は、コンピューターを利用したマイクロプレートリーダー(Tecan)によって405nmにおいて記録された。
【0122】
リアルタイムPCRによるM. suis感染症の発病の診断および研究
【0123】
msg1遺伝子(約40kDaのタンパク質MSG1をコードする)のヌクレオチド配列に基づいて、M. suis感染症の発病を診断および研究するためのリアルタイムPCRを確立することができた。
【0124】
PCR増幅のため、全ての血液試料(実験的に感染させたブタ、健康なコントロールブタ)は、次の通りに調製された:200μlの全抗凝固血は等量の溶解バッファー(10.0mM Tris−HCl、pH7.5、5.0mM MgCl2、0.32M スクロース、1%[v/v] Triton X−100)と混合され、遠心された(8000xg、22℃、60秒)。ペレットは、400μlの溶解バッファー中に再懸濁され、再び遠心された。この工程をもう一度繰り返した後、ペレットは400μlのPBS中に再懸濁された。DNAは、フェノール−クロロフォルム−イソアミルアルコールを使用した標準的なプロトコール(Sambrook and Russell(2001) Molecular cloning:a laboratory manual. 3rd edition、 New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor)に従って、またはMagNA Pure compact装置(Roche Applied Science)を用いて抽出された。MagNA Pure Compact核酸単離キットIは、製造業者の使用説明書に従って使用された。
【0125】
M. suisDNAは、Light Cyclerシステム(Roche Applied Science)を用いて検出され、定量された。プライマーおよびハイブリダイゼーションプローブは、msg1中に規定されるが、それは以下の通りであった:msg1f(センス)、5’−ACAACTAATGCACTAGCTCCTATC−3’(SEQ ID NO: 8)およびmsg1r(アンチセンス)、5’−GCTCCTGTAGTTGTAGGAATAATTGA−3’(SEQ ID NO: 9)。
【0126】
プローブは:LC Red 640−5’−CAAGACTCTCCTCACTCTGACCTAAGAAGAGC−リン酸−3’(SEQ ID NO: 10)および5’−TTCACGCTTTCACTTCTGACCAAAGAC−3’−フルオレッセイン(SEQ ID NO: 11)である。
【0127】
増幅産物の大きさは178塩基対だった。リアルタイムPCRはLightCycler Fast Start DNA MasterPLUSハイブリダイゼーションプローブ(Roche Applied Science)を用いて実行された。抽出されたDNA(5μl)は、4μlのMaster Mix(5x濃度)、2μlのPrimer−Probe Mix(10x濃度、終濃度が0.5μMの各プライマーと0.2μMの各プローブを含む)、および9μlの水(PCRグレード)を含む15μlのPCR混合物に添加された。PCR条件は次の通り:15分95℃にて1サイクルの最初の変性、続いて15秒95℃、20秒60℃、および10秒72℃の40サイクル。反応、データ収集、および解析は、すべてLightCycler装置を用いることによって行われた。
【0128】
要約すれば、前記実施例は次のこと:
−M. suis特異的抗原の検出
−M. suis感染症におけるIgG免疫反応の検出
−診断および予防接種に有益な手段である、3つの免疫優性M. suis特異的抗原の検出
−免疫優性M. suisタンパク質の構造および機能の検出
−免疫優性M. suisタンパク質をコードしている遺伝子の解明
−赤血球付着性マイコプラズマ種のメンバーに由来する免疫反応性タンパク質の組換え発現
−本発明に開示された抗原に基づくM. suis血清学のためのテスト抗原の組換え産生は、動物実験に置き換えることができ、テスト抗原の高い標準化および均一化が可能である
−M. suis特異的組換え血清学的診断アッセイの確立
−M. suis特異的リアルタイムPCRアッセイの確立
を示す。
【0129】
本発明の実施態様は、M. suis以外の赤血球付着性マイコプラズマ種、例えばウシでのM. wenyonii、ネコでのM. haemofelis、イヌでのM. haemocanisによる感染症の診断および予防接種を可能とする。全赤血球付着性マイコプラズマ特異的診断アッセイの確立は、ヒトにおけるかかるマイコプラズマ微生物の重要性についてさらなる見識を与える。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1A】10%ラエムリゲルの一次元ウェスタンブロットの写真を示す。
【図1B】10%ラエムリゲルの一次元ウェスタンブロットの写真を示す。
【図1C】10%ラエムリゲルの一次元ウェスタンブロットの写真を示す。
【図2A】三通りの二次元SDS−PAGE解析(分画電気泳動/ラエムリ)の写真を示す。
【図2B】三通りの二次元SDS−PAGE解析(分画電気泳動/ラエムリ)の写真を示す。
【図3A】二次元ウエスタンブロットの写真を示す。
【図3B】二次元ウエスタンブロットの写真を示す。
【図3C】二次元ウエスタンブロットの写真を示す。
【図3D】二次元ウエスタンブロットの写真を示す。
【図4A】遺伝子msg1の部分的なヌクレオチド配列およびそれに由来するタンパク質(MSG1)の推定アミノ酸配列を示す。
【図4B】遺伝子msg1の部分的なヌクレオチド配列およびそれに由来するタンパク質(MSG1)の推定アミノ酸配列を示す。
【図5A−1】遺伝子msa1の部分的なヌクレオチド配列およびそれに由来するタンパク質(MSA1)の推定アミノ酸配列を示す。
【図5A−2】遺伝子msa1の部分的なヌクレオチド配列およびそれに由来するタンパク質(MSA1)の推定アミノ酸配列を示す。
【図5B】遺伝子msa1の部分的なヌクレオチド配列およびそれに由来するタンパク質(MSA1)の推定アミノ酸配列を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤血球付着性マイコプラズマ種、好ましくはマイコプラズマスイスによる感染症に対するワクチンであって、0.025M トリス/0.192M グリシン/0.1% SDS水溶液の連続的な12%ポリアクリルアミドゲル中で約33kDa、40kDa、45kDa、57kDa、61kDa、70kDa、73kDa、および83kDaの見かけの分子量を有し、M. suis陽性動物由来の血清に対して反応するM. suisタンパク質から選択されるタンパク質の少なくとも一の抗原決定基を含むペプチドまたはポリペプチドを含む該ワクチン。
【請求項2】
前記タンパク質が約40kDaの見かけの分子量を有する、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
図4B(SEQ ID No:2)または5B(SEQ ID NO:4)に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドの少なくとも一の抗原決定基をコードする配列を有するポリヌクレオチド。
【請求項4】
図4B(SEQ ID No:2)または5B(SEQ ID NO:4)に示された配列の少なくとも5の連続したアミノ酸と、少なくとも80%、好ましくは90%、特には少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列をコードしている配列を含む、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
図4B(SEQ ID No:2)または5B(SEQ ID NO:4)に示された配列の少なくとも7の連続したアミノ酸と、少なくとも80%、好ましくは90%、特には少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列をコードしている配列を含む、請求項4に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
図4B(SEQ ID No:2)若しくは5B(SEQ ID NO:4)に示されたアミノ酸配列を有するタンパク質、またはそれらの抗原性フラグメント、誘導体、若しくは変異体をコードする配列を含む、請求項3ないし5のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
図4A(SEQ ID No:1)または5A(SEQ ID NO:3)に示された配列を含む、請求項6に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
図4A(SEQ ID No:1)に示された1397から2407のヌクレオチド配列、または5A(SEQ ID NO:3)に示された1792から3261のヌクレオチド配列を含む、請求項7に記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
請求項3ないし8のいずれかに記載のポリヌクレオチドに対するアンチセンス核酸。
【請求項10】
請求項3ないし8のいずれかに記載のポリヌクレオチド、および/または請求項9に記載のアンチセンス核酸を含むベクター。
【請求項11】
請求項3ないし8のいずれかに記載のポリヌクレオチド、および/または請求項9に記載のアンチセンス核酸、および/または請求項10に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項12】
請求項3ないし8のいずれかに記載のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド。
【請求項13】
図4B(SEQ ID No:2)または5B(SEQ ID NO:4)に示されたアミノ酸配列を含む、請求項12に記載のポリペプチド。
【請求項14】
請求項12または13に記載のポリペプチドに対する抗体。
【請求項15】
(a)ポリペプチドの発現が可能な条件下、適した培養液中で、請求項11に記載の宿主細胞を培養する工程;および
(b)培養液および/または宿主細胞からポリペプチドを回収する工程
を含む、請求項12または13に記載のポリペプチドを生産する方法。
【請求項16】
M. suisによる感染症の治療および/または予防に使用するための、請求項3ないし8のいずれかに記載のポリヌクレオチド、および/または請求項9に記載のアンチセンス核酸、および/または請求項10に記載のベクター、および/または請求項11に記載の宿主細胞、および/または請求項12または13に記載のポリペプチド、および/または請求項14に記載の抗体。
【請求項17】
請求項3ないし8のいずれかに記載のポリヌクレオチド、および/または請求項9に記載のアンチセンス核酸、および/または請求項12または13に記載のポリペプチド、および/または請求項14に記載の抗体と、前記ポリヌクレオチド、アンチセンス核酸、ポリペプチド、および/または抗体を検出するための手段を一緒に含む診断キット。
【請求項18】
前記ポリヌクレオチド、アンチセンス核酸、ポリペプチドおよび/または抗体が固体の担体に結合されている、請求項17に記載の診断キット。
【請求項19】
図4A(SEQ ID No:1)または5A(SEQ ID NO:3)に示された配列の少なくとも一部をポリメラーゼ連鎖反応により増幅するためのプライマーとしてはたらくことができる、少なくとも一のオリゴヌクレオチドペアを含む、診断キット。
【請求項20】
前記少なくとも一のオリゴヌクレオチドペアが、図4A(SEQ ID No:1)に示された1397から2407のヌクレオチド配列、または5A(SEQ ID NO:3)に示された1792から3261のヌクレオチド配列の少なくとも一部を増幅するためのプライマーとして働くことができる、請求項19に記載の診断キット。
【請求項21】
治療的に有効な量の請求項9に記載のアンチセンス核酸、および/または請求項10に記載のベクター、および/または請求項14に記載の抗体と、少なくとも一の薬学的に許容される担体、賦形剤、および/または添加剤を一緒に含む、医薬組成物。
【請求項22】
請求項10に記載のベクター、および/または請求項12または13に記載のポリペプチドを含むワクチン。
【請求項23】
赤血球付着性マイコプラズマ種、好ましくはM. suisの検出方法であって、
(a)赤血球付着性マイコプラズマ種、好ましくはM. suis、またはそれらに由来の物質を含むと思われる試料を得る工程;
(b)工程(a)において得た試料を、請求項3ないし8のいずれかに記載のポリヌクレオチド、および/または請求項9に記載のアンチセンス核酸、および/または請求項12または13に記載のポリペプチド、および/または請求項14に記載の抗体と、前記ポリヌクレオチド、アンチセンス核酸、ポリペプチド、および/または抗体が試料中の成分に結合することができる条件下で、接触させる工程;
(c)一回以上の洗浄を行う工程;および
(d)工程(b)において結合した前記ポリヌクレオチド、アンチセンス核酸、ポリペプチド、および/または抗体の存在を検出する工程
を含む、該検出方法。
【請求項24】
赤血球付着性マイコプラズマ種、好ましくはM. suisの検出方法であって、
(a)赤血球付着性マイコプラズマ種、好ましくはM. suis、またはそれらに由来する物質を含むと思われる試料を得る工程;
(b)ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)により図4A(SEQ ID No:1)または5A(SEQ ID NO:3)に示された配列の少なくとも一部を増幅するためのプライマーとしてはたらくことができる、少なくとも一のオリゴヌクレオチドペアを提供する工程;
(c)工程(a)において得た試料をテンプレートとして、そして工程(b)において提供された少なくとも一のオリゴヌクレオチドペアをプライマーとして使用して、PCRを行う工程;および
(d)工程(c)において生産された増幅産物を解析する工程
を含む、該検出方法。
【請求項25】
少なくとも一のオリゴヌクレオチドペアが、図4A(SEQ ID No:1)に示された1397から2407のヌクレオチド配列、または図5A(SEQ ID NO:3)に示された1792から3621のヌクレオチド配列の少なくとも一部を増幅するためのプライマーとしてはたらくことができる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
工程(d)において、工程(c)において生産された産物が、増幅中に定量化される、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
請求項21に記載の医薬組成物を、赤血球付着性マイコプラズマ種、好ましくはM. suisにより感染した動物に投与する工程を含む、赤血球付着性マイコプラズマ種、好ましくはM. suisによる感染症の治療方法。
【請求項28】
請求項1若しくは2に記載のワクチン、および/または請求項22に記載のワクチンの有効量を、赤血球付着性マイコプラズマ種、好ましくはM. suisによる感染が疑われる動物に投与する工程を含む、赤血球付着性マイコプラズマ種、好ましくはM. suisによる感染症の予防方法。
【請求項29】
赤血球付着性マイコプラズマ種、好ましくはM. suisによる感染症の治療用医薬組成物を調製するための請求項9に記載のアンチセンス核酸、および/または請求項10に記載のベクター、および/または請求項14に記載の抗体の使用。
【請求項30】
赤血球付着性マイコプラズマ種、好ましくはM. suisによる感染症の予防用ワクチンを調製するための請求項10に記載のベクター、および/または請求項12または13に記載のポリペプチドの使用。
【請求項31】
赤血球付着性マイコプラズマ種、好ましくはM. suisによる感染症を検出するための請求項3ないし8のいずれかに記載のポリヌクレオチド、および/または請求項9に記載のアンチセンス核酸、および/または請求項12または13に記載のポリペプチド、および/または請求項14に記載の抗体の使用。
【請求項1】
赤血球付着性マイコプラズマ種、好ましくはマイコプラズマスイスによる感染症に対するワクチンであって、0.025M トリス/0.192M グリシン/0.1% SDS水溶液の連続的な12%ポリアクリルアミドゲル中で約33kDa、40kDa、45kDa、57kDa、61kDa、70kDa、73kDa、および83kDaの見かけの分子量を有し、M. suis陽性動物由来の血清に対して反応するM. suisタンパク質から選択されるタンパク質の少なくとも一の抗原決定基を含むペプチドまたはポリペプチドを含む該ワクチン。
【請求項2】
前記タンパク質が約40kDaの見かけの分子量を有する、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
図4B(SEQ ID No:2)または5B(SEQ ID NO:4)に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドの少なくとも一の抗原決定基をコードする配列を有するポリヌクレオチド。
【請求項4】
図4B(SEQ ID No:2)または5B(SEQ ID NO:4)に示された配列の少なくとも5の連続したアミノ酸と、少なくとも80%、好ましくは90%、特には少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列をコードしている配列を含む、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
図4B(SEQ ID No:2)または5B(SEQ ID NO:4)に示された配列の少なくとも7の連続したアミノ酸と、少なくとも80%、好ましくは90%、特には少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列をコードしている配列を含む、請求項4に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
図4B(SEQ ID No:2)若しくは5B(SEQ ID NO:4)に示されたアミノ酸配列を有するタンパク質、またはそれらの抗原性フラグメント、誘導体、若しくは変異体をコードする配列を含む、請求項3ないし5のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
図4A(SEQ ID No:1)または5A(SEQ ID NO:3)に示された配列を含む、請求項6に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
図4A(SEQ ID No:1)に示された1397から2407のヌクレオチド配列、または5A(SEQ ID NO:3)に示された1792から3261のヌクレオチド配列を含む、請求項7に記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
請求項3ないし8のいずれかに記載のポリヌクレオチドに対するアンチセンス核酸。
【請求項10】
請求項3ないし8のいずれかに記載のポリヌクレオチド、および/または請求項9に記載のアンチセンス核酸を含むベクター。
【請求項11】
請求項3ないし8のいずれかに記載のポリヌクレオチド、および/または請求項9に記載のアンチセンス核酸、および/または請求項10に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項12】
請求項3ないし8のいずれかに記載のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド。
【請求項13】
図4B(SEQ ID No:2)または5B(SEQ ID NO:4)に示されたアミノ酸配列を含む、請求項12に記載のポリペプチド。
【請求項14】
請求項12または13に記載のポリペプチドに対する抗体。
【請求項15】
(a)ポリペプチドの発現が可能な条件下、適した培養液中で、請求項11に記載の宿主細胞を培養する工程;および
(b)培養液および/または宿主細胞からポリペプチドを回収する工程
を含む、請求項12または13に記載のポリペプチドを生産する方法。
【請求項16】
M. suisによる感染症の治療および/または予防に使用するための、請求項3ないし8のいずれかに記載のポリヌクレオチド、および/または請求項9に記載のアンチセンス核酸、および/または請求項10に記載のベクター、および/または請求項11に記載の宿主細胞、および/または請求項12または13に記載のポリペプチド、および/または請求項14に記載の抗体。
【請求項17】
請求項3ないし8のいずれかに記載のポリヌクレオチド、および/または請求項9に記載のアンチセンス核酸、および/または請求項12または13に記載のポリペプチド、および/または請求項14に記載の抗体と、前記ポリヌクレオチド、アンチセンス核酸、ポリペプチド、および/または抗体を検出するための手段を一緒に含む診断キット。
【請求項18】
前記ポリヌクレオチド、アンチセンス核酸、ポリペプチドおよび/または抗体が固体の担体に結合されている、請求項17に記載の診断キット。
【請求項19】
図4A(SEQ ID No:1)または5A(SEQ ID NO:3)に示された配列の少なくとも一部をポリメラーゼ連鎖反応により増幅するためのプライマーとしてはたらくことができる、少なくとも一のオリゴヌクレオチドペアを含む、診断キット。
【請求項20】
前記少なくとも一のオリゴヌクレオチドペアが、図4A(SEQ ID No:1)に示された1397から2407のヌクレオチド配列、または5A(SEQ ID NO:3)に示された1792から3261のヌクレオチド配列の少なくとも一部を増幅するためのプライマーとして働くことができる、請求項19に記載の診断キット。
【請求項21】
治療的に有効な量の請求項9に記載のアンチセンス核酸、および/または請求項10に記載のベクター、および/または請求項14に記載の抗体と、少なくとも一の薬学的に許容される担体、賦形剤、および/または添加剤を一緒に含む、医薬組成物。
【請求項22】
請求項10に記載のベクター、および/または請求項12または13に記載のポリペプチドを含むワクチン。
【請求項23】
赤血球付着性マイコプラズマ種、好ましくはM. suisの検出方法であって、
(a)赤血球付着性マイコプラズマ種、好ましくはM. suis、またはそれらに由来の物質を含むと思われる試料を得る工程;
(b)工程(a)において得た試料を、請求項3ないし8のいずれかに記載のポリヌクレオチド、および/または請求項9に記載のアンチセンス核酸、および/または請求項12または13に記載のポリペプチド、および/または請求項14に記載の抗体と、前記ポリヌクレオチド、アンチセンス核酸、ポリペプチド、および/または抗体が試料中の成分に結合することができる条件下で、接触させる工程;
(c)一回以上の洗浄を行う工程;および
(d)工程(b)において結合した前記ポリヌクレオチド、アンチセンス核酸、ポリペプチド、および/または抗体の存在を検出する工程
を含む、該検出方法。
【請求項24】
赤血球付着性マイコプラズマ種、好ましくはM. suisの検出方法であって、
(a)赤血球付着性マイコプラズマ種、好ましくはM. suis、またはそれらに由来する物質を含むと思われる試料を得る工程;
(b)ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)により図4A(SEQ ID No:1)または5A(SEQ ID NO:3)に示された配列の少なくとも一部を増幅するためのプライマーとしてはたらくことができる、少なくとも一のオリゴヌクレオチドペアを提供する工程;
(c)工程(a)において得た試料をテンプレートとして、そして工程(b)において提供された少なくとも一のオリゴヌクレオチドペアをプライマーとして使用して、PCRを行う工程;および
(d)工程(c)において生産された増幅産物を解析する工程
を含む、該検出方法。
【請求項25】
少なくとも一のオリゴヌクレオチドペアが、図4A(SEQ ID No:1)に示された1397から2407のヌクレオチド配列、または図5A(SEQ ID NO:3)に示された1792から3621のヌクレオチド配列の少なくとも一部を増幅するためのプライマーとしてはたらくことができる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
工程(d)において、工程(c)において生産された産物が、増幅中に定量化される、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
請求項21に記載の医薬組成物を、赤血球付着性マイコプラズマ種、好ましくはM. suisにより感染した動物に投与する工程を含む、赤血球付着性マイコプラズマ種、好ましくはM. suisによる感染症の治療方法。
【請求項28】
請求項1若しくは2に記載のワクチン、および/または請求項22に記載のワクチンの有効量を、赤血球付着性マイコプラズマ種、好ましくはM. suisによる感染が疑われる動物に投与する工程を含む、赤血球付着性マイコプラズマ種、好ましくはM. suisによる感染症の予防方法。
【請求項29】
赤血球付着性マイコプラズマ種、好ましくはM. suisによる感染症の治療用医薬組成物を調製するための請求項9に記載のアンチセンス核酸、および/または請求項10に記載のベクター、および/または請求項14に記載の抗体の使用。
【請求項30】
赤血球付着性マイコプラズマ種、好ましくはM. suisによる感染症の予防用ワクチンを調製するための請求項10に記載のベクター、および/または請求項12または13に記載のポリペプチドの使用。
【請求項31】
赤血球付着性マイコプラズマ種、好ましくはM. suisによる感染症を検出するための請求項3ないし8のいずれかに記載のポリヌクレオチド、および/または請求項9に記載のアンチセンス核酸、および/または請求項12または13に記載のポリペプチド、および/または請求項14に記載の抗体の使用。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図5A−1】
【図5A−2】
【図5B】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図5A−1】
【図5A−2】
【図5B】
【公表番号】特表2009−506779(P2009−506779A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529443(P2008−529443)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【国際出願番号】PCT/CH2006/000417
【国際公開番号】WO2007/028259
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(508072291)ウニベルジテート チューリッヒ (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【国際出願番号】PCT/CH2006/000417
【国際公開番号】WO2007/028259
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(508072291)ウニベルジテート チューリッヒ (2)
【Fターム(参考)】
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