説明

マグネシウム粒子製造装置

【課題】マグネシウムの粒子を容易に製造できるマグネシウム粒子製造装置を得る。
【解決手段】押込みブロア1から供給される不活性ガスを絞り部4を介してホッパー6に導くベンチュリ2と、溶融したマグネシウム10を貯留すると共に、供給される不活性ガスによりマグネシウム10を加圧するタンディッシュ8とを備える。ベンチュリ2の絞り部4とタンディッシュ8とを供給管14により接続して、溶融したマグネシウム10を供給管14を介して絞り部4に供給してマグネシウムを粒子化する。また、ホッパー6を冷却してホッパー6に導かれた粒子状のマグネシウムを凝固する冷却機構16と、ホッパー6に接続されホッパー内の粒子状の凝固したマグネシウムを回収する回収容器20とを設けた。ホッパー6からの不活性ガスを押込みブロア1に戻す循環ブロア46を設け、ホッパー6に接続された真空ポンプ28を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシウムの粒子を製造するマグネシウム粒子製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1にあるように、反応容器内にマグネシウムと水とを供給して、加水分解反応を生成させ、熱エネルギーを得ると共に水素ガスを得る装置が提案されている。また、この装置では、マグネシウムの酸化物または水酸化物をレーザ還元してマグネシウムを再生する際、還元するレーザに太陽光励起レーザを使用して、マグネシウムを再生利用することが提案されている。
【特許文献1】特開2007−145686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
こうした従来のものでは、反応容器内でマグネシウムと水とによる加水分解反応を生成させる際、マグネシウムは粒子、あるいはマグネシウム粒子を成形した成形体を用いるのがよい。しかし、レーザ還元してマグネシウムを再生する際、マグネシウムのインゴットとして再生されるので、インゴットのままでは、加水分解反応に用いるには適さないという問題があった。
【0004】
本発明の課題は、マグネシウムの粒子を容易に製造できるマグネシウム粒子製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を達成すべく、本発明は課題を解決するため次の手段を取った。即ち、
押込みブロアから供給される不活性ガスを絞り部を介してホッパーに導くベンチュリと、溶融したマグネシウムを貯留すると共に、供給される不活性ガスにより前記マグネシウムを加圧するタンディッシュとを備え、前記ベンチュリの前記絞り部と前記タンディッシュとを供給管により接続して、溶融した前記マグネシウムを前記供給管を介して前記絞り部に供給して前記マグネシウムを粒子化し、また、前記ホッパーを冷却して前記ホッパーに導かれた粒子状のマグネシウムを凝固する冷却機構と、前記ホッパーに接続され前記ホッパー内の粒子状の凝固した前記マグネシウムを回収する回収容器とを備えたことを特徴とするマグネシウム粒子製造装置がそれである。また、前記ホッパーからの不活性ガスを前記押込みブロアに戻す循環ブロアを設けた構成としてもよい。更に、前記ホッパーに接続された真空ポンプを備えた構成としてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明のマグネシウム粒子製造装置は、タンディッシュから溶融したマグネシウムを供給管を介してベンチュリの絞り部に供給して、マグネシウムを粒子化し、ホッパーで凝固させて、回収容器に回収するので、マグネシウムの粒子を容易に製造できるという効果を奏する。また、ホッパーからの不活性ガスを循環ブロアにより押込みブロアに戻すことにより、不活性ガスを循環させて使用できる。更に、ホッパーに真空ポンプを接続することにより、空気を排除して、容易に不活性ガスを満たすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、1は押込みブロアで、押込みブロア1は図示しないガスタンク等からのアルゴンガス等の不活性ガスをベンチュリ2に供給する。ベンチュリ2は流路が絞られた絞り部4を備えると共に、ベンチュリ2はホッパー6に接続され、供給された不活性ガスを絞り部4を介してホッパー6に導くように構成されている。
【0008】
8はタンディッシュで、タンディッシュ8は溶融したマグネシウム10を貯留すると共に、供給されるアルゴンガス等の不活性ガスにより、タンディッシュ8内の溶融したマグネシウム10を加圧することができるように密閉されて構成されている。また、タンディッシュ8の外周にコイル12を配置し、高周波誘導加熱によりマグネシウム10を加熱して、マグネシウム10の凝固を防止するようにしてもよい。
【0009】
ベンチュリ2の絞り部4には供給管14の一端が接続されて、供給管14の端が絞り部4に開口されている。供給管14の他端はタンディッシュ8に接続されており、タンディッシュ8内の底部近傍で開口されている。
【0010】
ホッパー6の外周に冷却水を循環して、ホッパー6内を冷却する冷却機構16が設けられている。また、ホッパー6の底部には回収管18の一端が接続されており、回収管18の他端は、密閉された回収容器20に接続されている。尚、回収管18の途中には遮断弁22が介装されている。また、回収容器20はグローブボックス24内に配置され、グローブボックス24には排気ブロア26が接続されて、グローブボックス24内の排気を行うことができるように構成されている。
【0011】
ホッパー6には、真空ポンプ28が接続されると共に、ホッパー6の底部側にはサイクロン30に不活性ガスを導く排気管32が接続されている。サイクロン30はホッパー6から排気される不活性ガスに含まれるマグネシウム10の微粒子を分離するもので、分離した微粒子を密閉された回収容器34に回収する。回収容器34はグローブボックス36内に配置され、グローブボックス36には排気ブロア38が接続されて、グローブボックス36内の排気を行うことができるように構成されている。
【0012】
サイクロン30から排気される不活性ガスはバグフィルタ39に導かれ、バグフィルタ39は不活性ガス中に含まれる更に細かな微粒子を分離するもので、分離した微粒子を密閉された回収容器40に回収するものである。回収容器40はグローブボックス42内に配置され、グローブボックス42には排気ブロア44が接続されて、グローブボックス42内の排気を行うことができるように構成されている。
【0013】
バグフィルタ39には循環ブロア46が接続されており、バグフィルタ39からの不活性ガスをガス冷却器48に供給するように接続されている。ガス冷却器48は供給される冷却水により不活性ガスを冷却する。ガス冷却器48は押込みブロア1に接続されており、冷却された不活性ガスが押込みブロア1に戻されて、不活性ガスが循環利用される。尚、図示しないバルブの切替により、ガス冷却器48を通ったガスを排出できるように構成されている。
【0014】
次に、前述した本実施形態のマグネシウム粒子製造装置の作動について説明する。
まず、真空ポンプ28を運転して、ベンチュリ2、タンディッシュ8、ホッパー6、サイクロン30、バグフィルタ39、各回収容器20,34,40等の系内の空気を排出する。その他の機器とは、図示しないバルブ等により遮断して気密を保てるようにする。目標とする圧力は、例えは0.133Paとすればよい。目標の圧力に達したときには、図示しないバルブを閉じて気密を保持し、真空ポンプ28の運転を停止する(減圧工程)。
【0015】
次に、減圧したベンチュリ2、タンディッシュ8、ホッパー6、サイクロン30、バグフィルタ39、各回収容器20,34,40等にアルゴンガス等の不活性ガスを、大気圧に等しくなるまで導入する(第1次吸気工程)。
【0016】
続いて、大気圧に達した後も、不活性ガスの導入を継続し、大気圧の1.1倍に達したときには、遮断している図示しないバルブを開いて、他の機器にも不活性ガスを導入する。その際、図示しないバルブを開いて、循環ブロア46を低速で運転して、系内の空気を少しずつ追い出す。図示しない酸素濃度計と圧力計とにより、系内の酸素濃度と圧力を測定し、設定値に達したときにはバルブを閉じて、不活性ガスを系内で循環させる(第2次吸気工程)。
【0017】
循環ブロア46と押込みブロア1とを、操業時の条件で運転する。不活性ガスが若干系外にリークするが、酸素濃度と系内圧力が設定値となるように、不活性ガスの導入を制御する。また、絞り部4の静圧が、設定値となるように、押込みブロア1を制御して、不活性ガスの流速を制御する。更に、冷却水の供給を開始すると共に、排気ブロア26,38,44も運転する(溶湯受入準備工程)。
【0018】
次に、タンディッシュ8に溶融したマグネシウム10を注入する。溶融したマグネシウム10は、図示しない溶融炉で溶融してメタルポンプで供給するとよい。溶融したマグネシウム10が規定値以上タンディッシュ8に注入されたときには、不活性ガスを設定圧力となるようにタンディッシュ8に導入する。
【0019】
これにより、供給管14を介して溶融したマグネシウム10が絞り部4に噴出され、高速の不活性ガスとマグネシウム10の溶湯の表面張力とにより、マグネシウム10の溶湯が粒子化する(いわゆるガスアトマイズ法)。不活性ガスが連続的に供給されるので、系内の圧力が徐々に上昇する。設定圧以上になったら、自動的に屋外に排気し、系内の圧力を一定に保つようにする。
【0020】
粒子状になったマグネシウム10は、ベンチュリ2を通ってホッパー6に導入され、ホッパー6内で不活性ガスと冷却水とで冷却され、溶融潜熱が奪われて凝固し、マグネシウムの固体金属粒子になる(アトマイズ工程)。
【0021】
マグネシウム粒子は、ホッパー6から回収管18を介して回収容器20内に回収される。一部の小さなマグネシウム粒子は不活性ガスと共に排気管32を介してサイクロン30に排出される。
【0022】
サイクロン30では、不活性ガスに含まれるマグネシウム粒子を分離して、回収容器34に回収する。また、不活性ガスは更にバグフィルタ39に導入され、バグフィルタ39では更に細かなマグネシウム粒子を分離・捕捉して、回収容器40に回収する。そして、不活性ガスはガス冷却器48により冷却されて、押込みブロア1に戻され、再び、ベンチュリ2に供給されて循環利用される。
【0023】
各回収容器20,34,40には、マグネシウム粒子と不活性ガスとが入っており、グローブボックス24,36,42内で各回収容器20,34,40の内部を空気に置換する。回収容器20,34,40の蓋を開けて、マグネシウム粒子を回収する。グローブボックス24,36,42内は、排気ブロア26,38,44により大気圧より若干低い圧力(例えば、−50Pa)に維持し、作業者が不活性ガスに曝露されないようにする(回収工程)。
【0024】
以上本発明はこの様な実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態としてのマグネシウム粒子製造装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0026】
1…押込みブロア 2…ベンチュリ
4…絞り部 6…ホッパー
8…タンディッシュ 10…マグネシウム
12…コイル 14…供給管
16…冷却機構 18…回収管
20,34,40…回収容器
26,38,44…排気ブロア
28…真空ポンプ 30…サイクロン
39…バグフィルタ 46…循環ブロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押込みブロアから供給される不活性ガスを絞り部を介してホッパーに導くベンチュリと、溶融したマグネシウムを貯留すると共に、供給される不活性ガスにより前記マグネシウムを加圧するタンディッシュとを備え、
前記ベンチュリの前記絞り部と前記タンディッシュとを供給管により接続して、溶融した前記マグネシウムを前記供給管を介して前記絞り部に供給して前記マグネシウムを粒子化し、
また、前記ホッパーを冷却して前記ホッパーに導かれた粒子状のマグネシウムを凝固する冷却機構と、前記ホッパーに接続され前記ホッパー内の粒子状の凝固した前記マグネシウムを回収する回収容器とを備えたことを特徴とするマグネシウム粒子製造装置。
【請求項2】
前記ホッパーからの不活性ガスを前記押込みブロアに戻す循環ブロアを設けたことを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム粒子製造装置。
【請求項3】
前記ホッパーに接続された真空ポンプを備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のマグネシウム粒子製造装置。

【図1】
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