説明

マグネトロンスパッタリング装置

【課題】ターゲットの使用効率や生産性を向上させることができるマグネトロンスパッタリング装置を提供する。
【解決手段】マグネトロンスパッタリング装置1は、ターゲットが保持される保持面11aを有するカソード電極11と、ターゲット上に磁界を形成すると共に保持面11aに直交する回転軸Z81で回転する磁界形成部80とを備える。磁界形成部80は、重心O82が回転軸以外の位置となるように配置されてカソード電極11と対向する第1の磁極面82aを有する柱状の第1の磁石82と、重心O83が回転軸上又はその近傍に位置するように配置されて第1の磁石82を囲う筒状の第2の磁石83とを備えている。第1の磁極面82aは、保持面11aとの距離が、第1の磁石82と第2の磁石83との距離が最も短い位置A82で最も長く、最も長い位置B82で最も短い傾斜面である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲット上に磁界を形成してスパッタリングを行うマグネトロンスパッタリング装置に係り、特にターゲット上に磁界を形成するための磁界形成部をターゲットの表面に沿って回転させる機構を有するマグネトロンスパッタリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スパッタリング装置は、スパッタリング法を用いてガラス、セラミックス、プラスチック、金属、またはその他の材料を主成分とする構造体の表面に、金属或いはその化合物または混合物等の薄膜を形成するものであり、光情報記録媒体、半導体デバイス、電気電子部品の様々な分野における成膜装置として広く使用されている。
特に、マグネトロンスパッタリング装置は、成膜効率に優れ、高い成膜速度が得られることから、近年のスパッタリング装置の主流になっている。
【0003】
マグネトロンスパッタリング装置は、ターゲット上に磁界を生じさせ、この磁界によりターゲット上近傍にプラズマの高密度領域を形成し、このプラズマの高密度領域で活性化されたアルゴン等の不活性原子がターゲットに加速度的に衝突することによって、ターゲット材料が飛散して構造体の表面に堆積されることによりこのターゲット材料からなる薄膜を形成するものである。
【0004】
しかしながら、従来のマグネトロンスパッタリング装置では、磁界により形成されるプラズマの高密度領域が極狭い領域のみに形成されるため、この高密度領域に対応するターゲットの極狭い領域のみに不活性原子が集中して衝突する。
このため、ターゲットが部分的に削られてエロージョンと呼ばれる溝が形成される。
従って、従来のマグネトロンスパッタリング装置では、ターゲットの極一部のみをスパッタリングに用いることができるものの、それ以外の部分はスパッタリングに用いることができないので、ターゲットの使用効率が悪くその改善が望まれている。
【0005】
そこで、ターゲットの使用効率を向上させる手段の一例が特許文献1〜3に開示されている。
特許文献1〜3に開示されている発明は、円柱状の第1の磁石と、この第1の磁石とは極性が逆向きになるようにかつ第1の磁石を囲うように設けられた円筒状の第2の磁石とを、ターゲットの表面に沿う方向に偏心回転運動させることにより、プラズマの高密度領域が2つの磁石の回転方向に沿って移動するため、ターゲットの削られる範囲を拡大させて、ターゲットの使用効率の向上を図るものである。
【特許文献1】特開平5−179441号公報
【特許文献2】特開2004−143594号公報
【特許文献3】特開平7−166346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているような従来のマグネトロンスパッタリング装置では、プラズマの高密度領域は、第1の磁石と第2の磁石との略中間の位置に形成されるためターゲットの外縁部近傍の領域にまでは及ばない。従って、ターゲットの外縁部近傍の領域をスパッタリングに用いることが難しく、ターゲットの使用効率のさらなる改善が望まれる。
【0007】
ところで、第1の磁石及び第2の磁石とターゲットとの距離が短いほど、ターゲット上に強い磁界が形成されるので、より高い成膜速度が得られる。通常、第1の磁石は第2の磁石よりも磁界の強度が大きいので、成膜速度は、特に第1の磁石とターゲットとの距離に強く依存する。
そして、成膜速度が速いほど、所定の膜厚に達するまでのスパッタリング時間を短くできるため、生産性を向上させることができる。
しかしながら、特許文献2に開示されているような従来のマグネトロンスパッタリング装置では、第2の磁石とターゲットとの距離が、一部の領域で、第1の磁石とターゲットとの距離及び上記一部の領域を除く他の領域における第2の磁石とターゲットとの距離よりも短いので、この一部の領域におけるターゲットとの距離が、他の領域におけるターゲットとの距離を制限するため、第1の磁石及び他の領域における第2の磁石をターゲットに十分に接近されることが難しい。
そのため、ターゲット表面上での漏洩磁界を大きくすることが困難になるので、成膜速度を向上させることが困難になる。
また、ニッケルなどの強磁性体をスパッタリングする場合は、漏洩磁界がターゲットに吸収されやすいため、磁石とターゲットの距離を極力接近させ、吸収されてもなおかつ磁界がターゲット面上に漏れるようにしなければ、マグネトロン放電を起こすことが出来ない。そのため、特に成膜速度及び強磁性体の成膜において、それらの生産性についてさらなる改善が望まれる。
【0008】
また、特許文献3に開示されているような従来のマグネトロンスパッタリング装置では、ターゲットの外縁部近傍の領域における第2の磁石とターゲットとの距離を短くすることによってこの領域のターゲットが選択的に削られていくので、成膜された膜の厚さ分布の均一性が向上するものの、今度はターゲットの外縁部近傍のみが削られていくので、ターゲットの使用効率についてさらなる改善が望まれる。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、ターゲットの使用効率が向上し、生産性が向上するマグネトロンスパッタリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本願各発明は次のマグネトロンスパッタリング装置を提供する。
1)ターゲット(TG1)が保持される保持面(11a)を有するカソード電極(11)と、前記カソード電極の前記保持面とは反対側に離間して設けられ、前記保持面に保持された前記ターゲット上に磁界を形成すると共に前記保持面に直交する回転軸(Z81)で回転する磁界形成部(80)と、を備え、前記磁界形成部は、重心(O82)が前記回転軸以外の位置となるように配置され、前記カソード電極と対向する第1の磁極面(82a)を有する柱状の第1の磁石(82)と、重心(O83)が前記回転軸上又はその近傍に位置するように配置され、前記カソード電極と対向し前記第1の磁極面とは磁極の異なる第2の磁極面(83a)を有し、前記第1の磁石を囲う筒状の第2の磁石(83)と、を備え、前記第1の磁極面は、前記保持面に対し、前記保持面との距離が、前記第1の磁極面と前記第2の磁極面との距離が最も短い位置(A82)で最も長く、前記第1の磁極面と前記第2の磁極面との距離が最も長い位置(B82)で最も短い傾斜面であることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置(1)。
2)前記第2の磁極面と前記保持面との距離(H83)が、前記第1の磁極面と前記保持面との最長距離(H82max)よりも長くなされていることを特徴とする1)記載のマグネトロンスパッタリング装置。
3)ターゲット(TG1)が保持される保持面(11a)を有するカソード電極(11)と、前記カソード電極の前記保持面とは反対側に離間して設けられ、前記保持面に保持された前記ターゲット上に磁界を形成すると共に前記保持面に直交する回転軸(Z281)で回転する磁界形成部(280)と、を備え、前記磁界形成部は、重心(O282)が前記回転軸以外の位置となるように配置され、前記カソード電極と対向する第1の磁極面(282a)を有する円柱状の第1の磁石(282)と、重心(O283)が前記回転軸上又はその近傍に位置するように配置され、前記カソード電極と対向し前記第1の磁極面とは磁極の異なる第2の磁極面(283a)を有し、前記第1の磁石を囲う楕円筒状の第2の磁石(283)と、を備え、前記第1の磁石は、その重心(O282)が前記第2の磁石の重心(O283)から長径方向に所定の距離(L282)離間した位置になるように配置されていることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置(200)。
4)前記第1の磁極面は、前記保持面に対し、前記保持面との距離が、前記第1の磁極面と前記第2の磁極面との距離が最も短い位置で最も長く、前記第1の磁極面と前記第2の磁極面との距離が最も長い位置で最も短い傾斜面であることを特徴とする3)記載のマグネトロンスパッタリング装置。
5)ターゲット(TG1)が保持される保持面(11a)を有するカソード電極(11)と、前記カソード電極の前記保持面とは反対側に離間して設けられ、前記保持面に保持された前記ターゲット上に磁界を形成すると共に前記保持面に直交する回転軸(Z381)で回転する磁界形成部(380)と、を備え、前記磁界形成部は、重心(O382)が前記回転軸以外の位置となるように配置され、前記カソード電極と対向する第1の磁極面(382a)を有する楕円柱状の第1の磁石(382)と、重心(O383)が前記回転軸上又はその近傍に位置するように配置され、前記カソード電極と対向し前記第1の磁極面とは磁極の異なる第2の磁極面(383a)を有し、前記第1の磁石を囲う円筒状の第2の磁石(383)と、を備え、前記第1の磁石は、その重心(O382)が前記第2の磁石の重心(O383)から前記第1の磁石の短径方向に所定の距離(L382)離間した位置になるように配置されていることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置(300)。
6)前記第1の磁極面は、前記保持面に対し、前記保持面との距離が、前記第1の磁極面と前記第2の磁極面との距離が最も短い位置で最も長く、前記第1の磁極面と前記第2の磁極面との距離が最も長い位置で最も短い傾斜面であることを特徴とする5)記載のマグネトロンスパッタリング装置。
7)ターゲット(TG2)が保持される保持面(111a)を有するカソード電極(111)と、前記カソード電極の前記保持面とは反対側に離間して設けられ、前記保持面に保持された前記ターゲット上に磁界を形成すると共に前記保持面に直交する回転軸(ZTG2)で回転する磁界形成部(680)と、を備え、前記磁界形成部は、重心(O682)が前記回転軸から所定の距離(L682)離間した第1の位置になるように配置され、前記カソード電極と対向する第1の磁極面(682a)を有する円柱状の第1の磁石(682)と、重心(O683)が前記回転軸と前記第1の位置との間の第2の位置になるように配置され、前記カソード電極と対向し前記第1の磁極面とは磁極の異なる第2の磁極面(683a)を有し、前記第1の磁石を囲う円筒状の第2の磁石(683)と、を備え、前記第1の磁極面は、前記保持面に対し、前記保持面との距離が、前記第1の磁極面と前記第2の磁極面との距離が最も短い位置(A682)で最も長く、前記第1の磁極面と前記第2の磁極面との距離が最も長い位置(B682)で最も短い傾斜面であり、前記第2の磁石は、前記回転軸に対して前記第1の磁石の重心(O682)から離れた領域に、前記第2の磁極面よりも前記保持面との距離が短くなされた第3の磁極面(683b)を有することを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置(600)。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置によれば、ターゲットの使用効率が向上し、成膜速度が向上し、生産性が向上するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態を、好ましい実施例である第1実施例〜第9実施例により図1〜図19を用いて説明する。
【0013】
<第1実施例>
まず、本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置の第1実施例について図1〜図5を用いて説明する。
図1は、本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置の第1実施例を説明するための図であり、図1(b)はターゲット側から見たときの磁界形成部の平面図、図1(a)は図1(b)中のA−B線における模式的断面図である。
図2は、ターゲットの中心からの位置とその位置におけるターゲットのスパッタリング後の厚さとの関係を示すグラフである。
図3は、ターゲットの中心からの位置とその位置におけるターゲット上の磁界強度との関係を示すグラフである。
図4は、図3中の”D1”及び”D2”をそれぞれ拡大したものである。
図5は、図4の測定結果に基づいて算出された、第1の磁石の傾斜表面における高低差と磁界強度の変化量との関係を示すグラフである。
なお、第1実施例では略円板状のターゲットを用いた場合を例に挙げて説明するが、ターゲットの形状についてはこれに限定されるものではない。
【0014】
図1に示すように、マグネトロンスパッタリング装置1は、主として、カソード部10と、カソード部10を所定の間隙を有して囲うカソードシールド部20と、カソード部10に離間して対向配置されたアノード電極30と、これらカソード部10,カソードシールド部20,及びアノード電極30を収容する真空チャンバ40と、真空チャンバ40内を減圧する真空ポンプ等の減圧手段50と、カソード部10に接続された電源60と、後述する磁界形成部80を回転させる回転駆動装置70と、を有して構成されている。
【0015】
カソード部10は、主として、略円板状のターゲットTG1が固定される保持面11aを有するカソード電極11と、カソード電極11が固定されるカソード筐体12と、カソード筐体12内に収容されてターゲットTG1上に磁界を形成する磁界形成部80と、を有して構成されている。
また、カソード電極11がカソード筐体12に固定された際に、カソード筐体12の内部A12は密閉された状態になる。
【0016】
磁界形成部80は、主として、略円板状の支持台81と、支持台81上に固定された柱状の第1の磁石82と、支持台81上に第1の磁石82を囲うように固定された筒状の第2の磁石83と、を有して構成されている。
第1実施例では、第1の磁石82を円柱形状とし、第2の磁石83を円筒形状とした。
また、第1の磁石82及び第2の磁石83としては、FeNdB(鉄・ネオジム・ホウ素)やCoSm(コバルト・サマリウム)等の強い磁界強度を有する希土類を主成分とする永久磁石を用いることが好ましい。また、第1の磁石82のみに上記の永久磁石を用い、第2の磁石83としてベース部分と共に軟鉄等の材料を用い、第1の磁石82によって磁化された構成としても良い。
【0017】
支持台81には、ターゲットTG1が、その中心軸ZTG1と支持台81の中心軸Z81とが略一致するように固定されている。
【0018】
第1の磁石82は、その重心O82を通り支持台81の中心軸Z81に対して平行な中心線Z82と支持台81の中心軸Z81とが所定の距離L82を有するように支持台81上に固定されている。
また、第1の磁石82は、少なくともカソード電極11(保持面11a)に対向する磁極面82a(図1における上側の面)が、保持面11aに対して所定の高低差T1(または所定の傾斜角度θ1)を有して傾斜した傾斜面となっている。
第1実施例では、支持台81上に、第1の磁石82の磁極面82aを傾斜面とするための傾斜部材84を設け、この傾斜部材84上に第1の磁石82を固定した。傾斜部材84の傾斜角度によって上記磁極面(傾斜面)82aの高低差T1及び傾斜角度θ1を調整することができる。
【0019】
第2の磁石83は、その重心O83を通る中心線Z83が支持台81の中心軸Z81と一致する又は上記中心軸Z81の近傍に位置するように、かつ、磁極の向きが第1の磁石82とは逆向きになるように支持台81上に固定されている。
図1では、保持面11aに対向する磁極面82a,83aの磁極を、第1の磁石82がN極、第2の磁石83がS極として表しているが、これに限定されるものではなく、第1の磁石82がS極、第2の磁石83がN極としてもよい。
また、第2の磁石83は、その磁極面83aからカソード電極11の保持面11aまでの距離H83が、第1の磁石82の磁極面82aから上記保持面11aまでの最長距離H82maxよりも長くなるように設計されている。
【0020】
また、磁界形成部80は、これら第1の磁石82と第2の磁石83とによって生じる磁界がターゲットTG1を通過してターゲットTG1上にまで強い磁界強度を有して及ぶように、ターゲットTG1に近接して配置されている。
【0021】
第1の磁石82は、その磁極面(傾斜面)82aとカソード電極11の保持面11aとの距離が、磁極面82aと磁極面83aとの距離が最も短い位置(図1における右側の位置)A82で最も長く、磁極面82aと磁極面83aとの距離が最も長い位置(図1における左側の位置)B82で最も短くなるように、配置されている。
【0022】
従って、位置A82においては、第1の磁石82(磁極面82a)と第2の磁石83(磁極面83a)との距離が最も短いため発生する磁界の強度は最も大きく、かつ、第1の磁石82とターゲットTG1との距離が最も長いためターゲットTG1上に形成される磁界の強度は最も小さくなる。
また、位置A82においては、第1の磁石82と第2の磁石83との距離を2分する位置がターゲットTG1の中心から離れた位置にあり、かつ、第2の磁石83の磁極面83aが、第1の磁石82の磁極面82aよりもターゲットTG1から離れた位置にあるので、磁界は、ターゲットTG1の中心から離れた位置からさらにその外側に向かって放物線を描くように形成される。
後述する第1のプラズマの高密度領域PL1は、ターゲットTG1上の上記磁界が形成されている領域、即ち、ターゲットTG1の外縁近傍の領域上に形成される。
【0023】
一方、位置B82においては、第1の磁石82(磁極面82a)と第2の磁石83(磁極面83a)との距離が最も長いため発生する磁界の強度は最も小さく、かつ、第1の磁石82とターゲットTG1との距離が最も短いのでターゲットTG1上に形成される磁界の強度は最も大きくなる。
また、位置B82においては、第1の磁石82と第2の磁石83との距離を2分する位置がターゲットTG1の中心近傍の位置となるので、磁界は、ターゲットTG1の中心近傍に形成される。
後述する第2のプラズマの高密度領域PL2は、ターゲットTG1の上記磁界が形成されている領域上、即ち、ターゲットTG1の中心近傍の領域上に形成される。
【0024】
そして、第1の磁石82(磁極面82a)と第2の磁石83(磁極面83a)との距離、及び、第1の磁石82の磁極面(傾斜面)82aの高低差T1(または傾斜角度θ1)のバランスを最適化することにより、位置A82及び位置B82における各磁界の強度のバランスを調整することができると共に、第1のプラズマの高密度領域PL1及び第2のプラズマの高密度領域PL2が形成されるターゲットTG1の径方向のそれぞれの位置のバランスを調整することができる。
【0025】
なお、図1では、磁界形成部80によって生じる磁力線を破線で模式的に表している。
【0026】
回転駆動装置70は、主として、支持台81に固定された回転軸部71と、回転軸部71をその軸中心に回転させるモータ等の駆動装置72と、を有して構成されている。
そして、駆動装置72により回転軸部71を回転させることにより、磁界形成部80は、支持台81の中心軸Z81を回転軸として回転する。
【0027】
カソードシールド部20は、カソード電極11を露出させる開口部20aを有している。
【0028】
アノード電極30は、基板やウエハ等の構造体S1を、ターゲットTG1に対向させて保持することが可能である。
【0029】
真空チャンバ40は、主として、減圧手段50に接続されて真空チャンバ40内の気体が排気される排気口41と、アルゴン(Ar)ガス等の不活性ガスや所定の混合ガス等が導入されるガス導入口42と、カソード筐体12の内部A12に冷却水を導入するための給水管43と、カソード筐体12の内部A12から冷却水を排出するための排水管44と、を有して構成されている。
回転軸部71が通るカソード筐体12の軸孔は、図示しないパッキン等のシール部材により防水対応がなされている。
そして、外部から給水管43を通ってカソード筐体12の内部A12に冷却水を導入しつつこの冷却水を排水管44から排出することにより、ターゲットTG1を、カソード電極11を介して連続的に冷却することができる。
【0030】
電源60は、一側がカソード筐体12に接続され、他側が接地されている。
電源60としては、スパッタリング装置に一般的に用いられているDC電源や高周波RF電源を用いることができる。
アノード電極30は真空チャンバ40を介して接地されており、カソード筺体12は真空チャンバ40に図示しない絶縁部材を介して固定されている。即ち、カソード筐体12(カソード電極11)と真空チャンバ40とは互いに絶縁されている。
そして、電源60から所定の電圧をアノード電極30とカソード電極11との間に印加することができる。
【0031】
次に、上述したマグネトロンスパッタリング装置1を用いたスパッタリング方法について、同じく図1を用いて説明する。
【0032】
構造体S1をアノード電極30に保持した後、減圧手段50を稼動させて真空チャンバ40内の空気を排気口41から排気することにより、真空チャンバ40内を減圧する。
真空チャンバ40内の圧力が所定の値に達したら、減圧手段50を稼動させた状態で、真空チャンバ40内に不活性ガスや混合ガスをガス導入口42から導入する。第1実施例では、不活性ガスとしてアルゴン(Ar)ガスを用いた。
カソード筐体12の内部A12に冷却水を導入してターゲットTG1を冷却する。
回転駆動装置70により磁界形成部80を回転させる。
【0033】
電源60から所定の電圧をアノード電極30とカソード電極11との間に印加することによって、ターゲットTG1の外縁近傍の領域上に第1のプラズマの高密度領域PL1が形成され、ターゲットTG1の中心近傍の領域上に第2のプラズマの高密度領域PL2が形成される。
第1のプラズマの高密度領域PL1及び第2のプラズマの高密度領域PL2は、磁界形成部80の回転方向に沿って移動する。
即ち、第1のプラズマの高密度領域PL1は、ターゲットTG1の外縁近傍の領域上に環状に形成され、第2のプラズマの高密度領域PL2は、ターゲットTG1の中心近傍の領域上に環状に形成される。
【0034】
真空チャンバ40内のアルゴン原子は、第1のプラズマの高密度領域PL1及び第2のプラズマの高密度領域PL2でそれぞれ活性化されて正イオンとなり、カソード電極11に引き寄せられる。
そして、この活性化されたアルゴン原子がターゲットTG1に加速度的に衝突することによって、このターゲットTG1を構成するターゲット材料が飛散して構造体S1の表面(図1における下面)側に堆積することにより、このターゲット材料からなる薄膜が形成される。
【0035】
ここで、上述したマグネトロンスパッタリング装置1による効果について、図1を参照しながら、図2〜図5を用いて説明する。
【0036】
まず、マグネトロンスパッタリング装置1(図1参照)における磁界形成部80の第1の磁石82の磁極面(傾斜面)82aの高低差T1(傾斜角度θ1)とスパッタリングによりターゲットTG1に形成されたエロージョンとの関係について、図2を用いて説明する。
図2は、マグネトロンスパッタリング装置1における磁界形成部80の第1の磁石82の磁極面(傾斜面)82aの高低差T1(傾斜角度θ1)とスパッタリングによりターゲットTG1に形成されたエロージョンとの関係を示すグラフである。横軸はターゲットTG1の中心からの径方向の距離を示し、縦軸はターゲットTG1の厚さを示している。
また、図2において、(a)は第1の磁石82の磁極面82aの高低差T1が0mm(傾斜角度θ1が0°)の場合、即ち第1の磁石82の磁極面82aを傾斜させなかった場合を、(b)は上記高低差T1が1.5mm(傾斜角度θ1が1.7°)の場合を、(c)は上記高低差T1が2.5mm(傾斜角度θ1が2.86°)の場合を、それぞれ示している。
また、図2において、電源60をRF電源とし、この電源60によりアノード電極30とカソード電極11との間に印加される電力の値を500Wとして、115時間印加した結果を実線で、75時間印加した結果を波線で、印加される前の状態を一点鎖線で、それぞれ示している。
また、ターゲットTG1を、直径が5インチで厚さが4mmのニッケル(Ni)を主成分とする磁性体ターゲットとし、第1の磁石82の直径を50mm、第1の磁石82の中心線Z82と支持台81の中心軸Z81との距離L82を12mmとし、第2の磁石83の外周径及び内周径を100mm及び90mmとした。
【0037】
図2(a)に示すように、ターゲットTG1の中心から半径方向の異なる2箇所にそれぞれエロージョンER1(ER11),ER2(ER12)が互いに重なり合うように形成されている。
ターゲットTG1の外縁側のエロージョンER1(ER11)は、上述した第1のプラズマの高密度領域PL1により形成されたものである。
また、ターゲットTG1の中心側のエロージョンER2(ER12)は、上述した第2のプラズマの高密度領域PL2により形成されたものであり、上記中心側のエロージョンER1(ER11)よりも浅く形成されている。
このことから、ターゲットTG1の外縁側の磁界強度が中心側よりも強いことがわかる。
【0038】
図2(b)においても、ターゲットTG1の中心から半径方向の異なる2箇所にそれぞれエロージョンER3(ER13),ER4(ER14)が互いに重なり合うように形成されているが、ターゲットTG1の外縁側のエロージョンER3(ER13)と中心側のエロージョンER4(ER14)とは深さが同程度である。
このことから、ターゲットTG1の外縁側の磁界強度と中心側の磁界強度とが略同じであり、バランスが取れていることがわかる。
【0039】
また、図2(c)においても、ターゲットTG1の中心から半径方向の異なる2箇所にそれぞれエロージョンER5,ER6が互いに重なり合うように形成されているが、ターゲットTG1の外縁側のエロージョンER5と中心側のエロージョンER6とは深さが同程度である。
このことから、ターゲットTG1の外縁側の磁界強度と中心側の磁界強度とが略同じであり、バランスが取れていることがわかる。
また、上述した磁石構成であれば、強磁性体のニッケルターゲットの場合においても、第1の磁石をわずかに傾斜させるだけで上述した効果が得られ、ターゲット表面上にプラズマ収束が十分に可能な漏洩磁界を発生させることができるので、マグネトロン放電が可能である。
【0040】
また、図2(a)〜(c)において、エロージョンの断面積、即ちターゲットTG1が削られた部分の断面積が大きいほど、ターゲットの使用効率がよいものである。そして、ターゲットTG1の断面積に対する各エロージョンの断面積の比率を算出した結果、ターゲットの使用効率は、第1の磁石82の磁極面82aを傾斜させなかった場合では約40%{図2(a)の実線}であったのに対し、第1の磁石82の磁極面(傾斜面)82aの高低差T1を1.5mm(傾斜角度θ1を1.7°)とした場合には約48%{図2(b)の実線}に、上記高低差T1を2.5mm(傾斜角度θ1を2.86°)とした場合には約49%{図2(c)の実線}にそれぞれ向上していることを確認した。
ところで、エロージョン領域において、第1の磁石82の傾斜角度θ1が1.7°と2.86°との場合を比較すると、傾斜角度θ1が1.7°の方が、ターゲットTG1の中心側と外縁側のエロージョンの深さのバランスが取れているので、ターゲットTG1の使用効率が高いと推察されるが、第1の磁石82の傾斜角度θ1が大きいほど、ターゲットTG1の中心付近の非エロージョン領域が小さくなるため、結果として、傾斜角度θ1が2.86°の方が、ターゲットTG1の使用効率は約1%向上した。しかしながら、それ以上の角度になると、外縁側のエロージョン部分がより浅くなるため、ターゲット使用効率は低下する。
【0041】
次に、第1の磁石82の磁極面(傾斜面)82aの高低差T1(傾斜角度θ1)とこの高低差T1(傾斜角度θ1)に応じて形成される磁界のターゲットTG1上のその径方向における強度分布との関係について、図3〜図5を用いて説明する。
【0042】
図3は、マグネトロンスパッタリング装置1(図1参照)における磁界形成部80の第1の磁石82の磁極面(傾斜面)82aの高低差T1(傾斜角度θ1)とこの高低差T1(傾斜角度θ1)に応じて形成される磁界のターゲットTG1上のその径方向における強度分布との関係を示すグラフである。
図3において、“●”は、上記高低差T1が0mm(傾斜角度θ1が0°)の場合、即ち第1の磁石82の表面を傾斜させなかった場合を、“□”は上記高低差T1が1.0mm(傾斜角度θ1が1.15°)の場合を、“△”は上記高低差T1が2.0mm(傾斜角度θ1が2.3°)の場合を、“×”は上記高低差T1が2.5mm(傾斜角度θ1が2.86°)の場合を、それぞれ示している。
【0043】
図4は、図3におけるターゲットTG1(図1参照)の中心から径方向の距離(図3の横軸)が、−(マイナス)5mm〜−(マイナス)25mmの範囲(D1)及び25mm〜45mmの範囲(D2)をそれぞれ拡大した拡大図である。
【0044】
図5は、図4における測定データ線の傾きから算出した単位長さ(mm)当りの磁界強度の変化量と、第1の磁石82(図1参照)の磁極面(傾斜面)82aの高低差T1との関係を示すグラフである。図5において、“●”は上述したターゲットTG1の中心側の位置A82における磁界強度の変化量を、“■”は外縁側の位置B82における磁界強度の変化量をそれぞれ示している。
【0045】
図5に示すように、第1の磁石82の磁極面(傾斜面)82aの高低差T1が1.8mmのときに、上記位置A82における磁界強度の変化量と上記位置B82における磁界強度の変化量とが同じ値になっている。これは、ターゲットTG1の中心側(位置A82)に発生する磁界の強度と外縁側(B82)に発生する磁界の強度とのバランスが取れていることを表している。
ターゲットTG1の中心側と外縁側とのエロージョンのバランスを取るためには、ターゲットTG1の中心側と外縁側との磁界強度の差が±10%の範囲内であることが好ましく、±2%の範囲内であることがより好ましい。
従って、ターゲットTG1の中心側と外縁側とのエロージョンのバランスを取るためには、図5から、第1の磁石82の磁極面(傾斜面)82aの高低差T1を、1mm〜2.5mmの範囲内にする(または傾斜角度θ1を1.15°〜2.86°の範囲内にする)ことが好ましく、1.5mm〜2.0mmの範囲内にする(または傾斜角度θ1を1.7°〜2.3°の範囲内にする)ことがより好ましい。
【0046】
上述したマグネトロンスパッタリング装置1によれば、特に、ターゲット上に磁界を形成するための磁界形成部を、重心を通る中心線と磁界形成部の回転軸とが所定の距離を有するように配置されカソード電極と対向する第1の磁極面を有する柱状の第1の磁石と、重心を通る中心線が上記回転軸上に位置する又は上記回転軸の近傍に平行に位置するように配置されカソード電極と対向して第1の磁極面とは磁極の異なる第2の磁極面を有し第1の磁石を囲う筒状の第2の磁石と、を備え、第1の磁極面を、保持面に対して、保持面との距離が、第1の磁極面と第2の磁極面との距離が最も短い位置で最も長く、第1の磁極面と第2の磁極面との距離が最も長い位置で最も短い傾斜面とすることにより、ターゲットの中心近傍と外縁近傍とに、互いにバランスの取れたプラズマの高密度領域をそれぞれ形成することができるので、従来よりもターゲットの使用効率を向上させることができる。
【0047】
また、上述したマグネトロンスパッタリング装置1によれば、第1の磁石とターゲットとの距離が第2の磁石による制限を受けないため、この距離を短くすることが可能になる。これにより、ターゲット上に強い強度の磁界を形成することができるので、強磁性体ターゲットを使用した場合でも、十分にプラズマ収束が可能な漏洩磁界を発生させることができると共にターゲットの使用効率を向上させることができ、また従来よりもスパッタリング速度を速くすることができ、生産性を向上させることができる。
【0048】
<第2実施例>
次に、本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置の第2実施例について、図6を用いて説明する。
図6は、本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置の第2実施例を説明するための図であり、(b)はターゲット側から見たときの磁界形成部の平面図、(a)は(b)中のC−D線における模式的断面図である。
第2実施例のマグネトロンスパッタリング装置は、第1実施例のマグネトロンスパッタリング装置に対して、ターゲットを冷却するための冷却水が磁界形成部に接触しないように、磁界形成部をカソード筐体の外部に設けた構成としている点が主たる特徴である。
なお、第2実施例では略円板状のターゲットを用いた場合を例に挙げて説明するが、ターゲットの形状についてはこれに限定されるものではない。
【0049】
図6に示すように、マグネトロンスパッタリング装置100は、主として、カソード部110と、カソード部110を所定の間隙を有して囲うカソードシールド部120と、カソード部110に離間して対向配置されたアノード電極130と、カソード部110のアノード電極130とは反対側に設けられ磁界を発生する磁界形成部180と、これらカソード部110,カソードシールド部120,アノード電極130,及び磁界形成部180を収容する真空チャンバ140と、真空チャンバ140内を減圧する真空ポンプ等の減圧手段150と、カソード部110に接続された電源160と、磁界形成部180を回転する回転駆動装置170と、を有して構成されている。
【0050】
カソード部110は、主として、略円板状のターゲットTG2が固定される保持面111aを有するカソード電極111と、カソード電極111が固定されるカソード筐体112と、を有して構成されている。
また、カソード電極111がカソード筐体112に固定された際に、カソード筐体112の内部A112は密閉された状態になる。
また、カソード筐体112は、磁界形成部180を回転駆動装置170により回転した際に、磁界形成部180に接触しないように設計されている。
【0051】
磁界形成部180は、主として、略円板状の支持台181と、支持台181上に固定された柱状の第1の磁石182と、支持台181上に第1の磁石182を囲うように固定された筒状の第2の磁石183と、を有して構成されている。
第2実施例では、第1の磁石182を円柱形状とし、第2の磁石183を円筒形状とした。
第1の磁石182及び第2の磁石183としては、FeNdB(鉄・ネオジム・ホウ素)やCoSm(コバルト・サマリウム)等の強い磁界強度を有する希土類を主成分とする永久磁石を用いることが好ましい。また、第1の磁石182のみに上記の永久磁石を用い、第2の磁石183としてベース部分と共に軟鉄等の材料を用い、第1の磁石182によって磁化された構成としても良い。
【0052】
支持台181には、ターゲットTG2が、その中心軸ZTG2と支持台181の中心軸Z181とが略一致するように固定されている。
【0053】
第1の磁石182は、その重心O182を通り支持台181の中心軸Z181に対して平行な中心線Z182と、支持台181の中心軸Z181とが所定の距離L182を有するように支持台181上に固定されている。
また、第1の磁石182は、少なくともカソード電極111(保持面111a)に対向する磁極面182a(図6における上側の面)が、保持面111aに対して所定の高低差T2(または所定の傾斜角度θ2)を有して傾斜した傾斜面となっている。
第2実施例では、支持台181上に、第1の磁石182の磁極面182aを傾斜面とするための傾斜部材184を設け、この傾斜部材184上に第1の磁石182を固定した。傾斜部材184の傾斜角度によって上記磁極面(傾斜面)182aの高低差T2及び傾斜角度θ2を調整することができる。
【0054】
第2の磁石183は、その重心O183を通る中心線Z183が、支持台181の中心軸Z181と一致する又は上記中心軸Z181の近傍に平行に位置するように、かつ、磁極の向きが第1の磁石182とは逆向きになるように、支持台181上に固定されている。
図6では、保持面111aに対向する磁極面182a,183aの磁極を、第1の磁石182がN極、第2の磁石183がS極として表しているが、これに限定されるものではなく、第1の磁石182がS極、第2の磁石183がN極としてもよい。
また、第2の磁石183は、その磁極面183aからカソード電極111の保持面111aまでの距離H183が、第1の磁石182の磁極面182aから上記保持面111aまでの最長距離H182maxよりも長くなるように設計されている。
【0055】
また、磁界形成部180は、これら第1の磁石182と第2の磁石183とによって生じる磁界がターゲットTG2を通過してターゲットTG2上にまで強い磁界強度を有して及ぶように、ターゲットTG2に近接して配置されている。
【0056】
第1の磁石182は、その磁極面(傾斜面)182aとカソード電極111の保持面111aとの距離が、磁極面182aと磁極面183aとの距離が最も短い位置(図6における右側の位置)A182で最も長く、磁極面182aと磁極面183aとの距離が最も長い位置(図6における左側の位置)B182で最も短くなるように、配置されている。
【0057】
従って、位置A182においては、第1の磁石182(磁極面182a)と第2の磁石183(磁極面183a)との距離が最も短いため発生する磁界の強度は最も大きく、かつ、第1の磁石182とターゲットTG2との距離が最も長いためターゲットTG2上に形成される磁界の強度は最も小さくなる。
また、位置A182においては、第1の磁石182と第2の磁石183との距離を2分する位置がターゲットTG2の中心から離れた位置にあり、かつ、第2の磁石183の磁極面183aが、第1の磁石182の磁極面182aよりもターゲットTG2から離れた位置にあるので、磁界は、ターゲットTG2の中心から離れた位置からさらにその外側に向かって放物線を描くように形成される。
後述する第1のプラズマの高密度領域PL11は、ターゲットTG2上の上記磁界が形成されている領域、即ち、ターゲットTG2の外縁近傍の領域上に形成される。
【0058】
一方、位置B182においては、第1の磁石182(磁極面182a)と第2の磁石183(磁極面183a)との距離が最も長いため発生する磁界の強度は最も小さく、かつ、第1の磁石182とターゲットTG2との距離が最も短いのでターゲットTG2上に形成される磁界の強度は最も大きくなる。
また、位置B182においては、第1の磁石182と第2の磁石183との距離を2分する位置がターゲットTG2の中心近傍の位置となるので、磁界は、ターゲットTG2の中心近傍に形成される。
後述する第2のプラズマの高密度領域PL12は、ターゲットTG2の上記磁界が形成されている領域上、即ち、ターゲットTG2の中心近傍の領域上に形成される。
【0059】
そして、第1の磁石182(磁極面182a)と第2の磁石183(磁極面183a)との距離、及び、第1の磁石182の磁極面(傾斜面)182aの高低差T2(または傾斜角度θ2)のバランスを最適化することにより、位置A182及び位置B182における各磁界の強度のバランスを調整することができると共に、第1のプラズマの高密度領域PL11及び第2のプラズマの高密度領域PL12が形成されるターゲットTG2の径方向のそれぞれの位置のバランスを調整することができる。
【0060】
なお、図6では、磁界形成部180によって生じる磁力線を破線で模式的に表している。
【0061】
回転駆動装置170は、主として、支持台181に固定され第1のギア171を有する第1の回転軸部173、第2のギア174を有する第2の回転軸部175をその軸中心に回転させるモータ等の駆動装置172、及び第1のギア171と第2のギア174とに亘ってこれらを巻回するベルト176と、を有して構成されている。
そして、駆動装置172により第2の回転軸部175を回転させることにより、ベルト176及び第1のギア171を介して第1の回転軸部173が回転し、これにより、磁界形成部180は、支持台181の中心軸Z181を回転軸として回転する。
【0062】
カソードシールド部120は、カソード電極111を露出させる開口部120aを有している。
【0063】
アノード電極130は、基板やウエハ等の構造体S2を、ターゲットTG2に対向させて保持することが可能である。
【0064】
真空チャンバ140は、主として、減圧手段150に接続されて真空チャンバ140内の気体が排気される排気口141、アルゴン(Ar)ガス等の不活性ガスや所定の混合ガス等が導入されるガス導入口142、カソード筐体112の内部A112に冷却水を導入するための給水管143、及びカソード筐体112の内部A112から冷却水を排出するための排水管144を有している。
そして、外部から給水管143を通ってカソード筐体112の内部A112に冷却水を導入しつつこの冷却水を排水管144から排出することにより、ターゲットTG2を、カソード電極111を介して連続的に冷却することができる。
【0065】
電源160は、一側がカソード筐体112に接続され、他側が接地されている。
電源160としては、スパッタリング装置に一般的に用いられているDC電源や高周波RF電源を用いることができる。
アノード電極130は真空チャンバ140を介して接地されており、カソード筺体112は真空チャンバ140に図示しない絶縁部材を介して固定されている。即ち、カソード部110と真空チャンバ140とは互いに絶縁されている。
そして、電源160により、アノード電極130とカソード電極111との間に電圧を印加することができる。
【0066】
次に、上述したマグネトロンスパッタリング装置100を用いたスパッタリング方法について、同じく図6を用いて説明する。
【0067】
構造体S2をアノード電極130に保持した後、減圧手段150を稼動させて真空チャンバ140内の空気を排気口141から排気することにより、真空チャンバ140内を減圧する。
真空チャンバ140内の圧力が所定の値に達したら、減圧手段150を稼動させたままの状態で真空チャンバ140内に、不活性ガスや混合ガスをガス導入口142から導入する。第2実施例では、不活性ガスとしてアルゴン(Ar)ガスを用いた。
カソード筐体112の内部A112に冷却水を導入してターゲットTG2を冷却する。
回転駆動装置170により磁界形成部180を支持台181の中心軸Z181を回転軸として回転させる。
【0068】
電源160によりアノード電極130とカソード電極111との間に所定の電圧を印加することによって、ターゲットTG2の外縁近傍の領域上に第1のプラズマの高密度領域PL11が形成され、ターゲットTG2の中心近傍の領域上に第2のプラズマの高密度領域PL12が形成される。
第1のプラズマの高密度領域PL11及び第2のプラズマの高密度領域PL12は、磁界形成部180の回転方向に沿って移動する。
即ち、第1のプラズマの高密度領域PL11は、ターゲットTG2の外縁近傍の領域上に環状に形成され、第2のプラズマの高密度領域PL12は、ターゲットTG1の中心近傍の領域上に環状に形成される。
【0069】
真空チャンバ140内のアルゴン原子は、第1のプラズマの高密度領域PL11及び第2のプラズマの高密度領域PL12でそれぞれ活性化されて正イオンとなり、カソード電極111に引き寄せられる。
そして、この活性化されたアルゴン原子は、ターゲットTG2に加速度的に衝突するため、このターゲットTG2を構成するターゲット材料が飛散し、この飛散したターゲット材料が構造体S2の表面(図6における下面)側に堆積することにより、このターゲット材料からなる薄膜が形成される。
【0070】
上述したマグネトロンスパッタリング装置100によれば、特に、ターゲット上に磁界を形成するための磁界形成部を、重心を通る中心線と磁界形成部の回転軸とが所定の距離を有するように配置されカソード電極と対向する第1の磁極面を有する柱状の第1の磁石と、重心を通る中心線が上記回転軸と一致する又は上記回転軸の近傍に平行に位置するように配置されカソード電極と対向して第1の磁極面とは磁極の異なる第2の磁極面を有し第1の磁石を囲う筒状の第2の磁石と、を備え、第1の磁極面を、保持面に対して、保持面との距離が、第1の磁極面と第2の磁極面との距離が最も短い位置で最も長く、第1の磁極面と第2の磁極面との距離が最も長い位置で最も短い傾斜面とすることにより、ターゲットの中心近傍と外縁近傍とに、互いにバランスの取れたプラズマの高密度領域をそれぞれ形成することができるので、従来よりもターゲットの使用効率を向上させることができる。
【0071】
また、上述したマグネトロンスパッタリング装置100によれば、第1の磁石とターゲットとの距離が第2の磁石による制限を受けないため、この距離を短くすることが可能になる。これにより、ターゲット上に強い強度の磁界を形成することができるので、従来よりもスパッタリング速度を速くすることができ、生産性を向上させることができる。
【0072】
また、上述したマグネトロンスパッタリング装置100は、第1実施例のマグネトロンスパッタリング装置1に対して、第1の磁石182及び第2の磁石183が冷却水の流路の外側に配置されているため、磁石が冷却水中に長時間浸漬されることによって起こる錆の発生を防止することができる。この錆は冷却水の流路を詰まらせる原因になる。
また、第1実施例のマグネトロンスパッタリング装置1では、カソード筐体12と回転軸部71との境界部を通って冷却水が真空チャンバ40内に漏れないようにこの境界部をOリング等を用いて防水対応する必要があるが、Oリングは回転軸部71の回転等によって磨耗するため定期的なメンテナンスが必要になる。
これに対し、第2実施例のマグネトロンスパッタリング装置1では、第1の磁石182及び第2の磁石183が冷却水の流路の外側に配置されているため、上述した定期的なメンテナンスは特に必要ではない。
【0073】
上述したマグネトロンスパッタリング装置100によれば、第2の磁石183が第1の磁石182よりもカソード電極111から離れた位置に設けられており、また第1の磁石182の磁極面182aが傾斜面とされているので、これらによって形成された空隙部に冷却水の流路を配置することができる。
【0074】
<第3実施例>
次に、本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置の第3実施例について、図7及び図8を用いて説明する。
図7は、本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置の第3実施例を説明するための図であり、図7(b)はターゲット側から見たときの磁界形成部の平面図、(a)は(b)中のE−F線における模式的断面図である。
図8は、ターゲットの中心からの位置とその位置におけるターゲットのスパッタリング後の厚さとの関係を示すグラフであり、図8(a)は第3実施例を、図8(b)は第3実施例に対する比較例をそれぞれ示すものである。
【0075】
第3実施例のマグネトロンスパッタリング装置は、第1実施例のマグネトロンスパッタリング装置に対して磁界形成部の構成が異なり他の構成部は第1実施例と同じなので、磁界形成部について詳細に説明し、他の構成部についてはその説明を省略する。
【0076】
図7に示すように、マグネトロンスパッタリング装置200は、その磁界形成部280が、主として、略楕円板状の支持台281と、支持台281上に固定された略円柱状の第1の磁石282と、支持台281上に第1の磁石282を囲うように固定された略楕円筒状の第2の磁石283と、を有して構成されている。
また、第1の磁石282及び第2の磁石283としては、FeNdB(鉄・ネオジム・ホウ素)やCoSm(コバルト・サマリウム)等の強い磁界強度を有する希土類を主成分とする永久磁石を用いることが好ましい。また、第1の磁石282のみに上記の永久磁石を用い、第2の磁石283としてベース部分と共に軟鉄等の材料を用い、第1の磁石282によって磁化された構成としても良い。
【0077】
支持台281には、ターゲットTG1が、その中心軸ZTG1と支持台281の中心軸Z281とが略一致するように固定されている。
【0078】
第2の磁石283は、その重心O283を通る中心線Z283が支持台281の中心軸Z281と一致する又は上記中心軸Z181の近傍に位置するように支持台281上に固定されている。
【0079】
第1の磁石282は、その重心O282を通り支持台281の中心軸Z281に対して平行な中心線Z282が第2の磁石283の中心線Z283に対して第2の磁石283の長径方向{図7における右方向または左方向(第3実施例では右方向)}に所定の距離L282を有するように、支持台281上に固定されている。
また、第1の磁石282と第2の磁石283とは、磁極の向きが互いに逆向きになされている。
図7では、保持面211aに対向する磁極面282a,283aの磁極を、第1の磁石282がN極、第2の磁石283がS極として表しているが、これに限定されるものではなく、第1の磁石282がS極、第2の磁石283がN極としてもよい。
【0080】
また、磁界形成部280は、これら第1の磁石282と第2の磁石283とによって生じる磁界がターゲットTG1を通過してターゲットTG1上にまで強い磁界強度を有して及ぶように、ターゲットTG1に近接して配置されている。
【0081】
従って、磁界は、第1の磁石282(磁極面282a)と第2の磁石283(磁極面283a)との距離が短い領域{図7(a)における中心線Z282から右側の領域}ではターゲットTG1の中心から離れた位置から径方向に放物線を描くように形成され、第1の磁石282(磁極面282a)と第2の磁石283(磁極面283a)との距離が長い領域{図7(a)における中心線Z282から左側の領域}ではターゲットTG1の中心に近い位置から径方向に放物線を描くように形成される。
そして、プラズマの高密度領域は、磁界の分布に応じて形成されるため、第1の磁石282(磁極面282a)と第2の磁石283(磁極面283a)との距離が短い領域{図7(a)における中心線Z282から右側の領域}ではターゲットTG1の中心から離れた位置に形成され{図7(a)では“PL21”で示す}、第1の磁石282(磁極面282a)と第2の磁石283(磁極面283a)との距離が長い領域{図7(a)における中心線Z282から左側の領域}ではターゲットTG1の中心から近い位置に{図7(a)では“PL22”で示す}形成される。
そして、第1の磁石282の直径、第2の磁石283の長径及び短径、並びに距離L282のバランスを最適化することにより、プラズマの高密度領域の位置及び幅並びに磁界の強度のバランスを調整することができる。
なお、図7では、磁界形成部280によって生じる磁力線を破線で模式的に表している。
【0082】
ここで、上述したマグネトロンスパッタリング装置200による効果について、図7と共に図8を用いて説明する。
図8は、マグネトロンスパッタリング装置200を用いてスパッタリングを行ったときにターゲットTG1に形成されたエロージョンを示すものであり、図8(a)は第3実施例を示すものであり、図8(b)は第3実施例に対する比較例を示すものである。
また、図8は、横軸がターゲットTG1の中心からの径方向の距離を示し、縦軸がターゲットTG1の厚さを示している。
比較例は、前述の特許文献2に開示されている磁石構成と同様の磁石構成であり、また第3実施例に対して、第2の磁石が略円筒状である点が異なりそれ以外は第3実施例と同じである。即ち、比較例は、第1の磁石と第2の磁石との距離が均一である。また、比較例の第2の磁石の直径と第3実施例の第2の磁石の長径とが同じ値を有する。
また、図8は、ターゲットTG1に直径が5インチで厚さが5mmである円板状のアルミニウム材を用い、電源60をRF電源とし、この電源60によりアノード電極30とカソード電極11との間に印加される電力の値を500Wとして、100時間印加した結果を実線で示し、さらに電圧を印加してターゲットが使用限界に達したときのシミュレーション結果を波線で示している。
図8(a)及び(b)の結果から、第3実施例は、比較例に比べてエロージョンの分布が広くかつ均一性が向上する。これにより、ターゲットの使用効率を向上させることができる。
【0083】
ここで、上記効果を奏する理由について説明する。
第3実施例のマグネトロンスパッタリング装置200は、比較例に対して、第2の磁石における長径方向の長さが同じであり短径方向の長さが短い。
そのため、第3実施例では、第2の磁石の短径方向における第1の磁石と第2の磁石との距離が比較例よりも短いので、上記短径方向の漏洩磁界の強度が大きくなる。これにより、短径方向に発生する磁界は、磁界形成部が回転したときにエロージョン領域の内周端および外周端以外の、中央及びその近傍の領域におけるエロージョンをより速い速度で形成するため、成膜速度が向上すると共にエロージョンの中央領域がより深く均一に削られるという効果が得られる。
なお、第3実施例における成膜速度は、比較例に対して約1.2倍に向上することを確認した。
【0084】
<第4実施例>
次に、本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置の第4実施例について、図9を用いて説明する。
図9は、本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置の第4実施例を説明するための図であり、図9(b)はターゲット側から見たときの磁界形成部の平面図、(a)は(b)中のG−H線における模式的断面図である。
【0085】
第4実施例のマグネトロンスパッタリング装置は、第1実施例及び第3実施例のマグネトロンスパッタリング装置に対して磁界形成部の構成が異なり、他の構成部は第1実施例及び第3実施例と同じなので、磁界形成部について詳細に説明し、他の構成部についてはその説明を省略する。
【0086】
図9に示すように、マグネトロンスパッタリング装置300は、磁界形成部380が、主として、略円板状の支持台381と、支持台381上に固定された略楕円柱状の第1の磁石382と、支持台381上に第1の磁石382を囲うように固定された略円筒状の第2の磁石383と、を有して構成されている。
また、第1の磁石382及び第2の磁石383としては、FeNdB(鉄・ネオジム・ホウ素)やCoSm(コバルト・サマリウム)等の強い磁界強度を有する希土類を主成分とする永久磁石を用いることが好ましい。また、第1の磁石382のみに上記の永久磁石を用い、第2の磁石383としてベース部分と共に軟鉄等の材料を用い、第1の磁石382によって磁化された構成としても良い。
【0087】
支持台381には、ターゲットTG1が、その中心軸ZTG1と支持台381の中心軸Z381とが略一致するように固定されている。
【0088】
第2の磁石383は、その重心O383を通る中心線Z383が支持台381の中心軸Z381と一致する又は上記中心軸Z381の近傍に位置するように支持台381上に固定されている。
【0089】
第1の磁石382は、その重心O382を通り支持台381の中心軸Z381に対して平行な中心線Z382が第2の磁石383の中心線Z383に対して第1の磁石382の短径方向{図9における右方向または左方向(第4実施例では右方向)}に所定の距離L382を有するように、支持台381上に固定されている。
また、第1の磁石382と第2の磁石383とは、磁極の向きが互いに逆向きになされている。
図9では、保持面311aに対向する磁極面382a,383aの磁極を、第1の磁石382がN極、第2の磁石383がS極として表しているが、これに限定されるものではなく、第1の磁石382がS極、第2の磁石383がN極としてもよい。
【0090】
また、磁界形成部380は、これら第1の磁石382と第2の磁石383とによって生じる磁界がターゲットTG1を通過してターゲットTG1上にまで強い磁界強度を有して及ぶように、ターゲットTG1に近接して配置されている。
【0091】
従って、磁界は、第1の磁石382(磁極面382a)と第2の磁石383(磁極面383a)との距離が短い領域{図9(a)における中心線Z382から右側の領域}ではターゲットTG1の中心から離れた位置から径方向に放物線を描くように形成され、第1の磁石382(磁極面382a)と第2の磁石383(磁極面383a)との距離が長い領域{図9(a)における中心線Z382から左側の領域}ではターゲットTG1の中心に近い位置から径方向に放物線を描くように形成される。
そして、プラズマの高密度領域は、磁界の分布に応じて形成されるため、第1の磁石382と第2の磁石383との距離が短い領域{図9(a)における中心線Z382から右側の領域}ではターゲットTG1の中心から離れた位置に形成され{図9(a)では“PL31”で示す}、第1の磁石382と第2の磁石383との距離が長い領域{図9(a)における中心線Z382から左側の領域}ではターゲットTG1の中心から近い位置に{図9(a)では“PL32”で示す}形成される。
そして、第1の磁石382の長径及び短径、第2の磁石383の直径、並びに距離L382のバランスを最適化することにより、プラズマの高密度領域の位置及び幅並びに磁界の強度のバランスを調整することができる。
なお、図9では、磁界形成部380によって生じる磁力線を破線で模式的に表している。
【0092】
第4実施例のマグネトロンスパッタリング装置300は、前述した第3実施例の比較例に対して、第1の磁石における短径方向の長さが同じであり、長径方向の長さが短い。
そのため、第3実施例では、第1の磁石の長径方向における第1の磁石と第2の磁石との距離が比較例よりも短いので、上記長径方向の漏洩磁界の強度が大きくなる。これにより、長径方向に発生する磁界は、磁界形成部が回転したときにエロージョン領域の内周端および外周端以外の、中央及びその近傍の領域におけるエロージョンをより速い速度で形成するため、成膜速度が向上すると共にエロージョンの中央領域がより深く均一に削られるという効果が得られる。
【0093】
上述したマグネトロンスパッタリング装置によれば、第3実施例と同様に、プラズマの高密度領域をターゲットの中心近傍から外周近傍までの広い領域に亘って形成することができるので、従来よりもエロージョンの分布を広くかつ均一にすることができ、ターゲットの使用効率を向上させることができる。また、第3実施例と同様に従来よりも成膜速度を向上させることができる。
【0094】
<第5実施例>
次に、本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置の第5実施例について図10及び図11を用いて説明する。
図10は、本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置の第5実施例を説明するための図であり、図10(b)はターゲット側から見たときの磁界形成部の平面図、図10(a)は図10(b)中のI−J線における模式的断面図である。
図11は、ターゲットの中心からの位置とその位置におけるターゲットのスパッタリング後の厚さとの関係を示すグラフである。
第5実施例のマグネトロンスパッタリング装置は、第1実施例の磁界形成部と第3実施例の磁界形成部とを組み合わせたものであり、他の構成部は第1実施例及び第3実施例と同じなので、磁界形成部について詳細に説明し、他の構成部についてはその説明を省略する。
【0095】
図10に示すように、マグネトロンスパッタリング装置400は、磁界形成部480が、主として、略円板状の支持台481と、支持台481上に固定された略円柱状の第1の磁石482と、支持台481上に第1の磁石482を囲うように固定された略楕円筒状の第2の磁石483と、を有して構成されている。
また、第1の磁石482及び第2の磁石483としては、FeNdB(鉄・ネオジム・ホウ素)やCoSm(コバルト・サマリウム)等の強い磁界強度を有する希土類を主成分とする永久磁石を用いることが好ましい。また、第1の磁石482のみに上記の永久磁石を用い、第2の磁石483としてベース部分と共に軟鉄等の材料を用い、第1の磁石482によって磁化された構成としても良い。
【0096】
支持台481には、ターゲットTG1が、その中心軸ZTG1と支持台481の中心軸Z481とが略一致するように固定されている。
【0097】
第1の磁石482は、その重心O482を通り支持台481の中心軸Z481に対して平行な中心線Z482が、第2の磁石483の中心線Z483に対して第2の磁石483の長径方向{図10における右方向または左方向(第5実施例では右方向)}に所定の距離L482を有するように、支持台481上に固定されている。
また、第1の磁石482は、少なくともカソード電極411(保持面411a)に対向する磁極面482a(図10における上側の面)が、保持面411aに対して所定の高低差T3(または所定の傾斜角度θ3)を有して傾斜した傾斜面となっている。
第5実施例では、支持台481上に、第1の磁石482の磁極面482aを傾斜面とするための傾斜部材484を設け、この傾斜部材484上に第1の磁石482を固定した。傾斜部材484の傾斜角度によって上記磁極面(傾斜面)482aの高低差T3及び傾斜角度θ3を調整することができる。
【0098】
第2の磁石483は、その重心O483を通る中心線Z483が支持台481の中心軸Z481と一致する又は上記中心軸Z481の近傍に位置するように、かつ、磁極の向きが第1の磁石482とは逆向きになるように支持台481上に固定されている。
図10では、保持面411aに対向する磁極面482a,483aの磁極を、第1の磁石482がN極、第2の磁石483がS極として表しているが、これに限定されるものではなく、第1の磁石482がS極、第2の磁石483がN極としてもよい。
また、第2の磁石483は、その磁極面483aからカソード電極411の保持面411aまでの距離H483が、第1の磁石482の磁極面482aから上記保持面411aまでの最長距離H482maxよりも長くなるように設計されている。
【0099】
また、磁界形成部480は、これら第1の磁石482と第2の磁石483とによって生じる磁界がターゲットTG1を通過してターゲットTG1上にまで強い磁界強度を有して及ぶように、ターゲットTG1に近接して配置されている。
【0100】
第1の磁石482は、その磁極面(傾斜面)482aとカソード電極411の保持面411aとの距離が、第2の磁石483(磁極面483a)との距離が短い側(図10における右側)の領域で長く、第2の磁石483(磁極面483a)との距離が長い側(図10における左側)の領域で短くなるように配置されている。
【0101】
従って、磁界は、第1の磁石482(磁極面482a)と第2の磁石483(磁極面483a)との距離が短い領域{図10(a)における中心線Z482から右側の領域}ではターゲットTG1の中心から離れた位置から径方向に放物線を描くように形成され、第1の磁石482(磁極面482a)と第2の磁石483(磁極面483a)との距離が長い領域{図10(a)における中心線Z482から左側の領域}ではターゲットTG1の中心に近い位置から径方向に放物線を描くように形成される。
そして、プラズマの高密度領域は、磁界の分布に応じて形成されるため、第1の磁石482(磁極面482a)と第2の磁石483(磁極面483a)との距離が短い領域{図10(a)における中心線Z482から右側の領域}ではターゲットTG1の中心から離れた位置に形成され{図10(a)では“PL41”で示す}、第1の磁石482(磁極面482a)と第2の磁石483(磁極面483a)との距離が長い領域{図10(a)における中心線Z482から左側の領域}ではターゲットTG1の中心から近い位置に{図9(a)では“PL42”で示す}形成される。
そして、第1の磁石482の直径、第2の磁石383の長径及び短径、並びに距離L482のバランスを最適化することにより、プラズマの高密度領域の位置及び幅並びに磁界の強度のバランスを調整することができる。
なお、図10では、磁界形成部480によって生じる磁力線を破線で模式的に表している。
【0102】
上述したマグネトロンスパッタリング装置によれば、第3実施例に対しては特に第1の磁石の高低差T3(または傾斜角度θ3)を調整することができ、第1実施例に対しては特に第1の磁石と第2磁石との距離を広い範囲で調整することができるので、第1実施例や第3実施例よりもプラズマの高密度領域の位置及び幅並びに磁界の強度のバランスをより高精度に調整することができる。これにより、エロージョンの分布をより広くかつより均一にすることができ、ターゲットの使用効率がさらに向上する。
【0103】
ここで、上述したマグネトロンスパッタリング装置400による効果について、図10と共に図11を用いて説明する。
図11は、マグネトロンスパッタリング装置400を用いてスパッタリングを行ったときにターゲットTG1に形成されたエロージョンを示すものであり、図11(a)は第5実施例を、図11(b)は比較のために第1実施例をそれぞれ示すものである。
また、図11は、横軸がターゲットTG1の中心からの径方向の距離を示し、縦軸がターゲットTG1の厚さを示している。
また、図11は、ターゲットTG1に直径が5インチで厚さが4mmである円板状のニッケル材を用い、電源460をRF電源とし、この電源460によりアノード電極430とカソード電極411との間に印加される電力の値を500Wとし、傾斜角度θ1,θ3をそれぞれ2.5°として、ターゲットTG1にスパッタリングを行った結果を示している。
図11(a)及び(b)の結果から、第5実施例は、第1実施例に比べて、特に±35mm近傍の各領域の盛り上がり度合いが低減されるので、エロージョンの分布が広くかつ均一性が向上する。そのため、ターゲットの使用効率を第1実施例よりもさらに向上させることができる。
また、上記スパッタリング条件において、ターゲットTG1と構造体S1との距離を100mmとしたときの成膜速度は、第5実施例では57nm/分であり、第1実施例では53nm/分であり、成膜速度についても第1実施例よりも向上していることを確認した。これは、第5実施例の方が第1実施例よりも第2の磁石の短径方向における第1の磁石(磁極面)との距離が短いため、磁束密度が向上してプラズマの高密度領域におけるプラズマ密度が向上したためと考えられる。
【0104】
また、上述したマグネトロンスパッタリング装置400の変形例として、第2の磁石483が第1の磁石482よりもカソード電極11から離れた位置に設けられ、また第1の磁石482の磁極面482aが傾斜面とされているので、第2実施例と同様に、これらによって形成される空隙部に冷却水の流路を配置することもできる。これにより、前述した第2実施例と同様な効果が得られる。
【0105】
<第6実施例>
次に、本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置の第6実施例について図12を用いて説明する。
図12は、本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置の第6実施例を説明するための図であり、図12(b)はターゲット側から見たときの磁界形成部の平面図、図12(a)は図12(b)中のK−L線における模式的断面図である。
第6実施例のマグネトロンスパッタリング装置は、第3実施例のマグネトロンスパッタリング装置に対して磁界形成部の構成が異なり、他の構成部は第3実施例と同じなので、磁界形成部について詳細に説明し、他の構成部についてはその説明を省略する。
【0106】
図12に示すように、マグネトロンスパッタリング装置500は、磁界形成部580が、主として、略楕円板状の支持台581と、支持台581上に固定された略円柱状の第1の磁石582と、支持台581上に第1の磁石582を囲うように固定された略楕円筒状の第2の磁石583と、を有して構成されている。
第1の磁石582及び第2の磁石583としては、FeNdB(鉄・ネオジム・ホウ素)やCoSm(コバルト・サマリウム)等の強い磁界強度を有する希土類を主成分とする永久磁石を用いることが好ましい。また、第1の磁石582のみに上記の永久磁石を用い、第2の磁石583としてベース部分と共に軟鉄等の材料を用い、第1の磁石582によって磁化された構成としても良い。
【0107】
支持台581には、ターゲットTG1が、その中心軸ZTG1と支持台581の重心を通る中心軸Z581とが略一致するように固定されている。
【0108】
第2の磁石583は、その重心O583を通る中心線Z583が支持台581の中心軸Z581と一致する又は上記中心軸Z581の近傍に位置するように支持台581上に固定されている。
【0109】
第1の磁石582は、その重心O582を通り支持台581の中心軸Z581に平行な中心線Z582が第2の磁石583の中心線Z583に対して第2の磁石583の長径方向{図12における右方向または左方向(第6実施例では右方向)}に所定の距離L582を有するように、支持台581上に固定されている。
また、第1の磁石582と第2の磁石583とは、磁極の向きが互いに逆向きになされている。
図12では、保持面11aに対向する磁極面582a,583aの磁極を、第1の磁石582がN極、第2の磁石583がS極として表しているが、これに限定されるものではなく、第1の磁石582がS極、第2の磁石283がN極としてもよい。
【0110】
そして、磁界形成部580は、第2の磁石583の磁極面583aとカソード電極11の保持面11aとの距離が、第1の磁石582(磁極面582a)と第2の磁石583(磁極面583a)との距離が短い位置(図12における右端)で最も長く、第1の磁石582(磁極面582a)と第2の磁石583(磁極面583a)との距離が長い位置(図12における右端)で最も短くなるように傾斜して配置されている。
また、磁界形成部580は、これら第1の磁石582と第2の磁石583とによって生じる磁界がターゲットTG1を通過してターゲットTG1上にまで強い磁界強度を有して及ぶように、ターゲットTG1に近接して配置されている。
【0111】
従って、磁界は、第3実施例に対して、第1の磁石582(磁極面582a)と第2の磁石583(磁極面583a)との距離が短い領域{図12(a)における中心線Z582から右側の領域}ではターゲットTG1のさらに外周縁部近傍に形成され、第1の磁石582(磁極面582a)と第2の磁石583(磁極面583a)との距離が長い領域{図12(a)における中心線Z582から左側の領域}ではターゲットTG1の中心により近い位置に形成される。
なお、図12では、磁界形成部580によって生じる磁力線を破線で模式的に表している。
【0112】
そして、プラズマの高密度領域は、磁界の分布に応じて形成されるため、第1の磁石582(磁極面582a)と第2の磁石583(磁極面583a)との距離が短い領域{図12(a)における中心線Z582から右側の領域}ではターゲットTG1のさらに外周縁部近傍に形成され{図12(a)では“PL51”で示す}、第1の磁石582(磁極面582a)と第2の磁石583(磁極面583a)との距離が長い領域{図12(a)における中心線Z582から左側の領域}ではターゲットTG1の中心により近い位置に{図12(a)では“PL52”で示す}形成される。
そして、第1の磁石582の直径、第2の磁石583の長径及び短径、並びに距離L582に加え、磁界形成部580の傾斜角度のバランスを最適化することにより、プラズマの高密度領域の位置及び幅並びに磁界の強度のバランスを第3実施例よりもさらに高精度に調整することができる。
【0113】
また、第6実施例では、第3実施例と同様に、第2の磁石の短径方向における第1の磁石(磁極面)と第2の磁石(磁極面)との距離が第3実施例の比較例よりも短いので、上記短径方向の漏洩磁界の強度が大きくなる。これにより、短径方向に発生する磁界は、磁界形成部が回転したときにエロージョン領域の内周端および外周端以外の、中央及びその近傍の領域におけるエロージョンをより速い速度で形成するため、成膜速度が向上すると共にエロージョンの中央領域がより深く均一に削られるという効果が得られる。
また、第6実施例は、第3実施例に対して第2の磁石の一側がターゲット面より大きく離れてしまうため、ニッケル等の強磁性体をターゲットとして用いる場合は、磁界がターゲット面上に漏れにくくなるためマグネトロン放電が起こりにくくなるが、非磁性体のターゲットであればターゲット表面上に磁界を発生させることができるのでマグネトロン放電が可能である。即ち、第6実施例は非磁性体のターゲットを用いる場合に特に有効である。
【0114】
<第7実施例>
次に、本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置の第7実施例について図13〜図15を用いて説明する。
図13は、本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置の第7実施例を説明するための図であり、図13(b)はターゲット側から見たときの磁界形成部の平面図、図13(a)は図13(b)中のM−N線における模式的断面図である。
第7実施例のマグネトロンスパッタリング装置は、第2実施例のマグネトロンスパッタリング装置に対して磁界形成部の構成が異なり、他の構成部は第2実施例と同じなので、磁界形成部について詳細に説明し、他の構成部についてはその説明を省略する。
【0115】
図13に示すように、マグネトロンスパッタリング装置600は、磁界形成部680が、主として、略円板状の支持台681と、支持台681上に固定された略円柱状の第1の磁石682と、支持台681上に第1の磁石682を囲うように固定された略円筒状の第2の磁石683と、を有して構成されている。
第1の磁石682及び第2の磁石683としては、FeNdB(鉄・ネオジム・ホウ素)やCoSm(コバルト・サマリウム)等の強い磁界強度を有する希土類を主成分とする永久磁石を用いることが好ましい。また、第1の磁石682のみに上記の永久磁石を用い、第2の磁石683としてベース部分と共に軟鉄等の材料を用い、第1の磁石682によって磁化された構成としても良い。
【0116】
第1の磁石682は、その重心O682を通りターゲットTG2の中心軸ZTG2に対して平行な中心線Z682と、ターゲットTG2の中心軸ZTG2とが所定の距離L682を有するように支持台681上に固定されている。
また、第1の磁石682は、少なくともカソード電極111(保持面111a)に対向する磁極面682a(図13における上側の面)が、保持面111aに対して所定の高低差T4(または所定の傾斜角度θ4)を有して傾斜した傾斜面となっている。
また、第1の磁石682は、その磁極面(傾斜面)682aとカソード電極111の保持面111aとの距離が、第1の磁石682(磁極面682a)と第2の磁石683(磁極面683a)との距離が最も短い位置(図13における右側の位置)A682で最も長く、第1の磁石682(磁極面682a)と第2の磁石683(磁極面683a,683b)との距離が最も長い位置(図13における左側の位置)B682で最も短くなるように、配置されている。
第7実施例では、支持台681上に、第1の磁石682の磁極面682aを傾斜面とするための傾斜部材684を設け、この傾斜部材684上に第1の磁石682を固定した。傾斜部材684の傾斜角度によって上記磁極面(傾斜面)682aの高低差T4及び傾斜角度θ4を調整することができる。
【0117】
第2の磁石683は、その重心O683を通りターゲットTG2の中心軸ZTG2に対して平行な中心線Z683と、ターゲットTG2の中心軸ZTG2とが所定の距離L683(L683<L682)を有するように、かつ、磁極の向きが第1の磁石682とは逆向きになるように、支持台681上に固定されている。
【0118】
また、第2の磁石683は保持面111aに対向する2つの磁極面683a,683bを有し、一方の磁極面683bは第1の磁石682(磁極面682a)との距離が最も短い位置及びその近傍の領域(図13における右端及びその近傍の領域)に、他方の磁極面683aよりも保持面111aに接近して設けられている。
【0119】
また、第2の磁石683は、その磁極面683a,683bからカソード電極111の保持面111aまでの距離H683a,H683bが、第1の磁石682の磁極面682aから上記保持面111aまでの最長距離H682maxよりも長くなるように設計されている。
【0120】
図13では、磁極面682a,683a,683bの磁極を、第1の磁石682がN極、第2の磁石683がS極として表しているが、これに限定されるものではなく、第1の磁石682がS極、第2の磁石683がN極としてもよい。
【0121】
また、磁界形成部680は、これら第1の磁石682と第2の磁石683とによって生じる磁界がターゲットTG2を通過してターゲットTG2上にまで強い磁界強度を有して及ぶように、ターゲットTG2に近接して配置されている。
【0122】
ところで、スパッタリングによるターゲットTG2の発熱量が大きい場合、冷却効率を上げるために、流路となるカソード筐体112の内部A112の断面積を大きくする手段がある。
しかしながら、カソード筐体112の内部A112の断面積を大きくすると、第1の磁石682の傾斜角度θ4を大きくしたり、第2の磁石683と保持面111aとの距離を長くしなければならなくなるため、特に磁界強度の大きい第1の磁石682と保持面111aとの距離が長い位置及びその近傍の領域(図13における右端及びその近傍の領域)では影響が大きく、磁界強度が弱まってしまう。
そこで、上述したように、この領域に他の磁極面683aよりも保持面111aとの距離が短い磁極面683bを設けた構成とすることにより、第2の磁石683側からの磁界強度を強めることができるので上記問題を解決することができる。
【0123】
ここで、上記磁極面683bを設けた場合と設けない場合との磁界強度の分布を図14を用いて説明する。図14は、マグネトロンスパッタリング装置600において磁極面683bを設けた場合と設けない場合との磁界強度の分布を示す図であり、磁極面683bを設けた場合を破線で示し、磁極面683bを設けない場合を実線で示している。
また、図14は、横軸がターゲットTG2の中心からの距離を示し、縦軸がターゲットTG2上での垂直方向の磁界強度を示している。
また、図14は、ターゲットTG2に直径が5インチで厚さが4mmである円板状のニッケル材を用い、第1の磁石682を直径が50mmであり厚さが20mmである円柱形状とし、第2の磁石683の外径を84mmとし、距離L683を10mmとし、距離L682を17mmとしたときの磁界強度の分布を示している。
【0124】
図14において、左側の傾斜勾配ZaはターゲットTG2の中心部側のエロージョンの度合いに相当し、右側の傾斜勾配ZbはターゲットTG2の外周部側のエロージョンの度合いに相当するものである。
従って、傾斜勾配Zaと傾斜勾配Zbとのバランスを取ることにより、エロージョンの分布を広く、かつ、均一にすることができる。
図14の結果から、磁極面683bを設けた場合(破線)は、磁極面683bを設けない場合(実線)に比べて、傾斜勾配Zaの度合いと傾斜勾配Zbの度合いとがより等しくなっていることがわかる。
【0125】
そこで、マグネトロンスパッタリング装置600において、上記スパッタリング条件にて磁極面683bを設けた場合について、スパッタリングによりターゲットTG2に形成されたエロージョンの状態を調べ、その結果を図15に示す。
図15は、マグネトロンスパッタリング装置600を用いてスパッタリングを行ったときにターゲットTG2に形成されたエロージョンを示すものである。
また、図15は、横軸がターゲットTG2の中心からの径方向の距離を示し、縦軸がターゲットTG2の厚さを示している。
図15において、ターゲットTG2の中心部側のエロージョンの窪み部Ya1,Ya2は上述した傾斜勾配Zaの度合いに応じて形成され、ターゲットTG2の外周部側のエロージョンの窪み部Yb1,Yb2は上述した傾斜勾配Zbの度合いに応じて形成されるものであり、傾斜勾配Zaの度合いと傾斜勾配Zbの度合いとを略等しくすることにより、窪み部Ya1,Ya2の窪み度合いと窪み部Yb1,Yb2の窪み度合いとを略等しくすることができるので、磁極面683bを設けることにより、エロージョンの分布の均一性を向上させることができる。これにより、ターゲットの使用効率を向上させることができる。このときのターゲットの使用効率は約45%であった。
【0126】
上述したように、第7実施例では、第2の磁石の磁極面(683b)からカソード電極の保持面までの距離が第3実施例の比較例よりも短いので、この近接領域における漏洩磁界の強度が大きくなる。これにより、この近接領域で発生する磁界は、磁界形成部が回転したときにエロージョン領域の内周端および外周端以外の、中央及びその近傍の領域におけるエロージョンをより速い速度で形成するため、成膜速度が向上すると共にエロージョンの中央領域がより深く均一に削られるという効果が得られる。
【0127】
<第8実施例>
次に、本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置の第8実施例について図16及び図17を用いて説明する。
図16は、本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置の第8実施例を説明するための図であり、図16(b)はターゲット側から見たときの磁界形成部の平面図、図16(a)は図16(b)中のP−Q線における模式的断面図である。
第8実施例のマグネトロンスパッタリング装置は、第2実施例及び第7実施例のマグネトロンスパッタリング装置に対して磁界形成部の構成が異なり、他の構成部は第2実施例及び第7実施例と同じなので、磁界形成部について詳細に説明し、他の構成部についてはその説明を省略する。
【0128】
図16に示すように、マグネトロンスパッタリング装置700は、磁界形成部780が、主として、略円板状の支持台781と、支持台781上に固定された略円柱状の第1の磁石782と、支持台781上に第1の磁石782を囲うように固定された略円筒状の第2の磁石783と、を有して構成されている。
第1の磁石782及び第2の磁石783としては、FeNdB(鉄・ネオジム・ホウ素)やCoSm(コバルト・サマリウム)等の強い磁界強度を有する希土類を主成分とする永久磁石を用いることが好ましい。また、第1の磁石782のみに上記の永久磁石を用い、第2の磁石783としてベース部分と共に軟鉄等の材料を用い、第1の磁石782によって磁化された構成としても良い。
【0129】
第1の磁石782は、その重心O782を通りターゲットTG2の中心軸ZTG2に対して平行な中心線Z782と、ターゲットTG2の中心軸ZTG2とが所定の距離L782を有するように支持台781上に固定されている。
また、第1の磁石782は、少なくともカソード電極111(保持面111a)に対向する磁極面782a(図16における上側の面)が、保持面111aに対して所定の高低差T5(または所定の傾斜角度θ5)を有して傾斜した傾斜面となっている。
また、第1の磁石782は、その磁極面(傾斜面)782aとカソード電極111の保持面111aとの距離が、第1の磁石782(磁極面782a)と第2の磁石783(磁極面783a,783b)との距離が最も短い位置(図16における右側の位置)A782で最も長く、第1の磁石782(磁極面782a)と第2の磁石783(磁極面783a,783b)との距離が最も長い位置(図16における左側の位置)B782で最も短くなるように配置されている。
第8実施例では、支持台781上に、第1の磁石782の磁極面782aを傾斜面とするための傾斜部材784を設け、この傾斜部材784上に第1の磁石782を固定した。傾斜部材784の傾斜角度によって上記磁極面(傾斜面)782aの高低差T5及び傾斜角度θ5を調整することができる。
【0130】
第2の磁石783は、その重心O783を通りターゲットTG2の中心軸ZTG2に対して平行な中心線Z783と、ターゲットTG2の中心軸ZTG2とが所定の距離L783(L783<L782)を有するように、かつ、磁極の向きが第1の磁石782とは逆向きになるように、支持台781上に固定されている。
【0131】
また、第2の磁石783は保持面111aに対向する2つの磁極面783a,783bを有し、一方の磁極面783bは第1の磁石782(磁極面782a)との距離が短い側の領域(図16における中心線Z783から右側の領域)に、他方の磁極面783aよりも保持面111aに接近して設けられている。これは、第7実施例のときよりも第2磁石の高くなった領域が広くなっていることを意味している。
【0132】
また、第2の磁石783は、その磁極面783a,783bからカソード電極111の保持面111aまでの距離H783a,H783bが、第1の磁石782の磁極面782aから上記保持面111aまでの最長距離H782maxよりも長くなるように設計されている。
【0133】
図16では、磁極面782a,783a,783bの磁極を、第1の磁石782がN極、第2の磁石783がS極として表しているが、これに限定されるものではなく、第1の磁石782がS極、第2の磁石783がN極としてもよい。
【0134】
また、磁界形成部780は、これら第1の磁石782と第2の磁石783とによって生じる磁界がターゲットTG2を通過してターゲットTG2上にまで強い磁界強度を有して及ぶように、ターゲットTG2に近接して配置されている。
【0135】
ここで、上述したマグネトロンスパッタリング装置700を用いてスパッタリングを行ったときのターゲットTG2に形成されたエロージョンの状態を調べ、その結果を図17に示す。
図17は、マグネトロンスパッタリング装置700を用いてスパッタリングを行ったときにターゲットTG2に形成されたエロージョンを示すものである。
また、図17は、横軸がターゲットTG2の中心からの径方向の距離を示し、縦軸がターゲットTG2の厚さを示している。
また、図17は、ターゲットTG2に直径が5インチで厚さが4mmである円板状のニッケル材を用い、第1の磁石782を直径が50mmであり厚さが20mmである円柱形状とし、第2の磁石783の外径を84mmとし、距離L783を10mmとし、距離L782を17mmとしたときの結果である。
即ち、上記スパッタリング条件は上述した第7実施例(図15)のスパッタリング条件と同じである。
【0136】
そこで、図17と図15とを比較すると、第8実施例(図17)では、第7実施例(図15)に比べて、ターゲットTG2の中心から±35mm近傍のエロージョン中央近傍領域の盛り上がり度合いが低減されており、エロージョンの分布の均一性が向上していることを確認した。このときのターゲットの使用効率は約50%であった。しかしながら、エロージョンの最外周の深い部分の径は約±39mmとなり、第7実施例での結果(約±42mm)よりも小さくなってしまった。従って、このエロージョン最外周の径が小さくならないようにすれば、さらにターゲット使用効率を向上することができる。
【0137】
従って、第8実施例では、第7実施例と同様に、第2の磁石の磁極面(783b)からカソード電極の保持面までの距離が第3実施例の比較例よりも短いので、この近接領域における漏洩磁界の強度が大きくなる。これにより、この近接領域で発生する磁界は、磁界形成部が回転したときにエロージョン領域の内周端および外周端以外の、中央及びその近傍の領域におけるエロージョンをより速い速度で形成するため、成膜速度が向上すると共にエロージョンの中央領域がより深く均一に削られるという効果が得られる。
【0138】
<第9実施例>
次に、本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置の第9実施例について図18及び図19を用いて説明する。
図18は、本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置の第9実施例を説明するための図であり、図18(b)はターゲット側から見たときの磁界形成部の平面図、図18(a)は図18(b)中のR−U線における模式的断面図である。
第9実施例のマグネトロンスパッタリング装置は、第2実施例,第7実施例及び第8実施例のマグネトロンスパッタリング装置に対して磁界形成部の構成が異なり、他の構成部は第2実施例,第7実施例及び第8実施例と同じなので、磁界形成部について詳細に説明し、他の構成部についてはその説明を省略する。
【0139】
図18に示すように、マグネトロンスパッタリング装置800は、磁界形成部880が、主として、略円板状の支持台881と、支持台881上に固定された略円柱状の第1の磁石882と、支持台881上に第1の磁石882を囲うように固定された略円筒状の第2の磁石883と、を有して構成されている。
第1の磁石882及び第2の磁石883としては、FeNdB(鉄・ネオジム・ホウ素)やCoSm(コバルト・サマリウム)等の強い磁界強度を有する希土類を主成分とする永久磁石を用いることが好ましい。また、第1の磁石882のみに上記の永久磁石を用い、第2の磁石883としてベース部分と共に軟鉄等の材料を用い、第1の磁石882によって磁化された構成としても良い。
【0140】
第1の磁石882は、その重心O882を通りターゲットTG2の中心軸ZTG2に対して平行な中心線Z882と、ターゲットTG2の中心軸ZTG2とが所定の距離L882を有するように支持台881上に固定されている。
また、第1の磁石882は、少なくともカソード電極111(保持面111a)に対向する磁極面882a(図18における上側の面)が、保持面111aに対して所定の高低差T6(または所定の傾斜角度θ6)を有して傾斜した傾斜面となっている。
また、第1の磁石882は、その磁極面(傾斜面)882aとカソード電極111の保持面111aとの距離が、第1の磁石882(磁極面882a)と第2の磁石883(磁極面883a,883b)との距離が最も短い位置(図18における右側の位置)A882で最も長く、第1の磁石882(磁極面882a)と第2の磁石883(磁極面883a,883b)との距離が最も長い位置(図18における左側の位置)B882で最も短くなるように配置されている。
第9実施例では、支持台881上に、第1の磁石882の磁極面882aを傾斜面とするための傾斜部材884を設け、この傾斜部材884上に第1の磁石882を固定した。傾斜部材884の傾斜角度によって上記磁極面(傾斜面)882aの高低差T6及び傾斜角度θ6を調整することができる。
【0141】
第2の磁石883は、その重心O883を通りターゲットTG2の中心軸ZTG2に対して平行な中心線Z883と、ターゲットTG2の中心軸ZTG2とが所定の距離L883(L883<L882)を有するように、かつ、磁極の向きが第1の磁石882とは逆向きになるように、支持台881上に固定されている。
【0142】
また、第2の磁石883は保持面111aに対向する2つの磁極面883a,883bを有し、一方の磁極面883bは第1の磁石882(磁極面882a)との距離が短い側の領域(図18における中心線Z883から右側の領域)に3つに分割されて、かつ、他方の磁極面883aよりも保持面111aに接近して設けられている。
より詳しくは、一方の磁極面883bは、第1の磁石882(磁極面882a)との距離が最も短い位置及びその近傍の領域{図18(b)における右端及びその近傍の領域}と、図18における中心線Z883から右側の領域であってそれぞれ上記領域の周方向にそれぞれ所定の距離離間した領域とに設けられている。
第8実施例において、エロージョン最外周の最も深い部分の径が小さくなったのは、その分割された隙間部分で発生する磁界が最も強くなったため、その部分のみ磁界強度を少し弱めることにより、エロージョン中央近傍の深さをより均一にしつつ、最外周の深い部分の径を第7実施例のときと同様に大きくすることができたものと推察される。
【0143】
また、第2の磁石883は、その磁極面883a,883bからカソード電極111の保持面111aまでの距離H883a,H883bが、第1の磁石882の磁極面882aから上記保持面111aまでの最長距離H882maxよりも長くなるように設計されている。
【0144】
図18では、磁極面882a,883a,883bの磁極を、第1の磁石882がN極、第2の磁石883がS極として表しているが、これに限定されるものではなく、第1の磁石882がS極、第2の磁石883がN極としてもよい。
【0145】
また、磁界形成部880は、これら第1の磁石882と第2の磁石883とによって生じる磁界がターゲットTG2を通過してターゲットTG2上にまで強い磁界強度を有して及ぶように、ターゲットTG2に近接して配置されている。
【0146】
ここで、上述したマグネトロンスパッタリング装置800を用いてスパッタリングを行ったときのターゲットTG2に形成されたエロージョンの状態を調べ、その結果を図19に示す。
図19は、マグネトロンスパッタリング装置800を用いてスパッタリングを行ったときにターゲットTG2に形成されたエロージョンを示すものである。
また、図19は、横軸がターゲットTG2の中心からの径方向の距離を示し、縦軸がターゲットTG2の厚さを示している。
また、図19は、ターゲットTG2に直径が5インチで厚さが4mmである円板状のニッケル材を用い、第1の磁石882を直径が50mmであり厚さが20mmである円柱形状とし、第2の磁石883の外径を84mmとし、距離L883を10mmとし、距離L882を17mmとしたときの結果である。
即ち、上記スパッタリング条件は上述した第7実施例(図15)及び第8実施例(図17)のスパッタリング条件と同じである。
【0147】
そこで、図19と図15及び図17とを比較すると、第9実施例(図19)では、第8実施例(図17)と同様に、ターゲットTG2の中心から±35mm近傍の各領域の盛り上がり度合いが低減されており、エロージョンの分布の均一性が向上しており、さらにエロージョンの最外周の深い部分の径は±42mmと、第7実施例(図15)のときのほぼ同等の径となった。このときのターゲットの使用効率は第8実施例よりもさらに向上し、約55%であった。
【0148】
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよいのは言うまでもない。
【0149】
例えば、第1実施例〜第9実施例において、第1の磁石82,182,282,382,482,582,682,782,882及び第2の磁石83,183,283,383,483,583,683,783,883として電磁石を用いても良い。
電磁石を電気的に制御することによって、磁界の強度や磁界の広がりの度合い等を最適化することができる。
【0150】
また、第1実施例,第2実施例,第7実施例,第8実施例,及び第9実施例,では、第1の磁石82,182,682,782,及び882を略円柱形状とし、第2の磁石83,183,683,783,及び883を略円筒形状としたが、これに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置の第1実施例を説明するための概略図である。
【図2】ニッケルターゲットの中心からの径方向の位置とその位置におけるターゲットのスパッタリング後の厚さとの関係を示すグラフである。
【図3】ニッケルターゲットの中心からの径方向の位置とその位置におけるターゲット上に形成される磁界の強度との関係を示すグラフである。
【図4】図3中の”D1”及び”D2”をそれぞれ拡大したものである。
【図5】図4の測定結果に基づいて算出された、第1の磁石の磁極面(傾斜面)における高低差と磁界強度の変化量との関係を示すグラフである。
【図6】本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置の第2実施例を説明するための概略図である。
【図7】本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置の第3実施例を説明するための概略図である。
【図8】第3実施例においてターゲットの中心からの径方向の位置とその位置におけるアルミニウムターゲットのスパッタリング後の厚さとの関係を示すグラフである。
【図9】本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置の第4実施例を説明するための概略図である。
【図10】本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置の第5実施例を説明するための概略図である。
【図11】第5実施例においてターゲットの中心からの径方向の位置とその位置におけるニッケルターゲットのスパッタリング後の厚さとの関係を示すグラフである。
【図12】本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置の第6実施例を説明するための概略図である。
【図13】本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置の第7実施例を説明するための概略図である。
【図14】マグネトロンスパッタリング装置600において磁極面683bを設けた場合と設けない場合との磁界強度の分布を示す図である。
【図15】第7実施例においてターゲットの中心からの径方向の位置とその位置におけるニッケルターゲットのスパッタリング後の厚さとの関係を示すグラフである。
【図16】本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置の第8実施例を説明するための概略図である。
【図17】第8実施例においてターゲットの中心からの径方向の位置とその位置におけるターゲットのスパッタリング後の厚さとの関係を示すグラフである。
【図18】本発明に係るマグネトロンスパッタリング装置の第9実施例を説明するための概略図である。
【図19】第9実施例においてターゲットの中心からの径方向の位置とその位置におけるニッケルターゲットのスパッタリング後の厚さとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0152】
1,100_マグネトロンスパッタリング装置、 10,110_カソード部、 11,111_カソード電極、 12,112_カソード筐体、 20,120_カソードシールド部、 20a,120a_開口部、 30,130_アノード電極、 40,140_真空チャンバ、 41,141_排気口、 42,142_ガス導入口、 43,143_給水管、 44,144_排水管、 50,150_減圧手段、 60,160_電源、 70,170_回転駆動装置、 71,173,175_回転軸部、 72,172_駆動装置、 80,180_磁界形成部、 81,181_支持台、 82,182_第1の磁石、 83,183_第2の磁石、 84,184_傾斜部材、 171,174_ギア、 176_ベルト、 TG1,TG2_ターゲット、 A12,A112_内部、 Z81,Z83,Z181,Z183,ZTG1,ZTG2_中心軸、 O82,O182_重心、 Z82,Z182_中心線、 L82,L182,H82max,H83,H183,H182max_距離、 T1,T2_高低差、 θ1,θ2_傾斜角度、 A82,B82,A182,B182_位置、 PL1,PL2,PL11,PL12_プラズマの高密度領域、 S1,S2 構造体、 ER1〜ER6,ER11〜ER14_エロージョン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットが保持される保持面を有するカソード電極と、
前記カソード電極の前記保持面とは反対側に離間して設けられ、前記保持面に保持された前記ターゲット上に磁界を形成すると共に前記保持面に直交する回転軸で回転する磁界形成部と、
を備え、
前記磁界形成部は、
重心が前記回転軸以外の位置となるように配置され、前記カソード電極と対向する第1の磁極面を有する柱状の第1の磁石と、
重心が前記回転軸上又はその近傍に位置するように配置され、前記カソード電極と対向し前記第1の磁極面とは磁極の異なる第2の磁極面を有し、前記第1の磁石を囲う筒状の第2の磁石と、
を備え、
前記第1の磁極面は、前記保持面に対し、前記保持面との距離が、前記第1の磁極面と前記第2の磁極面との距離が最も短い位置で最も長く、前記第1の磁極面と前記第2の磁極面との距離が最も長い位置で最も短い傾斜面であることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置。
【請求項2】
前記第2の磁極面と前記保持面との距離が、前記第1の磁極面と前記保持面との最長距離よりも長くなされていることを特徴とする請求項1記載のマグネトロンスパッタリング装置。
【請求項3】
ターゲットが保持される保持面を有するカソード電極と、
前記カソード電極の前記保持面とは反対側に離間して設けられ、前記保持面に保持された前記ターゲット上に磁界を形成すると共に前記保持面に直交する回転軸で回転する磁界形成部と、
を備え、
前記磁界形成部は、
重心が前記回転軸以外の位置となるように配置され、前記カソード電極と対向する第1の磁極面を有する円柱状の第1の磁石と、
重心が前記回転軸上又はその近傍に位置するように配置され、前記カソード電極と対向し前記第1の磁極面とは磁極の異なる第2の磁極面を有し、前記第1の磁石を囲う楕円筒状の第2の磁石と、
を備え、
前記第1の磁石は、その重心が前記第2の磁石の重心から長径方向に所定の距離離間した位置になるように配置されていることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置。
【請求項4】
前記第1の磁極面は、前記保持面に対し、前記保持面との距離が、前記第1の磁極面と前記第2の磁極面との距離が最も短い位置で最も長く、前記第1の磁極面と前記第2の磁極面との距離が最も長い位置で最も短い傾斜面であることを特徴とする請求項3記載のマグネトロンスパッタリング装置。
【請求項5】
ターゲットが保持される保持面を有するカソード電極と、
前記カソード電極の前記保持面とは反対側に離間して設けられ、前記保持面に保持された前記ターゲット上に磁界を形成すると共に前記保持面に直交する回転軸で回転する磁界形成部と、
を備え、
前記磁界形成部は、
重心が前記回転軸以外の位置となるように配置され、前記カソード電極と対向する第1の磁極面を有する楕円柱状の第1の磁石と、
重心が前記回転軸上又はその近傍に位置するように配置され、前記カソード電極と対向し前記第1の磁極面とは磁極の異なる第2の磁極面を有し、前記第1の磁石を囲う円筒状の第2の磁石と、
を備え、
前記第1の磁石は、その重心が前記第2の磁石の重心から前記第1の磁石の短径方向に所定の距離離間した位置になるように配置されていることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置。
【請求項6】
前記第1の磁極面は、前記保持面に対し、前記保持面との距離が、前記第1の磁極面と前記第2の磁極面との距離が最も短い位置で最も長く、前記第1の磁極面と前記第2の磁極面との距離が最も長い位置で最も短い傾斜面であることを特徴とする請求項5記載のマグネトロンスパッタリング装置。
【請求項7】
ターゲットが保持される保持面を有するカソード電極と、
前記カソード電極の前記保持面とは反対側に離間して設けられ、前記保持面に保持された前記ターゲット上に磁界を形成すると共に前記保持面に直交する回転軸で回転する磁界形成部と、
を備え、
前記磁界形成部は、
重心が前記回転軸から所定の距離離間した第1の位置になるように配置され、前記カソード電極と対向する第1の磁極面を有する円柱状の第1の磁石と、
重心が前記回転軸と前記第1の位置との間の第2の位置になるように配置され、前記カソード電極と対向し前記第1の磁極面とは磁極の異なる第2の磁極面を有し、前記第1の磁石を囲う円筒状の第2の磁石と、
を備え、
前記第1の磁極面は、前記保持面に対し、前記保持面との距離が、前記第1の磁極面と前記第2の磁極面との距離が最も短い位置で最も長く、前記第1の磁極面と前記第2の磁極面との距離が最も長い位置で最も短い傾斜面であり、
前記第2の磁石は、前記回転軸に対して前記第1の磁石の重心から離れた領域に、前記第2の磁極面よりも前記保持面との距離が短くなされた第3の磁極面を有することを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−191358(P2009−191358A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329500(P2008−329500)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】