説明

マグネシウム合金複合式放熱金属

【課題】マグネシウム合金複合式放熱金属を提供する。
【解決手段】マグネシウム合金により構成された放熱面1と、金、プラチナ、銀、銅から選ばれたいずれかの合金により構成された高熱伝導金属である接触面2と、放熱面1と接触面2との間にあり、高温加圧により両者が互いに溶け緻密に接する共晶組織を呈するようにした融合層3とを主に含む。高熱伝導金属により構成された接触面2で発熱源を迅速に吸収することができ、融合層3を経てマグネシウム合金で構成された放熱面1に伝えられ、放熱を速める。マグネシウム合金複合式放熱金属は、圧力によって構造分子の凝集がさらに緻密になっており、表面は電気めっき加工に便利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシウム合金複合式放熱金属に関し、特にマグネシウム合金と、金、プラチナ、銀、銅などの高熱伝導金属のいずれかの合金とを緻密に結合し、その個別の最良の物理的特性を有し、吸熱が速く放熱も速いマグネシウム合金複合式放熱金属に関する。
【背景技術】
【0002】
放熱器の良し悪しは、電子製品の使用寿命に関わる。初期の従来型の放熱器の多くは、アルミニウム押し出しによって製造され、その吸熱および放熱の効果には限りがあるため、実用性はすでに新世代の電子製品で使用するには合わなくなっている。そのため、業界では複合金属製の放熱器を積極的に開発しており、例えば、接熱面を定め熱源上に跨いで置く複数の伝導フィンが突設してある接熱板を含む熱伝導体と、前記熱伝導体の各前記伝導フィンの外周を囲み伝導フィンを含む放熱フィンを構成する放熱体とを備え、前記熱伝導体の熱導効率を前記放熱体よりも高くし、前記放熱体の放熱効率は前記熱伝導体よりも優れている複合式放熱部材である(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、市販されている多くの公知の複合式放熱部材は、外観デザインがそれぞれ異なる可能性があるが、現在でも、内部で採用されている放熱体のほとんどがアルミニウムであり、熱伝導体はいずれも銅を用いて製造されている。その主な理由は、銅は優れた熱伝導体であるが、放熱性が比較的遅く、アルミニウムは熱伝導が銅に比べて遅いが、放熱性は銅に比べて速いためである。そのため、銅アルミニウム結合材放熱体製品があるが、その製品が実際に生成することができる放熱効果、および電磁波に対するシールドはまだ最も理想的なものではない。
【0004】
軽金属のうち、マグネシウム合金とアルミニウム合金が、強度/重量比がよい、剛性がよい、耐衝撃、耐磨、回収可能、電磁波シールドがよいなどの長所を比較的有している。マグネシウム金属は、ここ十数年で広範に研究され応用されるようになった新材質であり、アルミニウム金属のように数百年の歴史を有していない。そのために、これまで、業界ではその属性が理解されておらず、工程上比較的難しいだけでなく、加工過程で燃焼または爆発の恐れもあるため、単純に前記の同法によってマグネシウム複合式放熱部材を製造することは、ほぼ不可能である。マグネシウム金属は危険性が高い金属で、酸素と反応しやすく、高温の溶湯状態の下で酸素と接触すると燃焼しやすいと同時に、水と反応して水素を発生し、燃焼がさらに激しくなり、爆発する可能性もあるからである。
【0005】
現在、マグネシウム合金製の放熱部材の試みもあるが、その製造技術の多くがダイカストおよび半固体射出による成形である。マグネシウムの流動性は比較的悪く、ダイカスト工程では、厚さが薄いほど、ワークの成形が難しくなり、製品の不良率もそれに伴って上昇する。例えば、ヒートクラック、酸化、フローマーク、強度不足および突出し変形の問題が発生し、かつ緻密度の不足のため放熱効果に影響を及ぼす。
【特許文献1】台湾特許公告第563846号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これに鑑み、本発明人はさらなる研究、設計を行い、多くの実験、改良を行った後、本発明が生み出された。
【0007】
本発明人は、金属加工業者であり、鍛造する製品は、金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウムなどの各種材料を含む。実験を続けた後、プレス鍛造したマグネシウム合金ワークは、外部から高圧の力を受けた後、内部の結晶相の密度が変わり、温度低下効果はアルミニウム合金ワークよりも遥かに速い、すなわち、材料が外部からの圧力によって圧縮した後に得られた均一で緻密な結晶相組織によって、熱伝導および放熱の効果が高められることを発見した。
【0008】
本発明の主な目的は、マグネシウム合金と、金、プラチナ、銀、銅などの高熱伝導金属のいずれかの合金とを緻密に結合し、その個別の最良の物理的特性を取ってマグネシウム合金複合式放熱金属として結合し、吸熱が速く放熱も速い実用的効果を達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明によるマグネシウム合金複合式放熱金属は、マグネシウム合金により構成された放熱面と、金、プラチナ、銀、銅などから選ばれたいずれかの合金により構成された高熱伝導金属である接触面と、放熱面と接触面との間にあり、高温加圧により両者が互いに溶け緻密に接する共晶組織を呈するようにした融合層とを主に含み、これによって、高熱伝導金属により構成された接触面で発熱源を迅速に吸収することができ、融合層を経てマグネシウム合金で構成された放熱面に伝えられ、放熱を速める。かつ、その製品は、圧力によって構造分子の凝集がさらに緻密になっており、表面は電気めっき加工に便利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0011】
(一実施形態)
図1〜6図に示すとおり、本発明の一実施形態によるマグネシウム合金複合式放熱金属は、マグネシウム合金により構成された放熱面1と、金、プラチナ、銀、銅などから選ばれたいずれかの合金により構成された高熱伝導金属である接触面2と、放熱面1と接触面2との間にあり、高温加圧により両者が互いに溶け緻密に接する共晶組織を呈するようにした融合層3と、を主に含む。本実施形態では、図3および4のプレスまたは鍛造プレスの方式、または図5の圧延方式など、前記複合金属の製造加工方法を用いて達成することができる。また、放熱面1および接触面2の両種の金属を有効に結合する場合、プレスであっても鍛造であっても、その製品構造および寸法の大きさの差異は、生産前に図6に示すコンピュータシミュレーション5によって最適な製造パラメータを得た後に、温度制御可能である金型4の中で加圧して製造することができる。
【0012】
図6に示すように、コンピュータシミュレーション5は、一般的には「成形流れ分析」と呼ばれ、製品の形に基づき事前に設計された金型図、および事前に設計された金属粗材図をコンピュータファイルに入れ、金属材料特性パラメータおよびその他の経験値を入力し、コンピュータソフトウェアによってプログラムを実行し、金属材料を金型4内で成形するときの流動の状況を分析するものである。さらに、シミュレーション分析結果に基づき、製品または金型の設計を修正する。このコンピュータシミュレーション5の方式の精度は95%以上に達し、金型4の製作の失敗のコストを節減し、製品納期を短縮することができる。
【0013】
また、生産時の金型4の温度制御は、金型4内に加熱システム41を埋設し、外に温度センサシステム42を設ける。温度コントローラ43内に必要な温度を入力すると、金型4の温度を温度差内に制御することができる。先ず、マグネシウム合金および銅合金の半製品をそれぞれ取って一定温度以上まで加熱し、マグネシウム合金および銅合金の半製品が軟化してから、事前にコンピュータシミュレーション5によって得られた機械圧力44を加え、結合させて成形する。プレスまたは鍛造プレスの方式の場合、製品の要求の違いに基づき、接触面2を放熱面1に圧入した後、0.5〜10mmの間の深層の厚さ21を生成することができる。
【0014】
また、本実施形態では、製造時にもう1つのポイントがある。周知のとおり、マグネシウムは可燃性を有し、その燃焼開始温度は約600℃前後であるため、本発明の製造時に両種の金属複合の間に互いに溶け緻密に接する共晶組織の融合層3を生成する場合、危険を避けるため、マグネシウム合金の加熱温度は高すぎてはならず、約200〜350℃の間が最も好ましい。銅合金は、加温するとマグネシウム合金の燃焼開始温度を超え、約200〜800℃でマグネシウム合金および銅合金の半製品の軟化を待つことが最も好ましい。金型4内に入れて圧を受けて結合し成形するときに、温度が比較的高い銅合金を温度が比較的低いマグネシウム合金の中に圧入された後、銅合金はマグネシウムに対し熱交換を行い、間接的に加温し、マグネシウム合金の温度をさらに上昇させ、両合金をさらに互いに溶かし、共晶状態を呈して一体化して緻密に接するようにする。但し、この加温の結果は、事前に有効なコンピュータシミュレーション5によって予測されたものであるため、製造時に正確に制御することができ、マグネシウムの燃焼開始温度を超えることはなく、製造上の安全性が確実なものとされる。
【0015】
これによって、製造されるマグネシウム合金複合式放熱金属は、高熱伝導金属により構成された接触面2を用いて発熱源を迅速に吸収し、融合層3の共晶組織を経てマグネシウム合金により構成された放熱面1に伝え、放熱を速めることができる。各種加工製造方法は、鍛造プレス製品の放熱効果が最もよく、その金属製品は、圧力によって押されるため、組織がさらに緻密であり、熱エネルギーの伝導および放熱がさらに速い。鍛造プレス製品は、圧力によって構造分子がさらに緻密に凝集されており、水に触れる虞がないため、表面は電気めっき加工に便利である。従来の工程手段を用いて、放熱面に簡単に図示しない電気めっき層を追加し、製品の外観を美しくすることができる。
【0016】
また、図7に示すように、本実施形態による複合金属製造加工方法は、当然、リベットなどの従来の固定素子6を採用して接触面2と放熱面1を一体にしっかりと貼り付けることができ、その製品は、同様に吸熱が速く放熱も速い実用的な効果を得ることができる。固定素子6には、ねじくぎ、凹凸スナップ等の各種方式を採用してもよい。
【0017】
本発明によるマグネシウム合金複合式放熱金属は、放熱の要求のある製品であればいずれも応用することができ、次の長所を有する。
第1に、マグネシウムは、熱放射および低熱残留の特性を有し、現在知られている最もよい放熱金属であり、高熱伝導性の銅金属と結合することにより、金属内部の熱対流を形成し、放熱効果を大幅に向上させることができ、従来のアルミニウム銅複合金放熱体に比べ優れている。
第2に、本発明の有効な結合によって、最も効率のある放熱体をなし、発熱源製品の寿命および効果を増強することができる。かつ、マグネシウムは超塑性を有するだけでなく、デザインが複雑な製品を鍛造プレスすることができる。マグネシウムは、現在知られている最も軽い金属であるため、製品を軽量化することができる。
第3に、鍛造プレス製品は、強度が高く、従来のダイカストまたは押し出し製品に比べて優れており、鍛造プレス製品の組織は緻密であるため、その熱伝導および放熱効果は別の種類の工程の製品に比べ、20%以上高い。
【0018】
前記のとおり、本発明の構造の組み合わせによる新規の機能は公知のものよりも遥かに優れており、進歩性および産業上の利用価値を有する。その製品は、確実な効果を有するものを製造することに成功しているため、法により、特許を出願する。
【0019】
前記の実施形態は、本発明の目的、特徴および効果を詳細に説明するためのものであり、本発明の一実施形態でしかなく、これによって本発明の実施範囲を限定するものではない。当業者が、前記の説明、並びに特許請求の範囲に記載された構造の特徴および効果に基づき行う同等の変更および修正は、その本質が本発明の主旨の範疇を逸脱していない場合、いずれも本発明の特許範囲に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態によるマグネシウム合金複合式放熱金属を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態によるマグネシウム合金複合式放熱金属を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態によるマグネシウム合金複合式放熱金属を金型の中に置いた模式図である。
【図4】本発明の一実施形態によるマグネシウム合金複合式放熱金属を金型の中に置いた模式図である。
【図5】本発明の一実施形態によるマグネシウム合金複合式放熱金属を圧延で製造する模式図である。
【図6】本発明の一実施形態によるマグネシウム合金複合式放熱金属の製造装置を示すブロック図である。
【図7】本発明の一実施形態によるマグネシウム合金複合式放熱金属の組立方式による結合を示す断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1:放熱面、2:接触面、21:深層の厚さ、3:融合層、4:金型、41:加熱システム、42:温度センサシステム、43:温度コントローラ、44:機械圧力、5:コンピュータシミュレーション、6:固定素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム合金により構成された放熱面と、
金、プラチナ、銀、銅から選ばれたいずれかの合金により構成され、プレス鍛造を経て前記放熱面に圧入した深層の厚さを有する高熱伝導金属である接触面と、
前記放熱面と前記接触面との間にあり、高温加圧により両者が互いに溶け緻密に接する共晶組織を呈するようにした融合層と、
を含み、
前記高熱伝導金属により構成された前記接触面で発熱源を迅速に吸収することができ、前記融合層を経て前記放熱面に伝えられ、放熱を速め、圧力によって構造分子の凝集がさらに緻密になっており、表面は電気めっき加工に便利であることを特徴とするマグネシウム合金複合式放熱金属。
【請求項2】
前記放熱面に圧入した前記深層の厚さが0.5〜10mmの間であることを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム合金複合式放熱金属。
【請求項3】
マグネシウム合金により構成された放熱面と、
金、プラチナ、銀、銅から選ばれたいずれかの合金により構成され、延圧を経て前記放熱面と貼り合わせて一体化した高熱伝導金属である接触面と、
前記放熱面と前記接触面との間にあり、高温加圧により両者が互いに溶け緻密に接する共晶組織を呈するようにした融合層と、
を含み、
前記高熱伝導金属により構成された前記接触面で発熱源を迅速に吸収することができ、前記融合層を経て前記放熱面に伝えられ、放熱を速め、圧力によって構造分子の凝集がさらに緻密になっており、表面は電気めっき加工に便利であることを特徴とするマグネシウム合金複合式放熱金属。
【請求項4】
前記放熱面を構成する金属および前記接触面を構成する金属は、パラメータを事前にコンピュータソフトウェアでシミュレーションし、成形流れ分析で取得した後、温度制御可能である金型の中で加圧し製造することを特徴とする請求項1または3に記載のマグネシウム合金複合式放熱金属
【請求項5】
前記マグネシウム合金および前記銅合金を選んで複合して製造し、前記マグネシウム合金の加熱温度は200〜350℃であり、前記銅合金の加熱温度は200〜800℃であり、かつ、前記融合層の共晶組織は、前記銅合金を前記マグネシウム合金に圧入した後、熱交換により前記マグネシウム合金を間接的に加温し、前記マグネシウム合金および前記動合金をさらに互いに溶け緻密に接させ、一体化することを特徴とする請求項4に記載のマグネシウム合金複合式放熱金属。
【請求項6】
前記放熱面の外表面に電気めっき層を増設することを特徴とする請求項1または3に記載のマグネシウム合金複合式放熱金属。
【請求項7】
マグネシウム合金により構成された放熱面と、
銅合金により構成され、リベット、ねじくぎ、または凹凸スナップのいずれかの固定素子で前記放熱面に貼り、一体化する高熱伝導金属である接触面と、
を含み、
前記高熱伝導金属により構成された前記接触面で発熱源を迅速に吸収することができ、前記放熱面に伝えられ、放熱を速めることを特徴とするマグネシウム合金複合式放熱金属。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−65130(P2009−65130A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193729(P2008−193729)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(508228599)ジーン タン テック メタル カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】