説明

マグネシウム溶解装置

【課題】破壊された保護被膜を効率よく再形成できるマグネシウム溶解装置を提供すること。
【解決手段】マグネシウム溶湯2を貯留する溶解炉1と、溶解炉の上部に取り付けられ、マグネシウム溶湯を覆う固定蓋3と、固定蓋に設けられ、上方に開口し、材料10を溶解炉内に投入するための投入口3aと、マグネシウム溶湯の酸化を防ぐべく溶解炉1内に保護ガス8を供給するノズル7とを備えるマグネシウム溶解装置において、ノズルは、材料が投入口を介して溶解炉内に投入される場合に、マグネシウム溶湯の表面のうち投入口の下方部分に保護ガスを供給する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシウム溶解装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マグネシウム及びその合金を空気中で溶解するとマグネシウムが燃焼するため、保護ガスでマグネシウム溶湯の液面上に被膜を形成し、マグネシウム溶湯が酸素と触れるのを防止し燃焼を防止している(特許文献1)。
【0003】
マグネシウム溶解炉又はマグネシウム溶解保持炉の炉内にクリプトンガスを充填することで、溶解マグネシウムの酸化防止を行っている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平8−143985号公報
【特許文献2】特開2002−206121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マグネシウムまたはマグネシウム合金の溶湯を溶解・保持する場合、溶湯の酸化・燃焼を防止するために、保護ガスを供給している。その保護ガスの供給方法として、炉蓋や炉内に配管を組み供給を行う、または材料投入用の可動蓋に配管を取り付けることで、可動蓋の開閉と同期して炉内に供給を行っている。このときの配管は固定されているため、溶湯表面上に生成されている保護被膜の破壊された部分を優先的に被膜の再形成を行うことができない。
【0005】
よって、本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、破壊された保護被膜を効率よく再形成できるマグネシウム溶解装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明にて講じた技術的手段は、請求項1に記載の様に、マグネシウム溶湯を貯留する溶解炉と、該溶解炉の上部に取り付けられ、前記マグネシウム溶湯を覆う固定蓋と、該固定蓋に設けられ、上方に開口し、マグネシウム鋳塊を前記溶解炉内に投入するための投入口と、前記マグネシウム溶湯の酸化を防ぐべく前記溶解炉内に保護ガスを供給するガス供給配管と、を備えるマグネシウム溶解装置において、前記ガス供給配管は、前記マグネシウム鋳塊が前記投入口を介して前記溶解炉内に投入される場合に、前記マグネシウム溶湯の表面のうち前記投入口の下方部分に前記保護ガスを供給する構成としたことである。
【0007】
好ましくは、請求項2に記載の様に、前記投入口を覆い、前記マグネシウム鋳塊が前記溶解炉内に投入される場合に開放される可動蓋と、該可動蓋と前記ガス供給配管とを連結し、前記可動蓋の開放にともなって、前記ガス供給配管の先端を、前記マグネシウム溶湯の表面のうち前記投入口の下方部分に向けるリンク機構と、をさらに備えると良い。
【発明の効果】
【0008】
材料(マグネシウム鋳塊)が投入口を介して溶解炉に投入される場合、マグネシウム溶湯の表面のうち、投入口の下方部分の保護被膜が破壊される。本発明によれば、材料が溶解炉内に投入される場合、保護被膜が破壊された後、この保護被膜が破壊された部分に保護ガスが直ちに供給される。これにより、破壊された保護被膜が効率よく再形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を基に説明する。
【0010】
図1は、本発明に係るマグネシウム溶解装置の側面図、図2は、マグネシウム溶解装置の前面図である。
【0011】
溶解炉1の固定蓋3の内部に、保護ガス8を導入するための配管5を設ける。カップリング6を介し、配管5とノズル7を繋ぐ。ノズル7を支持するため、固定蓋3に支え(図示なし)を設置する。固定蓋3には、上方に開口する投入口3aが設けられる。投入口3aは、可動蓋4によって覆われる。可動蓋4の開放に同期して、ノズル7が回転できるリンク機構9を可動蓋4に設置する。これらのノズル7やリンク機構9はドロス除去の段取時に妨げにならず、溶湯の防燃効果を得られる高さに設置する。また、ドロス除去時にはリンク機構9と可動蓋4をはずす事で、作業するための開放面積を確保する。
【0012】
材料10(マグネシウム鋳塊)の投入時には、可動蓋4を開放し、投入口3aを介して材料10を溶湯2に供給する。このとき、溶湯表面には保護被膜11が形成されているが、材料10により被膜破壊箇所12が発生する。この被膜破壊箇所12は大気に接触すると燃焼しやすいので、破壊されたときから保護ガス8を塗布し、新しい被膜を形成しなくてはならない。そのために、可動蓋4に設置されたリンク機構9によりノズル7の先端を回転させ、被膜破壊箇所12付近に向け保護ガス8を塗布する。
【0013】
今までの配管では、溶湯表面の既存の被膜付近に保護ガスを塗布するのみで、可動蓋を閉め溶湯上の雰囲気に流れ込む大気を遮断してからでないと被膜の破壊箇所に新しい被膜を効率よく形成できなかった。しかし、本発明の配管では、材料投入以前より被膜が破壊される付近にノズル先端を向け保護ガスを塗布し続けるので、被膜が破壊された直後から保護被膜の無い溶湯表面と保護ガスが反応し、効率よく新しい被膜を形成する。そのため、今までの配管に比べると、保護被膜を形成するまでの時間を短縮し、溶湯と大気との接触が減り燃焼を抑制できるので、溶湯歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るマグネシウム溶解装置の側面図。
【図2】マグネシウム溶解装置の前面図。
【符号の説明】
【0015】
1 溶解炉
2 マグネシウム溶湯
3 固定蓋
3a 投入口
4 可動蓋
7 ノズル
8 保護ガス
9 リンク機構
10 材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム溶湯を貯留する溶解炉と、
該溶解炉の上部に取り付けられ、前記マグネシウム溶湯を覆う固定蓋と、
該固定蓋に設けられ、上方に開口し、マグネシウム鋳塊を前記溶解炉内に投入するための投入口と、
前記マグネシウム溶湯の酸化を防ぐべく前記溶解炉内に保護ガスを供給するガス供給配管と、
を備えるマグネシウム溶解装置において、
前記ガス供給配管は、前記マグネシウム鋳塊が前記投入口を介して前記溶解炉内に投入される場合に、前記マグネシウム溶湯の表面のうち前記投入口の下方部分に前記保護ガスを供給する
ことを特徴とするマグネシウム溶解装置。
【請求項2】
前記投入口を覆い、前記マグネシウム鋳塊が前記溶解炉内に投入される場合に開放される可動蓋と、
該可動蓋と前記ガス供給配管とを連結し、前記可動蓋の開放にともなって、前記ガス供給配管の先端を、前記マグネシウム溶湯の表面のうち前記投入口の下方部分に向けるリンク機構と、
をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム溶解装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−162994(P2007−162994A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−358215(P2005−358215)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】