説明

マグネシウムジクロリド−アルコール付加物およびそれから得られる触媒成分

本発明は、MgCl2・(EtOH)m(ROH)n(H2O)p付加物(式中、Rはエチルとは異なるC1〜C15の炭化水素基であり、nとmは式(n+m)≧0.7および0.05≦n/(n+m)≦0.95を満たす0より大きい指数であり、かつpは0〜0.7の範囲の数である、但しRがメチルであり、かつ(n+m)が0.7〜1の範囲であるとき、n/(n+m)の値は0.05〜0.45の範囲である)に関する。本発明の付加物から得られた触媒成分は、従来技術の付加物から製造された触媒に対して機能強化された活性により特徴付けられるオレフィン重合用の触媒を与え得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシウムジクロリド、エタノールおよび特定量のその他のアルコールとの付加物に関する。本発明の付加物は、特に、オレフィン重合用の触媒成分の前駆体として有用である。
【背景技術】
【0002】
MgCl2・アルコール付加物およびオレフィン重合用の触媒成分の製造におけるそれらの使用は、当該従来技術でよく知られている。MgCl2・nEtOH付加物をハロゲン化遷移金属化合物と反応させることにより得られるオレフィン重合用の触媒成分は、米国特許第4,399,054号に記載されている。その付加物は、不混和性分散媒体中で溶融付加物を乳化し、エマルションを冷却流体中でクエンチすることにより、球状粒子の形態で付加物を回収して製造される。その付加物の結晶化密度に関する物理的特徴は報告されていない。
【0003】
WO98/44009には、改善された特性を有し、かつ2θ回折角5°と15°の間の範囲に、3本の主要回折線が8.8°±0.2°、9.4°±0.2°および9.8°±0.2°の回折角2θに存在し、最大強度回折線が2θ=8.8±0.2°であり、その他2本の回折線の強度が最大強度回折線の強度の少なくとも0.2倍である、特定のX線回折スペクトルにより特徴付けられるMgCl2・アルコール付加物が開示されている。上記付加物は、式MgCl2・mEtOH・nH2O(式中、mは2.2と3.8の間であり、かつnは0.01と0.6の間である)のものであり得る。
【0004】
上記のX線スペクトルに加えて、その付加物は、90℃以下の温度にピークが存在しないか、前記温度以下にピークが存在する場合であっても、前記ピークと結び付く融合エンタルピーが全融合エンタルピーの30%未満である、示差走査熱量分析測定(DSC)プロファイルにより特徴付けられる。これらの付加物から得られる触媒成分は、従来技術の付加物から得られるものを越える、増大した活性を有する。
しかしながら、さらに改良された活性を有する触媒成分を入手可能にすることは、工場の操業において得られる経済的利点の観点から常に求められている。
【0005】
EP123767には、チタン化合物およびバナジウム化合物と、メタノールとエタノールとの混合溶液中のMgCl2の噴霧乾燥により得られる固体支持体とを反応させることにより得られる触媒成分が開示されている。噴霧乾燥支持体は、一般にエタノールに対して高モル量のメタノールと組み合せて、少量の全アルコール含量(MgCl2のモル当たり約1モル以下の全アルコール)を含む。これらの触媒成分により示される活性は、一般に低く、特にメタノールでのエタノールの部分的な交換によっては改良されない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで出願人は、特定割合のMgCl2、エタノールおよび他のアルコールを含む支持体を出発原料にして触媒成分を製造したときに、従来技術の触媒の重合活性を改良できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、MgCl2・(EtOH)m(ROH)n(H2O)p付加物(式中、Rは任意にヘテロ原子含有基で置換された、エチルとは異なるC1〜C15の炭化水素基であり、nとmは式n+m≧0.7および0.05≦n/(n+m)≦0.95を満たす0より大きい指数であり、かつpは0〜0.7の範囲の数である、但しRがメチルであり、かつ(n+m)が0.7〜1の範囲であるとき、n/(n+m)の値は0.05〜0.45の範囲である)に関する。
【0008】
好ましくは、(n+m)は1より高く、特に2〜5の範囲である。特定の状況では、値n/(n+m)は0.1〜0.4、好ましくは0.15〜0.35の範囲である。指数pは一般的に0.01〜0.6、好ましくは0.01〜0.4の範囲である。好ましいR基は、メチルおよびC3〜C10の飽和炭化水素基、特にメチルおよびC3〜C8のアルキル基である。
【0009】
本発明によるROHアルコールの特定の例は、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、i-プロパノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、ペンタノール、2-メチル-1-ペンタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、フェノール、4-メチル-1-フェノール、2,6-ジメチル-1-フェノール、シクロヘキサノール、シクロペンタノールである。メタノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、i-プロパノールおよび2-メチル-1-ペンタノールが好ましい。メタノールが特に好ましい。
【0010】
本発明の付加物は、いくつかの方法により製造することができる。これらの方法の1つによれば、付加物は、任意に不活性液体希釈剤の存在中で、好ましい量のMgCl2、エタノールおよびROHアルコールを接触させ、MgCl2-EtOH-アルコール付加物を溶融温度またはそれ以上でその系を加熱し、かつ完全に溶融した付加物が得られるように前記の条件に維持することにより製造される。次いで、前記の溶融した付加物を、それに不混和であり、かつそれに対して化学的に不活性である液体媒体に乳化させ、最後に付加物を不活性冷却液体に接触させることによりクエンチして、付加物の固化を得る。この方法の特定の実施態様で、付加物は、10時間に等しいか、それ以上の時間、好ましくは10〜150時間、より好ましくは20〜200時間、撹拌条件下で、その溶融温度に等しいか、またはそれ以上の温度に保持される。
【0011】
溶融した付加物を乳化させる液体は、溶融した付加物に不混和であり、かつそれに対して化学的に不活性であるどのような液体でもあり得る。例えば、脂肪族、芳香族または環状脂肪族炭化水素はシリコン油と同じように用いることができる。流動パラフィン油(vaseline oil)のような脂肪族炭化水素が特に好ましい。
【0012】
固体形態で本発明の付加物を得るための別の方法は、上記のような溶融した付加物の形成、および付加物を固化するための関係する噴霧冷却工程の使用からなる。この操作を実行するとき、第1工程で、不活性液体希釈剤の非存在下で、マグネシウムクロリド、エタノールおよびROHアルコールを互いに接触させるのが好ましい。溶融した後、付加物を、粒状の急速凝固を引き起こすような低い温度を有する環境で、市販の適当な装置を介して噴霧する。冷却環境は、冷却液体または気体からなることができる。好ましい状況で、付加物は冷却液体環境で、より好ましくは冷却液体炭化水素中で噴霧される。
【0013】
別の使用可能な方法は、ROHアルコールを既に予備形成した固体MgCl2-エタノール付加物に接触させることからなる。好ましい量のMgCl2-エタノール付加物とROHアルコールとの接触は、撹拌下、液体炭化水素媒体中で行うことができる。また、気相中で、特にWO98/44009に記載されているようなループ反応容器中で、ROHアルコールを加えることも可能である。エタノールの一部を物理的に(例えば、熱窒素流下で)または化学的な脱アルコールにより除去したMgCl2-エタノール付加物を用いるのが特に好ましい。これらの脱アルコール付加物およびこれらの製造は、例えば、EP395083号に記載されており、関連部分を参照としてここに含める。
【0014】
すべてのこれらの方法は、オレフィン重合用の球状触媒成分の製造、特に気相重合工程に特に好適な、実質的に球状の形態を有する固体付加物を提供する。用語、実質的に球状の形態に関して、1.5と等しいかそれ以下、好ましくは1.3より低い、長軸と短軸との間の比を有するこれらの粒子を意味する。
【0015】
上記で説明したように、水は、付加物の構成成分の1つでありうるが、好ましくはあまり高いレベルの水は避けるべきである。反応物質の含水量を調節することにより、有用にできる。実際にMgCl2、EtOHおよびまた特定のROHアルコールは、吸湿性が高く、それらの構造内に水分を取り込む傾向がある。結果的に、反応物質の含水量が比較的高い場合は、たとえ水分が別の成分として加えられなくても、最終の付加物は、好ましくない量の水を含むことがある。
【0016】
固体または液体中の含水量の調節または低下方法は当該分野で公知である。MgCl2中の含水量は、例えば、高温のオーブン中で乾燥させるか、または水と反応する化合物と反応させることにより低下させることができる。例として、MgCl2から水分を除去するために、HClの気流を用いることができる。蒸留のような種々の技術、または分子篩のような、水分除去が可能な物質に接触させることにより、液体からの水分を除去することができる。
【0017】
上記で説明したように、これらの付加物は、オレフィン重合用の触媒成分の製造に有利に用いることができる。前記触媒成分は、本発明の付加物を、元素の周期律表(新表記法)の4〜6族の1つの化合物の1つに属する遷移金属化合物と接触させることにより得ることができる。遷移金属化合物の中で、式Ti(OR)ny-n(式中、nは0とyの間からなり;yはチタンの価数であり;Xはハロゲンであり、かつRは1〜10の炭素原子を有するアルキル基またはCOR基である)のチタン化合物が特に好ましい。これらの中で、チタンテトラハライドまたはハロゲンアルコレートのような少なくとも1つのTi−ハロゲン結合を有するチタン化合物が特に好ましい。好ましい特定のチタン化合物は、TiCl3、TiCl4、Ti(OBu)4、Ti(OBu)Cl3、Ti(OBu)2Cl2、Ti(OBu)3Clである。
【0018】
好ましくは、その接触は、冷却TiCl4(一般的に0℃)中に付加物を懸濁し、次いで、そのようにして得られた混合物を80〜130℃まで加熱し、かつこの温度に0.5〜2時間保持することにより行われる。過剰のTiCl4を除去した後、固体成分を回収する。TiCl4の処理を1回以上行う。
【0019】
また、遷移金属化合物と付加物との間の反応は、特にオレフィン重合用の立体特異性触媒を製造するとき、電子供与化合物(内部供与体)の存在中で行うことができる。前記電子供与化合物は、エステル類、エーテル類、アミン類、シラン類およびケトン類から選択することができる。この接触の結果として、電子供与化合物は、普通は触媒成分上に堆積されて残る。
【0020】
例えば、安息香酸、フタル酸、マロン酸および琥珀酸のエステル類のような、モノまたはポリカルボン酸のアルキルおよびアリールエステル類が特に好ましい。このようなエステル類の特定の例は、n-ブチルフタレート、ジ-イソブチルフタレート、ジ-n-オクチルフタレート、ジエチル2,2-ジイソプロピルスクシネート、ジエチル2,2-ジシクロヘキシルスクシネート、エチル-ベンゾエートおよびp-エトキシエチル-ベンゾエートである。さらに、式:
【0021】
【化1】

【0022】
(式中、R、RI、RII、RIII、RIVおよびRVは、互いに同一または異なって、水素または1〜18の炭素原子を有する炭化水素基であり、かつRVIとRVIIは、互いに同一または異なって、それらが水素でない場合を除き、R〜RVと同じ意味を有し;R〜RVII基の1つ以上は、結合して環を形成することができる)
の1,3-ジエーテル類も有利に用いることができる。RVIおよびRVIIIがC1〜C4アルキル基から選択される1,3-ジエーテル類が特に好ましい。
【0023】
電子供与化合物は、マグネシウムに対して、一般に1:4と1:20の間のモル比で存在する。
好ましくは、固体触媒成分の粒子は、実質的に球状の形態で、5と150μmの間からなる平均直径を有する。用語、実質的に球状の形態に関して、1.5と等しいかそれ以下、好ましくは1.3より低い、長軸と短軸との間の比を有するこれらの粒子を意味する。
【0024】
遷移金属化合物との反応前に、本発明の付加物を、アルコール含量を低下させ、かつ付加物自体の多孔度を増大させる脱アルコール処理に付すこともできる。その脱アルコールは、EP−A−395083に記載されているような公知の方法で行うことができる。脱アルコール処理の程度により、一般にMgCl2のモル当たり0.1〜2.6モルの範囲のアルコール含量を有する、部分的に脱アルコール化された付加物を得ることができる。脱アルコール処理後、固体触媒成分を得るために、上記の記載の技術により、付加物を遷移金属化合物と反応させる。
【0025】
本発明による固体触媒成分は、一般に10と500m2/gの間の、好ましくは20と350m2/gの間の表面積(BET法による)および0.15cm3/gより高い、好ましくは0.2と0.6cm3/gの間の全多孔度(BET法による)を示す。意外にも、遷移金属化合物と、本発明の付加物を部分的に脱アルコール化することにより得られる、MgCl2-アルコール付加物との反応生成物からなる触媒成分は、改良された特性、特に言い換えると従来技術の脱アルコール化された付加物から製造された触媒成分に対して活性を示す。
【0026】
本発明の触媒成分は、Al-アルキル化合物との反応または接触により、アルファオレフィンCH2=CHR(式中、Rは水素、または1〜12の炭素原子を有する炭化水素基である)の重合用触媒を形成する。アルキル−Al化合物は、例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウムのような、トリアルキルアルミニウム化合物類の中から選択されるのが好ましい。任意に、上記トリアルキルアルミニウム化合物類との混合物中のAlEt2ClおよびAl2Et3Cl3のようなアルキルアルミニウムハライド類、アルキルアルミニウム水素化物類またはアルキルアルミニウムセスキクロリド類を用いることもできる。
Al/Ti比は1より高く、一般に20と800の間である。
【0027】
例えば、プロピレンおよび1-ブテンのようなα-オレフィンの立体規則性重合の場合、内部供与体のように用いられる化合物と同じか、または異なる電子供与化合物(外部供与体)は、上記の開示された触媒の製造に用いることができる。
【0028】
内部供与体がポリカルボン酸のエステル、特にフタレートである場合、外部供与体は、式Ra1b2Si(OR3)c(式中、aおよびbは0〜2の整数であり、cは1〜3の整数であり、かつ和(a+b+c)は4であり;R1、R2およびR3は、1〜18の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキルまたはアリール基である)を有する、少なくともSi-OR結合を含むシラン化合物類から選択されるのが好ましい。特に好ましくは、aが1であり、bが1であり、cが2であり、R1およびR2の少なくとも1つが3〜10の炭素原子を有する分岐状アルキル、シクロアルキルまたはアリール基から選択され、かつR3がC1〜C10アルキル基、特にメチル基であるシリコン化合物類である。このような好ましいシリコン化合物類の例は、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチル-t-ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシランである。
【0029】
さらに、aが0であり、cが3でありR2が分岐状アルキルまたはシクロアルキル基であり、かつR3がメチル基であるシリコン化合物類も好ましい。このような好ましいシリコンの例は、シクロヘキシルトリメトキシシラン、t-ブチルトリメトキシシランおよびテキシルトリメトキシシランである。
前述の化学式を有する1,3-ジエーテル類も外部供与体として用いることができる。
しかしながら、1,3-ジエーテル類が内部供与体として用いられる場合、触媒の立体特異性が既に十分高いので、外部供与体の使用を避けることができる。
【0030】
前述の通り、本発明の成分およびそれらから得られる触媒は、式CH2=CHR(式中、Rは水素または1〜12の炭素原子を有する炭化水素基である)のオレフィンの(共)重合方法における適用を見出している。
本発明の触媒は、従来技術で知られている、いかなるオレフィン重合方法においても用いられる。例えば、希釈液として不活性炭化水素溶剤を用いるスラリー重合、あるいは反応媒質として、液体モノマー(例えばプロピレン)を用いる塊状重合において使用できる。さらに、1つ以上の流動または機械撹拌床反応器中で操作し、気相で行う重合方法にも用いることができる。
【0031】
重合は、一般に20〜120℃、好ましくは40〜80℃の温度で行う。重合を気相で行うとき、操作圧は、一般に0.1と10MPa、好ましくは1と5MPaの間である。塊状重合における操作圧は、一般に1と6MPa、好ましくは1.5と4MPaの間である。
【0032】
本発明の触媒は、幅広い範囲のポリオレフィン製品の製造に非常に有用である。製造され得るオレフィンポリマーの特定の例は:エチレンホモポリマー類、およびエチレンと3〜12の炭素原子を有するアルファ−オレフィンとのコポリマーからなる高密度エチレンポリマー類(HDPE、0.940g/ccより高い密度を有する);線状低密度ポリエチレン類(LLDPE、0.940g/ccより低い密度を有する)、およびエチレンと80%より高いエチレンから誘導される単位の分子含量を有する、3〜12の炭素原子を有する1以上のアルファオレフィンとのコポリマーからなる、極低密度および超低密度(VLDPEおよびULDPE、0.920g/ccより低い、0.880g/ccまでの密度を有する);アイソタクチックポリプロピレン類、ならびにプロピレンとエチレンおよび/または85重量%より高いプロピレンから誘導される単位の含量を有するその他のアルファ−オレフィンの結晶性コポリマー類;プロピレンと、1-ブテンから誘導される単位の含量が1と40重量%の間からなる1-ブテンとのコポリマー;結晶性ポリプロピレンマトリックスからなるヘテロ相コポリマー類、ならびにプロピレンと、エチレンおよび/またはその他のアルファ−オレフィンのコポリマーからなる非晶質相である。
【0033】
以下の例は、説明するために与えられ、本発明そのものを制限しない。
【0034】
特徴付け
アルコール付加物の測定
エタノールおよびROH含量をGC分析により測定する。
【0035】
X.I.の測定
2.5gのポリマーを250mlのo−キシレンに撹拌下、135℃で30分間溶解し、次いで、その溶液を25℃まで冷却し、30分後に不溶性ポリマーを濾過した。得られた溶液を窒素流中で蒸発させ、残渣を乾燥させて秤量し、可溶性ポリマーの割合を決定し、次いで差分によりX.I.(%)を決定した。
【0036】
実施例
プロピレン重合:一般的な手順
70℃で1時間、窒素流でパージした4リットルのオートクレーブ中に、800mgのAlEt3を含有する75mlの無水ヘキサン、79.8mgのジシクロペンチルジメトキシシランおよび10mgの固体触媒成分を、30℃でプロピレン流で導入した。オートクレーブを冷却した。1.5Nlの水素を加え、次いで撹拌下に1.2kgの液体プロピレンを供給した。温度を5分間で70℃に昇温し、この温度で2時間、重合を行った。未反応のプロピレンを除去し、ポリマーを回収し、70℃の真空下で3時間、乾燥させ、次いで秤量し、o-キシレンで分画し、25℃におけるキシレン不溶(X.I.)画分の量を決定した。
【0037】
エチレン重合:一般的な手順
70℃で1時間、窒素流でパージした4リットルのオートクレーブ中に、3ミリモルのトリエチルアルミニウムを含有する1500mlの無水ヘキサンを30℃で窒素流で導入した。続いて、1.3ミリモルのトリエチルアルミニウムを含有する100mlのヘキサン中の20mgの固体触媒成分の懸濁液を同温度で加えた。オートクレーブを閉じ、4バールの水素を加え、温度を5分間で70℃に昇温した。次いで、7バールのエチレンを加えた。この温度で2時間、重合を行った。未反応のエチレンおよびヘキサンを除去し、ポリマーを回収し、70℃の真空下で3時間、乾燥させ、次いで秤量し、分析した。
【0038】
MgCl2・(EtOH)m(ROH)n(H2O)pの製造 一般的な手順
温度計、機械撹拌機、還流冷却器を備え、窒素でパージされた2.5リットルのガラス製反応器に、250mlのパラフィン油(OB55)、秤量された量のMgCl2(表1参照)、エチルアルコール(表1の量)および任意に追加のアルコール(表1のタイプと量)を室温の窒素流下で導入した。撹拌を開始し、固相が消失するまで温度を昇温した。撹拌下で2時間、温度を一定に保持した。次いで、同温度に維持された同じパラフィン油(450ml)の第2の部分を、MgCl2/アルコール/パラフィン混合物に加えた。次いで、撹拌を1100rpmに上げ、2相のエマルションを得た。
【0039】
0.5分の撹拌後、−15〜−20℃の撹拌下(350〜400rpm)で1500mlのヘキサンを含む、第2の5リットルのガラス製反応器に、窒素流下でエマルションを移した。懸濁液を−10℃で2時間攪拌し、次いで温度を20分間で0℃に昇温し、同温度で1時間、撹拌を続けた。温度を20分間で10℃に昇温し、1時間後、再び25℃に昇温した。撹拌を25℃で2時間続け、次いで混合物を安定させ、25℃で一晩中、状態を継続した。
固体MgCl2m(EtOH)n(ROH)球状支持体を濾過により回収し、400mlのヘキサンで2回および400mlのペンタンで1回洗浄し、最後に真空下で乾燥させた。
【0040】
固体触媒成分の製造:手順A
窒素でパージした500mlの4つ口丸底フラスコ中に、250mLのTiCl4を0℃で導入した。次いで、撹拌下で、上記の一般的な方法で製造した10.0gの付加物およびMgに対して6モル比で与えられるような内部供与体と同じ量の2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパンを加えた。温度を120℃に昇温し、60分間維持した。次いで、撹拌を中止し、固体生成物を安定させ、上澄み液を吸い上げた。
【0041】
250mlの新たなTiCl4を加えた。混合物を、120℃で30分間反応させ、次いで上澄み液を吸い上げた。
再び、250mlの新たなTiCl4を加えた。混合物を、120℃で30分間反応させ、次いで上澄み液を吸い上げた。固体を60℃で無水ヘキサンで6回(6×100ml)洗浄した。最後に、固体を真空下で乾燥させ、分析した。固体触媒成分中に含まれるジエーテルの量(IDwt%)およびTiの量(wt%)を表2に報告する。
【0042】
固体触媒成分の製造:手順B
内部供与体を用いないこと以外は、手順Aに記載された同様の触媒製造に従った。固体触媒成分中に含まれるMg(wt%)およびTi(wt%)の量を表2に報告する。
【0043】
実施例1〜12および比較例13〜16
上記の一般的な手順によって、支持体を製造した。支持体を製造する下での特定の条件および分析の結果を表1に示す。
上記の手順Aによって、触媒成分を製造し、触媒の特徴を表2に示す。上記の報告した一般的な手順により行ったプロピレン重合において得られた結果を表3に要約する。
【0044】
実施例17および18
上記の一般的な手順によって、支持体を製造した。支持体を製造する下での特定の条件および分析の結果を表1に示す。
上記の開示された手順Bによって、触媒成分を製造し、触媒の特徴を表2に示す。上記の報告した一般的な手順により行ったエチレン重合において得られた結果を表3に要約する。
【0045】
実施例19および比較例20
それぞれ実施例3および比較例14の手順および条件により製造した支持体を、手順Bにより触媒成分を製造するために用いた。触媒の特徴を表2に示す。上記の報告した一般的な手順により行ったエチレン重合で得られた結果を表3に要約する。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
MgCl2・(EtOH)m(ROH)n(H2O)p付加物(式中、Rは任意にヘテロ原子含有基で置換された、エチルとは異なるC1〜C15の炭化水素基であり、nとmは式(n+m)≧0.7および0.05≦n/(n+m)≦0.95を満たす0より大きい指数であり、かつpは0〜0.7の範囲の数である、但しRがメチルであり、かつ(n+m)が0.7〜1の範囲であるとき、n/(n+m)の値は0.05〜0.45の範囲である)。
【請求項2】
(n+m)が、1より大きいことを特徴とする請求項1による付加物。
【請求項3】
(n+m)が、2〜5の範囲であることを特徴とする請求項2による付加物。
【請求項4】
値n/(n+m)が、0.1〜0.4の範囲であることを特徴とする請求項1による付加物。
【請求項5】
値n/(n+m)が、0.15〜0.35の範囲であることを特徴とする請求項4による付加物。
【請求項6】
指数pが、0.01〜0.6の範囲であることを特徴とする請求項1による付加物。
【請求項7】
指数pが、0.01〜0.4の範囲であることを特徴とする請求項6による付加物。
【請求項8】
R基が、メチルまたはC3〜C10の飽和炭化水素基であることを特徴とする請求項1による付加物。
【請求項9】
ROHアルコールが、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、ペンタノール、2-メチル-1-ペンタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、フェノール、4-メチル-1-フェノール、2,6-ジメチル-1-フェノール、シクロヘキサノール、シクロペンタノールからなる群から選択されることを特徴とする請求項1による付加物。
【請求項10】
ROHアルコールが、メタノールであることを特徴とする請求項9による付加物。
【請求項11】
元素の周期律表(新表記法)の4〜6族の遷移金属化合物を、請求項1〜10のいずれか1つによる付加物と接触させることにより得られる生成物からなるオレフィン重合用の触媒成分。
【請求項12】
遷移金属が、式Ti(OR)ny-n(式中、nは0とyの間からなり;yはチタンの価数であり;Xはハロゲンであり、かつRは1〜8の炭素原子を有するアルキル基またはCOR基である)のチタン化合物から選択される請求項11による触媒成分。
【請求項13】
チタン化合物が、TiCl3、TiCl4、Ti(OBu)4、Ti(OBu)Cl3、Ti(OBu)2Cl2、Ti(OBu)3Clから選択される請求項12による触媒成分。
【請求項14】
さらに電子供与化合物を含有する請求項11による触媒成分。
【請求項15】
電子供与体が、モノまたはポリカルボン酸のアルキルおよびアリールエステル類から選択される請求項14による触媒成分。
【請求項16】
電子供与体が、式:
【化1】

(式中、R、RI、RII、RIII、RIVおよびRVは、互いに同一または異なって、水素または1〜18の炭素原子を有する炭化水素基であり、かつRVIとRVIIは、互いに同一または異なって、それらが水素でない場合を除き、R〜RVと同じ意味を有し;R〜RVII基の1つ以上は、結合して環を形成することができる)
の1,3-ジエーテル類から選択される請求項14による触媒成分。
【請求項17】
遷移金属化合物と接触させる前に、付加物を脱アルコール処理に付すことを特徴とする請求項11によるオレフィン重合用の触媒成分。
【請求項18】
請求項11〜17の1つによる触媒成分とアルミニウムアルキル化合物とを接触させることにより得られる生成物からなるオレフィン重合用の触媒。
【請求項19】
アルミニウム化合物が、Al-トリアルキル化合物である請求項18によるオレフィン重合用の触媒。
【請求項20】
さらに外部供与体からなる請求項19によるオレフィン重合用の触媒。
【請求項21】
外部供与体が、式Ra1b2Si(OR3)c(式中、aおよびbは0〜2の整数であり、cは1〜3の整数であり、かつ和(a+b+c)は4であり;R1、R2およびR3は、1〜18の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキルまたはアリール基である)を有する、少なくともSi-OR結合を含むシラン化合物類から選択される請求項20によるオレフィン重合用の触媒。
【請求項22】
請求項18〜21の1つによる触媒の存在下で行われる、式CH2=CHR(式中、Rは水素または1〜12の炭素原子を有する炭化水素基である)のオレフィンの重合方法。

【公表番号】特表2006−521429(P2006−521429A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504644(P2006−504644)
【出願日】平成16年3月9日(2004.3.9)
【国際出願番号】PCT/EP2004/002519
【国際公開番号】WO2004/085495
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(501468046)バセル ポリオレフィン イタリア エス.アール.エル. (33)
【住所又は居所原語表記】Via Pergolesi 25,20124 Milano,Italy
【Fターム(参考)】