説明

マシニングセンタ

【課題】 マシンニグセンタの設置スペースを増加することなく、ツールマガジンに収納できる工具数を多くすることができるマシニングセンタを提供する。
【解決手段】 本発明のマシニングセンタMは、エンドレスチェーン220にツールポット221を取り付けてチェーン状に配列し、所要の工具を所定位置に循環移動させる構成のツールマガジン200を有する。ツールマガジン200は、エンドレスチェーン220の1/2以上をマシニングセンタMの機械フレーム100内に収納し、かつ収納できる工具の数を最大となるように、機械フレーム100の内壁面100dに近接して配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動工具交換用ツールマガジンを備えたマシニングセンタ等の工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
マシンングセンタは、1台の機械で多種類の加工ができるように、多種の工具を収納するツールマガジンを備えている。このツールマガジンに収納されている工具と主軸装置に取り付けられている工具とを制御装置により制御された自動工具交換装置により交換し、多種類の機械加工を可能としている。
【0003】
自動工具交換の方法としては、従来から主として以下の3つの方法が使用されている。
1つ目の方法は、回転式のディスクをマシニングセンタの上部や側部に配置し、そのディスクに工具を収納し、ディスクを回転させて工具を所定の位置に移動させた後、マニュピレータなどの工具搬送手段により所要の工具を切削加工機の主軸の位置まで搬送する構成のものである。
【0004】
2つ目の方法は、マトリックス状に工具を整列収納し、直交する2軸の方向に移動可能な工具搬送手段により、所要の工具を切削加工機の主軸の位置まで搬送する構成のものである。
【0005】
3つ目の方法は、チェーン状に配列された複数のツールポットに工具を収納し、それを循環移動させ所要の工具を所定の位置まで移動させ、工具搬送手段により、所要の工具を切削加工機の主軸の位置まで搬送する構成のものである。
【0006】
一般に、マシニングセンタにおいては、より多種類の機械加工や、より多数のワークへの同時機械加工を容易に行うために、収納する工具数を多くすることが要請されている。このような要請に答えるものとして、特許文献1には、複数のツールポットを一列に配置したツールラックを複数個フレーム内に配置した工具貯蔵供給装置を提案している。これによれば、工具を保持するツールポットがマトリックス状に配置されることから、非常に多数の工具を収容することが可能となる。
【0007】
また特許文献2には、扇形形状のプレートに工具を収納する簡素な構造のツールマガジンと自動交換装置を備えた加工装置が提案されている。
【0008】
さらに特許文献3には、機械の省スペース化を計るためにマシニングセンタの上部にツールマガジンをハチマキ状に配置した公知例が紹介されている。
【特許文献1】特開昭61−44545号公報
【特許文献2】特開2006−150468号公報
【特許文献3】特開平10−315077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載のツールマガジンには、次のような問題がある。工具収納数は、要求される数量に応じていくらでも増やすことは可能であるが、工具貯蔵供給装置はマシニングセンタと別になっているので、工具貯蔵供給装置を設置するスペースが必要となる。したがって、マシニングセンタの設置スペースが限定されている場合は、自ずと収納数にも限界ができる。
【0010】
また、特許文献2に記載のツールマガジンは、ツールマガジンの簡素化や加工機械の省スペース化を狙ったものである。加工機械のプレート状の機械フレームに開口部を設け、その開口部に扇形をしたツールマガジンを収納し省スペース化を図っている。しかしながらこの構成では、マガジンに収納される工具数は極端に少なく、マシニングセンタの多種加工に対応することは困難である。
【0011】
さらに、特許文献3では、機械の省スペースを図るためにツールマガジンをマシニングセンタの上部にハチマキ状に配置している。しかしながらこの構成では、小型のマシニングセンタの場合は、ツールマガジンに収納できる工具数は限られ、多種加工を実現するために多数の工具を収納するとツールマガジンが大きくなりマシニングセンタの省スペース化を実現することは困難である。さらにこのような構成の場合、作業者による工具の入れ替え作業位置が頭上になるため、作業性や安全性に問題がある。
【0012】
本発明の第一の目的は、これらの問題の解決を図ったもので、マシニングセンタにおいて、設置スペースを大きくすることなく、収納可能な工具数を多くすることができるマシニングセンタを提供することである。また第二の目的は、第一の目的を達成するために生ずるツールマガジンのツールポットに作業者が工具を取り付けする場合に正常に取り付けされたか否かの確認を簡潔に行うことができるマシニングセンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明のマシニングセンタは、複数のツールポットを担持するエンドレスチェーンを備えたツールマガジンと、被加工物に機械加工を行う工具を着脱可能に備えた主軸装置と、前記ツールポットと主軸装置との間で、工具を交換する自動工具交換装置とを有するマシニングセンタにおいて、前記ツールマガジンが、マシニングセンタの機械フレーム又は機械カバーと対向する部分では、機械フレーム又は機械カバーの側面及び底面に近接して配置されたことを特徴としている。
【0014】
また前記ツールマガジンにおいて、その少なくとも一部が、マシニングセンタの機械フレーム又は機械カバーの側面の外側及び底面の下側に近接して配置する構成としたり、底面の下側においては床面までの間に配置する構成とすることができる。
さらに前記ツールマガジンにおいて、マシニングセンタの側部では、マシングセンタの外側面又はその延長面より内側に配置する構成とすることもできる。
【0015】
前記ツールマガジンのエンドレスチェーンが、その長さの1/2以上をマシニングセンタの機械フレーム又は機械カバーの内壁面及び又は外壁面に近接して配索されている構成とすることができる。
【0016】
前記エンドレスチェーンを循環駆動するチェーン駆動用の駆動部品を2個以上使用した構成としたり、前記駆動部品が2個のスプロケットからなり、2個のスプロケットが一定距離離間して配置され、前記自動工具交換装置が、前記2個のスプロケットの間で工具を交換する構成とすることも可能である。
【0017】
また、前記ツールポットに工具を取り付けるために前記機械フレーム又は機械カバーの側面に形成された開口部と、該開口部を開閉する開閉カバーと、該開閉カバーの閉止状態を検知するセンサと、前記開閉カバーに設けられ、ツールポットに取り付けられた工具に形成された被係止部に係合する係止部と、を有し、前記被係止部に係止部が係合することで前記センサが開閉カバーの閉止を検知する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ツールマガジンは、マシニングセンタの外側面より突出した部分がないので、マシニングセンタの設置スペースを大きくすることなく多数の工具をツールマガジンに取り付けることができる。
【0019】
エンドレスチェーンが、その長さの1/2以上をマシニングセンタの機械フレームや機械カバーの内面又は外面に近接して配索されることで、マシニングセンタのスペースを大きくすることなくツールマガジンに収納できる工具数を最大にすることができる。
【0020】
エンドレスチェーンを循環駆動するチェーン駆動用の駆動部品を2個以上使用することで、ツールマガジンをスムーズに循環駆動することができる。駆動部品としての2個のスプロケットの間で工具を交換する構成とすることで、エンドレスチェーンが伸びても、工具の交換位置を一定にすることができる。
【0021】
作業者がツールマガジンのツールポットの工具を交換する場合は、次のように行う。まず、機械フレーム又は機械カバーに設けた開口部の開閉カバーを開き、開口部からツールポットに取り付けられた工具を取外し、新しい工具を取り付ける。各工具には同じ位置に被係止部があり、開口部を閉じる開閉カバーには、係止部がある。そして、係止部が被係止部に係合することで、開閉カバーが開口部を閉じることができ、開閉カバーが閉じたことをセンサで検知することができる。したがって、工具の取り付け状態が正常であるか否かの確認をこのような簡潔な構造で実現できる。
【0022】
更にツールマガジンは、マシニングセンタの機械フレーム内に収納する配置とする場合には、ツールマガジンの安全カバー等の保安部品を最低限とすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、ツールマガジンがマシニングセンタの側部では、マシングセンタの外側面又はその延長面より内側に配置する構成とする場合を例にして添付図面を参照して説明する。図1及び図2は、本発明のマシニングセンタを模式的に示す図で、図1は図2のA−Aから見た図、図2は図1のB−Bから見た図である。
【0024】
<マシニングセンタMの構成>
本発明のマシニングセンタMは、図1、図2に示すように、機械フレーム100に、加工用治具20、主軸装置30、自動工具交換装置70、ツールマガジン200を取り付けた構成となっている。
【0025】
<機械フレーム 100>
本マシニングセンタの機械フレーム100は、図2に示すように、側面から見るとL型となっている。機械フレーム100のL型の垂直部に当たる支柱部101には、加工用治具20、自動工具交換装置70、ツールマガジン200が取り付けられる。L型の水平部となるベース部102には、主軸装置30のX,Y,Z軸の位置を決めるNC位置決め部や駆動用モータが配置されている。さらに本マシニングセンタの切粉処理装置などの補機類が収納あるいは接続される。
【0026】
機械フレーム100の正面に開口しているスペース103には、加工用治具20および自動工具交換装置(ATC)70が配置されている。機械フレーム100は、鋼板を溶接して形成され、あるいは、鋳造により形成されたもので、内部に空間があり、この空間内の機械フレームの内壁面に近接してツールマガジン200が配索され、機械フレーム100の上部の開口部からツールマガジン200がマシニングセンタMの上部に露出している。
【0027】
<加工用治具 20>
加工用治具20は、被加工物Wを保持するもので、図1に示すように機械フレーム100の支柱部分101にその両端を支持されている。この加工用治具20は、図示しないアクチュエータにより矢印に示すように軸Oを中心に回動可能な構成となっている。被加工物Wは、加工用治具20の位置決め部に作業者によりクランプ等によって固定される。
【0028】
尚被加工物を加工中に旋回動作等をする必要が無い場合は、加工用治具は、ベース部に固定した定置式の構成となる。この場合は、機械フレームは支柱部分101が無い構成となり、支柱部分に相当するスプラッシュガード等の機械カバーが設けられることになる。
【0029】
<主軸装置 30>
主軸装置30は、本発明のマシニングセンタMにおいて、被加工物Wを加工するドリルやエンドミルなどの工具10を取り付け回転駆動させる装置である。この主軸装置30は、通常のマシニングセンタが備えている工具着脱機能、工具の回転駆動機能、工具回転数の変更機能などを備えており、マシニングセンタMに設けられた図示しない制御装置により制御されるが、全て公知の技術を使用することができる。
【0030】
<主軸移動装置 40,50>
主軸移動装置40,50は、本発明のマシニングセンタの制御装置により操作され、主軸装置30を被加工物Wの所要の位置に移動させる装置である。
【0031】
図1および図2に示すとおり主軸移動装置は、機械フレーム100のベース部102上にX軸スライドユニットとZ軸スライドユニットを2段式に重ねて構成するなどしたXZ軸用のスライドユニット40を設け、その上にコラム状のY軸用のスライドユニット50を設けた構成である。XZ軸用スライドユニット40,Y軸スライドユニット50等には、X,Y,Z軸それぞれの方向に駆動する駆動用のモータと、NC位置決め部とを備えている。このような構成により、主軸装置30は、X,Y,Z軸の方向に移動して、工具10を被加工物Wに近づけて機械加工を行うことになる。
【0032】
尚、本発明における主軸装置30を移動する構成やNC位置決め部やモータ等は、全て公知の技術が使用できる。
【0033】
<自動工具交換装置 70>
自動工具交換装置70は、本発明のマシニングセンタMの主軸装置30に装着する工具10を交換する装置で、マシニングセンタMの制御装置によりプログラムに従って駆動され、自動的に工具10を交換することができる。図2に示すとおり機械フレーム100の上部に補助フレーム110を設け、これに自動工具交換装置70を昇降可能に配設している。自動工具交換装置70には、ATCアーム71が設けられている。ATCアーム71は、2つの端部を有し、主軸装置30の工具10と、ツールマガジン200の工具10との何れか一方に選択的に対向できるように配置されている。そして、軸72が伸縮することで、主軸装置30又はツールマガジンに向かって接近・離反し、軸72が回転することで、ATCアーム71を回転することができる。各ATCアーム71の2箇所の端部には、工具10を把持可能なチャックを有する。
【0034】
<ツールマガジン200の全体構成>
図1にツールマガジン200の全体図を、図3にツールマガジン200の部分図として、1個のツールポット221を示す。これらの図に示すように、ツールマガジン200は、複数のツールポット221をチェーン状に接続し、エンドレスにしたものである。すなわち、ツールポット221は、エンドレスチェーン220のリンク222をつなぐローラピンの内部に形成されたものである。そして、このツールポット221に工具10を着脱可能にしている。したがって、ツールマガジン200には、エンドレスチェーン220のリンク数と同じ数のツールポット221を設けることができる。
【0035】
本発明では、図1に示すように、エンドレスチェーン220は、その高さの80%程度が機械フレーム100内に収容され、残りの20%程度が機械フレーム100の上に露出している。図示しないが、機械フレームの上部にツールマガジン用等のカバーを設け、このツールマガジン用等のカバーによってツールマガジン200の露出している部分を覆うことにしてもよい。この場合、ツールマガジン200は、機械フレーム100とツールマガジン用等のカバーの双方に近接して配置されることになる。また、ツールマガジン200は、その長さの1/2以上が、機械フレーム100の内壁面に沿って配索された状態となっている。エンドレスチェーン220は、四隅をコーナーローラ203,204,205,206でガイドされ、上部には大きなアイドラローラ207を備えている。
【0036】
また、エンドレスチェーン220はアイドラローラ207の下で大きく蛇行し、水平部分を形成し、水平部の両端に駆動用のスプロケット208,209を備えている。以上のようにエンドレスチェーン220が配索され、アイドラローラ207が図1の右方にスライドすることで、エンドレスチェーン220の伸びを調整できる構成となっている。
【0037】
マシニングセンタMの側面では、エンドレスチェーン220は、マシニングセンタMの周囲の外側には全く突出しないようになっている。機械フレーム100の上方では、エンドレスチェーン220が機械フレーム100の上部に露出しているが、機械フレーム100の外側面100aと下面100bでは、全く突出していない。また、機械フレーム100の上部のエンドレスチェーン220が露出している部分でも、外側面100aの延長面100cから外側には突出してはいない。したがって、ツールマガジン200を設けることで、マシニングセンタMの設置スペースを大きくする必要は全くない。
【0038】
マシニングセンタMの上部にツールマガジン用等のカバーを設ける場合は、カバーの内面を延長面100cと一致させ、かつ、ツールマガジン200の上面近傍を覆うようにすることが望ましい。
【0039】
さらに、機械フレーム100内にあっては、エンドレスチェーン220は、機械フレーム100の外側面100a、下面100bの近傍にあって、最もエンドレスチェーン220の長さを長くできるように配索されている。
【0040】
図4は、コーナー支持部の例としてコーナーローラ205の部分を拡大した図である。同図に示すコーナーローラ205は、スチール製の円盤状の部品であり中央部のベアリングにて自在に回転できる構造となっている。この円盤がエンドレスチェーン220のリンク222の間に入り込み、エンドレスチェーン220がマシニングセンタMの前後にずれないよう防止している。またツールマガジン200は、機械フレーム100の内壁面100dに近接した状態で配置されている。図示は省略するが、コーナーローラ204も同様の構成となっている。
【0041】
この実施例のツールマガジン200は、そのエンドレスチェーン220の長さの1/2以上を機械フレーム100の内壁面100dに沿って配索している。こうすることで、エンドレスチェーン220の長さが最も長くなり、最大の個数の工具を取り付けることができる。本発明の実施例では、ツールマガジン200に116個のツールポット221と、同じ数の工具10をセットできるようになった。但し、ツールマガジン200に収納できる工具10の本数は、マシニングセンタMの機械フレーム100の寸法やツールポット221間の間隔(リンクの長さ)等により適宜決定されるもので、この実施例に限定されるものではない。
【0042】
<ツールポット221>
図3はツールポット221に工具10を収納した状態を示す図である。ツールポット221は、エンドレスチェーン220のリンク222をつなぐローラピンに構成されている。ここに示すツールポット221は、公知の構成のもので、スチール製の中空パイプ内に、合成樹脂製の中空円柱状の受入部を嵌入して形成したもので、この受入部に工具10のソケット部を嵌入して保持することができるものである。工具10には、被係止部10aが設けられている。この被係止部10aは、工具10がどのような工具に代わっても、同じ位置に形成されている。
【0043】
各ツールポット221には、たとえば、連続番号などのツールポット221を特定するための符号が付与されており、それぞれに、各種の工具10が取り付けられる。取り付けるべき工具とツールポットの位置は、被加工物Wに行われる機械加工の種類や加工順等により決まり、マシニングセンタMの制御装置により指定される。
【0044】
<主軸装置30の工具の交換>
主軸装置30の工具の交換は、次のようにして行われる。
【0045】
(1)ATCユニット70が下降位置で軸72が伸びた状態で、ツールマガジン200が次に使用する工具を工具交換ポジションまで送る。
(2)ATCユニットが上昇し、ATCアーム71の上側チャックがツールポット内の工具10を保持する。この時他方のチャックは、空いたままである。
【0046】
(3)次に、ATCアーム71の軸72の長さを縮小すると、工具10がツールポット221から離脱する。
【0047】
(4)ATCユニットが下降する。
(5)ATCユニット下降端にて軸72を伸ばし、待機する。
【0048】
(6)X/Z軸をATC位置に移動させ、Y軸を上昇し(主軸が上昇し)、ATCアームの下側チャックに主軸に取り付けていた工具が入る。
【0049】
(7)ATCアームの下側チャックで工具を把持し、軸72を縮めて主軸から工具を抜き取る。
【0050】
(8)ATCアームを180度旋回させた後、軸72を伸ばして下側チャックで把持した工具10を主軸に挿入する。
【0051】
(9)主軸で工具をクランプ後、Y軸を下降しATCアームの下側チャックから工具が引き抜かれ、下側チャックは空となる。
【0052】
(10)軸72を縮めた後、ATCユニットを上昇させる。
(11) 軸72を伸ばし、不要となった工具をツールポット221に装着させる。
(12)ATCユニットを下降させる。
上記の(1)から(12)の動作によりの工具交換の動作が完了する。
【0053】
<ツールマガジン駆動部>
図5、図6は駆動部品としてのスプロケット208,209の駆動構造を示す図で、図5は正面図、図6は側面図である。一方のスプロケット208に駆動用モータ211(ギヤードモータ)が継手215で連結されており、両スプロケット208,209は、それぞれタイミングプーリ212を有し、これらをタイミングベルト213で接続されている。タイミングベルト213の張りは、テンションローラ214で調整される。したがって、両スプロケット208,209が共にエンドレスチェーン220の駆動用スプロケットとなる。また、両スプロケット208,209の位置は固定され、両者の間隔は、一定に保たれている。このように複数の駆動部品で駆動することで、エンドレスチェーン220を脈動させることなく、円滑で安定した状態で循環させることができる。
【0054】
ツールマガジンに極力多くの工具を収納しようとするとエンドレスチェーン220の長さも長くなり、エンドレスチェーン220に延びが問題となる。しかし、エンドレスチェーン220に延びが発生しても、2個のスプロケット208,209間の距離は一定であり、その間に入るツールポット221の数は一定である。そこで、両スプロケット208,209の間のエンドレスチェーン220を図示しない水平な支持板などで支えて水平状態に保つと、各ツールポット221の工具10の位置を常にほぼ一定に保つことができる。一方、自動工具交換装置70、主軸装置30の交換位置も常に一定に保たれているので、正常に工具交換をすることができることになる。
【0055】
尚本実施例では、2個のスプロケットを同時に駆動させてツールマガジンのチェーンを循環移動させていたが、チェーンの長さにより2個以上のスプロケットを適宜配置することは勿論可能である。またスプロッケト以外でもチェーンを駆動できるものであれば使用することができる。
【0056】
<工具取付用の開閉カバー 150>
図7は、工具取付部の構造を示す図である。作業者が工具10をツールマガジン200のツールポット221に取付けたり、取り外したりするために、機械フレーム100の側面に開口部106を形成している。開口部106には、鋼板製の開閉カバー150がヒンジで取り付けられ、開口部106を開閉可能である。この開閉カバー150を開けると、ツールマガジン200のツールポット221に作業者の手が届き、作業者は、この開口部106から手を入れることで、ツールポット221の工具10を交換することができる。
尚加工治具などの構成により機械フレームの支柱部分101が無い場合は、機械フレームの支柱部分に代わりスプラッシュガードなどの機械カバーが設けられることになる。このような場合は、開口部106は、機械カバーに設けられる。
【0057】
開閉カバー150の裏面には、ブラケット151が取り付けられ、ブラケット151の先端には、薄板状の係止部152が取り付けられている。一方、工具10には、図3で説明したように、溝状の被係止部10aが形成されている。そして、開閉カバー150を閉じたとき、工具10がツールポット221の所定の位置に正常に嵌装されていれば、係止部152の先端が工具10の被係止部10aに係合することができ、開閉カバー150を完全に閉じることができる。開閉カバー150が完全に正常に閉じられることは、センサ153により確認ができる。
【0058】
係止部152の板が長いと、複数の工具10がツールポットに正常に取り付けされたかを同時に検知することができ、複数のツールポット221の工具を交換したときの確認ができる。
【0059】
本発明では、ツールマガジンを、マシニングセンタの外側面又はその延長面より内側に配置するだけでなく、以下のような別配置を採用することができる。
【0060】
図8は、ツールマガジン200と機械フレーム100又は機械カバーとの他の配置例を示す図である。ツールマガジンは、機械フレームの内側や外側に近接して設置するばかりではない。既に述べたように旋回式治具等を支持する機械フレームの支柱部分が不要な構成のマシニングセンタでは、ツールマガジンは、その一部がマシングセンタの周囲に設けたスプラッシュガードなどの機械カバーの内側や外側に近接して配置することになる。尚図8では、機械フレームの内側や外側に近接して配置する図としている。
【0061】
(a)は、ツールマガジン200の全体が機械フレーム100の外側の近接位置を通過している例である。(b)はツールマガジン200の垂直部の一方が機械フレーム100の内側で、垂直部の他方と、下部が機械フレーム100の外側の近接位置に配置された例である。(c)は、ツールマガジン200の垂直部の一方が機械フレーム100の外側で、垂直部の他方と、下部が機械フレーム100の内側の近接位置に配置された例である。(d)は、ツールマガジン200の垂直部の両側が機械フレーム100の内側で、下部が機械フレーム100の下側の近接位置に配置された例である。これらに例示されるように、本発明では、ツールマガジン200ないし、エンドレスチェーン220を、機械フレーム100の内側又は外側に近接配置することで、エンドレスチェーン220の長さを最長にし、収容できる工具数を最大にすることができる。
【0062】
また図示しないが、(a)(b)(d)においてツールマガジンは、その下側を底面に近接せず、マシニングセンタを設置する床面までの間に配置することもできる。
【0063】
また、機械フレーム100の上側には、機械カバーとして、ツールマガジン用等のカバーを設けてもよい。ツールマガジン用等のカバーを使用する場合は、エンドレスチェーンは、カバーの内側か外側のいずれかに近接配置させることがチェーンの長さを長くできるので望ましい。
【0064】
本発明は以上の通りであるから、以下に述べる効果が得られる。
(1) マシニングセンタ等の加工装置のツールマガジンに収納する工具の数を極力多くし、かつマシニングセンタの省スペース化を実現することができる。
(2) ツールマガジンへの工具の取付け状態が正常であるか否かの確認を簡潔な構造で実現することができる。
(3) マシニングセンタ等の加工装置のツールマガジンが機械フレーム又は機械カバー内に収納されている場合は、ツールマガジンを囲う安全カバーや保護カバーなどの保安部品が必要最低限で済み、マシングセンタのコストを安価に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明のツールマガジンを搭載したマシニングセンタの正面全体図である。
【図2】本発明のツールマガジンを搭載したマシニングセンタの側面全体図である。
【図3】ツールマガジンにツールが収納された状態を示す詳細図である。
【図4】ツールマガジンのコーナー部の詳細図である。
【図5】ツールマガジンの駆動部分の正面詳細図である。
【図6】ツールマガジンの駆動部分の側面詳細図である。
【図7】工具取付用開閉カバーと開口部の図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図8】(a)〜(d)は、ツールマガジンと機械フレームの他の配置例を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
10 工具
20 加工用治具
30 主軸装置
40 主軸移動装置(XZ軸用スライドユニット)
50 主軸移動装置(Y軸用スライドユニット)
70 自動工具交換装置(ATC)
100 機械フレーム
101 機械フレームの支柱部分
102 機械フレームのベース部分
103 機械フレームのU字型の開口スペース
106 機械フレーム側面開口部(工具取付用)
150 工具取付用の開閉カバー
152 係止部
153 センサ
200 ツールマガジン全体
208,209 スプロケット(駆動部品)
220 エンドレスチェーン
221 ツールポット
M マシニングセンタ本体
W 被加工物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のツールポットを担持するエンドレスチェーンを備えたツールマガジンと、被加工物に機械加工を行う工具を着脱可能に備えた主軸装置と、前記ツールポットと主軸装置との間で、工具を交換する自動工具交換装置とを有するマシニングセンタにおいて、前記ツールマガジンが、マシニングセンタの機械フレーム又は機械カバーと対向する部分では、機械フレーム又は機械カバーの側面及び底面に近接して配置されていることを特徴とするマシニングセンタ。
【請求項2】
前記ツールマガジンの少なくとも一部が、マシニングセンタの機械フレーム又は機械カバーの側面の外側及び底面の下側に近接して配置されていることを特徴とする請求項1記載のマシニングセンタ。
【請求項3】
複数のツールポットを担持するエンドレスチェーンを備えたツールマガジンと、被加工物に機械加工を行う工具を着脱可能に備えた主軸装置と、前記ツールポットと主軸装置との間で、工具を交換する自動工具交換装置とを有するマシニングセンタにおいて、前記ツールマガジンが、マシニングセンタの機械フレーム又は機械カバーと対向する部分では、機械フレーム又は機械カバーの側面に近接して配置し、かつ底面の下側においてはマシニングセンタを設置する床面までの間に配置されていることを特徴とするマシニングセンタ。
【請求項4】
複数のツールポットを担持するエンドレスチェーンを備えたツールマガジンと、被加工物に機械加工を行う工具を着脱可能に備えた主軸装置と、前記ツールポットと主軸装置との間で、工具を交換する自動工具交換装置とを有するマシニングセンタにおいて、前記ツールマガジンが、マシニングセンタの側部では、マシニングセンタの外側面又はその延長面より内側に配置されたことを特徴とするマシニングセンタ。
【請求項5】
前記ツールマガジンのエンドレスチェーンが、その長さの1/2以上をマシニングセンタの機械フレーム又は機械カバーの内壁面及び/又は外壁面に近接して配索されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のマシニングセンタ。
【請求項6】
前記エンドレスチェーンを循環駆動するチェーン駆動用の駆動部品を2個以上使用した請求項1から5のいずれかに記載のマシニングセンタ。
【請求項7】
前記駆動部品が2個のスプロケットからなり、2個のスプロケットが一定距離離間して配置され、前記自動工具交換装置が、前記2個のスプロケットの間で工具を交換することを特徴とする請求項6記載のマシニングセンタ。
【請求項8】
前記ツールポットに工具を取り付けるために前記機械フレーム又は機械カバーの側面に形成された開口部と、該開口部を開閉する開閉カバーと、該開閉カバーの閉止状態を検知するセンサと、前記開閉カバーに設けられ、ツールポットに取り付けられた工具に形成された被係止部に係合する係止部と、を有し、前記被係止部に係止部が係合することで前記センサが開閉カバーの閉止を検知することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のマシニングセンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−149416(P2008−149416A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340637(P2006−340637)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ツールポット
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【Fターム(参考)】